Stretch woven fabric

申请号 JP2012099723 申请日 2012-04-25 公开(公告)号 JP2013227692A 公开(公告)日 2013-11-07
申请人 Toray Ind Inc; 東レ株式会社; Toyota Motor Corp; トヨタ自動車株式会社; 发明人 DATE HIROAKI; TSUCHIKURA HIROYUKI; YAMAO RYOSUKE; MAEZAWA SHIN;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a stretch woven fabric for a seat which is excellent in cushioning properties and resistance to settling and capable of being used as a material which is space-saving and has both retention properties and cushioning properties.SOLUTION: The stretch woven fabric includes warp and weft and either one is a non-elastic yarn having a crimp ratio of 5% or more and 30% or less and at least a part of the other one is an elastic yarn having a crimp ratio of 0% or more and 5% or less. The stretch woven fabric has an elongation rate of 5% or more and 30% or less in a load direction when a load of 340 N/5 cm is applied so that the load direction is in parallel with the either one.
权利要求
  • 経糸または緯糸のいずれか一方が5%以上30%以下のクリンプ率を有する非弾性糸からなり、かつ、他方の少なくとも一部が0%以上5%以下のクリンプ率を有する弾性糸からなるストレッチ織物であって、荷重方向が前記一方と平行になるように荷重340N/5cmで加重したときの前記荷重方向の伸長率が5%以上30%以下であることを特徴とするストレッチ織物。
  • 前記弾性糸がポリエステル系エラストマー弾性糸である、請求項1に記載のストレッチ織物。
  • 前記弾性糸が、交錯点において融着しているモノフィラメントの芯成分と鞘成分とからなり、該芯成分が190℃以上250℃以下の融点を有するポリエステル系エラストマー弾性糸からなり、前記鞘成分が140℃以上190℃以下の融点を有するポリエステル系エラストマー弾性糸からなる、請求項2に記載のストレッチ織物。
  • 前記荷重方向の伸長率が8%以上20%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のストレッチ織物。
  • 前記荷重方向に荷重340N/5cmで加重と除重を30万回繰り返しつつ一定速度で伸長変形させた後の残留ひずみが3%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のストレッチ織物。
  • 請求項1〜5のいずれかに記載のストレッチ織物を少なくとも一部に用いてなる座席シート。
  • 说明书全文

    本発明は、適度なクッション性に優れ、かつ省スペースで保持材とクッション材を兼ねた素材として用いることのできるストレッチ織物に関するものである。

    近年、ウレタンフォーム等を内蔵しなくても、身体の支持面に編地や織地などによる布帛のメッシュシートを使用して、良好なクッション性が得られるようにした椅子が各種市販されており、また新たな構成も提案されている(特許文献1、2参照)。 このうち特許文献1には、周囲が袋状となるシート材を背もたれに使用し、袋状の部分に芯部材の骨格を挿入して支えるようにした椅子の構成が開示されている。 特許文献2には、ダブルラッシェル経編機を使用して編成する経編地を椅子の座面とする構成が開示されている。 また、面状弾性体としてエラストマー繊維等の伸長性の高い繊維を用い、メッシュ状の織編物とした事務用チェアや車輌の座席シートなども提案されている。

    また、エラストマー繊維を緯糸に用い、併せてポリエステル繊維を経糸に用いて布帛とすることにより、伸長性と強度を両立させたクッション素材も提案されている(特許文献3参照。)。

    このような観点から、省スペースでクッション性に優れ、適度な沈み量を有する材料の開発が望まれている。

    特開2007−117537号公報

    特開2006−132047号公報

    特開2001−159052号公報

    特許文献1や2に記載されるような従来の提案に係るエラストマーを多く用いた素材では、高い伸長性が得られるものの、想定外の高荷重に対しても伸びすぎるために、安定性や快適性が確保できない。

    また、特許文献3のような素材では、ポリエステル繊維方向の伸縮性に乏しく、適度な沈み量を満足できないことや、エラストマー方向のみの伸長性が良好であるが、想定以上の荷重がかかった場合にエラストマーの降伏点を超えて変形が起こってしまう。

    また、織物の一方のみの伸長性が高いために、織物の経緯方向を固定した場合には高い伸長性を得ることができない。

    そこで本発明の目的は、適度なクッション性に優れ、かつ省スペースで保持材とクッション材を兼ねた素材として用いることのできる座席シート用のストレッチ織物を提供することにある。

    本発明は、上記目的を達成せんとするものであり、本発明のストレッチ織物は、経糸または緯糸のいずれか一方が5%以上30%以下のクリンプ率を有する非弾性糸からなり、かつ、他方の少なくとも一部が0%以上5%以下のクリンプ率を有する弾性糸からなるストレッチ織物であって、荷重方向が前記一方と平行になるように荷重340N/5cmで加重したときの前記荷重方向の伸長率が5%以上30%以下であることを特徴とするストレッチ織物である。 すなわち本発明のストレッチ織物は、例えば「経糸」が5%以上30%以下のクリンプ率を有する非弾性糸からなる場合には、「緯糸」の少なくとも一部が0%以上5%以下のクリンプ率を有する弾性糸からなるストレッチ織物であって、荷重方向が前記「経糸」と平行になるように荷重340N/5cmで加重したときの前記荷重方向の伸長率が5%以上30%以下であることを特徴とするストレッチ織物である。

    本発明のストレッチ織物の好ましい態様によれば、前記弾性糸はポリエステル系エラストマー弾性糸である。

    本発明のストレッチ織物の好ましい態様によれば、前記弾性糸は、交錯点において融着しているモノフィラメントの芯成分と鞘成分とからなり、該芯成分が190℃以上250℃以下の融点を有するポリエステル系エラストマー弾性糸からなり、前記鞘成分が140℃以上190℃以下の融点を有するポリエステル系エラストマー弾性糸からなる。

    本発明のストレッチ織物の好ましい態様によれば、前記荷重方向の伸長率は、8%以上20%以下である。

    本発明のストレッチ織物の好ましい態様によれば、前記荷重方向に荷重340N/5cmで加重と除重を30万回繰り返しつつ一定速度で伸長変形させた後の残留ひずみは3%以下である。

    さらに、本発明の座席シートは、前記ストレッチ織物を少なくとも一部に用いてなる座席シートである。

    本発明のストレッチ織物は、非弾性糸方向での伸長性が良好で、座席シートとして使用したときに好適である。 また、通気性や軽量性があることから省エネの観点からも広範な用途への普及が期待できる。

    本発明のストレッチ織物は、特に座席シート用クッション材に好適であるが、これに限定されるものではなく、クッション性能を利用する各種用途に利用可能である。 例えば、事務椅子や車輛の座席シートなど、それ単独でクッション機能を持たせることもできるし、従来から使用されているクッション材などを組み合わせた座席シート構造体の一部として用いることもできる。

    図1は、糸のクリンプ率を測定する方法を説明するための織物の断面図である。

    本発明の一実施態様に係るストレッチ織物は、経糸または緯糸のいずれか一方が非弾性糸でそのクリンプ率が5%以上30%以下であり、かつ、他方の少なくとも一部が弾性糸でその弾性糸のクリンプ率が0%以上5%以下であり、織物において非弾性糸方向(経糸が非弾性糸であるときは経方向、緯糸が非弾性糸であるときは緯方向)に340N/5cmの荷重をかけたときの非弾性糸方向の伸長率が5%以上30%以下であるストレッチ織物である。

    上記のとおり、本実施態様のストレッチ織物においては、経糸または緯糸のいずれか一方が非弾性糸であり、かつ他方の少なくとも一部が弾性糸である。 経糸または緯糸のいずれか一方に非弾性糸を用い、上記非弾性糸のクリンプ形態とすることにより、織物強度と繰り返し使用における耐久性や伸長性を上げ、他方の少なくとも一部に弾性糸を用い、上記弾性糸のクリンプ形態とすることにより織物の非弾性糸方向の伸びやすさや伸長後の良好な回復性を得ることができる。

    弾性糸としては、熱可塑性エラストマーのような伸長性と回復性に優れた素材が有用である。 ここで、弾性糸とは、エラストマー糸のように高い伸長性と回復性を持った糸であり、好適には、ポリエーテル系エラストマー、ポリスルフィド系エラストマーおよびポリウレタン系エラストマー等からなる糸が挙げられる。

    また、非弾性糸とは弾性糸以外の糸であり、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートやそれらの共重合体、ポリアミド等からなる糸、あるいは金属繊維等が挙げられるが、熱によるセット性のある糸が好ましく用いられる。

    本実施態様においては、ストレッチ織物を形成する非弾性糸の経糸または緯糸のいずれか一方のクリンプ率が5%以上30%以下であり、かつ、他方の少なくとも一部を構成する弾性糸のクリンプ率が0%以上5%以下である。

    経糸または緯糸のいずれか一方の非弾性糸におけるクリンプ率が5%未満であれば、ストレッチ織物の非弾性糸方向に十分な伸長性を与えることができない。 また、この非弾性糸のクリンプ率が30%より大きい織物は、座席シートにおける沈み量が大きすぎると判断される素材となる。

    さらに、他方のクリンプ率は5%以下であることが好ましく、クリンプ率が5%より大きければ、織物の非弾性糸方向への伸長時において、他方の弾性糸での抵抗の多くが引張応として働くため、非弾性糸方向への荷重が増大するに従い、すなわち非弾性糸クリンプが減少するに従い、弾性糸による抵抗は荷重に対し2次曲線的に増大する傾向を示す。

    この観点から、より快適なクッション材としては、織物の経糸または緯糸で用いる非弾性糸のクリンプ率が好ましくは10%以上15%以下であり、かつ、他方の弾性糸のクリンプ率がより好ましくは0%以上4%以下である。

    このように、経糸または緯糸のいずれか一方の非弾性糸のクリンプ率を5%以上30%以下で、かつ、他方の弾性糸クリンプ率を0%以上5%以下とする織物を作製する方法としては、織物カバーファクターの調整や熱セットにおける非弾性糸方向と弾性糸方向の緊張・弛緩によって作製する方法が挙げられる。 例えば、熱セットにおいて、一方の弾性糸方向に緊張させ、他方の非弾性糸と方向に弛緩させた状態で熱セットすることにより、非弾性糸のみのクリンプ率が高い織物を作製することができる。

    また、本実施態様においては、織物において、織物経糸または緯糸で用いる非弾性糸方向に340N/5cmの荷重をかけたときの非弾性糸方向の伸長率が5%以上30%以下である。

    ここで、織物にかかる荷重340N/5cmとは、人が通常の動作で行うような着座の荷重を想定しており、この着座荷重においては現行の座席シートの沈み量と合うように想定された範囲となる。 織物において、非弾性糸と平行な方向に340N/5cmの荷重をかけたときの非弾性糸方向の伸長率について、より好ましい範囲は8%以上20%以下である。

    本実施態様において、使用時に荷重が大きくかかる方向が織物の経糸または緯糸で用いる非弾性糸と平行になるような形態とすることが好ましい。 他方の弾性糸方向では高い伸縮性を得ることができるが、想定以上の荷重がかかった場合に、伸長量が過剰に大きく、生地に残留ひずみが残る恐れがあるためである。 これに対し、大きな荷重がかかる方向を非弾性糸に平行とすると残留ひずみの問題が解消でき、かつ適度な伸長のある素材を得ることができる。 好ましい範囲としては、非弾性糸方向に荷重735N/5cmをかけたときの非弾性糸方向の伸長率が10%以上30%以下である。

    このように、通常の使用においては十分な伸長性を持ち、異常加重時に伸び止まりを与える素材は、経糸または緯糸のいずれか一方の非弾性糸におけるクリンプ率が5%以上30%以下で、かつ、他方の弾性糸におけるクリンプ率が0%以上5%以下とする織物で作製することができる。 これは、非弾性糸の上記範囲のクリンプ率とすることで非弾性糸方向に織クリンプが伸びるまでの加重では適度な伸長性があり、織クリンプが伸びきった後の加重では伸び止まりとなるためである。 これに対し、弾性糸では糸自体の伸長性が高いため、弾性糸方向に高い伸長性があるが、織クリンプが伸びきった後も高い伸長性を持ち、異常加重時に素材が伸び止まりを持つことはない。

    本実施態様のストレッチ織物は、経糸または緯糸のいずれか一方の非弾性糸がポリエステル非弾性糸であることが好ましい。 この非弾性糸をポリエステル非弾性糸とすることにより、高強度かつ繰り返し使用における耐久性が得ることができ、さらにこの非弾性糸のクリンプ形態を良好に保つことができる。 また、他方の弾性糸の融着される部分よりも十分に高い融点を有している。 このポリエステル非弾性糸は、撚糸や仮撚糸や他のポリエステルとの混繊糸でも構わないが、コストや耐久性、および強度の観点から長繊維であることが好ましい。

    また、非弾性糸を用いる経糸または緯糸の他方に用いる弾性糸としてポリエステル系エラストマー弾性糸を用いることが好ましい。 ポリエステル系エラストマー弾性糸を用いることにより、織物の非弾性糸方向の伸長において高い伸長性を付与でき、また、伸長後の回復性も良好である。 さらに、ポリエステル系エラストマーは比較的融点が高く、適度な伸長性を持ち、複合紡糸などの紡糸性が良好なことも好適な理由の一つである。

    ここで、ポリエステル系エラストマーは、座席シート用織物として必要な強度と伸長後の回復性などを得るため、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを主原料として用いられる芳香族ポリエステルが好ましい。 さらに、伸長後の回復性が良いため、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールを共重合させたポリエステル弾性糸がより好ましく用いられる。

    本実施態様においては、ポリエステル系エラストマー弾性糸が芯成分と鞘成分からなり、芯成分が融点190℃以上250℃以下の高融点ポリエステル系エラストマーであり、鞘成分が融点140℃以上190℃以下の低融点ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。 ポリエステル系エラストマーを芯鞘構造とすることにより、融点の違いによる融着処理と繊維強度および弾性などのエラストマー特性の併用が可能となる。

    芯成分と鞘成分の融点は、織物を交織するポリエステル繊維糸条の熱セット性とエラストマーの熱セットから導き出される。 すなわち、交織するポリエステル繊維糸条を熱セットし、ポリエステル繊維糸条のクリンプ状態を好適に維持するためには、160℃以上210℃以下のセット温度が必要である。 同時に、この熱セット温度により鞘成分が融着する必要があり、芯成分がエラストマー特性を維持する必要がある。 これは、エラストマー芯成分が鞘成分と同時に融着しないことが好ましいことを意味する。 これにより、ポリエステル糸を熱セットする温度とエラストマー鞘成分の融着、エラストマー芯成分の特性維持の関係から、芯成分が融点190℃以上250℃以下であり、鞘成分が融点140℃以上190℃以下であることが好ましい。

    本実施態様の弾性糸として、好ましくは融点の異なる2種以上のポリエステル系エラストマーからなる弾性糸が用いられる。 これは熱処理を行なうことにより、融点の高いポリエステル系エラストマーの有する弾性率を保持したまま、融点の低いポリエーテルエステル系エラストマーが溶融、再固化し、織物交点の目止めを行なうことが可能となるからである。 また、融点の異なるポリエステル系エラストマーからなる弾性糸を熱処理した場合、柔軟で弾性回復性に優れる低融点のポリエステル系エラストマーが織物の経糸および緯糸の交点もしくは編物を構成する糸同士の交点に融着するため、織物の強度、弾性回復率等を低下させることなく、かつ強固な目止め性を得ることができる。 このように、熱セット時の耐久性と接着性の観点から芯成分と鞘成分の融点差が30℃以上であることが好ましい。

    上記のように、ポリエステル系エラストマーの鞘成分が融着していることが好ましい。 これは、座席シートにおける織物材質の耐久性や本件織物の高次での取り扱い性を考慮したものである。

    本実施態様の弾性糸は、モノフィラメントであることがより好ましい。 マルチフィラメントであっても、伸長後の回復性などの機械的性質について問題はないが、経糸または緯糸のいずれか一方に用いられる弾性糸の繊維直径によりストレッチ織物の他方に用いられる非弾性糸方向への引張時のバネ特性が変化するため、加重により繊維束直径の変化が起こる恐れがある。 これに対し、モノフィラメントであると容易に設計調整が可能である。 例えば、マルチフィラメント撚糸のように繊維直径の変化が少なければ、マルチフィラメントを使用することも可能であるが、素材のコストアップが見込まれる。 この繊維束繊維直径は、ポリエステル系エラストマーポリマーにおける曲げ特性や引張特性などとともに考慮されるファクターである。 好ましいモノフィラメントの単繊維繊度は、100dtex以上6000dtex以下である。 同一ポリマーにおいて、単繊維繊度が100dtex未満では曲がり易く、織物伸長時に低荷重にて伸びやすく高荷重では伸びにくい傾向があるため、耐久性が十分に得られない。 また、単繊維繊度が6000dtexを超えると織物伸長時に伸びにくく、また、織物製造上の取扱いが難しくなる。 より好ましい繊度の範囲は、300dtex以上3000dtex以下である。 また、弾性糸として用いるモノフィラメントは、単繊維繊度が細いほど織物の経糸または緯糸に用いる非弾性糸のクリンプが小さくなり、同一荷重における織物非弾性糸方向の伸長性が低くなる。 反対に、モノフィラメントの単繊維繊度が太いほど、上記同一荷重での非弾性糸のクリンプが大きくなり、非弾性糸方向の伸長性が高くなることも上記の繊度範囲が好ましいことの一因である。

    座席シートの伸長性や反発感と繊維直径とは、深い関係を有する。 織物を経糸または緯糸に用いられている非弾性糸方向に伸ばすとき、この非弾性糸のクリンプが伸ばされることにより、適度な伸長が可能となる。 このとき、他方の弾性糸にはクリンプが高くなる方向に力が働く。 これは、織物非弾性糸方向の伸長には、他方の弾性糸の曲げ抵抗と引張抵抗が深く関係することを意味する。 曲がりやすく、伸びやすい弾性糸ポリマーを用い、繊維直径が細くなることにより、低い荷重でも沈み量が大きく、反発感が少ない座席シートとなる。 織物において、適度な伸長性と反発感を得る一つの手段としては、弾性糸ポリマーの曲げ特性と引張抵抗、繊維直径を調整して、適正な範囲を決めることができる。 具体的には、織物非弾性糸方向の荷重340N/5cmでの加重時の伸長率を5%以上30%以下にとするために、20%伸長時の応力が0.1cN/dtex以上0.8cN/dtex以下である繊維が弾性糸として好ましく使用される。

    この他に、織物の伸長性や反発性には、経糸または緯糸のいずれか一方の非弾性糸のカバーファクターと他方の弾性糸のカバーファクターが深く関係する。 非弾性糸のカバーファクターの範囲は、600以上1300以下であることが好ましく、弾性糸のカバーファクターの範囲は800以上1800以下であることが好ましい。 非弾性糸のカバーファクターが600より小さい場合には、織物の強度が不足し、カバーファクターが1300より大きい場合には織物非弾性糸方向の伸長性が不足する素材となる傾向を示す。 また、弾性糸のカバーファクターが800より小さい場合には、非弾性糸と同様に強度が不足する織物となり、1800より大きい場合には織物非弾性糸方向の伸長性からは好ましく用いられるが、製織工程での操業性が低下する傾向がある。

    ここで、カバーファクターは、以下のように計算される値である。
    (カバーファクター)=(密度:本/inch)×(繊度:デニール) 1/2

    ポリエステル非弾性糸には、無加工のものを使用しても、撚糸や仮撚加工糸を使用しても、また、これらの加工や他の素材を混合して使用してもかまわない。 また、他のポリマーと共重合した共重合体からなる糸、先染め糸、およびモノフィラメントを用いても良い。 ただし、強度としては5.0cN/dtex以上の高強度であるポリエステル繊維糸条が、織物強度の観点から好ましく使用される。 強度条件は高い強度であることが好ましいが、実用的には5.0cN/dtex以上15.0cN/dtex以下の範囲のものが使用される。 また、マルチフィラメントの場合には、撚糸として用いる方法が好ましく、織物交錯点での糸の潰れが少なく、非弾性糸であるポリエステルのクリンプを有効に使用できるため、織物伸長の向上に繋がる。 撚糸の撚数の範囲は、製織性や高次での取り扱い性と品質を考慮すると、撚係数2000以上30000以下の範囲が好ましい。 さらに、撚糸工程の量産性・取り扱い性による製品コストを考慮すると、さらに好ましい範囲は2000以上20000以下となる。

    ここで、撚係数とは、次のように計算される。
    (撚係数)=(撚数:T/m)×(繊度:デニール) 1/2

    融点の低いポリエステル系エラストマーの融点は、紡糸性と製編織性の観点から40℃以上であることが好ましく、この弾性糸の使用目的から、融点の高いポリエステル系エラストマーの融点より30℃以上低い温度とする糸を使用することが好ましい。 また、融点の高いポリエステル系エラストマーとそれより融点の低いポリエステル系エラストマーの使用比率は、実用上、質量比で90:10から40:60であることが好ましく、80:20から70:30であることがより好ましい。

    さらに、上記の熱処理は、融点の高い弾性糸の融点より10℃以上低い温度と融点のより低い弾性糸の融点より10℃以上高い温度との間の温度で行なうことが好ましい。 この織物を熱処理することにより、織物組織内で接する他の糸と十分に接着させることが可能である。 この織物に用いられるポリエステル糸の融点は、融点の高いポリエステル系エラストマーの融点と同じかそれ以上であることが好ましい。

    本件で用いられるポリエステル系エラストマー系弾性糸において、乾熱収縮応力の最大値が150℃以上210℃以下の範囲において0.05cN/dtex以上2.00cN/dtexであることが好ましい。 これは、本実施態様のストレッチ織物は、熱セットによって経糸または緯糸のいずれか一方に用いる非弾性糸のクリンプを高くするが、熱セット温度において、他方に用いる弾性糸の収縮する力を利用して非弾性糸のクリンプを高くできるためである。 収縮応力が0.05cN/dtexより小さければ、非弾性糸のクリンプを高くするために、弾性糸方向に生地を引っ張る必要があり同様のクリンプ高さを得ることは可能であるが、工程通過性の観点からの懸念がある。 また、収縮応力が2.00cN/dtex以上であれば、収縮力が大きく熱セットの機械に大きな負荷がかかる恐れがある。

    本実施態様のストレッチ織物において、耐久性の観点から、定速伸長について最大340N/5cmまでの加重/除重を30万回繰り返した伸長変形後の非弾性糸方向の残留ひずみが3%以下であることが好ましい。 これは、残留ひずみが3%以上であれば、座席シートにおける沈み量や反発性などの着座特性が長期使用により悪化し、実感として現れることに基づく。 品質や性能の観点からは、より好ましくは残留ひずみが1%以下である。

    ここで、本実施態様のストレッチ織物では、経糸または緯糸で用いる弾性糸にポリエステル系エラストマー糸を用いることにより他方の非弾性糸方向の伸長率が高い素材になる。 高い伸長性を必要としない用途では、弾性糸を用いる経糸または緯糸において、弾性糸のポリエステル系エラストマー糸と他の糸を交織しても構わない。 他の糸としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイドなどからなる繊維糸条が挙げられ、特にポリフェニレンサルファイド糸条は耐熱性の観点から、部分的に耐熱を使用する場合には使い易い。

    経糸または緯糸における弾性糸との交織の方法は、部分的にポリエステル系エラストマー糸と他の交織糸を用いてもよい。 弾性糸を用いる経糸または緯糸における弾性糸の割合は50質量%以上である。 弾性糸と非弾性糸を上記弾性糸の用いられる経糸または緯糸方向に1本交互や2本交互のように少ない本数で弾性糸と非弾性糸を交互に製織する場合に比べ、多本数を連続して製織する場合には、エラストマー繊維が配置されている部分が高い伸長性を示す。 このため、多本数を連続して製織することにより、部分的にストレッチが高い織物となる。 このように、用途に合わせたストレッチの必要な長さにて織物の設計ができ、ストレッチ性能と他の性能を併存させた織物が可能となる。 例えば、生地両端に高い耐熱性があり、かつ伸長性の高い織物を得ることもできる。 また、耐摩耗性、耐薬品性、高強度性、接着性(部材として用いる場合に本実施態様の織物と接着する素材との接着性)をストレッチ性能と併存させることも可能である。

    本実施態様のストレッチ織物は、車輌の座席シート部材、靴の表皮材等の部材、カバン地、サッカーやバレーなどスポーツ用ボールの部材、粘着テープ、不織布の基布、インテリア部材、車輌・住宅内層用部材、および土木用資材などの用途に用いられる。

    本実施態様におけるストレッチ織物の組織は、平組織、綾組織、朱子組織や、これらの組織を組み合わせた二重等の組織を用途に応じて適宜選定すればよい。 平組織は交錯点が多いために、非弾性糸方向の伸長性が高くなる傾向があり、ホツレ防止などの取り扱い性も良好である。 また、製織方法や使用する織機は、特に限定されるものではなく、適宜選定すればよい。

    次に、本発明のストレッチ織物について、実施例に基づいて説明する。 実施例において用いた特性の測定方法は、下記のとおりである。

    1. クリンプ率 非弾性糸または弾性糸と平行に切断した試料(織物)を、非緊張状態で試料台に接着した状態にて拡大写真を撮影し、非弾性糸または弾性糸のクリンプ間隔と高さからクリンプ間距離(mm)を求めた。 相隣り合った弾性糸または非弾性糸の中心間距離(mm)を、それぞれ5カ所について測定し、次式によってクリンプ率(C)を求め、その平均を算出した(図1参照)。

    クリンプ率(C)=(L/D−1)×100(%)
    [式中、Lは非弾性糸または弾性糸のクリンプ間距離(mm)であり、Dは相隣り合った弾性糸または非弾性糸の中心間距離(mm)である。 ]

    2. 糸強伸度 JIS−L−1013に基づき、定速伸長型試験機を用い、つかみ間隔200mm、引張速度200mm/分で20回測定し、その平均を算出した。 また、糸における20%伸長時の応力もこの結果から算出した。

    3. 織物340N/5cm時の伸長率 JIS−L−1096に準じて、定速伸長型試験機を用い、試験片の直径300mmの円形の中心を中央とし、非弾性糸方向に200mmのつかみ間隔、50mmのつかみ幅にて、引張速度200mm/分で340Nとなったときの伸度を5つのサンプルについて測定し、その平均を算出した。

    4. 織物340N/5cm加重時の引張弾性率、500N/5cm加重時の引張弾性率 上記の定速伸長型試験機を用い、同様なサンプル、試験条件で測定した引張荷重−ひずみ結果の曲線において、340N/5cm加重時と500N/5cm加重時のグラフ接線傾きをそれぞれ5つのサンプルについて測定し、その平均を算出した。

    5. 残留ひずみ “サーボパルサー”(登録商標)(島津製作所社製)を用い、次の条件で、非弾性糸方向に織物に繰り返し変形を与えた後の残留ひずみRを算出した。

    [測定条件]
    ・サンプルサイズ:直径300mmの円形・つかみ間隔:200mm、つかみ間隔:50mm
    ・荷重:340N/5cm
    ・繰り返し変形の回数:30万回

    [残留ひずみの算出法]
    繰り返し変形後、次の式で残留ひずみ(R)を算出する。
    R=(L1−L0)/L0×100
    L0:繰り返し変形前のサンプル長、L1:繰り返し変形後のサンプル長

    6. 織物735N/5cm加重時の伸長率 JIS−L−1096に準じて、定速伸長型試験機を用い、試験片の直径300mmの円形の中心を中央とし、非弾性糸方向に200mmのつかみ間隔、50mmのつかみ幅にて、引張速度200mm/分で735Nとなったときの伸度を5つのサンプルについて測定し、その平均を算出した。

    7. 乾熱収縮応力 試料のフィラメント糸10cmを採取し、両端を結んでループ状にする。 これをカネボウ株式会社製熱収縮応力測定器にて0.03cN/dtexの荷重下に、室温から230℃まで徐々に昇温しながら乾熱処理する。 このときの最大収縮応力(cN)を読み取り、糸の総繊度(dtex)で除し、単繊維繊度当たりの収縮応力(cN/dtex)を求める。

    (実施例1)
    芳香族ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート、および熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしてポリ(ブチレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコール)テレフタレート(東レ・デュポン製“ハイトレル”(登録商標)6347と、“ハイトレル”(登録商標)4056)を、それぞれ乾燥した後ペレットブレンドして押出機に供給し、溶融混練した後ペレット化した。

    上記の“ハイトレル”(登録商標)6347融点215℃のポリエステル系エラストマーを芯成分、“ハイトレル”(登録商標)4056融点153℃のポリエステル系エラストマーを鞘成分とし、その質量比率が芯:鞘=70:30である700dtexのモノフィラメント弾性糸を得た。 この弾性糸を緯糸として用いた。 また、経糸として、上記の芳香族ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートからなる、総繊度1670dtex−288フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ製高強力ポリエステル)を200T/mの甘撚を掛けた糸を用いた。 緯糸密度を33本/inchとし、経密度を25本/inchとして、平織の織物を作製した。 得られた織物を180℃の温度で2分間、経方向にのみ20%オーバーフィードしながら熱処理を行い、経密度25本/inch、緯密度47本/inchの織物とした。

    熱処理後の織物は、鞘成分のポリエステル系エラストマーが織物の経糸および緯糸の交点部分に接着固化していることを確認した。 この織物は、経方向の伸長性が良好で、作製した座席シートにおいては快適な着座性能を示した。 結果を表1に示す。

    (実施例2)
    実施例1において使用したポリエステルを経糸に用い、ポリエステル系エラストマー弾性糸を緯糸に用いて、緯糸の一部に繊度440dtex−100fポリフェニレンスルファイド(PPS)繊維(東レ製“トルコン”(登録商標))を用いて、同様な方法によってボーダー状(緯縞模様)の平織物を作製した。 この織物において、ポリエステル系エラストマー弾性糸を緯糸に用いている部分とPPS繊維を緯糸に用いている部分の長さは4:1の割合であった。 このようにして得られた生機織物を作製し、実施例1と同じ方法によって熱処理を行い、経密度23本/inch、平均緯密度45本/inchとした。 この織物の特性を、表1に示す。 得られた織物は、経方向伸長性もよく、樹脂材との高温接着においても物性の劣化は見られなかった。

    (実施例3)
    実施例1と同じ方法によって、ポリエステル系エラストマー弾性糸の芯成分を199℃の“ハイトレル”(登録商標)4767とし、繊度2170dtexのモノフィラメントを作製した。 この弾性糸を緯糸に用い、経糸に実施例1と同一のポリエステルを用いて実施例1と同じ方法によって経密度26本/inch、緯密度26本/inchの平織物を作製し、実施例1と同じ熱処理を行った。 得られた織物の特性を、表1に示す。 得られた織物は、伸張性もよく繰り返しによる残留ひずみも少ない素材であった。

    (実施例4)
    実施例1と同じ方法によって、ポリエステル系エラストマー弾性糸の芯成分を融点温度199℃の“ハイトレル”(登録商標)4767とし繊度2170dtexのモノのフィラメントを作製した。 この弾性糸を緯糸に用い、経糸に実施例1と同一のポリエステルを用いて、ツイル織の織物を作製した。 得られた織物を160℃の温度で2分間、経方向にのみ23%オーバーフィードしながら乾熱処理を行ない、経糸密度を30本/inch、緯糸密度は47本/inchとした。 得られた織物の特性を、表1に示す。

    (実施例5)
    実施例1と同じ方法によって、ポリエステル系エラストマー弾性糸の芯成分を融点温度216℃の“ハイトレル”(登録商標)7247とし繊度570dtexのモノのフィラメントを作製した。 この弾性糸を緯糸に用い、経糸に実施例1と同一のポリエステルを用いて平織物を作製し、実施例1と同じ熱処理を行い、経密度30本/inch、緯密度52本/inchとした。 得られた織物の特性を、表2に示す。 経方向の伸長性もよく、樹脂材との高温接着においても物性の劣化は見られなかった。

    (実施例6)
    実施例5と同一の経糸緯糸を使用し、織物の緯糸密度は36本/inch、経糸密度を22本/inchとし平織の織物を作製した。 得られた織物を180℃で2分間、経方向にのみ10%オーバーフィードしながら乾熱処理を行なった。 得られた織物の特性を表2に示す。

    (比較例1)
    実施例1と同一の経糸と緯糸を使用し、織物緯糸密度30本/inch、経糸密度を29本/inchとした平織物を作製し、180℃の温度で2分間、経方向に0%、緯方向に18%オーバーフィードしながら実施例1と同じ乾熱処理を行った。 得られた織物の物性を表2に示す。 伸長性が不足した素材となった。

    (比較例2)
    実施例1によって用いたポリエステル糸を経緯の糸に用い、緯糸密度は30本/inch、経糸密度を28本/inchとし平織の織物を作製した。 得られた織物を180℃の温度で2分間、経緯方向にのみ7%オーバーフィードしながら実施例1と同じ乾熱処理を行なった。 得られた織物の特性を、表2に示す。 得られた織物は、裁断により糸ずれや目ずれが生じ、伸長性も乏しく、取り扱い性と性能に劣るものであった。

    (実施例7)
    実施例4にて使用した経糸と緯糸を同様に用い、平織の織物を作製した。 得られた織物を160℃の温度で2分間、経方向にのみ20%オーバーフィードしながら乾熱処理を行ない、経糸密度を27本/inch、緯糸密度は31本/inchとした。 得られた織物の特性を、表3に示す。 経方向の伸長性が非常に高く、着座も柔らかい反面、沈み量がやや大きい座席シートとなった。

    (実施例8)
    実施例5にて使用した経糸と緯糸を同様に用いツイル織物を作製し、得られた織物を180℃の温度で2分間、経方向にのみ25%オーバーフィードしながら乾熱処理を行ない、経密度30本/inch、緯密度84本/inchとした。 得られた織物の特性を、表3に示す。 経方向の伸長性が少なく、座席シートの着座感もやや硬いものであった。

    (比較例3)
    実施例1によって用いたポリエステル糸を緯糸、ポリエステル系エラストマー弾性糸を経糸に用い、緯糸密度は30本/inch、経糸密度を28本/inchとし平織の織物を作製した。 得られた織物を180℃の温度で2分間、経方向に7%、緯方向に15%オーバーフィードしながら同様な乾熱処理を行なった。 得られた織物の特性を、表3に示す。 得られた織物は、経方向の伸長性が高いが、735Nでの伸び止まりが小さく、安定性や快適な着座性に劣るものであった。

    本発明に係るストレッチ織物は、車輌の座席シート部材、靴の表皮材等の部材、カバン地、サッカーやバレーなどスポーツ用ボールの部材、粘着テープ、不織布の基布、インテリア部材、車輌・住宅内層用部材、および土木用資材などとして利用可能である。

    1:糸の直径2:クリンプ高さD:相隣り合った緯糸または経糸の中心間距離(mm)
    L:経糸または緯糸の軸線長さ

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