【0001】 本発明はコーティングに関し、特に、微生物種の付着を防止し、これによりカビ及び/または種々の形態の真菌の目に見える蓄積を減少させるかまたは全体的に除去するコーティングの能力を向上させるポリマー組成物に関する。 【0002】 本発明の目的に関して、微生物(microbe)とは、建築用コーティングの表面に付着できる任意の微生物からなると定義される。 微生物は2つの種類に分類することができる。 第一の種類は、コーティング表面上のカビの成長を通常引き起こす真菌からなる。 この種類のいくつかの例は、Aureobasidium、aspergillus、CladosporiumおよびPenicilliumを包含する。 他の種類は、藻類であり、その大部分は、Chroococcus属、Chlorococcuum属、Gloeocapsa属、Protococcus属およびTrentepohlia属に分類される。 細菌、例えば、Pseudomonas属の細菌もまた、「微生物」の定義に含まれ、微生物により引き起こされるコーティング表面の傷の形成に関与する一連の微生物の初期コロナイザー(initial colonizer)であることが多い。 【0003】 外観を向上させ、基体を環境、生物学的および機械的損傷から保護し、あるいは他の特定の機能を提供するためにポリマーコーティングが基体に適用される用途において、コーティングの有効寿命中はコーティングが清浄なままで、汚れ、カビ、及び他の汚染物質がない状態であるのが望ましい。 化学的または生物学的汚れによる、装飾もしくは保護コーティングの美的または機能的品質のいずれかの損失のために、早期または頻繁なメンテナンスまたは取り替えが必要になる。 たとえば、外装用ハウスコーティングのカビ汚れは満足できない薄汚い外観をもたらす。 カビの汚染は、今日の新規エネルギー節約エラストマールーフコーティングの太陽光反射能力を損なわせる。 コーティング表面上のカビの増殖は結局コーティング自体の保護機能を損なわせ、基体に対する構造的損傷につながる。 【0004】 微生物がコーティングの表面に付着し得るには様々な方法がある。 例えば、施用された瞬間から、コーティングは大気からの汚染にさらされる。 この汚染は、雨、空気中に浮遊する水滴、気流あるいは人、動物または他の物体との直接物理的接触によりコーティング表面に運ばれる埃およびちりからなる。 埃およびちりは、埃と共にコーティング表面上に堆積し得る種々の微生物胞子を運ぶことが知られている。 有機物または無機物のいずれにせよ、埃粒子はコーティング表面に水分を引き寄せる。 この水分は、微生物胞子が増殖して見苦しい真菌またはカビのコロニーになるのに好適な環境を提供する。 カビの成長につながるメカニズムにかかわらず、コーティングの装飾的、保護的特性を保持するために、長期間にわたって化学的及び生物学的汚染物質の両方の付着に対する耐性を提供するコーティングをデザインするのが望ましい。 【0005】 より低いVOCコーティング(さらに厳しい環境規制に応答)、より広範囲の用途(低周囲適用温度での許容されるフィルム形成/性能)およびより長い耐用年数(少ないメンテナンス/交換)に対する増大する工業的要求に応じるために、コーティングバインダーのTgを低くすることが有用である。 しかしながら、Tgを低下させることは、一般に微生物汚染に関連する問題を悪化させる。 これらの、より柔軟な低VOCコーティングに好適で、表面仕上げの必要とされる適用および性能特性を損なわない有効な微生物忌避技術は、建築用塗料産業の一般的な目標である。 【0006】 コーティングのカビによる破壊に関連する問題を取り扱い、これを防止する慣例は、J. W. Gillatt(JOCCA−Surface Coatings International 1991,74,6,197−203)により考察されている。 【0007】 次の節は、装飾および保護コーティングの防かび性に直接または間接的に影響を及ぼし得るコーティング特性のいくつかに焦点を当てる。 【0008】 微生物の胞子が硬質表面に付着することはより困難である。 ガラス転移温度(Tg)を上昇させること、コーティングを架橋させること、あるいはより硬質のポリマーもしくは添加剤をコーティング組成物中にブレンドすることを含むいくつかの手段により、コーティングをより硬質にすることができる。 しかしながら、これらの方法は、その実際の用途においてしばしば技術的難題をもたらす。 コーティングの硬度を増大させると、たとえば、フィルム形成が不十分になったり、許容できないフィルムのクラッキングが生じたり、あるいはクラックブリッジング(crack bridging)が不十分になる場合がある。 このような問題を克服するために、追加的な融合剤または可塑剤を追加することができるが、VOC要求および乾燥時間が犠牲になる。 架橋をコーティング組成物中に導入することにより、コーティングフィルムが非常にもろくなり得るか、あるいは複雑で費用のかかる二成分技術が必要となる。 さらに硬質のポリマーまたは添加剤をコーティング組成物中にブレンドする際、フィルム均質性および良好な外観を促進するために満足できる程度の適合性およびブレンド安定性を達成することが困難である場合がある。 ここでもVOCおよびフィルム形成性は悪影響を受け得る。 【0009】 コーティングの表面エネルギーは、その微生物抵抗性に影響を及ぼし得る。 低表面エネルギーフィルムまたは疎水性フィルムは、微生物汚染および増殖を促進し得る水をはじく。 一例として、フッ素および珪素誘導体をモノマーまたはポスト添加剤として組み入れることにより、表面エネルギーを有効に減少させ、さらに疎水性を増大させることもできる。 これらのモノマーをエマルジョンポリマー中に、目標とする特性の増強をもたらすために十分な量で組み入れることは、ポリマー生成物の費用を相当増大させ得る。 【0010】 フィルムの微生物汚染に対する耐性は、フィルム表面のなめらかさまたは粗さにより影響を受け得る。 微生物胞子および埃は、たとえば、コーティングの表面にある割れ目、穴、亀裂および裂け目中に永久的にトラップされるようになり得る。 広範囲の温度および湿度条件にわたって良好なフィルム形成性を有し、寸法的に一定しない基体、たとえば木について使用するために適当な伸長性を有するコーティングが、機械的なフィルムの破壊、たとえばひび割れを防止するために必要である。 典型的には、Tgまたは分子量のいずれかまたは両方を低下させることにより、フィルム形成要件を提供することができるが;これらの方法はいずれも、微生物汚染に対する抵抗性に悪影響を及ぼす可能性がある。 【0011】 光崩壊は、粘着性または柔軟な低分子量部分の形成を促進でき、従って微生物胞子の付着が促進される。 ポリマーおよび基体の両方の分解を防止するために、光活性添加剤、たとえばUV吸収剤および光安定剤がしばしば用いられる。 しかしながら、これらの種類の添加剤は、揮発または化学反応により経時的に失われ、従って長期間にわたる保護を提供しない。 【0012】 微生物汚れは、フィルムが可洗であるかまたは自浄性であり得るならば、無害にすることができる。 一旦微生物汚染が確立されると、除去することが困難になる。 フィルムを脱落または分離させることは、環境に基体を環境にさらすことにより結局基体を危険な状態にする。 【0013】 コーティング表面上の微生物成長の問題を解決するために提案された一つの方法は、米国特許第6,194,530号に記載されている。 この特許は、コーティング配合物において添加剤として抗微生物活性を有するある種のポリマーの使用を開示している。 ポリマーは、殺生物活性な部分として、4級アンモニウム基を有するビニルモノマーからなる。 分子は、非常に大きいが、Mwが20,000〜500,000のオーダーである。 微生物の攻撃に対して保護しなければならないコーティングの「活性な」領域はその表面であるので、これらの高分子量ポリマーは、その意図される機能を果たすために表面領域に容易に移動できないこともあり得る。 【0014】 【特許文献1】米国特許第6,194,530号明細書【非特許文献1】J. W. Gillatt著、JOCCA−SurfaceCoatings International、1991年、74、6、197〜203ページ【0015】 コーティング上の微生物汚れに対する耐性の特定の問題を扱うにあたり、取り組みの主な範囲はコーティングの表面である。 従って、必要なのは、所望の防汚コーティング特性を賦与するために液体コーティング配合物中に組み入れることができ、様々な組成物および非常に低Tgポリマーが必要とされる用途を含む最終用途にわたり有用な組成物である。 【0016】 本発明は、微生物汚染に対するコーティングの耐性を向上させる組成物を含む。 この組成物は、1〜50ナノメートル(「nm」)の平均粒子直径を有するポリマーナノ粒子(「PNP」)を含み、各PNPは1〜100重量%の少なくとも一つの多エチレン性不飽和モノマーからなる。 好ましくは、各PNPは直径が1〜30nmであり、最も好ましくは1〜10nmである。 【0017】 特定の理論に束縛されるのではないが、特定の組成またはペンダント官能基を有する本発明のPNPは、従来のポリマーラテックスに対してそのサイズが非常に小さく、表面積が大きいので、乾燥または硬化したコーティングの表面で所望の官能基の有効性を向上させる傾向にある。 PNPは、組成および官能基の選択に依存して、微生物の付着に対して向上された耐性を有するクリアで着色されたコーティングを製造するために、単独または他のラテックスバインダーと組み合わせて用いることができる。 PNPが使用され、コーティング組成物の表面特性を改質するが、それはたとえば表面硬度もしくは靱性を増大させ、表面分解を最小限に抑え、または含まれる粒状物質へのコーティングの親和力を減少させるために表面エネルギーを低下させること、あるいは洗浄可能または自己洗浄性コーティングを促進することによるものである。 【0018】 第二の態様において、コーティング組成物の表面硬度を増大させるために、配合物中の他のバインダーのガラス転移温度(Tg)よりも、少なくとも5℃、好ましくは10℃以上高いガラス転移温度を有するモノマー組成物からなるPNPがコーティング配合物中に存在する。 【0019】 第三の態様において、PNPは感光性部分で官能化することができる。 PNPは、少なくとも一つの感光性モノマーを含む。 感光性モノマーは、ポリマーコーティングの架橋を促進するラジカルまたはイオンを、UVへの露光により、発生させる光開始剤モノマーを含む。 UV吸収およびラジカル掃去(scavenging)感光性モノマーは、破壊的UV光またはフリーラジカルを中和する(または無効にする)ことにより、ポリマーコーティングをUV崩壊から保護する。 感光性モノマーは当該分野においてよく知られ、ビニル芳香族、たとえば、ビニルトルエン、ビニルベンゾフェノンおよびアクリルオキシベンゾフェノンを包含する。 適当な感光性モノマーは、米国特許第5,248,805号および第5,439,970号に開示されている。 PNP中に重合単位として含まれる感光性モノマーの量は、PNPの総重量基準で0.1〜90%、好ましくは0.5〜25%の範囲である。 【0020】 他の感光性官能基は、ビニルベンジルハライドとの反応により調製される置換ベンゾフェノンまたはアセトフェノンのモノエチレン性不飽和誘導体を包含し、これらはホモポリマーまたはコポリマーを形成する。 これらのモノエチレン性不飽和ビニルまたはビニリデンモノマーは、紫外線への露光に際して容易に架橋する。 【0021】 さらなる感光性官能基は、構造式IおよびIIの置換ベンゾフェノンのエチレン性不飽和誘導体を包含する。 【0022】 【化3】
および【化4】 【0023】
式中、Rは、水素、アルキルおよびアリール基からなる群から選択される基であり、R
1は水素およびメチル基からなる群から選択される基である。 これらの官能基のいくつかの例は、(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシ)プロピル オルト−ベンゾイル−ベンゾエート;(2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシ)プロポキシ パラ−ベンゾイルベンゼンおよび(2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシ)プロポキシ オルト−メチル−パラ−ベンゾイルベンゼンを包含する。 【0024】
太陽光線スペクトルの一部を吸収することのできる追加的な感光性モノマーが、共重合したエチレン性不飽和モノマーとして存在してもよい。 かかるモノマーは、アリルベンゾイルベンゾエートおよび、ペンダントのベンゾフェノン基を組み込む共重合可能なモノマーを含む。 好ましいものは、ビニルベンゼニルメチルベンゾイルベンゾエート、ヒドロキシメタクリルオキシプロピルメチルベンゾエートおよびヒドロキシメタクリルオキシプロポキシベンゾフェノンである。
【0025】
本発明の第四の態様は、ペンダントのまたは残留する紫外線(「UV」)もしくは酸化的に硬化可能な官能基もしくは部分を有するPNPを調製することを含む。 これは、組成物の重合中または重合後に特定の化合物を導入することにより達成することができる。 これらの部分をPNP中に組み入れるために用いられる化合物は、PNPの重量基準で、1〜90重量%、好ましくは2〜50重量%、より好ましくは2〜25重量%のレベルで存在する。
【0026】
重合中に組み入れるための好ましいUV硬化性化合物は、少なくとも2つの不飽和の部位を含む。 最も好ましいものは、不飽和の部位の反応性が同じではない化合物である。 これらの多官能性基の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸のアリル、メタリル、ビニル、クロチル−エステル;アリル、メタリルおよびクロチル−ビニルエーテルおよびチオエーテル;N−およびN,N−ジアリル−、クロチル−、O−アルキル−、アリール−、P−ビニル−、P−アリル−、P−クロチル−ならびにP−メタリル−ホスホネート;さらにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸(モノおよびジエステル)、フマル酸(モノおよびジエステル)およびイタコン酸(モノおよびジエステル)のシクロアルケニルエステルである。
【0027】
UVまたは空気硬化性ポリマーを調製するために使用することができる他のモノマーは、アクリルオキシメチル脂肪族化合物、リシノール酸およびひまし油の混合脂肪酸から作られるビニルモノマー、ひまし油およびリシノール酸メチルから作られるアクリルモノマーならびにひまし油から得られる様々なヒドロキシ酸誘導体のアクリレートエステルを包含する。 さらに、ひまし油またはレスケレラ油(lesquerella oil)から誘導されるヒドロキシオレフィン性化合物のアクリレートまたはメタクリレートエステルも有用である。
【0028】
後硬化性モノマーの他の種類は、非乾性または半乾性油のいずれかから誘導される。 非乾性油の例は、綿実油、ココナツ油、菜種油、ひまし油およびレスケレラ油を包含する。 半乾性油の例は、紅花油、ひまわり油、大豆油およびタバコタネ油(tobacco seed oil)を包含する。
【0029】
アセトアセテート含有モノマーは他の望ましい群である。 活性メチレンモノマーとして好ましいものは、アセトアセテート官能基を生じさせるエチレン性不飽和モノマーである。 アセトアセテート官能基の導入に有用なモノマーの例は、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、アセトアセトキシプロピルメタクリレート(AAPM)、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピルメタクリレートなどである。 一般に、任意の重合可能なヒドロキシ官能性モノマーは、ジケトンまたは他の適当なアセトアセチル化剤との反応により対応するアセトアセテートに転化することができる(たとえば、Comparison of Methods for the Preparation of Acetoacetylated Coating Resins,Witzeman,J.S.;Dell Nottingham,W.;Del Rector,F.J.Coatings Technology;第62巻、1990、101参照)。 アセトアセチル官能性ポリマーバインダーを、化学量論的な量より過剰のアンモニアまたは1級アミンで処理して、エナミンを形成し、これは紫外線光にさらされた場合に、同じアセトアセチル官能性ポリマーの未処理サンプルよりも迅速に反応し得る。
【0030】
残留不飽和または他の後架橋性官能基を含むPNPは、適当な相補的官能基がPNPおよび反応性官能基上に存在する場合、あらかじめ形成されたPNP組成物の後官能化により調製することができる。 一例として、カルボン酸官能化PNPは、特定の条件下でグリシジルメタクリレートと後反応することができ、後UV硬化に好適なペンダントのメタクリレート基を有するPNPを生じさせる。
【0031】
UVまたは空気硬化性PNPは、単独で用いられることができるか、または様々なポリマーマトリックス中にブレンドされることができる。 例えば、触媒、金属乾燥剤、UV吸収剤などを、産業において通常実施されるように、硬化を促進する程度に低レベルで添加することができる。 UV硬化性PNPは、中でも、架橋密度、硬度、表面エネルギーを改質するために、UV硬化性アクリル、ポリエステルまたはポリウレタンに添加することができる。 たとえば亜麻仁油(Linseed−oil)改質PNPが、コーティング配合物中にブレンドされ、その後のコーティングの空気硬化に際しての向上された微生物抵抗性を促進することができる。
【0032】
本発明の第五の態様は、PNPをフッ素または珪素部分のいずれかで官能化することを含む。 フッ素は、低い表面エネルギー、撥水性、および赤外反射を提供することが知られている。 フッ素化PNPは、組成物中、0.1〜70%、好ましくは1〜40%、最も好ましくは1〜20%のフッ素化モノマーを含む。 フッ素化PNPは、組成物中、1より多くのフッ素化モノマーを含み得る。 フッ素化PNPは組成物中、珪素、多価金属、光開始剤モノマー、疎水性不飽和モノマーまたはエチレン性不飽和モノマーも含み得る。 フッ素化モノマーとしては、これらに限定されないが、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フルオロケイヒ酸、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレートおよびビニル芳香族フルオロモノマーが挙げられる。
【0033】
珪素も、低い表面エネルギー、撥水性、防油性および赤外反射を提供することが知られている。 いくつかの珪素含有化合物は、架橋を促進し、これはさらに微生物汚染に対する耐性を向上させ得る。 珪素含有PNPは、組成物中0.1〜70%、好ましくは1〜40%、最も好ましくは1〜20%の珪素モノマーを含む。 珪素含有PNPは、組成物中1以上の珪素含有モノマーを有し得る。 珪素含有PNPは、組成物中フッ素、多価金属、光開始剤モノマー、疎水性不飽和モノマーまたはエチレン性不飽和モノマーも含み得る。 珪素モノマーは、これらに限定されないが、γ−プロピルトリ(C
1 −C 6 )アルコキシシリル(メタ)アクリレート、γ−プロピルトリ(C 1 −C 6 )アルキルシリル(メタ)アクリレート、γ−プロピルジ(C 1 −C 6 )アルコキシ(C 1 −C 6 )アルキルシリル(メタ)アクリレート、γ−プロピルジ(C 1 −C 6 )アルキル(C 1 −C 6 )アルコキシシリル(メタ)アクリレート、ビニルトリ(C 1 −C 6 )アルコキシシリル(メタ)アクリレート、ビニルジ(C 1 −C 6 )アルコキシ(C 1 −C 6 )アルキルシリル(メタ)アクリレート、およびジビニルシラン、トリビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルシラン、メチルトリビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、ジビニルフェニルシラン、ポリ(メチルビニルシロキサン)、ポリ(ビニルヒドロシロキサン)、ポリ(フェニルビニルシロキサン)およびその混合物を包含する。 【0034】
第六の態様において、より洗浄可能または自己洗浄性コーティングを促進するために、親水性部分をPNP中に組み入れることができる。 親水性化合物の組み入れは、さらにPNPの安定性を向上させることができる。 従って、これらの化合物は、本明細書において、親水性基、安定剤、安定化基または安定化モノマーと呼ぶ。 これらの安定化モノマーは、ポリマーの総重量に基づいて、PNP組成物の5〜90重量%、好ましくは8〜85重量%、最も好ましくは10〜75重量%を構成する。
【0035】
親水性基としては、これらに限定されないが、ヒドロキシ官能性モノマー、たとえば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、および高級アルキルヒドロキシモノマー;(メタ)アクリルアミド;カルボン酸モノマーおよびその塩、たとえば、アクリル酸およびメタクリル酸;イオウの酸モノマーおよびその塩、たとえば、ビニルスルホン酸ナトリウム、アクリルアミドプロピルスルホネート、スルホエチルメタクリレート、およびスチレンスルホン酸ナトリウム;亜リン酸モノマーおよびその塩、たとえば、ホスホエチルメタクリレート;ポリ−アルキレンオキサイドモノマー、たとえばポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;重合可能な界面活性剤、たとえば第一工業製薬株式会社から得られるHitenol(登録商標)BC、およびCognisから得られるTREM LF−40;エレクトロステリックモノマー(electrosteric monomer)、たとえば、米国特許第5,710,227号に開示されている末端不飽和酸含有マクロモノマー;アミンモノマー(たとえば、DMAEMAおよびDMAPMAM);両性モノマー;ならびに界面活性剤モノマーが挙げられる。 反応性イオン化可能な酸基、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸のダイマー、ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、ホスホノエチルメタクリレート(PEM)、およびスルホノエチルメタクリレート(SEM)も含まれる。
【0036】
ポリエチレングリコール基を有するPNPの形成は、PNP調製のフリーラジカル重合部分の全体または一部において、重合可能なポリエチレングリコールモノマーを導入することにより達成することができる。 本発明において有用な重合可能なポリエチレングリコールモノマーの好ましい基は以下の式を含む。
【0037】
【化5】
【0038】
式中R
1およびR 2は好ましくはHまたはCH 3であり、xは好ましくは4〜100であり、より好ましくは4〜40である。 重合可能な基は、(メタ)アクリレートに限定される必要はなく、フリーラジカルプロセスにより重合に付される他のエチレン性不飽和基を含んでもよい。 これらの基は、ビニル、スチレン性、フマル性、イタコン性などを含む可能性がある。 不飽和基の選択は、PNPを形成するために用いられる他のエチレン性不飽和モノマーに対するその反応性により影響を受け得る。 別法として、R 2はエチレン性不飽和を含む基であってもよい。 【0039】
親水性基は、後官能化法によりPNP中に組み入れることができる。 第一の反応可能な基を有するモノマー、共反応性モノマーは、PNP調製のフリーラジカル重合部分の間にPNP中に組み入れられる。 いくつかの点で、第二の反応可能な基を有する改質化合物、共反応性安定剤を、共反応性モノマーと組み合わせて、安定化基をPNPとしっかりと結合させる。
【0040】
共反応性親水性安定剤中、第二の相補的な基に対して化学量論的に過剰の第一の相補反応可能な基が存在し得る。 本発明のこの態様において、化学量論的に当量の相補反応可能な基がPNP中に存在する共反応性安定剤の重量は、好ましくはポリマーの総重量基準で、PNP組成物の0.5重量%以上を構成する。 第一の反応可能な基に対して化学量論的に過剰の、第二の反応可能な基を含む共反応性安定剤が存在し得る。 第二の反応可能な基を含む共反応性安定剤は、塗料配合物中のPNPと他のポリマーにおける第一の反応可能な基の合計モル当量に基づいて、0.01〜約10モル当量のレベルでコーティング配合物中に存在する。 より好ましくは、改質化合物は、0.1〜1.0モル当量のレベルで存在する。
【0041】
相補反応可能な基により導入される安定化モノマーおよび安定化基は、PNP組成物中、単独で、または互いを組み合わせて存在し得る。
【0042】
さらなる親水性基は、Akzo Chemicals Inc. により供給されるEthomeen(登録商標)0/25の4級塩を含む両親媒性化合物から誘導されることができる。 この塩は、式C
18 H 35 (CH 3 )N(CH 2 CH 2 O) x H(CH 2 CH 2 O) y H(I) (式中、x+y=15である)を有し、分子量は約942であるポリエトキシル化4級アンモニウム塩である。 もう一つの有用な両親媒性化合物は、Union
Carbide Companyにより供給される、式:
t−C
12−14 NH(CH 2 CH 2 O) 15 H を有するポリエトキシル化アミンであるTriton(登録商標)RW−150である。 好ましい両親媒性化合物は、式:
C
18 H 37 N(CH 2 CH 2 O) x H(CH 2 CH 2 O) y H (x+y=15)を有し、分子量が約929であるポリエトキシル化3級アミン(Akzo Chemical Inc.により供給されるEthomeen(登録商標)18/25)である。 アミンは、第一の反応可能な基として酸を含むPNPと組み合わせられ、反応される第二の反応可能な基である。
【0043】
相補反応可能な基が共有結合した好ましい対は、アセトアセテート含有PNPと反応したJEFFAMINE(登録商標)ED−600(Texaco Chemical Companyにより供給)改質化合物である。
【0044】
相補反応可能な基が共有結合した好ましい対は、アセトアセテート含有ラテックスと反応したJEFFAMINE(登録商標)ED−600(Texaco Chemical Companyにより供給)改質化合物である(実施例13参照)。 JEFFAMINE(登録商標)ED−600は、主にポリエチレンオキサイド主鎖ベースのポリエーテルジアミンである。 アミン(JEFFAMINE(登録商標)ED−600)は、第二の反応可能な基であり、これを第一の反応可能な基としてアセトアセテートを含有するPNPと反応させる。
【0045】
これらのイオンまたは共有結合は、PNP調製のフリーラジカル重合部分の前、途中、または後に相補反応可能な基を含む化合物の組み合わせにより形成されることができる。 PNP調製のフリーラジカル重合部分の前に相補反応可能な基を含む化合物の組み合わせの例は、PNP調製のフリーラジカル重合部分が起こる反応装置への導入前の任意の時点でのAAEMとEthomeen(登録商標)18/25の組み合わせである。 PNP調製のフリーラジカル重合部分中の相補反応可能な基を含む化合物の組み合わせの例は、AAEMが一つのエチレン性不飽和モノマーであるPNP調製のフリーラジカル重合部分が進行する反応装置へのEthomeen(登録商標)18/25の導入である。 相補性反応可能な基を含む化合物の組み合わせもPNP調製のフリーラジカル重合部分が完了した後の任意の時間で進行することができ、この工程を以下PNPの後官能化(post−functionalization)と呼ぶ。
【0046】
PNPが別のポリマーと組み合わせてコーティング配合物において用いられる場合、PNPの後官能化は、PNPと他のポリマーとの組み合わせの前または後に進行し得る。 PNPの後官能化は、配合物およびコーティング組成物の使用の任意の時点であって、基体への施用以前の時点で同様に進行する。 任意に、PNPと組み合わせられるポリマーは共反応性安定剤中の基に対して相補的に反応可能な基を含んでもよい。
【0047】
デンプン、糖、ヒドロキシエチルセルロースおよび他の水溶性セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、ならびに他のコロイド状安定剤の組み込みが、PNP合成の全体またはフリーラジカル重合部分の一部の間に存在する場合PNP中にグラフトできる。 これらの物質はまた、PNP調製のフリーラジカル重合部分の間にPNPに導入される相補反応可能な基と反応する官能基を含むように改質されることができる。 使用されるならば、これらの物質は好ましくはポリマーの総重量基準で少なくとも1重量%のPNP組成物を含む。
【0048】
本発明の前述の態様は、所望により独立して実施してもよいし、あるいは組み合わせてもよく、微生物汚染に対する最適の耐性を有するコーティング配合物が得られる。
【0049】
ポリマーPNP改質コーティングは追加の成分、たとえば、増粘剤、レオロジー改良剤、界面活性剤、顔料、艶消し助剤、ワックス、スリップ助剤、融合剤および/または可塑剤、保湿剤、粘着剤、湿潤剤、消泡剤、着色剤、および酸化防止剤を含んでもよく、かかる物質は水性塗料およびコーティングの典型的な成分である。 コーティング組成物はさらに、架橋剤、たとえば、ポリアジリジン、ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、ポリエポキシド、ポリアミノプラスト、ポリアルコキシシラン、ポリオキサゾリジン、ポリアミンおよび多価金属化合物を含むことができ、いったん基体に施用され硬化した水性コーティングの微生物汚染に対する耐性を向上させる。
【0050】
本発明の水性組成物は、1〜50ナノメートル(nm)の範囲の平均直径を有するポリマー粒子の水性分散液を含み、該粒子は重合単位として、少なくとも一つの多エチレン性不飽和モノマーおよび少なくとも一つのエチレン性不飽和水溶性モノマーを含む。 本明細書において用いる場合、「分散液」なる用語は、第一相が第二相中に分散し、第二相が連続な媒体である、少なくとも2つの異なる相を含む物理状態を意味する。 本明細書において「水性」とは、水性媒体の重量基準で50〜100重量%が水である媒体を意味する。
【0051】
本明細書においてポリマーナノ粒子(「PNP」)と称するポリマー粒子は、付加重合体であり、これは重合単位として少なくとも一つの多エチレン性不飽和モノマーおよび少なくとも一つのエチレン性不飽和水溶性モノマーを含む。 本発明において有用な好適な多エチレン性不飽和モノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルピリジン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリビニルシクロヘキサン、アリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、たとえば、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジビニルシラン、トリビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルシラン、メチルトリビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、ジビニルフェニルシラン、トリビニルフェニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、テトラビニルシラン、ジメチルビニルジシロキサン、ポリ(メチルビニルシロキサン)、ポリ(ビニルヒドロシロキサン)、ポリ(フェニルビニルシロキサン)、およびこれらの混合物などのジ−、トリ−、テトラ−、あるいはより高次の多官能性エチレン性不飽和モノマーを包含する。 用語「(メタ)アクリル」はアクリルとメタクリルの両方を包含し、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を包含する。 同様に、用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドとメタクリルアミドの両方を包含する。 「アルキル」は、直鎖、分岐および環状アルキル基を包含する。
【0052】
典型的には、PNPは、PNPの重量基準で少なくとも1重量%の少なくとも一つの重合された多エチレン性不飽和モノマーを含む。 PNPの重量基準で99.5重量%以下の重合された多エチレン性不飽和モノマーが本発明の粒子において有効に用いられる。 重合された多エチレン性不飽和モノマーの量は、PNPの重量基準で1重量%〜80重量%であるのが好ましく、より好ましくは1重量%〜60重量%、最も好ましくは1重量%〜25重量%である。
【0053】
PNPはさらに、重合単位として、少なくとも一つの水溶性モノマーを含む。 本明細書において「水溶性モノマー」なる用語は、25℃の温度で、少なくとも7重量%、好ましくは少なくとも9重量%、最も好ましくは少なくとも12重量%の水中への溶解性を有するモノマーを意味する。 モノマーの水溶性のデータは、たとえば、「Polymer Handbook」(第2版、J.Brandrup、E.H.Immergut編、John Wiley & Sons、New York)および「Merck Index」(第11版、Merck&Co,Inc.,Rahway,New Jersey)に見られる。 水溶性モノマーの例は、エチレン性不飽和イオン性モノマーおよびエチレン性不飽和水溶性非イオン性モノマーを包含する。 典型的には、重合した水溶性モノマーの量は、PNPの重量基準で少なくとも0.5重量%である。 PNPの重量基準で99重量%以下の重合した水溶性モノマーを本発明の粒子において有効に用いることができる。
【0054】
本明細書において「イオン性モノマー」と呼ばれるエチレン性不飽和イオン性モノマーは、PNPが分散されている水性媒体中でイオン電荷を有することができるモノマーである。 好適なイオン性モノマーは、たとえば、酸含有モノマー、塩基含有モノマー、両性モノマー;四級化窒素含有モノマー、および引き続いてイオン性モノマーを形成することができる他のモノマー、たとえば、酸−塩基反応により中和されて、イオン性モノマーを形成することができるモノマーを包含する。 好適な酸基としては、カルボン酸基および強酸基、たとえば、リン含有酸およびイオウ含有酸が挙げられる。 好適な塩基基としては、アミンが挙げられる。 PNPの重量に基づいた重合されたイオン性モノマーの量は、0.5〜99重量%の範囲であるのが好ましく、より好ましくは1〜50重量%の範囲であり、さらにより好ましくは2〜40重量%であり、そして最も好ましくは3〜25重量%である。
【0055】
好適なカルボン酸含有モノマーとしては、カルボン酸モノマー、たとえば、(メタ)アクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、およびクロトン酸;ジカルボン酸モノマー、たとえば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびシトラコン酸;ならびにジカルボン酸の半エステルであるモノマー、たとえば、1個のカルボン酸官能基および1個のC
1−6エステルを含むモノマーが挙げられる。 好ましいものは、アクリル酸およびメタクリル酸である。 好適な強酸モノマーとしては、イオウの酸モノマー、たとえば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフィン酸、スチレンスルフィン酸、およびビニルスルフィン酸;ならびにリン含有酸モノマー、たとえば、2−ホスホエチル(メタ)アクリレート、ビニルリン酸、およびビニルホスフィン酸が挙げられる。 他の酸モノマーとしては、米国特許第5,710,227号に開示されている末端不飽和酸含有マクロモノマーを含む。 リン含有酸モノマーはある種の基体(たとえば、金属)に対して向上した接着性を提供できるので、望ましい。 【0056】
好適な塩基含有モノマーは、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p−アミノスチレン、N,N−シクロヘキシルアリルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミン、N−エチルジメチルアリルアミン、クロチルアミン、およびN−エチルメタリルアミンを含む、アミン官能基を有するモノマー;2−ビニルピリジンおよび4−ビニルピリジンを含む、ピリジン官能基を有するモノマー;ビニルピペリジンをはじめとする、ピペリジン官能基を有するモノマー;ならびにビニルイミダゾールを含む、イミダゾール官能基を有するモノマーを包含する。 他の好適な塩基含有モノマーは、オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレート、ビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、置換ジアリルアミン、2−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリルクロライドなどを包含する。
【0057】
好適な両性モノマーは、N−ビニルイミダゾリウムスルホネート分子内塩およびN,N−ジメチル−N−(3−メタクリルアミドプロピル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインを包含する。
【0058】
引き続いてこの官能基を酸あるいは塩基に形成する好適な官能性モノマーは、グリシジル(メタ)アクリレートおよびアリルグリシジルエーテルなど、エポキシド官能基;無水マレイン酸など、アンハイドライド;エステル;およびハライド:を含有するモノマーを包含する。 好適なハライド含有官能性モノマーは、ビニル芳香族ハライドおよびハロ−アルキル(メタ)アクリレートを包含する。 好適なビニル芳香族ハライドは、ビニルベンジルクロライドおよびビニルベンジルブロマイドを包含する。 他の好適な官能性モノマーは、アリルクロライド、アリルブロマイド、および(メタ)アクリル酸クロライドを包含する。 好適なハロ−アルキル(メタ)アクリレートは、クロロメチル(メタ)アクリレートを包含する。 引き続いて官能基を非イオン性水溶性基に形成する好適な官能性モノマーは、酢酸ビニルを包含する。 重合した酢酸ビニルの加水分解によりPNPにヒドロキシル基が賦与される。
【0059】
水溶性モノマーでもある多エチレン性不飽和モノマーは、別法として、PNPを調製するために用いられる。 かかる態様において、これらのモノマーは、本発明の目的に関して、多エチレン性不飽和モノマーおよび水溶性モノマーの両方として分類される。 水溶性、多エチレン性不飽和モノマーの例は、ホスホジ(エチルメタクリレート)である。
【0060】
エチレン性不飽和水溶性非イオン性モノマーは、本明細書において「水溶性非イオン性モノマー」と呼ばれる。 水溶性非イオン性モノマーの例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のポリ(アルキレンオキサイド)エステル、たとえば、ポリ(エチレンオキサイド)
20メタクリレートおよびポリ(プロピレンオキサイド) 150アクリレート;アクリルアミド;およびメタクリルアミドを包含する。 PNPの重量に基づいた重合した水溶性非イオン性モノマーの量は、0.5〜99重量%の範囲であるのが好ましく、より好ましくは、20〜90重量%の範囲であり、より一層好ましくは30〜80重量%であり、そして最も好ましくは40〜70重量%である。 PNPが重合単位としてイオン性モノマーおよび非イオン性水溶性モノマーを含む場合、重合した非イオン性水溶性モノマーがより少ないレベルであることが好ましい。 【0061】
PNPは任意に重合単位として、多エチレン性不飽和モノマーでなく、水溶性モノマーでもない1以上の第三のモノマーを含んでもよい。 好適な第三のモノマーは、C
1 −C 24アルキル(メタ)アクリレート、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、およびノナデシル(メタ)アクリレート、およびその混合物を包含する。 他の好適な第三のモノマーは、酢酸ビニル;ビニルバーサテート;ジイソブチレン;ウレイド含有モノマー、たとえば、N−(エチレンウレイドエチル)−4−ペンテンアミド、N−(エチレンチオウレイド−エチル)−10−ウンデセンアミド、ブチルエチレンウレイド−エチルフマレート、メチルエチレンウレイド−エチルフマレート、ベンジルN−(エチレンウレイド−エチル)フマレート、およびベンジルN−(エチレンウレイド−エチル)マレアメート;ビニル芳香族モノマー、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルキシレン、およびノニルフェノキシプロペニルポリエトキシル化アルコールを包含する。 ビニル芳香族モノマーは、その対応する置換された対応物、たとえばハロゲン化誘導体、すなわち、たとえば、フッ素、塩素または臭素をはじめとするハロゲン基の1以上を有するもの;およびニトロ、シアノ、(C 1 −C 10 )アルコキシ、ハロ(C 1 −C 10 )アルキル、(C 1 −C 10 )アルコキシ、カルボキシなどを含むものも包含する。 【0062】
PNPは1〜50nmの範囲の平均直径を有し、好ましくは1〜40nmの範囲、より好ましくは1〜30nm、さらにより好ましくは1〜25nm、さらに一層好ましくは1〜20nm、そして最も好ましくは1〜10nmの範囲である。 PNPが少なくとも1.5nm、好ましくは少なくとも2nmの平均粒子直径を有するのがさらに通常である。 PNPの粒子サイズ(平均粒子直径)を測定する一方法は、CONTIN法などのラプラス変換法を使用して相関関数を流体力学的なサイズに変換することができる標準的な動的光散乱法を用いることによる。
【0063】
典型的には、重合単位として10重量%未満の多エチレン性不飽和モノマーを含むPNPは、変調DSC測定法により測定すると、重合された多エチレン性不飽和モノマーの非存在下で組成物について−90℃〜170℃のガラス転移温度を有する。 重合単位として少なくとも50重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含むPNPは、少なくとも50℃のガラス転移温度を有すると考えられる。
【0064】
本発明のPNPは、典型的には、5,000〜1,000,000の範囲の、好ましくは10,000〜500,000の範囲の、より好ましくは15,000〜100,000の範囲の「見掛けの重量平均分子量」を有する。 本明細書で使用される、「見掛けの重量平均分子量」は、たとえば40℃でTHF溶媒、3Plgel(商標)カラム(Polymer Labs、Amherst、MA)、100オングストローム(10nm)、10
3オングストローム(100nm)、10 4オングストローム(1ミクロン)、長さ30cm、内径(ID)7.8mm、1ミリリットル/分、注入容積100マイクロリットル(Polymer LabsのCALIBRE(商標)ソフトウェアを用いて狭ポリスチレン標準により較正)を用いた標準的ゲル透過クロマトグラフィー法を用いたこのPNP粒子のサイズを反映する。 【0065】
PNPは任意に、適当な親水性を有することにより特徴づけられ、これによりPNPは水性媒体中に分散されることを可能にする。 PNPの親水性を特徴づける一方法は、Hanschパラメータを計算することである。 Hanschパラメータは、基寄与(group contribution)法を用いて計算される。 ポリマーを形成するモノマー単位は、疎水性寄与をし、ポリマーの相対的疎水性は、ポリマー中のモノマーの重量平均基準で計算される。 HanschおよびFujita、J. Amer. Chem. Soc. 、86、1616−1626(1964);H. Kubinyi、Methods and Principles of Medicinal Chemistry、第1巻、R. Mannholdら編、VCH、Weinheim(1993);C. HanschおよびA. Leo、Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology、Wiley、New York(1979);およびC. Hansch、P. Maloney、T. Fujita、およびR. Muir、Nature、194、178−180(1962)。
【0066】
いくつかのモノマーについての疎水性寄与値を表1に記載する。
【0067】
【表1】
【0068】
好ましいPNPは−2.5〜4、好ましくは−1〜3の範囲のHanschパラメータを有する。
【0069】
PNPは任意にこれらの基またはその前駆体基を含むモノマーの重合により得られる他の官能基を含んでもよい。 官能基は、PNPのイオン性基を適当な化合物と反応させることにより任意にPNPと結合させてもよい。 たとえば、カルボン酸基を含むPNPは、カルボン酸基を適当なアルコールと反応させることにより、キャップされたポリアルキレンオキサイドなどのペンダント親水性基を含むように改質される。 別法として、官能基を非ラジカル反応によりPNPに付着させ、その結果、米国特許第5,270,380号に記載されているように該基を含む改質化合物とPNPに共有結合する相補反応可能な基との間にイオン結合または共有結合が形成される。
【0070】
PNPおよび改質化合物における相補反応可能な基はイオン結合または共有結合を提供する。 相補的なイオン結合は、酸−塩基相互作用ならびに負および正に荷電した原子のイオン対結合を包含する。 相補反応可能な基による共有結合は、たとえば:(a)アセトアセテート−アルデヒド;(b)アセトアセテート−アミン;(c)アミン−アルデヒド;(d)アミン−無水物;(e)アミン−イソシアネート;(f)アミン−エポキシ;(g)アルデヒド−ヒドラジド;(i)酸−エポキシ;(j)酸−カルボジイミド;(k)酸−クロロメチルエステル;(j)酸−クロロメチルアミン;(m)酸−無水物;(n)酸−アジリジン;(o)エポキシ−メルカプタン;および(p)イソシアネート−アルコールを包含する。 各対における第一または第二の反応可能な基は、PNPまたは、別法として改質化合物中に存在する。
【0071】
水性媒体中に分散されたPNPを含む水性組成物を調製するための好適な方法は、少なくとも1種の溶媒中に分散されたPNPを含む非水性PNP分散液を調製する工程;および非水性PNP分散液を水性媒体と組み合わせる工程を含む。 本明細書において「非水性」とは、非水性媒体の重量基準で0〜50重量%未満の水を含む媒体を意味する。 重合単位としてイオン性モノマーを含むPNPを含む水性組成物は、水性媒体と組み合わせる際、またはその前後に、任意に部分的または完全に中和してもよい。
【0072】
非水性PNP分散液を調製するための好適な重合プロセスは、少なくとも一つの多エチレン性不飽和モノマー、少なくとも一つの水溶性モノマー、および任意に少なくとも一つの第三モノマーのフリーラジカル溶液重合である。 「溶液重合」とは、このポリマーに対する適当な溶媒中でのフリーラジカル付加重合を本明細書では意味する。 「ポリマーの適当な溶媒」とは、PNPに実質的に類似の重合されたモノマー単位を有する直鎖ランダム(コ)ポリマーがこの溶媒中に可溶性であることを本明細書では意味する。 適当な溶媒または溶媒の混合物を選択するための他の方法は、溶解度パラメータ分析の使用に基づく。 かかる方法に従って、PNPと溶媒の溶解パラメータ、たとえば、デルタd、デルタp、デルタhおよびデルタvのファンクレベレン(Van Krevelen)パラメータを実質的にマッチさせることにより、溶媒の適性を決定する。 たとえば、Van Krevelenら、「ポリマーの特性。それらの化学構造による評価および相関性(Properties of Polymers.Their Estimation and Correlation with ChemicalStructure)」、Elsevier Scientific Publishing Co. ,1976;Olabisiら、「ポリマー−ポリマー混和性(Polymer−Polymer Miscibility)」、Academic Press、NY、1979;Colemanら、「具体的な相互作用およびポリマーブレンドの混和性(Specific Interactions and the Miscibility of Polymer Blends)」、Technomic、1991;およびA. F. M. Barton、「溶解パラメータおよび他の粘着パラメータのCRCハンドブック(CRC Handbook of Solubility Parametersand Other Cohesion Parameters)」、第2版、CRC Press、1991参照。 デルタdは分散性相互作用の目安であり、デルタpは極性相互作用の目安であり、デルタhは水素結合相互作用の目安であり、そしてデルタvは分散性および極性両者の相互作用の目安である。 かかる溶解度パラメータは別法として、基寄与(group contribution)法などにより計算するか、あるいは実験的に求めることができ、これは当該分野で公知である。 好ましい溶媒は、ポリマーのデルタvパラメータの5(ジュール/cm
3 ) 1/2以内、好ましくは1(ジュール/cm 3 ) 1/2以内のデルタvパラメータを有する。 重合に適当な溶媒は、有機溶媒、たとえば、炭化水素;アルカン;ハロ炭化水素;塩素化、フッ素化、および臭素化炭化水素;芳香族炭化水素;エーテル;ケトン;エステル;アルコール;およびその混合物を包含する。 特に好適な溶媒は、PNPの組成に応じて、ドデカン、メシチレン、キシレン、ジフェニルエーテル、ガンマ−ブチロラクトン、酢酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、超臨界CO 2 、カプロラクトン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびアルキル−アルコール、たとえば、イソプロパノール、デカノール、およびt−ブタノール;および超臨界二酸化炭素を包含する。 【0073】
最初に、溶媒、あるいは溶媒とモノマーの一部との混合物を反応容器に充填することにより、非水性PNP分散液を調製する。 モノマー装填物は典型的にはモノマー、開始剤、および連鎖移動剤から構成される。 典型的には、開始温度は55℃〜125℃の範囲内であるが、当該分野で公知の適当な低温または高温開始剤を用いて、より低いかまたはより高い開始温度も可能である。 ヒール装填物が重合を開始するのに十分な温度に達した後、モノマー装填物またはモノマー装填物の残りを反応容器に添加する。 より短時間およびより長時間のどちらも想定されるが、このモノマー装填時間は、典型的には15分〜4時間の範囲内にある。 モノマー装填の間、反応温度を変えることは可能であるが、反応温度は典型的には一定に保たれる。 モノマー混合物添加を完結した後、溶媒中の追加的な開始剤を反応に装填し、および/または反応混合物を一時保持することができる。
【0074】
PNP粒子サイズおよび分布の制御は、溶媒の選択、開始剤の選択、合計固形分レベル、開始剤レベル、多官能性モノマーの種類および量、イオン性モノマーの種類および量、連鎖移動剤の種類および量、ならびに反応条件の選択などの1以上の方法により達成される。
【0075】
本発明のフリーラジカル重合において有用な開始剤は、たとえば、1以上の:パーオキシエステル、アルキルハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、アゾ開始剤、過硫酸塩、レドックス開始剤などの一つあるいはそれ以上を包含する。 使用されるフリーラジカル開始剤の量は、典型的には全モノマーの重量基準で0.05〜10重量%である。 本発明において有用なPNPの重合の程度を制御するために、任意に連鎖移動剤を使用してもよい。 好適な連鎖移動剤は、たとえば:ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;トルエンなどの活性化された水素を有する芳香族炭化水素;およびブロモトリクロロエタンなどのアルキルハライドを包含する。
【0076】
本発明の水性組成物を調製するための一方法において、PNPの重合したイオン性モノマー単位の少なくとも一部は、少なくとも一つの中和剤で中和されて、少なくとも部分的に中和された非水性PNP分散液が形成される。 PNPの重合されたイオン性モノマー単位は様々な方法で中和することができる。 重合されたイオン性モノマー単位が酸性である場合、中和剤は典型的には塩基である。 同様に、重合されたイオン性モノマー単位が塩基性である場合、中和剤は典型的には酸である。 好適な塩基は、無機および有機塩基を包含する。 好適な無機塩基は、最大範囲のアルカリまたはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩および酢酸塩基を包含する。 好適な有機塩基は、アンモニア、1級/2級/3級アミン、ジアミン、およびトリアミンを包含する。 好ましい塩基性中和剤は、水酸化ナトリウム、および水酸化アンモニウムを包含する。 適当な酸は、酢酸などのカルボン酸;ジカルボン酸;(ジ)カルボン/ヒドロキシル酸;安息香酸などの芳香族酸;およびホウ酸、炭酸、クエン酸、ヨウ素酸、亜硝酸、硝酸、過ヨウ素酸、リン酸、亜リン酸、硫酸、亜硫酸、および塩酸などの種々の他の酸を包含する。 前記範疇の塩基および酸のいずれも限定されるものではない。
【0077】
非水性PNP分散液を中和するために必要な中和剤の量は、典型的には、PNPの重合したイオン性モノマー単位に対する中和剤のモル基準で決められる。 特定の理論に拘束されるのではないが、PNP組成と性質が変わるに従ってPNPを安定化する(すなわち、非水性から水性への媒体の転換時に粒径を維持する)ために必要とされる重合したイオン性モノマー単位の量(すなわち、投入レベル)は変わる。 PNPの疎水性、Tg、架橋レベル、およびこの中和剤から得られる対イオンのタイプは重要な変数であると考えられる。 安定な水性PNP分散液(すなわち、このPNPの凝集が最少化されている)を提供するためには、この重合したイオン性モノマー単位は、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、そして最も好ましくは少なくとも90%中和される。
【0078】
このPNPの中和は、別法として、様々な方法で行われる。 一つの方法においては、非水性PNP分散液を、撹拌しながら中和剤を含む溶液に添加する。 好ましくは、中和剤は、非水性PNP分散液を撹拌しながら時間をかけて水性溶液に添加されて、少なくとも部分的に中和された非水性PNP分散液を得る。
【0079】
分散されたPNPを含む水性組成物を調製する一方法において、少なくとも部分的に中和された非水性PNP分散液を水性媒体と組み合わせる。 水性媒体は任意にPNPを中和するための中和剤を含んでもよく、この場合において、非水性PNP分散液は、同時に中和され、水性媒体と組み合わせることができる。 水性媒体は、任意に界面活性剤を含んでもよく、これはPNPの安定性を変更することができるか、または結果として得られる水性PNP分散液の他の性質、たとえばその表面張力を変更することができる。
【0080】
部分的に中和された非水性PNP分散液および水性媒体の混合の順序は重要ではない。 混合に好適な種々の方法および装置は、「The Chemical Engineer's Handbook」、5th Edition,Perry and Chilton,Eds. ,McGraw−Hill、Ch. 21,1973で記述されている。 通常、この水性媒体を連続して撹拌し、その間にこの部分的に中和された非水性PNP分散液を添加して、この溶媒が水性媒体と完全に混合されることを確保しながら、このPNPの凝集を最少化する。
【0081】
水性組成物中のPNPの好適な重量百分率は、水性組成物の総重量基準で典型的には1〜90重量%、より典型的には2〜75重量%、さらにより典型的には4〜65重量%、さらに一層典型的には8〜55重量%、そして最も典型的には10〜45重量%である。
【0082】
本発明の水性組成物の調製は界面活性剤の使用を必要とせず、非水性PNP分散液は界面活性剤を実質的に含まないのが通常であるが、界面活性剤を任意に包含してもよい。 存在する場合には、界面活性剤の量は、PNPの総重量基準で、典型的には3重量%未満、より典型的には2重量%未満、さらにより典型的には1重量%未満、一層典型的には0.5重量%未満、そしてさらに一層典型的には0.2重量%未満である。
【0083】
水性組成物は、溶媒および任意に水の少なくとも一部を除去するために任意に処理され、PNPの固形分を増大させる。 PNPを濃縮するための適当な方法は、蒸留プロセス、たとえば、水と適当な溶媒の共沸混合物の形成;溶媒または水の蒸発化;凍結乾燥または噴霧乾燥による水性組成物の乾燥;溶媒抽出技術;および限外濾過技術を含む。 好ましくは、少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも75重量%、そして最も好ましくは100重量%の溶媒を水と交換する。 溶媒の除去は、好ましくはPNPの不安定化(すなわち、凝集)を最小限に抑える条件下で行われる。
【0084】
別の方法において、本発明の水性組成物は、PNPの適当な溶媒であり、かつ水中に相溶性または混和性である少なくとも1種の溶媒中に分散されたPNPを含む非水性PNP分散液を調製する工程;および非水性PNP分散液を水性媒体と組み合わせる工程を含む方法により調製される。 水と相溶性または混和性であるアクリル含有PNPのこのような適当な溶媒の例は、イソプロパノールおよびエーテルアルコール(たとえば、エチレングリコールのモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールのモノエチルエーテル)を包含する。 この方法において、水と組み合わせる場合に粒子安定性を賦与するために、PNPは中和剤の添加を必要としない。
【0085】
本発明の水性組成物の他の例は、広範囲のPNP含量を有する。 典型的にはPNP重量分率は、水性組成物の重量基準で、0.1〜99重量%、より典型的には1〜90重量%、さらにより典型的には2〜75重量%、一層典型的には5〜50重量%、そして最も典型的には10〜40重量%の範囲である。
【0086】
一例において、PNPは他のポリマー粒子と共に供給され、ここにおいてこの他のポリマー粒子はPNPの存在下で調製される。 この具体例において、PNPは水性組成物中ポリマーの総重量基準で、1〜99重量%、好ましくは5〜90重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、そして最も好ましくは20〜60重量%の量で水性組成物中に存在する。
【0087】
PNPは第二の重合により形成される第二のポリマーのより大きな粒子の製造中に反応容器中に存在し得る。 この第二の重合は、好ましくは乳化重合である。 PNPの存在下でのこのような第二の重合の例は、「高酸(high acid)」ポリマー安定剤の使用について知られている方法に従った乳化重合(米国特許第4,845,149号および米国特許第6,020,061号に開示されているように「樹脂支持乳化重合」と呼ばれることが多い)における安定剤(すなわち、分散剤)としての本発明のPNPの使用である。
【0088】
適当なエマルジョンポリマー組成物の中で、任意のエマルジョンポリマー、コポリマー、多段コポリマー、インターポリマー、コア−シェルポリマーなどを本発明のPNPを用いて安定化させることができる。 任意のエチレン性不飽和モノマーを用いることができるが、安定化されたエマルジョンポリマーを、(メタ)アクリルエステルおよびビニル芳香族モノマーの少なくとも一つから調製するのが好ましい。
【0089】
本発明のPNP安定剤を含む乳化重合を行う際に、典型的な乳化重合成分、条件、およびプロセスのすべてを用いることができる。 たとえば、任意の公知乳化重合乳化剤(セッケン)、開始剤、温度、連鎖移動剤、反応器の種類および固形分などが存在してもよい(または存在しなくてもよい)。
【0090】
PNPがより大きなポリマー粒子の形成完了後に添加された場合、より大きなポリマーを安定化させる働きもする。 このような場合において、PNPがより大きな粒子へ吸着するのに有利な条件下で、PNPをより大きなポリマー粒子の分散液に添加するのが望ましい場合がある。 中和剤のポリマー分散液への添加は当該分野においてよく知られている。 これらの中和剤は、イオン化可能な基を含むポリマー粒子上の電荷の生成を促進するために用いることができる。 一例として、水酸化物(たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アミン、またはアンモニアなどの塩基を、カルボン酸基を含むポリマー粒子の分散液に添加して、酸基を脱プロトン化し、かくして粒子表面上の電荷を増大させることができる。 このような例において、PNPをこのようなポリマー分散液に、いく分か、所望により全部の中和剤の添加前に添加するのが望ましい。 同様に、他の安定剤(たとえば、界面活性剤)をより大きなポリマー粒子の分散液に添加するのが望ましい場合においては、前記の他の安定剤のいく分か、所望により全部を添加する前に、PNPをより大きなポリマー粒子の分散液に添加するのが望ましい。
【0091】
本明細書において使用されるとおり、次の略語は文脈が特に明示しない限り、次の意味を有する:C=センチグレード;μ=ミクロン、UV=紫外線;rpm=1分当たりの回転数;nm=ナノメートル;J=ジュール;cc=立方センチメートル;g=グラム;wt%=重量パーセント;L=リットル;mL=ミリリットル;MIAK=メチルイソアミルケトン;MIBK=メチルイソブチルケトン;PMA=ポリ(メチルアクリレート);CyHMA=シクロヘキシルメタクリレート;EG=エチレングリコール;DPG=ジプロピレングリコール;DEA=ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート;BzA=ベンジルアクリレート;BzMA=ベンジルメタクリレート;MAPS=MATS=(トリメトキシルシリル)プロピルメタクリレート;PETTA=ペンタエリスリトールテトラ/トリアセテート;PPG4000DMA=ポリプロピレングリコール4000ジメタクリレート;DPEPA=ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;TMSMA=トリメチルシリルメタクリレート;MOPTSOMS=メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン;MOPMDMOS=3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン;TAT=トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン;IBOMA=イソボルニルメタクリレート;PGMEA=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;PEGMEMA475=ポリ(エチレングリコールメチルエーテル)メタクリレート Mw=475;EUG=オイゲノール(4−アリル−2−メトキシフェノール);およびPGDMA=プロピレングリコールジメタクリレート。
【0092】
用語「(メタ)アクリル」はアクリルとメタクリルの両方を包含し、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレートとメタクリレートの両方を包含する。 同様に、用語「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミドとメタクリルアミドの両方を意味する。 「アルキル」は、直鎖、分岐および環状のアルキル基を包含する。
【0093】
本明細書で定義されるすべての範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。
【0094】
コーティング組成物の固形分は、約10容積%〜約85容積%である。 水性組成物の粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて測定すると、0.05〜2000Pa. s(50cps〜2,000,000cps)であり;異なる最終用途および適用法に適当な粘度は様々である。
【0095】
コーティング組成物は、例えば、ブラシまたは塗料ローラー、エアアトマイズドスプレー、エアアシストスプレー、エアレススプレー、高容積低圧スプレー、エアアシストエアレススプレー、および静電スプレーなどの慣用の適用方法により適用され得る。
【0096】
基体上のコーティング組成物は、典型的には20℃〜95℃の温度で、乾燥するか、または乾燥させる。
【0097】
本発明の様々な態様を説明するために次の実施例を提示する。
【0098】
実施例1 シラン官能性PNPの調製BA/MMA/MATS
* /MAA/TMPTMA(450g:39/31/10/10/10w/w、112gのイソプロパノール中)およびTriganox(登録商標)125−C75(9g)のモノマー混合物を120分かけてイソプロパノール(2325g)に79℃、窒素雰囲気下で添加した。 バッチを79℃で30分間保持した後、Triganox125−C75(22gイソプロパノール中9g)を添加した。 Triganox125−C75(22gイソプロパノール中9g)をさらに2回、30分間隔で添加した後、バッチを2.5時間保持し、次いで室温に冷却した。 結果として得られる物質は、GPCにより9.6nmの平均粒子サイズを有することが確認された。 バッチに、42.5gのNH 4 OHの水性50%溶液と450gの水の混合物を添加する。 中和されたPNP分散液をロータリーエバポレーターに移し、真空下、約35℃で溶媒を除去する。 実質的にすべての溶媒を除去した後、PNP分散液をさらに水で希釈し、約25重量%の水中PNPとする。 粒子サイズは変化しない。 *MATS:メタクリルオキシトリメトキシプロピルシラン【0099】
実施例2 フッ素官能性PNPの調製BA/MMA/TFEM
* /MAA/TMPTMA(450g:39/31/10/10/10w/w、112gのイソプロパノール中)およびTriganox(登録商標)125−C75(9g)のモノマー混合物を120分かけてイソプロパノール(2325g)に79℃、窒素雰囲気下で添加した。 バッチを79℃で30分間保持した後、Triganox125−C75(22gイソプロパノール中9g)を添加した。 Triganox125−C75(22gイソプロパノール中9g)をさらに2回、30分間隔で添加した後、バッチを2.5時間保持し、次いで室温に冷却した。 結果として得られる物質は、GPCにより4nmの平均粒子サイズを有することが確認された。 バッチに、42.5gのNH 4 OHの水性50%溶液と450gの水を添加する。 中和されたPNP分散液をロータリーエバポレーターに移し、真空下、約35℃で溶媒を除去する。 実質的にすべての溶媒を除去した後、PNP分散液をさらに水で希釈し、約25重量%の水中PNPとする。 粒子サイズは変化しない。 *TFEM:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート【0100】
比較例1 水性外部用半光沢建築用コーティング組成物の配合物【表2】
【0101】
ACRYSOL(登録商標)、RHOPLEX(登録商標)およびTAMOL(登録商標)はRohm and Haas Companyの登録商標である。 TEXANOL(登録商標)はEastman Chemical Co. の登録商標である。 FoamasterはCognis Corporationの登録商標である。 Ti−Pure(登録商標)はEI DuPont de Nemours. Co. の登録商標である。
【0102】
実施例3 実施例1において形成されたPNPを使用する、水性外部用半光沢建築用コーティング組成物の配合物【表3】
【0103】
ACRYSOL(登録商標)、RHOPLEX(登録商標)およびTAMOL(登録商標)はRohm and Haas Companyの登録商標である。 TEXANOL(登録商標)はEastman Chemical Co. の登録商標である。 FoamasterはCognis Corporationの登録商標である。 Ti−Pure(登録商標)はEI DuPont de Nemours. Co. の登録商標である。
【0104】
実施例4 実施例2において形成されたPNPを用いた、実験用水性外部半光沢建築用コーティング組成物の配合物実施例1から得られるPNPを実施例2から得られるPNPにかえる以外は実施例3に従って実施例4を調製する。
【0105】
コーティング評価水性外部用半光沢建築用コーティングの試験法光沢:3−milバードフィルムアプリケーターを用いてコーティング組成物をLenetaチャート(The Leneta Company,Mahwah,N.J.)上にドローダウンする。 試料を21℃、相対湿度50%で7日間乾燥する。 ミクロ−TRI−グロス光沢計(Byk Gardner,Columbia,MD.)を用いて60°の光沢が測定される。
防かび性:木製パネルを実施例において記載された塗料で塗装した。 空気乾燥した後、パネルをフロリダ北東部の農場で、北向きに垂直に設置し、6ヶ月間暴露させた。 カビの評点は、0(完全にカビで覆われる)から10(カビの成長はない)までである。
【0106】
【表4】
【0107】
ポリマーナノ粒子を含む実験コーティング3および4のコーティングの乾燥フィルムは、ポリマーナノ粒子を含まない比較コーティング1と比べて優れた防かび性を有する。
【0108】
実施例5 樹脂支持乳化重合に好適なPNPの調製メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート/アクリル酸/トリメチロールプロパントリアクリレート(25/35/10/20/10重量%)のPNPを溶液重合により次の通りに調製する:5リットル反応器に熱電対、温度コントローラー、パージガス入口、パージガス出口付きの水冷還流コンデンサー、スターラー、およびモノマー供給ラインを取り付ける。 別な容器に、112.5gのメチルメタクリレート(MMA)、157.5gのブチルアクリレート(BA)、45.0gの2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、90.0gのアクリル酸(AA)、および45.00gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)からなる450.0gのモノマー混合物(A)を装填する。 追加の容器に、18.00gのミネラルスピリット中75%溶液のt−アミルペルオキシピバレート(Triganox 125−C75)と、112.50gのイソプロピルアルコールからなる開始剤ミックス(B)を装填する。 2325.00gのイソプロピルアルコールの装填物を反応器に添加する。 この反応器を窒素で約30分間スイープした後、加熱して、反応器の装填物を79℃とする。 この反応器の内容物が79℃に達した時、モノマー混合物(A)および開始剤ミックス(B)の2つからなるフィードをこの反応器に添加する。 供給ポンプを用いてこの2つの混合物を120分にわたって均一に供給する。 このモノマーと開始剤の供給の終わりに、このバッチを79℃で30分間保持した後、9.00gのミネラルスピリット中75%溶液のt−アミルペルオキシピバレート(Triganox 125−C75)と、22.50gのイソプロピルアルコールからなる追加の3回の開始剤装填物の第一を添加する。 第2の開始剤装填物添加は、第一の開始剤装填物添加30分後に行う。 同様に、最後の開始剤装填物添加は、第二の開始剤装填物添加30分後に行う。 次に、このバッチを79℃の重合温度でさらに2.5時間保持して、モノマーの完全な転化を達成する。 この最終保持の終わりに、42.5gmの水性アンモニアの水性28%溶液と450.00gの水の混合物でバッチを中和する。 中和されたポリマー溶液をロータリーエバポレーターに移して、〜35℃、減圧で溶媒を除去する。 全ての溶媒を除去した後、バッチをさらに水で希釈して、水中〜25%ポリマー(PNP)にする。 粒子サイズは〜5.0nmと測定される。 結果として得られる水性PNP分散液は乳化重合用の安定剤として使用できる。
【0109】
実施例6 PNPを用いた樹脂支持乳化重合342g(25%水中活性)の実施例5で形成されたアンモニア中和されたPNP(水性アンモニアでpH8〜9に調節)を、コンデンサー、スターラー、および熱電対を備えた2リットルの四つ口丸底枝付フラスコに添加する。 フラスコの内容物を窒素スイープ下で85℃に加熱する。 モノマー、すなわち175.0gのブチルアクリレートおよび175.0gのメチルメタクリレートを1.5時間かけて添加し、同時に別の2.63gの過硫酸アンモニウムの100.0gのDI水中溶液および0.22gの28%水酸化アンモニウムを2時間かけて添加する。 モノマーミックス供給が完了した後、過硫酸塩同時供給をさらに30分間続ける。 この時点で、フラスコの内容物をさらに60分間85℃に保持する。 その後、フラスコの内容物を25℃に冷却し、多重スクリーンの100/325メッシュセットを通して濾過すると、ごくわずかな量の凝集ポリマーが得られる。 エマルジョンを最終固形分50%に希釈するために十分な量のDI水を添加する。 エマルジョンは7.5のpHおよび128nmの粒子サイズを有する。
【0110】
実施例5のエマルジョンポリマーがRhoplexSG−10Mにとってかわった、比較例1に従って配合されたコーティングは、比較例1において配合されたコーティングと比較して優れた防かび性を示す。
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