Forging method of the rotor material forging die and rotor material

申请号 JP2010518032 申请日 2009-06-24 公开(公告)号 JP5468541B2 公开(公告)日 2014-04-09
申请人 昭和電工株式会社; 发明人 英実 山田; 大輔 遠藤;
摘要
权利要求
  • 下金型と成形用の荷重を付与する上金型とを備え、センター孔を有し、かつ外周部に軸線に平行なベーン溝を有する略円柱形状のロータ素材を鍛造する金型であって、
    前記下金型は、その成形孔内に突出するベーン溝成形用の羽根部と、成形孔の中心に配置されるセンター孔成形用のセンターピンとを有し、
    前記上金型は、前記下金型のセンターピンおよび羽根部以外の部分に主荷重を付与する上金型本体と、前記上金型本体に穿設されたセンターピン対応孔に進退自在に嵌入されて前記センターピンに第1副荷重を付与する背圧ピンと、前記上金型本体に穿設された羽根部対応孔に進退自在に嵌入されて前記羽根部に第2副荷重を付与する背圧板とを有し、
    前記主荷重、前記第1副荷重および前記第2副荷重は、それぞれ独立した荷重に設定できるようになっており、
    型合わせ時における前記羽根部の先端面を前記羽根対応孔の開口面に対し一致または離間させるようにしたことを特徴とするロータ素材鍛造用金型。
  • 型合わせ時における前記羽根部の先端面と前記羽根部対応孔の開口面との間隔をベーン溝側の端面差としたとき、そのベーン溝側の端面差が0〜2mmに設定される請求項1に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 前記羽根部の外周面と前記羽根部対応孔の内周面との間の間隔を、ベーン溝側のクリアランスとしたとき、そのベーン溝側のクリアランスが0.01〜0.1mmに設定される請求項1または2に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 前記ベーン溝側のクリアランスが部分的に異なっている請求項3に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 前記ベーン溝側のクリアランスのうち、内周側端部および外周側端部の少なくともいずれか一方のクリアランスが、中間部のクリアランスに対し大きく設定される請求項3または4に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 型合わせ時における前記センターピンの先端面を前記センターピン対応孔の開口面に対し一致または離間させるようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 型合わせ時における前記センターピンの先端面と前記センターピン対応孔の開口面との間隔をセンター孔側の端面差としたとき、そのセンター孔側の端面差が0〜2mmに設定される請求項6に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 前記センターピンの外周面と前記センターピン対応孔の内周面との間隔を、センター孔側のクリアランスとしたとき、そのセンター孔側のクリアランスが0.01〜0.1mmに設定される請求項6または7に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 前記センター孔側のクリアランスが部分的に異なっている請求項8に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 前記背圧ピンの上部に設けられて第1副荷重を付与するための副荷重付与手段、および前記背圧板の上部に設けられて第2副荷重を付与するための副荷重付与手段を備える請求項1〜9のいずれか1項に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • 前記副荷重付与手段はガスクッションである請求項10に記載のロータ素材鍛造用金型。
  • センター孔を有し、かつ外周部に軸線に平行なベーン溝を有する略円柱形状のロータ素材を鍛造する方法であって、
    成形孔内に突出するベーン溝成形用の羽根部と、成形孔の中心に配置されるセンター孔成形用のセンターピンとを有する下金型を準備する一方、
    前記下金型のセンターピンおよび羽根部以外の部分に主荷重を付与する上金型本体と、前記上金型本体に穿設されたセンターピン対応孔に進退自在に嵌入されて前記センターピンに第1副荷重を付与する背圧ピンと、前記上金型本体に穿設された羽根部対応孔に進退自在に嵌入されて前記羽根部に第2副荷重を付与する背圧板とを有する上金型を準備しておき、
    型合わせ時に、前記羽根部の先端面を前記羽根部対応孔の開口面に対し一致または離間させる ものとし、
    前記主荷重、前記第1副荷重および前記第2副荷重は、それぞれ独立した荷重に設定できるようになっていることを特徴とするロータ素材の鍛造方法。
  • 型合わせ時における前記センターピンの先端面を前記センターピン対応孔の開口面に対し一致または離間させるようにした請求項12に記載のロータ素材 の鍛造方法
  • 前記第1副荷重および第2副荷重はそれぞれ29〜89MPaである請求項12または13に記載のロータ素材の鍛造方法。
  • 前記第1副荷重および第2副荷重を独立して制御する請求項12〜14のいずれか1項に記載のロータ素材の鍛造方法。
  • 前記ロータ素材はアルミニウムまたはアルミニウム合金製である請求項12〜 15のいずれか1項に記載の記載ロータ素材の鍛造方法。
  • 说明书全文

    この発明は、外周部にベーン溝を有するロータ素材を製造するためのロータ素材鍛造用金型およびロータ素材の鍛造方法に関する。

    コンプレッサーのロータやブレーキ制御用のロータリー式真空ポンプのロータは、外周部に軸心に対し平行なベーン溝を周方向に等間隔おきに複数形成したものが一般的である。 また、自動車に搭載する空調用ロータリー式コンプレッサーのロータやブレーキ制御用のロータリー式真空ポンプのロータは、軽量化を目的としてアルミニウム合金製が主流になっており、鍛造加工を用いて製造するのが一般的である。

    例えば下記特許文献1に示すロータ製造方法は、下金型の成形孔にベーン溝形成用の羽根部が形成されており、その成形孔上にセットした円柱形の鍛造素材を、上金型により下方に加圧して、鍛造素材を成形孔内に充填する。 これにより、ベーン溝が下端面から上端面近傍まで形成された円柱状のロータ素材を得る。 そしてそのロータ素材の上端部(余肉部)を軸心に対し直交する面に沿って切削加工により切除して、ベーン溝の一端側(上端側)を開放することにより、ベーン溝の両端を開放して、ロータ素材として構成するようにしている。

    また下記特許文献2に示すロータ製造方法は、上金型の成形面に、ベーン溝形成用の溝付けパンチが設けられており、下金型の成形孔内にセットされた鍛造素材に、上金型の溝付けパンチを打ち込んで、上端面から下端面近傍にかけてベーン溝を形成する。 その後続けて、溝付けパンチを打ち込んで、ベーン溝の下端側を閉塞する余肉部を打ち抜いて除去することにより、ベーン溝の両端を開放するようにしている。

    特開平11−230068号公報

    特開2000−220588号公報

    上記特許文献1に示す従来のロータ製造方法は、鍛造加工によって得られたロータ素材の余肉部を切除するものであるが、余肉部の除去作業が困難であり、生産効率が低下するおそれがあった。

    また上記特許文献2に示す従来のロータ製造方法は、ベーン溝の下端部を閉塞する余肉部を、溝付けパンチによって打ち抜いて除去するものであるが一般的に、打ち抜き加工は、破断位置を正確にコントロールするのが困難であり、不本意な割れや欠落が生じる可能性が高く、余肉部を的確に除去できない、という問題を抱えている。

    本発明の好ましい実施形態は、関連技術における上述した及び/又は他の問題点に鑑みてなされたものである。 本発明の好ましい実施形態は、既存の方法及び/又は装置を著しく向上させることができるものである。

    この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高い生産効率を確保しつつ、余肉部を的確に除去することができるロータ素材鍛造用金型およびロータ素材の鍛造方法を提供することを目的とする。

    本発明のその他の目的及び利点は、以下の好ましい実施形態から明らかであろう。

    上記の目的を達成するため、本発明は、以下の構成を備えている。

    [1]下金型と成形用の荷重を付与する上金型とを備え、センター孔を有し、かつ外周部に軸線に平行なベーン溝を有する略円柱形状のロータ素材を鍛造する金型であって、
    前記下金型は、その成形孔内に突出するベーン溝成形用の羽根部と、成形孔の中心に配置されるセンター孔成形用のセンターピンとを有し、
    前記上金型は、前記下金型のセンターピンおよび羽根部以外の部分に主荷重を付与する上金型本体と、前記上金型本体に穿設されたセンターピン対応孔に進退自在に嵌入されて前記センターピンに第1副荷重を付与する背圧ピンと、前記上金型本体に穿設された羽根部対応孔に進退自在に嵌入されて前記羽根部に第2副荷重を付与する背圧板とを有し、
    型合わせ時における前記羽根部の先端面を前記羽根部対応孔の開口面に対し一致または離間させるようにしたことを特徴とするロータ素材鍛造用金型。

    [2]型合わせ時における前記羽根部の先端面と前記羽根部対応孔の開口面との間隔をベーン溝側の端面差としたとき、そのベーン溝側の端面差が0〜2mmに設定される前項1に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [3]前記羽根部の外周面と前記羽根部対応孔の内周面との間の間隔を、ベーン溝側のクリアランスとしたとき、そのベーン溝側のクリアランスが0.01〜0.1mmに設定される前項1または2に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [4]前記ベーン溝側のクリアランスが部分的に異なっている前項3に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [5]前記ベーン溝側のクリアランスのうち、内周側端部および外周側端部の少なくともいずれか一方のクリアランスが、中間部のクリアランスに対し大きく設定される前項3または4に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [6]型合わせ時における前記センターピンの先端面を前記センターピン対応孔の開口面に対し一致または離間させるようにした前項1〜5のいずれか1項に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [7]型合わせ時における前記センターピンの先端面と前記センターピン対応孔の開口面との間隔をセンター孔側の端面差としたとき、そのセンター孔側の端面差が0〜2mmに設定される前項6に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [8]前記センターピンの外周面と前記センターピン対応孔の内周面との間隔を、センター孔側のクリアランスとしたとき、そのセンター孔側のクリアランスが0.01〜0.1mmに設定される前項6または7に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [9]前記センター孔側のクリアランスが部分的に異なっている前項8に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [10]前記背圧ピンの上部に設けられて第1副荷重を付与するための副荷重付与手段、および前記背圧板の上部に設けられて第2副荷重を付与するための副荷重付与手段を備える前項1〜9のいずれか1項に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [11]前記副荷重付与手段はガスクッションである前項10に記載のロータ素材鍛造用金型。

    [12]センター孔を有し、かつ外周部に軸線に平行なベーン溝を有する略円柱形状のロータ素材を鍛造する方法であって、
    成形孔内に突出するベーン溝成形用の羽根部と、成形孔の中心に配置されるセンター孔成形用のセンターピンとを有する下金型を準備する一方、
    前記下金型のセンターピンおよび羽根部以外の部分に主荷重を付与する上金型本体と、前記上金型本体に穿設されたセンターピン対応孔に進退自在に嵌入されて前記センターピンに第1副荷重を付与する背圧ピンと、前記上金型本体に穿設された羽根部対応孔に進退自在に嵌入されて前記羽根部に第2副荷重を付与する背圧板とを有する上金型を準備しておき、
    型合わせ時に、前記羽根部の先端面を前記羽根部対応孔の開口面に対し一致または離間させるようにしたことを特徴とするロータ素材の鍛造方法。

    [13]型合わせ時における前記センターピンの先端面を前記センターピン対応孔の開口面に対し一致または離間させるようにした前項12に記載のロータ素材の鍛造方法

    [14]前記第1副荷重および第2副荷重はそれぞれ29〜89MPaである前項12または13に記載のロータ素材の鍛造方法。

    [15]前記第1副荷重および第2副荷重を独立して制御する前項12〜14のいずれか1項に記載のロータ素材の鍛造方法。

    [16]前記センターピンの断面積が大きいほど第1副荷重を小さくする前項12〜15のいずれか1項に記載のロータ素材の鍛造方法。

    [17]前記ロータ素材はアルミニウムまたはアルミニウム合金製である前項12〜16のいずれか1項に記載の記載ロータ素材の鍛造方法。

    発明[1]のロータ素材鍛造用金型によれば、ベーン溝の一端面がロータ部の端面よりも内側に配置されたロータ素材を得ることができるため、ベーン溝内周面と余肉部外周面との径差を小さくできる。 このため、ベーン溝側の余肉部を簡単かつ的確に除去できて、生産効率を向上させることができる。

    発明[2][3]のロータ素材鍛造用金型によれば、上記の効果を確実に得ることができる。

    発明[4][5]のロータ素材鍛造用金型によれば、余肉部が不用意に脱落するのを防止することができる。

    発明[6]のロータ素材鍛造用金型によれば、センター孔の一端面がロータ部の端面よりも内側に配置されたロータ素材加工品を得ることができるため、センター孔内周面と余肉部外周面との径差を小さくできる。 このため、センター孔側の余肉部も簡単かつ的確に除去できて、より一層生産効率を向上させることができる。

    発明[7][8]のロータ素材鍛造用金型によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。

    発明[9]のロータ素材鍛造用金型によれば、センター孔側の余肉部が不用意に脱落するのを防止することができる。

    発明[10][11]のロータ素材鍛造用金型によれば、センターピンおよび羽根部のたわみ変形およびねじれ変形を抑制することができる。

    発明[12]のロータ素材の鍛造方法によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。

    発明[13][14]のロータ素材の鍛造方法によれば、上記の効果を、より確実に得ることができる。

    発明[15]のロータ素材の鍛造方法によれば、センターピンおよび羽根部に形状や寸法に応じて第1副荷重および第2副荷重を個別に設定でき、センター孔成形時に外周に向かうメタルフローと羽根部を内方に変形させるとの均衡をより確実に保つことができる。

    発明[16]のロータ素材の鍛造方法によれば、上記の効果を、より一層確実に得ることができる。

    発明[17]に記載のロータ素材の鍛造方法によれば、寸法精度に優れたアルミニウムまたはアルミニウム合金のロータ素材を、材料歩留まり良く鍛造することができる。

    図1はこの発明の実施形態であるロータ素材鍛造用金型を分解して示す斜視図である。

    図2Aは実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における鍛造準備段階での模式断面図である。

    図2Bは実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における上金型降下段階での模式断面図である。

    図2Cは実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における加工完了段階での模式断面図である。

    図2Dは実施形態の鍛造用金型による鍛造加工における加工品取出段階での模式断面図である。

    図3は実施形態の鍛造加工によって得られたロータ素材を示す斜視図である。

    図4は実施形態の製法によって製造されるロータを示す斜視図である。

    図5はロータ素材におけるベーン溝のオフセット量を示す平面図である。

    図6は実施形態の鍛造用金型における上金型を組立状態で示す斜視図である。

    図7Aは鍛造用金型における下金型への荷重付与状態を示す部分切欠斜視図である。

    図7Bは鍛造用金型における鍛造過程におけるメタルフローを説明するための図である。

    図8Aは実施形態におけるロータ素材の平面図である。

    図8Bは実施形態におけるロータ素材のベーン溝部分を拡大して示す平面図である。

    図9は実施形態の製造方法における工程手順を示すフローチャートである。

    図10は実施形態のロータ素材をセンター孔部で切り欠いて示す断面図である。

    図11は実施形態のロータ素材をベーン溝部で切り欠いて示す断面図である。

    図12は図10の二点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す断面図である。

    図13Aは図11の二点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す断面図である。

    図13Bは実施形態のロータ素材におけるベーン溝部周辺を余肉部を除去した状態で拡大して示す断面図である。

    図14は実施形態の製造方法における余肉部除去工程に用いられたポンチング装置を概略的に示す断面図である。

    <ロータ>
    まず始めにこの発明の実施形態に関連するロータ(R)の構成について説明する。 図4に示すように、ロータ(R)は、中心にシャフトを貫通させるシャフト孔としてのセンター孔(3)を有する概略円柱体であり、外周面には溝底が断面円形に拡大された5つのベーン溝(4)が設けられている。 これらのベーン溝(4)は、円柱体の軸線に平行で両端面に貫通し、前記センター孔(3)に偏心して内方に切り込むように設けられている。 また、図5に示すように、前記ベーン溝(4)のオフセット量(U)は、溝幅方向の中心線(L1)と、この中心線(L1)と平行でロータ(R)の軸線を通る直線(L2)との距離で表される。

    ロータ(R)の材料としては一般にアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられ、その一例としてSi:14〜16質量%、Cu:4〜5質量%、Mg:0.45〜0.65質量%、Fe:0.5質量%以下、Mn:0.1質量%以下、Ti:0.2質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を挙示できる。

    <製造工程>
    図9に示すように、ロータの製造工程は、主として、切断工程、質量選別工程、鍛造工程、ポンチング工程、熱処理工程および検査工程を含み、これらの工程を経た後、ロータ製品として出荷される。

    切断工程および質量選別工程は、鍛造素材を得るための工程であり、切断工程において、連続鋳造材を所定長さに切断して、所定長さの連続鋳造材を得た後、各鋳造材を質量(重量)に応じて選別することにより、所望の鍛造素材を得るものである。

    続いて鍛造加工において、上記鍛造素材を鍛造加工してロータ素材を得た後、ポンチング工程において、ロータ素材から余肉部を除去して、ロータ(R)を得るものである。

    その後、熱処理工程において、ロータ(R)に対し、加熱処理および焼入処理を行い、硬度および耐摩耗性を向上させて、ロータ製品とする。 そして検査工程において最終検査を行って、異常がなければ出荷される。

    以下、本実施形態に基づくロータ製造方法について詳細に説明する。

    <鍛造工程>
    図1,2A〜Dは本実施形態の鍛造加工に用いられる鍛造装置としての鍛造用金型を示す図、図3はこの鍛造用金型によって鍛造されるロータ素材(1)を示す図である。

    これらの図に示すように鍛造用金型は、ダイスとしての下金型(10)と成形用荷重を付与するパンチとしての上金型(30)とを備えている。 これらの金型材料としては周知の金型用鋼材が用いられる。

    下金型(10)は、成形孔(12)を有する下金型本体(11)と、下金型本体(11)の下側に配置されるベース(15)と、下金型本体(11)の上側に配置されるブッシュ(19)とに分割される。

    前記下金型本体(11)の成形孔(12)内には、孔内周壁面からベーン溝(4)を成形するための5つの羽根部(13)が突出している。 前記羽根部(13)は、ベーン溝(4)の断面形状に対応し、端部に円形部を有する薄板状である。 前記ベース(15)はプレート状であり、中心にロータ(R)のセンター孔(3)を成形するためのセンターピン(16)が固定され、このセンターピン(16)を囲むようにノックアウトピン(17)用の貫通孔(18)が穿設されている。 前記ブッシュ(19)は、下金型本体(11)の成形孔(12)と同径で上下に貫通する装填孔(20)を有する環状体である。

    前記ベース(15)、下金型本体(11)およびブッシュ(19)を組み付けると、下金型本体(11)の成形孔(12)内にセンターピン(16)が挿入されて成形孔(12)内部がロータ(R)の反転形状となり、かつブッシュ(19)の装填孔(20)が成形孔(12)に連通する。 また、図2(A)に示す鍛造の準備段階において、ノックアウトピン(17)はベース(15)の貫通孔(18)に挿入され、先端面がベース上面と同一高さとなる位置で待機している。

    上金型(30)は、鍛造素材(W)に主荷重(F)を付与するための上金型本体(31)と、副荷重(F1)(F2)を付与するための円形ピン(40)および扁平板(41)とに分割される。

    なお本実施形態においては、円形ピン(40)によって背圧ピンが構成されるとともに、扁平板(41)によって背圧板が構成されている。

    前記上金型本体(31)は、下半体のパンチ部(32)が前記ブッシュ(19)の貫通孔(20)に対応する外径の概略円柱体に形成され、大径の上半体(33)には上面に凹部(34)が形成されている。 この凹部(34)には、前記円形ピン(40)の断面形状に対応して該円形ピン(40)を進退可能に嵌入する1つの円形孔(35)と、前記扁平板(41)の断面形状に対応して該扁平板(41)を進退可能に挿入する5つの扁平孔(36)が形成されている。 前記円形孔(35)および扁平孔(36)はいずれもパンチ部(32)の先端面に貫通するものであり、扁平孔(36)はパンチ部(32)の外周面にも開口している。 また、前記円形孔(35)および扁平孔(35)の位置は下金型本体(11)におけるセンターピン(16)および羽根部(13)の位置に対応している。

    なお本実施形態においては、円形孔(36)によって、センターピン対応孔が構成されるとともに、扁平孔(35)によって、羽根部対応孔が構成されている。

    前記円形ピン(40)は、下金型本体(11)のセンターピン(16)よりも径の大きい円形ピンであり、上端に前記円形孔(35)よりも径の大きい抜止め部(42)が一体に形成されている。 前記扁平板(41)は、下金型本体(11)の羽根部(13)と同様に先端に円形部を有する薄板状であるが羽根部(13)よりもひとまわり大きく、上端に前記扁平孔(36)よりも断面積を拡大させた抜止め部(43)が一体に取り付けられている。

    そして、図2Aおよび図6に示すように、前記上金型本体(31)の凹部(34)から円形孔(35)に前記円形ピン(40)を嵌入するとともに、各扁平孔(36)に前記扁平板(41)を嵌入すると、上金型本体(31)、前記円形ピン(40)、前記扁平板(41)が合わさってパンチ部(32)の先端面および周面がそれぞれ連続し、一つの円柱体が形成される。

    前記の円形ピン(40)および扁平板(41)の上方には、これらに付与する荷重を付与するためのガスクッション(45)が配置されている。 前記ガスクッション(45)はシリンダ(46)内にピストンロッド(47)が進退自在に挿入され、ピストンロッド(47)に退入方向の力が加わると、内部に封入された圧縮ガスによって前記退入方向の力につり合う前進方向の力を生じるものであり、退入距離が大きくなるほど前進方向の力も大きくなる。 前記各ガスクッション(45)はシリンダ(46)が取付盤(48)に固定され、ピストンロッド(47)の先端を円形ピン(40)および扁平板(41)の前記抜止め部(42)(43)に当接させて、円形ピン(40)および扁平板(41)にピストンロッド(47)の前進力による初期荷重を付与した状態で、上金型本体(31)と取付盤(48)とが組み付けられている。 また、前記円形ピン(40)および扁平板(41)が上昇してピストンロッド(47)が退入すると、退入距離に応じた荷重が円形ピン(40)および扁平板(41)に付与される。 従って、取付盤(48)は上金型(30)とともに昇降するが、円形ピン(40)および扁平板(41)に付与される副荷重(F1)(F2)は、主荷重(F)から独立してガスクッション(45)によって制御される。

    前記第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)の値はガスクッション(45)の作動荷重の設定によって調節することができ、かつ円形ピン(40)および扁平板(41)それぞれにガスクッション(45)が装備されているので、これらも独立して荷重制御することができる。 即ち、前記上金型本体(32)に付与する主荷重(F)、円形ピン(40)に付与する第1副荷重(F1)、5つの扁平板(41)に付与する5つの第2副荷重(F2)はそれぞれ独立した荷重に設定することができる。

    前記下金型(10)と上金型(30)とは、前記円形ピン(40)および扁平板(41)が下金型(10)のセンターピン(16)および羽根部(13)の対応位置に存在するように配置されている。 従って、図7に示すように、第1副荷重(F1)はセンターピン(16)の真上に付与され、第2副荷重(F2)は羽根部(13)の真上に付与される。 主荷重(F)はセンターピン(16)および羽根部(13)以外の部分に付与される。 また、本発明において、前記第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)は主荷重(F)よりも小さい値に設定されている。

    次に、前記鍛造用金型を用い、図4のロータ素材(1)を製造するために鍛造素材(W)を鍛造する方法について、図2A〜D、図7,8を参照しつつ説明する。

    図2Aに示すように下金型(20)および上金型(30)の所要部分に潤滑剤を塗布し、円柱形の鍛造素材(49)をブッシュ(19)の装填孔(20)に装填する。 前記鍛造素材(W)は、既述したように、連続鋳造材を所定長さに切断する等の方法により製作されたものであり、必要に応じて所定温度に加熱されている。 前記潤滑剤としては、性黒鉛潤滑剤、油性黒鉛潤滑剤等を例示でき、鍛造素材(W)と金型(10)(30)との間でカジリが発生しないようにするには、水性黒鉛潤滑剤と油性黒鉛潤滑剤を併用することが好ましい。 塗布量はそれぞれ2〜10g程度である。 また、鍛造素材(W)がアルミニウム合金の場合の予備加熱温度は400〜450℃が好ましい。

    この状態から図2Bに示すように、上金型(30)を主荷重(F)で降下させて下金型(10)に装填された鍛造素材(W)を鍛造すると、鍛造素材(W)が成形孔(12)内に充填される過程で、主荷重(F)よりも小さい第1副荷重(F1)を付与された円形ピン(40)および第2副荷重(F2)を付与された扁平板(41)が押し上げられ、円形孔(35)および扁平孔(36)内に材料が流入する。 上金型(30)の下降に伴って円形ピン(40)および扁平板(41)が上昇し、ピストンロッド(47)の退入距離が大きくなるに従って、円形ピン(40)に付与される第1副荷重(F1)および扁平板(41)に付与される第2副荷重(F2)が増大する。 このようにして、鍛造素材(W)に対し、円形ピン(40)および扁平板(41)以外の部分には主荷重(F)が付与されるのに対し、円形ピン(40)および扁平板(41)に対応する部分には主荷重(F)から独立した第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)が付与される。

    図2Bに示すように、前記円形ピン(40)および扁平板(41)に主荷重(F)よりも小さい第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)を付与することによって、円形ピン(40)および扁平板(41)が上昇し、円形孔(35)および扁平孔(36)内に材料が流れ込む。 円形孔(35)および扁平孔(36)内に材料が流れ込むことによって、下金型(10)のセンターピン(16)および羽根部(13)にかかる力が緩和される。 その結果、図7Bに示すように、成形孔(12)の壁面と羽根部(13)との間のメタルフロー(α1)およびこのメタルフロー(α1)によって羽根部(13)を内方に変形させる力(α2)が緩和され、さらにセンター孔(3)の成形時に外周に向かうメタルフロー(α3)が羽根部(13)を内方に変形させる力(α2)と逆方向に働くので、これらの力(α2)(α3)の均衡を保つことによって、センターピン(16)および羽根部(13)のたわみ変形およびねじれ変形を抑制することができる。

    前記第1副荷重(F1)と第2副荷重(F2)の適正値はセンターピン(16)および羽根部(13)の体積に応じて適宜設定する。 これらの体積が大きくなるほど材料の逃がし量が増えるので、羽根部(13)の体積が一定ならば、センターピン(16)の体積が大きくなるほど第1副荷重(F1)を小さくして円形孔(35)への流入量を増やすことで均衡を保つことができる。

    上述した過程を経て図2Cに示すように、上金型(30)が下死点まで降下すると、ロータ素材(1)の形状に成形される。

    ここで本実施形態において、上金型(30)が下死点まで降下した時点(型合わせ時)では、センターピン(16)の先端面(上端面)は、円形孔(35)の開口面(下端位置)に対し、一致または離間させるようにしている。

    具体的に、センターピン(16)の先端面と、円形孔(35)の開口面との間の間隔をセンター孔側の端面差(D3)としたとき、そのセンター孔側の端面差(D3)を0〜2mmに設定している(図12参照)。

    さらに型合わせ時において、羽根部(13)の先端面(上端面)は、扁平孔(36)の開口面(下端位置)に対し、一致または離間させるようにしている。

    具体的には、羽根部(13)の先端面と、扁平孔(36)の開口面との間隔をベーン溝側の端面差(D4)としたとき、そのベーン溝側の端面差(D4)を、上記と同様、0〜2mmに設定している(図13A参照)。

    また本実施形態においては、センターピン(16)の外周面と、円形孔(35)の内周面との間隔を、センター孔側のクリアランス(D5)としたとき、そのセンター孔側のクリアランス(D5)を、0.01〜0.1mmに設定しており、より好ましくは、0.05〜0.1mmに設定するようにしている(図12参照)。

    さらに羽根部(13)の外周面と、扁平孔(36)の内周面との間隔を、ベーン溝側のクリアランス(D6)としたとき、そのベーン溝側のクリアランス(D6)を、上記と同様、0.01〜0.1mmに設定しており、より好ましくは、0.05〜0.1mmに設定するよういしている(図13A参照)。

    なお言うまでもなく、クリアランス(D5)(D6)を調整する場合には、円形孔(35)および扁平孔(36)の内径を変更することによって行うのが通例である。

    上金型(30)の打ち込みが完了した後は、図2Dに示すように、上金型(30)を上昇させ、ノックアウトピン(17)を上昇させて鍛造されたロータ素材(1)を突き出す。 円形ピン(40)および扁平板(41)がロータ素材(1)から離れて下方からの力が取り除かれると、ガスクッション(45)のピストンロッド(47)が初期位置に復帰する。

    上述した工程において、下金型(10)のセンターピン(16)および羽根部(13)のたわみ変形およびねじれ変形が抑制されるため、図3に示すロータ素材(1)はセンター孔(3)およびベーン溝(4)の寸法精度が高いものとなり、かつ変形を抑制することで金型寿命が長くなる。 しかも、羽根部(13)の変形防止のためにロータ素材の外径を拡大する必要がないので、後加工で切除する部分がなく材料に無駄が生じない。

    また、第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)を主荷重(F)よりも小さい値に設定したことで、円形ピン(40)および羽根部(13)が押しのける材料が流動し易くなっているため、上金型(30)を、円形孔(35)および扁平孔(36)に円形ピン(40)および羽根部(13)が食い込む高さまで降下させることができる。 このため、センター孔(3)およびベーン溝(4)の肉の移動によって、製作されるロータ素材(1)は、ロータ部(2)の上端面(一端面2a)に、センター孔(3)およびベーン溝(4)の部分に対応して余肉部(5)(6)が形成される。

    さらに第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)は個別に付与されるので、センター孔(3)上の余肉部(5)とベーン溝(4)上の余肉部(6)とが個別に形成され、これらの余肉部(5)(6)の平面形状は円形ピン(40)および扁平板(41)の断面形状に対応したものとなる。

    本実施形態においては、鍛造加工時に、第1,第2副荷重(F1)(F2)による背圧を付与するようにしているため、余肉部(5)(6)がロータ部(2)から不用意に引き裂かれたり、引きちぎれたりするような不具合を確実に防止できて、後述する構成の余肉部(5)(6)をロータ素材(1)に一体に形成することができる。

    ここで本実施形態において、ロータ素材(1)は、ロータ部(2)と、余肉部(5)(6)とにより構成されるものであり、ロータ部(2)には、余肉部(5)(6)が含まれない。

    こうして形成される余肉部(5)(6)は図10,11に示すように、ロータ部(2)の一端面(2a)から一端側に膨出するように設けられている。

    また既述したように、型合わせ状態で、センターピン(16)および羽根部(13)の各先端面が円形孔(35)および扁平孔(36)の各開口面に対し一致または離間しているため、ロータ素材(1)におけるセンター孔(3)およびベーン溝(4)の一端面(3a)(4a)は、余肉部(5)(6)の内部に到達しておらず、各一端面(3a)(4a)は、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも内側に配置されている。

    なお言うまでもなく、ロータ素材(1)におけるロータ部(2)の他端面(下端面2b)においては、センター孔(3)およびベーン溝(4)が共に開放されている。

    ここで、上記したように、センター孔側の端面差(D3)およびベーン溝側の端面差(D4)は、0〜2mmに設定されているため、ロータ素材(1)におけるロータ部(2)の一端面(2a)とセンター孔(3)およびベーン溝(4)の一端面(3a)(4a)との各端面差(破断長D3,D4)も、同様の値に設定される。

    さらに、センター孔側のクリアランス(D5)およびベーン溝側のクリアランス(D6)は、0.01〜0.1mm、好ましくは0.05〜0.1mmに設定されているため、ロータ素材(1)における余肉部(5)(6)の外周面と、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内周面との径差(D5)(D6)も、同様の値に設定される。

    一方図8Bに示すように、本実施形態においては、余肉部(6)とベーン溝(4)との径差(D6)うち、ロータ部外周側端部の径差(D61)および内周側端の径差(D62)が、中間主要部の径差(D60)よりも厚く形成されている。

    また本実施形態では、ロータ素材(1)におけるセンター孔(3)の内周面と一端面(2a)との間の曲率半径(r3)は、0.2〜1mmに設定されている。 さらにベーン溝(4)の内周面と一端面(4a)との間の曲率半径(r4)も、同様に、0.2〜1mmに設定されていることが好ましい。 この範囲に設定することで、図13Bに示すように余肉部(5)(6)を、例えばポンチングで除去した際に、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内側に残存する内バリのセンター孔(3)およびベーン溝(4)の内壁面からの高さ(B1)の平均値を好ましい値に調整することができる。 具体的には、内バリの高さ(B1)を1mm以下に設定することができる。 なおこの内バリの高さ(B1)が1mmを超える場合には、破断位置が不安定になり、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内側寸法の精度管理が困難になる。

    さらに本実施形態では、ロータ素材(1)における余肉部(5)(6)の外周面と一端面(2a)との間の曲率半径(r3a)(r4a)は、余肉部(5)(6)の上記内周面側の曲率半径(r3)(r4)以下に調整するのが良い。 具体的には、「r3a≦r3」「r4a≦r4」の関係を満足させるのが好ましい。 この範囲に設定することで、図13Bに示すように余肉部(5)(6)を、例えばポンチングで除去した際に、一端面(2a)に残存する凸バリ高さ(B2)の平均値を好ましい値に調整することができる。 具体的には、凸バリの高さ(B2)を1mm以下に設定することができる。 さらに破断位置も安定させることができ、その結果凸バリの高さ(B2)のバラツキも小さくなるので、後工程での切削代管理が容易になり、センター孔(3)およびベーン溝(4)の寸法精度管理が容易になる。 なお内バリの高さ(B2)が1mmを超える場合には、破断位置が不安定になり、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内側寸法の精度管理が困難になる。

    本発明で用いる金型は、このような形状を有するロータ素材を成形金型であり、上金型の円形孔(35)に曲率半径(r3a)を、扁平孔(36)の曲率半径(r4a)の反転形状を有するとともに、下金型のセンターピン(16)の曲率半径(r3)の反転形状を、羽根部(13)に曲率半径(r4)の反転形状を有するものである。

    本実施形態の鍛造加工では、主荷重(F)、第1副荷重(F1)、第2副荷重(F2)は、ロータ素材(1)の形状および各部の寸法、材料組成、加工温度等に応じて適宜設定する。 例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製で直径40〜70mm、高さ30〜60mmのロータ(R)を製造する場合の設定値として、主荷重(F):270〜325MPa、第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2):29〜89MPaを例示できる。

    また、第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)を小さく設定しすぎると余肉部(5)(6)が引き裂かれるおそれがあり、逆に大きく設定しすぎるとのセンターピン(16)および羽根部(13)にかかる力を緩和させる効果が小さく、たおれ変形およびねじれ変形を抑制する効果が小さくなる。 上述したようにアルミニウム合金製ロータ(R)を鍛造する場合は29〜89MPaが好ましく、さらに39〜49MPaの範囲が好ましい。 また、ガスクッション(45)のようなバネ式の副荷重付与手段では上金型(30)の下降に伴って第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)が増大するが、上記好適範囲の荷重は初期荷重である。

    また、第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)を付与するための副荷重付与手段は限定されないが、上金型(30)の昇降に追従して荷重を付与できるものが好ましい。 かかる観点で、ガスクッションのようなバネ式のものが好ましく、他の副荷重付与手段として、機械式バネ、油圧機構、ショックアブソーバを例示できる。

    <ポンチング工程>
    図14はポンチング加工工程(余肉部除去工程)に用いられる余肉部除去装置としてのポンチング装置(ダイセット)を概略的に示す断面図である。 同図に示すように、このポンチング装置は、下金型(8)と、上金型(9)とを備え、後に詳述するように、パンチング処理によってロータ素材(1)から余肉部(5)(6)を打ち抜いて除去できるようになっている。

    下金型(8)は、下プレート(81)と、その下プレート(81)の上面に設けられる下金型本体(85)とを備えている。

    下プレート(81)は、その中央に、上下方向に貫通する余肉部排出孔(82)が形成されている。 さらに下プレート(81)の両側部には、垂直方向に沿ってガイドバー(83)が立設されている。

    下金型本体(85)は、下プレート(81)の上面に余肉部排出孔(82)を閉塞するようにして固定されている。

    この下金型本体(85)には、下プレート(81)の余肉部排出孔(82)に対応して、ワーク設置部(86)が設けられている。 ワーク設置部(86)は、上記ロータ素材(1)をその一端面(2a)側を下側に向けて設置できるように構成されている。 すなわちこのワーク設置部(86)には、センター孔側余肉部(5)に対応してセンター孔側型抜き孔(87)が形成されるとともに、ベーン溝側余肉部(6)に対応してベーン溝側型抜き孔(88)が形成されている。 このセンター孔側型抜き孔(87)は、その内周形状がセンター孔側余肉部(5)の外周形状に対応して形成されており、センター孔側余肉部(5)を適合状態に嵌合できるようになっている。 さらにベーン溝側型抜き孔(88)は、その内周形状がベーン溝側余肉部(6)の外周形状に対応して形成されており、ベーン溝側余肉部(6)を適合状態に嵌合できるようになっている。 また各型抜き孔(87)(88)は、上下方向に貫通しており、下端側が下プレート(81)の余肉部排出孔(82)に連通している。

    そしてロータ素材(1)の余肉部(5)(6)を、型抜き孔(87)(88)にそれぞれ適合状態に嵌合して、ロータ部(2)の一端面(2a)をワーク設置部(86)上に載置するることにより、ロータ素材(1)をワーク設置部(86)上に位置決め状態にセットできるようになっている。

    上金型(9)は、上プレート(91)と、その上プレート(91)の下面に設けられる上金型本体(95)とを備えている。

    上プレート(91)は、上下方向に昇降自在に構成されており、図示しない油圧シリンダ等の昇降駆動手段によって昇降駆動できるようになっている。

    さらに上プレート(91)の両側部には、下プレート(83)のガイドバー(83)に対応して、ガイド孔(93)が設けられており、後述するように上プレート(91)が降下する際に、ガイドバー(83)がガイド孔(93)に挿入されることにより、上プレート(91)の降下移動がガイドされるようになっている。

    上金型本体(95)は、下金型本体(85)に対向するようにして、上プレート(91)の下面に固定されている。

    上金型本体(95)には、下金型本体(85)におけるセンター孔側型抜き孔(87)およびベーン溝側型抜き孔(88)にそれぞれ対応して、つまり下金型(85)に設置されるロータ素材(1)のセンター孔(3)およびベーン溝(4)にそれぞれ対応して、センター孔側打ち抜きパンチ(97)およびベーン溝側打ち抜きパンチ(98)がそれぞれ下方に突出するように取り付けられている。

    本実施形態においては、打ち抜きパンチ(97)(98)が衝撃部材として構成されている。

    次に、上記構成のポンチング装置を用い、ロータ素材(1)の余肉部(5)(6)を除去する方法について説明する。

    まずポンチング装置の下金型(8)におけるワーク設置部(86)に、ロータ素材(1)をその一端面(2a)側を下向きにして、各余肉部(5)(6)を、対応する型抜き孔(87)(88)に適合させた状態に設置する。 この設置状態では、上金型本体(85)のセンター孔側打ち抜きパンチ(97)およびベーン溝側打ち抜きパンチ(98)が、ロータ素材(1)のセンター孔(3)およびベーン溝(4)の他端側開口部に対向して配置される。

    こうしてロータ素材(1)をセットした状態で、上金型(85)を降下させると、上金型本体(85)のパンチ(97)(98)がロータ素材(1)の上端面(他端面2b)側からセンター孔(3)およびベーン溝(4)に挿入されて、各パンチ(97)(98)が余肉部(5)(6)に加圧状態で打ち付けられて、余肉部(5)(6)が打ち抜かれる。 これにより余肉部(5)(6)がロータ部(2)から除去され、その除去された余肉部(5)(6)が下プレート(81)の余肉部排出孔(82)を介して下方側に排出される。 こうして図14に示すように、ロータ素材(1)におけるセンター孔(3)およびベーン溝(4)の一端側が開放されることにより、センター孔(3)およびベーン溝(4)の両端が共に開放されたロータ(R)を得ることができる。

    ここで本実施形態において、余肉部(5)(6)とセンター孔(3)およびベーン溝(4)との径差(D5)(D6)を小さく設定しているため、余肉部(5)(6)を所定の位置で精度良く的確に除去することができる。

    特に本実施形態においては、余肉部(5)(6)の破断長(D3)(D4)を薄く形成しているため、余肉部除去時の破断領域を少なくでき、底荷重で簡単に除去できて、生産効率を向上させることができる。

    さらにパンチ(97)(98)により底荷重で余肉部(5)(6)を打ち抜くことができるため、高荷重が要因となって、ロータ(R)に有害な亀裂や破断が発生するのを有効に防止できて、高品質のロータ製品を製造することができる。

    その上さらに低荷重で加工できるため、パンチ(97)(98)自体の磨耗も軽減することができ、パンチ(97)(98)の耐久性、ひいてはポンチング装置の耐久性を一段と向上させることができる。

    また余肉部除去時の破断領域が少ないため、破断跡(破断面)も小さくなり、破断跡による悪影響を回避でき、例えば後工程において破断跡を仕上げるための仕上げ加工を行う必要もなく、工程数の削減により、生産性をより一層向上できるとともに、コストを削減することができる。

    しかも本実施形態においては、センター孔(3)およびベーン溝(4)の一端面(3a)(4a)が、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも内側に配置されているため、余肉部除去後の破断跡が、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内周面、つまりロータ(R)の内部に配置されるため、この点においても、破断跡による悪影響を防止でき、破断跡の後仕上げ加工が一切不要となり、より一層生産性を向上させることができる。

    また本実施形態においては、余肉部(6)とベーン溝(4)との径差(D6)のうち、ロータ部外周端側の径差(D61)および内周端側の径差(D62)を、中間主要部の径差(D60)よりも厚く形成しているため、鍛造加工後、ポンチング加工前に、余肉部(6)が不用意に脱落するのを防止でき、例えば余肉部(6)が鍛造加工用金型内に残存する等の不具合を確実に防止でき、高い生産性を維持することができる。

    その上さらに本実施形態においては、余肉部(6)の両端部径差(D61)(D62)を厚く形成しているため、この部分における不用意に破断するを確実に防止でき、余肉部(6)の不用意な脱落をより確実に防止することができる。 すなわち、余肉部(6)の両端部は、脱落時に破断開始点となり易く、その両端部を厚く形成することによって、破断が発生し難くなり、不用意な脱落をより確実に防止することができる。

    なお本実施形態においては、ベーン溝(4)側の余肉部(6)の外周における径差(クリアランスD6)を部分的に厚くするようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、センター孔(3)側の余肉部(5)の外周における径差(D5)を部分的に厚くするようにしても良い。

    ここで本実施形態において、余肉部外周の径差(D5)(D6)や破断長(D3)(D4)が大き過ぎる場合には、ポンチング加工において、余肉部(5)(6)を、精度良く除去できず、破断跡による悪影響が生じるおそれがある。 逆に径差(D5)(D6)が小さ過ぎる場合には、ポンチング加工前に、余肉部(5)(6)が不用意に脱落してしまうおそれがある。

    また破断長(D3)(D4)がマイナスの場合、つまり、センター孔(3)およびベーン溝(4)の一端面(3a)(4a)が、ロータ部(2)の一端面(2a)よりも外側で余肉部(5)(6)の内部に配置しているような場合には、ポンチング加工で余肉部(5)(6)を除去したとしても、余肉部(5)(6)の周壁の一部が残存して、残存部(破断跡)が、ロータ(R)の外方に突出するように配置されてしまう。 このため、その突出破断跡を、後工程において除去する必要があるため、工程数の増加して、生産性の低下を来たすおそれがあり、好ましくない。

    なお本実施形態のパンチング加工は、ロータ素材(1)を特に加熱する必要がなく、冷間で行っている。 もっとも本発明においては、パンチング加工を行う直前に、ロータ素材(1)を加熱して、パンチング加工を熱間で行うようにしても良い。

    <変形例>
    上記実施形態においては、余肉部(5)(6)を、センター孔(3)およびベーン溝(4)の他端側から挿入したパンチ(97)(98)によって打ち抜くようにしているが、本発明においては、余肉部を除去する際に、パンチによる打ち抜き加工だけに限られることはない。

    すなわちロータ素材(1)における外側から、例えば軸心方向に直交する方向から、ハンマー等の衝撃部材を打ち付けて、その衝撃により、余肉部を叩き落とすように除去したり、裁断工具等の衝撃部材によって、余肉部(5)(6)の付け根(基端部)を軸心方向に直交する面に沿って裁断(せん断)するようにして、余肉部(5)(6)を切り取るようにしても良い。

    〔実施例1〕
    図1および図2に示した鍛造用金型(10)(30)を用いて図3に示すロータ素材(1)を鍛造した。 前記ロータ素材(1)は、図4に示すアルミニウム合金製ロータ(R)を製作するための素材である。

    前記ロータ(R)において、外径:52mm、高さ:50mm、センター孔(3)の直径:10mm、ベーン溝(4)の数:5、溝幅:3mm、溝の深さ:15mm、オフセット寸法(U):10mmである。 さらに材料合金はA390を用いた。

    また下記の表1に示すように、前記鍛造用金型において、下金型(10)のセンターピン(16)と上金型(30)の円形孔(35)とのクリアランス(D5)を0.1mmとし、下金型(10)の羽根部(13)と上金型(30)の扁平孔(36)とのクリアランス(D6)も、上記と同様、0.1mmとした。

    さらに下金型(10)のセンターピン(16)と上金型(30)における円形孔(35)の開口面との間隔(破断長D3)を1.5mmとし、下金型(10)の羽根部(13)と上金型(30)における扁平孔(36)の開口面との間隔(破断長D4)も、上記と同様、1.5mmとした。

    そして、400℃に加熱した鍛造素材(W)を下金型(10)に装填し、以下の成形荷重を付与してロータ素材(1)を形成した。 この鍛造中に第1副荷重(F1)および第2副荷重(F2)が増大し、最終荷重はそれぞれの初期荷重の1.5倍であった。

    主荷重(F)=325MPa
    第1副荷重(F1)の初期荷重:32.9MPa(4.0kg/mm 2
    第2副荷重(F2)の初期荷重:44.1MPa(4.5kg/mm 2
    こうして得られたロータ素材(1)を、上記図14に示すポンチング装置を用いて、余肉部(5)(6)を除去してロータ(R)とした。

    鍛造素材(W)に対するロータ(R)の材料歩留まり(ロータ(R)の重量/鍛造素材(W)の重量×100)は82.9%であった。

    〔実施例2〕
    表1に示すように、余肉部(5)(6)の破断長(D3)(D4)を「0」に設定した以外は、上記実施例1と同様に、ロータ(R)を製作した。
    〔比較例1〕
    表1に示すように、余肉部(5)(6)の破断長(D3)(D4)を「−2mm」に設定した以外は、上記実施例と同様に、ロータ(R)を製作した。
    〔比較例2〕
    表1に示すように、余肉部(5)(6)の破断長(D3)(D4)を「−2mm」に設定し、余肉部外周のクリアランス(D5)(D6)を「2mm」に設定した以外は、上記実施例と同様にロータ(R)を製作した。
    〔評価〕
    表1に示すように、実施例1,2の製法では、鍛造加工時に、余肉部(5)(6)が不用意に破断したり脱落することがなく、滞りなく、加工することができた。

    さらに実施例1,2の製法では、ポンチング加工後(余肉部除去後)における破断面が小さくて、さらに破断跡(破断面)が、センター孔(3)およびベーン溝(4)の内部に形成されていた。 従って、破断跡を仕上げ加工せずとも、何ら問題はないと思われる。

    これに対し、比較例1の製法では、鍛造加工時に、余肉部(5)(6)が不用意に破断してしまい、スムーズに加工することができなかった。

    また比較例2の製法では、ポンチング加工後における破断面が大きく、しかも破断跡(破断面)が外部に突出するように配置されていた。 従って実際に使用する場合には、この破断跡を、仕上げ加工により除去する必要があると思われる。

    〔試験例1〜7〕
    センター孔(3)側の曲率半径(r3)(r3a)が、表2に示す値となるように調整した以外は、上記実施例1と同じ条件で、ロータを作製した。 そして内バリ、凸バリ(図13B参照)についての評価を行った。 その結果を表2に併せて示す。

    上表から明らかなように、曲率半径(r3)(r3a)を特定の値に調整したものは、内バリおよび凸バリの状態が安定していた。

    なおベーン溝(4)側の曲率半径(r4)(r4a)についても、上記と同様な試験を行ったところ、同様の評価を得ることができた。

    本願は、2008年6月24日付で出願された日本国特許出願の特願2008−164327号、および2009年2月26日付で出願された日本国特許出願の特願2009−44372号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。

    ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではなく、ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、この発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。

    本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものであるが、この開示は本発明の原理の実施例を提供するものと見なされるべきであって、それら実施例は、本発明をここに記載しかつ/または図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。

    本発明の図示実施形態を幾つかここに記載したが、本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではなく、この開示に基づいていわゆる当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を有するありとあらゆる実施形態をも包含するものである。 クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施例に限定されるべきではなく、そのような実施例は非排他的であると解釈されるべきである。

    本発明のロータ素材用方法は、コンプレッサー等のロータを製造する際に適用することができる。

    1:ロータ素材3:センター孔(シャフト孔)
    4:ベーン溝10:下金型12:成形孔13:羽根部16:センターピン30:上金型35:円形孔(センターピン対応孔)
    36:扁平孔(羽根部対応孔)
    40:円形ピン(背圧ピン)
    41:扁平板(背圧板)
    D3:センター孔側の端面差D4:ベーン溝側の端面差D5:センター孔側のクリアランスD6:ベーン溝側のクリアランスR:ロータW:鍛造素材

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