削岩構成要素用ベイナイト鋼

申请号 JP2015548412 申请日 2013-12-16 公开(公告)号 JP2016506451A 公开(公告)日 2016-03-03
申请人 サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ; サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ; 发明人 ユーアン リンデン,; ユーアン リンデン,; トマス アントンソン,; トマス アントンソン,;
摘要 質量%(wt%)で、C:0.16〜0.23、Si:0.8〜1.0、Mo:0.67〜0.9、Cr:1.10〜1.30、V:0.18〜0.4、Ni:1.60〜2.0、Mn:0.65〜0.9、P:≦0.020、S:≦0.02、Cu:≦0.20、N:0.005〜0.012、と、残部鉄と、不可避的不純物とを含むベイナイト鋼。【選択図】図1
权利要求

質量%(wt%)で、 C:0.16〜0.23、 Si:0.8〜1.0、 Mo:0.67〜0.9、 Cr:1.10〜1.30、 V:0.18〜0.4、 Ni:1.60〜2.0、 Mn:0.65〜0.9、 P:≦0.020、 S:≦0.02、 Cu:≦0.20、 N:0.005〜0.012質量% と、残部鉄と、不可避的不純物とを含む、ベイナイト鋼。Siの前記含有量が、0.85〜0.95質量%である、請求項1に記載のベイナイト鋼。Moの前記含有量が、0.70〜0.80質量%である、請求項1または2に記載のベイナイト鋼。Crの前記含有量が、1.20〜1.25質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のベイナイト鋼。Vの前記含有量が、0.20〜0.30質量%であり、好適には0.2〜0.25質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載のベイナイト鋼。Nの前記含有量が、0.008〜0.012質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載のベイナイト鋼。請求項1から6のいずれか一項に記載の鋼を含む、削岩用構成要素(10、20、30)。前記構成要素が、ドリルロッド(10)用のねじ切りされた雄型コネクタまたはねじ切りされた雌型コネクタ(20、30)である、請求項7に記載の構成要素。前記構成要素が、ねじ切りされた雄型コネクタおよびねじ切りされた雌型コネクタ(20、30)を備えるドリルロッド(10)である、請求項7または8に記載の構成要素。削岩用構成要素(10、20、30)を製造するための方法であって、 a.請求項1から6のいずれか一項に記載の鋼で、請求項7から9いずれか一項の記載によって、削岩用構成要素(10、20、30)を形成するステップと、 b.前記構成要素(10、20、30)をオーステナイト化温度まで加熱するステップと、 c.前記構成要素(10、20、30)を、所定の時間、炭素含有雰囲気中にオーステナイト化温度で保つステップと、 d.前記構成要素を冷却するステップと を含む方法。前記構成要素が900〜1000℃の温度まで加熱される、請求項10に記載の方法。前記構成要素がCOおよびH2の雰囲気中で加熱される、請求項10または11に記載の方法。前記構成要素が3〜6時間加熱される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。前記構成要素が、空気中で冷却される、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。地上で空気冷却トップハンマ掘削中に、ドリルロッド用の表面硬化されたコネクタの中に、請求項1から6のいずれか一項に記載のベイナイト鋼を使用すること。

说明书全文

本発明は、請求項1の前文によるベイナイト鋼に関する。本発明は、更に、請求項7の前文によるドリルロッド構成要素に関する。本発明は、更に、請求項10の前文によるドリルロッド構成要素を製造するための方法に関する。本発明は、また、請求項15の前文による新規なベイナイト鋼の使用に関する。

採鉱および建設作業用のドリルロッドは、典型的には、中央ロッド部分、ねじ切りされた雄型端部およびねじ切りされた雌型端部を備える。操作中に、ドリルヘッドまたはドリルビットが、ロッドの雄型端部にねじで取り付けられ、ドリルヘッドが岩石の中に駆動され、またはドリル工具によって粉砕される。1つのタイプのドリルは、いわゆる「トップハンマ式ドリル」と呼ばれ、ドリル工具がドリルロッドに高速回転運動および震動を提供するように配置される。ドリル穴の長さが進行するにつれて、ドリルロッドは、先行するドリルロッドの端部にドリルロッドを更にねじで取り付けることによって、延伸され得る。

ドリルロッドは、鍛造、ならびに鋼製ロッドの端部を対合する雄型コネクタおよび雌型コネクタの中にねじを切ることによって製造され得る。しかし、今日最も一般的な実施は、雄型コネクタおよび雌型コネクタを別々に製造し、次いでコネクタを鋼製ロッドの各端部に摩擦圧接によって取り付けることである。

ドリルロッドが摩耗し、取り換える必要がある割合がドリル作業についての全体的費用に直接的影響を及ぼすので、ドリルロッドに関連する1つの問題は、それらが相対的に使用寿命が短いことである。追加の問題は、ロッドの強度である。仮にロッドが破損する場合、ドリル穴からロッドを回収するために相当に時間がかかる可能性がある。

ドリルロッドを改善するために、過去に何らかの研究が成されてきた。例えば、国際公開第97/27022号パンフレットは、摩擦圧接後にコネクタと中央ロッドとの間の境界面で発生する軟質材料区域の問題に対応している。コネクタおよび中央ロッドが一体に摩擦圧接される場合、コネクタと中央ロッドとの間の境界面の中に熱が放出される。過熱された区域は、「熱の影響を受けた区域」(HAZ:Heat Affected Zone)と呼ばれる。HAZの中の鋼材は焼き戻され、軟質材料の区域が、ロッドとコネクタとの間の境界面に発生する。軟質区域は、ドリルロッドの最も弱い部分になり、典型的にはドリルロッドが折れる位置である。この問題を解決するために、HAZの中の最も焼き戻された部分がドリルロッドの芯部硬度に等しい硬度を有するように、化学組成が均衡された鋼を国際公開第97/27022号パンフレットは提案している。

国際公開第97/27022号パンフレットに記載される鋼は、特にコネクタと中央ロッドとの間の境界面の破損の観点から、ドリルロッドの使用寿命の改善をもたらした。しかし、ドリルロッドの全体的な使用寿命は、やはり十分ではない。

現地観察によると、今日のドリルロッドの破損は、コネクタと中央ロッドとの間の境界面でほとんど発生しないことを示している。その代り、ドリルロッドの寿命の長さは、コネクタのねじ切りされた部分の中の破損に限定されるように思われる。

国際公開第97/27022号パンフレット

したがって、本発明の目的は、上記の問題の少なくとも1つを解決することである。特に、本発明の目的は、長い使用寿命を含むドリルロッドの製造を可能にする改善された鋼組成を達成することである。本発明の追加の目的は、長い期間に亘って使用され得る費用効果の高いドリル構成要素を達成することである。本発明の追加の目的は、摩耗耐性のあるドリル構成要素を製造するための方法を達成することである。やはり本発明の追加の目的は、削岩構成要素の中の改善された鋼組成の使用に関連する。

本発明によって、これらの目的の少なくとも1つが、(質量%(wt%)で)、 C:0.16〜0.23、 Si:0.8〜1.0、 Mo:0.67〜0.9、 Cr:1.10〜1.30、 V:0.18〜0.4、 Ni:1.60〜2.0、 Mn:0.65〜0.9、 P:≦0.020、 S:≦0.02、 Cu:≦0.20、 N:0.005〜0.012質量% を含有し、残部鉄および不可避的不純物を含むベイナイト鋼によって達成される。

新規な鋼は、主として、例えばドリルロッドの中の表面硬化され、ねじ切りされたコネクタなど、上昇した温度、すなわち300〜500℃で繰り返し摩耗を受ける表面硬化構成要素の製造を対象とする。これらの構成要素は、マルテンサイト表面区域およびベイナイトーマルテンサイト芯部を有する。

トップハンマ削岩中に実施される実地テストからの結果は、新規な鋼から製造された表面硬化ドリルロッドが、従来の鋼から製造されたドリルロッドよりも驚くほどより長持ちすることを示した。

トップハンマ削岩または地上で土壌掘削中に、ドリルロッドは、ドリル工具から強い震動を受ける。震動は衝撃波を引き起こし、衝撃波は相互接続されたドリルロッドを通って、穴の底部のドリルビットまで下方に進行する。衝撃波が相互接続されたロッドを通って進行するにつれて、そのエネルギーの約5%が熱の形態で失われ、その熱が、主に、相互接続されたドリルロッドの雄型コネクタおよび雌型コネクタのねじ山の中に放出する。その結果、トップハンマ掘削中に、コネクタ内の作業温度は、典型的には300℃までの高温であるが、しかし500℃に到達する可能性がある。地上でトップハンマ掘削中に、ドリルロッドを冷却し、更にドリル切削物を除去するために、典型的に空気が使用される。しかし、空気は、効果的な冷却流体ではなく、放出された熱によって、ドリルロッドのコネクタのねじ山の中のマルテンサイト表面がより軟質相であるセメンタイトおよびフェライトに変態することを回避するほど十分にロッドを冷却することはない。従来のドリルロッドでは、マルテンサイトの変態によって、ねじ山の表面が軟質になり、結局はコネクタが摩耗する原因になる可能性がある。粘着性なので、耐摩耗性は硬度に直接関係する。

新規な鋼から製造されたドリルロッドの驚くほど長い使用寿命の理由は、完全には理解されていない。しかし、理論に制約されずに、鋼内の合金元素であるケイ素、モリブデン、クロムおよびバナジウムの均衡のとれた量によって、ドリルロッドコネクタのマルテンサイト表面は、トップハンマ掘削中に、高い作業温度で硬度が保たれる。

ケイ素が、εカーバイドを安定化させ、したがって、約300℃の温度に至るまで、コネクタの硬いマルテンサイト表面区域がより軟質のセメンタイトおよびフェライトに変態することを遅らせる。しかし、掘削中にコネクタ内の温度が上昇するにつれて、表面硬化コネクタの表面内のマルテンサイト相が、結局はセメンタイトおよびフェライトに変態し始めるであろう。コネクタの表面区域内のマルテンサイトの量がそれによって低下し、結局、表面区域の硬度も低下する。マルテンサイトがセメンタイトおよびフェライトに変態する間、炭素が鋼の中に放出される。

新規な鋼では、合金元素モリブデン、クロムおよびバナジウムが、変態したマルテンサイト相から発生する過度の炭素を含む硬く、安定したカーバイドを形成する。硬いカーバイドが、コネクタの残りのマルテンサイト相の中に析出し、それによってマルテンサイトがセメンタイトに変態することによって失われる硬度を補償する。

コネクタの芯部は、マルテンサイトおよびベイナイトから成る。ベイナイトは、セメンタイト相およびフェライト相の微細混合物である。ベイナイトは、高温で安定しており、したがって高い加工温度で、コネクタの硬化された表面区域を支持するのに依然として十分強い状態である。

代替形態によると、新規な鋼の中で、Siの含有量は0.85〜0.95質量%である。

代替形態によると、新規な鋼の中で、Moの含有量は0.70〜0.80質量%である。

代替形態によると、新規な鋼の中で、Crの含有量は1.20〜1.25質量%である。

代替形態によると、新規な鋼の中で、Vの含有量は、0.20〜0.30質量%であり、好適には0.2〜0.25質量%である。

代替形態によると、新規な鋼の中で、Nの含有量は、0.005〜0.008質量%であり、より好適には0.008〜0.012質量%である。

本発明は、更に、新規な鋼を含む削岩用構成要素に関する。

構成要素は、ドリルロッド用のねじ切りされた雄型コネクタまたはねじ切りされた雌型コネクタであることができる。

例えば、構成要素は、ねじ切りされた雄型コネクタおよびねじ切りされた雌型コネクタを備えるドリルロッドである。

本発明は、更に、削岩用構成要素を製造するための方法であって、 a.上記に説明するように新規な鋼から、削岩用構成要素を形成するステップと、 b.前記構成要素をオーステナイト化温度まで加熱するステップと、 c.前記構成要素を所定の時間、炭素含有雰囲気中にオーステナイト化温度で保つステップと、 d.前記構成要素を冷却するステップと を含む方法に関する。

好適には、前記構成要素は、900〜1000℃の温度まで加熱される。

好適には、前記構成要素は、COおよびH2の雰囲気の中で加熱される。

好適には、前記構成要素は、3〜6時間加熱される。

好適には、前記構成要素は、空気中で冷却される。

本発明は、更に、地上で空気冷却トップハンマ掘削中に、ドリルロッド用の表面硬化されたコネクタの中に、新規なベイナイト鋼を使用することに関する。 発明の詳細な説明

新規な鋼は、質量%(wt%)で以下の要素を含む。

炭素(C)。炭素は、強度のために新規な鋼に含まれて、ベイナイト系であるべき最終的な鋼の構造を支配する。炭素は、更に、カーバイドの形成を保証するために新規な鋼に加えられる。カーバイドは、鋼のベイナイト構造に析出硬化効果を提供する。カーバイドは、更に、鋼の中の結晶粒が凝集によって成長することを防止し、それによって、鋼の中の微細結晶粒を保証し、その結果として高い強度を保証する。したがって炭素含有量は、鋼の中で少なくとも0.16質量%であるべきである。炭素含有量が多すぎると、鋼の衝撃強度を低下させる。したがって、炭素は0.23質量%に制限されるべきである。好適には、炭素は0.18〜0.20質量%である。

ケイ素(Si)は、鋼の製造の中で脱酸素剤として使用され、したがって、いくらかの量のケイ素が鋼の中に常に存在する。ケイ素は、焼き入れ性、すなわち焼き入れ中にオーステナイト相がマルテンサイトに変態する割合を増加させるので、新規な鋼にプラスの効果を有する。新規な鋼では、ケイ素がマルテンサイトのセメンタイトおよびフェライトへの変態を遅らせるので、ケイ素は重要な合金元素である。

マルテンサイトは不安定な相であり、加熱される場合、様々なカーバイドを経てセメンタイトおよびフェライトに変態し、それが鋼の硬度を低下させる原因になる。マルテンサイトの変態中にセメンタイト相に進行する、カーバイドの1つであるεカーバイドをケイ素が安定させ、それによってマルテンサイトの変態を遅らせる。更に、マルテンサイト相の分解中に、炭素は、カーバイドが成長するために、鋼を通ってカーバイドまで拡散しなければならない。鋼の中のケイ素の存在によって、鋼内の炭素活動性が増加し、それによって既に形成されたカーバイドの成長、および新しいカーバイドの核形成をも遅らせる。更にこの機構は、マルテンサイトの形成を実質的に遅らせる。したがって、ケイ素は高温で新規な鋼の表面硬化された構成要素の表面区域の強度を保つ上でプラスの効果を有する。

しかし、ケイ素はフェライトを安定させ、それによって多すぎる量のケイ素がA1温度の上昇につながるであろう。硬化中に鋼がより高温に加熱されなければならず、それによってオーステナイト相の中で結晶粒が成長し、したがって強度を低下させるので、このことはマイナス効果がある。結局は、ケイ素の量は、新規な鋼の中で0.80〜1.0質量%に制限される。好適には、ケイ素の量は0.85〜0.95質量%である。

モリブデン、クロムおよびバナジウムは、マルテンサイト相がセメンタイトおよびフェライトに変態する場合、硬度の低下を補償する硬質カーバイドを形成するので、新規な鋼の中で重要な元素である。異なるカーバイド形成物であるモリブデン、クロムおよびバナジウムは、様々な温度で安定したカーバイドを形成する。それ故に、低温で、したがってマルテンサイトの穏やかな変態で、主にモリブデン含有量の多いカーバイドが析出する。温度が上昇すると、マルテンサイトの変態が増加する。しかしより高温では、クロム含有量の多いカーバイドが最初に析出し、その後、更に高い温度で、バナジウム含有量の多いカーバイドが析出する。このことによって、コネクタの表面でマルテンサイトの硬度は、幅広い加工温度に亘って実質的に一定に保たれるという効果を提供する。

モリブデン(Mo)は、300℃から約500℃までの温度で、モリブデン含有量の多い安定したカーバイドを生成し、マルテンサイト相がセメンタイトおよびフェライトに変態する場合、硬度の低下を補償する。十分な量のカーバイドが析出することを保証するために、モリブデンの量は少なくとも0.67質量%であるはずである。しかし、モリブデンはオーステナイトを安定させ、したがって焼き入れ性に非常に強い影響を及ぼす。したがって、モリブデン含有量が多すぎると、コネクタの芯部内にマルテンサイトの形成につながり、それによってコネクタを砕けやすくする。モリブデン含有量が多いと、更に二次的最大硬度を形成する原因になる可能性がある。したがって、新規な鋼の中でモリブデン用上限値は、0.9質量%である。好適には、鋼の中でモリブデンは0.67〜0.83質量%である。

クロム(Cr)は、炭素と共に、安定したクロム含有量の多いカーバイドを形成する。いくつかのクロム含有量の多いカーバイドは、低温、すなわち300℃でさえも析出する。しかし、クロム含有量の多いカーバイドの大半は、400〜500℃の間の温度で析出する。クロム含有量の十分多いカーバイドが形成されることを保証するために、新規な鋼は少なくとも1.10質量%のクロムを含むべきである。非常に多いクロム含有量が、典型的には600℃を超える高温で、鋼の中にいわゆる二次的最大硬度を形成することにつながる可能性がある。この現象は、クロム含有量、更にバナジウム含有量およびモリブデン含有量の多いカーバイドの形成によって一般的に発生する。しかし、鋼の温度が更に上昇する場合、析出したカーバイドの成長に起因して、硬度が急速に低下し、それが鋼の中の他の析出物から炭素鋼をもたらす。したがって、クロムは1.30質量%に制限されるべきである。好適には、十分な量のカーバイドが形成され、二次的最大硬度の形成が回避されることを保証するために、新規な鋼の中でクロム含有量は1.20〜1.25である。

バナジウム(V)は、550〜600℃の温度でバナジウム含有量の多い非常に細かいカーバイドを生成し、したがって、マルテンサイト相が高温でセメンタイトおよびフェライトに変態する場合、硬度の低下を補償する。新規な鋼は、十分な量のバナジウムカーバイドが、高い加工温度で鋼の中に析出することを保証するために、少なくとも0.18質量%のバナジウムを含有すべきである。

バナジウムは、高温、すなわち900℃以上でもやはり、炭窒化バナジウムを形成する。炭窒化バナジウムは、鋼の浸炭中にオーステナイト相の結晶粒成長を防止するので重要である。炭窒化物が非常に安定的になるので、熱間加工に先立つ焼きなましステップの中で分解しないので、多すぎるバナジウム含有量によって、鋼の熱間加工中に問題が発生する可能性がある。したがって、バナジウムは、新規な鋼の中で0.40質量%に制限されなければならない。好適には、バナジウムは、0.18〜0.30質量%であり、より好適には、0.20〜0.30質量%であり、更により好適には0.20〜0.25質量%である。

マンガン(Mn)は、硫黄と共にMnSを形成するために新規な鋼の中に含まれ、それは鋼の中で不純物として存在することができる。マンガンは、Ms温度、すなわちオーステナイト化後にマルテンサイトが形成し始める温度を下げるので、鋼の焼き入れ性にプラスの効果を有する。低いMs温度はまた、新規な鋼から製造されるコネクタの芯部の中の微細ベイナイト構造をもたらす。コネクタの芯部内の高強度を保証するために、このことはプラスである。マンガンは、MnSタイプの硫化物を保証するために、少なくとも0.65質量%の量が含まれるべきである。マンガンがMs温度を低下させるので、マンガンの高い含有量は、鋼の中に残留オーステナイトの形成につながる可能性がある。したがって、マンガンは0.85質量%に制限されるべきである。マンガンのこの含有量もやはり、新規な鋼の中で微細ベイナイト構造を保証するので、好適には、マンガンの含有量は鋼の中で0.70〜0.80質量%である。

リン(P)は、新規な鋼用の原材料の中で不純物として存在する。リンは、鋼の凝固中に液相に分離し、凝固した鋼の中でリンの含有量が多いストリークをもたらす。したがって、高いリン含有量は、鋼の延性および衝撃靭性に悪影響を与える。したがって、リンは、新規な鋼の中で最大0.020質量%、すなわち0〜0.020質量%に制限されるべきである。

硫黄(S)もまた、新規な鋼用の原材料の中で不純物として存在する。硫黄は、鋼の延性および衝撃靭性に悪影響を与える、鋼の中の硫化含有物を形成する。したがって、硫黄は、新規な鋼の中で0.02質量%、すなわち0〜0.020質量%、より好適には、最大0.015質量%に制限されるべきである。

ニッケル(Ni)は、鋼の衝撃強度を高め、したがってドリルロッドを対象とする新規な鋼の中で重要な元素である。ニッケルは更に、鋼のMs温度を低下させ、それによって焼き入れ性を高める。鋼の中に十分な衝撃強度を保証するために、ニッケル含有量は少なくとも1.60質量%であるべきである。ニッケル含有量が多すぎると、Ms温度が低下しすぎて、鋼の中に残留オーステナイトの形成につながる可能性がある。残留オーステナイトは、マルテンサイト相の中で引張応の原因になり、それによって鋼の強度が低下する可能性がある。したがって、ニッケル含有量は、新規な鋼の中で2.0質量%に制限されるべきである。更に、ニッケルは高価な合金元素であり、その理由から、できるだけ少ない含有量で存在するべきである。好適には、ニッケル含有量は、新規な鋼の中で1.70〜1.90質量%であり、ニッケルのこの量は、十分な衝撃強度を含む費用効果の高い鋼をもたらすからである。

銅(Cu)は、典型的には原材料として使用される金属屑の中に含まれる。銅は、0.20質量%まで、すなわち0〜0.20質量%の含有量で許容され得る。

窒素(N)。浸炭中に安定したバナジウム炭窒化物が形成されることを保証するために、好適には新規な鋼は窒素を含む。好適には、窒素の含有量は0.005質量%であり、より好適には、0.008質量%である。鋼が、多すぎる窒素を含む場合、バナジウム炭窒化物が安定的になりすぎて、鋼の熱間加工温度まで加熱中に分解することができない。したがって、窒素の最大含有量は、0.012質量%である。

熱間圧延状態では、新規な鋼は、その間ずっとベイナイト構造、すなわちセメンタイト(Fe3C)およびフェライト(αー鉄)の構造を有する。「熱間圧延」とは、新規な鋼が、鋳造によって生成され、その後約1200℃の温度に加熱され、熱間圧延を受け、それに続いて空気中で冷却されることを意味する。

硬化された状態では、新規な鋼は、マルテンサイト表面区域およびベイナイト/マルテンサイト芯部を有する。

新規な鋼を含む、製造された削岩構成要素の概略図である。

新規な鋼で実施された実験からの結果を示すグラフである。

新規な鋼で実施された実験からの結果を示す表である。

新規な鋼および比較の鋼で実施されたテストの試料の表面硬度を示すグラフである。

新規な鋼および比較の鋼で実施されたテストの試料の芯部硬度を示すグラフである。

新規な鋼および比較の鋼で実施されたThermoCalc(商標)模擬実験で作製された図である。

新規な鋼および比較の鋼で実施されたThermoCalc(商標)模擬実験で作製された図である。

新規な鋼および比較の鋼で実施されたThermoCalc(商標)模擬実験で作製された図である。

新規な鋼および比較の鋼で実施されたThermoCalc(商標)模擬実験で作製された図である。

新規な鋼および比較の鋼で実施されたThermoCalc(商標)模擬実験で作製された図である。

図1は、本発明の第1の実施形態によるドリル構成要素の長手方向横断面を概略的に示す。図1に示すドリル構成要素は、中央ロッド部分10を備えるMFドリルロッド1である。中央ロッド10の第1の端部は雄型コネクタ20を備え、中央ロッドの第2の端部は雌型コネクタ30を備える。雄型コネクタ20は外側ねじ山21を備え、雌型コネクタは内側ねじ山31を備える。第1のMFロッドの雄型コネクタ20が第2のMFロッドの雌型コネクタ30の中に受けられることができるように、雄型コネクタおよび雌型コネクタ、ならびにねじ山21、31が、寸法成形される。MFロッドは、更に、中央チャンネル60、すなわちMFロッド全体を通って延在する孔を備える。チャンネルは、雄型コネクタの中央に1つの開口部61、および雌型コネクタの中央に1つの開口部61を含む。作動中、空気などの冷却流体がチャンネル60を通って導かれる。

図1では、雄型コネクタ20および雌型コネクタ30が、破線11で示される摩擦圧接によって中央ロッド部分10に取り付けられている。しかし、図1のMFロッドは、一体に製造されることも可能であり、すなわち雄型コネクタ20および雌型コネクタ30は、鍛造およびロッド端部をねじ切りすることによって形成され得る。

コネクタ20およびコネクタ30は、本発明によるベイナイト鋼から製造される。中央ロッド10は、別のタイプの鋼、例えば従来の低合金炭素鋼から製造され得る。しかし、中央ロッドは、本発明によるベイナイト鋼から製造されることも可能である。

コネクタ20およびコネクタ30は、表面硬化され、ベイナイト芯部40およびマルテンサイト表面区域50を有する。マルテンサイト表面区域は、厚さ1〜3mmであり、コネクタの表面からその芯部に向かって延在する。

新規なドリル構成要素をMFロッドに関して説明したが、ドリル構成要素は、高い加工温度下で繰り返される摩耗を受ける任意の他のタイプの構成要素、例えばドリフタロッドなどであってもよいことは明らかである。

好適には、新規なドリル構成要素は、以下のステップを含む方法によって製造される。

第1のステップでは、ドリル構成要素が本発明によるベイナイト鋼で形成される。このことは、典型的には新規な鋼の先駆物質を雄型コネクタ20および雌型コネクタ30に鍛造し、ねじ切りすることによって達成される。先駆物質は、典型的には新規な鋼から製造された中実ロッドの部分である。

第2のステップでは、コネクタが表面硬化を受ける。このことは、コネクタがオーステナイト化温度、新規な鋼のためには900℃を超える温度に炉の中で加熱される。炉は、任意のタイプ、例えばピット炉であることができる。コネクタの完全なオーステナイト化を保証し、結晶粒拡大などの悪影響を回避するために、コネクタは900℃から950℃の間の温度、好適には925℃に加熱されるべきである。

コネクタをオーステナイト化するステップは、炭素含有量の多い雰囲気の中で実施されて、炭素の含有量がコネクタの表面区域で増加する、いわゆる浸炭を保証する。典型的には炉内の雰囲気は、H2ガスおよびCOガスの混合、例えば分解したメタンである。

コネクタは、炉の中に3〜6時間保たれる。時間は、表面の深さ、すなわちマルテンサイト表面区域の厚さを支配する。十分な表面深さを保証するために、時間は5時間が好適である。

加熱温度が満了するとき、現在オーステナイト化されているコネクタが炉から取り出され、周囲空気で冷却される。強制的空気冷却は、コネクタに空気を吹き付けることによって採用される。

冷却中に、オーステナイト化されたコネクタの浸炭された表面はマルテンサイトに変態し、コネクタの芯部はベイナイトおよびマルテンサイトの混合物に変態する。

その後コネクタは、マルテンサイト表面の硬度を最適化するために、焼き戻しステップを受けることができる。したがって、焼き戻しは、1時間の間、200〜300℃で実施される。

最終的に、コネクタは摩擦圧接によって中央ロッド部分に取り付けられる。

新規な鋼材を限定しない4つの実施例によって以下に説明する。 実施例1

実施例1は、新規なベイナイト鋼から製造される表面硬化されたドリルロッドを用いて実施された実地試験の結果を説明する。

第1のステップで、新規な鋼の溶解が生成された。金属屑を電気アーク炉内で溶融し、CLUコンバータの中で溶鋼を精錬し、次いで金型24”の中で鋳造して鋳塊にすることによって溶解が生成された。

得られた新規な鋼は、以下の組成を有した。

新規な鋼から、ロッドが製作された。いくつかのロッドはねじ切りされた雌型コネクタに鍛造され、いくつかのロッドはねじ切りされた雄型コネクタに鍛造された。

雄型コネクタおよび雌型コネクタは、表面硬化を受けた。第1のステップでは、コネクタが、925℃の温度で5時間、COおよびH2の雰囲気が含まれるピット炉の中で浸炭された。

5時間後、コネクタは炉から取り除かれ、空気中で冷却を許された。表面硬化が、コネクタの表面から、ベイナイト/マルテンサイト構造を有する芯部に向かって延在したマルテンサイト層をもたらした。

その後、コネクタは、やはり新規な鋼材から製造された鋼製ロッドの端部に取り付けられた。雄型コネクタがロッドの一方の端部に取り付けられ、雌型コネクタが他方の端部に取り付けられた。コネクタは、摩擦圧接によって取り付けられた。

その後実地試験が、場所Aおよび場所Bという2つの異なる位置で、新規な鋼からのドリルロッドを用いて実施された。掘削が、直径115mmを有するドリルビットおよびSandvik DP1500型のドリル工具を用いて実施された。掘削速度は、約1メートル/分であった。

比較として、従来のドリルロッドもやはり使用された。これらのロッドは、鋼種Sanbar 64から作製された。

各タイプ(新規および従来)の9本のロッドが場所Aで使用され、各タイプの4本のロッドが場所Bで使用された。ドリルロッドは損傷するまで使用され、各ロッドを用いて掘削された全メートル数は「掘削メートル(dm:drilling meter)」として記録された。表2は、場所Aおよび場所Bで1本のロッドにつき掘削された掘削メートルの平均数として、テスト結果を示す。

表1で分かるように、新規な鋼のドリルロッドは、従来の材料のロッドよりも相当により長い作動寿命を有した。 実施例2

第2の実施例では、新規な鋼からのテスト試料の硬度低下は、様々な再加熱温度で実験室条件下で決定された。

第1のステップでは、新規な鋼の溶解が生成された。金属屑を電気アーク炉内で溶融し、CLUコンバータの中で溶鋼を精錬し、次いで金型24”の中で鋳造して鋳塊にすることによって溶解が生成された。

得られた新規な鋼は、以下の組成を有した。

鋳塊は棒に圧延され、その棒は長さ5cmの円柱に切断され、試料として使用された。

その後試料は、模擬実験の硬化処理を受けた。この処理は、オーステナイト化温度まで加熱すること、所定の温度のためにオーステナイト化温度に保つこと、次いで室温に加熱されたオイルの中で冷却することを含む。その後硬化された試料は、掘削作業中の温度を模擬実験するために、再加熱を受けた。再加熱後、試料は空気中で冷却された。再加熱された試料の冷却後、各試料の表面、半径の中間、および中央で測定された。硬度は、ビッカース(HV1)で測定された。

参照として、各組の1つの試料が、硬化されているが、再加熱されない状態で残された。

各オーステナイト化温度に対して、12の試料が使用された。オーステナイト化温度は、1時間の保持時間で860℃、1時間の保持時間で880℃、20分間の保持時間で925℃であった。オイルの中で焼き入れ後、試料は以下の温度で再加熱された。再加熱なし、200℃、300℃、400℃、500℃、550℃、580℃、600℃、650℃、675℃、および700℃。

測定の結果が、図2にグラフで示された。図2は、各オーステナイト化温度についての結果が、各再加熱温度で測定された硬度について平均値として図示されている。特定の測定値が、表4に示されており、図3を参照されたい。

実験は、非浸炭試料で実施されることに留意すべきである。しかし、図2のグラフから、3つの異なる試料の組の硬度が、再加熱されない試料から650℃まで一定であることが明らかである。一定の硬度は、低温でのマルテンサイト相上のケイ素の安定効果に起因しており、より高い温度でのクロム、モリブデンおよびバナジウムの硬く、安定したカーバイドの析出によるものであり、それによってマルテンサイトがセメンタイトおよびフェライトに変態することを補償すると思われる。700℃で、二次硬度最大値が形成され、その後、Crカーバイド、Moカーバイド、およびVカーバイドがより少なく、粗い沈殿物に凝集することによって、硬度が急速に低下する。Crカーバイド、Moカーバイド、およびVカーバイドの成長によって、更に、残りのマルテンサイトがセメンタイトおよびフェライトに分解し、それによって硬度が更に一層低下する原因になる。

新規な鋼材の浸炭された試料は、すべての再加熱温度で、浸炭されない試料よりもより硬くなることは明らかである。しかし、浸炭された試料の硬度は、約650℃まで本質的にやはり一定の硬度を示すと思われる。 実施例3

第3の実施例では、本発明による合金および比較合金の硬化され、焼き戻された試料の表面硬度および芯部硬度について比較が成された。テストは、掘削中に結合部の中で放出する熱に起因する、表面硬化されたドリルロッドの中で発生する焼き戻し効果の模擬実験を行う。比較として、国際公開第97/27022号パンフレットの文献で開示される合金に類似する合金が選択された。国際公開第97/27022号パンフレットは、摩擦圧接に最適化されており、発明の用途である「本発明の背景」の区分下で簡潔に考察される合金を開示する。

新規な合金および比較合金の化学組成が、以下の表5の中に示されている。Comp 0.09は比較合金を表示し、Inv 0.22は新規な合金を表示する。

1kgの溶解比較合金が、誘導炉の中の金属屑の溶融、精錬、および鋳造を含む従来の方法によって生成された。鋳物は700℃で約30分間炉の中で予熱され、次いで13mmの寸法を有する四い棒に1200℃で熱間圧延された。次いで、棒は空気中でゆっくりと冷却され、13×13mmの試料に切断された。

75トンの新規な合金が、EA炉内で溶融、AoD処理、炉外精錬、連続鋳造および熱間圧延を含む、製造に使用される従来の方法によって生成された。新規な材料の得られた鋳物は、熱間圧延されて、直径40mmを含む棒になった。

新規な材料の棒は、40×130mmの寸法の試料に切断された。

次いで、試料は強制空冷によって浸炭され、硬化された。試料の浸炭は、プロパン/窒素/メタノールの雰囲気の中で以下のプログラムに従って実施された。ステップ1で、試料は最初に150分間、処理温度925℃まで加熱され、次いでその温度に435分間保たれた。

その後、硬化された試料は、異なる温度で焼き戻しを受けた。焼き戻しの前に、脱炭を防止するために、No−Carb(商標)を用いて塗装された。以下の表7は、各試料について焼き戻し温度を示す。1つの試料の各合金は焼き戻しされない状態に保たれた。残りの各試料は、30分間焼き戻された。

焼き戻しの後、各試料の芯部および表面の硬度が測定された。表面硬度はロックウェル硬度(HRC)で測定され、芯部硬度はビッカース硬度(HV30)によって測定された。様々な試料の表面硬度が、図4に示されている。様々な試料の芯部硬度が、図5に示されている。

図4から、新規な合金および比較合金の焼き戻しされない試料は、類似の表面硬度を有することを結論付けることができる。このことは、それぞれ各焼き戻しされない試料の表面の構造が本質的にマルテンサイトから成ることに起因する。焼き戻しされない試料の硬度は、焼き戻し温度が上昇するにつれて減少する。しかし、図4のグラフから、新規な合金の表面硬度は、600℃までのすべての焼き戻し温度について比較合金の表面硬度よりも高いことが明確に見られる。すなわち、新規な合金は、比較合金よりもより高い焼き戻し耐性を有する。

驚くことに、新規な合金の表面硬度は、焼き戻し温度の上昇につれて、比較合金の表面硬度よりも依然としてはるかに安定した状態である。図4から分かるように、新規な合金の表面硬度は、200℃までロックウェル硬度(HRC)57で本質的に一定であるが、200℃でロックウェル硬度55に低下し、次いで300℃まで本質的に一定に進行する。一方、比較合金の表面硬度は、全体の温度間隔に亘って連続して低下する。

より高い温度で、マルテンサイトの分解速度が上昇し、バナジウムカーバイドが粗い結晶粒に凝集し、それによって表面硬度が低下する。700℃でバナジウムカーバイドが不安定になり、新規な試料および比較試料の両方の表面硬度が急速に低下する。

図5から、新規な試料の中の芯部硬度は比較試料の中の芯部硬度よりもわずかに低いことを結論付けることができる。新規な合金の相対的に低い芯部硬度について主な理由は、選択された窒素含有量と組み合わせてバナジウムの多い含有量が、試料の浸炭ステップ中に安定したバナジウム炭窒化物を生成するからである。少ないバナジウム炭窒化物は、浸炭ステップ中に結晶粒成長を防止し、芯部の衝撃靭性を増加させる。小さい結晶粒は、やはり合金の焼き入れ性を低下させ、それによって、硬化後に芯部が、実質的にマルテンサイトよりも硬度は低いが、より靭性の高いベイナイトから成ることを保証する。 結論

第3の実施例からの結果は、比較合金の中よりも、新規な合金の中でより良い焼き戻し耐性を示す。新規な合金の表面硬度は、比較材料と比較してより安定している。

削岩中には、安定した表面硬度を有する能力は、摩耗耐性にとって重要である。粘着性摩耗耐性が硬度に直接関係するので、掘削中に温度が上昇しても表面硬度を保つ材料が、摩耗により良好に耐えるであろう。表面硬度と芯部硬度との関係は、ドリルロッドの中で使用されるねじ山にとって、やはり重要な要素である。所望の関係は、より良好な衝撃耐性に対する靭性芯部と共に、より良好な摩耗耐性に対する硬質表面である。表面硬度と芯部硬度との間の大きな相違が、より大きい残留圧縮応力をもたらし、それが疲れ寿命を増加する。このことを考慮すると、バナジウム含有量の多い新規な合金は、バナジウム含有量の少ない比較材料に比べると有利であり、比較材料とは正反対である、より強靭な芯部と共に、より高い表面硬度を提供する。 実施例4

4つの実施例では、ThermoCalc(商標)3.0およびデータベースTCFE7のプログラムの中で模擬実験が実施された。模擬実験の目的は、第3の実施例の中で新規な試料および比較試料における芯部硬度の測定結果を確認することであった。追加の目的は、新規な試料の芯部硬度の良好な結果が、新規な合金の窒素およびバナジウムの所望の範囲に亘って存在することを確認することであった。

模擬実験は、新規な合金および比較合金における様々な温度でバナジウム炭窒化物の安定性を示す。更に以下に説明するように、浸炭温度または熱間加工温度でバナジウム炭窒化物の存在が、芯部の最終的構成要素内の金属組織に有意効果を有するであろう。

図6は、0.2質量%のバナジウム含有量および0.005質量%の窒素含有量を含む新規な合金の中で形成されるバナジウム炭窒化物の安定性の第1のThermoCalc(商標)模擬実験で製作された図表を示す。模擬実験の中で合金の全体的組成は、0.019C、0.9Si、0.75Mo、1.2Cr、0.20V、1.8Ni、0.78Mn、0.005Nである。

図6は、異なる温度で、合金システム中に存在する様々な析出相の量をモルで示す。y軸線は析出相の量を示し、x軸線は温度を示す。ライン1は、様々な温度で合金システムに存在するバナジウム炭窒化物の量(モルで)を示す。図表の中の他のラインは、新規な合金システムの中に存在する他の相を示す。これらの相は、更に詳しく考察しない。

図6でライン1に注目すると、バナジウム炭窒化物の析出が700〜800℃の範囲の温度で温度が上昇するにつれて増加することが分かる。800℃を超えると、バナジウム炭窒化物の析出が止み、析出されたバナジウム炭窒化物が、合金システムの中の平衡によって分解し始める。結局、高温ではより少ないバナジウム炭窒化物が存在する可能性がある。したがって、合金システムの中の炭窒化物の量は、温度の上昇と共に減少する。図6の合金システムの中では、900〜1000℃の間隔の温度で、相対的に多い量のバナジウム炭窒化物が存在することが分かる。図表は、更に、バナジウム炭窒化物は約1100℃で完全に分解することを示す。

上記のバナジウム炭窒化物の分布は、以下の理由から、新規な合金から製造される構成要素の中に良好な芯部特性を保証するはずである。

第1に、削岩用の構成要素の製造において、構成要素が、930℃で浸炭され、硬化される。この温度で、鋼の中の結晶粒が、少数の大きい結晶粒に凝集しようとする。

一般に、鋼の焼き入れ性が、結晶粒寸法の増加と共に増加するという意味において、鋼の結晶粒寸法は鋼の焼き入れ性に影響を及ぼす。したがって、硬化後に、結晶粒寸法が小さい鋼は、顕著なベイナイト構造を有するが、一方で結晶粒寸法が大きい鋼は、マルテンサイト構造を有するであろう。

図6の930℃で相対的に多い量のバナジウム炭窒化物の存在が、合金の結晶粒が凝集することを阻止することによって、新規な鋼の中で結晶粒の成長を効果的に防止するはずである。これによって、新規な合金の中に小さい結晶粒、およびそれから製造される硬化された構成要素の芯部内の顕著なベイナイト構造をもたらすはずである。これは、芯部の強度および衝撃靭性、ならびに高温での構造的安定性のために重要である。

第2に、図6からすべてのバナジウム炭窒化物が約1100℃で分解することを結論付けることができる。もちろん、これは鋼の熱間加工性にとって重要である。しかし、熱間加工後に残っているバナジウム炭窒化物が合金の硬化中に結晶粒寸法に与える悪影響がないことが、更に重要である。硬化するステップにおいて、残っているバナジウム炭窒化物は、少量の非常に大きい結晶粒に凝集するであろう。これらの結晶粒は、浸炭/硬化中に結晶粒成長を防止することにほとんど影響を及ぼさないので、その結果、低い靭性、したがって弱い衝撃強度を有する、主にマルテンサイト構造から成る芯部を含む構成要素をもたらすであろう。

図7は、0.2質量%のバナジウム含有量および0.012質量%の窒素含有量を含む新規な合金の中で形成されるバナジウム炭窒化物の安定性の第2のThermoCalc(商標)模擬実験で製作された図表を示す。この模擬実験は、第1の模擬実験の結果を確証する。したがって、この模擬実験もやはり、十分な量のバナジウム炭窒化物が900〜1000℃の間隔の温度で合金の中に存在して、硬化後に合金の芯部の中にベイナイト構造を保証することを示す。更に図表から、バナジウム炭窒化物が約1130℃で完全に分解することを結論付けることができる。

第2の模擬実験の合金の中で多い窒素含有量が、第1の模擬実験と比較すると、930℃でより多くのバナジウム炭窒化物の析出をもたらすことに注目することができる。もちろんこれは、芯部のベイナイト構造を保証するためにプラスである。

図8は、0.3質量%のバナジウム含有量および0.005質量%の窒素含有量を含む新規な合金の中で形成されるバナジウム炭窒化物の安定性の第3のThermoCalc(商標)模擬実験で製作された図表を示す。模擬実験の合金は以下の組成、0.019C、0.9Si、0.75Mo、1.2Cr、0.1V、1.8Ni、0.78Mn、0.005Nを含んだ。

この模擬実験は、やはり十分な量のバナジウム炭窒化物が900〜1000℃で析出し、すべてのバナジウム炭窒化物が1120℃の温度で分解されたことを示す。

第1および第2の模擬実験と比較すると、第3の模擬実験では、より多くのバナジウム炭窒化物が析出している。この理由は、この合金の中にバナジウム含有量がより多いからである。

図9は、0.3質量%のバナジウム含有量および0.012質量%の窒素含有量を含む新規な合金の中で形成されるバナジウム炭窒化物の安定性の第4のThermoCalc(商標)模擬実験で製作された図表を示す。模擬実験の合金は以下の組成、0.019C、0.9Si、0.75Mo、1.2Cr、0.1V、1.8Ni、0.78Mn、0.005Nを含んだ。

この模擬実験は、やはり十分な量のバナジウム炭窒化物が900〜1000℃で存在し、バナジウム炭窒化物が1200℃未満の温度で分解したことを示す。

図10は、少ないバナジウム含有量(0.1質量%)および0.005質量%の窒素含有量を含む比較合金の中で形成されるバナジウム炭窒化物の安定性の第5のThermoCalc(商標)模擬実験で製作された図表を示す。模擬実験の合金は実施例3で使用された合金に類似しており、以下の組成、0.019C、0.9Si、0.75Mo、1.2Cr、0.1V、1.8Ni、0.78Mn、0.005Nを含む。

図10のライン1から、900〜1000℃の温度間隔で、この合金の中に非常に少ない含有量のバナジウム炭窒化物が存在することを結論付けることができる。この合金の中にバナジウム炭窒化物の含有量が少なすぎるので、浸炭中に結晶粒成長を防止することができないため、それによって、この合金から製造される硬化された構成要素の芯部の中に増加した焼き入れ性およびマルテンサイト形成をもたらすであろう。したがって、模擬実験は、実施例3の比較合金の芯部硬度について行われた測定を確証する。

要約すると、5つのThermoCalc(商標)模擬実験、および物理的実験3の結果から、表面硬度と芯部硬度との最適の均衡が、新規な合金の中で達成されることを結論付けることができる。表面硬度と芯部硬度との最適の均衡によって、新規な合金が削岩構成要素の中で使用するために非常に適するものとなる。

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