X-ray irradiation apparatus and analysis apparatus

申请号 JP2012508093 申请日 2011-03-30 公开(公告)号 JP5550082B2 公开(公告)日 2014-07-16
申请人 独立行政法人物質・材料研究機構; アルバック・ファイ株式会社; 发明人 拡路 山瑞; 啓介 小林; 秀夫 岩井; 小畠  雅明;
摘要
权利要求
  • 試料を支持するステージと、
    電子ビームを照射する電子銃と、
    前記電子ビームの照射により第1の波長を有する第1のX線を発生させる第1のアノード体と、前記電子ビームの照射により前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2のX線を発生させる第2のアノード体と、前記第1のアノード体および前記第2のアノード体を支持する支持体とを有するアノードと、
    前記第1の波長に適合した回折特性を有し、前記ステージに支持された前記試料上の焦点位置に前記第1のX線を集光する第1のX線反射鏡と、
    前記第2の波長に適合した回折特性を有し、前記焦点位置に前記第2のX線を集光する第2のX線反射鏡と、
    前記第1のアノード体に前記電子ビームを照射する第1の状態と、前記第2のアノード体に前記電子ビームを照射する第2の状態とを選択的に切り替えるコントローラと
    を具備する X線照射装置。
  • 請求項1に記載のX線照射装置であって、
    前記第1のアノード体が前記電子ビームの照射を受ける第1の位置と、前記第2のアノード体が前記電子ビーム照射を受ける第2の位置との間で前記支持体を移動させることが可能な第1の移動機構をさらに具備し、
    前記コントローラは、前記第1の状態のときに前記支持体が前記第1の位置へ移動するように前記第1の移動機構を制御し、前記第2の状態のときに前記支持体が前記第2の位置へ移動するように前記第1の移動機構を制御する
    X線照射装置。
  • 請求項2に記載のX線照射装置であって、
    前記第1のX線反射鏡は、前記アノードに対する前記電子ビームの照射位置と、前記焦点位置とを通る第1のローランド円周上に配置された第1の鏡面を有し、
    前記第2のX線反射鏡は、前記照射位置と前記焦点位置とを通る第2のローランド円周上に配置された第2の鏡面を有する
    X線照射装置。
  • 請求項1に記載のX線照射装置であって、
    前記電子銃は、前記電子ビームの照射方向を切り替えることが可能な偏向器を有し、
    前記コントローラは、前記第1の状態のときに前記電子ビームが前記第1のアノード体へ照射されるように前記偏向器を制御し、前記第2の状態のときに前記電子ビームが前記第2のアノード体へ照射されるように前記偏向器を制御する
    X線照射装置。
  • 請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線照射装置であって、
    前記第1のX線反射鏡を前記第2のX線反射鏡に対して相対移動させることが可能な第2の移動機構をさらに具備し、
    前記コントローラは、前記第1の状態のときに前記第1のX線の集光が可能な位置に前記第1のX線反射鏡が移動するように前記第2の移動機構を制御し、前記第2の状態のときに前記第2のX線反射鏡による前記第2のX線の集光作用を阻害しない位置に前記第1のX線反射鏡が移動するように前記第2の移動機構を制御する
    X線照射装置。
  • 請求項1から5のいずれかに記載のX線照射装置と、これからのX線の照射により試料から放出されるエネルギーを検出して、前記試料を分析する分析器とを有する分析装置であって、前記X線照射装置の焦点位置を試料設置位置としてあることを特徴とする分析装置。
  • 請求項6に記載の分析装置において、前記分析器は、前記試料から放出される光電子の運動エネルギーの検出によるものであることを特徴とする分析装置。
  • 说明书全文

    本発明は、X線発生機構から発せられたX線を集光機構により所定の焦点位置に集光するX線照射装置及びこれを備えた分析装置に関する。

    表面分析法のひとつにX線光電子分光(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)が知られている。
    XPSは、X線の照射により試料表面から放出された光電子の運動エネルギーを分析することにより、試料中に存在する元素及び化学結合状態に関する情報を得ることができる。 例えば特許文献1および非特許文献1には、集束された電子ビームを生成するための電子銃と、集束された電子ビームが入射されることでX線を生成する陽極と、陽極で生成したX線を試料表面上に集束させる集束手段と、X線の照射により試料表面から放出される光電子エネルギーを分析する分析器手段とを備えた電子分光装置が記載されている。

    従来のこの種X線分析装置では、試料や分析目的により適正なエネルギーのX線を照射することが望まれていた。 例えば特許文献2および非特許文献2には、一つの装置によるエネルギーの異なる複数のX線を選択可能な分光器手段を備えたX線分光装置およびX線分析装置が記載されているが、一つの装置による広範なエネルギー調整を行い、X線を試料表面上に集束させることは不可能とされていた。

    また、X線のエネルギーによっては、脱出の異なる光電子のスペクトルの解析から非破壊で深さ方向の分析を行うことも可能であることが理論的には知られているが、現状のX線分析装置では、試料内部での光電子の散乱のために検出深さはせいぜい数nm程度に限られ、実現不可能な理論であるとされていた。

    特開平7−325052号公報

    特開2001−133421号公報

    Masaaki Kobata et al, " Development of the Hard-X-ray Angle Resolved X-ray Photoemission Spectrometer for Laboratory Use ", ANALYTICAL SCIENCES FEBRUARY 2010, VOL.26, pp.227-232 (2010) 高計数率・高分解能な蛍光X線分析装置(アワーズテック株式会社)、http://business.atengineer.com/ourstex/product3.htm JA Berden: " X-Ray Wavelengths ", Review of Modern Physics, Vol.39, No.1, pp.78-124 (1967)

    本発明は、このような実情に鑑み、X線の広範なエネルギー調整が可能なX線照射装置とそれを用いた分析装置を提供することを目的とする。

    発明1のX線照射装置は、X線発生機構から発せられたX線を集光機構により所定の焦点位置に集光するX線照射装置であって、前記X線発生機構は、波長の異なる複数種のX線を発生させる構成を具備し、前記集光機構は、前記X線発生機構により発生させたX線の各々の波長に適合した回折特性を有する集光体により、共通の焦点位置へ集光する構成を具備することを特徴とする。
    発明2は、発明1のX線照射装置において、集光体は、その回折特性に適合するX線の発生位置と、前記焦点位置とを通過点とするローランド円の直径に等しい曲率半径の鏡面が前記ローランド円上に配置されたX線反射鏡であることを特徴とする。
    発明3は、発明2のX線照射装置において、発生するX線の波長毎に前記X線反射鏡が設置され、各X線反射鏡は、自らの回折特性に該当しない波長のX線の光路から外れた位置に使用位置が設定されていることを特徴とする。
    発明4は、発明2のX線照射装置において、発生するX線の波長毎に前記X線反射鏡が設置され、自らの回折特性に該当しない波長のX線光路に重複した位置に、使用位置が設定されたX線反射鏡には、非使用時に、前記光路から外れた位置に退避させる退避構造が設けられていることを特徴とする。
    発明5は、発明1から4のいずれかのX線照射装置において、前記X線発生機構は、一定の電子ビームを発射する電子銃と、前記電子ビームの照射により異なる波長のX線を発生する複数のX線源と、前記電子ビームが照射するX線源を選択して、発生するX線の波長を選択する波長選択構造とを具備することを特徴とする。

    発明6の分析装置は、そのX線照射装置が、発明1から5のいずれかのX線照射装置であり、その焦点位置を試料設置位置としてあることを特徴とする分析装置。
    発明7は、発明6の分析装置において、前記分析器は、前記試料から放出される光電子の運動エネルギーの検出によるものであることを特徴とする。

    発明1、2は、X線のエネルギーとその波長には密接な関係を有し、かつ、そのエネルギーを試料に高効率で与えるには、X線の波長に適合した回折特性を有する集光体を用いることにより達成できるとの知見に基づき、波長の異なった複数種のX線を発生させるX線発生機構のみならず、X線の波長それぞれに適合した回折特性を集光機構に保有させたものである。 これにより、X線は、焦点位置において、そのエネルギーが減衰されることなく照射されることとなった。 さらに、波長の異なったX線の全てが共通の焦点位置をもつようにして、波長調整によっても、試料位置を変更する必要がないようにした。
    このことは、表面の分析結果と深さ方向での分析結果とを同一座標上で結合して、3次元的な分析結果を得ることを可能にするものである。

    発明3、4は、このような波長の異なるX線を用いる場合に生じる光路空間の確保に関するものである。
    発明3では、光路が主に縦方向であるとした場合、集光機構は、異なるX線の数だけ、横方向に広がった大きなものとなるが、発明4のような操作は不要となる。
    一方、発明4では、横方向の広がりがほとんどないコンパクトな集光機構とすることができるが、波長を変更するときに、集光体を移動する操作が必要となる。
    しかし、この操作は、自動制御により波長変更とともに行うことが可能であるから、実質的には操作上に煩わしさは解消できるものである。

    発明5は、X線の波長変更の為の具体的な適例を示すものである。
    発明5では、電子ビームによる励起により特定の波長のX線を発生するX線源を複数用いて、X線の波長を、電子ビームを照射するX線源によって設定できるようにしたものである。 このようにすることで、X線の波長はダイナミックに変更することが可能であり、試料の材質の違いや分析の目的の違い等に広範に適用できるようになる。

    発明6、7は、本発明のX線照射装置の効果を有効に生かした分析装置であり、上記各X線照射装置の利点を有するのみならず、表面と深さの双方における分析結果を互いに関連付けて得ることができ、3次元的なX線分析結果を得ることも可能なものである。

    実施例1に係る分析装置の概略構成図である。

    図1の分析装置の一動作例を示す、当該装置の概略構成図である。

    図1の分析装置の他の動作例を示す、当該装置の概略構成図である。

    図1の分析装置で用いられるX線照射装置の概略斜視図である。

    実施例1において取得される光電子スペクトルの一例を示す図である。

    実施例2に係る分析装置の概略構成図である。

    図6の分析装置の一動作例を示す、当該装置の概略構成図である。

    実施例3に係る分析装置の概略構成図である。

    図8の分析装置の動作例を示す、当該装置の概略構成図である。

    実施例4に係る分析装置の概略構成図である。

    図10の分析装置の動作例を示す、当該装置の概略構成図である。

    本発明の他の実施形態に係るX線照射装置を示す概略斜視図である。

    本発明の他の実施形態に係る分析装置の概略構成図である。

    本発明のX線照射装置は、X線発生機構から発せられたX線を集光機構により所定の焦点位置に集光するX線照射装置であって、前記X線発生機構は、波長の異なる複数種のX線を発生させる構成を具備し、前記集光機構は、前記X線発生機構により発生させたX線の各々の波長に適合した回折特性を有する集光体により、共通の焦点位置へ集光する構成を具備する。
    実施例では、前記集光体として、その回折特性に適合するX線の発生位置と、前記焦点位置とを通過点とするローランド円の直径に等しい曲率半径の鏡面が前記ローランド円上に配置されたX線反射鏡を例示したが、本発明は、これに限らず、X線発生機構により発生させられるX線の波長に適合する回折特性を有するものであれば良い。
    なお、回折特性の適合性は、X線の単色化が可能となり、X線の連続スペクトル部分が除去されることで、エネルギー分解能の高い高精度な分析を実現することを意味する。
    また、集光体は、表1に示すように同様なものでも複数の波長のX線に適合する回折特性を有するものがあるので、発生させるX線の波長と集光体の数が同じとは限らず、場合によっては、一つの集光体により集光機構を構成することが可能である。

    前記X線発生機構の例としては、一定の電子ビームを発射する電子銃と、前記電子ビームの照射により異なる波長のX線を発生する複数のX線源と、前記電子ビームが照射するX線源を選択して、発生するX線の波長を選択する波長選択構造とを具備するものを例示した。
    また、そのX線源としては、表1に示すものが一般に知られており、この実施例においては、表1のX線源を複数選択して用いることを前提としている。

    下記実施例の他、電子ビームの照射電圧により異なる波長のX線を発生するX線源が用いられてもよい。 X線源のアノード材は複数の純物質アノードだけでなく単数の合金アノード、例えば、80at%Al/20at%等のCuAl合金が用意されてもよい。 この場合、電子ビームの照射電圧が9kV未満のときはAlKα線を発生させることができ、電子ビームの照射電圧が9kVを超えるときはCuKα線とAlKα線を発生させることができる。 後者の場合、CuKα線に適合した回折特性を持つ集光体を用いることで、CuKα線のみ選択できる。
    その理由として、AlKα線とCuKα線それぞれのエネルギーは約1.49keV、8.05keVであり、CuKα線は電子ビームの照射電圧がCuK殻電子の束縛エネルギー(8.98keV)以上すなわち9kV以上でないと発生しないことが挙げられる。 したがって、電子ビームの照射電圧9kVを閾値としてAlKα線またはCuKα線とAlKα線の発生を選択することができる。 また、ここで使用する複数のアノード材においては、AlとCuのように両者のX線のエネルギーが大きく異なる組み合わせを選択するのがよい。
    上述した理由から、単数の合金アノードを用意し、電子ビームの照射電圧に応じてKαX線を選択的に発生させることで、アノード材の適切な位置に電子ビームを照射するための電子銃の移動量と、アノード材の個数をできるだけ少なくすることができる。
    さらに、電子ビームの照射電圧は、適切なX線強度を得るために、それぞれのアノード材から発生するX線のエネルギーの5倍以上であるとよい。
    なお、各種特性X線の波長に適合した回折特性を有する分光結晶(種類、結晶面の面指数および格子定数)と回折角(2θ)との関係については、非特許文献3に記載され公知であり、この公知の知見を本発明においても用いることができる。

    下記実施例では分析装置として、X線の試料への照射により前記試料から放出される光電子の運動エネルギーの検出によるものを例示したが、これ以外のX線を励起線とする表面分析装置、例えば、蛍光X線分析装置(XRF:X-ray fluorescence analysis)、あるいは光電子顕微鏡(PEEM:Photo-Emission Electron Microscope)に適用することができる。

    以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
    [実施例1]

    図1は、本実施例に係る分析装置を示す概略構成図である。 本実施例では、分析装置として、X線光電子分光装置(XPS装置)を例に挙げて説明する。 図2及び図3は、上記分析装置の動作例を示す図1と同様な概略図である。

    本実施例の分析装置1は、チャンバ10と、X線照射装置101と、ステージ14と、分析器15と、コントローラ20とを有する。

    チャンバ10は、真空バルブVを介して真空ポンプPに接続されており、内部が所定の圧(例えば、10 −7 Pa台)に排気及び維持されることが可能である。

    X線照射装置101は、電子銃11と、アノード12と、第1の集光体13aと、第2の集光体13bとを有する。

    電子銃11は、チャンバ10の内部に設置され、アノード12に電子ビーム(e)を照射する。 電子銃11は、電子を発生する電子源と、発生した電子を集束し所定のビーム径に調整可能な電子レンズとを有する。 電子源は、熱陰極でもよいし冷陰極でもよい。 電子レンズは電界式でもよいし磁界式でもよい。 また、電子銃11は、電子ビームを偏向可能な偏向器を有する。 電子銃11による電子ビームの生成、集束及び偏向の各動作は、コントローラ20によって制御される。

    アノード12は、第1のアノード体12aと、第2のアノード体12bと、第1及び第2のアノード体12a、12bを支持する支持体12cとを有する。 第1及び第2のアノード体12a、12bはそれぞれ異種の金属材料で構成されており、電子ビームの照射を受けることでそれぞれ固有の波長を有するX線(特性X線)を発生するX線源として機能する。 支持体12cは、銀(Ag)や銅(Cu)などの熱伝導性に優れた金属材料で構成されており、内部には冷却が循環する冷却水路が形成されている。

    本実施例では、第1のアノード体12aとしてAlが用いられ、第2のアノード体12bとしてCrが用いられる。 第1のアノード体12aは、電子銃11から電子ビームの照射を受けることで、第1のX線(x1)としてAlKα線(波長:8.34Å、エネルギー:1.49keV)を発生する。 第2のアノード体12bは、電子銃11から電子ビームの照射を受けることで、第2のX線(x2)としてCrKα線(波長:2.29Å、エネルギー:5.41keV)を発生する。 電子銃11は、第1のアノード体12aに電子ビームを照射する状態(第1の状態)と、第2のアノード体12bに電子ビームを照射する状態(第2の状態)とを有し、電子ビームの照射条件は、各状態において独立して制御される。

    支持体12cは、第1の移動機構21によって電子銃11に対する相対位置が可変に構成されている。 第1の移動機構21は、チャンバ10の外面に設置されており、図示しない真空シールを介してチャンバ10を貫通する駆動ロッド21aを有する。 駆動ロッド21aは支持体12cと連結されている。 第1の移動機構21は、シリンダ装置、ボールネジユニット、サーボモータ等によって構成され、駆動ロッド21aを伸縮させることで支持体12cを水平方向に移動させる。 第1の移動機構21の動作は、コントローラ20によって制御される。

    本実施例では、電子銃11による電子ビームの照射範囲は一定の範囲に固定されており、当該電子ビームの照射範囲に第1のアノード体12a又は第2のアノード体12bが位置するように、支持体12cが移動される。 すなわち、第1の移動機構21は、図2に示すように第1のX線の発生時、第1のアノード体12aが電子ビームの照射を受ける位置(第1の位置)へ支持体12cを移動させる。 また、第1の移動機構21は、図3に示すように第2のX線の発生時、第2のアノード体12bが電子ビームの照射を受ける位置(第2の位置)へ支持体12cを移動させる。

    なお図示せずとも、支持体12cは、チャンバ10の内部に設置された基台に沿って移動される。 また、第1の移動機構21は、駆動ロッド21aの伸縮動作によって支持体12cを移動させる構成に限られない。 例えば、支持体12cは、上記基台の内部に設置されたギヤ機構によって移動可能に構成されてもよい。 これら電子銃11、アノード12及び移動機構21は、本発明に係る「X線発生機構」を構成する。

    第1及び第2の集光体13a、13bは本発明に係る「集光機構」を構成し、それぞれ、チャンバ10の内部に配置されている。 第1の集光体13aは、第1のアノード体12aで発生した第1のX線(AlKα線)をステージ14上の試料Sの表面に集光させるためのものである。 一方、第2の集光体13bは、第2のアノード体12bで発生した第2のX線(CrKα線)をステージ14上の試料Sの表面に集光させるためのものである。

    第1の集光体13aは、第1のX線(AlKα)が入射する第1の鏡面131を有し、第2の集光体13bは、第2のX線(CrKα)が入射する第2の鏡面132を有する。 これら鏡面131、132は、アノード体12a、12bから放出されたX線を試料Sに向けて反射することで試料Sの表面上の微小領域にX線を集光する凹面反射鏡を形成する。 これにより、試料Sの微細領域の表面分析が可能となる。 なお、試料S上におけるX線のスポット径は、電子銃11から出射される電子ビームのビーム径や集光体を構成する分光結晶の精度等に依存し、例えば直径5μm〜200μmとされる。

    また、各集光体13a、13bは、入射されたX線を単色化する分光結晶(モノクロメータ)で構成されている。 分光結晶は、ブラッグの反射条件を満たす所定波長のX線のみを選択的に反射する機能を有する。 本実施例では、各集光体13a、13bは、入射X線から連続スペクトル部分を除去し、所望の特性X線(AlKα線、CrKα線)のみをそれぞれ選択的に反射する。 これにより、分析器15において、エネルギ分解能の高い高精度な表面分析を実現することが可能となる。

    集光体13a、13bを構成する分光結晶としては、対象とするX線波長に対応する格子定数を有する材料が用いられる。 本実施例では、第1のX線(AlKα線)を集光する第1の集光体13aには、水晶が用いられる。 また、第2のX線(CrKα線)を集光する第2の集光体13bには、Ge(ゲルマニウム)結晶が用いられる。

    アノード体12a、12b及びこれらから励起されるX線は、表1に記載された、あるいは表1に記載を超えた範囲で適宜選定することができる。 集光体13a、13bは、選定されたX線の波長に応じて適宜選定することができる。 集光体13a、13bは、上記分光結晶で構成される場合に限られず、回折格子や光学多層膜で構成されてもよい。

    第1及び第2の集光体13a、13bは、それぞれ共通の焦点位置をもつように真空チャンバ10内に配置される。 これにより、試料S上の同一箇所に異なる波長のX線を照射することができる。 このような機能を得るために、各集光体の鏡面131、132は、アノード12と上記焦点位置とをそれぞれ通る複数の異なるローランド円周上に配置されている。

    図4は、アノード12と、試料S(ステージ14)と、第1及び第2の集光体13a、13bとの相対位置関係を説明するX線照射装置101の概略斜視図である。 図4に示すように、第1の集光体13aは、その回折特性に適合するX線の発生位置と、試料S上の焦点位置とを通過点とするローランド円(第1のローランド円)C1の直径に等しい曲率半径の鏡面131を有し、その鏡面131が第1のローランド円C1上に配置される。 一方、第2の集光体13bは、その回折特性に適合するX線の発生位置と、試料S上の焦点位置とを通過点とするローランド円(第2のローランド円)C2の直径に等しい曲率半径の鏡面132を有し、その鏡面132が第2のローランド円C2上に配置される。 これにより、焦点位置へ効率よく各波長のX線を集光することができる。 また、各集光面131、132は回転楕円面形状に形成されることで、焦点位置におけるX線の収差を低減することができる。 収差は回転楕円面形状より大きいが、各集光体13a、13bの鏡面131、132はトロイダル面形状でもよい。



    第1及び第2の集光体13a、13bは、各アノード体12a、12bから出射されるX線が各集光体の鏡面131、132に対して垂直に近い入射角で入射する位置にそれぞれ配置されることで、立体角またはエタンデュが大きく取れ、試料S上の焦点位置へ集光されるX線の高フラックス化を図ることができる。

    次に、ステージ14は、試料Sをその表面を上向きにして支持する支持台として構成されている。 ステージ14は、試料Sをチャンバ10の内部と外部との間で搬送するための搬送機構、試料Sをアース電位に維持する接地機構等を備えていてもよい。

    分析器15は、X線(AlKα線、CrKα線)の照射を受けることでステージ14上の試料Sの表面から放出された光電子(p)を分光する。 分析器15は、光電子の運動エネルギーを分光する分析器本体151と、分析器本体151へ光電子を導くインプットレンズ152と、分析器本体151に分光された光電子を検出する検出器153とを有する。

    分析器本体151は静電的に光電子を分光するための複数の電極を有し、これら電極間に印加される電圧はコントローラ20によって制御される。 インプットレンズ152は多段の電極ユニットを有し、これら電極に対する印加電圧もまたコントローラ20によって制御される。 検出器153は例えば電子増倍管を含み、その出力がコントローラ20へ供給される。

    コントローラ20は、例えばコンピュータで構成されており、電子銃11、第1の移動機構21及び分析器15の動作を制御する。 コントローラ20は、試料Sの表面分析を所定のアルゴリズムに基づいて実行し、その分析結果を図示しないディスプレイに表示し、あるいは、所定の記憶部に記憶する。

    なお、本実施例の分析装置1は、試料Sの表面を除電するための電子照射源17とを有する。 試料Sの表面が絶縁材料で構成されている場合、光電子の放出により当該表面が正にチャージアップする場合がある。 これを防止するため、電子照射源17は、試料Sに低速の電子を照射する。 電子照射源17の動作は、コントローラ20によって制御される。

    本実施例の分析装置1は以上のように構成される。 次に、この分析装置1の動作について説明する。

    本実施例では、第1のX線(AlKα線)を用いた表面分析と、第2のX線(CrKα線)を用いた表面分析は、それぞれ独立して実施される。

    まず、第1のX線(Al−Kα線)を用いた表面分析について説明する。 図2は、第1のX線を用いた試料Sの表面分析の様子を示している。 コントローラ20は、第1の移動機構21を制御することで、第1のアノード(Alアノード)12aが電子ビームの照射を受ける位置(第1の位置)に支持体12cを移動させる。

    電子銃11は、第1のアノード体12aへ電子ビーム(e)を照射することで、第1のアノード体12aから第1のX線(x1:AlKα線)を発生させる。 第1のX線は、第1の集光体13aに入射し、鏡面131によってステージ14上の試料Sの表面に向けて反射される。 第1の集光体13aは上述した凹面形状を有し、かつ所定の分光結晶で形成されているため、集光体13aで反射された第1のX線は、単色化されて試料Sの表面上に集光される。

    試料Sは、第1のX線が照射されることで、当該第1のX線の有するエネルギーで励起された光電子(p1)を放出する。 放出された光電子は、インプットレンズ152を介して分析器本体151へ導かれ、分光された後、検出器153で検出される。 コントローラ20は、分析器本体151及びインプットレンズ152への入力電圧を所定範囲内で掃引(スウィープ)することで、光電子強度のエネルギー分布を取得する。

    次に、第2のX線(CrKα線)を用いた表面分析について説明する。 図3は、第2のX線を用いた試料Sの表面分析の様子を示している。 コントローラ20は、第1の移動機構21を制御することで、第2のアノード(Crアノード)12bが電子ビームの照射を受ける位置(第2の位置)に支持体12cを移動させる。

    電子銃11は、第2のアノード体12bへ電子ビーム(e)を照射することで、第2のアノード体12bから第2のX線(x2:CrKα線)を発生させる。 第2のX線は、第2の集光体13bに入射し、鏡面132によってステージ14上の試料Sの表面に向けて反射される。 第2の集光体13bは上述した凹面形状を有し、かつ所定の分光結晶で形成されているため、集光体13bで反射された第2のX線は、単色化されて試料Sの表面上に集光される。

    試料Sは、第2のX線が照射されることで、当該第2のX線の有するエネルギーで励起された光電子(p2)を放出する。 放出された光電子は、インプットレンズ152を介して分析器本体151へ導かれ、分光された後、検出器153で検出される。 コントローラ20は、分析器本体151及びインプットレンズ152への入力電圧を所定範囲内で掃引(スウィープ)することで、光電子強度のエネルギー分布を取得する。

    上述のように本実施例においては、試料Sの同一の位置に波長の異なる第1及び第2のX線を用いて表面分析を行うようにしている。 各波長のX線はそれぞれ異なるエネルギーを有するため、X線の種類によって試料Sの表面から放出される光電子の運動エネルギーが異なる。 したがって、例えば、第1のX線を用いて取得される光電子強度のエネルギー分布と第2のX線を用いて取得される光電子強度のエネルギー分布との差分をとることで、第1のX線では取得することができない深度の情報を取得することが可能となる。

    図5は、表面に25nmの厚みでSiO 膜が形成されたSi基板にCrKα線を照射することで得られた光電子の分光スペクトルを示す。 3564.5eV付近にSiO に由来するピークが認められ、3569eV付近にSi基板に由来するピークが認められる。 図示は省略するが、線源にAlKαを用いた場合、下地のSi基板に由来するピークを認めることはできなかった。

    以上のように、本実施例によれば、X線の広範なエネルギー調整が可能となり、第1のX線と第2のX線とで異なる深さレベルの組成分析あるいは化学結合状態の分析が行えるようになる。 これにより、試料Sの表面を破壊することなく、異なる深度の元素及び化学結合状態に関する情報を取得することが可能となる。
    [実施例2]

    図6及び図7は、本実施例に係る分析装置を示している。 なお、図において上述の実施例1と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。

    上述の実施例1では、第1の移動機構21によりアノード12を電子銃11に対して相対移動させることで電子ビーム(e)が第1のアノード体12aへ照射される状態と、電子ビーム(e)が第2のアノード体12bに照射される状態とを切り替えた。 本実施例では、アノード12の位置を固定とし、電子銃11で電子ビーム(e)の照射方向を切り替えることで、第1のX線(x1)と第2のX線(x2)とを選択的に発生させることが可能なX線発生機構を有するX線照射装置102を備える。

    本実施例において、電子銃11は、偏向器11aを有する。 偏向器11aはコントローラ20によって制御され、図6に示すように第1のアノード体12aへ電子ビーム(e)を照射する状態と、図7に示すように第2のアノード体12bへ電子ビーム(e)を照射する状態とが選択的に切り替えられる。 これにより、第1のX線を用いた試料Sの表面分析と、第2のX線を用いた試料Sの表面分析とを、電子銃11による電子ビームの偏向操作によって容易に切り替えることが可能となる。 ここで、コントローラ20は、発生するX線の波長を選択する、本発明に係る「波長選択構造」を構成する。

    本実施例によれば、上述の実施例1と同様な作用効果をえることができる。 特に本実施例によれば、アノード12の移動機構が不要となるので、装置構成および制御の簡素化を図ることができる。
    [実施例3]

    図8及び図9は、本実施例に係る分析装置を示している。 なお、図において上述の実施例1及び2と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。

    上述の各実施例では、第1及び第2の集光体13a、13bを所定の固定位置に配置した。 しかしながら、集光体13a、13bによる各々のX線の集光作用が相互に干渉することなく、アノード体12a、12bと、試料Sと、集光体13a、13bとを上述したような幾何学的配置関係となるように配置することが、チャンバ10の形状、大きさ等の制約によって不可能な場合がある。 このため、本実施例に係る分析装置3は、第1の集光体13aと第2の集光体13bとの間の相対位置を変更するための第2の移動機構22を有する。

    本実施例では、第1の集光体13aは、第2の集光体13bよりもアノード12に近い位置に配置されている。 そこで本実施例では、第1の集光体13aを第2の集光体13bに対して相対移動させることで、これら2つの集光体13a、13bの間の相対位置を変更する。 第2の移動機構22は、本発明に係る「退避構造」を構成する。 また、これら集光体13a、13bおよび第2の移動機構22は、本発明に係る「集光機構」を構成し、当該集光機構と、電子銃11と、アノード12とにより、本実施例に係るX線照射装置103が構成される。

    第2の移動機構22は、チャンバ10の外面に設置されており、図示しない真空シールを介してチャンバ10を貫通する駆動ロッド22aを有する。 駆動ロッド22aは第1の集光体13aと連結されている。 第2の移動機構22は、シリンダ装置、ボールネジユニット、サーボモータ等によって構成され、駆動ロッド22aを伸縮させることで第1の集光体13aを水平方向に移動させる。 第2の移動機構22の動作は、コントローラ20によって制御される。

    本実施例において、第2の移動機構22は、図8に示すように第1のX線の発生時、第1のローランド円C1(図4)上に第1の集光体13aを配置させる。 一方、図9に示すように第2のX線の発生時、第2の移動機構22は、第2のローランド円C2(図4)上に配置された第2の集光体13bによる第2のX線の集光作用を阻害しない位置に、第1の集光体13aを水平移動させる。

    図示せずとも、第1の集光体13aは、チャンバ10の内部に設置されたガイド部(図示略)に沿って移動される。 また、第2の移動機構22は、駆動ロッド22aの伸縮動作によって第1の集光体13aを移動させる構成に限られない。

    なお、上述の例に代えて、第1の集光体13aと第2の集光体13bとをいずれも移動可能に構成し、第1のX線の発生時は第1の集光体13aを第1のローランド円C1上に配置し、第2のX線の発生時は第2の集光体13bを第2のローランド円C2上に配置してもよい。

    本実施例によっても、上述の実施例1と同様の作用効果を得ることができる。 本実施例によれば、第1及び第2の集光体13a、13bの相対位置を変更することができるため、チャンバ10の小型化を図ることができるとともに、チャンバ10内における各構成部材の配置レイアウトの自由度を高めることができる。 また、本実施例のX線照射装置103は、電子銃11に電子ビームの偏向操作が可能な偏向器11aを有しているので、第1の集光体13aの移動誤差に起因する焦点位置の変動を、アノード体12aに対する電子ビームの照射位置の変更によって解消することができる。
    [実施例4]

    図10及び図11は、本実施例に係る分析装置を示している。 なお、図において上述の実施例1及び2と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。

    本実施例に係る分析装置4は、上述の実施例1と実施例3との組み合わせに係るものであり、電子銃11に対してアノード12を相対移動させることが可能な第1の移動機構21と、第1及び第2の集光体13a、13b間の相対位置を変更することが可能な第2の移動機構22とを有するX線照射装置104を含む。

    図10は、第1のX線を用いた試料Sの表面分析の様子を示している。 コントローラ20は、第1の移動機構21を制御することで、第1のアノード(Alアノード)12aが電子ビームの照射を受ける位置(第1の位置)に支持体12cを移動させる。 また、コントローラ20は、第2の移動機構22を制御することで、第1の集光体13a(鏡面131)を第1のローランド円C1(図4)上に配置する。 これにより、第1のX線を用いた試料Sの表面分析が実施される。

    図11は、第2のX線を用いた試料Sの表面分析の様子を示している。 コントローラ20は、第1の移動機構21を制御することで、第2のアノード(Crアノード)12bが電子ビームの照射を受ける位置(第2の位置)に支持体12cを移動させる。 また、コントローラ20は、第2の移動機構22を制御することで、第2のローランド円C2(図4)上に配置された第2の集光体13bによる第2のX線の集光作用を阻害しない位置に、第1の集光体13aを水平移動させる。 これにより、第2のX線を用いた試料Sの表面分析が実施される。

    以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。

    例えば以上の実施形態では、第1のX線としてAlKα線、第2のX線としてCrKα線をそれぞれ用いたが、要求される分析深度や試料の種類等に応じて、適用されるX線の種類、陽極は適宜変更することが可能である。

    また、以上の実施形態では、X線源として2つのアノード体12a、12bを用いたが、X線源の数はこれに限られず、3つ以上あってもよい。 この場合、集光体は、アノード体の数及び発生するX線の種類等に応じて適宜増設されればよい。 図12は、3つの集光体13a、13b、13cを有する集光機構を備えたX線照射装置105の概略構成を示している。 第1の集光体13aは、アノード12及び試料Sを通る第1のローランド円C1上に配置される。 第2の集光体13bは、アノード12及び試料Sを通る第2のローランド円C2上に配置される。 第3の集光体13cは、アノード12及び試料Sを通る第3のローランド円C3上に配置される。 これにより、試料S上の共通の焦点位置へ波長の異なる3種のX線をそれぞれ集光することが可能となる。

    さらに、以上の実施形態では、XPS装置に本発明を適用した例を説明したが、これに限られず、X線を線源とする各種の分析装置に本発明は適用可能である。 例えば図13に蛍光X線分析装置の概略構成を示す。 図示する蛍光X線分析装置6は、X線照射装置101と、光検出器51とを有する。 光検出器51は、波長の異なる各X線を照射されることで試料Sから発生する特性X線(蛍光X線)(xf)を測定する。 また、これ以外にも、光検出器51の代わりに光電子顕微鏡を用いた光電子顕微鏡にも本発明は適用可能である。

    1、2、3、4…分析装置(XPS装置)
    10…チャンバ 11…電子銃 11a…偏向器 12…アノード 12a、12b…アノード体 12c…支持体 13a…第1の集光体 13b…第2の集光体 13c…第3の集光体 14…ステージ 15…分析器 17…電子照射源 20…コントローラ 21…第1の移動機構 22…第2の移動機構 101、102、103、104、105…X線照射装置 131、132…鏡面 S…試料 e…電子ビーム p、p1、p2…光電子 x1、x2…X線

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