目標追尾装置

申请号 JP2017559630 申请日 2016-01-06 公开(公告)号 JPWO2017119081A1 公开(公告)日 2018-03-29
申请人 三菱電機株式会社; 发明人 小西 響介; 小幡 康;
摘要 目標追尾装置(1)は、nを1以上の整数とし、観測対象の目標がn次エコーとして観測される距離に存在することを仮定して、レーダ(2)によって観測された目標の情報に、目標の検出抜け及び目標の誤検出が含まれることを前提とし、目標の情報から目標の航跡の候補を作成する複数のn次エコー追尾フィルタ部(3−n)と、目標の情報に目標の検出抜け及び目標の誤検出が含まれることを前提とし、複数のn次エコー追尾フィルタ部(3−n)により作成された航跡の候補の尤もらしさを表す航跡信頼度を計算する航跡信頼度計算部(4)と、航跡信頼度計算部(4)により計算された航跡信頼度に基づいて、複数のn次エコー追尾フィルタ部(3−n)により作成された航跡の候補の中から、表示器(7)に表示させる航跡を決定する航跡決定部(6)とを備える。
权利要求

nを1以上の整数とし、観測対象の目標がn次エコーとして観測される距離に存在することを仮定して、センサによって観測された前記目標の情報に、前記目標の検出抜け及び前記目標の誤検出が含まれることを前提とし、前記目標の情報から前記目標の航跡の候補を作成する複数のn次エコー追尾フィルタ部と、 前記目標の情報に前記目標の検出抜け及び前記目標の誤検出が含まれることを前提とし、複数の前記n次エコー追尾フィルタ部により作成された航跡の候補の尤もらしさを表す航跡信頼度を計算する航跡信頼度計算部と、 前記航跡信頼度計算部により計算された航跡信頼度に基づいて、複数の前記n次エコー追尾フィルタ部により作成された航跡の候補の中から、表示器に表示させる航跡を決定する航跡決定部とを備える目標追尾装置。前記目標が複数の次数のエコーとして観測される距離に存在することを仮定して、前記センサによって観測された前記目標の情報から、前記目標の航跡の候補を作成する多次エコー追尾フィルタ部を備えることを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。前記航跡決定部は、 前記目標の航跡の候補の中から、同一観測時刻に実現し得る航跡の組み合わせを、複数通り作成する航跡仮説作成部と、 前記航跡信頼度計算部により計算された航跡信頼度に基づいて、前記航跡仮説作成部により作成された航跡の組み合わせの中から、前記表示器に表示させる航跡の組み合わせを決定する航跡仮説決定部とを有することを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。

说明书全文

レーダ装置等によって検出された航空機等の目標の観測情報から、目標の航跡を推定する目標追尾装置に関するものである。

パルスレーダ装置等は、パルスを送信し、当該パルスが観測対象の目標で反射した反射パルスを受信する。目標追尾装置は、パルスレーダ装置等によりパルスが送信されてから受信されるまでの送受信時間に基づいて、目標までの距離を測定する。パルスの送受信時間が、パルス送信時のパルス繰り返し間隔(PRI、Pulse Repetition Interval)より長くなった場合、パルス送受信時間と目標までの距離とが一意ではなくなり、正しい目標の位置が得られない現象があることが知られている。この現象は、「多次エコー」、「距離アンビギュイティ」、「レンジアンビギュイティ」、または「距離折り返し」と呼ばれている。

従来より、上記多次エコーに対して目標の正しい距離を推定する技術が複数知られている。

非特許文献1に開示されている方法は、複数種類のPRIで目標を観測し、各PRIにおける多次エコーの距離方向の差分から、正しい目標の距離を推定する方法である。この方法は一般に「マルチPRIレンジング」または「マルチPRF(Pulse Repetition Frequency)レンジング」と呼ばれている。

非特許文献2及び特許文献1に開示されている方法は、送信パルスの変調コードを周期的に変更することで、受信パルスの復調において2次エコーを抑圧し、1次エコーのみを抽出する方法である。 以下では、多次エコーのうち、k−n−1番目の時刻フレームで送信されたパルスがk番目の時刻フレームで受信された場合を「n次エコー」と表記する。k及びnは自然数とする。また、n次エコーの「n」を「多次エコーの次数」と表記する。

特開平6−138215号公報

M.Skolnik,「Radar Handbook Third Edition」,(米),McGraw−Hill,2008年2月,p.4.31−4.33

深尾昌一郎、浜津享助著,「気象と大気のレーダーリモートセンシング」,改訂第2版,京都大学学術出版会,2009年3月30日,p.285−287

マルチPRIレンジングは、目標の個数が既知であり、かつ目標以外からの不要な反射パルスの検出が無く、かつ目標からの反射パルスが雑音に埋もれ検出されない場合が無いことを前提とする。すなわち、例えば2次エコーとして受信された反射パルスについて、マルチPRIレンジングでは、PRIを変更したいずれの観測においても当該反射パルスが検出されることを前提とする。なお、以下では、目標以外からの不要な反射パルスの検出を「誤検出」と表記し、目標からの反射パルスが雑音に埋もれ検出されない場合を「検出抜け」と表記する。 また、複数目標からの反射パルスが検出される場合、PRIの種類は「目標の最大個数+1」種類以上なければならない。この前提は、特定の目標を高頻度に観測し、高精度の速度観測を目的とするHigh−PRFレーダまたはMiddle−PRFレーダにおいては妥当な前提である。 よってマルチPRIレンジングでは、広範囲を観測するレーダにおける前提において、すなわち想定を超える個数の目標が同時に観測される場合、または誤検出が起こる場合、または目標の反射断面積が小さく検出抜けが起こる場合に、正しい目標の距離が得られないという課題があった。

また、非特許文献2及び特許文献1に開示されている、送信パルスの変調コードを変えることで2次エコーを除去する方式は、次数が3次以上の多次エコーを除去できないという課題があった。 この課題は、観測対象とする目標の反射断面積がいずれも小さく、PRIの2倍を超えるほど遠方からの反射パルスの強度が十分小さいと見なせる程度のパルス送受信時間である場合においては問題とならない。一方、近距離の小型目標と、遠方の大型目標が同時に観測される条件においては、多次エコーの次数が異なる小型目標と大型目標の正しい位置及び速度は得られない。

この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、目標個数が未知であり、かつ誤検出が発生し、かつ目標検出の抜けが発生し、かつ異なる次数の多次エコーが同時に発生する場合に、各目標の航跡を推定することを目的とする。

この発明に係る目標追尾装置は、nを1以上の整数とし、観測対象の目標がn次エコーとして観測される距離に存在することを仮定して、センサによって観測された目標の情報に、目標の検出抜け及び目標の誤検出が含まれることを前提とし、目標の情報から目標の航跡の候補を作成する複数のn次エコー追尾フィルタ部と、目標の情報に目標の検出抜け及び目標の誤検出が含まれることを前提とし、複数のn次エコー追尾フィルタ部により作成された航跡の候補の尤もらしさを表す航跡信頼度を計算する航跡信頼度計算部と、航跡信頼度計算部により計算された航跡信頼度に基づいて、複数のn次エコー追尾フィルタ部により作成された航跡の候補の中から、表示器に表示させる航跡を決定する航跡決定部とを備えるものである。

この発明によれば、観測対象の目標がn次エコーとして観測される距離に存在することを仮定して目標の航跡の候補を作成し、航跡の候補の信頼度に基づいて表示器に表示させる航跡を決定するようにしたので、目標個数が未知であり、かつ誤検出が発生し、かつ目標検出の抜けが発生し、かつ異なる次数の多次エコーが同時に発生する場合に、各目標の航跡を推定することができる。

この発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の構成例を示すブロック図である。

図2Aは、実施の形態1に係る目標追尾装置を適用する観測条件を表す概念図であり、図2Bは、目標の観測結果の例を示す概念図である。

実施の形態1に係る目標追尾装置のハードウェア構成例を示す図である。

図4A、図4B及び図4Cは、実施の形態1に係る目標追尾装置により作成された1次エコー航跡、2次エコー航跡及び3次エコー航跡の例を示す概念図である。

実施の形態1に係る目標追尾装置の1次エコー追尾フィルタ部とn次エコー追尾フィルタ部と航跡信頼度計算部の動作を示すフローチャートである。

実施の形態1に係る目標追尾装置の航跡決定部の動作を示すフローチャートである。

この発明の実施の形態2に係る目標追尾装置の構成例を示すブロック図である。

実施の形態2におけるm次〜n次エコー航跡の例を示す概念図である。

実施の形態2に係る目標追尾装置のm次〜n次エコー追尾フィルタ部と航跡信頼度計算部の動作を示すフローチャートである。

この発明の実施の形態3に係る目標追尾装置の構成例を示すブロック図である。

実施の形態3に係る目標追尾装置の航跡決定部の動作を示すフローチャートである。

以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。 実施の形態1. 図1は、この発明の実施の形態1に係る目標追尾装置1の構成例を示すブロック図である。以下では、この発明の各実施の形態に係る目標追尾装置1を、既存のレーダ装置であるレーダ2に適用した場合について説明する。

図2Aは、実施の形態1に係る目標追尾装置1を適用する観測条件を表す概念図であり、図2Bは、目標の観測結果の例を示す概念図である。図において、x軸は、東向きが正の東西方向であり、y軸は、北向きが正の南北方向である。 図2Aのように、レーダ2の観測範囲内に未知の個数の目標が存在し、各目標の位置はレーダ2からは質点として観測されるものとする。また、各目標は、レーダ2の最大観測距離Rmax以内またはRmax以遠に存在し得るものとする。

ここで、レーダ2の最大観測距離Rmaxは、「目標が1次エコーとして観測できる最大距離」として定義され、以下の式(1)から求められる。 cは光速、TPRIはパルス繰り返し間隔(PRI)である。

以下では、レーダ原点50から最大観測距離Rmax未満に存在する目標を1次エコー目標51と表記する。また、最大観測距離Rmax以上2Rmax未満に存在する目標を2次エコー目標52と表記する。また、最大観測距離2Rmax以上3Rmax未満に存在する目標を3次エコー目標53と表記する。

レーダ2が観測ごとに複数種類のPRIに切り替えた場合、各目標の検出プロットは図2Bのように現れる。図2Bは、レーダ2が観測ごとに3種類のPRIを周期的に切り替えた場合の例である。検出プロットは、検出された目標の位置情報であり、図2Bにおいては1次エコー54、2次エコー55及び3次エコー56の各検出プロットが「×」印で示される。最大観測距離RmaxがPRIによって変化するため、多次エコーの次数が大きいほど、多次エコーの検出プロットは距離方向に蛇行するように現れる。

目標追尾装置1は、このような検出プロットをレーダ2から受け取り、各目標の運動諸元を決定して表示器7へ出する。運動諸元は、目標の位置、速度または加速度等であり、以下では「追尾航跡」と表記する。

図1に示すように、目標追尾装置1は、1次エコー追尾フィルタ部3、航跡信頼度計算部4、n次エコー計算ブロック5、及び航跡決定部6を備えている。n次エコー計算ブロック5は、n個(nは2以上の整数)のn次エコー追尾フィルタ部3−nと、2個の航跡信頼度計算部4とを備えている。例えば、2次エコー目標52と3次エコー目標53を観測する場合、n次エコー計算ブロック5は、1組の2次エコー追尾フィルタ部3−2及び航跡信頼度計算部4と、1組の3次エコー追尾フィルタ部3−3及び航跡信頼度計算部4から構成される。 ただし、1個のn次エコー追尾フィルタ部3−nに対して1個の航跡信頼度計算部4を設ける構成に限定されるものではない。例えば、複数のn次エコー追尾フィルタ部3−nに対して1個の航跡信頼度計算部4を設け、当該1個の航跡信頼度計算部4が、n次エコー追尾フィルタ部3−nの個数分の処理を行う構成にしてもよい。

なお、図1では、nを2以上の整数とし、1次エコー追尾フィルタ部3とn次エコー追尾フィルタ部3−nとを区別しているが、実質的な動作は1次エコー追尾フィルタ部3とn次エコー追尾フィルタ部3−nとで大きな違いはない。そのため、nを1以上の整数とし、n=1のときのn次エコー追尾フィルタ部3−nを、1次エコー追尾フィルタ部3の代わりとしてもよい。

図3は、目標追尾装置1のハードウェア構成例を示す図である。目標追尾装置1における1次エコー追尾フィルタ部3、航跡信頼度計算部4、n次エコー計算ブロック5及び航跡決定部6は、メモリ102に格納されているプログラムを実行するプロセッサ101である。1次エコー追尾フィルタ部3、航跡信頼度計算部4、n次エコー計算ブロック5及び航跡決定部6の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ102に格納される。プロセッサ101は、メモリ102に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、目標追尾装置1は、プロセッサ101により実行されるときに後述する図5及び図6に示される各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ102を備える。また、このプログラムは、目標追尾装置1の各部の手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。

プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、またはGPU(Graphics Processing Unit)等である。メモリ102は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、またはフラッシュメモリ等である。

また、目標追尾装置1は、レーダ2が出力する検出プロットを1次エコー追尾フィルタ部3及びn次エコー計算ブロック5へ入力する入力装置103を備える。この入力装置103は、USB(Universal Serial Bus)、またはイーサネット(登録商標)等のインタフェースを利用して、レーダ2に接続する。 また、目標追尾装置1は、航跡決定部6が決定した各目標の運動諸元を、表示器7へ出力する出力装置104を備える。この出力装置104は、DVI(Digital Visual Interface、登録商標)、またはHDMI(High−Definition Multimedia Interface、登録商標)等のインタフェースを利用して、表示器7に接続する。

レーダ2は、図示しないパルス送信装置、送受切替機、アンテナ、受信機、及び信号検出機等の既存の装置を備え、目標位置を観測する。そして、レーダ2は、1次エコー追尾フィルタ部3及びn次エコー追尾フィルタ部3−nに対して、最新の時刻フレームにおいて検出された目標の位置情報、つまり検出プロットを出力する。なお、検出プロットには、目標以外からの反射パルスに基づいた誤検出が含まれている場合がある。また、各時刻フレームの検出プロットには、観測時のPRI情報も含まれているものとする。 なお、レーダ2の観測領域は任意であり、目標までの距離及び方位を観測する2次元レーダでもよいし、さらに仰角方向も観測可能な3次元レーダでもよい。

1次エコー追尾フィルタ部3は、レーダ2から検出プロットを受け取り、各検出プロットがすべて1次エコー目標を観測した結果であると仮定して、1次エコー目標の追尾航跡の候補を複数作成する。ここで、1次エコー目標の追尾航跡とは、各時刻フレームにおける1次エコー目標の位置または速度等の推定値系列、ならびに推定値の誤差を表す値を含む。1次エコー追尾フィルタ部3は、作成した追尾航跡の候補を、航跡信頼度計算部4に出力する。なお、以下では、1次エコー追尾フィルタ部3で作成された追尾航跡を「1次エコー航跡」と表記する。

n次エコー追尾フィルタ部3−nは、レーダ2から検出プロットを受け取り、各検出プロットがすべてn次エコー目標を観測した結果であると仮定して、n次エコー目標の追尾航跡の候補を複数作成する。n次エコー追尾フィルタ部3−nは、作成した追尾航跡の候補を、n次エコー計算ブロック5内で対になっている航跡信頼度計算部4に出力する。なお、以下では、n次エコー追尾フィルタ部3−nで作成された追尾航跡を「n次エコー航跡」と表記する。

1次エコー追尾フィルタ部3と対になっている航跡信頼度計算部4は、1次エコー追尾フィルタ部3から1次エコー航跡を受け取り、この1次エコー航跡の尤もらしさを表す値である航跡信頼度を計算する。そして、1次エコー追尾フィルタ部3は、1次エコー航跡と航跡信頼度を、航跡決定部6に出力する。 同様に、n次エコー計算ブロック5内でn次エコー追尾フィルタ部3−nと対になっている航跡信頼度計算部4は、そのn次エコー追尾フィルタ部3−nからn次エコー航跡を受け取り、このn次エコー航跡の尤もらしさを表す航跡信頼度を計算する。そして、航跡信頼度計算部4は、n次エコー航跡と航跡信頼度を、航跡決定部6に出力する。

航跡信頼度は、追尾航跡が1次エコー追尾フィルタ部3及びn次エコー追尾フィルタ部3−nで前提とする運動モデルに近いほど大きな値となる。例えば、等速直進運動モデルを前提とする場合、直線状に並んだ検出プロットによって作成された追尾航跡ほど航跡信頼度は大きくなる。

航跡決定部6は、1次エコー追尾フィルタ部3と対になった航跡信頼度計算部4から1次エコー航跡とその航跡信頼度を受け取り、n次エコー追尾フィルタ部3−nと対になった航跡信頼度計算部4からn次エコー航跡とその航跡信頼度を受け取り、航跡信頼度が最大の追尾航跡を選択する。そして、航跡決定部6は、航跡信頼度が最大の追尾航跡を「表示航跡」として表示器7に出力する。

表示器7は、航跡決定部6から表示航跡を受け取り、この表示航跡に含まれる目標の位置もしくは速度等の推定値系列、推定値の誤差を表す値、または航跡信頼度等を表示する。

図4A、図4B及び図4Cは、実施の形態1に係る目標追尾装置1により作成された1次エコー航跡、2次エコー航跡及び3次エコー航跡の例を示す概念図である。この例では、次数が2の多次エコーに対して、レーダ2が3種類のPRI(PRI1、PRI2、PRI3)を周期的に切り替えながら観測した検出プロットが、目標追尾装置1に入力されたものとする。また、1次エコー追尾フィルタ部3及びn次エコー追尾フィルタ部3−nは、等速直進運動モデルに基づいた追尾航跡を作成したものとする。

図4Aでは、1次エコー追尾フィルタ部3が出力する1次エコー航跡61の例を示す。 1次エコー追尾フィルタ部3は、「各検出プロットは最大観測距離Rmax未満の目標を観測した結果である」という仮定のもとで追尾航跡の候補を作成する。1次エコー追尾フィルタ部3は、検出抜け64または誤検出65がある確率で起こることを前提に追尾航跡を作成する。具体的には、1次エコー追尾フィルタ部3は、検出プロットが抜けている場合、例えば、その手前までの追尾航跡を推定速度で延長することで、検出抜け64を補間した1次エコー航跡61を作成する。また、例えば、1次エコー追尾フィルタ部3は、追尾航跡から離れた検出プロットを無視することで、誤検出65を含まない1次エコー航跡61を作成する。

図4Bでは、2次エコー追尾フィルタ部3−2が出力する2次エコー航跡62の例を示す。2次エコー追尾フィルタ部3−2は、n=2のn次エコー追尾フィルタ部3−nである。 2次エコー追尾フィルタ部3−2は、「各検出プロットは最大観測距離Rmax以上2Rmax未満の目標を観測した結果である」と仮定し、各検出プロットをレーダ原点50の距離方向にPRIに依存する距離だけ移動した上で、追尾航跡の候補を作成する。このとき、2次エコー追尾フィルタ部3−2は、1次エコー追尾フィルタ部3と同様に、検出抜け64または誤検出65がある確率で起こることを前提に追尾航跡を作成する。

図4Cでは、3次エコー追尾フィルタ部3−3が出力する3次エコー航跡63の例を示す。3次エコー追尾フィルタ部3−3は、n=3のn次エコー追尾フィルタ部3−nである。 3次エコー追尾フィルタ部3−3は、「各検出プロットは最大観測距離2Rmax以上3Rmax未満の目標を観測した結果である」と仮定し、各検出プロットをレーダ原点50の距離方向にPRIに依存する距離だけ移動した上で、追尾航跡の候補を作成する。このとき、3次エコー追尾フィルタ部3−3は、1次エコー追尾フィルタ部3と同様に、検出抜け64または誤検出65がある確率で起こることを前提に追尾航跡を作成する。

図4A〜図4Cで示した1次エコー航跡61、2次エコー航跡62及び3次エコー航跡63のうち、運動モデルである等速直進運動モデルに近い追尾航跡は2次エコー航跡62である。したがって、この例では、2次エコー追尾フィルタ部3−2と対になっている航跡信頼度計算部4が計算する2次エコー航跡62の航跡信頼度が、他の航跡信頼度計算部4が計算する航跡信頼度よりも高くなり、航跡決定部6は、2次エコー航跡62を表示航跡として決定して表示器7に出力する。

次に、図5及び図6のフローチャートを用いて、本実施の形態に係る目標追尾装置1の動作の詳細を説明する。 まず始めに、時刻kにおける1次エコー追尾フィルタ部3、n次エコー追尾フィルタ部3−n及び航跡信頼度計算部4の動作を、図5のフローチャートに沿って説明する。 なお、以下では、nは自然数とし、1次エコー追尾フィルタ部3の動作を、n次エコー追尾フィルタ部3−nにおいてn=1の場合における動作として、まとめて説明する。

動作について説明する前に、処理に用いる各記号について定義する。 目標の推定値を表す追尾航跡は、運動諸元を表す「状態ベクトル」と、推定のあいまいさを表す「誤差共分散行列」から成るものとする。 以降の説明では、時刻kにおける状態ベクトルxk|kと誤差共分散行列Pk|kは、式(2)と式(3)で定義される。なお、時刻kは「観測開始からk回目の観測時刻フレーム(kは自然数)」と定義される。目標追尾装置1は、観測時刻フレームごとに、図5及び図6のフローチャートに示される処理を繰り返し実行する。

ここで、式(2)の括弧右肩のTは行列の転置を表す。x及びvxはx軸の位置と速度を表す。y及びvyはy軸の位置と速度を表す。z及びvzはz軸の位置と速度を表す。x軸は、図2Aに示したように東向き正の東西方向に設定されている。y軸は、図2Aに示したように北向き正の南北方向に設定されている。z軸は、上向きが正の高度方向に設定されているものとする。 また、式(3)のPij(i、j=1〜6)は、xk|kのi行目成分とj列目成分の誤差共分散を表す。 なお、複数の追尾航跡を表記する場合は、xk|k(1)、xk|k(2)、・・・、及びPk|k(1)、Pk|k(2)、・・・と表記する。

また、レーダ2から時刻kに得られた検出プロットは、「検出プロットzk」と表記し、式(4)で定義される。

ここで、zk,x、zk,y、zk,zはそれぞれ検出プロットのx軸、y軸、z軸の位置を表す。なお、時刻kに複数の検出プロットが得られた場合は、zk(1)、zk(2)、・・・と表記する。 また、状態ベクトルxk|kと誤差共分散行列Pk|kが「時刻kまでの検出プロットを基に推定した時刻kにおける追尾航跡」を表す一方で、「時刻k−1までの検出プロットを基に推定した時刻kにおける追尾航跡」を「予測航跡」として状態ベクトルxk|k−1と誤差共分散行列Pk|k−1で表す。各行列の要素は式(2)及び式(3)と同じとする。 また、追尾航跡の航跡信頼度をbk|k、予測航跡の航跡信頼度をbk|k−1と表記する。

ステップST1−1において、nを1以上の整数とした場合における1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nのそれぞれは、n次エコー変換を行う。n次エコー追尾フィルタ部3−nは、レーダ2から入力された検出プロットがn次エコー目標の観測結果であると仮定し、検出プロットの位置をレーダ原点50から距離方向に一定距離移動させる。

例えば、PRIがTPRIのときに観測された検出プロットzkを変換する場合、移動させる距離ΔRは、式(5)より求まる。

このとき、変換後の検出プロットzk’は、式(6)のとおりになる。

式(6)のzk,R、zk,By、zk,Elは、極座標系における検出プロットであり、式(7)で定義される。

以降のステップST1−2〜ST1−7における検出プロットは、いずれも上記変換後の検出プロットとする。

ステップST1−2において、1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nのそれぞれは、初期航跡追加を行う。n次エコー追尾フィルタ部3−nは、過去の検出プロットを基に、時刻k−1における新しい追尾航跡の候補を作成する。図5のフローチャートに示される処理の繰り返しにあわせて予測と更新が繰り返される追尾航跡の初期値を設定することから、ここで作成する航跡を「初期航跡」と表記する。

例えば、時刻k−1における初期航跡の状態ベクトルxk−1|k−1,Newと誤差共分散行列Pk−1|k−1,Newは、時刻k−1の検出プロットzk−1と時刻k−2の検出プロットzk−2を基に、式(8)と式(9)より設定される。

ここで、Δτは時刻フレーム間隔、Rkは時刻kにおける観測誤差共分散を表す3×3行列のパラメータとする。

また、後述するステップST1−6で計算される航跡信頼度の初期値である、初期航跡の航跡信頼度bk−1|k−1,Newは、式(10)より設定される。

ここで、βFTは単位体積当たりの誤検出個数を表すスカラーのパラメータ、βNTは単位体積当たりに出現する目標の個数を表すスカラーのパラメータとする。

n次エコー追尾フィルタ部3−nは、過去の検出プロットが複数ある場合、検出プロットの全組み合わせについて上記の初期航跡を作成する。または、目標の速度条件が設定できる場合は、その速度で移動可能な一定距離以内のzk−1とzk−2のみから初期航跡を設定してもよい。 また、初期航跡の作成において基とする検出プロットは、時刻k−1と時刻k−2の検出プロットの組み合わせ以外でもよく、例えば過去3フレーム前の検出プロットの組み合わせから作成する方法、または過去1フレーム前の検出プロットのみから作成する方法でもよい。

ステップST1−3において、1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nのそれぞれは、航跡予測を行う。n次エコー追尾フィルタ部3−nは、ステップST1−2で作成した初期航跡と、前の時刻k−1においてn次エコー追尾フィルタ部3−nが出力した追尾航跡について、時刻kでの予測航跡を求める。 なお、n次エコー追尾フィルタ部3−nは、図5のフローチャートに示された処理を繰り返す中で、1回目のステップST1−3の実行時は初期航跡から予測航跡を作成し、2回目以降のステップST1−3の実行時は直前のST1−2で作成した初期航跡と前の時刻k−1における追尾航跡から予測航跡を作成する。 前の時刻k−1における追尾航跡とは、前回の繰り返しにおけるステップST1−5の後にn次エコー追尾フィルタ部3−nから航跡信頼度計算部4へ出力される追尾航跡のことである。

n次エコー追尾フィルタ部3−nは、時刻k−1の追尾航跡の状態ベクトルxk−1|k−1と誤差共分散行列Pk−1|k−1について、あるいは初期航跡ならばxk−1|k−1,NewとPk−1|k−1,Newについて、式(11)及び式(12)により予測航跡の状態ベクトルxk|k−1と誤差共分散行列Pk|k−1を求める。

ここで、Φは目標の運動モデルを表す6×6行列のパラメータである。例えば、目標の運動として等速直進運動を仮定する場合、Φは式(13)として表される。また、Qは運動モデルからの誤差を表す6×6行列のパラメータである。例えば等速直進運動モデルの速度成分に標準偏差qのあいまいさがあることを仮定する場合、Qは式(14)として表される。

ここで、I3は3×3の単位行列とする。

また、時刻k−1の追尾航跡の航跡信頼度bk−1|k−1に対し、あるいは初期航跡ならばbk−1|k−1,Newに対し、時刻kの予測航跡の航跡信頼度bk|k−1は式(15)とする。

ステップST1−4において、1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nのそれぞれは、航跡相関を求める。n次エコー追尾フィルタ部3−nは、時刻kの予測航跡の近傍にある時刻kの検出プロットを抽出し、次のステップST1−5において予測航跡を更新する際に用いる検出プロットを絞り込む。

n次エコー追尾フィルタ部3−nは、ある予測航跡の状態ベクトルxk|k−1、及び誤差共分散行列Pk|k−1に対して、「近傍にある」との条件を満たす検出プロットを抽出する。「近傍」の定義として、例えば位置の残差を誤差で規格化した距離(マハラノビス距離)で定義する場合、n次エコー追尾フィルタ部3−nは、以下の条件式(16)を満たす検出プロットzkを「相関ゲート内の検出プロット」として抽出する。

ここでδGateは、相関ゲートの大きさを決定するスカラーパラメータである。また、Hは状態ベクトルから検出プロットと同じ成分を取り出す行列であり、式(17)で定義される。

ステップST1−5において、1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nのそれぞれは、航跡更新を行う。n次エコー追尾フィルタ部3−nは、予測航跡とその相関ゲート内の検出プロットから、時刻kにおける追尾航跡を作成する。また、n次エコー追尾フィルタ部3−nは、予測航跡が時刻kでは検出プロットとして観測されなかった場合を表す航跡も、時刻kにおける追尾航跡として作成する。

n次エコー追尾フィルタ部3−nは、ある予測航跡の状態ベクトルxk|k−1及び誤差共分散行列Pk|k−1に対して、相関ゲート内の検出プロットzkを用いて更新する場合、以下の式(18)及び式(19)から追尾航跡の状態ベクトルxk|k及び誤差共分散行列Pk|kを求める。

ここで、Kは追尾航跡における検出プロットzkの寄与の度合いを表すフィルタゲインであり、以下の式(20)によって定義される。

n次エコー追尾フィルタ部3−nは、上記の処理を相関ゲート内にあるすべての検出プロットに対して行う。よって、相関ゲート内にm個の検出プロットが得られていた場合、m個の追尾航跡の候補xk|k(1)、・・・、xk|k(m)が作成される。

さらに、n次エコー追尾フィルタ部3−nは、予測航跡が時刻kでは検出プロットとして観測されなかった場合を表す追尾航跡の候補として、以下の式(21)及び式(22)による追尾航跡も作成する。

上記ステップST1−5において作成されたm+1個の追尾航跡うち、真の追尾航跡は高々1個である。しかし、以降のステップST1−6で各追尾航跡の尤もらしさを評価し、ステップST1−7で誤った追尾航跡を減らし、その後、航跡決定部6にて最終的な表示用の追尾航跡を決定するため、この時点ではいずれの航跡が正しいかの絞り込みは行わない。

ステップST1−6において、1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nと対になった航跡信頼度計算部4のそれぞれは、航跡信頼度計算を行う。航跡信頼度計算部4は、予測航跡とその相関ゲート内にある検出プロットから、ステップST1−5で作成された追尾航跡の尤もらしさを表す値を、「航跡信頼度」として計算する。

ある予測航跡の状態ベクトルxk|k−1及び誤差共分散行列Pk|k−1に対して、相関ゲート内の検出プロットzkを用いて更新した結果、時刻kの追尾航跡のxk|k及びPk|kが求まったとする。このとき、時刻kの追尾航跡の航跡信頼度bk|kを、予測航跡と検出プロットとの残差が小さいほど、予測航跡の航跡信頼度bk|k−1から大きく増加するような値として定義する。尤もらしさを表す値は様々な定義が存在するが、以下では例として「Applications of MHT to Dim Moving Targets」(G.C.Demos,R.A.Ribas,T.J.Broida,S.S.Blackman,Proceedings of SPIE,Signal and Data Processing of Small Targets 1990,1990年10月,vol.1305,p.297−309)に記載されている航跡信頼度について説明する。

信頼度を「予測航跡xk|k−1が検出プロットzkとして得られる確率(検出プロットzkに対する予測航跡xk|k−1の尤度)」と「検出プロットzkが誤検出である確率」の比の対数として定義した場合、航跡信頼度bk|kは、以下の式(23)によって求められる。

ここで、Mは状態ベクトルの行数である。pdは目標が検出される確率を表すスカラーパラメータである。dは式(24)で定義されるマハラノビス距離である。

なお、予測航跡が時刻kでは検出プロットとして観測されなかった場合の追尾航跡の信頼度、つまりステップST1−5において式(21)及び式(22)によって更新された航跡の信頼度は、以下の式(25)によって求められるものとする。

ステップST1−7において、1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nと対になった航跡信頼度計算部4のそれぞれは、航跡削除を行う。航跡信頼度計算部4は、ステップST1−6において作成された時刻kの追尾航跡のうち、誤検出のみによって作成及び更新された航跡を削除するために、航跡信頼度が低い追尾航跡を削除する。

航跡信頼度計算部4は、以下の式(26)を満たす追尾航跡は削除し、航跡決定部6へ出力せず、かつ、次時刻k+1でのステップST1−3で用いない。

ここで、bThは、航跡信頼度の下限しきい値を表すスカラーパラメータである。

航跡信頼度計算部4は、ここで削除されなかった複数の追尾航跡を「時刻kにおけるn次エコー航跡」として航跡決定部6へ出力する。

上記のステップST1−1〜ST1−7によって、1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nと、対になる航跡信頼度計算部4とが動作する。ここで、nは1以上の整数とし、nの最大値は観測し得る多次エコーの最大の次数として予め設定されているものとする。例えば、3次エコー目標が検出され得る観測条件ではn=1,2,3と設定され、1次エコー追尾フィルタ部3に加え、2次エコー追尾フィルタ部3−2及び3次エコー追尾フィルタ部3−3が並行して上記のステップST1−1〜ST1−7をそれぞれ実行する。

なお、上記では目標の運動モデルとして等速直進運動モデルを用いた場合について説明したが、他の運動モデル、例えば目標の加速度まで推定する等加速度運動モデル、または目標の旋回軌道を推定する等速円運動モデル等を用いてもよい。また、上記では目標の観測モデルとして目標の観測結果が北基準直交座標系の位置として得られる場合について説明したが、他の観測モデル、例えば目標の位置を極座標系(距離、仰角、方位角)で表す場合の観測モデルを用いてもよい。

続いて、図6のフローチャートに沿って、時刻kにおける航跡決定部6の動作を説明する。航跡決定部6は、1次エコー追尾フィルタ部3を含むn次エコー追尾フィルタ部3−nと対になった航跡信頼度計算部4のそれぞれから、時刻kにおけるn次エコー航跡とその航跡信頼度とを受け取り、図6のフローチャートに示される処理を行う。

始めにステップST1−8において、航跡決定部6は、暫定的な最大信頼度を極小値、つまりプログラム上の最小の負値に設定する。 ステップST1−9において、航跡決定部6は、受け取ったn次エコー航跡の中から、時刻kでの処理内における未選択の追尾航跡を1つ選択する。

ステップST1−10において、航跡決定部6は、選択された追尾航跡の航跡信頼度と暫定的な最大信頼度とを比較する。航跡決定部6は、選択された追尾航跡の航跡信頼度が暫定的な最大信頼度より大きかった場合(ステップST1−10“YES”)、ステップST1−11へ移行する。一方、航跡決定部6は、選択された追尾航跡の航跡信頼度が暫定的な最大信頼度以下であった場合(ステップST1−10“NO”)、ステップST1−11をスキップしてステップST1−12へ移行する。

ステップST1−11において、航跡決定部6は、選択された追尾航跡の航跡信頼度で暫定的な最大信頼度を上書きする。 ステップST1−12において、航跡決定部6は、受け取ったn次エコー航跡の中からすべての追尾航跡が選択されたか否かを判定する。航跡決定部6は、すべての追尾航跡が選択された場合(ステップST1−12“YES”)、ステップST1−13へ移行する。一方、航跡決定部6は、未選択の追尾航跡が残っている場合(ステップST1−12“NO”)、ステップST1−9へ戻る。

ステップST1−13において、航跡決定部6は、最大信頼度を持つ追尾航跡を「表示航跡」として表示器7に出力する。 以上のステップST1−8〜ST1−13によって、表示器7に表示航跡が出力される。

表示器7は、航跡決定部6から受け取った表示航跡をディスプレイ等に表示する。このとき表示する情報は、表示航跡の状態ベクトルに含まれる位置及び速度、表示航跡の誤差共分散行列から求めた誤差の大きさを表す楕円、多次エコー次数、または表示航跡の航跡信頼度等である。なお、表示器7は、予め設定された条件、または使用者からの入力により、表示する情報を変更可能である。

以上のように構成された実施の形態1によれば、1次エコー追尾フィルタ部3及びn次エコー追尾フィルタ部3−nによって多次エコーの次数を仮定した追尾航跡の候補を生成し、航跡信頼度計算部4にて各追尾航跡の尤もらしさを評価し、航跡決定部6で最終的な多次エコーの次数を決定するようにしたので、遠方の目標、特にレーダ2の最大観測距離Rmax以遠に存在する目標の検出プロットから、目標の航跡を推定することができる。これにより、レーダ2における送信機、アンテナ及び受信機等の構成を変えることなく、追尾航跡が得られる目標の最大距離を延伸することができる点で画期的である。また、n次エコー追尾フィルタ部3−n及び航跡信頼度計算部4の任意数の対によって構成されたn次エコー計算ブロック5によって、任意の次数の多次エコー目標に対して追尾航跡を得ることができるため、レーダ2で目標が観測されている限り、追尾航跡が得られる目標の距離に原理的な上限がない点で画期的である。

また、実施の形態1によれば、従来技術であるマルチRPFレンジングと異なり、目標が小型であるために起こる検出抜け、及び目標以外からの反射パルスによる誤検出が発生する場合でも、最大観測距離Rmax以遠の目標の航跡を推定できる。これは、1次エコー追尾フィルタ部3及びn次エコー追尾フィルタ部3−nにおいて、検出抜け及び誤検出がある確率で発生することを前提として、式(21)及び式(22)を用いて検出プロットの時系列から追尾航跡を作成したり、ステップST1−4で検出プロットを絞り込んだりしているためである。また、航跡信頼度計算部4において、検出抜け及び誤検出がある確率で発生することを前提として、式(10)、式(23)及び式(25)における検出確率pdと誤検出確率βFTのようなパラメータを用いて各追尾航跡の信頼度を計算しているためである。

また、実施の形態1によれば、従来技術である送信パルスを位相変調する方法と異なり、多次エコーの次数が3以上の場合においても目標の航跡を推定することができる。 さらに、実施の形態1によれば、次数の大きな多次エコー目標ほど位置の推定に多種類のPRIによる検出プロットを必要とするマルチPRIレンジングと異なり、PRI1、PRI2、・・・、PRIN(Nは2以上の整数)のうち、最低2種類のPRIによる検出プロットの時系列から、任意の次数の多次エコー目標に対して航跡を推定することができる。

したがって、実施の形態1に係る目標追尾装置1は、目標個数が未知であり、かつ誤検出が発生し、かつ目標検出の抜けが発生し、かつ異なる次数の多次エコーが同時に発生する場合に、各目標の航跡を推定することができる。

実施の形態2. 図7は、この発明の実施の形態2に係る目標追尾装置1の構成例を示すブロック図である。上記実施の形態1では、多次エコーの次数が観測中において変わらないことを前提とする構成であったが、実際は、図8にm次〜n次エコー航跡66として示すように、最大観測距離Rmaxのm倍(mは1以上の整数)の境界を跨ぐように移動する目標が存在し、n次エコー目標(nは1以上の整数、m

したがって実施の形態2では、多次エコーの次数がnとmの間で変わる多次エコー目標の航跡(以下、m次〜n次エコー航跡)も推定する構成とする。nの最大値は観測し得る多次エコーの最大の次数である。また、図8では跨ぐ境界が1つである場合について示したが、これに限定されるものではなく、複数の境界を跨ぐ場合もある。

図7に示すように、実施の形態2に係る目標追尾装置1は、m次エコー追尾フィルタ部3−mと、n次エコー追尾フィルタ部3−nと、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8と、複数の航跡信頼度計算部4と、航跡決定部6とを備えている。 なお、上述したようにm及びnは1以上の整数、かつm

つまり、図7に示されたm次エコー追尾フィルタ部3−m、n次エコー追尾フィルタ部3−n、航跡信頼度計算部4及び航跡決定部6の実装方法及び動作は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。

m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、多次エコー追尾フィルタ部である。 このm次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、図3のメモリ102に格納されたプログラムを実行するプロセッサ101である。プロセッサ101がメモリ102に格納されているプログラムを実行することにより、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8の機能が実現される。

m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、最新時刻フレームにおける検出プロットをレーダ2から受け取る。また、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、過去の時刻フレームにおけるm次エコー航跡をm次エコー追尾フィルタ部3−mから受け取ると共に、過去の時刻フレームにおけるn次エコー航跡をn次エコー追尾フィルタ部3−nから受け取る。そして、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、観測中に多次エコーの次数がnとmの間で変わる多次エコー目標の追尾航跡を作成し、対になった航跡信頼度計算部4に出力する。

m次〜n次エコー追尾フィルタ部8と対になった航跡信頼度計算部4は、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8からm次〜n次エコー航跡を受け取り、このm次〜n次エコー航跡の尤もらしさを表す値である航跡信頼度を計算する。そして、航跡信頼度計算部4は、m次〜n次エコー航跡と航跡信頼度を、航跡決定部6に出力する。

次に、時刻kにおけるm次〜n次エコー追尾フィルタ部8及び航跡信頼度計算部4の動作を、図9のフローチャートに沿って説明する。 なお、以下で用いる記号は、実施の形態1で定義したものと同じとする。

ステップST2−1において、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、m次〜n次エコー変換を行う。m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、レーダ2から入力された検出プロットがm次またはn次エコー目標の観測結果であると仮定し、検出プロットの位置をレーダ原点50から距離方向に一定距離移動させる。

例えば、PRIがTPRIのときに観測された検出プロットzkを変換する場合、m次エコー目標の観測結果であると仮定した場合の移動させる距離ΔRmは、式(27)より求まる。また、n次エコー目標の観測結果であると仮定した場合の移動させる距離ΔRnは、式(28)より求まる。

このとき、m次エコー目標の検出プロットとして変換したm次エコー検出プロットzk,m’は、式(29)のとおりになる。また、n次エコー目標の検出プロットとして変換したn次エコー検出プロットzk,n’は、式(30)のとおりになる。

式(29)及び式(30)のzk,R、zk,By、zk,Elは、極座標系における検出プロットであり、上述の式(7)で定義される。

以降のステップST2−2〜ST2−7では、上記のm次エコー検出プロットとn次エコー検出プロットを区別することなく「時刻kの検出プロットzk」として扱う。

ステップST2−2において、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、初期航跡追加を行う。m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、過去の検出プロットを基に、時刻k−1における新しい追尾航跡の候補、つまり初期航跡を作成する。過去の検出プロットはm次エコー検出プロットとn次エコー検出プロットがあるが、ステップST2−1にて記したように、ここではそれぞれの検出プロットは区別せずに初期航跡を作成する。 初期航跡は、実施の形態1と同様に、式(8)と式(9)より設定される。

ステップST2−3において、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、航跡予測を行う。m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、ステップST2−2で作成した初期航跡と、前の時刻k−1においてm次エコー追尾フィルタ部3−mが出力した追尾航跡と、前の時刻k−1においてn次エコー追尾フィルタ部3−nが出力した追尾航跡と、前の時刻k−1においてm次〜n次エコー追尾フィルタ部8が出力した追尾航跡について、時刻kでの予測航跡を求める。

予測航跡は、実施の形態1と同様に、式(11)と式(12)から作成される。ここで作成される予測航跡は3種類あり、1つはm次エコー航跡から作成される予測航跡、1つはn次エコー航跡から作成される予測航跡、1つはm次〜n次エコー航跡及び初期航跡から作成される予測航跡である。しかし、以降のステップST2−4〜ST2−7では、いずれの種類の予測航跡も区別せずに「時刻kの予測航跡」として扱う。

ステップST2−4において、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、航跡相関を求める。m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、時刻kの予測航跡の近傍にある時刻kの検出プロットを抽出し、次のステップST2−5において予測航跡を更新する際に用いる検出プロットを絞り込む。 予測航跡の近傍にある検出プロットを抽出する方法は、実施の形態1と同様に、例えば式(16)を用いて行われる。またステップST2−1及びステップST2−3で記したように、検出プロットの種類(m次エコー検出プロット、n次エコー検出プロット)及び予測航跡の種類(m次エコー航跡から作成された予測航跡、n次エコー航跡から作成された予測航跡、m次〜n次エコー航跡から作成された予測航跡)はここでは区別しない。

ステップST2−5において、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、航跡更新を行う。m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、予測航跡とその相関ゲート内の検出プロットから、時刻kにおける追尾航跡を作成する。また、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、予測航跡が時刻kでは検出プロットとして観測されなかった場合を表す航跡も、時刻kにおける追尾航跡として作成する。 予測航跡と相関ゲート内の検出プロットから追尾航跡を作成する方法は、実施の形態1と同様に、式(18)、式(19)、式(21)及び式(22)を用いて行われる。

ステップST2−6において、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8と対になった航跡信頼度計算部4は、航跡信頼度計算を行う。航跡信頼度計算部4は、予測航跡とその相関ゲート内にある検出プロットから、ステップST2−5で作成された追尾航跡の航跡信頼度を計算する。 航跡信頼度は、実施の形態1と同様に、式(23)、式(24)及び式(25)より計算される。

ステップST2−7において、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8と対になった航跡信頼度計算部4は、航跡削除を行う。航跡信頼度計算部4は、ステップST2−6において作成された時刻kの追尾航跡のうち、誤検出のみによって作成及び更新された航跡を削除するために、航跡信頼度が低い追尾航跡を削除する。m次〜n次エコー追尾フィルタ部8は、ここで削除されなかった複数の追尾航跡を「時刻kにおけるm次〜n次エコー追尾航跡」として航跡決定部6へ出力する。 航跡を削除する際の条件は、実施の形態1と同様に、式(26)により定義される。

上記のステップST2−1〜ST2−7によって、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8と、このm次〜n次エコー追尾フィルタ部8と対になる航跡信頼度計算部4とが動作する。航跡信頼度計算部4から出力されたm次〜n次エコー航跡とその航跡信頼度は、航跡決定部6において、実施の形態1と同様の動作によって選ばれる表示航跡の候補となる。

なお、図示は省略するが、目標追尾装置1は、m次エコー追尾フィルタ部3−mとn次エコー追尾フィルタ部3−nとm次〜n次エコー追尾フィルタ部8を、複数組備える構成であってもよい。例えば、3次エコー目標が検出される観測条件では、目標追尾装置1を、1次エコー追尾フィルタ部、2次エコー追尾フィルタ部、3次エコー追尾フィルタ部、1次〜2次エコー追尾フィルタ部、及び2次〜3次エコー追尾フィルタ部を備える構成にする。

以上のように構成された実施の形態2によれば、遠方から接近するまたは遠方へ離れていく目標を観測する場合、あるいはPRIが小さく多次エコーの次数が観測中に変わりやすい場合でも目標の追尾航跡が得られる。これは、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8が、前の時刻においてm次エコー目標として表していた追尾航跡を、n次エコー目標であると仮定した最新時刻の検出プロットで更新し、またn次エコー目標を表す航跡をm次エコー目標を仮定した検出プロットで更新することで、最大観測距離Rmaxの境界を跨ぐ目標の追尾航跡を作成するためである。

実施の形態3. 図10は、この発明の実施の形態3に係る目標追尾装置1の構成例を示すブロック図である。図10に示すように、実施の形態3に係る目標追尾装置1は、n次エコー追尾フィルタ部3−nと、航跡信頼度計算部4と、n次エコー計算ブロック5と、航跡決定部6とを備えている。航跡決定部6は、航跡仮説作成部9と、航跡仮説決定部10とを備えている。 なお、n次エコー追尾フィルタ部3−n、航跡信頼度計算部4及びn次エコー計算ブロック5の実装方法及び動作は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。 航跡仮説作成部9及び航跡仮説決定部10は、図3のメモリ102に格納されたプログラムを実行するプロセッサ101である。プロセッサ101がメモリ102に格納されているプログラムを実行することにより、航跡仮説作成部9及び航跡仮説決定部10の各機能が実現される。

上記実施の形態1及び実施の形態2では、航跡決定部6において最も信頼度の高い航跡を1つ選択することから分かるように、観測領域内に存在する目標が高々1個であることを前提に、尤もらしい追尾航跡を決定する構成である。しかし、広範囲を観測するレーダ2に対して目標追尾装置1を適用する場合、観測領域内に複数の目標が存在し得るため、実施の形態1及び実施の形態2の上記前提は成り立たない。 したがって実施の形態3では、航跡仮説作成部9が、1次エコー追尾フィルタ部3及びn次エコー追尾フィルタ部3−nで作成された多数の追尾航跡の候補の中から、同時に実現し得る追尾航跡の組み合わせを作成し、航跡仮説決定部10が、航跡信頼度の合計が最も高い追尾航跡の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに含まれる各追尾航跡を表示器7へ出力する構成とする。以下、追尾航跡の組み合わせを「航跡仮説」と表記する。

ここで、「同時に実現し得る追尾航跡の組み合わせ」とは、ある追尾航跡について図5のステップST1−5で航跡更新に用いた検出プロット履歴と、別の追尾航跡について図5のステップST1−5で航跡更新に用いた検出プロット履歴の中に、同じ検出プロットが含まれていないことと定義する。 例えば、ある追尾航跡T1が過去の検出プロットz1(T1)、z2(T1)、・・・、zk(T1)から作成された航跡とし、別の追尾航跡T2が過去の検出プロットz1(T2)、z2(T2)、・・・、zk(T2)から作成された航跡とする。このとき、もしいずれかの検出プロットに重複がある、すなわち何れかの時刻k’においてzk’(T1)=zk’(T2)であった場合、重複した検出プロットは追尾航跡T1と追尾航跡T2のいずれか一方が観測された結果であるため、追尾航跡T1と追尾航跡T2は同時に実現し得ない航跡となる。 ただしこの条件では、観測時間が長いほど多くの検出プロット履歴を遡る必要があり処理負荷が高くなるため、後述する動作の説明では、実用的な処理として過去L回分の時刻における検出プロットについてのみ重複を判定するものとする。

航跡仮説作成部9は、1次エコー追尾フィルタ部3と対になった航跡信頼度計算部4から1次エコー航跡とその航跡信頼度を受け取り、n次エコー追尾フィルタ部3−nと対になった航跡信頼度計算部4からn次エコー航跡とその航跡信頼度を受け取る。そして、航跡仮説作成部9は、受け取った多数の追尾航跡の中から1個以上の追尾航跡を組み合わせた航跡仮説を作成し、航跡仮説決定部10に出力する。

航跡仮説決定部10は、航跡仮説作成部9から航跡仮説を受け取り、航跡仮説に含まれる追尾航跡の航跡信頼度の合計を求める。以下、航跡仮説に含まれる追尾航跡の航跡信頼度の合計を「仮説信頼度」と表記する。そして、航跡仮説決定部10は、仮説信頼度が最大となった航跡仮説に含まれている単数または複数の追尾航跡を「表示航跡」として表示器7に出力する。

表示器7は、航跡仮説決定部10から単数または複数の表示航跡を受け取り、各表示航跡に含まれる目標の位置もしくは速度等の運動諸元、運動諸元の推定値の誤差を表す値、多次エコー次数、または航跡信頼度等を表示する。

次に、時刻kにおける航跡仮説作成部9及び航跡仮説決定部10の動作を、図11のフローチャートに沿って説明する。 なお、以下では、nは1以上の整数とし、1次エコー追尾フィルタ部3の動作を、n次エコー追尾フィルタ部3−nにおいてn=1の場合における動作として、まとめて説明する。 航跡仮説作成部9及び航跡仮説決定部10は、n次エコー追尾フィルタ部3−nと対になった航跡信頼度計算部4のそれぞれから、時刻kにおけるn次エコー航跡とその航跡信頼度とを受け取り、図11のフローチャートに示される処理を行う。

始めにステップST3−1において、航跡仮説決定部10は、暫定的な最大仮説信頼度を極小値、つまりプログラム上の最小の負値に設定する。 ステップST3−2において、航跡仮説作成部9は、受け取ったn次エコー航跡の中から、時刻kでの処理内における未作成の組み合わせの追尾航跡を組み合わせて、航跡仮説を作成する。このとき、航跡仮説には1個以上の追尾航跡が含まれているものとし、各追尾航跡がいずれの多次エコーを仮定した場合の航跡であるかは区別しない。

ステップST3−3において、航跡仮説作成部9は、作成した航跡仮説に含まれる各々の追尾航跡について、時刻kから時刻k−Lまでの間に、図5のステップST1−5で航跡更新に用いた検出プロットの履歴を比較する。なお、Lは、0以上の整数とし、性能と処理負荷のバランスを決定するパラメータである。Lが大きいほど航跡仮説の推定精度が高くなり、一方で処理負荷は高くなる。 もし、ステップST3−2で作成された航跡仮説に含まれる各々の追尾航跡の過去L回分の検出プロットの履歴の中に同じ検出プロットが含まれていた場合(ステップST3−3“NO”)、航跡仮説作成部9は、この航跡仮説は「同時に実現し得る追尾航跡の組み合わせ」ではないと判定して棄却し、ステップST3−7へ移行する。一方、各々の追尾航跡の過去L回分の検出プロットの履歴の中に同じ検出プロットが含まれていない場合(ステップST3−3“YES”)、航跡仮説作成部9は、この航跡仮説は「同時に実現し得る追尾航跡の組み合わせ」であると判定して、ステップST3−4へ移行する。

ステップST3−4において、航跡仮説決定部10は、「同時に実現し得る追尾航跡の組み合わせ」であると判定された航跡仮説を航跡仮説作成部9から受け取り、受け取った航跡仮説に含まれている各追尾航跡について、航跡信頼度の和を求め、仮説信頼度とする。仮説信頼度は、航跡仮説にどれほど多くの尤もらしい追尾航跡が含まれているかを表す値であり、値が大きいほど尤もらしい追尾航跡の組み合わせであることを表す。

ステップST3−5において、航跡仮説決定部10は、ステップST3−4で求めた仮説信頼度と、暫定的な最大仮説信頼度とを比較する。航跡仮説決定部10は、ステップST3−4で求めた仮説信頼度が暫定的な最大仮説信頼度より大きかった場合(ステップST3−5“YES”)、ステップST3−6へ移行する。一方、航跡仮説決定部10は、ステップST3−4で求めた仮説信頼度が暫定的な最大仮説信頼度以下であった場合(ステップST3−5“NO”)、ステップST3−6をスキップしてステップST3−7へ移行する。

ステップST3−6において、航跡仮説決定部10は、ステップST3−4の仮説信頼度で暫定的な最大仮説信頼度を上書きする。 ステップST3−7において、航跡仮説作成部9は、受け取ったn次エコー航跡から全通りの航跡仮説を作成し終えたか否かを判定する。航跡仮説作成部9は、全通りの航跡仮説を作成した場合(ステップST3−7“YES”)、ステップST3−8へ移行する。一方、航跡仮説作成部9は、未作成の組み合わせの航跡仮説がある場合(ステップST3−7“NO”)、ステップST3−2へ戻る。

ステップST3−8において、航跡仮説決定部10は、航跡仮説作成部9から全通りの航跡仮説を作成し終えた旨の通知を受け取り、この時点での最大仮説信頼度を持つ航跡仮説に含まれている追尾航跡すべてを、「表示航跡」として表示器7へ出力する。 以上のステップST3−1〜ST3−8によって、表示器7に単数または複数の表示航跡が出力される。

なお、上記説明では、実施の形態1における1次エコー追尾フィルタ部3、航跡信頼度計算部4及びn次エコー計算ブロック5に対して、実施の形態3における航跡仮説作成部9及び航跡仮説決定部10を適用したが、実施の形態2におけるm次エコー追尾フィルタ部3−m、n次エコー追尾フィルタ部3−n、m次〜n次エコー追尾フィルタ部8及び航跡信頼度計算部4に対して、実施の形態3における航跡仮説作成部9及び航跡仮説決定部10を適用してもよい。

以上のように構成された実施の形態3によれば、複数かつ多次エコーの次数が異なる目標が同時に観測される場合でも、各目標の追尾航跡を得ることができる。これは、航跡仮説作成部9及び航跡仮説決定部10によって、互いの追尾航跡が同じ検出プロットを共有せず、かつ尤もらしい追尾航跡が最も多く含まれる追尾航跡の組み合わせが出力されるためである。 この効果は特に、次数の異なる複数の多次エコー目標がレーダ2から出力される検出プロット上で近接して表れる場合において、各追尾航跡は同じ検出プロットを共有しないことを前提に表示する各追尾航跡が決定されるために、ある次数の多次エコー航跡の追尾航跡が別の次数の多次エコーに乗り移る事態が起こりにくくなる点で画期的である。

また、従来技術との違いとして、同時に観測される目標の個数が多いほど多種類のPRIで得られた検出プロットを必要とするマルチPRIレンジングと異なり、最低2種類のPRIによる検出プロットの時系列から、任意の個数の多次エコー目標に対してそれぞれの航跡を推定することができる点がある。これは、航跡仮説作成部9において目標個数の上限を設定することなく、追尾航跡の組み合わせを生成するためである。

ところで、上記説明では、目標追尾装置1を、レーダ装置の観測結果を基に目標の航跡を推定する場合に利用する例について説明したが、例えば音波による測距センサ等、レーダ以外の測距センサにも利用できることはいうまでもない。

なお、本発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、または各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。

この発明に係る目標追尾装置は、多次エコーに対して目標の正しい航跡を推定するようにしたので、複数種類のPRIで目標を観測するレーダ装置等に対して用いるのに適している。

1 目標追尾装置、2 レーダ、3 1次エコー追尾フィルタ部、3−m m次エコー追尾フィルタ部、3−n n次エコー追尾フィルタ部、4 航跡信頼度計算部、5 n次エコー計算ブロック、6 航跡決定部、7 表示器、8 m次〜n次エコー追尾フィルタ部(多次エコー追尾フィルタ部)、9 航跡仮説作成部、10 航跡仮説決定部、50 レーダ原点、51 1次エコー目標、52 2次エコー目標、53 3次エコー目標、54 1次エコー、55 2次エコー、56 3次エコー、61 1次エコー航跡、62 2次エコー航跡、63 3次エコー航跡、64 検出抜け、65 誤検出、66 m次〜n次エコー航跡、101 プロセッサ、102 メモリ、103 入力装置、104 出力装置。

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