【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は例えば車両冷房装置に使用されるスクロール型圧縮機を構成する固定スクロール体及び旋回スクロール体のスクロール部の形状を加工するスクロール形状加工方法及びその装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、スクロール型圧縮機はハウジング内の所定位置に対し、固定基板とその表面に一体形成した固定スクロール部よりなる固定スクロール体を固着するとともに、ハウジングのフロント側に積極回転可能に支持された回転軸に対し偏心カムピンを連結し、さらに旋回基板とその表面に一体形成した旋回スクロール部よりなる旋回スクロール体を自転防止機構により自転を防止しつつ前記偏心カムピンにより所定の旋回半径で旋回させて、スクロール部外周側のハウジング内に形成された吸入室内の冷媒ガスを外周部から取り込んで固定及び旋回スクロール部の中心側へ行くに従い密閉容積を減少させて冷媒ガスを圧縮し、前記固定基板の中心部に形成した吐出孔から吐出室へ圧縮された冷媒ガスを吐出するようになっている。 【0003】そこで、前記固定スクロール体及び旋回スクロール体について、図17〜図19により説明する。 図17に示すようよに、旋回スクロール体9の旋回スクロール部9a及び固定スクロール体10の固定スクロール部10aの形状は、所定半径r 0を基礎円K 9 ,K 10 とするインボリュート曲線となっている。 又、両スクロール部9a,10aの中心側端部の形状は、高い強度を必要とするため、円弧等で形成された非インボリュート曲線となっている。 なお、H,Vは前記基礎円K 10の中心軸線O K10を通る水平基線、垂直基線である。 【0004】又、インボリュート曲線の性質としては、 第1に両スクロール部9a,10aのスクロール面S 9 ,S 10は、中心に行くに従い連続的に曲率半径が小さくなり、第2に基礎円K 9 ,K 10の接線L Kは、インボリュート曲線域のスクロール面S 9 ,S 10と常に垂直に交差、つまり法線方向に指向し、第3に伸角と、基礎円K 9 ,K 10からインボリュート曲線域のスクロール面S 9 ,S 10までの距離が比例する。 【0005】又、対になる両スクロール体9,10のスクロール部形状の関係として、次の(a)〜(c)がある。 (a)法線方向に対応するスクロール部9a,10aのスクロール面S 9 ,S 10の曲率半径の差が、旋回スクロール体9の旋回半径rと同じである。 【0006】(b)法線方向に対応するスクロール部9 a,10aのインボリュート曲線域のスクロール面S 9 ,S 10の長さの差が2πあたり旋回半径r×2πで一定である。 【0007】(c)両スクロール部9a,10aのスクロール面S 9 ,S 10の接触点における外向きの法線方向は、向きを逆にすると一致する。 上記(a)〜(c)を満足する形状は、一方のスクロール部9aのスクロール面S 9に対して、他方のスクロール部10aのスクロール面S 10が常に向かい合い、外向きの法線方向へ前記旋回半径r分だけオフセットさせた形状である。 【0008】そして、前記両スクロール体9,10は基礎円K 9 ,K 10を所定距離隔てて組み合わされ、旋回半径rの旋回円軌跡Cに沿って自転を防止された状態で旋回スクロール体9が図17に示す位置から例えば90度時計回り方向へ旋回されて図18に示す位置に移動されると、この間にスクロール部9a,10a外周側のハウジング内に形成された吸入室内から取り込まれた冷媒ガスは、両スクロール部9a,10aの複数の接触点が中心部に移動して両接触点間の密閉容積が減少することにより圧縮され、吐出孔から圧縮されたガスが吐出室に吐出されるようになっている。 【0009】ここで、従来の旋回及び固定スクロール体の加工装置を図20により説明する。 ベース51上にはX軸コラム52がサーボモータ53によりX軸(左右) 方向の往復動可能に支持されている。 このX軸コラム5 2にはθ軸回転テーブル54がサーボモータ55により回転可能に支持され、前記回転テーブル54には治具5 6を介して旋回スクロール体9が支持されるようになっている。 【0010】一方、前記ベース51の右側上面にはY軸コラム57がサーボモータ58によりY軸方向(紙面直交方向)に往復動可能に支持されている。 又、前記Y軸コラム57にはZ軸コラム59がサーボモータ60によりZ軸方向(上下方向)の往復動可能に支持されており、該Z軸コラム59には加工用エンドミル61を把持する主軸62が図示しないモータにより回転可能に支持されている。 【0011】さらに、従来の加工装置は旋回スクロール体と固定スクロール体を別々に加工する二つの装置ラインに別れており、素材を旋盤加工するとともに穴開け加工を行い、次にスクロール部9a,10aの加工を別々の加工装置により独立して行った後、洗浄して寸法測定後にランク選別され、ランク別に組立られて性能検査を行い、これをスクロール型圧縮機に組み込むようになっている。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の加工装置は、旋回スクロール体9と固定スクロール体10をそれぞれ独立して加工するようになっているので、組付られる相手側のスクロール体の寸法精度の情報は、何らフィードバックされることはなく、従って、両スクロール体の寸法精度を厳密に管理する必要があり、選別工程で多数のランクに選別しなければならいという問題があった。 又、ランク選別したスクロール体の管理にも手間が必要であるばかりでなく、ランク選別された両スクロール体を組立た後の性能検査工程においても性能のバラツキが高いという問題があった。 【0013】この発明は前述した図17に示す組付状態の両スクロール体9,10のスクロール部9a,10a を図19に示すように配置した場合、つまり図17に示すように基礎円K 9 ,K 10が離隔した状態から一致させるとともに、固定スクロール10を定位置において旋回スクロール部9aを基礎円K 10の中心軸線O K10の回りで180度回転すると、前述したスクロール面S 9 ,S 10の特性により図19に示すように両スクロール部9 a,10aのスクロール面S 9 ,S 10の法線方向の間隔Gがどの部位も同一となり、しかもその間隔Gは旋回スクロール体9の旋回半径rと等しく、従って、前記間隔Gの法線方向の中心点を通るスクロール部9a,10a の両加工軌跡T 16 ,T 21が同一となることに着目してなされたものである。 【0014】そして、この発明の目的は両スクロール体のスクロール面の加工精度を向上することができるとともに、生産能率を向上することができ、さらにスクロール型圧縮機の性能を安定化することができるスクロール形状加工方法及びその装置を提供することにある。 【0015】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は上記目的を達成するため、基板に固定スクロール部を形成した固定スクロール体と、同じく基板に旋回スクロール部を形成した旋回スクロール体とを、前記固定スクロール部の基礎円の中心軸線と、旋回スクロール部の基礎円の中心軸線が所定距離だけ半径方向に離隔して位置するように、かつ両スクロール部の曲面が複数箇所で互いに接触するように対応させて、前記旋回スクロール体を所定の旋回半径に従って旋回させて、両スクロール部の複数の接触点を中心に移動して両接触点間に形成される密閉空間の容積を減少して流体の圧縮を行うようにしたスクロール型圧縮機における前記固定スクロール体及び旋回スクロール体のスクロール形状加工に際し、前記固定スクロール部の基礎円の中心軸線と、旋回スクロール部の基礎円の中心軸線が同一軸線上に位置するように、かつ前記両スクロール部が前記両基礎円の中心軸線方向から見て互いに重なり合う同一位相から180度位相を異にするように配置し、この状態で旋回スクロール体の前記旋回半径と等しい直径の固定スクロール部用加工具及び旋回スクロール部用加工具を同一軸線上に配設し、前記固定スクロール部及び旋回スクロール部の加工すべきスクロール面から法線方向に前記旋回半径の2分の1だけオフセットされている予め設定された共通の加工軌跡に沿って、前記両加工具の中心軸線を、相対移動させて固定スクロール部及び旋回スクロール部のスクロール面を加工するという方法をとっている。 【0016】又、請求項2記載の発明は、前述と同様のスクロール型圧縮機における固定スクロール体及び旋回スクロール体のスクロール形状加工に際し、前記固定スクロール部の基礎円の中心軸線と、旋回スクロール部の基礎円の中心軸線が同一軸線上に位置するように、かつ前記両スクロール部が前記両基礎円の中心軸線方向から見て互いに重なり合う同一位相から180度位相を異にするように配置し、この状態で、両スクロール部の加工すべきスクロール面から法線方向に前記旋回半径の2分の1だけオフセットされている予め設定された共通の加工軌跡に沿って、旋回スクロール体の前記旋回半径と異なる直径の固定スクロール部用加工具の中心軸線と、旋回スクロール部用加工具の中心軸線とを結ぶ線分の中心点を相対移動させるとともに、この相対移動と同期して前記線分が前記加工軌跡と直交する法線方向に指向するように制御して両スクロール部のスクロール面を加工するという方法をとっている。 【0017】請求項3記載の発明は前述と同様のスクロール型圧縮機における固定スクロール体及び旋回スクロール体のスクロール形状加工に際し、前記固定スクロール部の基礎円の中心軸線と、旋回スクロール部の基礎円の中心軸線が同一軸線上に位置するように、かつ前記両スクロール部が前記両基礎円の中心軸線方向から見て互いに重なり合う同一位相から180度位相を異にする位置関係からさらに両スクロール体をその中心軸線と直交する方向へ互いに離隔して配置し、この状態で旋回スクロール体の旋回半径と同一直径の固定スクロール部用加工具及び旋回スクロール部用加工具を使用し、前記固定スクロール部及び旋回スクロール部の加工すべきスクロール面から法線方向に前記旋回半径の2分の1だけオフセットされて、予め設定されたそれぞれの加工軌跡に沿って、前記両加工具の中心軸線を、同期して相対移動させて固定スクロール部及び旋回スクロール部のスクロール面を加工するという方法をとっている。 【0018】又、請求項4記載の発明は前述と同様のスクロール型圧縮機における固定スクロール体及び旋回スクロール体のスクロール形状加工に際し、前記固定スクロール部の基礎円の中心軸線と、旋回スクロール部の基礎円の中心軸線が同一軸線上に位置するように、かつ前記両スクロール部が前記両基礎円の中心軸線方向から見て互いに重なり合う同一位相から180度位相を異にする位置関係からさらに両スクロール体をその中心軸線と直交する方向へ互いに離隔して配置し、この状態で旋回スクロール体の旋回半径と異なる直径の固定スクロール部用加工具及び旋回スクロール部用加工具を使用し、両スクロール部の加工すべきスクロール面から法線方向に前記旋回半径の2分の1だけオフセットされて、予め設定されたそれぞれの加工軌跡に沿って、前記両加工具の移動点を相対移動させるとともに、この相対移動と同期して前記加工軌跡上の両加工具の移動点と両加工具の中心軸線とをそれぞれ結ぶ線分を、該加工軌跡と直交する法線方向に制御して両スクロール部のスクロール面を加工するという方法をとっている。 【0019】請求項5記載の発明は、前述と同様のスクロール型圧縮機における固定スクロール体及び旋回スクロール体のスクロール形状加工に際し、前記固定スクロール部の基礎円の中心軸線と、旋回スクロール部の基礎円の中心軸線が所定距離をおいて互いに並行となるように、かつ固定スクロール部と旋回スクロール部とが同じ方向を指向するように、両スクロール体を配置し、この状態で旋回スクロール体の旋回半径と同一直径の固定スクロール部用加工具及び旋回スクロール部用加工具を使用し、両スクロール部の加工すべきスクロール面から法線方向に前記旋回半径の2分の1だけオフセットされている予め設定されたそれぞれの加工軌跡に沿って、前記両加工具の中心軸線を、同期して相対移動させて両スクロール部のスクロール面を加工するという方法をとっている。 【0020】請求項6記載の発明は、前述と同様のスクロール型圧縮機における固定スクロール体及び旋回スクロール体のスクロール形状加工に際し、前記固定スクロール部の基礎円の中心軸線と、旋回スクロール部の基礎円の中心軸線が所定距離をおいて互いに並行となるように、かつ固定スクロール部と旋回スクロール部とが同じ方向を指向するように、両スクロール体を配置し、この状態で旋回スクロール体の旋回半径と異なる直径の固定スクロール部用加工具及び旋回スクロール部用加工具を使用し、両スクロール部の加工すべきスクロール面から法線方向に前記旋回半径の2分の1だけオフセットされている予め設定されたそれぞれの加工軌跡に沿って、前記両加工具の移動点を同期して相対移動させるとともに、この相対移動と同期して前記加工軌跡上の両加工具の移動点と両加工具の中心軸線とをそれぞれ結ぶ線分を、該加工軌跡と直交する法線方向に制御して両スクロール部のスクロール面を加工するという方法をとっている。 【0021】さらに、請求項7記載の発明はベース上に水平Y方向へ移動可能に支持されたY軸テーブルと、該Y軸テーブル上において上方Z軸方向へ往復動可能に支持されたZ軸コラムと、該Z軸コラムに前記Y軸と直交する水平X軸方向の軸線の回りで回転可能に支持された一対のθ軸回転テーブルと、前記両θ軸回転テーブルの前面に取り付けられ、固定スクロール体及び旋回スクロール体のそれぞれの基板を把持する固定スクロール体用治具及び旋回スクロール体用治具と、前記ベース上面においてX軸方向への往復動可能に支持された第1X軸コラム及び第2X軸コラムと、前記両X軸コラムに装着され、かつ前記固定スクロール体用治具及び旋回スクロール体用治具に支持された固定スクロール体及び旋回スクロール体のスクロール部を加工する加工具を把持して回転させる固定スクロール部加工用主軸及び旋回スクロール部加工用主軸と、前記両加工用主軸の中心軸線をY軸方向へ互いに離隔した位置にオフセット調節するための位置調節手段と、さらに、前記両スクロール部の加工すべきスクロール形状に予め設定された加工軌跡に沿って、前記両加工用主軸の中心軸線を結ぶ線分の中心点を相対移動させるとともに、前記線分が前記加工軌跡と直交する法線方向に指向するように前記Y軸テーブル、Z 軸コラム及び一対のθ軸回転テーブルの動作を制御する数値制御装置とにより構成している。 【0022】 【作用】請求項1記載の発明においては、旋回及び固定スクロール部の両加工具の直径が、旋回スクロール体の旋回半径と同じであるため、両スクロール部のスクロール面全域にわたって両加工具の中心軸線を加工軌跡に沿って法線方向への制御を行うことなく相対移動することにより、加工すべきスクロール面が精度良く加工される。 このとき、加工時に両加工具の中心軸線が加工軌跡から数値制御の誤差等により若干変位しても旋回スクロール部の加工面が凸部であれば、それと対応する固定スクロール部の加工面が凹になるため、スクロール型圧縮機に組み付けた状態で適正な接触状態が得られる。 【0023】又、請求項2記載の発明は、旋回及び固定スクロール部の両加工具の直径が、旋回スクロール体の旋回半径と異なるため、加工具の剛性を請求項1の加工具よりも高めることができる。 又、両スクロール部のスクロール面全域にわたって両加工具の中心軸線を結ぶ線分の中心点を加工軌跡に沿って相対移動するとともに、 線分が加工軌跡と直交するように法線方向に制御されるため、インボリュート曲線以外の曲線に対しても加工すべき対になるスクロール面が精度良く加工される。 このとき、加工時に両加工具の中心軸線が加工軌跡から数値制御の誤差により若干変位しても旋回スクロール部の加工面が凸部であれば、それと対応する固定スクロール部の加工面が凹になるため、スクロール型圧縮機に組み付けた状態で適正な接触状態が得られる。 【0024】さらに、請求項3記載の発明は、固定及び旋回のスクロール体を請求項1に示す対応関係からさらに法線方向へ所定距離隔てた状態で加工動作が行われるが、旋回半径と同一径の一対の加工具を使用して、両加工具の中心軸線を両加工軌跡に沿ってそれぞれ相対移動することにより、法線方向の制御を行うことなく旋回及び固定のスクロール面の加工が精度良く行われる。 【0025】さらに、請求項4記載の発明は、固定及び旋回のスクロール体を請求項1に示す対応関係からさらに法線方向へ所定距離隔てた状態で加工動作が行われるが、旋回半径と異なる一対の加工具を使用して、両加工具の移動点を両加工軌跡に沿ってそれぞれ相対移動するとともに、前記移動点と加工具の中心軸線とを結ぶ線分を加工軌跡と直交する法線方向へ制御することにより、 インボリュート曲線以外の曲線に対しても旋回及び固定のスクロール面の加工が精度良く行われる。 又、加工具の剛性を高めることもできる。 【0026】さらに、請求項5記載の発明は、旋回半径と同一径の一対の加工具を使用して、両加工具の中心軸線を両加工軌跡に沿ってそれぞれ相対移動することにより、法線方向の制御を行うことなく旋回及び固定のスクロール面の加工が精度良く行われる。 【0027】さらに、請求項6記載の発明は、旋回半径と異なる一対の加工具を使用して、両加工具の移動点を両加工軌跡に沿ってそれぞれ相対移動するとともに、前記移動点と加工具の中心軸線とを結ぶ線分を加工軌跡と直交する法線方向へ制御することにより、インボリュート曲線以外の曲線に対しても旋回及び固定のスクロール面の加工が精度良く行われる。 又、加工具の剛性を高めることもできる。 【0028】又、請求項7記載の加工装置は、請求項2 記載の加工方法を実施するのに用いられ、固定及び旋回のスクロール体のスクロール部の加工がそれぞれの加工具により行われるので、作業能率が向上する。 【0029】 【実施例】以下、請求項1の方法発明を具体化した第1 実施例を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。 【0030】スクロール形状加工装置の正面を示す図2 において、ベース1の中央上面にはY軸テーブル2Aが第1Y軸サーボモータ3によりY軸方向(図2の紙面と直交方向)の往復動可能に支持されている。 前記Y軸テーブル2Aの上面にはZ軸コラム2BがZ軸サーボモータ4によりZ軸方向(上下方向)の往復動可能に装着されている。 【0031】前記Z軸コラム2Bの上部には左右一対のθ軸回転テーブル5,5が共通のθ軸サーボモータ6により水平(X軸)方向の中心軸線の回りで同期回転可能に支持されている。 そして、左側に位置する前記θ軸回転テーブル5の左端面には治具7が、右側に位置する回転テーブル5の右端面には治具8がそれぞれ取付られ、 左側の治具7には旋回スクロール部9aと旋回基板9b とからなる旋回スクロール体9の前記基板9bが取り外し可能に取り付けられ、又、右側の治具8には固定スクロール部10aと固定基板10bとからなる固定スクロール体10の前記基板10bが取り外し可能に取り付けられている。 さらに、前記Z軸コラム2Bの内部には前記θ軸回転テーブル5の回転量を測定するθ軸ロータリエンコーダ11が収容されている。 【0032】前記ベース1の左側上面には第1X軸コラム12がX軸方向(図2の左右方向)にX軸サーボモータ13により往復動可能に支持されている。 このX軸コラム12の上部には旋回スクロール体9の旋回スクロール部9aの加工用主軸14が主軸用モータ15により回転可能に支持され、主軸14に取り付けた加工具16により旋回スクロール部9aの切削加工を行うようにしている。 【0033】さらに、前記ベース1の右側上面には第2 X軸コラム17がX軸サーボモータ18によりX軸方向の往復動可能に支持されている。 前記X軸コラム17の上部には固定スクロール体10の固定スクロール部10 aの加工用主軸19が主軸用モータ20により回転可能に支持され、主軸19に取り付けた加工具21により固定スクロール部10aの切削加工を行うようにしている。 【0034】この実施例では前記主軸14に支持された加工具16の中心軸線O 16と、主軸19に支持された加工具21の中心軸線O 21とが、図2,3に示すようにX 軸方向から見て一致するように両主軸14,19の位置が図示しない調節機構により調節されている。 又、この実施例では旋回スクロール体9の旋回半径rと同じ直径の加工具16,21を使用している。 【0035】次に、前述のスクロール形状加工装置のブロック制御回路図を図4に基づいて説明する。 数値制御回路23には駆動回路24を介して前記サーボモータ3,4,6が接続され、駆動回路25を介して前記サーボモータ13,18、主軸用モータ15,20が接続されている。 又、前記数値制御回路23は、加工具16, 21の予めプログラムされた加工軌跡T 16 ,T 21を記憶しておく記憶回路26を備えている。 この第1実施例では両加工具16,21が回転運動を行う外には、図2 においてX軸方向、つまりスクロール部9a,10aの深さ方向にのみ動作されるので、前記記憶回路26には両スクロール体9,10を把持したθ軸回転テーブル5,5がθ軸サーボモータ6及びY軸サーボモータ3によりθ軸方向に回転制御されるとともに、Y軸方向に移動制御されることにより、前述の加工具16,21の加工軌跡T 16 ,T 21に基づいた加工が行えるようにしている。 【0036】なお、前記数値制御回路23には前述したθ軸ロータリーエンコーダ11の外図示しないがY軸方向及びZ軸方向等の距離を測定する複数のリニアスケールが接続され、これらの測定データに基づいて前記加工軌跡T 16 ,T 21に沿ったθ軸回転テーブル5,5の数値制御動作が行われる。 【0037】次に、前記のように構成したスクロール形状加工装置により旋回スクロール部9a及び固定スクロール部10aのスクロール面S 9 ,S 10を加工する動作を説明する。 【0038】最初に、両治具7,8に対し、前加工行程によりスクロール部9a,10aの表面に切削代を残した状態の旋回及び固定のスクロール体9,10の基板9 b,10bを図2,3に示すように取り付ける。 このときスクロール部9a,10aは加工具16,21に指向するとともに、図1に示すように、両スクロール部9 a,10aの基礎円K 9 ,K 10の中心軸線O K9 ,O K10 を一致させている。 さらに両スクロール部9a,10a の取り付け位相を両スクロール部9a,10aが前記基礎円K 9 ,K 10の中心軸線O K9 ,O K10方向から見て互いに一致する位相から該軸線O K9 ,O K10の周りで18 0度回転変位させている。 従って、この状態では、図1 9に示す対応関係と同様の理由により、両スクロール部9a,10aの互いに対応する両スクロール面S 9 ,S 10が理想のインボリュート曲線であるとすると、両面S 9 ,S 10の前記基礎円K 9 ,K 10の接線L K方向の間隔Gが図1においてどの部位も旋回スクロール体9の旋回半径rと同じであり、両スクロール部9a,10aの中心部の非インボリュート曲線域においても、両面の法線方向の間隔Gは旋回半径rと同じとなる。 さらに、二つの加工具16,21の直径が旋回半径rと同じであるため、両加工具16,21は図1において中心軸線O 16 , O 21方向から見た場合に、互いに重なり合って見えることになる。 【0039】なお、この明細書では、以下の説明で同一位置にある中心軸線O K9 ,O K10 、中心軸線O 16 , O 21 、基礎円K 9 ,K 10及び加工軌跡T 16 ,T 21等の場合はどちらか一方の符号のみを付記することとする。 【0040】又、図1において、前記中心軸線O K9方向から見た場合に、固定スクロール体10の加工具21の中心軸線O 21がそのスクロール部10aの加工すべきスクロール面S 10から前記旋回半径rの2分の1だけ法線方向に変位された加工軌跡T 21を通るように、前記加工軌跡記憶回路26には数値制御プログラム、つまり加工軌跡T 21が予め記憶されている。 そして、Y軸サーボモータ3及びθ軸サーボモータ6を数値制御して回転テーブル5,5をY軸及びθ軸方向へ同時制御して加工具2 1の中心軸線O 21を前記加工軌跡T 21に沿って相対移動させることにより、固定スクロール部10aのスクロール面S 10の加工を行うことができるようにしている。 【0041】同様に、図1において、前記中心軸線O K9 方向から見た場合に、旋回スクロール体9の加工具16 の中心軸線O 16がそのスクロール部9aの加工すべきスクロール面S 9から前記旋回半径rの2分の1だけ法線方向に変位された加工軌跡T 16を通るように、前記加工軌跡記憶回路26には数値制御プログラム、つまり前記加工軌跡T 16が予め記憶されている。 そして、Y軸サーボモータ3及びθ軸サーボモータ6を数値制御して回転テーブル5,5をY軸及びθ軸方向へ同時制御して加工具16の中心軸線O 16を前記加工軌跡T 16に沿って相対移動させることにより、旋回スクロール部9aのスクロール面S 9の加工を行うことができるようにしている。 【0042】又、前述したように両加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21は一致し、かつ前記両加工軌跡T 16 ,T 21は図1において同一の共通軌跡となるため、 両スクロール部9a,10aが図1に示すような対応関係で同時に数値制御動作されると、前述した加工具21 による固定スクロール部10aのスクロール面S 10の加工動作と同時に、加工具16による旋回スクロール部9 aのスクロール面S 9の加工が行われる。 【0043】さらに、前述した両スクロール体9,10 の同時加工動作中においては、両加工具16,21が図1に示すように重なり合って見え、かつ加工具16,2 1の直径を旋回半径rと同じとし、加工軌跡T 21が前記法線方向の間隔Gの中心を通るようにしたので、両加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21と加工具16,21 外周の実際の加工接触点を結ぶ直線がスクロール面S 9 ,S 10全長にわたって常に法線方向を向くことになり、従って、前述した法線方向制御用のZ軸サーボモータ4は加工軌跡T 21のプログラムの段階で考慮しなくてもよい。 しかし、このZ軸サーボモータ4は次に述べる法線方向の制御が必要な第2実施例で使用される。 さて、この発明の第1実施例においては、同期回転されるθ軸回転テーブル5,5に旋回スクロール体9及び固定スクロール体10を支持するとともに、加工軌跡T 21に基づいて、該テーブル5,5をθ軸方向及びY軸方向へ数値制御して、加工具16,21により同時にスクロール面S 9 ,S 10の切削加工を行うようにしたので、旋回スクロール部9aのスクロール面S 9形状に適した固定スクロール部10aのスクロール面S 10を加工、すなわち、加工動作途中で加工具16,21が移動軌跡T 21から数値制御上の制御性の誤差により若干ズレた場合に、 スクロール面S 9が膨らむように加工されると、それに見合った分スクロール面S 10が凹む方向に加工されるので、スクロール型圧縮機に組み付けた場合に、丁度両スクロール面S 9 ,S 10を接触させることができ、両スクロール体の組付け状態での精度を向上することができ、 ひいてはスクロール型圧縮機の圧縮性能を向上することができる。 さらに、両スクロール部9a,10aのスクロール面S 9 ,S 10の寸法精度を厳密に管理するのを不要にして、寸法公差を緩和することも可能となり、このため数値制御動作の速度を従来の速度と比較して大幅に速くしても問題とならず、生産性を向上することができる。 【0044】又、前記第1実施例では、旋回及び固定のスクロール体9,10を一台の装置で同時に加工するようにしたが、この場合には、さらに生産性を向上することができる。 しかし、図2,3において、固定スクロール体10のみの加工を単独で行った後、旋回スクロール体9の加工を行うようにしたり、あるいは同じ回転テーブル5に旋回スクロール体9と固定スクロール体10を付け替えて加工を行った場合にも、図1に示すように両スクロール体9,10の対応関係を設定すれば、前述した同時加工の場合と同様に両スクロール面S 9 ,S 10を適正な形状に加工することができる。 【0045】次に、請求項2の方法発明及びそれに使用される請求項5記載の加工装置の発明を具体化した第2 実施例を図5〜図7に基づいて説明する。 この第2実施例のスクロール形状加工装置は、前述した第1実施例の加工装置と同様であり、異なる構成のみについて述べると、第1X軸コラム12及び第2X軸コラム17に対し、前記両主軸14,19及び主軸用サーボモータ1 5,20がそれぞれY軸方向へ位置(オフセット)調整可能に構成されている。 そして、図5に示すように両加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21をY軸方向へ所定距離だけオフセットしている。 【0046】この実施例では旋回半径rよりも大きい直径で、かつ同径の加工具16,21を使用するため、図6に示すように、両中心軸線O 16 ,O 21を結ぶ線分Eの中心点O Eが共通の前記加工軌跡T 21上を相対移動するように両スクロール体9,10と両加工具16,21とが対向して配置される。 又、加工具16,21の両中心軸線O 16 ,O 21は加工軌跡T 21から長さW 16 ,W 21だけオフセットされている。 この長さW 16 ,W 21は、加工具16,21の半径をRとすると、この半径Rから前記旋回半径rの2分の1を減算した値(R−r/2)となる。 【0047】さらに、この第2実施例では前記線分Eの中心点O Eが前記加工軌跡T 21に沿って移動するように第1Y軸サーボモータ3及びθ軸サーボモータ6が制御されるようにしている。 従って、スクロール部9a,1 0aの中心部、つまり非インボリュート曲線域では、第1Y軸サーボモータ3及びθ軸サーボモータ6のみの数値制御により前記線分Eが加工軌跡T 21に対し常に直交する法線方向に制御され、加工具16,21によりスクロール面S 16 ,S 10の同時加工が適正に行われる。 なお、もしこの法線方向の制御が行われない場合には、加工具16,21による加工量が変化するため、所望するスクロール面の加工を行うことはできない。 【0048】ところが、スクロール部9a,10aの中心に位置する非インボリュート曲線域、つまり図7に示す変化点P 1からP 2までは、第1Y軸サーボモータ3 及びθ軸サーボモータ6のみの数値制御だけでは、前記線分Eを加工軌跡T 21に対し常に直交する法線方向へ指向することができない。 この法線方向の制御は、前記加工具の加工軌跡記憶回路26に予め記憶されたZ軸サーボモータ6の数値制御により行われる。 さらに、詳述すると、インボリュート曲線域では前記中心軸線O 16 ,O 21を結ぶ線分Eが基礎円K 9の接線L Kと同方向になるが、非インボリュート曲線域(P 1 −P 2 )では前記線分Eが基礎円K 9から離れ、基礎円の中心軸線O K9を通る垂線の長さMが変化するので、この長さMに基づいてZ軸サーボモータ4により前記線分Eが法線方向を指向するように数値制御され、非インボリュート曲線域の形状加工が適正に行われる。 【0049】次に、加工具16,21が旋回半径rよりも大きい場合の請求項4記載の方法発明を具体化した第3実施例を図8〜図10に基づいて説明する。 なお、加工具16,21が旋回半径rと等しい場合の請求項3記載の方法発明については後述する。 【0050】この第3実施例ではベース1の上面に対し、Y軸テーブル42をY軸方向の往復動可能に装着するとともに、該Y軸テーブル42の上面にZ軸テーブル41をZ軸方向の往復動可能に支持し、さらに該Z軸テーブル41の上面に旋回スクロール体治具7を上向きに固定して、主軸ヘッド43に固定スクロール体治具8を下向きに固定して両スクロール体9,10を取り付け可能にしている。 【0051】一方、主軸ヘッド43側には、支持テーブル44が、又、Z軸テーブル41側には支持テーブル4 5がZ軸方向へ所定間隔隔てて、X軸方向に互いに平行な中心軸線O 44 ,O 45の周りでθ軸サーボモータ46 A,46Bによりθ軸方向の往復回動可能に装着されている。 又、前記支持テーブル44の下面及び前記支持テーブル45の上面に形成した収容溝44a,45aには、可動支持ブロック47,48が往復直線移動可能に支持され、前記支持テーブル44,45の固定部44 b,45bには前記可動支持ブロック47,48の収容溝内での位置を調整するための操作ハンドル49a,5 0aを有するボールネジ49,50が取り付けられている。 又、前記可動支持ブロック47,48には加工具1 6,21を支持する主軸14,19が主軸用モータ1 5,20を介して取り付けられている。 そして、前記操作ハンドル49a,50aを操作することにより、前記中心軸線O 44 ,O 45から加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21までのオフセット長さW 16 ,W 21を変更可能にしている。 この主軸装置としては一対の主軸の法線方向の制御が可能なマシニングセンターを使用することもできる。 【0052】次に、前記のように構成した加工装置により両スクロール体9,10の加工方法を説明する。 最初に、両治具7,8に対し旋回スクロール体9及び固定スクロール体10を図10に示すように配置する。 この状態は図1に示す対応関係において、旋回スクロール体9 をそのままの位置とし、固定スクロール体10を水平基線H方向に所定距離Dだけ隔てたものとなる。 又、この状態では両スクロール体9,10の基礎円K 9 ,K 10の両中心軸線O K9 ,O K10の距離Dは、図9の支持テーブル44,45の両中心軸線O 44 ,O 45の距離Dと同じに設定されている。 さらに、数値制御回路23の加工軌跡記憶回路26には、前述した旋回スクロール体9の加工軌跡T 16 (固定スクロール体10の加工軌跡T 21は同一加工軌跡であるため記憶はされない)が記憶されている。 そして、図8に示すY軸テーブル42及びZ軸テーブル41を加工軌跡記憶回路26の情報を元に数値制御することにより、前記両支持テーブル44,45の両中心軸線O 44 ,O 45を前記加工軌跡T 16に沿って相対移動するようにしている。 【0053】加えて、この第3実施例では加工具16, 21の直径が旋回スクロール体9の旋回半径rよりも大きいので、前記操作ハンドル49a,50aを操作することにより、図10に示すように加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21を支持テーブル44,45の両中心軸線O 44 ,O 45から変位、つまり加工具16,21の半径Rから旋回半径rの2分の1を減算した長さW 16 ,W 21 だけそれぞれ逆方向にオフセットしている。 従って、加工動作時には、前記両支持テーブル44,45の両中心軸線O 44 ,O 45と、加工具16,21の中心軸線O 16 , O 21とを結ぶ線分Eの方向が前記両加工軌跡T 16 ,T 21 に直交する法線方向に指向するように、θ軸サーボモータ46A,46Bにより支持テーブル44,45がθ軸方向に数値制御され、この結果、両スクロール体9,1 0のスクロール面S 9 ,S 10の加工が適正に行われる。 又、インボリュート曲線以外の曲線に対しても加工が適正に行われる。 【0054】この第3実施例においては、前述したθ軸回転テーブル5,5を使用する必要がなくなるので、装置の構成を簡素化することができるとともに、加工具1 6,21を増加することにより、同時に多数の加工作業を行い、生産性を向上することができ、さらに消費動力あるいは動作制御性の面で優位となる。 【0055】以上の加工動作は両加工具16,21の直径が旋回半径rよりも大きい場合についてであるが、両加工具16,21の直径と旋回半径rが同一である場合には、前記加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21が両加工軌跡T 16 ,T 21上を相対移動するように操作ハンドル49a,50aでオフセット長さW 16 ,W 21が調整された状態で、前記支持テーブル44,45のθ軸方向、 つまり法線方向の数値制御動作を行うことなく、両スクロール部9a,10aの加工が行われる。 この加工方法は、請求項3記載の加工方法の実施例となる。 【0056】次に、加工具16,21の径が旋回半径r よりも大きい場合の請求項6記載の方法発明を具体化した第4実施例を図11〜13に基づいて説明する。 なお、加工具16,21が旋回半径rと等しい場合の請求項5記載の方法発明については後述する。 【0057】この第4実施例ではベース1の上面に対し、Y軸テーブル42をY軸方向の往復動可能に装着するとともに、該Y軸テーブル42の上面に左右一対のZ 軸テーブル41,41をZ軸方向の往復動可能に支持している。 そして、Y軸テーブル42に支持した一つのZ 軸サーボモータ63により、右ボールねじ64及び左ボールねじ65が同期して回転され、両Z軸テーブル4 1,41に固定したボールねじナット66,67により両テーブル41,41がZ軸方向へ接近又は離隔する方向へ同期して動作されるようにしている。 さらに、該Z 軸テーブル41の上面には旋回スクロール体治具7及び固定スクロール体治具8が上向きに固定され、両スクロール体9,10を取り付け可能にしている。 【0058】一方、主軸ヘッド43側には、支持テーブル44,45が、Z軸方向へ所定間隔隔てて、X軸方向に互いに平行な中心軸線O 44 ,O 45の周りでθ軸サーボモータ46A,46Bによりθ軸方向の往復回動可能に装着されている。 又、前記支持テーブル44,45には前述した第3実施例と同様に可動支持ブロック47,4 8、操作ハンドル49a,50aを有するボールネジ4 9,50、加工具16,21を支持する主軸14,19 及び主軸用モータ15,20等が取り付けられている。 この第4実施例では可動支持ブロック47,48の向きが図12に示すように水平基線Hに対して非並行状態で角度θだけ傾斜されている。 【0059】上記のように構成した加工装置により両スクロール体9,10の加工方法を説明する。 最初に、両治具7,8に対し旋回スクロール体9及び固定スクロール体10を図13に示すように配置する。 この状態は前記固定スクロール部10aの基礎円K 10の中心軸線O K10と、旋回スクロール部9aの基礎円K 9の中心軸線O K9が所定距離Dをおいて互いに並行となるように、かつ固定スクロール部10aと旋回スクロール部9aとが同じ方向を指向するようになっている。 さらに詳しくは図1に示す対応関係において、旋回スクロール体9をそのままの位置とし、固定スクロール体10を水平基線H 方向に所定距離Dだけ隔て、かつ固定スクロール体10 を垂直基線Vの周りで180度反転したものとなる。 又、この状態では両スクロール体9,10の基礎円K 9 ,K 10の両中心軸線O K9 ,O K10の距離Dは、図1 2の支持テーブル44,45の両中心軸線O 44 ,O 45の距離Dと同じに設定されている。 さらに、数値制御回路23の加工軌跡記憶回路26には、前述した旋回スクロール体9の加工軌跡T 16 (固定スクロール体10の加工軌跡T 21は同一加工軌跡であるため記憶はされない)が記憶されている。 そして、図11に示すY軸テーブル4 2及びZ軸テーブル41を加工軌跡記憶回路26の情報を元に数値制御することにより、前記両支持テーブル4 4,45の両中心軸線O 44 ,O 45を前記加工軌跡T 16に沿って同期して相対移動するようにしている。 【0060】加えて、この第4実施例では加工具16, 21の直径が旋回スクロール体9の旋回半径rよりも大きいので、前記操作ハンドル49a,50aを操作することにより、図13に示すように加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21を支持テーブル44,45の両中心軸線O 44 ,O 45から変位、つまり加工具16,21の半径Rから旋回半径rの2分の1を減算した長さW 16 ,W 21 だけそれぞれ左右逆方向にオフセットしている。 従って、加工動作時には、前記両支持テーブル44,45の両中心軸線O 44 ,O 45と、加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21とを結ぶ線分Eの方向が前記両加工軌跡T 16 ,T 21に直交する法線方向に指向するように、θ軸サーボモータ46A,46Bにより支持テーブル44, 45がθ軸方向に数値制御され、この結果、両スクロール体9,10のスクロール面S 9 ,S 10の加工が適正に行われる。 又、インボリュート曲線以外の曲線に対しても加工が適正に行われる。 【0061】この第4実施例においても、前述した第3 実施例と同様に前述したθ軸回転テーブル5,5を使用する必要がなくなるので、装置の構成を簡素化することができるとともに、加工具16,21を増加することにより、同時に多数の加工作業を行い、生産性を向上することができ、さらに消費動力あるいは動作制御性の面で優位となる。 第4実施例の特有の効果としては、旋回スクロール9及び固定スクロール体10が同じ向きに取り付けられるので、装置の構造をさらに簡素化することができる。 【0062】以上の加工動作は両加工具16,21の直径が旋回半径rよりも大きい場合についてであるが、図11〜13において旋回半径rと同一の加工具16,2 1を使用した場合には、前記加工具16,21の中心軸線O 16 ,O 21が両加工軌跡T 16 ,T 21上を相対移動するように操作ハンドル49a,50aでオフセット長さW 16 ,W 21が調整された状態で、前記支持テーブル44, 45のθ軸方向、つまり法線方向の数値制御動作を行うことなく、両スクロール部9a,10aの加工が行われる。 この加工方法は、請求項5記載の加工方法の実施例となる。 【0063】次に、請求項1記載の発明の加工方法に使用される加工装置の別の実施例を図14に基づいて説明する。 この別例は、Y軸テーブル2Aに対しZ軸コラム2BをZ軸サーボモータ4によりZ軸方向の往復動可能に支持するとともに、このZ軸コラム2Bに対し加工用主軸14,19を共通の主軸用モータ15により回転可能に支持している。 又、第1,第2のX軸コラム12, 17側に前記θ軸回転テーブル5,5、旋回スクロール体治具7、固定スクロール体治具8をθ軸サーボモータ6,6により回転可能に支持している。 【0064】従って、この加工装置により両スクロール体9,10を前述した図1に示すような対応関係をもって治具7,8に支持し、かつ両加工具16,21を同一軸線上に配置した状態で、Y軸サーボモータ3及びZ軸サーボモータ4により両主軸14,19をY軸方向及びZ軸方向に移動制御するとともに、θ軸サーボモータ6,6により旋回スクロール体9及び固定スクロール体10を同期回転して、スクロール部9a,10aのスクロール面S 9 ,S 10の加工を移動軌跡T 21に基づいて前記第1実施例と同様に行なうことができる。 【0065】次に、請求項1記載の加工方法に使用される装置の別の実施例を図15及び図16により説明する。 この実施例では第1及び第2のX軸コラム12,1 7に対し、旋回スクロール体治具7及び固定スクロール体治具8を取り付けて旋回スクロール体9及び固定スクロール体10をコラム12,17に固定する。 又、ベース1の中央上面に固定コラム35を立設し、該コラム3 5に対し、両加工用主軸14,19をY軸方向、Z軸方向及びθ軸方向の移動可能に装着している。 すなわち、 固定コラム35にθ軸回転テーブル5を共通のθ軸サーボモータ6によ回転可能に支持するとともに、それらの回転テーブル5の内部に形成した正方形状の収容空間5 a内にY軸支持体38をY軸方向の往復動可能に嵌合し、このY軸支持体38に上下方向に形成した案内溝3 8aには、Z軸支持体39をZ軸方向の往復動可能に支持し、さらに、このZ軸支持体39に加工用主軸14, 19を支持している。 【0066】従って、この実施例の場合には、両スクロール体9,10を前述した図1に示すような対応関係をもって治具7,8に支持固定し、かつ両加工具16,2 1を同一軸線上に配置した状態で、両主軸14,19の加工具16,21を加工軌跡T 21に基づいてY軸方向、 Z軸方向及びθ軸方向の三方向に数値制御することにより、スクロール面S 9 ,S 10の同時加工を行うことができるので、多数個取りが可能となり、生産性を向上することができる。 【0067】なお、この発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば旋回半径rよりも小さい直径の加工具16,21を使用して加工動作を行うようにする等、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲内で各部の構成を任意に変更して具体化することもできる。 【0068】 【発明の効果】以上詳述したように、この発明は旋回及び固定のスクロール体のスクロール面の寸法精度を向上することができ、両スクロール体の組付状態における寸法精度を向上し、スクロール型圧縮機の性能のばらつきを抑制し、かつ圧縮効率を向上することができる。 【0069】又、この発明は旋回及び固定のスクロール体を対にして後工程へ流すことができるので、ランク選別を不要にして、作業能率を向上し、スクロール体の寸法精度を緩和することも可能で、数値制御動作に制約されず加工作業速度を速めて、生産能率を大幅に高めることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】この発明のスクロール形状加工方法の一実施例を示す正面図である。 【図2】加工装置の一実施例を示す正面図である。 【図3】図2の平面図である。 【図4】制御装置を示すブロック回路図である。 【図5】この発明の第2実施例を示す加工装置の一部省略斜視図である。 【図6】図5の加工装置によるスクロール形状加工動作を説明するための正面図である。 【図7】図5の加工装置によるスクロール形状加工動作を説明するための部分拡大正面図である。 【図8】この発明の第3実施例を示すスクロール形状加工装置の正面図である。 【図9】第3実施例の加工装置の主軸ヘッドの斜視図である。 【図10】図9の加工装置による加工動作を説明するための平面図である。 【図11】この発明の第4実施例を示すスクロール形状加工装置の正面図である。 【図12】第4実施例の加工装置の主軸ヘッドの斜視図である。 【図13】図11の加工装置による加工動作を説明するための平面図である。 【図14】この発明の別の実施例を示すスクロール形状加工装置の正面図である。 【図15】この発明の別の実施例を示すスクロール形状加工装置の正面図である。 【図16】図12の加工装置の主軸付近を示す正面図である。 【図17】固定スクロール体及び旋回スクロール体の動作を説明する断面図である。 【図18】固定スクロール体及び旋回スクロール体の動作を説明する断面図である。 【図19】固定スクロール体及び旋回スクロール体の基礎円を一致した状態を示す断面図である。 【図20】従来のスクロール形状加工装置を示す正面図である。 【符号の説明】 2A Y軸テーブル、2B Z軸テーブル、3 第1Y 軸サーボモータ、4Z軸サーボモータ、5 θ軸回転テーブル、6 θ軸サーボモータ 7 旋回スクロール体治具、8 固定スクロール体治具、9 旋回スクロール体、9a スクロール部、10 固定スクロール体、1 0a スクロール部、12 第1X軸コラム、13 第1X軸サーボモータ、14 旋回スクロール体加工用主軸、16 加工具、17 第2X軸コラム、18 第2 X軸サーボモータ、19 固定スクロール体加工用主軸、20 主軸用モータ、21 加工具、r 旋回スクロール体の旋回半径、R 加工具16,21の半径、K 9 ,K 10基礎円、O K9 ,O K10基礎円の中心軸線、 O 16 ,O 21加工具の中心軸線、T 16 ,T 21加工具1 6,21の加工軌跡、S 9 ,S 10スクロール面、 W 16 ,W 21オフセット長さ、E 加工具の中心軸線O 16 ,O 21を結ぶ線分。 |