【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はディスク装置の筐体の振動解析方法及び解析装置に関し、特に、コンピュータに内蔵、或いはコンピュータの外部記憶装置としてロッカに収容されたディスク装置の、ヘッドアクチュエータに起因する筐体振動の解析方法に関するものである。 【0002】従来、コンピュータ用の記憶装置として使用されるディスク装置、例えば、磁気ディスク装置においては、記憶容量の増大に伴って磁気ディスク上のデータ記録トラック間のピッチ(TPI:Track Per Inch) が狭くなってきている。 このため、磁気ディスク上の目的のトラックからのヘッドの許容位置ずれ値(許容オフトラック値)の要求が厳しくなっている。 そして、この許容オフトラック値はディスク装置の筐体振動によっても影響を受けるので、ディスク装置の稼働中の筐体の振動を検出することが重要になってきており、優れたディスク装置の筐体振動の解析方法が求められている。 【0003】 【従来の技術】ディスク装置はコンピュータに内蔵されて使用されることもあるが、大型コンピュータでは、コンピュータの外部に設けられた棚(ロッカ)内に複数のディスク装置が並べて使用される。 このようなロッカに並べられて使用されるディスク装置においては、顧客側のロッカの設置条件により、ヘッドのオフトラック量がロッカの振動特性の影響を受けやすい。 【0004】このような問題点に対して、従来はロッカに振動検出センサを取付けてロッカの振動特性を検出することにより、ディスク装置の筐体の振動防止対策が行われていた。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のディスク装置の筐体の振動防止対策では、ロッカ及びディスク装置の筐体の並進方向の変位の評価によってのみ振動対策が行われていたので、ディスク装置の筐体の振動防止対策が不完全であった。 これまでのディスク装置の筐体の振動評価方法は、顧客にシークするダミーのディスク装置を渡して、ヘッドがオントラックした後のオフトラックの幅を測定して、その幅が何μ以下であれば問題がないとしていたが、許容幅を越えた場合には振動する周波数が不明であり、振動防止対策がとれなかった。 【0006】このような従来のディスク装置の筐体の振動問題に対して本発明者らが検討した結果、ロッカ振動はディスク装置に対する並進運動ばかりではなく、ディスク装置内のヘッドアクチュエータの回転による反力で筐体が共振することによって発生することが分かった。 そして、筐体の回転方向の振動特性によって板金が共振したり、緩く固定した筐体が揺れたりし、この筐体の回転変位がヘッドの揺れに直に換算されてオフトラック量が大きくなることが分かった。 【0007】そこで、本発明は、従来のディスク装置における残留振動の問題を解消し、ヘッドアクチュエータに電流を流し、この電流に対するディスク装置の筐体の回転加速度を測定して、この回転加速度の伝達関数を求めることにより、ディスク装置の筐体振動を正確に検出することができるディスク装置の筐体の振動解析方法及び解析装置を提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成する本発明の特徴は、以下に第1から第5のディスク装置の筐体の振動を解析する方法の発明と、この方法を実施する第6から第11の装置の発明として示される。 第1の発明は、図1にその原理構成が示されるように、ディスク装置の、ヘッドアクチュエータに起因する筐体振動の解析方法であって、ヘッドアクチュエータに外部から、乱数により位相をランダムにした各周波数の電流を含むランダムシーク電流を流す第1の段階と、筐体に取り付けられた加速度センサから得られた筐体の回転加速度の伝達関数を各周波数毎に求める第2の段階と、アクチュエータに印加するランダムシーク電流の電流スペクトルと、 筐体の伝達関数を乗算する第3の段階と、第3の段階の乗算値を2回積分して変位換算する第4の段階と、第4 の段階で得られた変位換算値にアクチュエータのサーボの追従誤差特性を乗算して、周波数領域の残留振動のパワースペクトルを求める第5の段階とを有することを特徴としている。 【0009】第2の発明は、第1の発明の方法において、図1に示されるように、更に、筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことにより、ヘッドの時間軸に対する揺れを検出する第6の段階を有することを特徴としている。 第3の発明は、第1又は2の発明の方法において、ヘッドアクチュエータのヘッド搭載部にはダミーヘッドが搭載されていることを特徴としている。 【0010】第4の発明は、第1から第3の発明の方法の何れかにおいて、加速度センサが筐体に2個設けられており、第2の段階で得られる筐体の回転加速度は、2 個の加速度センサの差分から求められることを特徴としている。 第5の発明は、第1から第4の発明の方法の何れかにおいて、図1に示されるように、更に、ディスク装置のディスクを回転させるスピンドルモータのアンバランスを仮定する第6の段階と、スピンドルモータのアンバランスにより発生する力から重心回りのモーメントを計算する第7の段階と、この重心回りのモーメントを筐体の応答ゲインと乗算して、スピンドルアンバランスによる筐体の位置加速度の偏心による増加分を求める第8の段階とを有することを特徴としている。 【0011】第6の発明は、図2にその原理構成図が示されるように、ディスク装置の、ヘッドアクチュエータに起因する筐体振動の解析装置であって、筐体に取り付けられた加速度センサと、この加速度センサに接続される加振試験器とから構成され、この加振試験器には、乱数により位相をランダムにした各周波数の電流を含むランダムシーク電流を発生させ、これをヘッドアクチュエータに流す電流印加手段と、加速度センサから得られた筐体の回転加速度の伝達関数を各周波数毎に求める回転加速度の伝達関数の算出手段と、アクチュエータに印加するランダムシーク電流の電流スペクトルと、筐体の伝達関数を乗算する乗算手段と、乗算値を2回積分して変位換算する変位換算手段と、得られた変位換算値にアクチュエータのサーボの追従誤差特性を乗算して、筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルを求める残留振動のパワースペクトルの算出手段とが設けられていることを特徴としている。 【0012】第7の発明は、第6の発明の装置において、加振検出器に、図2に示されるように、更に、筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことにより、ヘッドの時間軸に対する揺れを検出するヘッドの振動特性検出手段が設けられていることを特徴としている。 第8の発明は、第6または第7の発明の装置において、ヘッドアクチュエータのヘッド搭載部にはダミーヘッドが搭載されていることを特徴としている。 【0013】第9の発明は、第6から第8の発明の装置のいずれかにおいて、加速度センサが筐体に2個設けられており、第2の段階で得られる筐体の回転加速度は、 2個の加速度センサの差分から求められることを特徴としている。 第10の発明は、第6から第9の発明の装置の何れかにおいて、加振試験器に更に、ディスク装置のディスクを回転させるスピンドルモータのアンバランスを仮定するスピンドルアンバランス仮定手段と、スピンドルモータのアンバランスにより発生する力から重心回りのモーメントを計算する回転モーメントの算出手段と、この重心回りのモーメントを筐体の応答ゲインと乗算して、スピンドルアンバランスによる筐体の位置加速度の偏心による増加分を求める位置加速度の補正手段とを有することを特徴としている。 【0014】第11の発明は、第6から第10の発明の装置の何れかにおいて、加振試験器における各手段が、 コンピュータのソフトウエアとして構成されていることを特徴としている。 第1の発明のディスク装置の筐体の振動を解析する方法によれば、第1の段階においてヘッドアクチュエータに外部から各周波数の電流を含むランダムシーク電流が流され、第2の段階において筐体の回転加速度の伝達関数が各周波数毎に求められ、第3の段階においてランダムシーク電流の電流スペクトルと筐体の伝達関数が乗算され、第4の段階において第3の段階の乗算値を2回積分されて変位換算が行われ、第5の段階において第4の段階で得られた変位換算値にアクチュエータのサーボの追従誤差特性が乗算されるので、筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルが求められ、筐体の振動、変位が明らかになる。 【0015】第2の発明は、第1の発明の方法において、更にヘッドの時間軸に対する揺れを検出する第6の段階が設けられているので、ヘッドの時間軸に対する変位を検出できる。 第3の発明では第1又は第2の発明の方法において、ヘッドアクチュエータのヘッド搭載部にはダミーヘッドを搭載したことにより、ヘッドアクチュエータへの外乱の印加時にシークエラーや暴走が発生しない。 【0016】第4の発明では第1から第3の発明の方法の何れかにおいて、加速度センサを筐体に2個設けたことにより、筐体の回転加速度が正確に求められる。 第5 の発明では第1から第4の発明の方法の何れかにおいて、更に、スピンドルモータのアンバランスを仮定する第6の段階と、スピンドルモータのアンバランスにより発生する力から重心回りのモーメントを計算する第7の段階と、スピンドルアンバランスによる筐体の位置加速度の偏心による増加分を求める第8の段階とを追加したことにより、より正確な筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルが求められる。 【0017】第6の発明のディスク装置の筐体の振動解析装置によれば、加速度センサに接続される加振試験器が、ランダムシーク電流をヘッドアクチュエータに流す電流印加手段と、筐体の回転加速度の伝達関数を各周波数毎に求める回転加速度の伝達関数の算出手段と、ランダムシーク電流の電流スペクトルと筐体の伝達関数を乗算する乗算手段と、乗算値を2回積分して変位換算する変位換算手段と、得られた変位換算値にアクチュエータのサーボの追従誤差特性を乗算して筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルを求める残留振動のパワースペクトルの算出手段とが設けられているので、第1の発明の方法を容易に実施することができる。 【0018】第7の発明は、第6の発明の装置において、加振検出器に更にヘッドの時間軸に対する揺れを検出するヘッドの振動特性検出手段が設けられているので、ヘッドの時間軸に対する変位を検出できる。 第8の発明によれば、第5から第7の発明の装置の何れかにおいて、ヘッドアクチュエータのヘッド搭載部にダミーヘッドが搭載されているので、ヘッドアクチュエータへの外乱の印加時にシークエラーや暴走を発生させることがない。 【0019】第9の発明によれば、第6から第8の発明の装置のいずれかにおいて、加速度センサが筐体に2個設けられているので、第2の段階で得られる筐体の回転加速度を、2個の加速度センサの差分から求められることができる。 第10の発明によれば、第6から第9の発明の装置の何れかにおいて、加振試験器に更に、ディスク装置のディスクを回転させるスピンドルモータのアンバランスを仮定するスピンドルアンバランス仮定手段と、スピンドルモータのアンバランスにより発生する力から重心回りのモーメントを計算する回転モーメントの算出手段と、この重心回りのモーメントを筐体の応答ゲインと乗算して、スピンドルアンバランスによる筐体の位置加速度の偏心による増加分を求める位置加速度の補正手段とを追加したことにより、より正確な筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルが求められる。 【0020】第11の発明によれば、第6から第10の発明の装置の何れかにおいて、加振試験器における各手段が、コンピュータのソフトウエアとして構成されているので、ディスク装置の筐体の振動解析が容易になる。 【0021】 【発明の実施の形態】以下添付図面を用いて本発明の実施形態を具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。 なお、この実施例では、ディスク装置として、磁気ディスク装置を例にとって説明する。 図3は本発明の方法を実施例する磁気ディスク装置の筐体の振動解析装置30の一実施例の構成を示す構成図である。 【0022】この実施例の振動解析装置30は、磁気ディスク装置1の筐体5に取り付けられた加速度センサ1 1,12と、この加速度センサ11,12に接続される加振試験器10とから構成される。 磁気ディスク装置1 には磁気ディスク2が内蔵されており、この磁気ディスク2に対してヘッドアクチュエータ(以後VCM:ボイスコイルモータという)3の先端部に取り付けられたヘッド4がデータの読み書きを行う。 【0023】振動解析に使用する磁気ディスク装置1は実際に動作するものでも良いが、外部からVCM3に大きな外乱を入力すると、VCM3にシークエラーが起きたり、暴走したりすることがある。 そこで、この実施例の磁気ディスク装置1では、実際のヘッド4の代わりにヘッドと同じ質量を備えたダミーヘッド4が取り付けられている。 このように構成された磁気ディスク装置1 は、コンピュータに内蔵、或いはコンピュータの外部記憶装置としてロッカに収容されて使用される。 この実施例では、磁気ディスク装置1はロッカ6に収容されているものとする。 【0024】加振試験器10には、チャージアンプ1 6、パワーアンプ17、センス抵抗18、及びFFT (高速フーリエ変換)アナライザ20が内蔵されている。 チャージアンプ16の中には2つのアンプ13,1 4と、差動アンプ15がある。 アンプ13,14はそれぞれ第1、第2の加速度センサ11,12の検出出力α 1,α2を増幅して差動アンプに入力する。 FFTアナライザ20には第1の入力端子21、第2の入力端子2 2、及び電源端子23がある。 【0025】電源端子23の一方の端子はパワーアンプ17を介してVCM3の一方の端子に接続されており、 他方の端子はセンス抵抗18を介してVCM3の他方の端子に接続されている。 この実施例では、センス抵抗1 8は1Ωの抵抗であり、このセンス抵抗18の両端がF FTアナライザ20の第1の入力端子21に接続されている。 FFTアナライザ20の第2の入力端子22は、 チャージアンプ16を介して2つの加速度センサ11, 12に接続されており、2つの加速度センサ11,12 とチャージアンプ16によって検出された筐体5の回転加速度の検出値が入力される。 【0026】FFTアナライザ20の内部には、その回路は図示しないが、乱数により位相をランダムにした各周波数の電流を含むランダムシーク電流を発生させてこれを電源端子23から出力する電流印加回路と、入力端子21,22から入力される信号の解析を行う演算回路と、筐体5の伝達関数とVCM3のサーボの追従誤差特性とを記憶しておくメモリがある。 【0027】ここで、以上のように構成された実施例のディスク装置の筐体の振動解析装置30が、磁気ディスク装置1のVCM3のシーク時のシーク反力によって生じるヘッド4のオフトラックを検出する場合について、 その動作を図4から図13を用いて説明する。 図4は図3のディスク装置の筐体の振動解析装置30による、ディスク装置1の筐体5の振動解析方法の手順を示すフローチャートである。 【0028】ステップ401ではまず、FFTアナライザ20からランダムシーク電流がパワーアンプ17を介してVCM3に流される。 このランダムシーク電流は、 FFTアナライザ30の内部において、乱数により位相をランダムにして各周波数の電流を含むように作られる。 このランダムシーク電流は抵抗値が1Ωのセンス抵抗18を流れるので、このセンス抵抗18の両端に現れる抵抗値を検出することにより、VCM3に印加されるランダムシーク電流の電流スペクトルがFFTアナライザ20により検出される。 【0029】ステップ402では、磁気ディスク装置1 の筐体5に取り付けられた2つの加速度センサ11,1 2の検出値α1,α2の差分が読み込まれる。 すなわち、2つの加速度センサ11,12の検出値α1,α2 はそれぞれチャージアンプ16のアンプ13,14で増幅された後に差動アンプ15において差分が計算され、 この差分が第2の入力端子22からFFTアナライザ2 0に入力される。 【0030】ステップ403においては、読み込まれた2つの加速度センサ11,12の検出値α1,α2の差分に基づいて、FFTアナライザ20内で筐体5の回転加速度の伝達関数が各周波数毎に算出されて記憶される。 筐体5の回転加速度は、加速度センサ11,12の検出値α1,α2の差分を、2つの加速度センサ11, 12の間の距離L1で割ることによって算出される。 【0031】なお、この実施例では加速度センサ11, 12に1軸のものを使用しているので、両者の差分をとって回転加速度が検出されているが、回転加速度を検出することができる加速度センサであれば、磁気ディスク装置1の筐体5に取り付ける加速度センサの数は1個で良い。 ステップ404では、ステップ401で検出されたVCM3に印加されたランダムシーク電流の電流スペクトルと、ステップ403で算出された筐体5の回転加速度の伝達関数が乗算され、続くステップ405では乗算値が2回積分されて変位換算が行われる。 【0032】次のステップ406では、ステップ405 で得られた変位換算値にVCM3のサーボの追従誤差特性が乗算され、周波数領域の残留振動のパワースペクトルが算出されて記憶される。 VCM3のサーボの追従誤差特性は予め測定されてFFTアナライザ20に記憶されている。 そして、ステップ407では、ステップ40 6で算出された筐体5の周波数領域の残留振動のパワースペクトルに対してフーリエ逆変換が行われ、ヘッド4 の時間軸に対する揺れが検出されてこのルーチンが終了する。 【0033】図5(a) から(f) は図4で説明したディスク装置の筐体の振動解析方法の手順を、概略波形図と共に説明するものである。 本発明のディスク装置の筐体の振動解析方法においては、図5(a) に示されるVCM3 に流す電流のスペクトルiと、図5(b) に示される筐体(DE)5の回転加速度の伝達関数θ″/iが乗算された後に、図5(c) に示される2回積分が行われ、加速度がヘッドの位置の変位に変位換算される。そして、得られた結果に図5(d) に示されるサーボ追従誤差特性が乗算されて図5(e) に示される周波数領域の残留振動のパワースペクトルが得られる。この後、この残留振動のパワースペクトルに対してフーリエ逆変換が行われて図5 (f) に示されるヘッドの時間軸に対する変位波形が得られる。 【0034】図6は図5(a) の波形の詳細を示すものであり、ランダムシーク時のVCM電流の波形を示す波形図である。 VCM3には周波数毎に電流が流されるので、本発明では、VCM3をランダムシークした時の電流を周波数領域で平均化したものを振動解析時にランダムシーク電流としてVCM3に流している。 このランダムシーク電流(VCM電流)の電流スペクトルは、前述のようにセンス抵抗18の両端の電圧を測定することによって求めることができる。 【0035】図7は図5(b) の波形の詳細を示すものであり、DE(筐体)5の回転加速度の伝達関数の特性を示す図である。 前述のように、DE5の回転加速度は2 つの加速度センサ11,12の検出値から得ることができる。 2つの加速度センサ11,12の検出値をそれぞれα1(G/A)、α2(G/A)とし、ヘッドの回転半径をrh(m)、2つの加速度センサ間の距離をd (m)、DE5の慣性モーメントをJ(kgmm 2 )とすると、この時の回転加速度Xの伝達関数は以下のようになる。 【0036】X=〔(α1−α2)×rh〕÷(d× J) (m/s2/a) この値がロッカ6に磁気ディスク装置1を実装した時の回転加速度に対するDE5の振動特性であり、図7はこの一例を示すものである。 図8は図5(d) の波形の詳細を示すものであり、サーボ追従誤差特性の一例を示している。 このサーボ追従誤差特性は、1μmの振幅で振動しているヘッドをサーボで圧縮することにより、何μm に抑えられるかの特性であり、個々の磁気ディスク装置1によって異なる。 従って、このサーボ追従誤差特性は、予め測定されてFFTアナライザ20内に記憶されている。 【0037】図9は図5(e) の波形の詳細を示すものであり、DE5の残留振動のパワースペクトルを示している。 パワースペクトルは、VCM3のシーク反力によるオフトラックを表示するものであり、このDE5の残留振動のパワースペクトルを見ることにより、ヘッド位置のオフトラックが分かる。 DE5を強固に固定した場合の残留振動のパワースペクトルに対して、ある周波数が大きなピークを持っていたら、その周波数で揺れているところをDE5が収容されたロッカ6において探し、揺れている所に制振板を付加したり、ダンピングマスを取り付けることによって、DE5の振動に対する対策ができる。 【0038】なお、DE5の共振点はこれを取り付けるロッカ等の剛性によって変わる。 DE5があるエネルギでロッカ6を加振するのは変わらないので、ロッカ6側でいかに共振点を抑えられるかが重要になる。 例えば、 100Hzにパワースペクトルのピークがあってロッカ6のある部分が揺れている時と、200Hzにパワースペクトルのピークがあってロッカ6の同じ部分が揺れている時とでは、ロッカ6に取り付ける制振材は異なる。 パワースペクトルのピークが高い周波数であれば、少々のものをつけただけで振動は止まるが、低い周波数の時には重いダンピングマスを付けないと振動は止まらない。 即ち、パワースペクトルの周波数に応じてダンピングマスや補強を入れるようにしなければならない。 【0039】ところで、このディスク装置の筐体の振動解析方法においては、VCM3に流すの電流スペクトルをリファレンス毎に幅をかえたり、シークのインタバルを変えたものを何十個か用意しておき、それをこの解析方法によって解析することにより、残留振動が大きくなる条件を割り出すことができる。 従って本発明の方法は共振に対して弱い所を見つけるのに好適である。 【0040】図10は図5(f) の波形の詳細を示すものであり、ヘッド位置の時間に対する揺れを示している。 図10の波形は、図9のパワースペクトルをフーリエ逆変換により変位換算して、100Hzで振幅が−60d B(0dBが1μm)で、サイン波を計算する。 次のポイントではサイン波を101Hzで重ね合わせ、その次ではサイン波を102Hzで重ね合わせというように、 次々にサイン波を重ね合わせて加算して行くと、最終的にヘッド位置が時間軸方向にどういう方向に揺れるかが分かる。 即ち、図10の特性は、時間軸に対するヘッド4の変位(揺れ)を示すものである。 【0041】但し、重ね合わせる波形が全てサイン波の場合について考えると、周波数の異なる波形を重ね合わせると、振幅が最大のものが足された所の波形の振幅が大きくなる。 一方、実際の電流は全て位相がランダムであるので、本発明では乱数を発生させて各周波数のサイン波の位相をランダムにして、最大振幅を分散させることにより、得られる特性が正規のものに近くなるようにしている。 各周波数のサイン波の位相を合わせるとある所が大きくなって他は小さくなって、時間軸方向にばらつきの大きい波形になるが、位相ランダムにするとこれが解消される。 【0042】図11はDE5をフリー支持した時のパワースペクトルを示す図であり、図12はDE5を高剛性フレームで支持した時のパワースペクトルを示す図であり、図13はDE5を試験器の振動の小さいスロットで支持した時のパワースペクトルを示す図である。 これらの図から、DE5が高剛性フレームで支持された状態(図12)であると、低域のパワースペクトルはフラットに抑え付けられている。 一方、DE5が完全にフリーな状態でスポンジの上に縦置きされた状態(図11)では、パワースペクトルの低域の方が持ち上がっている。 パワースペクトルを変位換算した時には、低域の方がヘッドの変位としては大きくなる。 【0043】これらのパワースペクトルから、DE5の120Hz(スピンドル回転数が7200rpm の時の周波数)におけるヘッドのオフトラックとボックスゲイン、167Hz(スピンドル回転数が10033rpm の時の周波数)におけるオフトラックとボックスゲイン、 及び、nrro3σを検出すると、下表1のような結果が得られた。 ここでボックスゲインは回転加振力に対するヘッドのオフトラック量であり、nrro3σは、パワースペクトルを変位換算し、時間軸方向にもう一度換算してから0に対して±AC成分を重ね合わせてセンターに対する分散をとって3倍してエンベロープを再現したものである。 【0044】 【表1】 【0045】この表1から分かるように、オフトラック量とボックスゲインの値は、高剛性フレーム、振動小のスロット、フリー支持の順に数値が大きくなっており、 この順に変位量が小さいことを示している。 また、nr ro3σの値をみると、DE5がフリー支持の状態では変位が0.671μmであるのに対して、高剛性フレームを用いてDE5を固定すると、変位は0.095μm となっている。 このnrro3σの値により、DE5をしっかり固定した場合に比べて、ロッカ実装状態のヘッド位置決め精度の悪化の度合(数値が大きいほど悪い) を知ることができる。 すなわち、nrro3σの値によって総合的なロッカの振動特性に関する善し悪しを判断できる。 【0046】ところで、DE5に回転加振力が加わる要因は2つ存在する。 その1つは、前述したように、アクチュエータがシークする時の反力であるパワースペクトルであり、他の1つは、スピンドルモータが偏心しているために生じるスピンドルアンバランスによる回転加振力である。 このスピンドルアンバランスはスピンドルモータの回転数に比例した単一周波数である。 従って、7 200rpmで回転するスピンドルモータには120H zにスピンドルアンバランスが現れ、10033rpm で回転するスピンドルモータには167Hzにスピンドルアンバランスが現れる。 【0047】図14は、スピンドルアンバランスによるオフトラックの検出手順を示すフローチャートである。 スピンドルアンバランスは、サーボの追従特性をDE5 の回転加速度に乗算した値からVCM電流を除いた特性であり、DE5のある回転トルクに対してどういう風にDE5が変位するかを表す特性である。 このスピンドルアンバランス値を用いてディスク装置の筐体の振動の解析をもう1つの方向から評価できる。 即ち、スピンドルアンバランスによって、DE5を中心にした回転が生じるが、スピンドルアンバランス量とDE5の回転中心からの距離が分かれば、DE5の回転トルクを計算することができる。 そして、スピンドルアンバランス量をDE 5の応答特性に乗算することにより、スピンドルアンバランス量に対応する顧客のロッカの変位量が分かるので、共振が発生した時の対策がやりやすくなる。 【0048】ステップ501では、磁気ディスク装置1 のディスクを回転させるスピンドルモータのアンバランスを仮定する。 次いで、ステップ502では、スピンドルモータのアンバランスにより発生する力mrω 2から、DE5の重心回りのモーメントmrω 2 l 2が計算される。 続くステップ503では、前述のステップ40 6で算出された残留振動のパワースペクトルの値から、 VCM3に流す電流の成分を減算し、DE5の応答ゲインが算出される。 そして、ステップ04において、ステップ502で求められた重心回りのモーメントmrω 2 l 2がDE5の応答ゲインと乗算され、スピンドルアンバランスによるDE5の位置加速度の偏心による増加分が求められる。 【0049】このスピンドルアンバランスによる回転加振力は、スピンドルモータの回転数がパラメータに入っているので、実際のスピンドルモータによる回転加振力はFFTアナライザ20の内部の計算で使用され、表示はしないことが多い。 以上実施例を用いて説明したように、本発明は磁気ディスク1のDE5がどのように振動しているかを調べるシステムである。 実施例の装置の構成では、チャージアンプ16とFFTアナライザ20を備えた加振試験器10が使用されているが、加振試験器10はコンピュータを用いて構成することもできる。 コンピュータでは複素数演算が簡単に行えるので、FFE アナライザ20で計算し、オシログラフ(図示せず)に表示されていたグラフィカルなデータも、コンピュータ内部で計算処理して、そのディスプレイ画面に簡単にグラフィックで表示することができる。 このようなコンピュータを使用する場合には、図4、図14で説明した制御手順をソフトウエアの形でメモリに記憶させておけば良い。 【0050】なお、以上の実施例では、磁気ディスク装置における筐体の振動解析方法及び解析装置を説明したが、本発明のディスク装置は特に磁気ディスク装置限定されるものではなく、光ディスク装置にも適用できる。 また、以上説明した実施例では、試験の対象を一般に問題になり易いムーバブルディスク、例えば、複数の磁気ディスク装置がロッカに収容されており、各磁気ディスク装置が抜き差しできるアレイディスクとして説明したが、1個のロッカ、例えば、1台の磁気ディスク装置が単独でコンピュータに内容されている場合についても本発明を有効に適用することができる。 【0051】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のディスク装置の筐体の振動解析方法及び解析装置によれば以下のような効果がある。 第1の発明のディスク装置の筐体の振動を解析する方法によれば、VCMに外部から各周波数の電流を含むランダムシーク電流が流すことにより得られた筐体の回転加速度の検出値から、筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルが求められるので、筐体の振動、変位が明らかになる。 【0052】第2の発明ではヘッドの時間軸に対する変位を検出できる。 第3の発明ではダミーヘッドの搭載によりVCMへの外乱の印加時にシークエラーや暴走が発生しない。 第4の発明では2個の加速度センサにより筐体の回転加速度が正確に求められる。 【0053】第5の発明ではスピンドルアンバランスによる筐体の位置加速度の偏心による増加分が求められるので、より正確な筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルが求められる。 第6の発明のディスク装置の筐体の振動解析装置によれば、第1の発明の方法を容易に実施することができる。 【0054】第7の発明はによれば、ヘッドの時間軸に対する変位を検出できる。 第8の発明によれば、ダミーヘッドの搭載によりVCMへの外乱の印加時にシークエラーや暴走を発生させることがない。 第9の発明によれば、2個の加速度センサにより筐体の回転加速度が正確に求められる。 【0055】第10の発明によれば、スピンドルアンバランスによる筐体の位置加速度の偏心による増加分が求められるので、より正確な筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルが求められる。 第11の発明によれば、加振試験器をコンピュータのソフトウエアとして構成されているので、ディスク装置の筐体の振動解析が容易になる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明のディスク装置の筐体の振動解析方法の原理構成を示す図である。 【図2】本発明のディスク装置の筐体の振動解析装置の原理構成を示す図である。 【図3】本発明の方法を実施例するディスク装置の筐体の振動解析装置の一実施例の構成を示す構成図である。 【図4】本発明のディスク装置の筐体の振動解析方法の手順を示すフローチャートである。 【図5】(a) から(f) は本発明のディスク装置の筐体の振動解析方法の手順を示す波形図である。 【図6】図5(a) の波形の詳細を示すものであり、ランダムシーク時のVCM電流の波形を示す波形図である。 【図7】図5(b) の波形の詳細を示すものであり、DE 回転加速度の伝達関数の特性を示す図である。 【図8】図5(d) の波形の詳細を示すものであり、サーボ追従誤差特性の一例を示す図である。 【図9】図5(e) の波形の詳細を示すものであり、残留振動のパワースペクトルを示す図である。 【図10】図5(f) の波形の詳細を示すものであり、ヘッド位置の時間に対する揺れを示す図である。 【図11】筐体をフリー支持した時のパワースペクトルを示す図である。 【図12】筐体を高剛性フレームで支持した時のパワースペクトルを示す図である。 【図13】筐体を試験器の振動の小さいスロットで支持した時のパワースペクトルを示す図である。 【図14】スピンドルアンバランスによるオフトラックの検出手順を示すフローチャートである。 【符号の説明】 1…磁気ディスク装置 2…磁気ディスク 3…ヘッドアクチュエータ(VCM) 4…ダミーヘッド 5…筐体 6…ロッカ 10…加振試験器 11…第1の加速度センサ 12…第2の加速度センサ 16…チャージアンプ 17…パワーアンプ 18…センス抵抗 20…FFTアナライザ 30…本発明のディスク装置の筐体の振動解析装置 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】 【提出日】平成10年3月19日 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0010 【補正方法】変更 【補正内容】 【0010】第4の発明は、第1から第3の発明の方法の何れかにおいて、加速度センサが筐体に2個設けられており、第2の段階で得られる筐体の回転加速度は、2 個の加速度センサの差分から求められることを特徴としている。 第5の発明は、第1から第4の発明の方法の何れかにおいて、図1に示されるように、更に、ディスク装置のディスクを回転させるスピンドルモータのアンバランスを仮定する第7の段階と、スピンドルモータのアンバランスにより発生する力から重心回りのモーメントを計算する第8の段階と、この重心回りのモーメントを筐体の応答ゲインと乗算して、スピンドルアンバランスによる筐体の位置加速度の偏心による増加分を求める第 9の段階とを有することを特徴としている。 【手続補正2】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0016 【補正方法】変更 【補正内容】 【0016】第4の発明では第1から第3の発明の方法の何れかにおいて、加速度センサを筐体に2個設けたことにより、筐体の回転加速度が正確に求められる。 第5 の発明では第1から第4の発明の方法の何れかにおいて、更に、スピンドルモータのアンバランスを仮定する第7の段階と、スピンドルモータのアンバランスにより発生する力から重心回りのモーメントを計算する第8の段階と、スピンドルアンバランスによる筐体の位置加速度の偏心による増加分を求める第9の段階とを追加したことにより、より正確な筐体の周波数領域の残留振動のパワースペクトルが求められる。 【手続補正3】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0028 【補正方法】変更 【補正内容】 【0028】ステップ401ではまず、FFTアナライザ20からランダムシーク電流がパワーアンプ17を介してVCM3に流される。 このランダムシーク電流は、 FFTアナライザ30の内部において、乱数により位相をランダムにして各周波数の電流を含むように作られる。 このランダムシーク電流は抵抗値が1Ωのセンス抵抗18を流れるので、このセンス抵抗18の両端に現れる電圧値を検出することにより、VCM3に印加されるランダムシーク電流の電流スペクトルがFFTアナライザ20により検出される。 |