定常加速度検知装置および鉄道車両用制振装置

申请号 JP2017014309 申请日 2017-01-30 公开(公告)号 JP6364100B1 公开(公告)日 2018-07-25
申请人 KYB株式会社; 发明人 小川 貴之;
摘要 【課題】高 精度 で定常 加速 度を検知できる定常加速度検知装置の提供と、曲線区間走行時における乗心地を向上できる鉄道車両制振装置の提供である。 【解決手段】本発明の定常加速度検知装置Dは、ローパスフィルタ処理した濾波後ヨー加速度ω’と濾波後スエー加速度β’に基づいて定常加速度αcを求める。また、鉄道車両用制振装置Vは、定常加速度検知装置Dが検知した定常加速度αcがセンタリング閾値α1以上となると、定常加速度αcに基づいて求めたセンタリング 力 fnと抑制力ff,frとに基づいて制御力Ff,Frを求める。 【選択図】図3
权利要求

鉄道車両の車体のスエー加速度を検知するスエー加速度検知部と、 前記車体のヨー加速度を検知するヨー加速度検知部と、 前記スエー加速度検知部が検知した前記スエー加速度を濾波するスエー加速度用ローパスフィルタと、 前記ヨー加速度検知部が検知した前記ヨー加速度を濾波するヨー加速度用ローパスフィルタとを備え、 前記スエー加速度用ローパスフィルタで処理された濾波後スエー加速度と、前記ヨー加速度用ローパスフィルタで処理された濾波後ヨー加速度とに基づいて前記鉄道車両が曲線区間を走行する際の定常加速度を求める定常加速度演算部とを備えた ことを特徴とする定常加速度検知装置。前記定常加速度演算部は、前記濾波後スエー加速度から前記濾波後ヨー加速度を減算して、前記定常加速度を求める ことを特徴とする請求項1に記載の定常加速度検知装置。鉄道車両の車体と台車との間に介装されて制御を発揮可能なアクチュエータと、 前記車体のヨー加速度とスエー加速度に基づいて前記車体の振動を抑制する前記制御力を求めて前記アクチュエータを制御するコントローラとを備え、 請求項1または2に記載の定常加速度検知装置とを備え、 前記コントローラは、前記定常加速度の絶対値がセンタリング閾値以上の場合、前記ヨー加速度と前記スエー加速度に基づいて求めた前記車体のヨー方向およびスエー方向の振動を抑制する抑制力と、前記定常加速度に基づいて求めた前記車体を中立位置へ戻す方向のセンタリング力とに基づいて前記制御力を求める ことを特徴とする鉄道車両用制振装置。前記アクチュエータは、伸縮可能なシリンダ装置と、モータによって駆動されて前記シリンダ装置に作動液体を供給可能なポンプとを有して、前記作動液体の前記シリンダ装置への供給によって前記制御力を発揮し、 前記コントローラは、前記センタリング力の上限を前記モータが定格トルクで前記ポンプを駆動する際に前記アクチュエータが発揮可能な力の最大値として前記センタリング力を求める ことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用制振装置。前記コントローラは、 前記抑制力を求める直線区間用制御部と曲線区間用制御部とを有し、 前記抑制力は、前記センタリング閾値より大きな曲線判定閾値を基準とし、前記定常加速度の絶対値が曲線判定閾値未満から前記曲線判定閾値以上となると、前記直線区間用制御部が求める抑制力から前記曲線区間用制御部が求める抑制力へ切換えられ、 前記抑制力は、前記センタリング閾値より大きな曲線判定閾値を基準とし、前記定常加速度が前記曲線判定閾値以上から前記曲線判定閾値未満となると、前記曲線区間用制御部が求める抑制力から前記直線区間用制御部が求める抑制力へ切換えられる ことを特徴とする請求項3または4に記載の鉄道車両用制振装置。前記コントローラは、前記直線区間用制御部が求める抑制力と前記曲線区間用制御部が求める抑制力との切換えに際して、切換前に選択されている抑制力をフェードアウトさせるとともに切換後に選択されるべき抑制力をインフェードインさせる ことを特徴とする請求項5に記載の鉄道車両用制振装置。

说明书全文

本発明は、定常加速度検知装置および鉄道車両用制振装置の改良に関する。

鉄道車両には、車体と台車との間に介装された複動型のアクチュエータと、アクチュエータを制御するコントローラを備えて、車体の進行方向に対して左右方向の振動を抑制する鉄道車両用制振装置が設けられる場合がある。

このような鉄道車両用制振装置は、鉄道車両の車体のスエー加速度とヨー加速度を検知して、加速度フィードバックによりアクチュエータを制御し、車体の左右動を抑制する(たとえば、特許文献1参照)。

また、鉄道車両用制振装置では、スエー加速度をローパスフィルタ処理して定常加速度を検知して鉄道車両が曲線区間を走行中であるか否かを判定しており、直線区間走行に適した制振制御と曲線区間走行に適した制振制御とを切換えて、制振効果を高めている。なお、定常加速度とは、鉄道車両が曲線区間を走行する際に車体に定常的に作用する遠心加速度を指す。

特開2014−46714号公報

しかしながら、前述の鉄道車両用制振装置では、スエー加速度をローパスフィルタ処理しているため、得られる定常加速度は実際の定常加速度より位相が遅れるので、精度良く定常加速度を得られない。

よって、曲線区間の入口では、直線区間を走行中であると判定され、曲線区間の出口では未だ曲線区間であると判定されてしまう傾向にあり、曲線区間を正確に判定できないという問題がある。

そこで、本発明は、高精度で定常加速度を検知できる定常加速度検知装置の提供と、曲線区間走行時における乗心地を向上できる鉄道車両制振装置の提供を目的としている。

本発明の定常加速度検知装置は、スエー加速度をスエー加速度用ローパスフィルタで処理した濾波後スエー加速度とヨー加速度をヨー加速度用ローパスフィルタで処理された濾波後ヨー加速度とに基づいて定常加速度を求めている。曲線区間の入口と出口では、ヨー加速度は、スエー加速度用ローパスフィルタで濾波して得たスエー加速度の低周波成分よりも早いタイミングで車体に作用するため、スエー加速度用ローパスフィルタで濾波して得たスエー加速度だけではなくヨー加速度ωを加味すると、位相遅れを補い、実際の定常加速度に対する位相遅れが無いか非常に少ない定常加速度が得られる。

また、定常加速度検知装置がスエー加速度からヨー加速度を減算して定常加速度を求めると、求めた定常加速度の実際の定常加速度に対する位相遅れを簡単な演算を用いて解消できる。

さらに、鉄道車両用制振装置は、定常加速度検知装置が検知した定常加速度がセンタリング閾値以上となると、定常加速度に基づいて求めたセンタリングと抑制力とに基づいて制御力を求める。このように構成された鉄道車両用制振装置では、センタリング力の発揮の要不要の判断を定常加速度の値で判定しており、変位センサを必要としない。そして、この鉄道車両用制振装置によれば、曲線区間走行時に振動を抑制する抑制力とセンタリング力を発揮でき、車体がストッパに接触して最圧縮させるのを抑制できるから、曲線区間走行時において台車側からの振動が車体に伝達するのを抑制できる。

また、鉄道車両用制振装置は、センタリング力の上限をモータが定格トルクでポンプを駆動する際にアクチュエータが発揮可能な力の最大値としてセンタリング力を求めるようになっていてもよい。このように構成された鉄道車両用制振装置では、アクチュエータがセンタリング力のみを出力しても、モータが出力可能な最大トルクまでには余力が残されているので、センタリング力を発揮しつつ車体の振動抑制のための抑制力も出力可能となる。よって、鉄道車両用制振装置によれば、曲線区間走行時において車体を中立位置へ戻すセンタリング力を発揮しつつ車体の振動を抑制する抑制力を発揮でき、曲線区間走行中の乗心地をより一層向上できる。

さらに、鉄道車両用制振装置は、抑制力を求めるために、直線区間用制御部と曲線区間用制御部とを有し、定常加速度の絶対値がセンタリング閾値より大きな曲線判定閾値未満から曲線判定閾値以上となると、直線区間用制御部が求める抑制力から曲線区間用制御部が求める抑制力へ切換え、定常加速度の絶対値が閾値以上から閾値未満となると、曲線区間用制御部が求める抑制力から直線区間用制御部が求める抑制力へ切換えてもよい。このように構成された鉄道車両用制振装置によれば、曲線区間の入口と出口でも最適な抑制力を発揮でき、走行区間に関わらず高い振動抑制効果が得られ、乗心地を向上できる。

また、鉄道車両用制振装置は、直線区間用制御部が求めた抑制力と曲線区間用制御部が求めた抑制力との切換えに際して、切換前に選択されている抑制力をフェードアウトさせるとともに切換後に選択されるべき抑制力をフェードインさせてもよい。このように構成された鉄道車両用制振装置によれば、直線区間用の抑制力と曲線区間用の抑制力の切換えに際して、抑制力の値が急変せずに済むので制御上安定性が向上する。

本発明の定常加速度検知装置によれば、高精度で定常加速度を検知できる。また、本発明の鉄道車両用制振装置によれば、曲線区間走行時における乗心地を向上できる。

鉄道車両用制振装置を搭載した鉄道車両の平面図である。

アクチュエータの詳細図である。

鉄道車両用制振装置におけるコントローラの制御ブロック図である。

鉄道車両用制振装置におけるコントローラの制御演算部の制御ブロック図である。

制御演算部におけるヨー抑制力演算部の制御ブロック図である。

直線区間用ゲインと曲線区間用ゲインを示した図である。

制御演算部におけるにおけるスエー抑制力演算部の制御ブロック図である。

制御演算部におけるセンタリング力演算部の制御ブロック図である。

制御演算部における制御力演算部の制御ブロック図である。

制御演算部における処理手順を示したフローチャートである。

以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における定常加速度検知装置Dは、鉄道車両用制振装置Vに適用されて鉄道車両の車体Bの制振に利用されている。鉄道車両用制振装置Vは、図1に示すように、前側の台車Tfと車体Bとの間に介装される前側のアクチュエータAfと、後側の台車Trと車体Bとの間に介装される後側のアクチュエータArと、これらアクチュエータAf,Arをアクティブ制御するコントローラCとを備えて構成されている。そして、定常加速度検知装置Dは、コントローラCの一部を構成している。

アクチュエータAf,Arは、詳細には、鉄道車両の場合、車体Bの下方に垂下されるピンPに連結され、車体Bと前後の台車Tf,Trとの間で対を成して並列に介装されている。台車Tf,Trは、車輪を回転自在に保持しており、車体Bと台車Tf,Trとの間には、図示しない懸架ばねが介装され、車体Bが下方から弾性支持されることにより、台車Tに対する車体Bの横方向への移動が許容されている。

そして、これら前後のアクチュエータAf,Arは、基本的には、アクティブ制御で車体Bの車両進行方向に対して平横方向の振動を抑制するようになっている。コントローラCは、前後のアクチュエータAf,Arを制御して前記車体Bの横方向の振動を抑制するようになっている。

コントローラCは、本例にあっては、車体Bの振動を抑制する制御を行う際に、車体Bの車体前部Bfの車両進行方向に対して水平横方向の横方向加速度αfと、車体Bの車体後部Brの車両進行方向に対して水平横方向の横方向加速度αrとを検知する。コントローラCは、横方向加速度αf,αrに基づいて前後の台車Tf,Trの直上における車体中心G周りの加速度であるヨー加速度ωを求めるとともに、車体Bの中心Gの水平横方向の加速度であるスエー加速度βと、定常加速度αcを求める。そして、コントローラCは、ヨー加速度ω、スエー加速度βおよび定常加速度αcに基づいて、各アクチュエータAf,Arで個々に発生すべき制御力Ff,Frを求める。さらに、コントローラCは、各アクチュエータAf,Arに制御力Ff,Fr通りの推力を発生させて車体Bの前記横方向の振動を抑制する。定常加速度検知装置Dは、ヨー加速度ωとスエー加速度βとに基づいて定常加速度αcを検知する。

つづいて、アクチュエータAf,Arの具体的な構成について説明する。これらアクチュエータAf,Arは、共に同じ構成である。なお、図示したところでは、アクチュエータAf,Arが台車Tf,Trに対して二つずつ設けられているが、一つのみを設けてもよい。また、各アクチュエータAf,Arに対して一つずつコントローラCを設けてもよい。

アクチュエータAf,Arは、本例では図2に示すように、鉄道車両の車体Bと台車Tの一方に連結されるシリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3と車体Bと台車Tf,Trの他方に連結されるロッド4と、シリンダ2内にピストン3で区画したロッド側室5とピストン側室6とを備えて伸縮可能なシリンダ装置Cyに加え、作動油を貯留するタンク7と、タンク7から作動油を吸い上げてロッド側室5へ作動油を供給可能なポンプ12と、ポンプ12を駆動するモータ15と、シリンダ装置Cyの伸縮の切換と推力を制御する液圧回路HCとを備えており、片ロッド型のアクチュエータとして構成されている。

また、前記ロッド側室5とピストン側室6には、本例では、作動液体として作動油が充填されるとともに、タンク7には、作動油のほかに気体が充填されている。なお、タンク7内は、特に、気体を圧縮して充填して加圧状態とする必要は無い。また、作動液体は、作動油以外にも他の液体を利用してもよい。

液圧回路HCは、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第一通路8の途中に設けた第一開閉弁9と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第二通路10の途中に設けた第二開閉弁11とを備えている。

そして、基本的には、第一開閉弁9で第一通路8を連通状態とし、第二開閉弁11を閉じてポンプ12を駆動すると、シリンダ装置Cyが伸長し、第二開閉弁11で第二通路10を連通状態とし、第一開閉弁9を閉じてポンプ12を駆動すると、シリンダ装置Cyが収縮する。

以下、アクチュエータAf,Arの各部について詳細に説明する。シリンダ2は筒状であって、その図2中右端は蓋13によって閉塞され、図2中左端には環状のロッドガイド14が取り付けられている。また、前記ロッドガイド14内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されている。このロッド4は、一端をシリンダ2外へ突出させており、シリンダ2内の他端をシリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3に連結している。

なお、ロッドガイド14の外周とシリンダ2との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ2内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ2内にピストン3によって区画されるロッド側室5とピストン側室6には、前述のように作動油が充填されている。

また、このシリンダ装置Cyの場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積がピストン側室6側の受圧面積の二分の一となるようになっている。よって、伸長作動時と収縮作動時とでロッド側室5の圧力を同じにすると、伸縮の双方で発生される推力が等しくなり、シリンダ装置Cyの変位量に対する作動油量も伸縮両側で同じとなる。

詳しくは、シリンダ装置Cyを伸長作動させる場合、ロッド側室5とピストン側室6を連通させた状態とする。すると、ロッド側室5内とピストン側室6内の圧力が等しくなり、アクチュエータAf,Arは、ピストン3におけるロッド側室5側とピストン側室6側の受圧面積差に前記圧力を乗じた推力を発生する。反対に、シリンダ装置Cyを収縮作動させる場合、ロッド側室5とピストン側室6との連通を断ちピストン側室6をタンク7に連通させた状態とする。すると、アクチュエータAf,Arは、ロッド側室5内の圧力とピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積を乗じた推力を発生する。

要するに、アクチュエータAf,Arの発生推力は伸縮の双方でピストン3の断面積の二分の一にロッド側室5の圧力を乗じた値となるのである。したがって、このアクチュエータAf,Arの推力を制御する場合、伸長作動、収縮作動共に、ロッド側室5の圧力を制御すればよい。また、本例のアクチュエータAf,Arでは、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積をピストン側室6側の受圧面積の二分の一に設定しているので、伸縮両側で同じ推力を発生する場合に伸長側と収縮側でロッド側室5の圧力が同じとなるので制御が簡素となる。加えて、変位量に対する作動油量も同じとなるので伸縮両側で応答性が同じとなる利点がある。なお、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積をピストン側室6側の受圧面積の二分の一に設定しない場合にあっても、ロッド側室5の圧力でアクチュエータAf,Arの伸縮両側の推力を制御できる点は変わらない。

戻って、ロッド4の図2中左端とシリンダ2の右端を閉塞する蓋13とには、図示しない取付部を備えており、このアクチュエータAf,Arを鉄道車両における車体Bと台車Tf,Trとの間に介装できるようになっている。

そして、ロッド側室5とピストン側室6とは、第一通路8によって連通されており、この第一通路8の途中には、第一開閉弁9が設けられている。この第一通路8は、シリンダ2外でロッド側室5とピストン側室6とを連通しているが、ピストン3に設けられてもよい。

第一開閉弁9は、電磁開閉弁とされており、第一通路8を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジションと、第一通路8を遮断してロッド側室5とピストン側室6との連通を断つ遮断ポジションとを備えている。そして、この第一開閉弁9は、通電時に連通ポジションを採り、非通電時に遮断ポジションを採るようになっている。

つづいて、ピストン側室6とタンク7とは、第二通路10によって連通されており、この第二通路10の途中には、第二開閉弁11が設けられている。第二開閉弁11は、電磁開閉弁とされており、第二通路10を開放してピストン側室6とタンク7とを連通する連通ポジションと、第二通路10を遮断してピストン側室6とタンク7との連通を断つ遮断ポジションとを備えている。そして、この第二開閉弁11は、通電時に連通ポジションを採り、非通電時に遮断ポジションを採るようになっている。

ポンプ12は、コントローラCに制御されて所定の回転数で回転するモータ15によって駆動され、一方向のみに作動油を吐出するポンプとされている。そして、ポンプ12の吐出口は供給通路16によってロッド側室5へ連通されるとともに吸込口はタンク7に通じていて、ポンプ12は、モータ15によって駆動されるとタンク7から作動油を吸込んでロッド側室5へ作動油を供給する。

前述のようにポンプ12は、一方向のみに作動油を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量が変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用できる。さらに、ポンプ12の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ12を駆動する駆動源であるモータ15にあっても回転切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ15も安価なものを使用できる。なお、供給通路16の途中には、ロッド側室5からポンプ12への作動油の逆流を阻止する逆止弁17が設けられている。

さらに、本例の液圧回路HCは、前述の構成に加えて、ロッド側室5とタンク7とを接続する排出通路21と、排出通路21の途中に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22を備えている。

可変リリーフ弁22は、本例では、比例電磁リリーフ弁とされており、供給される電流量に応じて開弁圧を調節でき、前記電流量が最大となると開弁圧を最小とし、電流の供給がないと開弁圧を最大とするようになっている。

このように、排出通路21と可変リリーフ弁22とを設けると、シリンダ装置Cyを伸縮作動させる際に、ロッド側室5内の圧力を可変リリーフ弁22の開弁圧に調節でき、アクチュエータAf,Arの推力を可変リリーフ弁22へ供給する電流量で制御できる。排出通路21と可変リリーフ弁22とを設けると、アクチュエータAf,Arの推力を調節するために必要なセンサ類が不要となり、ポンプ12の吐出流量の調節のためにモータ15を高度に制御する必要もなくなる。よって、鉄道車両用制振装置Vが安価となり、ハードウェア的にもソフトウェア的にも堅牢なシステムを構築できる。

なお、第一開閉弁9を開いて第二開閉弁11を閉じる場合或いは第一開閉弁9を閉じて第二開閉弁11を開く場合、ポンプ12の駆動状況に関わらず、外力からの振動入力に対して伸長或いは収縮のいずれか一方にのみアクチュエータAf,Arが減衰力を発揮できる。よって、たとえば、減衰力を発揮する方向が鉄道車両の台車Tf,Trの振動により車体Bを加振する方向である場合、そのような方向には減衰力を出さないようにアクチュエータAf,Arを片効きのダンパと機能させ得る。よって、このアクチュエータAf,Arは、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現できるため、セミアクティブダンパとしても機能できる。

なお、可変リリーフ弁22に与える電流量で開弁圧を比例的に変化させる比例電磁リリーフ弁を用いると開弁圧の制御が簡単となるが、開弁圧を調節できる可変リリーフ弁であれば比例電磁リリーフ弁に限定されない。

そして、可変リリーフ弁22は、第一開閉弁9および第二開閉弁11の開閉状態に関わらず、シリンダ装置Cyに伸縮方向の過大な入力があって、ロッド側室5の圧力が開弁圧を超える状態となると、排出通路21を開放する。このように、可変リリーフ弁22は、ロッド側室5の圧力が開弁圧以上となると、ロッド側室5内の圧力をタンク7へ排出するので、シリンダ2内の圧力が過大となるのを防止してアクチュエータAf,Arのシステム全体を保護する。よって、排出通路21と可変リリーフ弁22を設けると、システムの保護も可能となる。

さらに、本例のアクチュエータAf,Arにおける液圧回路HCは、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路18と、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路19を備えている。よって、本例のアクチュエータAf,Arでは、第一開閉弁9および第二開閉弁11が閉弁する状態でシリンダ装置Cyが伸縮すると、シリンダ2内から作動油が押し出される。シリンダ2内から排出された作動油の流れに対して可変リリーフ弁22が抵抗を与えるので、第一開閉弁9および第二開閉弁11が閉弁する状態では、本例のアクチュエータAf,Arはユニフロー型のダンパとして機能する。

より詳細には、整流通路18は、ピストン側室6とロッド側室5とを連通しており、途中に逆止弁18aが設けられ、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。さらに、吸込通路19は、タンク7とピストン側室6とを連通しており、途中に逆止弁19aが設けられ、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、整流通路18は、第一開閉弁9の遮断ポジションを逆止弁とすると第一通路8に集約でき、吸込通路19についても、第二開閉弁11の遮断ポジションを逆止弁とすると第二通路10に集約できる。

このように構成されたアクチュエータAf,Arでは、第一開閉弁9と第二開閉弁11がともに遮断ポジションを採っても、整流通路18、吸込通路19および排出通路21で、ロッド側室5、ピストン側室6およびタンク7を数珠繋ぎに連通させる。また、整流通路18、吸込通路19および排出通路21は、一方通行の通路に設定されている。よって、シリンダ装置Cyが外力によって伸縮すると、シリンダ2から必ず作動油が排出されて排出通路21を介してタンク7へ戻され、シリンダ2で足りなくなる作動油は吸込通路19を介してタンク7からシリンダ2内へ供給される。この作動油の流れに対して前記可変リリーフ弁22が抵抗となってシリンダ2内の圧力を開弁圧に調節するので、アクチュエータAf,Arは、パッシブなユニフロー型のダンパとして機能する。

また、アクチュエータAf,Arの各機器への通電が不能となるようなフェール時には、第一開閉弁9と第二開閉弁11のそれぞれが遮断ポジションを採り、可変リリーフ弁22は、開弁圧が最大に固定された圧力制御弁として機能する。よって、このようなフェール時には、アクチュエータAf,Arは、自動的に、パッシブダンパとして機能する。

つづいて、アクチュエータAf,Arに所望の伸長方向の推力を発揮させる場合、コントローラCは、基本的には、モータ15を回転させてポンプ12からシリンダ2内へ作動油を供給しつつ、第一開閉弁9を連通ポジションとし、第二開閉弁11を遮断ポジションとする。このようにすると、ロッド側室5とピストン側室6とが連通状態におかれて両者にポンプ12から作動油が供給され、ピストン3が図2中左方へ押されアクチュエータAf,Arは伸長方向の推力を発揮する。ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧を上回ると、可変リリーフ弁22が開弁して作動油が排出通路21を介してタンク7へ排出される。よって、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力は、可変リリーフ弁22に与える電流量で決まる可変リリーフ弁22の開弁圧にコントロールされる。そして、アクチュエータAf,Arは、ピストン3におけるピストン側室6側とロッド側室5側の受圧面積差に可変リリーフ弁22によってコントロールされるロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力を乗じた値の伸長方向の推力を発揮する。

これに対して、アクチュエータAf,Arに所望の収縮方向の推力を発揮させる場合、コントローラCは、モータ15を回転させてポンプ12からロッド側室5内へ作動油を供給しつつ、第一開閉弁9を遮断ポジションとし、第二開閉弁11を連通ポジションとする。このようにすると、ピストン側室6とタンク7が連通状態におかれるとともにロッド側室5にポンプ12から作動油が供給されるので、ピストン3が図2中右方へ押されアクチュエータAf,Arは収縮方向の推力を発揮する。そして、前述と同様に、可変リリーフ弁22の電流量を調節すると、アクチュエータAf,Arは、ピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積と可変リリーフ弁22にコントロールされるロッド側室5内の圧力を乗じた収縮方向の推力を発揮する。

ここで、アクチュエータAf,Arが外力で伸縮するのではなく、自ら伸縮する場合、ロッド側室5の圧力の上限は、モータ15が駆動するポンプ12の吐出圧に制限される。つまり、アクチュエータAf,Arが外力で伸縮するのではなく、自ら伸縮する場合、ロッド側室5の圧力の上限は、モータ15が出力可能な最大トルクに制限される。

また、アクチュエータAf,Arにあっては、アクチュエータとして機能するのみならず、モータ15の駆動状況に関わらず、第一開閉弁9と第二開閉弁11の開閉のみでダンパとしても機能できる。また、アクチュエータAf,Arをアクチュエータからダンパへ切換える際に、面倒かつ急峻な第一開閉弁9と第二開閉弁11の切換動作を伴わないので、応答性および信頼性が高いシステムを提供できる。

なお、本例のアクチュエータAf,Arにあっては、片ロッド型に設定されているので、両ロッド型のアクチュエータに比較してストローク長を確保しやすく、アクチュエータの全長が短くなって、鉄道車両への搭載性が向上する。

また、本例のアクチュエータAf,Arにおけるポンプ12からの作動油供給および伸縮作動による作動油の流れは、ロッド側室5、ピストン側室6を順に通過して最終的にタンク7へ還流するようになっている。そのため、ロッド側室5あるいはピストン側室6内に気体が混入しても、シリンダ装置Cyの伸縮作動によって自立的にタンク7へ排出されるので、推力発生の応答性の悪化を阻止できる。したがって、アクチュエータAf,Arの製造にあたって、面倒な油中での組立や真空環境下での組立を強いられず、作動油の高度な脱気も不要となるので、生産性が向上するとともに製造コストを低減できる。さらに、ロッド側室5あるいはピストン側室6内に気体が混入しても、気体は、シリンダ装置Cyの伸縮作動によって自立的にタンク7へ排出されるので、性能回復のためのメンテナンスを頻繁に行う必要もなくなり、保守面における労力とコスト負担を軽減できる。

つづいて、コントローラCは、図3に示すように、車体前側としての車体前部Bfの横方向加速度αfを検知する前側加速度センサ41fと、車体後側としての車体後部Brの横方向加速度αrを検知する後側加速度センサ41rと、前後のアクチュエータAf,Arが出力すべき制御力Ff,Frを求める制御演算部44と、制御力Ff,Frに基づいてモータ15、第一開閉弁9、第二開閉弁11、可変リリーフ弁22を駆動する駆動部45とを備えている。

前側加速度センサ41fと後側加速度センサ41rは、図1中車体Bの中央を左右に通る軸を基準として上方側へ向く方向となる場合に、横方向加速度αf,αrを正の値として検知し、反対に図1中下方側へ向く方向となる場合に負の値として検知する。

以下、コントローラCの各部について詳細に説明する。制御演算部44は、図4に示すように、車体Bのヨーを抑制するヨー抑制力fωを求めるヨー抑制力演算部50と、車体Bのスエーを抑制するスエー抑制力fβを求めるスエー抑制力演算部51と、車体Bを中立位置へ戻す方向のセンタリング力fnを求めるセンタリング力演算部52と、センタリング力ゲイン変更部53と、抑制力ゲイン変更部54と、各アクチュエータAf,Arが発揮すべき制御力Ff,Frを求める制御力演算部55とを備えている。

ヨー抑制力演算部50は、図5に示すように、横方向加速度αf,αrからヨー加速度ωを求めるヨー加速度演算部501と、ヨー加速度ωを濾波する第一直線区間用バンドパスフィルタ502と、ヨー加速度ωを濾波する第一曲線区間用バンドパスフィルタ503と、直線区間用ヨー制御部504と、曲線区間用ヨー制御部505と、直線区間用ヨー制御部504が求めた直線区間用ヨー抑制力fωsに直線区間用ゲインGsを乗じるゲイン乗算部506と、曲線区間用ヨー制御部505が求めた曲線区間用ヨー抑制力fωcに曲線区間用ゲインGcを乗じるゲイン乗算部507と、最終的なヨー抑制力fωを求める加算部508とを備えている。

ヨー加速度演算部501は、前側の横方向加速度αfと後側の横方向加速度αrの差を2で割って前側の台車Tfと後側の台車Trのそれぞれの直上における車体中心G周りのヨー加速度ωを求める。ヨー加速度演算部501は、車体中心Gを中心として車体Bを時計回り方向へ回転させる方向のヨー加速度ωを正の値とし、これとは反対方向のヨー加速度ωを負の値として求める。前側加速度センサ41fの設置箇所は、ヨー加速度ωを求める都合上、車体Bの中心Gを含む前後方向または対角方向に沿う線上であって前側アクチュエータAfの近傍に配置されるとよい。また、後側加速度センサ41rの設置箇所は、車体Bの中心Gを含む前後方向または対角方向に沿う線上であって後側アクチュエータArの近傍に配置されるとよい。しかしながら、中心Gと前側加速度センサ41fと後側加速度センサ41rの距離と位置関係と横方向加速度αf,αrとからヨー加速度ωを求められるので前側加速度センサ41fと後側加速度センサ41rを任意に設定してよい。その場合、ヨー加速度ωは、横方向加速度αfと横方向加速度αrの差を2で割って求めるのではなく、前記横方向加速度αfと横方向加速度αrの差と、車体Bの中心Gと各加速度センサ41f,41rとの距離、位置関係からヨー加速度ωを得るようにすればよい。具体的には、前側加速度センサ41fと車体Bの中心Gとの前後方向距離Lfと、前側加速度センサ41rと車体Bの中心Gとの前後方向距離Lrとすると、ヨー加速度ωは、ω=(αf−αr)/(Lf+Lr)で計算できる。本例では、ヨー加速度ωを前側加速度センサ41fと前側加速度センサ41rで加速度を検知して求めているが、ヨー加速度センサを用いて検知するようにしてもよい。なお、ヨー加速度演算部501が求めたヨー加速度ωは、センタリング力演算部52にも入力される。

第一直線区間用バンドパスフィルタ502は、ヨー加速度ωにおける鉄道車両が直線区間を走行する際の車体Bの共振周波数帯の成分を抽出する目的で設けられている。台車Tf,Trによって弾性支持される車体Bは、直線区間走行時には車体Bの台車Tf,Trに対する横方向の移動を制限範囲に規制するストッパ(図示せず)に通常接触しないので、車体Bの共振周波数は、1Hzから1.5Hzまでの間にある。よって、第一直線区間用バンドパスフィルタ502は、ヨー加速度演算部501が求めたヨー加速度ωを濾波してヨー加速度ωに含まれる1Hzから1.5Hzまでの周波数帯の成分を抽出する。

第一曲線区間用バンドパスフィルタ503は、ヨー加速度ωにおける鉄道車両が曲線区間を走行する際の車体Bの共振周波数帯の成分を抽出する目的で設けられている。台車Tf,Trによって弾性支持される車体Bは、曲線区間走行時には車体Bの図示しない前述のストッパへの接触が想定され、車体Bがストッパに接触する分、車体Bの共振周波数は、直線区間走行時よりも高くなり、2Hzから3Hzまでの間にある。よって、第一曲線区間用バンドパスフィルタ503は、ヨー加速度演算部501が求めたヨー加速度ωを濾波してヨー加速度ωに含まれる2Hzから3Hzまでの周波数帯の成分を抽出する。

直線区間用ヨー制御部504は、H∞制御器とされており、第一直線区間用バンドパスフィルタ502が抽出したヨー加速度ωの共振周波数帯の成分から車体Bのヨーを抑制する直線区間用ヨー抑制力fωsを演算する。第一直線区間用バンドパスフィルタ502が抽出したヨー加速度ωの共振周波数帯の成分は、直線区間走行時における車体Bのヨー方向の共振周波数帯の振動加速度である。したがって、直線区間用ヨー制御部504が求める直線区間用ヨー抑制力fωsは、直線区間走行時における車体Bのヨー方向の振動の抑制に適する抑制力となる。

曲線区間用ヨー制御部505は、H∞制御器とされており、第一曲線区間用バンドパスフィルタ503が抽出したヨー加速度ωの共振周波数帯の成分から車体Bのヨーを抑制する曲線区間用ヨー抑制力fωcを演算する。第一曲線区間用バンドパスフィルタ503が抽出したヨー加速度ωの共振周波数帯の成分は、曲線区間走行時における車体Bのヨー方向の共振周波数帯の振動加速度である。したがって、曲線区間用ヨー制御部505が求める曲線区間用ヨー抑制力fωcは、曲線区間走行時における車体Bのヨー方向の振動の抑制に適する抑制力となる。

ゲイン乗算部506は、直線区間用ヨー制御部504が求めた直線区間用ヨー抑制力fωsに直線区間用ゲインGsを乗じて出力する。ゲイン乗算部507は、曲線区間用ヨー制御部505が求めた曲線区間用ヨー抑制力fωcに曲線区間用ゲインGcを乗じて出力する。

直線区間用ゲインGsおよび曲線区間用ゲインGcは、図6に示すように、抑制力ゲイン変更部54により、鉄道車両の走行区間の判定の結果に応じて値が0から1まで変更される。直線区間用ゲインGsは、鉄道車両が直線区間を走行中である場合に、1の値を採り、曲線区間を走行中である場合に0の値を採る。他方、曲線区間用ゲインGcは、鉄道車両が直線区間を走行中である場合に、0の値を採り、曲線区間を走行中である場合に1の値を採る。また、直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcは、0から1へ或いは1から0へ徐々に値が変化するように変更され、両者の値の合計は、常に1とされており、0から1へ或いは1から0へ変化する途中でも両者の合計値は1となるように設定される。各ゲインGs,Gcの変更については、後述する抑制力ゲイン変更部54の説明と共に詳述する。

そして、加算部508は、直線区間用ゲインGsが乗じられた直線区間用ヨー抑制力fωsと、曲線区間用ゲインGcが乗じられた曲線区間用ヨー抑制力fωcを加算して最終的なヨー抑制力fωを求める。よって、ヨー抑制力fωは、基本的には、鉄道車両が直線区間を走行中の場合には直線区間用ヨー抑制力fωsとなり、鉄道車両が曲線区間を走行中の場合には曲線区間用ヨー抑制力fωcとなる。つまり、直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcは、直線区間に適する直線区間用ヨー抑制力fωsと曲線区間に適する曲線区間用ヨー抑制力fωcとのいずれかを、ヨー抑制力fωとして選択するための係数となっている。また、直線区間用ヨー抑制力fωsと曲線区間用ヨー抑制力fωcの切換えに際して、直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcとの値の合計は常に1となるので、ヨー抑制力fωが過少や過大とならず、制御が不安定にならずに済む。このようにしてヨー抑制力fωが求められると、鉄道車両の走行区間が直線区間から曲線区間に遷移する場合には、ゲインGs,Gcの変化によって、直線区間用ヨー抑制力fωsがフェードアウトしつつ曲線区間用ヨー抑制力fωcがフェードインして両者が切換わる。また、このようにしてヨー抑制力fωが求められると、鉄道車両の走行区間が曲線区間から直線区間に遷移する場合には、ゲインGs,Gcの変化によって、曲線区間用ヨー抑制力fωcがフェードアウトしつつ直線区間用ヨー抑制力fωsがフェードインして両者が切換わる。

スエー抑制力演算部51は、図7に示すように、横方向加速度αf,αrからスエー加速度βを求めるスエー加速度演算部511と、スエー加速度βを濾波する第二直線区間用バンドパスフィルタ512と、スエー加速度βを濾波する第二曲線区間用バンドパスフィルタ513と、直線区間用スエー制御部514と、曲線区間用スエー制御部515と、直線区間用スエー制御部514が求めた直線区間用スエー抑制力fβsに直線区間用ゲインGsを乗じるゲイン乗算部516と、曲線区間用スエー制御部515が求めた曲線区間用スエー抑制力fβcに曲線区間用ゲインGcを乗じるゲイン乗算部517と、最終的なスエー抑制力fβを求める加算部518とを備えている。

スエー加速度演算部511は、横方向加速度αfと横方向加速度αrの和を2で割って車体Bの中心Gのスエー加速度βを求める。なお、スエー加速度演算部511が求めたスエー加速度βは、センタリング力演算部52にも入力される。スエー加速度演算部511は、図1中車体Bの中央を左右に通る軸を基準として上方側へ向く方向のスエー加速度βを正の値とし、反対方向のスエー加速度βを負の値として求める。

第二直線区間用バンドパスフィルタ512は、スエー加速度βにおける鉄道車両が直線区間を走行する際の車体Bの共振周波数帯の成分を抽出する目的で設けられている。第二直線区間用バンドパスフィルタ512が通過を許容する周波数帯は、第一直線区間用バンドパスフィルタ502と同様に1Hzから1.5Hzまでの周波数帯に設定されている。よって、第二直線区間用バンドパスフィルタ512は、スエー加速度演算部511が求めたスエー加速度βを濾波してスエー加速度βに含まれる1Hzから1.5Hzまでの周波数帯の成分を抽出する。

第二曲線区間用バンドパスフィルタ513は、スエー加速度βにおける鉄道車両が曲線区間を走行する際の車体Bの共振周波数帯の成分を抽出する目的で設けられている。第二曲線区間用バンドパスフィルタ513が通過を許容する周波数帯は、第一曲線区間用バンドパスフィルタ503と同様に2Hzから3Hzまでの周波数帯に設定されている。よって、第二曲線区間用バンドパスフィルタ513は、スエー加速度演算部511が求めたスエー加速度βを濾波してスエー加速度βに含まれる2Hzから3Hzまでの周波数帯の成分を抽出する。

直線区間用スエー制御部514は、H∞制御器とされており、第二直線区間用バンドパスフィルタ512が抽出したスエー加速度βの共振周波数帯の成分から車体Bのスエーを抑制する直線区間用スエー抑制力fβsを演算する。第二直線区間用バンドパスフィルタ512が抽出したスエー加速度βの共振周波数帯の成分は、直線区間走行時における車体Bのスエー方向の共振周波数帯の振動加速度である。したがって、直線区間用スエー制御部514が求める直線区間用スエー抑制力fβsは、直線区間走行時における車体Bのスエー方向の振動の抑制に適する抑制力となる。

曲線区間用スエー制御部515は、H∞制御器とされており、第二曲線区間用バンドパスフィルタ513が抽出したスエー加速度βの共振周波数帯の成分から車体Bのスエーを抑制する曲線区間用スエー抑制力fβcを演算する。第二曲線区間用バンドパスフィルタ513が抽出したスエー加速度βの共振周波数帯の成分は、曲線区間走行時における車体Bのスエー方向の共振周波数帯の振動加速度である。したがって、曲線区間用スエー制御部515が求める曲線区間用スエー抑制力fβcは、曲線区間走行時における車体Bのスエー方向の振動の抑制に適する抑制力となる。

ゲイン乗算部516は、直線区間用スエー制御部514が求めた直線区間用スエー抑制力fβsに直線区間用ゲインGsを乗じて出力する。ゲイン乗算部517は、曲線区間用スエー制御部515が求めた曲線区間用スエー抑制力fβcに曲線区間用ゲインGcを乗じて出力する。直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcは、前述したゲインであり、前述同様に値が0から1まで変化するゲインである。

そして、加算部518は、直線区間用ゲインGsが乗じられた直線区間用スエー抑制力fβsと、曲線区間用ゲインGcが乗じられた曲線区間用スエー抑制力fβcを加算して最終的なスエー抑制力fβを求める。よって、スエー抑制力fβは、基本的には、鉄道車両が直線区間を走行中の場合には直線区間用スエー抑制力fβsとなり、鉄道車両が曲線区間を走行中の場合には曲線区間用スエー抑制力fβcとなる。つまり、スエー抑制力演算部51においては、直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcは、直線区間に適する直線区間用スエー抑制力fβsと曲線区間に適する曲線区間用スエー抑制力fβcのいずれかをスエー抑制力fβとして選択するための係数となっている。また、直線区間用スエー抑制力fβsと曲線区間用スエー抑制力fβcの切換えに際して、直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcとの値の合計は常に1となるので、スエー抑制力fβが過少や過大とならず、制御が不安定にならずに済む。このようにしてスエー抑制力fβが求められると、鉄道車両の走行区間が直線区間から曲線区間に遷移する場合には、ゲインGs,Gcの変化によって、直線区間用スエー抑制力fβsがフェードアウトしつつ曲線区間用スエー抑制力fβcがフェードインして両者が切換わる。また、このようにしてスエー抑制力fβが求められると、鉄道車両の走行区間が曲線区間から直線区間に遷移する場合には、ゲインGs,Gcの変化によって、曲線区間用スエー抑制力fβcがフェードアウトしつつ直線区間用スエー抑制力fβsがフェードインして両者が切換わる。

センタリング力演算部52は、図8に示すように、ヨー加速度演算部501が出力するヨー加速度ωを濾波するヨー加速度用ローパスフィルタ521と、スエー加速度演算部511が出力するスエー加速度βを濾波するスエー加速度用ローパスフィルタ522と、ヨー加速度用ローパスフィルタ521で濾波したヨー加速度ωを濾波するヨー加速度用ハイパスフィルタ523と、スエー加速度用ローパスフィルタ522で濾波したスエー加速度βを濾波するスエー加速度用ハイパスフィルタ524と、フィルタ処理後の濾波後スエー加速度β’から濾波後ヨー加速度ω’を減算して定常加速度αcを求める定常加速度演算部525と、求められた定常加速度αcからセンタリング力fnを求めるセンタリング力算出部526と、センタリング力fnにセンタリング力ゲインGnを乗じるゲイン乗算部527とを備えている。

ヨー加速度用ローパスフィルタ521は、ヨー加速度演算部501が求めたヨー加速度ωを濾波してヨー加速度ωの低周波成分を抽出する。具体的には、ヨー加速度用ローパスフィルタ521のカットオフ周波数は0.3Hz程度に設定されており、ヨー加速度ωに含まれる0.3Hz以下の低周波成分を抽出できる。ヨー加速度用ローパスフィルタ521で濾波された濾波後ヨー加速度ω’は、ヨー加速度用ハイパスフィルタ523で濾波されて、濾波後ヨー加速度ω’から各加速度センサ41f,41rのドリフト成分が除去される。ヨー加速度用ハイパスフィルタ523のカットオフ周波数は、ヨー加速度用ローパスフィルタ521のカットオフ周波数より十分に低い値に設定されており、定常加速度αcを得るのに影響を与えない程度の周波数に設定される。

スエー加速度用ローパスフィルタ522は、スエー加速度演算部511が求めたスエー加速度βを濾波してスエー加速度βに含まれる低周波成分を抽出する。具体的には、スエー加速度用ローパスフィルタ522のカットオフ周波数は0.3Hz程度に設定されており、スエー加速度βに含まれる0.3Hz以下の成分を抽出できる。スエー加速度用ローパスフィルタ522で濾波された濾波後スエー加速度β’は、スエー加速度用ハイパスフィルタ524で濾波されて、濾波後スエー加速度β’から各加速度センサ41f,41rのドリフト成分が除去される。スエー加速度用ハイパスフィルタ524のカットオフ周波数は、スエー加速度用ローパスフィルタ522のカットオフ周波数より十分に低い値に設定されており、定常加速度αcを得るのに影響を与えない程度の周波数に設定される。

定常加速度演算部525は、定常加速度αcを求める。基本的には、スエー加速度βに含まれる定常加速度成分を抽出するためにスエー加速度用ローパスフィルタ522を用いるが、ローパスフィルタでスエー加速度βを濾波すると濾波後スエー加速度β’の位相がスエー加速度βの位相に対して遅れてしまう。よって、ローパスフィルタ処理した濾波後スエー加速度β’は、実際の定常加速度αcよりも位相が遅れるため、単に、ローパスフィルタ処理した濾波後スエー加速度β’を定常加速度とするのでは精度よく定常加速度を得られない。

ヨー加速度ωに着目すると、以下の性質がある。鉄道車両が直線区間から曲線区間(曲線区間の手前に設置される緩和曲線区間を含む。以下、同じ。)へ侵入すると、車体Bに対して前側の台車Tfが曲率中心側へ移動する。よって、鉄道車両が直線区間から曲線区間へ侵入する場面では、前側の台車Tfの台車の移動によって懸架ばねが撓んで車体Bの前側を曲率中心側へ押すヨー加速度ωが発生する。鉄道車両が曲線区間から直線区間へ侵入すると、車体Bに対して前側の台車Tfが反曲率中心側へ移動する。よって、鉄道車両が曲線区間から直線区間へ侵入する場面では、前側の台車Tfの台車の移動によって懸架ばねが撓んで車体Bの前側を反曲率中心側へ押すヨー加速度ωが発生する。他方、スエー加速度用ローパスフィルタ522で濾波した濾波後スエー加速度β’は、鉄道車両が曲線区間を走行する際の車体Bに作用する定常加速度に相当する加速度であって車体Bを反曲率中心側へ押す方向の加速度であるが、前述のように実際の定常加速度αcに対して位相が遅れる。曲線区間の入口では車体Bの前側の台車Tfがまず軌道に沿って移動するからスエー加速度βよりも早いタイミングでスエー加速度βと反対向きのヨー加速度ωが発生する。曲線区間の出口では車体Bの前側の台車Tfがまず軌道に沿って移動するからスエー加速度βの値が小さくなるよりも早いタイミングでスエー加速度βと同じ向きのヨー加速度ωが発生する。

以上から、スエー加速度用ローパスフィルタ522で濾波した濾波後スエー加速度βから濾波後ヨー加速度ω’を減算して定常加速度αcを求めれば、実際の定常加速度に対して位相遅れの無い或いは位相遅れが少ない定常加速度αcが得られる。ヨー加速度ωをヨー加速度用ローパスフィルタ521で濾波しているので、得られた定常加速度αcが実際の定常加速度に対して位相が進んでしまうような波形にならずに済む。よって、定常加速度演算部525は、濾波後スエー加速度βから濾波後ヨー加速度ωを減算して、定常加速度αcを求めている。このようにして、定常加速度αcを求めれば、鉄道車両が曲線区間を走行する際の定常加速度を精度よく求め得る。前述したところから、定常加速度検知装置Dは、本例では、前側加速度センサ41f、後側加速度センサ41rおよびヨー加速度演算部501でなるヨー加速度検知部Yと、前側加速度センサ41f、後側加速度センサ41rおよびスエー加速度演算部510でなるスエー加速度検知部S、ヨー加速度ωを濾波するヨー加速度用ローパスフィルタ521と、スエー加速度演算部511が出力するスエー加速度βを濾波するスエー加速度用ローパスフィルタ522と、濾波後スエー加速度β’から濾波後ヨー加速度ω’を減算して定常加速度αcを求める定常加速度演算部525とで構成されている。なお、加速度センサ41f,41rのドリフトの問題がなければ、ヨー加速度用ハイパスフィルタ523およびスエー加速度用ハイパスフィルタ524はなくてもよい。また、ヨー加速度ωを検知するヨー加速度検知部は、車体Bのヨー加速度ωを検知するヨー加速度センサとされてもよい。ヨー加速度検知部Yとスエー加速度検知部Sは、鉄道車両用制振装置V以外の外部装置に組み込まれていてもよい。

センタリング力算出部526は、定常加速度αcからセンタリング力fnを求める。ここで、鉄道車両が曲線区間を走行する際に許容される定常加速度αcの最大値をαcmax、モータ15が定格トルクでポンプ12を駆動する際にアクチュエータAf,Arが出力可能な力の最大値をftmaxとする。すると、センタリング力算出部526は、定常加速度αcからセンタリング力fnを次式fn=αc×ftmax/αcmaxを演算して求める。なお、定常加速度αcがαcmaxを超える場合、定常加速度αcの値をαcmaxに制限する。よって、センタリング力fnの上限は、モータ15が定格トルクでポンプ12を駆動する際にアクチュエータAf,Arが発揮可能な力の最大値とされる。なお、定常加速度αcの最大値αcmaxは、予め決められている値である。

ゲイン乗算部527は、センタリング力fnにセンタリング力ゲインGnを乗じて出力する。センタリング力ゲインGnは、センタリング力ゲイン変更部53によって値が0から1まで変更される。

センタリング力ゲイン変更部53は、定常加速度検知装置Dが検知した定常加速度αcに基づいてセンタリング力ゲインGnを変更する。具体的には、センタリング力ゲイン変更部53は、定常加速度演算部525が出力する定常加速度αcを絶対値処理し、定常加速度αcの絶対値とセンタリング閾値α1を比較する。そして、センタリング力ゲイン変更部53は、前記比較の結果、定常加速度αcの絶対値がセンタリング閾値α1以上となると、センタリング力ゲインGnを1とし、定常加速度αcの絶対値がセンタリング閾値α1未満であるとセンタリング力ゲインGnを0とする。

なお、センタリング力ゲイン変更部53は、定常加速度αcの絶対値がセンタリング閾値α1の値を跨いで上昇する場面においては、時間の経過とともに、センタリング力ゲインGnを0から徐々に増加させて1へ変更する。また、センタリング力ゲイン変更部53は、定常加速度αcの絶対値がセンタリング閾値α1の値を跨いで下降する場面においては、時間の経過とともに、センタリング力ゲインGnを1から徐々に減少させて0へ変更する。このように、センタリング力ゲイン変更部53が前述のようにセンタリング力ゲインGnの値を変化させるので、センタリング力fnが必要な際にはセンタリング力fnを最終的な制御力Ff,Frにフェードインさせ得る。また、センタリング力fnが不要な際には、センタリング力fnを最終的な制御力Ff,Frからフェードアウトさせ得る。

抑制力ゲイン変更部54は、定常加速度検知装置Dが検知した定常加速度αcに基づいて前述の直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcの値を変更する。具体的には、抑制力ゲイン変更部54は、定常加速度演算部525が出力する定常加速度αcを絶対値処理し、定常加速度αcの絶対値と曲線判定閾値α2を比較する。抑制力ゲイン変更部54は、前記比較の結果、定常加速度αcの絶対値が曲線判定閾値α2以上となると、鉄道車両の走行区間を曲線区間と判定する。逆に、抑制力ゲイン変更部54は、定常加速度αcの絶対値が曲線判定閾値α2未満となると鉄道車両の走行区間を直線区間と判定する。このように、抑制力ゲイン変更部54は、鉄道車両の走行中の区間を曲線区間であるか否かを判定する曲線区間判定部としても機能している。

抑制力ゲイン変更部54は、図6に示すように、鉄道車両が直線区間を走行中であると判定すると、直線区間用ゲインGsの値を1とし、鉄道車両が曲線区間を走行中であると判定すると直線区間用ゲインGsの値を0とする。また、抑制力ゲイン変更部54は、図6に示すように、鉄道車両が直線区間を走行中であると判定すると、曲線区間用ゲインGcの値を0とし、鉄道車両が曲線区間を走行中であると判定すると曲線区間用ゲインGcの値を1とする。直線区間用ゲインGsの値は、鉄道車両の走行区間が直線区間から曲線区間へ切換わると、時間の経過とともに1から徐々に低下して0へ変更される。直線区間用ゲインGsの値は、図示はしないが鉄道車両の走行区間が曲線区間から直線区間へ切換わると、時間の経過とともに0から徐々に増加して1へ変更される。曲線区間用ゲインGcの値は、鉄道車両の走行区間が直線区間から曲線区間へ切換わると、時間の経過とともに0から徐々に増加して1へ変更される。曲線区間用ゲインGcの値は、図示はしないが鉄道車両の走行区間が曲線区間から直線区間へ切換わると、時間の経過とともに1から徐々に低下して0へ変更される。なお、曲線判定閾値α2は、センタリング閾値α1よりも大きな値に設定されている。また、直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcの値の合計は、常に1とされており、0から1へ或いは1から0へ変化する途中でも両者の合計値は1となるように設定される。なお、両ゲインGs,Gcの値の前記変化に要する時間は、任意に設定可能である。

前述のように、ヨー抑制力演算部50における加算部508は、直線区間用ヨー抑制力fωsに直線区間用ゲインGsを乗じた値に、曲線区間用ヨー抑制力fωcに曲線区間用ゲインGcを乗じた値を加算して最終的なヨー抑制力fωを求める。よって、鉄道車両の走行区間が直線区間から曲線区間に遷移する場合には、ゲインGs,Gcの変化によって、直線区間用ヨー抑制力fωsがフェードアウトしつつ曲線区間用ヨー抑制力fωcがフェードインして両者が切換わる。また、鉄道車両の走行区間が曲線区間から直線区間に遷移する場合には、ゲインGs,Gcの変化によって、曲線区間用ヨー抑制力fωcがフェードアウトしつつ直線区間用ヨー抑制力fωsがフェードインして両者が切換わる。

前述のように、スエー抑制力演算部51における加算部518は、直線区間用スエー抑制力fβsに直線区間用ゲインGsを乗じた値に、曲線区間用スエー抑制力fβcに曲線区間用ゲインGcを乗じた値を加算して最終的なスエー抑制力fβを求める。よって、鉄道車両の走行区間が直線区間から曲線区間に遷移する場合には、ゲインGs,Gcの変化によって、直線区間用スエー抑制力fβsがフェードアウトしつつ曲線区間用スエー抑制力fβcがフェードインして両者が切換わる。また、鉄道車両の走行区間が曲線区間から直線区間に遷移する場合には、ゲインGs,Gcの変化によって、曲線区間用スエー抑制力fβcがフェードアウトしつつ直線区間用スエー抑制力fβsがフェードインして両者が切換わる。

制御力演算部55は、図9に示したように、ヨー抑制力fω、スエー抑制力fβおよびセンタリング力fnにセンタリング力ゲインGnを乗じた値fn・Gnとから前側のアクチュエータAfと後側のアクチュエータArの制御力Ff,Frを求める制御力算出部551と、リミッタ552とを備えている。

制御力算出部551は、ヨー抑制力fωとスエー抑制力fβとを加算した値を2で割って前側のアクチュエータAfの抑制力ffを求め、この抑制力ffとセンタリング力fnにセンタリング力ゲインGnを乗じた値fn・Gnとを加算して前側のアクチュエータAfの制御力Ffを求める。また、制御力算出部551は、スエー抑制力fβからヨー抑制力fωを差し引いた値を2で割って後側のアクチュエータArの抑制力frを求め、この抑制力frにセンタリング力fnにセンタリング力ゲインGnを乗じた値fn・Gnを加算して後側のアクチュエータArの制御力Frを求める。さらに、制御力Ff,Frは、リミッタ552によって上限を超える場合には上限値に制限されて、駆動部45に入力される。

このように制御力Ff,Frを求めると、鉄道車両の走行区間が直線区間から曲線区間に遷移すると、センタリング力fnが制御力Ff,Frにフェードインする。また、制御力Ff,Frの内訳の抑制力ff,frについても、直線区間に適した直線区間用のヨー抑制力fωsとスエー抑制力fβsから曲線区間に適した曲線区間用のヨー抑制力fωcとスエー抑制力fβcに切換わる。なお、曲線判定閾値α2は、センタリング閾値α1よりも大きな値に設定されているので、鉄道車両の走行区間が直線区間から曲線区間に遷移すると、抑制力ff,frが直線区間に適した抑制力から曲線区間に適した抑制力へ切換わる前に、センタリング力fnが制御力Ff,Frにフェードインする。そのため、鉄道車両が曲線区間に差し掛かると直ちにセンタリング力Fnが発揮されて、車体Bのスエーを抑制でき、車体Bが図示しないストッパを最圧縮させてしまう事態を効果的に防止できる。また、曲線区間の入口では、アクチュエータAf,Arに直線区間用のヨー抑制力fωsとスエー抑制力fβsを発揮した方が乗心地が良となることが分かっている。曲線判定閾値α2をセンタリング閾値α1より大きくして鉄道車両の走行区間が完全に曲線区間であると判定できる値に設定しているので、直線区間用のヨー抑制力fωsとスエー抑制力fβsを曲線区間の入口で発揮でき、乗心地を向上できる。

また、前述ように制御力Ff,Frを求めると、鉄道車両の走行区間が曲線区間から直線区間に遷移すると、センタリング力fnが制御力Ff,Frからフェードアウトする。また、制御力Ff,Frの内訳の抑制力ff,frについても、曲線区間に適した曲線区間用のヨー抑制力fωcとスエー抑制力fβcから直線区間に適した直線区間用のヨー抑制力fωsとスエー抑制力fβsに切換わる。前述のように、曲線判定閾値α2は、センタリング閾値α1よりも大きな値に設定されているので、鉄道車両の走行区間が曲線区間から直線区間に遷移すると、抑制力ff,frが曲線区間に適した抑制力から直線区間に適した抑制力へ切換わった後に、センタリング力fnが制御力Ff,Frからフェードアウトする。そのため、鉄道車両が直線区間に完全に入るまではセンタリング力fnの発揮が継続されて、車体Bのスエーを抑制でき、車体Bが図示しないストッパを最圧縮させてしまう事態を効果的に防止できる。また、曲線区間の出口では、アクチュエータAf,Arに直線区間用のヨー抑制力fωsとスエー抑制力fβsを発揮した方が乗心地が良となることが分かっている。曲線判定閾値α2をセンタリング閾値α1より大きくしているので、鉄道車両の走行区間が曲線区間を脱したと判定しやすくなり、直線区間用のヨー抑制力fωsとスエー抑制力fβsを曲線区間の出口で発揮できる。よって、走行区間に関わらず、乗心地を向上できる。

駆動部45は、モータ15、第一開閉弁9、第二開閉弁11および可変リリーフ弁22を駆動するドライバ回路を備えている。駆動部45は、制御力Ff,Frに応じて、各アクチュエータAf,Arにおけるモータ15、第一開閉弁9、第二開閉弁11および可変リリーフ弁22へ供給する電流量を制御して、制御力Ff,Fr通りに各アクチュエータAf,Arに推力を発揮させる。

駆動部45は、モータ15の制御に当たり、モータ15を所定の回転速度で等速回転させるようモータ15を制御する。そして、モータ15は、焼損しない範囲で定格トルクを上回るトルクの出力が可能である。よって、制御力Ff,Frがモータ15に定格トルクを上回るトルクを出力させる値となっても、焼損しない範囲ではモータ15は定格トルクを上回るトルクを出力可能である。

なお、コントローラCは、ハードウェア資源としては、図示はしないが具体的にはたとえば、前側加速度センサ41fと後側加速度センサ41rが出力する信号を取り込むためのA/D変換器と、横方向加速度αfと横方向加速度αrを取り込んでアクチュエータAf,Arを制御するのに必要な処理に使用されるプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、前記プログラムに基づいた処理を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、前記CPUに記憶領域を提供するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置とを備えて構成されればよい。そして、コントローラCの各部の構成は、CPUの前記処理を行うためのプログラムの実行により実現できる。

コントローラCの処理を図10に示したフローチャートを用いて説明する。まず、コントローラCは、横方向加速度αfと横方向加速度αrを取り込む(ステップF1)。つづいて、コントローラCは、ヨー加速度ωとスエー加速度βとを求める(ステップF2)。さらに、コントローラCは、ヨー加速度ωとスエー加速度βとから直線区間用ヨー抑制力fωs、曲線区間用ヨー抑制力fωc、直線区間用スエー抑制力fβsおよび曲線区間用スエー抑制力fβcを求める(ステップF3)。次に、コントローラCは、濾波後ヨー加速度ω’と濾波後スエー加速度β’から定常加速度αcを求める(ステップF4)。そして、コントローラCは、定常加速度αcからセンタリング力fnを求める(ステップF5)。さらに、コントローラCは、定常加速度αcの絶対値とセンタリング閾値α1と比較してセンタリング力ゲインGnの値を決定し、さらに、定常加速度αcの絶対値と曲線判定閾値α2と比較して鉄道車両が直線区間を走行しているが曲線区間を走行しているかを判定して直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcの値を決定する(ステップF6)。そして、コントローラCは、直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGc、直線区間用ヨー抑制力fωs、曲線区間用ヨー抑制力fωc、直線区間用スエー抑制力fβsおよび曲線区間用スエー抑制力fβcからヨー抑制力fωとスエー抑制力fβを求める(ステップF7)。つづいて、コントローラCは、センタリング力fnにセンタリング力ゲインGn、を乗じた値fn・Gnを求める(ステップF8)。さらに、コントローラCは、ヨー抑制力fω、スエー抑制力fβおよびセンタリング力fnにセンタリング力ゲインGnを乗じた値fn・Gnとから前後のアクチュエータAf,Arの制御力Ff,Frを求める(ステップF9)。最後に、コントローラCは、制御力Ff,Frに基づいてアクチュエータAf,Arのモータ15、第一開閉弁9、第二開閉弁11および可変リリーフ弁22を駆動して、各アクチュエータAf,Arに推力を発揮させる(ステップF10)。

以上のように鉄道車両用制振装置Vは、鉄道車両の車体Bと台車Tf,Trとの間に介装されて制御力を発揮可能なアクチュエータAf,Arと、車体Bのヨー加速度ωとスエー加速度βに基づいて車体Bの振動を抑制する制御力Ff,Frを求めるコントローラCとを備え、定常加速度αcの絶対値がセンタリング閾値α1以上の場合、ヨー加速度ωとスエー加速度βに基づいて求めた車体Bのヨー方向およびスエー方向の振動を抑制する抑制力ff,frと、定常加速度αcに基づいて求めた車体Bを中立位置へ戻す方向のセンタリング力fnとに基づいて制御力Ff,Frを求めるようになっている。

このように構成された鉄道車両用制振装置Vでは、定常加速度検知装置Dが検知した定常加速度αcの絶対値がセンタリング閾値α1以上となると、定常加速度αcに基づいて求めたセンタリング力fnと抑制力ff,frとに基づいて制御力Ff,Frを求める。したがって、鉄道車両用制振装置Vでは、センタリング力fnの発揮の要不要の判断を定常加速度αcの値で判定しており、変位センサを必要としない。そして、本発明の鉄道車両用制振装置Vによれば、曲線区間走行時に振動を抑制する抑制力ff,frとセンタリング力fnを発揮でき、車体Bがストッパに接触して最圧縮させるのを抑制できるから、曲線区間走行時において台車Tf,Tr側からの振動が車体Bに伝達するのを抑制できる。以上から、本発明の鉄道車両用制振装置Vによれば、曲線区間走行時における乗心地を向上できる。

ここで、曲線区間走行中の車体Bに作用する定常加速度αcは、スエー加速度βに含まれる成分であるが、スエー加速度βの低周波成分を抽出するローパスフィルタ処理によって定常加速度を得ようとすると実際に定常加速度よりも位相が遅れてしまう。これに対して、本発明の定常加速度検知装置Dでは、スエー加速度βをスエー加速度用ローパスフィルタ522で処理した濾波後スエー加速度β’とヨー加速度ωをヨー加速度用ローパスフィルタ521で処理された濾波後ヨー加速度ω’とに基づいて定常加速度αcを求めている。曲線区間の入口と出口では、ヨー加速度ωは、スエー加速度用ローパスフィルタ522で濾波して得たスエー加速度βの低周波成分よりも早いタイミングで車体Bに作用する。そのため、スエー加速度用ローパスフィルタ522で濾波して得たスエー加速度βだけではなくヨー加速度ωを加味すると、位相遅れを補い、実際の定常加速度に対する位相遅れが無いか非常に少ない、つまり、時間遅れが無いか非常に少ない定常加速度αcが得られる。よって、本発明の定常加速度検知装置Dによれば、精度よく定常加速度αcを検知できる。

また、定常加速度検知装置Dでは、具体的には、濾波後スエー加速度β’から濾波後ヨー加速度ω’を減算して定常加速度αcを求めている。ヨー加速度ωは、曲線区間の入口では車体Bの前側に対してスエー加速度βとは逆向きに作用し、曲線区間の出口では車体Bの前側に対してスエー加速度βと同じ向きに作用する。よって、スエー加速度βからヨー加速度ωを減算すると、求めた定常加速度αcの実際の定常加速度に対する位相遅れを簡単な演算を用いて解消できる。

なお、ヨー加速度ωに係数を乗じた値をスエー加速度βから差し引くようにしてもよい。係数は、鉄道車両の規格や挙動に応じて最適となるように設定すればよい。

また、濾波後スエー加速度β’から濾波後ヨー加速度ω’を減算する演算に代えて、ヨー加速度ωの値に応じて変化するゲインをスエー加速度βに乗じて実際の定常加速度に対して位相遅れとならない定常加速度αcを求めてもよい。曲線区間の入口ではスエー加速度βが実際の定常加速度よりも小さく、曲線区間の出口ではスエー加速度βが実際の定常加速度よりも大きくなるから、濾波後ヨー加速度ω’の値に応じて変化するゲインを濾波後スエー加速度β’に乗じても位相遅れが解消された定常加速度αcを求め得る。ゲインの変更に際しては、ヨー加速度ωの値とゲインの値をマップ化しておき、マップ演算によってゲインの値を求めてもよい。

また、鉄道車両用制振装置Vでは、定常加速度検知装置Dで検知した定常加速度αcを利用して、鉄道車両が走行中の区間が曲線区間であるか否かを判定しているので、車両モニタやGPSから走行地点情報を得たり、走行位置を検知する特別なセンサや用いずとも曲線区間判定を正確に行える。

また、鉄道車両用制振装置Vでは、位相の遅れが無いか非常に少ない定常加速度αcに基づいて車体Bを中立位置へ戻すセンタリング力fnを求めるので、定常加速度αcの作用による車体Bの中立位置からの偏心のみを抑制するセンタリング力fnを求められる。よって、過不足のないセンタリング力fnの発揮が可能で、車体Bの偏心を効果的に抑制できる。

また、鉄道車両用制振装置Vでは、変位フィードバック制御は行われず、車体Bの振動を抑制する制御を邪魔せずに、台車Tf,Tr側からの振動が車体Bに伝達するのも抑制できる。このように、本発明の鉄道車両用制振装置Vでは、曲線区間の走行の判定に変位センサが不要となって、乗心地を阻害する変位フィードバック制御を行わず、定常加速度αcに基づいてセンタリング力fnを求めるので、曲線区間走行時における乗心地を向上できる。よって、本発明の鉄道車両用制振装置Vによれば、変位センサが不要となってコストを低減できるとともに、曲線区間走行時における乗心地を向上できる。

なお、鉄道車両に搭載された車両モニタから入手可能な地点情報から鉄道車両が曲線区間を走行中であるかを判定可能であるが、地点情報には誤差があって、曲線区間でないのにセンタリング力fnを発揮してしまう可能性がある。対して、本発明の鉄道車両用制振装置Vでは、位相遅れが無いか非常に少ない定常加速度αcとセンタリング閾値α1とを比較して、定常加速度αcがセンタリング閾値α1以上となるとセンタリング力fnを出力させるため、鉄道車両が曲線区間に差し掛かると直ちにセンタリング力fnを発揮させるので、ストッパの最収縮を効果的に抑制でき乗心地をより一層向上できる。なお、センタリング閾値α1は、鉄道車両が曲線区間に差し掛かる際に検知される定常加速度αcの値とすればよい。

また、本例の鉄道車両用制振装置Vでは、センタリング力fnの上限をモータ15が定格トルクでポンプ12を駆動する際にアクチュエータAf,Arが発揮可能な力の最大値としてセンタリング力fnを求めるようになっている。このように構成された鉄道車両用制振装置Vでは、アクチュエータAf,Arがセンタリング力fnのみを出力しても、モータ15が出力可能な最大トルクまでには余力が残されているので、センタリング力fnを発揮しつつ車体Bの振動抑制のための抑制力ff,frも出力可能となる。よって、本例の鉄道車両用制振装置V2によれば、曲線区間走行時において車体Bを中立位置へ戻すセンタリング力fnを発揮しつつ車体Bの振動を抑制する抑制力ff,frを発揮でき、曲線区間走行中の乗心地をより一層向上できる。

また、本例の鉄道車両用制振装置Vでは、抑制力ff,frを求めるために、直線区間用制御部として直線区間用ヨー制御部504および直線区間用スエー制御部514と、曲線区間用制御部として曲線区間用ヨー制御部505および曲線区間用スエー制御部515とを備えている。そして、抑制力ff,frは、定常加速度αcの絶対値がセンタリング閾値α1よりも値が大きな曲線判定閾値α2を基準として、曲線判定閾値α2未満から曲線判定閾値α2以上となると、直線区間用制御部が求める抑制力ff,frから曲線区間用制御部が求める抑制力ff,frへ切換えられ、定常加速度αcの絶対値が曲線判定閾値α2以上から曲線判定閾値α2未満となると、曲線区間用制御部が求める抑制力ff,frから直線区間用制御部が求める抑制力ff,frへ切換えられる。直線区間用制御部は、直線区間走行時における車体Bの横方向の振動の抑制に適する抑制力ff,frを求め、曲線区間用制御部は、曲線区間走行時における車体Bの横方向の振動の抑制に適する抑制力ff,frを求める。よって、本例の鉄道車両用制振装置Vによれば、鉄道車両の走行区間に応じて最適な制御力Ff,Frを発揮できるので、走行区間に関わらず高い振動抑制効果が得られる。また、センタリング力fnの出力の可否はセンタリング閾値α1を基準とし、直線区間用の制御と曲線区間用の制御の切換えはセンタリング閾値α1よりも大きな曲線判定閾値α2を基準としている。よって、曲線判定閾値α2をセンタリング閾値α1より大きくして鉄道車両の走行区間が完全に曲線区間であると判定できる値に設定でき、直線区間用のヨー抑制力fωsとスエー抑制力fβsを曲線区間の入口と出口で発揮でき、乗心地を向上できる。

曲線判定閾値α2をセンタリング閾値α1より大きな値に設定するのが好ましいが、両者を同じ値に設定することも可能であり、その場合、ゲイン乗算部527では、センタリング力ゲインGnの代わりに曲線区間用ゲインGcをセンタリング力fnに乗じるようにして、センタリングゲイン力変更部53を省略するようにしてもよい。

さらに、本例の鉄道車両用制振装置Vでは、直線区間用制御部が求めた抑制力ff,frと曲線区間用制御部が求めた抑制力ff,frとの切換えに際して、切換前に選択されている抑制力ff,frをフェードアウトさせるとともに切換後に選択されるべき抑制力ff,frをインフェードインさせる。このように構成された鉄道車両用制振装置Vによれば、直線区間用の抑制力ff,frと曲線区間用の抑制力ff,frの切換えに際して、抑制力ff,frの値が急変せずに済むので制御上安定性が向上する。また、直線区間用と曲線区間用の抑制力ff,frのフェードイン、フェードアウトに際して直線区間用ゲインGsと曲線区間用ゲインGcを用い、両者の和を常に1とすると最終の抑制力ff,frが過少や過大とならず、制御が不安定にならずに済む。

以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。

12・・・ポンプ、15・・・モータ、504・・・直線区間用ヨー制御部(直線区間用制御部)、505・・・曲線区間用ヨー制御部(曲線区間用制御部)、514・・・直線区間用スエー制御部(直線区間用制御部)、515・・・曲線区間用スエー制御部(曲線区間用制御部)、521・・・ヨー加速度用ローパスフィルタ、522・・・スエー加速度用ローパスフィルタ、525・・・定常加速度演算部、Af,Ar・・・アクチュエータ、B・・・車体、C・・・コントローラ、Cy・・・シリンダ装置、D・・・定常加速度検知装置、S・・・スエー加速度検知部、Tf,Tr・・・台車、V・・・鉄道車両用制振装置、Y・・・ヨー加速度検知部

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