Wet paper transport belt, the paper system and paper making method

申请号 JP2012206802 申请日 2012-09-20 公开(公告)号 JP5227475B1 公开(公告)日 2013-07-03
申请人 イチカワ株式会社; 发明人 健二 井上; 正稔 河野; 亮 梅原; 藍 田村; 敏博 辻;
摘要 【課題】
本発明は、紙盗られや 耳 浮などの現象が同時に抑制され、湿紙搬送性に優れた湿紙搬送ベルトを提供すること、および、上述した湿紙搬送性を、抄紙工程の様々な種類の紙(特に原紙坪量)に対応して実現する、湿紙搬送ベルトを提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明の湿紙搬送ベルト1は、湿紙Wを搬送するための湿紙搬送ベルト1であって、樹脂層22により構成され、かつ湿紙Wを坦持する湿紙 接触 表面221を有し、湿紙接触表面221が、巾方向において、湿紙Wの端部W
E を坦持するシートエッジ領域222と、湿紙の中央付近を坦持する中央領域223とを有し、シートエッジ領域222における湿紙接触表面221の算術平均粗さRa
1 (μm)が、中央領域223における湿紙接触表面221の算術平均粗さRa
2 (μm)よりも小さく、所定の関係式(1)および(2)を満足する。
【選択図】 図1
权利要求
  • 湿紙を搬送するための湿紙搬送ベルトであって、
    樹脂層により構成され、かつ湿紙を坦持する湿紙接触表面を有し、
    湿紙接触表面が、巾方向において、湿紙の端部を坦持する 2本のシートエッジ領域と、 2本のシートエッジ領域の内側に位置し湿紙の中央付近を坦持する中央領域とを有し、
    シートエッジ領域における湿紙接触表面の算術平均粗さRa (μm)が、中央領域における湿紙接触表面の算術平均粗さRa (μm)よりも 0.3μm以上小さく、
    以下の式(1)および(2)
    Ra (μm)=0.0125×X+A (1)
    A≦B×10 −16 ×Y +C×10 −4 ×Y +D×10 −2 ×Y +E×Y+F (2)
    式中、各記号は、それぞれ、
    X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m
    Y=樹脂層を構成する樹脂の水に対する膨潤率(%)
    B=4.441
    C=9.132
    D=−4.247
    E=0.6580
    F=3.1027
    である、
    の関係を満足 ここで、
    Yが、1.5〜15.0であり、
    Ra (μm)が、3.5μm以下であり、
    各シートエッジ領域の巾が、それぞれ、湿紙の巾の0.1〜20%である前記湿紙搬送ベルト。
  • 以下の式(1)および(3)
    Ra (μm)=0.0125×X+A (1)
    B×10 −16 ×Y +C×10 −4 ×Y +D×10 −2 ×Y +E×Y+G≦A (3)
    式中、各記号は、それぞれ、
    X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m
    Y=樹脂層を構成する樹脂の水に対する膨潤率(%)
    B=4.441
    C=9.132
    D=−4.247
    E=0.6580
    G=0.6027
    である、
    の関係を満足する、請求項 1に記載の湿紙搬送ベルト。
  • Ra およびRa が、湿紙搬送ベルトを抄紙機に掛け入れる前の新品時の粗さである、請求項1 または2に湿紙搬送ベルト。
  • Ra およびRa が、湿紙搬送ベルトを抄紙機に掛け入れた後の使用済み時の粗さである、請求項1〜 のいずれか一項に湿紙搬送ベルト。
  • 湿紙の搾水を行うプレスパートを有し、
    プレスパートは、その少なくとも一部において、請求項1〜 のいずれか一項に記載の湿紙搬送ベルトを用いてクローズドドロー方式で湿紙の受け渡しを行うように構成されている、抄紙システム。
  • プレスパートは、少なくともその一部において、フェルトから湿紙搬送ベルトに湿紙をクローズドドロー方式で移送するように構成されている、請求項 に記載の抄紙システム。
  • フェルトの湿紙との接触面が、バット繊維を含んで構成されており、
    当該バット繊維が、以下の式(5)
    0.15X≦Z≦0.3X (5)
    式中、各記号は、それぞれ、
    X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m
    Z=バット繊維の繊度(dtex)
    である、
    の関係を満足する、請求項 に記載の抄紙システム。
  • パルプスラリーを脱水して形成された湿紙を搾水する工程を含む抄紙方法であって、
    前記工程において、請求項1〜 のいずれか一項に記載の湿紙搬送ベルトを用いてクローズドドロー方式で湿紙の受け渡しを行う、前記抄紙方法。
  • 搾水する工程において、フェルトから湿紙搬送ベルトに湿紙をクローズドドロー方式で移送する、請求項 に記載の抄紙方法。
  • フェルトの湿紙との接触面が、バット繊維を含んで構成されており、
    当該バット繊維が、以下の式(5)
    0.15X≦Z≦0.3X (5)
    式中、各記号は、それぞれ、
    X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m
    Z=バット繊維の繊度(dtex)
    である、
    の関係を満足する、請求項 に記載の抄紙方法。
  • フェルトが、湿紙を坦持する湿紙接触表面を有し、当該湿紙接触表面が、巾方向において、湿紙の端部を坦持するシートエッジ領域と、湿紙の中央付近を坦持する中央領域とを有し、シートエッジ領域における湿紙接触表面の算術平均粗さが、中央領域における湿紙接触表面の算術平均粗さよりも小さい、請求項 または 10に記載の抄紙方法。
  • 说明书全文

    本発明は、抄紙機に使用される湿紙搬送ベルト、抄紙システムおよび抄紙方法に関する。

    紙の原料から分を除去する抄紙機は、一般的にワイヤーパートとプレスパートとドライヤーパートとを備えている。 これらワイヤーパート、プレスパートおよびドライヤーパートは、湿紙の搬送方向に沿ってこの順番に配置されている。

    抄紙機には、オープンドローにて湿紙の受渡しを行うタイプのものがある。 このオープンドロー抄紙機のプレスパートでは、湿紙がフェルトやベルトなどの抄紙用具、あるいはロールの何れにも支持されない箇所、即ち湿紙が単独で走行する箇所が存在し、その箇所で「紙切れ」などの問題が発生しやすい。 この問題は、抄紙機を高速運転すればそのリスクは高まり、それゆえ、オープンドロー抄紙機の高速運転化にはある程度の限界があった。

    このため、近年では、クローズドドローにて湿紙の受渡しを行うタイプが主流となっている。 このクローズドドロー抄紙機のプレスパートでは、湿紙は、抄紙用フェルトあるいは湿紙搬送用ベルトに載置された状態で搬送され、ベルトとフェルトとの間で受け渡しが行われるため、オープンドロー抄紙機のように湿紙が単独で走行する箇所が存在しない。 その結果、抄紙機の更なる高速運転化が可能となり、また、操業の安定化にもつながっている。

    ところで、このようなクローズドドロー抄紙機のプレスパートにおいては、ベルトやフェルト間での湿紙の受け渡しにおいて、湿紙がベルトやフェルトにとどまり、次の受け渡されるべきベルトやフェルトに湿紙が受け渡されない現象(紙盗られ)や、ベルトやフェルト上で湿紙の端部(部)が剥離して浮いてしまう耳浮(耳削がれ)といった現象が生じることがある。 紙盗られが生じると、適切に湿紙の受け渡しが行われるように一旦操業を停止して装置の設定を変更する必要が生じる。 また、耳浮が発生すると、湿紙に皺が入るといった品質上の問題が発生する可能性があり、更には、紙切れ(断紙)の問題、また紙切れを発生させないために(耳浮を発生させないために)、抄紙機の運転速度を減速せざるを得ないといった操業上の問題が発生する可能性がある。

    プレスパートにおける湿紙搬送性を向上させるためにいくつかの検討がなされている。
    特許文献1には、基体の上面(湿紙側)を形成する湿紙接触側面が不透過ポリマーコーティング層によって形成され、基体の下面(ロール側面)が繊維状ウェッブによって形成された湿紙搬送用ベルトにおいて、前記不透過ポリマーコーティング層にはポリマーコーティングよりも硬度の高い粒子が混入しており、湿紙接触側面を研磨等の手段により、その粒子を表面に突出させている。

    そして、湿紙接触側面の表面は粗面とされており、この粗面は、プレス部内においては、Rz=0ミクロン〜20ミクロンの範囲であり、プレス部内を脱出した後はRz=2ミクロン〜80ミクロンの範囲に復帰するように構成されている。

    特許文献1の湿紙搬送用ベルトは、湿紙搬送用ベルトに要求される、湿紙接触表面における湿紙の密着性および剥離性を高度に実現させるものである。 しかしながら、同文献に記載のベルトは、耳浮を防止することを目的としていない。 また、抄紙工程で抄紙される紙の種類は様々で、当然ながら紙坪量も異なり、故にプレス下で湿紙から脱水される水分量およびプレス後の湿紙水分率、水分量も異なる。 プレス後の湿紙の水分は、湿紙搬送用ベルトの湿紙接触表面における湿紙の密着性および剥離性に大きな影響を及ぼし、かかる観点から特許文献1記載の湿紙搬送用ベルトは様々な種類の紙(特に紙坪量)に対応して湿紙の密着性および剥離性を実現させる点では不十分であった。

    特許文献2には、基布と基布にニードリングによって絡合され、製紙面を形成するバット繊維層とを有する製紙用フェルトであって、前記製紙面が、巾方向における各部分において異なる条件の研磨処理がなされた研磨面を含み、巾方向において湿紙の両端に対応する部分(エッジ対応部)の表面粗さが中央部の表面粗さよりも小さい製紙用フェルトを開示している。 かかる構成とすることで、製紙用フェルトの湿紙の両端に対応する部分が中央部よりも湿紙密着が上がり、耳浮を防止するものである。 しかしながら、同文献には、表面粗さが大きく異なる樹脂層において湿紙を担持する湿紙搬送用ベルト、およびその構成について開示がなされていない。

    また、特許文献3には、抄紙機固有のプロファイルに対応させるために、湿紙搬送用ベルトの代用特性の1つである、表面粗さ、曲げ応、圧縮率、回復率を、湿紙搬送用ベルトの巾方向において連続的に変化させたことを特徴とする、湿紙搬送用ベルトが開示される。

    特開平6−57678号公報

    特開2012−97365号公報

    米国公開特許第2007/0074836号公報

    したがって、本発明は、紙盗られや耳浮などの現象が同時に抑制され、湿紙搬送性に優れた湿紙搬送ベルトを提供することを課題とする。
    さらに、上述した湿紙搬送性を、抄紙工程の様々な種類の紙(特に原紙坪量)に対応して実現する、湿紙搬送ベルトを提供することを課題とする。
    また、本発明は、このような湿紙搬送ベルトを備えた、生産安定性に優れる抄紙システム、および湿紙搬送ベルトを用いた、生産安定性に優れる抄紙方法を提供することを課題とする。

    本発明者らは、上述した課題を解決すべく検討する中で、湿紙搬送ベルトにおいて、湿紙搬送性の向上には、湿紙に接触する樹脂層表面、すなわち湿紙接触表面の表面状態が大きく影響することを見出した。
    そして、湿紙接触表面の中央領域付近と、湿紙の耳部に接触するエッジシート領域とで表面状態を変化させることにより、湿紙全体としての湿紙搬送ベルトへの密着性および剥離性を適度なものとしつつ、湿紙の耳部の湿紙搬送ベルトへの密着性を十分なものとすることを見出した。
    さらに、湿紙搬送ベルトの湿紙接触表面の表面状態として表面粗さのみならず湿紙側表面を構成する樹脂層の水に対する膨潤率も、湿紙の湿紙搬送ベルトへの密着性および剥離性に影響すること、また、湿紙の種類(特に原紙坪量)によっても適切な湿紙搬送ベルトの湿紙接触表面の表面状態が変わりうることを見出し、さらに鋭意検討した結果、本発明に至った。

    すなわち、本発明は、以下の技術を基礎としたものである。
    [1] 湿紙を搬送するための湿紙搬送ベルトであって、
    樹脂層により構成され、かつ湿紙を坦持する湿紙接触表面を有し、
    湿紙接触表面が、巾方向において、湿紙の端部を坦持するシートエッジ領域と、湿紙の中央付近を坦持する中央領域とを有し、
    シートエッジ領域における湿紙接触表面の算術平均粗さRa (μm)が、中央領域における湿紙接触表面の算術平均粗さRa (μm)よりも小さく、
    以下の式(1)および(2)
    Ra (μm)=0.0125×X+A (1)
    A≦B×10 −16 ×Y +C×10 −4 ×Y +D×10 −2 ×Y +E×Y+F (2)
    式中、各記号は、それぞれ、
    X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m
    Y=樹脂層を構成する樹脂の水に対する膨潤率(%)
    B=4.441
    C=9.132
    D=−4.247
    E=0.6580
    F=3.1027
    である、
    の関係を満足する、前記湿紙搬送ベルト。
    [2] Ra (μm)が、3.5μm以下である、[1]に記載の湿紙搬送ベルト。
    [3] 以下の式(1)および(3)
    Ra (μm)=0.0125×X+A (1)
    B×10 −16 ×Y +C×10 −4 ×Y +D×10 −2 ×Y +E×Y+G≦A (3)
    式中、各記号は、それぞれ、
    X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m
    Y=樹脂層を構成する樹脂の水に対する膨潤率(%)
    B=4.441
    C=9.132
    D=−4.247
    E=0.6580
    G=0.6027
    である、
    の関係を満足する、[1]または[2]に記載の湿紙搬送ベルト。
    [4] 以下の式(4)
    (Ra − Ra ) ≧ 0.3 (μm) (4)
    の関係を満足する、[1]〜[3]のいずれかに記載の湿紙搬送ベルト。
    [5] Ra およびRa が、湿紙搬送ベルトを抄紙機に掛け入れる前の新品時の粗さである、[1]〜[4]のいずれかに湿紙搬送ベルト。
    [6] Ra およびRa が、湿紙搬送ベルトを抄紙機に掛け入れた後の使用済み時の粗さである、[1]〜[5]のいずれかに湿紙搬送ベルト。

    [7] 湿紙の搾水を行うプレスパートを有し、
    プレスパートは、その少なくとも一部において、[1]〜[6]のいずれかに記載の湿紙搬送ベルトを用いてクローズドドロー方式で湿紙の受け渡しを行うように構成されている、抄紙システム。
    [8] プレスパートは、少なくともその一部において、フェルトから湿紙搬送ベルトに湿紙をクローズドドロー方式で移送するように構成されている、[7]に記載の抄紙システム。
    [9] フェルトの湿紙との接触面が、バット繊維を含んで構成されており、
    バット繊維が、以下の式(5)
    0.15X≦Z≦0.3X (5)
    式中、各記号は、それぞれ、
    X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m
    Z=バット繊維の繊度(dtex)
    である、
    の関係を満足する、[8]に記載の抄紙システム。

    [10] パルプスラリーを脱水して形成された湿紙を搾水する工程を有し、
    前記工程において、[1]〜[6]のいずれかに記載の湿紙搬送ベルトを用いてクローズドドロー方式で湿紙の受け渡しを行う、抄紙方法。
    [11] 搾水する工程において、フェルトから湿紙搬送ベルトに湿紙をクローズドドロー方式で移送するように構成されている、[10]に記載の抄紙方法。
    [12] フェルトの湿紙との接触面が、バット繊維を含んで構成されており、
    バット繊維が、以下の式(5)
    0.15X≦Z≦0.3X (5)
    式中、各記号は、それぞれ、
    X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m
    Z=バット繊維の繊度(dtex)
    である、
    の関係を満足する、[11]に記載の抄紙方法。
    [13] フェルトが、湿紙を坦持する湿紙接触表面を有し、当該湿紙接触表面が、巾方向において、湿紙の端部を坦持するシートエッジ領域と、湿紙の中央付近を坦持する中央領域とを有し、シートエッジ領域における湿紙接触表面の算術平均粗さが、中央領域における湿紙接触表面の算術平均粗さよりも小さい、[11]または[12]に記載の抄紙方法。

    以上の構成により、紙盗られや耳浮などの現象が同時に抑制され、湿紙搬送性に優れた湿紙搬送ベルトを提供することができる。
    特に、湿紙接触表面を構成する樹脂層の水に対する膨潤率および搬送される湿紙の坪量を考慮して湿紙接触表面の表面状態を設定することにより、上述した湿紙搬送性を、抄紙工程の様々な種類の紙(特に原紙坪量)に対応して実現する、湿紙搬送ベルトを提供することができる。
    さらに、このような湿紙搬送ベルトを備えた生産安定性に優れる抄紙システム、湿紙搬送ベルトを用いる生産安定性に優れた抄紙方法を提供することができる。

    図1は、本発明の好適な実施形態にかかる湿紙搬送ベルトの一例を示す横断面図である。

    図2は、本発明の好適な実施形態にかかる湿紙搬送ベルトの一例を示す平面図である。

    図3は、本発明の湿紙搬送ベルトの製造方法の好適な実施態様における積層工程の一例を示す概略図である。

    図4は、本発明の湿紙搬送ベルトの製造方法の好適な実施態様における第1の樹脂層形成工程の一例を示す概略図である。

    図5は、本発明の抄紙システムの好適な実施態様におけるプレスパートの一部の一例を示す概略図である。

    図6は、湿紙搬送ベルトの評価装置を示す概略図である。

    図7は、(a)〜(c)のいずれについても、原紙坪量30g/m

    の条件における本発明の実施例の湿紙搬送ベルトの表面粗さと膨潤率との関係を示すグラフである。

    図8は、(a)〜(c)のいずれについても、原紙坪量100g/m

    の条件における本発明の実施例の湿紙搬送ベルトの表面粗さと膨潤率との関係を示すグラフである。

    図9は、(a)〜(c)のいずれについても、原紙坪量200g/m

    の条件における本発明の実施例の湿紙搬送ベルトの表面粗さと膨潤率との関係を示すグラフである。

    図10は、(a)原紙坪量30g/m

    、(b)原紙坪量100g/m

    、(c)原紙坪量200g/m

    の各条件における本発明の実施例の湿紙搬送ベルトおよび比較例の湿紙搬送ベルトの表面粗さと膨潤率との関係を示すグラフである。

    以下、図面を参照しつつ本発明の湿紙搬送ベルト、抄紙システムおよび抄紙方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
    まず、本発明の湿紙搬送ベルトについて説明する。 図1は、本発明の好適な実施形態にかかる湿紙搬送ベルトの一例を示す横断面図、図2は、本発明の好適な実施形態にかかる湿紙搬送ベルトの一例を示す平面図である。 なお、図1、図2においては、理解を容易とするため、搬送されるべき湿紙Wが記載されているが、これが湿紙搬送ベルト1の構成でないことはいうまでもない。 また、図中、「MD」は、抄紙システムにおいて予定される機械方向(Machine Direction)を示し、「CMD」は、抄紙システムにおいて予定される機械横断方向(Cross Machine Direction)を示す。

    本発明の湿紙搬送ベルトは、湿紙を搬送するための湿紙搬送ベルトであって、
    樹脂層により構成され、かつ湿紙を坦持する湿紙接触表面を有し、
    湿紙接触表面が、巾方向において、湿紙の端部を坦持するシートエッジ領域と、湿紙の中央付近を坦持する中央領域とを有し、
    シートエッジ領域における湿紙接触表面の算術平均粗さRa (μm)が、中央領域における湿紙接触表面の算術平均粗さRa (μm)よりも小さく、
    後述の式(1)および(2)の関係を満足する。

    図1、図2に示す湿紙搬送ベルト1は、抄紙機のプレスパートにおいて、湿紙Wの搬送、受け渡しに用いられるものである。 湿紙搬送ベルト1は、無端状の帯状体をなしている。 すなわち、湿紙搬送ベルト1は、環状のベルトである。 そして、湿紙搬送ベルト1は、一般に、その長尺方向が抄紙システムの機械方向MDに沿って配置されるものである。
    湿紙搬送ベルト1は、補強繊維基材層21と、補強繊維基材層21の一方の面に設けられた第1の樹脂層(湿紙接触側樹脂層)22と、補強繊維基材層21の他方の面に設けられた第2の樹脂層(ロール面側層)23とを有し、これらの層が積層されて形成されている。 また、第1の樹脂層は、湿紙搬送ベルト1が形成する環の外側表面を形成する層である。

    補強繊維基材層21は、補強繊維基材211と、樹脂212とによって構成されている。 樹脂212は、補強繊維基材211中の繊維の間隙を埋めるように補強繊維基材層21中に存在している。

    補強繊維基材211としては、特に限定されないが、例えば、経糸と緯糸とを織機等により製織した織物が一般的に使用される。 また、製織せずに、経糸列と緯糸列の重ね合わせによる格子状素材を使用することもできる。
    補強繊維基材211を構成する繊維の繊度は、特に限定されないが、例えば、300〜10000dtex、好ましくは、500〜6000dtexとすることができる。
    また、補強繊維基材211を構成する繊維の繊度は、その繊維を用いる部位によって異なっていてもよい。 例えば、補強繊維基材211の経糸と緯糸とでそれらの繊度が異なっていてもよい。

    補強繊維基材211の素材としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、脂肪族ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612等)、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、羊毛、綿、金属等を1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。

    樹脂212としては、ウレタン、エポキシ、アクリル等熱硬化性樹脂、またはポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂等を1種または2種以上を組み合わせて使用することができ、好適にはウレタン樹脂を使用することができる。

    樹脂212に用いられるウレタン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、芳香族あるいは脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオールとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、活性水素基を有する硬化剤とともに硬化させて得られるウレタン樹脂とすることができる。 また、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の自己乳化型、あるいは強制乳化型の水系ウレタン樹脂を使用することができる。 この場合、耐水性向上のため、メラミン系、エポキシ系、イソシアネート系、カルボジイミド系等の架橋剤を水系ウレタン樹脂ともに併用して、水系ウレタン樹脂を架橋することも可能である。

    また、樹脂212に、酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、マイカなどの、無機充填剤を1種または2種以上を組み合わせて含有させてもよい。

    なお、補強繊維基材層21中における樹脂212の組成および種類は、補強繊維基材層21中の部位ごとに異なるものであってもよいし、同一であってもよい。

    第1の樹脂層22は、補強繊維基材層21の一方の面に設けられた、主として樹脂材料で構成される層である。
    第1の樹脂層22は、補強繊維基材層21に接合する面とは反対側の面において、湿紙と接触し、また湿紙Wを坦持するための湿紙接触表面221を構成している。 すなわち、湿紙搬送ベルト1は、第1の樹脂層22の湿紙接触表面221に湿紙Wを坦持して、湿紙Wを搬送することができる。

    ここで、図2に示すように、湿紙接触表面221は、巾方向において、湿紙Wの端部を坦持する2本のシートエッジ領域222と、2本のシートエッジ領域222の内側に位置し、湿紙Wの中央付近を坦持する中央領域223と、2本のシートエッジ領域222の外側に位置し、湿紙接触表面221の端部付近である、2本の耳領域224とを有している。 また、シートエッジ領域222と、中央領域223と、耳領域224とは、それぞれ湿紙搬送ベルト1の丈方向(MD方向)に延在している。

    そして、本願発明においては、シートエッジ領域222における湿紙接触表面221の算術平均粗さRa (μm)が、中央領域223における湿紙接触表面221の算術平均粗さRa (μm)よりも小さい。 このように、シートエッジ領域222における湿紙接触表面221の表面粗さを比較的小さいものとすることにより、シートエッジ領域222における湿紙接触表面221への湿紙Wの密着性を高いものとすることができ、この結果、フェルトから湿紙搬送ベルト1への湿紙Wの受け渡し時や、ニップ時においても湿紙の耳部が湿紙接触表面221から剥離しにくいものとなり、耳浮が防止される。 一方で、中央領域223における湿紙接触表面221の表面粗さを適度な大きさとすることにより、プレスパートにおけるフェルトから湿紙搬送ベルト1への湿紙Wの受け渡し時において湿紙搬送ベルト1の湿紙接触表面221に湿紙Wが十分に密着して受け渡しがより確実となるとともに、湿紙搬送ベルト1からドライヤーファブリックへの受け渡し時においては、湿紙搬送ベルト1の湿紙接触表面221から湿紙Wが容易に剥離して受け渡しがより確実となる。 このように、本発明においては、湿紙接触表面221のシートエッジ領域222と中央領域223との表面粗さを異なるものとしたことにより、湿紙搬送ベルト1は、紙盗られや耳浮などの現象を同時に抑制することのできる湿紙搬送性に優れたものとなっている。
    なお、本明細書において、表面粗さ(算術平均表面粗さRa)とは、JIS B0601に定義された算術平均粗さRaをいう。

    さらに、中央領域223における湿紙接触表面221の算術平均粗さRa (μm)は、以下の式(1)および(2)の関係を同時に満足するものである。
    Ra (μm)=0.0125×X+A (1)
    A≦B×10 −16 ×Y +C×10 −4 ×Y +D×10 −2 ×Y +E×Y+F (2)
    (式中、各記号は、それぞれ、X=搬送される湿紙の原紙坪量(搬送される湿紙によって製造される原紙の坪量)(g/m )、Y=樹脂層を構成する樹脂の水に対する膨潤率(%)、B=4.441、C=9.132、D=−4.247、E=0.6580、F=3.1027である。)

    上記の式(1)および(2)の関係を同時に満足することにより、フェルトから湿紙搬送ベルト1への湿紙Wの受け渡し時において湿紙搬送ベルト1の湿紙接触表面221に湿紙が十分に密着することができ、受け渡しが確実となる。

    このように、湿紙Wと湿紙接触表面221との間の密着性は、湿紙接触表面221の表面粗さのみならず、樹脂層を構成する樹脂の水に対する膨潤率によっても変化する。 また、プレスパートを通過する湿紙Wの原紙坪量によっても湿紙搬送ベルト1の湿紙接触表面221に要求される表面状態が異なる。 本願発明者らは、上述したような事実を見出し、湿紙搬送ベルト1が様々な種類の紙に対して優れた湿紙搬送性を有するための式(1)および(2)の関係を見出した。

    また、中央領域223における湿紙接触表面221の算術平均粗さRa (μm)は、上述した関係を満足するものであれば特に限定されないが、上述した式(1)および以下の式(3)の関係を同時に満足することが好ましい。
    B×10 −16 ×Y +C×10 −4 ×Y +D×10 −2 ×Y +E×Y+G≦A (3)
    (式中、Y、A〜Eは、上述したとおりであり、G=0.6027である。)

    上記の式(1)および(3)の関係を同時に満足することにより、湿紙搬送ベルト1からドライヤーファブリック等へ湿紙Wの受け渡しを行う際に、湿紙搬送ベルト1の湿紙接触表面221から湿紙Wが容易に剥離でき、受け渡しがより確実となる。

    なお、膨潤率Y(%)の一例と、対応する定数Aの好ましい範囲について、表1に示す。

    ここで、本明細書において、樹脂の水に対する膨潤率(%)は、樹脂の、40℃の温水に30時間浸漬する前の重量と、40℃の温水に30時間浸漬した後の重量との間における重量変化率のことを示し、以下の式で定義することができる。
    膨潤率(%)=(水膨潤後樹脂重量−水膨潤前樹脂重量)/(水膨潤前樹脂重量)×100(%)
    なお、樹脂は、浸漬前に予め20℃、湿度60%の環境下において放置されることにより調湿された後、膨潤率の測定に供される。

    また、本明細書において、坪量とは、JIS P 8124:2011に準じて測定される調湿後の紙の坪量をいう。

    シートエッジ領域222における湿紙接触表面221の算術平均粗さRa (μm)は、上述した関係を満足するものであれば特に限定されないが、3.5μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。 これにより、シートエッジ領域222における湿紙接触表面221と湿紙の耳部との間での密着性が十分に高いものとなり、耳浮がより確実に防止される。

    また、前記湿紙接触表面粗さRa と前記湿紙接触表面粗さRa とは、以下の式(4)を満足することが好ましい。
    (Ra − Ra ) ≧ 0.3 (μm) (4)
    これにより、シート搬送性(シート密着力および剥離力)に差が生じるという効果が得られる。

    また、Ra およびRa は、湿紙搬送ベルト1を抄紙機に掛け入れる前の新品時の粗さであるであってもよいし、湿紙搬送ベルト1を抄紙機に掛け入れた後の使用済み時の粗さであってもよい。 この結果通期で安定的に湿紙搬送ベルト1を使用できる。

    また、シートエッジ領域222および中央領域223の巾は、特に限定されず、搬送される湿紙の巾、搬送方法によって適宜調整可能である。
    例えば、シートエッジ領域222は、それぞれ、湿紙の巾の0.1〜20%、好ましくは0.5〜15%、より好ましくは1.0〜10%であることができる。 この際に、湿紙の搬送時における巾方向のずれを考慮して、シートエッジ領域222の巾を若干広いものとすることができる。 また、搬送される湿紙の端部(予定される端部)がシートエッジ領域222の中心線(端部W )に配置されるように、シートエッジ領域222が配置されることができる。

    また、湿紙の巾のうち80〜99.9%、好ましくは85〜99.5%、より好ましくは90〜99.0%の部分を中央領域223において搬送するように中央領域223の巾を設定することができる。 なお、この際、中央領域223の中心線を搬送される湿紙の中心線(予定される中心線)に合わせて中央領域223が配置されることができる。

    また、シートエッジ領域222は、それぞれ、搬送される湿紙の端部W (予定される端部)の位置を基準として中心線とし、1〜20cm、好ましくは、5〜15cmの巾とすることができる。 そして、さらに2本のシートエッジ領域222の内側の領域を中央領域223とすることができる。 こうすることで、湿紙搬送ベルト1の使用中の寸法変化、シート巾の調整等に対応することができる。

    また、耳領域224は、シートエッジ領域222の外側に設けられており、この領域の巾や、この領域における湿紙接触表面221の表面粗さは、特に限定されない。

    第1の樹脂層22を構成する樹脂材料としては、上述したような補強繊維基材層21に用いることのできる樹脂材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。 第1の樹脂層22を構成する樹脂材料と、補強繊維基材層21を構成する樹脂とは、種類および組成について、同一であっても異なるものであってもよい。

    特に、第1の樹脂層22を構成する樹脂材料としては、機械的強度、耐摩耗性、柔軟性の観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
    また、第1の樹脂層22は、補強繊維基材層21と同様に無機充填剤を1種または2種以上含むものであってもよい。
    なお、第1の樹脂層22中における樹脂材料および無機充填剤の組成および種類は、第1の樹脂層22中の部位ごとに異なるものであってもよいし、同一であってもよい。 例えば、第1の樹脂層22は、シートエッジ領域222、中央領域223および耳領域224に対応する部位において構成される樹脂材料および無機充填剤の種類および組成が同一であってもよいし異なるものであってもよい。 例えば、第1の樹脂層22は、シートエッジ領域222、中央領域223および耳領域224に対応する部位ごとに、含まれる無機充填剤の種類および/または含有量が異なるものであってもよい。 各領域に対応する部位ごとに組成を異ならせることにより、湿紙接触表面221の表面粗さや膨潤率Yを各領域に対応する部位ごとに変更することができる。

    また、第1の樹脂層22は、水を透過しない性質を有することが好ましい。 すなわち、第1の樹脂層22は、水不透過性であることが好ましい。
    なお、本明細書において「水不透過性」とは、水不透過性である物体に、水を透過できるほどの孔径の孔が存在しないことをいう。

    第2の樹脂層(ロール面側層)23は、補強繊維基材層21の一方の面に設けられた、主として樹脂材料で構成される層である。
    第2の樹脂層23は、補強繊維基材層21に接合する面とは反対側の面において、後述するロールと接触するためのロール接触表面231を構成している。 湿紙搬送ベルト1は、使用時において、ロール接触表面231がロールと接触することにより、ロールより湿紙の搬送のための動力を得ることができる。

    第2の樹脂層23を構成する樹脂材料としては、上述したような補強繊維基材層21に用いることのできる樹脂材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。 第2の樹脂層23を構成する樹脂材料は、第1の樹脂層22または補強繊維基材層21を構成する樹脂材料と、種類および組成について、同一であっても異なるものであってもよい。

    特に、第2の樹脂層23を構成する樹脂材料としては、機械特性、耐摩耗性、柔軟性の観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
    また、第2の樹脂層23は、補強繊維基材層21と同様に無機充填剤を1種または2種以上含むものであってもよい。
    なお、第2の樹脂層23中における樹脂材料および無機充填剤の組成および種類は、第2の樹脂層23中の部位ごとに異なるものであってもよいし、同一であってもよい。

    上述したような湿紙搬送ベルト1の寸法は、特に限定されず、その用途に合わせて適宜設定することができる。
    例えば、湿紙搬送ベルト1の巾は、特に限定されないが、700〜13500mm、好ましくは、2500〜12500mmとすることができる。
    また例えば、湿紙搬送ベルト1の長さは、特に限定されないが、4〜35m、好ましくは、10〜30mとすることができる。

    また、湿紙搬送ベルト1の厚さは、特に限定されないが、例えば、1.5〜7.0mm、好ましくは、2.0〜6.0mmとすることができる。
    また、湿紙搬送ベルト1のシートエッジ領域222、中央領域223、耳領域224に対応する部位は、それぞれ厚さが異なっていてもよいし、同一であってもよい。

    しかしながら、湿紙搬送ベルト1のシートエッジ領域222に対応する部分の厚さと、湿紙搬送ベルト1の中央領域223に対応する部分の厚さとは、同等であることが好ましい。 具体的には、上記の厚さの差が、0.15μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。 これにより、湿紙を搬送ベルト1とともにプレスする際に、シートエッジ領域222と中央領域223とに対応する部分において湿紙が均一に圧搾される。 この結果、例えば湿紙の端部付近が十分に圧搾されず、同部分の湿紙含水率が大きくなって紙力強度が低下するといった問題がより確実に防止される。 また、湿紙の端部付近が圧搾されすぎることによって湿紙含水率が過度に小さくなって湿紙表面と湿紙搬送ベルト1間の水膜が形成できず、耳浮が発生しやすくなるといった問題も防止される。

    なお、このように湿紙搬送ベルト1におけるシートエッジ領域222に対応する部分の厚さと中央領域223に対応する部分の厚さとを小さなものとすることができるのは、湿紙搬送ベルト1の第1の樹脂層22が主として樹脂材料で構成されているためである。 フェルトなどについて、シートエッジ領域と中央領域とに対応する湿紙接触表面を本願発明と同様に調節する場合、フェルト繊維を研磨するか、あるいは、各領域に対応してフェルト繊維の繊度や目付量を変更する必要がある。 このような場合、比較的表面粗さが大きいフェルトにおいては、上述したような湿紙搬送ベルト1における好ましい厚さの差を確保しにくい。

    以上、本発明によれば、紙盗られや耳浮などの現象が同時に抑制され、湿紙搬送性に優れた湿紙搬送ベルトを提供することができる。 また、特に、湿紙接触表面を構成する樹脂層の水に対する膨潤率および搬送される湿紙の坪量を考慮して湿紙接触表面の表面状態を設定することにより、上述した湿紙搬送性を、抄紙工程の様々な種類の紙(特に原紙坪量)に対応して実現する、湿紙搬送ベルトを提供することができる。

    また、本発明の湿紙搬送ベルトの変形態様としては、例えば、ロール面側層が樹脂材料で構成された層ではなく、バット繊維をニードリングして形成されたバット繊維層である態様が挙げられる。 また、さらなる本発明の湿紙搬送ベルトの変形態様としては、上記バット繊維に上述したような樹脂が含浸した層を有する態様が挙げられる。 いずれの態様においても、ロール面側層以外の構成は、上記湿紙搬送ベルト1と同様とすることができる。
    なお、バット繊維の素材としては、補強繊維基材211に用いることのできる素材を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。

    次に、上述した本発明の湿紙搬送ベルトの製造方法の好適な実施態様の一例について説明する。 図3は、本発明の湿紙搬送ベルトの製造方法の好適な実施態様における積層工程の一例を示す概略図、図4は、本発明の湿紙搬送ベルトの製造方法の好適な実施態様における第1の樹脂層形成工程の一例を示す概略図である。

    本実施態様の湿紙搬送ベルト1の製造方法は、第1の樹脂層前駆体22aを最外層として有する環状の積層体1aを形成する工程(積層工程)と、第1の樹脂層前駆体22aの外表面の表面粗さをシートエッジ領域222および中央領域223に対応する領域ごとに調整して第1の樹脂層22を形成する工程(第1の樹脂層形成工程)とを有している。

    まず、積層工程においては、第1の樹脂層前駆体22aを最外層として有する環状かつ帯状の積層体1aを形成する。 積層体1aの形成はいかなる方法であってよいが、本実施態様においては、樹脂材料が補強繊維基材211を貫通するように補強繊維基材211に対して樹脂材料を塗布することにより、補強繊維基材層21を形成し、さらに同時に補強繊維基材層21の両側に第1の樹脂層前駆体22aと第2の樹脂層23とを形成する。
    具体的には、図3(a)に示すように、環状かつ帯状の補強繊維基材211を、2本の平行に配置されたロール38に接触するように掛け入れる。

    次に、図3(b)に示すように、補強繊維基材211の外表面に樹脂材料を付与する。 樹脂材料の付与はいかなる方法で行うものであってもよいが、本実施態様においては、補強繊維基材211は、ロール38を回転しつつ樹脂吐出口40から樹脂材料を吐出して、補強繊維基材211に樹脂材料を付与することにより行う。 また、同時に付与された樹脂材料をコーターバー39を用いて補強繊維基材211に均一に塗布する。 この際に塗布された樹脂材料は、補強繊維基材211を貫通することができる。 したがって、本実施態様においては、補強繊維基材211に含まれる樹脂のみならず、第1の樹脂層前駆体22aと第2の樹脂層23とを構成する樹脂材料とを同時に付与することが可能である。
    なお、樹脂材料は、上述した無機充填剤との混合物として付与されるものであってもよい。

    また、シートエッジ領域222、中央領域223、耳領域224のそれぞれに対応する部位を形成するための樹脂材料および無機充填剤の種類および組成は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。 これにより、例えば、形成される第1の樹脂層22の湿紙接触表面221の表面粗さおよび水に対する膨潤性を領域ごとに異なるものとすることができる。 例えば、中央領域223に対応する部位については、比較的多量の無機充填剤を使用し、他の領域に対応する部位については、より少ない量の無機充填剤を使用することにより、中央領域223に対応する湿紙接触表面221の算術平均表面粗さを他の領域に対応する湿紙接触表面221の算術平均表面粗さよりも大きくすることができる。

    次に、塗布した樹脂材料を硬化させる。 これにより、第1の樹脂層前駆体22aと、補強繊維基材層21と、第2の樹脂層23とが、外表面からこの順で積層した積層体1aを得る。 樹脂材料の硬化の方法は、特に限定されないが、例えば、加熱、紫外線照射等により行うことができる。

    また、加熱により樹脂材料を硬化する場合、例えば、遠赤外線ヒーター等の方法を用いることができる。
    また、加熱により樹脂材料を硬化する場合、樹脂材料の加熱温度は、60〜150℃であることが好ましく、90〜140℃であることがより好ましい。 また、加熱時間は、例えば、2〜24時間、好ましくは3〜20時間とすることができる。

    次に、第1の樹脂層形成工程においては、第1の樹脂層前駆体22aの外表面の表面粗さをシートエッジ領域222および中央領域223に対応する領域ごとに調整して湿紙接触表面221を有する第1の樹脂層22を形成する。 これにより、湿紙接触表面221が形成された、湿紙搬送ベルト1を得る。

    外表面の表面粗さは、例えば、研磨加工および/またはバフ加工を行うことにより調整できる。 具体的には、図4に示すように、2本のロール38に掛け入れられた状態の積層体1aに対し、研磨装置41またはバフ加工装置(図示せず)を当接することにより行う。

    研磨装置41およびバフ加工装置の使用順序、使用方法としては、例えば、まず、第1の樹脂層前駆体22aの外表面の全体について研磨加工を行い、次いで、シートエッジ領域222に対応する外表面について、研磨加工および/またはバフ加工を行う。 これにより、中央領域223おける湿紙接触表面221の算術平均表面粗さをシートエッジ領域222おける湿紙接触表面221の算術平均表面粗さよりも大きくすることができる。

    なお、第1の樹脂層前駆体22aの耳領域224に対応する外表面については、研磨加工およびバフ加工を行わなくてもよい。 しかしながら、湿紙搬送ベルト1の耳領域224に対応する部位はプレス時においてロールエッジが当接する為、ロールエッジによる負担を考慮して、湿紙搬送ベルト1の耳領域に対応する部位の厚さが、シートエッジ領域222に対応する部位の厚さよりも小さくなるように加工することが好ましい。

    また、第1の樹脂層前駆体22aのシートエッジ領域222、中央領域223、耳領域224のそれぞれに対応する部位について構成する樹脂材料および無機充填剤の種類および組成を異なるものとした場合、第1の樹脂層前駆体22aの外表面の全体について研磨加工またはバフ加工を行うことにより、湿紙搬送ベルト1の湿紙接触表面221を所望のものとすることも可能である。 また、この場合、研磨加工またはバフ加工前に湿紙搬送ベルト1の湿紙接触表面221が所望の状態となっている際には、本工程は省略可能である。

    なお、上記の湿紙搬送ベルト1の製造方法の変形態様としては、上記の補強繊維基材211に代えて、バット繊維をニードリングさせた補強繊維基材を用いる態様がある。 これにより、上述した、バット繊維層をロール面側層として有する湿紙搬送ベルトまたはバット繊維層に樹脂が含浸したロール面側層を有する湿紙搬送ベルトを得ることができる。

    次に、本発明の抄紙システムについて説明する。 図5は、本発明の抄紙システムの好適な実施態様におけるプレスパートの一部の一例を示す概略図である。
    本発明の抄紙システムは、湿紙の搾水を行うプレスパートを有し、プレスパートは、その少なくとも一部において、本発明の湿紙搬送ベルトを用いてクローズドドロー方式で湿紙の受け渡しを行うように構成されている。

    また、本実施態様においては、抄紙システム2は、パルプスラリーを脱水して湿紙を形成するワイヤーパート(図示せず)と、湿紙の搾水を行うプレスパート3と、搾水された湿紙を乾燥するドライヤーパート4とを有している。 これらワイヤーパート、プレスパート3およびドライヤーパート4は、この工程順で湿紙Wの搬送方向(矢印B方向)に沿って配置されている。

    ワイヤーパートは、ヘッドボックスから供給されたパルプスラリーをワイヤーで坦持し、搬送しながら脱水を行い、湿紙を形成するように構成されている。 形成された湿紙は、プレスパート3に搬送される。 本実施態様においては、ワイヤーパートとして公知の構成を利用できるため、詳細な説明を省略する。

    次に、プレスパート3は、ワイヤーパートから搬送された湿紙について搾水を行うように構成されている。 一般的なプレスパートについては公知であり、また、本実施態様においては、プレスパート3の一定部分を公知の構成とすることができるため、プレスパート3の公知の構成部分については説明を省略する。

    プレスパート3は、プレスフェルト(単にフェルトともいう)5と、プレスフェルト6と、湿紙搬送ベルト1と、これらを案内して回転させるガイドローラー8と、プレス部12とを有している。 プレスフェルト5と、プレスフェルト6と、湿紙搬送ベルト1とは、それぞれ無端状に構成された帯状体であり、ガイドローラー8で支持されている。 プレスフェルト5、6、湿紙搬送用ベルト1、ドライヤーファブリック7は、それぞれ湿紙Wを支持して矢印B方向に搬送する。 このとき、湿紙Wは、プレスフェルト5からプレスフェルト6へと、プレスフェルト6から湿紙搬送ベルト1へと受け渡しが行われる。
    プレスフェルト6から湿紙搬送ベルト1への湿紙Wの受け渡しは、クローズドドロー方式にて、プレス部12を介して行われる。

    ここで、プレス部12について説明する。 プレス部12は、シュープレス機構13と、これと対向する位置に配置されたプレスロール10とによって構成される圧搾手段である。 シュープレス機構13は、プレスロール10に対応した凹状のシュー9と、シュー9を囲う帯状のシュープレス用ベルト11とを有する。 シュー9は、シュープレス用ベルト11を介してプレスロール10と共にプレス部12を構成している。 プレス部12において、湿紙Wは、プレスフェルト6と湿紙搬送ベルト1とで挟持された状態で、シュープレス用ベルト11を介したシュー9と、プレスロール10とにより加圧される。 その結果、湿紙W中の水分が搾水される。 プレスフェルト6は透水性が高く、湿紙搬送ベルト1は透水性が低く構成されている。 従って、プレス部12において、湿紙W中の水分はプレスフェルト6に移行する。 湿紙Wは、こうしてプレスパート3で搾水されるとともに湿紙表面が平滑化される。

    プレス部12を脱出した直後においては、湿紙W、プレスフェルト6および湿紙搬送ベルト1は、急激に圧力から解放されるので、これらの各体積が膨張する。 この膨張と、湿紙Wを構成するパルプ繊維の毛細管現象とにより、プレスフェルト6内の一部の水分が湿紙Wに移行するいわゆる「再湿現象」が生じる。 しかし、湿紙搬送ベルト1は透水性が低いので、その内部に水分を保持することは少ない。 従って、湿紙搬送ベルト1から湿紙Wに水分が移行する再湿現象はほとんど発生せず、湿紙搬送ベルト1は湿紙Wの平滑性の向上に寄与している。

    このようなプレス部12における湿紙Wの受け渡しにおいて、湿紙搬送ベルト1には、プレス部12を脱出した直後の湿紙Wを、プレスフェルト6から剥離し、積極的に湿紙搬送ベルト1の湿紙接触表面221に密着させることが要求される。 一般に、このような部位においては、紙盗られや耳浮が発生しやすい。 ここでの紙盗られとは、一般的な湿紙搬送ベルトを用いた場合に、湿紙接触表面の密着力が弱く、プレス部を通過した湿紙が、プレスフェルトから湿紙搬送ベルトに移行せずにプレスフェルトに留まってしまう現象をいう。 また、耳浮とは、一般に、湿紙搬送時に、シートエッジ部(湿紙耳部)において、湿紙搬送ベルト等の抄紙用具との密着力が弱く、湿紙耳部が抄紙用具から剥がれる現象をいう。 しかしながら、湿紙搬送ベルト1は、上述したように、その湿紙接触表面221の中央領域223においては湿紙Wと適度な密着性を有し、かつ耳浮が防止された、湿紙搬送性に優れたものであるため、耳浮やプレスフェルト6への紙盗られが防止されている。

    なお、プレスフェルト6の湿紙との接触面は、バット繊維を含んで構成されているが、このバット繊維が、以下の式(5)
    0.15X≦Z≦0.3X (5)
    (式中、各記号は、それぞれ、X=搬送される湿紙の原紙坪量(g/m )、Z=バット繊維の繊度(dtex)である。)
    の関係を満足することが好ましい。 これにより、プレスフェルト6から湿紙Wがより容易に剥離し、プレスフェルト6から湿紙搬送ベルト1への湿紙Wの受け渡しがより確実となる。

    また、プレスフェルト6は、湿紙搬送ベルト1と同様に、その湿紙Wを坦持する湿紙接触表面の巾方向において、湿紙の端部を坦持するシートエッジ領域と、湿紙の中央付近を坦持する中央領域とを有し、シートエッジ領域における湿紙接触表面の算術平均粗さが、中央領域における湿紙接触表面の算術平均粗さよりも小さいものとすることもできる。

    また、プレス部12を通過した湿紙Wは、湿紙搬送ベルト1に坦持されて搬送され、湿紙搬送ベルト1から、ドライヤーパート4のドライヤーファブリック7へ、クローズドドロー方式にて、受け渡される。 ドライヤーパート4のサクションロール14は、ドライヤーファブリック7を支持するように設けられ、湿紙搬送ベルト1に密着した湿紙Wを、吸引することにより剥離し、ドライヤーファブリック7の表面に密着させる。 湿紙搬送ベルト1は、優れた湿紙搬送性を有し、湿紙接触表面221からの湿紙Wの適度な剥離性を有するため、この場合の受け渡しにおいても、紙盗られが防止される。

    ドライヤーパート4は、湿紙Wを乾燥するように構成されている。 本実施態様においては、ドライヤーパート4として公知の構成を利用できるため、詳細な説明を省略する。 湿紙Wは、ドライヤーパート4を通過することにより乾燥して原紙となる。

    以上、本発明の抄紙システムによれば、湿紙搬送性に優れた湿紙搬送ベルトを用いることにより、紙盗られや耳浮などの現象を同時に抑制でき、生産安定性を向上させることができる。 また、特に、用いる湿紙搬送ベルトの湿紙接触表面を構成する樹脂層の水に対する膨潤率および搬送される湿紙の坪量を考慮して湿紙接触表面の表面状態を設定することにより、上述した湿紙搬送性を、抄紙工程の様々な種類の紙(特に原紙坪量)に対応して実現することができる。

    次に、本発明の抄紙方法について好適な実施態様を参照しつつ説明する。
    本発明の抄紙方法は、パルプスラリーを脱水して形成された湿紙を搾水する工程を有し、前記工程において、本発明の湿紙搬送ベルトを用いてクローズドドロー方式で湿紙の受け渡しを行うものである。

    また、本実施態様の抄紙方法は、パルプスラリーを脱水して湿紙を形成する工程(脱水工程)と、湿紙を搾水する工程(搾水工程)と、湿紙を乾燥する工程(乾燥工程)とを有している。

    なお、脱水工程と、乾燥工程とは、それぞれ公知の方法により行うことができるので詳細な説明は省略する。 例えば、上述したワイヤーパートおよびドライヤーパート4を利用して、脱水工程と、乾燥工程とをそれぞれ行うことができる。
    搾水工程では、脱水工程において得られた湿紙をさらに搾水する。

    本実施態様においては、搾水工程において上述した本発明の湿紙搬送ベルトを用いてクローズドドロー方式で湿紙の受け渡しを行う。 湿紙搬送性に優れた本発明の湿紙搬送ベルトを用いることにより、耳浮や紙盗られが防止される。 また、原紙坪量に合わせて湿紙搬送ベルトを適宜用いることにより、様々な種類の紙に対しても、このような耳浮や紙盗られの問題を防止することができる。
    特に、フェルトから湿紙搬送ベルトに湿紙をクローズドドロー方式で移送することが好ましい。 この場合においては、上述したような耳浮や紙盗られの問題がより確実に防止される。

    また、上記フェルトの湿紙との接触面を構成するバット繊維が、上記式(5)の関係を満足することが好ましい。 この場合においては、上述したような耳浮や紙盗られの問題がより確実に防止される。

    また、上記フェルトは、本発明の湿紙搬送ベルトと同様に、湿紙を坦持する湿紙接触表面を有し、当該湿紙接触表面が、巾方向において、湿紙の端部を坦持するシートエッジ領域と、湿紙の中央付近を坦持する中央領域とを有し、シートエッジ領域における湿紙接触表面の算術平均粗さが、中央領域における湿紙接触表面の算術平均粗さよりも小さいものであってもよい。
    なお、搾水工程は、上述したプレスパート3を利用することにより行うことができる。

    以上、本発明の抄紙方法によれば、湿紙搬送性に優れた湿紙搬送ベルトを用いることにより、紙盗られや耳浮などの現象を同時に抑制でき、生産安定性を向上させることができる。 また、特に、用いる湿紙搬送ベルトの湿紙接触表面を構成する樹脂層の水に対する膨潤率および搬送される湿紙の坪量を考慮して湿紙接触表面の表面状態を設定することにより、上述した湿紙搬送性を、抄紙工程の様々な種類の紙(特に原紙坪量)に対応して実現することができる。

    以上、本発明について好適な実施態様に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。

    以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
    1. 湿紙搬送ベルトの製造
    まず、以下の構成により、実施例1〜63および比較例1〜18の湿紙搬送ベルトを製造した。
    <補強繊維基材>
    実施例1〜63及び比較例1〜18の湿紙搬送ベルトの補強繊維基材は以下のものを使用した。
    上経糸:ポリアミド6からなる2000dtexのツイストモノフィラメント 下経糸:ポリアミド6からなる2000dtexのツイストモノフィラメント 緯糸:ポリアミド6からなる1400dtexのツイストモノフィラメント 組織:上・下経糸40本/5cm、緯糸40本/5cm、経2重組織 上記構成の織布のロール面側に、ポリアミド6からなる20dtexのバット繊維を300g/m2ニードリングし、織布と絡合、一体化した補強繊維基材。

    <樹脂材料>
    実施例1〜21及び比較例1〜6の湿紙搬送ベルトの樹脂材料は、ウレタンプレポリマーとして、トリレンジイソシアネート(TDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)の混合物に、硬化剤として、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)を反応させたものを使用した。
    実施例22〜42及び比較例7〜12の湿紙搬送ベルトの樹脂材料は、アニオン系ウレタンディスパージョンにメラミン/ホルムアルデヒド系架橋剤を反応させたものを使用した。
    実施例43〜63及び比較例13〜18の湿紙搬送ベルトの樹脂材料は、ウレタンプレポリマーとして、トリレンジイソシアネート(TDI)とポリエチレングリコールの混合物、および、トリレンジイソシアネート(TDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)の混合物の2つのプレポリマーを混ぜたものに、硬化剤として、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)を反応させたものを使用した。
    なお、いずれの樹脂材料も、水不透過性である。

    <湿紙搬送用ベルト(半製品)>
    実施例1〜63及び比較例1〜18の湿紙搬送ベルトについて、上記樹脂材料を、補強繊維基材の湿紙接触面側から補強繊維基材の織布の中央部の位置まで含浸、積層、硬化させ、補強繊維基材の湿紙載置面側に湿紙接触表面を形成する樹脂層を有する湿紙搬送ベルトの半製品を得た。 なお、寸法は、丈20m、巾900mmとし、湿紙搬送状況を確認するテストでのシート巾(シートエッジ間距離)は700mmと設定した。

    <研磨加工、バフ加工>
    実施例1〜63及び比較例1〜18の湿紙搬送用ベルトの湿紙接触表面(シートエッジ領域、中央領域、耳領域)について、#80〜#600の研磨布紙を研磨装置に適宜セットし研磨した。 なお、シートエッジ領域は、シートエッジから中央領域及び耳領域の方向にそれぞれ10cm、計20cmの巾とした。 また、湿紙接触表面の表面粗さを調整するために適宜バフ加工を施した。 こうして湿紙搬送ベルトを完成させた。

    <樹脂材料の膨潤率>
    各実施例および各比較例で用いた樹脂材料の水に対する膨潤率は、後述する表2〜4に示す通りであった。

    2. 搬送評価 図6に示す湿紙搬送用ベルトの評価装置を用いて、以下の条件で、湿紙Wをプレスニップ12を通過させ、ニップ通過後の湿紙耳浮状態及びフェルト6または湿紙搬送ベルトによる紙盗られを評価した。 なお、図6に示す評価装置は、図5に示すプレスパート3の構成から、プレスフェルト6より上流の構成を省略したものである。 また、プレス条件、プレスフェルト6の構成および湿紙の構成については、以下の通りとした。
    <プレス条件>
    抄速:1600m/min
    プレス圧:1050kN/m

    <プレスフェルト6の構成>
    プレスフェルト6については、各例において、湿紙の原紙坪量に合わせてバット繊維の繊度を変更し、基布の構成は全て同様とした。
    基布:ラミネート基布 上布基布 経糸:ポリアミド6からなる500dtexのモノフィラメント 緯糸:ポリアミド6からなる1500dtexのモノフィラメント 組織:経糸40本/5cm、緯糸90本/5cm、3/1崩し組織 下布基布 経糸:ポリアミド6からなる2000dtexのツイストモノフィラメント 緯糸:ポリアミド6からなる1400dtexのツイストモノフィラメント 組織:経糸40本/5cm、緯糸40本/5cm、3/1崩し組織

    基布にニードリングしたバット繊維 (原紙坪量30g/m 用)
    表層バット繊維:ポリアミド6からなる6dtexのバット繊維200g/m
    中層バット繊維:ポリアミド6からなる20dtexのバット繊維400g/m
    裏層バット繊維:ポリアミド6からなる20dtexのバット繊維400g/m
    (原紙坪量100g/m 用)
    表層バット繊維:ポリアミド6からなる20dtexのバット繊維200g/m
    中層バット繊維:ポリアミド6からなる20dtexのバット繊維400g/m
    裏層バット繊維:ポリアミド6からなる20dtexのバット繊維400g/m
    (原紙坪量200g/m 用)
    表層バット繊維:ポリアミド6からなる40dtexのバット繊維200g/m
    中層バット繊維:ポリアミド6からなる40dtexのバット繊維400g/m
    裏層バット繊維:ポリアミド6からなる40dtexのバット繊維400g/m
    フェルト水分:フェルト水分重量/(フェルト水分重量+フェルト目付)=30%調整

    <湿紙(手抄きシート)>
    パルプ:LBKP100% csf300mL
    坪量:30g/m 、100g/m 、200g/m
    プレス前湿紙水分:プレス前湿紙水分重量/(プレス前湿紙水分重量+湿紙絶乾重量)=60%調整(ろ紙を挟んで水分調整実施、プレス後湿紙水分約50%)
    湿紙サイズ:タテ700mm×ヨコ700mm

    なお、ニップ通過後の湿紙耳浮状態及びフェルト6または湿紙搬送ベルトによる紙盗られはビデオカメラを用いて撮影して評価した。

    実施例1〜63及び比較例1〜18の湿紙搬送ベルトについて、湿紙搬送状態について比較評価を実施した。 湿紙搬送用ベルトの各物性、評価条件、評価結果について、表2〜表4に示す。 なお、図7〜10に、原紙坪量30g/m 〜200g/m の各条件における各実施例および各比較例についての湿紙搬送ベルトの表面粗さと膨潤率との関係を示すグラフを示す。

    なお、図7〜10のグラフ中、「Ra2max」に対応する点線は、各実施例および各比較例の試験条件において、式(1)および(2)の関係を満足する最大の算術平均粗さ(μm)であり、「Ra2min」に対応する点線は、各実施例および各比較例の試験条件において、式(1)および(3)の関係を満足する最小の算術平均粗さ(μm)である。 図7〜9には、式(1)〜(3)の関係を満足し、かつRa がRa よりも小さい実施例について記載した。 図10には、式(1)および(2)の関係を満足する一方で、式(1)および(3)の関係を満足していない実施例、ならびに、式(1)および(2)の関係を満足していないか、Ra がRa と等しい比較例について記載した。

    表2〜表4に示すように、実施例1〜63の湿紙搬送ベルトについては、湿紙の耳浮の発生がなく、フェルト6における紙盗られが防止されていた。 さらに、式(1)および(3)の関係も満足する実施例2、3、5、6、8〜21、23、24、26、27、29〜42、44、45、47、48、50〜63の湿紙搬送ベルトについては、湿紙搬送ベルトからドライヤーファブリックへの湿紙移行もスムースであった。
    なお、湿紙搬送ベルト盗られがあった湿紙搬送ベルトについては、サクションロールの吸引力を高めることにより、湿紙搬送ベルト盗られを解消することは可能であるが、湿紙に余分な負荷を与えるため、上記式(1)および(3)の関係も満足する各実施例の湿紙搬送ベルトの方が、湿紙を余分な負荷を与えずに搬送でき、湿紙搬送性に優れていると評価できた。 また、上記の各実施例の結果より、本発明の湿紙搬送ベルトが、原紙坪量の異なる湿紙に対して、良好な湿紙搬送性を有することが確認できた。
    一方、比較例1〜18の湿紙搬送ベルトについては、耳浮が発生したり、フェルト盗られが発生した結果、湿紙搬送性が劣ることが確認された。

    1:湿紙搬送用ベルト、1a:積層体、2:抄紙システム、3:プレスパート、4:ドライヤーパート、5・6:プレスフェルト、7:ドライヤーファブリック、8:ガイドローラー、9:シュー、10:プレスロール、11:シュープレス用ベルト、12:プレス部、13:シュープレス機構、14:サクションロール、21:補強繊維基材層、211:補強繊維基材、212:樹脂、22:第1の樹脂層、22a:第1の樹脂層前駆体、221:湿紙接触表面、222:シートエッジ領域、223:中央領域、224:耳領域、23:第2の樹脂層、231:ロール接触表面、38:ロール、39:コーターバー、40:樹脂吐出口、41:研磨装置、W:湿紙、W :端部

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