本発明は、粘着積層体および表面保護シートに関する。
粘着剤(pressure-sensitive adhesive)とは、室温において粘着性(tack)を有する固体であり、被着体に接触させて圧力を加えることによって接着し、また被着体から糊残り(adhesive deposit)が無いように剥離できる再剥離性(removable)を有する、接着剤(adhesive)である。 一方、粘着剤以外の接着剤は、接着剤(硬化性接着剤においては硬化後の接着剤)と被着体とが剥離し難いことが要求される。 以下、本明細書においては、粘着剤と接着剤を区別するために、接着剤は粘着剤以外のものをいうものとする。 また、粘着剤をPSAと略称することもある。 粘着剤としては、硬化性組成物の硬化により粘着剤となるタイプの粘着剤がある。 例えば、粘着テープを製造する場合、基材表面上に硬化性組成物の層を形成し、次いで硬化性組成物を硬化させて基材表面に粘着剤の層を形成する。 硬化性組成物の硬化の際の接着力により基材と粘着剤層が接着する。 この接着力が粘着剤層による被着体との粘着力よりも高いことにより、粘着剤層と被着体との間の再剥離の際に基材と粘着剤層との剥離が生じ難い。 このように、硬化性組成物から形成される粘着剤においては、硬化性組成物の硬化時の接着性発現と硬化後に形成された粘着剤の再剥離性とが要求される。 このように、硬化性組成物から形成される粘着剤は、硬化性の接着剤とは異なる特性が要求される。 本発明は硬化性組成物から形成される粘着剤にかかわる発明であり、以下、この硬化して粘着剤となる硬化性組成物を「硬化性組成物」といい、この硬化性組成物の硬化により形成された粘着性を有する硬化物を「粘着体」という。 従来の粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オキシアルキレン系粘着剤が知られている。 特に最近は、強い粘着力を有する強粘着型粘着剤から、微小な粘着力を有する微粘着型粘着剤まで広範囲の用途にアクリル系粘着剤が使用される傾向がある。 しかし、アクリル系粘着剤は、アクリルモノマーが粘着剤中に残存する場合に、臭気や皮膚刺激性が問題となる。 またアクリル系粘着剤は、被着体に貼付した後、経時変化によって、粘着力が上昇したり移行性が高くなる傾向がある。 このため被着体に糊残りが生じ易く、再剥離性が不充分になりやすいという問題がある。 ゴム系粘着剤は、取り扱い性や粘着性能の調整のため低分子量可塑剤の添加が不可欠である。 そのため長期間経過すると、低分子量可塑剤が表面に移行して、著しい性能低下を起こす問題がある。 シリコーン系粘着剤は、耐熱性に優れる。 しかし高価であり、特殊な用途にしか展開されていない。 ウレタン系粘着剤は、経時変化が少なく安定性に優れるという特性を有する(特許文献1参照。)。 しかし製造工程が長い傾向にあり、アクリル系粘着剤と比較すると高価になりがちである。 また製造工程が長いため、品質のばらつきが発生しやすく、工程管理が煩雑になりやすいという問題があった。 オキシアルキレン系粘着剤は、有機溶剤を使用せずに塗布可能という特性を有する(特許文献2、3参照。)。 しかし粘着付与樹脂のブリードが発生することがあり、長期の粘着力の安定性という点で問題があった。 近年、電気部品、電子部材、光学部材などを製造する際、保護シートや保護テープが多用されている。 これらの部品や部材を、保管、搬送などの工程において、傷やほこりから守るためである。 特に電子部材や光学部材の製造においては、微小な塵が製造途中の製品に付着することを徹底的に排除する必要がある。 塵は汚染の原因となり、製品不良を発生させるからである。 この保護シートや保護テープとしては、低い粘着力を有する粘着剤の層が設けられた粘着性シートや粘着性テープが採用される。 これらの粘着性シートや粘着性テープには、粘着剤層を保護するためセパレータが用いられる。 このセパレータに起因する汚染も近年問題となっている(特許文献4参照。)。 すなわちセパレータに含まれるシリコーンが電子部品の汚染の原因となっている。 このためシリコーン系剥離剤を使用しないセパレータを有する粘着性シートが求められている。
特開2003−12751号公報
国際公開第2005/73333号パンフレット
国際公開第2005/73334号パンフレット
特開平06-297645号公報
アクリル系などの従来の粘着剤においては、粘着力が経時的に上昇しやすいという問題があった。 特に粘着力が低い粘着剤を製造しようとした場合、初期の粘着力が低くなるように粘着剤の組成を調整しても、貼着時間が長時間になれば粘着力が上昇するという問題があった。 粘着力が上昇すると被着体が変形したり、破損する可能性が生じる。 また逆に一定時間後に粘着力が低くなるよう粘着剤の組成を調整すると、そもそも初期に充分な粘着力が得られないという問題があった。 充分な粘着力が得られないと被着体から意図せずに剥離してしまい、保護シートなどの所定の役割を果たせない。 また粘着剤層の厚さを薄くして、粘着力の上昇を抑制することもある。 しかしこの場合、被着体への軽い圧力での接着という、粘着剤が有する本来の機能が損なわれやすかった。 特許文献1に記載のウレタン系粘着剤の原料である樹脂を製造する際に、原料のわずかな反応性の差を利用して所定の構造を有する高分子を得ている。 しかし反応性の差による構造の制御は、精密な反応条件の制御が必要である。 結果としてこの樹脂の製造においては、分子量の制御が難しく、所望の性能の粘着剤を得ることが困難であった。 特に高分子量体の生成と、それに伴うゲル化の進行の制御が困難であった。 分子量は、分子の凝集力と関係し、粘着性、再剥離特性に影響がある。 またゲル化が極度に進行すると、得られる組成物が高粘度化しやすい。 組成物が高粘度であると、粘着剤の成形加工の際に、所定厚さを均一に有する粘着体層を得ることが困難な場合や、得られた粘着体の表面が平滑でなくなる場合があり、製造上の問題であった。 溶剤を利用して見かけの粘度を低下させても、厚い粘着体が得にくい、発泡が生じやすい、長い乾燥時間が必要になるなどの問題が発生する。 また保護シートや保護テープは、部品の一時的固定や保護の役割が終了した時点で、剥離除去される。 一般的に粘着性シートを剥離するために必要な引っ張り力(剥離強度)は、引っ張り速度(剥離速度)が速いほど大きくなる傾向がある。 例えばディスプレイ、偏光板等の光学部材や電子基板、ICチップ等の電子部材等の表面保護シートは、高速でスムーズに剥離できることが好ましい。 低速度で剥離する場合の剥離強度に対して、高速で剥離する場合の剥離強度が大きくならないことが要求される。 すなわち保護シートは、剥離強度の速度依存性が低いという、優れた高速剥離特性が要求される。 さらに、表面保護シートとしては、剥離強度が経時的に変化しないという特性だけではなく、高速剥離時の剥離強度が経時的に変化しない(大きく上昇しない)という特性も求められる。 すなわち、表面保護シートは、低粘着であり初期の高速剥離特性が良好で、かつ経時後の高速剥離特性が初期と同等であることが要求される。 本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものである。 すなわち本発明は、従来の表面保護シートが持っていた被着体への濡れ性、再剥離性などの特性を損なわず、かつ初期の高速剥離特性に優れ、高速剥離特性が経時的に変化しにくい粘着積層体を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を有する。 [1]基材層と粘着体層とを有する粘着積層体であって、粘着体層が下記シリル基含有重合体(S)とオルガノシリケート化合物を含む硬化性組成物を硬化させて得られる層であることを特徴とする粘着積層体。 シリル基含有重合体(S):主鎖にポリエーテル鎖、ポリエステル鎖および/またはポリカーボネート鎖を有し、かつ分子末端に加水分解性シリル基を有する、シリル基含有重合体。 [2]上記粘着体層が、シリル基含有重合体(S)100質量部に対し、オルガノシリケート化合物を0.1〜50質量部含む硬化性組成物を硬化させて得られる層であることを特徴とする、[1]に記載の粘着積層体。 [3]前記シリル基含有重合体(S)における加水分解性シリル基がトリアルコキシシリル基である、[1]または[2]に記載の粘着積層体。 [4]オルガノシリケート化合物が下記式(1)で表わされるオルガノキシシラン、および/またはオルガノキシシロキサンである、[1]〜[3]のいずれかに記載の粘着積層体。 (R 1 O)(R 2 O)(R 3 O)Si[OSi(OR 4 )(OR 5 )] m −OR 6 ・・・(1) mは0〜29である。 R 1 〜R 6は互いに独立または同一であってもよく、炭素数1〜10の1価の有機基を表す。 [5]前記R 1 〜R 6が全てメチル基であるかまたは全てエチル基である、[4]に記載の粘着積層体。 [6]mの平均値が3〜9である、[4]または[5]に記載の粘着積層体。 [7]前記粘着体層の厚さが、3〜100μmである、[1]〜[6]のいずれかに記載の粘着積層体。 [8]前記基材層が、ポリエステル系材料、ポリオレフィン系材料、ポリアミド系材料およびポリイミド系材料から選ばれる少なくとも1種の材料からなる基材の層である、[1]〜[7]のいずれかに記載の粘着積層体。 [9]前記硬化性組成物を基材表面で硬化して得られる、[1]〜[8]のいずれかに記載の粘着積層体。 [10]JIS−Z−0237(1999)−8.3.1に規定される180度引きはがし法に準拠した初期の剥離粘着力が、8N/25mm以下である、[1]〜[9]のいずれかに記載の粘着積層体。 [11]表面保護シートとして使用される、[1]〜[10]のいずれかに記載の粘着積層体。 [12][1]〜[10]のいずれかに記載の粘着積層体からなる表面保護シート。 [13]電子部材用表面保護シートとして使用される、[12]に記載の表面保護シート。 [14]光学部材用保護シートとして使用される、[12]に記載の表面保護シート。
本発明における硬化性組成物は、加水分解性シリル基を鎖延長機構に用いたものである。 本発明の粘着積層体は、従来の表面保護シートが持っていた被着体への濡れ性、再剥離性などの特性を損なわず、かつ初期の高速剥離特性に優れ、経時後においても高速剥離特性が初期と同等である。
本明細書における数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、分子量既知の標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定することによって得られるポリスチレン換算分子量である。 本明細書における平均水酸基価(OHV)は、JIS−K−1557−6.4に基づいた測定値である。 また本明細書において、ポリエーテルポリエステルポリオールとは、エーテル結合およびエステル結合を有するポリオールである。 本明細書において、剥離粘着力(被着体からの剥離強度)により、粘着剤を分類することがある。 剥離粘着力が0N/25mmを超え1N/25mm以下の場合を微粘着、剥離粘着力が1N/25mmを超え8N/25mm以下の場合を低粘着、剥離粘着力が8N/25mmを超え15N/25mm以下の場合を中粘着、剥離粘着力が15N/25mmを超え50N/25mm以下の場合を強粘着という。 なお特に断りがない場合には、剥離粘着力はJIS−Z−0237(1999)−8.3.1に規定される180度引きはがし法に準拠し、以下の試験方法に従う。 すなわち、23℃の環境で、厚さ1.5mmのブライトアニール処理したステンレス鋼板(SUS304(JIS))に、測定する粘着シート試験片(幅:25mm)を貼着し、質量が2kgのゴムロールで圧着する。 30分後、JIS−B−7721に規定する引張り試験機を用い、剥離強度(180度ピール、引張り速度0.3m/分)を測定する。 こうして得られる貼着30分後の剥離強度の値を本発明における「初期の剥離粘着力」とする。 剥離強度測定の引張り速度を30m/分で測定した、貼着30分後における剥離強度を、「初期の高速剥離粘着力」とする。 粘着体は被着体に貼着した後、粘着体が被着体表面に濡れ広がることにより、剥離粘着力が経時的に上昇し、一定の剥離粘着力に達すると考えられる。 本明細書において、「経時後の剥離粘着力」とは、貼着シートと被着体とを貼着したあと、一定の時間が経過し、略一定の剥離粘着力に達したと思われる時の剥離強度(180度ピール、引張り速度0.3m/分)をいう。 一定の時間が経過し、略一定の剥離粘着力に達したと思われる時の剥離強度(180度ピール、引張り速度を30m/分)を、「経時後の高速剥離粘着力」とする。 ただし、通常粘着積層体が使われる場合、貼着してから剥離粘着力が一定に達するまでの間でも高速で剥離される状況が考えられる。 このように剥離粘着力が変化している状況においても経時後の高速剥離特性が初期と同等であるこが必要とされることは言うまでもない。 さらに本発明実施時には「経時後の剥離粘着力」および「経時後の高速剥離粘着力」が剥離粘着力が一定に達した時のみに限定されるものではない。 本明細書において、「初期の高速剥離粘着力」に対して「経時後の高速剥離粘着力」の変化率(上昇率)が100%以内であることを、「高速剥離特性の経時変化が小さい(優れている)」とする。 ただし変化率とは、経時後の値と初期値との差を初期値で割って求めた値である。 「高速剥離特性の経時変化が小さい(優れている)」と、高速剥離特性の安定性に優れていると言える。 本発明は、シリル基含有重合体(S)に、オルガノシリケート化合物を加えて硬化させることで、粘着体内の架橋密度を増やし、濡れ性を損なわずに、粘着体の濡れ広がりをコントロールすることができた。 本発明の効果を奏するために、オルガノシリケート化合物は1分子中に含まれる架橋点が多い方が好ましいと考えられる。 そのようなオルガノシリケート化合物としては、反応性を有する基を多く持つ多量体が好ましいと考えられる。 <粘着積層体> 本発明の粘着積層体は、基材層(単に基材ということもある。)と、該基材層上に設けられた粘着体層(単に粘着体ということもある。)とを有する。 基材層の粘着体層側の面は易接着処理されていてもよい。 易接着処理については後述する。 粘着体層は基材層と当接していることが好ましいが、粘着体層と基材層との間に1層または2層以上の中間層を有していてもよい。 中間層は、該中間層と接する層(基材層、粘着体層、または他の中間層)との接着力が大きいものが好ましい。 好ましくは、基材層の易接着処理により形成される層(例えば、プライマ層)である。 粘着積層体はどのような形態でもよいが、粘着シートまたは粘着テープであることが好ましい。 粘着シート(pressure sensitive adhesive sheet)とは、粘着性を有するシートである。 粘着性シートは、基材シート(基材層)と粘着体層とを構成要素として有する。 ただし粘着シートの基材シートの厚さに特に限定はなく、フィルム状でも板状でもよい。 また粘着テープ(pressure sensitive adhesive tape)とは、テープ形状の粘着積層体であり、幅に対して充分な長さを有する基材フィルム(基材層)と粘着体層とを構成要素として有する。 <基材層> 本発明における基材層とは、粘着体層を機械的に支持する機能を果たす。 基材層の形態は特に制限されない。 例えば、フィルム、織布、不織布、紙などが挙げられる。 このうちフィルム形態が粘着積層体の加工性に優れる点で好ましい。 織布や不織布の場合には、単一の材料のみからなっていてもよく、他の素材との複合体であってもよい。 また基材層は単層であっても複層であってもよい。 複層である場合には各種の機能層が設けられていてもよい。 機能層としては、導電層、反射防止層などが例示できる。 基材層の材料としては、金属、樹脂などが挙げられる。 金属としては、アルミニウムが例示できる。 樹脂としては、ポリオレフィン系材料、ポリエステル系材料、ポリアミド系材料、ポリイミド系材料、アクリル系材料が例示できる。 被着体が電子部材や光学部材の場合、被着体への影響が少ない点で樹脂材料が好ましい。 これらの材料は各種添加剤を含有していてもよい。 この添加剤としては、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が例示できる。 前記ポリオレフィン系材料からなる基材としては、機械的性質に優れる点からポリプロピレン系材料からなる基材が好ましく、特に、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムが好適に例示できる。 市販品では、東レ社製のトレファンなどが例示できる。 また前記ポリアミド系材料からなる基材としては、特にアラミド(芳香族系ポリアミド)系材料からなる基材が好適に例示できる。 市販品では、東レ社製のミクトロン、帝人社製のアラミカなどが例示できる。 また前記ポリイミド系材料からなる基材としては、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドからなる基材が好適に例示できる。 市販品では、東レ・デュポン社製のカプトンが例示できる。 前記ポリエステル系材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が例示できる。 これらの樹脂は、他の共重合成分を有していてもよく、さらに他の樹脂との混合体であってもよい。 ポリエステル系材料からなる基材としては、市販品では、東レ社製のルミラー、帝人デュポンフィルム社製のテトロンフィルム、メリネックス、マイラー、テフレックス、テオネックス、三菱樹脂社製のダイアホイル、ホスタファン、東洋紡績社製の東洋紡エステルフィルムなどが例示できる。 前記基材層の厚さは特に制限されず、使用目的等に応じて適宜選定される。 粘着体層の支持基材として好適な厚さは5〜300μmであり、10〜150μmがより好ましい。 以下、基材としてフィルム状基材を例に本発明を説明する。 <シリル基含有重合体(S)> 本発明における粘着体はシリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物を硬化させて得られる。 シリル基含有重合体(S)は、主鎖にポリエーテル鎖、ポリエステル鎖および/またはポリカーボネート鎖を有し、かつ分子末端に加水分解性シリル基を有する。 シリル基含有重合体(S)は、下記(S1)〜(S3)のうちいずれか1種のみ、または、2種以上を混合して用いることが好ましい。 このうち特に得られる硬化体が耐熱性に優れるとともに、柔軟性と濡れ性に優れる点から(S1)が好ましい。 <シリル基含有重合体(S1)> シリル基含有重合体(S1)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物の末端に加水分解性シリル基を導入して得られるものである。 本発明におけるポリエーテルポリオールは、ポリエーテル鎖(−OR 7 −) n1 [R 7は炭素数2〜4のアルキレン基、n1は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエステル鎖を有さない。 ポリエステルポリオールは、ポリエステル鎖(−OC(O)−R 8 −) n2 [R 8は炭素数2〜8のアルキレン基、n2は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエーテル鎖を有さない。 ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネート鎖(−OC(O)−O−R 9 −) n3 [R 9は炭素数2〜20のアルキレン基、n3は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエーテル鎖およびポリエステル鎖のいずれも有さない。 ポリエーテルポリエステルポリオールは、ポリエーテル鎖およびポリエステル鎖の両方を有するポリオールである。 シリル基含有重合体(S1)は、特に、上記ポリオール化合物に、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。 <シリル基含有重合体(S2)> シリル基含有重合体(S2)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーの末端に、加水分解性シリル基を導入して得られるものである。 シリル基含有重合体(S2)は、特に、前記ポリウレタンプレポリマーに、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。 <シリル基含有重合体(S3)> シリル基含有重合体(S3)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーを、さらに鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られるポリウレタン重合体の分子末端に、加水分解性シリル基を導入して得られるものである。 シリル基含有重合体(S3)は、特に、ポリウレタン重合体に、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。 <ポリオール化合物> 本発明におけるポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオールを用いることができる。 ポリオール化合物としてはこれらのポリオールの1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。 特にポリエーテル骨格(ポリエーテル鎖)を有するポリオールの少なくとも1種を用いることが粘着体の柔軟性を確保する点で好ましい。 粘着体が柔軟であることは、被着体から粘着体を剥離する際に、滑らかに剥離することなくバリバリという音を発する現象、いわゆるジッピングの抑制に効果的であると考えられる。 またポリエーテル骨格を有することにより、硬化性組成物の粘度を低くできる。 シリル基含有重合体(S)がポリエーテル鎖を有する場合に、その一部としてオキシエチレン基を有していてもよい。 オキシエチレン基を有していると特に表面抵抗が小さくできるからである。 オキシエチレン基を有する場合のオキシエチレン基の割合は、全ポリエーテル鎖のうち5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。 オキシエチレン基は、ポリエーテル鎖の中にブロックで存在していてもよく、ランダムに存在していてもよい。 シリル基含有重合体(S)におけるエーテル結合(−OR 7 −)の割合は、エーテル結合とエステル結合(−OC(O)−R 8 −)との合計(100モル%)に対して、40〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、60〜100モル%がさらに好ましい。 ポリエーテル骨格を有するポリオールとは、例えばポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオールなどのようにポリエーテル鎖を有するポリオールを意味する。 本発明においてシリル基含有重合体(S)を得るためのポリオール化合物として、特にポリエーテルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールを用いるか、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールと、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールとを併用することが好ましい。 さらに好ましくは、ポリエーテルポリオールまたはポリエーテルポリエステルポリオールを用いる。 上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。 ポリオキシアルキレンポリオールを構成するアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルトリメチレン基等が挙げられる。 これらは対応する環状エーテル化合物やエポキシド化合物を開環重合することにより得られる。 環状エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、オキセタンなどが挙げられる。 エポキシド化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが挙げられる。 ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールが好適に例示できる。 上記ポリエーテルポリエステルポリオールとしては、エーテルジオール類と二塩基酸化合物との縮合重合で得られるポリオール、エポキシド化合物と環状エステル類との開環共重合(特にランダム共重合が好ましい)で得られるポリオールなどが例示できる。 エーテルジオール類としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが例示できる。 二塩基酸化合物としては、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸、フマル酸などが例示できる。 環状エステル類(ラクトン類)としては、β−プロピオラクトン(炭素数3)、δ−バレロラクトン(炭素数5)、ε−カプロラクトン(炭素数6)が挙げられる。 これらのうちでもε−カプロラクトンがより好ましい。 エポキシド化合物は前述のとおりである。 上記ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの低分子ジオール類と前述の二塩基酸化合物との縮合重合で得られるポリオールが例示できる。 上記ポリカーボネートポリオールとしては、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートからなる低分子カーボネート化合物と、ジオール化合物とを反応させて得られるものが好ましい。 具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチルペンテンカーボネート)ジオール、ポリプロピレンカーボネートジオールなどが例示できる。 また、それらの混合物またはそれらの共重合物などであってもよい。 本発明においてシリル基含有重合体(S)を得るためのポリオール化合物の水酸基数は2〜3が好ましく、特に水酸基数は2が好ましい。 すなわちポリオール化合物としてジオールを用いることが特に好ましい。 水酸基数がこの範囲であれば、得られるポリウレタンプレポリマーの粘度を低く抑えやすいため好ましい。 また該ポリオール化合物の平均水酸基価は5〜225mgKOH/gが好ましく、7〜115mgKOH/gがより好ましく、10〜112mgKOH/gが特に好ましい。 平均水酸基価がこの範囲であれば、得られるシリル基含有重合体(S)の粘度を低く抑えやすいため好ましい。 特にシリル基含有重合体(S1)を得る場合のポリオール化合物の平均水酸基価は5〜112mgKOH/gが好ましく、7〜56mgKOH/gがより好ましい。 またシリル基含有重合体(S2)または(S3)を得る場合のポリオール化合物の平均水酸基価は25〜225mgKOH/gが好ましく、30〜115mgKOH/gがより好ましい。 <ポリイソシアネート化合物> シリル基含有重合体(S2)または(S3)を得るためにはポリウレタンプレポリマーを用いる。 このポリウレタンプレポリマーの合成に用いるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを使用することができる。 具体的にはジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が挙げられる。 これらは1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。 得られる粘着体の柔軟性が向上することから屈曲鎖を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。 具体的には、トリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが例示できる。 このうちトリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートが特に好ましい。 <ポリウレタンプレポリマー> シリル基含有重合体(S2)または(S3)を得るためのポリウレタンプレポリマーは、前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる。 ポリウレタンプレポリマーの末端はイソシアネート基または水酸基であり、加水分解性シリル基の導入方法により適宜選択される。 すなわちイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーであっても、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーであってもよい。 ポリウレタンプレポリマーを合成する際に、前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる割合は、ポリオール化合物の分子量(平均水酸基価)および目標とするポリウレタンプレポリマーの分子量によって適宜選択される。 イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、反応させる前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との割合は、「ポリイソシアネート化合物のNCO基/ポリオール化合物のOH基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、105〜170がより好ましい。 水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、前記反応させるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との割合は、イソシアネート指数で50〜100未満が好ましく、50〜98がより好ましい。 ポリウレタンプレポリマーの分子量は、数平均分子量で2,000〜100,000が好ましい。 より好ましくは3,000〜80,000である。 シリル基含有重合体(S3)を得るためのポリウレタン重合体は、ポリウレタンプレポリマーを、さらに鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られる。 ポリウレタンプレポリマーは、シリル基含有重合体(S2)の場合と同様である。 <鎖延長剤> 鎖延長剤としては、ポリウレタンプレポリマーとしてイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを用いる場合は、低分子ジオール類、低分子ジアミン類が好ましい。 低分子ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが好適に例示できる。 低分子ジアミン類としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;ピペラジン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジアミン等の脂環式ジアミン;及びトリレンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。 ポリウレタンプレポリマーとして水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを用いる場合は、鎖延長剤としてジイソシアネート化合物が好ましい。 ジイソシアネート化合物はポリウレタンプレポリマーに用いるものと同様である。 <ポリウレタン重合体> ポリウレタン重合体は、前記ポリウレタンプレポリマーを鎖延長反応させて得られる。 ポリウレタン重合体の末端はイソシアネート基、水酸基、またはアミノ基であり、加水分解性シリル基の導入方法により適宜選択される。 すなわちイソシアネート基末端ポリウレタン重合体であっても、水酸基末端ポリウレタン重合体であっても、アミノ基末端ポリウレタン重合体であってもよい。 ポリウレタン重合体を合成する際に、前記ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを反応させる割合は、ポリウレタンプレポリマーの分子量および目標とするポリウレタン重合体の分子量によって適宜選択される。 イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを低分子ジオール類を鎖延長剤として用いて鎖延長する場合、ポリウレタンプレポリマーと低分子ジオール類との割合は、「ポリウレタンプレポリマーのNCO基/低分子ジオール類のOH基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、100超〜150がより好ましい。 この範囲であるとイソシアネート基末端ポリウレタン重合体が得られる。 また水酸基末端ポリウレタン重合体を得る場合には、該イソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。 イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを低分子ジアミン類を鎖延長剤として用いて鎖延長する場合、ポリウレタンプレポリマーと低分子ジアミン類との割合は、「ポリウレタンプレポリマーのNCO基/低分子ジアミン類のNH 2基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、100超〜150がより好ましい。 この範囲であるとイソシアネート基末端ポリウレタン重合体が得られる。 またアミノ基末端ポリウレタン重合体を得る場合には、該イソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。 水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを、鎖延長剤としてジイソシアネート化合物を用いて鎖延長して、イソシアネート基末端ポリウレタン重合体を得る場合、ポリウレタンプレポリマーとジイソシアネート化合物との割合は、「鎖延長剤のNCO基/ポリウレタンプレポリマーのOH基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、101〜150がより好ましい。 また水酸基末端ポリウレタン重合体を得る場合には、該イソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。 ポリウレタン重合体の分子量は、数平均分子量で4,000〜500,000が好ましい。 より好ましくは8,000〜250,000である。 <加水分解性シリル基> 本発明において加水分解性シリル基とは、加水分解性基を有するシリル基である。 具体的には、−SiX a R 10 (3−a)で表されるシリル基が好ましい。 ここで、aは1〜3の整数を示す。 aは好ましくは2〜3であり、3が最も好ましい。 またR 10は炭素数1〜20の1価の有機基であり、炭素数1〜6の1価の有機基が好ましい。 具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。 R 10は置換基を有していてもよい。 該置換基の例としてはメチル基、フェニル基等が挙げられる。 加水分解性シリル基がR 10を複数有する場合、該複数のR 10は互いに同一でも異なっていてもよい。 すなわち、aが1である場合、1個のケイ素原子(Si)に結合している2個のR 10はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基を示す。 また上記Xは水酸基(−OH)又は加水分解性基を示す。 該加水分解性基としては、例えば−OR基(Rは炭素数4以下の炭化水素基)が挙げられる。 かかる−OR基は、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。 アルコキシ基又はアルケニルオキシ基の炭素数は4以下が好ましい。 具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はプロペニルオキシ基等が挙げられる。 これらの中でもメトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。 この場合、硬化性組成物の硬化速度をより高めることができる。 加水分解性シリル基中にXが複数個存在する場合、該複数のXは互いに同一でも異なってもよい。 すなわち、aが2または3である場合、Xはそれぞれ独立に、水酸基又は加水分解性基を示す。 加水分解性シリル基としては、トリアルコキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基またはトリエトキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。 シリル基含有重合体(S)の貯蔵安定性が良好であり、かつ、硬化性組成物の硬化速度が速く粘着体の製造に好適であるためである。 <加水分解性シリル基の導入> 本発明においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の分子末端に加水分解性シリル基を導入する。 加水分解性シリル基の導入方法としては、イソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)、アミノシラン類を用いる方法(PQ2)、メルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)、エポキシシラン類を用いる方法(PQ4)、およびヒドロシラン類を用いる方法(PQ5)が例示できる。 シリル基含有重合体(S)がウレタン結合またはウレア結合を有する場合において、ウレタン結合とウレア結合との合計量(MU)と加水分解性シリル基の量(MS)との割合(MU/MSのモル比)は特に制限はないが、MU/MS(モル比)が1/1〜100/1であることが好ましい。 この範囲にあることにより粘着体の粘着力と柔軟性が制御される。 また粘着力の安定性も良好となる。 ウレタン結合はイソシアネート基と水酸基との反応により形成され、ウレア結合はイソシアネート基とアミノ基との反応により形成される。 シリル基含有重合体(S2)または(S3)の場合、MU/MSのモル比はポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の分子量などにより制御できる。 <イソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)> 方法(PQ1)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がイソシアネート基と反応しうる基であり、該末端の官能基とイソシアネートシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 イソシアネートシラン類としては、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、5−イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリエトキシシラン、5−イソシアネートペンチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルメチルジメトキシシシラン、2−イソシアネートエチルエチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン又は3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げ� ��れる。 これらの中でも、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン又は3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。 イソシアネート基と反応しうる基としては、水酸基、アミノ基が例示できる。 水酸基を用いる場合は、ポリオール化合物、水酸基末端ポリウレタンプレポリマー、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーをさらにジイソシアネート化合物を用いて鎖延長反応させて得られた水酸基末端ポリウレタン重合体、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーに低分子ジオール類を反応させて得られた水酸基末端ポリウレタン重合体等を用いることができる。 またアミノ基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーをさらに低分子ジアミン類を用いて鎖延長反応させて得られたアミノ基末端ポリウレタン重合体等を用いることができる。 この反応には触媒を用いてもよい。 触媒としては、公知のウレタン化反応触媒が用いられる。 例えば、有機酸塩・有機金属化合物類、第三級アミン類等が挙げられる。 具体的な有機酸塩・有機金属化合物類としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)等のスズ触媒、2−エチルヘキサン酸ビスマス[ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)]等のビスマス触媒、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛触媒、ナフテン酸コバルト等のコバルト触媒、2−エチルヘキサン酸銅等の銅触媒等が例示できる。 第三級アミン類としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。 <アミノシラン類を用いる方法(PQ2)> 方法(PQ2)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がアミノ基と反応しうる基であり、該末端の官能基とアミノシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、アミノ基と反応しうる基を導入してもよい。 アミノシラン類としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラ� ��、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシ� �チルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N'−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等が挙げられる。 これらの中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。 アミノ基と反応しうる基としては、イソシアネート基、アクリロイル基、メタクリロイル基が例示できる。 イソシアネート基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーをさらにジイソシアネート化合物を用いて鎖延長反応させて得られたイソシアネート基末端ポリウレタン重合体、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーをさらに低分子ジオール化合物を用いて鎖延長反応させて得られたイソシアネート基末端ポリウレタン重合体等を用いることができる。 またアクリロイル基やメタクリロイル基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーにヒドロキシアルキルアクリレート類またはヒドロキシアルキルメタクリレート類を反応させたもの、ポリオール化合物、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーまたは水酸基末端ポリウレタン重合体にアクリル酸類またはメタクリル酸類を反応させたものなどを用いることができる。 ヒドロキシアルキルアクリレート類としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート等が例示できる。 ヒドロキシアルキルメタクリレート類としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が例示できる。 アミノ基とイソシアネート基との反応はウレア結合生成の反応である。 この反応には上述のウレタン化反応触媒を用いてもよい。 またアミノ基とアクリロイル基との反応はマイケル付加反応である。 <メルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)> 方法(PQ3)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がメルカプト基と反応しうる基であり、該末端の官能基とメルカプトシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、メルカプト基と反応しうる基を導入してもよい。 メルカプトシラン類としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。 これらの中でも、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン又は3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。 メルカプト基と反応しうる基としては、イソシアネート基、アクリロイル基、アリル基が例示できる。 イソシアネート基およびアクリロイル基の場合については、アミノシラン類を用いる方法(PQ2)の場合と同様である。 アリル基を用いる場合は、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端をイソシアネート基とした後、アリルアルコールと反応させることによりアリル基とすることができる。 また、ポリオール化合物等の水酸基をアリルオキシ基に変換する方法によっても末端をアリル基とすることができる。 例えば、ポリオール化合物等の水酸基をアルカリ金属アルコキシドに変換した後アリルクロライドと反応させて、水酸基をアリルオキシ基に変換できる。 メルカプト基とイソシアネート基との反応はウレタン化反応と同様であり、触媒を用いてもよい。 メルカプト基とアクリロイル基またはアリル基との反応は、ラジカル開始剤を用いることが好ましい。 ラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が例示できる。 <エポキシシラン類を用いる方法(PQ4)> 方法(PQ4)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がエポキシ基と反応しうる基の場合であり、該末端の官能基とエポキシシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、エポキシ基と反応しうる基を導入してもよい。 エポキシシラン類としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等好ましい。 これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。 エポキシ基と反応しうる基としては、水酸基、アミノ基が例示できる。 それぞれイソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)の場合と同様である。 エポキシ基との反応における触媒としては、アミン類、酸無水物類など公知のものが使用される。 例えば鎖状脂肪族系ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、変性脂肪族系ポリアミン、イミダゾール化合物等が挙げられる。 特に、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、ベンジルジメチルアミン(BDMA)等の三級アミンが好ましい。 <ヒドロシラン類を用いる方法(PQ5)> 方法(PQ5)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がヒドロシリル化反応しうる基であり、該末端の官能基とヒドロシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、ヒドロシリル化反応しうる基を導入してもよい。 ヒドロシラン類としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。 ヒドロシリル化反応しうる基としては、アクリロイル基、アリル基が例示できる。 それぞれメルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)と同様である。 この反応にはヒドロシリル化触媒を用いることが好ましい。 ヒドロシリル化触媒としては、塩化白金酸などが例示できる。 <粘着体の製造方法> 粘着体の製造方法は、シリル基含有重合体(S1)を用いる場合、ポリオール化合物の分子末端に加水分解性シリル基を導入しシリル基含有重合体(S1)を製造する工程(PP1A)と、該シリル基含有重合体(S1)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP1B)とを有する。 またシリル基含有重合体(S2)を用いる場合、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンプレポリマーを製造する工程(PP2A)と、該ポリウレタンプレポリマーの分子末端に加水分解性シリル基を導入しシリル基含有重合体(S2)を製造する工程(PP2B)と、該シリル基含有重合体(S2)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP2C)とを有する。 またシリル基含有重合体(S3)を用いる場合、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンプレポリマーを製造する工程(PP3A)と、該ポリウレタンプレポリマーを、鎖延長剤を用いて鎖延長反応させてポリウレタン重合体を製造する工程(PP3B)と、該ポリウレタン重合体の分子末端に加水分解性シリル基を導入しシリル基含有重合体(S3)を製造する工程(PP3C)と、該シリル基含有重合体(S3)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP3D)とを有する。 ここでポリウレタンプレポリマーを製造する工程(PP2A)と(PP3A)とは同じである。 また加水分解性シリル基を導入する工程(PP1A)、(PP2B)および(PP3C)は同じである。 また硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP1B)、(PP2C)および(PP3D)は同じである。 <ポリウレタンプレポリマーを製造する工程(PP2A)(PP3A)> ポリウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる。 その反応の割合は上述の通りである。 またこの反応には触媒を用いてもよい。 触媒としては、上述のウレタン化反応触媒が用いられる。 反応の温度は40〜160℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。 <ポリウレタン重合体を製造する工程(PP3B)> ポリウレタン重合体は、ポリウレタンプレポリマーに、鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られる。 その反応の割合は上述の通りである。 またこの反応には触媒を用いてもよい。 触媒としては、上述のウレタン化反応触媒が用いられる。 反応の温度は40〜160℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。 <加水分解性シリル基を導入する工程(PP1A)(PP2B)(PP3C)> ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体に加水分解性シリル基を導入する工程は、上述の(PQ1)〜(PQ5)の方法で述べたとおりである。 加水分解性シリル基を導入する割合(以下、加水分解性シリル基導入割合ということもある。)は、理論的に反応しうる末端の全部を100モル%とした場合に、50〜100モル%導入することが好ましく、80〜100モル%導入することがより好ましい。 <硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP1B)(PP2C)(PP3D)> シリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する。 本発明における硬化性組成物は、他の加水分解性シリル基を有する重合体(ただし、オルガノシリケート化合物以外)を含んでいてもよい。 他の加水分解性シリル基を有する重合体の割合は、硬化性組成物全体の30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。 シリル基含有重合体(S)、オルガノシリケート化合物および場合により他の加水分解性シリル基を有する重合体は、溶剤の存在下または非存在下で、後述の各種添加剤を含めて、充分に混合されて、硬化性組成物とされることが好ましい。 また硬化体の柔軟性に優れることから、硬化性組成物がシリル基含有重合体(S1)を含むことが好ましい。 <オルガノシリケート化合物> オルガノシリケート化合物は、すなわちケイ素原子に酸素原子を介して有機基が結合した化合物である。 オルガノシリケートとしては下記式(1)で表わされる、1つのケイ素原子に酸素原子を介して4個の有機基が結合した単量体の化合物(式(1)においてm=0の場合)(本明細書においてオルガノキシシランと呼ぶ)、及びケイ素がシロキサン主鎖(( Si−O)x)(式(1)においてm=1以上の場合) を形成している多量体の化合物(本明細書においてオルガノキシシロキサンと呼ぶ)が挙げられる。 特にオルガノキシシロキサンが、架橋密度を高くする効果が得られるため好適である。 この他に、1分子中に、ケイ素原子に結合する有機基が酸素原子を介するものと、介さずに直接結合するものとが含まれる化合物も挙げられる。 オルガノキシシランとオルガノキシシロキサンは併用しても良く、その比率(オルガノキシシラン:オルガノキシシロキサン)としては、0:100〜30:70が好適であり、0:100〜10:90がより好適である。 (R 1 O)(R 2 O)(R 3 O)Si[OSi(OR 4 )(OR 5 )] m −OR 6 ・・・(1) 酸素原子を介してケイ素に結合している有機基R 1 〜R 6は特に限定されず、互いに同一または異なっていても良い。 有機基としては例えば直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。 更に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状のアルキル基が好ましい。 より具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられ、特に炭素数1〜4のアルキル基が好適である。 その他の有機基として、アリール基なども挙げられる。 反応速度が速い点でR 1 〜R 6は炭素数1〜4の同一のアルキル基であることがより好ましい。 更に炭素数1〜2のアルキル基(すなわち、メチル基またはエチル基)であることが特に好ましい。 このようなオルガノキシシランの具体的な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシランなどが挙げられる。 特にテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランが好ましい。 オルガノキシシロキサンとしては、上記のオルガノキシシランの加水分解物あるいは縮合物などが挙げられる。 これらは、少なくとも一部の官能基が加水分解され、次いで縮合反応することにより、架橋構造を形成する。 特にテトラメトキシシランの縮合物またはテトラエトキシシランの縮合物が好ましい。 尚、上記縮合物としては、上記式(1)においてm=1〜29で示される、平均2〜30量体のものが好適に使用される。 例えばコルコート株式会社製メチルシリケート51(平均4量体)、メチルシリケート53A(平均7量体)、エチルシリケート40(平均5量体)、エチルシリート48(平均10量体)、EMS−485(エチルメチルシリケート)、多摩化学工業株式会社製シリケート40(平均5量体)、シリケート45(平均7量体)、Mシリケート51(平均4量体)、扶桑薬品工業株式会社製のメチルシリケート51(平均4量体)などの市販品を使用することができる。 オルガノキシシロキサンが平均30量体(m=29)以内であれば粘着体の架橋密度が適正であり、濡れ性が良好である。 オルガノキシシロキサンが2量体以上であれば、高速剥離粘着力が経時的に変化しにくく、また高速剥離粘着力が経時的に上昇することが抑制される。 粘着体の架橋密度と、オルガノキシシロキサンの添加量の関係から、オルガノキシシロキサンは平均で2〜30量体(m=1〜29)が好ましく、特に経時後の高速剥離粘着力の変化率(上昇率)が100%以内にできる点で、平均で4〜10量体(m=3〜9)が好ましい。 硬化性組成物を構成するシリル基含有重合体(S)とオルガノシリケート化合物の混合割合は、シリル基含有重合体(S)100質量部に対してオルガノシリケート化合物は0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜30質量部がより好ましく、0.1〜10質量部がさらに好ましい。 0.1〜30質量部の範囲内であれば、濡れ性を損なわずに初期の高速剥離特性に優れ、かつ経時後の高速剥離特性に優れる。 <添加剤> 本発明における硬化性組成物には、添加剤を含有させることができる。 なお硬化性組成物においては、可塑剤を用いないことが好ましい。 特にフタル酸ジオクチル等のエステル系可塑剤は、用いないことが好ましい。 エステル系可塑剤を用いると、硬化体(粘着体)と基材との接着力が低下し、糊残り(adhesive deposit)が発生する場合があるからである。 [硬化剤] 本発明における硬化性組成物は水と接触することにより硬化する。 したがって大気中の水と反応して湿気硬化する。 また、硬化させる直前に、硬化剤として水(H 2 O)を添加してもよい。 この場合の水の添加量は、シリル基含有重合体(S)とオルガノシリケート化合物の合計量の100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部が特に好ましい。 硬化剤の添加量を0.01質量部以上とすることにより硬化を有効に促進でき、硬化剤の添加量を5質量部以下とすることにより使用時の可使時間を確保できる。 ただし、上記シリル基含有重合体(S)とオルガノシリケート化合物の合計量とは、加水分解性シリル基を有する化合物の合計量を意味し、硬化性組成物がこれら以外に加水分解性シリル基を有する化合物を含む場合は、その加水分解性シリル基を有する化合物を含む合計量を意味する。 シリル基含有重合体(S)とオルガノシリケート化合物以外の加水分解性シリル基を有する化合物としては、前記シリル基含有重合体(S)以外の加水分解性シリル基を有する重合体(ただし、オルガノシリケート化合物以外)、後述加水分解性シリル基を有する基材投錨力改良剤(P)、などの任意成分が挙げられる。 なお、以下に記載する他の成分の割合においても、シリル基含有重合体(S)とオルガノシリケート化合物の合計量とは、上記と同様に、加水分解性シリル基を有する化合物の合計量を意味する。 [硬化触媒] 硬化性組成物に、加水分解性シリル基の加水分解及び/又は架橋反応を促進するための硬化触媒(硬化促進剤)を含有させることが好ましい。 かかる硬化触媒は加水分解性シリル基の反応を促進する成分として公知のものを適宜使用できる。 具体例としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOOCH 3 ) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOO(n−C 4 H 9 )) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOOCH 3 ) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOO(n−C 4 H 9 )) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOO(iso−C 8 H 17 )) 2等の有機スズカルボン酸塩;(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(SCH 2 COO)、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 COO)、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 CH 2 COO)、(n−C 8 H 17 ) 2 � ��n(SCH 2 COOCH 2 CH 2 OCOCH 2 S)、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(SCH 2 COO(iso−C 8 H 17 )) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 COO(iso−C 8 H 17 )) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 COO(n−C 8 H 17 )) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 SnS等の含硫黄有機スズ化合物;(n−C 4 H 9 ) 2 SnO、(n−C 8 H 17 ) 2 SnO等の有機スズオキシド;エチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル及びフタル酸ジオクチルからなる群より選ばれるエステル化合物と、上記有機スズオキシドとの反応生成物;(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(acac) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(acac) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OC 8 H 17 )(acac)、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OC(CH 3 )CHCO 2 C 2 H 5 ) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(OC(CH 3 )CHCO 2 C 2 H 5 ) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OC 8 H 17 )(OC(CH 3 )CHCO 2 C 2 H 5 )、ビスアセチルアセトナートスズ等のキレートスズ化合物(ただし、上記acacはアセチルアセトナト配位子を意味し、OC(CH 3 )CHCO 2 C 2 H 5はエチルアセトアセテート配位子を意味する。 );テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラプロポキシシランからなる群より選ばれるアルコキシシランと、上記キレートスズ化合物との反応生成物;(n−C 4 H 9 ) 2 (CH 3 COO)SnOSn(OCOCH 3 )(n−C 4 H 9 ) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 (CH 3 O)SnOSn(OCH 3 )(n−C 4 H 9 ) 2等の−SnOSn−結合含有有機スズ化合物等のスズ化合物が挙げられる。 また、硬化触媒の更なる具体例としては、2−エチルヘキサン酸スズ、n−オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ又はステアリン酸スズ等の2価スズカルボン酸塩類;オクチル酸、オレイン酸、ナフテン酸又はステアリン酸等の有機カルボン酸の錫以外の金属塩類;カルボン酸カルシウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、ビスマストリス−2−エチルヘキサノエート等のカルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、又はカルボン酸ニッケル等;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2−エチルへキシルチタネート)等のチタンアルコキシド類;アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート� ��のアルミニウムアルコキシド類;ジルコニウム−n−プロピレート、ジルコニウム−n−ブチレート等のジルコニウムアルコキシド類;チタンテトラアセチルアセトナート、ジブチルオキシチタンジアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート等のチタンキレート類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート等のジルコニウム化合物類;リン酸、p−トルエン� �ルホン酸又はフタル酸等の酸性化合物類;ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン等の脂肪族モノアミン類;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン類;ピペリジン、ピペラジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等の複素環式アミン類;メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;上記アミン類と肪族モノカルボン酸(蟻酸、酢酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸など)、脂肪族ポリカルボン酸(蓚 酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸など)、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸など)、芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、トリメリット酸など)、フェノール化合物(フェノール、レゾルシン等)、スルホン酸化合物(アルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)、リン酸化合物等の有機酸、及び塩酸、臭素酸、硫酸等の無機酸等の酸からなる第1級〜第3級のアンモニウム−酸塩類;トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ヘキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルトリメチルアンモニウム� ��ドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、デシルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、ジヘキシルジメチルアンムニウムヒドロキシド、ジオクチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジドデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム水酸基塩類;エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン等のアミン化合物類等が挙げられる。 これらの硬化触媒は1種類のみを用いても、2種類以上を組合せて用いてもよい。 2種類以上を組合せる場合は、たとえば、上記2価スズカルボン酸塩、有機スズカルボン酸塩又は有機スズオキシドと、エステル化合物との反応物等の上記金属含有化合物に、脂肪族モノアミン又はその他の上記アミン化合物を組合せることが、優れた硬化性が得られることから好ましい。 硬化触媒を添加する場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S)およびオルガノシリケート化合物の合計量の100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。 硬化触媒の添加量を0.001質量部以上とすることにより硬化速度を有効に促進でき、硬化触媒の添加量を10質量部以下とすることにより使用時の可使時間を確保できる。 [脱水剤] 本発明における硬化性組成物は、貯蔵安定性を改良するために、本発明の効果を損なわない範囲で少量の脱水剤を含有させてもよい。 かかる脱水剤の具体例としては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸アルキル;オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルト酢酸アルキル;メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシラン等の加水分解性有機シリコーン化合物;加水分解性有機チタン化合物等が挙げられる。 これらの中でもビニルトリメトキシシラン又はテトラエトキシシランがコスト、脱水能力の点から好ましい。 硬化性組成物に脱水剤を添加する場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S)およびオルガノシリケート化合物の合計量の100質量部に対して0.001〜30質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。 [基材投錨力改良剤(P)] 本発明における硬化性組成物に、基材投錨力改良剤を含有させてもよい。 基材投錨力改良剤(P)とは、硬化性組成物の基材への接着力を向上させる添加剤である。 基材投錨力改良剤(P)としては、シランカップリング剤、イソシアネート化合物、および、ウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。 特に比較的少量の添加により、基材への接着力が向上すると同時に粘着体からのブリードアウトもほとんど無いことからシランカップリング剤を用いることが特に好ましい。 前記シランカップリング剤としては、加水分解性基を有するシランカップリング剤が好ましい。 具体的な加水分解性基を有するシランカップリング剤としては、イソシアネートシラン類、アミノシラン類、メルカプトシラン類、エポキシシラン類などが好ましく、アミノシラン類、エポキシシラン類が特に好ましい。 これらのシラン類としては、前述の加水分解性シリル基の導入方法(PQ1)〜(PQ4)において具体的に例示される化合物が好適に例示できる。 基材投錨力改良剤(P)としてのイソシアネート化合物としては、公知のポリイソシアネート化合物の変性体等の多官能ポリイソシアネートが好適に例示できる。 変性体としては、トリメチロールプロパンアダクト型変性体、ビュウレット型変性体、またはイソシアヌレート型変性体等が挙げられる。 具体的にはデュラネートP301−75E(旭化成社製、トリメチロールプロパンアダクト型HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、イソシアネート基含有量:12.9質量%、固形分:75質量%)、コロネートL(日本ポリウレタン社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI(トリレンジイソシアネート)、イソシアネート基含有量:13.5質量%、固形分:75質量%)等が例示できる。 基材投錨力改良剤(P)としてのウレタン樹脂としては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー、水酸基末端ウレタンプレポリマーが利用できる。 水酸基末端ウレタンプレポリマーとしては、MP2000(セメダイン社製)などが例示できる。 基材投錨力改良剤(P)を用いる場合、硬化性組成物への添加量は、シリル基含有重合体(S)およびオルガノシリケート化合物の合計量の100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.01〜6質量部がより好ましい。 0.01質量部以上、10質量部以下であると糊残りが抑えられる。 [その他の添加剤] 硬化性組成物に下記の充填剤、補強剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、又は防黴剤等を配合してもよい。 充填剤または補強剤としては、たとえば、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ガラス、骨粉、木粉、又は繊維フレークなどが挙げられる。 安定剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、または光安定剤などが挙げられる。 難燃剤としては、たとえば、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、アンモニウムポリホスフェート、又は有機臭素化合物等が挙げられる。 離型剤としては、たとえば、ワックス、石鹸類、又はシリコーンオイル等が挙げられる。 防黴剤としては、たとえば、ペンタクロロフェノール、ペンタクロロフェノールラウレート、又はビス(トリ−n−ブチル錫)オキシド等が挙げられる。 <易接着処理> 粘着体層は、基材層に硬化性組成物が塗工され、該硬化性組成物が硬化することにより形成される。 被着体への糊残りを良好に防止するうえで、基材層と粘着体層とが充分に接着していることが好ましい。 本発明において、基材層の粘着体層側の面が易接着処理されていてもよい。 易接着処理とは、基材と粘着体との接着力を向上させるための処理である。 易接着処理は、硬化性組成物を塗工する前に行う。 この処理により糊残りを効果的に防止できる。 基材の易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理、紫外線処理、プライマ処理、ブラスト処理が例示できる。 これらの処理は1種類のみの処理であってもよく、2種以上の組み合わせ処理であってもよい。 このうちプラズマ処理、コロナ放電処理およびプライマ処理は、基材層への負荷が小さく、処理自体が容易であり、基材と粘着体との接着力の向上が均一かつ均質に行え、かつ、粘着積層体の光学的特性にも影響をほとんど与えないため好ましい。 また粘着積層体が不透明であってもよい場合には、ブラスト処理も有効である。 ここでプラズマ処理とは、ガスを高周波電源を用いて励起させ、反応性の高いプラズマ状態にして、このプラズマ状態のガスにより基材表面を改質する方法である。 またコロナ放電処理とは、大気圧状態において電極間に交流の高電圧を印加してコロナ放電を励起し、基材表面をコロナ放電に曝すことにより基材表面を改質する方法である。 またフレーム処理とは、火炎を用いて基材表面を改質する方法である。 また紫外線処理とは、基材を紫外線(特に180〜250nmの波長の遠紫外線)に曝すことにより基材表面を改質する方法である。 またブラスト処理とは、細粒状の研削材を基材表面に衝突させて基材表面を改質する方法である。 いずれの場合も基材表面にかけるエネルギー量は、基材の状況に応じて適宜調節される。 またプライマ処理とは、基材表面にプライマを塗工し、プライマ層を形成する方法である。 プライマとしては、シラン系プライマ、イソシアネート系プライマ、ウレタン系プライマが好適に例示できる。 プライマの塗工に際しては、各種添加剤を添加してもよい。 例えば導電性付与剤等を添加してもよい。 シラン系プライマとしては、前述の加水分解性基を有するシランカップリング剤が好ましい。 イソシアネート系プライマとしては、基材投錨力改良剤(P)で例示したイソシアネート化合物が好ましい。 ウレタン系プライマとしては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー、水酸基末端ウレタンプレポリマーが利用できる。 水酸基末端ウレタンプレポリマーとしては、MP2000(セメダイン社製)などが例示できる。 ゴム系プライマとしては、ゴム成分(天然ゴムおよび/または合成ゴム)と、ポリイソシアネート化合物を含むプライマが利用できる。 このようなプライマとしてはプライマーNo. 40(横浜ゴム社製)が例示できる。 <粘着体層> 本発明における硬化性組成物は、シリル基含有重合体(S)およびオルガノシリケート化合物、任意に配合される他の重合体および必要に応じて添加される添加剤を混合して得られる。 本発明における粘着体層は、上記硬化性組成物を硬化させて得られる。 上記硬化性組成物を硬化させると、比較的粘着力の低い粘着体層が得られる。 すなわち本発明における粘着体層は上記硬化性組成物を硬化して得られる硬化体である。 本発明における粘着体の初期の剥離粘着力としては、8N/25mm以下が好ましく、0N/25mmを超え8N/25mm以下がより好ましく、0N/25mmを超え1N/25mm以下がさらに好ましく、0.005〜0.8N/25mmが特に好ましい。 本発明における硬化性組成物は、粘着性を増大させるような添加剤を含有させないことが好ましい。 シリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体層を形成する際、該硬化性組成物の硬化により、基材層と硬化体層(粘着体層)とが接着することになる。 該硬化性組成物に基材投錨力改良剤(P)を含有させた場合、硬化の段階において組成物中に基材投錨力改良剤(P)が存在することにより、基材層と硬化体層との接着(投錨)がより強固なものとなる。 一方製造された硬化体にあっては、添加された基材投錨力改良剤(P)を含めて、硬化が完了しているので、それ以上の硬化に伴う接着効果は生じない。 ここで、基材投錨力改良剤(P)の影響は、硬化性組成物の硬化の段階において主に生じる。 したがって硬化が完了している以上、基材投錨力改良剤(P)が硬化体の外部に与える影響は小さい。 このため被着体と粘着体層との間に発生する粘着力は、基材投錨力改良剤(P)の添加によって大きく変化することはなく、低いままである。 したがって、この場合にも、被着体に対して微粘着または低粘着でありながら、糊残りを抑えることができる。 特に、基材層が、ポリエステル系材料またはポリオレフィン系材料からなる場合は、基材と粘着体層との接着力が低くなりやすいため、硬化性組成物に上記基材投錨力改良剤(P)を含有させること、および/または、基材層の粘着体層側の面に上記易接着処理を施すことが好ましい。 本発明におけるシリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物は、粘度が低く、塗工性が良い。 したがって溶剤を用いなくても良好な塗工性が得られるため粘着体層を成形する際に硬化性組成物の無溶剤化を実現できる。 また該組成物は硬化性に優れるため、水分と接触すると、迅速かつ強固に硬化(湿気硬化)して硬化体が得られる。 該湿気硬化には加水分解性シリル基(−SiX a R 10 (3−a) )が寄与する。 また、基材層上に塗布して硬化させると、基材層との良好な接着性が得られる。 硬化後の硬化体は、良好な柔軟性を有し、表面の濡れ性が良く、かつ低い粘着性を有する。 したがって粘着体層として好適であり、被着体への濡れ性および密着性が良好であるとともに、良好な再剥離性が得られる。 特に、シリル基含有重合体(S)が、ウレタン結合またはウレア結合等の極性結合を有していると、より良好な微粘着性または低粘着性が得られる。 その理由は明確ではないが、かかる極性結合は、硬化体における凝集力、粘着体の基材への接着性、および被着体への粘着性を高くする方向に作用すると考えられる。 一方、加水分解性シリル基は粘着体の被着体への粘着性を低くする方向に作用すると考えられる。 そしてこれらの相互作用が微粘着性または低粘着性に寄与すると考えられる。 また、加水分解性シリル基が導入される位置がシリル基含有重合体(S)の分子末端であるため、分子運動を妨げずに凝集力を上げることができ、安定して粘着力を示すことができる。 したがって、ウレタン結合とウレア結合との合計量(MU)と加水分解性シリル基の量(MS)との割合(MU/MSのモル比)を制御することにより、粘着体層の粘着力を制御することができる。 ウレタン結合またはウレア結合等の極性結合は、基材層と粘着体層との良好な接着性にも寄与していると考えられる。 <硬化性組成物の硬化> 本発明における粘着体層は、本発明における硬化性組成物を硬化させて得られる。 硬化性組成物の硬化条件は、必要に応じて設定される。 例えば硬化性組成物として硬化触媒を添加したものを用意する。 これに所定量の水を硬化剤として添加し充分に混合する。 これを必要に応じて易接着処理された基材面に塗工する。 塗工厚さは適宜設定される。 この後オーブン等で加熱し、室温で養生することにより硬化性組成物を硬化させることができる。 室温で養生する際または養生した後に加湿環境に放置することも有効である。 オーブン等による加熱は基材の耐熱温度等により適宜設定される。 例えば60〜120℃の環境に1〜30分程度放置することが好ましい。 特に溶剤を用いた場合には、一定の乾燥時間を設定することが好ましい。 ただし急激な乾燥は、発泡の原因になるため好ましくない。 またオーブン内でまたはオーブンから取り出した後に、スチームを当ててもよい。 また易接着処理としてプライマ処理を行った場合に、硬化性組成物の硬化の際に加熱を行うとプライマ層と硬化性組成物との反応により基材層と粘着体層との間の接着強度が高くなる。 例えば短時間の比較的高温での加熱が有効な場合がある。 具体的な短時間加熱としては、温度が80〜160℃(好ましくは100〜150℃)で、0.5〜5分間(好ましくは1〜4分間))の加熱が例示できる。 前記硬化性組成物の基材面への塗工において、本発明の硬化性組成物は通常低粘度であり無溶剤での塗工が可能である。 しかし、必要により、硬化性組成物に溶剤を添加して使用してもよい。 溶剤を使用した場合、溶剤を添加した硬化剤組成物を塗工した後溶剤を揮発除去し、その後に硬化性組成物を硬化させる。 溶剤は特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、エステルアルコール類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類又はエステルエーテル類が挙げられる。 これらの中でも、溶剤としてアルコール類を用いると、硬化性組成物の保存安定性を向上させることができるため好ましい。 このアルコール類としては、炭素数1〜10のアルキルアルコールであることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコール又はヘキシルアルコールであることがより好ましく、メタノール又はエタノールであることが更に好ましい。 特にメタノールを用いた場合に、添加量を増やすと、硬化性組成物の硬化時間を長くすることができる。 これは硬化性組成物を調製後の所定粘度まで達する時間、所謂ポットライフを長くするために有効な手法である。 硬化性組成物に溶剤を添加する場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S)およびオルガノシリケート化合物の合計量100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。 添加量が500質量部を超えると、溶剤の揮発に伴って硬化物の収縮が生じる場合がある。 <粘着積層体の製造方法> 本発明の粘着積層体は、必要に応じて基材の一面に易接着処理を施し、この処理面に前記硬化性組成物を塗工し、硬化性組成物を硬化させることにより製造される。 基材への易接着処理を行う場合は、硬化性組成物の塗工ラインと同じラインで行ってもよく別のラインで行ってもよい。 すなわちあらかじめ易接着処理を行った基材の原反を用意しておいて、ここに硬化性組成物を塗工してもよい。 コロナ処理等の易接着処理を施した基材としては、市販品を利用できる。 易接着処理としてプライマ処理を行う場合は、基材の一面にプライマを塗工し、乾燥させる。 塗工の際にはプライマを必要に応じて、各種溶剤で希釈して塗布してもよい。 プライマ層の乾燥後の厚さは、基材層と粘着体層との接着力の観点から、0.01〜10μmが好ましく、0.02〜5μmがより好ましい。 硬化性組成物の塗工は、連続的に行うこともできる。 すなわちロールから取り出した基材に、所定量の水を混合した硬化性組成物を塗工し、インラインオーブンで加熱乾燥させる。 得られた成形体(積層体)に、必要に応じてセパレータを合わせ、巻き取る。 これを必要に応じて加湿した室温環境に保管し養生することにより成形された粘着積層体が得られる。 また別の塗工方法としては、上記の方法において基材とセパレータを逆にしてもよい。 すなわち最初にセパレータ上に硬化性組成物を塗工し、後から基材を硬化性組成物の層に貼着させてもよい。 粘着体層の厚さは、粘着積層体の設計の上で、基材の厚さとの関係で決められるが、3〜100μmが好ましく、10〜60μmが好ましい。 プライマまたは硬化性組成物の塗工装置としては、各種コータが利用できる。 例えばグラビヤロールコータ、リバースロールコータ、キスロールコータ、ディップロールコータ、バーコータ、ナイフコータ、スプレーコータ等が挙げられる。 本発明の粘着積層体は、基材層の片面上に粘着体層が設けられ、粘着体層が設けられていない面(基材背面)が未処理基材面であることが好ましい。 この態様であれば、基材自体をセパレータとして巻き取ることが可能となる。 例えば基材層が、ポリエステル系フィルムまたはポリオレフィン系フィルムからなる場合は、未処理基材面と粘着体層との接着力が低くなりやすいため、基材自体をセパレータとして好適に用いることができる。 この場合、特別なセパレータを設ける必要がないので廃棄物の削減につながる。 また基材背面は未処理であり、離型剤処理を必要としない。 代表的な離型剤処理はシリコーン化合物の塗布であるが、シリコーン化合物を塗布した場合には被着体にシリコーン化合物が転写される可能性が高く、いわゆるシリコーン汚染を発生させる可能性がある。 離型剤処理を行わないことで、シリコーン汚染を防止できるため、半導体素子、液晶基板などの電子関連機器への適用に好適である。 また、本発明における硬化性組成物を硬化させて得られる硬化体(粘着体層)においては、被着体への良好な濡れ性を得ることができる。 かかる良好な濡れ性には、特にポリオールに由来する構造が持つ柔軟性が寄与すると考えられる。 すなわち、ポリオールが分岐構造を有さないリニアな構造である場合、自由に動きやすい分子構造であり、柔軟性を高める方向に作用する。 またさらにポリオールがポリエーテル骨格を主とする構造の極性は比較的低い。 このような分子構造を有すると、被着体へ良好な濡れ性が得られると考えられる。 特にポリエーテル骨格の鎖長が長い方が、柔軟性および濡れ性が高くなると考えられる。 <粘着積層体の用途> 本発明の粘着積層体の粘着体層は比較的低い粘着力が得られ、高速剥離特性に優れるという従来有していた機能を保持しながら更に、経時後の高速剥離特性の経時変化が小さい(優れている)という特徴を有する。 高速剥離時に被着体への負荷が一定の範囲に保てるので特に、電子部材用表面保護シートや光学部材用表面保護シートなど、精密機器の製造工程中で使用される表面保護シートとして、本発明の粘着積層体は好適である。 さらに基材として透明なポリエステルフィルムを採用した場合は、本発明における粘着体層が良好な透明性を有するため、本発明の粘着積層体を表面保護シートとして貼着したまま対象物品の観察が可能となる。 本発明の粘着積層体の粘着体層は、低い粘着力や高い高速剥離特性に加えて、被着体への濡れ性および密着性が良好であるとともに、再剥離性に優れる。 したがって、本発明粘着積層体の用途としては、電子部材用表面保護シートや光学部材用表面保護シート以外に、自動車用保護シート、各種ディスプレイ用保護シート等が好適に例示される。 特に、電子基板、ICチップ等の電子部材用表面保護シートや偏光板、光拡散板、プリズムシート等の光学部材用表面保護シートなど、製造工程中で剥離される表面保護シートとして、本発明の粘着積層体は好適である。 これは、粘着力が低く再剥離性が良好であるとともに、高速剥離特性に優れるためである。 また本発明の粘着積層体は、粘着体の粘着力の経時変化が小さいために、低い剥離粘着力で剥離することができ、かつ、その剥離粘着力および高速剥離粘着力がほとんど変化しない。 このため、本発明の粘着積層体を表面保護シートとして貼着したまま、電子部材や光学部材の長期間の保管が可能となる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。 以下において、プロピレンオキシドをPO、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(イソシアネート基の含有率:20.0質量%)をTMSとすることがある。 また、以下の実施例及び比較例において、シリル基含有重合体として以下のものを用いた。 オルガノシリケート化合物としては以下のものを用いた。 メチルシリケート51(コルコート社製): テトラメトキシシランの平均4量体(97%)、テトラメトキシシラン(2%)、メタノール(1%) メチルシリケート53A(コルコート社製): テトラメトキシシランの平均7量体(97%)、テトラメトキシシラン(2%)、メタノール(1%) (参考製造例1:複合金属シアン化物錯体触媒の製造) 以下の方法で、有機配位子としてtert−ブチルアルコールを有する亜鉛ヘキサシアノコバルテート(以下、TBA−DMC触媒という。)を製造した。 本例中のポリオールXは、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合して得られた、数平均分子量(Mn)が1000のポリオールである。 まず、500mlのフラスコに、塩化亜鉛の10.2gと水10gからなる水溶液を入れ、この水溶液を40℃に保温しつつ、毎分300回転(300rpm)で撹拌しながら、ここへ4.2gのカリウムヘキサシアノコバルテート(K 3 [Co(CN)] 6 )と水75gからなる水溶液を30分間かけて滴下した。 滴下終了後、さらに混合物を30分撹拌した。 その後、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(以下、EGMTBEと略す。)の40g、tert−ブチルアルコール(以下、TBAと略す。)の40g、水の80g、およびポリオールXの0.6gからなる混合物を前記混合物中に添加し、40℃で30分、さらに60℃で60分間撹拌した。 得られた反応混合物を、直径125mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製のNo.5C)とを用いて加圧下(0.25MPa)で50分かけてろ過を行い、固体を分離した。 次に、この複合金属シアン化物錯体を含むケーキに18gのEGMTBE、18gのTBA、および84gの水からなる混合物を添加して30分撹拌した後、加圧ろ過(ろ過時間:15分)を行った。 ろ過により得られた複合金属シアン化物錯体を含むケーキに、さらに54gのEGMTBE、54gのTBA、および12gの水からなる混合物を添加して30分撹拌し、有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体を含むEGMTBE/TBAのスラリーを得た。 このスラリーをTBA−DMC触媒として用いた。 このスラリーを5gほどフラスコに秤り取り、窒素気流で概ね乾かした後、80℃で4時間減圧乾燥した。 得られた固体を秤量した結果、スラリー中に含まれる複合金属シアン化物錯体の濃度は4.70質量%であることがわかった。 (製造例1:シリル基含有重合体(S1−1)の製造) 撹拌機付きステンレス製10Lの耐圧反応器内に、開始剤として800gのポリオキシプロピレンジオール(水酸基換算Mw=1000)と、重合触媒としてのTBA−DMC触媒を投入した。 TBA−DMC触媒の使用量は、仕上がり質量に対して50ppmとした。 反応器内を窒素置換後、140℃に昇温し、撹拌下、80gのPOを反応器内に投入して反応させた。 これは最初に少量のPOを供給してTBA−DMC触媒を活性化させるための工程である。 次いで、反応器内の圧力が低下した後、撹拌下、7120gのPOを供給し、反応器内の温度を140℃、撹拌速度を毎分500回転(500rpm)に保ちながら、11時間撹拌して、重合反応を進行させた。 こうしてポリオールAを得た。 ポリオールAの平均水酸基価は11.2mgKOH/gであった。 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、上記で得たポリオールAの1000gと、イソシアネートシラン類としてTMSの40.7g(ワッカー社製:GF−40 イソシアネートプロピルトリメトキシシラン)を加え、ウレタン化触媒としてU−860(日東化成社製:ジ−n−オクチル錫ビス(メルカプト酢酸イソオクチル)を加えた。ウレタン化触媒の使用量はポリオールAとTMSの合計量に対して50ppmに相当する量とした。そして80℃まで徐々に昇温し、IRにてNCOのピークが消失するまで反応を行った。消失後に5.2gのイルガノックス1076(チバ社製 酸化防止剤)、貯蔵安定剤として0.62gのKBM−803(信越化学工業社製:メルカプトプロピルトリメト� �シシラン)を加え、シリル基含有重合体(S1−1)を得た。加水分解性シリル基導入割合は100%であった。 (製造例2:シリル基含有重合体(S1−2)の製造) ポリオールの製造は開始剤にポリオキシプロピレントリオール(水酸基換算Mw=1500)を用いた以外はポリオールAと同様に行った。 得られたポリオールBの平均水酸基価は11mgKOH/gであった。 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、上記で得たポリオールBの1000gと、イソシアネートシラン類としてTMSの61.0g(ワッカー社製:GF−40 イソシアネートプロピルトリメトキシシラン)を加え、ウレタン化触媒としてU−860(日東化成社製:ジ−n−オクチル錫ビス(メルカプト酢酸イソオクチル)を加えた。ウレタン化触媒の使用量はポリオールBとTMSの合計量に対して50ppmに相当する量とした。そして80℃まで徐々に昇温し、IRにてNCOのピークが消失するまで反応を行った。消失後に5.3gのイルガノックス1076(チバ社製 酸化防止剤)、貯蔵安定剤として0.64gのKBM−803(信越化学工業社製:メルカプトプロピルトリメト� �シシラン)を加え、シリル基含有重合体(S1−2)を得た。加水分解性シリル基導入割合は100%であった。 (製造例3:シリル基含有重合体(S1−3)の製造) ポリオールCの製造は開始剤にポリオキシプロピレントリオール(水酸基換算Mw=1500)を用いた以外はポリオールAと同様に行った。 得られたポリオールCの平均水酸基価は21mgKOH/gであった。 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、上記で得たポリオールCの1000gと、イソシアネートシラン類としてTMSの76.3g(ワッカー社製 GF−40 イソシアネートプロピルトリメトキシシラン)を加え、ウレタン化触媒としてU−860(日東化成社製:ジ−n−オクチル錫ビス(メルカプト酢酸イソオクチル)を加えた。ウレタン化触媒の使用量はポリオールBとTMSの合計量に対して50ppmに相当する量とした。そして80℃まで徐々に昇温し、IRにてNCOのピークが消失するまで反応を行った。消失後に5.4gのイルガノックス1076(チバ社製:酸化防止剤)、貯蔵安定剤として0.65gのKBM−803(信越化学工業社製:メルカプトプロピルトリメト� �シシラン)を加え、シリル基含有重合体(S1−3)を得た。加水分解性シリル基導入割合は100%であった。 シリル基含有重合体の製造処方を表1に示す。
(実施例1〜4および比較例1) 前記シリル基含有重合体(S1−1)の100質量部に対して、実施例1及び2においてはオルガノシリケート化合物としてメチルシリケート51(コルコート社製)をそれぞれ固形分として3質量部及び5質量部、実施例3及び4においてはオルガノシリケート化合物としてメチルシリケート53A(コルコート社製)をそれぞれ固形分として3質量部及び5質量部加え、触媒としてジブチルオキシチタンジアセチルアセトナート(Ti(OC 4 H 9 ) 2 (C 5 H 7 O 2 ) 2 )(日本化学産業社製:ナーセムチタン)の1.5質量部、および、溶剤としてメタノールの100質量部を加えて充分に混合して硬化性組成物を得た。 比較例1としてオルガノシリケート化合物を加えない比較組成物を得た。 得られた硬化性組成物を用いて粘着積層体を製造した。 表面処理をしていない、厚さが25μmのPETフィルム(A4サイズ:29.7cm×21cm、東洋紡社製、ポリエステルフィルム、製品名:E5001、厚さ25μm)を用意した。 この基材の一面に易接着処理としてプライマ組成物(横浜ゴム社製プライマー No.40)を用いてプライマ処理を行った。 すなわち、プライマ組成物をアプリケータを用いて塗工した後、130℃で1分間乾燥した。 乾燥後のプライマ層の厚さは1μmであった。 次いでプライマ処理を行った処理面に前記硬化性樹脂組成物を乾燥後の塗工厚さが約20μmとなるようにアプリケータを用いて塗布した。 これを循環式オーブンにおいて130℃で1分乾燥した。 乾燥後セパレータとしてOPPフィルムを貼合し23℃かつ相対湿度65%で一週間養生し、粘着積層体を得た。 得られた粘着積層体について、初期の剥離強度評価および初期の高速剥離強度評価を行った。 得られた結果を表2に示す。
(実施例5〜8および比較例2) 前記シリル基含有重合体(S1−2)の100質量部に対して、実施例5及び6においてはオルガノシリケート化合物としてメチルシリケート51(コルコート社製)をそれぞれ固形分として3質量部及び5質量部、実施例7及び8においてはオルガノシリケート化合物としてメチルシリケート53A(コルコート社製)をそれぞれ固形分として3質量部及び5質量部加え、触媒としてジブチルオキシチタンジアセチルアセトナートの1.5質量部、および、溶剤としてメタノールの100質量部を加えて充分に混合して硬化性組成物を得た。 比較例2としてオルガノシリケート化合物を加えない比較組成物を得た。 次いでプライマ処理を行った処理面に前記硬化性樹脂組成物を乾燥後の塗工厚さが約20μmとなるようにアプリケータを用いて塗布した。 これを循環式オーブンにおいて130℃で1分乾燥した。 乾燥後セパレータとしてOPPフィルムを貼合し23℃かつ相対湿度65%で一週間養生し、粘着積層体を得た。 得られた粘着積層体について、初期の剥離強度評価および初期の高速剥離強度評価を行った。 得られた結果を表3に示す。
(実施例9〜12および比較例3) 前記シリル基含有重合体(S1−3)の100質量部に対して、実施例9及び10においてはオルガノシリケート化合物としてメチルシリケート51(コルコート社製)をそれぞれ固形分として1質量部及び3質量部、実施例11及び12においてはオルガノシリケート化合物としてメチルシリケート53A(コルコート社製)をそれぞれ固形分として1質量部及び3質量部加え、触媒としてジブチルオキシチタンジアセチルアセトナートの1.5質量部、および、溶剤としてメタノールの100質量部を加えて充分に混合して硬化性組成物を得た。 比較例3としてオルガノシリケート化合物を加えない硬化組成物を得た。 次いでプライマ処理を行った処理面に前記硬化性樹脂組成物を乾燥後の塗工厚さが約20μmとなるようにアプリケータを用いて塗布した。 これを循環式オーブンにおいて130℃で1分乾燥した。 乾燥後セパレータとしてOPPフィルムを貼合し23℃かつ相対湿度65%で一週間養生し、粘着積層体を得た。 得られた粘着積層体について、初期の剥離強度評価および初期の高速剥離強度評価を行った。 得られた結果を表4に示す。 更に、得られた粘着積層体について、加熱処理後の剥離強度評価および加熱処理後の高速剥離強度評価を行った。 得られた結果を表5に示す。
<初期の剥離強度評価> 23℃の環境で、厚さ1.5mmのブライトアニール処理したステンレス鋼板(SUS304(JIS))に、上記粘着積層体の試験片(幅:25mm)からセパレータ-を取り除いて貼着し、質量が2kgのゴムロールで圧着した。 貼着後、23℃、湿度50%で0.5時間保管した。 こうして得た試験サンプルについて、JIS B 7721に規定する引張り試験機(オリエンテック社製、RTE−1210)を用い、初期の剥離強度(180度ピール、引張り速度0.3m/分)を測定した。 この値が小さいほど微粘着で剥がし易く、再剥離性に優れることを示す。 表に示した測定値は、剥離強度(単位:N/25mm)である。 <初期の高速剥離強度評価> 上記のようにして得た試験サンプルを、ステンレス鋼板の面を下にして高速剥離試験機(テスター産業社、製品名:TE−701型)の台上に固定し、PETフィルムを引っ張り、剥離強度(180度ピール、引っ張り速度30m/分)を測定した。 この値が小さく、また初期の剥離強度に対して上昇率が小さいほど高速剥離特性が良い。 <加熱処理後の剥離強度評価> 本願では経時後の剥離粘着力を評価するため、促進試験として加熱処理して剥離強度を測定した。 23℃の環境で、厚さ1.5mmのブライトアニール処理したステンレス鋼板(SUS304(JIS))に、上記粘着積層体の試験片(幅:25mm)からセパレーターを取り除いて貼着し、質量が2kgのゴムロールで圧着した。 貼着後、120℃、30分保管後、40℃、1hを3回、100℃、1hを3回、を1回ずつ交互に熱履歴をかけて保管した後、2時間放置して室温に冷却した。 こうして得た加熱処理試験サンプルについて、初期の剥離強度評価と同様の測定を行った。 測定で得た値が小さいほど経時後でも微粘着で剥がし易く、再剥離性に優れることを示す。 また初期の剥離粘着強度に対して経時後の剥離粘着強度の上昇率が小さいほど、粘着力の経時変化が小さく、再剥離性が維持でき、安定性に優れている。 <加熱処理後の高速剥離強度評価> 上記のようにして得た加熱処理試験サンプルについて、初期の高速剥離強度評価と同様の測定を行った。 加熱処理後の剥離強度に対して上昇率が小さいほど、経時後の剥離強度の速度依存性が低く保たれていて、優れている。 更に、初期の高速剥離強度に対して加熱処理後の高速剥離強度の上昇率が小さいほど、高速剥離特性の経時変化が小さく安定性に優れている。 <初期の、剥離強度および高速剥離強度評価の結果> 実施例1〜12は本願のオルガノシリケート化合物を添加し、比較例1〜3はオルガノシリケート化合物を添加しなかった。 実施例1〜4と比較例1、実施例5〜8と比較例2、実施例9〜12と比較例3をそれぞれ比較すると、オルガノシリケート化合物を添加した場合には、添加しない場合に比べて、剥離強度に対して高速剥離強度の上昇率が小さい。 つまり初期の剥離強度の速度依存性が抑制できていることがわかる。 高速剥離強度の抑制率は下記式で求めた。 高速剥離強度の抑制率(%)=(シリケート無添加時の高速剥離強度−シリケート添加時の高速剥離強度)/シリケート無添加時の高速剥離強度×100(%) <加熱処理前後の、剥離強度および高速剥離強度評価の結果> 一般的に、粘着体が被着体へ貼着後に熱処理を受けると、粘着体は被着体との濡れ性が変化し密着性が高くなるため、粘着力が上昇しやすい。 本発明の実施例9〜12は加熱処理前後で剥離速度0.3m/分では粘着力の変化が小さく、オルガノシリケート化合物を添加することで、被着体との濡れ性の変化が小さく剥離粘着力の経時変化が小さくできることがわかる。 また本発明の実施例9〜12は加熱処理前後で高速剥離強度の上昇率が100%以内であり、高速剥離特性の経時変化が小さく、安定性に優れていることがわかる。 比較例3は、加熱処理前後で高速剥離の剥離粘着力の上昇率が100%より大きく、高速剥離特性の経時変化が大きく、安定性が良くないことがわかる。 加熱処理後の剥離強度の上昇率は下記式で求めた。 加熱処理後の高速剥離強度の上昇率も同様にして求めた。 加熱後上昇率(%)=(加熱後剥離強度−未加熱剥離強度)/未加熱剥離強度×100(%)
本発明の粘着積層体は、電子部材、光学部材などの表面を保護するための表面保護シートとして適した特性を有する。 なお、2010年4月23日に出願された日本特許出願2010−100127号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。 |