【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ファゴットに関し、特に低音域の音程、音質を改善するようにしたファゴットに関する。 【0002】 【従来の技術】木管楽器の一種であるファゴットは、管本体に形成した多数の音孔を備え、これらの音孔を鍵機構によって選択的に開閉して演奏するものである。 図2 〜図4にファゴットの従来例を示す。 図2はファゴットの左側面図、図3は右側面図、図4は低音域の音孔の断面図である。 これらの図において、2はテナージョイント、3はダブルジョイント、4はロングジョイント、5 はベルジョイントで、これらによってファゴット1の管本体6を構成し、多数の音孔のうち低音域の音程B♭, B,C,C♯,D,E♭の音孔7(7a〜7f)をテナージョイント2、ロングジョイント4およびベルジョイント5に形成している。 そして、管本体6の外周には、 各音孔を開閉する鍵機構8が設けられている。 【0003】管本体6に形成される音孔のうち、低音域の音程B♭,B,C,C♯,D,E♭の音孔7は、他の木管楽器と同様に図4に示すように管本体6の軸線に対して垂直に交差するように形成され、中、高音域の音孔は、軸線に対して斜めに交差するように形成されている。 斜めに形成している理由は、ファゴット特有の音色を得るためである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記したように従来のファゴットにおいては、ファゴット特有の音色を確保するためロングジョイント4およびベルジョイント5上の音孔7を管本体6の軸線に対して垂直に形成し、テナージョイント2上およびダブルジョイント3の音孔を軸線に対して斜めに交差するように形成したものが定着している。 しかしながら、特に低音域の音程については、必ずしも音性的に満足いくものではなかった。 【0005】そこで、本発明者はファゴットとしての音性と構造との関係を確認ないし検証するために、低音域の音孔7を管本体6の軸線に対して斜めに形成したファゴットを各種製作し、その音色、音質を垂直に形成した従来のファゴットと比較した。 その結果、従来のファゴットは、斜めに形成したファゴットに比べて、 低音域の音程が上ずり、リードを咥える口の形で修正をしなければならない。 低音の発音が鈍く、ピアニッシモ(pp)でなめらかに音が出ない、音質が堅くなる。 ことが判明した。 【0006】本発明は上記した実験結果に基づいてなされたもので、その目的とするところは、低音域の音程の上ずりを防止し、正常な口の形で吹奏することができ、 また音質が柔らかく、ピアニッシモの音を楽に出すことができ、演奏性を向上させるようにしたファゴットを提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、管本体に形成される音孔のうちベルジョイント上に位置するB♭,およびロングジョイント状に位置するB,C,C♯,D,E♭の音孔の少なくともいずれか一つを、内側開口端が高音側で、外側開口端が低音側となるように管本体の軸線に対して斜めに形成したことを特徴とする。 また、本発明は、上記発明において、 管本体の軸線に対して斜めに形成される音孔の前記軸線に対する傾斜角度δを10°≦δ≦20°としたことを特徴とする。 【0008】本発明において、音響学的には未解明ではあるが、低音域の音孔を、その内側開口端が高音側で、 外側開口端が低音側となるように管本体の軸線に対して斜めに交差するように形成すると、強奏時に口を音楽的に不自然な形にして操作しなくとも上ずった音が出ない。 また、音質が柔らかく、ピアニッシモの音を楽に出すことができる。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。 図1は本発明に係るファゴットの実施の形態を示す低音域の音孔の断面図である。 なお、従来技術の欄で示した構成部材等と同一のものについては、同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。 本発明においては、管本体6に形成される音孔のうち低音域の音程B♭,B,C,C♯,D,E♭の音孔7(7a〜7f)全てを、その内側開口端20aが高音(ベル)側で、外側開口端20bが低音(歌口)側となるように管本体6の軸線21に対して斜めに形成している。 その他の構成は、上記した従来のファゴットと同一である。 【0010】音孔7の軸線21に対する傾斜角度δとしては、10°≦δ≦20°の範囲である。 10°≦δ≦ 20°とした理由は、楽器としてなりたつ音性が得られる範囲であるからである。 13°≦δ≦16°とすると実際に最適な音色、音質が得られた。 【0011】このように本発明に係るファゴットにおいては、低音域の音程B♭,B,C,C♯,D,E♭の音孔7を、その内側開口端20aが高音(ベル)側で、外側開口端20bが低音(歌口)側となるように管本体6 に対して斜めに形成したので、垂直に形成した従来のファゴットに比べて強奏時に口を音楽的に不自然な形にして操作しなくても上ずった音が出ず、また音質が柔らかく、ピアニッシモの音を楽に出すことができ、低音域の音色、音質を改善することができた。 【0012】なお、上記した実施の形態においては、低音域の音程B♭,B,C,C♯,D,E♭の音孔7全てを管本体6の軸線21に対して斜めに交差するように形成した例を示したが、本発明はこれに特定されるものではなく、任意数の音孔のみを斜めに形成してもよい。 【0013】 【発明の効果】以上説明したように本発明に係るファゴットは、管本体に形成される音孔のうちベルジョイント上に位置するB♭,およびロングジョイント状に位置するB,C,C♯,D,E♭の音孔の少なくともいずれか一つを、内側開口端が高音側で、外側開口端が低音側となるように管本体の軸線に対して斜めに形成したので、 上ずった音が出ず、またファゴット特有の音色を損なうことなく低音域の音色、音質を改善することができる。 また、音質が柔らかく、ピアニッシモの音を楽に出すことができ、演奏性を向上させることができる。 また、本発明は、 管本体の軸線に対して斜めに形成される音孔の前記軸線に対する傾斜角度δを10°≦δ≦20°に設定したので、最適な音色、音質を得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係るファゴットの実施の形態を示す低音域の音孔の断面図である。 【図2】 従来のファゴットの左側面図である。 【図3】 同ファゴットの右側面図である。 【図4】 同ファゴットの低音域の音孔の断面図である。 【符号の説明】 1…ファゴット、2…テナージョイント、3…ダブルジョイント、4…ロングジョイント、5…ベルジョイント、6…管本体、7…音孔、8…鍵機構。 |