鋳物孔加工品の形成方法及びスクリュ圧縮機のケーシング

申请号 JP2014015951 申请日 2014-01-30 公开(公告)号 JP6279915B2 公开(公告)日 2018-02-14
申请人 株式会社神戸製鋼所; 发明人 宮武 利幸; 米津 智也;
摘要
权利要求

平坦な内壁面を含む鋳抜き孔を有する鋳物を鋳造する鋳造工程と、 前記平坦な内壁面をドリルの回転軸に直交するように配置し、前記ドリルによって前記平坦な内壁面を通して前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する貫通孔の孔加工を施す孔加工工程とを備え、 前記鋳抜き孔の断面における前記平坦な内壁面上の一辺が、前記ドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1を加えた第2の長さH2を有することを特徴とする鋳物孔加工品の形成方法。鋳抜き孔の軸方向における途中位置に連通するようにドリルで孔加工を施す鋳物孔加工品の形成方法であって、 平坦な内壁面を含む鋳抜き孔を有する鋳物を鋳造する鋳造工程と、 前記平坦な内壁面をドリルの回転軸に直交するように配置し、前記鋳物に対して、鋳造工程における鋳抜き孔の位置ずれが生じていないと仮定した場合の当該鋳抜き孔の仮想中心線と直交する向きの延長線上に回転軸が位置決めされたドリルによって、前記平坦な内壁面を通して前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する深さが前記ドリルの直径Dの6倍以上の貫通孔の孔加工を施す孔加工工程とを備え、 ドリルで孔加工が施される位置の前記平坦な内壁面の幅が、少なくとも前記ドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1を加えた第2の長さH2を有することを特徴とする鋳物孔加工品の形成方法。前記鋳抜き孔の軸方向の長さである第3の長さをLとした場合、前記第3の長さLは前記ドリルの直径Dの6倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋳物孔加工品の形成方法。前記鋳抜き孔は中子を用いて形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鋳物孔加工品の形成方法。前記鋳抜き孔はフルモールド鋳造法を用いて形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鋳物孔加工品の形成方法。前記鋳抜き孔は前記鋳物を貫通する中子を用いて形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鋳物孔加工品の形成方法。前記鋳抜き孔はフルモールド鋳造法において前記鋳物を貫通させる消失模型を用いて形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鋳物孔加工品の形成方法。前記鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1は最大4mmに設定されることを特徴とする請求項6または7に記載の鋳物孔加工品の形成方法。鋳物のケーシングであって、 平坦な内壁面を含む鋳抜き孔と、 前記鋳抜き孔と直交し、前記平坦な内壁面を通して前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する方向の貫通孔とを備え、 前記鋳抜き孔の断面における前記平坦な内壁面上の一辺が、前記貫通孔を形成するドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1を加えた第2の長さH2を有することを特徴とするスクリュ圧縮機のケーシング。鋳物のケーシングであって、 平坦な内壁面を含む鋳抜き孔と、 前記鋳抜き孔の軸方向における途中位置に、前記鋳抜き孔と直交し、前記鋳物のケーシングに対して、鋳造工程における鋳抜き孔の位置ずれが生じていないと仮定した場合の当該鋳抜き孔の仮想中心線と直交する向きに前記平坦な内壁面を通して前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する、ドリルによって形成された貫通孔とを備え、 前記貫通孔が、前記ドリルの直径Dの6倍以上の深さを有し、 前記貫通孔が形成されている位置の前記平坦な内壁面の幅が、少なくとも前記ドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1を加えた第2の長さH2を有することを特徴とするスクリュ圧縮機のケーシング。前記鋳抜き孔の軸方向の長さである第3の長さをLとした場合、前記第3の長さLは前記ドリルの直径Dの6倍以上であることを特徴とする請求項9又は10の何れか1項に記載のスクリュ圧縮機のケーシング。

说明书全文

本発明は、鋳物孔加工品の形成方法及びスクリュ圧縮機のケーシングに関する。

一般的に、スクリュ圧縮機本体ケーシングには、軸受や歯車などの潤滑や冷却を目的として給油を行うための流路(給油流路)が設けられている。給油を必要とする箇所は数か所あるが、配管削減のために1カ所から給油することで、給油が必要な箇所すべてに油を供給できるよう、複数のドリル孔を接続して給油流路を形成することがある。その際、給油流路は、長さL/径Dが6以上の長い孔と、それと枝分かれしており比較的に長さが短い孔とで形成する場合がある。長い孔はロングドリルで穿設されるが、ロングドリルでの加工は、工具が特殊になるばかりでなく、加工時間も長いため生産性が悪い。

前記加工時間の問題は鋳抜きによって給油流路(各々の孔)を設けることで解決できる。しかし、複数のドリル孔の全てを鋳抜きに変えることは、孔の位置によっては中子の設置が困難で不可能な場合がある。

前記中子の設置の問題は、鋳物における中子の設置が困難な場所にドリル孔を追加工することで解決できる。しかし、鋳込み精度に起因して鋳抜き穴がずれた場合、その鋳抜き穴に対するドリル孔の加工位置が設計上の位置から相対的にずれることが考えられる。このような場合、ドリルの周方向で加工物との接触状態に不均一が生じ、ドリルの加工抵抗がドリルの径方向で異なる(主にドリルに対する径方向の反に差が生じる)ことによってドリルの逃げが発生する。ドリルの逃げはドリルが長いほど発生しやすく、この逃げにより、ドリルが損傷し、生産性が悪化するため、加工対象物にドリルの逃げを防止する構造が必要となる。

特許文献1には、図7Aに示すように、変速機ケース100の第1孔101に第1孔101長手方向に沿う矩形凹溝102を設けることにより、ドリル孔加工時のドリル逃げを防止する構造が開示されている。しかしながら、ドリル加工により穿設する第2孔103の中心が、鋳抜きで製作された第1孔101の中心を貫通するような場合には対応できない。

また、図7Bに示すように、本技術を適用する場所によっては、第1孔101中心に対して第2孔103中心を第1孔101の範囲外にある矩形凹溝102の範囲内まで偏心させることで、鋳物が大きくなりコスト面で不利になる。

通常、鋳抜き穴は中子を用いて製作するが、注湯時に中子がずれることは十分予想される。図7C及び図7Dに示すように、鋳抜き穴である第1孔101がずれた場合、突起104が形成される。孔に油などの液体が流れる場合、突起104が液体の抵抗により破損し、下流側へ流れることにより、給油ノズルの目詰まりや軸受などの精密部品を損傷し、品質の低下につながる恐れもある。

特開2012−11477号公報

本発明は、鋳物孔加工品の加工ドリルの逃げによるドリルの損傷を回避し、生産性を損なうことなく、低コスト性及び品質を向上させることを課題とする。

前記課題を解決するための手段として、本発明の鋳物孔加工品の形成方法は、平坦な内壁面を含む鋳抜き孔を有する鋳物を鋳造する鋳造工程と、前記平坦な内壁面をドリルの回転軸に直交するように配置し、前記ドリルによって前記平坦な内壁面を通して前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する貫通孔の孔加工を施す孔加工工程とを備え、前記鋳抜き孔の断面における前記平坦な内壁面上の一辺が、前記ドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1を加えた第2の長さH2を有するようにした。

前記課題を解決するための別の手段として、鋳抜き孔の軸方向における途中位置に連通するようにドリルで孔加工を施す鋳物孔加工品の形成方法であって、平坦な内壁面を含む鋳抜き孔を有する鋳物を鋳造する鋳造工程と、前記平坦な内壁面をドリルの回転軸に直交するように配置し、前記鋳物に対して、鋳造工程における鋳抜き孔の位置ずれが生じていないと仮定した場合の当該鋳抜き孔の仮想中心線と直交する向きの延長線上に回転軸が位置決めされたドリルによって、前記平坦な内壁面を通して前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する深さが前記ドリルの直径Dの6倍以上の貫通孔の孔加工を施す孔加工工程とを備え、ドリルで孔加工が施される位置の前記平坦な内壁面の幅が、少なくとも前記ドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1を加えた第2の長さH2を有するようにした。

これらの方法によれば、鋳抜き孔に形成される平坦な内壁面の一辺の長さあるいは幅が、ドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲の第1の長さH1を加えた第2の長さH2以上となるので、鋳抜き孔の位置に製造誤差が生じた場合であっても、鋳抜き孔に平坦な内壁面を通して確実に貫通孔を設けることができる。すなわち、孔加工工程において、ドリルの加工抵抗が異なることによるドリルの逃げを防止できるので、ドリルの損傷を回避でき、ドリル加工に長い加工時間を必要とする孔を加工時間を必要としない鋳抜き孔に置換できる。これにより、生産性が損なわれることを回避できる。また、鋳抜き孔の位置ずれを考慮した鋳造の製造誤差範囲に平坦な内壁面を形成しているので、鋳抜きの平坦な内壁面の範囲内に位置するように貫通孔を穿設することができる。そのため、鋳物外面に余分な肉を付ける必要がなく鋳物の大型化を回避できる。したがって、低コスト性を向上させることができる。また、鋳抜きの平坦な内壁面に対してドリル加工を行うことができるので、平坦な内壁面に突起形状が形成されることを回避できる。したがって、突起形状が破損して給油ノズルを詰まらせること、及び軸受等の精密部品を損傷すること等を回避でき、装置の品質の低下を回避できる。以上より、鋳物孔加工品の加工ドリルの逃げによるドリルの損傷を回避し、生産性を損なうことなく、低コスト性、及び品質を向上させることができる。

なお、前記平坦な内壁面の範囲内で前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する深さが前記ドリルの直径Dの6倍以上の貫通孔の孔加工を施す孔加工工程とを備えているので、前記ドリルの逃げを抑制することができる。したがって、貫通孔が鋳抜き孔を貫通するように設けられ、その貫通孔の先端側でその貫通孔に対して別途貫通するドリル孔(別の貫通孔)を連通させる場合においては、貫通孔同士の位置ずれを抑制することもできる。

前記鋳抜き孔の軸方向の長さである第3の長さをLとした場合、前記第3の長さLは前記ドリルの直径Dの6倍以上であってもよい。この方法によれば、鋳抜きにより鋳抜き孔を形成するので、ドリル加工ではロングドリルを用いることで長い加工時間が必要となるような長い孔であっても生産性を損なうことなく形成できる。

前記鋳抜き孔は中子を用いて形成されることが好ましい。この方法によれば、鋳物に鋳抜き孔を容易に形成できる。

前記鋳抜き孔はフルモールド鋳造法を用いて形成されることが好ましい。この方法によれば、鋳抜き孔の壁面にテーパ部分が形成されることを排除できる。したがって、鋳物に同一断面形状で鋳抜きを作ることができる。また、寸法精度の良い鋳物を製作できるため、鋳物の肉厚も抑えることができ、最小限のコストに抑えることができる。

前記鋳抜き孔は前記鋳物を貫通させる中子を用いて形成されることが好ましい。その際、前記鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1は最大4mm、好ましくは2mm〜4mmに設定すればよい。この方法によれば、注湯時の中子のずれを抑制することができる。そのため、鋳物に比較的長い鋳抜き孔(例えば、第3の長さLが第2の長さH2の6倍以上となるような孔)を容易に形成できる。

前記鋳抜き孔はフルモールド鋳造法において前記鋳物を貫通させる消失模型を用いて形成されることが好ましい。その際、前記鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1は最大4mm、好ましくは1.5mm〜3mmに設定すればよい。この方法によれば、位置ずれの小さい鋳抜き孔を形成することができる。そのため、鋳物に比較的に長い鋳抜き孔(例えば、第3の長さLが第2の長さH2の6倍以上となるような孔)を容易に形成できる。また、鋳抜き孔を同一断面形状に形成し易いため、鋳抜き孔の断面における一辺の長さを最小限に抑えることができる。

前記課題を解決するための手段として、本発明のスクリュ圧縮機のケーシングは、鋳物のケーシングであって、平坦な内壁面を含む鋳抜き孔と、前記鋳抜き孔と直交し、前記平坦な内壁面を通して前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する方向の貫通孔とを備え、前記鋳抜き孔の断面における前記平坦な内壁面上の一辺が、前記貫通孔を形成するドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1を加えた第2の長さH2を有するようにした。

ドリルによって貫通孔が加工されているので、鋳抜きの平坦な内壁面に突起形状が形成されることを回避できる。したがって、突起形状が破損して給油ノズルを詰まらせること、及び軸受等の精密部品を損傷すること等を回避でき、装置の品質の低下を回避できる。

前記課題を解決するための別の手段として、本発明のスクリュ圧縮機のケーシングは、鋳物のケーシングであって、平坦な内壁面を含む鋳抜き孔と、前記鋳抜き孔の軸方向における途中位置に、前記鋳抜き孔と直交し、前記鋳物のケーシングに対して、鋳造工程における鋳抜き孔の位置ずれが生じていないと仮定した場合の当該鋳抜き孔の仮想中心線と直交する向き前記平坦な内壁面を通して前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する、ドリルによって形成された貫通孔とを備え、前記貫通孔が、前記ドリルの直径Dの6倍以上の深さを有し、前記貫通孔が形成されている位置の前記平坦な内壁面の幅が、少なくとも前記ドリルの直径Dに鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1を加えた第2の長さH2を有するようにした。

これらの構成によれば、鋳物を貫通するような鋳抜き孔を形成しているので鋳抜き孔の位置ずれが抑制されている。その鋳抜き孔の平坦な内壁面に対してドリルによって貫通孔が加工されているので、鋳物外面に余分な肉を付ける必要がなく鋳物の大型化を回避できるとともに、突起形状が破損して給油ノズルを詰まらせること、及び軸受等の精密部品を損傷すること等を回避できる。したがって、低コスト性と装置の品質を向上させることができる。また、加工時間を必要としない鋳抜き孔を少なくとも備えているので、生産性が損なわれることを回避できる。なお、貫通孔が鋳抜き孔を貫通するように設けられ、その貫通孔の先端側でその貫通孔に対して別途貫通するドリル孔(別の貫通孔)を連通させる場合においては、貫通孔同士の位置ずれを抑制することもできる。

前記鋳抜き孔の軸方向の長さである第3の長さをLとした場合、前記第3の長さLは前記ドリルの直径Dの6倍以上であってもよい。この構成によれば、鋳抜きにより鋳抜き孔を形成しているので、ドリル加工ではロングドリルを用いることで長い加工時間が必要となるような長い孔であっても生産性を損なうことなく圧縮機のケーシングに設けることができる。

なお、前記平坦な内壁面の範囲内で前記鋳抜き孔の内部と前記鋳物の外部とを連通する深さが前記ドリルの直径Dの6倍以上の貫通孔の孔加工を施す孔加工工程とを備えているので、前記ドリルの逃げを抑制することができる。したがって、貫通孔が鋳抜き孔を貫通するように設けられ、その貫通孔の先端側でその貫通孔に対して別途貫通するドリル孔(別の貫通孔)を連通させる場合においては、貫通孔同士の位置ずれを抑制することもできる。

本発明によれば、鋳物孔加工品の加工ドリルの逃げによるドリルの損傷を回避し、生産性を損なうことなく、低コスト性及び品質を向上させることができる。

本発明の鋳物孔加工品の形成方法が適用されたスクリュ圧縮機のケーシングの一部を示す部分正面図。

本発明の鋳物孔加工品の形成方法が適用されたスクリュ圧縮機のケーシングの一部を示す部分側面図。

第1実施形態に係る製造誤差を有さない鋳物孔加工品の加工状態を示す断面図。

第1実施形態に係る製造誤差を有する鋳物孔加工品の加工状態を示す断面図。

第1実施形態の中子取り型を示す平面図。

第2実施形態に係る製造誤差を有さない鋳物孔加工品の加工状態を示す断面図。

本発明の変形例を示す断面図。

本発明の変形例に用いられる中子取り型を示す平面図。

本発明の変形例を示す断面図。

本発明の変形例に用いられる中子取り型を示す平面図。

従来のドリル逃げ防止構造を示す断面図。

第1孔の中心に対して偏心した第2孔を有する大型化した鋳物の一部を示す図。

突起形状の形成位置を示す図。

突起形状の形成位置を示す図。

以下、本発明の鋳物孔加工品の形成方法を実施するためのスクリュ圧縮機のケーシング(鋳物)について、図面を参照しながら説明する。なお、説明においては、便宜上、紙面における上下を上側及び下側と呼び、左右を横と呼んでいる。

(第1実施形態) 図1A及び図1Bは第1実施形態に係るスクリュ圧縮機のケーシング10の一部を示す。ケーシング10は、雌雄一対のスクリュロータ、スクリュロータのロータ軸を支持する軸受、ロータ軸の端部に設けられロータ間で駆動力を伝達するための歯車等を収容可能な形状を有している。ケーシング10は、軸受や歯車等の潤滑や冷却を目的として給油するための給油流路11を備えている。なお、図1A及び図1Bに示すケーシング10の姿勢は、後述する孔加工工程の加工時の姿勢(図2A、図2B、図4、図5A、図6A)とは異なる。

給油流路11は、鋳抜き孔12、加工孔(貫通孔)13、及び加工孔14によって構成されている。

図1Bに示すように、鋳抜き孔12は、ケーシング10の一端から他端へ貫通するように形成されている。鋳抜き孔12は、鋳物を貫通するように鋳型に設置された中子によりケーシング10を鋳造成形するときに鋳抜くことで成形される。鋳抜き孔12は、平面部15と曲面部16により画定されている。平面部15に接続する曲面部16は、砂の焼付きやとばされを防止するために設けられた形状である。鋳抜き孔12により形成される流路の断面形状は略正方形である。1つの平面部15である平坦な内壁面15aは、ドリル17の回転軸Pの軸心に直交するように配置されている。ドリル17の直径はDである。図2Aに示すように、平坦な内壁面15aには、ケーシング10に製造誤差(鋳造成形に伴う誤差)が生じていない状態でドリル17により貫通される位置に標準貫通部18が設定されている。また、図2Bに示ように、平坦な内壁面15aには、孔加工工程での加工時の標準貫通部18の上側及び下側に、それぞれ位置ずれ許容部19が設定されている。位置ずれ許容部19は、鋳物の製造誤差、すなわち中子の位置ずれに起因する鋳抜き孔12の位置ずれが生じた場合でも、ドリル17の加工抵抗を増加させない領域である。なお、図2Aおよび図2Bの何れの場合も、ドリル17は、平坦な内壁面15aを通す孔加工を施すように、鋳造工程における鋳抜き孔の位置ずれ(鋳造成形に伴う誤差)が生じていないと仮定した場合の鋳抜き孔の仮想中心線(設計上の中心線)P0と直交する向きの延長線上に回転軸が位置決めされている。図2Aおよび図2Bに示すように、ケーシング10の平坦な内壁面15aをドリル17の回転軸に直交するように配置したときに、平坦な内壁面15aの上下方向の一辺の長さ、すなわちドリルで孔加工が施される位置の幅は、ドリル17の直径Dに鋳物の製造誤差範囲の第1の長さH1を加えた第2の長さH2である。第1の長さH1は、上側の製造誤差範囲の長さ0.5H1、及び下側の製造誤差範囲の長さ0.5H1の合計である。鋳抜き孔12は、図3に示すような中子取り型20で形成した中子を用いて鋳造することで形成される。

加工孔13は、鋳抜き孔12を貫通するようにドリル直径Dの6倍以上の深さでドリル加工され形成されている。鋳抜き孔12の軸と加工孔13の軸とは略直交している。すなわち、鋳抜き孔12の軸と加工孔13の軸とは、直交する状態に対して製造誤差として許容されるズレ(±0.5H1以下)の範囲内に位置して略直方向に交差している。加工孔14は、加工孔13に連通するようにドリル加工され形成されている。加工孔13の軸と加工孔14の軸とは略直交している。鋳抜き孔12、加工孔13、及び加工孔14の各軸は、略同一平面上に位置している。

本発明の鋳物孔加工品の形成方法を説明する。この形成方法は、鋳造工程と、鋳造工程の後に続く孔加工工程とを備える。

鋳造工程は、中子を配置した鋳型に溶融金属を流し込んで鋳造する従来公知の工程である。本実施形態の鋳造工程により、ドリル17の回転軸Pに直交するように配置され上下方向の第2の長さH2を一辺とする平坦な内壁面15aを含む鋳抜き孔12を有する鋳物が鋳造される。

孔加工工程は、ドリル17により、ケーシング10の平坦な内壁面15aを通して鋳抜き孔12の内部とケーシング10の外部とを連通する貫通孔13の孔加工を施す工程である。孔加工工程では、孔加工装置にセットされたケーシング10に対して、ドリル17の回転軸Pが、鋳造工程における鋳抜き孔の位置ずれ(鋳造成形に伴う誤差)が生じていないと仮定した場合の当該鋳抜き孔の仮想中心線P0と直交する向きの延長線上に位置決めされる。つまり、ドリル17の先端を予め鋳抜き孔の設計上の中心線である仮想中心線P0の方向に設定された点に向かって前進することより、平坦な内壁面15aを通す孔加工を施す。

図2A及び図2Bは、ケーシング10の鋳抜き孔12にドリル17によってドリル加工する状態を示す。図2Aに示すように、鋳物の製造誤差、すなわちケーシング10に鋳抜き孔12の上下方向の位置ずれが生じていない場合、ドリル17は平坦な内壁面15aの標準貫通部18のみを貫通する。図2Bに示すように、鋳物の製造誤差、すなわちケーシング10に鋳抜き孔12の上下方向の位置ずれGが生じている場合、ドリル17は標準貫通部18、及び位置ずれ許容部19を貫通する。ケーシング10には、標準貫通部18の外側に位置ずれ許容部19を設けているので、標準貫通部18、及び位置ずれ許容部19を含む範囲にドリル17が貫通される。

この方法によれば、鋳抜き孔12に、ドリル17の直径Dに鋳物の製造誤差範囲の第1の長さH1を加えた第2の長さH2を一辺とする平坦な内壁面15aを形成しているので、鋳抜き孔12の位置に製造誤差が生じた場合であっても、鋳抜き孔12に平坦な内壁面15aを通して確実に貫通孔13を設けることができる。

すなわち、孔加工工程において、ドリル17を平坦な内壁面15aに貫通させることにより、ドリル17の加工抵抗が異なることによるドリル17の逃げを防止できるので、ドリル17の損傷を回避できる。ドリル加工に長い加工時間を必要とする孔を加工時間を必要としない鋳抜き孔12として形成しているので、生産性が損なわれることを回避できる。

また、鋳抜き孔12の位置ずれを考慮した製造誤差範囲に平坦な内壁面15aを形成しているので、鋳抜き孔12の中心に対して貫通孔13を穿設することができる。そのため、鋳物外面に余分な肉を付ける必要がなく鋳物の大型化を回避できる。したがって、低コスト性を向上させることができる。

また、鋳抜き孔12の平坦な内壁面15aに対してドリル加工を行うことができるので、平坦な内壁面15aに突起形状が形成されることを回避できる。したがって、突起形状が破損して給油ノズルを詰まらせること、及び軸受等の精密部品を損傷すること等を回避でき、装置の品質の低下を回避できる。

以上より、鋳物孔加工品の加工ドリルの逃げによるドリルの損傷を回避し、生産性を損なうことなく、低コスト性及び品質を向上させることができる。

鋳抜き孔12は中子を用いて形成されているので、鋳物に鋳抜き孔12を容易に形成できる。また、鋳抜き孔12の軸方向の長さ(第3の長さ)をLとした場合、長さL/ドリル17の直径Dが6以上に形成できるので、ドリル加工によればロングドリルを用いることで長い加工時間が必要となるような長い孔であっても生産性を損なうことがない。この際、鋳抜き孔12は鋳物を貫通する中子を用いて形成されていてよい。これにより、鋳物の製造誤差をより小さくすること、例えば、第1の長さH1を4mm以下(±2mm以下)程度とすることができる。

(第2実施形態) 第2実施形態に係るスクリュ圧縮機のケーシング10は、フルモールド鋳造法を用いて形成されている。フルモールド鋳造法は、例えば、ロストワックス法や消失模型鋳造法である。

ロストワックス法は、ワックス(ろう)で形成された模型が溶けることを利用した鋳造法であって、ワックス模型を忠実に転写した空間を有する鋳型に溶融金属を流し込む鋳造法である。

消失模型鋳造法は、発泡ポリスチレン等の発泡合成樹脂で製作した消失模型を鋳物砂中に埋設して鋳型を構成し、溶融金属をその消失模型に注入して該模型を燃焼気化させることにより、消失模型を溶融金属で置換して鋳物を鋳造する方法である。

図4は、第2実施形態のケーシング10の鋳抜き孔12にドリル17によってドリル加工する状態を示す。この例では、鋳抜き孔12の形成方法が第1実施形態とは異なるだけであり、鋳抜き孔12の形状は第1実施形態と同様である。本実施形態においても、平坦な内壁面15aに標準貫通部18、及び位置ずれ許容部19が設けられている点は第1実施形態と同様であり、それによって得られる効果も同様であるので、説明は省略する。

この方法によれば、中子を設置する方法と比べて寸法精度の良い鋳物を製作できるため、鋳物の肉厚も抑えることができ、最小限のコストに抑えることができる。さらに、鋳抜き孔12は鋳物を貫通する消失模型を用いて形成する方法によれば、鋳物を貫通する中子を用いて形成する場合と比べて、鋳物の誤差をより小さくすることができ、鋳抜き孔12のずれも小さいため、鋳抜き孔12の一辺の長さを最小限に抑えること、例えば、第1の長さH1を3mm以下(±1.5mm以下)程度とすることができる。また、鋳物を貫通しない鋳抜き穴とする場合、木型や金型を用いて鋳型を製作する従来公知の工程では、鋳抜き穴を形成するための形状を主型に持たせることもある。この場合、鋳物砂などから木型や金型等を容易に抜き取るため、鋳抜き穴の軸方向に沿ってテーパ部分を形成する必要があるが、フルモールド鋳造法によればそのようなテーパ部分を形成する必要性を排除できる。したがって、同一断面形状で比較的に長い非貫通状の鋳抜き穴を作ることができる。

なお、本発明の鋳物孔加工品の形成方法は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、本発明の鋳造工程は、ドリル17で孔加工が施される位置の幅がドリル17の直径Dに、鋳物の製造誤差範囲である第1の長さH1として最大4mmを加えた第2の長さH2の平坦な内壁面15aを含む鋳抜き孔を有する鋳物を鋳造するものとしてもよい。また、給油流路11の開口の形状は、平坦な内壁面15aを有する形状であれば、いかなる形状であってもよい。図5Aに示すように、鋳抜き孔12の開口の形状は、縦長6角形であってもよい。開口形状が縦長6角形の給油流路11は、図5Bに示す中子取り型20を用いて形成される。また、図6Aに示すように、鋳抜き孔12の開口の形状は、等サイズの2つの半円部とこれらをなめらかに結ぶ2本の直線部とからなる長円であってもよい。開口形状が長円の給油流路11は、図6Bに示す中子取り型20を用いて形成される。

10 スクリュ圧縮機のケーシング 11 給油流路 12 鋳抜き孔 13 加工孔(貫通孔) 14 加工孔 15 平面部 15a 平坦な内壁面(平面部) 16 曲面部 17 ドリル 18 標準貫通部 19 位置ずれ許容部 P 回転軸 P0 鋳抜き孔の仮想中心線 20 中子取り型

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