医薬品を保管するための容器および方法

申请号 JP2015510384 申请日 2013-04-30 公开(公告)号 JP6141413B2 公开(公告)日 2017-06-07
申请人 ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー; BECTON, DICKINSON AND COMPANY; 发明人 ハビエル アラルコン; ウィリアム リグスビー; ジョシュア ホルバート; ディニッシュ コミレディ; ロナルド ペティス;
摘要
权利要求

医薬品の貯蔵装置であって、 ポリオレフィン中に分散させた脂肪酸アミドを含み、前記ポリオレフィンから形成された貯蔵容器と、 前記貯蔵容器内にあり、前記医薬品を安定化するのに有効な量のフェノール安定剤を含有する医薬品とを備え、 前記脂肪酸アミドは、前記医薬品から前記ポリオレフィン中への前記安定剤の移行速度を低減させるのに有効な量が、前記ポリオレフィン中に含まれることを特徴とする貯蔵装置。前記貯蔵容器は、充填済みシリンジであることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵装置。前記貯蔵容器は、電気機械式注入ポンプアセンブリの貯蔵器であることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵装置。前記貯蔵容器は、外層および内層を含み、前記内層は、前記脂肪酸アミドを含有する前記ポリオレフィンから形成されることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵装置。前記容器は、可撓性管であることを特徴とする請求項4に記載の貯蔵装置。前記容器はインスリン注入デバイスの一次インスリン貯蔵器であり、前記医薬品はインスリンであることを特徴とする請求項4に記載の貯蔵装置。前記ポリオレフィンはポリプロピレンであり、前記脂肪酸アミドはエルカ酸アミドであることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵装置。前記ポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリプロピレン/ポリエチレン混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵装置。前記ポリオレフィンは環状オレフィンコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵装置。前記脂肪酸アミドは、ラウラミド、ミリスタミド、パルミタミド、ステアラミド、ベヘナミド、エルカ酸アミド、モンタンアミド、ステアリルエルカアミド、オレイルパルミトアミド、メチレンビス(ステアラミド)、エチレンビス(ミリスタミド)、エチレンビス(パルミタミド)およびエチレンビス(ステアラミド)からなる群から選択され、 前記安定剤は、m−クレゾール、フェノール、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵装置。医薬品を保存する方法であって、 脂肪酸アミドを含むポリオレフィンから形成された収納器内に前記医薬品を収納および保管するステップを含み、前記医薬品は、前記医薬品を長期貯蔵のために安定化するのに有効な量のフェノール安定剤を含み、前記ポリオレフィンは、前記医薬品から前記ポリオレフィン中への前記安定剤の移行速度を低減させるのに有効な量の前記脂肪酸アミドを含むことを特徴とする方法。前記医薬品はインスリンであり、前記安定剤は、m−クレゾール、フェノール、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。前記脂肪酸アミドは、ラウラミド、ミリスタミド、パルミタミド、ステアラミド、ベヘナミド、エルカ酸アミド、モンタンアミド、ステアリルエルカアミド、オレイルパルミトアミド、メチレンビス(ステアラミド)、エチレンビス(ミリスタミド)、エチレンビス(パルミタミド)およびエチレンビス(ステアラミド)からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。前記収納器は電気機械式注入ポンプの貯蔵器であることを特徴とする請求項11に記載の方法。前記電気機械式注入ポンプは、前記ポリオレフィンおよび脂肪酸アミドから作られた可撓性管を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。前記収納器は、インスリンを収容する充填済みシリンジであることを特徴とする請求項11に記載の方法。前記ポリオレフィンは、ポリプロピレン、エチレン、およびポリプロピレン/ポリエチレン混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。前記ポリオレフィンは、環状オレフィンコポリマーであることを特徴とする請求項11に記載の方法。貯蔵時の医薬品からの安定剤の喪失を抑制する方法であって、 脂肪酸アミドを含有するポリオレフィンから形成された貯蔵チャンバの中に前記医薬品を導入するステップと、前記医薬品を保管するステップとを含み、前記医薬品は、前記医薬品を安定化するのに有効な量のフェノール安定剤を含み、前記脂肪酸アミドは、前記医薬品から前記ポリオレフィン中への前記安定剤の移行速度を低減させるのに有効な量が、前記ポリオレフィンに混合されることを特徴とする方法。前記医薬品はインスリンであり、前記安定剤は、m−クレゾール、フェノール、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。前記脂肪酸アミドは、ラウラミド、ミリスタミド、パルミタミド、ステアラミド、ベヘナミド、エルカ酸アミド、モンタンアミド、ステアリルエルカアミド、オレイルパルミトアミド、メチレンビス(ステアラミド)、エチレンビス(ミリスタミド)、エチレンビス(パルミタミド)およびエチレンビス(ステアラミド)からなる群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。前記貯蔵チャンバは、電気機械式注入デバイスであることを特徴とする請求項19に記載の方法。前記貯蔵チャンバは、前記電気機械式注入デバイスの可撓性管類であることを特徴とする請求項22に記載の方法。前記可撓性管類は外層と、前記医薬品と接触する内側バリア層とを有し、前記内側バリア層は前記ポリオレフィンおよび脂肪酸アミドから形成されることを特徴とする請求項23に記載の方法。前記医薬品はインスリンであり、前記安定剤は、m−クレゾール、フェノール、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記脂肪酸アミドはエルカ酸アミドであることを特徴とする請求項19に記載の方法。

说明书全文

本発明は、医薬品または液体薬物の貯蔵期間を延長するように適合された貯蔵容器または貯蔵器と、医薬品または液体薬物の貯蔵寿命を延長する方法とを対象とする。具体的には、本発明は、医薬品または液体薬物中の安定剤の喪失を抑制し、それにより医薬品または液体薬物の寿命を延長する容器または器、および方法を対象とする。

医薬品および薬物は一般に、保存寿命が延長される状態で貯蔵容器に梱包され保管される。液体の医薬品および薬物は、使用前に製品を使用者が目視で検査することができるように、十分に透明である貯蔵容器を必要とする。製品の劣化を低減させる非反応性容器にするために、また目視検査に必要な透明度にするために、ガラス製の容器が一般に使用される。

多くの医薬品および薬物は不安定であるか、または容器によっては壁の中に拡散する添加剤を含み、そのため製品が劣化する可能性がある。ガラス製のアンプルおよび容器では一般に、液体薬物の保存寿命がポリマー材料から作られた容器よりも長くなる。ポリマー容器は簡単に成形することができ、また低コストで軽量であるので、製造する観点からは望ましい。医薬品および薬物の中には、その医薬品または薬物の成分と反応する、またはその成分を吸着/吸収する可能性があるポリマー材料から作られた容器内に長期貯蔵するのは適さないものがある。

多くの医薬品および薬物は、保存寿命を改善するために保存剤または安定剤を必要とする。一例としては、m−クレゾール、フェノール、および/またはそれらの混合物などの保存剤を含むインスリンがある。m−クレゾールおよびフェノールは、貯蔵容器を作るのに一般に使用される多くのポリマー材料中に拡散する可能性がある。インスリンからの保存剤の喪失が、貯蔵時のインスリンの急速な分解を招く可能性がある。

長期貯蔵のために医薬品および薬物を安定化する方法、および長期貯蔵を実現できる貯蔵容器および貯蔵器を製造する方法が種々提案されてきた。一例として、Buch−Rasmussenらの特許文献1に、液体薬物を保管するための容器が開示されている。この薬物は、活性剤、および保存剤を含む。液体薬物は、水およびm−クレゾール、フェノールおよびベンジルアルコールを含むインスリンとすることができる。容器は、エチレン、プロピレン、ブチレン、またはそれらの混合物のモノマーから得られる直鎖または分岐オレフィン材料の、結晶化度が重量で35%を超える結晶ポリマーから作られる。このポリマー容器は、m−クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、および水に対するバリアになるものとして開示されている。

Hamaらの特許文献2は、酸素および水との混合を阻止する液体薬剤用のプラスチック容器を開示している。このプラスチック容器は、水蒸気透過性が0〜0.006g/容器/日、酸素透過性が0〜0.011ml/容器/日のダイヤモンド炭素膜でコーティングされたプラスチック材料から作られる。その諸特性は、ダイヤモンド状炭素膜の組成、密度および膜厚を最適化することによって得られる。

充填済みシリンジ、注入セットおよび注入容器など、その意図された用途に一般に適している多くの送達デバイスが提案されてきた。これらのデバイスはしばしば、長期間にわたる接触による薬物の劣化を招きうる送達デバイスの構成要素との長期にわたる接触を防止するために、別個の貯蔵器またはアンプルを必要とする。したがって、薬剤の貯蔵特性を改善する送達デバイス用の改善された材料が引き続き必要とされている。

米国特許第5945187号

米国特許第7029752号

本発明は、医薬品、薬剤または液体薬物の投薬デバイスまたは送達デバイスのための貯蔵チャンバおよび/または容器と、貯蔵時の医薬品、薬剤または液体薬物の喪失を低減させる方法とを対象とする。本発明は特に、改善された貯蔵特性を薬剤にもたらす貯蔵器、貯蔵容器または貯蔵チャンバを有する投薬デバイスを対象とする。

それに応じて、本発明の1つの目的は、貯蔵デバイスと収容物質の間の相互作用によって通常生じる収容物質の喪失が低減される、投薬デバイスまたは送達デバイスと連結して使用するための貯蔵容器、貯蔵器または貯蔵チャンバを提供することである。

本発明の1つの特徴は、薬剤または医薬品からの安定剤の喪失を低減させる添加剤を含有するポリマー材料から作られた、送達デバイス用の改善された貯蔵容器、貯蔵器または貯蔵チャンバを提供することである。

本発明の一態様では、貯蔵容器、貯蔵器または貯蔵チャンバが、薬剤または医薬品からの安定剤の移行または拡散を抑制する脂肪酸アミド添加剤を含むポリオレフィン樹脂から製造される。このポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンのコポリマー、ポリプロピレンのコポリマー、および環状オレフィンコポリマーとすることができる。

ポリマー材料と組み合わせる添加剤は、送達デバイスの動作に干渉することなく薬剤または医薬品などの物質中の安定剤に対し移行抑制剤として機能する、脂肪酸アミドであることが好ましい。このポリマー材料および添加剤は、薬剤または医薬品の貯蔵安定性を改善して、充填済み投薬デバイス、ならびに既定の期間にわたって物質を投与するために周期的に充填されるデバイスの保存寿命を改善する。一実施形態では、投薬デバイスは、薬剤または医薬品の供給源を含む注入ポンプである。薬剤または医薬品と接触する注入ポンプの構成要素はポリマー材料および添加剤から形成され、その結果、貯蔵寿命が改善され頻繁な充填の必要性が低減することにより、注入ポンプがより多量の薬剤または医薬品を保管するようになる。一般に、薬剤または医薬品と接触する構成要素は使い捨てである。

一実施形態のポリオレフィンの添加剤は、ラウラミド、ミリスタミド、パルミタミド、ステアラミド、ベヘナミド、エルカ酸アミド、モンタンアミド、ステアリルエルカアミド、オレイルパルミトアミド、メチレンビス(ステアラミド)、エチレンビス(ミリスタミド)、エチレンビス(パルミタミド)およびエチレンビス(ステアラミド)からなる群から選択される。添加剤は、薬剤または医薬品に含有される保存剤および安定剤の安定化効果を得るのに有効な量が、ポリオレフィンに混合される。好ましい添加剤はまた、シリンジまたはポンプのプランジャなどの可動部分に潤滑面が得られるという付加的な利点をもたらす。

本発明の別の特徴では、医薬品からの安定剤の喪失を防止または低減させる薬剤送達デバイスの構成要素の接触面を実現する。この接触面は、安定剤または保存剤の喪失を抑制するための添加剤を含有するポリマー材料の層によって形成することができる。この接触層は、共押出し、またはオーバモールド処理によって形成することができる。別の実施形態では、ポリマー材料の表面は、添加剤でコーティングし、その添加剤を表面に結合させるように処理することができる。

本発明の1つの特徴は、医薬品との相互作用を防止または抑制する接触面を有する貯蔵容器内に医薬品を保管することによって、貯蔵時の医薬品からの安定剤または保存剤の喪失を防止または抑制する方法を提供することである。貯蔵容器は、ポリオレフィンおよび安定化添加剤から作られる。この添加剤は、医薬品中の化合物の、ポリマー材料中への移行または拡散を低減させる。医薬品からの化合物、特に保存剤および/または安定剤の喪失が低減することにより、医薬品の貯蔵寿命が改善され、送達デバイスを繰り返し充填する必要が低減する。

本発明はさらに、送達デバイス内のインスリンなどの医薬品または薬剤の貯蔵時の、保存剤の喪失を低減および抑制する方法を対象とする。この方法は特に、ポリマー材料中へのm−クレゾールおよび/またはフェノールの吸収/吸着を低減させることによって、貯蔵時のインスリンからのm−クレゾール、フェノールおよび/または他の安定剤の喪失を抑制するのに適している。

本発明の方法により、接触面を金属化膜でコーティングすること、または医薬品と継続して接触するステンレス鋼の構成要素を用意することを必要としないで、インスリンなどの医薬品の保存寿命を延ばせる。

本発明の様々な特徴が、医薬品用の貯蔵チャンバを設けることによって得られる。この貯蔵チャンバは、ポリオレフィン中に分散させた脂肪酸アミドを含むポリオレフィンから形成された貯蔵容器と、貯蔵容器内にあり、医薬品を安定化するのに有効な量のフェノール安定剤を含有する医薬品とを備える。脂肪酸アミドは、医薬品からポリオレフィン中への脂肪酸アミドの移行を抑制するのに有効な量が、ポリオレフィン中に含まれる。

本発明の特徴および利点はまた、脂肪酸アミドを含むポリオレフィンで形成された収納器内に医薬品を収容および保管するステップを含む、医薬品を保存する方法を提供することによって得られる。医薬品は、長期貯蔵のために医薬品を安定化するのに有効な量のフェノール安定剤を含む。ポリオレフィンは、医薬品からポリオレフィン中への安定剤の移行を抑制するのに有効な量の脂肪酸アミドを含む。

本発明の特徴はさらに、貯蔵時の医薬品からの安定剤の喪失を抑制する方法を提供することによって得られる。この方法は、脂肪酸アミドを含有するポリオレフィンから形成された貯蔵チャンバ内に医薬品を導入するステップと、医薬品を保管するステップとを含む。医薬品は、医薬品を安定化するのに有効な量のフェノール安定剤を含む。脂肪酸アミドは、医薬品からポリオレフィンの中への安定剤の移行を抑制するのに有効な量が、ポリオレフィンに混合される。

本発明の特徴はさらに、長期貯蔵時のインスリン構成物中のフェノール安定剤の喪失を抑制する方法を提供することによって得られる。この方法は、インスリンからの安定剤の喪失、およびインスリンの分解を抑制するために有効な量の脂肪酸アミドを有するポリオレフィンから形成された収納器内に、インスリンを保管するステップを含む。

本発明の上記その他の利点、態様および特徴は、本発明の様々な実施形態を開示する以下の本発明についての詳細な説明により明らかになろう。以下は図面の簡単な説明である。

本発明の一実施形態における送達デバイスの分解組立図である。

図1の実施形態における管の断面図である。

本発明の第2の実施形態における送達ポンプの立面図である。

図3の実施形態における供給管の断面図である。

実施例1の実験の試験結果のグラフである。

実施例2の実験の試験結果のグラフである。

本発明は、医療デバイスの貯蔵器、容器、器またはチャンバと、その中に収容された液体薬剤、薬剤または医薬品の喪失を低減させる方法とを対象とする。本発明は特に、液体薬剤または医薬品からの安定剤の喪失を低減させるための貯蔵器、貯蔵チャンバまたは貯蔵容器、および方法を対象とする。本発明の一実施形態では、医療デバイスは、制御された速度でデバイスの内容物を送達するための薬物送達デバイスである。

本発明の方法およびデバイスは、保存剤および/または安定剤を含有する液体薬剤または医薬品の保管、輸送および送達に適している。本発明の方法およびデバイスにより、薬剤からの安定剤もしくは保存剤の喪失の速度が低減もしくは抑制され、またはデバイスの中もしくは表面への移行が低減もしくは抑制される。

この方法およびデバイスは、医療デバイスを形成するために一般に使用されるポリマー材料の表面と接触することによって吸収される可能性のある安定剤および/または保存剤を必要とする、またはこれらから利益を得る、様々な液体薬剤および医薬品と共に使用するのに適している。本明細書では、液体薬剤という用語は、患者、特に人間の患者を治療するために患者に投与される、かつ活性物質または化合物を含有する薬剤、医薬品、化合物および構成物を指す。

好ましい一実施形態では、液体薬剤は、患者に投与するためのインスリンである。インスリンは通常、異なる貯蔵温度および容器内の光条件のもとで保存寿命を延ばすために、タンパク質の変性、およびオリゴマーの形成を防止する安定剤および/または保存剤を必要とする。インスリンは、貯蔵時にタンパク質と相互作用しないガラス製バイアル内に保管されることが多い。インスリン保存剤は、ベンジルアルコール、m−クレゾール、フェノール、およびそれらの混合物などのフェノール化合物であることが多い。他の実施形態では、液体薬剤は、ヘパリン、またはタンパク質をベースとする他の薬剤とすることができる。好ましい薬剤がインスリンである場合、好ましい保存剤はm−クレゾール、フェノール、およびそれらの混合物である。フェノール保存剤は、インスリン中に、この薬剤の1ml当たり約0.1mgから約5mgの量で含まれるのが好ましい。インスリン中のm−クレゾールは、タンパク質立体配座安定剤および保存剤として作用する。

m−クレゾール、フェノール、およびそれらの混合物などのインスリン中の保存剤は、薬剤が表面と長期間接触しているときに、オレフィンポリマーなどのポリマーの中に拡散することが分かっている。従来のポリマー容器内に保管されたインスリンは、インスリン中のタンパク質のポリマー化および変性と、保存寿命の低減とを招くm−クレゾールおよびフェノールの喪失を示すことが分かっている。

本発明のデバイスは、液体薬剤、特にインスリンを収容するための適切な任意の医療デバイス、容器、貯蔵器、器またはチャンバとすることができる。好ましくは医療デバイスは、カテーテル管類、シリンジ、充填済みシリンジ、インスリンカートリッジ、インスリンポンプ、パッチ、および他のインスリン送達デバイスなどの、インスリンを送達するための使い捨て医療デバイスである。本発明のデバイスは、送達デバイスに送り込むための供給物の液体薬剤を受け入れることができる、適切な任意の容器とすることができる。

本発明の好ましい実施形態では、医療デバイスは、送達デバイス用のシリンジ、貯蔵器または容器など、「使用するときに充填する」(FTU)デバイス用である。この医療デバイスは、供給物の液体薬剤を1〜10日間収容することが意図されているデバイスに適しており、約25℃または約37℃の高温の環境温度で保管されたときのデバイス内の活性物質または安定剤の喪失が低減される。医療デバイスは、電気機械式の非使い捨てインスリンポンプ、使い捨てまたは部分的に使い捨てのパッチおよびポンプシステムのためのインスリン貯蔵器、インスリンシリンジ、ペン型インスリンカートリッジなどとすることができる。

インスリンからの保存剤および安定剤の喪失を抑制する方法では、ポリマー材料中への安定剤の移行および喪失を低減または抑制する量の添加剤を中に分散させたポリマー材料から作られる、貯蔵器、チャンバまたは貯蔵領域、および/または供給通路、導管、可撓性管類などを利用する。貯蔵領域または貯蔵器は、電気機械式ポンプ、使い捨てパッチ用の貯蔵器、使い捨てポンプシステム、インスリンシリンジおよびペン型インスリンカートリッジの中で使用するための、シリンジ型貯蔵器とすることができる。通常は送達前に数日間インスリンを収容する送達デバイスが付いた一次流路は、好ましくは、ポリマー材料および添加剤がインスリンからの安定剤および保存剤の喪失および吸着を抑制するように作られる。

適切なインスリン送達医療デバイスの一例は、図1に示されたペン型デバイスである。送達デバイス10は、インスリンなどの液体薬剤用のカートリッジ12を含む。カートリッジ12は、インスリン用の内部空洞がある管状本体14、第1の端部16、および第2の端部18を有する。カートリッジ12は、ハウジング22のバレル20の中に受け入れられる。針装着カラー24がハウジング22の排出口端部26に取り付けられる。穿孔可能セプタム28が、針30によって穿孔されるべきカートリッジ12の端部に結合される。カートリッジ12は、エラストマーまたはゴムのストッパ32によって閉じられ、このストッパは、流体密封を行うと共に、カートリッジ12の軸長に沿って摺動してカートリッジ12の内容物を投与することができる。

投薬デバイス34は、ストッパを駆動してカートリッジ12の内容物を投与するために、ハウジング22の端部に結合される。投薬デバイス34は、ハウジング22のねじ付き端部38に連結するためのねじ付き端部36と共に、実質的に円筒形を有する。プランジャロッド40が、投薬デバイス34の端部から延びてカートリッジ12のストッパと係合する。投薬デバイス34は、選択された用量を送達するための、当技術分野で知られている適切な機構を含む。この機構により、選択された距離をプランジャが駆動されて、制御された量の薬剤をカートリッジから患者へ注入するようにストッパが動く。

本発明の好ましい一実施形態によれば、インスリンを収容するカートリッジ12は、貯蔵器の中に収容された保存中の、インスリンからのm−クレゾールおよび/またはフェノール、または他の安定剤および保存剤の喪失を抑制または低減させるのに有効な量の添加剤を有する、ポリオレフィンから作られる。カートリッジは、射出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、または他の既知の成形法によって成形することができる。

ポリオレフィンは、当技術分野で知られている不飽和モノマーから得られる。ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマー、ポリプロピレンのコポリマー、およびポリエチレンのコポリマーであるのが好ましい。適切なポリプロピレンの1つは、Lyondell Basell IndustriesからPurell RP 373Rの商品名で入手できる。他の適切なポリマーおよびポリマー混合物には、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ乳酸、およびそれらのコポリマーが含まれる。

ポリオレフィンは添加剤と混合され、得られた混合物が所望の形状の物すなわち医療デバイスに所望の寸法で成形される。添加剤は、ラウラミド、ミリスタミド、パルミタミド、ステアラミド、ベヘナミド、エルカ酸アミド、モンタンアミド、ステアリルエルカアミド、オレイルパルミトアミド、メチレンビス(ステアラミド)、エチレンビス(ミリスタミド)、エチレンビス(パルミタミド)、エチレンビス(ステアラミド)、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸アミドである。エルカ酸アミドは、好ましい脂肪酸アミドである。この脂肪酸は、ポリオレフィン中に0.02から2.0重量%の量で、通常は約0.02から0.4重量%の量で分散させることができる。完全には理解されていないが、脂肪酸アミドは、液体/プラスチック界面のバリアとして機能し、フェノール保存剤が表面でポリマー中に吸収されるのを抑制すると考えられている。

ポリオレフィンは、薬剤の目視検査が可能になるように透明であるのが好ましい。ポリオレフィンはさらに、水に対する良好なバリア特性、酸素および二酸化炭素などの気体に対する良好なバリア特性、環境ストレス亀裂に対する耐性、良好な封止特性を有し、また貯蔵中にその形状を維持する。

送達デバイスの貯蔵器はまた、適切なポリマー樹脂から作ることもでき、その接触面は、図2に示されるように、脂肪酸アミドを分散させたポリオレフィン樹脂42でコーティングされる。コーティングは、共押出し、オーバモールドによって形成し、溶液として塗布し、高周波処理もしくはプラズマ処理、または他の既知のコーティング法などの適切な手段によって表面に固定することができる。他の実施形態では、脂肪酸アミドは接触面に直接塗布し、適切な手段で固定することができる。ポリオレフィンと脂肪酸アミドの混合物は、折り畳み式ブラダーもしくは隔膜、および/または送達管のようなインスリン送達デバイスの可撓性構成要素のコーティングとして使用するのに特に適しており、脂肪酸アミドを含むポリオレフィンの内層またはコーティングで形成された接触面を有する。

図3および図4の実施形態に示されるように、インスリン送達デバイス50は、ローラポンプ54と共に使用する可撓性貯蔵器管52を含む。カニューレ58を有する供給管56が、インスリンを患者に供給するためのポンプ送達システムに連結される。貯蔵器管および送達管は、供給物のインスリンを数日間収容することが意図されている。図示の実施形態では、貯蔵器管52および供給管56は可撓性ポリマー材料から作られ、図4に示されるように、内層60がインスリンの保存剤および安定剤に対するバリアを形成する。

インスリンの接触面および流路は、インスリンからのm−クレゾールおよび/またはフェノールの喪失が低減することによりインスリンの貯蔵時間が延長するように、脂肪酸アミドを含有するポリオレフィンから、または脂肪酸アミドもしくはポリマーと脂肪酸アミドとの混合物から形成されたバリア層付きのポリオレフィンから、作られるのが好ましい。脂肪酸アミドは、インスリン中のm−クレゾールおよび他のフェノール保存剤のポリマー材料中への移行を大幅に低減させることが分かっている。

本発明のインスリンは、ブタインスリン、ウシインスリン、ヒトインスリン、およびそれらの塩など、あらゆる種のインスリンを指す。適切な塩には、亜鉛塩類およびプロタミン塩類が含まれる。インスリンの他の形は、当技術分野で知られているインスリンの活性誘導体およびインスリン、およびインスリン類似物とすることができる。

本発明のもう1つの利点は、最適なインスリン安定性を得るために材料を選別および選択する方法を提供することである。この方法により、分子量のより大きいオリゴマーになるインスリン凝集を防止するために必要なクレゾールまたは他の安定剤の臨界最小レベルが確立する。添加剤は、保存剤喪失の速度について、様々な貯蔵および使用条件のもとでRP−HPLC、ガスクロマトグラフィなどの分析アッセイによって選別される。導出された速度定数を使用して、予想される使用条件のもとで十分な安定性が得られる貯蔵器用の適切なポリマー材料および構成を選択することができる。この方法は、浸透速度および保存剤安定性に基づいて適切なポリマー材料を選択するのに使用することができる。

本発明の利点は、インスリン安定性を向上させ、m−クレゾールおよびフェノールの吸収を低減させることである。インスリンポンプ貯蔵器は一般に、インスリン供給物を1〜7日間保管し、ペン型注射器はインスリンを30日間保管し、そのため保存剤が減少すると、分子量の大きいオリゴマーが形成されることになりうる。これが痛み、発赤、腫れ、癬痕、組織脂肪異栄養症、および抗インスリン抗体のレベル上昇を招く可能性がある。

単独で、またはポリマーと合わせて使用できる他の添加剤には、互いに架橋結合を形成することができる化合物、およびポリマーの表面と相互作用することができる化合物が含まれる。例としては、シロキサン、少なくとも1つの反応部位を有する炭化水素鎖、およびポリエチレングリコールが含まれる。

[実施例1] この実施例は、インスリンからの保存剤の喪失を確定するために、また貯蔵時のインスリン安定性を確定するために実施した。

Becton,Dickinson and Companyの商品名PH712のポリプロピレンおよび商品名Crystal Clear Polymer(CCP)の環状オレフィンコポリマーから作られたシリンジを、約3.3mg/mlの量のm−クレゾールおよびフェノールを含むインスリンで充填した。これらのシリンジを25℃および37℃で保管した。同じ条件下で保管されるインスリンのガラス製バイアルをコントロールとして使用した。m−クレゾールのレベルはHPLCを使用して測定し、インスリンのレベルはImmulite分析によって測定した。図5のグラフは、25℃および37℃において15日間にわたり、コントロールのガラス製バイアルが最少のm−クレゾール喪失およびインスリン分解を呈するのを示す。グラフはまた、ポリプロピレンシリンジおよび環状オレフィンコポリマーシリンジについて、25℃におけるm−クレゾールの約3.0mg/mlまでの喪失を示す。ポリプロピレンは、25℃において約3.6mg/mlから約3.1mg/mlまでのインスリンの喪失を呈した。環状オレフィンコポリマーは、25℃において15日間にわたり約3.6mg/mlから約3.4mg/mlまでのインスリンの喪失を呈し、また37℃において15日間にわたり約3.4mg/mlまでのインスリンの喪失を呈した。

[実施例2] Becton,Dickinson and Companyの環状オレフィンコポリマーおよびエルカ酸アミドから作られた商標DISCARDIT IIのシリンジを、m−クレゾールとフェノールの混合物を含むインスリンで充填し、25℃および37℃で保管した。インスリン、m−クレゾールおよびフェノールを収容するガラス製バイアルを同じ条件下でコントロールとして保管した。m−クレゾールの喪失はHPLCによって決定し、インスリンの喪失はImmulite分析によって決定した。結果は図6のグラフに示される。図6に示されるように、環状オレフィンコポリマーは、25℃および37℃においてm−クレゾールの喪失を15日の期間にわたり実質的に示さなかった。25℃と37℃におけるインスリンの喪失は、15日の期間にわたりほぼ同じであった。

これらの実施例の試験結果は、エルカ酸アミドまたは他の脂肪酸アミドを含有しないプラスチック貯蔵容器と比較して、エルカ酸アミドが貯蔵中のm−クレゾールの喪失を抑制し、インスリンの喪失を低減させたことを示す。

様々な実施形態を選択して本発明について説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更および修正を加えることができることを理解されたい。

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