熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステム

申请号 JP2016504167 申请日 2015-02-19 公开(公告)号 JPWO2015125878A1 公开(公告)日 2017-03-30
申请人 旭硝子株式会社; 发明人 正人 福島; 正人 福島; 宏明 光岡; 宏明 光岡; 真維 田坂; 真維 田坂;
摘要 R410A代替可能で、地球温暖化係数が小さく安定性の高い熱サイクル用の作動媒体を含む熱サイクルシステム用組成物、および該組成物を用いた熱サイクルシステムの提供。トリフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体と、耐 酸化 性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等の該熱サイクル用作動媒体の劣化を抑制する安定剤と、を含む熱サイクルシステム用組成物、およびこの熱サイクルシステム用組成物を用いた熱サイクルシステム。
权利要求

トリフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体と、前記熱サイクル用作動媒体の劣化を抑制する安定剤と、を含む熱サイクルシステム用組成物。前記安定剤が、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤および金属不活性剤から選ばれる少なくとも1種の安定剤である、請求項1に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記安定剤が、フェノール系化合物、不飽和炭化素基含有芳香族化合物、芳香族アミン化合物、芳香族チアジン化合物、テルペン化合物、キノン化合物、ニトロ化合物、エポキシ化合物、ラクトン化合物、オルトエステル化合物、フタル酸のモノまたはジアルカリ金属塩化合物、水酸化チオジフェニルエーテル化合物、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項2に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記安定剤を1質量ppm以上含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用組成物。さらに、冷凍機油を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記冷凍機油が、エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油、ポリグリコール油、炭化水素系冷凍機油から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記熱サイクル用作動媒体がさらに飽和のヒドロフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記飽和のヒドロフルオロカーボンがジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびペンタフルオロエタンから選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記熱サイクル用作動媒体がさらにトリフルオロエチレン以外の炭素−炭素二重結合を有するヒドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記炭素−炭素二重結合を有するヒドロフルオロカーボンが、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種である、請求項9に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記熱サイクル用作動媒体に占めるトリフルオロエチレンの割合が10質量%以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記熱サイクル用作動媒体に占めるトリフルオロエチレンの割合が20〜80質量%である、請求項11に記載の熱サイクルシステム用組成物。前記熱サイクル用作動媒体がさらにジフルオロメタンを含み、前記熱サイクル用作動媒体に占めるジフルオロメタンの割合が20質量%以上である、請求項11または12に記載の熱サイクルシステム用組成物。請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用組成物を用いた、熱サイクルシステム。前記熱サイクルシステムが冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である、請求項14に記載の熱サイクルシステム。

说明书全文

本発明は熱サイクルシステム用組成物および該組成物を用いた熱サイクルシステムに関する。

本明細書において、ハロゲン化炭化素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。 従来、冷凍機用冷媒、空調機器用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動媒体、潜熱輸送装置(ヒートパイプ等)用作動媒体、二次冷却媒体等の熱サイクルシステム用の作動媒体としては、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、クロロジフルオロメタン等のヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられてきた。しかし、CFCおよびHCFCは、成層圏のオゾン層への影響が指摘され、現在、規制の対象となっている。

このような経緯から、熱サイクルシステム用作動媒体としては、CFCやHCFCに代えて、オゾン層への影響が少ない、ジフルオロメタン(HFC−32)、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン(HFC−125)等のヒドロフルオロカーボン(HFC)が用いられるようになった。例えば、R410A(HFC−32とHFC−125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)等は従来から広く使用されてきた冷媒である。しかし、HFCは、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されている。

R410Aは、冷凍能の高さからいわゆるパッケージエアコンやルームエアコンと言われる通常の空調機器等に広く用いられてきた。しかし、地球温暖化係数(GWP)が2088と高く、そのため低GWP作動媒体の開発が求められている。この際、R410Aを単に置き換えて、これまで用いられてきた機器をそのまま使用し続けることを前提にした作動媒体の開発が求められている。

最近、炭素−炭素二重結合を有しその結合が大気中のOHラジカルによって分解されやすいことから、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない作動媒体である、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、すなわち炭素−炭素二重結合を有するHFCに期待が集まっている。本明細書においては、特に断りのない限り飽和のHFCをHFCといい、HFOとは区別して用いる。また、HFCを飽和のヒドロフルオロカーボンのように明記する場合もある。

HFOを用いた作動媒体として、例えば、特許文献1には上記特性を有するとともに、優れたサイクル性能が得られるトリフルオロエチレン(HFO−1123)を用いた作動媒体に係る技術が開示されている。特許文献1においては、さらに、該作動媒体の不燃性、サイクル性能等を高める目的で、HFO−1123に、各種HFCやHFOを組み合わせて作動媒体とする試みもされている。

しかしながら、HFO−1123は、分子中に不飽和結合を含む化合物であり、大気寿命が非常に小さい化合物であることから、熱サイクルにおける圧縮、加熱が繰り返される条件では、従来のHFCやHCFCといった飽和のヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボンよりも安定性に劣っている問題があった。

そこで、HFO−1123を作動媒体として使用する熱サイクルシステムにおいて、HFO−1123が有する優れたサイクル性能を充分に活かしながら、安定性を高め、熱サイクルシステムを効率的に稼働できる方法が求められていた。

国際公開第2012/157764号

本発明は、上記観点からなされたものであって、トリフルオロエチレン(HFO−1123)を含む熱サイクルシステム用組成物において、HFO−1123の有する低い地球温暖化係数および優れたサイクル性能を充分に活かしながら、HFO−1123をより安定化させた熱サイクルシステム用組成物、および該組成物を用いた、地球温暖化への影響が少なく、かつ高いサイクル性能を兼ね備え、さらに熱サイクル用作動媒体の使用寿命を長命化させた熱サイクルシステムの提供を目的とする。

本発明は、以下の[1]〜[15]に記載の構成を有する熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステムを提供する。

[1]トリフルオロエチレンを含む熱サイクル用作動媒体と、前記熱サイクル用作動媒体の劣化を抑制する安定剤と、を含む熱サイクルシステム用組成物。 [2]前記安定剤が、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤および金属不活性剤から選ばれる少なくとも1種の安定剤である、[1]に記載の熱サイクルシステム用組成物。 [3]前記安定剤が、フェノール系化合物、不飽和炭化水素基含有芳香族化合物、芳香族アミン化合物、芳香族チアジン化合物、テルペン化合物、キノン化合物、ニトロ化合物、エポキシ化合物、ラクトン化合物、オルトエステル化合物、フタル酸のモノまたはジアルカリ金属塩化合物、水酸化チオジフェニルエーテル化合物、からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、[2]に記載の熱サイクルシステム用組成物。 [4]前記安定剤を1質量ppm以上含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。

[5]さらに、冷凍機油を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。 [6]前記冷凍機油が、エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油、ポリグリコール油、炭化水素系冷凍機油から選ばれる少なくとも1種である、[5]に記載の熱サイクルシステム用組成物。 [7]前記熱サイクル用作動媒体がさらに飽和のヒドロフルオロカーボンから選ばれる少なくとも1種を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。 [8]前記飽和のヒドロフルオロカーボンがジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンおよびペンタフルオロエタンから選ばれる少なくとも1種である、[7]に記載の熱サイクルシステム用組成物。 [9]前記熱サイクル用作動媒体がさらにトリフルオロエチレン以外の炭素−炭素二重結合を有するヒドロフルオロカーボンから選ばれる1種以上を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。 [10]前記炭素−炭素二重結合を有するヒドロフルオロカーボンが、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種である、[9]に記載の熱サイクルシステム用組成物。 [11]前記熱サイクル用作動媒体に占めるトリフルオロエチレンの割合が10質量%以上である、[1]〜[10]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。 [12]前記熱サイクル用作動媒体に占めるトリフルオロエチレンの割合が20〜80質量%である、[11]に記載の熱サイクルシステム用組成物。 [13]前記熱サイクル用作動媒体がさらにジフルオロメタンを含み、前記熱サイクル用作動媒体に占めるジフルオロメタンの割合が20質量%以上である、[11]または[12]に記載の熱サイクルシステム用組成物。 [14][1]〜[13]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物を用いた、熱サイクルシステム。 [15]前記熱サイクルシステムが冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である、[14]に記載の熱サイクルシステム。

本発明によれば、トリフルオロエチレン(HFO−1123)を含む熱サイクルシステム用組成物において、HFO−1123の有する低い地球温暖化係数および優れたサイクル性能を充分に活かしながら、HFO−1123を含む熱サイクル用作動媒体をより安定化させた熱サイクルシステム用組成物が提供できる。

本発明の熱サイクルシステムは、地球温暖化への影響が少なく、かつ高いサイクル性能を兼ね備え、さらに熱サイクル用作動媒体を安定化させ、効率的な稼働を可能とした熱サイクルシステムである。

本発明の熱サイクルシステムの一例である冷凍サイクルシステムを示した概略構成図である。

図1の冷凍サイクルシステムにおける作動媒体の状態変化を圧力−エンタルピー線図上に記載したサイクル図である。

以下、本発明の実施の形態について説明する。 [熱サイクルシステム用組成物] 熱サイクルシステム用組成物は、HFO−1123を含む熱サイクル用作動媒体と、熱サイクル用作動媒体の劣化を抑制する安定剤とを含む。

本発明の熱サイクルシステム用組成物が適用される熱サイクルシステムとしては、凝縮器や蒸発器等の熱交換器による熱サイクルシステムが特に制限なく用いられる。熱サイクルシステム、例えば、冷凍サイクルにおいては、気体の作動媒体を圧縮機で圧縮し、凝縮器で冷却して圧力が高い液体をつくり、膨張弁で圧力を下げ、蒸発器で低温気化させて気化熱で熱を奪う機構を有する。

このような熱サイクルシステムにHFO−1123を作動媒体として用いると、温度条件、圧力条件によって、HFO−1123が不安定化し、自己分解が生じて熱サイクル用作動媒体の機能が低下する場合がある。本発明の熱サイクルシステム用組成物においては、安定剤を共存させることで、HFO−1123の分解を抑制し、安定化させ、熱サイクル作動媒体としての寿命を長くすることが可能となる。 以下、本発明の熱サイクルシステム用組成物が含有する各成分を説明する。

<作動媒体> 本発明の熱サイクルシステム用組成物は作動媒体として、HFO−1123を含有する。本発明に係る作動媒体は、HFO−1123に加えて、必要に応じて、後述する任意成分を含んでいてもよい。作動媒体の100質量%に対するHFO−1123の含有量は、10質量%以上が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、40〜80質量%が一層好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。

(HFO−1123) HFO−1123の作動媒体としての特性を、特に、R410A(HFC−32とHFC−125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)との相対比較において表1に示す。サイクル性能は、後述する方法で求められる成績係数と冷凍能力で示される。HFO−1123の成績係数と冷凍能力は、R410Aを基準(1.000)とした相対値(以下、相対成績係数および相対冷凍能力という)で示す。地球温暖化係数(GWP)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書(2007年)に示される、または該方法に準じて測定された100年の値である。本明細書において、GWPは特に断りのない限りこの値をいう。作動媒体が混合物からなる場合、後述するとおり温度勾配は、作動媒体を評価する上で重要なファクターとなり、値は小さい方が好ましい。

[任意成分] 本発明に用いる作動媒体は、本発明の効果を損なわない範囲でHFO−1123以外に、通常作動媒体として用いられる化合物を任意に含有してもよい。このような任意の化合物(任意成分)としては、例えば、HFC、HFO−1123以外のHFO(炭素−炭素二重結合を有するHFC)、これら以外のHFO−1123とともに気化、液化する他の成分等が挙げられる。任意成分としては、HFC、HFO−1123以外のHFO(炭素−炭素二重結合を有するHFC)が好ましい。

任意成分としては、HFO−1123と組み合わせて熱サイクルに用いた際に、上記相対成績係数、相対冷凍能力をより高める作用を有しながら、GWPや温度勾配を許容の範囲にとどめられる化合物が好ましい。作動媒体がHFO−1123との組合せにおいてこのような化合物を含むと、GWPを低く維持しながら、より良好なサイクル性能が得られるとともに、温度勾配による影響も少ない。

(温度勾配) 作動媒体が任意成分を含有する場合、HFO−1123と任意成分が共沸組成である場合を除いて相当の温度勾配を有する。作動媒体の温度勾配は、任意成分の種類およびHFO−1123と任意成分との混合割合により異なる。

作動媒体として混合物を用いる場合、通常、共沸またはR410Aのような擬似共沸の混合物が好ましく用いられる。非共沸組成物は、圧力容器から冷凍空調機器へ充てんされる際に組成変化を生じる問題点を有している。さらに、冷凍空調機器からの冷媒漏えいが生じた場合、冷凍空調機器内の冷媒組成が変化する可能性が極めて大きく、初期状態への冷媒組成の復元が困難である。一方、共沸または擬似共沸の混合物であれば上記問題が回避できる。

混合物の作動媒体における使用可能性をはかる指標として、一般に「温度勾配」が用いられる。温度勾配は、熱交換器、例えば、蒸発器における蒸発の、または凝縮器における凝縮の、開始温度と終了温度が異なる性質、と定義される。共沸混合物においては、温度勾配は0であり、擬似共沸混合物では、例えばR410Aの温度勾配が0.2であるように、温度勾配は極めて0に近い。

温度勾配が大きいと、例えば、蒸発器における入口温度が低下することで着霜の可能性が大きくなり問題である。さらに、熱サイクルシステムにおいては、熱交換効率の向上をはかるために熱交換器を流れる作動媒体と水や空気等の熱源流体を対向流にすることが一般的であり、安定運転状態においては該熱源流体の温度差が小さいことから、温度勾配の大きい非共沸混合媒体の場合、エネルギー効率のよい熱サイクルシステムを得ることが困難である。このため、混合物を作動媒体として使用する場合は適切な温度勾配を有する作動媒体が望まれる。

(HFC) 任意成分のHFCとしては、上記観点から選択されることが好ましい。ここで、HFCは、HFO−1123に比べてGWPが高いことが知られている。したがって、HFO−1123と組合せるHFCとしては、上記作動媒体としてのサイクル性能を向上させ、かつ温度勾配を適切な範囲にとどめることに加えて、特にGWPを許容の範囲にとどめる観点から、適宜選択されることが好ましい。

オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さいHFCとして具体的には炭素数1〜5のHFCが好ましい。HFCは、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、環状であってもよい。

HFCとしては、HFC−32、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、HFC−125、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。

なかでも、HFCとしては、オゾン層への影響が少なく、かつ冷凍サイクル特性が優れる点から、HFC−32、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、およびHFC−125が好ましく、HFC−32、HFC−152a、HFC−134a、およびHFC−125がより好ましい。 HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

作動媒体(100質量%)中のHFCの含有量は、作動媒体の要求特性に応じ任意に選択可能である。例えば、HFO−1123とHFC−32からなる作動媒体の場合、HFC−32の含有量が1〜99質量%の範囲で成績係数および冷凍能力が向上する。HFO−1123とHFC−134aからなる作動媒体の場合、HFC−134aの含有量が1〜99質量%の範囲で成績係数が向上する。

また、上記好ましいHFCのGWPは、HFC−32については675であり、HFC−134aについては1430であり、HFC−125については3500である。得られる作動媒体のGWPを低く抑える観点から、任意成分のHFCとしては、HFC−32が最も好ましい。

また、HFO−1123とHFC−32とは、質量比で99:1〜1:99の組成範囲で共沸に近い擬似共沸混合物を形成可能であり、両者の混合物はほぼ組成範囲を選ばずに温度勾配が0に近い。この点においてもHFO−1123と組合せるHFCとしてはHFC−32が有利である。

本発明に用いる作動媒体において、HFO−1123とともにHFC−32を用いる場合、作動媒体の100質量%に対するHFC−32の含有量は、具体的には、20質量%以上が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。

(HFO−1123以外のHFO) HFO−1123以外の任意成分としてのHFOについても、上記HFCと同様の観点から選択されることが好ましい。なお、HFO−1123以外であってもHFOであれば、GWPはHFCに比べて桁違いに低い。したがって、HFO−1123と組合せるHFO−1123以外のHFOとしては、GWPを考慮するよりも、上記作動媒体としてのサイクル性能を向上させ、かつ温度勾配を適切な範囲にとどめることに特に留意して、適宜選択されることが好ましい。

HFO−1123以外のHFOとしては、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2−ジフルオロエチレン(HFO−1132)、2−フルオロプロペン(HFO−1261yf)、1,1,2−トリフルオロプロペン(HFO−1243yc)、トランス−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(E))、シス−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(Z))、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)等が挙げられる。

なかでも、HFO−1123以外のHFOとしては、高い臨界温度を有し、耐久性、成績係数が優れる点から、HFO−1234yf(GWP=4)、HFO−1234ze(E)、HFO−1234ze(Z)((E)体、(Z)体共にGWP=6)が好ましく、HFO−1234yf、HFO−1234ze(E)がより好ましい。HFO−1123以外のHFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

作動媒体(100質量%)中のHFO−1123以外のHFOの含有量は、作動媒体の要求特性に応じ任意に選択可能である。例えば、HFO−1123とHFO−1234yfまたはHFO−1234zeとからなる作動媒体の場合、HFO−1234yfまたはHFO−1234zeの含有量が1〜99質量%の範囲で成績係数が向上する。

本発明に用いる作動媒体が、HFO−1123およびHFO−1234yfを含む場合の、好ましい組成範囲を組成範囲(S)として以下に示す。 なお、組成範囲(S)を示す各式において、各化合物の略称は、HFO−1123とHFO−1234yfと他の成分(HFC−32等)の合計量に対する当該化合物の割合(質量%)を示す。

<組成範囲(S)> HFO−1123+HFO−1234yf≧70質量% 95質量%≧HFO−1123/(HFO−1123+HFO−1234yf)≧35質量%

組成範囲(S)の作動媒体は、GWPが極めて低く、温度勾配が小さい。また、成績係数、冷凍能力および臨界温度の観点からも従来のR410Aに代替し得る冷凍サイクル性能を発現できる。

組成範囲(S)の作動媒体において、HFO−1123とHFO−1234yfの合計量に対するHFO−1123の割合は、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%がさらに好ましく、50〜85質量%が特に好ましく、60〜85質量%がもっとも好ましい。

また、作動媒体100質量%中のHFO−1123とHFO−1234yfの合計の含有量は、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましく、95〜100質量%が特に好ましい。

また、本発明に用いる作動媒体は、HFO−1123とHFCとHFO−1123以外のHFOとの組合せであってもよい。この場合、作動媒体は、HFO−1123とHFC−32とHFO−1234yfからなることが好ましく、作動媒体全量における各化合物の割合は以下の範囲が好ましい。 10質量%≦HFO−1123≦80質量% 10質量%≦HFC−32≦75質量% 5質量%≦HFO−1234yf≦60質量%

さらに、本発明に用いる作動媒体が、HFO−1123、HFO−1234yfおよびHFC−32を含有する場合、好ましい組成範囲(P)を以下に示す。 なお、組成範囲(P)を示す各式において、各化合物の略称は、HFO−1123とHFO−1234yfとHFC−32の合計量に対する当該化合物の割合(質量%)を示す。組成範囲(R)、組成範囲(L)、組成範囲(M)においても同様である。

<組成範囲(P)> 70質量%≦HFO−1123+HFO−1234yf 30質量%≦HFO−1123≦80質量% HFO−1234yf≦40質量% 0質量%

HFO−1123/HFO−1234yf≦95/5質量%

上記組成を有する作動媒体は、HFO−1123、HFO−1234yfおよびHFC−32がそれぞれ有する特性がバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、この作動媒体は、GWPが極めて低く抑えられ、熱サイクルに用いた際に、温度勾配が小さく、一定の能力と効率を有することで良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。

本発明に用いる作動媒体のより好ましい組成としては、HFO−1123とHFO−1234yfとHFC−32の合計量に対して、HFO−1123を30〜70質量%、HFO−1234yfを4〜40質量%、およびHFC−32を0〜30質量%の割合で含有し、かつ、作動媒体全量に対するHFO−1123の含有量が70モル%以下である組成が挙げられる。前記範囲の作動媒体は、上記の効果が高まるのに加え、HFO−1123の自己分解反応が抑制され、耐久性の高い作動媒体である。相対成績係数の観点からは、HFC−32の含有量は5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。

また、本発明に用いる作動媒体がHFO−1123、HFO−1234yfおよびHFC−32を含む場合の、別の好ましい組成を示すが、作動媒体全量に対するHFO−1123の含有量が70モル%以下であれば、HFO−1123の自己分解反応が抑制され、耐久性の高い作動媒体が得られる。 さらに好ましい組成範囲(R)を、以下に示す。 <組成範囲(R)> 10質量%≦HFO−1123<70質量% 0質量%

30質量%

上記組成を有する作動媒体は、HFO−1123、HFO−1234yfおよびHFC−32がそれぞれ有する特性がバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、GWPが低く抑えられ、耐久性が確保されたうえで、熱サイクルに用いた際に、温度勾配が小さく、高い能力と効率を有することで良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。

上記組成範囲(R)を有する本発明の作動媒体において、好ましい範囲を、以下に示す。 20質量%≦HFO−1123<70質量% 0質量%

30質量%

上記組成を有する作動媒体は、HFO−1123、HFO−1234yfおよびHFC−32がそれぞれ有する特性が特にバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、GWPが低く抑えられ、耐久性が確保されたうえで、熱サイクルに用いた際に、温度勾配がより小さく、より高い能力と効率を有することで良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。

上記組成範囲(R)を有する本発明の作動媒体において、より好ましい組成範囲(L)を、以下に示す。組成範囲(M)がさらに好ましい。 <組成範囲(L)> 10質量%≦HFO−1123<70質量% 0質量%

30質量%

<組成範囲(M)> 20質量%≦HFO−1123<70質量% 5質量%≦HFO−1234yf≦40質量% 30質量%

上記組成範囲(M)を有する作動媒体は、HFO−1123、HFO−1234yfおよびHFC−32がそれぞれ有する特性が特にバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、この作動媒体は、GWPの上限が300以下に低く抑えられ、耐久性が確保されたうえで、熱サイクルに用いた際に、温度勾配が5.8未満と小さく、相対成績係数および相対冷凍能力が1に近く良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。 この範囲にあると温度勾配の上限が下がり、相対成績係数×相対冷凍能力の下限が上がる。相対成績係数が大きい点から8質量%≦HFO−1234yfがより好ましい。また、相対冷凍能力が大きい点からHFO−1234yf≦35質量%がより好ましい。 本発明に用いる作動媒体が、HFO−1123およびHFO−1234ze(E)を含む場合の、好ましい組成範囲を組成範囲(T)として以下に示す。 なお、組成範囲(T)を示す各式において、各化合物の略称は、HFO−1123とHFO−1234ze(E)と他の成分(HFC−32等)の合計量に対する当該化合物の割合(質量%)を示す。

<組成範囲(T)> HFO−1123+HFO−1234ze(E)≧70質量% 95質量%≧HFO−1123/(HFO−1123+HFO−1234ze(E)≧35質量%

組成範囲(T)の作動媒体は、GWPが極めて低く、温度勾配が小さい。また、成績係数、冷凍能力および臨界温度の観点からも従来のR410Aに代替し得る冷凍サイクル性能を発現できる。

組成範囲(T)の作動媒体において、HFO−1123とHFO−1234ze(E)の合計量に対するHFO−1123の割合は、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%がさらに好ましく、50〜85質量%が特に好ましく、60〜85質量%がもっとも好ましい。

また、作動媒体100質量%中のHFO−1123とHFO−1234ze(E)の合計の含有量は、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましく、95〜100質量%が特に好ましい。

また、本発明に用いる作動媒体は、HFO−1123とHFCとHFO−1123以外のHFOとの組合せであってもよい。この場合、作動媒体は、HFO−1123とHFC−32とHFO−1234ze(E)からなることが好ましく、作動媒体全量における各化合物の割合は以下の範囲が好ましい。 10質量%≦HFO−1123≦80質量% 10質量%≦HFC−32≦75質量% 5質量%≦HFO−1234ze(E)≦60質量%

さらに、本発明に用いる作動媒体が、HFO−1123、HFO−1234ze(E)およびHFC−32を含有する場合、好ましい組成範囲(Q)を以下に示す。 なお、組成範囲(Q)を示す各式において、各化合物の略称は、HFO−1123とHFO−1234ze(E)とHFC−32の合計量に対する当該化合物の割合(質量%)を示す。組成範囲(U)、組成範囲(K)、組成範囲(N)においても同様である。

<組成範囲(Q)> 70質量%≦HFO−1123+HFO−1234ze(E) 30質量%≦HFO−1123≦80質量% HFO−1234ze(E)≦40質量% 0質量%

HFO−1123/HFO−1234ze(E)≦95/5質量%

上記組成を有する作動媒体は、HFO−1123、HFO−1234ze(E)およびHFC−32がそれぞれ有する特性がバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、この作動媒体は、GWPが極めて低く抑えられ、熱サイクルに用いた際に、温度勾配が小さく、一定の能力と効率を有することで良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。

本発明に用いる作動媒体のより好ましい組成としては、HFO−1123とHFO−1234ze(E)とHFC−32の合計量に対して、HFO−1123を30〜70質量%、HFO−1234ze(E)を4〜40質量%、およびHFC−32を0〜30質量%の割合で含有し、かつ、作動媒体全量に対するHFO−1123の含有量が70モル%以下である組成が挙げられる。前記範囲の作動媒体は、上記の効果が高まるのに加え、HFO−1123の自己分解反応が抑制され、耐久性の高い作動媒体である。相対成績係数の観点からは、HFC−32の含有量は5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。

また、本発明に用いる作動媒体がHFO−1123、HFO−1234ze(E)およびHFC−32を含む場合の、別の好ましい組成を示すが、作動媒体全量に対するHFO−1123の含有量が70モル%以下であれば、HFO−1123の自己分解反応が抑制され、耐久性の高い作動媒体が得られる。 さらに好ましい組成範囲(U)を、以下に示す。 <組成範囲(U)> 10質量%≦HFO−1123<70質量% 0質量%

30質量%

上記組成を有する作動媒体は、HFO−1123、HFO−1234ze(E)およびHFC−32がそれぞれ有する特性がバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、GWPが低く抑えられ、耐久性が確保されたうえで、熱サイクルに用いた際に、温度勾配が小さく、高い能力と効率を有することで良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。

上記組成範囲(U)を有する本発明の作動媒体において、好ましい範囲を、以下に示す。 20質量%≦HFO−1123<70質量% 0質量%

30質量%

上記組成を有する作動媒体は、HFO−1123、HFO−1234ze(E)およびHFC−32がそれぞれ有する特性が特にバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、GWPが低く抑えられ、耐久性が確保されたうえで、熱サイクルに用いた際に、温度勾配がより小さく、より高い能力と効率を有することで良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。

上記組成範囲(U)を有する本発明の作動媒体において、より好ましい組成範囲(K)を、以下に示す。組成範囲(N)がさらに好ましい。 <組成範囲(K)> 10質量%≦HFO−1123<70質量% 0質量%

30質量%

<組成範囲(N)> 20質量%≦HFO−1123<70質量% 5質量%≦HFO−1234ze(E)≦40質量% 30質量%

上記組成範囲(N)を有する作動媒体は、HFO−1123、HFO−1234ze(E)およびHFC−32がそれぞれ有する特性が特にバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、この作動媒体は、GWPの上限が300以下に低く抑えられ、耐久性が確保されたうえで、熱サイクルに用いた際に、温度勾配が5.8未満と小さく、相対成績係数および相対冷凍能力が1に近く良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。 この範囲にあると温度勾配の上限が下がり、相対成績係数×相対冷凍能力の下限が上がる。相対成績係数が大きい点から8質量%≦HFO−1234ze(E)がより好ましい。また、相対冷凍能力が大きい点からHFO−1234ze(E)≦35質量%がより好ましい。

(他の任意成分) 本発明の熱サイクルシステム用組成物に用いる作動媒体は、上記任意成分以外に、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロオレフィン(CFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等を含有してもよい。他の任意成分としてはオゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さい成分が好ましい。

炭化水素としては、プロパン、プロピレン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。 炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

上記作動媒体が炭化水素を含有する場合、その含有量は作動媒体の100質量%に対して10質量%未満であり、1〜5質量%が好ましく、3〜5質量%がさらに好ましい。炭化水素が下限値以上であれば、作動媒体への鉱物系冷凍機油の溶解性がより良好になる。

CFOとしては、クロロフルオロプロペン、クロロフルオロエチレン等が挙げられる。作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、CFOとしては、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)、1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214yb)、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン(CFO−1112)が好ましい。 CFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

作動媒体がCFOを含有する場合、その含有量は作動媒体の100質量%に対して10質量%未満であり、1〜8質量%が好ましく、2〜5質量%がさらに好ましい。CFOの含有量が下限値以上であれば、作動媒体の燃焼性を抑制しやすい。CFOの含有量が上限値以下であれば、良好なサイクル性能が得られやすい。

HCFOとしては、ヒドロクロロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロエチレン等が挙げられる。作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、HCFOとしては、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd)、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン(HCFO−1122)が好ましい。 HCFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

上記作動媒体がHCFOを含む場合、作動媒体100質量%中のHCFOの含有量は、10質量%未満であり、1〜8質量%が好ましく、2〜5質量%がさらに好ましい。HCFOの含有量が下限値以上であれば、作動媒体の燃焼性を抑制しやすい。HCFOの含有量が上限値以下であれば、良好なサイクル性能が得られやすい。

本発明の熱サイクルシステム用組成物に用いる作動媒体が上記のような他の任意成分を含有する場合、作動媒体における他の任意成分の合計含有量は、作動媒体100質量%に対して10質量%未満であり、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。

<安定剤> 本発明の熱サイクルシステム用組成物は、上記HFO−1123を含有する作動媒体と共に安定剤を含有する。この安定剤は、作動媒体、特に上記したHFO−1123、の劣化を防止できるものであればよく、特に限定されずに使用できる。このような安定剤としては、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等が挙げられる。

この安定剤の含有量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、熱サイクル用組成物(100質量%)中、1質量ppm〜10質量%であり、好ましくは5質量ppm〜5質量%である。

耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤としては、フェノール系化合物、不飽和炭化水素基含有芳香族化合物、芳香族アミン化合物、芳香族チアジン化合物、テルペン化合物、キノン化合物、ニトロ化合物、エポキシ化合物、ラクトン化合物、オルトエステル化合物、フタル酸のモノまたはジアルカリ金属塩化合物、水酸化チオジフェニルエーテル化合物等が挙げられる。

具体的には、フェノール系化合物としては、フェノール、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、1,3,5−ベンゼントリオール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、1−クレゾール、2−クレゾール、3−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,5,6−トリメチルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−プロポキシフェノール、3−プロポキシフェノール、4−プロポキシフェノール、tert−ブチルカテコール、4−tert−ブチルピロカテコール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)が挙げられる。

不飽和炭化水素基含有芳香族化合物としては、α−メチルスチレン、p−イソプロペニルトルエン、ジイソプロペニルベンゼンが挙げられる。

芳香族アミン化合物、芳香族チアジン化合物としては、4,4−チオビス(6−ブチル−m−クレゾール)、4、4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N,N’−ジフェニルフェニレンジアミン、p−オクチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、N−(p−ドデシル)フェニル−2−ナフチルアミン、1,1’−ジナフチルアミン、2,2’−ジナフチルアミン、N−アルキルフェノチアジン等が挙げられる。

テルペン系化合物としては、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール(ゲラニアールを含む)、シトロネロール、メントール、d−リモネン,l−リモネン、テルピネロール、カルボン、ヨノン、ツヨン、樟脳(カンファー)、ミルセン、レチナール、ファルネソール、フィトール、ビタミンA1、テルピネン、δ−3−カレン、テルピノレン、フェランドレン、フェンチェン等が挙げられる。

キノン系化合物としては、ハイドロキノン、1,4−ベンゾキノン、トコフェロール、t−ブチルヒドロキノン、や他のハイドロキノン誘導体が挙げられる。 ニトロ化合物としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン等が挙げられる。

エポキシ化合物としては、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルメチルフェニルエーテル、1,4−ジグリシジルフェニルジエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、およびこれらの誘導体グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、およびエポキシ化脂肪酸モノエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステル、1,2−エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンが挙げられる。

その他、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトン等のラクトン化合物、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル等のオルトエステル化合物、フタル酸のモノまたはジアルカリ金属塩化合物等を安定剤として加えてもよい。

これらの安定剤は、冷媒が冷凍サイクルにおいて繰り返し圧縮・加熱される条件において、熱や酸素による冷媒の分解抑制だけでなく、冷凍機油の安定化、さらに冷凍機油の分解により発生した酸による冷媒の分解抑制や熱サイクルシステムの金属材料を保護する作用がある。

これらの安定剤のうち、上記作用の観点から、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−(tert−ブチル)フェノール、ニトロメタン、1,4−ベンゾキノン、3−メトキシフェノール等が好ましい化合物として挙げられる。 耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

また、金属不活性剤としては、イミダゾール化合物やチアゾール化合物、やトリアゾール化合物といった複素環式窒素含有化合物や、アルキル酸ホスフェートのアミン塩またはそれらの誘導体が挙げられる。

イミダゾール化合物、チアゾール化合物としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2,5−ジメルカプトチアジアゾール、サリシリジン−プロピレンジアミン、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メチルベンズアミダゾール、トリアゾール類を含有してもよい。

トリアゾール化合物は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、メチレンビスベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等から選ばれるものである。さらに、有機酸またはそれらのエステル、第1級、第2級または第3級の脂肪族アミン、有機酸または無機酸のアミン塩、またはそれらの誘導体等を加えてもよい。 これら金属不活化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

<冷凍機油> さらに、本発明の熱サイクルシステム用組成物には、上記作動媒体および安定剤以外に、通常の熱サイクルシステム用組成物が含むのと同様に冷凍機油を含むことができる。

冷凍機油としては、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステム用組成物に用いられる公知の冷凍機油が特に制限なく採用できる。冷凍機油として具体的には、含酸素系合成油(エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油、ポリグリコール油等)、炭化水素系冷凍機油等が挙げられる。 その中でも、本発明の必須の作動媒体成分であるトリフルオロエチレンとの相溶性の観点からエステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油が適している。

これらの冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに冷凍機油の40℃における動粘度は、潤滑性や圧縮機の密閉性が低下せず、低温条件下で冷媒に対して相溶性が満足にあり、冷凍機圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換を十分に行うという観点から、40℃における動粘度が1〜750mm2/sが好ましく、1〜400mm2/sがより好ましい。また、100℃における動粘度は1〜100mm2/sが好ましく、1〜50mm2/sであることがより好ましい。

特に、エステル系冷凍機油、エーテル系冷凍機油の場合には、冷凍機油を構成する原子として炭素原子と酸素原子が代表的に挙げられる。この炭素原子と酸素原子の比率(炭素/酸素モル比)により、小さすぎると吸湿性が高くなり、大きすぎると冷媒との相溶性が低下する問題がある。この観点より、冷凍機油の炭素原子と酸素原子の比率はモル比で2〜7.5が適している。

さらに、炭化水素系冷凍機油では熱サイクル系内を作動媒体および冷凍機油が共に循環することが求められる。冷凍機油は作動媒体と溶解することが最も好ましい形態だが、熱サイクル系内を冷凍機油と作動媒体が循環できる冷凍機油を選定すれば、溶解性が低い冷凍機油(例えば、特許第2803451号公報に記載されている冷凍機油)を本発明の熱サイクルシステム用組成物の一成分として使用することができる。冷凍機油が熱サイクル系内を循環するためには、冷凍機油の動粘度が小さいことが求められる。本発明において、炭化水素系冷凍機油の動粘度は、40℃において1〜50mm2/sであることが好ましく、特に好ましくは1〜25mm2/sである。

これらの冷凍機油は、作動媒体と混合して熱サイクルシステム用組成物として使用することが好ましい。このとき、冷凍機油の配合割合は、熱サイクルシステム用組成物全量に対して5〜60質量%が望ましく、10〜50質量%がより好ましい。

〈エステル系冷凍機油〉 エステル系冷凍機油としては、化学的な安定性の面で、二塩基酸と1価アルコールとの二塩基酸エステル油、ポリオールと脂肪酸とのポリオールエステル油、またはポリオールと多価塩基酸と1価アルコール(又は脂肪酸)とのコンプレックスエステル油、ポリオール炭酸エステル油等が基油成分として挙げられる。

(二塩基酸エステル油) 二塩基酸エステル油としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸、特に、炭素数5〜10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖または分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等)とのエステルが好ましい。この二塩基酸エステル油としては、具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3−エチルヘキシル)等が挙げられる。

(ポリオールエステル油) ポリオールエステル油とは、多価アルコールと脂肪酸(カルボン酸)とから合成されるエステルであり、炭素/酸素モル比が2以上7.5以下、好ましくは3.2以上5.8以下のものである。

ポリオールエステル油を構成する多価アルコールとしては、ジオール(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等)、水酸基を3〜20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜3量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物等)が挙げられ、エステルを構成する多価アルコールとしては、上記の1種でもよく、2種以上が含まれていてもよい。

ポリオールエステル油を構成する脂肪酸としては、特に炭素数は制限されないが、通常炭素数1〜24のものが用いられる。直鎖の脂肪酸、分岐を有する脂肪酸が好ましい。直鎖の脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、カルボキシル基に結合する炭化水素基は、全て飽和炭化水素であってもよく、不飽和炭化水素を有していてもよい。さらに、分岐を有する脂肪酸としては、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2,2,3−トリメチルブタン酸、2,3,3−トリメチルブタン酸、2−エチル−2−メチルブタン酸、2−エチル−3−メチルブタン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2,3−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、2,5−ジメチルヘキサン酸、3,3−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、4,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、5,5−ジメチルヘキサン酸、2−プロピルペンタン酸、2−メチルオクタン酸、3−メチルオクタン酸、4−メチルオクタン酸、5−メチルオクタン酸、6−メチルオクタン酸、7−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2,3−ジメチルヘプタン酸、2,4−ジメチルヘプタン酸、2,5−ジメチルヘプタン酸、2,6−ジメチルヘプタン酸、3,3−ジメチルヘプタン酸、3,4−ジメチルヘプタン酸、3,5−ジメチルヘプタン酸、3,6−ジメチルヘプタン酸、4,4−ジメチルヘプタン酸、4,5−ジメチルヘプタン酸、4,6−ジメチルヘプタン酸、5,5−ジメチルヘプタン酸、5,6−ジメチルヘプタン酸、6,6−ジメチルヘプタン酸、2−メチル−2−エチルヘキサン酸、2−メチル−3−エチルヘキサン酸、2−メチル−4−エチルヘキサン酸、3−メチル−2−エチルヘキサン酸、3−メチル−3−エチルヘキサン酸、3−メチル−4−エチルヘキサン酸、4−メチル−2−エチルヘキサン酸、4−メチル−3−エチルヘキサン酸、4−メチル−4−エチルヘキサン酸、5−メチル−2−エチルヘキサン酸、5−メチル−3−エチルヘキサン酸、5−メチル−4−エチルヘキサン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロパン酸などが挙げられる。脂肪酸は、これらの中から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸とのエステルでも構わない。

エステルを構成するポリオールは1種類でもよく、2種以上の混合物でもよい。また、エステルを構成する脂肪酸は、単一成分でもよく、2種以上の脂肪酸とのエステルでもよい。および脂肪酸は、各々1種類でもよく、2種類以上の混合物でもよい。また、ポリオールエステル油は、遊離の水酸基を有していてもよい。

具体的なポリオールエステル油としては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)のエステルがさらにより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)等と炭素数2〜20の脂肪酸とのエステルが好ましい。

このような多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸において、脂肪酸は直鎖アルキル基をもつ脂肪酸のみでもよいし、分岐構造をもつ脂肪酸から選ばれてもよい。また、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルでもよい。さらに、エステルを構成する脂肪酸は、上記脂肪酸から選ばれる2種類以上が用いられていてもよい。

具体的な例として、直鎖と分岐脂肪酸の混合エステルの場合には、直鎖を有する炭素数4〜6の脂肪酸と分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸のモル比は、15:85〜90:10であり、好ましくは15:85〜85:15であり、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは25:75〜75:25であり、最も好ましくは30:70〜70:30である。また、多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の全量に占める直鎖を有する炭素数4〜6の脂肪酸および分岐を有する炭素数7〜9の脂肪酸の合計の割合は20モル%以上である。脂肪酸組成に関しては、作動媒体との十分な相溶性、および冷凍機油として必要な粘度とを両立することを考慮して選定されるべきである。なお、ここでいう脂肪酸の割合とは、冷凍機油に含まれる多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。

(コンプレックスエステル油) コンプレックスエステル油とは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよびポリオールとのエステルである。脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、上述と同様のものを用いることができる。

脂肪酸としては、上記ポリオールエステルの脂肪酸で示したものが挙げられる。 二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。

ポリオールとしては、上記ポリオールエステルの多価アルコールとして示したものが挙げられる。コンプレックスエステルは、これらの脂肪酸、二塩基酸、ポリオールのエステルであり、各々単一成分でもよいし、複数成分からなるエステルでもよい。

(ポリオール炭酸エステル油) ポリオール炭酸エステル油とは、炭酸とポリオールとのエステルである。 ポリオールとしては、ジオール(上述と同様のもの)を単独重合または共重合したポリグリコール(ポリアルキレングリコール、そのエーテル化合物、それらの変性化合物等)、ポリオール(上述と同様のもの)、ポリオールにポリグリコールを付加したもの等が挙げられる。

ポリアルキレングリコールとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を、水や水酸化アルカリを開始剤として重合させる方法等により得られたものが挙げられる。また、ポリアルキレングリコールの水酸基をエーテル化したものであってもよい。ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。また、ポリオール炭酸エステル油としては、環状アルキレンカーボネートの開環重合体であってもよい。

〈エーテル系冷凍機油〉 エーテル系冷凍機油としては、ポリビニルエーテル油、ポリアルキレングリコール油等が挙げられる。

(ポリビニルエーテル油) ポリビニルエーテル油としては、ビニルエーテルモノマーを重合して得られたもの、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合して得られたもの、およびポリビニルエーテルと、アルキレングリコールもしくはポリアルキレングリコール、またはそれらのモノエーテルとの共重合体がある。

ポリビニルエーテル油の炭素/酸素モル比は、2以上7.5以下であり、好ましくは2.5以上5.8以下である。炭素/酸素モル比がこの範囲未満では吸湿性が高くなり、この範囲を超えると相溶性が低下する。また、ポリビニルエーテルの重量平均分子量は、好ましくは200以上3000以下、より好ましくは500以上1500以下である。40℃における動粘度は、40℃における動粘度が1〜750mm2/sが好ましく、1〜400mm2/sがより好ましい。また、100℃における動粘度は1〜100mm2/sが好ましく、1〜50mm2/sであることがより好ましい。

・ポリビニルエーテル油の構造 ビニルエーテルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

ポリビニルエーテル共重合体は、ブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリビニルエーテル油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

好ましく用いられるポリビニルエーテル油は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する。

(式中、R1、R2およびR3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R4は炭素数1〜10の2価の炭化水素基または炭素数2〜20の2価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R5は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは上記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、R1〜R5は構造単位ごとに同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のR4Oは同一でも異なっていてもよい。)

上記一般式(1)におけるR1、R2およびR3は、少なくとも1つが水素原子、特には全てが水素原子であることが好ましい。一般式(1)におけるmは0以上10以下、特には0以上5以下が、さらには0であることが好ましい。一般式(1)におけるR5は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。この炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基のアルキル基、シクロペンチル基,シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基のアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基のアリールアルキル基を示す。アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基などが挙げられ、アルキル基、特には炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましい。

本実施形態におけるポリビニルエーテル油は、一般式(1)で表される構造単位が同一である単独重合体であっても、2種以上の構造単位で構成される共重合体であってもよい。共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。

本実施形態に係るポリビニルエーテル油は、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位をさらに含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。

(式中、R6〜R9は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)

(ポリビニルエーテルモノマー) ビニルエーテル系モノマーとしては、下記一般式(3)の化合物が挙げられる。

(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびmは、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5およびmと同一の定義内容を示す。)

上記ポリビニルエーテル系化合物に対応する各種のものがあるが、例えば、ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル−n−プロピルエーテル;ビニル−イソプロピルエーテル;ビニル−n−ブチルエーテル;ビニル−イソブチルエーテル;ビニル−sec−ブチルエーテル;ビニル−tert−ブチルエーテル;ビニル−n−ペンチルエーテル;ビニル−n−ヘキシルエーテル;ビニル−2−メトキシエチルエーテル;ビニル−2−エトキシエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−1−メチルエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−プロピルエーテル;ビニル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−1,4−ジメチル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−1,4,7−トリメチル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−2,6−ジオキサ−4−ヘプチルエーテル;ビニル−2,6,9−トリオキサ−4−デシルエーテル;1−メトキシプロペン;1−エトキシプロペン;1−n−プロポキシプロペン;1−イソプロポキシプロペン;1−n−ブトキシプロペン;1−イソブトキシプロペン;1−sec−ブトキシプロペン;1−tert−ブトキシプロペン;2−メトキシプロペン;2−エトキシプロペン;2−n−プロポキシプロペン;2−イソプロポキシプロペン;2−n−ブトキシプロペン;2−イソブトキシプロペン;2−sec−ブトキシプロペン;2−tert−ブトキシプロペン;1−メトキシ−1−ブテン;1−エトキシ−1−ブテン;1−n−プロポキシ−1−ブテン;1−イソプロポキシ−1−ブテン;1−n−ブトキシ−1−ブテン;1−イソブトキシ−1−ブテン;1−sec−ブトキシ−1−ブテン;1−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−1−ブテン;2−エトキシ−1−ブテン;2−n−プロポキシ−1−ブテン;2−イソプロポキシ−1−ブテン;2−n−ブトキシ−1−ブテン;2−イソブトキシ−1−ブテン;2−sec−ブトキシ−1−ブテン;2−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−2−ブテン;2−エトキシ−2−ブテン;2−n−プロポキシ−2−ブテン;2−イソプロポキシ−2−ブテン;2−n−ブトキシ−2−ブテン;2−イソブトキシ−2−ブテン;2−sec−ブトキシ−2−ブテン;2−tert−ブトキシ−2−ブテン等が挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。

・ポリビニルエーテルの末端 本発明の熱サイクルシステム用組成物に冷凍機油として用いられる上記一般式(1)で表される構成単位を有するポリビニルエーテル系化合物は、その末端を本開示例に示す方法及び公知の方法により、所望の構造に変換することができる。変換する基としては、飽和の炭化水素,エーテル,アルコール,ケトン,アミド,ニトリルなどを挙げることができる。

本発明の熱サイクルシステム用組成物に冷凍機油として用いられるポリビニルエーテル系化合物は、次の式(4)〜(8)に示す末端構造を有するものが好適である。

(式中、R11、R21およびR31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R41は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R51は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR41Oは同一でも異なっていてもよい。)

(式中、R61、R71、R81およびR91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)

(式中、R12、R22およびR32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R42は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R52は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR42Oは同一でも異なっていてもよい。)

(式中、R62、R72、R82およびR92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)

(式中、R13、R23およびR33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)

(ポリビニルエーテル油の製法) 本実施形態におけるポリビニルエーテル油は、上記したモノマーをラジカル重合、カチオン重合、放射線重合などによって製造することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルエーテル系化合物が得られる。

(ポリアルキレングリコール油) ポリアルキレングリコール油としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を、水や水酸化アルカリを開始剤として重合させる方法等により得られたものが挙げられる。また、ポリアルキレングリコールの水酸基をエーテル化したものであってもよい。ポリアルキレングリコール油中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。

具体的なポリオキシアルキレングリコール油としては、例えば次の一般式(9) R101−[(OR102)k−OR103]l …(9) (式中、R101は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基又は結合部2〜6個を有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、R102は炭素数2〜4のアルキレン基、R103は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアシル基、lは1〜6の整数、kはk×lの平均値が6〜80となる数を示す。)で表される化合物が挙げられる。

上記一般式(9)において、R101、R103におけるアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。このアルキル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、粗分離を生じる場合がある。好ましいアルキル基の炭素数は1〜6である。

また、R101、R103における該アシル基のアルキル基部分は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アシル基のアルキル基部分の具体例としては、上記アルキル基の具体例として挙げた炭素数1〜9の種々の基を同様に挙げることができる。該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアシル基の炭素数は2〜6である。

R101及びR103が、いずれもアルキル基又はアシル基である場合には、R101とR103は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。 さらにlが2以上の場合には、1分子中の複数のR103は同一であってもよいし、異なっていてもよい。

R101が結合部位2〜6個を有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である場合、この脂肪族炭化水素基は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。結合部位2個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。また、結合部位3〜6個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール;1,2,3−トリヒドロキシシクロヘキサン;1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどの多価アルコールから水酸基を除いた残基を挙げることができる。

この脂肪族炭化水素基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下し、相分離が生じる場合がある。好ましい炭素数は2〜6である。

上記一般式(9)中のR102は炭素数2〜4のアルキレン基であり、繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。1分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよいし、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよいが、1分子中に少なくともオキシプロピレン単位を含むものが好ましく、特にオキシアルキレン単位中に50モル%以上のオキシプロピレン単位を含むものが好適である。

上記一般式(9)中のlは1〜6の整数で、R101の結合部位の数に応じて定められる。例えばR101がアルキル基やアシル基の場合、lは1であり、R101が結合部位2,3,4,5及び6個を有する脂肪族炭化水素基である場合、lはそれぞれ2,3,4,5及び6となる。また、kはk×lの平均値が6〜80となる数であり、k×lの平均値が前記範囲を逸脱すると本発明の目的は十分に達せられない。

ポリアルキレングリコールの構造は、下記一般式(10)で表されるポリプロピレングリコールジメチルエーテル、並びに下記一般式(11)で表されるポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)グリコールジメチルエーテルが経済性および前述の効果の点で好適であり、また、下記一般式(12)で表されるポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、さらには下記一般式(13)で表されるポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、下記一般式(14)で表されるポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)グリコールモノメチルエーテル、下記一般式(15)で表されるポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)グリコールモノブチルエーテル、下記一般式(16)で表されるポリプロピレングリコールジアセテートが、経済性等の点で好適である。

CH3O−(C3H6O)h−CH3 …(10) (式中、hは6〜80の数を表す。) CH3O−(C2H4O)i−(C3H6O)j−CH3 …(11) (式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。) C4H9O−(C3H6O)h−H …(12) (式中、hは6〜80の数を示す。) CH3O−(C3H6O)h−H …(13) (式中、hは6〜80の数を表す。)

CH3O−(C2H4O)i−(C3H6O)j−H …(14) (式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。) C4H9O−(C2H4O)i−(C3H6O)j−H …(15) (式中、iおよびjはそれぞれ1以上であり且つiとjとの合計が6〜80となる数を表す。) CH3COO−(C3H6O)h−COCH3 …(16) (式中、hは6〜80の数を表す。) このポリオキシアルキレングリコール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

上記一般式(9)で表されるポリアルキレングリコールの40℃における動粘度は、40℃における動粘度が1〜750mm2/sが好ましく、1〜400mm2/sがより好ましい。また、100℃における動粘度は1〜100mm2/sが好ましく、1〜50mm2/sであることがより好ましい。

〈炭化水素系冷凍機油〉 炭化水素系冷凍機油としては、アルキルベンゼンを用いることができる。

アルキルベンゼンとしては、フッ化水素などの触媒を用いてプロピレンの重合物とベンゼンを原料として合成される分岐アルキルベンゼン、また同触媒を用いてノルマルパラフィンとベンゼンを原料として合成される直鎖アルキルベンゼンが使用できる。アルキル基の炭素数は、潤滑油基油として好適な粘度とする観点から、好ましくは1〜30、より好ましくは4〜20である。また、アルキルベンゼン1分子が有するアルキル基の数は、アルキル基の炭素数によるが粘度を設定範囲内とするために、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3である。

さらに、冷凍機油は熱サイクル系内を作動媒体とともに循環することが求められる。冷凍機油は作動媒体と溶解することが最も好ましい形態だが、熱サイクル系内を冷凍機油と作動媒体が循環できる冷凍機油を選定すれば、溶解性が低い冷凍機油を本発明の冷凍機油組成物として使用することができる。冷凍機油が熱サイクル系内を循環するためには、冷凍機油の動粘度が小さいことが求められる。本発明において、アルキルベンゼンの40℃における動粘度は、1〜50mm2/sが好ましく、特に好ましくは1〜25mm2/sである。

これらの冷凍機油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 熱サイクルシステム用組成物における、冷凍機油の含有量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましい。

<その他任意成分> 熱サイクルシステム用組成物は、その他、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の任意成分を含有できる。このような任意成分としては、例えば、漏れ検出物質が挙げられ、この任意に含有する漏れ検出物質としては、紫外線蛍光染料、臭気ガスや臭いマスキング剤等が挙げられる。

紫外線蛍光染料としては、米国特許第4249412号明細書、特表平10−502737号公報、特表2007−511645号公報、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等、従来、ハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の紫外線蛍光染料が挙げられる。

臭いマスキング剤としては、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の香料が挙げられる。

漏れ検出物質を用いる場合には、作動媒体への漏れ検出物質の溶解性を向上させる可溶化剤を用いてもよい。

可溶化剤としては、特表2007−511645号公報、特表2008−500437号公報、特表2008−531836号公報に記載されたもの等が挙げられる。

熱サイクルシステム用組成物における、漏れ検出物質の含有量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。

[熱サイクルシステム] 本発明の熱サイクルシステムは、本発明の熱サイクルシステム用組成物を用いたシステムである。本発明の熱サイクルシステムは、凝縮器で得られる温熱を利用するヒートポンプシステムであってもよく、蒸発器で得られる冷熱を利用する冷凍サイクルシステムであってもよい。

本発明の熱サイクルシステムとして、具体的には、冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置および二次冷却機等が挙げられる。なかでも、本発明の熱サイクルシステムは、より高温の作動環境でも安定して熱サイクル性能を発揮できるため、屋外等に設置されることが多い空調機器として用いられることが好ましい。また、本発明の熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器として用いられることも好ましい。

空調機器として、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン(店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン等)、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等が挙げられる。 冷凍・冷蔵機器として、具体的には、ショーケース(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース等)、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等が挙げられる。

発電システムとしては、ランキンサイクルシステムによる発電システムが好ましい。 発電システムとして、具体的には、蒸発器において地熱エネルギー、太陽熱、50〜200℃程度の中〜高温度域廃熱等により作動媒体を加熱し、高温高圧状態の蒸気となった作動媒体を膨張機にて断熱膨張させ、該断熱膨張によって発生する仕事によって発電機を駆動させ、発電を行うシステムが例示される。

また、本発明の熱サイクルシステムは、熱輸送装置であってもよい。熱輸送装置としては、潜熱輸送装置が好ましい。 潜熱輸送装置としては、装置内に封入された作動媒体の蒸発、沸騰、凝縮等の現象を利用して潜熱輸送を行うヒートパイプおよび二相密閉型熱サイフォン装置が挙げられる。ヒートパイプは、半導体素子や電子機器の発熱部の冷却装置等、比較的小型の冷却装置に適用される。二相密閉型熱サイフォンは、ウィッグを必要とせず構造が簡単であることから、ガス−ガス型熱交換器、道路の融促進および凍結防止等に広く利用される。

以下、本発明の実施形態の熱サイクルシステムの一例として、冷凍サイクルシステムについて、上記で大枠を説明した図1に概略構成図が示される冷凍サイクルシステム10を例として説明する。冷凍サイクルシステムとは、蒸発器で得られる冷熱を利用するシステムである。

図1に示す冷凍サイクルシステム10は、作動媒体蒸気Aを圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする圧縮機11と、圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする凝縮器12と、凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする膨張弁13と、膨張弁13から排出された作動媒体Dを加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする蒸発器14と、蒸発器14に負荷流体Eを供給するポンプ15と、凝縮器12に流体Fを供給するポンプ16とを具備して概略構成されるシステムである。

冷凍サイクルシステム10においては、以下の(i)〜(iv)のサイクルが繰り返される。 (i)蒸発器14から排出された作動媒体蒸気Aを圧縮機11にて圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする(以下、「AB過程」という。)。 (ii)圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを凝縮器12にて流体Fによって冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする。この際、流体Fは加熱されて流体F’となり、凝縮器12から排出される(以下、「BC過程」という。)。 (iii)凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張弁13にて膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする(以下、「CD過程」という。)。 (iv)膨張弁13から排出された作動媒体Dを蒸発器14にて負荷流体Eによって加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする。この際、負荷流体Eは冷却されて負荷流体E’となり、蒸発器14から排出される(以下、「DA過程」という。)。

冷凍サイクルシステム10は、断熱・等エントロピ変化、等エンタルピ変化および等圧変化からなるサイクルシステムである。作動媒体の状態変化を、図2に示される圧力−エンタルピ線(曲線)図上に記載すると、A、B、C、Dを頂点とする台形として表すことができる。

AB過程は、圧縮機11で断熱圧縮を行い、高温低圧の作動媒体蒸気Aを高温高圧の作動媒体蒸気Bとする過程であり、図2においてAB線で示される。 BC過程は、凝縮器12で等圧冷却を行い、高温高圧の作動媒体蒸気Bを低温高圧の作動媒体Cとする過程であり、図2においてBC線で示される。この際の圧力が凝縮圧である。圧力−エンタルピ線とBC線の交点のうち高エンタルピ側の交点T1が凝縮温度であり、低エンタルピ側の交点T2が凝縮沸点温度である。ここで、HFO−1123が他の作動媒体との混合媒体であって非共沸混合媒体である場合の温度勾配はT1とT2の差として示される。

CD過程は、膨張弁13で等エンタルピ膨張を行い、低温高圧の作動媒体Cを低温低圧の作動媒体Dとする過程であり、図2においてCD線で示される。なお、低温高圧の作動媒体Cにおける温度をT3で示せば、T2−T3が(i)〜(iv)のサイクルにおける作動媒体の過冷却度(以下、必要に応じて「SC」で示す。)となる。 DA過程は、蒸発器14で等圧加熱を行い、低温低圧の作動媒体Dを高温低圧の作動媒体蒸気Aに戻す過程であり、図2においてDA線で示される。この際の圧力が蒸発圧である。圧力−エンタルピ線とDA線の交点のうち高エンタルピ側の交点T6は蒸発温度である。作動媒体蒸気Aの温度をT7で示せば、T7−T6が(i)〜(iv)のサイクルにおける作動媒体の過熱度(以下、必要に応じて「SH」で示す。)となる。なお、T4は作動媒体Dの温度を示す。

ここで、作動媒体のサイクル性能は、例えば、作動媒体の冷凍能力(以下、必要に応じて「Q」で示す。)と成績係数(以下、必要に応じて「COP」で示す。)で評価できる。作動媒体のQとCOPは、作動媒体のA(蒸発後、高温低圧)、B(圧縮後、高温高圧)、C(凝縮後、低温高圧)、D(膨張後、低温低圧)の各状態における各エンタルピ、hA、hB、hC、hDを用いると、下式(A)、(B)からそれぞれ求められる。

Q=hA−hD …(A) COP=Q/圧縮仕事=(hA−hD)/(hB−hA) …(B)

なお、COPは冷凍サイクルシステムにおける効率を意味しており、COPの値が高いほど少ない入力、例えば圧縮機を運転するために必要とされる電力量、により大きな出力、例えば、Qを得ることができることを表している。

一方、Qは負荷流体を冷凍する能力を意味しており、Qが高いほど同一のシステムにおいて、多くの仕事ができることを意味している。言い換えると、大きなQを有する場合は、少量の作動媒体で目的とする性能が得られることを表しており、システムの小型化が可能となる。

本発明の熱サイクルシステム用組成物を用いた本発明の熱サイクルシステムによれば、例えば、図1に示される冷凍サイクルシステム10において、従来から空調機器等で一般的に使用されているR410A(HFC−32とHFC−125の質量比1:1の混合媒体)を用いた場合に比べて、地球温暖化係数を格段に低く抑えながら、QとCOPをともに高いレベル、すなわち、R410Aと同等またはそれ以上のレベルに設定することが可能である。

さらに、用いる熱サイクルシステム用組成物が含有する作動媒体の温度勾配を一定値以下に抑える組成とすることも可能であり、その場合、圧力容器から冷凍空調機器へ充てんされる際の組成変化や冷凍空調機器からの冷媒漏えいが生じた場合の冷凍空調機器内の冷媒組成の変化を低いレベルに抑えることができる。また、本発明の熱サイクルシステム用組成物によれば、これが含む作動媒体が含有するHFO−1123の安定性を向上できることから、該組成物を用いた熱サイクルシステムは従来よりも作動媒体の長命化が図れ、長期間の安定した稼働が可能である。

なお、熱サイクルシステムの稼働に際しては、水分の混入や、酸素等の不凝縮性気体の混入による不具合の発生を避けるために、これらの混入を抑制する手段を設けることが好ましい。

熱サイクルシステム内に水分が混入すると、特に低温で使用される際に問題が生じる場合がある。例えば、キャピラリーチューブ内での氷結、作動媒体や冷凍機油の加水分解、サイクル内で発生した酸成分による材料劣化、コンタミナンツの発生等の問題が発生する。特に、冷凍機油がポリグリコール油、ポリオールエステル油等である場合は、吸湿性が極めて高く、また、加水分解反応を生じやすく、冷凍機油としての特性が低下し、圧縮機の長期信頼性を損なう大きな原因となる。したがって、冷凍機油の加水分解を抑えるためには、熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する必要がある。

熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する方法としては、乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト等)等の水分除去手段を用いる方法が挙げられる。乾燥剤は、液状の熱サイクルシステム用組成物と接触させることが、脱水効率の点で好ましい。例えば、凝縮器12の出口、または蒸発器14の入口に乾燥剤を配置して、熱サイクルシステム用組成物と接触させることが好ましい。

乾燥剤としては、乾燥剤と熱サイクルシステム用組成物との化学反応性、乾燥剤の吸湿能力の点から、ゼオライト系乾燥剤が好ましい。

ゼオライト系乾燥剤としては、従来の鉱物系冷凍機油に比べて吸湿量の高い冷凍機油を用いる場合には、吸湿能力に優れる点から、下式(C)で表される化合物を主成分とするゼオライト系乾燥剤が好ましい。 M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O …(C) ただし、Mは、Na、K等の1族の元素またはCa等の2族の元素であり、nは、Mの原子価であり、x、yは、結晶構造にて定まる値である。Mを変化させることにより細孔径を調整できる。

乾燥剤の選定においては、細孔径および破壊強度が重要である。 熱サイクルシステム用組成物が含有する作動媒体や安定剤の分子径よりも大きい細孔径を有する乾燥剤を用いた場合、作動媒体や安定剤が乾燥剤中に吸着され、その結果、作動媒体や安定剤と乾燥剤との化学反応が生じ、不凝縮性気体の生成、乾燥剤の強度の低下、吸着能力の低下等の好ましくない現象を生じることとなる。

したがって、乾燥剤としては、細孔径の小さいゼオライト系乾燥剤を用いることが好ましい。特に、細孔径が3.5オングストローム以下である、ナトリウム・カリウムA型の合成ゼオライトが好ましい。作動媒体や安定剤の分子径よりも小さい細孔径を有するナトリウム・カリウムA型合成ゼオライトを適用することによって、作動媒体や安定剤を吸着することなく、熱サイクルシステム内の水分のみを選択的に吸着除去できる。言い換えると、作動媒体や安定剤の乾燥剤への吸着が起こりにくいことから、熱分解が起こりにくくなり、その結果、熱サイクルシステムを構成する材料の劣化やコンタミナンツの発生を抑制できる。

ゼオライト系乾燥剤の大きさは、小さすぎると熱サイクルシステムの弁や配管細部への詰まりの原因となり、大きすぎると乾燥能力が低下するため、約0.5〜5mmが好ましい。形状としては、粒状または円筒状が好ましい。

ゼオライト系乾燥剤は、粉末状のゼオライトを結合剤(ベントナイト等。)で固めることにより任意の形状とすることができる。ゼオライト系乾燥剤を主体とするかぎり、他の乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ等。)を併用してもよい。 熱サイクルシステム用組成物に対するゼオライト系乾燥剤の使用割合は、特に限定されない。

さらに、熱サイクルシステム内に不凝縮性気体が混入すると、凝縮器や蒸発器における熱伝達の不良、作動圧力の上昇という悪影響をおよぼすため、極力混入を抑制する必要がある。特に、不凝縮性気体の一つである酸素は、作動媒体や冷凍機油と反応し、分解を促進する。

不凝縮性気体濃度は、作動媒体の気相部において、作動媒体に対する容積割合で1.5体積%以下が好ましく、0.5体積%以下が特に好ましい。

以上説明した本発明の熱サイクルシステムにあっては、本発明の熱サイクルシステム用組成物を用いることで、安定性が高く、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分なサイクル性能が得られるとともに、温度勾配に係る問題も殆どない。

以下、本発明について、実施例(例1〜43、例64〜103、例124〜163、例184〜207、例220〜262、例284〜326、例347〜377、例392〜434、例455〜497、例518〜537)および比較例(例44〜63、例104〜123、例164〜183、例208〜219、例263〜283、例327〜346、例378〜391、例435〜454、例498〜517、例538〜546)を参照しながらさらに詳細に説明する。各例においては、表4〜39に示した配合(質量%)で混合して熱サイクルシステム用組成物を製造した。

ここで、作動媒体、安定剤、冷凍機油としては、以下に示すものを使用した。なお、作動媒体については、それを構成する作動媒体について表2、表3にまとめて示した。

安定剤1:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール 安定剤2:1,4−ベンゾキノン 安定剤3:フェノチアジン 安定剤4:3−メトキシフェノール

冷凍機油1:ペンタエリスリトールオクタン酸ノナン酸エステル、炭素/酸素のモル比が4.8 冷凍機油2:エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルの共重合体でエチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルのモル比が7/1で、炭素/酸素のモル比が4.3 冷凍機油3:ポリプロピレングリコール両末端をメチルエーテル化した化合物、炭素/酸素のモル比が2.7 冷凍機油4:アルキルベンゼン(炭素数が10〜13のアルキルベンゼンと、炭素数が14〜30のアルキルベンゼンの混合物で、動粘度が40℃で20mm2/sのもの)

[安定性試験] 例1〜391で得られた熱サイクルシステム用組成物を、内部に150mlのガラス筒を入れた200mlのステンレス製の耐圧容器にそれぞれ入れた。ここで、作動媒体の配合量は50g、安定剤の配合量は0.5g(作動媒体に対して1質量%)であり、冷凍機油を配合する場合は、50gを加える。さらに、酸素濃度を18体積%になるように調整した空気を入れて密閉した。次いで、密閉した耐圧容器を恒温槽(パーフェクトオーブンPHH−202、エスペック株式会社製)中に175℃で14日間保存し、次のように作動媒体の酸分量および冷凍機油の全酸価分析を行った。

(酸分量の測定) 上記試験後の耐圧容器を室温になるまで静置した。 吸収瓶4本にそれぞれ純水を100ml入れ、導管で直列に連結したものを準備した。 室温になった耐圧容器に、純水を加えた吸収瓶を連結したものをつなぎ、徐々に耐圧容器の弁を開放して、冷媒ガスを吸収瓶の水中に導入し、冷媒ガスに含まれる酸分を抽出した。 抽出後の吸収瓶の水は、1本目と2本目を合わせて指示薬(BTB:ブロモチモールブルー)を1滴加え、1/100N−NaOHアルカリ標準液を用いて滴定した。同時に、吸収瓶の3本目および4本目の水を合わせて同様に滴定し、測定ブランクとした。これら測定値と測定ブランクの値から、試験後の冷媒に含まれる酸分をHCl濃度として求めた。

(冷凍機油の全酸価分析) JIS−K2211(冷凍機油)の全酸価分析方法に準拠した方法で、作動媒体ガス回収後の冷凍機油全酸価値の測定を次のように行った。上記試験後の耐圧容器内に残った冷凍機油を秤りとり、トルエン/イソプロパノール/水混合溶液に溶解させ、指示薬としてp−ナフトールベンゼインを用いて、1/100N−KOH・エタノール溶液にて中和滴定し、滴定量から冷凍機油の全酸価値(mg・KOH/g)を測定した。

本試験結果より、安定剤を配合した例1〜43、例64〜103、例124〜163、例184〜207、例220〜262、例284〜326、例347〜377、例392〜434、例455〜497、例518〜537において、酸分や全酸価値の上昇はみられなかったのに対し、安定剤を配合しなかった例44〜63、例104〜123、例164〜183、例208〜219、例263〜283、例327〜346、例378〜391、例435〜454、例498〜517、例538〜546の比較例では、いずれも酸分または全酸価値の上昇がみられた。したがって、比較例では、作動媒体の分解劣化が生じているものと考えられる。本実施例により、本発明の安定剤を配合した熱サイクルシステム用組成物は、作動媒体の寿命を長くして該組成物の使用期間を長く交換時期を遅くでき、効率的な熱サイクルシステムとするに適していることが明らかになった。

本発明の熱サイクルシステム用組成物および該組成物を用いた熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等)、空調機器(ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等)、発電システム(廃熱回収発電等)、熱輸送装置(ヒートパイプ等)に利用できる。 なお、2014年2月24日に出願された日本特許出願2014−033345号、2014年6月20日に出願された日本特許出願2014−127745号および2014年7月18日に出願された日本特許出願2014−148348号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

10…冷凍サイクルシステム、11…圧縮機、12…凝縮器、13…膨張弁、14…蒸発器、15,16…ポンプ

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