ジェットエンジン、飛しょう体及びジェットエンジンの動作方法

申请号 JP2014074491 申请日 2014-03-31 公开(公告)号 JP2015197058A 公开(公告)日 2015-11-09
申请人 三菱重工業株式会社; 发明人 上野 祥彦; 古谷 正二郎;
摘要 【課題】低速でも高速でも安定的に航行することが可能なジェットエンジン等を提供する。 【解決手段】ジェットエンジンは、空気を取り込むインレットと、空気を用いて 燃料 を燃焼する燃焼器12と、燃料の供給を制御する燃料制御部37とを具備する。燃焼器12は、燃料を供給する燃料供給部22と、燃料を噴射する噴射器20とを備える。噴射器20は、燃料を噴射する開口部30−1〜30−5を含む。燃料供給部22は、オートパイロットの指令に応じた流量で噴射器20へ燃料を供給する。燃料制御部37は、低速時に燃料を噴射する開口部30の数又は燃料を供給する配管中の流路断面積が、高速時に燃料を噴射する開口部30の数又は燃料を供給する配管中の流路断面積よりも大きくなるように、噴射器20を制御する。 【選択図】図7A
权利要求

空気を取り込むインレットと、 前記空気を用いて燃料を燃焼する燃焼器と、 前記燃料の供給を制御する燃料制御部と を具備し、 前記燃焼器は、 前記燃料を送出する燃料供給部と、 前記燃料供給部から供給された前記燃料を噴射する開口部が形成された噴射器と、 前記燃料供給部から前記開口部に燃料を供給する配管と、 前記配管に設けられた流路断面積調整部と を備え、 前記燃料制御部は、前記燃料供給部を、オートパイロットの指令に応じた総燃料流量を前記噴射器に送出するように制御し、 前記燃料制御部は、前記流路断面積調整部を制御して、前記配管の流路断面積を変化させることにより、前記燃料の貫通高さを制御する ジェットエンジン。請求項1に記載のジェットエンジンにおいて、 前記燃料制御部は、前記燃料が保炎可能領域を通過するように、前記流路断面積調整部を制御する ジェットエンジン。請求項2に記載のジェットエンジンにおいて、 前記燃料制御部は、ジェットエンジンの対気速度及び/又はジェットエンジンの高度に応じて、前記流路断面積調整部を制御する ジェットエンジン。請求項1乃至3のいずれか一項に記載のジェットエンジンにおいて、 前記燃料を噴射する前記開口部は、複数の開口部であり、 前記噴射器は、 前記燃料供給部から前記複数の開口部へ前記燃料を供給する複数の配管と、 前記複数の配管の途中に設けられた複数の流路断面積調整部と を含み、 前記燃料制御部は、前記複数の流路断面積調整部を制御する ジェットエンジン。請求項4に記載のジェットエンジンにおいて、 前記複数の開口部は、前記空気の流路の方向に対して概ね垂直方向に並んで配置される ジェットエンジン。請求項4又は5に記載のジェットエンジンにおいて、 前記燃料制御部は、ジェットエンジンの対気速度が増加すると、前記燃料を噴射する開口部の数が減少するように、前記複数の流路断面積調整部の少なくとも1つを閉状態にする ジェットエンジン。請求項4乃至6のいずれか一項に記載のジェットエンジンにおいて、 前記複数の開口部は、各開口部の面積が概ね同じである ジェットエンジン。請求項4乃至7のいずれか一項に記載のジェットエンジンにおいて、 前記燃料制御部は、高速時に、前記複数の開口部が一つ置きに前記燃料を噴射するように、前記複数の流路断面積調整部の開閉状態を制御する ジェットエンジン。請求項1乃至8のいずれか一項に記載のジェットエンジンにおいて、 前記流路断面積調整部は、弁である ジェットエンジン。請求項1乃至9のいずれか一項に記載のジェットエンジンと、 前記ジェットエンジンに接続されたロケットモータと を具備する 飛しょう体。ジェットエンジンの動作方法であって、 ここで、前記ジェットエンジンは、 空気を取り込むインレットと、 前記空気を用いて燃料を燃焼する燃焼器と、 前記燃料の供給を制御する燃料制御部と を具備し、 前記燃焼器は、 前記燃料を送出する燃料供給部と、 前記燃料供給部から供給された前記燃料を噴射する噴射器であって、前記燃料を噴射する開口部を含む、噴射器と、 前記燃料供給部から前記開口部に前記燃料を供給する配管と、 前記配管に設けられた流路断面積調整部と、 を備え、 前記ジェットエンジンの動作方法は、 前記燃料供給部が、オートパイロットの指令に応じた総燃料流量で前記噴射器へ燃料を送出するステップと、 前記燃料が保炎可能領域を通過するように、前記流路断面積調整部を制御して、前記配管の流路断面積を変化させるステップと を具備する、 ジェットエンジンの動作方法。

说明书全文

本発明は、ジェットエンジン、飛しょう体及びジェットエンジンの動作方法に関する。

音速より速く飛しょうする機体のジェットエンジンとして、ラムジェットエンジン、スクラムジェットエンジンが知られている。これらは空気を取り入れて作動するジェットエンジンであり、ラムジェットエンジンでは燃焼器内部は亜音速であり、スクラムジェットエンジンでは燃焼器内部は超音速であり、いずれの場合にも、火炎の吹き消え等による失火(保炎不可)を発生させないことが重要である。

ジェットエンジンの燃焼用の炎を維持する保炎メカニズムとして、燃焼器の壁面に発達した境界層や燃焼器の壁面に設置した保炎器周辺などに存在する低速領域を活用する方法が知られている。これらの方式で保炎するためには、燃焼器の壁面近傍の適切な領域(以下、「保炎可能領域」ともいう)へ向け燃料を拡散させて、供給する必要がある。

図1は、ジェットエンジンの構成を模式的に示す概略断面図である。ジェットエンジン102は、機体110と、機体110の下方に気体の流通可能な空間150を形成するように設けられたカウル140とを備えている。機体110の前方の下方部分とカウル140の前方部分とは、空間150へ空気を導入するインレット111を構成している。機体110の中間の下方部分とカウル140の中間部分とは、燃料と空気とを混合し燃焼させる燃焼器112を構成している。機体110の後方の下方部分とカウル140の後方部分とは、燃焼気体を膨張させて放出するノズル113を構成している。燃焼器112は、燃料噴射器120を備えている。燃焼噴出器120は、機体110の下方部分における、燃焼器112に対応する部分の壁面121に設けられている。更に、燃料噴射器120よりも後方の壁面121に保炎器を備えていてもよい(図示されず)。燃料噴射器120は、空間150へ向けて燃料Gを噴出する。ジェットエンジン102は、インレット111から取り入れた空気と、燃料噴射器120から噴射した燃料Gとを燃焼器112で混合して燃焼させ、その燃焼ガスをノズル113で膨張させて、機体110の後方へ送出する。燃焼器112での保炎については、燃焼器112の壁面121に発達した境界層に存在する低速領域へ、燃料Gの一部が拡散して供給され、保炎される。保炎器が存在する場合、燃焼器112の壁面121に設置された保炎器周辺に存在する低速領域へ、その燃料Gの一部が拡散して供給され、保炎される。

関連する技術として特開平8−219408号公報に超音速燃焼器が開示されている。この超音速燃焼器は、楔断面形状のストラットと、複数の小片と、噴射ノズルとを備えている。楔断面形状のストラットは、超音速空気流の流路内に鋭部を上流側に向けて配置され、かつ流れにほぼ直交する後端面を有する。複数の小片は、ストラットの後端面に設けられ、該後端面にほぼ等しい幅を有し、かつ下流側に延びている。噴射ノズルは、ストラットの前記小片の間に設けられ、下流に向けて燃料を噴射する。

特開平8−219408号公報

まず、本発明における重要な用語を定義する。燃料の「貫通高さ」とは、空気の流れ方向に対して垂直方向に、燃料噴射器から燃料を噴射する時に、当該燃料が当該垂直方向に拡散する距離を意味するものと定義する。例えば、図1において、燃料Gは、燃料噴射器120から垂直方向(+z方向)に噴射されると、垂直方向(+z方向)に拡散しながら、空気Airの流れ方向(+x方向)にも拡散する。ここで、燃料Gが垂直方向(+z方向)に拡散する距離が、燃料Gの「貫通高さ」である。また、「空気の運動量流束」とは、単位時間当たりに空気の速度に垂直な単位面積を通過する空気の質量と、当該空気の速度との積を意味するものと定義する。また、「燃料の運動量流束」とは、燃料噴射口から噴射された直後の燃料の運動量であって、噴射直後に単位時間当たりに噴射方向に垂直な単位面積を通過する燃料の質量と、当該燃料の噴射速度との積を意味するものと定義する。

図2は、燃料Gにおける、貫通高さと空気Airに流される距離との関係を示すグラフである。縦軸は燃料Gの貫通高さ(+z方向;任意単位)を示し、横軸は燃料Gが空気Airに流される距離(+x方向;任意単位)を示している。横軸及び縦軸の基準(0)は、燃料噴射器120の位置である。破線は飛しょう体速度が遅い(空気Airの運動量流束が小さい)場合を示し、実線は飛しょう体速度が速い(空気Airの運動量流束が大きい)場合を示している。ただし、空気Airと燃料Gの質量流量比及び噴射される燃料Gの垂直方向(+z方向)の運動量流束は飛しょう体の速度によらず同一としている。

図2に示されるように、飛しょう速度が速い場合(実線:主に、巡航段階にあたる)、貫通高さは低くなる傾向にある。これは、空気Airの流れ方向の運動量流束が高く、その流れの方向に燃料Gが流され易いためと考えられる。一方、飛しょう速度が遅い場合(破線:主に、加速段階にあたる)、貫通高さは高くなる傾向にある。これは、空気Airの運動量流束が低く、その流れの方向に燃料Gが流され難いためと考えられる。

図3A及び図3Bは、飛しょう速度が速い場合での燃焼器の燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。たたし、図3Aは燃料噴射器120の開口部付近の斜視図であり、図3Bは図3Aの断面C101における燃料Gの様子を示す図である。また、断面C101は、空気Air及び燃料Gの流路における、燃料噴射器120から流れ方向に所定距離だけ離れた位置での流路のyz断面である。いずれの図も図1とは上下を逆にして描かれている。

図3Aに示されるように、燃料Gは、燃焼器112の壁面121に設けられた複数の燃料噴射器120から垂直方向(+z方向)に供給される。その後、燃料Gは、インレット111から取り入れられた空気Airにより、その流れ方向(+x方向)へ流される。そのとき、図3Bに示されるように、断面C101(yz断面)では、燃料Gが、保炎可能な領域(保炎可能領域)Bを通過しており、保炎困難な領域(保炎困難領域)Aを通過することはない。これは、飛しょう速度が速く、空気Airの運動量流束が大きいため、燃料Gの貫通高さが低いためである(図2)。

図4A及び図4Bは、飛しょう速度が遅い場合での燃焼器の燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。たたし、図4Aは燃料噴射器120の開口部付近の斜視図であり、図4Bは図4Aにおける断面C101における燃料Gの様子を示す図であり、いずれの図も図1とは上下を逆にして描かれている。

図3Aの場合と同様に、図4Aに示されるように、燃料Gは、複数の燃料噴射器120から垂直方向(+z方向)に供給される。その後、燃料Gは、空気Airにより、その流れ方向(+x方向)へ流される。そのとき、図3Bの場合と異なり、図4Bに示されるように、断面C101(yz断面)では、燃料Gが、保炎困難領域Aを通過しており、保炎可能領域Bを通過できない。これは、飛しょう速度が遅く、空気Airの運動量流束が小さいため、燃料Gの貫通高さが高くなってしまうためである(図2)。この場合、保炎することができず、ジェットエンジン102が作動不可となる問題がある。そのため、より低速でジェットエンジン102を用いることが困難であった。

したがって、本発明の目的は、より低速でも安定的に動作することが可能なジェットエンジン、飛しょう体及びジェットエンジンの動作方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、燃料が保炎困難な領域に到達することを抑制することが可能なジェットエンジン、飛しょう体及びジェットエンジンの動作方法を提供することにある。

この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。

以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。

本発明の1つの観点において、ジェットエンジンは、空気を取り込むインレット(11)と、空気を用いて燃料を燃焼する燃焼器(12)と、燃料の供給を制御する燃料制御部(37)とを具備している。燃焼器(12)は、燃料を送出する燃料供給部(22)と、燃料供給部(22)から供給された燃料を噴射する開口部が形成された噴射器(20)と、燃料供給部(22)から開口部(30)に燃料を供給する配管(43、44/43a、44a)と、配管(43、44/43a、44a)に設けられた流路断面積調整部(42)とを備えている。燃料制御部(37)は、燃料供給部(22)を、オートパイロットの指令に応じた総燃料流量を噴射器(20)に送出するように制御する。燃料制御部(37)は、流路断面積調整部(42)を制御して、配管(43、44/43a、44a)の流路断面積を変化させることにより、燃料の貫通高さを制御する。

上記のジェットエンジンにおいて、燃料制御部(37)は、燃料が保炎可能領域(B)を通過するように、流路断面積調整部(42)を制御してもよい。

上記のジェットエンジンにおいて、燃料制御部(37)は、ジェットエンジンの対気速度及び/又はジェットエンジンの高度に応じて、流路断面積調整部(42)を制御してもよい。

上記のジェットエンジンにおいて、燃料を噴射する開口部(30)は、複数の開口部(30−1〜30−5)であってもよい。噴射器(20)は、燃料供給部(22)から複数の開口部(30−1〜30−5)へ燃料を供給する複数の配管(44−1〜44−5/43a−1〜43a−2)と、複数の配管(44−1〜44−5/43a−1〜43a−2)の途中に設けられた複数の流路断面積調整部(42−1〜42−5/42a−1〜42a−2)とを含んでもよい。燃料制御部(37)は、複数の流路断面積調整部(42−1〜42−5/42a−1〜42a−2)を制御してもよい。

上記のジェットエンジンにおいて、複数の開口部(30−1〜30−5)は、空気の流路の方向に対して概ね垂直方向に並んで配置されてもよい。

上記のジェットエンジンにおいて、燃料制御部(37)は、ジェットエンジンの対気速度が増加すると、燃料を噴射する開口部(30−1〜30−5)の数が減少するように、複数の流路断面積調整部(42−1〜42−5/42a−1〜42a−2)の少なくとも1つを閉状態にしてもよい。

上記のジェットエンジンにおいて、複数の開口部(30−1〜30−5)は、各開口部の面積が概ね同じであってもよい。

上記のジェットエンジンにおいて、燃料制御部(37)は、高速時に、複数の開口部(30−1〜30−5)が一つ置きに燃料を噴射するように、複数の流路断面積調整部(42−1〜42−5/42a−1〜42a−2)の開閉状態を制御してもよい。

上記のジェットエンジンにおいて、流路断面積調整部(42)は、弁(42)であってもよい。

本発明の他の1つの観点において、飛しょう体は、ジェットエンジン(2)と、ロケットモータ(3)とを具備している。ジェットエンジン(2)は、上記段落に記載されているもののいずれかである。ロケットモータ(3)は、ジェットエンジン(2)に接続されている。

本発明の他の1つの観点のジェットエンジンの動作方法において、ジェットエンジンは、空気を取り込むインレット(11)と、空気を用いて燃料を燃焼する燃焼器(12)と、燃料の供給を制御する燃料制御部(37)とを具備している。燃焼器(12)は、燃料を送出する燃料供給部(22)と、燃料供給部(22)から供給された燃料を噴射する噴射器(20)であって、燃料を噴射する開口部(30)を含む噴射器(20)と、燃料供給部(22)から開口部(30)に燃料を供給する配管(43、44/43a、44a)と、配管(43、44/43a、44a)に設けられた流路断面積調整部(42)とを備えている。ジェットエンジンの動作方法は、燃料供給部(22)が、オートパイロットの指令に応じた総燃料流量で噴射器(20)へ燃料を送出するステップと、燃料(G)が保炎可能領域(B)を通過するように、流路断面積調整部(42)を制御して、配管(43、44/43a、44a)の流路断面積を変化させるステップとを具備している。

本発明により、より低速でも安定的に動作することが可能なジェットエンジン、飛しょう体及びジェットエンジンの動作方法を提供することができる。また、本発明により、燃料が保炎困難な領域に到達することを抑制することが可能なジェットエンジン、飛しょう体及びジェットエンジンの動作方法を提供することができる。

図1は、ジェットエンジンの構成を模式的に示す概略断面図である。

図2は、燃料における貫通高さと空気に流される距離との関係を示すグラフである。

図3Aは、飛しょう速度が速い場合での燃焼器の燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。

図3Bは、飛しょう速度が速い場合での燃焼器の燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。

図4Aは、飛しょう速度が遅い場合での燃焼器の燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。

図4Bは、飛しょう速度が遅い場合での燃焼器の燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。

図5は、実施の形態に係る飛しょう体の構成例を示す斜視図である。

図6は、実施の形態に係るジェットエンジンの構成例を模式的に示す概略断面図である。

図7Aは、実施の形態に係るジェットエンジンの構成の一例を示す機能ブロック図である。

図7Bは、実施の形態に係るジェットエンジンの燃料噴射器の構成の他の例を示す機能ブロック図である。

図8Aは、実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が遅い場合での燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。

図8Bは、実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が遅い場合での燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。

図9Aは、実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が速い場合での燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。

図9Bは、実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が速い場合での燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。

図10は、飛しょう速度と燃料噴射制御器による弁の開閉に関するテーブルの一例を示す表である。

図11Aは、実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が速い場合での燃料噴射の変形例の様子を模式的に示す概略図である。

図11Bは、実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が速い場合での燃料噴射の変形例の様子を模式的に示す概略図である。

図12は、飛しょう速度と燃料噴射制御器による弁の開閉に関するテーブルの他の例を示す表である。

図13Aは、実施の形態の変形例に係るジェットエンジンにおいて、燃料噴射口が1つである場合の例を概念的に示す概略断面図であり、ジェットエンジンを通過する主流空気に対して垂直な断面図であり、かつ、弁が全開であるときの断面図である。

図13Bは、実施の形態の変形例に係るジェットエンジンにおいて、燃料噴射口が1つである場合の例を概念的に示す概略断面図であり、ジェットエンジンを通過する主流空気に対して垂直な断面図であり、かつ、弁の開度を絞ったときの断面図である。

以下、本発明の実施の形態に係るジェットエンジン及びジェットエンジンの動作方法に関して、添付図面を参照して説明する。ここでは、ジェットエンジンを飛しょう体に適用した例について説明する。

本実施の形態に係る飛しょう体1の構成について説明する。 図5は、本実施の形態に係る飛しょう体1の構成例を示す斜視図である。飛しょう体1は、ジェットエンジン2と、ロケットモータ3とを具備している。ロケットモータ3は、飛しょう体1を発射装置から飛しょうさせるとき、飛しょう体1を飛しょう開始時の速度から所望の速度まで加速する。ただし、飛しょう開始時の速度は、飛しょう体1が静止している発射装置から発射されるときは、速度ゼロであり、飛しょう体が移動中/飛行中の移動体/飛行体の発射装置から発射されるときは、その移動体/飛行体の移動速度/飛行速度である。ジェットエンジン2は、飛しょう体1がロケットモータ3を分離した後、飛しょう体1を更に加速して、目標へ向かって飛しょうさせる。ジェットエンジン2は、機体10とカウル40とを備えている。機体10とカウル40とは、後述されるように、ジェットエンジン2のインレット、燃焼器及びノズルを構成している。ジェットエンジン2は、インレットにて前方から空気を取り入れ、燃焼器にてその空気と燃料とを混合し、燃焼させ、ノズルにてその燃焼ガスを膨張させ、後方へ送出する。それにより、ジェットエンジン2は推進を得る。

次に、本実施の形態に係るジェットエンジンについて説明する。 図6は、本実施の形態に係るジェットエンジンの構成例を模式的に示す概略断面図である。ジェットエンジン2は、機体10と、機体10の下方に気体の流通可能な空間50を形成するように設けられたカウル40とを備えている。機体10の前方の下方部分とカウル40の前方部分とは、空間50へ空気を導入するインレット11を構成している。機体10の中間の下方部分とカウル40の中間部分とは、燃料と空気とを混合し燃焼させる燃焼器12を構成している。機体10の後方の下方部分とカウル40の後方部分とは、燃焼気体を膨張させて放出するノズル13を構成している。燃焼器12は、燃料噴射器20を備えている。

燃料噴射器20は、機体10の下方部分における、燃焼器12に対応する部分の壁面21に設けられている。燃料噴射器20は、機体10に格納された燃料Gを概ね垂直方向(+z方向)に空間50へ向けて噴射する。噴射された燃料Gは、インレット11から取り入れた空気と混合されて燃焼する。また、燃焼の初期には、燃料Gはイグナイタ(図示されず)等により点火されることにより燃焼する。燃料噴射器20は、機体10の下方部分に設けられた1つ又は複数の開口部を有している。燃料噴射器20は、オートパイロットの指令に応じた流量で燃料を供給される。そして、燃料噴射器20は、低速時に燃料を噴射する開口部の数又は燃料を供給する配管中の流路断面積が、高速時に燃料を噴射する開口部の数又は燃料を供給する配管中の流路断面積よりも大きくなるように、制御される。ただし、その開口部の形状や数や配置は任意性がある。燃料噴射器20は、機体10のスパン方向に並んで設けられた複数の開口部に例示される。なお、流路断面積を制御することには、複数の配管のうちの少なくとも1つを閉状態にして、燃料を噴射する開口部の数を制御することが包含される。また、配管中の流路断面積を制御することについて、配管のどの位置における流路断面積を制御するかについては任意性がある。すなわち、例えば、配管のうち、燃料噴射器の開口部における流路断面積を制御してもよいし、燃料噴射器の開口部から離れた位置における流路断面積を制御してもよい。

なお、燃焼器12は、更に、燃料噴射器20よりも後方の壁面21に保炎器を備えていてもよい(図示されず)。

図7Aは、本実施の形態に係るジェットエンジンの構成の一例を示す機能ブロック図である。ジェットエンジン2は、燃焼器12と、燃料制御部37とを備えている。燃焼器12は、インレット11から取り入れた空気を用いて燃料を燃焼する。燃料制御部37は、燃焼器12での燃料の供給を制御する。燃焼器12は、燃料供給部22と、燃料噴射器20とを備えている。燃料供給部22は、燃料を燃料噴射器20へ送出する。燃料噴射器20は、供給された燃料を空気の流れる空間50へ噴射する。

燃料噴射器20は、複数の燃料噴射口(開口部)30−1〜30−5と、複数の配管43、44−1〜44−5と、複数の弁42−1〜42−5とを含んでいる。なお、複数の燃料噴射口(開口部)30−1〜30−5は、面積が概ね同じであることが好ましい。ここで、「面積が概ね同じ」とは、燃料噴射口の面積の最大のものと最小のものとの比が1≦最大のもの/最小のもの≦1.5であることを意味する。

複数の配管43、44−1〜44−5は、燃料供給部22から送出される燃料を、複数の燃料噴射口30−1〜30−5へ供給する。具体的には、配管44−1は一端を配管43の一端に、他端を燃料噴射口30−1にそれぞれ接続されている。配管44−2は一端を配管43の一端に、他端を燃料噴射口30−2にそれぞれ接続されている。配管44−3は一端を配管43の一端に、他端を燃料噴射口30−3にそれぞれ接続されている。配管44−4は一端を配管43の一端に、他端を燃料噴射口30−4にそれぞれ接続されている。配管44−5は一端を配管43の一端に、他端を燃料噴射口30−5にそれぞれ接続されている。配管43は他端を燃料供給部22に接続されている。

複数の燃料噴射口30−1〜30−5は、壁面21に設けられた複数の開口部である。複数の燃料噴射口30−1〜30−5は、複数の配管44−1〜44−5から供給された燃料を噴射する。複数の燃料噴射口30−1〜30−5は、空気の流路の方向に対して概ね垂直方向である概ねスパン方向(概ねy方向)に並んで配置されている。なお、概ね垂直とは、垂直及び垂直に対して±5°の範囲を含む意味である。それら開口部の形状には特に制限はなく、円形、楕円形、多角形、又はそれらの組み合わせであってもよい。また、燃料噴射口30の数について特に制限はない。燃料噴射口30の配置についても、概ねy方向に並んで配置されていれば特に制限はない。

複数の弁(流路断面積調整部)42−1〜42−5は、複数の配管44−1〜44−5の途中に設けられている。具体的には、弁42−1は、配管44−1の途中に設けられている。弁42−2は、配管44−2の途中に設けられている。弁42−3は、配管44−3の途中に設けられている。弁42−4は、配管44−4の途中に設けられている。弁42−5は、配管44−5の途中に設けられている。なお、流路断面積調整部は、流路断面積を調整可能なものであれば何でもよく、弁であってもよいし、燃料Gの流量を調整可能なマスフローコントローラであってもよいし、弁とマスフローコントローラの組であってもよい。

この場合、5つの弁(及び/又はマスフローコントローラ)42−1〜42−5を開/閉状態にすることで、5つの燃料噴射口30−1〜30−5のうちの所望の燃料噴射口30へ燃料Gを供給することができる。言い換えると、このような複数の弁(及び/又はマスフローコントローラ)により、複数の燃料噴射口30での燃料噴射の流量を個別に制御することが可能となる。それにより、燃料Gを噴射する燃料噴射口の数や種類が異なる複数の状態を作り出すことができる。

燃料制御部37は、燃焼器12の燃料供給部22及び複数の弁(及び/又はマスフローコントローラ)42−1〜42−5を制御信号により制御する。例えば、燃料制御部37は、飛しょう速度が所定の速度に達した段階で、燃料供給部22がオートパイロットの指令に応じた総流量の燃料を燃料噴射器20へ強制的に送出するように、燃料供給部22を制御する。例えば、燃料供給部22は、オートパイロットの指令に応じた総流量の燃料を燃料噴射器20へ強制的に送出する定量ポンプを備える。加えて、例えば、燃料制御部37は、低速時に弁42−1〜42−5が開状態となり、高速時に弁42−1と弁42−5が閉状態となり、弁42−2〜42−4が開状態となるように、弁42−1〜42−5を制御する。ただし、弁42−1〜42−5の制御は、上記の例に限られない。なお、前記燃料供給部22の制御は、弁42−1〜42−5の制御とは独立して行われることが好ましい。すなわち、弁42−1〜42−5の制御は、燃料の総流量の制御とは無関係であることが好ましい。

燃料制御部37は、オートパイロット33と、燃料噴射制御器31と、飛しょう速度計測/推定器32とを備えている。

飛しょう速度計測/推定器32は、ジェットエンジン2の飛しょう速度を計測又は推定する。飛しょう速度計測/推定器32は、計測器の場合、例えば、ピトー管である。飛しょう速度計測/推定器32は、推定器32の場合、例えば、GPS装置や慣性航法装置であり、GPS装置の場合は自身の位置の時間変化により、慣性航法装置の場合は自身の加速度の積分により速度を推定する。

燃料制御部37は、オートパイロット33から指示された総燃料流量、及び、飛しょう速度計測/推定器32のデータ、高度センサ(図示せず)のデータ、他のセンサ(図示されず)のデータ等に基づいて、燃料噴射制御器31を制御する。

なお、総燃料流量については、例えば、次のように決定される。ある特定の飛しょう体又はある特定のジェットエンジンについて、飛しょう高度(高度センサのデータ)及び飛しょう速度(飛しょう速度計測/推定器32のデータ)に基づいて、インレット11から流入する空気流入量を求めることができる。例えば、燃料制御部37は、飛しょう高度及び飛しょう速度から、前記空気流入量を計算により求めるように構成される。あるいは、燃料制御部37は、飛しょう高度及び飛しょう速度と、前記空気流入量とを対応付けるテーブルを備え、当該テーブルを参照して、前記空気流入量を求めるように構成してもよい。他方、オートパイロット33からの速度指令、加速度指令等に応じてジェットエンジンに要求すべき推力は、求められる。当該推力は、燃料制御部37が計算により求めることとしてもよい。そして、当該推力と、前記飛しょう速度と、前記飛しょう高度と、前記空気流入量等から、燃焼器12に供給すべき総燃料流量を求めることができる。例えば、当該総燃料流量は、燃料制御部37によって、計算により求められる。

燃料噴射制御器31は、オートパイロット33からの制御信号、並びに、飛しょう速度計測/推定器32及び高度センサ等のデータに基づいて、燃焼器12の燃料供給部22及び複数の弁42−1〜42−5を制御信号により制御する。燃料噴射制御器31は、マイクロコンピュータに例示される。例えば、燃料噴射制御器31は、オートパイロット33からの制御信号に基づいて、送出すべき総燃料流量を燃料供給部22に対して指示する。当該指示に応じて、燃料供給部22は、燃料を送出する。また、燃料噴射制御器31は、前記総燃料流量、及び/又は、飛しょう速度計測/推定器32及び高度センサ等のデータに基づいて、複数の弁42−1〜42−5の開閉又は開度を制御する。複数の弁42−1〜42−5の開閉又は開度の制御に際しては、燃料噴射制御器31の記憶部に格納された弁の開閉又は開度に関するテーブル35を参照してもよい。複数の弁42−1〜42−5の開閉又は開度の制御、及び、テーブル35については後述される。

なお、燃料噴射器20における、配管及び弁は、上記構成に限定されるものではない。図7Bは、本実施の形態に係るジェットエンジンの燃料噴射器の構成の他の例を示す機能ブロック図である。燃料噴射器20aは、複数の燃料噴射口30−1〜30−5と、複数の配管43、43a−1、43a−2、44a−1〜44a−5と、複数の弁42a−1〜42a−2とを含んでいる。

配管44a−1は一端を配管43a−1の一端に、他端を燃料噴射口30−1にそれぞれ接続されている。配管44a−5は一端を配管43a−1の一端に、他端を燃料噴射口30−5にそれぞれ接続されている。配管44a−2は一端を配管43a−2の一端に、他端を燃料噴射口30−2にそれぞれ接続されている。配管44a−3は一端を配管43a−2の一端に、他端を燃料噴射口30−3にそれぞれ接続されている。配管44a−4は一端を配管43a−2の一端に、他端を燃料噴射口30−4にそれぞれ接続されている。配管43a−1は他端を配管43の一端に接続されている。配管43a−2は他端を配管43の一端に接続されている。配管43の他端は燃料供給部22に接続されている。弁42a−1は、配管43a−1の途中に設けられている。弁42a−2は、配管43a−2の途中に設けられている。

この場合、弁の数が少なくなっているが、2つの弁42a−1、42a−2を開状態にすることで、5つの燃料噴射口30−1〜30−5に燃料Gを供給し、1つの弁42a−1を閉状態にすることで、中央の3つの燃料噴射口30−2〜30−4に燃料Gを供給し、両側の2つの燃料噴射口30−1、30−5への燃料Gの供給を停止できる。すなわち、2つの弁42a−1、42a−2の切り替えにより、少なくとも2つの状態を作り出すことができる。使用する弁42aの数を少なくすることができる。

図8A〜図8Bは、本実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が遅い場合での燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。ただし、図8Aは燃料噴射器20の開口部付近の斜視図である。図8Bは図8Aの断面C1における燃料Gの様子を示す図である。また、断面C1は、空気Air及び燃料Gの流路における、燃料噴射器20から流れ方向に所定距離だけ離れた位置でのyz断面である。

燃料噴射器20において、燃料供給部22は、燃料制御部37に制御信号に基づいて、配管43へ燃料Gを送出する。複数の弁(流路断面積調整部)42−1〜42−5は、燃料制御部37の制御信号に基づいて、開状態になっている。複数の燃料噴射口(開口部)30−1〜30−5は、複数の配管44−1〜44−5を介して燃料Gを供給される。そして、図8Aに示すように、複数の燃料噴射口(開口部)30−1〜30−5は、供給された燃料Gを空間50へ噴射する。このとき、燃料Gは、5つの燃料噴射口30から噴射されている。

本実施の形態では、燃料Gがオートパイロットの指令に応じた総燃料流量(総質量流量)で燃料供給部22から送出され、飛しょう体1の速度が低速の場合(主に加速時)、5つの燃料噴射口30−1〜30−5から噴射されている。この場合、燃料Gを噴射する燃料噴射口30の数が相対的に多いので、1つの燃料噴射口30から噴射される燃料Gの噴射速度及び/又は密度、ひいては、運動量流束は相対的に減少する。それにより、燃料Gの貫通高さを低く抑えることができる。その結果、飛しょう体1の速度が低速で、空気Airの運動量流束が小さい場合でも、図4A及び図4Bの事態が発生せずその結果、図8Bに示されるように、断面C1(yz断面)では、燃料Gが、保炎可能領域Bを通過しており、保炎困難領域Aを通過することが抑制される。

一方、図9A〜図9Bは、本実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が速い場合での燃料噴射の様子を模式的に示す概略図である。ただし、図9Aは燃料噴射器20の開口部付近の斜視図である。図9Bは図9Aの断面C1における燃料Gの様子を示す図である。

燃料噴射器20において、燃料供給部22は、燃料制御部37に制御信号に基づいて、配管43へ燃料Gを送出する。複数の弁42−2〜42−4は、燃料制御部37の制御信号に基づいて、開状態になっている。一方、複数の弁42−1、42−5は、燃料制御部37の制御信号に基づいて、閉状態になっている。その結果、複数の燃料噴射口(開口部)30−2〜30−4は、複数の配管44−2〜44−4を介して燃料Gを供給される。そして、図9Aに示すように、複数の燃料噴射口(開口部)30−2〜30−4は、供給された燃料Gを空間50へ噴射する。一方、複数の燃料噴射口(開口部)30−1、30−5は、燃料Gを供給されないので、図9Aに示すように、供給された燃料Gを空間50へ噴射することはない。このとき、燃料Gは、3つの燃料噴射口30から噴射されている。

本実施の形態では、燃料Gがオートパイロットの指令に応じた総燃料流量(総質量流量)で燃料供給部22から送出され、飛しょう体1の速度が高速の場合(主に巡航時)、3つの燃料噴射口30−2〜30−4から燃料Gが噴射されている。この場合、燃料Gを噴射する燃料噴射口30の数が相対的に少ないので、1つの燃料噴射口30から噴射される燃料Gの噴射速度及び/又は密度、ひいては、運動量流束は相対的に増加する。それにより、空気Airの運動量流束が大きい場合であっても、燃料Gの貫通高さを維持することができる。その結果、飛しょう体1の速度が高速で、空気Airの運動量流束が大きい場合、図9Bに示されるように、断面C1(yz断面)では、燃料Gが、保炎可能領域Bを通過することができる。

本実施の形態に関し、低速時に多数の燃料噴射口30で燃料を噴射し、高速時に少数の燃料噴射口30を噴射している。このことは、低速時には使用される複数の燃料噴射口30の断面積の和を大きくし、高速時には使用される複数の燃料噴射口30の断面積の和を小さくしている、と言い換えることもできる。あるいは、低速時には複数の流路断面積調整部(複数の弁42)における各流路断面積の和を大きくし、高速時には複数の流路断面積調整部(複数の弁42)における各流路断面積の和を小さくしている、と言い換えることもできる。この考えを応用すると、低速時に弁42−1〜42−5を開状態とし、高速時に弁42−1、42−5を完全に閉状態にするのではなく、少しだけ開状態として、複数の弁42の流路断面積の和(開度の和)を小さくすることによっても、上記実施の形態と同様の状態を作ることができる。それにより、低速時に貫通高さが高くならないように抑えて、空気Airの運動量流束が小さい場合でも、燃料Gを保炎可能領域Bに供給し、拡散させることができる。加えて、高速時に貫通高さが低くならないようにして、空気Airの運動量流束が大きい場合でも、燃料Gを保炎可能領域Bに供給し、拡散させることができる。それにより、ジェットエンジン2が動作しなくなる事態を防止することができる。

次に、流路断面積の和を制御する場合の例について説明する。燃料制御部37は、オートパイロットの指令に基づいて、燃料噴射器20に送出すべき総燃料流量を求める。そして、燃料制御部37は、当該総燃料流量を送出するよう、燃料供給部22を制御する。加えて、燃料制御部37は、総燃料流量と、燃焼器12を通過する主流空気の運動量流束(空気の運動量流束を計測又は算出することが困難である場合には、空気の運動量流束の代わりに、例えば、「ジェットエンジンの対気速度」、又は、「ジェットエンジンの対気速度及びジェットエンジンの対気高度」を用いることが可能である。)とに基づいて、複数の流路断面積調整部(複数の弁42)における「各流路断面積の和」を決定する。ここで、「各流路断面積の和」は、燃料Gが、保炎可能領域Bを通過するように決定される。なお、各流路断面積は、例えば、流路断面積調整部において、流路断面積が最小となる部分の断面積とする。なお、流路断面積調整部が設けられていない配管44−1〜44−5が存在する場合には、流路断面積調整部の設けられていない配管の流路断面積は、当該配管の断面積とする。そして、燃料制御部37は、決定された「各流路断面積の和」を実現すべく、複数の流路断面積調整部(複数の弁42)における各流路断面積を制御する。なお、各流路断面積が等しくなるように制御してもよいし、例えば、弁42−1、42−5を、弁42−2〜42−4よりも大きく絞る等して、各流路断面積が異なるように制御してもよい。

上記により、総燃料流量と、各流路断面積とが制御されることにより、各燃料噴射口30−1〜30−5から噴射される燃料Gの燃料噴射速度、密度、又は、燃料の運動量流束、あるいは、燃料の貫通高さは制御され、燃料Gが、保炎可能領域Bを通過することとなる。

代替的に、各燃料噴射口30に絞りシャッタ(図示せず)を設け、各シャッタを連続的に絞ることで、燃料噴射口30から噴射される燃料の運動量流束を連続的に調整してもよい。この場合、各シャッタが流路断面積調整部となる。

次に、本発明の実施の形態に係る飛しょう体1及びジェットエンジン2の動作方法の一例について説明する。

飛しょう体1は、設置位置から目標に向けて発射される。ロケットモータ3は、飛しょう体1を発射装置から飛しょうせるとき、飛しょう体1を飛しょう開始時の速度から所望の速度まで加速する。ただし、飛しょう開始時の速度は、飛しょう体1が静止している発射装置から発射されるときは、速度ゼロであり、飛しょう体が移動中/飛行中の移動体/飛行体の発射装置から発射されるときは、その移動体/飛行体の移動速度/飛行速度である。その後、飛しょう体1は、オートパイロット33の制御により、ロケットモータ3を切り離し、ジェットエンジン2により、加速し、飛しょうする。

ジェットエンジン2で加速を開始した当初の段階(加速時)では、飛しょう体1の速度は相対的に遅い。燃料噴射制御器31は、飛しょう速度計測/推定器32から飛しょう体1の速度を取得する。燃料噴射制御器31は、その飛しょう体1の速度に基づいて、5つの弁42−1〜42−5のうち、どの弁42を開にするかを決定する。例えば、燃料噴射制御器31は、その飛しょう体1の速度に基づいて、速度と弁の開閉に関するテーブル35を参照して、5つの弁42−1〜42−5のうち、どの弁42を開にするかを決定する。

図10は、飛しょう体の速度と燃料噴射制御器31による弁の開閉に関するテーブル35の一例を示す表である。ここで、○印は弁42を開状態にすることを示し、×印は弁42を閉状態にすることを示す。「1」〜「5」は、「30−1」〜[30−5」を示す。テーブル35に示されるように、飛しょう体1の速度が所定の速度v0未満の場合、弁42−1〜42−5を開状態とする。飛しょう体1の速度が所定の速度v0以上の場合、弁42−1、42−5を閉状態とし、他の弁42−2、42−3、42−4を開状態のままとする。なお、このテーブル35は一例であり、弁42の開閉のパターンや段階数はこの例に限定されない。所定の速度v0は飛しょう体1の設計に基づいて決定される。

飛しょう体1の速度は相対的に遅く、所定の速度v0以下である段階を想定する。その場合、テーブル35を参照して、5つの燃料噴射器20の弁42−1〜42−5が開状態となり、燃料供給部22が燃料Gを5つの燃料噴射口30−1〜30−5へ供給する。この場合、燃料Gを噴射する燃料噴射口30の数が相対的に多いので、1つの燃料噴射口30から噴射される燃料Gの流量を小さくし、燃料の運動量流束は相対的に減少する。それにより、燃料Gの貫通高さが低く抑えられ、燃料Gは保炎困難領域Aに達することが抑制され、保炎可能領域Bに供給される。よって、ジェットエンジン2は、保炎することができ、動作を継続することができる(図8A〜図8B)。

その後、ジェットエンジン2の加速により、飛しょう体1の速度は増加し、十分に速くなった段階(主に、巡航時)を想定する。飛しょう体1の速度は相対的に速く、所定の速度v0以上になる。その場合、テーブル35を参照して、3つの燃料噴射器20の弁42−2〜42−4が開状態を維持しつつ、2つの弁42−1、42−5が閉状態となる。燃料供給部22が燃料Gを3つの燃料噴射口30−2〜30−4へ供給する。この場合、燃料Gを噴射する燃料噴射口30の数が相対的に少ないので、1つの燃料噴射口30から噴射される燃料Gの流量が大きくなり、燃料の運動量流束は相対的に増加する。それにより、燃料Gの貫通高さは概ね変わらずに、燃料Gは保炎困難領域Aに達することが抑制され、保炎可能領域Bに供給される。よって、ジェットエンジン2は、保炎することができ、動作を継続することができる(図9A〜図9B)。

以上のようにして、本発明の実施の形態に係る飛しょう体1及びジェットエンジン2は動作する。

図11A及び図11Bは、本実施の形態に係る燃焼器において飛しょう速度が速い場合での燃料噴射の変形例の様子を模式的に示す概略図である。ただし、図11Aは燃料噴射器20の開口部付近の斜視図である。図11Bは図11Aの断面C1における燃料Gの様子を示す図である。なお、飛しょう速度が遅い場合は図8A及び図8Bと同じである。

この変形例では、飛しょう速度が速い場合、燃料噴射器20において、複数の弁42−1、42−3、42−5は、燃料制御部37に制御信号に基づいて、開状態になっている。一方、複数の弁42−2、42−4は、燃料制御部37に制御信号に基づいて、閉状態になる。その結果、複数の燃料噴射口(開口部)30−1、30−3、30−5は、複数の配管44−1、44−3、44−5を介して燃料Gを供給される。そして、図11Aに示すように、複数の燃料噴射口(開口部)30−1、30−3、30−5は、供給された燃料Gを空間50へ噴射する。一方、複数の燃料噴射口(開口部)30−2、30−4は、燃料Gを供給されないので、図11Aに示すように、供給された燃料Gを空間50へ噴射することはない。このとき、燃料Gは、3つの燃料噴射口30から噴射されている。

飛しょう体1の速度が高速の場合(主に巡航時)、3つの燃料噴射口30−1、30−3、30−5から燃料Gが噴射されている。この場合、燃料Gを噴射する燃料噴射口30の数が相対的に少ないので、1つの燃料噴射口30から噴射される燃料Gの流量が大きくなり、燃料の運動量流束は相対的に増加する。それにより、空気Airの運動量流束が大きい場合であっても、燃料Gの貫通高さを維持することがでる。その結果、飛しょう体1の速度が高速で、空気Airの運動量流束が大きい場合でも、図11Bに示されるように、断面C1(yz断面)では、燃料Gが、保炎可能領域Bを通過することができる。この場合、図9Bの場合と比較すると、少ない燃料Gをより広い範囲に拡散させることができる。また、両側の燃料Gが、中央の燃料Gと離れることで、それらの間に空気がより流通し易くなり、燃料Gと空気とをより効率的に混合することができる。

図11A及び図11Bのような燃料Gの噴射を実現する場合、図10のテーブル35を変更する必要がある。図12は、飛しょう体の速度と燃料噴射制御器31による弁の開閉に関するテーブル35の他の例を示す表である。図10の場合と比較すると、飛しょう体1の速度が所定の速度v0以上の場合、弁42−2、42−4を閉状態とし、他の弁42−1、42−3、42−5を開状態のままとする点で相違している。この図12のテーブル35により、図11A及び図11Bのような燃料Gの噴射が実現される。

本実施の形態に係る飛しょう体1及びジェットエンジン2では、ジェットエンジン2で加速を開始した当初の低速時(主に、加速時)には、燃料Gを噴射する燃料噴射口30の数が相対的に多くなっている。それにより、燃料噴射口30の1つ当たりの燃料流量を低下させ、燃料Gの運動量流束を低く抑えることができる。そのため、低速時でも、貫通高さが高くならないように抑えて、燃料Gを保炎可能領域Bに供給し、拡散させることができる。それにより、ジェットエンジン2が動作しなくなる事態を防止することができる。

更に、飛しょう体1の速度が上昇した高速時(主に、巡航時)には、燃料Gを噴射する燃料噴射口30の数が相対的に少なくなっている。それにより、燃料噴射口30の1つ当たりの燃料流量を増加させ、燃料Gの運動量流束を高くすることができる。そのため、高速時でも、貫通高さを維持することができ、燃料Gを保炎可能領域Bに供給し、拡散させることができる。それにより、ジェットエンジン2を継続的に動作させることができる。

このように、本実施の形態では、燃料噴射器20からの燃料Gの流量の合計値を概ね一定としたまま、飛しょう速度に依らずに、燃料の貫通高さを同程度に保つことが可能な速度の範囲を非常に広くすることができる。それにより、非常に広い速度範囲において、保炎可能領域への持続的な燃料供給を可能とすることができる。

その結果、本実施の形態に係る飛しょう体1及びジェットエンジン2では、従来のジェットエンジンと比較して、より低速域から高速域までの非常に広い速度域において使用可能な保炎器を実現することができる。すなわち、ジェットエンジン2の運用可能な速度域を増大させることができる。

なお、本実施の形態では、低速時に、複数の弁42が開状態となり、燃料を噴射する燃料噴射口30の数が増加し、高速時に、開状態であった複数の弁42のうちのいくつかが閉状態となり、燃料を噴射する燃料噴射口30の数が減少する、という構成としている。しかし、本実施の形態はこの例に限定されるものではなく、低速時に燃料を噴射する燃料噴射口30の数が、高速時に燃料を噴射する燃料噴射口30の数よりも多ければ、どのような形態であってもよい。言い換えると、低速時に燃料が流通可能となる弁42の数が、高速時に燃料が流通可能となる弁42の数よりも多ければ、どのような形態であってもよい。例えば、例えば、弁42が10個あった場合(端から順に42−1〜42−10とする)、低速時に、弁42−1、42−2、42−5、42−6、42−9、42−10が開状態となり、他の弁42は閉止し、高速時に、弁42−3、42−4、42−7、42−8が開状態となり、他の弁42は閉止するような形態であってもよい。

また、本実施の形態の変形例に関し、燃料噴射口30は、1つであってもよい。例えば、燃料噴射口を、ジェットエンジンのスパン方向(横幅方向)に長い1つのスリット状噴射口としてもよい。図13A、図13Bは、燃料噴射口30が1つである場合の例を概念的に示す概略断面図であり、ジェットエンジンを通過する主流空気に対して垂直な断面図を示す。なお、図13Aは、弁42が全開であるときの断面図であり、図13Bは、弁42の開度を絞ったときの断面図である。また、図13A及び図13Bにおいて、燃料制御部37、燃料供給部22、弁(流路断面積調整部)42、燃料噴射口30、燃料の貫通高さL1及びL2等が図示されている。

図13A及び図13Bにおいて、図13Aの総燃料流量Qが図13Bの総燃料流量Qと同一であり、図13Aの主流空気の運動量流束が図13Bの主流空気の運動量流束と同一である場合を考える。図13Aの状態から図13Bの状態になるように、弁42により流路断面積を絞ると、燃料Gの貫通高さは、L1からL2に増加する。

このことから、例えば、飛しょう速度が増加するにつれて又は飛しょう高度が減少するにつれて、すなわち、主流空気の運動量流束が増加するにつれて、弁42により流路断面積を絞ることにより、燃料の噴射速度及び/又は密度、及び/又は燃料の運動量流束を増加させて、燃料Gの貫通高さ(燃料Gが、保炎可能領域Bを通過する貫通高さ)を維持するように制御すればよいことが把握される。逆に、飛しょう速度が減少するにつれて又は飛しょう高度が増加するにつれて、すなわち、主流空気の運動量流束が減少するにつれて、弁42により流路断面積を大きくすることにより、燃料の噴射速度及び/又は密度、及び/又は燃料の運動量流束を減少させて、燃料Gの貫通高さ(燃料Gが、保炎可能領域Bを通過する貫通高さ)を維持するように制御すればよいことが把握される。

以上のようにして、空気Airの運動量流束が小さい場合でも、空気Airの運動量流束が大きい場合でも、燃料Gを保炎可能領域Bに供給し、拡散させることができる。それにより、ジェットエンジン2を安定的に動作させることができる。

また、本実施の形態において、ジェットエンジン2を作動させる前にロケットモータ3を用いている飛しょう体1では、ジェットエンジン2の運用可能な速度域が増大されることにより、ロケットモータ3で到達すべき速度(加速すべき速度域)を小さくできる。そのため、ロケットモータ3の大きさ(重量)を大幅に低減することができる。それにより、飛しょう体1全体として小型軽量化を実現でき、更に加速性能を高めることができる。

飛しょう体や航空機、ロケットは、飛しょう速度計測/推定器を備えている場合が多い。そのため、それらの機体へ本実施の形態を適用する場合、装置の追加が最小限に抑えられるため好適である。

本発明により、より低速でも安定的に動作することが可能なジェットエンジン、飛しょう体及びジェットエンジンの動作方法を提供することができる。また、本発明により、燃料が保炎困難な領域に到達することを抑制することが可能なジェットエンジン、飛しょう体及びジェットエンジンの動作方法を提供することができる。

本実施の形態はジェットエンジンを飛しょう体に適用した例示ついて説明しているが、本発明は、その例に限定されるものではなく、ロケット及びジェットエンジンを備えた多段式打ち上げ機や航空機にも適用可能である。

本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、実施の形態や変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、相互に適用可能である。

1 :飛しょう体 2 :ジェットエンジン 3 :ロケットモータ 10 :機体 11 :インレット 12 :燃焼器 13 :ノズル 20 :燃料噴射器 20a :燃料噴射器 21 :壁面 22 :燃料供給部 30 :燃料噴射口 31 :燃料噴射制御器 32 :飛しょう速度計測/推定器 33 :オートパイロット 35 :テーブル 37 :燃料制御部 40 :カウル 42 :弁 43 :配管 50 :空間 A :保炎困難領域 B :保炎可能領域 Air :空気 C1、C101 :断面 G :燃料 v0 :速度 L1 :燃料貫通高さ L2 :燃料貫通高さ

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