冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置

申请号 JP2017505979 申请日 2015-03-19 公开(公告)号 JP6343391B2 公开(公告)日 2018-06-13
申请人 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社; 发明人 松本 茂紀;
摘要
权利要求

下記一般式(1) [但し、式中において、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、nは、2以上の整数を表す。] で表される構造単位を有するポリオールエステルを含んでなる冷凍機油と、ジフルオロメタンを含む冷媒とが封入され、 前記ポリオールエステルは、前記構造単位を有する分子鎖が環状に重合してなる環状ポリオールエステル、及び、前記構造単位を有する分子鎖同士が前記構造単位に重合している被架橋構造単位を介して互いに架橋されてなり、前記構造単位におけるnが3以上である架橋ポリオールエステルのいずれか一方のみ又は両方からなることを特徴とする冷凍空調用圧縮機。前記環状ポリオールエステルは、下記一般式(2) [但し、式中において、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、nは、2以上の整数を表す。]で表され、 前記架橋ポリオールエステルは、下記一般式(3)、(4)及び(5) [但し、式中において、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、*は、**との結合位置原子の結合位置、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基の結合位置、又は、直鎖状若しくは分枝状のアルカノイル基の結合位置を表し、**は、*又は***との結合位置、ヒドロキシ基の結合位置、直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基の結合位置、又は、直鎖状若しくは分枝状のアルカノイルオキシ基の結合位置を表し、Xは、直鎖状若しくは分枝状のアルカンジイル基若しくは二重結合を表し、***は、**との結合位置を表し、nは、3以上の整数を表す。]で表される構造単位のそれぞれを有することを特徴とする請求項1に記載の冷凍空調用圧縮機。前記アルキル基が、炭素数が1以上5以下のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍空調用圧縮機。前記アルキル基が、炭素数が3以上5以下のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍空調用圧縮機。前記アルキル基が、分枝状のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍空調用圧縮機。前記架橋ポリオールエステルは、前記分子鎖の末端に直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍空調用圧縮機。前記ポリオールエステルが、前記環状ポリオールエステル及び前記架橋ポリオールエステルのいずれか一方のみからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍空調用圧縮機。前記冷媒が、ジフルオロメタンのみからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍空調用圧縮機。請求項1又は請求項2に記載の冷凍空調用圧縮機を備えることを特徴とする冷凍空調装置。

说明书全文

本発明は、冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置に関する。

冷凍空調装置の分野においては、地球環境保全の観点から、より環境負荷が小さく、高効率な代替冷媒が求められている。特に、古くから用いられてきたCFC(ChloroFluorocarbons)やHCFC(HydroChloroFluoroCarbons)は、オゾン層破壊や地球温暖化を防止するためにHFC(HydroFluoroCarbons)への転換が急速に行われている。代替冷媒の性能としては、環境負荷が小さいことに加え、エネルギ効率が高く、毒性が弱く、燃焼性が低いこと等が求められる。

気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)以降、ルームエアコン、パッケージエアコン等においては、R410Aが使用されるようになり、また、カーエアコンにおいては、HFC134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)が多用されるようになっている。R410Aは、HFC32(ジフルオロメタン)50質量%とHFC125(ペンタフルオロエタン)50質量%との混合冷媒であり、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が2088とされている。また、HFC134aは、GWPが1430とされている。

しかしながら、EU(欧州連合)において、2011年以降GWPが150を超える冷媒を使用したカーエアコンの搭載が禁止されるなど、更なる規制拡大の可能性が生じている。そこで、近年、R410A等に代わる新たな代替冷媒の検討が加速している。代替冷媒の候補としては、HFC32(ジフルオロメタン)、HFO1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン)、HFO1234ze(トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)等の単独冷媒や、これらの混合組成による混合冷媒が挙げられている。

冷凍空調装置に備えられる圧縮機には冷凍機油が使用される。冷凍機油は、圧縮機の内部において、摺動部の潤滑、電動機の冷却、冷媒の密封等の各種の役割を担う。しかしながら、冷凍機油と冷媒との相溶性が低いと、冷凍機油と冷媒とが十分に混和せず、冷凍機油相と冷媒相とが分離してしまう。そして、冷凍機油と分離した冷媒は、冷凍機油と摺動部との接触を局所的に妨げる。その結果、冷凍機油による適切な潤滑が行われず、圧縮機の耐久性が損なわれる恐れが生じる。

また、冷凍機油の一部は、圧縮機の内部で気化又は飛沫化し、冷媒と共に圧縮機の外部に出て冷凍サイクルを循環する。冷凍機油と冷媒との相溶性が低いと、冷凍機油は、配管類等の内部で凝集し、冷凍サイクル中に滞留してしまう。そして、圧縮機への冷凍機油の戻り量が低下し、冷凍機油の減量により圧縮機の機能が低下してしまう。また、冷凍サイクル中に滞留する冷凍機油は、冷媒の循環や熱交換を妨げることがある。その結果、冷凍空調装置のCOP(Coefficient Of Performance)等の効率が低下するに至る。したがって、代替冷媒への転換に際しては、冷媒と併用される冷凍機油も適切な種類に転換することが求められる。

従来、HFC32(ジフルオロメタン)との併用に適した冷凍機油としては、ポリオールエステルを基油とした冷凍機油が知られている。特許文献1には、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びネオペンチルグリコールから選択されるネオペンチルポリオールの少なくとも1種と、線状及び分岐鎖の脂肪族カルボン酸類から選択される脂肪族カルボン酸の少なくとも1種又はかかる酸の1種もしくは複数種の被エステル化性誘導体との反応生成物からなるエステル基質の油を潤滑剤とすることについて記載されている。

冷凍空調装置の環境性能は、ジフルオロメタンのようにGWPが低い代替冷媒を採用することによって向上させることができる。しかも、GWPが低い代替冷媒は一般に潜熱が高い傾向があるため、ジフルオロメタンを代替冷媒として採用すると、冷凍空調装置に封入すべき冷媒量を削減することができる。そして、冷媒量が削減されることによって、冷凍空調装置に備えられる配管類を細径化することも可能になる。

特表平08−502769号公報

しかしながら、従来のポリオールエステルを基油とした冷凍機油は、ジフルオロメタンとの良好な相溶性と、適度な高粘性とが両立したものとはなっていない。従来のポリオールエステルは、一般に、粘度が低過ぎる傾向がある。したがって、ポリオールエステルに更にジフルオロメタンが混和した状態ともなると、冷凍機油は、通常求められる準の粘度には殆ど達しなくなってしまう。つまり、従来のポリオールエステルを基油とした冷凍機油では、圧縮機の内部において摺動部の潤滑等の役割を十分に果たすことができない。

ポリオールエステルのような高分子の粘度を高める方法としては、高分子の高級化に拠るものがある。ところが、従来のポリオールエステルは、ジフルオロメタンとの相溶性が良好に備わっていない。そのため、特許文献1に記載されているように、エステル化に際してヘプタン酸等を用いて高級化を行うと、ポリオールエステルの非極性度が強まり過ぎて、ジフルオロメタンとの相溶性が大きく損なわれてしまう恐れがある。また、分子量の増大に伴って冷凍機油の放熱性も低下してしまう。したがって、圧縮機の機能の低下や、冷凍空調装置の効率の低下を招く可能性が高い。

また、特許文献1に記載されている反応生成物は、種々の分子構造の化合物が混在しており、ジフルオロメタンとの良好な相溶性や高粘度を発現するのに適した分子構造とはなっていない。そのため、冷凍空調装置の効率を十分な水準に保つのには適していない。

そこで、本発明は、良好な環境性能と良好な効率とを両立することが可能な冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置を提供することを目的とする。

前記課題を解決するために本発明に係る冷凍空調用圧縮機は、下記一般式(1)[但し、式中において、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、nは、2以上の整数を表す。]で表される構造単位を有するポリオールエステルを含んでなる冷凍機油と、ジフルオロメタンを含む冷媒とが封入され、前記ポリオールエステルは、前記構造単位を有する分子鎖が環状に重合してなる環状ポリオールエステル、及び、前記構造単位を有する分子鎖同士が前記構造単位に重合している被架橋構造単位を介して互いに架橋されてなり、前記構造単位におけるnが3以上である架橋ポリオールエステルのいずれか一方のみ又は両方からなることを特徴とする。

また、本発明に係る冷凍空調装置は、前記の冷凍空調用圧縮機を備えることを特徴とする。

本発明によれば、良好な環境性能と良好な効率とを両立することが可能な冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置を提供することができる。

本発明の一実施形態に係る空気調和機(冷凍空調装置)の構成を示す模式図である。

本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機の縦断面図である。

本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機に封入される冷凍機油と冷媒との易相溶性を説明する概念図である。

本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機に封入される冷凍機油の高粘性発現原理を説明する概念図である。

以下、本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置について、詳細に説明する。なお、以下の説明では、冷凍空調用圧縮機を備える冷凍空調装置の一例として、空気調和機を例にとって説明する。また、各図において共通する構成については、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。

<空気調和機> 図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和機(冷凍空調装置)の構成を示す模式図である。 図1に示すように、本実施形態に係る空気調和機100は、室外機1と、室内機3とを有している。室外機1は、圧縮機(冷凍空調用圧縮機)5と、四方弁10と、膨張弁6と、室外熱交換器2と、プロペラファン9とを備えている。一方、室内機3は、室内熱交換器4と、貫流ファン8とを備えている。

室外機1と室内機3との間は、配管7によって接続されている。配管7は、冷媒が室外機1と室内機3との間を循環する循環流路を形成している。配管7には、四方弁10、圧縮機5、室外熱交換器2、膨張弁6、室内熱交換器4がそれぞれ接続されている。冷媒は、四方弁10、室外熱交換器2、膨張弁6、室内熱交換器4、圧縮機5のそれぞれをこの順に通流し、再び四方弁10に戻るように循環することができる。また、冷媒は、四方弁10の切り替えによって、四方弁10、圧縮機5、室内熱交換器4、膨張弁6、室外熱交換器2のそれぞれをこの順に通流し、再び四方弁10に戻るように循環することができる。

図1に示す空気調和機100は、冷房運転と暖房運転とを四方弁10によって切り替えることが可能なヒートポンプ式の形態とされている。図1では、冷房運転における冷媒の循環方向を実線矢印で示している。また、暖房運転における冷媒の循環方向を破線矢印で示している。

冷房運転においては、室外熱交換器2が凝縮器、室内熱交換器4が蒸発器として機能する。圧縮機5によって圧縮されて高温高圧となった気体冷媒は、四方弁10を経て室外熱交換器2に供給される。そして、冷媒は、室外熱交換器2において外気と熱交換する。熱交換によって、外気は熱を奪い、高温高圧の気体冷媒は低温高圧の液体冷媒となる。この間に、プロペラファン9は、外気を吸気又は排気して熱交換を促進する。

次いで、冷媒は、膨張弁6によって低温低圧の気体冷媒と液体冷媒との二相状態となった後、室内熱交換器4に供給される。そして、冷媒は、室内熱交換器4において内気と熱交換する。熱交換によって低温低圧の冷媒は気化し、内気から熱を奪う。この間に、貫流ファン8は、冷却された内気を室内に送風する。その後、冷媒は、再び圧縮機5によって圧縮されてヒートポンプサイクル(冷凍サイクル)を循環する。

一方、暖房運転においては、室内熱交換器4が凝縮器、室外熱交換器2が蒸発器として機能する。圧縮機5によって圧縮されて高温高圧となった気体冷媒は、四方弁10を経て室内熱交換器4に供給される。そして、冷媒は、室内熱交換器4において内気と熱交換する。熱交換によって、内気は熱を奪い、高温高圧の気体冷媒は高圧の液体冷媒となる。この間に、貫流ファン8は、加温された内気を室内に送風する。

次いで、冷媒は、膨張弁6によって低温低圧の気体冷媒と液体冷媒との二相状態となった後、室外熱交換器2に供給される。そして、冷媒は、室外熱交換器2において外気と熱交換する。熱交換によって低温低圧の冷媒は気化し、外気から熱を奪う。この間に、プロペラファン9は、外気を吸気又は排気して熱交換を促進する。その後、冷媒は、再び圧縮機5によって圧縮されてヒートポンプサイクルを循環する。

空気調和機100の配管7には、ジフルオロメタンを含む冷媒が封入される。冷媒としては、ジフルオロメタンからなる単独冷媒及びジフルオロメタンと他の冷媒を含む混合冷媒のいずれが封入されてもよい。混合冷媒としては、ジフルオロメタンを50質量%以上含む冷媒が好ましく、ジフルオロメタンを70質量%以上含む冷媒がより好ましく、ジフルオロメタンを90質量%以上含む冷媒がさらに好ましい。

混合冷媒は、他の冷媒として、例えば、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、プロペン(R1270)、プロパン(R290)、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、フルオロエタン(R161)、1,1−ジフルオロエタン(R152a)等を含む混成とすることができる。

<圧縮機> 図2は、本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機の縦断面図である。 図2に示すように、本実施形態に係る冷凍空調用圧縮機(圧縮機)5は、旋回スクロール11や固定スクロール12によって構成される圧縮機構部と、電動機13と、密閉容器14とを備えている。この圧縮機5は、スクロール方式の密閉型の圧縮機とされている。電動機13は圧縮機構部を駆動し、圧縮機構部は冷媒を圧縮する。密閉容器14は、これら圧縮機構部や電動機13を収納している。

密閉容器14内の上部側には、圧縮機構部が配置されている。圧縮機構部は、詳細には、旋回スクロール11、固定スクロール12、フレーム17、オルダムリング21等によって構成されている。また、密閉容器14内の下部側には、冷凍機油が溜められた液溜15が配置されている。圧縮機構部と液溜15とに挟まれた中間部には、電動機13が配置されている。

固定スクロール12は、端板12bと、端板12b上に立設された渦巻状のラップ12aとによって構成されている。固定スクロール12は、密閉容器14の内面に接合されているフレーム17に、ボルト16によって固定されている。固定スクロール12の端板12bの中央には、吐出口12cが貫通して設けられている。また、固定スクロール12のラップ12aの側方には、吸入口12dが設けられている。

旋回スクロール11は、端板11bと、端板11b上に立設された渦巻状のラップ11aとによって構成されている。旋回スクロール11のラップ11aと、固定スクロール12のラップ12aとは、互いに噛み合うように設けられている。ラップ11a,12a同士が互いに噛み合うことによって、圧縮室20が形成される。旋回スクロール11の端板11bの背面中央には、旋回軸受11cが固定されている。旋回スクロール11は、旋回軸受11cに軸支されるクランク軸18によって、固定スクロール12とフレーム17との間で旋回運動可能に支持されている。

オルダムリング21は、旋回スクロール11とフレーム17との間に備えられている。オルダムリング21が上部側に有するキーは、旋回スクロール11の端板11bの背面に設けられたキー溝と係合している。一方、下部側に有するキーは、フレーム17に設けられたキー溝と係合している。旋回運動を行う旋回スクロール11は、オルダムリング21によって自転運動が防止される。

電動機13は、ロータの中央にクランク軸18を備えている。クランク軸18は、圧縮機5の上部側においては、主軸受17aに回動可能に支持されている。一方、圧縮機5の下部側においては、下軸受19に回動可能に支持されている。クランク軸18の上端には、クランク軸18の主軸から偏心したクランクが設けられており、クランクは、旋回軸受11cに軸支されている。一方、クランク軸18の下端の下方には吸引管15aが連設されている。吸引管15aの一端は、油溜15内に挿入されている。

クランク軸18は、軸方向に貫通するように設けられた給油通路18aを有している。給油通路18aは、旋回軸受11c、主軸受17a及び下軸受19にそれぞれ軸支される高さにおいて分岐している。これらの分岐は、クランク軸18の側面に向けて貫通しており、油溜15から旋回軸受11c、主軸受17a又は下軸受19の摺動部に至る冷凍機油の流路が形成されている。

圧縮機5の上部には、吸込パイプ14aが設けられている。吸込パイプ14aは、冷凍サイクルを構成する配管7(図1参照)と、圧縮室20に通じる吸入口12dとの間を連通している。また、圧縮機5の側部には、吐出パイプ14bが設けられている。吐出パイプ14bは、冷凍サイクルを構成する配管7(図1参照)と、フレーム17の下方の空間との間を連通している。

圧縮機5において電動機13が作動すると、旋回スクロール11は固定スクロール12に対して偏心した軌道で旋回運動する。ラップ11a,12aに挟まれて気密化されている圧縮室20は、この旋回運動によって、ラップ11a,12aの周方向外側から中心側に移動していく。この移動に伴って圧縮室20の容積が縮小していくことで、冷媒の圧縮が行われる。

すなわち、冷凍サイクルを構成する配管7(図1参照)を通流する冷媒は、電動機13の稼働によって、吸込パイプ14aから吸い込まれ、吸入口12dを通って圧縮室20に移送されて圧縮される。そして、圧縮された冷媒は、吐出口12cを通って吐出圧室14cに至る。その後、フレーム17に設けられた連通孔を通って吐出パイプ14bから取り出され、再び配管7を循環する。

冷媒の圧縮に伴い、油溜15に溜められている冷凍機油は、圧差等によって吸引管15aに吸い上げられる。次いで、冷凍機油は、給油通路18aを通って、旋回軸受11c、主軸受17a、下軸受19、圧縮機構部等の摺動部に供給される。そして、摺動部の潤滑、電動機13の冷却、冷媒の密封等に寄与する。また、冷凍機油の一部は、圧縮機5の稼働に伴って気化又は飛沫化し、冷媒と共に配管7を通流した後、再び圧縮機5に戻る。

<冷凍機油> 冷凍機油は、下記一般式(1)[但し、式中において、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、nは、2以上の整数を表す。]で表される構造単位を有するポリオールエステルを含んでいる。一般式(1)で表される構造単位を有するポリオールエステルは、環状ポリオールエステル及び架橋ポリオールエステルのいずれか一方のみ又は両方からなるように構成されている。

一般式(1)で表されるポリ[2,2−ジ(アルカノイルオキシメチル)オキシトリメチレン]の構造単位は、繰り返し数(n)が少なくとも2以上である。このような構造単位が、ポリオールエステルの分子鎖(主鎖)の少なくとも一部を構成している。そして、主鎖に対しては、アルカノイルオキシメチル基の側鎖、すなわち、R1及びR2で表されるアルキル基とカルボニル基とを有する側鎖が結合している。ここで、このような側鎖を有するポリオールエステルを含む冷凍機油の作用効果について説明する。

図3は、本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機に封入される冷凍機油と冷媒との易相溶性を説明する概念図である。 冷媒のジフルオロメタン(HFC32)は、強い極性分子である。図3に示すように、ジフルオロメタンの水素原子は、電気的に陽性(+)を帯び、フッ素原子は、電気的に陰性(−)を帯びている。一方、一般式(1)で表される構造単位を有するポリオールエステルは、カルボニル基とアルキル基とを有している。

冷凍機油と冷媒のジフルオロメタンとが混合すると、図3に示すように、ポリオールエステルの分子鎖200は、電気的に陰性(−)を帯びているカルボニル基の酸素原子を介して、ジフルオロメタンの水素原子側に配位することができる。また、ポリオールエステルの分子鎖300,400は、電気的に陽性(+)を帯びているアルキル基の水素原子を介して、ジフルオロメタンのフッ素原子側に配位することができる。なお、分子鎖300のアルキル基は直鎖状であり、分子鎖400のアルキル基は分枝状であるが、必ずしもこのような組み合わせに制限されない。また、これらのアルキル基とカルボニル基とは、同一分子鎖及び異なる分子鎖のいずれに存在していてもよい。

図3において網掛けで示すように、分子鎖200のカルボニル基の酸素原子とジフルオロメタンの水素原子との間、及び、分子鎖300,400のアルキル基の水素原子とジフルオロメタンのフッ素原子との間には、比較的強い双極子相互作用が形成される。このような強い双極子相互作用は、ポリオールエステルのジフルオロメタンに対する配位をエネルギ的に安定させる。このような作用機序により、一般式(1)で表される構造単位を有するポリオールエステルは、ジフルオロメタンに対して良好な相溶性を示すものとなる。

図4は、本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機に封入される冷凍機油の高粘性発現原理を説明する概念図である。 一般式(1)で表される構造単位を有するポリオールエステルは、図4に示すように、主鎖中の一つの炭素原子500に二本の側鎖が結合した繰り返し構造単位を有している。また、この構造単位の繰り返し数は2以上であり、炭素原子500に結合した側鎖は重合方向に繰り返し配列している。そして、図4に示すように、側鎖のカルボニル基の酸素原子501は、電気的に陰性(−)を帯びている。また、主鎖を構成する酸素原子も、陰性(−)が比較的強い状態にある。

ポリオールエステルの側鎖は、このような酸素原子同士の電気的な反発によって、空間的配置(コンホメーション)が制約される。具体的には、主鎖中の一つの炭素原子500に結合している二本の側鎖のカルボニル基同士や、側鎖のカルボニル基と主鎖の酸素原子との間で反発が生じる。また、重合方向に繰り返し配列している側鎖のカルボニル基同士においても反発が生じる。その結果、ポリオールエステルの側鎖は、主鎖から立ち上がる方向に配向することになる。そして、ポリオールエステルの分子には、図4において網掛けで示すような二次元的な広がりを持った平面的構造が形成され得るようになる。

ポリオールエステルは、このような平面的構造が形成されることにより、分子同士でより強く相互作用することができる。また、側鎖が配向することにより、ポリオールエステルの主鎖(分子鎖)は、伸長した立体構造をとり易くなる。そのため、ポリオールエステルの分子同士の強い相互作用が、分子鎖の重合方向にわたって形成されるようになる。このような作用機序により、一般式(1)で表される構造単位を有するポリオールエステルは、良好な高粘度を示すものとなる。

また、このような作用機序による高粘度化は、ポリオールエステルを高級化すること無く実現し得るものである。したがって、高級化によってジフルオロメタンとの相溶性を損なうこと無く、冷凍機油を適切な高粘度にすることが可能になる。また、高級化によってポリオールエステルの熱容量を増大させ無くて済むので、冷凍機油の放熱性は損なわれ難い。そのため、冷凍空調装置の効率を高水準にするのに適している。

一般式(1)で表される構造単位を有するポリオールエステルは、このような側鎖の特徴に加えて、さらに主鎖自体にも構造上の特徴を有している。このポリオールエステルは、環状ポリオールエステル及び架橋ポリオールエステルのいずれか一方のみ又は両方からなり、一般式(1)で表される構造単位を有する分子鎖(主鎖)が、所定の高次分子構造を有するものである。

環状ポリオールエステルは、一般式(1)で表される構造単位を有する分子鎖が環状に重合してなる環状構造を有する。主鎖が環状に重合していることにより、環状ポリオールエステルの環化した分子鎖は、二軸方向に平面的な広がりを持った立体構造を採り得るようになっている。そのため、環状ポリオールエステルは、液相中において外力を受けると分子同士で互いに同軸方向に配向することができる。

なお、環状ポリオールエステルが有する環状構造は、環状ポリオールエステルの分子内に単数存在していてもよいし、複数存在していてもよい。すなわち、環状ポリオールエステルは、一本の分子鎖の両末端が環化した単環式であってもよいし、複数の独立した環状構造を有するか、或いは、単環が分子鎖で架橋された環状構造を有する複環式であってもよい。

一方、架橋ポリオールエステルは、一般式(1)で表される構造単位を有する分子鎖同士がこの構造単位に重合している被架橋構造単位を介して互いに架橋されてなる架橋構造を有する。分子鎖同士が互いに架橋されていることにより、架橋ポリオールエステルの各分子鎖は、二軸方向に平面的な広がりを持った立体構造を採り得るようになっている。そのため、架橋ポリオールエステルは、液相中において外力を受けると分子同士で互いに同軸方向に配向することができる。

なお、架橋ポリオールエステルが有する被架橋構造単位は、一般式(1)で表される構造単位と共に、ポリオールエステルの分子鎖(主鎖)の少なくとも一部を構成する。被架橋構造単位は、一般式(1)で表される構造単位と同様に、オキシトリメチレン構造の主鎖を有する。複数のポリオールエステルの分子鎖がそれぞれ有している被架橋構造単位に、他の多官能基が結合することによって、各分子鎖同士が架橋されることになる。多官能基としては、一般式(1)で表される構造単位と異なる構造の基であれば、特に制限されるものではないが、二官能基が好ましく、ジカルボキシラートがより好ましく、直鎖状若しくは分枝状のアルカンジカルボキシラートがさらに好ましい。

環状ポリオールエステルや架橋ポリオールエステルが分子同士で互いに同軸方向に配向すると、側鎖の配向により形成される平面的構造(図4参照)が並列状に配列し易くなる。そのため、これらの平面的構造を介した分子間の相互作用は、ポリオールエステルが外力を受けることによって、より強められることになる。したがって、環状ポリオールエステルや架橋ポリオールエステルは、圧縮機5の摺動部で発生するせん断応力によって分子同士で配向することにより、一層高い粘度を示すようになり、摺動部の潤滑や冷媒の密封に優れた性能を発揮することができる。

環状ポリオールエステルとしては、下記一般式(2)[但し、式中において、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、nは、2以上の整数を表す。]で表される化合物が好ましい。この化合物は、一般式(1)で表される構造単位のみが環状に重合した分子構造を有するものである。このような化合物は、ジフルオロメタンとの良好な相溶性と適切な高粘度とを有していながら熱容量も抑えられている点で有利である。

一方、架橋ポリオールエステルとしては、下記一般式(3)、(4)及び(5)[但し、式中において、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、*は、**との結合位置、水素原子の結合位置、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基の結合位置、又は、直鎖状若しくは分枝状のアルカノイル基の結合位置を表し、**は、*又は***との結合位置、ヒドロキシ基の結合位置、直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基の結合位置、又は、直鎖状若しくは分枝状のアルカノイルオキシ基の結合位置を表し、Xは、直鎖状若しくは分枝状のアルカンジイル基若しくは二重結合を表し、***は、**との結合位置を表し、nは、3以上の整数を表す。]で表される構造単位のそれぞれを有する化合物が好ましい。

この化合物は、一般式(3)で表される構造単位と、この構造単位に重合する一般式(4)で表される被架橋構造単位とをそれぞれ有する分子鎖同士が、一般式(4)で表される被架橋構造単位を介して架橋されるものである。一般式(4)で表される被架橋構造単位には、一般式(5)で表される二官能基が結合することによって架橋が形成される。このような化合物は、ジフルオロメタンとの相溶性が良好であり、分子同士の配向性の制御にも適し、高粘度化させ易い点で有利である。

架橋ポリオールエステルとしては、鎖状の分子鎖同士が架橋された化合物、環状の分子鎖同士が架橋された化合物、及び、鎖状の分子鎖と環状の分子鎖とが架橋された化合物のいずれであってもよい。また、架橋される各分子鎖の重合度は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。但し、これらの中でも好ましい化合物は、鎖状の分子鎖同士が架橋された化合物である。鎖状の分子鎖は合成収率が比較的高いため、このような架橋ポリオールエステルであれば合成効率が良くなる。

架橋ポリオールエステルを構成する分子鎖の数は、特に制限されるものではない。配向性を有する架橋ポリオールエステルは、一般式(1)、すなわち一般式(3)で表される構造単位を有する分子鎖の少なくとも二分子以上を互いに架橋させることで得ることができる。但し、分子鎖の数は、冷凍機油を適度な高粘度とし冷凍機油の放熱性を損なわないようにする観点からは、3分子以下が好ましく、2分子がより好ましい。

架橋ポリオールエステルを構成する架橋の数は、特に制限されるものではない。配向性を有する架橋ポリオールエステルは、少なくとも一つの多官能基(一般式(5)で表される構造単位など)によって架橋されていれば得ることができる。また、各分子鎖における架橋のの結合位置は、主鎖の中間部であってもよいし、主鎖の末端であってもよい。架橋の数は、架橋ポリオールエステルの配向性を高める観点からは、2以上あることが好ましく、一対の分子鎖間に2以上あることがより好ましい。架橋の数が2以上あると、架橋ポリオールエステルは、二次元的な広がりを持った平面的な分子構造をより安定にとるようになる。そのため、外力が加えられた場合には、分子同士で並列状に配向して分子間でより強く相互作用することができる。

架橋ポリオールエステルは、鎖状の分子鎖の末端に、直鎖状若しくは分枝状のアルカノイル基、又は、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を有することが好ましい。鎖状の分子鎖の末端にアルカノイル基、すなわちO末端(一般式(3)において*で示す)においてはアルカノイル基、C末端(一般式(3)及び(4)において**で示す)においてはアルカノイルオキシ基が備えられ、或いは、鎖状の分子鎖の末端にアルキル基、すなわちO末端においてはアルキル基、C末端においてはアルコキシ基が備えられると、ジフルオロメタンが電気的に陽性(+)を帯びた水素原子とより相互作用し易くなる。また、架橋ポリオールエステルの粘度もより高められる。

架橋ポリオールエステルは、繰り返し数(n)が3以上である場合には、鎖状の分子鎖の末端に、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を有していてもよい。鎖状の分子鎖の末端にアルキル基、すなわちO末端においてはアルキル基、C末端においてはアルコキシ基が備えられている分子鎖は、架橋ポリオールエステルの合成時において、重合方向の制御を行いつつ得ることができる点でさらに有利である。

架橋ポリオールエステルとしては、下記一般式(6)[但し、式中において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を表し、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子、又は、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、又は、直鎖状若しくは分枝状のアルカノイル基を表し、Xは、直鎖状若しくは分枝状のアルカンジイル基若しくは二重結合を表し、p、q、r及びsは、それぞれ独立して0以上の整数を表し、p及びqの少なくとも一方は3以上の整数であり、r及びsの少なくとも一方は3以上の整数である。]で表される化合物がより好ましい。

この化合物は、一般式(3)で表される構造単位と、この構造単位に重合する一般式(4)で表される被架橋構造単位とをそれぞれ有する二本の分子鎖同士が、一般式(4)で表される被架橋構造単位を介して架橋されたものである。一般式(4)で表される被架橋構造単位には、一般式(5)で表される二官能基が一基結合することによって架橋が形成されている。また、被架橋構造単位の未架橋基には、アルカノイルオキシ基が結合している。このような化合物は、ジフルオロメタンとの良好な相溶性と適切な高粘度とを有していながら熱容量も抑えられている点で有利である。

以上の各一般式における繰り返し数(n)は、環状ポリオールエステルにおいては、2以上の整数であり、好ましくは3以上の整数であり、より好ましくは4以上の整数である。一方、架橋ポリオールエステルにおいては、3以上の整数であり、好ましくは4以上の整数である。繰り返し数(n)が増すと、配向する多数の側鎖により、ポリオールエステルの粘度をより高くすることができる。一方、繰り返し数(n)が過大であると、冷凍機油の粘性が適切な水準を逸脱したり、分子同士の配向が実現され難くなり得る。そのため、nの上限は、10以下とすることが好ましく、8以下とすることがより好ましく、6以下とすることがさらに好ましい。

各一般式におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の直鎖状のアルキル基や、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。

各一般式におけるアルカノイル基としては、例えば、メタノイル基(ホルミル基)、エタノイル基(アセチル基)、n−プロパノイル基(プロピオニル基)、n−ブタノイル基、n−ペンタノイル基等の直鎖状のアルカノイル基や、イソプロパノイル基、イソブタノイル基、sec−ブタノイル基、tert−ブタノイル基、イソペンタノイル基、1−メチルブタノイル基、2−メチルブタノイル基、1−エチルプロパノイル基、1,2−ジメチルプロパノイル基、ネオペンタノイル基、tert−ペンタノイル基等の分岐状のアルカノイル基等が挙げられる。

各一般式におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペントキシ基等の直鎖状のアルコキシ基や、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、イソペントキシ基、1−メチルブトキシ基、2−メチルブトキシ基、1−エチルプロポキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、ネオペントキシ基、tert−ペントキシ基等の分岐状のアルコキシ基等が挙げられる。

各一般式におけるアルカノイルオキシ基としては、例えば、メタノイルオキシ基、エタノイルオキシ基、n−プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基等の直鎖状のアルカノイルオキシ基や、イソプロパノイルオキシ基、イソブタノイルオキシ基、sec−ブタノイルオキシ基、tert−ブタノイルオキシ基、イソペンタノイルオキシ基、1−メチルブタノイルオキシ基、2−メチルブタノイルオキシ基、1−エチルプロパノイルオキシ基、1,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、ネオペンタノイルオキシ基、tert−ペンタノイルオキシ基等の分岐状のアルカノイルオキシ基等が挙げられる。

各一般式におけるアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖状のアルカンジイル基や、プロピレン基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基等の分岐状のアルカンジイル基等が挙げられる。

以上の各一般式において、R1及びR2は、炭素数が1以上5以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数が3以上5以下のアルキル基であることがより好ましい。炭素数が1以上5以下のアルキル基であると、ポリオールエステルはジフルオロメタンとの相溶性と高粘度とを良好に兼ね備えるものとなる。また、ポリオールエステルの熱容量が過大にならないため、冷凍機油の放熱性を良好にすることができる。なお、R1及びR2は、同一であっても、互いに異なっていてもよい。

各一般式において、R1及びR2は、直鎖状のアルキル基と分枝状のアルキル基との混成であることが好ましく、分枝状のアルキル基であることがより好ましい。分枝状のアルキル基は、低炭素数であっても、ジフルオロメタンや他のポリオールエステルとの間で相互作用を形成し易い。そのため、ポリオールエステルについて、側鎖の長さを抑えつつ、適切な高粘度と良好な相溶性とを両立させるのに適している。また、二級炭素原子に結合している水素原子に加えて、三級炭素原子に結合している水素原子も、ジフルオロメタンに配位させることができる。直鎖状のアルキル基と分枝状のアルキル基との混成は適宜の比率であってよく、例えば、分枝状のアルキル基を50%以上のモル比に置換させることができる。

各一般式におけるアルコキシ基、アルカノイル基及びアルカノイルオキシ基は、それぞれ独立して、炭素数が1以上5以下であることが好ましく、炭素数が3以上5以下であることがより好ましい。なお、炭素数は、置換基の種類毎に同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、炭素数は、置換基の結合位置間で同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。炭素数が1以上5以下であると、アルキル基においてと同様の効果を得ることができる。

各一般式におけるアルコキシ基、アルカノイル基及びアルカノイルオキシ基は、直鎖状と分枝状との混成であることが好ましく、分枝状であることがより好ましい。なお、置換基の種類毎に直鎖状及び分枝状のいずれかであってもよいし、同一種類の置換基について直鎖状と分枝状との混成であってもよい。置換基が分枝状であると、アルキル基においてと同様の効果を得ることができる。

環状ポリオールエステルの具体例としては、例えば、以下に示す化合物(2−1)〜化合物(2−9)が挙げられる。但し、環状ポリオールエステルは、これらの化合物に制限されるものではない。

架橋ポリオールエステルの具体例としては、例えば、以下に示す化合物(6−1)〜化合物(6−6)が挙げられる。但し、架橋ポリオールエステルは、これらの化合物に制限されるものではない。

環状ポリオールエステル及び架橋ポリオールエステルは、公知の出発物質及び合成方法を用いて得ることができる。例えば、ペンタエリスリトールを、必要に応じてトリメチロールプロパン、一価アルコール等と共に、縮重合させることによって、主鎖が環化した環状ポリオールや主鎖が直鎖状の鎖状ポリオールを得ることができる。次いで、環状ポリオールを脂肪酸等でエステル化することによって、環状ポリオールエステルが得られる。また、鎖状ポリオールを、ジカルボン酸、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジエステル、酸無水物等によって架橋すると共に、架橋反応すること無く残存している未架橋基を脂肪酸等でエステル化することによって、架橋ポリオールエステルが得られる。

冷凍機油の基油であるポリオールエステルは、環状ポリオールエステルとして、重合度や置換基が異なる複数種類の化合物を含んでいてもよいし、架橋ポリオールエステルとして、重合度や置換基や架橋構造が異なる複数種類の化合物を含んでいてもよい。但し、ポリオールエステルは、環状ポリオールエステル及び架橋ポリオールエステルのいずれか一方のみからなることがより好ましく、重合度、置換基及び架橋構造のうち少なくともいずれかが同一の化合物からなることがさらに好ましく、単一種類の化合物からなることが特に好ましい。ポリオールエステル同士の分子構造が類似していると、冷凍機油が外力を受けた場合に、ポリオールエステルの分子同士が互いに同軸方向に配向し易くなる。そのため、冷凍機油は、せん断応力に対する抵抗力が増し、より良好な高粘度を示すことができる。冷凍機油の40℃における動粘度は、30mm2/s以上100mm2/s以下であることが好ましい。

冷凍機油は、基油としてのポリオールエステルと共に、安定剤、難燃剤、極圧添加剤、摩耗防止剤、消泡剤、酸捕捉剤等の他の成分を含んでいてもよい。安定剤としては、例えば、ジエン系化合物類、ホスフェート類、フェノール化合物類、エポキシド類等が挙げられる。難燃剤としては、例えば、トリ(2‐クロロエチル)ホスフェート、(クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3‐ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3‐ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、ハロゲン化芳香族化合物酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン、トリフルオロヨードメタン、ペルフルオロアルキルアミン類、ブロモフルオロアルキルアミン類等が挙げられる。

以上、本発明の一実施形態に係る冷凍空調用圧縮機及び冷凍空調装置について説明したが、前記の冷凍機油は、前記のポリオールエステルと共に、他の種類の化合物を冷凍機油として含んでいてもよい。他の化合物としては、例えば、鉱油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン類、ポリアルキレングリコール類、ポリアルキレングリコールエステル類、ポリビニルエーテル類、ポリアルファオレフィン類等が挙げられる。但し、前記のポリオールエステルが基油として含まれていることが好ましく、50質量%以上含まれていることが好ましい。

また、本発明の冷凍空調装置としては、空気調和機に制限されるものではなく、冷蔵庫、ヒートポンプ式給湯器等の他の冷凍サイクル装置であってもよい。また、本発明の圧縮機としては、スクロール型に制限されるものではなく、ピストン型、ロータリ型、スクリュ型、ダイアフラム型等であってもよい。

1 室外機 2 室外熱交換器 3 室内機 4 室内熱交換器 5 圧縮機(冷凍空調用圧縮機) 6 膨張弁 7 配管 8 貫流ファン 9 プロペラファン 10 四方弁 11 旋回スクロール 11c 旋回軸受 12 固定スクロール 12c 吐出口 12d 吸入口 13 電動機 14 密閉容器 14a 吸込パイプ 14b 吐出パイプ 14c 吐出圧室 15 液溜 15a 吸引管 17 フレーム 17a 主軸受 18 クランク軸 18a 給油通路 19 下軸受 20 圧縮室 21 オルダムリング 100 空気調和機(冷凍空調装置)

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