本発明は粘着積層体に関する。
基材層と粘着体層とを有する粘着積層体は、粘着シートまたは粘着テープの形態で用いられてきた。 粘着積層体は、使用時は被着体に所望の力で貼り付いていることが要求される。 また同時に粘着積層体には、糊残りが無いように剥離できる再剥離性が要求される。 すなわち粘着体層と接する基材層および被着体のうち、粘着体層は必ず基材層と一体になっていることが要求される。 粘着体層を支持する基材としては、ポリエステル系の材料が好適に採用されている。 ポリエステル系の材料は、力学的強度、耐薬品性、絶縁性等の性能が優れることに加え、比較的安価であり、性能とコストのバランスがとれているためである。 しかしながら、ポリエステル系基材は、通常、粘着体との親和性が乏しい点から、粘着テープを巻き戻す際に次層のテープ背面側に粘着体が移行する問題が発生する場合があることが知られている。 例えばポリエステル系基材とアクリル系粘着体層との組み合わせにおいては、基材層と粘着体層との親和性に乏しく、剥離したときに被着体に粘着体層が残る、いわゆる糊残りが発生することがあった。 この問題を解決するために、基材層と粘着体層との間に多成分からなる下塗層を設けるなどの提案がなされてきた(特許文献1参照。)。
本発明は、ポリエステル系の基材層を用いても糊残りが発生しない粘着積層体を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を有する。 [1]ポリエステル系基材層の一面上に粘着体層を有し、前記粘着体層が前記ポリエステル系基材層の他面と接触した状態で巻回されている粘着積層体であって、前記ポリエステル系基材層の一面が易接着処理された処理面であり、前記粘着体層が該処理面に当接しており、 前記ポリエステル系基材層の他面は易接着処理されておらず、離型剤処理もされていない未処理基材面であり、前記粘着体層が下記シリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物を硬化させて得られる層であり、下記の測定方法による剥離粘着力が1N/25mm以下であることを特徴とする粘着積層体。 ただしシリル基含有重合体(S)とは、主鎖に、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、および/またはポリカーボネート鎖を有し、ウレタン結合またはウレア結合を有し、分子末端に加水分解性シリル基を有するシリル基含有重合体である。 剥離粘着力の測定方法:23℃の環境で、厚さ1.5mmのブライトアニール処理したステンレス鋼板(SUS304(JIS))に、測定する試験片(幅:25mm)を貼着し、質量が2kgのゴムロールで圧着して30分後に、JIS−B−7721に規定する引張り試験機を用い、剥離強度(180度ピール、引張り速度300mm/分)を測定して得られる値を剥離粘着力とする。 [2]前記シリル基含有重合体(S)が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物の末端に、イソシアネートシラン類またはアミノシラン類を反応させる方法で加水分解性シリル基を導入して得られるシリル基含有重合体(S1)である上記[1]に記載の粘着積層体。 [3]前記シリル基含有重合体(S)が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーの末端に加水分解性シリル基を導入して得られるシリル基含有重合体(S2)である上記[1]に記載の粘着積層体。 [4]前記シリル基含有重合体(S)が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーを、さらに鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られるポリウレタン重合体の分子末端に加水分解性シリル基を導入して得られるシリル基含有重合体(S3)である上記[1]に記載の粘着積層体。 [5]前記シリル基含有重合体(S)の加水分解性シリル基が、イソシアネートシラン類、アミノシラン類、メルカプトシラン類、エポキシシラン類、および、ヒドロシラン類からなる群から選ばれる1種以上のシラン化合物を用いて導入された、上記[3]または [4] に記載の粘着積層体。 [6]前記加水分解性シリル基がトリアルコキシシリル基である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の粘着積層体。 [7]前記易接着処理が、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理、紫外線処理、プライマ処理、およびブラスト処理からなる群から選ばれる1種のみの処理または2種以上の組み合わせ処理である上記[1]〜[ 6 ]のいずれかに記載の粘着積層体。
本発明によれば、ポリエステル系の基材層と粘着体層とを有し、糊残りの発生が抑えられた粘着積層体が提供できる。
本明細書における数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)は、分子量既知の標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定することによって得られるポリスチレン換算分子量である。 本明細書における平均水酸基価(OHV)は、JIS−K−1557−6.4に基づいた測定値である。 また本明細書において、ポリエーテルポリエステルポリオールとは、エーテル結合およびエステル結合を有するポリオールである。 本明細書において、粘着性(adherence property)とは、軽い圧力で被着材に接着し、かつ、任意に再剥離可能な性質である。 粘着剤(pressure sensitive adhesive)とは、粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質である。 また再剥離性を有し、一時的な接着に用いる。 一方、接着剤は永久接着性能を有する点で、粘着剤とは異なる。 本明細書において、剥離粘着力(被着体からの剥離強度)により、粘着剤を分類することがある。 剥離粘着力が0N/25mmを超え1N/25mm以下の場合を微粘着、剥離粘着力が1N/25mmを超え8N/25mm以下の場合を低粘着、剥離粘着力が8N/25mmを超え15N/25mm以下の場合を中粘着、剥離粘着力が15N/25mmを超え50N/25mm以下の場合を強粘着という。 なお特に断りがない場合には、剥離粘着力はJIS−Z−0237(1999)−8.3.1に規定される180度引きはがし法に準拠し、以下の試験方法に従う。 すなわち、23℃の環境で、厚さ1.5mmのブライトアニール処理したステンレス鋼板(SUS304(JIS))に、測定する粘着シート試験片(幅:25mm)を貼着し、質量が2kgのゴムロールで圧着する。 30分後、JIS−B−7721に規定する引張り試験機を用い、剥離強度(180度ピール、引張り速度300mm/分)を測定する。 こうして得られる貼着30分後の剥離強度の値を本発明における「剥離粘着力」とする。 <粘着積層体> 本発明の粘着積層体は、ポリエステル系基材層(単に基材ということもある。)と、該ポリエステル系基材層上に設けられた粘着体層(単に粘着体ということもある。)とを有する。 粘着積層体はどのような形態でもよいが、粘着シートまたは粘着テープが好ましい。 粘着体(adherence substance)とは、粘着性を有する成形体である。 粘着シート(pressure sensitive adhesive sheet)とは、粘着性を有するシートである。 ただし本明細書においては厚さは問わず、シートとフィルムとは区別しない。 粘着性シートは、基材層と粘着体層とを構成要素として有する積層体である。 また粘着テープ(pressure sensitive adhesive tape)とは、テープ形状の粘着シートであり、幅に対して充分な長さを有する形態を意味する。 <ポリエステル系基材層> 本発明におけるポリエステル系基材層とは、ポリエステル系材料からなる基材層である。 基材層は粘着体層を機械的に支持する機能を果たす。 基材層の形態は特に制限されない。 例えば、フィルム、織布、不織布などが挙げられる。 このうちフィルム形態が粘着積層体の加工性に優れる点で好ましい。 織布や不織布の場合には、ポリエステル系材料のみからなっていてもよく、他の素材との複合体であってもよい。 また基材層は単層であっても複層であってもよい。 複層である場合には各種の機能層が設けられていてもよい。 機能層としては、導電層、反射防止層などが例示できる。 前記ポリエステル系材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が例示できる。 これらの樹脂は、他の共重合成分を有していてもよく、さらに他の樹脂との混合体であってもよい。 またポリエステル系材料は、各種添加剤を含有していてもよい。 この添加剤としては、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が例示できる。 前記ポリエステル系基材の厚さは特に制限されず、使用目的等に応じて適宜選定される。 粘着体層の支持基材として好適な厚さは5〜300μmであり、10〜150μmがより好ましい。 <易接着処理> 粘着体層は、基材に硬化性組成物が塗工され、該硬化性組成物が硬化することにより形成される。 被着体への糊残りを良好に防止するうえで、基材と粘着体層とが充分に接着していることが好ましい。 本発明において、ポリエステル系基材層の粘着体層側の面は易接着処理される。 すなわちポリエステル系基材において、粘着体層が塗工される面は事前に易接着処理が施され、処理面となっている。 易接着処理とは、基材と粘着体との接着力を向上させるための処理である。 この処理により糊残りが防止できる。 本発明における易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理、紫外線処理、プライマ処理、ブラスト処理が例示できる。 これらの処理は1種類のみの処理であってもよく、2種以上の組み合わせ処理であってもよい。 このうちプラズマ処理、コロナ放電処理、およびプライマ処理は、基材層への負荷が小さく、処理自体が容易であり、基材と粘着体との接着力の向上が均一かつ均質に行え、かつ、粘着積層体の光学的特性にも影響をほとんど与えないため好ましい。 また粘着積層体が不透明であってもよい場合には、ブラスト処理も有効である。 2種以上の組み合わせ処理の例としては、コロナ放電処理とプライマ処理の組み合わせが好ましい。 ここでプラズマ処理とは、ガスを高周波電源を用いて励起させ、反応性の高いプラズマ状態にして、このプラズマ状態のガスにより基材表面を改質する方法である。 またコロナ放電処理とは、大気圧状態において電極間に交流の高電圧を印加してコロナ放電を励起し、基材表面をコロナ放電に曝すことにより基材表面を改質する方法である。 またフレーム処理とは、火炎を用いて基材表面を改質する方法である。 また紫外線処理とは、基材を紫外線(特に180〜250nmの波長の遠紫外線)に曝すことにより基材表面を改質する方法である。 またブラスト処理とは、細粒状の研削材を基材表面に衝突させて基材表面を改質する方法である。 いずれの場合も基材表面にかけるエネルギー量は、基材の状況に応じて適宜調節される。 またプライマ処理とは、基材表面にプライマを塗工し、プライマ層を形成する方法である。 プライマとしては、シラン系プライマ、イソシアネート系プライマ、ウレタン系プライマ、ポリエステル樹脂系プライマ、ゴム系プライマ、アクリルウレタン系プライマが好適に例示できる。 シラン系プライマとしては、加水分解性基を有するシランカップリング剤が好ましい。 具体的な加水分解性基を有するシランカップリング剤としては、イソシアネートシラン類、アミノシラン類、メルカプトシラン類、エポキシシラン類などが好ましく、アミノシラン類、エポキシシラン類が特に好ましい。 これらのシラン類としては、後述する加水分解性シリル基の導入方法(PQ1)〜(PQ4)の項において具体的に例示される化合物が好適に例示できる。 イソシアネート系プライマとしては、公知のポリイソシアネート化合物の変性体等の多官能ポリイソシアネートが好適に例示できる。 変性体としては、トリメチロールプロパンアダクト型変性体、ビュウレット型変性体、またはイソシアヌレート型変性体等が挙げられる。 具体的にはデュラネートP301−75E(旭化成社製、トリメチロールプロパンアダクト型HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、イソシアネート基含有量:12.9質量%、固形分:75質量%)、コロネートL(日本ポリウレタン社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI(トリレンジイソシアネート)、イソシアネート基含有量:13.5質量%、固形分:75質量%)等が例示できる。 ウレタン系プライマとしては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー、水酸基末端ウレタンプレポリマーが利用できる。 水酸基末端ウレタンプレポリマーとしては、MP2000(セメダイン社製)などが例示できる。 ポリエステル樹脂系プライマとしては、分子量が5,000〜20,000のポリエステル樹脂を主成分として用いたものが好ましい。 具体的には、溶剤型ポリエステル樹脂系プライマ、ホットメルト型ポリエステル樹脂系プライマまたは水分散型ポリエステル樹脂系プライマが挙げられる。 これらは市販品から入手可能であり、代表的には日本合成化学社製のポリエスター(ポリエスターTP、ポリエスターLP、ポリエスターSP、ポリエスターWR、(いずれも商品名))シリーズが挙げられる。 ポリエステル樹脂系プライマとしては、中でも、非晶性ポリエステル樹脂が好ましく、溶剤可溶であるものが好ましい。 具体的にはガラス転移温度が65℃の非晶性ポリエステル樹脂を用いた溶剤型の「ポリエスターTP−235(商品名)」等がポリエステル系基材層との密着性が優れている点で好ましい。 ゴム系プライマとしては、溶剤型合成ゴム系プライマとして横浜ゴム工業社製のNo. 40(商品名)が例示できる。 アクリルウレタン系プライマとしては、溶剤型アクリルウレタンカーボネート樹脂として大成ファインケミカル社製の8UA−347(商品名)が例示できる。 プライマとしては、プライマ層とポリエステル系基材層との密着性、透明性、耐メタノール性が良好で、粘着積層体の取り扱いに優れる点から、ポリエステル樹脂系プライマ、ゴム系プライマ、アクリルウレタン系プライマが特に好ましい。 プライマの塗工に際しては、各種添加剤を添加してもよい。 例えば導電性付与剤等を添加してもよい。 基材表面上にプライマ層を形成した場合、基材の処理面は該プライマ層の表面となる。 <シリル基含有重合体(S)> 本発明にかかる粘着体は、シリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物を硬化させて得られる。 シリル基含有重合体(S)は、主鎖にポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、および/またはポリカーボネート鎖を有し分子末端に加水分解性シリル基を有する。 シリル基含有重合体(S)は、下記(S1)〜(S3)のうちいずれか1種のみ、または、2種以上を混合して用いることが好ましい。 このうち、特に得られる硬化体が柔軟性と濡れ性に優れる点から(S1)が好ましい。 <シリル基含有重合体(S1)> シリル基含有重合体(S1)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物の末端に加水分解性シリル基を導入して得られる。 本発明におけるポリエーテルポリオールは、ポリエーテル鎖(−OR 1 −) n1 [R 1は炭素数2〜4のアルキレン基、n1は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエステル鎖を有さない。 ポリエステルポリオールは、ポリエステル鎖(−OC(O)−R 2 −) n2 [R 2は炭素数2〜8のアルキレン基、n2は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエーテル鎖を有さない。 ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネート鎖(−OC(O)−O−R 3 −) n3 [R 3は炭素数2〜20のアルキレン基、n3は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエーテル鎖およびポリエステル鎖のいずれも有さない。 ポリエーテルポリエステルポリオールは、ポリエーテル鎖およびポリエステル鎖の両方を有するポリオールである。 シリル基含有重合体(S1)は、特に、上記ポリオール化合物に、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。 <シリル基含有重合体(S2)> シリル基含有重合体(S2)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーの末端に、加水分解性シリル基を導入して得られるものである。 シリル基含有重合体(S2)は、特に、ポリウレタンプレポリマーに、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。 <シリル基含有重合体(S3)> シリル基含有重合体(S3)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーを、さらに鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られるポリウレタン重合体の分子末端に、加水分解性シリル基を導入して得られるものである。 シリル基含有重合体(S3)は、特に、ポリウレタン重合体に、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。 <ポリオール化合物> 本発明にかかるポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオールを用いることができる。 ポリオール化合物としてはこれらのポリオールの1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。 特にポリエーテル骨格(ポリエーテル鎖)を有するポリオールの少なくとも1種を用いることが粘着体の柔軟性を確保する点で好ましい。 粘着体が柔軟であることは、被着体から粘着体を剥離する際に、滑らかに剥離することなくバリバリという音を発する現象、いわゆるジッピング(Zipping)の抑制に効果的であると考えられる。 またポリエーテル骨格を有することにより、硬化性組成物の粘度を低くできる。 さらにポリエーテル骨格を有することにより、粘着体の表面抵抗を低くでき、剥離帯電を抑制できる。 シリル基含有重合体(S)がポリエーテル鎖を有する場合に、その一部としてオキシエチレン基を有していてもよい。 オキシエチレン基を有していると、特に表面抵抗が小さくできるからである。 オキシエチレン基を有する場合は、オキシエチレン基の割合は、全ポリエーテル鎖のうち5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。 オキシエチレン基は、ポリエーテル鎖の中にブロックで存在していてもよく、ランダムに存在していてもよい。 シリル基含有重合体(S)におけるエーテル結合(−OR 1 −)の割合は、エーテル結合とエステル結合(−OC(O)−R 2 −)との合計(100モル%)に対して、40〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、60〜100モル%がさらに好ましい。 ポリエーテル骨格を有するポリオールとは、例えばポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオールなどのようにポリエーテル鎖を有するポリオールを意味する。 本発明においてシリル基含有重合体(S)を得るためのポリオール化合物として、特にポリエーテルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールを用いるか、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールと、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールとを併用することが好ましい。 さらに好ましくは、ポリエーテルポリオールまたはポリエーテルポリエステルポリオールを用いる。 上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。 ポリオキシアルキレンポリオールを構成するアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルトリメチレン基等が挙げられる。 これらは対応する環状エーテル化合物やエポキシド化合物を開環重合することにより得られる。 環状エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、オキセタンなどが挙げられる。 エポキシド化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが挙げられる。 ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールが好適に例示できる。 上記ポリエーテルポリエステルポリオールとしては、例えば、エーテルジオール類と二塩基酸化合物との縮合重合で得られるポリオール、エポキシド化合物と環状エステル類との開環共重合(特にランダム共重合が好ましい)で得られるポリオールなどが例示できる。 エーテルジオール類としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが例示できる。 二塩基酸化合物としては、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸、フマル酸などが例示できる。 環状エステル類(ラクトン類)としては、β−プロピオラクトン(炭素数3)、δ−バレロラクトン(炭素数5)、ε−カプロラクトン(炭素数6)が挙げられる。 これらのうちでもε−カプロラクトンがより好ましい。 エポキシド化合物は前述のとおりである。 上記ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの低分子ジオール類と前述の二塩基酸化合物との縮合重合で得られるポリオールが例示できる。 上記ポリカーボネートポリオールとしては、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートからなる低分子カーボネート化合物と、ジオール化合物とを反応させて得られるものが好ましい。 具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチルペンテンカーボネート)ジオール、ポリプロピレンカーボネートジオールなどが例示できる。 また、それらの混合物またはそれらの共重合物などであってもよい。 本発明においてシリル基含有重合体(S)を得るためのポリオール化合物の水酸基数は2〜3が好ましく、2が最も好ましい。 すなわちポリオール化合物としてジオールを用いることが特に好ましい。 水酸基数がこの範囲であれば、得られるポリウレタンプレポリマーの粘度を低く抑えやすいため好ましい。 また該ポリオール化合物の平均水酸基価は5〜225mgKOH/gが好ましく、7〜115mgKOH/gがより好ましく、10〜112mgKOH/gが特に好ましい。 平均水酸基価がこの範囲であれば、得られるシリル基含有重合体(S)の粘度を低く抑えやすいため好ましい。 特にシリル基含有重合体(S1)を得る場合のポリオール化合物の平均水酸基価は5〜112mgKOH/gが好ましく、7〜56mgKOH/gがより好ましい。 またシリル基含有重合体(S2)または(S3)を得る場合のポリオール化合物の平均水酸基価は25〜225mgKOH/gが好ましく、30〜115mgKOH/gがより好ましい。 <ポリイソシアネート化合物> シリル基含有重合体(S2)または(S3)を得るためにはポリウレタンプレポリマーを用いる。 このポリウレタンプレポリマーの合成に用いるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを使用することができる。 具体的にはジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が挙げられる。 これらは1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。 得られる粘着体の柔軟性が向上することから屈曲鎖を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。 具体的には、トリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが例示できる。 このうちトリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートが特に好ましい。 <ポリウレタンプレポリマー> シリル基含有重合体(S2)または(S3)を得るためのポリウレタンプレポリマーは、前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる。 ポリウレタンプレポリマーの末端はイソシアネート基または水酸基であり、加水分解性シリル基の導入方法により適宜選択される。 すなわちイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーであっても、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーであってもよい。 ポリウレタンプレポリマーを合成する際に、前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる割合は、ポリオール化合物の分子量(平均水酸基価)および目標とするポリウレタンプレポリマーの分子量によって適宜選択される。 イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、反応させる前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との割合は、「ポリイソシアネート化合物のNCO基/ポリオール化合物のOH基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、105〜170がより好ましい。 水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、前記反応させるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との割合は、イソシアネート指数で50〜100未満が好ましく、50〜98がより好ましい。 ポリウレタンプレポリマーの分子量は、数平均分子量で2,000〜100,000が好ましい。 より好ましくは3,000〜80,000である。 シリル基含有重合体(S3)を得るためのポリウレタン重合体は、ポリウレタンプレポリマーを、さらに鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られる。 ポリウレタンプレポリマーは、シリル基含有重合体(S2)の場合と同様である。 <鎖延長剤> 鎖延長剤としては、ポリウレタンプレポリマーとしてイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを用いる場合は、低分子ジオール類、低分子ジアミン類が好ましい。 低分子ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが好適に例示できる。 低分子ジアミン類としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;ピペラジン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジアミン等の脂環式ジアミン;およびトリレンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。 ポリウレタンプレポリマーとして水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを用いる場合は、鎖延長剤としてジイソシアネート化合物が好ましい。 ジイソシアネート化合物はポリウレタンプレポリマーに用いるものと同様である。 <ポリウレタン重合体> 本発明にかかるポリウレタン重合体は、前記ポリウレタンプレポリマーを鎖延長反応させて得られる。 ポリウレタン重合体の末端はイソシアネート基、水酸基、またはアミノ基であり、加水分解性シリル基の導入方法により適宜選択される。 すなわちイソシアネート基末端ポリウレタン重合体であっても、水酸基末端ポリウレタン重合体であっても、アミノ基末端ポリウレタン重合体であってもよい。 ポリウレタン重合体を合成する際に、前記ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを反応させる割合は、ポリウレタンプレポリマーの分子量および目標とするポリウレタン重合体の分子量によって適宜選択される。 低分子ジオール類を鎖延長剤として用いて、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを鎖延長する場合、ポリウレタンプレポリマーと低分子ジオール類との割合は、「ポリウレタンプレポリマーのNCO基/低分子ジオール類のOH基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、100超〜150がより好ましい。 この範囲であるとイソシアネート基末端ポリウレタン樹脂が得られる。 また水酸基末端ポリウレタン樹脂を得る場合には、該イソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。 低分子ジアミン類を鎖延長剤として用いて、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを鎖延長する場合、ポリウレタンプレポリマーと低分子ジアミン類との割合は、「ポリウレタンプレポリマーのNCO基/低分子ジアミン類のNH 2基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。 この範囲であるとアミノ基末端ポリウレタン重合体が得られる。 また、イソシアネート基末端ポリウレタン重合体を得る場合は、イソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、100超〜150がより好ましい。 水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを、鎖延長剤としてジイソシアネート化合物を用いて鎖延長して、イソシアネート基末端ポリウレタン重合体を得る場合、ポリウレタンプレポリマーとジイソシアネート化合物との割合は、「鎖延長剤のNCO基/ポリウレタンプレポリマーのOH基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、101〜150がより好ましい。 また水酸基末端ポリウレタン重合体を得る場合には、該イソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。 ポリウレタン重合体の分子量は、数平均分子量で4,000〜500,000が好ましい。 より好ましくは8,000〜250,000である。 <加水分解性シリル基> 本発明において加水分解性シリル基とは、加水分解性基を有するシリル基である。 具体的には、−SiX a R 3 (3−a)で表されるシリル基が好ましい。 ここで、aは1〜3の整数を示す。 aは好ましくは2〜3であり、3が最も好ましい。 またR 3は炭素数1〜20の1価の有機基であり、炭素数1〜6の1価の有機基が好ましい。 具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。 R 3は置換基を有していてもよい。 該置換基の例としてはメチル基、フェニル基等が挙げられる。 加水分解性シリル基がR 3を複数有する場合、該複数のR 3は互いに同一でも異なっていてもよい。 すなわち、aが1である場合、1個のケイ素原子(Si)に結合している2個のR 3はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基を示す。 また上記Xは水酸基(−OH)または加水分解性基を示す。 該加水分解性基としては、例えば−OR基(Rは炭素数4以下の炭化水素基)が挙げられる。 かかる−OR基は、アルコキシ基またはアルケニルオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。 アルコキシ基またはアルケニルオキシ基の炭素数は4以下が好ましい。 具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、プロペニルオキシ基等が挙げられる。 これらの中でもメトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。 この場合、硬化性組成物の硬化速度をより高めることができる。 加水分解性シリル基中にXが複数個存在する場合、該複数のXは互いに同一でも異なってもよい。 すなわち、aが2または3である場合、Xはそれぞれ独立に、水酸基または加水分解性基を示す。 加水分解性シリル基としては、トリアルコキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基またはトリエトキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。 シリル基含有重合体(S)の貯蔵安定性が良好であり、かつ、硬化性組成物の硬化速度が速く粘着体の製造に好適であるためである。 <加水分解性シリル基の導入> 本発明においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の分子末端に加水分解性シリル基を導入する。 加水分解性シリル基の導入方法としては、イソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)、アミノシラン類を用いる方法(PQ2)、メルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)、エポキシシラン類を用いる方法(PQ4)、およびヒドロシラン類を用いる方法(PQ5)が例示できる。 シリル基含有重合体(S)がウレタン結合またはウレア結合を有する場合において、ウレタン結合とウレア結合との合計量(MU)と加水分解性シリル基の量(MS)との割合(MU/MSのモル比)は特に制限はないが、MU/MS(モル比)が1/1〜100/1であることが好ましく、2/1〜90/1であることがより好ましい。 この範囲にあることにより粘着体の粘着力と柔軟性が制御される。 また粘着力の安定性も良好となる。 ウレタン結合はイソシアネート基と水酸基との反応により形成され、ウレア結合はイソシアネート基とアミノ基との反応により形成される。 シリル基含有重合体(S2)または(S3)の場合、MU/MSのモル比はポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の分子量などにより制御できる。 <イソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)> 方法(PQ1)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がイソシアネート基と反応しうる基であり、該末端の官能基とイソシアネートシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 イソシアネートシラン類としては、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、5−イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリエトキシシラン、5−イソシアネートペンチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルメチルジメトキシシシラン、2−イソシアネートエチルエチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。 これらの中でも、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランまたは3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。 イソシアネート基と反応しうる基としては、水酸基、アミノ基が例示できる。 水酸基を用いる場合は、ポリオール化合物、水酸基末端ポリウレタンプレポリマー、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを、さらにジイソシアネート化合物を用いて鎖延長反応させて得られた水酸基末端ポリウレタン重合体、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーに低分子ジオール類を反応させて得られた水酸基末端ポリウレタンプレポリマー等を、用いることができる。 またアミノ基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーに低分子ジアミン類を反応させて得られたアミノ基末端ポリウレタン重合体等を用いることができる。 この反応には触媒を用いてもよい。 触媒としては、公知のウレタン化反応触媒が用いられる。 例えば、有機酸塩・有機金属化合物類、第三級アミン類等が挙げられる。 具体的な有機酸塩・有機金属化合物類としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)等のスズ触媒、2−エチルヘキサン酸ビスマス[ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)]等のビスマス触媒、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛触媒、ナフテン酸コバルト等のコバルト触媒、2−エチルヘキサン酸銅等の銅触媒等が例示できる。 第三級アミン類としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。 <アミノシラン類を用いる方法(PQ2)> 方法(PQ2)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がアミノ基と反応しうる基であり、該末端の官能基とアミノシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、アミノ基と反応しうる基を導入してもよい。 アミノシラン類としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N'−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等が挙げられる。 これらの中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシランまたは3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。 アミノ基と反応しうる基としては、イソシアネート基、アクリロイル基、メタクリロイル基が例示できる。 イソシアネート基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを、さらにジイソシアネート化合物を用いて鎖延長反応させて得られたイソシアネート基末端ポリウレタン重合体、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを、さらに低分子ジオール化合物を用いて鎖延長反応させて得られたイソシアネート基末端ポリウレタン重合体等を、用いることができる。 またアクリロイル基やメタクリロイル基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーにヒドロキシアルキルアクリレート類またはヒドロキシアルキルメタクリレート類を反応させたもの、ポリオール化合物、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーまたは水酸基末端ポリウレタン重合体にアクリル酸類またはメタクリル酸類を反応させたものなどを用いることができる。 ヒドロキシアルキルアクリレート類としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート等が例示できる。 ヒドロキシアルキルメタクリレート類としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が例示できる。 アミノ基とイソシアネート基との反応はウレア結合生成の反応である。 この反応には上述のウレタン化反応触媒を用いてもよい。 またアミノ基とアクリロイル基との反応はマイケル付加反応である。 <メルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)> 方法(PQ3)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がメルカプト基と反応しうる基であり、該末端の官能基とメルカプトシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、メルカプト基と反応しうる基を導入してもよい。 メルカプトシラン類としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。 これらの中でも、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランまたは3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。 メルカプト基と反応しうる基としては、イソシアネート基、アクリロイル基、アリル基が例示できる。 イソシアネート基およびアクリロイル基の場合については、アミノシラン類を用いる方法(PQ2)の場合と同様である。 アリル基を用いる場合は、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端をイソシアネート基とした後、アリルアルコールと反応させることによりアリル基とすることができる。 メルカプト基とイソシアネート基との反応はウレタン化反応と同様であり、触媒を用いてもよい。 メルカプト基とアクリロイル基またはアリル基との反応は、ラジカル開始剤を用いることが好ましい。 ラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が例示できる。 <エポキシシラン類を用いる方法(PQ4)> 方法(PQ4)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がエポキシ基と反応しうる基の場合であり、該末端の官能基とエポキシシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、エポキシ基と反応しうる基を導入してもよい。 エポキシシラン類としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が好ましい。 これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。 エポキシ基と反応しうる基としては、水酸基、アミノ基が例示できる。 それぞれイソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)の場合と同様である。 エポキシ基との反応における触媒としては、アミン類、酸無水物類など公知のものが使用される。 例えば鎖状脂肪族系ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、変性脂肪族系ポリアミン、イミダゾール化合物等が挙げられる。 特に、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、ベンジルジメチルアミン(BDMA)等の三級アミンが好ましい。 <ヒドロシラン類を用いる方法(PQ5)> 方法(PQ5)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がヒドロシリル化反応しうる基であり、該末端の官能基とヒドロシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。 必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、ヒドロシリル化反応しうる基を導入してもよい。 ヒドロシラン類としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。 ヒドロシリル化反応しうる基としては、アクリロイル基、アリル基が例示できる。 それぞれメルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)と同様である。 この反応にはヒドロシリル化触媒を用いることが好ましい。 ヒドロシリル化触媒としては、塩化白金酸などが例示できる。 <粘着体の製造方法> 本発明にかかる粘着体の製造方法は、シリル基含有重合体(S1)を用いる場合、ポリオール化合物の分子末端に加水分解性シリル基を導入しシリル基含有重合体(S1)を製造する工程(PP1A)と、該シリル基含有重合体(S1)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP1B)とを有する。 またシリル基含有重合体(S2)を用いる場合、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンプレポリマーを製造する工程(PP2A)と、該ポリウレタンプレポリマーの分子末端に加水分解性シリル基を導入しシリル基含有重合体(S2)を製造する工程(PP2B)と、該シリル基含有重合体(S2)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP2C)とを有する。 またシリル基含有重合体(S3)を用いる場合、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンプレポリマーを製造する工程(PP3A)と、該ポリウレタンプレポリマーを、鎖延長剤を用いて鎖延長反応させてポリウレタン重合体を製造する工程(PP3B)と、該ポリウレタン重合体の分子末端に加水分解性シリル基を導入しシリル基含有重合体(S3)を製造する工程(PP3C)と、該シリル基含有重合体(S3)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP3D)とを有する。 ここでポリウレタンプレポリマーを製造する工程(PP2A)と(PP3A)とは同じである。 また加水分解性シリル基を導入する工程(PP1A)、(PP2B)および(PP3C)は同じである。 また硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP1B)、(PP2C)および(PP3D)は同じである。 <ポリウレタンプレポリマーを製造する工程(PP2A)、および(PP3A)> ポリウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる。 その反応の割合は上述の通りである。 またこの反応には触媒を用いてもよい。 触媒としては、上述のウレタン化反応触媒が用いられる。 反応の温度は40〜160℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。 <ポリウレタン重合体を製造する工程(PP3B)> ポリウレタン重合体は、ポリウレタンプレポリマーに、鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られる。 その反応の割合は上述の通りである。 またこの反応には触媒を用いてもよい。 触媒としては、上述のウレタン化反応触媒が用いられる。 反応の温度は40〜160℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。 <加水分解性シリル基を導入する工程(PP1A)、(PP2B)および(PP3C)> ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体に加水分解性シリル基を導入する工程は、上述の(PQ1)〜(PQ5)の方法で述べたとおりである。 加水分解性シリル基を導入する割合(以下、加水分解性シリル基導入割合ということもある。)は、理論的に反応しうる末端の全部を100モル%とした場合に、50〜100モル%導入することが好ましく、80〜100モル%導入することがより好ましい。 <硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する工程(PP1B)、(PP2C)および(PP3D)> シリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物を硬化させて粘着体を製造する。 本発明にかかる硬化性組成物は、他の加水分解性シリル基を有する重合体を含んでいてもよい。 他の加水分解性シリル基を有する重合体の割合は、硬化性組成物全体の30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。 シリル基含有重合体(S)および場合により他の加水分解性シリル基を有する重合体は、溶剤の存在下または非存在下で、後述の各種添加剤を含めて、充分に混合されて、硬化性組成物とされることが好ましい。 また硬化体の柔軟性に優れることから、硬化性組成物がシリル基含有重合体(S1)を含むことが好ましい。 <添加剤> 本発明にかかる硬化性組成物には、添加剤を含有させることができる。 なお硬化性組成物においては、可塑剤を用いないことが好ましい。 特にフタル酸ジオクチル等のエステル系可塑剤は、用いないことが好ましい。 エステル系可塑剤を用いると、硬化体(粘着体)と基材との接着力が低下し、糊残り(adhesive deposit)が発生する場合があるからである。 [硬化剤] 本発明にかかる硬化性組成物は水と接触することにより硬化する。 したがって大気中の水と反応して湿気硬化する。 また、硬化させる直前に、硬化剤として水(H 2 O)を添加してもよい。 この場合の水の添加量は、シリル基含有重合体(S)および他の加水分解性シリル基を有する重合体の合計量の100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部が特に好ましい。 硬化剤の添加量を0.01質量部以上とすることにより硬化を有効に促進でき、硬化剤の添加量を5質量部以下とすることにより使用時の可使時間を確保できる。 [硬化触媒] 硬化性組成物に、加水分解性シリル基の加水分解および/または架橋反応を促進するための硬化触媒(硬化促進剤)を含有させることが好ましい。 かかる硬化触媒は加水分解性シリル基の反応を促進する成分として公知のものを適宜使用できる。 具体例としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOOCH 3 ) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOO(n−C 4 H 9 )) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOOCH 3 ) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOO(n−C 4 H 9 )) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(OCOCH=CHCOO(iso−C 8 H 17 )) 2等の有機スズカルボン酸塩;(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(SCH 2 COO)、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 COO)、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 CH 2 COO)、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 COOCH 2 CH 2 OCOCH 2 S)、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(SCH 2 COO(iso−C 8 H 17 )) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 COO(iso−C 8 H 17 )) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(SCH 2 COO(n−C 8 H 17 )) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 SnS等の含硫黄有機スズ化合物;(n−C 4 H 9 ) 2 SnO、(n−C 8 H 17 ) 2 SnO等の有機スズオキシド;エチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルおよびフタル酸ジオクチルからなる群より選ばれるエステル化合物と、上記有機スズオキシドとの反応生成物;(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(acac) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(acac) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OC 8 H 17 )(acac)、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OC(CH 3 )CHCO 2 C 2 H 5 ) 2 、(n−C 8 H 17 ) 2 Sn(OC(CH 3 )CHCO 2 C 2 H 5 ) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 Sn(OC 8 H 17 )(OC(CH 3 )CHCO 2 C 2 H 5 )、ビスアセチルアセトナートスズ等のキレートスズ化合物(ただし、上記acacはアセチルアセトナト配位子を意味し、OC(CH 3 )CHCO 2 C 2 H 5はエチルアセトアセテート配位子を意味する。);テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランおよびテトラプロポキシシランからなる群より選ばれるアルコキシシランと、上記キレートスズ化合物との反応生成物;(n−C 4 H 9 ) 2 (CH 3 COO)SnOSn(OCOCH 3 )(n−C 4 H 9 ) 2 、(n−C 4 H 9 ) 2 (CH 3 O)SnOSn(OCH 3 )(n−C 4 H 9 ) 2等の−SnOSn−結合含有有機スズ化合物等のスズ化合物が挙げられる。 また、硬化触媒の更なる具体例としては、2−エチルヘキサン酸スズ、n−オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ステアリン酸スズ等の2価スズカルボン酸塩類;オクチル酸、オレイン酸、ナフテン酸、ステアリン酸等の有機カルボン酸の錫以外の金属塩類;カルボン酸カルシウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、ビスマストリス−2−エチルヘキサノエート等のカルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、カルボン酸ニッケル等;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2−エチルへキシルチタネート)等のチタンアルコキシド類;アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウムアルコキシド類;ジルコニウム−n−プロピレート、ジルコニウム−n−ブチレート等のジルコニウムアルコキシド類;チタンテトラアセチルアセトナート、ジブチルオキシチタンジアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート等のチタンキレート類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート等のジルコニウム化合物類;リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸等の酸性化合物類;ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン等の脂肪族モノアミン類;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン類;ピペリジン、ピペラジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等の複素環式アミン類;メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;上記アミン類と肪族モノカルボン酸(蟻酸、酢酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸など)、脂肪族ポリカルボン酸(蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸など)、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸など)、芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、トリメリット酸など)、フェノール化合物(フェノール、レゾルシン等)、スルホン酸化合物(アルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)、リン酸化合物等の有機酸、および塩酸、臭素酸、硫酸等の無機酸等の酸からなる第1級〜第3級のアンモニウム−酸塩類;トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ヘキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、デシルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルジメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、ジヘキシルジメチルアンムニウムヒドロキシド、ジオクチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジドデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム水酸基塩類;エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン等のアミン化合物類等が挙げられる。 これらの硬化触媒は1種類のみを用いても、2種類以上を組合せて用いてもよい。 2種類以上を組合せる場合は、たとえば、上記2価スズカルボン酸塩、有機スズカルボン酸塩または有機スズオキシドと、エステル化合物との反応物等の上記金属含有化合物に、脂肪族モノアミンまたはその他の上記アミン化合物を組合せることが、優れた硬化性が得られることから好ましい。 硬化触媒を添加する場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S)および他の加水分解性シリル基を有する重合体の合計量の100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。 硬化触媒の添加量を0.001質量部以上とすることにより硬化速度を有効に促進でき、硬化触媒の添加量を10質量部以下とすることにより使用時の可使時間を確保できる。 [溶剤] 本発明にかかる硬化性組成物は、低粘度であり無溶剤での塗工が可能であるが、溶剤を含有させてもよい。 溶剤は特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、エステルアルコール類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類またはエステルエーテル類が挙げられる。 これらの中でも、溶剤としてアルコール類を用いると、硬化性組成物の保存安定性を向上させることができるため好ましい。 アルコール類としては、炭素数1〜10のアルキルアルコールであることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコールまたはヘキシルアルコールであることがより好ましく、メタノールまたはエタノールであることが更に好ましい。 特にメタノールを用いた場合に、添加量を増やすと、硬化性組成物の硬化時間を長くすることができる。 これは硬化性組成物を調製後の所定粘度まで達する時間、所謂ポットライフを長くするために有効な手法である。 硬化性組成物に溶剤を添加する場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S)および他の加水分解性シリル基を有する重合体の合計量100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。 添加量が500質量部を超えると、溶剤の揮発に伴って硬化物の収縮が生じる場合がある。 [脱水剤] 本発明にかかる硬化性組成物は、貯蔵安定性を改良するために、本発明の効果を損なわない範囲で少量の脱水剤を含有させてもよい。 かかる脱水剤の具体例としては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸アルキル;オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルト酢酸アルキル;メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の加水分解性有機シリコーン化合物;加水分解性有機チタン化合物等が挙げられる。 これらの中でもビニルトリメトキシシランまたはテトラエトキシシランがコスト、脱水能力の点から好ましい。 硬化性組成物に脱水剤を添加する場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S)および他の加水分解性シリル基を有する重合体の合計量の100質量部に対して0.001〜30質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。 [その他の添加剤] 硬化性組成物に下記の充填剤、補強剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、防黴剤等を配合してもよい。 充填剤または補強剤としては、たとえば、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ガラス、骨粉、木粉、繊維フレークなどが挙げられる。 安定剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。 難燃剤としては、たとえば、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、アンモニウムポリホスフェート、有機臭素化合物等が挙げられる。 離型剤としては、たとえば、ワックス、石鹸類、シリコーンオイル等が挙げられる。 防黴剤としては、たとえば、ペンタクロロフェノール、ペンタクロロフェノールラウレート、ビス(トリ−n−ブチル錫)オキシド等が挙げられる。 また、硬化性組成物に、基材との接着性を向上させる目的で接着性付与剤を添加してもよい。 <粘着体層> 本発明にかかる硬化性組成物は、シリル基含有重合体(S)、任意に配合される他の加水分解性シリル基を有する重合体および必要に応じて添加される添加剤を混合して得られる。 本発明にかかる粘着体層は、上記硬化性組成物を硬化させて得られる。 上記硬化性組成物を硬化させると、比較的粘着力の低い粘着体層が得られる。 すなわち本発明にかかる粘着体層は上記硬化性組成物を硬化して得られる硬化体である。 本発明にかかる粘着体の剥離粘着力としては、8N/25mm以下が好ましく、0N/25mmを超え8N/25mm以下がより好ましく、0N/25mmを超え1N/25mm以下がさらに好ましく、0.005〜0.8N/25mmが特に好ましい。 本発明にかかる硬化性組成物は、粘着性を増大させるような添加剤を含有させないことが好ましい。 本発明にかかる粘着体層は、比較的粘着力が低い。 このためポリエステル系基材への接着力が低くなる傾向にあり、糊残りが発生しやすい。 本発明は、基材に易接着処理を施すことにより、基材と粘着体との接着力が向上する。 一方、被着体と粘着体との粘着力とは低いままである。 したがって、被着体に対して微粘着または低粘着でありながら、糊残りが抑えられる。 本発明にかかるシリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物は、粘度が低く、塗工性が良い。 したがって溶剤を用いなくても良好な塗工性が得られるため粘着体層を成形する際に硬化性組成物の無溶剤化を実現できる。 また該組成物は硬化性に優れるため、水分と接触すると、迅速かつ強固に硬化(湿気硬化)して硬化体が得られる。 該湿気硬化には加水分解性シリル基(−SiX a R 3 (3−a) )が寄与する。 また、基材層上に塗布して硬化させると、基材層との良好な接着性が得られる。 硬化後の硬化体は、良好な柔軟性を有し、表面の濡れ性が良く、かつ低い粘着性を有する。 したがって粘着体層として好適であり、被着体への濡れ性および密着性が良好であるとともに、良好な再剥離性が得られる。 特に、シリル基含有重合体(S)が、ウレタン結合またはウレア結合等の極性結合を有していると、より良好な微粘着性または低粘着性が得られる。 その理由は明確ではないが、かかる極性結合は、硬化体における凝集力、粘着体の基材への接着性、および被着体への粘着性を高くする方向に作用すると考えられる。 一方、加水分解性シリル基は粘着体の被着体への粘着性を低くする方向に作用すると考えられる。 そして、これらの相互作用が微粘着性または低粘着性に寄与すると考えられる。 また、加水分解性シリル基が導入される位置がシリル基含有重合体(S)の分子末端であるため、分子運動を妨げずに凝集力を上げることができ、安定して粘着力を示すことができる。 したがって、ウレタン結合とウレア結合との合計量(MU)と加水分解性シリル基の量(MS)との割合(MU/MSのモル比)を制御することにより、粘着体の粘着力を制御することができる。 ウレタン結合またはウレア結合等の極性結合は、基材層と粘着体層との良好な接着性にも寄与していると考えられる。 また、本発明にかかる硬化性組成物を硬化させて得られる硬化体(粘着体層)においては、被着体への良好な濡れ性を得ることができる。 かかる良好な濡れ性には、特にポリオールに由来する構造が持つ柔軟性が寄与すると考えられる。 すなわち、ポリオールが分岐構造を有さないリニアな構造である場合、自由に動きやすい分子構造であり、柔軟性を高める方向に作用する。 また、ポリオールがポリエーテル骨格を主とする構造の場合の極性は比較的低い。 このような分子構造を有すると、被着体へ良好な濡れ性が得られると考えられる。 特にポリエーテル骨格の鎖長が長い方が、柔軟性および濡れ性が高くなると考えられる。 <硬化性組成物の硬化> 本発明にかかる粘着体層は、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる。 硬化性組成物の硬化条件は、必要に応じて設定される。 例えば硬化性組成物として硬化触媒を添加したものを用意する。 これに所定量の水を硬化剤として添加し充分に混合する。 これを基材の易接着処理された面(処理面)に塗工する。 塗工厚さは適宜設定される。 この後オーブン等で加熱し、室温で養生することにより硬化性組成物を硬化させることができる。 室温で養生する際または養生した後に加湿環境に放置することも有効である。 オーブン等による加熱は基材の耐熱温度等により適宜設定される。 例えば60〜120℃の環境に1〜30分程度放置することが好ましい。 特に溶剤を用いた場合には、一定の乾燥時間を設定することが好ましい。 ただし急激な乾燥は、発泡の原因になるため好ましくない。 またオーブン内で、またはオーブンから取り出した後に、スチームを当ててもよい。 また易接着処理としてプライマ処理を行った場合に、硬化性組成物の硬化の際に加熱を行うとプライマ層と硬化性組成物との反応により基材層と粘着体層との間の接着強度が高くなる。 例えば短時間の比較的高温での加熱が有効な場合がある。 具体的な短時間加熱としては、温度が80〜160℃(好ましくは100〜150℃)で、0.5〜5分間(好ましくは1〜4分間))の加熱が例示できる。 <粘着積層体の製造方法> 本発明の粘着積層体は、ポリエステル系基材の一面に易接着処理を施し、この処理面に前記硬化性組成物を塗工し、硬化性組成物を硬化させることにより製造される。 ポリエステル系基材への易接着処理は、硬化性組成物の塗工ラインと同じラインで行ってもよく別のラインで行ってもよい。 すなわち、あらかじめ易接着処理を行った基材の原反を用意しておいて、ここに硬化性組成物を塗工してもよい。 コロナ処理等の易接着処理を施した基材としては、市販品を利用できる。 易接着処理としてプライマ処理を行う場合は、基材の一面にプライマを塗工し、乾燥させる。 塗工の際にはプライマを必要に応じて、各種溶剤で希釈して塗布してもよい。 プライマ層の乾燥後の厚さは、基材層と粘着体層との接着力の観点から、0.01〜10μmが好ましく、0.02〜5μmがより好ましい。 硬化性組成物の塗工は、連続的に行うこともできる。 すなわちロールから取り出した基材の易接着処理された処理面に、所定量の水を混合した硬化性組成物を塗工し、インラインオーブンで加熱乾燥させる。 得られた成形体(積層体)に、必要に応じてセパレータを合わせ、巻き取る。 これを必要に応じて加湿した室温環境に保管し養生することにより成形された粘着積層体が得られる。 また別の塗工方法としては、上記の方法において基材とセパレータを逆にしてもよい。 すなわち最初にセパレータ上に硬化性組成物を塗工し、後から基材の易接着処理された処理面を硬化性組成物の層に貼着させてもよい。 粘着体層の厚さは、粘着積層体の設計の上で、基材の厚さとの関係で決められるが、3〜100μmが好ましく、10〜60μmが好ましい。 プライマまたは硬化性組成物の塗工装置としては、各種コータが利用できる。 例えばグラビヤロールコータ、リバースロールコータ、キスロールコータ、ディップロールコータ、バーコータ、ナイフコータ、スプレーコータ等が挙げられる。 本発明の粘着積層体は、ポリエステル系基材層の一面上に粘着体層が設けられ、粘着体層が設けられていない他面(基材背面)が未処理の基材面(未処理基材面)であることが好ましい。 この態様であれば、基材の一面(処理面)の方が他面(未処理面)よりも粘着体層との接着力が強いため、基材自体をセパレータとして巻き取ることが可能となる。 さらに、この場合に、特別なセパレータを設ける必要がないので廃棄物の削減につながる。 また基材表面に易接着処理を施すと基材背面(他面)に離型剤処理を行う必要がない。 代表的な離型剤処理はシリコーン化合物の塗布であるが、シリコーン化合物を塗布した場合には被着体にシリコーン化合物が転写される可能性が高く、いわゆるシリコーン汚染を発生させる可能性がある。 本発明の粘着積層体は離型剤処理を必要としないため、シリコーン汚染を発生させない。 したがって、本発明の粘着積層体は、半導体素子、液晶基板などの電子関連機器への適用に好適である。 本発明の粘着積層体は粘着力が比較的低いため、各種保護シートとして好適である。 特にポリエステル系基材として透明なポリエステルフィルムを採用した場合は、本発明にかかる粘着体層が良好な透明性を有するため、本発明の粘着積層体を保護シートとして貼着したまま対象物品の観察が可能となる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されない。 以下において、プロピレンオキシドをPO、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(イソシアネート基の含有率:19.2質量%)をTMS、ジブチルスズジラウレートをDBTDLと略記することがある。 また水は純水を用いた。 また、以下の実施例および比較例において、シリル基含有重合体として以下のものを用いた。 (参考製造例1:複合金属シアン化物錯体触媒の製造) 以下の方法で、有機配位子としてtert−ブチルアルコールを有する亜鉛ヘキサシアノコバルテート(以下、TBA−DMC触媒という。)を製造した。 本例中のポリオールXは、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合して得られた、数平均分子量(Mn)が1000のポリオールである。 まず、500mlのフラスコに、塩化亜鉛の10.2gと水10gからなる水溶液を入れ、この水溶液を40℃に保温しつつ、毎分300回転(300rpm)で撹拌しながら、ここへ4.2gのカリウムヘキサシアノコバルテート(K 3 [Co(CN)] 6 )と水75gからなる水溶液を30分間かけて滴下した。 滴下終了後、さらに混合物を30分撹拌した。 その後、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(以下、EGMTBEと略す。)の40g、tert−ブチルアルコール(以下、TBAと略す。)の40g、水の80g、およびポリオールXの0.6gからなる混合物を前記混合物中に添加し、40℃で30分、さらに60℃で60分間撹拌した。 得られた反応混合物を、直径125mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製のNo.5C)とを用いて加圧下(0.25MPa)で50分かけてろ過を行い、固体を分離した。 次に、この複合金属シアン化物錯体を含むケーキに18gのEGMTBE、18gのTBA、および84gの水からなる混合物を添加して30分撹拌した後、加圧ろ過(ろ過時間:15分)を行った。 ろ過により得られた複合金属シアン化物錯体を含むケーキに、さらに54gのEGMTBE、54gのTBA、および12gの水からなる混合物を添加して30分撹拌し、有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体を含むEGMTBE/TBAのスラリーを得た。 このスラリーをTBA−DMC触媒として用いた。 このスラリーを5gほどフラスコに秤り取り、窒素気流で概ね乾かした後、80℃で4時間減圧乾燥した。 得られた固体を秤量した結果、スラリー中に含まれる複合金属シアン化物錯体の濃度は4.70質量%であることがわかった。 (製造例1:シリル基含有重合体(S1−1)の製造) 撹拌機付きステンレス製10Lの耐圧反応器内に、開始剤として800gのポリオキシプロピレンジオール(水酸基換算Mw=1000)と、重合触媒としてのTBA−DMC触媒を投入した。 TBA−DMC触媒の使用量は、仕上がり質量に対して50ppmとした。 反応器内を窒素置換後、140℃に昇温し、撹拌下、80gのPOを反応器内に投入して反応させた。 これは最初に少量のPOを供給してTBA−DMC触媒を活性化させるための工程である。 次いで、反応器内の圧力が低下した後、撹拌下、7120gのPOを供給し、反応器内の温度を140℃、撹拌速度を毎分500回転(500rpm)に保ちながら、11時間撹拌して、重合反応を進行させた。 こうしてポリオールAを得た。 ポリオールAの平均水酸基価は11mgKOH/gであった。 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下ロートを備えた4口フラスコに、上記で得たポリオールAの761.6gと、イソシアネートシラン類としてTMSの31.8gを加え、ウレタン化触媒としてDBTDLを加えた。 DBTDLの使用量はポリオールAとTMSの合計量に対して50ppmに相当する量とした。 そして80℃まで徐々に昇温し、IR(赤外線吸収スペクトル)にてNCOのピークが消失するまで反応を行い、シリル基含有重合体(S1−1)を得た。 加水分解性シリル基導入割合は100%であった。 (製造例2:シリル基含有重合体(S1−2)の製造) 撹拌機付きステンレス製10Lの耐圧反応器内に、開始剤として800gのポリオキシプロピレントリオール(水酸基換算Mw=1500)と、重合触媒としてのTBA−DMC触媒を投入した。 TBA−DMC触媒の使用量は、仕上がり質量に対して50ppmとした。 反応器内を窒素置換後、140℃に昇温し、撹拌下、80gのPOを反応器内に投入して反応させた。 これは最初に少量のPOを供給してTBA−DMC触媒を活性化させるための工程である。 次いで、反応器内の圧力が低下した後、撹拌下、3813gのPOを供給し、反応器内の温度を140℃、撹拌速度を500rpmに保ちながら、11時間撹拌して、重合反応を進行させた。 室温に冷却した後、40質量%水酸化カリウム水溶液の40gを加え、500rpmの撹拌を継続しながら、100℃で2時間減圧脱水した。 その後120℃に昇温し、エチレンオキシドを徐々に導入した。 合計で640gのエチレンオキシドを6時間かけて反応させた後、冷却した。 酸性ピロリン酸を添加し中和塩を形成し、これをろ過により除去した。 このようにして得られたポリオールBの平均水酸基価は17mgKOH/gであった。 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下ロートを備えた4口フラスコに、上記で得たポリオールBの1000gと、イソシアネートシラン類としてTMSの63gを加え、ウレタン化触媒としてDBTDLを加えた。 DBTDLの使用量はポリオールBとTMSの合計量に対して50ppmに相当する量とした。 そして80℃まで徐々に昇温し、IRにてNCOのピークが消失するまで反応を行い、シリル基含有重合体(S1−2)を得た。 加水分解性シリル基導入割合は100%であった。 (製造例3:シリル基含有重合体(S2−1)の製造) プロピレングリコールにPOを開環重合して得られたMn=2000(平均水酸基価=56.1mgKOH/g)のポリオキシプロピレンジオールの359.4gと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の60.0gとを反応させてイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー(Mn:5,000)を製造した。 触媒としてDBTDLの0.01g(25ppm)を用いた。 イソシアネート指数は150であった。 製造例1と同様にして、得られたポリウレタンプレポリマーに3−アミノプロピルトリメトキシシランを反応させ、トリメトキシシリル基を有する重合体(S2−1)を得た。 加水分解性シリル基導入割合は100モル%であった。 重合体(S2−1)の粘度は150,000mPa・s/25℃であった。 また重合体(S2−1)における、MU/MSのモル比は3.0であった。 (硬化性組成物) (実施例1〜8および比較例1) 前記シリル基含有重合体(S1−1)の100質量部、触媒としてDBTDLの1質量部、水の0.03質量部、および溶剤としてトルエンの50質量部とメタノールの50質量部との混合溶媒を加えて充分に混合して硬化性組成物を得た。 (実施例11〜18および比較例11) 前記シリル基含有重合体(S1−2)の100質量部、触媒としてDBTDLの1質量部、水の0.03質量部、および溶剤としてトルエンの50質量部とメタノールの50質量部との混合溶媒を加えて充分に混合して硬化性組成物を得た。 (実施例21〜28および比較例21) 前記シリル基含有重合体(S2−1)の100質量部、触媒としてDBTDLの1質量部、水の0.03質量部、および溶剤としてトルエンの50質量部とメタノールの50質量部との混合溶媒を加えて充分に混合して硬化性組成物を得た。 <粘着積層体の製造> 得られた硬化性組成物を用いて粘着積層体を製造し、評価を行った。 厚さが25μmのPETフィルム(A4サイズ:29.7cm×21cm、東レ社製ポリエステルフィルム、ルミラーT60を裁断したもの)を基材として用いた。 この基材の一面に下記の易接着処理を行った。 次いで易接着処理を行った処理面に前記硬化性組成物をアプリケータを用いて塗工した。 比較例1、11および21は易接着処理を行なわず、基材の一面に直接前記硬化性組成物を塗工した。 硬化性組成物の塗工厚さは約15μmとなるように塗工し、110℃・2分間硬化、乾燥を行った。 これを23℃、湿度50%の条件で7日間養生して粘着積層体を得た。 <易接着処理> コロナ放電処理:東洋紡エステルフィルム E5107(東洋紡社製 厚さ25μm)を使用した。 プライマ1処理:接着剤用水酸基末端ウレタンプライマ(セメダイン社製、商品名MP2000)を下記の方法で塗工した。 プライマ2処理:コロネートL(日本ポリウレタン社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI、イソシアネート基含有量:13.5質量%、固形分:75質量%)を下記の方法で塗工した。 プライマ3処理:デュラネートP301−75E(旭化成社製、トリメチロールプロパンアダクト型HDI、イソシアネート基含有量:12.9質量%、固形分:75質量%)を下記の方法で塗工した。 プライマ4処理:KBM−603(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)を下記の方法で塗工した。 プライマ5処理:ポリエスターTP−235 S20TM(日本合成化学社製、溶剤型非晶質ポリエステル樹脂系プライマ)を下記の方法で塗工した。 プライマ6処理:No. 40(横浜ゴム工業社製、溶剤型合成ゴム系プライマ)を下記の方法で塗工した。 プライマ7処理:8UA−347(大成ファインケミカル社製、溶剤型アクリルウレタンカーボネート樹脂、ウレタン部/アクリル部比=2/8、水酸基価30)を下記の方法で塗工した。 [プライマの塗工方法] 表面処理をしていない上記PETフィルム(基材)の一面にプライマ1〜7をアプリケータを用いてそれぞれ塗布し、110℃で1分間乾燥した後、一週間室温で放置し養生を行なった。 プライマ5の場合には、プライマを塗布し110℃で1分間乾燥した後、養生を行わずに直ちに以下の評価を行った。 塗工厚さはいずれも約10μmとした。 いずれのプライマにおいても養生後に剥離、白濁などは見られなかった。 <剥離強度の評価> 粘着積層体を充分に室温に冷却し、表面処理をしていない厚さが25μmのPETフィルム(基材に用いたものと同じ材料)に、粘着積層体を貼着し、2kgのゴムロールで圧着した。 貼着後、表1〜6に示す所定時間室温に放置した後、JIS B 7721に規定する引張り試験機(オリエンテック社製、RTE−1210)を用い、剥離強度(180度ピール、引張り速度300mm/分)を測定した。 この値が小さいほど微粘着で剥がし易く、再剥離性に優れることを示す。 これらの結果を表1〜6に示す。 表に示した剥離強度の単位は、N/25mmである。 またSは投錨破壊が発生したことを示している。 すなわち糊残りが発生し、粘着体が破断したことを示している。 <剥離粘着力の測定> 粘着積層体を充分に室温に冷却し、23℃の環境で、厚さ1.5mmのブライトアニール処理したステンレス鋼板(SUS304(JIS))に、粘着積層体の試験片(幅:25mm)を貼着し、質量が2kgのゴムロールで圧着した。 貼着の30分後、引張り試験機(オリエンテック社製、RTE−1210)を用い、剥離強度(180度ピール、引張り速度300mm/分)を測定した。 こうして得られた貼着30分後の剥離強度の値を「剥離粘着力」とし、表1〜6に記載した。
表1、2の結果より、基材に易接着処理を施さなかった比較例1では投錨破壊が発生し、糊残りが生じた。 これに対し、易接着処理を行った実施例1〜8では、いずれの易接着処理においても投錨破壊が発生しておらず、0.1N/25mm前後で安定した剥離強度が得られた。 これは微粘着ではがしやすく、再剥離性に優れることを意味している。 さらに貼着した後の透明性も良好であった。 また上記の剥離試験の後に再度貼着を行ったが、貼着面に気泡が残ることなく良好な粘着性を示した。
表3、4の結果より、基材に易接着処理を施さなかった比較例11では投錨破壊が発生し、糊残りが生じた。 これに対し、易接着処理を行った実施例11〜18では、いずれの易接着処理においても投錨破壊が発生しておらず、0.1N/25mm前後で安定した剥離強度が得られた。 これは微粘着ではがしやすく、再剥離性に優れることを意味している。 さらに貼着した後の透明性も良好であった。 また上記の剥離試験の後に再度貼着を行ったが、貼着面に気泡が残ることなく良好な粘着性を示した。
表5、6の結果より、基材に易接着処理を施さなかった比較例21では投錨破壊が発生し、糊残りが生じた。 これに対し、易接着処理を行った実施例21〜28では、いずれの易接着処理においても投錨破壊が発生しておらず、0.2〜0.3N/25mm前後で安定した剥離強度が得られた。 これは微粘着ではがしやすく、再剥離性に優れることを意味している。 さらに貼着した後の透明性も良好であった。 また上記の剥離試験の後に再度貼着を行ったが、貼着面に気泡が残ることなく良好な粘着性を示した。 実施例1、11、21で得られた粘着シートについて、下記の方法で剥離帯電量、表面抵抗値および体積固有抵抗値を評価した。 その結果を表7に示す。 [剥離帯電量] メチルエチルケトンで洗浄し、乾燥させたガラス板に、粘着積層体を室温にて貼着し、2kgのゴムロールで圧着した。 30分後、高速剥離試験機(テスター産業社製、製品名:TE−701型)を用い、180度ピール、引張り速度30m/分の条件で粘着積層体を剥離した。 剥離直後の粘着積層体表面に、静電気測定装置(春日電機社製、静電気測定装置KSD−0103)を設置して帯電量(単位:V)を測定した。 [表面抵抗値] 粘着積層体の粘着面を用いて表面抵抗値(単位:Ω)を測定した。 測定は、高抵抗率計(三菱化学社製 ハイレスターUP(MCP−HT450)を使用し、表面抵抗モード、室温23℃、相対湿度65%で行った。この値が小さいほど帯電し難いことを示す。 [体積固有抵抗値] 粘着積層体の粘着面を用いて体積固有抵抗値(単位:Ω)を測定した。 測定は上記高抵抗率計を使用し、体積固有抵抗モード、室温23℃、相対湿度65%で行った。 この値が小さいほど帯電し難いことを示す。
表7の結果より、表面抵抗値は10 11 〜10 12 Ωという低い表面抵抗値であった。 特にオキシエチレン基を有している重合体(S1−2)を用いた実施例11では表面抵抗値は4×10 11 Ωと非常に低い値であった。 (実施例31〜35) 表面処理をしていない厚さが25μmのPETフィルムに、プライマ1(実施例31)、プライマ2(実施例32)、プライマ5(実施例33)、プライマ6(実施例34)およびプライマ7(実施例35)を下記の方法で塗工し、プライマの乾燥性、透明性、乾燥直後の耐メタノール性について下記の方法で評価を行った。 プライマ層の塗工厚さは約10μmとした。 その結果を表8に示す。 [乾燥性] プライマを塗工したPETフィルムを110℃に保持したオーブンに入れ加熱した。 1分後に取り出して、室温まで冷却した。 プライマを塗布した面を指で触って、タックの程度を評価した。 ○(良好):タックがなく、指で触った後の表面は平滑であった。 △(やや良):多少タックがあり、指で触った後の表面に僅かに指紋の跡が見られた。 ×(不良):タックがあり、指で触った後の表面に明瞭に指紋の跡が見られた。 [透明性] プライマを塗工したPETフィルムを110℃で1分加熱し、室温に冷却(室温に10分放置)後のPETフィルムの透明性を目視で評価した。 ○(良好):透明で濁りはまったく見られなかった。 △(やや良):概ね透明であるが、部分的に僅かに濁りが見られた。 ×(不良):明瞭な白濁部分が認められた。 [乾燥直後の耐メタノール性] プライマを塗工したPETフィルムを110℃で1分加熱し、室温に冷却(室温に10分放置)後、メタノールに1分間浸漬した。 メタノールで濡れた状態で、プライマ層の外観を目視で評価した。 ○(良好):プライマ層に剥離は見られず、曇りも見られず透明であった。 △(やや良):プライマ層に僅かな剥離が見られるか、または、部分的に僅かに濁りが見られた。 ×(不良):プライマ層に明瞭な剥離が見られるか、明瞭な白濁部分が認められた。
表8に示されるように、実施例31〜35のいずれも透明性は良好であった。 特にポリエステル樹脂系のプライマ5を用いた実施例33、合成ゴム系プライマのプライマ6を用いた実施例34およびアクリルウレタンカーボネート樹脂のプライマ7を用いた実施例35は、乾燥性および耐メタノール性においてウレタン系プライマやイソシアネート系プライマより優れていた。
本発明の粘着積層体は、ポリエステル系の基材層と粘着体層とを有し、粘着力が比較的低く、再剥離性に優れ、各種保護シートとして好適に利用でき、さらに、糊残りの発生が抑えられた粘着積層体であり、離型剤処理を必要としないため、シリコーン汚染を発生させないなど、半導体素子、液晶基板などの電子関連機器への適用が可能である。
なお、2008年10月8日に出願された日本特許出願2008−261780号、および2009年3月10日に出願された日本特許出願2009−057005号の明細書、特許請求の範囲、および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。 |