【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は基板上に作製された回路パターンにおけるスイッチとして機能する押しボタンスイッチに関する。 【0002】 【従来の技術】従来、図6に示すような押しボタンスイッチ10が提案されていた。 押しボタンスイッチ10 は、基板2上に形成された下部電極3と、下部電極3の上方を覆うように形成された弾性変形自在のドーム状の上部電極4とを備えてなる。 上部電極4は固定用テープ7によって基板2上に固定され、その周縁で前記下部電極3と離間した配線パターンと電気的に接続されている。 上部電極4に押圧力を印加して弾性変形させることで上部電極4と下部電極3とが接触し、押圧力を解除することで復元力により上部電極4が下部電極3から離反して、スイッチのオンオフの切り換えが行われる。 【0003】また、基板2等から発生した基板くずや、 固定用テープ7から発生した接着剤のくずなどの異物9 が上部電極4と下部電極3との間に挟まり、両者の間に接触不良が発生することを防ぐために、下部電極3のうち、上部電極の頂部に対向する位置に孔または凹部を設けて、接点付近から異物9を除去することを目的とした押しボタンスイッチも提案されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、異物が必ずしも孔または凹部に入るとは限らず、異物が孔または凹部の周囲に留まることも考えられる。 上部電極に押圧力を印加して下部電極と接触させようとした場合、上部電極の曲率半径が大きいために、上部電極と下部電極との接触面積が大きくなり、異物が孔または凹部の周囲に存在していた場合であっても、上部電極と下部電極との間に異物が存在し、それらの間の接触が異物によって妨げられる可能性があった。 【0005】また、上部電極の頂部と孔または凹部の中心とがずれて設置された場合は、下部電極における孔または凹部の位置ではなく、その周囲の平坦な位置と上部電極とが接触することになるが、上述したのと同様に上部電極と下部電極との接触面積が大きいことから、それらの間に異物が挟まれて電気的な接触が達成されない可能性が高くなる。 【0006】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、接触不良の確率を低減させた押しボタンスイッチを提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る押しボタンスイッチの第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載の如く、基板上に設けられた下部電極と、前記下部電極の上方を覆うドーム形状の上部電極とを備えてなる押しボタンスイッチであって、前記下部電極が孔または凹部を備え、前記上部電極が下に凸の凸部を備え、前記上部電極に押圧力を印加することで前記凸部が前記孔または凹部の周部電極に接触し、前記押圧力を解除することで弾性力によって前記上部電極が前記下部電極から離反する点にある。 【0008】上記目的を達成するための本発明に係る押しボタンスイッチの第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項2に記載の如く、前記下部電極が回路パターンの一部であり、前記回路パターンが部分的に形成されていない部分を前記孔または凹部とする点にある。 【0009】上記目的を達成するための本発明に係る押しボタンスイッチの第三の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項3に記載の如く、上記第一または第二の特徴構成に加えて、前記凸部が、複数の突起を備えて構成される点にある。 【0010】上記目的を達成するための本発明に係る押しボタンスイッチの第四の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項4に記載の如く、上記第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記凸部の直径が前記孔または凹部の直径よりも大きい点にある。 【0011】以下に作用並びに効果を説明する。 本発明に係る押しボタンスイッチの第一の特徴構成によれば、 上部電極および下部電極が上記のように構成されることから、上部電極と下部電極とを一点で接触させるのではなく、例えば、凸部が円形で孔または凹部が四角形などの場合には上部電極の凸部の周部と下部電極の孔または凹部の周部における多数点接触、特に孔または凹部が円形の場合にはそれぞれの周部同士における線接触とさせることができる。 上部電極と下部電極との接触は面接触ではなく多数点接触であるために、ある接触点に異物が存在していたとしても他の点で接触が行われることで上部電極と下部電極との電気的な接触を確実にすることができる。 【0012】また、上部電極の中心と下部電極の中心とがずれて設置された場合は上部電極の凸部と下部電極の平坦な部分とが接触することになる場合もあるが、この場合であっても、上部電極の凸部が尖っているために、 凸部の高さで異物を回避することができ、更に異物を押しのけて下部電極と接触することもできる。 【0013】同第二の特徴構成によれば、特定の部分に回路パターンを作製しないことで、その部分を孔または凹部として利用することができる。 更に、押しボタンスイッチと回路パターンとが同じ基板面上に形成されるため、基板の両面に回路パターンを設ける場合に比較して、回路パターンの作製を簡略化することができる。 【0014】同第三の特徴構成によれば、上部電極と下部電極との間の独立した接点数を増大させることができることで、異物の存在によりどこかの接点の接触が不良となった場合であっても、他の接点において上部電極と下部電極との間の電気的な接触を確保することができる。 【0015】同第四の特徴構成によれば、図3(a)に例示するように、凸部を設けていない場合に比べて上部電極の凸部が下部電極に対して垂直方向に近い角度をもって接触することから、接触点の周囲において上部電極と下部電極とを大きく離間させることができる。 離間距離が小さい場合は、そこに異物が挟まることで接触不良が発生する可能性があるが、離間距離が大きいために異物による影響をうける可能性を排除することができる。 【0016】 【発明の実施の形態】以下に図面を参照して本発明に係る押しボタンスイッチについて説明する。 図1および図2に示す本発明に係る押しボタンスイッチ1は、基板2 上に設けられた下部電極3と、下部電極3の上方を覆うドーム形状の上部電極4とを備えてなり、下部電極3が孔または凹部5を備え、上部電極4が下に凸の凸部6を備え、上部電極4に押圧力を印加することで上部電極4 の凸部6が下部電極3の孔または凹部5の周部電極に接触し、押圧力を解除することで弾性力によって上部電極4が下部電極3から離反する。 【0017】更に具体的には、図1および図2に示す本発明に係る押しボタンスイッチ1は、基板2に下部電極3を形成し、下部電極3および基板2の一部に孔または凹部5を設け、下に凸の凸部6を備えたドーム状の金属プレートからなる上部電極4を、凸部6と孔または凹部5とが対応するように基板2を覆って設置し、上部電極4を固定用テープ7を用いて基板2上に固定して作製される。 回路パターン8が押しボタンスイッチとは逆の基板面上に作製されている場合は、孔または凹部5をスルーホールとして利用し、下部電極3と回路パターン8との電気的接続を行う。 固定用テープ7の上から押しボタンスイッチ1を器具または指などにより押すことで上部電極4が下部電極3と接触し、また押した器具または指を離すことで上部電極固有の弾性力により上部電極4が下部電極3から離反し、それにより押しボタンスイッチ1を用いたオンオフ操作が行われる。 【0018】図3(a)に示すように、上部電極4が凸部6を有することで、凸部6は下部電極3に対して垂直方向に近い角度をもって接触することから、接触点の周囲において上部電極4と下部電極3とを大きく離間させることができる。 つまり、凸部6が高さを持っていることから、凸部6周辺には天井の高い空間が形成されている。 従って、上部電極4と下部電極3との間に異物が存在した場合であっても、空間の天井の高さの方が異物の高さよりも高いために、上部電極4と下部電極3との電気的な導通が妨げられることはない。 【0019】また、図1に示したように凸部6および孔または凹部5が共に円形である場合には、上部電極4と下部電極3との接触状態は円周に沿った線接触とすることができる。 或いは、孔または凹部5を四角形などの多角形で形成した場合には、凸部6と孔または凹部5とは多数点接触とすることができる。 従って、上部電極4と下部電極3との間に部分的に異物が挟まったとしても、 他の接触点部分で接触状態が確保される。 【0020】図3(a)では、孔または凹部5の中心と凸部6の中心とを一致させて示したが、実際に作製する場合には上部電極4の中心と下部電極3の中心とが左右にずれて装着される可能性がある。 しかしながら、ずれて装着された状態で押圧力が印加されても、図3(b) に示すように、ある線接触の部分が強く押し付けられ、 別の部分がほとんど押し付けられない状態になるだけであり、多数点で接触している状態を保っていることに変わりはない。 【0021】以下に別実施形態を説明する。 上述の実施形態では凸部が単一の突起からなり、その直径が孔または凹部よりも大きい場合について説明したが、凸部が複数の突起を備えてなる場合について以下に説明する。 【0022】図5(a)および図5(b)に示すように凸部6は3個の突起を備えて構成されており、上部電極4に押圧力が印加された場合にはそれぞれの突起が下部電極3と接触する。 ここで、凸部6の大きさは図中に点線で示すように複数の突起が設けられた範囲で規定され、その直径は下部電極3の孔または凹部5の直径よりも大きい。 このような構成とすることで、上部電極4と下部電極3とが多数点で接触し、異物によって何れかの点における接触が不良になった場合であっても他の点における接触が確保される。 また、上述の実施形態と同様に、凸部6を構成する突起と下部電極との間に異物が存在した場合であっても、その突起が尖っていることで異物を押しのけて下部電極3と接触させることができる。 【0023】さらに、上部電極4の中心(或いは、凸部6の中心)と下部電極3の中心(或いは、孔または凹部5の中心)とがずれて設置された場合であっても、同様に、何れかの突起が下部電極3と接触することができるため、上部電極4と下部電極3との接触が妨げられることはない。 【0024】また、上記の実施形態では、回路パターン8が押しボタンスイッチ1とは逆の基板面上に作製された場合について説明したが、回路パターン8は押しボタンスイッチ1と同じ基板面上に作製されてもよい。 以下に図4を参照して回路パターン8と押しボタンスイッチ1が同じ基板面上に作製された場合について説明する。 【0025】回路パターン8が押しボタンスイッチと同じ基板面上に作製された場合、回路パターン8の一部が下部電極3となる。 つまり、回路パターン8を部分的に取り除くか、または作製しないことで孔または凹部5が形成される。 回路パターン8が部分的に形成されていない孔または凹部5の上方を覆うように上部電極4が設けられ、上部電極4と回路パターン8(下部電極3)とが接触することで両者の電気的導通が達成される。 【図面の簡単な説明】 【図1】押しボタンスイッチの斜視図である。 【図2】押しボタンスイッチの断面図である。 【図3】押しボタンスイッチに押圧力を印加した状態を示す断面図である。 【図4】別実施形態の押しボタンスイッチを示す図である。 【図5】別実施形態の押しボタンスイッチを示す図である。 【図6】従来の押しボタンスイッチの断面図である。 【符号の説明】 1 押しボタンスイッチ 2 基板 3 下部電極 4 上部電極(金属プレート) 5 孔または凹部 6 凸部 7 固定用テープ 8 回路パターン 9 異物 |