Tube threaded joints

申请号 JP2009544674 申请日 2008-12-02 公开(公告)号 JP5124887B2 公开(公告)日 2013-01-23
申请人 新日鐵住金株式会社; バローレック・マネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス; 发明人 邦夫 後藤; 隆之 上村; 克 高橋; 圭司 松本; 理彦 岩本; 竜一 今井; ライ、ステファニー;
摘要 In a threaded joint for pipes constituted by a pin and a box, each having a contact surface comprising a threaded portion and an unthreaded metal contact portion, the contact surface of the pin has a solid corrosion protective, preferably transparent coating based on a UV-curable resin and the contact surface of the box has a solid lubricating coating having plastic or viscoplastic rheological behavior which is preferably formed by the hot melt technique from a composition comprising a thermoplastic polymer, a wax, a metal soap, a corrosion inhibitor, a water-insoluble liquid resin, and a solid lubricant.
权利要求
  • ねじ部とねじ無し金属接触部とを有する接触表面をそれぞれ備えたピンとボックスとから構成される管ねじ継手であって、ボックスの接触表面が最上層として、塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有する固体潤滑被膜を有し、ピンの接触表面が最上層として紫外線硬化樹脂を主成分とする 透明な固体防食被膜を有 し、該固体防食被膜を除去せずにピンのねじ部の損傷の有無を検査できるように構成したことを特徴とする管ねじ継手。
  • 前記固体防食被膜が2層以上の紫外線硬化樹脂層からなる、請求項1に記載の管ねじ継手。
  • 前記ピンの接触表面およびボックスの接触表面の少なくとも一方が、ブラスト処理、酸洗、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理、金属質めっき、およびそれらの2種以上を組み合わせた複合処理から選ばれた方法により予め下地処理が施されている、請求項1または2に記載の管ねじ継手。
  • 前記固体潤滑被膜が溶融状態の組成物からのスプレイ塗布により形成されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
  • 前記組成物が、熱可塑性ポリマー、ワックス、金属石鹸、および固体潤滑剤を含有する、請求項4に記載の管ねじ継手。
  • 前記組成物が、さらに腐食抑制剤を含有する、請求項5に記載の管ねじ継手。
  • 前記組成物が、さらに腐食抑制剤および水不溶性液状樹脂を含有する、請求項5に記載の管ねじ継手。
  • 前記固体防食被膜が、紫外線硬化樹脂に加えて、滑剤、繊維状フィラーおよび防錆剤から選ばれた少なくとも1種の添加成分を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
  • 前記滑剤がワックスである、請求項8に記載の管ねじ継手。
  • 前記固体防食被膜が顔料、染料、および蛍光材から選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
  • 油井管の締結に使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
  • ねじ部とねじ無し金属接触部とを有する接触表面をそれぞれ備えたピンとボックスとから構成される管ねじ継手のボックスの接触表面に塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有する固体潤滑被膜を形成し、ピンの接触表面には紫外線硬化型樹脂を主成分とする組成物を塗布した後に紫外線照射を行って 透明な固体防食被膜を形成することを特徴とする、管ねじ継手の表面処理方法。
  • 前記固体防食被膜の形成が、紫外線硬化型樹脂を主成分とする組成物の塗布とその後の紫外線照射を繰り返すことによりにより2層以上の紫外線硬化樹脂層を形成することからなる、請求項12に記載の方法。
  • 前記ピンの接触表面およびボックスの接触表面の少なくとも一方が、ブラスト処理、酸洗、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理、金属質めっき、およびそれらの2種以上を組み合わせた複合処理から選ばれた方法により下地処理された表面である、請求項12または13に記載の方法。
  • 前記固体潤滑被膜の形成が溶融状態の組成物からのスプレイ塗布により行われる、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記組成物が、熱可塑性ポリマー、ワックス、金属石鹸、および固体潤滑剤を含有する、請求項15に記載の方法。
  • 前記組成物が、さらに腐食抑制剤を含有する、請求項16に記載の管ねじ継手。
  • 前記組成物が、さらに腐食抑制剤および水不溶性液状樹脂を含有する、請求項16に記載の管ねじ継手。
  • 前記固体防食被膜の形成(2層以上の紫外線硬化樹脂層を形成する場合には少なくとも一層の紫外線硬化樹脂層の形成)に使用される組成物が、紫外線硬化樹脂に加えて、滑剤、繊維状フィラーおよび防錆剤から選ばれた少なくとも1種の添加成分を含有する、請求項12〜18のいずれか1項に記載の方法。
  • 前記滑剤がワックスである、請求項19に記載の方法。
  • 前記固体防食被膜の形成(2層以上の紫外線硬化樹脂層を形成する場合には少なくとも一層の紫外線硬化樹脂層の形成)に使用される組成物が、顔料、染料、および蛍光材から選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項12〜20のいずれか1項に記載の方法。
  • 说明书全文

    本発明は、鋼管、特に油井管(OCTG)の締結に使用される管ねじ継手と、その表面処理方法に関する。 本発明に係る管ねじ継手は、油井管の締結の際に従来はねじ継手に塗布されてきたコンパウンドグリスを塗布せずに、優れた耐焼付き性と耐食性を確実に発揮することができる。 したがって、この管ねじ継手は、コンパウンドグリスに起因する地球環境および人体への悪影響を避けることができる。

    原油やガス油の採掘のための油井掘削に用いるチュービングやケーシングといった油井管は、一般に管ねじ継手を用いて接続される。 油井の深さは、従来は2000〜3000mであったが、近年の海洋油田などの深油井では8000〜10000m又はそれ以上に達することがある。

    油井管締結用のねじ継手には、使用環境下で油井管および継手自体の重量に起因する軸方向引張といった荷重、内外面圧力などの複合した圧力、さらには地中の熱が作用するため、このような過酷な環境下においても破損することなく、気密性を保持することが要求される。

    油井管の締結に使用される典型的なねじ継手はピン−ボックス構造をとり、ピンは、例えば油井管の端部に形成された雄ねじを有する継手要素で、ボックスは、例えばねじ継手部品(カップリング)の内面に形成された雌ねじとを有する継手要素である。 プレミアムジョイントと呼ばれる気密性に優れたねじ継手では、ピンの雄ねじの先端と、ボックスの雌ねじの基部には、それぞれねじ無し金属接触部が形成されている。 ねじ無し金属接触部は、ピンおよびボックスの円周面に形成されたメタルシール面とねじ継手の軸方向に略垂直なトルクショルダ面とを含みうる。 油井管の一端をねじ継手部品に挿入し、ピンの雄ねじとボックスの雌ねじとを締付けることにより、ピンおよびボックスのねじ無し金属接触部同士を所定の干渉量で当接させてメタルシール部を形成することで、気密性が確保される。

    チュービングやケーシングの油井への降下作業時には、種々のトラブルにより一度締結した継手を緩め、それらを一旦油井から引き上げた後、再度締結して降下させることがある。 API(米国石油協会)は、チュービング継手においては10回の、ケーシング継手においては3回の、メイクアップ(締付け)およびブレークアウト(緩め)を行っても、ゴーリングと呼ばれる焼付きの発生がなく、気密性が保持されるという意味での耐焼付き性を要求している。

    締付けの際には、耐焼付き性と気密性の向上を図るために「コンパウンドグリス」と呼ばれる重金属粉を含有する粘稠な液状潤滑剤がねじ継手の接触表面(ピンおよびボックスのねじ部とねじ無し金属接触部)に塗布されてきた。 API規格BUL 5A2にそのようなコンパウンドグリスが規定されている。 コンパウンドグリスはまた、塗布した接触表面における錆の発錆を防止するという耐食性能も発揮する。

    このコンパウンドグリスの保持性の向上や摺動性を改善する目的で、ねじ継手の接触表面に窒化処理、亜鉛系めっきや分散めっきを含む各種のめっき、リン酸塩化成処理といった多様な1層または2層以上の表面処理を施すことが提案されている。 しかし、コンパウンドグリスの使用は、次に述べるように、環境や人体への悪影響が懸念されるという問題がある。

    コンパウンドグリスは亜鉛、鉛、銅などの重金属粉を多量に含有している。 ねじ継手の締結時に、塗布されたグリスが洗い流されたり、外面にあふれ出したりして、特に鉛等の有害な重金属により、環境、特に海洋生物に悪影響を及ぼす可能性がある。 また、コンパウンドグリスの塗布作業は作業環境を悪化させ、人体への有害性も懸念される。

    近年、北東大西洋の海洋汚染防止に関するオスパール条約(オスロ・パリ条約、OSPAR)が1998年に発効したのを契機に、地球規模での環境に対する厳しい規制が進み、コンパウンドグリスも一部地域では既にその使用が規制されようとしている。 したがって、ガス井や油井の掘削作業においては、環境や人体への悪影響を避けるために、コンパウンドグリスを使用せずに優れた耐焼付き性を発揮できるねじ継手が求められるようになってきた。

    コンパウンドグリスの別の問題点として、黒鉛に代表される固体潤滑剤を多量に含有するため、被膜が透明ではないことが挙げられる。 管外面にねじ部を有するピンは、管内面にねじ部を有するボックスより、搬送中や締結時のトラブル時に損傷をより受けやすいので、締結作業前にピンのねじ部の損傷の有無を検査することが多い。 コンパウンドグリスを塗布した場合、この検査時にはピンを洗浄してコンパウンドグリスを洗い流し、検査後に再びコンパウンドグリスを塗布する必要があった。 この作業は上記のように環境に有害であり、かつ手間がかかる。 潤滑被膜が透明であれば、被膜を除去せずにねじ部の損傷有無を検査することができ、検査作業の手間を大幅に軽減できる。

    コンパウンドグリスを塗布せずに油井管の締結に使用できるねじ継手として、本出願人らは先に、WO2006/104251号公報において、ピンとボックスの少なくとも一方の部材の接触表面が、粘稠液体または半固体の潤滑被膜と、その上に形成された乾燥固体被膜とからなる2層被膜で被覆されている管ねじ継手を提案した。 乾燥固体被膜は、アクリル樹脂などの熱硬化型樹脂被膜または紫外線硬化型樹脂被膜から形成しうる。 粘稠液体または半固体の潤滑被膜はべたつきがあり、異物が付着しやすいが、その上に乾燥固体被膜を形成することにより、べたつきが解消される。 乾燥固体被膜は、ねじ継手の締結時に破壊されるため、その下の潤滑被膜の潤滑性を妨げることがない。 この管ねじ継手は、潤滑性能に優れ、耐焼付き性は十分であるが、潤滑被膜とその上に形成される乾燥固体被膜の2層構造の被膜を形成する必要があり、コスト高となる。 またねじ締結時に2層被膜が破壊される際、フレークが出てくるため、その後の外観があまりよくない。 また、被膜の透明性も低い。

    やはり本出願人らによるWO2007/ 042231号公報には、塑性もしくは粘塑性型のレオロジー挙動(流動特性)を示す固体マトリックス中に固体潤滑剤粒子を分散させてなる、べたつきのない薄い潤滑被膜を、ピンおよびボックスのねじ部に形成した管ねじ継手が開示されている。 マトリックスは好ましくは融点が80〜320℃の範囲内であり、溶融状態でのスプレイ塗布(ホットメルトスプレイ法)、粉末を用いた溶射、あるいは性エマルジョンのスプレイ塗布により形成される。 ホットメルト法に使用される組成物は、例えば、熱可塑性ポリマーとしてポリエチレン、潤滑成分としてワックス(例、カルナウバワックス)および金属石鹸(例、ステアリン酸亜鉛)、並びに腐食抑制剤としてカルシウムスルホネートを含有する。 この管ねじ継手も、やはり潤滑性能や耐食性に優れている。 しかし、被膜が透明でないため、ピンの外面ねじがダメージを受けたために突発的にゴーリングを生じるような事態に備えるための、ピンの外面ねじのダメージの有無の検査が難しい。

    WO2006/75774号公報には、ピンとボックスの少なくとも一方の部材の接触表面が、潤滑性粉末と結合剤とを含む固体潤滑被膜と、その上に形成された固体粒子を含有しない固体防食被膜とからなる2層被膜で被覆されている、管ねじ継手が記載されている。 この管ねじ継手は、耐食性は非常に高いが、固体潤滑被膜が塑性もしくは粘塑性型のレオロジー挙動を実質的に有していない硬質の固体被膜であるため、その上に形成された固体防食被膜がねじ継手の締付け時に破壊されても、その破片が下の固体潤滑被膜に埋め込まれにくく、潤滑性能がやや低くなる。

    本発明は、コンパウンドグリスを使用せずに、錆の発生を抑制し、優れた耐焼付き性と気密性を示し、かつ表面にべたつきがなく、外観や検査性に優れた、ピンとボックスに各一層ずつの表面処理被膜が形成された管ねじ継手とその表面処理方法とを提供する。

    上記目的は、ピンの接触表面は紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食被膜で、ボックスの接触表面は塑性または粘塑性型のレオロジー挙動を有し、常圧下では流動しないが高圧下で流動しうる固体潤滑被膜(例えば、ホットメルト型組成物から形成されるような)で被覆することにより達成される。

    本発明は、ねじ部とねじ無し金属接触部とを有する接触表面をそれぞれ備えたピンとボックスとから構成される管ねじ継手であって、ボックスの接触表面が最上層として、塑性もしくは粘塑性型のレオロジー挙動(plastic or viscoplastic rheological behavior)を有する固体潤滑被膜を有し、ピンの接触表面が最上層として紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食被膜を有することを特徴とする管ねじ継手である。

    ここで「固体潤滑被膜」および「固体防食被膜」とは、該被膜が常温で固体であることを意味し、本発明では具体的には40℃以下で被膜が固体であることを意味する。
    別の側面において、本発明は、ねじ部とねじ無し金属接触部とを有する接触表面をそれぞれ備えたピンとボックスとから構成される管ねじ継手の表面処理方法であって、ボックスの接触表面に塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有する固体潤滑被膜を形成し、ピンの接触表面には紫外線硬化型樹脂を主成分とする組成物を塗布した後に紫外線照射を行って固体防食被膜を形成することを特徴とする方法である。

    本発明の好適態様として、次の態様を挙げることができる:
    ・前記固体防食被膜が紫外線硬化樹脂を主成分とする2層以上からなる;
    ・前記ピンの接触表面およびボックスの接触表面の少なくとも一方が、ブラスト処理、酸洗、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、酸塩化成処理、金属質めっき、およびそれらの2種以上を組み合わせた複合処理から選ばれた方法により予め下地処理されている;
    ・前記固体潤滑被膜が溶融状態の組成物からのスプレイ塗布により形成されたものである;
    ・前記組成物が、熱可塑性ポリマー、ワックス、金属石鹸、および固体潤滑剤を含有する;
    ・前記組成物が、さらに腐食抑制剤を含有する;
    ・前記組成物が、さらに腐食抑制剤および水不溶性液状樹脂を含有する;
    ・前記固体防食被膜が、紫外線硬化樹脂に加えて、滑剤、繊維状フィラー、および/または防錆剤を含有する;
    ・前記滑剤がワックスである;
    ・前記固体防食被膜が、紫外線硬化樹脂に加えて、顔料、染料、および蛍光材から選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有する;
    ・前記管ねじ継手が油井管の締結に使用される。

    本発明によると、ピン−ボックス構造の管ねじ継手の一方の要素であるピンの接触表面(ねじ部およびねじ無し金属接触部)は紫外線硬化型樹脂を主成分とする固体防食被膜で、他方の要素であるボックスの接触表面はホットメルト型といった高い面圧下で流動しうる塑性または粘塑性型のレオロジー挙動を有する固体潤滑被膜で被覆することによって、コンパウンドグリスを塗布せずに、各接触表面に一層ずつの比較的安価な表面処理被膜を形成するだけで、管ねじ継手の接触表面に十分な耐食性と耐焼付き性(潤滑性)を付与することができる。

    すなわち、上記固体潤滑被膜は高圧下で流動しうるため、ボックスの接触表面だけに適用するにもかかわらず、高い潤滑性能を示し、締付けと緩めを繰り返した場合でも管ねじ継手の焼付きを防止することができる。 一方、ピンの接触表面に形成した紫外線硬化型樹脂を主成分とする固体防食被膜は硬質であるので、この被膜を有するピンを上記潤滑被膜を有するボックスと締めつけた場合、管ねじ継手の焼付き性に悪影響を及ぼさない。

    また、紫外線硬化型樹脂を主成分とする固体防食被膜は、透明性が高いので、外傷を受けやすいピンのねじ部の損傷の有無を、表面処理被膜を除去せずに検査することができ、締結作業前のねじ検査の負担を大幅に軽減することができる。

    さらに、固体防食被膜はもちろん、上記レオロジー挙動を有する、例えばホットメルト法により形成される固体潤滑被膜も、表面はべたつきがないので、ねじ継手が締結されるまでの間にねじ継手の接触表面に錆、酸化スケール、ブラスト砥粒などの異物が付着しても、エアーブローなどの方法により容易に異物のみを取り除くことができる。 その結果、継手締結時に組立の不具合による継手の偏芯、傾き、異物の混入などのために局部的に面圧が過大となり、そのために塑性変形が起こるような過酷な潤滑条件下でも、焼付きを防止することができる。 また、ねじ締結時のフレークの発生も抑制される。

    鋼管出荷時の鋼管とカップリングの組み立て構成を模式的に示す。

    管ねじ継手の締付け部を模式的に示す。

    本発明にしたがって管ねじ継手の接触表面に形成された被膜を示す説明図であり、図3(a)は接触表面自体が粗面化された例を、図3(b)は接触表面に粗面化のための下地処理被膜を形成した例をそれぞれ示す。

    以下、本発明の管ねじ継手の実施の形態を詳細に説明する。
    図1は、出荷時の油井管用鋼管とねじ継手部品の状態を示す典型的な管ねじ継手の組み立て構成を模式的に示す。 ある鋼管Aの両端には外面に雄ねじ部3aを有するピン1が形成され、ねじ継手部品(カップリング)Bの両側には、内面に雌ねじ部3bを有するボックス2が形成されている。 ピンは第1管状部品(図示例では鋼管)の端部に形成された雄ねじを有するねじ継手要素を、ボックスは第2管状部品(図示例ではカップリング)の端部に形成された雌ねじを有するねじ継手要素をそれぞれ意味する。 鋼管Aの一端には予めカップリングBが締付けられている。 図示していないが、締付けられていない鋼管AのピンとカップリングBのボックスには、それぞれのねじ部の保護のためのプロテクターが出荷前に装着される。 プロテクターはねじ継手の使用前に取り外される。

    典型的には、図示のように、ピンは鋼管の両端の外面に、ボックスは別部品であるカップリングの内面に形成される。 しかし、逆に、鋼管の両端の内面をボックスとし、カップリングの外面をピンとすることも原理的には可能である。 また、カップリングを利用せず、鋼管の一端をピン、他端をボックスとしたインテグラル方式のねじ継手もある。 その場合は第1管状部品は第1の鋼管、第2管状部品は第2の鋼管となる。 本発明に係る管ねじ継手はこれらのいずれの種類であってもよい。 以下では、ピンが鋼管の両端の外面に、ボックスがカップリングの内面に形成される、図1に示す種類の管ねじ継手を例にとって、本発明を説明する。

    図2は、代表的な管ねじ継手の構成を模式的に示す。 管ねじ継手は、鋼管Aの端部の外面に形成されたピン1と、カップリングBの内面に形成されたボックス2とから構成される。 ピン1は雄ねじ部3aと鋼管先端に位置するメタルシール面4aとトルクショルダー部5を備える。 これに対応して、ボックス2は、雌ねじ部3bと、その内側のメタルシール面4bとトルクショルダー部5を備える。 ピンおよびボックスのそれぞれメタルシール面およびトルクショルダー部がねじ無し金属接触部を構成する。

    ピン1およびボックス2のそれぞれのねじ部3a、3bとメタルシール面4a、4bとトルクショルダー部5が管ねじ継手の接触表面を構成する。 この接触表面には、耐焼付き性、気密性、耐食性が要求される。 従来は、そのために、重金属粉を含有するコンパウンドグリスを塗布していたが、前述したように、人体や環境面の問題、また保管期間中や異物付着による性能低下により、実用上の耐焼付き性能に問題を抱えていた。 また、締付け前のねじ部の検査時にはコンパウンドグリスを洗い落として、検査後の再塗布する必要性があった。

    本発明によれば、図3にメタルシール面について示すように、ピンの接触表面は、鋼素地30aの上に、粗面化のために任意に設けてもよい下地処理層の31aと、その上の紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食被膜33とを備える。 固体防食被膜33は、紫外線硬化樹脂を主成分とする2層以上から構成してもよい。 一方、ボックスの接触表面は、鋼素地30bの上に、粗面化のために任意に設けてもよい下地処理層の31bと、その上の固体潤滑被膜32とを備える。 固体潤滑被膜は、本発明では、塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有する被膜である。 このようなレオロジー挙動を示す被膜は常圧では流動しないが、高圧下では流動可能となる。 すなわち、被膜の流動性が圧力に依存して著しく変動する。 このような特性を有する被膜は、ホットメルト型の組成物、すなわち、熱可塑性ポリマーを含有する溶融状態の組成物をスプレイガンにより塗布することにより形成することができる。

    また、固体防食被膜および固体潤滑被膜はそれぞれピンおよびボックスの接触表面の全面を被覆すべきであるが、ピンおよび/またはボックスの接触表面の一部だけ(例えば、ねじ無し金属接触部だけ)をかかる被膜で被覆する場合をも本発明は包含する。

    [下地処理]
    管ねじ継手の接触表面であるねじ部やねじ無し金属接触部はねじ切りを含む切削加工により形成され、一般にその表面粗さは3〜5μm程度である。 接触表面の表面粗さをこれより大きくすると、その上に形成される被膜の密着性を高めることができ、結果として耐焼付き性や耐食性といった性能を改善することができる。 そのために、ピンおよびボックスの少なくとも一方の部材、好ましくは両方の部材の接触表面に、被膜形成に先立って、表面粗さを大きくすることができる下地処理を施すことが好ましい。

    そのような下地処理の例としては、形状が球状のショット材または状のグリッド材などのブラスト材を投射するブラスト処理、硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸などの強酸液に浸漬して肌を荒らす酸洗がある。 これらは、素地そのものの表面粗さを増大させることができる処理である。

    別の下地処理の例として、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理といった化成処理、および金属質めっきが挙げられる。
    化成処理は、針状結晶からなる表面粗さの大きな化成被膜が形成することによって、表面粗さを大きくし、その上に形成される固体防食被膜および固体潤滑被膜の密着性を高めることができる。

    金属質めっきは耐焼付き性を高めることができ、一部の金属質めっきは表面粗さを大きくすることもできる。 表面粗さを大きくできる金属質めっきとしては、電気めっき法による銅、鉄、それらの合金などのめっき、鉄芯に亜鉛もしくは亜鉛−鉄合金等を被覆した粒子を遠心力もしくはエアー圧を利用して投射して、亜鉛もしくは亜鉛−鉄合金粒子が堆積した多孔質の金属被膜を形成させる亜鉛もしくは亜鉛合金の衝撃めっき、ならびに金属中に固体微粒子を分散させた被膜を形成する複合金属めっきが挙げられる。

    接触表面の下地処理がいずれの方法であっても、下地処理による粗面化により表面粗さRzが5〜40μmとなるようにすることが好ましい。 Rzが5μm未満では、その上に形成する被膜との密着性が不十分になることがある。 一方、Rzが40μmを超えると、表面の摩擦が高くなり、その上に形成された被膜が高面圧を受けた際のせん断力と圧縮力に耐えられず、破壊もしくは剥離しやすくなることがある。 粗面化のための下地処理は、2種以上の処理を併用してもよい。 また、ピンとボックスとで異なる下地処理を施してもよい。

    固体防食被膜または固体潤滑被膜の密着性の観点からは、多孔質被膜を形成できる下地処理が好ましい。 特にリン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸鉄マンガン、もしくはリン酸亜鉛カルシウムを用いたリン酸塩処理と、衝撃めっきによる亜鉛もしくは亜鉛−鉄合金の被膜の形成が下地処理として好ましい。 上に形成される被膜の密着性の観点からはリン酸マンガン被膜が、耐食性の観点からは、亜鉛による犠牲防食能が期待できる亜鉛もしくは亜鉛−鉄合金の被膜が好ましい。

    固体潤滑被膜の下地処理として特に好ましいのはリン酸マンガン化成処理であり、固体防食被膜の下地処理として特に好ましいのは、リン酸亜鉛化成処理並びに衝撃めっきによる亜鉛もしくは亜鉛−鉄合金めっきである。

    リン酸塩処理により形成された被膜と衝撃めっきによって形成された亜鉛もしくは亜鉛−鉄合金の被膜は、いずれも多孔質な被膜である。 その上に固体防食被膜または固体潤滑被膜を形成すると、多孔質被膜のいわゆる「アンカー効果」により被膜の密着性が高まる。 その結果、締付け・緩めを繰り返しても固体潤滑被膜の剥離が起こり難くなり、金属間の直接接触が効果的に防止され、耐焼付き性、気密性、耐食性が一層向上する。

    リン酸塩処理は、常法にしたがって、浸漬またはスプレイにより実施することができる。 処理液としては、亜鉛めっき用の前に使用されている一般的な酸性リン酸塩処理液が使用できる。 例えば、リン酸イオン1〜150g/L、亜鉛イオン3〜70g/L、硝酸イオン1〜100g/L、ニッケルイオン0〜30g/Lからなるリン酸亜鉛系化成処理を挙げることができる。 また、管ねじ継手に慣用されているリン酸マンガン系化成処理液も使用できる。 液温度は常温から100℃でよく、処理時間は所望の膜厚に応じて15分までの間で行えばよい。 被膜化を促進するため、リン酸塩処理前に、コロイドチタンを含有する表面調整用水溶液を処理表面に供給することもできる。 リン酸塩処理後、水洗もしくは湯洗してから、乾燥することが好ましい。

    衝撃めっきは、粒子と被めっき物を回転バレル内で衝突させるメカニカルプレーティングや、ブラスト装置を用いて粒子を被めっき物に衝突させる投射めっきにより実施できる。 本発明では接触表面だけにめっきを施せばよいので、局部的なめっきが可能な投射めっきを採用することが好ましい。

    例えば、鉄系の核の表面を亜鉛または亜鉛合金(例、亜鉛−鉄合金)で被覆した粒子からなる投射材料を、被覆すべき接触表面に投射する。 粒子中の亜鉛または亜鉛合金の含有量は20〜60質量%の範囲であることが好ましく、粒子の粒径は0.2〜1.5mmの範囲が好ましい。 投射により、粒子の被覆層である亜鉛または亜鉛合金のみが基体である接触表面に付着し、亜鉛または亜鉛合金からなる多孔質の被膜が接触表面上に形成される。 この投射めっきは、鋼の材質に関係なく、鋼表面に密着性のよいめっき被膜を形成することができる。

    衝撃めっきにより形成された亜鉛または亜鉛合金層の厚みは耐食性と密着性の両面から5〜40μmであることが好ましい。 5μm未満では、十分な耐食性が確保できないことがある。 一方、40μmを超えると、その上に形成された被膜の密着性がむしろ低下することがある。 同様に、リン酸塩被膜の厚みも5〜40μmの範囲が好ましい。

    また、特に固体潤滑被膜の形成前の下地として利用した場合に耐焼付き性を高めるのに効果的な表面処理法も採用できる。 例えば、金属または合金による1または2以上のめっき層は耐焼付き性の改善に有効である。 このようなめっきの例としては、Cu、Sn、もしくはNi金属による単層めっき、ならびに特開2003−74763号公報に記載されているようなCu−Sn合金による単層めっき、Cu層とSn層との2層めっき、さらにはNi,Cu,Sn各層による3層めっきが挙げられる。 Cr含有量が5%以上の鋼からなる鋼管に対しては、Cu−Sn合金めっき、Cuめっき−Snめっきの2層めっき、Niめっき−Cuめっき−Snめっきの3層めっきが好ましい。 より好ましいのは、Cuめっき−Snめっきの2層めっき、およびNiストライクめっき−Cuめっき−Snめっきの3層めっき、Cu−Sn−Znの合金めっきである。 このような金属または金属合金めっきは、特開2003−74763号公報に記載されているような方法により実施することができる。 管ねじ継手の鋼種(炭素鋼、合金鋼、高合金鋼)にかかわらず好ましいめっきは、Niストライクめっきの上にCuめっき、もしくはCu−Snの合金めっき、もしくはCu−Sn−Znの合金めっきを、合計で5〜15μmの厚さで形成したものである。 より厳しい使用環境における耐焼付き性を期待する場合などに最も好ましいめっきによる下地処理は、Niストライクめっきの上にCu−Sn−Znの合金めっきを施したものである。

    [固体防食被膜]
    ピンの接触表面には、好ましくは上記のように下地処理、特に好ましくはリン酸亜鉛化成処理または亜鉛もしくは亜鉛−鉄合金多孔質めっき被膜を形成する衝撃めっきによる下地処理を施した後で、紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食被膜を最表層として形成する。

    図1に関して上述したように、管ねじ継手 は実際に使用するまでの間に、締付けが行われていないピンおよびボックスにプロテクターが装着されることが多い。 固体防食被膜には、少なくともプロテクター装着時に加わる力では容易に被膜が破壊されないことと、輸送や保管中に、露点の関係から凝縮した水に曝されても溶解しないこと、40℃を超える高温下でも容易には軟化しないことが要求される。

    本発明では、このような性質を満たす被膜として、高強度の被膜を形成できることが知られている、紫外線硬化樹脂を主成分とする組成物から固体防食被膜を形成する。 紫外線硬化樹脂としては、少なくともモノマー、オリゴマー、光重合開始剤から構成される公知の樹脂組成物を使用できる。 紫外線を照射されることにより光重合反応を起こし、硬化被膜を形成するものであれば、紫外線硬化樹脂組成物の成分や組成には特に制限はない。

    モノマーとしては、これらに制限されないが、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との多価(ジもしくはトリ以上)エステルの他、各種の(メタ)アクリレート化合物、Nービニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびスチレンが挙げられる。 オリゴマーとしては、これらに限られないが、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、およびシリコーン(メタ)アクリレートを挙げることができる。

    有用な光重合開始剤は260〜450nmの波長に吸収をもつ化合物であり、例としてはベンゾインおよびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体、アセトフェノンおよびその誘導体、ミヒラーケトン、ベンジルおよびその誘導体、テトラアルキルチウラムモノスルフィド、チオキサン類などを挙げることができる。 特にチオキサン類を使用するのが好ましい。

    紫外線硬化樹脂から形成される固体防食被膜は、そのすべり性、被膜強度、耐食性の観点から、滑剤、繊維状フィラー、および防錆剤から選ばれた添加剤を被膜中に含有させてもよい。

    滑剤の例は、ワックスや、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛のような金属石鹸およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂である。 繊維状フィラーの例は、丸尾カルシウム社製「ウイスカル」のような針状炭酸カルシウムである。 これらの滑剤および繊維状フィラーから選ばれた1種または2種以上を、質量比で紫外線硬化樹脂1に対し、0.05〜0.35の量(2種以上の場合は合計量)で添加することができる。 0.05以下だと、目的とする被膜強度やすべり性の改善が不十分となることがある。 一方、0.35を超えると、塗布液の粘度が高くなり、塗布作業性が低下したり、逆に被膜強度低下を招くことがある。

    防錆剤の例は、トリポリリン酸アルミニウムや亜リン酸アルミニムなどである。 これらの添加剤を、質量比で紫外線硬化樹脂1に対して、最大0.10程度まで添加することができる。

    紫外線硬化樹脂から形成される固体防食被膜は透明であるものが多い。 形成された固体防食被膜の目視又は画像処理による品質検査(被膜の有無、被膜厚みの均一性/ムラなどの検査)を容易にする観点から、固体防食被膜は、可視光下または紫外光で着色した被膜とするための少なくとも1種の添加剤を含有しうる。 使用する添加剤は、顔料、染料、および蛍光材から選ぶことができる。 蛍光材は、可視光線下では被膜を着色しない場合があるが、少なくとも紫外線下では被膜を発光させ、着色させる。 これらの添加剤は市販品を使用すればよく、目視又は画像処理による固体防食被膜の品質検査が可能であれば、特に制限はない。 有機と無機のいずれの材料も使用できる。

    顔料を添加すると、固体防食被膜の透明性が低下し、又は失われる。 固体防食被膜が不透明になると、下地のピンねじ部の損傷の有無の検査が困難となる。 従って、顔料を使用する場合は、黄色や白色などの明度の高い色の顔料が好ましい。 防食性の観点から、顔料の粒径は細かいほど良く、平均粒径が5μm以下のものを使用することが好ましい。 染料は、固体防食被膜の透明性を大きく低下させることはないので、例えば、赤や青などの強い色の染料でも支障を生じない。 顔料および染料の添加量は、質量比で紫外線硬化樹脂1に対して最大0.05までとすることが好ましい。 0.05を超えると防食性が低下することがある。 より好ましい添加量は0.02以下である。

    蛍光材は、蛍光顔料、蛍光染料、および蛍光塗料に使用されている蛍光体のいずれでもよい。 蛍光顔料は無機蛍光顔料と昼光蛍光顔料に大別される。
    無機蛍光顔料は、例えば、硫化亜鉛若しくは硫化亜鉛カドミウム系(金属賦活剤含有)、ハロゲン化リン酸カルシウム系、希土類賦活ストロンチウムクロロアパタイト系などがあり、それらの2種以上を混合して使用されることも多い。 無機蛍光顔料は耐候性や耐熱性に優れている。

    昼光蛍光顔料にもいくつか種類があるが、その主流は蛍光染料を無色の合成樹脂に含有させて顔料化した合成樹脂固溶体型のものである。 蛍光染料自体も使用することができる。 また、蛍光塗料や蛍光印刷インクにも各種の無機または有機蛍光顔料、特に合成樹脂固溶体型のものが使用されており、それらに含まれるような蛍光体を蛍光顔料または蛍光染料として使用することができる。

    蛍光材を含有する固体防食被膜は、可視光線下では無色または有色の透明であるが、ブラックライトまたは紫外線を照射すると発光・発色するので、被膜の有無や被膜厚みのムラなどを確認することができる。 また、可視光線下では透明であるため、固体防食被膜の下の素地、すなわち、ピン表面を観察することができる。 従って、ピンのねじ部の損傷の検査が固体防食被膜により妨げられない。

    固体防食被膜への蛍光材の添加量は、質量比で紫外線硬化樹脂1に対して、最大0.05程度までとすることが好ましい。 0.05を超えると防食性が低下することがある。 より好ましい質量比は0.02以下である。

    固体防食被膜のみならず、下地のピンねじ部の品質管理も可能にするため、被膜着色用添加剤としては、蛍光材、特に蛍光顔料を使用することが好ましい。
    紫外線硬化樹脂を主成分とする組成物(紫外線硬化樹脂のみからなる組成物を含む)をピンの接触表面に塗布した後、紫外線を照射して被膜を硬化させることにより紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食被膜が形成される。

    塗布と紫外線照射を繰り返すことにより、2層以上の紫外線硬化樹脂層からなる固体防食被膜を形成してもよい。 固体防食被膜をこのように多層化すると、被膜強度がさらに高まり、管ねじ継手の締付け時に加わる力でも固体防食被膜が破壊されないようになり、管ねじ継手の耐食性がさらに改善される。 本発明では、固体防食被膜の下には潤滑被膜が存在しないので、固体防食被膜が管ねじ継手の締付け中に破壊される必要性はなく、固体防食被膜が破壊されない方が、管ねじ継手の耐食性は高くなる。

    紫外線の照射は、一般市販の200〜450nm域の出力波長を持つ紫外線照射装置を用いればよい。 紫外線の照射源としては、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光などを挙げることができる。 照射時間および照射紫外線強度は、当業者であれば適当に設定することができる。

    固体防食被膜の膜厚(2層以上の紫外線硬化樹脂層からなる場合には合計膜厚)は、5〜50μmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは10〜40μmの範囲内である。 また、相手部材に形成する固体潤滑被膜の膜厚より小さくすることが好ましい。 固体防食被膜の膜厚が薄すぎると、防食被膜として十分に機能せず、管ねじ継手の耐食性が不十分となる場合がある。 一方、固体防食被膜の膜厚が50μmより大きくなると、図1に示すように油井管の簡単に気密性の高いプロテクターなどの保護部材を取り付ける際に、固体防食被膜がプロテクター装着時の力で破壊されることがあり、やはり管ねじ継手の耐食性が不十分となる。 また、その際に摩耗粉となって環境に排出されるので、作業環境が圧下する。 また、固体防食被膜の膜厚が相手部材の固体潤滑被膜の膜厚より大きいと、潤滑被膜の潤滑性能を阻害することがある。

    紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食被膜は、多くは透明被膜であるので、被膜を除去せずに素地の状態を観察することができ、締付け前のねじ部の検査を被膜の上から実施することが可能である。 従って、この固体防食被膜を、ねじが外面に形成され、より損傷を受けやすいピンの接触表面に形成することで、ピンのねじ部を損傷の有無について、被膜を残したまま簡単に検査することが可能となる。

    [固体潤滑被膜]
    管ねじ継手による鋼管同士の締結の際に焼付きを防止するために、管ねじ継手のボックスの接触表面には固体潤滑被膜を形成する。 本発明では、この固体潤滑被膜が、熱硬化性樹脂のマトリックス中に固体潤滑剤を分散させた、より一般的な硬質の被膜ではなく、ホットメルト型の被膜で代表される、室温で塑性または粘塑性のレオロジー挙動を示す被膜である。

    この種の固体潤滑被膜は前述したWO2007/04231号公報に記載されており、塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有するマトリックス中に少量の固体潤滑剤を分散させてなる被膜である。 この特許文献に記載されているように、水性エマルジョンの塗布と乾燥による方法、または溶射法、によってもこの種の固体潤滑被膜を形成することができる。 しかし、好ましい固体潤滑被膜の形成方法は、溶融状態の組成物をスプレイ塗布する方法である。

    好ましい固体潤滑被膜はマトリックス70〜95質量%、固体潤滑剤5〜30質量%から構成される。 固体潤滑剤の割合がこのように少量であるため、被膜全体としてもマトリックスの特性である塑性もしくは粘塑性型のレオロジー挙動を示すようになる。

    この固体潤滑被膜のマトリックス(室温で塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有する)は、融点が80〜320℃の範囲であることが好ましい。 それにより、マトリックスの融点以上の温度で溶融状態の組成物を慣用のスプレイガンを用いたスプレイ塗布することにより、ボックスの接触表面に固体潤滑被膜を形成することが可能となる。

    このマトリックスは、熱可塑性ポリマー、ワックス、および金属石鹸から構成されることが好ましく、より好ましくはさらに腐食抑制剤および水不溶性液状樹脂を含有する。
    マトリックスに使用する熱可塑性ポリマーは、好ましくはポリエチレンである。 ポリエチレンは、比較的融点が低いので、150℃以下の温度でホットメルト状態でのスプレイ塗布を行うことができ、形成された被膜の潤滑性にも優れている。

    本発明において、金属石鹸とは高級脂肪酸(炭素数12以上の脂肪酸)のアルカリ金属以外の金属との塩である。 金属石鹸は、管ねじ継手の締付けや緩め時に発生した破片を捕捉して、外部環境への排出を抑制する作用を果たす。 また、被膜の滑りやすくして、摩擦係数を低減させ、潤滑性能を高める作用も果たす。 金属石鹸はさらに塩水噴霧試験において腐食発生時間を遅らせるという腐食抑制効果も有する。 好ましい金属石鹸はステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムである。

    ワックスも金属石鹸と同様の機能を果たす。 従って、金属石鹸とワックスはいずれか一方だけを固体潤滑被膜に含有させることも可能であるが、固体潤滑被膜が金属石鹸とワックスの両方を含有する方が、被膜の潤滑性能が高まるので好ましい。 ワックスは融点が低いので、組成物の融点、従って、スプレイ塗布温度を下げるという利点もある。

    ワックスは、動物性、植物性、鉱物性および合成ワックスのいずれでもよい。 使用できるワックスとしては蜜蝋、鯨蝋(以上、動物性)、木蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス(以上、植物性)、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン(以上、鉱物性)、酸化ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプッシュワックス、アミドワックス、硬化ひまし油(カスターワックス)(以上、合成ワックス)などがある。 特に好ましいのはカルナバワックスであるが、他のワックスも使用可能である。

    ワックスと金属石鹸の質量比は、金属石鹸1に対してワックス0.5〜3の範囲内が好ましく、この質量比はより好ましくは0.5〜2であり、最も好ましくは約1である。
    腐食抑制剤としては、従来より潤滑油に腐食抑制剤として添加されている種類のものが、潤滑性能に優れているので好ましい。 その種の腐食抑制剤の代表例としては、Lubrizol社からAlox TM 606なる商品名で市販されているカルシウムスルホネート誘導体、Halox社からHalox TM SZP-391なる商品名で市販されているリンケイ酸ストロンチウム亜鉛(Strontium zinc phosphosilicate)、そしてKing Industries, Inc.製のNA-SUL TM Ca/W1935などが挙げられる。 固体潤滑被膜が腐食抑制剤を含有することにより、その上に固体防食被膜を形成しなくても、固体潤滑被膜だけで接触表面の腐食をある程度まで防止することができる。 そのため、固体潤滑被膜に腐食抑制剤を少なくとも5質量%含有させることが好ましい。

    水不溶性の液状樹脂(室温で液状の樹脂)は、組成物の溶融状態での流動性を高め、スプレイ塗布のトラブルを低減させる作用を発揮する。 液状樹脂は、少量の配合なら、固体潤滑被膜にべとつきを生ずることはない。 好ましい液状樹脂は、ポリアルキルメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテン、およびポリジアルキルシロキサン(液状シリコーン樹脂、例えば、ポリジメチルシロキサン)から選ばれる。 なお、液状のポリジアルキルシロキサンは界面活性剤としても作用する。

    マトリックスは上記以外に、界面活性剤、着色剤、酸化防止剤などから選ばれた添加成分を少量含有しうる。 さらに、極圧剤、液状油剤なども2質量%以下のごく少量であれば、マトリックス中に含有させうる。

    好ましい固体潤滑被膜のマトリックスの組成例(質量%)を示すと次の通りである:
    熱可塑性ポリマー 5〜40%、
    ワックス 5〜30%、
    金属石鹸 5〜30%、
    腐食抑制剤 0〜50%、
    水不溶性液状樹脂 0〜17%、
    界面活性剤、着色剤、酸化防止剤 各0〜2%、
    極圧剤、液状油剤 各0〜2%。

    各成分とも2種以上の材料を使用できる。
    好ましい固体潤滑被膜のマトリックスのより具体的な組成例(質量%)は次の通りである。

    ポリエチレンホモポリマー 5〜40%、
    カルナバワックス 5〜30%、
    ステアリン酸亜鉛 5〜30%、
    腐食抑制剤 5〜50%、
    ポリアルキルメタクリレート 0〜15%、
    ポリジメチルシロキサン 0〜2%
    着色剤 0〜1%、
    酸化防止剤 0〜1%。

    固体潤滑剤は潤滑性を有する粉末の意味である。 固体潤滑剤は、
    (1)滑り易い特定の結晶構造、例えば、六方晶層状結晶構造を有することにより潤滑性を示すもの(例、黒鉛、酸化亜鉛、窒化硼素)、
    (2)結晶構造に加えて反応性元素を有することにより潤滑性を示すもの(例、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ふっ素化黒鉛、硫化スズ、硫化ビスマス)、
    (3)化学反応性により潤滑性を示すもの(例、或る種のチオ硫酸塩型化合物)、および
    (4)摩擦応力下での塑性または粘塑性挙動により潤滑性を示すもの(例、ポリテトラフルオロエチレン<PTFE>およびポリアミド)
    に大別される。

    これらのいずれも使用できるが、好ましいのは(2)である。 (2)の固体潤滑剤単独でもよいが、それに(1)および/または(4)の固体潤滑を組合わせて使用するのがより好ましい。 ただし、二硫化モリブデンはやや熱安定性が低く、また黒鉛は腐食を促進することがあるので、それら以外のものを使用することが好ましい。

    固体潤滑被膜は、固体潤滑剤に加えて、摺動性の調整のための無機粉末を含有しうる。 そのような無機粉末の例は、二酸化チタンと酸化ビスマスである。 この無機粉末は、固体潤滑被膜中に20質量%までの量で含有させることができる。

    固体潤滑被膜の形成は、ホットメルト法により行うことが好ましい。 この方法は、塗布用組成物(上述したマトリックスおよび固体潤滑剤の粉末を含有する)を加熱して、マトリックスを溶融させ、溶融状態になった組成物(当然、マトリックスのみが溶融)を、一定温度(通常は溶融状態の組成物の温度と同じ温度)の温度保持機能を有するスプレイガンから噴霧することにより行われる。 組成物の加熱温度は、マトリックスの融点より10〜50℃高い温度とすることが好ましい。

    塗布される基体(すなわち、ボックスの接触表面)もマトリックスの融点より高い温度に予熱しておくことが好ましい。 それにより良好な被覆性を得ることができる。 或いは、塗布用組成物がポリジメチルシロキサンのような界面活性剤を少量(例、2質量%以下)含有する場合には、基体を予熱しないか、予熱温度がマトリックスの融点より低くても、良好な被膜を形成することができる。

    塗布組成物は、適当な撹拌装置を備えたタンク内で加熱して溶融させ、コンプレッサにより計量ポンプを経てスプレイガンの噴霧ヘッド(所定温度に保持)に供給して、基体に向けて噴霧される。 タンク内と噴霧ヘッドの保持温度は組成物中のマトリックスに融点に応じて調整される。

    固体潤滑被膜の膜厚は10〜150μmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは25〜80μmの範囲内である。 固体潤滑被膜の膜厚が小さすぎると、当然ながら管ねじ継手の潤滑性が不足し、締付け時や緩め時に焼付きが起こり易くなる。 また、この固体潤滑被膜はある程度の防食性も備えているが、膜厚が小さすぎると、防食性も不十分となり、ボックスの接触表面の耐食性が低下する。

    一方、固体潤滑被膜の膜厚が大きすぎると、潤滑剤が無駄になるばかりか、本発明の目的の一つでもある環境汚染防止に逆行する。 また、場合によっては、締付け時に滑りが発生して、締付けが困難となることもある。

    固体潤滑被膜と固体防食被膜のいずれも、下地処理により表面粗さを大きくした接触表面の上に形成する場合には、下地のRzより大きな膜厚とすることが好ましい。 そうしないと、下地を完全に被覆することができない場合がある。 下地が粗面である場合の膜厚は、被膜の面積、質量および密度から算出しうる被膜全体の膜厚の平均値である。

    以下の実施例により、本発明の効果を例証する。 なお、以下、ピンのねじ部とねじ無し金属接触部を含む接触表面を「ピン表面」、ボックスのねじ部とねじ無し金属接触部とを含む接触表面を「ボックス表面」という。 表面粗さはRzである。 実施例中の%は特に指定しない限り、質量%である。

    炭素鋼(C:0.21%、Si:0.25%、Mn:1.1%、P:0.02%、S:0.01%、Cu:0.04%、Ni:0.06%、Cr:0.17%、Mo:0.04%)製の管ねじ継手(外径:17.78cm(7インチ)、肉厚:1.036cm(0.408インチ)のピン表面及びボックス表面に、以下のようにして表面処理を施した。

    ピン表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)の後、75〜85℃の燐酸亜鉛用化成処理液中に10分間浸漬して、厚さ8μmの燐酸亜鉛被膜(表面粗さ8μm)を形成した。 さらにその上に、市販の紫外線硬化型樹脂被膜形成用組成物(ThreeBond社製のThreeBond 3113B、エポキシ樹脂を主成分とした無溶剤タイプの紫外線硬化性樹脂塗料)を塗布し、下記条件で紫外線を照射して被膜を硬化させ、厚さ25μmの紫外線硬化型樹脂被膜を形成した。 この被膜は無色透明で、被膜の上からピンの雄ねじ部を肉眼あるいは拡大鏡で検査することができた。

    紫外線照射条件:
    UVランプ:空冷水銀ランプ、
    UVランプ出力:4kW、
    紫外線波長:260nm。

    ボックス表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)の後、80〜95℃の燐酸マンガン化成処理液中に10分間浸漬して、厚さ12μmの燐酸マンガン被膜(表面粗さ10μm)を形成した。 下記組成を有する潤滑被膜形成用組成物を撹拌機つきタンク内で150℃に加熱して塗布に適した粘度を有する溶融状態にし、一方、上記のように下地処理したボックス表面も誘導加熱により130℃に予熱した後、保温機能付きの噴霧ヘッドを有するスプレイガンにより溶融状態の潤滑被膜形成用組成物を塗布した。 冷却後に、厚さ35μmの固体潤滑被膜が形成された。

    潤滑被膜形成用組成物の組成:
    ・ポリエチレンホモポリマー(CLARIANT社製LICOWAX TM PE 520):9%、
    ・カルナバワックス:15%、
    ・ステアリン酸亜鉛:15%、
    ・液状ポリアルキルメタクリレート(ROHMAX社製VISCOPLEX TM 6-950):5%、
    ・腐食抑制剤(LUBRIZOL社製ALOX TM 606):40%、
    ・ふっ素化黒鉛:3.5%、
    ・酸化亜鉛:1%、
    ・二酸化チタン:5%、
    ・三酸化ビスマス:5%、
    ・シリコーン(ポリジメチルシロキサン):1%、並びに ・酸化防止剤(Ciba-Geigy社製)
    IRGANOX TM L150:0.3%および
    IRGAFOS TM 168:0.2%。

    ピンおよびボックスが上記のように表面処理されたねじ継手を用いて、締付け速度10rpm、締付けトルク20kN・mで繰り返しの締付けおよび緩めを10回行った。 10回目の締付けの後に緩めたピンおよびボックスの接触表面の焼付き状況を調査した。 その結果、10回の締付け・緩めにおいて、焼付きの発生はなく、極めて良好であった。

    実施例1で使用したのと同じ炭素鋼製の管ねじ継手のピン表面及びボックス表面に、以下のようにして表面処理を施した。
    ピン表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)の後、75〜85℃の燐酸亜鉛用化成処理液中に10分間浸漬して、厚さ8μmの燐酸亜鉛被膜(表面粗さ8μm)を形成した。 その上に、中国塗料(株)製のエポキシアクリル樹脂系紫外線硬化性樹脂塗料(無溶剤タイプ)に対して、防錆剤の亜リン酸アルミニウムと滑剤のポリエチレンワックスとを加えて調製した組成物(質量%で、樹脂分94%、防錆剤5%、滑剤1%)を塗布し、下記条件で紫外線を照射して被膜を硬化させ、厚さ25μmの紫外線硬化型樹脂被膜を形成した。 形成された被膜は無色透明で、被膜の上から雄ねじ部を肉眼あるいは拡大鏡で検査することができた。

    紫外線照射条件:
    UVランプ:空冷水銀ランプ、
    UVランプ出力:4kW、
    紫外線波長:260nm。

    ボックス表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)の後、電気めっきによりまずNiストライクめっき、次にCu−Sn−Zn合金めっきを施して、合計8μm厚のめっき被膜を形成した。 下記組成を有する潤滑被膜形成用組成物を撹拌機つきタンク内で120℃に加熱して塗布に適した粘度を有する溶融状態にし、一方、上記のように下地処理したボックス表面も誘導加熱により120℃に予熱した後、保温機能付きの噴霧ヘッドを有するスプレイガンにより溶融状態の潤滑被膜形成用組成物を塗布した。 冷却後、厚さ50μmの固体潤滑被膜が形成された。

    潤滑被膜形成用組成物の組成:
    ・ポリエチレンホモポリマー(CLARIANT社製LICOWAX TM PE 520):9%、
    ・カルナバワックス:15%、
    ・ステアリン酸亜鉛:15%、
    ・液状ポリアルキルメタクリレート(ROHMAX社製VISCOPLEX TM 6-950):5%、
    ・腐食抑制剤(King Industries, Inc.のNA-SUL(R)Ca/W1935):40%、
    ・ふっ素化黒鉛:3.5%、
    ・酸化亜鉛:1%、
    ・二酸化チタン:5%、
    ・三酸化ビスマス:5%、
    ・シリコーン(ポリジメチルシロキサン):1%、並びに ・酸化防止剤(Ciba-Geigy社製)
    IRGANOX TM L150:0.3%および
    IRGAFOS TM 168:0.2%。

    ピンおよびボックスが上記のように表面処理されたねじ継手を用いて、締付け速度10rpm、締付けトルク20kN・mで繰り返しの締付けおよび緩めを10回行った。 10回目の締付けの後に緩めたピンおよびボックスの接触表面の焼付き状況を調査した。 その結果、10回の締付け・緩めにおいて、焼付きの発生はなく、極めて良好であった。

    13Cr鋼(C:0.19%、Si:0.25%、Mn:0.9%、P:0.02%、S:0.01%、Cu:0.04%、Ni:0.11%、Cr:13%、Mo:0.04%)製の管ねじ継手(外径:24.448cm(9−5/8インチ)、肉厚:1.105cm(0.435インチ)のピン表面及びボックス表面に、以下のようにして表面処理を施した。

    ピン表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)の後、実施例2で使用したのと同じ紫外線硬化型塗料に、防錆剤の亜リン酸アルミニウムと滑剤のポリエチレンワックスと被膜着色用の蛍光顔料とを添加して調製した組成物(質量%で、防錆剤5%、滑剤1%、蛍光顔料0.3%を含有、残部は樹脂分)を塗布し、下記条件で紫外線を照射して被膜を硬化させて、厚さ25μmの紫外線硬化型樹脂被膜を形成した。 形成された被膜は無色透明で、被膜の上から雄ねじ部を肉眼あるいは拡大鏡で検査することができた。 また、紫外線を照射した場合には被膜は黄色に発光したので、被膜の形成状況を容易に観察することができ、被膜がムラなく均一に形成されていることが確認された。

    紫外線照射条件:
    UVランプ:空冷水銀ランプ、
    UVランプ出力:4kW、
    紫外線波長:260nm。

    ボックス表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm)の後、電気めっきによりまずNiストライクめっき、次にCu−Sn−Zn合金めっきを施して、合計8μm厚のめっき被膜を形成した。 下記組成を有する潤滑被膜形成用組成物を撹拌機つきタンク内で150℃に加熱して塗布に適した粘度を有する溶融状態にし、一方、上記のように下地処理したボックス表面も誘導加熱により150℃に予熱した後、保温機能付きの噴霧ヘッドを有するスプレイガンにより溶融状態の潤滑被膜形成用組成物を塗布した。 冷却後に、厚さ40μmの固体潤滑被膜が形成された。

    潤滑被膜形成用組成物の組成:
    ・ポリエチレンホモポリマー(CLARIANT社製LICOWAX TM PE 520):10%、
    ・ブロックコポリマ−(Resine Dertolyne P2L):15%
    ・カルナバワックス:7%、
    ・ステアリン酸亜鉛:25%、
    ・液状ポリアルキルメタクリレート(ROHMAX社製VISCOPLEX TM 6-950):8%、
    ・腐食抑制剤(Halox (R)SZP-391):15%、
    ・ふっ素化黒鉛:7%、
    ・PTFE:2%、
    ・窒化硼素:1%
    ・粘性向上剤(Displerplast):5%
    ・マイクロワックス(Micro Powders社製Polyfluo(R) 440Xn):5%
    ピンおよびボックスが上記のように表面処理されたねじ継手を用いて、締付け速度10rpm、締付けトルク20kN・mで繰り返しの締付けおよび緩めを10回行った。 10回目の締付けの後に緩めたピンおよびボックスの接触表面の焼付き状況を調査した。 その結果、10回の締付け・緩めにおいて、焼付きの発生はなく、極めて良好であった。

    管ねじ継手としての必要とされる防錆性については、別途準備した同じ鋼種のクーポン試験片(70mm×150mm×2mm厚)に、上記各実施例においてそれぞれボックス表面又はピン表面に形成したのと同様の表面処理(下地処理と固体潤滑被膜または固体防食被膜の形成)を行い、湿潤試験(温度50℃、湿度98%、200時間)を実施して評価した。 その結果、全ての場合に錆の発生がないことを確認した。

    以上に、現時点で好ましいと考えられる態様について本発明を説明したが、本発明は以上に開示した態様に限られるものではない。 請求の範囲および明細書から全体として理解される本発明の技術思想に反しない限り、変更を加えることが可能であり、そのように変更を行ったねじ継手も本発明の範囲内に包含される。

    例えば、上記実施例では外径7インチの管ねじ継手について説明したが、2−3/8インチから14インチまでの外径、炭素鋼クラスから13Cr鋼、そしてさらに高合金鋼(例えば、25Cr鋼)の鋼種、各種ねじタイプ(住友金属工業株式会社製のVAM Connection、 VAM TOPシリーズなど)においても同様の効果が得られることも検証済みである。

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