【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用空調装置等に用いられるスクロール型圧縮機に関し、特に、圧縮機の性能向上およびスクロール部材の耐久性向上を目的としたスクロール部材の形状に関する。 【0002】 【従来の技術】従来のスクロール型圧縮機のスクロール部材は、図6のごとく、一般的に固定スクロール部材1 と可動スクロール部材2とから構成されている。 固定スクロール部材1および可動スクロール部材2は、略円盤状の板体(便宜上図示省略)と、この板体の一面に形成された渦巻体10、20とからなる。 固定スクロール部材1と可動スクロール部材2とは互いの渦巻体10、2 0が噛み合うように組合わされている。 そして、可動スクロール部材2を固定スクロール部材に接触させながら円軌道運転を行わせることにより、両スクロール部材1、2の間には対をなす圧縮室31、32が形成され、 また、この圧縮室31、32が渦巻体10、20の中心部に移動し、この移動に伴い圧縮室31、32の容積が減少し、これにより冷媒ガスが圧縮されるように構成されている。 【0003】この渦巻体10、20を形成する曲線として各種の伸開線が考えられるが、通常は取り扱いの容易な円の伸開線であるインボリュート曲線が用いられている。 但し、巻始部分(中心側端部)は、大きな応力が生じるので、この部分の強度を増すため、渦巻体の壁厚を増すとともに先端部が先鋭にならないよう丸みを持たせた形状としている。 このため適当な伸開角度位置に伸開変更点を定め、この伸開変更点より外側端よりをインボリュート曲線とし、伸開変更点より中心側端よりを別の曲線としている。 また、スクロール部材1、2は、一般にアルミニウム合金等の鋳物により素材成形され、その後に切削等の機械加工により仕上げが行われるのであり、渦巻体10、20の内壁および外壁は、エンドミル加工されていたが、従来のスクロール部材1、2の場合、応力が特に大きくなる中心側端部は、強度を更に向上させるため、他の部分と異なるエンドミルの歯具を用い、図8のごとく、壁面の根元角部5に、他の部分の根元角部よりも補強された補強部として、他の部分よりも大きなRが付けられていた。 このため、中心側端部の壁面の加工精度は他の部分に比べ悪くなる。 従って、この中心側端部については、加工公差により両渦巻体が干渉し、過大な摩耗や接触力が生じる恐れがある。 そこで、 この干渉を回避するために逃げが設けられていた。 また、この逃げとしては、図7のように中心側端部の内壁に削り取り部4が設けられていた。 【0004】図9は、第1スクロール部材(例えば、固定スクロール部材)1の渦巻体10に対して第2スクロール部材(例えば、可動スクロール部材)2の渦巻体2 0を公転半径分隔てて配置した状態を示している。 【0005】この図9において、渦巻体10についての壁面上の点a 1とb 1との間の伸開角度A 1 、および渦巻体20についての壁面上の点a 2とb 2との間の伸開角度A 2が、渦巻体10、20において応力が大きくなる部分である。 そして、前述のごとくそれぞれの壁面の根元角部5(図8参照)には、他の部分よりも大きなRが付けられている。 尚、この図面において、渦巻体10の点a 1 、b 1から法線L 11 、L 12を引いて渦巻体20が交差する点a 21 、b 21は、このスクロール部材1、2が運転された場合、点a 1 、b 1が理論上それぞれ接触する相手方の点となる。 同様に、渦巻体20のa 2 、b 2から法線L 21 、L 22を引いて渦巻体10が交差する点a 11 、b 11 は、このスクロール部材1、2が運転された場合、点a 2 、b 2が理論上それぞれ接触する相手方の点となる。 このように、この図においては、一方の渦巻体の内壁の任意の点から法線を引くと、この法線が交わる相手方の内壁上の点は、互いの接触が行われる点を表すことになる。 【0006】ところで、前記A 1 ,A 2の領域においては、上記のように根元角部に他の部分より大きなRが付けられているので、加工精度が低下する。 そこで、この両領域A 1 ,A 2を包含するDの領域において、図9に点線で示すように(あるいは図7に斜視図として示すように),第2スクロール部材2の渦巻体20の内壁側に逃げとして削り取り部4が設けられていた。 尚、この削り取り部4は、図7および図9上では、図面上での理解を容易にするために、実際の寸法よりも誇張して大きく描かれている。 図8は、図9における点線部分までを削り取った後の第1スクロール部材1の渦巻体10の断面形状を示すもので、この部分の渦巻体20の壁厚は、点線部分まで削り取られることにより、その分理想的形状からは薄く仕上げられることになり、加工精度の低下に基づく加工公差をこの削り取り部4で逃げている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上記従来の圧縮機において、両渦巻体10、20相互の接触状態は、前記加工精度の悪い部分、即ち、他の部分の根元角部より補強された補強部として、他に比し大きなRが付けられた部分が双方の渦巻体に現れる領域、一方の渦巻体に現れる領域、どちらの渦巻体にも現れない領域の3通りに分類される。 図9において、Bは、前記Rが施された加工精度の悪い部分が両渦巻体に現れる領域であり、両渦巻体1 0、20の加工公差が重なって生じる。 また、C 1 ,C 2 は、Rが施された加工精度の悪い部分が一方の渦巻体1 0、20に現れる領域であって、片方の加工公差に基づく誤差のみが生じる。 ところが、逃げを構成する削り取り部4は、これらB,C 1 ,C 2を包含するDの範囲について、一定の逃げ寸法で構成されていた。 このため、一方側の公差のみが現れる領域C 1 ,C 2では、逃げが過大となり両渦巻体間の隙間が過剰に大きくなるため、圧縮機の性能が低下していた。 また、余分な削り取りがあることにより渦巻体の耐久性も劣化する傾向にあった。 【0008】本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたもので、その課題は、スクロール部材を形成する渦巻体の中心側端部における加工公差に対する逃げを適正化することにより、圧縮機の性能向上、スクロール部材の耐久性向上を図ることにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明では、互いに組み合わされた二つの渦巻体において、応力が大きくなる根元角部には、他の部分の根元角部より補強された補強部が設けられており、一方の渦巻体にのみ前記補強部が施された部分で両渦巻体が接触する領域には第1逃げを、両渦巻体に補強部が施された部分で両渦巻体が接触する領域には、前記第1逃げより大きな逃げを有する第2逃げをそれぞれ設けたことを特徴とする。 ここで、逃げとは、応力が大きくなる中心側端部における根元角部に、他よりも補強された補強部を設けたことにより生ずる加工公差により、両渦巻体が接触点において干渉するのを避けるために、両渦巻体または一方の渦巻体に設ける逃げのことをいう。 【0010】このように形成することにより、従来のような余分な逃げが回避され、両渦巻体間には必要最小限の合理的な逃げが形成されるので、圧縮機の性能向上が図れる。 また、渦巻体には余分な削り取りが回避されるので、渦巻体の耐久性向上が図れる。 【0011】上記第1及び第2逃げは、両渦巻体にどのように分散して設けても、あるいは、一方の渦巻体にのみ設けてるようにしてももよいが、請求項2記載の発明のごとく、それぞれの逃げを両方に設けた削り取り部で構成すると、各渦巻体に対する削り取り代が小さくなるので、渦巻体の耐久性がより向上する。 しかし、このように各逃げを両渦巻体に設けた削り取り部で構成すると、各渦巻体の伸開線が3段階に変化し、その形状が複雑になり、加工が繁雑になる。 そこで、請求項3記載の発明のごとく、第1逃げを一方の渦巻体に加工し、第2 逃げを他方の渦巻体に加工するようにすると、削り取りが両渦巻体に分散されることにより渦巻体の耐久性が向上するとともに、各渦巻体の伸開線が2段階の変化となり、加工が容易となる。 【0012】また、請求項4記載の発明のごとく、第1 逃げおよび第2の逃げを、一方の渦巻体にのみ設けた削り取り部で構成すると、他方の渦巻体の伸開線が段階的に変化しないので、加工の面では最も容易となる。 また、第1および第2逃げの形状は、請求項5記載の発明のごとく、第1逃げおよび第2逃げを構成する削り取り部の端部を滑らかな線で繋ぐと、削り取り部の端部エッジへの応力集中がなくなり、渦巻体の耐久性が向上する。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した実施の形態について図1から図5に基づいて説明する。 尚、本発明に係るスクロール型圧縮機は、両スクロール部材の形状を除いては一般のスクロール型圧縮機と同じであるので、以下の説明においては本発明に係る渦巻体の形状部分を中心に説明する。 また、以下の各図面において先に説明した従来のスクロール部材と同一の部分には、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化するものとする。 【0014】また、各実施の形態を説明する前に、各実施の形態に共通する本発明の基本的思想について述べる。 先ず、本発明は、従来一般のものと同様、スクロール部材の渦巻体10、20の中心側端部において、他の部分に比し渦巻体の受ける応力が大きくなる部分の根元角部5には、他の部分の根元角部より補強された補強部を形成するために、他の部分の根元角部より大きなRを設けている。 次に、この部分5の壁面のエンドミル加工に際しては、他と異なる歯具を用いることから、加工精度の悪化が避けられないのが現状であり、この加工公差により両渦巻体10、20が干渉するのを避けるために、従来のもと同様に加工公差を吸収するための逃げを設けるものである。 従って、この逃げを設けること自体は従来と同じである。 【0015】次に、この逃げの設け方であるが、本発明の特徴はこの点に現れる。 従来の場合は、先にも説明したように、前記Rが施され加工精度の悪くなった部分が、相互に接触すべき渦巻体の一方のみに現れる領域C 1 ,C 2と、双方に現れる領域Bとの二つの領域にわたり、一定寸法の逃げを構成していたが、以下に記載する各実施の形態においては、この二つの領域C 1 ,C 2とB とを区別し、適正な寸法の逃げとしている。 即ち、各実施の形態においては、前記Rが施され加工精度の悪くなった部分が、相互に接触すべき渦巻体10,20の一方のみに現れる領域C 1 ,C 2には、一方の渦巻体10または20の加工公差を吸収できる程度の小さな寸法の第1 逃げを構成し、前記Rが施され加工精度の悪くなった部分が、相互に接触すべき渦巻体10、20の双方に現れる領域Bには、両方の渦巻体10、20の加工公差を吸収する程度の大きさ(約2倍)の第2逃げを構成することにより、第1逃げにおける過剰な寸法の逃げを無くしたものである。 また、このような第1逃げおよび第2逃げは、一方または両方の渦巻体10、20に設けた削り取り部により構成されており、各実施の形態により削り取り部の形成の仕方が異なるが、何れの実施の形態も、 渦巻体10、20の根元角部5に大きなRを設けることにより渦巻体10、20の耐久性向上を図るとともに、 第1逃げおよび第2逃げを適正な寸法とすることにより圧縮機の性能向上を図るものである。 以下各図面に従い、各実施の形態の特徴点を中心に説明する。 尚、各図面において、第1逃げを構成する削り取り部41〜4 4、51、52、61、62、71、72、81、8 2、並びに第2逃げを構成する45、46、53、6 3、73、74、83は、図面上での理解を容易にするために、それぞれ実際のものよりも誇張して大きく描かれている。 【0016】図1は、本発明の第1の実施の形態であって、前記第1逃げおよび第2逃げをそれぞれ両渦巻体1 0、20に設けた例を示す。 図1においては、渦巻体1 0、20の中心側端部において、応力が大きくなるのは、従来のものと同様a 1 〜b 1およびa 2 〜b 2であって、この部分の根元角部には、従来のものと同様、前記図8のように、他に比し大きなRが形成されている。 尚、この点については、後記する各実施の形態においても同様である。 また、本実施の形態においては、第1逃げがC 1およびC 2の領域に形成され、第2逃げがBの領域に形成される。 この点については後記する実施の形態においても同様である。 ところで、本実施の形態においては、渦巻体10の内壁a 1 、b 11間およびb 1 ,a 11 、 並びに渦巻体20の内壁a 21 ,b 2間およびb 21 ,a 2間に削り取り代の少ない削り取り部41、42、43および44が設けられており、これら削り取り部41、4 2、43および44により第1逃げが構成されている。 また、渦巻体10の内壁b 11 、b 1間および渦巻体20 の内壁b 2 、b 21間に削り取り代の多い削り取り部4 5、46が設けられており、これら削り取り部45、4 6により第2逃げが構成されている。 上記形態の渦巻体10、20を有するスクロール部材は、アルミニウム合金鋳物により素材が形成され、この素材を切削加工等して製作されるが、渦巻体10、20の内壁、内壁の根元角部、内壁の削り取り部41〜46および外壁は、エンドミル加工により同時に切削されるのであり、それ以外の部分の切削のときとは歯具を変えて行われる。 これら削り取り部41〜46において、加工公差を無視したときの元の伸開線は、この図面における点線となる。 従って、この点線と実線との差分が削り取り代となる。 【0017】この削り取り代は、対応する削り取り部の削り取り代を合算した値が、加工公差と略同一となるように設定されればよい。 本実施の形態においては、渦巻体10側に設ける削り取り部41、42と渦巻体20側に設ける削り取り部43、44とが同一とされ、また、 渦巻体10側に設ける削り取り部45と渦巻体20側に設ける削り取り部46とが同一とされているが、両渦巻体10、20の削り取り代を両渦巻体10、20にどのように配分して設けてもよく、特に、この実施の形態に拘束されるものではない。 また、加工公差は領域Bが領域C 1 ,C 2に対し約2倍となるので、第1逃げにおける削り取り部41〜44の削り取り代が第2逃げにおける削り取り部45、46の削り取り代の約半分となる。 【0018】この実施の形態の場合、両渦巻体10、2 0は、C 1 ,C 2の領域では前記第1逃げを介在させて最接近または接触しながら、また、Bの領域では第2逃げを介在させて最接近または接触しながら円軌道運転を行う。 従って、前記C 1 ,C 2の領域において無駄な逃げが無く、加工公差に対応した必要最小限の逃げが形成されるため、圧縮機の性能が向上する。 また、削り取り部は両渦巻体に分散形成されるため、両渦巻体それぞれの削り取り代が少なくなり、従って、渦巻体の壁厚の低下が少なくなり、渦巻体10、20の耐久性が向上する。 尚、両渦巻体10、20について、第1逃げを構成する削り取り部41〜44、および、第2逃げを構成する削り取り部45、46で伸開線を段階的に変化させる必要があるため、次に記す第2実施の形態に比較すれば製作が面倒となる。 【0019】図2は、第2の実施の形態であって、第1 逃げおよび第2逃げを構成する削り取り部の形成態様が異なる。 図2において、第1逃げは、渦巻体10のa 1 ,b 1 1間に形成された削り取り部51およびb 1 ,a 11間に形成された削り取り部52から構成され、渦巻体20には何らの加工も施されない。 尚、この削り取り部51、52のそれぞれの削り取り代は、前記削り取り部41、43の削り取り代を合算した寸法(または、前記削り取り部42、44の削り取り代を合算した寸法)となる。 一方、第2逃げは、渦巻体20のb 2 ,b 21間に形成された削り取り部53から構成され、渦巻体10側には何らの加工も施されない。 尚、この削り取り部53 の削り取り代は、前記削り取り部45と46の削り取り代を合算した寸法となる。 【0020】この第2の実施の形態の場合、各渦巻体に対しては、同一削り取り代の削り取り部を設けるだけでよいので、前記第1実施の形態の場合に比し、各渦巻体を構成する伸開線の変化が少なくなり、製作が容易となる。 尚、削り取り部を設ける渦巻体を上記と逆にし、対称的にそれぞれの削り取り部を設けてもよい。 即ち、第1逃げを構成する削り取り部51、52を渦巻体20側のa 21 ,b 2間およびb 21 ,a 2間に形成し、第2逃げを構成する削り取り部53を渦巻体10側のb 11 ,b 1間に形成しても上記と同様の効果が得られる。 【0021】図3は、第3の実施の形態を示すもので、 逃げを構成する削り取り部を渦巻体20側にのみ形成したものである。 即ち、第1逃げを構成する削り取り部6 1、62は、渦巻体20の内壁a 21 、b 2間およびb 21 ,a 2間に形成されている。 また、この削り取り部61、62の削り取り代は、前記第2実施の形態の削り取り部51、52と同一である。 第2逃げを構成する削り取り部63は、渦巻体20の内壁b 2 ,b 21間に形成されている。 この削り取り部63の削り取り代は、前記第2実施の形態の削り取り部53と同一である。 この実施の形態の場合は、渦巻体20にのみ削り取り部61、 62、63が構成されており、一方の渦巻体10には全く削り取り部を設ける必要がないので、渦巻体10の伸開線が単純となり製作が容易となる。 尚、削り取り部を渦巻体20に設けず渦巻体10に対称的に設けるごとくしても、上記と同一の効果が得られる。 【0022】図4は、第4の実施の形態を示すもので、 第1逃げを構成する削り取り部を渦巻体20側のみに、 また、第2逃げを構成する削り取り部を渦巻体10側と渦巻体20側とに配分して設けたものである。 図4において、71、72は、第1逃げを構成する削り取り部であり、渦巻体20のa 21 ,b 2間およびb 21 、a 2間に形成されている。 また、その削り取り代は、前記第3実施の形態の削り取り部61、62と同一である。 73、7 4は、第2逃げを構成する削り取り部であり、渦巻体2 0のb 2 ,b 2 1間および渦巻体10のb 11 ,b 1間に形成されている。 その削り取り代は、前記削り取り部71、 72と同一である。 従って、第1逃げを構成する削り取り部71、73と第2逃げを構成する削り取り部73とは一連に構成される。 従って、この実施の形態の場合は、渦巻体20の伸開線の形状が単純化され、製作が容易となる。 また、第1逃げを構成する削り取り部71、 72と第2逃げを構成する削り取り部73との間に段部が形成されないので、渦巻体20の強度も向上する。 また、第2逃げを構成する削り取り部73、74の削り取り代が両渦巻体に分散されるので、渦巻体の強度低下も少なくなる。 尚、これら削り取り部の設け方は、渦巻体10と20との間で対称的に移し替えても同じ効果が得られる。 【0023】図5は、第5の実施の形態を示すもので、 第3の実施の形態において、各削り取り部の端部をスムースな曲線で接続したものある。 即ち、第1逃げを構成する削り取り部81、82は、図3における削り取り部61、62に対応し、第2逃げを構成する削り取り部8 3は、図3における削り取り部63に対応している。 そして、各削り取り部81〜83の端部は小さい曲線81 1、812、821、822により滑らかに接続されている。 従って、削り取り部81〜83の端部に作用する応力集中が低減され、渦巻体20の強度が向上する。 尚、これら削り取り部の設け方は、渦巻体10と20との間で対称的に移し替えても同じ効果が得られる。 【0024】 【発明の効果】請求項1〜5記載の発明によれば、従来のような余分な逃げが回避され、両渦巻体間には合理的な逃げが形成されるので、圧縮機の性能向上が図れる。 また、渦巻体の耐久性向上が図れる。 【0025】請求項2記載の発明によれば、上記効果に加えて、上記第1逃げ及び第2逃げそれぞれを両渦巻体に設けた削り取り部で構成しているので、各渦巻体に対する削り取り代が小さくなり、渦巻体の耐久性がより向上する。 請求項3記載の発明によれば、第1逃げを一方の渦巻体に加工し、第2逃げを他方の渦巻体に加工しているので、削り取りが両渦巻体に分散されることにより渦巻体の耐久性が向上するとともに、各渦巻体の伸開線が2段階の変化となり、加工が容易となる。 請求項4記載の発明によれば、第1逃げおよび第2逃げを一方の渦巻体にのみ設けたので、他方の渦巻体の伸開線が段階的に変化させる必要がなく、加工がより容易となる。 請求項5記載の発明によれば、第1逃げおよび第2逃げを構成する削り取り部の端部を滑らかな線で繋いだので、削り取り部の端部エッジへの応力集中がなくなり、渦巻体の耐久性がより一層向上する。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1の実施の形態に係る渦巻体の中心側端部の構成略図である。 【図2】本発明の第2の実施の形態に係る渦巻体の中心側端部の構成略図である。 【図3】本発明の第3の実施の形態に係る渦巻体の中心側端部の構成略図である。 【図4】本発明の第4の実施の形態に係る渦巻体の中心側端部の構成略図である。 【図5】本発明の第5の実施の形態に係る渦巻体の中心側端部の構成略図である。 【図6】従来一般のスクロール型圧縮機におけるスクロール部材の構成略図である。 【図7】図6に示すスクロール部材の中心側端部の斜視図である。 【図8】図7のVIIIーVIII線断面図である。 【図9】従来のスクロール型圧縮機のスクロール部材に係る渦巻体の中心側端部の構成略図である。 【符号の説明】 1…固定スクロール部材、2…可動スクロール部材、3 a,3b…圧縮室、4…削り取り部、5…根元角部、1 0…固定スクロール側渦巻体、20…可動スクロール側渦巻体、41〜44…第1の実施の形態における第1逃げを構成する削り取り部、45、46…第1の実施の形態における第2逃げを構成する削り取り部、51、52 …第2の実施の形態における第1逃げを構成する削り取り部、53…第2の実施の形態における第2逃げを構成する削り取り部、61、62…第3の実施の形態における第1逃げを構成する削り取り部、63…第3の実施の形態における第2逃げを構成する削り取り部、71、7 2…第4の実施の形態における第1逃げを構成する削り取り部、73、74…第4の実施の形態における第2逃げを構成する削り取り部、81、82…第5の実施の形態における第1逃げを構成する削り取り部、83…第5 の実施の形態における第2逃げを構成する削り取り部、 a 1 ,b 1 …固定スクロール側渦巻体の中心側端部において応力が大きくなる境界点を示す、a 2 ,b 2 …可動スクロール側渦巻体の中心側端部において応力が大きくなる境界点を示す、L 11 ,L 12 …固定スクロール側の境界点a 1 ,b 1から引いた法線、L 21 ,L 22 …可動スクロール側の境界点a 2 ,b 2から引いた法線、a 21 ,b 21 …法線L 11 ,L 12が可動スクロール側渦巻体の壁面を横切る点、a 11 ,b 11 …法線L 21 ,L 22が固定スクロール側渦巻体の壁面を横切る点、C 1 ,C 2 …一方の渦巻体側のみに大きなRが付けられている状態で両スクロール部材が接触する領域、B…両渦巻体に大きなRが付けられている状態で両スクロール部材が接触する領域、D…C 1 , C 2 ,Bを含む領域。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 寛之 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 (72)発明者 久永 滋 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 (72)発明者 小川 幸男 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 (72)発明者 竹本 剛 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 |