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ミトコンドリア病診断用バイオマーカーとしてのGDF15

申请号 JP2015557853 申请日 2015-01-14 公开(公告)号 JPWO2015108077A1 公开(公告)日 2017-03-23
申请人 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター; 学校法人 久留米大学; 学校法人 久留米大学; 发明人 雅嗣 田中; 雅嗣 田中; 雅史 伊藤; 雅史 伊藤; 泰典 藤田; 泰典 藤田; 靖敏 古賀; 靖敏 古賀;
摘要 【課題】ミトコンドリア病の診断用バイオマーカー及びミトコンドリア病治療用薬剤を備えたキット等を提供すること。【解決手段】被験者から採取された生体サンプル中のGDF15(growth differentiation factor 15)、HGF(肝細胞成長因子)、MIG(γインターフェロン誘導モノカイン)、SCF(幹細胞因子)及びSCGF-β(幹細胞成長因子β)から成る群から選択される少なくとも一つのタンパク質について、被験者から採取された生体サンプル中のレベルを測定し、対照者における生体サンプル中のタンパク質レベルと比較して、異なるか否かを確認することを特徴とするミトコンドリア病に関するデータを得る測定方法によって達成される。また、この測定方法を行うための測定キットと、ミトコンドリア病治療用薬剤とを備えた治療用キットが提供される。【選択図】図8
权利要求

GDF15(growth differentiation factor 15)、HGF(肝細胞成長因子)、MIG(γインターフェロン誘導モノカイン)、SCF(幹細胞因子)及びSCGF-β(幹細胞成長因子β)から成る群から選択される少なくとも一つのタンパク質について、被験者から採取された生体サンプル中のレベルを測定し、対照者における生体サンプル中のタンパク質レベルと比較して、異なるか否かを確認することを特徴とするミトコンドリア病に関するデータを得る測定方法。前記GDF15、HGF、MIG及びSCFについては、被験者から採取された生体サンプル中のレベルが対照者から採取された生体サンプル中のレベルよりも高値であり、SCGF-βについては、被験者から採取された生体サンプル中のレベルが対照者から採取された生体サンプル中のレベルよりも低値であることを確認することを特徴とする請求項1に記載のミトコンドリア病に関するデータを得る測定方法。被験者から採取された生体サンプル中のGDF15、HGF、MIG、SCF及びSCGF-βからなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質について、その mRNA量を測定し、対照者における生体サンプル中のmRNA量と比較して、異なるか否かを確認することを特徴とするミトコンドリア病に関するデータを得る測定方法。前記生体サンプルが、血液であることを特徴とする請求項1〜3のいすれか一つに記載の測定方法。請求項1,2または4のいずれか一つに記載の測定方法を実施するためのキットであって、GDF15、HGF、MIG、SCF及びSCGF-βから成る群から選択される少なくとも一つのタンパク質を特異的に認識する抗体を備えた測定キット。請求項3または4に記載の測定方法を実施するためのキットであって、GDF15、HGF、MIG、SCF及びSCGF-βから成る群から選択される少なくとも一つのタンパク質を発現するmRNAを認識する塩基配列を備えたDNAを備えた測定キット。請求項5または6に記載のキットと、ミトコンドリア病治療用薬剤とを備えた治療用キット。前記ミトコンドリア治療用薬剤が、ピルビン酸ナトリウム、コエンザイムQ10またはコエンザイムQ10類縁体、EPI-743、及びL-アルギニンからなる群から選択される少なくとも一つである請求項7に記載の治療用キット。

说明书全文

本発明は、ミトコンドリア病診断用バイオマーカーとしてのGDF15に関する。

ミトコンドリアは、真核細胞内の小器官であり、電子伝達系を介して、生体内でエネルギーとして使用されるATPを生産している。何らかの理由でミトコンドリアのエネルギー生産能が低下すると、ミトコンドリア病として知られる疾患が発症することがある。ミトコンドリア病が発症すると、エネルギー需要が盛んな脳、骨格筋、心筋などに異常を起こすことが多い。 本発明者は、ミトコンドリア及びミトコンドリア病に関する研究を継続して行っており、その成果の一部は特許出願(例えば、特許文献1)や学術論文(例えば、非特許文献1)として公表されている。非特許文献1には、2SA細胞(コントロール正常細胞)と2SD細胞(ミトコンドリア病モデル細胞)のメタボローム解析を行い、ミトコンドリア病モデル細胞のエネルギー代謝に対するピルビン酸投与の効果が開示されている。その中で、2SD細胞に高濃度(10 mM)の乳酸を投与すると4時間後にエネルギー代謝障害が顕著になっていること、高濃度(10 mM)のピルビン酸ではそれが認められないことを示されている。また、2SA細胞では、高濃度の乳酸を投与してもエネルギー代謝に大きな影響が認められないことが確認されている。

特開2007−330151号公報

Kami K. et al., Metabolomic profiling rationalized pyruvate efficacy in cybrid cells harboring MELAS mitochondrial DNA mutations: Mitochondrion, 2012, 12(6), p644-653

しかしながら、未だにミトコンドリア病の診断用バイオマーカーとなり得るタンパク質については、十分に知られていなかった。 本願発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ミトコンドリア病の診断用バイオマーカーとして使用可能な分子を提供することである。

上記課題を解決するための第1の発明に係るミトコンドリア病に関するデータを得る測定方法は、GDF15(growth differentiation factor 15)、HGF(肝細胞成長因子)、MIG(γインターフェロン誘導モノカイン)、SCF(幹細胞因子)及びSCGF-β(幹細胞成長因子β)から成る群から選択される少なくとも一つのタンパク質について、被験者から採取された生体サンプル中のレベルを測定し、対照者における生体サンプル中のタンパク質レベルと比較して、異なるか否かを確認することを特徴とするミトコンドリア病に関するデータを得ることを特徴とする。

このとき、前記GDF15、HGF、MIG及びSCFについては、被験者から採取された生体サンプル中のレベルが対照者から採取された生体サンプル中のレベルよりも高値であり、SCGF-βについては、被験者から採取された生体サンプル中のレベルが対照者から採取された生体サンプル中のレベルよりも低値であることを確認することが好ましい。 また、第2の発明に係るミトコンドリア病に関するデータを得る測定方法は、被験者から採取された生体サンプル中のGDF15、HGF、MIG、SCF及びSCGF-βからなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質について、そのmRNA量を測定し、対照者における生体サンプル中のmRNA量と比較して、異なるか否かを確認することを特徴とする。 上記発明において、前記生体サンプルが、血液であることが好ましい。

ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの変異が原因になって、十分な好気的エネルギー産生が行えなくなることによって発症する。ミトコンドリアには、核内DNAとは別にミトコンドリア独自のDNA(ヒトでは16569塩基対)が存在している。ミトコンドリアがエネルギー生産を行うために必要な分子は、ミトコンドリアDNAの他に、核内DNAにもコードされている。このため、ミトコンドリア病は、ミトコンドリアDNA変異の他に、核内DNAやタンパク質の調節の変異などによっても起こり得ることが分かってきた。ミトコンドリア病患者において、ミトコンドリアはヘテロプロスミーであり、体内全てのミトコンドリアが一様に異常をきたすわけではない。このため、ミトコンドリア病は、多彩な病態を示すことが知られている。

ミトコンドリア病には、例えば、慢性進行性外眼筋麻痺症候群(chronic progressive external ophthalmoplegia : CPEO)、MELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes)、MERRF(myoclonus epilepsy associated with ragged-red fibers)などが知られている。本発明においては、いずれのミトコンドリア病を対象とすることもできるが、特にm.3243A>G変異を持つミトコンドリア病(例えば、MELAS)を対象とすることが好ましい。 GDF15は、損傷した組織や病気の進展中において、炎症やアポトーシスを調節する機能を持つTGFβスーパーファミリーに属するタンパク質である。GDF15は、その他にTGF-PL, MIC-1, PDF, PLAB, PTGFBとしても知られている。但し、ミトコンドリア病とGDF15との関係については、これまで知られていなかった。また、HGF、MIG、SCF及びSCGF-βと、ミトコンドリア病との関係についても知られていなかった。 また、別の発明は、上記測定方法の発明を実施するためのキットであって、GDF15、HGF、MIG、SCF及びSCGF-βから成る群から選択される少なくとも一つのタンパク質を特異的に認識する抗体を備えたことを特徴とする。抗体を備えたキットとしては、例えば、当該技術分野において周知技術であるELISA法を用いることができる。 また、別の発明は、上記測定方法の発明を実施するためのキットであって、GDF15、HGF、MIG、SCF及びSCGF-βから成る群から選択される少なくとも一つのタンパク質を発現するmRNAを認識する塩基配列を備えたDNAを備えたことを特徴とする。DNAを備えたキットとしては、例えば、当該技術分野において周知技術であるPCR法を用いることができる。 また、ミトコンドリア病を治療するためのキットであって、上記いずれかの測定キットと、ミトコンドリア病治療用薬剤とをを備えたことを特徴とする。ミトコンドリア病治療用薬剤としては、例えばピルビン酸ナトリウム、システアミン酒石酸酸塩、コエンザイムQ10またはコエンザイムQ10類縁体(Idebenone)、EPI-743、L-アルギニンなどが含まれる。これらのミトコンドリア病治療用薬剤を投与することにより、ミトコンドリア病患者の治療効果が認められ得る。このため、測定キットとミトコンドリア病治療用薬剤とを組み合わせることにより、治療効果を確認しつつ、薬剤の摂取を行えるので、使用性が良好となる。

本発明によれば、ミトコンドリア病の診断用バイオマーカーとして、GDF15 、HGF、MIG、SCF又はSCGF-βを用いることができる。すなわち、ミトコンドリア病患者では、対照者に比較すると、GDF15、HGF、MIG、SCF又はSCGF-βの血中濃度が異なっている(前4個のマーカーでは高値、SCGF-βでは低値)。このため、被験者から採取された生体サンプル中の診断用バイオマーカーの濃度を比較することにより、ミトコンドリア病患者であるか否かを判定するためのデータの一つを取得できる。この診断用バイオマーカーを測定するキットを提供できる。 また、診断用キットと、ミトコンドリア病治療用薬剤とを備えた治療用キットを提供できるので、使用性が良好となる。 なお、実際の診断は、本発明の測定方法によって得られたデータを踏まえて、有資格者(例えば医師)による総合的な判断を加えることによって行う。

GDF15発現レベルの網羅的遺伝子発現解析による測定結果を示すグラフである。グラフ中、2SAはコントロール細胞を、2SDはミトコンドリア病モデル細胞を示し、高乳酸投与(Lactate)と高ピルビン酸投与(Pyruvate)を行ったときのGDF15発現レベルを経時的に測定した結果を示す。

GDF15発現レベルの定量RT-PCR法による測定結果を示すグラフである。グラフ中、白棒はコントロール細胞(2SA)を、黒棒はミトコンドリア病モデル細胞(2SD)を示し、高乳酸投与(Lactate)と高ピルビン酸投与(Pyruvate)を行ったときのGDF15発現レベルを経時的に測定した結果を示す(図3及び図4において同じ)。

INHBE発現レベルの定量RT-PCR法による測定結果を示すグラフである。

IL1A発現レベルの定量RT-PCR法による測定結果を示すグラフである。

細胞培養上清中GDF15濃度のELISA法による測定結果を示すグラフである。グラフ中、2SAはコントロール細胞を、2SDはミトコンドリア病モデル細胞を示し、通常培養条件(1P)、高乳酸投与(10L)及び高ピルビン酸投与(10P)を行ったときのGDF15レベル(タンパク質濃度)を測定した結果を示す。

ミトコンドリア病患者及び対照者の血中サイトカイン濃度を測定した結果を示すグラフである。ミトコンドリア病患者(18名)については、MELASシンドローム(15名)と他のミトコンドリア病患者(3名)のデータを、対照者(13名)については、他の小児科疾患患者のものを示す。サイトカインとして、IL-16、IL-18、CTACK、HGF、MIF、MIG、SCF、SCGF-β及びSDF-1αのものを示した。

バイオマーカーの受信者操作特性曲線解析の結果を示すグラフである。(A)は、16名のミトコンドリア病患者と10名の他の小児疾患対照者における血清中FGF21濃度をELISA法により測定した結果を、(B)は、FGF21とGDF15の濃度相関を比較した結果を、(C)は、GDF15、HGF、MIG、SCF、SCGF-β及びFGF21の受信者操作特性曲線を、それぞれ示す。

血清中GDF15濃度(pg/mL)のELISA法による測定結果を示すグラフである。グラフ中、Controlは正常対照群を、MtDはミトコンドリア患者群を意味する。

次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。 本研究においては、ミトコンドリア病の診断用バイオマーカー探索を目的として、ミトコンドリア病モデル細胞を用いた実験系の確立、網羅的遺伝子発現解析による候補バイオマーカーの同定、及び臨床検体による検証を実施した。

1.ミトコンドリア病モデル細胞を用いた実験系の確立 (i)ミトコンドリア病の中でも比較的発症頻度の高いMELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes)患者の筋芽細胞とヒト骨肉腫由来143B細胞から樹立したサイブリッド細胞を実験に用いた。具体的には、MELAS患者由来の筋芽細胞から細胞核を除き、ミトコンドリアDNAを欠如したヒト骨肉腫由来143B細胞と融合させて樹立した複数の細胞株の内、MELASの原因変異であるm.3243A>G変異が検出されない細胞株をコントロール細胞(2SA)、m.3243A>G変異を94%有する細胞株をミトコンドリア病モデル細胞(2SD)とした(変異が100%とならないのは、そもそも通常の細胞においても、ミトコンドリアはヘテロプラスミーであることに依る)。 細胞は、10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム及び0.4mMウリジンを含む高グルコースを含有したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用い、5%CO2加湿雰囲気下にて37℃で培養した。

(ii)2SA細胞と2SD細胞のメタボローム解析を行い、ミトコンドリア病モデル細胞のエネルギー代謝に対するピルビン酸投与の効果を明らかにした。その中で、2SD細胞に高濃度(10 mM)の乳酸を投与すると4時間後にエネルギー代謝障害が顕著になっていること、高濃度(10 mM)のピルビン酸ではそれが認められないことを示した。また、2SA細胞では高濃度の乳酸を投与してもエネルギー代謝に大きな影響が認められないことを確認した。これらの成果をもとに、高濃度の乳酸でエネルギー代謝障害を促進させた2SD細胞で発現が誘導されている遺伝子は、ミトコンドリア病患者のエネルギー代謝障害を反映する新規バイオマーカーになる可能性が考えられた。そこで、10 mM乳酸あるいは10 mMピルビン酸を投与した2SA細胞と2SD細胞の網羅的遺伝子発現解析を行い、2SD細胞に10 mM乳酸を投与した場合にのみ、顕著に発現が増加する遺伝子を探索することを着想した。

(iii)網羅的遺伝子発現解析の実験条件を検討するために、複数の培養条件で培養した2SD細胞の定量RT-PCRを行った。ミトコンドリア機能異常との関連性が示唆されているアミノ酸饑餓応答遺伝子CHOPおよびASNSの遺伝子発現レベルを指標にして、最適な実験条件を決定した。 詳細な試験方法は、下記の通りである。 <マイクロアレイ解析> miRNeasyミニキット(Qiagen 、ヴェンロー、オランダ)を用いて、全RNAを細胞から単離した。ロー・インプット・クイック・アンプ・ラベリング・キット(アジレント・テクノロジー、サンタクララ、アメリカ)を用いて、添付の説明書に従って、100ngの全RNAをラベル及び増幅した。アジレント・シュアプリントG3ヒューマンGE 8x60K マイクロアレイを用いて、標識したcRNAを 65℃にて20時間、10rpmで回転ハイブリダイゼーションオーブンでハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後、マイクロアレイを添付の説明書に従って洗浄し、スキャン・コントロール・ソフトウエアを備えたアジレントDNAマイクロアレイ・スキャナによってスキャンした。アジレント・フィーチャー・エクストラクション・ソフトウエアを用いて、得られた画像を処理し、生データを保存した。発現データをGeneSpring GX11(アジレント・テクノロジー)を用いて分析した。各プローブのシグナル強度は、各値が配列内のすべての値の75パーセンタイル値で除したパーセンタイルシフトを用いて正規化した。ペアワイズ比較分析のために、少なくとも1つの状態で存在する表現フラグを有するプローブのみを考慮した。リストは、インゲニュイティ・パスウエイ・アナリシス・ソフトウェア(インゲニュイティ・システムズ、レッドウッド、アメリカ)を用いて分析した。

<定量RT-PCR> 全RNAをmiRNeasyミニキット(Qiagen)を用いて細胞から単離し、添付の説明書に従って、ハイ・キャパシティcDNAリバース・トランスクリプション・キット(ライフ・テクノロジーズ、カールズバッド、アメリカ)を用いてcDNAを逆転写合成した。リアルタイムPCRは、パワーSYBRグリーンPCRマスター・ミックスを用いて、ステップワンプラス・リアルタイムPCRシステム(ライフ・テクノロジーズ)で行った。18S rRNA遺伝子を正規化のための内部標準として用いた。プライマーの配列を表1に示した(なお、配列表の番号については、1段目左側を配列番号1、右側を配列番号2と順に配列番号8まで付した)。

細胞を新鮮な培地と交換する1日前に60mmディッシュに播種した。24時間培養した馴化培地を回収し、粒子を遠心分離(500×gにて10分間、10,000×gにて30分間)によって除去した。上清中のGDF15とINHBE濃度及び患者の血清は、ヒトGDF15イムノアッセイ(DGD150、R&Dシステムズ、ミネアポリス、アメリカ)及びインヒビン・ベータE(E90048Hu、Uscnライフ・サイエンス、武漢、中国)測定用酵素結合免疫吸着アッセイキットを用い、添付の説明書に従って、デュプリケートにて測定した。IL1A及び他のサイトカイン濃度を測定するために、上清及び血清をマルチプレックスサスペンションアレイにかけ、バイオプレックス・プロ・ヒューマン・サイトカインGRP IIパネル21PLEX(MF0-005KMII、バイオ・ラッド、ヘラクレス、アメリカ)を用いた。アレイを用いて測定したサイトカインは、IL-2Rα、IL-3、IL-12(p40)、IL-16、IL-18、CTACK、GRO-α、HGF、IFN-α2、LIF、MCP-3、M-CSF、MIF、MIG、β-NGF、SCF、SCGF-β、SDF-1α、TNF-β及びTRAILであった。

<統計解析> 統計解析はIBM SPSSスタティスティクス(IBM、アーモンク、アメリカ)を用いて行った。ミトコンドリア病患者と対照者との間の血清中サイトカイン濃度の相違を検証するために、ノンパラメトリック・マン・ホイットニーU検定を用いた。スピアマン相関分析による血清中GDF15及びFGF21濃度の間の相関を評価した。GDF15、HGF、MIG、SCF、SCGF-β及びFGF21について、受信者動作特性(ROC)曲線をプロットし、曲線下面積(AUC)を求めた。感度と100マイナス特異性についてのデータを連続スケールでプロットした。

2.ミトコンドリア病モデル細胞の網羅的遺伝子発現解析による候補バイオマーカーの同定 (i)10 mM 乳酸または10 mMピルビン酸を投与し、0, 4, 8時間後の2SA細胞と2SD細胞を回収した。これらのRNAを抽出した後、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を実施した。データ解析の結果、2SD細胞に10 mM乳酸を投与した場合にのみ、顕著に発現が増加する遺伝子を313個同定した(図1)。 (ii)血液中で測定可能なバイオマーカーを探索するために、313個の遺伝子の中から分泌タンパクをコードするものを選抜し、23個の遺伝子を同定した(表2)。

表中の23個の遺伝子のうち、特にGDF15, AREG, INHBE, ADM2, ECM2 及び IL1Aの6個については、乳酸を投与した場合に顕著な発現増加が認められた。 また、2SD細胞に10 mM乳酸を投与した場合にのみ、顕著に発現が減少する4個の遺伝子を同定した(表3)。

(iii)発現が増加した遺伝子に関する文献を精査し、ミトコンドリア機能異常との関連性が高いと考えられる3個の遺伝子(GDF15、インヒビン・ベータE(INHBE)、及びインターロイキン1α(ILIA))を選抜した。 (iv)細胞内での発現レベルを検証するために、GDF15、INHBE及びIL1Aの定量RT-PCRを実施した。GDF15、INHBE及びIL1Aの発現レベルは、2SD細胞では4時間及び8時間後において、10mM乳酸で処理することによって増加されたものの、10 mMピルビン酸の添加によっては変化が認められなかった。GDF15の場合は、0時間において、2SA細胞より2SD細胞で高かった。これらの結果より、マイクロアレイデータの再現性が確認され、ミトコンドリア病のための候補バイオマーカーとしてGDF15、INHBEおよびIL1Aを同定した(図2〜図4)。

(v)候補バイオマーカーとして同定した3種類の分泌タンパクの細胞培養液中濃度を、ELISAとマルチプレックスサスペンションアレイで測定した。その結果、通常の培養条件下(1 mMピルビン酸投与)において、2SD細胞の培養液中のGDF15 (growth differentiation factor 15)濃度は2SA細胞よりも高かった。また、2SD細胞では、10 mM乳酸の投与によって培養液中のGDF15が増加していた(図5)。他の分泌タンパクについては、検出限界以下で測定できなかった。 (vi)他のタンパク質については、図6に示すように、血中肝細胞成長因子(HGF)、γインターフェロン誘導モノカイン(MIG)、及びSCFについては、ミトコンドリア病患者の方が、対照者に比べて有意に高値であった。また、血中SCGF-βについては、ミトコンドリア病患者の方が、対照者に比べて有意に低値であった。このため、これらの4個のタンパク質は、ミトコンドリア病の診断用マーカーとして有用であると判断した。

また、血中FGF21濃度は、ミトコンドリア病患者の方が、対照者よりも高値であった(図7(A))。FGF21は、これまでにミトコンドリア病との関連が指摘されており、疾患者においては、血中濃度が高いことが知られている。今回の試験においても、FGF21濃度は、他の疾患罹患者に比べても、ミトコンドリア病患者の方が高値であった。また、血中のGDF15濃度とFGF21濃度は、良い相関を示した(図7(B))。HGF、MIG、SCF、SCGF-β、FGF21及びGDF15について、受信者操作特性曲線(ROC曲線)を作成したところ、図7(C)に示すように、いずれのタンパク質についても疾患との関連が認められたものの、ミトコンドリア病の診断に関しては、GDF15が最も敏感度及び特異度に優れていることが分かった。曲線下面積(AUC)を比べると、GDF15は0.987であり、HGF (0.761)、 MIG (0.714)、 SCF (0.744)、 SCGF-β (0.791)及びFGF21 (0.763)のいずれよりも高かった。

3.臨床検体による候補バイオマーカーの検証 最後に、ミトコンドリア病および他の小児疾患患者の血中GDF15レベルをELISAで調べたところ、GDF15はミトコンドリア病患者で顕著に増加していた(図8)。他の2種類の分泌タンパクについても測定したが、検出限界以下で評価できなかった。 以上の結果から、GDF15がミトコンドリア病の新規疾患マーカーさらにはミトコンドリア機能異常のマーカーになることが分かった。

4.ミトコンドリア病患者に対するピルビン酸ナトリウム療法の検討 10名のミトコンドリア病患者に対し、7年間に渡って、ピルビン酸ナトリウム(0.3g/kg〜2g/kg)を投与し、FGF-21とGDF-15の推移、及びその他の治療効果を確認するためのパラメータを検討した。ミトコンドリア病患者としては、PDH E1A欠損、A3243G変異を伴うMELAS/心筋症、ND5遺伝子中のG13513A変異を伴うMELAS/リー症候群が含まれていた。 ピルビン酸ナトリウム療法によって、乳酸、ピルビン酸及びアラニンの濃度、及びGDF-15が有意に減少した。また、有害な副作用は認められなかった。このことから、ピルビン酸ナトリウム療法は、ミトコンドリア病患者に対して、非常に有効な療法であることが認められた。 このように本実施形態によれば、ミトコンドリア病の診断用バイオマーカーとして、新たにGDF15、HGF、MIG、SCF又はSCGF-βを用いることができることが分かった。ミトコンドリア病患者では、対照者に比較すると、GDF15 、HGF、MIG、SCF又はSCGF-βの血中濃度が異なっている(前4個のマーカーでは高値、SCGF-βでは低値)。このため、被験者から採取された生体サンプル中の診断用バイオマーカーの濃度を比較することにより、ミトコンドリア病であるか否かを判定するためのデータの一つを取得できる。 また、ミトコンドリア病の診断用バイオマーカーの測定キット、並びに当該キットとミトコンドリア病治療用薬剤とを備えたミトコンドリア病の治療用キットを提供できた。測定キットとミトコンドリア病治療用薬剤とを組み合わせることにより、治療効果を確認しつつ、薬剤の摂取を行えるので、使用性が良好とできた。 なお、実際の診断は、本発明の測定方法によって得られたデータを踏まえて、有資格者(例えば医師)による総合的な判断を加えることによって行う。

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