【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、バランシングマシン用の検定ロータに関し、特に、試しおもりを取り付けるための当たり面が備えられた多数の取付用開口部を有する検定ロータに関する。 【0002】 【従来の技術】バランシングマシン、特に標準横型バランシングマシンにおいては、検定ロータを用いてマシンの精度が検査される。 この種の検査は、マシンの納入時に顧客の工場において実施される。 また、必要に応じて、納入後一定期間使用された後に行われることもある。 【0003】バランシングマシンの検査では、検定ロータが用いられ、たとえば到達可能な最小の残留不釣合いや、不釣合い低減比が検査される。 その際の試験装置、 すなわち検定ロータおよび試しおもりならびに試験方法の手順は、ISO2953に詳細に記載されている。 通常、検定ロータは、試しおもりまたはテスト質量が、ロータの周囲にねじ止め可能な構造になっている。 そしてその重心と質量とは正確に既知であることを要する。 I SO2953では、第10.2.3章に3方向に対する必要な精度と、試しおもりを配置すべき測定面の距離と、測定半径と、試しおもりの角度位置とに関する記載がある。 不釣合い低減比が95%の場合の許容差は0. 5%である。 従って、試しおもりの角度位置を、たとえば0.29%の精度で正確に維持する必要がある。 そのための公知の方法は、試しおもりに当たり面があるカラーを付け、当たり面の開口部断面では、このカラーがねじ込み開口部外端でロータと組み合うようにされている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】このため、試しおもりをねじ込むときに、当たり面を損傷してねじを壊し、ロータが使用不可能になることもしばしばあった。 従って、この発明は、簡単かつ正確に、しかも確実に試しおもりの位置決めが可能な、優れた検定ロータを作り出すという課題を基礎になされたものである。 【0005】 【課題を解決するための手段および発明の効果】この発明は、試しおもりの角度位置決定用の当たり面を、ロータの軸方向に延びる平面とすることで、上記課題を解決するものである。 請求項1記載の発明は、バランシングマシン用の検定ロータであって、試しおもり用の多数の取付開口部を有し、当該開口部には、試しおもりの当たり面に当接可能な当たり面が備えられている検定ロータにおいて、角度位置決定用の当たり面が当該ロータの軸方向に延びる平面であることを特徴とするバランシングマシン用の検定ロータである。 【0006】請求項2記載の発明は、前記角度位置決定用の当たり面は、ロータの軸方向に延びる切欠の側壁によって形成されていることを特徴とする、請求項1記載のバランシングマシン用の検定ロータである。 上記角度位置決定用の当たり面は、互いに平行に延び、取付開口部の両側に等距離に形成された一対の側壁とするのが好ましい。 【0007】また、取付開口部には、ねじ付きのポケット孔が形成されているのが好ましい。 このポケット孔は検定ロータの半径方向に内方へ延びる。 上記角度位置決定用の一対の当たり面は、検定ロータの軸方向に、ロータの全長にわたって延びていてもよい。 また、取付用の開口部は、段差があって、表面に近い側の開口部の一対の側壁から順にロータの中心に近い開口部の側壁へと、 その側壁間の距離が順次小さくなるようにされていてもよい。 こうすると、対をなすいずれの側壁を利用するかにより、種類の異なる試しおもりを取り付けることができる。 【0008】請求項1の構成によれば、試しおもりをロータの平らな当たり面で、ロータの半径方向および周方向に位置決めすれば、必要な位置決め精度が保証されることが確認された。 また、第3方向の当たり面の位置決めが無用なことも確認された。 角度が正確で平坦な当たり面は、加工が容易であり、低コストで検定ロータを製造できる。 特に、ロータの軸方向の全長に当たり面が延びるように形成すれば、加工が容易である。 【0009】多くの場合、必要な位置決め精度は、平らなただ1つの当たり面に対する試しおもりの構造によって達成でき、それによりさらに簡素化とコスト低下が可能である。 この発明の実施形態では、互いに平行に延びる一対の当たり面が、取付開口部の両側に等距離に位置するようになっている。 この場合には、ただ1つの平らな当たり面にのみ示される当たり面構造の調整は不要になる。 なぜなら、当たり面を両側に配置することで、配置した当たり面の両側の構造が自動的に決まるからである。 当たり面をロータの軸方向の切欠の側面に作ることで、製作は簡単になる。 【0010】ロータの軸方向の切欠を階段状にして、両側壁の間隔を互いに違わせるようにすると、異なる当たり面付きカラーの試しおもりに対して、角度位置を正確に位置決めした取り付けが可能となる。 異なる試しおもりとは、カラーの直径や、質量の異なるものということである。 【0011】 【発明の実施の形態】以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。 図1は、 検定ロータを図解的に示したものであり、ロータの上部半分が示されている。 図2は、図1に示した検定ロータの断面図であり、図3は、検定ロータの他の実施形態を示す断面図である。 【0012】まず、図1および図2を参照して、試しおもり2を取り付けるための開口部6の位置する2個の測定面A,Bが1点鎖線で示されている。 ロータ1は、軸受ジャーナル3,4で、試験すべきバランシングマシンの軸位置に支持することができる。 ロータ1には、多数の、たとえば図示した実施例では12個の切欠5が、ロータの外周に、同じ角度間隔で分布されており、ロータの軸方向に延びている。 切欠5は、軸受ジャーナル3, 4よりも大きな直径を持つロータ1の端から端まで完全に延びている。 【0013】このような切欠5に代えて、ロータ1の軸方向の測定面A,B領域にのみ延びるような切欠としてもよい。 なぜなら、試しおもり2は、測定面A,B領域に配置されるから、そこに切欠5が形成されていればよいからである。 測定面A,B間の切欠5の側壁5aと5 b間の中心に、試しおもり2を取り付けるための開口部を配置する。 図2および図3に示す実施例では、いずれも、開口部がねじを切ったポケット孔6により構成されている。 切欠5の数に対応して、測定面A,Bに、12 個のねじを切ったポケット孔6が形成される。 ねじを切ったポケット孔6は、ロータの軸方向に延びる切欠5の底部5cから半径方向に内方へ延びている。 【0014】ねじを切ったポケット孔6には、テスト基準に応じて試しおもり2をねじ込むことができる。 試しおもり2は、ねじ部分と、当たり面付きのカラーとを有する。 ねじを切ったポケット孔6に試しおもり2をねじ込むと、当たり面の作用する切欠5の側壁5a,5bにカラー7が当接して、試しおもり2の角度位置の中心が決まる。 切欠底部5cも当たり面として機能し、試しおもり2の半径方向を決定する。 よって、調整半径の位置が決まり、測定面A,Bでの位置は、ねじ結合によってのみ決定される。 【0015】図3には、他の実施例の検定ロータの断面図が示されており、この断面図には、切欠5の別の断面構成が表わされている。 半径方向下方にある切欠5Aの上部に、第2の切欠5Bが作られている。 両方の切欠5 A,5B間に存在する肩面5dは、第2の切欠5Bの幅に相当する直径の当たり面付きカラーを有する試しおもり用であって、ロータの半径方向の当たり面を構成する。 他方、半径方向下方にある切欠Aの底面5cは、他方の切欠5Aの幅に相当する直径の当たり面付きカラーを有する試しおもり2用の当たり面を構成する。 また、 切欠5A,5Bの各側壁は、それぞれ、試しおもりの角度位置決定用の一対の平面を構成している。 【0016】よって、図4に示すように、図3の検定ロータに対して、図3の試しおもりとは異なる寸法および重量の試しおもり2′を取り付けることができる。 この発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載の範囲内において種々の変更が可能である。 【図面の簡単な説明】 【図1】この発明の一実施形態にかかる検定ロータを図解的に示す図で、上半分が示されている。 【図2】この発明の一実施形態にかかる検定ロータの断面構成を示す図である。 【図3】この発明の他の実施形態にかかる検定ロータの断面構成を示す図である。 【図4】図3の検定ロータに別の試しおもりを装着した状態を示す図である。 【符号の説明】 1 検定ロータ 2,2′ 試しおもり 5,5A,5B 切欠 5a,5b 切欠5の側壁 5c 切欠5の底面 5d 切欠5の肩面 6 ねじを切ったポケット孔 |