Scroll type fluid machine

申请号 JP2006354444 申请日 2006-12-28 公开(公告)号 JP4949823B2 公开(公告)日 2012-06-13
申请人 株式会社日立産機システム; 发明人 喜之 兼本;
摘要
权利要求
  • 鏡板に内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された一方のスクロールと、該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に該一方のスクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成するために内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された他方のスクロールとを備えてなるスクロール式流体機械において、
    少なくとも前記一方のスクロールのラップ部の 周面には、他方のスクロールのラップ部の 周面と接触または最接近する最接近部を巻回方向に間隔をもって複数設け、
    該隣合う最接近部を接続する面は、平坦面または前記ラップ部の曲率よりも小さい曲率の凸状曲面とし、
    前記隣合う最接近部を接続する面は前記最接近部よりも他方のスクロールに対して離間し、
    前記複数の最接近部は、巻回方向の間隔寸法を内径側で狭く外径側で広くなるように形成することを特徴とするスクロール式流体機械。
  • 前記他方のスクロールのラップ部の 周面には、前記一方のスクロールのラップ部の 周面に設けられた最接近部と接触または最接近する平坦状、凹湾曲状または凸湾曲状の最接近面を巻回方向に間隔をもって複数設ける構成としてなる請求項1に記載のスクロール式流体機械。
  • 前記一方のスクロールのラップ部の 周面と前記他方のスクロールのラップ部の 周面とのうち少なくともいずれか一方には、前記最接近部よりも軟質な材料を用いて膜状に形成された軟質被膜を設ける構成としてなる請求項1または2に記載のスクロール式流体機械。
  • 前記各最接近部は、前記ラップ部の内径側から外径側に亘り等しい角度間隔をもって形成する構成としてなる請求項1, 2または に記載のスクロール式流体機械。
  • 前記各最接近部は、前記鏡板に立設されたラップ部のうち当該鏡板から離れた軸方向の一部にのみ形成してなる請求項1,2, 3または に記載のスクロール式流体機械。
  • 前記各最接近部は前記ラップ部のうち巻回方向の内径側のみに形成し、前記ラップ部の外径側にはインボリュート曲線に従ったインボリュート曲面部を設けてなる請求項1,2,3, 4または に記載のスクロール式流体機械。
  • 说明书全文

    本発明は、例えば空気圧縮機、真空ポンプ等に用いて好適なスクロール式流体機械に関する。

    一般に、スクロール式流体機械は、固定スクロールと該固定スクロールに対面して設けられた旋回スクロールとを含んで構成されている。 また、固定スクロールと旋回スクロールとは、円板状に形成された鏡板と、該鏡板の内径側から外径側に向け渦巻状に巻回するように該鏡板に軸方向に立設されたラップ部とをそれぞれ備えている。 これにより、固定スクロールと旋回スクロールとは、互いのラップ部を重ね合わせることによって複数の圧縮室を画成している。

    そして、スクロール式流体機械は、駆動軸によって旋回スクロールを固定スクロールに対し一定の旋回半径をもって旋回運動させることにより、固定スクロールの外径側に設けた吸込口から気体を吸込み、各圧縮室内で順次圧縮し、この圧縮流体を固定スクロールの内径側に設けた吐出口から外部に向けて吐出することができる。

    また、スクロール式流体機械には、各ラップ部の周面に複数の突起を形成することにより、各ラップ部間の隙間を小さくして圧縮室の密閉性を高め、圧縮効率を向上するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。 このとき、複数の突起は、ラップ部の周面に巻回方向(渦巻方向)に間隔をもって設けられると共に、周囲に比べてラップ部の周面から径方向に突出して形成されている。

    特開2004−138056号公報

    特開2004−293487号公報

    ところで、上述した従来技術によるスクロール式流体機械は、ラップ部の周面に軸方向に延びる複数本の突起を形成することにより、対面するラップ部間から漏れ出る圧縮流体を少なくし、圧縮室の密閉性を高めている。

    しかし、従来技術では、隣合う突起間に径方向に窪んだ凹部が形成される。 このとき、突起が相手方のスクロールのラップ部に接触するものの、凹部は相手方のスクロールのラップ部には接触しない。 このため、この凹部に溜まった空気は圧縮されず、相手方のラップ部の周面が通過した後に低圧側に向けて漏れることになり、圧縮効率が悪いという問題がある。

    また、曲面からなるラップ部の周面に突起を設けるから、例えばエンドミル等の加工工具を突起に合わせて径方向に往復動させる必要があり、加工誤差が生じ易い傾向がある。 また、加工工程が複雑になるから、加工時間が長く、生産性が低いという問題もある。

    本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、互いに対面するラップ部の間隔を狭めて圧縮効率を高めることができると共に、加工時間を短縮して生産性を高めることができるようにしたスクロール式流体機械を提供することにある。

    本発明によるスクロール式流体機械は、鏡板に内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された一方のスクロールと、該一方のスクロールに対向して設けられ鏡板に該一方のスクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成するために内径側から外径側に向け渦巻状に巻回されたラップ部が軸方向に立設された他方のスクロールとを備えている。

    そして、上述した課題を解決するために、請求項1による発明が採用する構成の特徴は、少なくとも前記一方のスクロールのラップ部の周面には、他方のスクロールのラップ部の周面と接触または最接近する最接近部を巻回方向に間隔をもって複数設け、該隣合う最接近部を接続する面は、平坦面または前記ラップ部の曲率よりも小さい曲率の凸状曲面とし、前記隣合う最接近部を接続する面は前記最接近部よりも他方のスクロールに対して離間し、前記複数の最接近部は、巻回方向の間隔寸法を内径側で狭く外径側で広くなるように形成することにある。

    請求項2の発明では、前記他方のスクロールのラップ部の周面には、前記一方のスクロールのラップ部の周面に設けられた最接近部と接触または最接近する平坦状、凹湾曲状または凸湾曲状の最接近面を巻回方向に間隔をもって複数設ける構成としている。

    請求項3の発明では、前記一方のスクロールのラップ部の周面と前記他方のスクロールのラップ部の周面とのうち少なくともいずれか一方には、前記最接近部よりも軟質な材料を用いて膜状に形成された軟質被膜を設ける構成としている。

    請求項の発明では、前記各最接近部は、前記ラップ部の内径側から外径側に亘り等しい度間隔をもって形成する構成としている。

    請求項の発明では、前記各最接近部は、前記鏡板に立設されたラップ部のうち当該鏡板から離れた軸方向の一部にのみ形成する構成としている。

    請求項の発明では、前記各最接近部は前記ラップ部のうち巻回方向の内径側のみに形成し、前記ラップ部の外径側にはインボリュート曲線に従ったインボリュート曲面部を設ける構成としている。

    請求項1の発明によれば、隣合う最接近部を接続する面は平坦面またはラップ部の曲率よりも小さい曲率の凸状曲面としたから、従来技術のように隣合う突起の間に凹部が形成されることがない。 このため、互いに対面するラップ部の間隔を狭めることができ、ラップ部の間に滞留する流体を減らして圧縮効率を高めることができる。

    また、隣合う最接近部の間を平坦面または凸状曲面を用いてつなぐ構成としたから、最接近部の設けられたラップ部の周面の横断面を多角形状に形成することができる。 このため、従来技術のように曲面からなるラップ部の周面に突起を設けた場合に比べて、ラップ部の形状を簡略化することができる。 この結果、例えばエンドミル等の工具を用いてラップ部を切削加工するときでも、エンドミルを径方向に往復動させる必要がないのに加え、工具の方向転換回数を少なくすることができる。 このため、往復動に伴い加工機のバックラッシュの影響を受け難いから、加工誤差を低減でき、ばらつきの少ない高精度のラップ部を加工することができる。 また、従来技術のように突起を設けた場合に比べて、加工工具の移動距離が短くなると共に、加工方向の変更回数を低減することができるから、ラップ部の加工時間を短縮することができ、生産性を向上することができる。 さらに、多角形状の頂点座標を与えるだけで簡単に加工プログラムが組めると共に、頂点座標も容易に変更することができるから、例えば機械の仕様等に合わせてラップ部の形状を容易に変更することができる。

    また、最接近部は、対面するラップ部の周面に接触したときに、容易につぶれたり、摩耗することができるから、何回も接触することなくラップ部の周面に馴染ませることができる。 これにより、動損失を軽減し、また損傷、騒音、かじり等の発生を防止でき、耐久性、信頼性を向上することができる。

    さらに、ラップ部の隣合う最接近部間の角度を大きくすると耐かじり性が向上するが、圧縮性能が低下する。 一方、ラップ部の隣合う最接近部間の角度を小さくすると耐かじり性が低下するが、圧縮性能が向上する。 このため、このような相反するバランスを最適化することで、求める特性の機械を製造することができる。
    また、各最接近部は、巻回方向の間隔寸法Pを内径側で狭く外径側で広くなるように形成する構成としているので、ラップ部の曲率半径が内径側で小さくなるときに、この曲率半径に沿って複数の最接近部を狭い間隔で配置することができる。 このため、半径方向で対面するラップ部間の隙間を小さくして圧縮室の密閉性を高めることができ、圧縮性能を向上することができる。

    請求項2の発明によれば、他方のスクロールのラップ部の周面には、一方のスクロールのラップ部の周面に設けられた最接近部と接触または最接近する平坦状、凹湾曲状または凸湾曲状の最接近面を巻回方向に間隔をもって複数設けたから、他方のスクロールのラップ部の周面の横断面を多角形状に形成することができる。 このため、ラップ部の形状を簡略化することができるから、ラップ部の加工時間をさらに短縮することができ、生産性を向上することができる。

    請求項3の発明によれば、互いに対面する一方のスクロールのラップ部の周面と他方のスクロールのラップ部の周面とのうち少なくともいずれか一方には軟質被膜を設ける構成としたから、軟質被膜は、各最接近部と相手方のラップ部との間に介在できる。 このため、例えば機械の寸法誤差、組付誤差等によって最接近部が相手方のラップ部に接近し過ぎた場合には、軟質部材が最接近部または相手方のラップ部に接触する。 この場合、軟質被膜は、最接近部または相手方のラップ部との接触により容易に変形して馴染むことができるので、これらの間でかじり、損傷等が生じたり、動力損失、騒音等が増大するのを防止することができる。

    また、軟質被膜は最接近部とラップ部との間に挟まれた部位だけが変形するから、圧縮室の閉込み位置で各スクロールのラップ部間に形成される隙間の寸法を小さくすることができる。 このため、圧縮室の密閉性や圧縮効率を高めることができる。 さらに、例えば機械の寸法誤差や組付誤差等によって最接近部の移動範囲がばらつく場合でも、この最接近部の移動範囲のばらつきを軟質被膜によって吸収することができる。 このため、スクロールの加工、組立等を最低限の精度で行うことができるから、スクロール式流体機械を効率よく製造することができる。

    請求項の発明によれば、各最接近部は、ラップ部の内径側から外径側に亘りほぼ等しい角度間隔をもって形成する構成としているので、各最接近部の巻回方向の間隔寸法を、内径側で狭く外径側で広くすることができる。 この場合、ラップ部は、内径側で曲率半径が小さくなるが、この曲率半径に沿って複数の最接近部を狭い間隔で配置することができるから、半径方向で対面するラップ部間の隙間を小さくして圧縮室の密閉性を高めることができ、圧縮性能を向上することができる。

    請求項の発明によれば、各最接近部は、ラップ部のうち鏡板から離れた軸方向の一部にのみ形成する構成としたので、例えば一方のスクロールが旋回運動するときには、一方のスクロールの最接近部を各圧縮室の閉込み位置で他方のスクロールのラップ部に最接近または接触させることができ、最接近部により各圧縮室の密閉性を高めることができる。

    また、最接近部はラップ部のうち鏡板から離れた軸方向の一部にのみ形成したので、最接近部の軸方向長さ寸法を短くすることができ、最接近部によって生じる異音を小さくすることができる。 また、最接近部をラップ部の軸方向に対して小さくすることができるから、固定スクロールのラップ部と旋回スクロールのラップ部との間の平均隙間を小さくすることができ、圧縮効率を高めることができる。 そして、ラップ部内の温度を低減でき、チップシール等の寿命を延長することができる。 また、ラップ部の熱倒れが顕著に生じる歯先部分に最接近部を形成した場合には、熱倒れによるかじりを最接近部によって防止することができる。

    さらに、ラップ部の歯元側では、ラップ部の外周面と相手方のラップ部の内周面との間の隙間を、最接近部を設けないときの間隔寸法と同程度に設定することができるから、この位置でのラップ部の接触を防ぐことができ、信頼性を向上することができる。

    請求項の発明によれば、各最接近部はラップ部のうち巻回方向の内径側のみに形成し、ラップ部の外径側にはインボリュート曲面部を設けたので、例えばラップ部の最も外径側に画成される圧縮室の閉込み位置等では、各ラップ部の平滑な周面同士を最接近または接触させることができる。 これにより、圧縮時の体積効率に対して影響が大きい外径側の圧縮室を良好にシールでき、圧縮性能を高めることができる。

    特に、ラップ部の外周側では圧縮熱による温度上昇が少ないから、かじり現象が生じ難い。 このため、ラップ部の外周側に設けたインボリュート曲面部では他方のラップ部との隙間寸法を小さくすることができる。 これにより、各ラップ部の外径側で平滑な周面同士を確実に最接近または接触させることができ、ラップ部の内径側の最接近部によって発生した異音が外径側の吸込口等から外部に漏れるのを防ぐことができる。

    以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。

    ここで、図1ないし図6は第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、固定スクロールおよび旋回スクロールのラップ部の外周面に最接近部を設けた場合を例に挙げて述べる。

    図1はスクロール式空気圧縮機の縦断面図を示し、この図1において、1はスクロール式空気圧縮機の固定スクロールで、該固定スクロール1は、筒状に形成されたケーシング(図示せず)の端部に取付けられている。 また、固定スクロール1は、略円板状に形成され中心が後述する駆動軸9の軸線O1−O1と一致するように配設された鏡板2と、該鏡板2の表面2Aに立設された渦巻状のラップ部3と、鏡板2の外径側からラップ部3を取囲むように軸方向に突出した筒部4と、該筒部4から径方向外側に拡開したフランジ部5とによって大略構成されている。

    ここで、図2は図1に示すスクロール式空気圧縮機の横断面図で、ラップ部3は、この図2に示す如く、内径側(半径方向の内側)が巻始め端となり、外径側(半径方向の外側)が巻終り端となる渦巻状に形成されている。 また、ラップ部3の内周面3Aは、凹凸のない凹湾曲状の平滑面として形成されている。 一方、ラップ部3の外周面3Bは、後述する複数の平坦面8Aをつなぎ合わせた多角形状に形成されている。 そして、ラップ部3は、図6に示すように、例えばエンドミル等の切削工具を用いて渦巻状に切削加工される。

    また、固定スクロール1には、図1に示すように、鏡板2の外径側に位置して後述の圧縮室15に空気を吸込む吸込口6が設けられ、鏡板2の中央には圧縮室15で圧縮した空気を吐出する吐出口7が設けられている。

    8,8,…はラップ部3の外周面3B側に設けられた複数の最接近部で、該各最接近部8は、図2、図3に示す如く、ラップ部3の巻回方向(長さ方向)に間隔をもって配置され、軸方向に延びて形成されている。 このとき、隣合う最接近部8間の角度αは、例えば5度程度(α=0.087[rad])に設定されている。

    また、隣合う最接近部8の間は、平坦面8Aを用いてつなぐ構成としている。 これにより、ラップ部3の外周面3Bは横断面が多角形状に形成され、各最接近部8は、多角形状をなす外周面3Bの頂点(屈曲部位)にそれぞれ配置されている。 そして、最接近部8は、相手方となる旋回スクロール11のラップ部13の内周面13Aに接触または最接近するものである。

    なお、固定スクロール1のラップ部3と旋回スクロール11のラップ部13とが最接近する部位は、旋回スクロール11の旋回運動に伴って変化し、ラップ部3,13の巻終り端(外径側)から巻始め端(内径側)に向けて徐々に移動する。 このため、最接近部8よりも平坦面8Aが旋回スクロール11のラップ部13に最接近する状態もあり得る。 しかし、最接近部8は、多角形状をなす外周面3Bの頂点部分を指すものである。 このため、平坦面8Aとラップ部13とが最接近した状態の距離寸法に比べて、最接近部8とラップ部13とが最接近した状態の距離寸法は、小さくなっている。 即ち、平坦面8Aは、最接近部8よりも旋回スクロール11のラップ部13の内周面13Aに対して離間している。

    9はケーシングに回転可能に設けられた駆動軸で、該駆動軸9は、回転中心となる軸線O1−O1を有している。 また、駆動軸9は、固定スクロール1側の先端側が偏心して延びるクランク軸9Aとなり、該クランク軸9Aの中心線となる軸線O2−O2は、駆動軸9の軸線O1−O1に対して旋回半径εだけ偏心している。 そして、駆動軸9のクランク軸9Aには、旋回軸受10を介して後述の旋回スクロール11が回転可能に取付けられている。

    11は固定スクロール1と対向して駆動軸9に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール11は、軸線O2−O2を中心にして円板状に形成された鏡板12と、該鏡板12の表面12Aから軸方向に立設された渦巻状のラップ部13とによって大略構成されている。

    そして、旋回スクロール11は、ラップ部13が固定スクロール1のラップ部3に対し、例えば180度だけずらして重なり合うように配設されている。 これにより、両者のラップ部3,13間には後述する複数の圧縮室15が画成される。 そして、スクロール式空気圧縮機を運転すると、外周側の圧縮室15は、吸込口6から空気を吸込み、この空気を旋回スクロール11が旋回運動する間に内径側に移動しつつ順次圧縮し、最後に吐出口7から外部に圧縮空気を吐出する。

    ここで、旋回スクロール11を構成するラップ部13は、鏡板12の表面12Aに軸方向(軸線O1−O1の方向)に立設されている。 また、ラップ部13は、内径側が巻始め端となり、外径側が巻終り端となるn巻からなる渦巻状に形成されている。 さらに、ラップ部13の内周面13Aは、凹凸のない凹湾曲状の平滑面として形成されている。 一方、ラップ部13の外周面13Bは、後述する複数の平坦面14Aをつなぎ合わせた多角形状に形成されている。 そして、ラップ部13は、図6に示すように、例えばエンドミル等の切削工具を用いて渦巻状に切削加工される。

    14,14,…はラップ部13の外周面13B側に設けられた複数の最接近部で、該各最接近部14は、図2、図3に示す如く、最接近部8とほぼ同様に、ラップ部13の巻回方向(長さ方向)に間隔をもって配置され、軸方向に延びて形成されている。 このとき、隣合う最接近部14間の角度αは、例えば5度程度(α=0.087[rad])に設定されている。

    また、隣合う最接近部14の間は、平坦面14Aを用いてつなぐ構成としている。 これにより、ラップ部13の外周面13Bは横断面が多角形状に形成され、各最接近部14は、多角形状をなす外周面13Bの頂点(屈曲部位)にそれぞれ配置されている。 そして、最接近部14は、相手方となる固定スクロール1のラップ部3の内周面3Aに接触または最接近するものである。

    なお、固定スクロール1のラップ部3と旋回スクロール11のラップ部13とが最接近する部位は、旋回スクロール11の旋回運動に伴って変化する。 このため、最接近部14よりも平坦面14Aが固定スクロール1のラップ部3に最接近する状態もあり得る。 しかし、最接近部14は、多角形状をなす外周面13Bの頂点部分を指すものである。 このため、平坦面14Aとラップ部3とが最接近した状態の距離寸法に比べて、最接近部14とラップ部3とが最接近した状態の距離寸法は、小さくなっている。 即ち、平坦面14Aは、最接近部14よりも固定スクロール1のラップ部3の内周面3Aに対して離間している。

    ここで、旋回スクロール11のラップ部13の外周面13Bに設けられた最接近部14の詳しい配置関係について説明する。

    最接近部14は、ラップ部13の長さ方向となる巻回方向の間隔寸法Pが内径側で狭く、外径側で広くなるように形成している。 ここで、各最接近部14の配置に関して詳しく述べると、旋回スクロール11には、図3に示す如く、ラップ部13のインボリュート(伸開線)を描くために、その中心点O2(軸線O2−O2の位置)を中心とした縮閉線半径aの縮閉線Cが求められる。 なお、縮閉線半径aは、旋回半径εと旋回スクロール11のラップ部13の板厚寸法とによって定まる当該旋回スクロール11に固有の値で、インボリュート曲線では知られた事項である。

    そして、前記縮閉線Cに接して延びる無数の接線のうち、任意の接線をL1とし、この接線L1から角度αずつずらした位置に設けた他の接線をL2,L3,…とすると、前記最接近部14は、前記各接線L1,L2,…上に配置されている。

    ここで、本実施の形態では、各接線L1,L2,…間の角度αは5度前後に設定されている。 これにより、隣合う最接近部14の巻回方向の間隔寸法Pは、ラップ部13の内径側となる1巻目で狭く、外径側となるn巻目で広くなっている。

    このように、隣合う最接近部14の間隔寸法Pを、内径側で狭く(小さく)することにより、対面するラップ部3の曲率半径が小さく曲がりが急な部位に対しても、最接近部14をラップ部3の内周面3Aに所定の隙間をもって配置させることができる。

    さらに、最接近部14は、対面する固定スクロール1側のラップ部3の内周面3Aに接近したときに、ラップ部3の内周面3Aとの間の隙間寸法S2が、下記数1に示すように、最接近部8が対面する旋回スクロール11側のラップ部13の内周面13Aに接近したときの最接近部8と内周面13Aとの間の隙間寸法S1よりも大きな値に設定されている。

    このように、最接近部14とラップ部3との間の隙間寸法S2は、最接近部8とラップ部13との間の隙間寸法S1よりも大きくしているから、各ラップ部3,13間で接触が生じた場合には、最接近部14とラップ部3の外周面3Bとが接触するよりも前に、固定スクロール1のラップ部3の外周面3Bに設けられた最接近部8を旋回スクロール11のラップ部13の外周面13Bに接触させることができる。

    そして、固定スクロール1のラップ部3の最接近部8が旋回スクロール11のラップ部13に先に接触すると、この接触部位を支点として旋回スクロール11に自転力の方向と同じ方向に回転させようとする力が作用する。 これにより、旋回スクロール11は自転力の方向に押動されることになるから、例えば旋回スクロール11とケーシングとの間に設けられる自転防止機構(図示せず)等のがたつきを無くすことができる。

    一方、固定スクロール1のラップ部3の外周面3Bに設けられた各最接近部8は、前述した最接近部14の配置関係等に関する条件と同様の条件となっているため、説明を省略するものとする。

    なお、最接近部8,14は、ラップ部3,13の巻回方向の全長に設ける構成としたが、例えばラップ部3,13の巻回方向の全長のうち、最も内径側となる巻始め端から半巻き程度の部位を除いた外周面3B,13Bに形成してもよい。 このラップ部3,13の外周面3B,13Bで巻始め端から半巻き程度の部位は、曲率半径が最も小さく、また熱による寸法変化も小さいことから、各最接近部8,14を設けなくても十分に圧縮室15を密閉できるためであり、この部位は平滑面として形成される。

    本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機は、上述したような構成を有するもので、次に、このスクロール式空気圧縮機の動作について説明する。

    まず、電動モータ等の駆動源(図示せず)により駆動軸9を回転駆動すると、旋回スクロール11は、自転防止機構によって自転が防止された状態で、駆動軸9の軸線O1−O1を中心として旋回半径εの旋回運動を行ない、固定スクロール1のラップ部3と旋回スクロール11のラップ部13間に画成される圧縮室15は連続的に縮小する。 これにより、固定スクロール1の吸込口6から吸込んだ空気は各圧縮室15で順次圧縮しつつ、固定スクロール1の吐出口7から圧縮空気として外部のタンク(図示せず)に向け吐出することができる。

    また、旋回スクロール11が固定スクロール1に対して旋回運動するときには、最接近部8,14とラップ部13,3の内周面13A,3Aとが最接近するか、または両者が接触した状態となり、これらの最接近(接触)部位は各圧縮室15内に空気を閉込める閉込み位置となる。 そして、最接近部8は、各圧縮室15の閉込み位置でラップ部3の外周面3Bとラップ部13の内周面13Aとの間の隙間を減少させる。 また、最接近部14は、各圧縮室15の閉込み位置でラップ部13の外周面13Bとラップ部3の内周面3Aとの間の隙間を減少させる。 これにより、最接近部8,14は各圧縮室15の密閉性を高めることができる。

    然るに、本実施の形態では、各スクロール1,11のラップ部3,13の外周面3B,13Bには巻回方向に間隔をもって複数の最接近部8,14を設け、隣合う最接近部8,14の間を平坦面8A,14Aでつなぐことによって外周面3B,13Bを多角形状に形成する構成としている。 このとき、隣合う最接近部8,14の間を平坦面8A,14Aを用いてつなぐ構成としたから、従来技術のように隣合う突起の間に径方向に窪んだ凹部が形成されることがない。 このため、互いに対面するラップ部3,13の間隔を狭めることができ、ラップ部3,13の間に滞留する空気を減らして圧縮効率を高めることができる。

    また、隣合う最接近部8,14の間を平坦面8A,14Aを用いてつなぐ構成としたから、ラップ部3,13の外周面3B,13Bの横断面を多角形状に形成することができる。 このため、従来技術のように曲面からなるラップ部の周面に突起を設けた場合に比べて、ラップ部3,13の形状を簡略化することができる。 この結果、例えばエンドミル等の工具を用いてラップ部3,13を切削加工するときでも、エンドミルを突起に沿って径方向に往復動させる必要がないのに加え、工具の方向転換回数を少なくすることができる。 このため、一般に加工機には往復動作時のバックラッシュに伴って5μm程度の加工誤差が生じるのに対して、本実施の形態では、このようなバックラッシュの影響を受け難く、加工誤差を低減することができ、ばらつきの少ない高精度のラップ部3,13を加工することができる。

    また、従来技術のように突起を設けた場合に比べて、エンドミル等の工具の移動距離が短くなると共に、工具の方向転換回数を低減することができるから、ラップ部3,13の加工時間を短縮することができ、生産性を向上することができる。 さらに、多角形状の頂点座標を与えるだけで簡単に加工プログラムが組めると共に、頂点座標も容易に変更することができるから、例えば圧縮機の仕様等に合わせてラップ部3,13の形状を容易に変更することができる。

    また、ラップ部3の最接近部8は相手方のラップ部13の内周面13Aに対して線接触に近い状態で面接触するから、この接触によって最接近部8を容易につぶし、また摩耗させることができる。 このため、ラップ部3の最接近部8は、何回も接触することなくラップ部13の内周面13Aに馴染むことができる。 同様に、ラップ部13の最接近部14も、相手方のラップ部3の内周面3Aに容易に馴染むことができる。 これにより、動力損失を軽減し、また損傷、騒音、かじり等の発生を防止でき、耐久性、信頼性を向上することができる。

    さらに、ラップ部3,13の隣合う最接近部8,14間の角度αを大きくすると、最接近部8,14の内角(隣合う2つの平坦面8A,14Aのなす角)がより鋭角になるので、耐かじり性が向上するが、平坦面8Aと外周面13Aとの隙間および平坦面14Aと外周面3Aとの隙間が増大するため、圧縮性能が低下する。 一方、ラップ部3,13の隣合う最接近部8,14間の角度αを小さくすると、最接近部8,14の内角がより鈍角になるので、耐かじり性が低下するが、平坦面8Aと外周面13Aとの隙間および平坦面14Aと外周面3Aとの隙間が減少するため、圧縮性能が向上する。 このため、例えば角度αを5度程度(α=0.087[rad])に設定することによって、このような相反するバランスを最適化することができ、耐かじり性と圧縮性能のバランスがとれた圧縮機を製造することができる。

    一方、隣合う最接近部8,14は、5度程度の角度αの間隔をもって配設することにより、ラップ部3,13の巻回方向の間隔寸法Pが内径側で狭く、外径側で広くなるように形成している。 これにより、ラップ部3,13の曲率半径が小さく曲がりが急な部位に対しても、巻回方向の間隔寸法Pが狭くなった最接近部8,14を相手方のラップ部13,3の内周面13A,3Aに沿うように接近して配置することができ、圧縮室15の密閉性を高めて、圧縮性能を向上することができる。

    さらに、固定スクロール1のラップ部3の最接近部8と旋回スクロール11のラップ部13の内周面13Aとの間の隙間寸法S1と、旋回スクロール11のラップ部13の最接近部14と固定スクロール1のラップ部3の内周面3Aとの間の隙間寸法S2とは、数1に示すようにS1<S2の関係をもって設定している。 これにより、各ラップ部3,13間で接触が生じた場合には、固定スクロール1のラップ部3の外周面3Bに設けられた最接近部8と旋回スクロール11のラップ部13の内周面13Aとを先に接触させることができる。 このため、接触部位を支点として旋回スクロール11を自転力の方向と同じ方向に回転させることができ、自転防止機構(図示せず)等のがたつきを防止して、圧縮性能を向上することができる。

    なお、前記第1の実施の形態では、隣合う最接近部8,14の間を平坦面8A,14Aを用いてつなぐ構成とした。 しかし、本発明はこれに限らず、例えば図7に示す第1の変形例のように、隣合う最接近部8,14の間を凸状曲面8A′,14A′を用いてつなぐ構成としてもよい。 この場合、凸状曲面8A′,14A′は、最接近部8,14よりも先に相手方のラップ部13,3の内周面13A,3Aに接触しないようにするために、ラップ部3,13の曲率よりも小さい曲率をもって形成する。

    また、前記第1の実施の形態では、固定スクロール1のラップ部3および旋回スクロール11のラップ部13のいずれにも最接近部8,14を設ける構成としたが、固定スクロールと旋回スクロールとのうちいずれか一方にのみ最接近部を設ける構成としてもよい。

    また、最接近部8,14は、例えばその先端部に巻回方向に僅かな幅(例えば数μm程度)をもった平坦面を備える構成としてもよい。

    さらに、前記第1の実施の形態では、ラップ部3,13の内径側から外径側に亘って隣合う最接近部8,14は等しい角度αの間隔をもって形成した。 しかし、本発明はこれに限らず、ラップ部の内径側と外径側とで隣合う最接近部を異なる角度間隔をもって形成してもよい。

    次に、図8および図9は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、各スクロールのラップ部の内周面には平坦状の最接近面を巻回方向に間隔をもって複数設ける構成としたことにある。 なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。

    21はスクロール式空気圧縮機の固定スクロールで、該固定スクロール21は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板22、ラップ部23、筒部24、フランジ部(図示せず)等により構成されている。 そして、ラップ部23は、内周面23Aと外周面23Bとを有する渦巻状に形成されている。

    25,25,…はラップ部23の外周面23B側に設けられた複数の最接近部で、該各最接近部25は、第1の実施の形態による最接近部8とほぼ同様に、ラップ部23の巻回方向(長さ方向)に角度αの間隔をもって配置され、軸方向に延びて形成されている。 また、隣合う最接近部25の間は、平坦面25Aを用いてつなぐ構成としている。 これにより、ラップ部23の外周面23Bは横断面が多角形状に形成されている。 そして、最接近部25は、相手方となる旋回スクロール27のラップ部28の内周面28Aに接触または最接近するものである。

    26,26,…はラップ部23の内周面23A側に設けられた平坦状の複数の最接近面で、該各最接近面26は、巻回方向(長さ方向)に例えば最接近部29と同じ角度αの間隔をもって配置されている。 また、隣合う最接近面26の間は、旋回スクロール27のラップ部28から離間する方向(径方向外側)に凹陥した窪み部26Aを用いてつなぐ構成としている。 これにより、ラップ部23の内周面23Aは横断面が多角形状に形成されている。 また、隣合う窪み部26Aは、相手方の最接近部29に対して半分位相をずらした位置に配置されている。 これにより、最接近面26の巻回方向の中間部位は、相手方のラップ部28の外周面28Bに設けられた最接近部29に対して接触または最接近するものである。 なお、窪み部26Aは、エンドミル等による切削加工に伴って工具の半径と同程度の半径をもった曲面形状に形成されている。

    27は固定スクロール21と対向して配置された旋回スクロールで、該旋回スクロール27は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板(図示せず)に立設された渦巻状のラップ部28を有し、該ラップ部28は、内周面28Aと外周面28Bとを有している。

    29,29,…はラップ部28の外周面28B側に設けられた複数の最接近部で、該各最接近部29は、第1の実施の形態による最接近部14とほぼ同様に、ラップ部28の巻回方向(長さ方向)に角度αの間隔をもって配置され、軸方向に延びて形成されている。 また、隣合う最接近部29の間は、平坦面29Aを用いてつなぐ構成としている。

    30,30,…はラップ部28の内周面28A側に設けられた平坦状の複数の最接近面で、該各最接近面30は、巻回方向(長さ方向)に例えば最接近部25と同じ角度αの間隔をもって配置されている。 また、隣合う最接近面30の間は、固定スクロール21のラップ部23から離間する方向に凹陥した窪み部30Aを用いてつなぐ構成としている。 また、隣合う窪み部30Aは、相手方の最接近部25に対して半分位相をずらした位置に配置されている。

    これにより、ラップ部28の内周面28Aおよび外周面28Bは、いずれも横断面が多角形状に形成されている。 そして、最接近部29は最接近面26に接触または最接近し、最接近面30は最接近部25に接触または最接近するものである。

    かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。 そして、特に本実施の形態では、ラップ部23,28の内周面23A,28Aには平坦状の最接近面26,30を巻回方向に間隔をもって複数設けたから、内周面23A,28Aをインボリュート曲線に沿った曲面に形成した場合に比べて、最接近部25,29と最接近面30,26とが、より線接触に近い状態で面接触する。 即ち、隣合う最接近部25,29間の角度αを第1の実施の形態と同じ値に設定した場合でも、第1の実施の形態に比べて、さらに耐かじり性を向上することができる。

    また、ラップ部23,28の内周面23A,28Aには平坦状の最接近面26,30を巻回方向に間隔をもって複数設けたから、各スクロール21,27のラップ部23,28の外周面23B,28Bに加えて、内周面23A,28Aの横断面も多角形状に形成することができる。 このため、ラップ部23,28の形状を簡略化することができるから、ラップ部23,28の加工時間をさらに短縮することができ、生産性を向上することができる。

    なお、前記第2の実施の形態では、最接近面26,30は平坦状の平面によって形成した。 しかし、本発明はこれに限らず、例えば図10中に一点鎖線で示すように、最接近面26′,30′を凹湾曲状の曲面(凹状曲面)を用いて形成してもよい。 この場合、最接近面26′,30′は、その中間部位だけが相手方のラップ部28,23の外周面28B,23Bに接触するように、その曲率が各ラップ部23,28のインボリュート曲線の曲率よりも小さい値に設定する。 これにより、最接近面26,30を平面によって形成した場合に比べて、耐かじり性が低下するが、ラップ部23,28間の間隔が狭くなり、圧縮性能が向上する。
    一方、図10中に二点鎖線で示すように、最接近面26″,30″を凸湾曲状の曲面(凸状曲面)を用いて形成してもよい。 この場合、最接近面26,30を平面によって形成した場合に比べて、圧縮性能が低下するが、耐かじり性が向上する。

    また、前記第2の実施の形態では、固定スクロール1のラップ部3および旋回スクロール11のラップ部13のいずれにも最接近面26,30を設ける構成としたが、固定スクロールと旋回スクロールとのうちいずれか一方にのみ最接近面を設ける構成としてもよい。

    次に、図11は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、各スクロールのラップ部の外周面に軟質被膜を設ける構成としたことにある。 なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。

    31は固定スクロール1のラップ部3の外周面3Bに設けられた軟質被膜で、該軟質被膜31は、摺動性が良好で耐熱性を有する樹脂材料(例えば、フッ素系樹脂等)または非樹脂材料(例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化素等)を用いて形成され、その膜厚は例えば60μm程度に設定されている。 そして、軟質被膜31は、例えばディッピング、スプレー等の塗布手段を用いてラップ部3に塗布、固着される。 これにより、軟質被膜31は、ラップ部3の外周面3Bに設けられた最接近部8および平坦面8Aを覆っている。

    32は旋回スクロール11のラップ部13の外周面13Bに設けられた軟質被膜で、該軟質被膜32は、軟質被膜31とほぼ同様に、例えばフッ素系の樹脂材料またはモリブデン系等の非樹脂材料を用いて例えば60μm程度の膜厚をもって形成され、スプレー等の塗布手段を用いてラップ部13に塗布、固着されている。 これにより、軟質被膜32は、ラップ部13の外周面13Bに設けられた最接近部14および平坦面14Aを覆っている。

    そして、軟質被膜31,32は、例えばスクロール1,11や最接近部8,14の寸法誤差、組付誤差等によって最接近部8,14が相手方のラップ部13,3に接近し過ぎたとしても、最接近部8,14と相手方のラップ部13,3とが直接接触するのを防止する。

    さらに、軟質被膜31,32の膜厚は、多角形状の頂点に配置された最接近部8,14のみを接触させる寸法とし、最接近部8,14とラップ部13,3の内周面13A,3Aとの間の隙間(ギャップ)を0〜マイナス(零以下)にすることで圧縮効率を全断熱効率で約10%向上させることができる。 実験の結果、隙間を40μmとした場合には、全断熱効率が50%であるのに対し、隙間を0μmとした場合には、全断熱効率が60%となった。

    また、このような接触が生じたときでも、軟質被膜31,32は、相手方のラップ部13,3との接触によって容易に押し潰されたり、摩耗して変形でき、最接近部8,14の移動範囲に馴染むことができる。

    かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。 そして、特に本実施の形態では、ラップ部3,13の外周面3B,13Bには軟質被膜31,32を設ける構成としたから、例えば機械の寸法誤差、組付誤差等によって最接近部8,14が相手方のラップ部13,3に接近し過ぎた場合には、軟質部材31,32が相手方のラップ部13,3の内周面13A,3Aに接触する。 この場合、軟質被膜31,32は、相手方のラップ部13,3との接触により容易に変形して馴染むことができるので、これらの間でかじり、損傷等が生じたり、動力損失、騒音等が増大するのを防止することができる。

    そして、隣合う最接近部8,14間の角度αを大きくしても、ラップ部3,13間の最大ギャップを小さくすることができる。 このため、角度αを例えば7.5度程度(α=0.13[rad])に設定して耐かじり性を向上させたときでも、圧縮性能を高い状態に保つことができる。 この結果、耐かじり性および圧縮性能の両面を向上させることができる。

    また、軟質被膜31,32は最接近部8,14とラップ部との間に挟まれた部位だけが変形するから、圧縮室15の閉込み位置で各スクロール1,11のラップ部3,13間に形成される隙間の寸法を小さくすることができる。 このため、圧縮室15の密閉性や圧縮効率を高めることができる。 さらに、例えば機械の寸法誤差や組付誤差等によって最接近部8,14の移動範囲がばらつく場合でも、この最接近部8,14の移動範囲のばらつきを軟質被膜31,32によって吸収することができる。 このため、スクロール1,11の加工、組立等を最低限の精度で行うことができるから、圧縮機を効率よく製造することができる。

    なお、前記第3の実施の形態では、ラップ部3,13の外周面3B,13Bにだけ軟質被膜31,32を設ける構成とした。 しかし、本発明はこれに限らず、例えばラップ部3,13の内周面3A,13Aにだけ軟質被膜を設ける構成としてもよい。 また、ラップ部3の内周面3Aと外周面3Bとの両面に軟質被膜を設ける構成でもよく、ラップ部13の内周面13Aと外周面13Bとの両面に軟質被膜を設ける構成でもよく、ラップ部3,13の内周面3A,13Aと外周面3B,13Bとの全ての面に軟質被膜を設ける構成としてもよい。

    また、前記第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様のスクロール1,11のラップ部3,13に対して軟質被膜31,32を設ける構成としたが、例えば第2の実施の形態と同様なスクロールのラップ部に対して軟質被膜を設ける構成としてもよい。

    次に、図12ないし図14は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ラップ部の各最接近部を、鏡板から離れた軸方向の一部にのみ形成する構成としたことにある。 なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。

    41はスクロール式空気圧縮機の固定スクロールで、該固定スクロール41は、図12に示す如く、第1の実施の形態とほぼ同様に、略円板状の鏡板42と、該鏡板42の表面に軸方向に立設された渦巻状のラップ部43と、フランジ部(図示せず)等とにより構成されている。

    また、ラップ部43の内周面43Aは凹凸のない平滑な湾曲面として形成され、ラップ部43の外周面43Bには後述の最接近部51が設けられている。 さらに、ラップ部43の歯先には、図13、図14に示す如く、断面コ字状の凹溝43Cが設けられ、該凹溝43Cには、渦巻状のチップシール44が取付けられている。 そして、チップシール44は、後述する旋回スクロール47の鏡板48の表面に弾性的に摺接し、圧縮空気の漏洩を防止している。

    45は固定スクロール41のラップ部43の外周面43Bに設けられた複数の最接近部で、該各最接近部45は、第1の実施の形態による最接近部8とほぼ同様に、ラップ部43の巻回方向に間隔をもって配置され、軸方向に延びて形成されている。 なお、軸方向に延びるとは、軸方向に対して平行に延びる構成(傾斜角0°)に限らず、例えば軸方向に対して±10〜20°斜めに傾斜して延びる構成も含むものである。

    また、最接近部45は、ラップ部43の歯先から歯元に向けて軸方向の途中位置まで延び、ラップ部43のうち鏡板42から離れた軸方向の歯先側にのみ形成されている。 一方、ラップ部43の歯先側のうち隣合う最接近部45の間は平坦面45Aによってつながれている。 そして、ラップ部43の外周面43Bのうち歯元側に位置する部分(最接近部45と平坦面45Aとを除いた部分)は、凹凸のない平滑な湾曲面として形成されている。 さらに、ラップ部43の外周面43Bのうち歯元側に位置する部分は、最接近部45と連続して延び、同一面を形成している。

    46は固定スクロール41のラップ部43の歯元側に設けられた段差部で、該段差部46は、ラップ部43の歯先側よりも太幅に形成され、内周面43Aが相手方となる旋回スクロール47のラップ部49の外周面49Bに向けて突出している。 そして、段差部46は、後述するラップ部49の最接近部51と同程度の長さ寸法をもって軸方向に延び、最接近部51と対向している。

    47は固定スクロール41と対向して設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール47は、図12、図14に示す如く、第1の実施の形態とほぼ同様に、円板状の鏡板48と、該鏡板48の表面から軸方向に立設された渦巻状のラップ部49とによって大略構成されている。

    ここで、ラップ部49の内周面49Aは凹凸のない平滑な湾曲面として形成され、ラップ部49の外周面49Bには後述の最接近部51が設けられている。 さらに、ラップ部49の歯先には断面コ字状の凹溝49Cが設けられ、該凹溝49Cにはチップシール50が取付けられている。

    51は旋回スクロール47のラップ部49の外周面49Bに設けられた複数の最接近部で、該各最接近部51は、第1の実施の形態による最接近部14とほぼ同様に、ラップ部49の巻回方向に間隔をもって配置され、軸方向に延びて形成されている。

    また、最接近部51は、最接近部45とほぼ同様に、ラップ部49の歯先から歯元に向けて軸方向の途中位置まで延び、ラップ部49のうち鏡板48から離れた軸方向の歯先側にのみ形成されている。 一方、ラップ部49の歯先側のうち隣合う最接近部51の間は平坦面51Aによってつながれている。 そして、ラップ部49の外周面49Bのうち歯元側に位置する部分(最接近部51と平坦面51Aとを除いた部分)は、凹凸のない平滑な湾曲面として形成されている。 さらに、ラップ部49の外周面49Bのうち歯元側に位置する部分は、最接近部51と連続して延び、同一面を形成している。

    52は旋回スクロール47のラップ部49の歯元側に設けられた段差部で、該段差部52は、ラップ部43の段差部46とほぼ同様にラップ部49の歯先側よりも太幅に形成され、内周面49Aが相手方となる固定スクロール41のラップ部43の外周面43Bに向けて突出している。 そして、段差部52は、ラップ部49の最接近部45と同程度の長さ寸法をもって軸方向に延び、最接近部45と対向している。

    かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。 そして、特に本実施の形態では、ラップ部43,49のうち鏡板42,48から離れた軸方向の一部にのみ最接近部45,51を形成したから、最接近部45,51の軸方向長さ寸法を短くすることができ、最接近部45,51によって生じる異音を小さくすることができる。

    また、最接近部45,51をラップ部43,49の軸方向に対して小さくすることができるから、固定スクロール41のラップ部43と旋回スクロール47のラップ部49との間の平均ラジアルギャップを小さくすることができ、圧縮効率を高めることができる。 さらに、圧縮効率が高まると、ラップ部43,49内の温度を低減することができるから、チップシール44,50等の寿命を延長することができる。

    特に、本実施の形態では、最接近部45,51をラップ部43,49の歯先部分にのみ形成したから、ラップ部43,49の熱倒れが顕著に生じる歯先部分にのみ最接近部45,51を配置することができる。 この結果、熱倒れによるかじりを防ぎつつ、最接近部45,51を相手方のラップ部49,43に最接近または接触させることができ、圧縮効率をさらに高めることができる。

    また、ラップ部43,49の歯元側には最接近部45,51を設けず、歯元側のラップ部43,49の外周面43B,49Bを、最接近部45,51と同一曲面として形成したので、歯元側での寸法管理を容易に行うことができる。

    なお、前記第4の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、ラップ部43,49の外周面43B,49Bに最接近部45,51を設けたスクロール41,47に対してラップ部43,49の歯先側にのみ最接近部45,51を設ける構成とした。 しかし、本発明はこれに限らず、例えば第2,第3の実施の形態と同様なスクロールに対してラップ部の歯先側にのみ最接近部を設ける構成としてもよい。

    次に、図15は本発明による第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ラップ部の外径側にインボリュート曲線に従ったインボリュート曲面部を設ける構成としたことにある。 なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。

    61はスクロール式空気圧縮機の固定スクロールで、該固定スクロール61は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板62、ラップ部63、筒部64、フランジ部(図示せず)等により構成されている。 そして、ラップ部63は、内周面63Aと外周面63Bとを有する渦巻状に形成されている。

    しかし、ラップ部63の外周面63Bには、軸方向の全長に亘って延びる複数の最接近部65および平坦面65Aが設けられると共に、ラップ部63の外径側(巻終り端側)には、最接近部65を形成せず、インボリュート曲線に従ったインボリュート曲面部63Cが設けられている。 そして、インボリュート曲面部63Cは、例えばラップ部63の外径側端部から内径側に向けて略1巻分にわたる長さをもって延びると共に、ラップ部63のうち外径側の圧縮室15′,15″の周壁となる部位に配置されている。

    66は固定スクロール61と対向して配置された旋回スクロールで、該旋回スクロール66は、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板(図示せず)に立設された渦巻状のラップ部67を有し、該ラップ部67は、内周面67Aと外周面67Bとを有している。

    また、ラップ部67の外周面67Bには、軸方向の全長に亘って延びる最接近部68および平坦面68Aが設けられると共に、ラップ部67の外径側(巻終り端側)には、固定スクロール61のラップ部63とほぼ同様に、その外径側に位置して最接近部68を形成せず、インボリュート曲線に従ったインボリュート曲面部67Cが設けられている。 そして、インボリュート曲面部67Cは、例えばラップ部67の外径側端部から内径側に向けて略1巻半にわたる長さをもって延びると共に、ラップ部67のうち外径側の圧縮室15′,15″の周壁となる部位に配置されている。

    このように、本実施の形態では、ラップ部63,67のうち外径側の圧縮室15′,15″に面した部位にはインボリュート曲面部63C,67Cを配設している。このため、圧縮機の運転時には、外径側の圧縮室15′,15″の位置で固定スクロール61のラップ部63と旋回スクロール66のラップ部67とを滑らかに連続的に摺接させることができる。

    かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。 そして、特に本実施の形態では、固定スクロール61のラップ部63のうち、外径側に位置する略1巻分の部位にインボリュート曲面部63Cを設け、旋回スクロール66のラップ部67には、外径側の略1巻半の部位にインボリュート曲面部67Cを設ける構成としたので、圧縮開始位置Sの位置における圧縮室15′のシール性や、これと隣接する圧縮室15″のシール性を良好に保持することができる。

    従って、圧縮時の体積効率に対して影響が大きい外径側の圧縮室15′,15″で空気を安定的に圧縮でき、圧縮性能を高めることができると共に、内径側の最接近部65,68等によって発生した異音が吸込口6を通じて外部に漏れるのを防ぐことができ、騒音を低減することができる。

    なお、前記第5の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、ラップ部63,67の外周面63B,67Bに最接近部65,68を設けたスクロール61,66に対してインボリュート曲面部63C,67Cを設ける構成とした。 しかし、本発明はこれに限らず、例えば第2〜第4の実施の形態と同様なスクロールのラップ部に対してインボリュート曲面部を設ける構成としてもよい。

    また、前記各実施の形態では、ケーシングに固定された固定スクロール1,21,41,61に対して旋回スクロール11,27,47,66を旋回動作させるスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば特開平9−133087号公報に示すように、互いに対向して配置された2つのスクロールをそれぞれ回転駆動する全系回転式スクロール流体機械等に適用してもよい。

    さらに、前記各実施の形態では、スクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機等の他のスクロール式流体機械に適用してもよい。

    本発明の第1の実施の形態に適用されるスクロール式空気圧縮機を示す縦断面図である。

    スクロール式空気圧縮機を図1中の矢示II−II方向からみた横断面図である。

    図2中の固定スクロールのラップ部と旋回スクロールのラップ部とを拡大して示す要部拡大の横断面図である。

    固定スクロールの鏡板、ラップ部および最接近部の一部を拡大して示す一部破断の外観斜視図である。

    旋回スクロールのラップ部の最接近部を拡大して示す要部拡大の横断面図である。

    エンドミルを用いてラップ部を加工する状態を示す横断面図である。

    第1の変形例によるラップ部を示す横断面図である。

    第2の実施の形態に適用されるスクロール式空気圧縮機を示す横断面図である。

    固定スクロールと旋回スクロールのラップ部を図3と同様位置からみた要部拡大の横断面図である。

    第2の変形例によるラップ部を示す横断面図である。

    第3の実施の形態による固定スクロールと旋回スクロールのラップ部を図3と同様位置からみた要部拡大の横断面図である。

    第4の実施の形態による固定スクロールと旋回スクロールのラップ部を図3と同様位置からみた要部拡大の横断面図である。

    固定スクロールの鏡板、ラップ部および最接近部の一部を拡大して示す一部破断の外観斜視図である。

    固定スクロールと旋回スクロールのラップ部を図12中の矢示XIV−XIV方向から拡大してみた要部拡大の縦断面図である。

    第5の実施の形態に適用されるスクロール式空気圧縮機を示す横断面図である。

    符号の説明

    1,21,41,61 固定スクロール 2,12,22,42,48,62 鏡板 3,13,23,28,43,49,63,67 ラップ部 3A,13A,23A,28A,43A,49A,63A,67A 内周面 3B,13B,23B,28B,43B,49B,63B,67B 外周面 8,14,25,29,45,51,65,68 最接近部 8A,14A,25A,29A,45A,51A,65A,68A 平坦面 8A′,14A′ 凸状曲面 9 駆動軸 11,27,47,66 旋回スクロール 26,30,26′,30′,26″,30″ 最接近面 31,32 軟質被膜

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