【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は歯車ポンプ用の外歯歯車と内歯歯車のプレス加工方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】車両に搭載されるオイルポンプとして歯車ポンプがある。 この歯車ポンプ用の外歯歯車と内歯歯車は、製作が容易で比較的安価なため、多くは焼結金属により加工されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、エンジンの高性能化及び高馬力化に伴ってオイルポンプのポンプ圧力を高める必要があり、外歯歯車及び内歯歯車の材料を焼結金属から鉄材へ変更する要請が高まっている。 これは、焼結金属の場合は、ポンプ圧力の上昇とともにオイルが浸透して圧縮能力の低下を来すためである。 ところが、外歯歯車及び内歯歯車を素材から切削して製作する場合は、大幅なコスト高となる問題点がある。 本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、汎用の順送プレス機により加工して、安価な歯車ポンプ用の外歯歯車と内歯歯車を加工するプレス加工方法を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための本発明の歯車ポンプ用の外歯歯車と内歯歯車のプレス加工方法は、プレス加工タイミングに同期して各加工位置に順送される材料に対して、パイロット穴を打ち抜く第1プレス加工工程と、外周形状を打ち抜いて歯車ポンプ用の外歯歯車を形成する第2プレス加工工程と、前記外歯歯車が転動してポンプ作用をなす内歯歯車形のポンプ室形状を、前記外歯歯車が打ち抜かれた歯形形状穴の周囲に打ち抜き形成する第3プレス工程と、該ポンプ室形状が打ち抜かれた穴形状の周囲を打ち抜いて歯車ポンプ用の内歯歯車を形成する第4プレス工程とを行うことを特徴とする。 【0005】 【作用及び発明の効果】上記プレス加工方法によれば、 歯車ポンプ用の外歯歯車と内歯歯車を加工するためのプレス加工工程を、パイロット穴を打ち抜く第1プレス加工工程、外歯歯車を形成する第2プレス工程、ポンプ室形状を打ち抜く第3プレス工程及び内歯歯車を形成する第4プレス工程に分割し、プレス加工タイミングに同期して各加工位置に順送される材料に対してプレス加工を行う。 このプレス加工方法は、第2プレス工程で外歯歯車を打ち抜いた歯形形状穴の周囲に、第3プレス工程で前記外歯歯車が転動してポンプ作用をなす内歯歯車形のポンプ室形状を打ち抜くようにしたから、材料の歩留まりが向上するとともに、汎用の順送プレス機により一貫的にかつ連続的に加工できるため、コストの低減を図って安価な外歯歯車及び内歯歯車を提供することができる優れた効果を有する。 【0006】 【実施例】 (第1実施例)本発明の第1実施例を添付図面に基づいて説明する。 図1(a),(b)は歯形をトロコイド曲線として、本発明方法によりプレス加工された歯車ポンプ用の外歯歯車1と内歯歯車2の正面図である。 図2はこの外歯歯車1と内歯歯車2を加工する順送金型の下型10の平面図である。 該下型10はプレス機械の下部ダイセット(図示せず)に装着されている。 加工位置(以下ステージという)は、順に第1ステージ(A)から第5ステージ(E)が設けられている。 コイル状のフープ材又は切り板材M(板厚8〜15mm)が、プレス加工タイミングに同期して前記各ステージに順送される。 【0007】第1ステージ(A)では、パイロット穴明け加工が行われる。 パイロット穴3は、所定の順送ピッチを確保するとともに、材料Mの振れを矯正するためのものである。 第2ステージ(B)では、外歯歯車1の中心穴21の打ち抜き加工が行われる。 中心穴21の打ち抜き加工に用いられるパンチの径と雌ダイスに形成された中心穴径とのクリアランスは、0.06〜0.08m mとする。 このとき材料Mに明けられる中心穴21の径は、パンチの径より0.03〜0.05mm程度マイナスになる。 また、剪断面の深さは材料Mの板厚に対して75〜85%となり、残りは破断面となって中心穴部にバリが一切発生しない。 このため、バリ除去のための工程を別途設ける必要がない。 【0008】次に、第3ステージ(C)において上記第2ステージ(B)で形成された中心穴21を基準として、外周にトロコイド曲線により形成された歯形形状3 1を打ち抜いて外歯歯車1を形成する。 順送された材料Mはパイロット穴3により位置決めされる。 歯形パンチ32が下降して中心ピン33が中心穴21に嵌入し、打ち抜き加工が開始される。 材料Mは歯形雌ダイス34の入り口に形成された15〜18°の上テーパ部34aを通過して、ストレート部34b、15〜18°の下テーパ部34cへ進んで、歯形パンチ32の下死点時には逃がし部34dに到達する。 この段階で中心穴21の外周には歯形形状31が形成されるとともに、外周部全体に下側が小径となるようなテーパが形成される。 【0009】また、材料Mに歯形形状31が打ち抜かれる際には、材料Mの中心方向に向かう大きな圧縮力が作用し、中心穴21を収縮させようとするが、中心ピン3 3に嵌入しているため中心穴21の寸法が変化することはない。 歯形パンチ32の下死点時において、外周の歯形形状31が打ち抜かれて形成された外歯歯車1は中心ピン33に強い摩擦力により食い付きが発生しているが、歯形パンチ32の上昇に伴い図示しない圧力装置の押圧力により押し下げられて、下型10の下方へ抜け落ちる。 【0010】第4ステージ(D)では、上記第3ステージ(C)で外歯歯車1の歯形形状31が打ち抜かれた歯形形状穴35の周囲に、トロコイド曲線よりなる内歯歯車2の歯形形状41を打ち抜く。 該歯形形状41は、上記した外歯歯車1が転動してポンプ作用をなすポンプ室の形状となるものである。 従って、歯形形状穴35の1 個の歯形35aと、打ち抜かれる歯形形状41の1個の歯形41aとが、材料Mの順送方向の中心線CL上で内接状に整合するように、歯形雌ダイス42が下型10に配設されている(図2参照)。 尚、必ずしも歯形35a と歯形41aは、中心線CL上で内接状に整合する必要はなく、歯形形状穴35の周囲に歯形形状41を打ち抜けばよい。 【0011】歯形パンチ43が下降して、歯形ピン44 が歯形形状穴35に嵌入し、該歯形形状穴35の内周を仕上げながら打ち抜き加工が開始される。 材料Mは歯形雌ダイス42の入り口に形成された15〜18°の上テーパ部42aを通過して、ストレート部42b、15〜 18°の下テーパ部42cへ進んで、歯形パンチ43の下死点時には逃がし部42dに到達する。 この段階で歯形形状穴35の周囲には歯形形状41が形成されるとともに、外周部全体に下側が小径となるようなテーパが形成される。 歯形パンチ43の下死点時において、歯形形状41が打ち抜かれた材料Mの抜きかすは、歯形ピン4 4に強い摩擦力により食い付きが発生しているが、歯形パンチ43の上昇に伴い図示しない圧力装置の押圧力により押し下げられて、下型10の下方へ抜け落ちる。 【0012】第5ステージ(E)では、上記第4ステージ(D)で打ち抜かれた歯形形状穴45の周囲に、該歯形形状穴45と同心の外周円を打ち抜いて内歯歯車2を形成する。 この場合も、歯形ピン(図示せず)が歯形形状穴45に嵌入して、該歯形形状穴45の内周を仕上げながら打ち抜き加工が開始され、打ち抜かれた内歯歯車2は下型10の下方へ落ちる。 【0013】上記第3ステージ(D)で打ち抜かれた外歯歯車1及び第5ステージ(E)で打ち抜かれた内歯歯車2は、図示しないプレス機によりサイジング加工を施され、打ち抜き加工時に生じた外周部のテーパをストレートに矯正したりして、±0.3〜0.1mm程度の寸法精度に仕上げられる。 この場合、内歯歯車1及び外歯歯車2は打ち抜き加工を施されて加工硬化を生じているため、材料Mの材質によってはサイジング加工前に焼鈍を必要とする場合がある。 また、必要であればサイジング加工後に切削や研磨加工を行って、所定の寸法精度を確保する。 【0014】(第2実施例)図5(a),(b)は歯形をインボリュート曲線として、本発明方法によりプレス加工された歯車ポンプ用の外歯歯車101と内歯歯車1 02の正面図である。 上記第1実施例に説明した第3ステージ(C)と第4ステージ(D)に配設する雌ダイス及び歯形パンチ等を、インボリュート曲線により所定の歯形形状に形成するとともに、第1実施例に準じたプレス加工を実行することにより、外歯歯車101及び内歯歯車102を打ち抜き加工することができる。 【0015】上記第1及び第2実施例は、順送プレス機により自動的に歯車ポンプの内歯歯車及び外歯歯車を形成するもので、しかも外歯歯車を打ち抜いた歯形形状穴の周囲に、内歯歯車の歯形形状を打ち抜くものであるため、材料の歩留まりを著しく高めることができる。 また、歯形雌ダイスに15〜18°のテーパ部を設けた精密プレス打ち抜き加工を行うことにより、破断面のない滑らかで寸法精度のよい歯形形状を形成でき、切削や研磨加工を殆ど必要としない等の利点がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】トロコイド曲線により形成された外歯歯車と内歯歯車の正面図である。 【図2】順送金型の下型の平面図である。 【図3】第3ステージのプレス金型の概略を示す断面図である。 【図4】第4ステージのプレス金型の概略を示す断面図である。 【図5】インボリュート曲線により形成された外歯歯車と内歯歯車の正面図である。 【符号の説明】 1,101 外歯歯車 2,102 内歯歯車 3 パイロット穴 31,41 歯形形状 35,45 歯形形状穴 |