【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明はスクロール流体機械のハネ材料およびその製作方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】図6はスクロール流体機械の一種であるスクロール圧縮機である。 このようなスクロール流体機械のスクロールハネは要求される強度から鋳鉄または鋼で製作されることが多く、要求精度が高いため、主にエンドミルなどの切削による加工を施して使用される場合が多い。 実際にはねずみ鋳鉄または球状黒鉛鋳鉄製材料と主にエンドミルなどの切削による仕上げ加工の組合せによる従来例が多い。 【0003】図3に示すようにスクロールハネはその形状が複雑で、要求精度が高いため、主にエンドミルなどの切削による加工の時間が極めて長い傾向にある。 従って、スクロール流体機械を安価で製作するためには、スクロールハネを安価に製作することが必要である。 【0004】スクロールハネの加工時間を短縮するために、主としてエンドミルなどの切削加工工具の切削早さを向上する必要があるが、その手段として主としてエンドミルなどの切削加工工具の1回転当たりの加工量を増加させる方法と主としてエンドミルなどの切削加工工具の1回転の早さを増加させる方法が一般に考えられる。 【0005】主としてエンドミルなどの切削加工工具の1回転当たりの加工量を増加させると、加工精度が低下するため、高い精度を要求されるスクロールハネの加工においては、主としてエンドミルなどの切削加工工具の1回転当たりの加工量を増加することは困難であり、主としてエンドミルなどの切削加工工具の1回転の早さを増加させる事により切削早さを向上させ、加工時間および工数を短縮しなければならない。 ところが、主としてエンドミルなどの切削加工工具の1回転の早さを向上させると工具寿命が短くなり、主としてエンドミルなどの切削加工工具交換に要する時間および工数がかかり生産性が低下する。 一般に、加工精度と加工時間バランスを取ることがスクロールハネを安価に製作するポイントとなっている。 また、鋳物を使用する場合でも、材料を仕上げ形状に近い形状で製作することが困難でありスクロールハネを仕上げるまでに材料を加工除去する体積が多いため、加工工数がかかり生産性が低くなる。 【0006】一般に、加工精度・加工時間と加工除去体積のバランスを取ることがスクロールハネを安価に製作するポイントとなっている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】スクロールハネを実用化するに当たり、高い加工精度の実現と加工工数の短縮をはかり、スクロールハネの安価な製造コストを実現することである。 【0008】 【課題を解決するための手段】高い加工精度の実現と加工工数の短縮をはかるため、 1)ハネ材料に切削加工性の良好な共晶黒鉛鋳鉄を用い、その共晶シェルの大きさをスクロールハネのラップ高さの1/4以下とした材料を使用する。 【0009】2)ハネ材料に切削加工性の良好な共晶黒鉛鋳鉄を用い、その共晶シェルの大きさをスクロールハネのラップ高さの1/4以下とし、その鋳型に金属を用いたハネ材料製作法で製作された材料を使用する。 【0010】また、鋳型材料を選定することにより、切削加工性が良好な材料で、仕上げ形状に近い形状でハネ材料を製作し、加工除去体積の減少を行ったハネ材料製作法で製作された材料を使用する。 【0011】3)ハネ材料に切削加工性の良好な共晶黒鉛鋳鉄を用い、その共晶シェルの大きさをスクロールハネのラップ高さの1/4以下とし、その鋳型に砂型を用いたハネ材料製作法で製作された材料を使用する。 【0012】また、鋳型製作法を選定することにより、 切削加工性が良好な材料で、仕上げ形状に近い形状でハネ材料を製作し、加工除去体積の減少を行いスクロールハネ材料から仕上げまでの加工工数の低減を行ったハネ材料製作法で製作された材料を使用する。 といった、手段を講じたものである。 【0013】 【作用】図1は共晶黒鉛鋳鉄で作成されたスクロールハネの縦断面の組織の詳細図である。 スクロールハネは1 の鏡板とそれに立てたラップ2よりなる。 【0014】一般に、共晶黒鉛鋳鉄は、その黒鉛形状(目の細かい点)が微細で均一に分布しているため黒鉛間距離が小さくそのために、切削加工性が良好であり、 ローリングピストン流体機械のシリンダーについてはその切削性のためにほとんどが共晶黒鉛鋳鉄で製作されている。 ところが、共晶シェルの境界4(黒い部分)には、硬度の高いパーライトが析出し、主としてエンドミルなどの切削加工した場合、他の部分3との硬度差のためうねりが生じ高い精度を維持することが困難である。 本発明では共晶シェルの大きさをスクロールハネの1/ 4以下と限定された共晶黒鉛鋳鉄を採用することにより組織内の硬度差によるラップの高さ方向のうねりを均一化し高い加工精度のスクロールハネの実現を可能にしている。 【0015】また、共晶黒鉛鋳鉄はエンドミルなどによる切削加工性が良好であるため、主にエンドミルなどによる切削加工時間を短縮する手段として、切削工具の1 回転の早さを向上させても切削工具の寿命が短くなることがほとんどないため、切削加工工具の1回転の早さを向上することによるスクロールハネ加工時間の短縮を実現できる。 【0016】またスクロールハネはそのラップ壁面に大きな圧力を受けるために特に強度を要求される。 このためエンドミルなどの切削加工性に影響のない範囲でパーライト4を析出させるので、強度を向上することができる。 本発明では、強度を求めかつ主にエンドミルなどの切削加工性に影響がない組織として共晶黒鉛鋳鉄の基地のパーライト量を7〜30%とすることにより解決している。 【0017】図6に示した圧縮機等のスクロール流体機械では一般にそのスクロールハネのラップの高さは10 mm〜30mmである。 このようなスクロールハネにおいて、そのハネの高さHの1/4以下の共晶シェルの大きさをもった共晶黒鉛鋳鉄を得るためには特殊な条件を必要とする。 【0018】まずその組成成分は炭素CとシリコンSi の量をできる限り共晶域に近ずけることであり、そのためC2.0〜4.5%,Si1.0〜4.0%が適当である。 また共晶組織を成長させるTiを0.05%〜 1.3%を入れるのが良い。 さらに共晶シェルの大きさを支配するのは鋳込後の冷却速度であり、本発明では、 このような組織の共晶黒鉛鋳鉄を得るための製作方法として、冷却速度を速くするため鋳型に金属を用いるハネ材料製作方法を提供している。 【0019】金属を鋳型とした場合、図2のような単純形状は容易に係成できるが、図3に示すような複雑な形状を作成する場合は、金型の熱変形等により、鋳型から鋳物が抜けにくくなる可能性がある。 本発明では、鋳型に銅合金を使用し、水冷却することにより、鋳型の形状を仕上げ形状に近い複雑な形状とするハネ材料製作方法を提供している。 鋳型の形状を仕上げ形状に近い形状とすることにより、スクロールハネの材料から仕上げまでの加工除去体積の減少が可能となり加工工数が低減され、その黒鉛形状が微細で均一に分布しているため黒鉛間距離が小さく、そのために主にエンドミルなどによる切削加工性の良好な共晶黒鉛鋳鉄の効果も加わって、高い加工精度で、更に暗かなスクロールハネの製作が可能となる。 【0020】前記共晶黒鉛鋳鉄を得るための製作方法として、本発明では、鋳型に黒鉛を使用することにより、 鋳型の形状を仕上げ形状に近い形状とすることができるハネ材料製作方法を提供している。 【0021】さらに別の方法で前記共晶黒鉛鋳鉄を得る手段として、鋳型に砂型を用い、組成成分調整にて共晶黒鉛組織を得るハネ材料製作方法を提供している。 【0022】また鋳型の製作法の一手段としてシェルモールド法を使用することにより、より鋳型の形状を仕上げ形状に近い形状とすることができる。 【0023】また前記共晶黒鉛鋳鉄を得るための製作方法として、本発明では、鋳型の製作法にロストワックス法を使用することにより、さらに鋳型の形状を仕上げ形状に近い形状とするハネ材料製作方法を提供している。 【0024】このような方法で鋳型の形状を仕上げ形状に近い形状とすることにより、スクロールハネの材料から仕上げまでの加工除去体積の減少が可能となり加工工数が低減され、その黒鉛形状が微細で均一に分布しているため黒鉛間距離が小さく、そのために主にエンドミルなどによる切削加工性の良好な共晶黒鉛鋳鉄の効果も加わって高い加工精度で更に安価なスクロールハネの製作が可能となる。 【0025】 【実施例】図1は、本発明の1実施例のスクロールハネのラップの断面組織である。 スクロールハネは、鏡板1 とこの鏡板にたてたラップ2により構成されており、共晶黒鉛鋳鉄で製作されており、その共晶シェルの大きさが前記ラップの高さの1/4以下となっている事を表している。 【0026】図2は、本発明の他の実施例のスクロールハネ材料の斜視図である。 鋳型に金型を用いた製作法または、砂型を用いた製作法で製作された実施例を表しており、スクロールハネの仕上げ形状が全くない形状となっている。 【0027】図3は、本発明の他の実施例のスクロールハネ材料の斜視図である。 鋳型に銅合金または黒鉛を用い、鋳型の形状は仕上げ形状に近い形状である共晶黒鉛鋳鉄で製作された実施例を表しており、スクロールハネの仕上げ形状に近い形状となっている。 【0028】鋳型を砂型とし、組成成分調整にて共晶黒鉛鋳鉄を得、鋳型の製作法をシェルモールドまたはロストワックス法を用い、鋳型の形状は仕上げ形状に近い形状である共晶黒鉛鋳鉄で製作された場合も同様なスクロールハネの仕上げ形状に近い形状となっている。 【0029】図4は、図3の鋳型に銅合金または黒鉛を使用した製作法で製作されたスクロールハネのラップの断面であり、冷却速度が速いためより細かな共晶シェル組織となっている。 図5は鋳型を砂型とし、組成成分にて共晶黒鉛鋳鉄を得、鋳型の製作法をシェルモールドまたはロストワックス法を用いた製作法で製作されたスクロールハネのラップの断面であり、やや大き目な共晶シェル組織となる。 【0030】 【発明の効果】本発明によれば、ハネ材料として共晶黒鉛鋳鉄を採用することによりスクロールハネの製作において、主にエンドミルなどによる切削加工における加工時間を短縮することができ、かつ主にエンドミルなどの切削加工工具寿命の短縮がほとんどないため、スクロール流体機械用のスクロールハネを安価に実用化することができさらにその共晶シェルの大きさをハネのラップ高さの1/4以下の大きさにすることにより、組織内の硬度差によるうねりを抑制し、より精度の高い加工が可能になるという効果がある。 【0031】さらに、銅、黒鉛等の金型、またシェルモールド法、ロストワックス法等の鋳造方法により、複雑形状に成形でき、材料形状から仕上げ形状までの加工除去体積が減少できるため加工工数の減少が行え、スクロール流体機械用のスクロールハネを安価に製作することができるという効果がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の1実施例のスクロールハネのラップの断面図 【図2】本発明の他の実施例のスクロールハネ形状の無い材料の斜視図 【図3】本発明の他の実施例のスクロールハネ形状を出した材料の斜視図 【図4】図3の鋳型に銅合金又は黒鉛を使用した製作法で製作されたスクロールハネのラップの断面図 【図5】鋳型を砂型とし、組成成分にて共晶組織を得た場合のスクロールハネのラップ断面図 【図6】本発明のスクロールハネを組み込んだスクロール圧縮機の縦断面図 【符号の説明】 1 鏡板 2 ラップ |