【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ポジションセンサなどのセンサ類で用いられる摺動接点に関する。 【0002】 【従来の技術】ポジションセンサなどのセンサ類では、 センサの本体側の部材と、当該部材に対して回転あるいは直線等の運動をするアセンブリ(部品)との間で電気信号や電力等を送受するために、例えば図8に示されるようなブラシ状の摺動子100が用いられている。 この摺動子100では、ロータなどに摺動接触する摺動子先端部の摺動接点10が重要な部品である。 摺動接点10 は、ブラシ12を構成する各爪12aの先端で被接触物に摺動接触させられた状態で用いられるものであり、爪12aの先端部をできるだけスムーズに摺動できる方が好ましい。 このようなことから、摺動接点10の製造では、爪12aの先端部の表面を曲面状に加工することがある。 【0003】例えば、摺動接点を比較的簡単に製造する方法として、プレス加工による打抜きによって製造する方法がある。 この方法は、概略的には、用意した摺動接点用の薄板材にプレス加工を施して、先端部が曲がっていない摺動接点片(図1の摺動接点片10'参照)を製造し、さらに加工を行って摺動接点を製造するという方法である。 ところが、打抜きでは、ブラシの爪の先端部の外周が鋭利になったり、当該外周にバリが生ずることがある(図2(b)参照)。 爪の先端部が鋭利であり、 あるいはバリを有していると、ブラシ12の先端部を被接触物に接触させた状態でスムーズに摺動させることができないおそれがある。 そこで、打抜きによる場合は、 打抜きによって得られた摺動接点片のブラシの爪の先端を研磨して曲面状に加工し、スムーズに摺動できるようにしている。 【0004】ブラシ12の爪12aの先端の研磨方法としては、バレル研磨が用いられている。 摺動接点(摺動接点片)10は、通常、縦横15mm程度の大きさであり、バレル研磨機の容器に投入してバレル研磨を行うのに適当な大きさだからである。 また、研磨対象である爪の先端は、通常、0.1mm(厚さ)×0.4mm (幅)程度か、それ以下の微小領域であり、この部分だけを研磨することは難しいが、バレル研磨によれば研磨することが可能だからである。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところで、バレル研磨は、バレル研磨機の容器に研磨石等の研磨媒体と、摺動接点片とを投入し、容器を回転させることによって摺動接点片の外周面全体を研磨するという方法である。 つまり、バレル研磨では、ブラシの爪の先端部だけを集中して研磨できない。 したがって、バレル研磨によったのでは、先端部を十分に平滑な状態になるまで確実に研磨することが難しく、しかも研磨状態にバラツキが生じやすい。 【0006】そして、摺動接点片(摺動接点)は、薄板材からなるものであり、バレル研磨中に研磨媒体から受ける力で変形することがある。 変形したものは製品にできないことから、バレル研磨を用いると、製品歩留まりが低下するという問題がある。 【0007】また、摺動接点片にバレル研磨を施す場合は、その前に、摺動接点片を個々に切り離して、容器に投入できる状態にしておく必要がある。 ところが、個々に切り離してしまうと、その後の摺動接点(摺動接点片)の取扱い性が低下してしまう。 例えば、同じ向きに並べたり、摺動接点の個数をカウントするような場合に手間がかかる。 したがって、摺動接点の取扱い上の観点では、複数の摺動接点が帯状に連なってなる帯板材(図1に示される摺動接点片の帯板材を参照)の方が好ましい。 複数の摺動接点が一体に繋がっている方が搬送やカウントが容易でだからである。 また、摺動子を自動的に連続して製造する場合に、帯状の摺動接点を利用できれば、摺動接点を容易かつ迅速に連続供給できるからである。 【0008】本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、摺動接点の製造時の歩留まりがより高く、摺動接点のブラシの爪の先端部表面を確実に平滑にすることができ、しかも、このような平滑な表面の爪を備える複数の摺動接点が帯状に連なる帯板材を製造することができる摺動接点の製造方法を提供することを課題とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、発明者らは、摺動接点のブラシの爪の先端部を平滑で、かつ断面円弧形状などの均整のとれた曲面形状に確実に成形できる加工方法について検討した。 その結果、 ブラシが金属製である場合、ブラシの爪の先端部を一旦溶融させた後凝固させることによって平滑化できることを見出し、本発明に想到するに至った。 【0010】本発明は、先端部が被接触対象物に接触される金属製の爪を1つ以上有する摺動接点の製造方法において、爪の先端部を溶融させた後、気体中で凝固させて爪の先端部の表面を平滑にする工程を有することを特徴とするものである。 【0011】爪の先端部を平滑にする工程は、摺動接点片の爪の先端部を溶融させた後、気体中で凝固させるというものであり、摺動接点製造時の中間工程として、あるいは最終工程として用いられる。 例えば、プレス加工による打抜きによって摺動接点を製造する場合であれば、打抜きにより得られた摺動接点片の爪の先端を加熱して溶融させる。 すると、溶融前に鋭利な部分やバリが存在していても、これらが消滅する。 そして、先端部の表面が完全に溶融したところで加熱を止めて気体中で凝固させる。 すると、上述したような、平滑な曲面状の表面を有する爪の先端部が確実に形成され、このような爪からなるブラシを有する摺動接点を製造できる。 【0012】また、このような摺動接点の製造方法によれば、摺動接点のブラシの爪の先端部を、例えば半球形状や蒲鉾形状に代表される断面半円形の中高形状に確実に成形できる。 このような形状が得られるのは、摺動接点の爪の先端部表面が微小領域であるという特徴を有しており、溶融されると表面張力が作用して表面形状が整えられるからであると考えられる。 バレル研磨やブラスト法による研磨、あるいはペーパー研磨やバフ研磨などのいわゆる機械研磨では、上述したような中高形状に成形することは極めて難しい。 【0013】ところで、このようにして形成された爪の先端部表面は、極めて平滑な曲面であるが、加熱対象である摺動接点片の爪の先端部は、微小な領域であるため、この部分だけを加熱することは容易でない。 したがって、爪の先端部を加熱したときに、爪の先端部以外の部分はできるだけ加熱しないように工夫する必要がある。 爪の先端部以外の部分を融点近くまで加熱してしまうと、摺動接点片が変形しやすくなり、実際に変形してしまうと不良品が発生し、歩留まり低下してしまうからである。 そこで、爪の先端部だけを加熱する方法について検討した。 【0014】その結果、爪の先端部の溶融を、当該爪の先端部にレーザビームや電子ビームなどのいわゆる高エネルギー密度のビーム(以下、単にレーザビーム等とも称する)を照射することによって行うのが好ましいことを見出した。 このようなビームであれば、ビーム径や向きなどを調節することによって爪の先端部だけにエネルギーを加えて、この部分だけを溶融させることができるからである。 また、レーザビーム等によれば、短時間の照射によって各爪の先端部を個別的にしかも確実に加熱し、溶融させることができるという利点がある。 このようなことからも、摺動接点片全体が融点に近い温度まで加熱されることが防止され、加熱による変形が防止される。 さらに、棒形状や短冊形状等の爪が平行に並ぶいわゆる櫛歯状のブラシの場合、隣接する爪(櫛歯)は相互に極めて接近しているので、個々の爪(櫛歯)を個別的に加熱させることは難しいが、レーザビーム等によれば、このような場合でも、確実に爪(櫛歯)の先端だけを溶融させることができる。 【0015】また、レーザビーム等を用いる方法であれば、保持した状態の摺動接点片の爪の先端部にビームを照射してこの部分を加熱、溶融し、当該爪の先端部を成形できる。 したがって、個々に分離された摺動接点片に適用できるだけでなく、複数の摺動接点片が連なってなる帯板材(図1の帯板材1を参照)を構成する各摺動接点片10'に対しても適用できる。 例えば、複数の摺動接点片10'が連なる帯板材1を保持する状態で、当該帯板材1を構成する各摺動接点片10'のブラシ12' 爪12a'の先端部に、順次、レーザビーム等を照射して爪12a'の先端部を溶融させ、その表面を平滑な曲面状にするようにすればよい。 【0016】つまり、バレル研磨が用いられている従来の摺動接点の製造方法では、複数の摺動接点を帯板材の状態で提供することはできなかったが、本発明に係る摺動接点の製造方法によれば、複数の摺動接点を帯板材の状態で提供できるのである。 帯板材は、個々の摺動接点に切り離された状態と比べて大型であり、搬送や供給する場合に極めて取扱いやすい。 特に、摺動子を自動的に連続して製造するような場合に、帯状の摺動接点があれば、摺動接点を容易かつ迅速に連続供給でき、容易に摺動子の生産工程を簡素化し、生産性を向上させることができる。 【0017】また、レーザビーム等の照射によってブラシの爪の先端部を溶融させて平滑にする場合は、照射による加工後に先端部を熱処理するのが好ましい。 凝固後に得られる爪の先端部の表面の硬さが必要とする好ましい硬さでない場合があるが、熱処理を施すことで好適な硬さにすることができるからである。 特に、硬い先端部を得たい場合は、熱処理によって析出硬化する性質を有する合金を用いるのが好ましい。 【0018】ここまで説明した本発明に係る摺動接点の製造方法によれば、既に説明したように、摺動接点のブラシの爪の先端部表面を極めて平滑な曲面状に形成でき、しかも当該先端部を、例えば半球形状や蒲鉾形状に代表される断面半円形などの中高形状に成形できる。 【0019】このような先端部を有する爪を備えた摺動接点が組み込まれた摺動子をポテンショセンサ等の部品として用いれば、爪の先端部を被接触物の表面上でスムーズに摺動させることができる。 スムーズな摺動が確保されれば、摺動子や被接触物表面の消耗(摩耗)が最小限に抑えられるといった効果、そして測定精度の低下が抑制されるといった効果が得られる。 また、スムーズな摺動が確保されれば、ポテンショセンサなどのセンサに実装された状態でのセンシングにおいてスムーズに摺動するので、センシングの結果として生成される電気信号中のノイズの発生が著しく低減される。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る摺動接点の好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。 【0021】 第1実施形態 :Ag39.5重量%、Pd 43.0重量%、Cu17.0重量%、Pt0.5重量%という組成の材料に圧延加工等を施して、幅23m m、厚さ0.07mmの薄板材を用意した。 そして、この薄板材にプレス加工を施して、図1に示されるような複数の摺動接点片10'が帯状に連なる摺動材接点片の帯板材1を得た。 【0022】図1に示されるように、各摺動接点片1 0'は、基部11と、基部11から延びる2つのブラシ12'とから構成されるものであり、基部11の部分において切断しろ13を介して隣接する摺動接点片10' に連なっている。 各ブラシ12'は、櫛歯状に並ぶ同じ長さの3本の爪12a'(幅寸法は0.4mm)を有するものである。 また、両ブラシ12'は、爪12a'が平行に並ぶように配置され、かつ爪12a'の先端が一直線上に並ぶように配置されている。 図2(a)および(b)は、プレス上がりの爪12a'の先端の状態を示す写真である。 図2(a)に示されるように、この段階の爪12a'の先端部表面は、プレス加工によって打抜かれたままの荒れた状態であった。 また、図2(b)に示されるように、爪12a'の先端部の形状は左右非対称であり、先端部表面の輪郭は不規則(不定形)な曲線形状であった。 【0023】プレス加工後、各摺動接点片10'の爪1 2a'の先端部にレーザビームを照射して先端部の表面を平滑にした(表面平滑化工程)。 具体的には、まず、 摺動接点片10'の帯板材1を治具(不図示)を用いて保持し、その状態で、図3(a)に示されるように、帯板材1の一つの爪12a'の先端部にレーザビームBを所定時間照射して、爪12a'の先端部を溶融、再凝固させた(図3(b)参照)。 このようなレーザビームB の照射を、全ての爪12a'の先端部に対して行った。 なお、第1実施形態では、YAGレーザをレーザ媒質とするレーザビームBをパルス状に出力させて、各爪12 a'の先端部に1P(パルス)ずつ照射した。 照射時間(=パルス長)は0.5ms(ミリ秒)であり、1Pの出力(エネルギー量)は0.3J/Pであった。 また、 レーザビームのビーム径は0.6mmであり、爪12a の先端全体に一度に照射できる直径であった。 【0024】この後、摺動接点片10'の帯板材1に、 360℃で2時間という加熱条件の熱処理を施した。 熱処理温度は、事前に検討した結果350℃〜400℃が好ましいことが解ったため、この範囲の中でも特に好ましい上記温度とした。 熱処理後の摺動接点片について、 爪12a'の先端部付近のビッカース硬さを測定したところ、硬さ値は300±30Hvであった。 熱処理によって析出硬化したものと考えられる。 そして、熱処理後、曲げ加工を施して、先端部が曲がった爪12aを有するた摺動接点10(図8の摺動接点を参照)が帯状に連なる帯板材を得た。 図2(c)および(d)は得られた摺動接点の爪12aの先端部を示す写真である。 【0025】図2(c)に示されるように、得られた摺動接点の爪の先端部の表面状態は、滑らかな表面状態(鏡面状態)であり、先端部の形状は全体に亘って均一ないわゆる蒲鉾形状であった。 また、図2(d)に示されるように、爪の先端部の形状は左右対象であり、先端部表面の輪郭は曲率半径が全体に亘って均等な滑らかな円弧形状であった。 【0026】 比較例1 :従来の製造方法を用いて摺動接点を製造した。 まず、第1実施形態と同じ板材を用意し、同じプレス加工を施して、第1実施形態と同様の、 摺動接点片の帯板材1(図1参照)を得た。 次に、この帯板材にプレス加工を施して、連なる摺動接点片10' を個々の摺動接点片10'に切り離した。 続いて、各摺動接点片10'に、第1実施形態で行った熱処理と同じ条件の熱処理を施した。 熱処理後の爪12a'の先端部の状態は、第1実施形態のプレス加工後の状態(図2 (a)および(b)参照)と同様であった。 【0027】この後、得られた複数の摺動接点片10' にバレル研磨を施して、各摺動接点片10'の爪12 a'の先端部を平滑にした(表面平滑化工程)。 バレル研磨では、容量1L(リットル)の容器を備えた遠心バレル研磨機を用いた。 具体的には、バレル研磨機の容器に、研磨媒体として半径0.5mmの研磨石(アルミナ製)を0.7Lと、熱処理済みの摺動接点片10'を1 00個投入し、容器を300rpmで1時間回転させてバレル研磨を行った。 このようなバレル研磨によって摺動接点10(図8参照)を得た。 図2(e)および(f)は、バレル研磨後に得られた摺動接点10の爪1 2aの先端部を示す写真である。 得られた摺動接点10 について、爪12aの先端部付近のビッカース硬さを測定した結果、硬さ値は300±30Hvであった。 なお、製造した100個の摺動接点のうちの8個はバレル研磨によって変形され、製品として不適格なものであった。 【0028】図2(e)に示されるように、摺動接点1 0の爪12aの先端部の表面には、バレル研磨によって平滑になっている領域と、研磨されずに残された領域とが見られ、均一な表面状態ではなかった。 また、研磨により平滑にされた面は鏡面状態ではなく、第1実施形態により得られた摺動接点の爪の先端部表面に比べて平滑性の点で劣っていた。 そして、爪12aの先端部は蒲鉾形状にはなっていなかった。 また、図2(f)に示されるように、爪12aの先端部の形状は、左右非対象のままであり、先端部表面の輪郭は円弧形状でなかった。 【0029】 第1実施形態と比較例1の比較 :図2の(c)と(e)との比較から解るように、第1実施形態の摺動接点の爪は、比較例1のものに比べて、表面の平滑性が著しく優れていた。 そして、図2の(d)と(f)との比較から解るように、第1実施形態の摺動接点の方が、爪の先端部の断面形状の左右対称性に優れていた。 そして、第1実施形態の摺動接点は、爪の先端部がいわゆる蒲鉾形状であり、爪の先端部表面の輪郭線がほぼ完全に円弧形状に整形されていた。 さらに、比較例1では、変形したものが8個生じたが、第1実施形態では生ずることはないため、第1実施形態によれば歩留まりが確実に向上することが解った。 なお、ビッカース硬さは同等であった。 以上の結果から、第1実施形態により得れた摺動接点は、先端部表面の平滑性や形状に優れる爪を備えていることが解った。 摺動接点の爪の先端部表面が平滑であれば、実際にポジションセンサなどの装置の中で摺動接点として用いたときに、スムーズな摺動を確保することができる。 そして、以上の結果から、レーザビームを照射することによる表面平滑化工程は優れた表面平滑化方法であり、第1実施形態によれば、優れた摺動接点を製造できることが解った。 【0030】 第2〜第9実施形態 :表面平滑化工程におけるレーザビームの照射時間および/または出力が第1 実施形態とは異なる実施形態である。 なお、各実施形態におけるレーザビームの照射時間および出力は表1に示すとおりである。 また、各実施形態により得られた摺動接点のブラシ先端部の状態を、図4および図5として挙げた写真で示した。 なお、レーザビームの照射時間および出力以外の製造条件は、第1実施形態と同じであり、 その説明を省略する。 【0031】 【表1】 【0032】第1〜第3実施形態から、同じ照射時間でも、第2実施形態のように出力を低くすると、爪の先端部表面全体を平滑にできなくなり、また第3実施形態のように出力を高くすると、爪の中央部に溶融に起因すると考えられる膨らみ部が生じ、均一な形状にならないことが解った。 また、第1,第4および第5実施形態との比較から、同じ出力でも、第4実施形態のように照射時間を短くすると、爪の先端部表面全体を十分に平滑にできなくなり、また第5実施形態のように照射時間を長くすると、爪の中央部に膨らみ部が生ずることが解った。 この結果、レーザビームを照射することによってブラシの先端部表面を平滑な曲面形状にするには、レーザビームの照射時間および出力を適切に設定する必要があることが解った。 そして、検討した結果、第1,第6〜第9 実施形態のレーザビーム照射条件がより好ましく、特に第1実施形態の条件が好ましいことが解った。 例えば、 照射時間を0.5msに設定する場合、出力の好ましい範囲は0.25J/P〜0.35J/Pであり、出力を0.3J/Pに設定する場合、照射時間の好ましい範囲は0.4ms〜0.6msであった。 なお、第6〜第9 実施形態によって得られた摺動接点の爪の先端部の状態は、写真を示さなかったが、第1実施形態の場合と同様、表面は極めて平滑(鏡面状態)であり、また輪郭形状は左右対象で半円形状であるという好ましいものであった。 【0033】 第10実施形態 :合金線からなるブラシを有する摺動接点を製造する実施形態である。 まず、組成がAu10重量%、Ag30重量%、Pt10重量%、 Pd35重量%、Cu14重量%、Zn1重量%の合金線(直径0.09mm)を用意して一定の長さに切断した。 そして、切断した合金線を、その先端が一直線上に並ぶように電気抵抗溶接で金属板からなるベース21 (図6参照)に固着して、合金線からなる爪を有する摺動接点片を得た。 図7(a)および(b)は、得られた摺動接点片の爪の先端部を示す写真である。 図7(a) に示されるように、摺動接点片の爪の先端面は、切断されたままの荒れた面状態であった。 また、図7(b)に示されるように、爪の先端部の断面形状はほぼ平面状であり、平面の周縁には切断時に生じたものと考えられるバリがあった。 【0034】このようにして得られた摺動接点片の各爪の先端部に、第1実施形態と同様のパルス状のレーザビームBを1P(パルス)ずつ照射した。 照射時間(=パルス長)は0.3ms(ミリ秒)、1Pの出力は0.0 5J/Pであった。 また、レーザビームのビーム径は0.3mmであり、爪22aの先端全体に一度に照射できる直径であった。 この後、摺動接点片を360℃で2 時間という加熱条件の熱処理を施し、さらに曲げ加工を施して、図6に示されるような、先端部が曲がった爪2 2aからなるブラシ22を有する摺動接点20を得た。 図7(c)および(d)は、得られた摺動接点片20の爪22aの先端部を示す写真である。 【0035】図7(c)に示されるように、得られた摺動接点の爪の先端部の表面状態は、滑らかな表面状態(鏡面状態)であった。 また、図7(d)に示されるように、爪の先端部の形状は左右対象であり、先端部表面の輪郭は曲率半径が全体に亘って均等な滑らかな円弧形状であった。 この結果、第10実施形態により得られた摺動接点20は、先端部表面の平滑性や形状に優れる爪22aを備えていることが解った。 そして、第10実施形態によれば、優れた摺動接点を製造できることが解った。 【0036】 【発明の効果】以上のように、本発明に係る摺動接点の製造方法によれば、摺動接点の爪の先端部表面を確実に平滑にすることができ、摺動接点の製造時の歩留まりがより高くなる。 また、本発明に係る摺動接点は、爪の先端部表面が極めて平滑であるので、これを摺動子に組み込むことによって、接点における摺動が極めてスムーズな摺動子を提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 第1実施形態の摺動接点を製造する途中で得られる摺動接点片を示す斜視図。 【図2】 (a)(b)は、プレス加工上がりの摺動接点片のブラシの爪の先端部を示す拡大写真。 (c) (d)は、第1実施形態により得られた摺動接点のブラシの爪の先端部を示す拡大写真。 (e)(f)は、比較例1により得られた摺動接点のブラシの爪の先端部を示す拡大写真。 【図3】 レーザビームを照射する状態および照射作業の手順を説明するための、爪の先端部を示す拡大斜視図。 【図4】 第1〜第5実施形態により得られる摺動接点のブラシの爪の先端部の形状を示す写真。 【図5】 第1〜第5実施形態により得られる摺動接点の爪の先端部の表面状態を示す写真。 【図6】 第10実施形態により得られる摺動接点を示す斜視図。 【図7】 (a)(b)は、レーザビーム照射前の摺動接点片のブラシの爪の先端部を示す拡大写真。 (c) (d)は、第10実施形態により得られた摺動接点のブラシの爪の先端部を示す拡大写真。 【図8】 摺動接点が用いられた従来の摺動子の一例を示す斜視図。 【符号の説明】 1 摺動接点片の帯板材10' 摺動接点片10 摺動接点11 基部12,12' ブラシ12a,12a' 爪13 切断しろ20 摺動接点21 ベース22 ブラシ22a 爪B レーザビーム フロントページの続き (72)発明者 鈴木 博人 神奈川県平塚市新町2番73号 田中貴金属 工業株式会社平塚工場内Fターム(参考) 5E030 AA20 CC06 CE05 |