【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は静電力によって駆動される静電駆動型リレーに関するものである。 【0002】 【従来の技術】この種の静電駆動型リレーの公知例としては特公昭55−15060号、特開平2−10022 4号に示されるものがあり、前者のものは図13に示すように並行配設した制御電極40、40の間にエレクトレット41を配置した構成となっている。 また後者のものは図14に示すように基板42上に固定電極層33を形成し、この固定電極層43の上方に並行するように可動片44を配置した構成となっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記の従来例の内前者の構成では、エレクトレット41を分極させた時にエレクトレット41の電荷の総和が0の場合、動作しない構成となっている。 従って分極させたそれぞれの電荷の絶対値が異なるように帯電させる必要があり、正確な帯電量の制御が困難な上に、充放電回路を外部に設ける必要があり、システム全体のコストが高く、大型化する欠点があった。 【0004】また後者の場合は電極に印加された電圧による静電力のみで動作しているため接点圧力が弱く、接触信頼性が悪い。 また静電力を得るためには電極間の距離を小さくするか、電極への印加電圧を高くする必要があり、電極間の距離を小さくする方法では接点間の空隙も小さくなり、接点間耐圧が小さくなるという問題があった。 【0005】更にこの従来例では可動片44をシリコンウェハで形成し、固定電極層43を形成している基板4 2は樹脂で製作しており、それぞれ異なる材料で製作されているため、熱膨張率が異なり、結果使用温度の変動があると構造体に歪みが生じて動作が不安定になるという問題があった。 本発明は以上のような問題点を解決するためになされたもので、エレクトレットの帯電が容易に行え、外部からの振動、衝撃によっても誤動作を起こさず、接点圧力も十分得られ、接触信頼性が良く、更に接点間耐圧も高く、その上電極への印加電圧も低くてすみ、温度変化に対しても安定し、しかも小型化が図れる静電駆動型リレーを提供するにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、固定電極を形成せるシリコン単結晶ウェハからなる2つの固定片と、可動電極を形成せるシリコン単結晶ウェハからなり上記両固定片によってサンドイッチ状に挟まれ上記可動電極が移動可能に支持された可動片とで構成され、上記両固定片の各固定電極上にエレクトレットを形成し、可動片と固定片とには可動片の移動により互いに接離する接点を設けたものである。 【0007】尚可動電極を一端が支持固定された周辺部位と、この周辺部位に囲まれた内部において、上記周辺部位の他端に一端が固定されて、自由端に接点を設けた中央部位とで構成して片持ち型としても良く、また可動電極を両端が支持固定された周辺部位と、この周辺部位に囲まれた内部において、上記周辺部位の両固定端を結ぶ線に対して垂直方向の周辺部位の内縁に固定され、この固定部位から周辺部位の両固定端方向に延長された各自由端に夫々接点を設けた中央部位とで構成して両持ち型としても良い。 【0008】 【作用】而して本発明の構成によれば、固定電極を形成せるシリコンウェハからなる2つの固定片と、可動電極を形成せるシリコンウェハからなり上記両固定片によってサンドイッチ状に挟まれ上記可動電極が移動可能に支持された可動片とで構成され、上記両固定片の各固定電極上にエレクトレットを形成しているので、エレクトレットによる可動電極に及ぼす静電力と、外部印加による静電力を重ね合わせた力を利用することができ、しかも、可動電極が固定電極に対し平行に近い状態で移動させることができるため通常より静電力が大きく、その結果接点圧が大きく取れ、接点の接触信頼性が良い。 また外部よりの振動、衝撃に対して誤動作しにくいのである。 更に可動電極と固定電極の空隙も広くとることもでき、結果接点間の空隙も大きくなって接点間耐圧を大きくすることができ、更に電極への印加電圧も低くてすみ、駆動回路の耐圧を低くすることができる。 【0009】また可動片、固定片ともシリコンウェハで作っているため、1つのウェハ上に多数個同時に製作することもできるため量産性が良く、その結果安価に製作することができ、また接合する可動片、固定片が同一材料であるので熱膨張係数が同じで、バイメタルのような動きはなく、温度変化に対しても安定である。 また固定片がシリコンウェハよりなるため放電回路、昇圧回路等の駆動回路をシリコンウェハ上に形成できるので、外部に駆動装置を設ける必要がない。 【0010】尚請求項2記載の発明の構成によれば、片持ち型のリレーが、また請求項3記載の発明の構成によれば両持ち型のリレーが実現できる。 【0011】 【実施例】以下本発明を実施例により説明する。 (実施例1)本実施例は図1に示すように上部固定片1 と、可動片2と、下部固定片3とで構成され、上下の固定片1、3間に可動片2をサンドイッチ状に挟持する構造となっている。 【0012】可動片2は、図2に示すようにシリコン単結晶ウェハを基材とするもので、可動電極21、固定接点22、可動接点23、固定片接合用金属薄膜層24、 電極端子28を形成している。 可動電極21は可動片2 の周辺部より異方性エッチング等により、上下から凹部に加工されたもので絶縁膜20に覆われており、外周はコの字状にエッチング形成され、その一端が支持固定端25となっている。 さらにその内部に上記コの字と逆方向のコの字状にエッチングされ、周辺部位となる端部可動電極21aと中央部位となる中央可動電極21bを形成しており、端部可動電極21aは、上記支持固定端2 5を中心に回転し、中央可動電極21bは、支持固定端25とは反対側に位置する中央可動電極支持固定端26 を中心に回転する。 【0013】よって中央可動電極21bは、後述する上下の固定片1、3の固定電極10、30に対し、平行に移動する。 また下部固定片3の固定接点から電気信号を取り出せるように可動片2の隅には切欠き27も設けられている。 可動接点23は、上記絶縁膜20上に形成され、可動電極21の凹部により、2つの固定片1、3が上下に接合されるだけで接点間ギャップを設けることができるようになっている。 また上記金属薄膜層24及び固定接点22も上記絶縁膜20上に形成されたもので、 金属薄膜層24は金或いは金合金層からなり、可動片2 の基材であるシリコン単結晶ウェハに接続されている。 尚28は電極端子である。 【0014】固定片1、3は可動片2と同様にシリコン単結晶ウェハを基材とするもので、図3、図4に示すように絶縁膜14、34上に固定電極10、30、エレクトレット11、、31、固定接点12、32、可動片接合用の金或いは金合金層からなる金属薄膜層13、33 を夫々形成し、各電極10、30とエレクトレット11 はコンタクト15、35により接続されている。 尚16 は上部固定片1の電極端子である。 また22a、22b は固定接点12、32に接続される可動片1の固定接点22の端部に設けた固定接点端子である。 【0015】而して、これら可動片2、上下の固定片1、3の接合用金属薄膜層24と13及び24と33とが合わさるように接触させて、適当な圧力を加えながら加熱すると接合用金属薄膜層24、13、33が互いに基材のシリコンとともに共晶化して、機械的にも、電気的にも接続されることになるのである。 図5は可動片2 を固定片1、3で挟持した状態の断面図を示す。 【0016】ここで外部に電気信号を取り出す方法として上に重ねる部品の周辺の寸法を小さくして電極を露出させる方法もあるが、それでは各部品を切り出してから接合することになり工程が複雑であるため、本実施例では固定片1、3、可動片2が多数個形成されたシリコンウェハ3枚を先に接合してから切り出すことが可能になるので生産効率が向上する。 さらに固定片1、3に、ウェハ内に高濃度ドーピング層からなる固定電極10、3 0を形成したり、トランジスタ、ダイオード、抵抗素子、コンデンサ等で構成される静電駆動回路用ICを形成しても良く、駆動回路を一体形成した場合、外部に駆動回路を設ける必要は無くなる。 【0017】また印加電圧は本発明にような静電駆動リレーを動作させる場合、数十Vの電圧が必要だが昇圧回路を固定片1、3に形成しておくと入力は数Vで動作する。 また上部の固定片1のエレクトレット11の可動電極21に面している表面がプラス、下部固定片3のエレクトレット31の可動電極21に面している表面がマイナスとなるように永久分極している。 勿論永久分極の代わりに互いに逆極性の電荷を永久的に持たせるようにしても良い。 両者の電荷量の絶対値が同じ時の電極間距離と静電力(可動電極21にかかるトルク)及びバネ負荷との関係を図6に示す。 ただし静電力とバネ負荷によるトルクは逆向きに作用するが、図6では同じ向きとして示している。 尚図6中イはバネ負荷力を、ロは印加電圧が0Vの時の静電力を、ハは可動電極21にプラス電圧を印加した時の静電力を、ニは可動電極21にマイナス電圧を印加した時の静電力を夫々示す。 【0018】次に本実施例の動作を説明する。 まず固定電極10、30と可動電極21の電位が同電位の場合、 固定電極10、30と可動電極21が平行になっている中立位置では2つのエレクトレット11、31により発生する静電力は同じ大きさで、可動電極21に働くトルクは0である。 可動電極21が上部エレクトレット31 側に傾くと、上部エレクトレット11により発生する静電力が大きいので、可動電極21には、上部エレクトレット11側に傾こうとするトルクが発生する。 逆に可動電極21が下部エレクトレット31側に傾くと、下部エレクトレット31により発生する静電力が大きいので、 可動電極21には、下部エレクトレット31側に傾こうとするトルクが発生する。 【0019】その際、まず可動電極21の端部可動電極21aが可動電極支持固定端25を中心として、変形しようとする。 次に中央可動電極21bは中央可動電極支持固定端26を中心に回転しようとする。 よって中央可動電極21bは固定電極10又は30に対し、平行に移動しようとするので、可動電極21は固定電極10又は30に対し、大きな静電力を発生する。 平行的に固定側に近づくので可動電極21と固定電極10、30間距離が常に一定で、特に接点部がオンする際、中央可動電極21bと固定電極10又は30間の空隙は0に近くなる(できる)。 【0020】さて可動電極21にプラスの電圧を印加した場合、上部エレクトレット11と可動電極21には反発力、下部エレクトレット31と可動電極21には吸収力が発生するため、可動電極21に下部エレクトレット31側に傾こうとするトルクが発生する。 この場合、反発力、吸収力の両者が同じ向きのトルクに寄与するので非常に大きな接点圧を得ることができる。 逆に可動電極21にマイナスの電圧を印加した場合、上部エレクトレット11と可動電極21には吸収力、下部エレクトレット31と可動電極21には反発力が発生するため可動電極21に上部エレクトレット11側に傾こうとするトルクが発生する。 【0021】また可動電極21のバネ力が中立位置では0、どちらかのエレクトレット11又は31側に可動電極21が傾いている時、中立位置へ戻ろうとするトルクが働く。 即ち、静電力とバネ力は互いに逆向きにかかることになる。 図6において可動電極21に電圧が印加されていない状態で、可動電極21がどちらかのエレクトレット11又は31に傾いている時、静電力の方がバネ力より大きくなるように設定すると、可動電極21はその位置を保持して、中立位置へは戻らない。 即ち2つの安定状態を持つ。 【0022】例えば、最初、上部エレクトレット11側に傾いた状態から、可動電極21にプラスの電圧を印加した場合、上部エレクトレット11への吸着力が弱くなり、下部エレクトレット31側に回転し保持される。 この状態で可動電極21への印加電圧を0にしても、その状態を保持する。 逆に可動電極21へマイナスの電圧を印加した場合、逆の動作をする。 つまりラッチング動作が可能になる。 【0023】2つのエレクトレット11、31の帯電量の絶対値が異なる場合の動作を図7に示す。 この図示例ではエレクトレット11のプラスの帯電量の方が大きくなるようにしている。 可動電極21に電圧を印加していない状態では上部からの吸引力の方が大きくなるため、 上部に傾いた状態で安定している。 そして可動電極21 にプラスの電圧を印加した時は下部からの吸引力が強くなり可動電極21には下部へ傾こうとするトルクが働き接点部を閉じた状態で安定する。 そして印加電圧を取り除くとバネの復元力の方が優るため、中立位置へ戻り、 上部の吸引力によって再び元の位置へ戻る。 図7中イはバネ負荷力、ロは印加電圧が0のときの静電力、ハは可動電極21にプラス電圧を印加した時の静電力を示す。 【0024】以上により2つのエレクトレット11、3 1の帯電量のバランスを変えることによってラッチング動作、シングル動作の両方を可能にする。 (実施例2)上記実施例1は可動電極21を片持ちした型の構造であったが、本実施例は図8〜図12に示すように両持ち型にしものである。 つまり可動片2の可動電極21は外周の両端の2点が端部可動電極21aの支持固定端25となっており、可動電極21の内部では上記支持固定端25、25間を結ぶ線に対して垂直方向の辺の中心部の2点が端部可動電極21aの中央内縁に一体に連結されるようにエッチングされ、その内部の部位が中央可動電極21bとなっており、この中央可動電極2 1bは中央両側の支持固定端29を中心に両自由端が変形する。 よって中央可動電極21bは、固定電極10、 30に対し、平行に移動する。 尚上記両自由端には可動接点23を設けており、これらの可動接点23に対応するように固定片10、30には固定接点12、32を設けてある。 また下部固定片3の固定接点32から電気信号を取り出せるよう可動片2の4つの隅には切欠き35 を設けている。 【0025】尚実施例1の構成に対応して同じ役割を持つ部位には同一番号を付しており、基本的には同じ動作を為すため、説明は省略する。 而して本実施例のトルク発生の動作は基本的には実施例1と同様であるが、可動電極21は次のように変形する。 まず端部可動電極21 aは両端が支持固定端25で固定支持されているため、 弓のように変形しようとする。 一方中央可動電極21b は中央両側の支持固定端29を中心にその両端が変形しようとする。 よって中央可動電極21bは固定片1又は3の固定電極10又は30に対し、平行に移動し、可動電極21は固定電極10又は30に対し、大きな静電力を発生する。 特に接点部がオンする際、中央可動電極2 1bと固定電極10又は30間の空隙は0に近くなるのである。 【0026】 【発明の効果】請求項1記載の発明は、固定電極を形成せるシリコンウェハからなる2つの固定片と、可動電極を形成せるシリコンウェハからなり上記両固定片によってサンドイッチ状に挟まれ上記可動電極が移動可能に支持された可動片とで構成され、上記両固定片の各固定電極上にエレクトレットを形成しているので、エレクトレットによる可動電極に及ぼす静電力と、外部印加による静電力を重ね合わせた力を利用することができ、しかも、可動電極が固定電極に対し平行に近い状態で移動させることができるため通常より静電力が大きく、その結果接点圧が大きく取れ、接点の接触信頼性が良くなるという効果があり、また外部よりの振動、衝撃に対して誤動作しにくいという効果もあり、更に可動電極と固定電極の空隙も広くとることもでき、結果接点間の空隙も大きくなって接点間耐圧を大きくすることができ、更に電極への印加電圧も低くてすみ、駆動回路の耐圧が低くなるという効果があり、更にまた可動片、固定片ともシリコンウェハで作っているため、1つのウェハ上に多数個同時に製作することもできるため量産性が良く、安価に製作することができ、また接合する可動片、固定片が同一材料であるので熱膨張係数が同じで、バイメタルのような動きはなく、温度変化に対しても安定で、その上固定片がシリコンウェハよりなるため放電回路、昇圧回路等の駆動回路を形成できるので、外部に駆動装置を設ける必要がないという効果がある。 【0027】請求項2、3記載の発明は上述のように構成しているので、請求項2記載の発明では、片持ち型のリレーが、また請求項3記載の発明では両持ち型のリレーが実現できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例1の分解斜視図である。 【図2】同上の可動片の上面図である。 【図3】同上の上部固定片の上面図である。 【図4】同上の下部固定片の上面図である。 【図5】同上の断面図である。 【図6】同上の動作説明用の接点間距離と静電力及びバネ負荷の関係図動作特性図である。 【図7】同上の別の動作説明用の接点間距離と静電力及びバネ負荷の関係図動作特性図である。 【図8】本発明の実施例2の分解斜視図である。 【図9】同上の可動片の上面図である。 【図10】同上の上部固定片の上面図である。 【図11】同上の下部固定片の上面図である。 【図12】同上の断面図である。 【図13】従来例の構成図である。 【図14】別の従来例の構成図である。 【符号の説明】 1 上部固定片 2 可動片 3 下部固定片 10 固定電極 11 エレクトレット 12 固定接点 21 可動電極 21 端部可動電極 21 中央可動電極 25 支持固定端 26 支持固定端 23 可動接点 30 固定電極 31 エレクトレット 32 固定接点 |