精製糖溶液の製造方法

申请号 JP2011517132 申请日 2011-04-11 公开(公告)号 JPWO2011162009A1 公开(公告)日 2013-08-19
申请人 東レ株式会社; 发明人 花川 正行; 正行 花川; 洋帆 広沢; 洋帆 広沢;
摘要 セルロース含有バイオマスから糖を製造する工程で生成するバイオマス残滓を、糖 水 溶液製造の工程において除去することで精密濾過膜および/または限外濾過膜の目詰まりを防止し、精製糖水溶液を長期安定的に製造する方法を提供する。セルロース含有バイオマスを原料として精製糖水溶液を製造する方法であって、(1)セルロース含有バイオマスを分解処理し、糖水溶液を製造する工程(2)(1)で得られた糖水溶液を凝集剤で凝集処理して、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上となる糖水溶液を製造する工程(3)(2)で得られた糖水溶液を精密濾過膜および/または限外濾過膜に通じて濾過して、糖水溶液を透過側から回収する工程から構成される、精製糖水溶液の製造方法。
权利要求
  • セルロース含有バイオマスを原料として精製糖水溶液を製造する方法であって、
    (1)セルロース含有バイオマスを分解処理し、糖水溶液を製造する工程(2)(1)で得られた糖水溶液を凝集剤で凝集処理して、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液を製造する工程(3)(2)で得られた糖水溶液を精密濾過膜および/または限外濾過膜に通じて濾過して、糖水溶液を透過側から回収する工程から構成される、精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記工程(3)で得られた糖水溶液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過して、非透過側から精製糖水溶液を回収し、透過側から発酵阻害物質を除去する工程を設ける請求項1に記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記工程(2)の凝集処理にカチオン性高分子凝集剤を使用する、請求項1または2に記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記工程(2)の凝集処理に無機凝集剤と有機高分子凝集剤とを併用する、請求項1から3のいずれかに記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記工程(2)の凝集処理を複数回実施する、請求項1から4のいずれかに記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記発酵阻害物質が有機酸、フラン系化合物およびフェノール系化合物からなる群から選択される1種以上を含む、請求項2に記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記有機酸がギ酸または酢酸である、請求項6に記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記フラン系化合物がヒドロキシメチルフルフラールまたはフルフラールである、請求項6に記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記フェノール系化合物がバニリン、アセトバニリンまたはシリンガ酸である、請求項6に記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記工程(2)の糖水溶液が単糖を主成分とする糖水溶液である、請求項1から9のいずれかに記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • 前記工程(3)で得られた糖水溶液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過する工程が、糖水溶液をナノ濾過膜に通じて濾過し、得られた濾過液を逆浸透膜に通じて濾過する工程である、請求項2に記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • ナノ濾過膜および/または逆浸透膜の機能層がポリアミドからなることを特徴とする、請求項2に記載の精製糖水溶液の製造方法。
  • ナノ濾過膜の機能層が架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式1で示される構成成分を含有することを特徴とする、請求項2に記載の精製糖水溶液の製造方法。
    (式中、Rは−Hまたは−CH 、nは0から3までの整数を表す。)
  • 請求項1から13のいずれかに記載の精製糖水溶液の製造方法によって得られた精製糖水溶液を発酵原料として使用する、化学品の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、セルロース含有バイオマスから精製糖溶液を製造する方法に関する。

    大量消費、大量廃棄の20世紀は終わり、環境調和型社会の構築が求められる21世紀にあっては、化石資源の枯渇問題と地球温暖化問題が深刻化するにつれて、循環型資源であるバイオマス資源の活用促進が期待されている。

    現在、バイオマス資源の中でも、サトウキビやトウモロコシを原料としたバイオエタノールの製造が、米国やブラジルなどで盛んに行われている。 これは、サトウキビやトウモロコシには、ショ糖やデンプンが豊富に含まれており、ここから糖水溶液を調製して発酵することが容易であるためである。 しかしながら、サトウキビやトウモロコシは元々食料であり、これらを原料とした場合には食料や飼料との競合を引き起こして原料価格の高騰を招くという重大な問題点があり、セルロース含有バイオマスのような非食用バイオマスから効率的に糖水溶液を製造するプロセス、あるいは得られた糖水溶液を発酵原料として、効率的に工業原料に変換するプロセスの構築が今後の課題となっている。

    セルロース含有バイオマスから糖水溶液を製造する方法としては、硫酸を使用する糖水溶液の製造方法があり、濃硫酸を使用してセルロースおよびヘミセルロースを酸加水分解して糖水溶液を製造する方法(特許文献1あるいは2)、セルロース含有バイオマスを希硫酸で加水分解処理した後に、さらにセルラーゼなどの酵素処理することより糖水溶液を製造する方法(非特許文献1)が開示されている。

    また、酸を使用しない方法として、250℃〜500℃程度の亜臨界水を使用してセルロース含有バイオマスを加水分解して糖水溶液を製造する方法(特許文献3)、またセルロース含有バイオマスを亜臨界水処理した後に、さらに酵素処理することにより糖水溶液を製造する方法(特許文献4)、またセルロース含有バイオマスを240℃〜280℃の加圧熱水で加水分解処理した後に、さらに酵素処理することにより糖水溶液を製造する方法(特許文献5)が開示されている。

    しかしながら、得られる糖水溶液には多量のバイオマス残滓が含まれるため、糖水溶液を発酵槽に供給し、発酵原料として利用するためには、適切な固液分離処理によってバイオマス残滓を除去することが必要である。

    このようなバイオマス残滓の除去方法としては、限外濾過膜による濾過方法(特許文献6)が開示されているが、限外濾過膜の目詰まりが生じるために、糖水溶液を長期安定的に製造することが困難であった。 また、20〜200μmの孔径の不織布による濾過と限外濾過膜を組み合わせる方法(特許文献7)が開示されているが、この方法では、20μm程度以上のバイオマス残滓を除去できる一方で、20μm以下の微粒子、濁質、コロイドなどのバイオマス残滓による限外濾過膜の目詰まりを防止できず、糖水溶液を長期安定的に連続して製造することができなかった。

    特表平11−506934号公報

    特開2005−229821号公報

    特開2003−212888号公報

    特開2001−95597号公報

    特許第3041380号公報

    特開2006−88136号公報

    特開2009−240167号公報

    したがって、本発明では、上述したような課題、すなわちセルロース含有バイオマスから糖を製造する工程で生成するバイオマス残滓を、精密濾過膜および/または限外濾過膜による濾過の前に除去することで、精密濾過膜および/または限外濾過膜の目詰まりを防止し、精製糖水溶液を長期安定的に製造する方法を提供するものである。

    本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、セルロース含有バイオマスから糖を製造する工程において、糖水溶液を凝集処理して、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液とした後に、精密濾過膜および/または限外濾過膜に通じれば、長期安定的に発酵原料となる糖とバイオマス残滓とを分離除去して糖水溶液を製造することが可能であることを見出した。 すなわち、本発明は以下の[1]〜[13]のいずれかの構成を有する。

    [1]セルロース含有バイオマスを原料として精製糖水溶液を製造する方法であって、
    (1)セルロース含有バイオマスを分解処理し、糖水溶液を製造する工程(2)(1)で得られた糖水溶液を凝集剤で凝集処理して、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液を製造する工程(3)(2)で得られた糖水溶液を精密濾過膜および/または限外濾過膜に通じて濾過して、糖水溶液を透過側から回収する工程から構成される、精製糖水溶液の製造方法。

    [2]前記工程(3)で得られた糖水溶液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過して、非透過側から精製糖水溶液を回収し、透過側から発酵阻害物質を除去する工程を設ける[1]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [3]前記工程(2)の凝集処理にカチオン性高分子凝集剤を使用する、[1]または[2]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [4]前記工程(2)の凝集処理に無機凝集剤と有機高分子凝集剤とを併用する、[1]から[3]のいずれかに記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [5]前記工程(2)の凝集処理を複数回実施する、[1]から[4]のいずれかに記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [6]前記発酵阻害物質が有機酸、フラン系化合物およびフェノール系化合物からなる群から選択される1種以上を含む、[2]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [7]前記有機酸がギ酸または酢酸である[6]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [8]前記フラン系化合物がヒドロキシメチルフルフラールまたはフルフラールである、[6]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [9]前記フェノール系化合物がバニリン、アセトバニリンまたはシリンガ酸である、[6]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [10]前記工程(2)の糖水溶液が単糖を主成分とする糖水溶液である、[12]から[9]のいずれかに記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [11]前記工程(3)で得られた糖水溶液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過する工程が、糖水溶液をナノ濾過膜に通じて濾過し、得られた濾過液を逆浸透膜に通じて濾過する工程である、[2]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [12]ナノ濾過膜および/または逆浸透膜の機能層がポリアミドからなることを特徴とする、[2]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    [13]ナノ濾過膜の機能層が架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式1で示される構成成分を含有することを特徴とする、[2]に記載の精製糖水溶液の製造方法。

    (式中、Rは−Hまたは−CH 、nは0から3までの整数を表す。)
    [14][1]から[13]のいずれかに記載の精製糖水溶液の製造方法によって得られた精製糖水溶液を発酵原料として使用する、化学品の製造方法。

    本発明によって、セルロース含有バイオマスから糖を製造する工程で生成するバイオマス残滓を除去して、精密濾過膜および/または限外濾過膜の目詰まりを防止できるため、長期安定的に精製糖水溶液を製造することができる。 その結果、本発明で得られた精製糖水溶液を発酵原料として使用することで、種々の化学品の発酵生産の効率を向上させることができる。

    ナノ濾過膜/逆浸透膜の濾過装置の概略を示す概略図である。

    以下、本発明をより詳細に説明する。

    本発明の精製糖水溶液の製造方法に用いられるセルロース含有バイオマスとは、バガス、スイッチグラス、コーンストーバー、稲わら、麦わら、などの草本系バイオマス、また樹木、廃建材などの木質系バイオマスなどを例として挙げることができる。 これらセルロース含有バイオマスは、糖が脱水縮合した多糖であるセルロースあるいはヘミセルロースを含有しており、こうした多糖を分解処理することにより発酵原料として利用可能な糖水溶液を製造することが可能である。 なお、本発明に用いられるセルロース含有バイオマスは、本発明の目的を逸脱しない範囲で、他の成分を含有していても良く、例えばショ糖やデンプンといった可食バイオマスを含有していても構わない。 例えば、サトウキビの絞りかすであるバガスを、セルロース含有バイオマスとして使用する場合に、ショ糖を含有するサトウキビの絞り汁も同時に使用しても構わない。

    本発明における精製糖水溶液とは、セルロース含有バイオマスの分解処理によって得られる糖水溶液のことを指す。 セルロース含有バイオマスの分解処理には、加水分解が簡便で安価であるため好適に用いられる。 一般的に糖とは、単糖の重合度によって分類され、グルコース、キシロースなどの単糖類、そして単糖が2〜9個脱水縮合したオリゴ糖類、さらには単糖が10個以上脱水縮合した多糖類に分類される。 本発明における精製糖水溶液とは、主成分として単糖を含む糖水溶液を指し、具体的には、グルコースあるいはキシロースを主成分として含む。 また、少量ではあるが、セロビオースなどのオリゴ糖、およびアラビノース、マンノースなどの単糖も含んでいる。 ここで主成分が単糖であるとは、水に溶解している単糖、オリゴ糖、多糖の糖類の中の総重量の80重量%以上が単糖であることを指す。 水に溶解した単糖、オリゴ糖、多糖の具体的な分析方法としては、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)により、標品との比較により定量することができる。 具体的なHPLC条件は、反応液はなしで、カラムにLuna NH2(Phenomenex社製)を用いて、移動相が超純水:アセトニトリル=25:75とし、流速を0.6mL/min、測定時間が45min、検出方法がRI(示差屈折率)、温度が30℃である。

    次に、本発明の精製糖水溶液の製造方法における工程(1)セルロース含有バイオマスを分解処理する工程に関して説明する。

    セルロース含有バイオマスを分解処理に供するに際しては、セルロース含有バイオマスをそのまま使用してもよいが、蒸煮、微粉砕、爆砕などの公知の処理を施すことが可能であり、こうした処理によって分解処理の効率を向上させることが可能である。

    セルロース含有バイオマスの分解処理工程については特に制限はないが、具体的には処理法A:酸のみを用いる方法、処理法B:酸処理後、酵素を利用する方法、処理法C:水熱処理のみを用いる方法、処理法D:水熱処理後、酵素を利用する方法、処理法E:アルカリ処理後、酵素を利用する方法、処理法F:アンモニア処理後、酵素を利用する方法の6つが主に挙げられる。

    処理法Aでは、セルロース含有バイオマスの分解処理に酸を使用して、加水分解する。 使用する酸に関して硫酸、硝酸、塩酸などが挙げられるが、硫酸を使用することが好ましい。

    酸の濃度に関しては特に限定されないが、0.1〜99重量%の酸を使用することができる。 酸の濃度が0.1〜15重量%、好ましくは、0.5〜5重量%である場合、反応温度は100〜300℃、好ましくは120〜250℃の範囲で設定され、反応時間は1秒〜60分の範囲で設定される。 処理回数は特に限定されず上記処理を1以上行えばよい。 特に上記処理を2以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。

    また、酸の濃度が15〜95重量%、好ましくは60〜90重量%である場合、反応温度は10〜100℃の範囲で設定され、反応時間は1秒〜60分の範囲で設定される。

    前記酸処理の回数は特に限定されず上記処理を1回以上行えばよい。 特に前記処理を2以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。

    酸処理によって得られた加水分解物は、硫酸などの酸を含むため発酵原料として使用するためには中和を行う必要がある。 中和に使用するアルカリ試薬は特に限定されないが、好ましくは1価のアルカリ試薬である。 これは、ナノ濾過膜を使用する場合に、酸・アルカリ成分がともに2価以上の塩であると、ナノ濾過膜では透過されず、また液が濃縮される過程で液中に塩が析出し膜のファウリング要因となることがあるためである。

    1価のアルカリを使用する場合、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられるが特に限定はされない。

    2価以上のアルカリ試薬を用いる場合は、塩の析出が起こらないよう酸、アルカリ量を減らすか、または析出物を除外する機構を設けるなどの工夫が必要となる場合がある。

    酸を使用する加水分解では一般的に結晶性の低いヘミセルロース成分より加水分解が起き、次いで結晶性の高いセルロース成分が分解されるという特徴を有する。 したがって、酸を使用してヘミセルロース由来のキシロースを多く含有する液を得ることが可能である。 また酸処理においては、さらに前記処理後のバイオマス固形分を、前記処理よりも高圧、高温での反応を行うことでさらに結晶性の高いセルロース成分を分解しセルロース由来のグルコースを多く含有する液を得ることが可能である。 加水分解を行う2段階の工程を設定することで、ヘミセルロース、セルロースに適した加水分解条件が設定でき、分解効率、および糖収率を向上させることが可能になる。 また、第1の分解条件で得られる糖水溶液と第2の分解条件で得られる糖水溶液を分離しておくことで、加水分解物に含まれる単糖成分比率が異なる2種の糖水溶液を製造することが可能になる。 すなわち、第1の分解条件で得られる糖水溶液はキシロースを主成分とし、第2の分解条件で得られる糖水溶液はグルコースを主成分として分離することも可能である。 このように糖水溶液に含まれる単糖成分を分離することにより、糖水溶液中のキシロースを発酵原料として使用する発酵と、グルコースを発酵原料として使用する発酵に分けて行うことも可能になり、それぞれの発酵に使用する最適な生物種を選定し使用することが可能になる。 但し酸での高圧高温処理を長時間行うことでヘミセルロース成分・セルロース成分を分離することなく一度に両成分由来の糖を得ても良い。

    処理法Bでは、処理法Aで得られた処理液をさらに酵素によりセルロース含有バイオマスを加水分解する。 処理法Bにおける使用する酸の濃度は0.1〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量%である。 反応温度は100〜300℃の範囲で設定することができ、好ましくは120〜250℃で設定することができる。 反応時間は1秒〜60分の範囲で設定することができる。 処理回数は特に限定されず前記処理を1回以上行えばよい。 特に上記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。

    酸処理によって得られた加水分解物は、硫酸などの酸を含んでおり、さらに酵素による加水分解反応を行うため、あるいは発酵原料として使用するために、中和を行う必要がある。 中和は、処理法Aでの中和と同様に実施することができる。

    前記酵素としては、セルロース分解活性を有する酵素であればよく、一般的なセルラーゼを使用することが可能であるが、好ましくは、結晶性セルロースの分解活性を有するエキソ型セルラーゼ、あるいはエンド型セルラーゼを含んでなるセルラーゼであることが好ましい。 こうしたセルラーゼとして、トリコデルマ属細菌が産生するセルラーゼが好適である。 トリコデルマ属細菌とは糸状菌に分類される微生物であり、細胞外に、多種のセルラーゼを大量に分泌する微生物である。 本発明で使用するセルラーゼは、好ましくは、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼである。 また、加水分解に使用する酵素として、グルコースの生成効率を向上させるために、セロビオース分解酵素であるβグルコシダーゼを添加してもよく、上述のセルラーゼと併せて加水分解に使用してもよい。 βグルコシダーゼとしては、特に限定されないがアスペルギルス由来のものであることが好ましい。 こうした酵素を使用した加水分解反応は、pHが3〜7の付近で行うことが好ましく、より好ましくはpH5付近である。 反応温度は、40〜70℃であることが好ましい。

    酸処理後、酵素を利用してセルロース含有バイオマスを加水分解する場合、第1の加水分解において酸処理により結晶性の低いヘミセルロースの加水分解を行い、次いで第2の加水分解として酵素を使用することで結晶性の高いセルロースの加水分解を行うことが好ましい。 第2の加水分解において酵素を使用することで、より効率よくセルロース含有バイオマスの加水分解工程を進めることができる。 具体的には、酸による第1の加水分解において、主としてセルロース含有バイオマスに含まれるヘミセルロース成分の加水分解とリグニンの部分分解が起き、その加水分解物を酸溶液とセルロースを含む固形分に分離し、セルロースを含む固形分成分に対しては、酵素を添加することによって加水分解を行う。 分離・回収された希硫酸溶液にはペントースであるキシロースを主成分として含んでいるため、酸溶液を中和して糖水溶液を単離することができる。 また、セルロースを含む固形分の加水分解反応物からグルコースを主成分とする単糖成分を得ることができる。 なお、中和によって得られた糖水溶液を、固形分に混合し、ここに酵素を添加して加水分解を行ってもよい。

    処理法Cでは特段の酸の添加は行わず、セルロース含有バイオマスが、0.1〜50重量%となるよう水を添加後、100〜400℃の温度で、1秒〜60分処理する。 こうした温度条件において処理することにより、セルロースおよびへミセルロースの加水分解が起こる。 処理回数は特に限定されず該処理を1回以上行えばよい。 特に該処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。

    水熱処理を使用する分解処理では一般的に結晶性の低いヘミセルロース成分より加水分解が起き、次いで結晶性の高いセルロース成分が分解されるという特徴を有する。 したがって、水熱処理を使用してヘミセルロース由来のキシロースを多く含有する液を得ることが可能である。 また水熱処理においては、さらに前記処理後のバイオマス固形分を前記処理よりも高圧、高温での反応を行うことでさらに結晶性の高いセルロース成分を分解しセルロース由来のグルコースを多く含有する液を得ることが可能である。 分解処理を行う2段階の工程を設定することで、ヘミセルロース、セルロースに適した分解処理条件が設定でき、分解効率、および糖収率を向上させることが可能になる。 また、第1の分解条件で得られる糖水溶液、と第2の分解条件で得られる糖水溶液を分離しておくことで、分解処理された物に含まれる単糖成分比率が異なる2種の糖水溶液を製造することが可能になる。 すなわち、第1の分解条件で得られる糖水溶液はキシロースを主成分とし、第2の分解条件で得られる糖水溶液はグルコースを主成分として分離することも可能である。 このように糖水溶液に含まれる単糖成分を分離することにより、糖水溶液中のキシロースを発酵原料として使用する発酵と、グルコースを発酵原料として使用する発酵に分けて行うことも可能になり、それぞれの発酵に使用する最適な微生物種を選定し使用することが可能になる。

    処理法Dでは、処理法Cで得られた処理液をさらに酵素によりセルロース含有バイオマスを加水分解する。

    前記酵素は、処理法Bと同様の酵素が用いられる。 また、酵素処理条件についても処理法Bと同様の条件が採用されうる。

    水熱処理後、酵素を使用してセルロース含有バイオマスを加水分解する場合、第1の分解処理において水熱処理により結晶性の低いヘミセルロースの加水分解を行い、次いで第2の分解処理として酵素を使用することで結晶性の高いセルロースの加水分解を行う。 第2の分解処理において酵素を使用することで、より効率よくセルロース含有バイオマスの分解処理工程を進めることができる。 具体的には、水熱処理による第1の分解処理において、主としてセルロース含有バイオマスに含まれるヘミセルロース成分の加水分解とリグニンの部分分解が起き、その加水分解物を水溶液とセルロースを含む固形分に分離し、セルロースを含む固形分に対しては、酵素を添加することによって加水分解を行う。 分離・回収された水溶液にはペントースであるキシロースを主成分として含んでいる。 また、セルロースを含む固形分の加水分解反応物からグルコースを主成分とする単糖成分を得ることができる。 なお、水熱処理によって得られる水溶液を、固形分に混合し、ここに酵素を添加して加水分解を行ってもよい。

    処理法Eでは、使用するアルカリは水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムがより好ましい。 これらアルカリの濃度は、0.1〜60重量%の範囲でセルロース含有バイオマスに添加し、100〜200℃、好ましく、110℃〜180℃の温度範囲で処理すればよい。 処理回数は特に限定されず上記処理を1以上行えばよい。 特に上記処理を2以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。

    アルカリ処理によって得られた処理物は、水酸化ナトリウムなどのアルカリを含むため、さらに酵素による加水分解反応を行うために、中和を行う必要がある。 中和に使用する酸試薬は特に限定されないが、より好ましくは1価の酸試薬である。 これは、ナノ濾過膜を使用する場合に、酸・アルカリ成分がともに2価以上の塩であると、ナノ濾過膜では透過されず、また液が濃縮される過程で液中に塩が析出し膜のファウリング要因となるからである。

    1価の酸を使用する場合、硝酸、塩酸等が挙げられるが特に限定はされない。

    2価以上の酸試薬を用いる場合は、塩の析出が起こらないように酸、アルカリ量を減らすか、または析出物を除外する機構を設けるなどの工夫が必要となる場合がある。 2価以上の酸を使用する場合、硫酸、リン酸であることが好ましい。

    前記酵素は、処理法Bと同様の酵素が用いられる。 また、酵素処理条件についても処理法Bと同様の条件が採用されうる。

    アルカリ処理後、酵素を利用してセルロース含有バイオマスを加水分解する場合、アルカリを含んだ水溶液に混合して加熱することでヘミセルロースおよびセルロース成分周辺のリグニン成分を除去し、ヘミセルロース成分およびセルロース成分を反応しやすい状態にした後、酵素によってアルカリ処理中の分解されなかった分の結晶性の低いヘミセルロース、結晶性の高いセルロースの加水分解を行う。 具体的には、アルカリによる処理において、主としてセルロース含有バイオマスに含まれる一部のヘミセルロース成分の加水分解とリグニンの部分分解が起き、その加水分解物をアルカリ溶液とセルロースを含む固形分に分離し、セルロースを含む固形分成分に対しては、pHを調製して酵素を添加することによって加水分解を行う。 また、アルカリ溶液濃度が希薄な場合は、固形分を分離することなく、そのまま中和後酵素添加して加水分解してもよい。 セルロースを含む固形分の加水分解反応物からはグルコース、キシロースを主成分とする単糖成分を得ることができる。 また、分離・回収されたアルカリ溶液にはリグニン以外にペントースであるキシロースを主成分として含んでいるため、アルカリ溶液を中和して糖水溶液を単離することも可能である。 また、中和によって得られた糖水溶液を、固形分に混合し、ここに酵素を添加して加水分解を行ってもよい。

    処理法Fのアンモニア処理条件については特開2008−161125号公報および特開2008−535664号公報に準拠する。 例えば、使用するアンモニア濃度はセルロース含有バイオマスに対して0.1〜15重量%の範囲でセルロース含有バイオマスに添加し、4℃〜200℃、好ましくは90℃〜150℃で処理する。 添加するアンモニアは液体状態、あるいは気体状態のどちらであってもよい。 さらに添加する形態は純アンモニアでもアンモニア水溶液の形態でもよい。 処理回数は特に限定されず前記処理を1回以上行えばよい。 特に前記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。

    アンモニア処理によって得られた処理物は、さらに酵素による加水分解反応を行うため、アンモニアの中和あるいはアンモニアの除去を行う必要がある。 中和に使用する酸試薬は特に限定されない。 例えば塩酸、硝酸、硫酸などがあげられるが、プロセス配管の腐食性および発酵阻害因子とならない事を考慮して硫酸がより好ましい。 アンモニアの除去は、アンモニア処理物を減圧状態に保つことでアンモニアを気体状態に揮発させて除去することができる。 また除去したアンモニアは、回収再利用してもよい。

    アンモニア処理後に酵素を使用する加水分解では、一般的にアンモニア処理によりセルロースの結晶構造が変化し、酵素反応を受けやすい結晶構造に変化することが知られている。 したがって、こうしたアンモニア処理後の固形分に対し、酵素を作用させることで、効率的に加水分解を行うことができる。 前記酵素は、処理法Bと同様の酵素が用いられる。 また、酵素処理条件についても処理法Bと同様の条件が採用されうる。

    また、アンモニア水溶液を用いる場合は、アンモニア処理時にアンモニア以外に水成分が処理法C(水熱処理)と同様の効果も得ることがあり、ヘミセルロースの加水分解やリグニンの分解が起こることもある。 アンモニア水溶液で処理後、酵素を利用してセルロース含有バイオマスを加水分解する場合、アンモニアを含んだ水溶液に混合して加熱することでヘミセルロースおよびセルロース成分周辺のリグニン成分を除去し、ヘミセルロース成分およびセルロース成分を反応しやすい状態にした後、酵素によってアンモニア処理中の水熱により分解されなかった分の結晶性の低いヘミセルロース、結晶性の高いセルロースの加水分解を行う。 具体的には、アンモニア水溶液による処理において、主としてセルロース含有バイオマスに含まれる一部のヘミセルロース成分の加水分解とリグニンの部分分解が起き、その加水分解物をアンモニア水溶液とセルロースを含む固形分に分離し、セルロースを含む固形分成分に対しては、pHを調製して酵素を添加することによって加水分解を行う。 また、アンモニア濃度が100%に近い濃い濃度の場合は、アンモニアを脱気により多くを除外後、固形分を分離することなく、そのまま中和後酵素添加して加水分解してもよい。 セルロースを含む固形分の加水分解反応物からはグルコース、キシロースを主成分とする単糖成分を得ることができる。 また、分離・回収されたアンモニア水溶液にはリグニン以外にペントースであるキシロースを主成分として含んでいるため、アルカリ溶液を中和して糖水溶液を単離することも可能である。 また、中和によって得られた糖水溶液を、固形分に混合し、ここに酵素を添加して加水分解を行ってもよい。

    工程(1)で得られる糖水溶液には、糖だけでなく、コロイド成分、濁質成分、微粒子などを含むバイオマス残滓が存在する。 このようなバイオマス残滓の構成成分としては、リグニン、タンニン、シリカ、カルシウム、未分解のセルロース、などが例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。

    工程(1)で得られる糖水溶液を発酵槽に供給して発酵原料として利用するためには、このようなバイオマス残滓を除去する必要があり、本願発明者らは、精密濾過膜および/または限外濾過膜を用いて鋭意検討を行った。 その結果、特に粒径1μm以下のバイオマス残滓が、精密濾過膜および/または限外濾過膜を連続運転する際に、膜ファウリングの主要因となり、長期安定的な濾過運転を妨げることが分かった。

    そして、本願発明者らは、粒径1μm以下のバイオマス残滓による膜ファウリングを防止するために、バイオマス残滓を凝集剤で凝集処理して特定の状態の糖水溶液を得た後に、精密濾過膜および/または限外濾過膜に供給すれば良いことを見出した。

    すなわち、(1)セルロース含有バイオマスを分解処理し、糖水溶液を製造する工程、(2)(1)で得られた糖水溶液を凝集剤で凝集処理して、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液を製造する工程、(3)(2)で得られた糖水溶液を精密濾過膜および/または限外濾過膜に通じて濾過して、糖水溶液を透過側から回収する工程から構成される、本発明の精製糖水溶液の製造方法を見出したのである。

    本発明の精製糖水溶液の製造方法における工程(2)である、工程(1)で得られた糖水溶液を凝集剤で凝集処理して、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液を製造する工程に関して説明する。

    上述したように、糖水溶液中のコロイド成分、濁質成分、微粒子などを含む粒径1μm以下のバイオマス残滓が膜ファウリングの要因となるため、精密濾過膜および/または限外濾過膜に通じる前に除去または低減する必要がある。 数リットル以下程度の少量の糖水溶液を取り扱う場合は、重加速度数万Gでの運転が可能な超遠心分離機でこれらを除去または低減可能であるため、実験室レベルでは問題点として顕在化していなかった。 しかし、超遠心分離機の容量は小さく、数十リットル以上の大量の糖水溶液を一度に取り扱うことはできない。 このため、本発明の目的である精製糖水溶液の長期安定的な製造のためには、バイオマス残滓を除去または低減する別の方法が必要であった。

    本願発明者らは、凝集剤を用いてバイオマス残滓を凝集沈澱させる凝集処理を行って、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液とすることにより、大量の糖水溶液であっても、精密濾過膜および/または限外濾過膜による濾過時の目詰まりを抑制できることを見出した。 ここで、凝集剤を用いてバイオマス残滓を凝集沈澱させる凝集処理を行って、粒度分布測定で計測される平均粒径が3μm以上の糖水溶液とすることが、精密濾過膜および/または限外濾過膜の膜ファウリングをさらに防止できるので好ましい。 なお、本発明における凝集処理とは、糖水溶液中に含まれるコロイド成分、濁質成分、微粒子などを含むバイオマス残滓を除去または低減させることをいう。

    凝集剤による糖水溶液中に含まれるバイオマス残滓の凝集沈澱現象は、不明な点が多いが以下のように推定される。 糖水溶液中に含まれるバイオマス残滓は、その表面に通常負の電荷を帯びており、この負電荷によって各々が反発し合って接触できず、糖水溶液中に安定に分散する傾向を示す。 ここに、これらと逆の荷電を持つ凝集剤を添加すると、バイオマス残滓表面の荷電が中和されて、反発力が失われ、ブラウン運動や水流による輸送によって相互に接近し結合できるようになり、凝集粒子が形成される。 さらに、これらの凝集粒子が相互に衝突・集塊しながら大きく成長し、凝集剤の有する架橋作用によって凝集粒子同士の結合が強化された結果、凝集フロックが形成され、ついには沈降すると考えている。

    本発明における凝集剤は、糖水溶液中に含まれるバイオマス残滓を凝集沈澱させて、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液が得られるのであれば特に限定されないが、例えば、無機凝集剤として、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アンモニウムミョウバン、カリミョウバンなどのアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄などの鉄塩、ポリシリカ鉄などが挙げられる。 また、有機高分子凝集剤としては、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、両性荷電高分子凝集剤があり、具体的には、アクリルアミド系アニオン性ポリマー、アクリルアミド系ノニオン性ポリマー、アクリルアミド系カチオン性ポリマー、アクリルアミド系両性ポリマー、アクリル系カチオン性ポリマー、アクリルアミドーアクリル酸共重合体、アクリルアミドーアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアルキルアミノメタクリレート塩、ポリアミジン塩酸塩、第四級アンモニウム塩ポリマー、キトサンなどが挙げられる。 糖水溶液中に含まれるバイオマス残滓は、粒子が細かく、負電荷を帯びやすい。 このため、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液を得るためには、荷電中和作用だけでなく架橋作用も有する凝集剤が好ましく、特にカチオン性高分子凝集剤が好適に使用され、とりわけ第四級アンモニウム塩ポリマーが好適に使用される。 そして、前記無機凝集剤と前記有機高分子凝集剤を併用することもでき、この併用によって良好な凝集処理を行うことができる場合もある。

    凝集処理時に添加する凝集剤の濃度は、糖水溶液中に含まれるコロイド成分、濁質成分、微粒子などを含むバイオマス残滓を除去または低減できるのであれば特に限定されないが、多すぎると処理コストが高くなり、少なすぎると、粒度分布測定で計測される平均粒径が2μm以上の糖水溶液が得られにくく、また、後述する急速撹拌、緩速撹拌後の静置時間が長くなり、処理コストが高くなる恐れがある。 このため、凝集剤の濃度は、1000〜20000ppmが好ましく、3000〜15000ppmがより好ましく、5000〜10000ppmがさらに好ましい。

    凝集処理には、凝集剤の他にフロック形成助剤やpH調整剤といった凝集助剤を添加しても良い。 上述した凝集剤において、荷電中和作用は充分であるものの架橋作用が不足して凝集フロックの平均粒径が大きくならない場合には、とりわけフロック形成助剤の併用が好ましい。 フロック形成助剤としては、活性ケイ酸やその他の負電荷の微コロイドが挙げられる。 また、pH調整剤としては、硫酸、塩酸、硝酸といった無機酸や、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、消石灰、生石灰、アンモニアといった無機アルカリが挙げられる。

    前記凝集剤および/または前記凝集助剤の添加後、急速撹拌を実施することによってバイオマス残滓表面の荷電が中和されて小さな集塊が形成する。 急速撹拌後、緩速撹拌を実施することによって、これら小さな集塊を互いに衝突合一させて、沈降可能な程度に大きく成長させることができるため好ましい。 そして、緩速撹拌後、静置することによって、コロイド成分、濁質成分、微粒子などを含むバイオマス残滓を沈澱として除去し、上澄みを糖水溶液として分離・使用することも好ましい。 この際、急速撹拌や緩速撹拌の撹拌強度、撹拌時間および静置時間は、前記工程(1)により得られる糖水溶液の水質によって最適条件が異なるため、コストと処理水質とのバランスを勘案して実験的に求めれば良い。

    また、バイオマス残滓を効率的に除去するために、凝集処理を複数回実施する多段処理を行っても良く、それぞれの凝集処理条件は特に限定されず同条件でも異条件でも構わない。

    そして、凝集剤の選択、凝集助剤の添加の可否、撹拌条件などの凝集処理条件は、コストと処理水質とのバランスを勘案し、さらには糖水溶液利用に関する全工程のコストを考慮しながら実験的に決定すれば良い。

    本発明の粒度分布測定には、レーザーゼータ電位計を使用して計測することができる。 レーザーゼータ電位計としては、例えば、大塚電子株式会社製のELS−8000、ELSZ−2などが挙げられる。

    本発明の粒度分布測定に用いるサンプルは、例えば以下のようにして調製・採取すればよい。 まず、糖水溶液100gを6時間静置させる。 次に、糖水溶液の上面から約1cmの位置にピペットを差込んでサンプルを採取する。 なお、凝集処理操作を施した糖水溶液を粒度分布測定する場合には、同操作中に数時間の静置を経て上澄みの回収を行うため、静置時間は、凝集処理操作中の静置時間と合わせて6時間となるようにし、同様にしてサンプルを採取する。

    本発明の精製糖水溶液の製造方法における工程(3)である、工程(2)で得られた糖水溶液を精密濾過膜および/または限外濾過膜に通じて濾過して、糖水溶液を透過側から回収する工程に関して説明する。

    本発明に使用する精密濾過膜とは、平均細孔径が0.01μm〜5mmである膜のことであり、マイクロフィルトレーション、MF膜などと略称されるものである。 また、本発明に使用する限外濾過膜とは、分画分子量が1000〜200000となる膜のことであり、ウルトラフィルトレーション、UF膜などと略称されるものである。 ここで、限外濾過膜は、孔径が小さすぎて膜表面の細孔径を電子顕微鏡等で計測することが困難であり、平均細孔径の代わりに分画分子量という値を孔径の大きさの指標とすることになっている。 分画分子量とは、日本膜学会編 膜学実験シリーズ 第III巻 人工膜編 編集委員/木村尚史・中尾真一・大矢晴彦・仲川勤 (1993 共立出版)p. 92に、『溶質の分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットしたものを分画分子量曲線とよんでいる。 そして阻止率が90%となる分子量を膜の分画分子量とよんでいる。 』とあるように、限外濾過膜の膜性能を表す指標として当業者には周知のものである。

    これら精密濾過膜または限外濾過膜の材質としては、上述したバイオマス残滓の除去が可能であれば、特に限定されるものではないが、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン等の有機材料、あるいはステンレス等の金属、あるいはセラミック等の無機材料が挙げられる。 精密濾過膜または限外濾過膜の材質は、加水分解物の性状、あるいはランニングコストを鑑みて適宜選択すればよいが、取扱の容易性から考えて有機材料であることが好ましく、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンであることが好ましい。

    また、工程(2)で得られる糖水溶液を特に限外濾過膜で濾過することによって、非透過側から糖化に使用した酵素を回収することができる。 この酵素を回収する工程について説明する。 分解処理に使用する酵素は、分子量が10000〜100000の範囲にあり、これらを阻止することができる分画分子量を有する限外濾過膜を使用することで、酵素を非透過側画分より回収することができる。 好ましくは、分画分子量10000〜30000の範囲の限外ろ過膜を使用することで分解処理に使用する酵素を効率的に回収することができる。 使用する限外濾過膜の形態は特に限定されるものではなく、平膜、中空糸膜いずれであってもよい。 回収された酵素は、工程(1)の分解処理に再利用することで、酵素使用量を削減することができる。 こうした糖水溶液の限外濾過膜による濾過を行う際には、その前に糖水溶液を予め精密濾過膜に通じて処理し、バイオマス残滓の中でも限外濾過膜の膜ファウリングを生じさせやすい水溶性高分子やコロイド成分を除去しておくことが好ましい。

    濾過操作としては、水溶性高分子やコロイド成分を効率的に除去するために、精密濾過膜あるいは限外濾過膜を2回以上使用する多段的な濾過でもよく、またその際使用する膜の素材および性状に関しても特に限定されるものではない。

    例えば、精密濾過膜で濾過を行い、その濾液をさらに限外濾過膜で濾過する方法では、精密濾過膜では除くことが出来ない数十nm以下のコロイド成分や、リグニン由来の水溶性の高分子成分(タンニン)や、分解処理で分解したが単糖までにはならずオリゴ糖から多糖レベルで分解が途中である糖類、そして糖を分解処理する際に用いた酵素などを除くことが可能となる。

    本発明は、(1)セルロース含有バイオマスを加水分解し、糖水溶液を製造する工程、(2)(1)で得られた糖水溶液を凝集剤で凝集処理して、粒度分布測定で計測される平均粒径2μm以上の糖水溶液を製造する工程、(3)(2)で得られた糖水溶液を精密濾過膜および/または限外濾過膜に通じて濾過して、糖水溶液を透過側から回収する工程から構成される、精製糖水溶液の製造方法であるが、さらに、(3)で得られた糖水溶液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過して、非透過側から精製糖水溶液を回収し、透過側から発酵阻害物質を除去する工程を設けることができる。

    この工程(3)で得られた糖水溶液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過して、非透過側から精製糖水溶液を回収し、透過側から発酵阻害物質を除去する工程に関して説明する。

    本発明の発酵阻害とは、発酵阻害物質を含むセルロース含有バイオマスを原料とする糖水溶液を発酵原料として使用して化学品を製造する際に、試薬単糖を発酵原料として使用する場合と比較すると、化学品の生産量、蓄積量、あるいは生産速度が低下する現象のことをいう。 こうした発酵阻害の程度は、糖化液中に存在する発酵阻害物質の種類、およびこれらの量により微生物の受ける阻害の程度も異なり、また使用する微生物種、あるいはその生産物である化学品の種類によってもその阻害の程度は異なっているため、本発明においては特段限定されるものではない。

    前記セルロース含有バイオマスの分解処理方法によって得られる糖水溶液には、処理方法あるいはセルロース含有バイオマス原料の種類により量あるいは成分に差があるものの、いずれも発酵阻害物質を含んでおり、該糖水溶液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過して、非透過側から精製糖水溶液を回収し、透過側から発酵阻害物質を除去することにより、発酵阻害物質を除去することができる。 発酵阻害物質とは、セルロース含有バイオマスの分解処理で生成する化合物であり、かつ本発明の製造方法によって得られる精製糖水溶液を原料とする発酵工程において前述の通り阻害的に作用する物質のことを指し、特にセルロース含有バイオマスの酸処理の工程で生成される、有機酸、フラン系化合物、フェノール系化合物に大きく分類される。

    有機酸としては、酢酸、ギ酸、レブリン酸などが具体例として挙げられる。 フラン系化合物としては、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)などが挙げられる。 こうした有機酸あるいはフラン系化合物は、単糖であるグルコースあるいはキシロースの分解による産物である。

    また、フェノール系化合物としては、バニリン、アセトバニリン、バニリン酸、シリンガ酸、没食子酸、コニフェリルアルデヒド、ジヒドロコニフェニルアルコール、ハイドロキノン、カテコール、アセトグアイコン、ホモバニリン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル誘導体(Hibbert's ketones)などが具体例として挙げられ、これらの化合物はリグニンまたはリグニン前駆体に由来する。

    その他、セルロース含有バイオマスとして廃建材あるいは合板などを使用する際は、製材工程で使用された接着剤、塗料などの成分が発酵阻害物質として含まれる場合がある。 接着剤としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリアメラミン共重合樹脂などが挙げられる。 こうした接着剤に由来する発酵阻害物質として、酢酸、ギ酸、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。

    前記工程(1)により得られる糖水溶液には、発酵阻害物質として前記物質のうち少なくとも1種が含まれており、実際には複数種含まれている。 なお、これらの発酵阻害物質は、薄相クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、など一般的な分析手法により検出および定量することが可能である。

    本発明で使用するナノ濾過膜とは、ナノフィルター(ナノフィルトレーション膜、NF膜)とも呼ばれるものであり、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜である。 数ナノメートル程度の微小空隙を有していると考えられる膜で、主として、水中の微小粒子や分子、イオン、塩類等を阻止するために用いられる。

    本発明で使用する逆浸透膜とはRO膜とも呼ばれるものであり、「1価のイオンを含めて脱塩機能を有する膜」と一般的に定義される膜であり、数オングストロームから数ナノメートル程度の超微小空隙を有していると考えられる膜で、主として海水淡水化や超純水製造などイオン成分除去に用いられる。

    また、本発明における「ナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過する」とは、セルロース含有バイオマスの分解処理により得られた糖水溶液および/またはその由来物を、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過し、溶解している糖、特にグルコースやキシロースといった単糖の糖水溶液を非透過側に阻止または濾別し、発酵阻害物質を透過液、あるいは濾液として透過させることを意味する。

    本発明で使用するナノ濾過膜および/または逆浸透膜の性能を評価する方法として、糖水溶液に含まれる対象化合物(発酵阻害物質、あるいは単糖など)の透過率(%)を算出することで評価できる。 透過率(%)の算出方法を式1に示す。

    透過率(%)=(透過側の対象化合物濃度/非透過液の対象化合物濃度)×100・・・(式1)
    式1における対象化合物濃度は、高い精度と再現性を持って測定可能な分析手法であれば限定されないが、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどが好ましく使用できる。 本発明で使用するナノ濾過膜および/または逆浸透膜は、対象化合物が単糖である場合、その透過率が低い方が好ましく、その一方で対象化合物が発酵阻害物質である場合、その透過率が高いものが好ましい。

    また、ナノ濾過膜および逆浸透膜の透過性能としては、0.3MPaの圧力で500mg/L塩化ナトリウム水溶液を供給して濾過させた時に、膜単位面積当たりの透過流量が0.5m /m /day以上の膜が好ましく用いられる。 膜単位面積当たりの透過流量(膜透過流束またはフラックス)の評価方法としては、透過液量および透過液量を採水した時間および膜面積を測定することで、式2によって算出することができる。

    膜透過流束(m /m /day)=透過液量/膜面積/採水時間・・・(式2)
    一般的に、ナノ濾過膜は逆浸透膜に比べて孔径が大きい部類に峻別されるため、ナノ濾過膜を用いた場合は、発酵阻害物質を透過させ除外する物質重量が逆浸透膜に比べて大きい反面、目的産物である単糖についても透過側に損失する重量も逆浸透膜に比べて大きくなると考えられる。 特に糖濃度が高い場合には本傾向が強く現れる。 一方、逆浸透膜を用いた場合は、孔径が小さいことからナノ濾過膜に比べて分子量の大きい阻害物を除去できる重量が減少してしまうと考えられる。 従って、上記で示してきた処理により得られた糖水溶液の発酵阻害物の重量の大小、および主要な発酵阻害物の分子量に応じて、ナノ濾過膜および逆浸透膜の中から適切な膜を選択して利用することが好ましい。 選択する膜の種類は1種に限らず糖水溶液の組成に応じてナノ濾過膜および逆浸透膜の中から組み合わせて多種類の膜を利用して濾過しても良い。

    なお、ナノ濾過膜で精製糖水溶液を得る場合、ナノ濾過膜の濃縮側に捕捉されていた単糖の精製が進んで濃度が高まるにつれて、単糖が濾液側に損失する傾向が急激に高くなることが見出された。 一方、逆浸透膜で精製する場合、濃縮側の単糖濃度が高まっても単糖の損失傾向は殆どゼロに近いまま一定であったものの、発酵阻害物質除去の観点からはナノ濾過膜の方が逆浸透膜よりも性能が優れていた。 そこで、逆浸透膜に比べて発酵阻害物質をより多く除去できるナノ濾過膜で濾液への糖損失が大きいと判断する濃度まで精製を行い、さらにナノ濾過膜よりは発酵阻害物質の除去効率が少し劣るが単糖を損失無く濃縮することが可能な逆浸透膜で精製工程を続けて行うことで、単糖の濾液側への損失を抑制しながら発酵阻害物質も多く除去できることが可能であることが見出された。 したがって、本発明においてナノ濾過膜と逆浸透膜を組み合わせて精製糖水溶液を得る場合、その組み合わせには特に限定はないが、工程(3)で得られる糖水溶液をまずナノ濾過膜で濾過し、得られる濾過液をさらに逆浸透膜で濾過することが好ましい。

    本発明で使用されるナノ濾過膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができるが、前記1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の素材を含む膜であってもよい。 またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。 複合膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載の、ポリスルホンを膜素材とする支持膜にポリアミドの機能層からなるナノフィルターを構成させた複合膜を用いることができる。

    これらの中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れたポテンシャルを有する、ポリアミドを機能層とした複合膜が好ましい。 操作圧力に対する耐久性と、高い透水性、阻止性能を維持できるためには、ポリアミドを機能層とし、それを多孔質膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適している。 また、ポリアミド半透膜としては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの機能層を支持体に有してなる複合半透膜が適している。

    ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分としては、例えば、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ピリジンカルボン酸などの芳香族カルボン酸が挙げられるが、製膜溶媒に対する溶解性を考慮すると、トリメシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびこれらの混合物がより好ましい。

    前記ポリアミドを構成する単量体の好ましいアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、メチレンビスジアニリン、4,4'−ジアミノビフェニルエーテル、ジアニシジン、3,3',4−トリアミノビフェニルエーテル、3,3',4,4'−テトラアミノビフェニルエーテル、3,3'−ジオキシベンジジン、1,8−ナフタレンジアミン、m(p)−モノメチルフェニレンジアミン、3,3'−モノメチルアミノ−4,4'−ジアミノビフェニルエーテル、4,N,N'−(4−アミノベンゾイル)−p(m)−フェニレンジアミン−2,2'−ビス(4−アミノフェニルベンゾイミダゾール)、2,2'−ビス(4−アミノフェニルベンゾオキサゾール)、2,2'−ビス(4−アミノフェニルベンゾチ� �ゾール)等の芳香環を有する一級ジアミン、ピペラジン、ピペリジンまたはこれらの誘導体等の二級ジアミンが挙げられ、中でもピペラジンまたはピペリジンを単量体として含む架橋ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜は耐圧性、耐久性の他に、耐熱性、耐薬品性を有していることから好ましく用いられる。 より好ましくは前記架橋ピペラジンポリアミドまたは架橋ピペリジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドであり、さらに好ましくは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドである。 また、前記化学式(1)中、n=3のものが好ましく用いられる。 架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ前記化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とするナノ濾過膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載のものが挙げられ、具体例として、架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)中、n=3のものを構成成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製の架橋ピペラジンポリアミド系ナノ濾過膜のUTC60が挙げられる。

    ナノ濾過膜は一般にスパイラル型の膜エレメントとして使用されるが、本発明で用いるナノ濾過膜も、スパイラル型の膜エレメントとして好ましく使用される。 好ましいナノ濾過膜エレメントの具体例としては、例えば、酢酸セルロース系のナノ濾過膜であるGE Osmonics社製ナノ濾過膜のGEsepa、ポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200、NF−270またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610が挙げられ、より好ましくはポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機 能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610であり、さらに好ましくは架橋ピペラジンポリアミドを主成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610である。

    ナノ濾過膜による濾過は、工程(3)で得られた糖水溶液を、圧力0.1MPa以上8MPa以下の範囲でナノ濾過膜に供給することが好ましい。 圧力が0.1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるおそれがある。 また、圧力が0.5MPa以上6MPa以下で用いれば、膜透過流束が高いことから、糖溶液を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、1MPa以上4MPa以下で用いることが特に好ましい。

    本発明で使用される逆浸透膜の素材としては、酢酸セルロール系のポリマーを機能層とした複合膜(以下、酢酸セルロース系の逆浸透膜ともいう)またはポリアミドを機能層とした複合膜(以下、ポリアミド系の逆浸透膜ともいう)が挙げられる。 ここで、酢酸セルロース系のポリマーとしては、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロースの有機酸エステルの単独もしくはこれらの混合物並びに混合エステルを用いたものが挙げられる。 ポリアミドとしては、脂肪族および/または芳香族のジアミンをモノマーとする線状ポリマーまたは架橋ポリマーが挙げられる。

    本発明で使用される逆浸透膜の具体例としては、例えば、東レ株式会社製ポリアミド系逆浸透膜モジュールである低圧タイプのSU−710、SU−720、SU−720F、SU−710L、SU−720L、SU−720LF、SU−720R、SU−710P、SU−720P、TMG10、TMG20−370、TMG20−400の他、高圧タイプのSU−810、SU−820、SU−820L、SU−820FA、同社酢酸セルロース系逆浸透膜SC−L100R、SC−L200R、SC−1100、SC−1200、SC−2100、SC−2200、SC−3100、SC−3200、SC−8100、SC−8200、日東電工(株)製NTR−759HR、NTR−729HF、NTR−70SWC、ES10−D� ��ES20−D、ES20−U、ES15−D、ES15−U、LF10−D、アルファラバル製RO98pHt、RO99、HR98PP、CE4040C−30D、GE製GE Sepa、Filmtec製BW30−4040、TW30−4040、XLE−4040、LP−4040、LE−4040、SW30−4040、SW30HRLE−4040などが挙げられる。

    本発明においては、ポリアミド系の材質を有する逆浸透膜が好ましく使用される。 酢酸セルロース系の膜は、長時間使用時に前工程で使用する酵素、特にセルラーゼ成分の一部が透過して膜素材であるセルロースを分解する恐れがあるためである。

    膜形態としては、平膜型、スパイラル型、中空糸型など適宜の形態のものが使用できる。

    ポリアミドを機能層とする逆浸透膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分やアミン成分は、上述したポリアミドを機能層とするナノ濾過膜と同様である。

    逆浸透膜による濾過は、工程(3)で得られた糖水溶液を、圧力1MPa以上8MPa以下の範囲で逆浸透膜に供給することが好ましい。 圧力が1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるおそれがある。 また、濾過圧が2MPa以上7MPa以下で用いれば、膜透過流束が高いことから、糖溶液を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、3MPa以上6MPa以下で用いることが特に好ましい。

    発酵阻害物質は、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜を透過することにより糖水溶液から除去されるが、前記発酵阻害物質の中でも、HMF、フルフラール、酢酸、ギ酸、レブリン酸、バニリン、アセトバニリンまたはシリンガ酸が好ましく透過・除去されうる。 一方、糖水溶液に含まれる糖分は、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜の非透過側に阻止または濾別される。 糖分としては、グルコース、キシロースといった単糖が主成分であるが、2糖、オリゴ糖など工程(1)の分解処理の工程において、単糖まで完全に分解されなかった糖成分も含まれてなる。

    ナノ濾過膜および/または逆浸透膜の非透過側から得られる精製糖水溶液は、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じる前の糖水溶液に対して、特に発酵阻害物含量が初期含量に対して低減している。 該精製糖水溶液に含まれる糖成分は、セルロース含有バイオマスに由来する糖であり、本質的には、工程(1)の分解処理で得られる糖成分と大きな変化はない。 すなわち、本発明における精製糖水溶液に含まれる単糖としてはグルコースおよび/またはキシロースが主成分として構成される。 グルコースとキシロースの比率は、工程(1)の分解処理の工程により変動するものであり本発明で限定されるものではない。 すなわち、ヘミセルロースを主として分解処理を行った場合は、キシロースが主要な単糖成分となり、ヘミセルロース分解後、セルロース成分のみを分離して分解処理を行った場合は、グルコースが主要な単糖成分となる。 また、ヘミセルロースの分解、およびセルロースの分解を、特段の分離を行わない場合は、グルコース、およびキシロースが主要な単糖成分として含まれる。

    なお、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じる前に、一旦エバポレーターに代表される濃縮装置を用いて濃縮してもよく、また、精製糖水溶液を、さらに、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜で濾過して濃度を高めてもよいが、濃縮のためのエネルギー削減という観点から、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜で濾過して精製糖水溶液濃度をさらに高める工程が好ましく採用できる。 この濃縮工程で使用する膜とは被処理水の浸透圧以上の圧力差を駆動力にイオンや低分子量分子を除去する濾過膜であり、例えば酢酸セルロースなどのセルロース系や、多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を設けた膜などが採用できる。 ナノ濾過膜および/または逆浸透膜表面の汚れすなわちファウリングを抑制するために、酸ハライド基と反応する反応性基を少なくとも1個有する化合物の水溶液をポリアミド分離機能層の表面に被覆して、分離機能層表面に残存する酸ハロゲン基と該反応性基との間で共有結合を形成させた主に下水処理用の低ファウリング膜なども好ましく採用できる。 また、濃縮に使用するナノ濾過膜および逆浸透膜の具体例は前記のナノ濾過膜および逆浸透膜に準ずる。

    次に、本発明の精製糖水溶液の製造方法で得られた精製糖水溶液を発酵原料として使用し、化学品を製造する方法を示す。

    本発明で得られた精製糖水溶液を発酵原料として使用することにより、化学品を製造することが可能である。 本発明で得られる精製糖水溶液は、微生物あるいは培養細胞の生育のための炭素源であるグルコースおよび/またはキシロースを主成分として含んでおり、一方でフラン化合物、有機酸、芳香族化合物などの発酵阻害物質の含量が極めて少ないために、発酵原料、特に炭素源として有効に使用することが可能である。

    本発明の化学品の製造方法で使用される微生物あるいは培養細胞は、例えば、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌、動物細胞、昆虫細胞などが挙げられる。 使用する微生物や細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。 特に、セルロース含有バイオマスに由来する糖水溶液には、キシロースといったペントースを含むため、ペントースの代謝経路を強化した微生物が好ましく使用できる。

    培地としては、精製糖水溶液の他に、窒素源、無機塩類、さらに必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する液体培地が好ましく使用される。 本発明における精製糖水溶液には、炭素源として、グルコース、キシロースなど微生物が利用可能な単糖を含んでいるが、場合によっては、さらに炭素源として、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなどを追加して、発酵原料として使用してもよい。 窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。 無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。

    微生物が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加すればよい。 また、消泡剤を必要に応じて使用してもよい。

    微生物の培養は、通常、pH4−8、温度20−40℃の範囲で行われる。 培養液のpHは、無機あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウム、アンモニアガスなどによって、通常、pH4−8範囲内のあらかじめ定められた値に調節する。 酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、あるいは培養を加圧する、攪拌速度を上げる、通気量を上げるなどの手段を用いることができる。

    本発明の精製糖水溶液の製造方法で得られた精製糖水溶液を発酵原料として使用する化学品の製造方法としては、当業者に公知の発酵培養方法が採用されうるが、生産性の観点から、国際公開第2007/097260号パンフレットに開示される連続培養方法が好ましく採用される。

    製造される化学品としては、上記微生物や細胞が培養液中に生産する物質であれば制限はない。 製造される化学品の具体例としては、アルコール、有機酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。 例えば、アルコールとしては、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなど、有機酸としては、酢酸、L−乳酸、D−乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、核酸であれば、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、またカダベリンなどのジアミン化合物を挙げることができる。 また、本発明の精製糖水溶液の製造方法で得られた精製糖水溶液は、酵素、抗生物質、組換えタンパク質のような物質の生産に適用することも可能である。

    以下、本発明の精製糖水溶液の製造方法に関し、さらに詳細に説明するために実施例を挙げて説明する。 しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されない。

    (参考例1)粒度分布測定による平均粒径の計測方法 粒度分布測定には、大塚電子株式会社製のELS−8000を用い、得られる散乱強度分布ヒストグラムの粒径値と散乱強度から算術平均により平均粒径を求めた。

    本実施例、比較例では、粒度分布測定に用いるサンプルの調製及び測定セルへの注入は以下の通り行った。 各工程で得られた糖水溶液100gを6時間静置させた。 静置後、糖水溶液の上面から約1cmの位置にピペットを差込んでサンプルを採取し、ELS−8000附属の粒径測定用セルに静かに注いだ。 なお、凝集処理操作を施した糖水溶液を粒度分布測定する場合には、同操作中に6時間の静置を経て上澄みの回収を行っているため、この回収された上澄みをELS−8000附属の粒径測定用セルに静かに注いだ。

    (参考例2)単糖濃度の分析方法 得られた糖水溶液に含まれる単糖(グルコース及びキシロース)濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。

    カラム:Luna NH2(Phenomenex社製)
    移動相:超純水:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/min)
    反応液:なし
    検出方法:RI(示差屈折率)
    温度:30℃
    (参考例3)発酵阻害物質濃度の分析方法 糖水溶液に含まれるフラン系発酵阻害物質(HMF、フルフラール)、およびフェノール系発酵阻害物質(バニリン、アセトバニリン)は下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。

    カラム:Synergi HidroRP 4.6mm×250mm(Phenomenex製)
    移動相:アセトニトリル−0.1%H PO (流速1.0mL/min)
    検出方法:UV(283nm)
    温度:40℃
    糖水溶液に含まれる有機酸系発酵阻害物質(酢酸、ギ酸)は下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。

    カラム:Shim-Pack SPR-HとShim−Pack SCR101H(株式会社島津製作所製)の直列 移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
    反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
    検出方法:電気伝導度 温度:45℃
    (参考例4)濁度の測定方法 糖水溶液の濁度は、HACH社製室内用高度濁度計(2100N)を用いて定量した。 なお、この濁度計は、1000NTU以下の濁度でなければ測定できないため、必要に応じて糖水溶液を蒸留水で希釈し、測定を行った。

    (参考例5)セルロース含有バイオマスの希硫酸処理・酵素処理による分解処理工程 工程(1)のセルロース含有バイオマスを分解処理する工程に関し、0.1〜15重量%の希硫酸および酵素を使用するセルロース含有バイオマスの加水分解方法について例を挙げて説明する。

    セルロース含有バイオマスとして、稲藁を使用した。 前記セルロース含有バイオマスを硫酸1%水溶液に浸し、150℃で30分オートクレーブ処理(日東高圧製)した。 処理後、固液分離を行い、硫酸水溶液(以下、希硫酸処理液)と硫酸処理セルロースに分離した。 次に硫酸処理セルロースと固形分濃度が10重量%となるように希硫酸処理液と攪拌混合した後、水酸化ナトリウムによって、pHを5付近に調整した。 この混合液に、セルラーゼとしてトリコデルマセルラーゼ(シグマ・アルドリッチ・ジャパン)およびノボザイム188(アスペルギルスニガー由来βグルコシダーゼ製剤、シグマ・アルドリッチ・ジャパン)を添加し、50℃で3日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行って、糖水溶液を得た。 糖水溶液の濁度は9,000NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径は1.0μmであった。

    なお、得られた糖水溶液中の単糖及び発酵阻害物質濃度を分析するために、3000Gで遠心分離して固液分離を行った。 その結果、糖水溶液に含まれる単糖および発酵阻害物質の組成はそれぞれ表1の通りであった。

    (参考例6)セルロース含有バイオマスの水熱処理・酵素処理による分解処理工程 工程(1)のセルロース含有バイオマスを分解処理する工程に関し、水熱処理および酵素を使用するセルロース含有バイオマスの加水分解方法について例を挙げて説明する。

    セルロース含有バイオマスとして、稲藁を使用した。 前記セルロース含有バイオマスを水に浸し、撹拌しながら180℃で20分間オートクレーブ処理(日東高圧製)した。 その際の圧力は10MPaであった。 処理後は処理バイオマス成分と溶液成分とを固液分離し、固形分の処理バイオマス成分を得た。

    次に処理バイオマス成分の含水率を測定後、絶乾処理バイオマス換算で固形分濃度が15重量%となるようにRO水を添加し、さらにセルラーゼとしてトリコデルマセルラーゼ(シグマ・アルドリッチ・ジャパン)およびノボザイム188(アスペルギルスニガー由来βグルコシダーゼ製剤、シグマ・アルドリッチ・ジャパン)を添加し、50℃で3日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行って糖水溶液を得た。 糖水溶液の濁度は10,000NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径は1.1μmであった。

    なお、得られた糖水溶液中の単糖及び発酵阻害物質濃度を分析するために、3000Gで遠心分離して固液分離を行った。 その結果、糖水溶液に含まれる単糖および発酵阻害物質の組成は表1の通りであった。

    (参考例7)標準フラックスの測定および標準フラックス低下率の測定 精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜および逆浸透膜は、膜の孔径が異なり、標準的な膜濾過条件がそれぞれ異なるため、以下の条件でそれぞれの膜の単位時間、単位膜面積当たりの透過液量を測定し、標準フラックスを求めた。

    精密濾過膜および限外濾過膜は、10kPaの圧力で、温度25℃の蒸留水を供給して全濾過させ、単位時間、単位膜面積当たりの透過液量を測定し、式3で算出した。

    ナノ濾過膜は、0.35MPaの圧力で、温度25℃、pH6.5に調整した500ppm塩化ナトリウム水溶液を供給してクロスフロー濾過させ、単位時間、単位膜面積当たりの透過液量を測定し、式3で算出した。 なお、クロスフロー濾過時の膜面線速度は、30cm/秒となるようにした。

    逆浸透膜は、0.76MPaの圧力で、温度25℃、pH6.5に調整した500ppm塩化ナトリウム水溶液を供給してクロスフロー濾過させ、単位時間、単位膜面積当たりの透過液量を測定し、式3で算出した。 なお、クロスフロー濾過時の膜面線速度は、30cm/秒となるようにした。

    標準フラックス=透過液量/膜面積/採水時間・・・・・・・・・・・・・・(式3)
    精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜および逆浸透膜は、糖水溶液を濾過すると、糖水溶液中の水溶性高分子成分、コロイド成分、濁質成分および/または微粒子によって膜ファウリングが起こり、標準フラックスが低下する。 この標準フラックスの低下は、濾過量が多くなるほど顕著になる。

    そこで、糖水溶液を1L濾過した後の標準フラックスと、糖水溶液を2L濾過した後の標準フラックスを比較することにより、膜ファウリングの進行の程度を見積もることができる。 具体的には、式4で標準フラックス低下率として算出することができる。 そして、式4で得られる標準フラックス低下率が小さい膜ほど、長期間安定して濾過を継続できることを意味する。

    標準フラックス低下率(%)=(1−2L濾過後の標準フラックス/1L濾過後の標準フラックス)×100・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式4)
    (参考例8)凝集剤の選定 本実施例、比較例では、以下の6種類の凝集剤(凝集剤A〜F)を使用した。
    ・凝集剤A:第四級アンモニウム塩ポリマー“センカフロックDE−30(センカ株式会社製)”
    ・凝集剤B:第四級アンモニウム塩ポリマー“センカフロックDE−40(センカ株式会社製)”
    ・凝集剤C:ポリ塩化アルミニウム(多木化学株式会社製)
    ・凝集剤D:ポリシリカ鉄“PSI−100(水道機工株式会社製)”
    ・凝集剤E:アクリル系ポリマー“サンフロックC−109P(三洋化成株式会社製)”
    ・凝集剤F:ポリメタクリル酸エステル“タキフロックC−410(多木化学株式会社製)”
    (実施例1)
    以下の3つの工程を経て精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Aを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は420NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径は3.2μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、200kPaの圧力で、温度25℃で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させ、透過側から10Lの糖水溶液を回収した。 ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は、30cm/秒となるようにし、標準フラックス低下率を求めるために、1L濾過した後に精密濾過膜を取り出して標準フラックス(1L濾過後の標準フラックス)を測定し、再度精密濾過膜をセットして、糖水溶液をもう1L濾過した後に精密濾過膜を取り出して標準フラックス(2L濾過後の標準フラックス)を測定した。 また、精密濾過膜としては、東レ株式会社製精密濾過膜“メンブレイ(登録商標)TMR140”に使用されている公称孔径0.08μmのポリフッ化ビニリデン製平膜を切り出して使用した。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は20(%)と小さく、長期安定的に糖水溶液を供給できることが分かった。 なお、得られた糖水溶液の濁度は1NTU以下と小さく、精密濾過膜によって濁質が低減されていた。

    (実施例2)
    以下の3つの工程を経て精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例5に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度9000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.0μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Aを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は300NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径が3.2μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は16(%)と小さく、長期安定的に糖水溶液を供給できることが分かった。

    (実施例3)
    以下の3つの工程を経て精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Bを10000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は200NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が3.6μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は11(%)と小さく、長期安定的に糖水溶液を供給できることが分かった。

    (実施例4)
    以下の3つの工程を経て精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Cを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は1400NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が2.3μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は29(%)と小さく、長期安定的に糖水溶液を供給できることが分かった。

    (実施例5)
    以下の3つの工程を経て精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Cを10000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は1100NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が2.6μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は26(%)と小さく、長期安定的に糖水溶液を供給できることが分かった。

    (実施例6)
    以下の3つの工程を経て精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Aを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、3時間静置した後、上澄み16Lを回収した。 得られた上澄み16Lに、凝集剤Cを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み14Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は60NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が5.0μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は7(%)と小さく、長期安定的に糖水溶液を供給できることが分かった。

    (実施例7)
    以下の3つの工程を経て精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Bを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は200NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が3.6μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、200kPaの圧力で、温度25℃で限外濾過膜に供給してクロスフロー濾過させ、透過側から10Lの糖水溶液を回収した。 ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は、30cm/秒となるようにし、標準フラックス低下率を求めるために、1L濾過した後に限外濾過膜を取り出して標準フラックス(1L濾過後の標準フラックス)を測定し、再度限外濾過膜をセットして、糖水溶液をもう1L濾過した後に限外濾過膜を取り出して標準フラックス(2L濾過後の標準フラックス)を測定した。 また、限外濾過膜としては、Hydranautics社製限外濾過膜“DairyUF10k”に使用されている分画分子量10000Daのポリエーテルスルホン製平膜を切り出して使用した。 この限外濾過膜の標準フラックス低下率は16(%)と小さく、長期安定的に糖水溶液を供給できることが分かった。

    (実施例8)
    実施例1の工程(3)後の糖水溶液、すなわち精密濾過膜によるクロスフロー濾過で回収された糖水溶液10Lを、3MPaの圧力で、温度25℃でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 非透過側から精製糖水溶液を回収しつつ、透過側から発酵阻害物質を含む透過水を除去して、2.5Lの精製糖水溶液を得た。 この操作は、実施例1の工程(3)で得られた糖水溶液10Lを、ナノ濾過膜で4倍濃縮したことになる。 ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は、30cm/秒となるようにし、標準フラックス低下率を求めるために、1L濾過した後にナノ濾過膜を取り出して標準フラックス(1L濾過後の標準フラックス)を測定し、再度ナノ濾過膜をセットして、糖水溶液をもう1L濾過した後にナノ濾過膜を取り出して標準フラックス(2L濾過後の標準フラックス)を測定した。 また、ナノ濾過膜としては、東レ株式会社製ナノ濾過膜“UTC60”を使用した。 このナノ濾過膜の標準フラックス低下率は4(%)と小さく、長期安定的に精製糖水溶液を製造できることが分かった。

    得られた精製糖水溶液を蒸留水で4倍に希釈し、実施例1の工程(3)後の糖水溶液と成分を比較した。 ナノ濾過膜濾過後の糖水溶液中の単糖および発酵阻害物質濃度の、実施例1の工程(3)後の糖水溶液中の単糖および発酵阻害物質濃度に対する濃度比は表3の通りであり、ナノ濾過膜を用いることによって、単糖濃度を維持しつつ、発酵阻害物質濃度を低減することが分かった。

    (実施例9)
    実施例1の工程(3)後の糖水溶液、すなわち精密濾過膜によるクロスフロー濾過で回収された糖水溶液10Lを、3MPaの圧力で、温度25℃で逆浸透膜に供給してクロスフロー濾過させた。 非透過側から精製糖水溶液を回収しつつ、透過側から発酵阻害物質を含む透過水を除去して、2.5Lの精製糖水溶液を得た。 この操作は、実施例1の工程(3)で得られた糖水溶液10Lを、逆浸透膜で4倍濃縮したことになる。 ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は、30cm/秒となるようにし、標準フラックス低下率を求めるために、1L濾過した後に逆浸透膜を取り出して標準フラックス(1L濾過後の標準フラックス)を測定し、再度逆浸透膜をセットして、糖水溶液をもう1L濾過した後に逆浸透膜を取り出して標準フラックス(2L濾過後の標準フラックス)を測定した。 また、逆浸透膜としては、東レ株式会社製ポリアミド系逆浸透膜モジュール “TMG10”に使用されているポリアミド系逆浸透膜を切り出して使用した。 この逆浸透膜の標準フラックス低下率は7(%)と小さく、長期安定的に精製糖水溶液を製造できることが分かった。

    得られた精製糖水溶液を蒸留水で4倍に希釈し、実施例1の工程(3)後の糖水溶液と成分を比較した。 逆浸透膜濾過後の糖水溶液中の単糖および発酵阻害物質濃度の、実施例1の工程(3)後の糖水溶液中の単糖および発酵阻害物質濃度に対する濃度比は表3の通りであり、逆浸透膜を用いることによって、単糖濃度を維持しつつ、発酵阻害物質濃度を低減することができることが分かった。

    (比較例1)
    凝集剤Aの替わりに凝集剤Dを用いた以外は実施例1と同様にして精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Dを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は2800NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径は1.3μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は40(%)と大きく、長期安定的に糖水溶液を供給できないことが分かった。

    (比較例2)
    凝集剤Aの替わりに凝集剤Dを用いた以外は実施例2と同様にして精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例5に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度9000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.0μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Dを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は2500NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径は1.4μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は39(%)と大きく、長期安定的に糖水溶液を供給できないことが分かった。

    (比較例3)
    凝集剤Aの替わりに凝集剤Eを用いた以外は実施例1と同様にして精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Eを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は3000NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径は1.8μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は42(%)と大きく、長期安定的に糖水溶液を供給できないことが分かった。

    (比較例4)
    凝集剤Aの替わりに凝集剤Fを用いた以外は実施例1と同様にして精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Fを5000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は3000NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径は1.2μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は45(%)と大きく、長期安定的に糖水溶液を供給できないことが分かった。

    (比較例5)
    凝集剤を用いなかった以外は実施例1と同様にして精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)は実施しなかった。

    工程(3)として、工程(1)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は65(%)と大きく、長期安定的に糖水溶液を供給できないことが分かった。

    (比較例6)
    凝集剤Aの替わりに平均孔径20μmの不織布による濾過を行った以外は実施例1と同様にして精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)は実施せず、工程(1)で得られた糖水溶液を、平均孔径20μmのポリエステル製不織布“MF−180”(日本バイリーン社製、目付量:180g/m 、通気度:2cc/cm /s)で濾過し、糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は2200NTU、粒度分布測定で計測された平均粒径は1.0μmであった。

    工程(3)として、平均孔径20μmの不織布による濾過で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は36(%)と大きく、長期安定的に糖水溶液を供給できないことが分かった。
    (比較例7)
    凝集剤Aの濃度を3000ppmとした以外は実施例1と同様にして精製糖水溶液を製造した。

    工程(1)として、3000Gの遠心分離を実施しなかった以外は参考例6に記載した方法を採用し、表1の通りの単糖および発酵阻害物質を含む濁度10000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.1μmの糖水溶液20Lを得た。

    工程(2)として、次の凝集処理操作を施した。 すなわち、工程(1)で得られた糖水溶液に、凝集剤Aを3000ppmとなるように添加するとともに、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した。 pH調整後、150rpmで30分間急速撹拌し、次いで40rpmで30分間緩速撹拌し、6時間静置した後、上澄み16Lを凝集処理された糖水溶液として回収した。 得られた糖水溶液の濁度は2000NTU、粒度分布測定で計測される平均粒径が1.8μmであった。

    工程(3)として、工程(2)で得られた糖水溶液を、実施例1と同様の方法で精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。 この精密濾過膜の標準フラックス低下率は35(%)と大きく、長期安定的に糖水溶液を供給できないことが分かった。
    次に、本発明により得られる精製糖液を発酵原料として使用した化学品の製造方法に関し、さらに詳細に説明するために化学品としてL−乳酸、エタノール、カダベリン、D−乳酸、コハク酸について実施例を挙げて説明する。 しかしながら、本発明により製造されうる化学品は、以下の実施例に限定されない。
    (参考例9)化学品の濃度測定方法[L−乳酸、D−乳酸]
    L−乳酸またはD−乳酸蓄積濃度測定にはHPLC法により乳酸量を測定することで確認した。
    カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)
    移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
    反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
    検出方法:電気伝導度温度:45℃。
    [エタノール]
    エタノール蓄積濃度の測定には、ガスクロマトグラフ法により定量した。 Shimadzu GC-2010キャピラリーGC TC-1(GL science) 15 meter L.*0.53 mm ID, df1.5 μmを用いて、水素炎イオン化検出器により検出・算出して評価した。
    [カダベリン]
    カダベリンは以下に示すHPLC法によって評価した。
    使用カラム:CAPCELL PAK C18(資生堂)
    移動相:0.1%(w/w)リン酸水溶液:アセトニトリル=4.5:5.5
    検出:UV360nm
    サンプル前処理:分析サンプル25μlに内標として、1,4−ジアミノブタン(0.03M)を25μl、炭酸水素ナトリウム(0.075M)を150μlおよび2,4−ジニトロフルオロベンゼン(0.2M)のエタノール溶液を添加混合し、37℃の温度で1時間保温する。
    上記の反応溶液50μlを1mlアセトニトリルに溶解後、10,000rpmで5分間遠心した後の上清10μlをHPLC分析した。

    [コハク酸]
    コハク酸蓄積濃度の測定については、HPLC(島津製作所 LC10A、RIモニター:RID-10A、カラム:アミネックスHPX-87H)で分析した。 カラム温度は50℃、0.01N H SO でカラムを平衡化した後、サンプルをインジェクションし、0.01N H SO で溶出して分析を行った。
    (参考例10)L−乳酸発酵培地には表5に示すL−乳酸菌発酵培地を用い、高圧蒸気滅菌処理(121℃、15分)して用いた。 乳酸菌としては、原核微生物であるラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)JCM7638株を用い、培地として表5に示す組成の乳酸菌乳酸発酵培地を用いた。 発酵液に含まれるL−乳酸は、参考例2と同様の方法で評価した。 また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。
    ラクトコッカス ラクティスJCM7638株を、試験管で表4に示す5mlの窒素ガスでパージした乳酸発酵培地で24時間、37℃の温度で静置培養した(前培養)。 得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mlに植菌し、48時間、37℃の温度で静置培養した(本培養)。

    (参考例11)エタノール発酵酵母株(OC2、サッカロマイセス・セレビシエ、ワイン酵母)によるエタノール発酵を検討した。 培地は、炭素源としてグルコース、他成分としてYeast Synthetic Drop−out Medium Supplement Without Tryptophan(シグマ・アルドリッチ・ジャパン、表6ドロップアウトMX)、Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and Ammonium Sulfate(Difco、Yeast NTbase)および硫酸アンモニウム(硫安)を表6に示す比率で混合した。 培地はフィルター滅菌(ミリポア、ステリカップ0.22μm)を行い発酵に用いた。 グルコース濃度の定量は、グルコーステスト和光(和光純薬工業)を使用した。 また、各培養液中に産生されたエタノール量はガスクロマトグラフ法により測定した。
    OC2株を試験管で5mlの発酵用培地(前培養培地)で一晩振とう培養した(前培養)。 前培養液より酵母を遠心分離により回収し、滅菌水15mLでよく洗浄した。 洗浄した酵母を、表6記載組成の各培地100mlに植菌し500ml容坂口フラスコで24時間振とう培養した(本培養)。

    (参考例12)カダベリン発酵 カダベリンを生産させる微生物として、特開2004−222569号公報に記載のコリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株用い、グルコースを資化するカダベリンの発酵を検討した。 培地は、炭素源として表7に示すグルコース組成になり、かつ3Mのアンモニア水でpHを7.0になるように糖液を調製し、カダベリン発酵培地を調整した。 生産物であるカダベリンの濃度の評価はHPLC法により測定した。 また、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬社製)を用いた。
    コリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株を、試験管で5mlのカナマイシン(25μg/ml)を添加したカダベリン発酵培地添加で一晩振とう培養した(前培養)。 前培養液よりコリネバクテリウム・グルタミカムTR−CAD1株を遠心分離により回収し、滅菌水15mLでよく洗浄した。 洗浄した菌体を、上記培地100mlに植菌し500ml容坂口フラスコで24時間振とう培養した(本培養)。

    (参考例13)D−乳酸発酵微生物として、特開2007−074939記載の酵母NBRC10505/pTM63株を用い、培地として表8に示す組成のD−乳酸生産培地を用い、生産物であるD−乳酸の濃度の評価はHPLC法により測定した。 また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬社製)を用いた。
    NBRC10505/pTM63株を、試験管で5mlのD−乳酸生産培地で一晩振とう培養した(前培養)。 得られた培養液を、新鮮なD−乳酸生産培地50mlに植菌し、500ml容坂口フラスコで24時間、30℃の温度で振とう培養した(本培養)。

    (参考例14)コハク酸発酵コハク酸の生産能力のある微生物として、アナエロビオスピリラム サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)ATCC53488株によるコハク酸の発酵を行った。 表9の組成からなる種培養用培地100mLを、125mL容三フラスコに入れ加熱滅菌した。
    嫌気グローブボックス内で、30mM Na CO 1mLと180mM H SO 0.15mLを加え、さらに、0.25g/L システイン・HCl、0.25g/L Na Sからなる還元溶液0.5mLを加えた後、ATCC53488株を接種し、39℃で24時間静置培養した(本培養)。

    (実施例10)
    実施例1の工程(1)で得られた糖水溶液と実施例9のナノ濾過膜濾過後の糖水溶液各1Lをロータリーエバポレーター(東京理化社製)にて減圧下(200hPa)で水を蒸発させて約3倍程度に濃縮したもの、ならびに、比較として試薬グルコースを使用し、参考例10から14の発酵条件で各培地成分の濃度条件下で各発酵に適した培地成分を調製して本培養で使用した。 なお、前培養では試薬単糖を用い、本培養時のみ各糖液を用いた。
    その結果、表10に見られる通り、工程(2)〜(3)及びナノ濾過膜の処理をすることにより、未処理のものである実施例1の工程(1)に比べて発酵阻害が抑制され、蓄積濃度が改善した。

    本発明によって、セルロース含有バイオマスに由来する糖水溶液からバイオマス残滓を、糖水溶液製造の工程において除去することで精密濾過膜および/または限外濾過膜の目詰まりを防止することができるため、該精製糖水溶液を発酵原料として用いた種々の化学品の発酵生産の効率を向上させることができる。

    原水槽 2 ナノ濾過膜または逆浸透膜が装着されたセル 3 高圧ポンプ 4 膜透過液の流れ 5 膜濃縮液の流れ
    6 高圧ポンプにより送液された培養液またはナノ濾過膜透過液の流れ

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