インシュレーター

申请号 JP2016071489 申请日 2016-07-22 公开(公告)号 JPWO2018016063A1 公开(公告)日 2018-07-26
申请人 ジークレフ音響株式会社; 发明人 永田 良二;
摘要 床面に当接する下部構造部材(8)により、ピアノ(100)が載置される上部構造部材(7)を、片持バネ部材(9)および第一ワイヤ(10)を介して吊り下げるとともに、第二ワイヤ(11)により上部構造部材(7)と下部構造部材(8)とを 水 平方向に連結する構成とすることで、ピアノが発する本来の響きは、第一ワイヤ(10)の上端を 支点 とする振り子運動の自由振動により保持するように機能しその響きはより豊かになり床面への伝達も抑制され、また、演奏者による鍵盤(3)およびペダル(6)の操作に起因する振動は、片持バネ部材(9)の弾性および第二ワイヤ(11)のいずれかに働く張 力 により抑制され、演奏者がその操作に違和感を感じることが無いインシュレーターが実現する。
权利要求

振動発生物体と第一平面との間に介在し前記振動発生物体と前記第一平面との間の振動伝達を抑制するインシュレーターであって、 前記第一平面に当接する下部構造部材、屈曲させた板材からなり一端が前記下部構造部材に取り付けられた片持バネ部材、前記片持バネ部材の他端にその上端が取り付けられた第一ワイヤ、その上面に前記振動発生物体が載置され、前記第一ワイヤの下端に取り付けられて前記片持バネ部材および前記第一ワイヤを介して前記下部構造部材から吊り下げられた上部構造部材、および前記上部構造部材と前記下部構造部材とを平方向に連結し、前記上部構造部材と前記下部構造部材のそれぞれの中央位置に設定された荷重点を軸中心とする周方向に互いに等間隔で放射状に配置された3本以上の第二ワイヤを備えたインシュレーター。前記振動発生物体は、人間の可聴周波数の下限値以上の周波数を有する第一振動エネルギー成分と前記下限値未満の周波数を有する第二振動エネルギー成分とを発生し、 前記第一振動エネルギー成分に対しては、前記第一ワイヤの上端を支点とする振り子運動の自由振動により保持するように機能し、前記第二振動エネルギー成分の垂直方向成分に対しては前記片持バネ部材の弾性により抑制するように機能し、前記第二振動エネルギー成分の水平方向成分に対しては、前記第二ワイヤのいずれかに働く張により抑制するように機能する請求項1記載のインシュレーター。前記振動発生物体は複数の脚柱を有し、前記インシュレーターは前記脚柱毎に各1個前記振動発生物体の前記脚柱と前記第一平面である床面との間に設置されるものであって、 前記各インシュレーターにおいて、前記上部構造部材は、前記中央位置に前記脚柱の下端を収納するように上方に開口する第一凹部と前記荷重点を軸中心とする円周上の互いに等間隔の位置に前記片持バネ部材と前記第一ワイヤとを収納するように下方に開口する3個の第二凹部とを形成した上段部材および前記第二凹部毎に設けられ前記第一ワイヤの下端と結合し前記第二凹部を閉塞するように前記上段部材に取り付けられた下段部材からなり、前記下部構造部材は、前記床面に当接する底板部、前記各下段部材に対応する位置に下端が前記底板部に固定された支柱、および前記支柱の上端に固定され前記片持バネ部材の前記一端を固定するバネ台座からなり、前記片持バネ部材および前記第一ワイヤは前記各下段部材に対応して合計3組設けられ、前記第二ワイヤは、前記上部構造部材の前記第一凹部の部位と前記下部構造部材の前記支柱の部位とを連結するようにした請求項2記載のインシュレーター。前記振動発生物体は、鍵盤、響板、ペダルおよび前記脚柱を備えたピアノであり、前記第一振動エネルギー成分は、演奏者による前記鍵盤と前記ペダルとの操作に伴い前記響板を経て生成され前記脚柱更には前記インシュレーターに至る音響に係る振動エネルギー成分であり、前記第二振動エネルギー成分は、前記演奏者による前記鍵盤と前記ペダルとの操作に伴い前記響板を経ることなく前記脚柱更には前記インシュレーターに至る振動エネルギー成分である請求項3記載のインシュレーター。前記振動発生物体を構成する本体とその上部取付部が前記本体に着脱可能に取り付けられその下端が床面に当接する複数の脚柱とを備え、前記インシュレーターは、その上面を前記第一平面とする前記上部取付部と前記本体との間に設置されるとともに前記脚柱に一体に組み込まれるものであって、 前記各インシュレーターにおいて、前記上部構造部材は、前記荷重点を軸中心とする円周上の互いに等間隔の位置に前記片持バネ部材と前記第一ワイヤとを収納するように下方に開口する3個の第二凹部を形成し前記本体に着脱可能に取り付けられる上段部材および前記第二凹部毎に設けられ前記第一ワイヤの下端と結合し前記第二凹部を閉塞するように前記上段部材に取り付けられた下段部材からなり、前記下部構造部材は、前記脚柱の前記上部取付部に取り付けられる底板部、前記各下段部材に対応する位置に下端が前記底板部に固定された支柱、および前記支柱の上端に固定され前記片持バネ部材の前記一端を固定するバネ台座からなり、前記片持バネ部材および前記第一ワイヤは前記各下段部材に対応して合計3組設けられ、前記第二ワイヤは、前記上部構造部材の前記荷重点を軸中心とする円周上の部位と前記下部構造部材の前記支柱の部位とを連結するようにした請求項2記載のインシュレーター。前記本体は、鍵盤、響板およびペダルを備えたピアノ本体であり、前記ピアノ本体と前記脚柱とでピアノを構成し、前記第一振動エネルギー成分は、演奏者による前記鍵盤と前記ペダルとの操作に伴い前記響板を経て生成され前記インシュレーターに至る音響に係る振動エネルギー成分であり、前記第二振動エネルギー成分は、前記演奏者による前記鍵盤と前記ペダルとの操作に伴い前記響板を経ることなく前記インシュレーターに至る振動エネルギー成分である請求項5記載のインシュレーター。前記第一ワイヤおよび前記第二ワイヤは、それぞれ複数本の細線をより合わせたより線である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインシュレーター。

说明书全文

この発明は、例えば、ピアノと床面との間に挿入されるインシュレーターに係り、ピアノの響きを良くするとともに、床面への振動を抑制することを可能とするものである。

本願発明者は、先に、主としてスピーカと床面との間に挿入して使用するインシュレーターを開発し特許を取得した(特許文献1参照)。これは、スピーカを実質的にワイヤで吊り下げるもので、そのワイヤの吊り下げ構造による振り子運動の自由振動を利用したものである。これにより、音響的にはスピーカが実質的に宙に浮いた状態が実現し、床面からの影響を受けず、当該スピーカが持つ本来の響きの再現を可能とするものである。

『WELLFLOAT』は、本願発明者が、先の特許出願と同時に出願し登録された商標で、この商標を付して販売された製品については、例えば、非特許文献1、2等にも示されたように、専門的な分野で非常に高い評価を得ている。

特許第5145310号公報

オーディオアクセサリー2015秋刊158号 (株)音元出版2015/10発行 p.128−129

スピーカブック2016(株)音楽出版社2016/7発行 p.192

ところで、楽器の王者とも言われるピアノは、世界のコンサートホールで使用され多数の聴衆にその素晴らしい響きを提供している。また近年、各家庭への普及も進んでいる。 そして、ピアノという楽器は、その発明された17世紀以来、重量物であるピアノ本体を床面に直接設置して演奏されるという点で現在に至るまで変化はない。

この結果、防音遮音等音響的な対策が十分施されたコンサートホールでの使用ではほとんど問題は無いが、例えば、各家庭での使用では、種々の制約から音響的な対策が不十分で問題となるケースが多い。特に、マンション等では、隣接また上下階との遮音対策が十分でなく騒音に関する苦情も頻発しているのが実情である。 また、グランド型のピアノであっても、一般家庭に設置できる比較的小型のものでは、建屋の制約も重なり、豊かな響きが得られず演奏者等の不満となる場合も多い。

このような現状を考えた場合、我々は先に紹介したインシュレーター、即ち、ワイヤで吊り下げる方式のインシュレーターを使いたいとの誘惑に駆られるが、以下のような深刻な問題点が考えられそのままの適用は不可能である。

即ち、ピアノの場合、演奏者がその鍵盤を打鍵し同時に足でペダルを踏む操作、即ち、演奏の操作を経てピアノの音が発生するものであり、仮に、上述したインシュレーターをそのまま使用してピアノを浮いた状態にすると、この操作によりピアノ自体が揺動し、演奏者はこれらの操作に大きな違和感を感じ、それでなくてもデリケートないわゆるピアノタッチを損なうことになる。

この発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、演奏者にも違和感をほとんど感じさせず、床面への振動を抑制し、更に、響きの豊かさを増すインシュレーターを提供するものである。

この発明に係るインシュレーターは、振動発生物体と第一平面との間に介在し振動発生物体と第一平面との間の振動伝達を抑制するインシュレーターであって、 第一平面に当接する下部構造部材、屈曲させた板材からなり一端が下部構造部材に取り付けられた片持バネ部材、片持バネ部材の他端にその上端が取り付けられた第一ワイヤ、その上面に振動発生物体が載置され、第一ワイヤの下端に取り付けられて片持バネ部材および第一ワイヤを介して下部構造部材から吊り下げられた上部構造部材、および上部構造部材と下部構造部材とを平方向に連結し、上部構造部材と下部構造部材のそれぞれの中央位置に設定された荷重点を軸中心とする周方向に互いに等間隔で放射状に配置された3本以上の第二ワイヤを備えるものである。

以上のように、この発明に係るインシュレーターは、振動発生物体から発生する、周波数が比較的高い振動エネルギー成分に対しては、第一ワイヤの上端を支点とする振り子運動の自由振動により保持するように機能するので、その振動エネルギー成分による響きは豊かになり第一平面への伝達が抑制される。 また、振動発生物体から発生する、周波数が比較的低い振動エネルギー成分のそれぞれ、垂直方向成分に対しては片持バネ部材の弾性により抑制するように機能し、水平方向成分に対しては、第二ワイヤのいずれかに働く張により抑制するように機能するので、周波数が比較的低い振動エネルギー成分による振動発生物体自体の振動が抑制される。

この発明の実施の形態1によるインシュレーター1をピアノに適用した状態を示す図である。

インシュレーター1の全体構成を示す図である。

図2に示す上部構造部材7の背面図である。

図2に示す下部構造部材8の上面図である。

1本の第一ワイヤ10に係る吊り構造部分を説明するための図である。

第二ワイヤ11の取り付け構造を説明するための図である。

この発明の実施の形態2によるインシュレーター1をピアノ自体に組み込んだ状態を示す図である。

実施の形態1. 図1は、この発明の実施の形態1によるインシュレーター1をピアノに適用した状態を示す図で、ここでは、ピアノの脚柱2の下端がよく分かるよう、その外形を破線で示している。 図1は、いわゆるグランド型のピアノ100に適用したもので、通常3本の脚柱2のそれぞれに各1個のインシュレーター1が計3個使用される。

なお、以下では、このグランド型のピアノに適用する場合について説明するが、いわゆるアップライト型のピアノ、チェンバロやハープシコードと呼ばれるいわゆる撥弦楽器、更には電子ピアノなど、鍵盤やペダルを操作して音を発生する種々の楽器にも、脚柱の数は異なってもこの発明を同様に適用でき同等の効果を奏するものである。また、例えば、チェロなど、床面に直接設置されるとともに、演奏者による弓の操作により楽器としての響きを発すると同時に本体に外力が掛かる種類の楽器にも適用することが出来る。

また、この実施の形態1は、本願請求項1にある第一平面を床面ととらえ、この床面とピアノの脚柱2と間にインシュレーター1を設置するものである。従って、現状のピアノ自体に何らの細工を施す必要が無いという利点がある。

ここで、図1を参照してピアノのメカニズムについて簡単に説明する。図の手前に置かれる椅子に座った演奏者が、手の指で鍵盤3を叩くと、その力はテコを組み合わせたアクションといわれる機構を通じてハンマーに伝わり、このハンマーが弦を叩くことで音が発生する。 更に、この弦の振動は駒という部品を通して響板に伝わり、この響板が振動を増幅していわゆるピアノの音として周りの聴き手に感知されるわけである。

この響板で発生し聴き手が感知する音・振動は、人間の可聴周波数の下限値以上の周波数を有するもので、本願では、これを第一振動エネルギー成分と称することにする。 この第一振動エネルギー成分は、直接または反響板4を経て聴き手に達するとともに、その一部は、ピアノのフレーム5および脚柱2を経て床面に至る。 従って、従来のように、数百kgの重量を有するピアノを床面に直に設置する場合は、この第一振動エネルギー成分もその一部が床に吸収されてしまうことになる。

一方、ペダル6は、通常、左右および中央の3つのペダルを備え、演奏者が意図する効果をねらって、音の響きを緩めたり伸ばしたり止めたりするため演奏者が足で踏み込んで操作する。 上述した、演奏者による鍵盤3およびペダル6の操作は、それぞれその本来の目的のために行うものであるが、同時に、ピアノをある方向に揺れ動かそうとする振動成分を引き起こす。

この振動成分の周波数は、非常に低く、それ自体人間のには聞こえず、即ち、人間の可聴周波数の下限値未満の周波数で、本願では、これを第二振動エネルギー成分と称することにする。もっとも、従来のように重量物のピアノを床面に直に設置する場合は、この演奏者による鍵盤3やペダル6の操作ではピアノは全くといってよいほど揺れ動くことなく、演奏者に何らの違和感も与えることはない。

ここで、上述したように、ピアノの響板で発生した第一振動エネルギー成分の床への漏洩分を無くしすべてのエネルギー成分が聴き手に到達することを意図して、我々が既に開発したインシュレーターをそのまま図1に示すように適用したとすると、確かに、発生した第一振動エネルギー成分の損失は防止されピアノの響きがその分豊かになるが、上述した第二振動エネルギー成分、即ち、演奏者による鍵盤3およびペダル6の操作によってピアノ自体が揺れ動き、先に、本願発明が掲げる課題の欄で触れた通り、演奏者は演奏の操作に大きな違和感を感じる結果になる。

本願発明は、我々が先に特許を取得した、ワイヤー吊り下げ構造のインシュレーターをベースに、ピアノ本来の響きを構成する第一振動エネルギー成分を極力損なうことなく保持し、かつ、鍵盤3およびペダル6の操作に起因する第二振動エネルギー成分を極力抑制すべく、種々の試作の結果なし得たものである。

以下、この発明の実施の形態1によるインシュレーター1の構成について詳細に説明する。図2は、インシュレーター1の全体を示し、同図(a)は上面図、同図(b)は側面図、同図(c)は背面図である。 インシュレーター1は、大きくは、上部構造部材7および下部構造部材8、更には、図2では破線での図示も省略し後段の図で説明する片持バネ部材9、第一ワイヤ10および第二ワイヤ11から構成されている。 図3は、上部構造部材7の背面図、図4は、下部構造部材8の上面図である。

上部構造部材7は、その上にピアノ100が裁置されるもので、例えば、30mm厚程度の積層板を図の形状に加工してなる上段部材12と図3に示す下段部材13とからなる。下部構造部材8は、床面に設置され、後段で詳述するように、片持バネ部材9および第一ワイヤ10を介して上部構造部材7を吊り下げるものである。同じく、例えば、15mm厚程度の積層板を図の形状に加工してなる底板部14と図2(b)、図4に示す支柱15および図4に示すバネ台座16とからなる。 なお、図3に示すように、下段部材13には、支柱15を挿通させるための挿通孔20を設けている。

上段部材12の荷重点Gとなる中央位置には、上方に開口し、ピアノの脚柱2の下端を収納する第一凹部17が形成されている。ここでは、加工性を考慮して、積層板を貫通する穴を形成し、図3に示すように、この穴を裏面から閉塞する底板18をねじどめする構造としているが、積層板の穴開け加工をその厚み内に留める有底の構造としてもよい。 更に、上段部材12中央の荷重点Gを軸中心とする円周上の互いに等間隔の位置に、後述する片持バネ部材9および第一ワイヤ10を収納するように下方に開口する第二凹部19を3個形成している。

図4に、一部、バネ台座16に固定された片持バネ部材9およびこの片持バネ部材9に取り付けられた第一ワイヤ10を示しているが、これら吊り構造の機構を拡大して示す図5を参照して詳細に説明する。 図5は、1本の第一ワイヤ10に係る吊り構造部分を示し、従って、1個のインシュレーター1には、この吊り構造が3個設けられている。同図(a)は、その上面図、同図(b)はその側面図である。

図5において、支柱15は、下部構造部材8の底板部14に嵌め込まれ、その固定は、支柱15の内部に形成された雌ねじ(図示せず)に底板部14の裏面から挿入する雄ねじ(図示せず)を螺合することで行う。支柱15は下段部材13に形成された挿通孔20を貫通してその上端にバネ台座16がねじ留めされている。 この例では、同図(b)に示すように、このバネ台座16には、自体を曲げ加工することで、補強壁21および片持バネ部材9の一部を構成するU字状部22を一体に形成している。

L字状部23は、同図(b)に示すように、その水平部がバネ台座16に重ねて支柱15の上端にねじ留めされており、その垂直部の上端がU字状部22に当接している。そして、第一ワイヤ10の上端および下端が、それぞれこのU字状部22の先端近傍および下段部材13に取り付けられている。 U字状部22とL字状部23とで片持バネ部材9を構成し、上部構造部材7の下段部材13そして第一ワイヤ10を介して加わるピアノ100の荷重をスパンdの片持バネで支えるものである。 そして、この片持バネ部材9の弾性により既述した第二振動エネルギー成分、即ち、演奏者による鍵盤3およびペダル6の操作に伴う、人間の可聴周波数の下限値未満の周波数の振動エネルギーの垂直方向成分を抑制するわけである。

次に、第二ワイヤ11の取り付け構造について図6を参照して説明する。図6は、インシュレーター1を上方から見た図で、以上で説明した各部材を適宜透視することで、第二ワイヤ11の取り付け構造を見やすくしたものである。 第二ワイヤ11は、上述した第二振動エネルギー成分の水平方向成分を抑制するため上部構造部材7と下部構造部材8とを水平方向に連結するものである。

具体的には、例えば、図6に示すように、第二ワイヤ11の一端11aは、下部構造部材8に固定された支柱15に取り付けられ、第二ワイヤ11の他端11bは、上部構造部材7の上段部材12に形成された第一凹部17の部位に固定されている。

実は、本願発明を完成する過程で最も苦労し数多くの試作を繰り返したのは、この第二振動エネルギー成分の水平方向成分を抑制するための手段である。 即ち、一部にゴム材を用いて連結するもの、薄いアルミ板を用いて連結するもの、また、一部に間隙を介して連結するもの等を、それぞれ寸法形状を変化させて試作、ピアノとしての音響と演奏者の操作による違和感を検証した。しかし、両者の要求を満足するものは得られなかった。

図6に示す、第二ワイヤ11を用いた連結構造は、それらの試行錯誤の末に得られたもので、後述するように、先に本願発明者が開発した特許文献1によるいわゆる吊り構造によりピアノの響きがより豊かになるとともに床面への伝達が抑制され、従来と同様、操作する演奏者に何ら違和感を与えないものである。

第二ワイヤ11は、具体的には複数本の細線をより合わせたより線で構成され、その両端に圧着端子を取り付け、それぞれの部位に固定する。図6では、その一端11aは、下部構造部材8の支柱15の部位に固定し、その他端11bは、上部構造部材7の第一凹部17の部位、具体的には、上段部材12の第一凹部17周縁部に端子を立てこれに固定している。 第二ワイヤ11の取り付け位置は、必ずしも図6に示した構成に限られるものではないが、種々の実験結果から以下の条件を満たす必要があることが判明している。

即ち、第二ワイヤ11は、上部構造部材7と下部構造部材8とを水平方向に連結するものであって、上部構造部材7と下部構造部材8とのそれぞれの中央位置に設定された荷重点Gを軸中心とする周方向に互いに等間隔で放射状に3本以上配置する。

演奏者による鍵盤3およびペダル6の操作に伴う、既述した第二振動エネルギー成分の水平方向成分は、各インシュレーターには、その水平方向の範囲で任意の向き、例えば、図6にFで示す向きに働くと、少なくとも、以上の条件を具備することにより、この力Fは、いずれか1本または複数本の第二ワイヤ11に働く張力により抑制されることが判明した。 以上のように、任意の方向に力が働く場合を考慮し、第二ワイヤ11は、上記したように、より線で構成している。これにより、特にその端末部が、力の方向に応じて柔軟に曲がり各第二ワイヤ11が確実に張力を分担する。

なお、図6では、上記した条件を満たすものであるが、荷重点Gを通り破線で示す直線から約30度傾斜させて第二ワイヤ11を取り付けている。これは、第二ワイヤ11を図の直線上に配置した場合に比較してピアノの響きが更に改善されるとの試聴結果を考慮して採用したものである。

なお、先の図5に示す第一ワイヤ10は、特許文献1で紹介したものと同様で、同文献で詳細に説明しているので、ここではその概略を示すに留める。第一ワイヤ10は、第二ワイヤ11と同様、複数本の細線をより合わせたより線で構成し、振り子運動の自由振動における固有振動周波数を、例えば、約3.57Hzと設定し、これに応じてワイヤの長さを20mmに設定している。

垂直姿勢で使用する第一ワイヤ10をより線で構成することにより、特にその両端部での水平方向への変形がより確実になされ、振り子運動が、より確実円滑になされるという効果がある。

ところで、ピアノの響板から発生した第一振動エネルギー成分の脚柱2更には床面への伝達機構を考える場合、その周波数が非常に高くかつ多くの周波数成分を含みしかも振幅は極めて微小なることから、伝達量、伝達機構そのものを測定器で把握することは極めて困難と言わざるを得ない。 また、低周波では想定可能な、横方向の振動伝達、縦方向の振動伝達という概念も適用が困難であり、発明者は、主として、人間の聴覚に頼った各種の実験結果から、特に、この第一振動エネルギー成分については、エネルギーの形で把握するのが適当との結論に至った。

具体的には、仮に、片持バネ部材9を不採としたり両持バネにすると、意図する音響効果が得られない、また、第一ワイヤ10をより線で構成することで、音響効果が改善されるという結果を得た。このことから、脚柱2の中を、実際は、非常に複雑な形態で伝達してきた第一振動エネルギー成分が、この第一ワイヤ10および片持バネ部材9の働きで、効率よくそのエネルギーを振り子運動で吸収出来る形、即ち、エネルギーを衰退させることなく保持できる形に変換しているものと推定している。

次に、以上でその構成を説明したインシュレーター1の検証結果について説明する。 先ず、第一の検証は、上記したように、上部構造部材7と下部構造部材8とを第二ワイヤ11により連結拘束した状態においても、先の特許文献1で開発した、吊り下げ構造による振り子運動の自由振動を実現し第一振動エネルギー成分を失うことなく保持し得るか否かという検証である。 本願発明者は、先の特許文献1で紹介しているように、これら音響的な特性把握は、波形分析や周波数分析といった機械的な方法では到底得られないという現実を踏まえ、感度の高い人間の聴覚を利用し、しかも、高度な客観性が得られる検証方法を開発した。

ところで、本願のインシュレーター1は、ピアノに適用するもので、勿論のことながら、最終的にはピアノに適用してその響きを評価したが、先に開発した客観的な検証方法を適用するには、正確に繰り返し再現可能な音源が必要であることから、完成したインシュレーター1をスピーカと床面との間に挿入し、CDによる再生音を音源とする、先に開発したと同様の方法で検証した。 スピーカとしては、その重量がピアノの1脚当たりのそれに近いものを使用し、結果、上部構造部材7と下部構造部材8とが第二ワイヤ11により連結拘束された状態で検証した点が先に開発した検証時の条件と異なっている。

その検証方法の詳細は同文献で詳しく説明しているので、ここでのすべての再録は省略するが、その特徴点を列挙すると以下の通りである、 (1)再生された音を検出するセンサとしては、あくまでも人間の耳を使用し、波形分析や周波数分析といった方法では到底得られない高い検出感度を担保している。 (2)2つの互いに異なるピッチ(音の高さ=音の周波数)の音が同時に発生すると、両者の高さ(周波数)の関係で、人間の耳では、ビート(うなり)が発生したり発生しなかったりする現象が観察される。開発した方法では、一般的に言われる、例えば、音が柔らかい、固い、明るい、暗い、といった主観的な把握ではなく、上記したビートの有り無しの現象に着目し、検証の客観性を高めている。 (3)スピーカを用いた実験との比較を行う標準器として、インシュレーター1の影響が無い、高性能のヘッドフォンを使用することで比較結果の信頼性を確保している。

そして、今回も同じく、互いに異なる調律法で調律されたピアノで演奏録音されたCDを用い、スピーカからの再生音とスピーカを用いずヘッドフォンからの再生音とを人間の耳で聴取し、ビートの有無を判別した。

その結果、第二ワイヤ11を、先の図6等で説明した構成で用いたものでは、特許文献1で得られたと全く同様のデータが得られた。即ち、第二ワイヤ11により上部構造部材7と下部構造部材8とを連結拘束しているにも拘わらず、音響的にはスピーカが宙に浮いてる状態である、換言すると、第一振動エネルギー成分が、第一ワイヤ10と片持バネ部材9を用いた吊り構造の振り子運動の自由振動により保持されていることが実証された。前段でも紹介した、本願発明完成に至る段階で種々模索的に試作した各種方式のものでは、いずれも満足な結果が得られなかった。

上部構造部材7と下部構造部材8とを繋ぐ第二ワイヤ11で水平方向を拘束する、これはワイヤの張力によって拘束状態を作り出すもので、この点が他の方策と異なり所望の結果が得られたものと考えられる。そして、図6で説明したように、インシュレーター1において、第二振動エネルギー成分の水平方向の力Fは、任意の方向に加わりうることから、その力Fを、常に、ワイヤに働く張力で抑制するため、第二ワイヤ11は、周方向に互いに等間隔で放射状に3本以上配置する必要がある訳である。

次に、第二の検証は、演奏者による、鍵盤3およびペダル6の操作に起因する第二振動エネルギー成分により演奏者に与える違和感の検証である。 この第二振動エネルギー成分は、周波数が極低く、これによるピアノの動きも、ピアノのフレーム5や脚柱2に手を直接触れることでその有無を感じることが出来る。また、その垂直方向成分と水平方向成分との判別も不可能では無い。

本願発明では、その第二振動エネルギー成分の垂直方向成分は、片持バネ部材9の弾性(剛性)で抑制する。先の図5で説明したように、U字状部22とL字状部23とを組み合わせて片持バネ部材9を構成することで、ピアノの重量に応じて十分な剛性を持たせ無視できる程度の変位に抑えている。

第二振動エネルギー成分の水平方向成分については、図6および上記で詳述したとおり、3本以上(図6では3本)の第二ワイヤ11に加わる張力により、演奏者にほとんど違和感を感じさせないレベルにまで変位を抑えている。

検証は、長年ピアノの教師や調律師として活動されてきた複数の人材を検査員として実施した。 このピアノ操作に伴う違和感はかなり明確に感知でき、前段でも紹介した、本願発明完成に至る段階で種々模索的に試作した各種方式のものの内、例えば、上部構造部材7と下部構造部材8とを薄いアルミ板で連結する方式では、この違和感は治まったが音響の響きは良くなかった。これら各種の試作方式を実施した結果、本願発明品が、音響面と違和感の面の両者で十分満足のいくものであることが検査員全員で確認された。

以上のように、この発明の実施の形態1によるインシュレーター1は、ピアノの脚柱2の下端をその上に載置する上部構造部材7と、床面に設置され片持バネ部材9と第一ワイヤ10を介して上部構造部材7を吊り下げる下部構造部材8とを備えるとともに、第二ワイヤ11によりこれら上部構造部材7と下部構造部材8とを水平方向に連結する構成としたので、ピアノが発する本来の響きに相当する第一振動エネルギー成分は、第一ワイヤ10の上端を支点とする振り子運動の自由振動により保持するように機能するので、床面に直接設置する従来の場合に比較して、その振動エネルギー成分による響きはより豊かになり床面への伝達も抑制される。

また、演奏者による鍵盤3およびペダル6の操作に起因する第二振動エネルギー成分の垂直成分は、片持バネ部材9の弾性により抑制され、第二振動エネルギー成分の水平方向成分は、第二ワイヤ11のいずれかに働く張力により抑制され、演奏者は操作に違和感を感じることが無い。

実施の形態2. 図7は、この発明の実施の形態2によるインシュレーター1を示す図である。実施の形態2は、インシュレーター1としては実質的に先の形態1のものと同一であるが、ピアノの脚柱2自体に組み込んだ点が異なる。換言すると、実施の形態2では、本願請求項1の第一平面を、脚柱2の、後述する上部取付部24の上面ととらえ、この上部取付部24に下部構造部材8を固定することで、インシュレーター1と脚柱2との一体化を実現している。そして、ピアノ100は、脚柱2とそれ以外の部分を指すピアノ本体101とで構成されているものとする。 以下、先の形態1と異なる点を中心に説明する。

ピアノは、コンサート会場や家庭など設置場所に輸送するときは、梱包寸法を低減するため、また、脚柱2に無理な力が働かないよう、脚柱2とピアノ本体101とを分離した状態で輸送する。そして、設置場所で梱包を解いた後、脚柱2をピアノ本体101に取り付け、設置場所内での移動は、主として、脚柱2の下端に設けられた車輪を転がして行う。 従って、ピアノメーカーにおいて、この発明のインシュレーター1を脚柱2に組み込む形にしておけば、通例の作業手順と同様に、輸送中分離していた脚柱2を設置場所でピアノ本体101に取り付ければ、その状態でインシュレーター1が組み込まれ、設置場所内での移動も従来と全く同じ要領で処理することが出来るという利点がある。

図7において、上部取付部24は、元々、脚柱2をピアノ本体101に取り付ける部分の部材で、フレーム5内に形成された取付面にねじ止めされる構造になっている。 この実施の形態2では、この上部取付部24の上面に、インシュレーター1の下部構造部材8をねじ止め等で取り付ける。そして、インシュレーター1の上部構造部材7をフレーム5内に形成された上述の取付面にねじ止めする。

なお、先の実施の形態1では、インシュレーター1個に対し第一ワイヤ10および片持バネ部材9を3組設け、第二ワイヤ11を3本設け、上部構造部材7および下部構造部材8を共にその平面視が略正三形となるインシュレーター1とした。この場合、即ち、インシュレーター1をピアノの脚柱2に一体に組み込む構造を採用する場合であってピアノの構造形状の関係で、インシュレーター1を四角形にした方が都合が良い場合は、第一ワイヤ10および片持バネ部材9を4組、第二ワイヤ11を4本設けることで、四角形に仕上げるようすればよい。

以上のように、この発明の実施の形態2によるインシュレーター1は、インシュレーター自体としては、先の形態1で説明したと同様の構成を備えているので、ピアノが発する本来の響きに相当する第一振動エネルギー成分は、第一ワイヤ10の上端を支点とする振り子運動の自由振動により保持するように機能するので、従来の場合に比較して、その振動エネルギー成分による響きはより豊かになり床面への伝達も抑制される。

また、演奏者による鍵盤3およびペダル6の操作に起因する第二振動エネルギー成分の垂直成分は、片持バネ部材9の弾性により抑制され、第二振動エネルギー成分の水平方向成分は、第二ワイヤ11のいずれかに働く張力により抑制され、演奏者は操作に違和感を感じることが無い。

更に、ピアノの脚柱2の上部に下部構造部材8を取付固定し、上部構造部材7をピアノのフレーム5に着脱自在とする構成でインシュレーター1を脚柱2に一体に組み込んだので、重量物であるピアノの輸送や移動の操作を従来と全く変わること無く簡便に扱うことが出来るという利点がある。

なお、以上の説明では、1個のインシュレーター1に対し、片持バネ部材9および第一ワイヤ10を複数組備えたものとしたが、振動発生物体の規模特性等、また、必要なインシュレーター1の個数によっては、1個のインシュレーター1に対し、片持バネ部材9および第一ワイヤ10を1組備える構成としてもよい。

また、以上では、振動発生物体は、人間の可聴周波数の下限値以上の周波数を有する第一振動エネルギー成分と下限値未満の周波数を有する第二振動エネルギー成分とを発生するとして説明したが、必ずしもこのような区分ではなく、比較的周波数が高い振動エネルギー成分と比較的周波数が低い振動エネルギー成分とを発生するような場合も、区分する周波数に応じて、例えば、第一ワイヤ10の長さを調整することで、この発明は同様に適用することが出来同等の効果を奏する。

本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。

QQ群二维码
意见反馈