ロータの製造方法

申请号 JP2010518033 申请日 2009-06-24 公开(公告)号 JPWO2009157470A1 公开(公告)日 2011-12-15
申请人 昭和電工株式会社; 发明人 英実 山田; 英実 山田; 遠藤 大輔; 大輔 遠藤;
摘要 ロータを効率良く製造する。本発明は、ロータの製造方法を対象とする。本発明は、外周部に軸心方向に沿うベーン溝4が周方向に間隔をおいて複数設けられた円柱状のロータ部2と、そのロータ部2の一端面に一端側に膨出するように一体に形成され、かつベーン溝4の一端側を閉塞する余肉部6とを有するロータ素材1を得る鍛造工程と、衝撃部材を余肉部6に打ち付けて、その余肉部6をロータ部2から除去することにより、ベーン溝4が一端側に開放されたロータRを得る余肉部除去工程とを含む。
权利要求
  • 外周部に軸心方向に沿うベーン溝が周方向に間隔をおいて複数設けられた円柱状のロータ部と、そのロータ部の一端面に一端側に膨出するように一体に形成され、かつ前記ベーン溝の一端側を閉塞する余肉部とを有するロータ素材を得る鍛造工程と、
    衝撃部材を前記余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記ベーン溝が一端側に開放されたロータを得る余肉部除去工程とを含むことを特徴とするロータの製造方法。
  • 前記ロータ素材において、前記余肉部は前記ロータ部における一端面よりも一端側に形成され、その余肉部の内部まで前記ベーン溝が形成される請求項1に記載のロータの製造方法。
  • 前記余肉部は、前記ベーン溝の周側面を閉塞する周壁部を有し、前記余肉部除去工程において、前記余肉部をその周壁部で破断させて除去するようにした請求項2に記載のロータの製造方法。
  • 前記余肉部のうち、先端から前記ベーン溝の一端面までの寸法を、閉塞部の厚みとしたとき、その閉塞部の厚みが3〜10mmに設定される請求項2または3に記載のロータの製造方法。
  • 前記鍛造工程において、前記余肉部と前記ロータ部との間に亀裂を形成しておき、
    前記余肉部除去工程において、前記ロータ素材を前記亀裂に沿って破断させるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
  • 前記余肉部除去工程においては、前記ロータ素材の前記ベーン溝にその他端側開口部から、衝撃部材としての打ち抜きパンチを打ち込んで、そのパンチによって前記余肉部を一端側に打ち抜いて除去するようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
  • 前記鍛造工程において、円柱状の鍛造素材の他端面から、ベーン溝形成用型を相対的に打ち込んで、他端面から一端面にかけて前記ベーン溝を形成する一方、
    前記ベーン溝形成用型を前記鍛造素材に打ち込む際に、前記鍛造素材の一端面におけるベーン溝形成予定部に対応する領域に背圧を付与するようにした請求項1〜6のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
  • 前記余肉部をベーン溝側余肉部とし、前記衝撃部材をベーン溝側衝撃部材として、
    前記鍛造加工において、前記ロータ素材における前記ロータ部に軸心方向に沿うシャフト孔が設けられるとともに、前記ロータ部の一端面に、前記シャフト孔の一端側を閉塞するシャフト孔側余肉部が一端側に膨出するように一体に形成され、
    前記余肉部除去工程において、シャフト孔側衝撃部材を前記シャフト孔側余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記シャフト孔が一端側に開放されるようにした請求項1〜7のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
  • 前記ロータ素材の前記シャフト孔にその他端側開口部から、衝撃部材としての打ち抜きパンチを打ち込んで、そのパンチによって前記シャフト孔側余肉部を一端側に打ち抜いて除去するようにした請求項8に記載のロータの製造方法。
  • 前記鍛造工程において、円柱状の鍛造素材の他端面から、シャフト孔形成用型を相対的に打ち込んで、他端面から一端面にかけて前記シャフト孔を形成する一方、
    前記シャフト孔形成用型を前記鍛造素材に打ち込む際に、前記鍛造素材の一端面におけるシャフト孔形成予定部に対応する領域に背圧を付与するようにした請求項8または9にに記載のロータの製造方法。
  • 前記ロータ素材において、前記余肉部は前記ロータ部における一端面に一端側に膨出するように一体に形成される一方、前記ベーン溝の一端面が、前記余肉部に到達せず、前記ロータ部の一端面よりも内側に配置される請求項1に記載のロータの製造方法。
  • 前記ロータ素材における前記ロータ部の一端面と前記ベーン溝の一端面との間隔をベーン溝側の端面差としたとき、そのベーン溝側の端面差が0〜2mmに設定される請求項11に記載のロータの製造方法。
  • 前記ロータ素材における前記ベーン溝の内周面と前記余肉部の外周面との間隔をベーン溝側の径差としたとき、そのベーン溝側の径差が0.01〜0.1mmに設定される請求項11または12に記載のロータの製造方法。
  • 前記ベーン溝側の径差が部分的に異なっている請求項11〜13のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
  • 前記ベーン溝側の径差のうち、内周側端部および外周側端部の少なくともいずれか一方の径差が、中間部の径差に対し大きく設定される請求項13または14に記載のロータの製造方法。
  • 前記余肉部をベーン溝側余肉部とし、前記衝撃部材をベーン溝側衝撃部材として、
    前記鍛造加工において、前記ロータ素材における前記ロータ部に軸心方向に沿うシャフト孔が設けられるとともに、前記ロータ部の一端面に、前記シャフト孔の一端側を閉塞するシャフト孔側余肉部が一端側に膨出するように一体に形成され、
    前記余肉部除去工程において、シャフト孔側衝撃部材を前記シャフト孔側余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記シャフト孔が一端側に開放されるようにし、
    前記鍛造加工によるロータ素材において、前記シャフト孔の一端面が、前記シャフト孔側余肉部に到達せず、前記ロータ部の一端面よりも内側に配置される請求項11〜15のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
  • 前記ロータ素材における前記ロータ部の一端面と前記シャフト孔の一端面との間隔をシャフト孔側の端面差としたとき、そのシャフト孔側の端面差が0〜2mmに設定される請求項16に記載のロータの製造方法。
  • 前記ロータ素材における前記シャフト孔の内周面と前記シャフト孔側余肉部の外周面との間隔をシャフト孔側の径差としたとき、そのシャフト孔側の径差が0.01〜0.1mmに設定される請求項16または17に記載のロータの製造方法。
  • 前記シャフト孔側の径差が部分的に異なっている請求項16〜18のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
  • 外周部に軸心方向に沿うベーン溝が周方向に間隔をおいて複数設けられた円柱状のロータ部と、そのロータ部の一端面に一端側に膨出するように一体に形成され、かつ前記ベーン溝の一端側を閉塞する余肉部とを有するロータ素材の前記余肉部を除去するための方法であって、
    衝撃部材を前記余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記ベーン溝を一端側に開放させるようにしたことを特徴とするロータ素材の余肉部除去方法。
  • 外周部に軸心方向に沿うベーン溝が周方向に間隔をおいて複数設けられた円柱状のロータ部と、そのロータ部の一端面に一端側に膨出するように一体形に成され、かつ前記ベーン溝の一端側を閉塞する余肉部とを有するロータ素材の前記余肉部を除去するための装置であって、
    前記ロータ素材の前記ベーン溝にその他端側開口部から打ち込んで、前記余肉部を一端側へ打ち抜いて除去することにより、前記前記余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記ベーン溝を一端側に開放させる打ち抜きパンチを備えたことを特徴とするロータ素材の余肉部除去装置。
  • 说明书全文

    この発明は、外周部にベーン溝を有するロータを製造するためのロータの製造方法およびその関連技術に関する。

    コンプレッサーのロータやブレーキ制御用のロータリー式真空ポンプのロータは、外周部に軸心に対し平行なベーン溝を周方向に等間隔おきに複数形成したものが一般的である。 また、自動車に搭載する空調用ロータリー式コンプレッサーのロータやブレーキ制御用のロータリー式真空ポンプのロータは、軽量化を目的としてアルミニウム合金製が主流になっており、鍛造加工を用いて製造するのが一般的である。

    例えば下記特許文献1に示すロータ製造方法は、下金型の成形孔にベーン溝形成用の羽根部が形成されており、その成形孔上にセットした円柱形の鍛造素材を、上金型により下方に加圧して、鍛造素材を成形孔内に充填する。 これにより、ベーン溝が下端面から上端面近傍まで形成された円柱状のロータ素材を得る。 そしてそのロータ素材の上端部(余肉部)を軸心に対し直交する面に沿って切削加工により切除して、ベーン溝の一端側(上端側)を開放することにより、ベーン溝の両端を開放して、ロータとして構成するようにしている。

    また下記特許文献2に示すロータ製造方法は、上金型の成形面に、ベーン溝形成用の溝付けパンチが設けられており、下金型の成形孔内にセットされた鍛造素材に、上金型の溝付けパンチを打ち込んで、上端面から下端面近傍にかけてベーン溝を形成する。 その後続けて、溝付けパンチを打ち込んで、ベーン溝の下端側を閉塞する余肉部を打ち抜いて除去することにより、ベーン溝の両端を開放するようにしている。

    特開平11−230068号公報

    特開2000−220588号公報

    上記特許文献1に示す従来のロータ製造方法は、鍛造加工によって得られたロータ素材の余肉部を切削加工により切除するものであるが、切削加工等の機械加工は、鍛造加工等のプレス加工に比べて、生産効率が低いものである。 従ってこの生産効率の低い機械加工を用いる限り、全体的に生産効率を向上させることは困難である。

    また上記特許文献2に示す従来のロータ製造方法は、ベーン溝の下端部を閉塞する余肉部を、溝付けパンチによって打ち抜いて除去するものであるが一般的に、打ち抜き加工は、破断位置を正確にコントロールするのが困難であり、不本意な割れや欠落が生じる可能性が高く、余肉部を的確に除去できない、という問題を抱えている。

    本発明の好ましい実施形態は、関連技術における上述した及び/又は他の問題点に鑑みてなされたものである。 本発明の好ましい実施形態は、既存の方法及び/又は装置を著しく向上させることができるものである。

    この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高い生産効率を確保しつつ、余肉部を的確に除去することができるロータの製造方法およびその関連技術を提供することを目的とする。

    本発明のその他の目的及び利点は、以下の好ましい実施形態から明らかであろう。

    上記の目的を達成するため、本発明は、以下の構成を備えている。

    [1]外周部に軸心方向に沿うベーン溝が周方向に間隔をおいて複数設けられた円柱状のロータ部と、そのロータ部の一端面に一端側に膨出するように一体に形成され、かつ前記ベーン溝の一端側を閉塞する余肉部とを有するロータ素材を得る鍛造工程と、
    衝撃部材を前記余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記ベーン溝が一端側に開放されたロータを得る余肉部除去工程とを含むことを特徴とするロータの製造方法。

    [2]前記ロータ素材において、前記余肉部は前記ロータ部における一端面よりも一端側に形成され、その余肉部の内部まで前記ベーン溝が形成される前項1に記載のロータの製造方法。

    [3]前記余肉部は、前記ベーン溝の周側面を閉塞する周壁部を有し、前記余肉部除去工程において、前記余肉部をその周壁部で破断させて除去するようにした前項2に記載のロータの製造方法。

    [4]前記余肉部のうち、先端から前記ベーン溝の一端面までの寸法を、閉塞部の厚みとしたとき、その閉塞部の厚みが3〜10mmに設定される前項2または3に記載のロータの製造方法。

    [5]前記鍛造工程において、前記余肉部と前記ロータ部との間に亀裂を形成しておき、
    前記余肉部除去工程において、前記ロータ素材を前記亀裂に沿って破断させるようにした前項1〜4のいずれか1項に記載のロータの製造方法。

    [6]前記余肉部除去工程においては、前記ロータ素材の前記ベーン溝にその他端側開口部から、衝撃部材としての打ち抜きパンチを打ち込んで、そのパンチによって前記余肉部を一端側に打ち抜いて除去するようにした前項1〜5のいずれか1項に記載のロータの製造方法。

    [7]前記鍛造工程において、円柱状の鍛造素材の他端面から、ベーン溝形成用型を相対的に打ち込んで、他端面から一端面にかけて前記ベーン溝を形成する一方、
    前記ベーン溝形成用型を前記鍛造素材に打ち込む際に、前記鍛造素材の一端面におけるベーン溝形成予定部に対応する領域に背圧を付与するようにした前項1〜6のいずれか1項に記載のロータの製造方法。

    [8]前記余肉部をベーン溝側余肉部とし、前記衝撃部材をベーン溝側衝撃部材として、
    前記鍛造加工において、前記ロータ素材における前記ロータ部に軸心方向に沿うシャフト孔が設けられるとともに、前記ロータ部の一端面に、前記シャフト孔の一端側を閉塞するシャフト孔側余肉部が一端側に膨出するように一体に形成され、
    前記余肉部除去工程において、シャフト孔側衝撃部材を前記シャフト孔側余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記シャフト孔が一端側に開放されるようにした前項1〜7のいずれか1項に記載のロータの製造方法。

    [9]前記ロータ素材の前記シャフト孔にその他端側開口部から、衝撃部材としての打ち抜きパンチを打ち込んで、そのパンチによって前記シャフト孔側余肉部を一端側に打ち抜いて除去するようにした前項8に記載のロータの製造方法。

    [10]前記鍛造工程において、円柱状の鍛造素材の他端面から、シャフト孔形成用型を相対的に打ち込んで、他端面から一端面にかけて前記シャフト孔を形成する一方、
    前記シャフト孔形成用型を前記鍛造素材に打ち込む際に、前記鍛造素材の一端面におけるシャフト孔形成予定部に対応する領域に背圧を付与するようにした前項8または9にに記載のロータの製造方法。

    [11]前記ロータ素材において、前記余肉部は前記ロータ部における一端面に一端側に膨出するように一体に形成される一方、前記ベーン溝の一端面が、前記余肉部に到達せず、前記ロータ部の一端面よりも内側に配置される前項1に記載のロータの製造方法。

    [12]前記ロータ素材における前記ロータ部の一端面と前記ベーン溝の一端面との間隔をベーン溝側の端面差としたとき、そのベーン溝側の端面差が0〜2mmに設定される前項11に記載のロータの製造方法。

    [13]前記ロータ素材における前記ベーン溝の内周面と前記余肉部の外周面との間隔をベーン溝側の径差としたとき、そのベーン溝側の径差が0.01〜0.1mmに設定される前項11または12に記載のロータの製造方法。

    [14]前記ベーン溝側の径差が部分的に異なっている前項11〜13のいずれか1項に記載のロータの製造方法。

    [15]前記ベーン溝側の径差のうち、内周側端部および外周側端部の少なくともいずれか一方の径差が、中間部の径差に対し大きく設定される前項13または14に記載のロータの製造方法。

    [16]前記余肉部をベーン溝側余肉部とし、前記衝撃部材をベーン溝側衝撃部材として、
    前記鍛造加工において、前記ロータ素材における前記ロータ部に軸心方向に沿うシャフト孔が設けられるとともに、前記ロータ部の一端面に、前記シャフト孔の一端側を閉塞するシャフト孔側余肉部が一端側に膨出するように一体に形成され、
    前記余肉部除去工程において、シャフト孔側衝撃部材を前記シャフト孔側余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記シャフト孔が一端側に開放されるようにし、
    前記鍛造加工によるロータ素材において、前記シャフト孔の一端面が、前記シャフト孔側余肉部に到達せず、前記ロータ部の一端面よりも内側に配置される前項11〜15のいずれか1項に記載のロータの製造方法。

    [17]前記ロータ素材における前記ロータ部の一端面と前記シャフト孔の一端面との間隔をシャフト孔側の端面差としたとき、そのシャフト孔側の端面差が0〜2mmに設定される前項16に記載のロータの製造方法。

    [18]前記ロータ素材における前記シャフト孔の内周面と前記シャフト孔側余肉部の外周面との間隔をシャフト孔側の径差としたとき、そのシャフト孔側の径差が0.01〜0.1mmに設定される前項16または17に記載のロータの製造方法。

    [19]前記シャフト孔側の径差が部分的に異なっている前項16〜18のいずれか1項に記載のロータの製造方法。

    [20]外周部に軸心方向に沿うベーン溝が周方向に間隔をおいて複数設けられた円柱状のロータ部と、そのロータ部の一端面に一端側に膨出するように一体に形成され、かつ前記ベーン溝の一端側を閉塞する余肉部とを有するロータ素材の前記余肉部を除去するための方法であって、
    衝撃部材を前記余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記ベーン溝を一端側に開放させるようにしたことを特徴とするロータ素材の余肉部除去方法。

    [21]外周部に軸心方向に沿うベーン溝が周方向に間隔をおいて複数設けられた円柱状のロータ部と、そのロータ部の一端面に一端側に膨出するように一体形に成され、かつ前記ベーン溝の一端側を閉塞する余肉部とを有するロータ素材の前記余肉部を除去するための装置であって、
    前記ロータ素材の前記ベーン溝にその他端側開口部から打ち込んで、前記余肉部を一端側へ打ち抜いて除去することにより、前記前記余肉部に打ち付けて、その余肉部を前記ロータ部から除去することにより、前記ベーン溝を一端側に開放させる打ち抜きパンチを備えたことを特徴とするロータ素材の余肉部除去装置。

    なお本発明においては、前項[2]〜[7]のベーン溝に対応する構成を、シャフト孔に対応する構成に置き換えて、前項[8][20][21]の構成に限定することも可能である。

    また本発明においては、前項[11]〜[19]の構成を、前項[20][21]の構成に限定することも可能である。

    発明[1]のロータの製造方法によれば、衝撃部材の打ち付けによって余肉部を除去するものであるため、高い生産効率を確保することができる。 さらに余肉部は膨出しているため、衝撃部材の打ち付けにより、的確に除去することができる。

    発明[2]〜[6]のロータの製造方法によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。

    発明[7]のロータの製造方法によれば、上記構成の余肉部を確実に形成することができる。

    発明[9]のロータの製造方法によれば、シャフト側の余肉部をより確実に除去することができる。

    発明[10]のロータの製造方法によれば、上記と同様に、高い生産効率を確保しつつ、余肉部を的確に除去することができる。

    発明[11]のロータの製造方法によれば、ベーン溝内周面と余肉部外周面との径差を小さくできるため、ベーン溝側の余肉部を簡単かつ的確に除去できて、生産効率を向上させることができる。

    発明[12][13]のロータの製造方法によれば、上記の効果を確実に得ることができる。

    発明[14][15]のロータの製造方法によれば、余肉部が不用意に脱落するのを防止することができる。

    発明[16]のロータの製造方法によれば、シャフト孔内周面と余肉部外周面との径差を小さくできるため、シャフト孔側の余肉部を簡単かつ的確に除去できて、生産効率を一層向上させることができる。

    発明[17][18]のロータの製造方法によれば、シャフト側の余肉部をより確実に除去することができる。

    発明[19]のロータの製造方法によれば、シャフト側の余肉部が不用意に脱落するのを防止することができる。

    発明[20]のロータ素材の余肉部除去方法によれば、シャフト孔側の余肉部も効率良く的確に除去することができる。

    発明[21]のロータ素材の余肉部除去装置によれば、上記と同様に、高い生産効率を確保しつつ、余肉部を的確に除去することができる。

    図1はこの発明の第1実施形態であるロータの製造方法における鍛造加工に用いられた鍛造用金型を分解して示す斜視図である。

    図2Aは第1実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における鍛造準備段階での模式断面図である。

    図2Bは第1実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における上金型降下段階での模式断面図である。

    図2Cは第1実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における加工完了段階での模式断面図である。

    図2Dは第1実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における加工品取出段階での模式断面図である。

    図3は第1実施形態の鍛造加工によって得られたロータ素材を示す斜視図である。

    図4は第1実施形態の製法によって製造されるロータを示す斜視図である。

    図5は図4のロータ素材におけるベーン溝のオフセット量を示す平面図である。

    図6は第1実施形態の鍛造用金型における上金型を組立状態で示す斜視図である。

    図7Aは鍛造用金型における下金型への荷重付与状態を示す部分切欠斜視図である。

    図7Bは鍛造用金型における鍛造過程におけるメタルフローを説明するための図である。

    図8は第1実施形態におけるロータ素材の平面図である。

    図9は第1実施形態の製造方法における工程手順を示すフローチャートである。

    図10は第1実施形態のロータ素材をセンター孔部で切り欠いて示す断面図である。

    図11は第1実施形態のロータ素材をベーン溝部で切り欠いて示す断面図である。

    図12は図10の二点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す断面図である。

    図13は図11の二点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す断面図である。

    図14は第1実施形態の製造方法における余肉部除去工程に用いられたポンチング装置を概略的に示す断面図である。

    図15は第1実施形態のロータ素材におけるセンター孔部周辺を余肉部を除去した状態で拡大して示す断面図である。

    図16は第1実施形態のロータ素材におけるベーン溝部周辺を余肉部を除去した状態で拡大して示す断面図である。

    図17はこの発明の第1変形例としてのロータ素材をセンター孔部で切り欠いて示す断面図である。

    図18はこの発明の第1変形例としてのロータ素材をベーン溝部で切り欠いて示す断面図である。

    図19はこの発明の第2変形例としてのロータ素材をセンター孔部で切り欠いて示す断面図である。

    図20はこの発明の第2変形例としてのロータ素材をベーン溝部で切り欠いて示す断面図である。

    図21は第2実施形態の鍛造加工によって得られたロータ素材を示す斜視図である。

    図22Aは第2実施形態におけるロータ素材の平面図である。

    図22Bは第2実施形態におけるロータ素材のベーン溝部分を拡大して示す平面図である。

    図23は第2実施形態のロータ素材をセンター孔部で切り欠いて示す断面図である。

    図24は実施形態のロータ素材をベーン溝部で切り欠いて示す断面図である。

    図25は図23のセンター孔側余肉部周辺を拡大して示す断面図である。

    図26は図24のベーン溝側余肉部周辺を拡大して示す断面図である。

    図27Aは第2実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における上金型降下段階での模式断面図である。

    図27Bは第2実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における加工完了段階での模式断面図である。

    <ロータ>
    まず始めにこの発明の第1実施形態によって製造されるロータ(R)の構成について説明する。 図4に示すように、ロータ(R)は、中心にシャフトを貫通させるシャフト孔としてのセンター孔(3)を有する概略円柱体であり、外周面には溝底が断面円形に拡大された5つのベーン溝(4)が設けられている。 これらのベーン溝(4)は、円柱体の軸線に平行で両端面に貫通し、前記センター穴(3)に偏心して内方に切り込むように設けられている。 また、図5に示すように、前記ベーン溝(4)のオフセット量(U)は、溝幅方向の中心線(L1)と、この中心線(L1)と平行でロータ(R)の軸線を通る直線(L2)との距離で表される。

    ロータ(R)の材料としては一般にアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられ、その一例としてSi:14〜16質量%、Cu:4〜5質量%、Mg:0.45〜0.65質量%、Fe:0.5質量%以下、Mn:0.1質量%以下、Ti:0.2質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を挙示できる。

    <製造工程>
    図9に示すように、本実施形態においてロータの製造方法は、主として、切断工程、質量選別工程、鍛造工程、ポンチング工程、熱処理工程および検査工程を含み、これらの工程を経た後、ロータ製品として出荷される。

    切断工程および質量選別工程は、鍛造素材を得るための工程であり、切断工程において、連続鋳造材を所定長さに切断して、所定長さの連続鋳造材を得た後、各鋳造材を質量(重量)に応じて選別することにより、所望の鍛造素材を得るものである。

    続いて鍛造加工において、上記鍛造素材を鍛造加工してロータ素材を得た後、ポンチング工程において、ロータ素材から余肉部を除去して、ロータを得るものである。

    その後、熱処理工程において、ロータに対し、加熱処理および焼入処理を行い、硬度および耐摩耗性を向上させて、ロータ製品とする。 そして検査工程において最終検査を行って、異常がなければ出荷される。

    以下、本実施形態のロータの製造方法の特徴部について詳細に説明する。

    <鍛造工程>
    図1,2A〜Dは第1実施形態の鍛造加工に用いられる鍛造装置としての鍛造用金型を示す図、図3はこの鍛造用金型によって鍛造されるロータ素材(1)を示す図である。

    これらの図に示すように鍛造用金型は、下金型(10)と成形用荷重を付与する上金型(30)とを備えている。 これらの金型材料としては周知の金型用鋼材が用いられる。

    下金型(10)は、成形孔(12)を有する下金型本体(11)と、下金型本体(11)の下側に配置されるベース(15)と、下金型本体(11)の上側に配置されるブッシュ(19)とに分割される。

    前記下金型本体(11)の成形孔(12)内には、孔内周壁面からベーン溝(4)を成形するための5つの羽根部(13)が突出している。 前記羽根部(13)は、ベーン溝(4)の断面形状に対応し、端部に円形部を有する薄板状である。 前記ベース(15)はプレート状であり、中心にロータ(R)のセンター孔(3)を成形するためのセンターピン(16)が固定され、このセンターピン(16)を囲むようにノックアウトピン(17)用の貫通孔(18)が穿設されている。 前記ブッシュ(19)は、下金型本体(11)の成形孔(12)と同径で上下に貫通する装填孔(20)を有する環状体である。

    前記ベース(15)、下金型本体(11)およびブッシュ(19)を組み付けると、下金型本体(11)の成形孔(12)内にセンターピン(16)が挿入されて成形孔(12)内部がロータ(R)の反転形状となり、かつブッシュ(19)の装填孔(20)が成形孔(12)に連通する。 また、図2Aに示す鍛造の準備段階において、ノックアウトピン(17)はベース(15)の貫通孔(18)に挿入され、先端面がベース上面と同一高さとなる位置で待機している。

    上金型(30)は、鍛造素材(W)に主荷重(F)を付与するための上金型本体(31)と、副荷重(F1)(F2)を付与するための円形ピン(40)および扁平板(41)とに分割される。

    前記上金型本体(31)は、下半体のパンチ部(32)が前記ブッシュ(19)の貫通孔(20)に対応する外径の概略円柱体に形成され、大径の上半体(33)には上面に凹部(34)が形成されている。 この凹部(34)には、前記円形ピン(40)の断面形状に対応して該円形ピン(40)を進退可能に嵌入する1つの円形孔(35)と、前記扁平板(41)の断面形状に対応して該扁平板(41)を進退可能に挿入する5つの扁平孔(36)が形成されている。 前記円形孔(35)および扁平孔(36)はいずれもパンチ部(32)の先端面に貫通するものであり、扁平孔(36)はパンチ部(32)の外周面にも開口している。 また、前記円形孔(35)および扁平孔(35)の位置は下金型本体(11)におけるセンターピン(16)および羽根部(13)の位置に対応している。

    前記円形ピン(40)は、下金型本体(11)のセンターピン(16)よりも径の大きい円形ピンであり、上端に前記円形孔(35)よりも径の大きい抜止め部(42)が一体に形成されている。 前記扁平板(41)は、下金型本体(11)の羽根部(13)と同様に先端に円形部を有する薄板状であるが羽根部(13)よりもひとまわり大きく、上端に前記扁平孔(36)よりも断面積を拡大させた抜止め部(43)が一体に取り付けられている。

    そして、図2Aおよび図6に示すように、前記上金型本体(31)の凹部(34)から円形孔(35)に前記円形ピン(40)を嵌入するとともに、各扁平孔(36)に前記扁平板(41)を嵌入すると、上金型本体(31)、前記円形ピン(40)、前記扁平板(41)が合わさってパンチ部(32)の先端面および周面がそれぞれ連続し、一つの円柱体が形成される。

    前記の円形ピン(40)および扁平板(41)の上方には、これらに付与する荷重を付与するためのガスクッション(45)が配置されている。 前記ガスクッション(45)はシリンダ(46)内にピストンロッド(47)が進退自在に挿入され、ピストンロッド(47)に退入方向のが加わると、内部に封入された圧縮ガスによって前記退入方向の力につり合う前進方向の力を生じるものであり、退入距離が大きくなるほど前進方向の力も大きくなる。 前記各ガスクッション(45)はシリンダ(46)が取付盤(48)に固定され、ピストンロッド(47)の先端を円形ピン(40)および扁平板(41)の前記抜止め部(42)(43)に当接させて、円形ピン(40)および扁平板(41)にピストンロッド(47)の前進力による初期荷重を付与した状態で、上金型本体(31)と取付盤(48)とが組み付けられている。 また、前記円形ピン(40)および扁平板(41)が上昇してピストンロッド(47)が退入すると、退入距離に応じた荷重が円形ピン(40)および扁平板(41)に付与される。 従って、取付盤(48)は上金型(30)とともに昇降するが、円形ピン(40)および扁平板(41)に付与される副荷重(F1)(F2)は、主荷重(F)から独立してガスクッション(45)によって制御される。

    前記第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)の値はガスクッション(45)の作動荷重の設定によって調節することができ、かつ円形ピン(40)および扁平板(41)それぞれにガスクッション(45)が装備されているので、これらも独立して荷重制御することができる。 即ち、前記上金型本体(32)に付与する主荷重(F)、円形ピン(40)に付与する第1副荷重(F1)、5つの扁平板(41)に付与する5つの第2副荷重(F2)はそれぞれ独立した荷重に設定することができる。

    前記下金型(10)と上金型(30)とは、前記円形ピン(40)および扁平板(41)が下金型(10)のセンターピン(16)および羽根部(13)の対応位置に存在するように配置されている。 従って、図7A,Bに示すように、第1副荷重(F1)はセンターピン(16)の真上に付与され、第2副荷重(F2)は羽根部(13)の真上に付与される。 主荷重(F)はセンターピン(16)および羽根部(13)以外の部分に付与される。 また、本発明において、前記第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)は主荷重(F)よりも小さい値に設定されている。

    次に、前記鍛造用金型を用い、図4のロータ素材(1)を製造するために鍛造素材(W)を鍛造する方法について、図2A〜D、図7A,B、図8を参照しつつ説明する。

    図2Aに示すように下金型(20)および上金型(30)の所要部分に潤滑剤を塗布し、円柱形の鍛造素材(49)をブッシュ(19)の装填孔(20)に装填する。 前記鍛造素材(W)は、既述したように、連続鋳造材を所定長さに切断する等の方法により製作されたものであり、必要に応じて所定温度に加熱されている。 前記潤滑剤としては、性黒鉛潤滑剤、油性黒鉛潤滑剤等を例示でき、鍛造素材(W)と金型(10)(30)との間でカジリが発生しないようにするには、水性黒鉛潤滑剤と油性黒鉛潤滑剤を併用することが好ましい。 塗布量はそれぞれ2〜10g程度である。 また、鍛造素材(W)がアルミニウム合金の場合の予備加熱温度は400〜450℃が好ましい。

    この状態から図2Bに示すように、上金型(30)を主荷重(F)で降下させて下金型(10)に装填された鍛造素材(W)を鍛造すると、鍛造素材(W)が成形孔(12)内に充填される過程で、主荷重(F)よりも小さい第1副荷重(F1)を付与された円形ピン(40)および第2副荷重(F2)を付与された扁平板(41)が押し上げられ、円形孔(35)および扁平孔(36)内に材料が流入する。 上金型(30)の下降に伴って円形ピン(40)および扁平板(41)が上昇し、ピストンロッド(47)の退入距離が大きくなるに従って、円形ピン(40)に付与される第1副荷重(F1)および扁平板(41)に付与される第2副荷重(F2)が増大する。 このようにして、鍛造素材(W)に対し、円形ピン(40)および扁平板(41)以外の部分には主荷重(F)が付与されるのに対し、円形ピン(40)および扁平板(41)に対応する部分には主荷重(F)から独立した第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)が付与される。

    図2Bに示すように、前記円形ピン(40)および扁平板(41)に主荷重(F)よりも小さい第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)を付与することによって、円形ピン(40)および扁平板(41)が上昇し、円形孔(35)および扁平孔(36)内に材料が流れ込む。 円形孔(35)および扁平孔(36)内に材料が流れ込むことによって、下金型(10)のセンターピン(16)および羽根部(13)にかかる力が緩和される。 その結果、図7Bに示すように、成形孔(12)の壁面と羽根部(13)との間のメタルフロー(α1)およびこのメタルフロー(α1)によって羽根部(13)を内方に変形させる力(α2)が緩和され、さらにセンター孔(3)の成形時に外周に向かうメタルフロー(α3)が羽根部(13)を内方に変形させる力(α2)と逆方向に働くので、これらの力(α2)(α3)の均衡を保つことによって、センターピン(16)および羽根部(13)のたわみ変形およびねじれ変形を抑制することができる。

    前記第1副荷重(F1)と第2副荷重(F2)の適正値はセンターピン(16)および羽根部(13)の体積に応じて適宜設定する。 これらの体積が大きくなるほど材料の逃がし量が増えるので、羽根部(13)の体積が一定ならば、センターピン(16)の体積が大きくなるほど第1副荷重(F1)を小さくして円形孔(35)への流入量を増やすことで均衡を保つことができる。

    上述した過程を経て図2Cに示すように、上金型(30)が下死点まで降下すると、ロータ素材(1)の成形が完了する。

    その後図2Dに示すように、上金型(30)を上昇させ、ノックアウトピン(17)を上昇させて鍛造されたロータ素材(1)を突き出す。 円形ピン(40)および扁平板(41)がロータ(1)から離れて下方からの力が取り除かれると、ガスクッション(45)のピストンロッド(47)が初期位置に復帰する。

    上述した工程において、下金型(10)のセンターピン(16)および羽根部(13)のたわみ変形およびねじれ変形が抑制されるため、図3に示すロータ素材(1)はセンター孔(3)およびベーン溝(4)の寸法精度が高いものとなり、かつ変形を抑制することで金型寿命が長くなる。 しかも、羽根部(13)の変形防止のためにロータ素材の外径を拡大する必要がないので、後加工で切除する部分がなく材料に無駄が生じない。

    また、第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)を主荷重(F)よりも小さい値に設定したことで、円形ピン(16)および羽根部(13)が押しのける材料が流動し易くなっているため、上金型(30)を、円形孔(35)および扁平孔(36)に円形ピン(16)および羽根部(13)が食い込む高さまで降下させることができる。 このため、センター孔(3)およびベーン溝(4)の肉の移動によって、製作されるロータ素材(1)は、ロータ部(2)の上端面(一端面2a)に、センター孔(3)およびベーン溝(4)の部分に対応して余肉部(5)(6)が形成される。

    さらに第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)は個別に付与されるので、センター孔(3)上の余肉部(5)とベーン溝(4)上の余肉部(6)とが個別に形成され、これらの余肉部(5)(6)の平面形状は円形ピン(40)および扁平板(41)の断面形状に対応したものとなる。

    ここで本実施形態において、ロータ素材(1)は、ロータ部(2)と、余肉部(5)(6)とにより構成されるものであり、ロータ部(2)には、余肉部(5)(6)が含まれない。

    こうして形成される余肉部(5)(6)は図10,11に示すように、ロータ部(2)の一端面(2a)から一端側に膨出するように設けられ、各余肉部(5)(6)の内部までセンター孔(3)およびベーン溝(4)が形成されている。

    さらに図12に示すように、センター孔側の余肉部(5)は、センター孔(3)の一端面(3a)を閉塞する閉塞部(5a)と、センター孔(3)の周側面を閉塞する周壁部(5b)とを有し、断面が略逆U字状の形状に仕上げられている。 同様に図13に示すように、ベーン溝側の余肉部(6)は、ベーン溝(4)の一端面(4a)を閉塞する閉塞部(6a)と、ベーン溝(4)の周側面を閉塞する周壁部(6b)とを有し、断面が略逆U字状に仕上げられている。 なお余肉部(5)における周壁部(5b)(6b)は、ロータ部(2)の一端面(2a)から、センター孔(3)およびベーン溝(4)の一端面(3a)(4a)までの範囲に配置される部分であり、閉塞部(5a)(6a)は、センター孔(3)のおよびベーン溝(4)の一端面(3a)(4a)よりもさらに一端側に配置される部分である。

    また本実施形態においては、鍛造加工時に、主荷重(F)、第1,第2副荷重(F1)(F2)を調整することにより、余肉部(5)(6)の周壁部(5b)(6b)に亀裂(7)(7)を発生させておく。 この亀裂(7)(7)は、後述のポンチング工程における余肉部(5)(6)の除去を容易にするために形成しておくものである。 なお本実施形態においては、余肉部(5)(6)の除去を簡単かつ正確に行うために、余肉部(5)(6)を特有の構成に形成するものであるが、余肉部(5)(6)の構成の詳細については、後に説明することとする。

    さらに本実施形態においては、鍛造加工時に、第1,第2副荷重(F1)(F2)による背圧を付与するようにしているため、余肉部(5)(6)がロータ部(2)から引き裂かれたり、引きちぎれたりするような不具合を確実に防止できて、後述する所望の構成の余肉部(5)(6)をロータ素材(1)に一体に形成することができる。

    なお言うまでもなく、ロータ素材(1)におけるロータ部(2)の他端面(下端面2b)においては、センター孔(3)およびベーン溝(4)が共に開放されている。

    本実施形態の鍛造加工では、主荷重(F)、第1副荷重(F1)、第2副荷重(F2)は、ロータ素材(1)の形状および各部の寸法、材料組成、加工温度等に応じて適宜設定する。 例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製で直径40〜70mm、高さ30〜60mmのロータ(R)を製造する場合の設定値として、主荷重(F):270〜325MPa、第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2):29〜89MPaを例示できる。

    また、第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)を小さく設定しすぎると余肉部(5)(6)が引き裂かれるおそれがあり、逆に大きく設定しすぎるとのセンターピン(16)および羽根部(13)にかかる力を緩和させる効果が小さく、たおれ変形およびねじれ変形を抑制する効果が小さくなる。 上述したようにアルミニウム合金製ロータ(R)を鍛造する場合は29〜89MPaが好ましく、さらに39〜49MPaの範囲が好ましい。 また、ガスクッション(45)のようなバネ式の副荷重付与手段では上金型(30)の下降に伴って第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)が増大するが、上記好適範囲の荷重は初期荷重である。

    また、第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)を付与するための副荷重付与手段は限定されないが、上金型(30)の昇降に追従して荷重を付与できるものが好ましい。 かかる観点で、ガスクッションのようなバネ式のものが好ましく、他の副荷重付与手段として、機械式バネ、油圧機構、ショックアブソーバを例示できる。

    また図8に示すように、ロータ(1)における余肉部(5)(6)の平面形状は、センターピン(16)および羽根部(13)の周囲に幅(t):0.1〜3mmの拡大部を加えた形状が好ましい。 換言すれば、上金型本体(31)の円形孔(35)とセンターピン(16)との間の隙間(t)、および扁平孔(36)と羽根部(13)との間の隙間(t)が0.1〜3mmとなるように、前記円形孔(35)および扁平孔(36)を設定することが好ましい。 前記幅(t)が0.1mm未満では鍛造時に材料流れが悪くなって余肉部(5)(6)が破断するおそれがあり、破断によって変形防止効果も低下するおそれがある。 3mmを超えると、上金型(30)の円形孔(35)と扁平孔(36)が干渉し合うおそれがある。 特に好ましい隙間(t)は1〜2mmである。

    <ポンチング工程>
    図14はポンチング加工工程(余剰部除去工程)に用いられる余剰部除去装置としてのポンチング装置(ダイセット)を概略的に示す断面図である。 同図に示すように、このポンチング装置は、下金型(8)と、上金型(9)とを備え、後に詳述するように、パンチング処理によってロータ素材(1)から余肉部(5)(6)を打ち抜いて除去できるようになっている。

    下金型(8)は、下プレート(81)と、その下プレート(81)の上面に設けられる下金型本体(85)とを備えている。

    下プレート(81)は、その中央に、上下方向に貫通する余肉部排出孔(82)が形成されている。 さらに下プレート(81)の両側部には、垂直方向に沿ってガイドバー(83)が立設されている。

    下金型本体(85)は、下プレート(81)の上面に余肉部排出孔(82)を閉塞するようにして固定されている。

    この下金型本体(85)には、下プレート(81)の余肉部排出孔(82)に対応して、ワーク設置部(86)が設けられている。 ワーク設置部(86)は、上記ロータ素材(1)をその一端面(2a)側を下側に向けて設置できるように構成されている。 すなわちこのワーク設置部(86)には、センター孔側余肉部(5)に対応してセンター孔側型抜き孔(87)が形成されるとともに、ベーン溝側余肉部(6)に対応してベーン溝側型抜き孔(88)が形成されている。 このセンター孔側型抜き孔(87)は、その内周形状がセンター孔側余肉部(5)の外周形状に対応して形成されており、センター孔側余肉部(5)を適合状態に嵌合できるようになっている。 さらにベーン溝側型抜き孔(88)は、その内周形状がベーン溝側余肉部(6)の外周形状に対応して形成されており、ベーン溝側余肉部(6)を適合状態に嵌合できるようになっている。 また各型抜き孔(87)(88)は、上下方向に貫通しており、下端側が下プレート(81)の余肉部排出孔(82)に連通している。

    そしてロータ素材(1)の余肉部(5)(6)を、型抜き孔(87)(88)にそれぞれ適合状態に嵌合して、ロータ部(2)の一端面(2a)をワーク設置部(86)上に載置するることにより、ロータ素材(1)をワーク設置部(86)上に位置決め状態にセットできるようになっている。

    上金型(9)は、上プレート(91)と、その上プレート(91)の下面に設けられる上金型本体(95)とを備えている。

    上プレート(91)は、上下方向に昇降自在に構成されており、図示しない油圧シリンダ等の昇降駆動手段によって昇降駆動できるようになっている。

    さらに上プレート(91)の両側部には、下プレート(83)のガイドバー(83)に対応して、ガイド孔(93)が設けられており、後述するように上プレート(91)が降下する際に、ガイドバー(83)がガイド孔(93)に挿入されることにより、上プレート(91)の降下移動がガイドされるようになっている。

    上金型本体(95)は、下金型本体(85)に対向するようにして、上プレート(91)の下面に固定されている。

    上金型本体(95)には、下金型本体(85)におけるセンター孔側型抜き孔(87)およびベーン溝側型抜き孔(88)にそれぞれ対応して、つまり下金型(85)に設置されるロータ素材(1)のセンター孔(3)およびベーン溝(4)にそれぞれ対応して、センター孔側打ち抜きパンチ(97)およびベーン溝側打ち抜きパンチ(98)がそれぞれ下方に突出するように取り付けられている。

    本実施形態においては、打ち抜きパンチ(97)(98)が衝撃部材として構成されている。

    次に、上記構成のポンチング装置を用い、ロータ素材(1)の余肉部(5)(6)を除去する方法について説明する。

    まずポンチング装置の下金型(8)におけるワーク設置部(86)に、ロータ素材(1)をその一端面(2a)側を下向きにして、各余肉部(5)(6)を、対応する型抜き孔(87)(88)に適合させた状態に設置する。 この設置状態では、上金型本体(85)のセンター孔側打ち抜きパンチ(97)およびベーン溝側打ち抜きパンチ(98)が、ロータ素材(1)のセンター孔(3)およびベーン溝(4)の他端側開口部に対向して配置される。

    こうしてロータ素材(1)をセットした状態で、上金型(85)を降下させると、上金型本体(85)のパンチ(97)(98)がロータ素材(1)の上端面(他端面2b)側からセンター孔(3)およびベーン溝(4)に挿入されて、各パンチ(97)(98)が余肉部(5)(6)に加圧状態で打ち付けられて、余肉部(5)(6)が打ち抜かれる。 これにより余肉部(5)(6)がロータ部(2)から除去され、その除去された余肉部(5)(6)が下プレート(81)の余肉部排出孔(82)を介して下方側に排出される。 こうして図15,16に示すように、ロータ素材(1)におけるセンター孔(3)およびベーン溝(4)の一端側が開放されることにより、センター孔(3)およびベーン溝(4)の両端が共に開放されたロータ(R)を得ることができる。

    ここで本実施形態において、余肉部(5)(6)はロータ部(2)の一端面(2a)に一端側に膨出するように形成されているため、余肉部(5)(6)を打ち抜いた際に、周壁部(5b)(6b)の位置で正確に破断させることができ、余肉部(5)(6)を精度良く的確に除去することができる。

    特に本実施形態においては図12,13に示すように、余肉部(5)(6)の周壁部(5b)(6b)に亀裂(7)(7)を形成しているため、この亀裂(7)(7)の部分において確実に破断できて、より一層精度良く余肉部(5)(6)をロータ(R)から除去することができる。

    さらに破断予定位置に亀裂(7)(7)を形成しているため、パンチ(97)(98)の打込荷重を亀裂(7)(7)の位置に集中させることができ、その位置で確実に破断させることができる。 このため、パンチ(97)(98)の荷重を小さくしても確実に余肉部(5)(6)を打ち抜くことができる。 このように低荷重でプレス加工できるため、高荷重が要因となって、ロータ(R)に有害な亀裂や破断が発生するのを有効に防止できて、高品質のロータ製品を製造することができる。 具体例を挙げて説明すると、亀裂(7)(7)を形成する場合には、亀裂(7)(7)が無い場合と比較して、パンチ荷重を1/2程度に小さくすることができる。

    また低荷重で加工できるため、パンチ(97)(98)自体の磨耗も軽減することができ、パンチ(97)(98)の耐久性、ひいてはポンチング装置の耐久性を一段と向上させることができる。 その上さらに低荷重であるため、パンチ(97)(98)自体の強度も低くすることができ例えば、パンチ(97)(98)として、厚さ2.5mm程度の薄板状のものでも不具合なく採用することができる。

    また本実施形態では、鍛造加工によって、ロータ素材(1)の端面におけるセンター孔(3)およびベーン溝(4)の周辺のみに部分的に余肉部(5)(6)が形成されるとともに、ポンチング工程によって、部分的な余肉部(5)(6)だけを除去するようにしているため、余肉部(5)(6)の容量、つまり余分な材料が少なくなり、材料歩留まりを向上できて、コストの削減を図ることができる。

    なお本実施形態のパンチング加工は、ロータ素材(1)を特に加熱する必要がなく、冷間で行っている。 もっとも本発明においては、パンチング加工を行う直前に、ロータ素材(1)を加熱して、パンチング加工を熱間で行うようにしても良い。

    ところで本実施形態のように余肉部(5)(6)を周壁部(5b)(6b)で破断させて除去する場合には図15,16に示すように、破断部にバリ(5c)(6c)が発生するが、このバリ(5c)(6c)は必要に応じて除去すれば良い。 例えばポンチング工程と熱処理工程との間にバリ除去工程を設けて、そこでバリ(5c)(6c)を除去したり、あるいは熱処理工程と検査工程との間にバリ除去工程を設けるようにすれば良い。

    また出荷先で端面を仕上げ切削加工するような場合には、その仕上げ切削加工でバリ(5c)(6c)を除去すれば良いので、ロータ(R)の製造過程であえてバリ(5c)(6c)を除去する必要はない。

    さらに後述するように、余肉部(5)(6)を除去する際の破断面をロータ部(2)の一端面(2a)と同等の位置または内側の位置に配置させることによって、バリ(5c)(6c)が形成されるのを防止するようにしても良い。

    次に本実施形態におけるロータ(R)の一例を挙げ、その一例のロータにおいて余肉部(5)(6)を精度良く確実に除去するのに最適な構成を以下に説明する。

    まず製作しようとする一例のロータ(R)は、軸心方向の長さが30〜60mm、外径(直径)が45〜65mm、センター孔(3)の直径が10〜15mm、ベーン溝(4)の幅が2〜4mm、ベーン溝(4)の外周面からの深さが15〜20mmに設定される。

    このような一例のロータ(R)を作製するのに用いられるロータ素材(1)において、図12に示すように、センター孔側における閉塞部(5a)の厚み、つまり余肉部(5)における先端からセンター孔(3)の一端面(3a)までの寸法を「T5」、周壁部(5b)の高さ、つまり余肉部(5)におけるセンター孔(5)の一端面(5a)からロータ部(2)の一端面(2a)までの寸法を「Z5」としたとき、余肉部(5)の膨出量(H5)は、「T5+Z5」と等しくなる。

    このときのセンター孔側余肉部(5)における最適な構成は、余肉部(5)の膨出量(H5)を3.5〜12mm、閉塞部(5a)の厚み(T5)を3〜10mm、周壁部(5b)の高さ(T5)を0.5〜2mmに設定するのが良い。 特に閉塞部厚み(T5)が小さ過ぎる場合には、余肉部(5)を除去する際の破断位置が不安定となってしまい、金型寿命が短くなるとともに、寸法精度も低くなる。 逆に閉塞部厚み(T5)が大き過ぎる場合には、材料歩留まりが悪くなる。

    また余肉部(5)の抜き勾配(θ5)を、0〜10°、余肉部(5)の外周面における立ち上がり部(据え部)の曲率半径(r5)を0.5〜3mmに調整するのが良い。

    さらに図13に示すようにベーン溝側余肉部(6)においても、上記と同様に、余肉部(6)の膨出量(H6)は、閉塞部(6a)の厚み(T6)に、周壁部(6b)の高さ(Z5)を加えた値と等しくなる。

    そしてこのときのベーン溝側余肉部(6)における最適な構成も、上記と同様である。 すなわち上記と同様な理由から、余肉部(6)の膨出量(H6)を3.5〜12mm、閉塞部(6a)の厚み(T6)を3〜10mm、周壁部(6b)の高さ(Z6)を0.5〜2mmに設定するのが良い。 さらに上記と同様に、余肉部(6)の抜き勾配(θ6)を、0〜10°、余肉部(6)の外周面における立ち上がり部(据え部)の曲率半径(r6)を0.5〜3mmに調整するのが良い。

    以上のように余肉部(5)(6)を構成した場合には、余肉部(5)(6)をパンチ(97)(98)によって的確に打ち抜くことができ、余肉部(5)(6)を精度良く確実に除去することができる。 特に曲率半径(r5)(r6)の調整は重要である。 すなわち曲率半径(r5)(r6)を小さくすると、亀裂(7)が発生し易く、亀裂(7)を大きくでき、逆に曲率半径(r5)(r6)を大きくすると、亀裂(7)が発生し難く、亀裂(7)が小さくなる。 従って、曲率半径(r5)(r6)の調整によって、亀裂(7)の大きさや形状、位置等を適切に制御することができ、余肉部(5)(6)を、より一層精度良く確実に除去することができる。

    このように本実施形態においては、余肉部(5)(6)を打ち抜き加工によって除去しているため、切削加工等の効率が低い機械加工により余肉部を切除する場合と比較して、効率良く余肉部(5)(6)を除去できて、生産効率を向上させることができる。

    しかも余肉部(5)(6)は、ロータ素材(1)の一端面(2a)に膨出状に形成するものであるため、打ち抜き加工によって簡単かつ精度良く余肉部(5)(6)を除去することができる。

    一方、ポンチング工程によって、余肉部(5)(6)を除去したロータ(R)は、上記したように、必要に応じてバリ(5c)(6c)が除去された後、熱処理工程および検査工程を経て出荷される(図9参照)。

    <変形例>
    上記実施形態においては、余肉部(5)(6)を、ロータ部(2)の一端面(2a)から膨出する膨出部によって構成し、その余肉部(5)(6)の内部における一端面(2a)よりも外側の位置までセンター孔(3)およびベーン溝(4)を形成する場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、必ずしも、センター孔(3)およびベーン溝(4)の一端面(3a)(4a)をロータ部(2)の一端面(2a)よりも外側まで形成する必要はない。

    例えば図17,18に示すように、センター孔(3)およびベーン溝(4)をその一端面(3a)(4a)を、ロータ部(2)の一端面(2a)とほぼ同じ位置に配置するように形成するようにしても良い。

    この場合には、ロータ部(2)における一端面(2a)の位置に対応して、余肉部(5)(6)に亀裂(7)(7)が形成されて、その位置で破断されて、余肉部(5)(6)が除去される。 従って余肉部(5)(6)の除去後におけるバリが、上記実施形態のバリ(5c)(6c)と比べて小さく形成することができる。

    また図19,20に示すようにセンター孔(3)およびベーン溝(4)をその一端面(3a)(4a)を、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも内側(他端側)に配置するように形成するようにしても良い。

    この場合には、余肉部(5)(6)の外周面における立ち上がり位置から、センター孔(3)およびベーン溝(4)の端部コーナ位置にかけて亀裂(7)(7)が形成されて、その位置で破断されて、余肉部(5)(6)が除去される。 従って、余肉部(5)(6)の除去跡に、ロータ素材(1)の一端面(2a)におけるセンター孔周縁部およびベーン溝周縁部に面取り状の切欠部が形成されて、バリが形成されるのを確実に防止することができる。

    また上記実施形態においては、余肉部(5)(6)に亀裂(7)(7)を形成するようにしているが、後の第2実施形態で詳細に説明するように、本発明においては、亀裂(7)(7)を必ずしも形成する必要はない。

    一方、上記実施形態においては、余肉部(5)(6)を、センター孔(3)およびベーン溝(4)の他端側から挿入したパンチ(97)(98)によって打ち抜くようにしているが、本発明においては、余肉部を除去する際に、パンチによる打ち抜き加工だけに限られることはない。

    すなわちロータ素材(1)における外側から、例えば軸心方向に直交する方向から、ハンマー等の衝撃部材を打ち付けて、その衝撃により、余肉部を叩き落とすように除去したり、裁断工具等の衝撃部材によって、余肉部(5)(6)の付け根(基端部)を軸心方向に直交する面に沿って裁断(せん断)するようにして、余肉部(5)(6)を切り取るようにしても良い。

    また上記実施形態においては、下金型(10)にセンターピン(16)およびベーン溝形成用羽根部(13)を設置して、ベーン溝(4)の形成と同時に、センター孔(3)を形成するようにしているが、センター孔の形成方法は上記のものだけに限られることはない。 例えば鍛造加工を行う前に予め鍛造素材に、センター孔を形成しておいても良いし、センターピンの設置されない金型による鍛造加工によって、ベーン溝のみを形成しておき、そのベーン溝付きのロータ素材に対して後処理で、センター孔を形成するようにしても良い。

    また上記実施形態においては、鍛造加工と、余肉部打ち抜き加工とを別々の装置を用いて行うようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、鍛造加工と、余肉部打ち抜き加工とは同じ装置によって行うことも可能である。

    例えば図1,2に示すような鍛造装置において、下金型(10)の羽根部(13)およびセンターピン(16)として長いものを使用し、鍛造加工時には、上記実施形態と同程度のストローク量で上金型(30)を降下させることにより、同様の鍛造加工を行う。 その後の余肉部打ち抜き加工では、上記の鍛造加工に続けて、鍛造加工時よりもストローク量を多くして上金型(30)を降下させることにより、羽根部(13)およびセンターピン(16)により余肉部(5)(6)を打ち抜くようにすれば良い。

    さらに上記実施形態においては、鍛造装置として、下金型(10)等の固定側の金型に、ベーン溝形成用羽根部(13)およびセンター孔形成用ピン(16)を設置するタイプのものを用いるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、上金型(30)等の可動側の金型に、ベーン溝形成用羽根部(パンチ)およびセンター孔形成用ピン(パンチ)を設置するタイプの鍛造装置を用いるようにしても良い。 この場合においても、ベーン溝形成用パンチおよびセンター孔形成用パンチとして長いものを使用することにより、上記と同様に、1つの装置(鍛造装置)によって、鍛造加工および余肉部打ち抜き加工を共に行うことができる。

    <第2実施形態>
    図21〜26はこの発明の第2実施形態における鍛造加工によって得られるロータ素材(1)を示す図である。 これらの図に示すように、本第2実施形態において、ロータ素材(1)は、ロータ部(2)と、余肉部(5)(6)とにより構成されるものであり、ロータ部(2)には、余肉部(5)(6)が含まれない。

    余肉部(5)(6)は、ロータ部(2)の一端面(2a)から一端側に膨出するように設けられている。

    また本実施形態のロータ素材(1)は、センター孔(3)の一端面(3a)は、余肉部(5)の内部に到達しておらず、一端面(3a)は、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも内側に配置されている。

    さらにベーン溝(4)の一端面(4a)も、同様に、余肉部(6)の内部に到達しておらず一端面(4a)は、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも内側に配置されている。

    なおロータ素材(1)におけるロータ部(2)の他端面(下端面2b)においては、センター孔(3)およびベーン溝(4)が共に開放されている。

    ここで図25,26に示すように、ロータ部(2)の一端面(2a)とセンター孔(3)の一端面(3a)との端面差(破断長D3)は、0〜2mmに設定されるとともに、ロータ部(2)の一端面(2a)とベーン溝(4)の一端面(4a)との端面差(破断長D4)も、同様に、0〜2mmに設定されている。

    また、余肉部(5)の外周面と、センター孔(3)の内周面との径差(D5)は、0.01〜0.1mm、好ましくは0.05〜0.1mmに設定されている。 さらに余肉部(6)の外周面と、ベーン溝(4)の内周面との径差(D6)も、同様に、0.01〜0.1mm、好ましくは0.05〜0.1mmに設定されている。

    一方図22Bに示すように、本実施形態においては、余肉部(6)とベーン溝(4)との径差(D6)うち、ロータ部外周側端部の径差(D61)および内周側端の径差(D62)が、中間主要部の径差(D60)よりも厚く形成されている。

    また図25,26に示すように本実施形態では、ロータ素材(1)におけるセンター孔(3)の内周面と一端面(3a)との間の曲率半径(r3)は、0.2〜1mmに設定されている。 さらにベーン溝(4)の内周面と一端面(4a)との間の曲率半径(r4)も、同様に、0.2〜1mmに設定されていることが好ましい。 この範囲に設定することで、図26に示すように余肉部(5)(6)を、例えばポンチングで除去した際に、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内側に残存する内バリのセンター孔(3)およびベーン溝(4)の内壁面からの高さ(B1)の平均値を好ましい値に調整することができる。 具体的には、内バリの高さ(B1)を1mm以下に設定することができる。 なおこの内バリの高さ(B1)が1mmを超える場合には、破断位置が不安定になり、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内側寸法の精度管理が困難になる。

    さらに本実施形態では、ロータ素材(1)における余肉部(5)(6)の外周面と一端面(2a)との間の曲率半径(r3a)(r4a)は、余肉部(5)(6)の上記内周面側の曲率半径(r3)(r4)以下に調整するのが良い。 具体的には、「r3a≦r3」「r4a≦r4」の関係を満足させるのが好ましい。 この範囲に設定することで、図26に示すように余肉部(5)(6)を、例えばポンチングで除去した際に、一端面(2a)に残存する凸バリの高さ(B2)の平均値を好ましい値に調整することができる。 具体的には、凸バリの高さ(B2)を1mm以下に設定することができる。 さらに破断位置も安定させることができ、その結果凸バリの高さ(B2)のバラツキも小さくなるので、後工程での切削代管理が容易になり、センター孔(3)およびベーン溝(4)の寸法精度管理が容易になる。 なお内バリの高さ(B2)が1mmを超える場合には、破断位置が不安定になり、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内側寸法の精度管理が困難になる。

    本発明で用いる金型は、このような形状を有するロータ素材を成形金型であり、上金型の円形孔(35)に曲率半径(r3a)を、扁平孔(36)の曲率半径(r4a)の反転形状を有するとともに、下金型のセンターピン(16)の曲率半径(r3)の反転形状を、羽根部(13)に曲率半径(r4)の反転形状を有するものである。

    本実施形態においては、上記構成のロータ素材(1)を、上記第1実施形態と同様な鍛造加工装置を用いて製造するものである。

    すなわち鍛造素材(49)を、下金型(10)の装填孔(20)に装填し(第1実施形態としての図2A参照)、この状態から、図27Aに示すように、上金型(30)を降下させる。 こうして、上金型(30)が下死点まで降下することによって、図27Bに示すように、ロータ素材(1)の形状に成形される。

    その後、上金型(30)が上昇した後、上記と同様に、鍛造加工品としてのロータ素材(1)が取り出される。

    本実施形態において、上金型(30)が下死点まで降下した時点(型合わせ時)では、センターピン(16)の先端面(上端面)は、円形孔(35)の開口面(下端位置)に対し、一致または離間させるようにしている。 これにより既述したように、ロータ素材(1)におけるセンター孔(3)の一端面(3a)が、余肉部(5)の内部に到達せず、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも内側に配置されるとともに、ベーン溝(4)の一端面(4a)が、余肉部(6)の内部に到達せず、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも内側に配置される。

    ここで、型合わせ時におけるセンターピン(16)の先端面と、円形孔(35)の開口面と間隔(端面差D3)は、上記したセンター孔側の破断長(D3)に等しくて、0〜2mmに設定されるとともに、羽根部(13)の先端面と、扁平孔(36)の開口面との間隔(端面差D4)は、上記したベーン溝側の破断長に等しくて、0〜2mmに設定される(図25,26参照)。

    さらにセンターピン(16)の外周面と円形孔(35)の内周面との間のクリアランス(径差D5)は、上記したロータ素材(1)におけるセンター孔(3)の内周面と余肉部(5)の内周面との径差(D5)に等しくて、0.01〜0.1mm、好ましくは0.05〜0.1mmに設定されるとともに、羽根部(13)の外周面と扁平孔(36)の外周面との間のクリアランス(径差D6)は、上記したロータ素材(1)における扁平孔(36)の内周面と余肉部(5)の内周面との径差(D6)に等しくて、0.01〜0.1mm、好ましくは0.05〜0.1mmに設定されている(図25,26参照)。

    なお、余肉部外周の径差(D5)(D6)や破断長(D3)(D4)が大き過ぎる場合には、ポンチング加工において、余肉部(5)(6)を、精度良く除去できず、破断跡による悪影響が生じるおそれがある。 逆に径差(D5)(D6)が小さ過ぎる場合には、ポンチング加工前に、余肉部(5)(6)が不用意に脱落してしまうおそれがある。

    こうして得られた本第2実施形態のロータ素材(1)に対し、例えば上記と同様に、図14に示すポンチング装置を用いて、余肉部(5)(6)を除去して、ロータ(R)を製作するものである。

    本第2実施形態のロータ製造方法においては、上記第1実施形態の効果に加えてさらに、以下の効果を有するものである。

    まず本第2実施形態における鍛造加工品としてのロータ素材(1)においては、余肉部(5)(6)とセンター孔(3)およびベーン溝(4)との径差(D5)(D6)を小さく設定しているため、余肉部(5)(6)を所定の位置で精度良く的確に除去することができる。

    特に本実施形態においては、余肉部(5)(6)の破断長(D3)(D4)を薄く形成しているため、余肉部除去時の破断領域を少なくでき、底荷重で簡単に除去できて、生産効率を向上させることができる。

    さらに余肉部(5)(6)を除去する際に、パンチ(97)(98)により底荷重で余肉部(5)(6)を打ち抜くことができるため、高荷重が要因となって、ロータ(R)に有害な亀裂や破断が発生するのを有効に防止できて、高品質のロータ製品を製造することができる。

    その上さらに低荷重で加工できるため、パンチ(97)(98)自体の磨耗も軽減することができ、パンチ(97)(98)の耐久性、ひいてはポンチング装置の耐久性を一段と向上させることができる。

    また余肉部除去時の破断領域が少ないため、破断跡(破断面)も小さくなり、破断跡による悪影響を回避でき、例えば後工程において破断跡を仕上げるための仕上げ加工を行う必要もなく、工程数の削減により、生産性をより一層向上できるとともに、コストを削減することができる。

    しかも本実施形態においては、センター孔(3)およびベーン溝(4)の一端面(3a)(4a)が、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも内側に配置されているため、余肉部除去後の破断跡が、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内周面、つまりロータ(R)の内部に配置されるため、この点においても、破断跡による悪影響を防止でき、破断跡の後仕上げ加工を確実に省略でき、より一層生産性を向上させることができる。

    また本実施形態においては、余肉部(6)とベーン溝(4)との径差(D6)のうち、ロータ部外周端側の径差(D61)および内周端側の径差(D62)を、中間主要部の径差(D60)よりも厚く形成しているため、鍛造加工後、ポンチング加工前に、余肉部(6)が不用意に脱落するのを防止でき、例えば余肉部(6)が鍛造加工用金型内に残存する等の不具合を確実に防止でき、高い生産性を維持することができる。

    その上さらに本実施形態においては、余肉部(6)の両端部径差(D61)(D62)を厚く形成しているため、この部分における不用意に破断するを確実に防止でき、余肉部(6)の不用意な脱落をより確実に防止することができる。 すなわち、余肉部(6)の両端部は、脱落時に破断開始点となり易く、その両端部を厚く形成することによって、破断が発生し難くなり、不用意な脱落をより確実に防止することができる。

    なお本実施形態においては、ベーン溝(4)側の余肉部(6)の外周における径差(D6)を部分的に厚くするようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、センター孔(3)側の余肉部(5)の外周における径差(D5)を部分的に厚くするようにしても良い。

    〔実施例1〕
    図1および図2に示した鍛造用金型(10)(30)を用いて図3に示すロータ素材(1)を鍛造した。 前記ロータ素材(1)は、図4に示すアルミニウム合金製ロータ(R)を製作するための素材である。

    前記ロータ(R)において、外径:52mm、高さ:50mm、センター孔(3)の直径:10mm、ベーン溝(4)の数:5、溝幅:3mm、溝の深さ:15mm、オフセット寸法(U):10mmである。 さらに材料合金はA390を用いた。

    また下記の表1に示すように、前記鍛造用金型において、下金型(10)のセンターピン(16)と上金型(30)の円形孔(35)とのクリアランス(D5)を0.1mmとし、下金型(10)の羽根部(13)と上金型(30)の扁平孔(36)とのクリアランス(D6)も、上記と同様、0.1mmとした。

    さらに下金型(10)のセンターピン(16)と上金型(30)における円形孔(35)の開口面との間隔(破断長D3)を1.5mmとし、下金型(10)の羽根部(13)と上金型(30)における扁平孔(36)の開口面との間隔(破断長D4)も、上記と同様、1.5mmとした。

    そして、400℃に加熱した鍛造素材(W)を下金型(10)に装填し、以下の成形荷重を付与してロータ素材(1)を形成した。 この鍛造中に第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)が増大し、最終荷重はそれぞれの初期荷重の1.5倍であった。

    主荷重(F)=325MPa
    第1副荷重(F1)の初期荷重:32.9MPa(4.0kg/mm 2
    第2副荷重(F2)の初期荷重:44.1MPa(4.5kg/mm 2
    こうして得られたロータ素材(1)を、上記図14に示すポンチング装置を用いて、余肉部(5)(6)を除去してロータ(R)とした。

    鍛造素材(W)に対するロータ(R)の材料歩留まり(ロータ(R)の重量/鍛造素材(W)の重量×100)は82.9%であった。

    〔実施例2〕
    表1に示すように、余肉部(5)(6)の破断長(D3)(D4)を「0」に設定した以外は、上記実施例1と同様に、ロータ(R)を製作した。
    〔比較例1〕
    表1に示すように、余肉部(5)(6)の破断長(D3)(D4)を「−2mm」に設定した以外は、上記実施例と同様に、ロータ(R)を製作した。
    〔比較例2〕
    表1に示すように、余肉部(5)(6)の破断長(D3)(D4)を「−2mm」に設定し、余肉部外周のクリアランス(D5)(D6)を「2mm」に設定した以外は、上記実施例と同様にロータ(R)を製作した。
    〔評価〕
    表1に示すように、実施例1,2の製法では、鍛造加工時に、余肉部(5)(6)が不用意に破断したり脱落することがなく、滞りなく、加工することができた。

    さらに実施例1,2の製法では、ポンチング加工後(余肉部除去後)における破断面が小さくて、さらに破断跡(破断面)が、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内部に形成されていた。 従って、破断跡を仕上げ加工せずとも、何ら問題はないと思われる。

    これに対し、比較例1の製法では、鍛造加工時に、余肉部(5)(6)が不用意に破断してしまい、スムーズに加工することができなかった。

    また比較例2の製法では、ポンチング加工後における破断面が大きく、しかも破断跡(破断面)が外部に突出するように配置されていた。 従って実際に使用する場合には、この破断跡を、仕上げ加工により除去する必要があると思われる。
    〔試験例1〜7〕
    センター孔(3)側の曲率半径(r3)(r3a)が、表2に示す値となるように調整した以外は、上記実施例1と同じ条件で、ロータを作製した。 そして内バリ、凸バリ(図26参照)についての評価を行った。 その結果を表2に併せて示す。

    上表から明らかなように、曲率半径(r3)(r3a)を特定の値に調整したものは、内バリおよび凸バリの状態が安定していた。

    なおベーン溝(4)側の曲率半径(r4)(r4a)についても、上記と同様な試験を行ったところ、同様の評価を得ることができた。

    本願は、2008年6月24日付で出願された日本国特許出願の特願2008−164327号、および2009年3月2日付で出願された日本国特許出願の特願2009−47963号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。

    ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではなく、ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、この発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。

    本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものであるが、この開示は本発明の原理の実施例を提供するものと見なされるべきであって、それら実施例は、本発明をここに記載しかつ/または図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。

    本発明の図示実施形態を幾つかここに記載したが、本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではなく、この開示に基づいていわゆる当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を有するありとあらゆる実施形態をも包含するものである。 クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施例に限定されるべきではなく、そのような実施例は非排他的であると解釈されるべきである。

    本発明のロータの製造方法は、コンプレッサー等のロータを製造する際に適用することができる。

    1:ロータ素材2:ロータ部2a:一端面3:センター孔(シャフト孔)
    3a:一端面4:ベーン溝4a:一端面5,6:余肉部5a:閉塞部5b:周壁部7:亀裂13:羽根部(ベーン溝形成用型)
    97,98:打ち込みパンチD3,D4:端面差D5,D6:径差R:ロータT5:閉塞部肉厚W:鍛造素材

    QQ群二维码
    意见反馈