重合性組成物、シクロオレフィン系重合体、シクロオレフィン系樹脂成形体、および積層体

申请号 JP2015501471 申请日 2014-02-19 公开(公告)号 JP6191683B2 公开(公告)日 2017-09-06
申请人 日本ゼオン株式会社; 发明人 遠藤 充輝; 桐木 智史; 角替 靖男;
摘要
权利要求

下記式(I)で示されるシクロオレフィン系モノマー、及び重合触媒を含有する重合性 組成物。 〔R1は、炭素数1〜10の炭化素基、ハロゲン原子、及びハロゲン原子で置換された 炭素数1〜10の炭化水素基からなる群から選ばれる置換基を表す。mは、0以上、6n +6以下の整数である。mが1以上のとき、R1の結合位置は限定されない。また、mが 2以上のとき、R1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、1〜3の整数 を表す。〕前記式(I)で示されるシクロオレフィン系モノマーが、4,5−エポキシトリシクロ [5.2.1.02,6]デカ−8−エンである請求項1に記載の重合性組成物。さらに、前記式(I)で示されるシクロオレフィン系モノマー以外のシクロオレフィン 系モノマーを含有する請求項1又は2に記載の重合性組成物。前記重合触媒がメタセシス重合触媒である請求項1〜3のいずれかに記載の重合性組成物。前記メタセシス重合触媒がルテニウムカルベン錯体である請求項4に記載の重合性組成物。請求項4又は5に記載の重合性組成物を重合させることにより得られるシクロオレフィン系重合体。請求項4又は5に記載の重合性組成物を塊状重合させることにより得られるシクロオレフィン系樹脂成形体。金属箔と、前記金属箔に隣接して、請求項4又は5に記載の重合性組成物を塊状重合させることにより形成されたシクロオレフィン系樹脂層を有する積層体。

说明书全文

本発明は、金属との密着性に優れるシクロオレフィン系樹脂成形体の製造原料として有用な重合性組成物、この重合性組成物を重合させることにより得られるシクロオレフィン系重合体、前記重合性組成物を塊状重合させることにより得られるシクロオレフィン系樹脂成形体、及び、金属箔と、該金属箔に隣接して、前記重合性組成物を塊状重合させることにより形成されたシクロオレフィン系樹脂層を有する積層体に関する。

シクロオレフィン系樹脂は、透明性及び耐熱性に優れ、吸性が低く、低誘電率である等の特徴を有することから、近年、光学部品、電子機器、医療器具、自動車部品等、幅広い分野で使用されている。 例えば、特許文献1には、ノルボルネン系モノマーをメタセシス重合触媒の存在下に塊状重合させてなる樹脂成形体が開示されている。また、特許文献1には、その樹脂成形体が、カメラ用レンズ等として有用であることも記載されている。

特開2010−229166号公報

シクロオレフィン系樹脂は上記のような優れた特徴を有するものの、一般に、金属との親和性に劣るため、金属との密着性に優れるシクロオレフィン系樹脂成形体を得ることが困難な場合があった。

本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、金属との密着性に優れるシクロオレフィン系樹脂成形体の製造原料として有用な重合性組成物、この重合性組成物を重合させることにより得られるシクロオレフィン系重合体、前記重合性組成物を塊状重合させることにより得られるシクロオレフィン系樹脂成形体、及び、金属箔と、該金属箔に隣接して、前記重合性組成物を塊状重合させることにより形成されたシクロオレフィン系樹脂層を有する積層体を提供することを目的とする。

本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のシクロオレフィン系モノマー、及び重合触媒を含有する重合性組成物を用いることで、金属との密着性に優れるシクロオレフィン系樹脂成形体を形成し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。

かくして本発明によれば、下記(1)〜(5)の重合性組成物、(6)の重合体、(7)の樹脂成形体、及び(8)の積層体が提供される。 (1)下記式(I)で示されるシクロオレフィン系モノマー、及び重合触媒を含有する重合性組成物。

〔R1は、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、及びハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基からなる群から選ばれる置換基を表す。mは、0以上、6n+6以下の整数である。mが1以上のとき、R1の結合位置は限定されない。また、mが2以上のとき、R1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、1〜3の整数を表す。〕 (2)前記式(I)で示されるシクロオレフィン系モノマーが、4,5−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンである、(1)に記載の重合性組成物。 (3)前記重合触媒が、メタセシス重合触媒である、(1)に記載の重合性組成物。 (4)前記重合触媒が、ルテニウムカルベン錯体である、(1)に記載の重合性組成物。 (5)さらに、前記式(I)で示されるシクロオレフィン系モノマー以外のシクロオレフィン系モノマーを含有する、(1)に記載の重合性組成物。 (6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の重合性組成物を重合させることにより得られるシクロオレフィン系重合体。 (7)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の重合性組成物を塊状重合させることにより得られるシクロオレフィン系樹脂成形体。 (8)金属箔と、該金属箔に隣接して、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の重合性組成物を塊状重合させることにより形成されたシクロオレフィン系樹脂層を有する積層体。

本発明によれば、金属との密着性に優れるシクロオレフィン系樹脂成形体の製造原料として有用な重合性組成物、この重合性組成物を重合させることにより得られるシクロオレフィン系重合体、前記重合性組成物を塊状重合させることにより得られるシクロオレフィン系樹脂成形体、及び、金属箔と、該金属箔に隣接して、前記重合性組成物を塊状重合させることにより形成されたシクロオレフィン系樹脂層を有する積層体が提供される。

以下、本発明を、1)重合性組成物、2)シクロオレフィン系重合体及びシクロオレフィン系樹脂成形体、並びに、3)積層体、に項分けして詳細に説明する。

1)重合性組成物 本発明の重合性組成物は、前記式(I)で示されるシクロオレフィン系モノマー(以下、「シクロオレフィン系モノマー(α)」ということがある。)、及び重合触媒を含有するものである。

〔シクロオレフィン系モノマー(α)〕 シクロオレフィン系モノマー(α)は、分子内に、炭素原子で構成される脂環式構造を有し、かつ該脂環式構造中に重合性(開環重合性又は付加重合性)の炭素−炭素二重結合とエポキシ基を有する化合物である。シクロオレフィン系モノマー(α)を含有する重合性組成物を用いることで、金属との密着性に優れるシクロオレフィン系樹脂成形体を効率よく得ることができる。

前記式(I)中、R1は、炭素数1〜10の炭化水素基(好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基)、ハロゲン原子、及びハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基(好ましくはハロゲン原子で置換された炭素数1〜5の炭化水素基)からなる群から選ばれる置換基を表す。

R1の炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、クロチル基等の炭素数2〜10のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基、3−ブチニル基等の炭素数2〜10のアルキニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;等が挙げられる。 R1のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。 R1のハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基としては、クロロメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。

mは、0以上、6n+6以下の整数、好ましくは0以上、4以下の整数である。mが1以上のとき、R1の結合位置は限定されない。また、mが2以上のとき、複数のR1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。

シクロオレフィン系モノマー(α)としては、4,5−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、4,5−エポキシ−8−クロロトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、4,5−エポキシ−8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、4,5−エポキシ−8−トリフルオロメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン等の式(I)中のnが1の化合物; 10,11−エポキシペンタシクロ[7.4.0.12,5.17,13.08,12]ペンタデカ−3−エン、10,11−エポキシ−4−クロロペンタシクロ[7.4.0.12,5.17,13.08,12]ペンタデカ−3−エン等の式(I)中のnが2の化合物; 14,15−エポキシヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.111,17.012,16]エイコサ−6−エン、14,15−エポキシ−5−クロロヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.111,17.012,16]エイコサ−5−エン等の式(I)中のnが3の化合物;が挙げられる。 なかでも、目的のシクロオレフィン系樹脂成形体を効率よく形成できることから、nが1の化合物が好ましく、4,5−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンがより好ましい。 これらのシクロオレフィン系モノマー(α)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。

シクロオレフィン系モノマー(α)は、例えば、ジシクロペンタジエンの二量体、三量体、又は四量体をエポキシ化することにより得ることができる。このエポキシ化反応においては、ヘテロポリ酸と過酸化水素等を用いる公知の反応(例えば、特開2006−104110号公報等)を利用することができる。また、ヘテロポリ酸と過酸化水素を用いて反応を行う場合、過酸化水素の量を調整することにより選択的にエポキシ化することができる。

〔その他のシクロオレフィン系モノマー〕 本発明の重合性組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、シクロオレフィン系モノマー(α)と共重合可能なその他のシクロオレフィン系モノマー(以下、「シクロオレフィン系モノマー(β)」ということがある。)を含有してもよい。

シクロオレフィン系モノマー(β)は、シクロオレフィン系モノマー(α)とは別のシクロオレフィン系モノマーであって、シクロオレフィン系モノマー(α)と共重合可能なものであればよく、特に限定されない。例えば、単環シクロオレフィン系化合物やノルボルネン化合物等が挙げられる。シクロオレフィン系モノマー(β)は、置換基を有するものであってもよい。置換基としては、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基等が挙げられる。これらの置換基の具体例としては、シクロオレフィン系モノマー(α)の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。

単環シクロオレフィン系化合物の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、シクロへプテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、及び1,3−シクロオクタジエン等が挙げられる。

ノルボルネン化合物の具体例としては、ノルボルネン、1−メチル−2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、7−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン、5−クロロ−2−ノルボルネン、5,5−ジクロロ−2−ノルボルネン、5−フルオロ−2−ノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチル−2−ノルボルネン、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−n−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体;1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン(TCD)、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;シクロペンタジエン四量体等の七環体;等が挙げられる。 これらのシクロオレフィン系モノマー(β)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。

本発明の重合性組成物が、シクロオレフィン系モノマー(β)を含有する場合、その含有量は、シクロオレフィン系モノマー(α)とシクロオレフィン系モノマー(β)の合計100重量部に対して、通常、99.9重量部以下、好ましくは10〜99.5重量部、より好ましくは10〜99重量部、特に好ましくは50〜98重量部である。

〔重合触媒〕 本発明の重合性組成物は、重合触媒を含有する。重合触媒としては、メタセシス重合触媒、付加重合触媒等が挙げられる。これらの重合触媒は、目的とする重合体の種類に応じて適宜選択することができる。

(メタセシス重合触媒) 本発明の重合性組成物がメタセシス重合触媒を含有するものである場合、用いるメタセシス重合触媒は特に限定されず、公知のものを用いることができる。メタセシス重合触媒としては、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン、及び化合物等が結合してなる遷移金属錯体が挙げられる。この遷移金属錯体において、遷移金属原子としては、通常、5族、6族及び8族(長周期型周期表による。以下、同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。

これらの中でも、メタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。 ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、本発明の重合性組成物を塊状重合に供して樹脂成形体を得る場合、得られる樹脂成形体には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な樹脂成形体が得られる。また、ルテニウムカルベン錯体は、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。

ルテニウムカルベン錯体としては、以下の式(II)又は式(III)で示される錯体が挙げられる。

R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、R2とR3は互いに結合して、脂肪族環又は芳香族環を形成してもよい。

X1及びX2は、それぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を表す。アニオン性配位子X1、X2は、中心原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子である。例えば、弗素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、及び沃素原子(I)等のハロゲン原子;ジケトネート基;置換シクロペンタジエニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;カルボキシル基;等が挙げられる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。

L1及びL2は、それぞれ独立して、中性電子供与性化合物を表す。中性電子供与性化合物L1、L2は、中心原子から引き離されたときに電気的に中性である配位子である。 L1及びL2の少なくとも一つは、ヘテロ原子含有カルベン化合物である。ヘテロ原子とは、周期律表15族及び16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、砒素原子(As)、及びセレン原子(Se)等が挙げられる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、及びSが好ましく、Nが特に好ましい。

ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、以下の式(IV)又は式(V)で示される化合物が挙げられる。

R4〜R7は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。また、R4〜R7は任意の組合せで互いに結合して、脂肪族環又は芳香族環を形成してもよい。

前記式(IV)又は式(V)で示される化合物としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、及び1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン等が挙げられる。

ヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物としては、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、及びチオシアネート類等が挙げられる。なかでも、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。

また、式(II)及び式(III)において、R2、R3、X1、X2、L1及びL2は、任意の組合せで互いに結合して多座キレート配位子を形成してもよい。

前記ルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド等が挙げられる。

これらのルテニウムカルベン錯体は、Org.Lett.,1999年,第1巻,953頁や、Tetrahedron.Lett.,1999年,第40巻,2247頁等に記載された方法によって製造することができる。

メタセシス重合触媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 メタセシス重合触媒の含有量は、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:シクロオレフィン系モノマー全体)で、通常、1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。

(付加重合触媒) 本発明の重合性組成物が付加重合触媒を含有するものである場合、用いる付加重合触媒は特に限定されない。付加重合触媒としては、例えば、公知のチーグラー触媒やメタロセン触媒が挙げられる。なかでも、周期律表第8、9、10族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属のハロゲン化合物(以下、「化合物(A)」ということがある。)と、B,Al,Ti,Zn,Ge,Sn,Sb原子から選ばれる金属原子を有し、かつ、該金属原子に直接結合する炭素原子を有さない化合物(以下、「化合物(B)」ということがある。 )を反応させることにより得られるものが好ましい。

化合物(A)は、周期律表第8、9、10族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属のハロゲン化合物である。 化合物(A)を構成する遷移金属原子としては、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金等が挙げられ、好ましくはコバルト、ニッケル、パラジウム、白金、より好ましくはニッケル、パラジウムである。 化合物(A)を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。これらのハロゲン原子は少なくとも1つ以上が該遷移金属原子と結合している。

化合物(A)は、遷移金属原子とハロゲン原子以外に、その他の構成要素を含んでいてもよい。その他の構成要素としては、酸素原子;水酸基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基、ジ(t−ブチル)アミノ基、ジ(イソブチル)アミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基等の炭素数2〜40のジアルキルアミノ基又は炭素数12〜40のジアリールアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜20のアリールオキシ基;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;エチルベンゾエート等のエステル類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;サルフォキシド類、イソシアニド類、ホスホン酸類、チオシアネート類等のルイス塩基等が挙げられ、好ましくはジアルキルアミノ基、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、より好ましくはニトリル類、ホスフィン類である。

化合物(A)の具体例としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)鉄(II)、ジクロロビス(トリn−ブチルホスフィン)鉄(II)等の鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)コバルト等のコバルト化合物;塩化ニッケル、臭化ニッケル、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリメチルホスフィン)ニッケル、ジクロロ(2,2’−ピピリジル)ニッケル、ジクロロ(エチレンジアミン)ニッケル等のニッケル化合物;塩化ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ヒドロクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロテトラキス(アセトニトリル)ルテニウム、ジクロロテトラキス(ジメチルサルフォキシド)ルテニウム等のルテニウム化合物;塩化ロジウム、臭化ロジウム、トリクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム化合物;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム、ジクロロ(トリメチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム等のパラジウム化合物;等が挙げられる。

化合物(B)は、B,Al,Ti,Zn,Ge,Sn,Sb原子から選ばれる金属原子を有し、かつ、該金属原子に直接結合する炭素原子を有さない化合物である。「金属原子に直接結合する炭素原子を有さない」とは、金属原子にアルキル基、アルケニル基等の炭化水素基等に起因する炭素原子が直接結合していないことをいう。

化合物(B)を構成する金属原子は、B,Al,Ti,Zn,Ge,Sn,Sb原子から選ばれるものであり、好ましくはB,Al,Ti,Zn,Sn、より好ましくはB,Al,Tiである。

化合物(B)は、金属原子にハロゲン原子が結合しているものが好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。 化合物(B)は、金属原子やハロゲン原子以外に、その他の構成要素を含んでいてもよい。その他の構成要素としては、酸素原子;水酸基;水;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基、ジ(t−ブチル)アミノ基、ジ(イソブチル)アミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基等の炭素数2〜40のジアルキルアミノ基又は炭素数12〜40のジアリールアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1から20のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜20のアリールオキシ基;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;エチルベンゾエート等のエステル類;トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;イソシアニド類、ホスホン酸類、チオシアネート類等のルイス塩基等が挙げられ、好ましくは水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。

化合物(B)の具体例としては、塩化チタン(IV)、臭化チタン(IV)、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン、トリメトキシチタンモノクロリド、ジメトキシチタンジクロリド、メトキシチタントリクロリド、トリヒドロキシチタンモノクロリド、ジヒドロキシチタンジクロリド、ヒドロキシチタントリクロリド、酸化チタン等のチタン化合物;塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、ジエトキシ亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、トリエトキシホウ素、酸化ホウ素等のホウ素化合物;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、クロロアルミノキサン、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物;フッ化スズ(IV)、塩化スズ(IV)、臭化スズ(IV)、ヨウ化スズ(IV)、酸化スズ(IV)等のスズ化合物;塩化アンチモン(V)、フッ化アンチモン(V)、酸化アンチモン等のアンチモン化合物;等が挙げられる。

化合物(B)としては、水、エーテル、エステル、カルボン酸等が金属原子に配位してなる錯体を使用することもできる。その具体例としては、塩化チタン(IV)テトラヒドロフラン(1:2)錯体、三塩化ホウ素メチルサルファイド錯体、三フッ化ホウ素2水和物、三フッ化ホウ素t−ブチルメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジ(n−ブチル)エーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素酢酸(1:2)錯体、塩化アルミニウム水和物、塩化スズ(IV)水和物等が挙げられる。

化合物(A)と化合物(B)の割合〔化合物(A):化合物(B)〕は、特に限定されないが、通常、モル比で、1:0.1〜1:10,000、好ましくは1:0.5〜1:5,000である。

付加重合触媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 付加重合触媒の含有量は、モル比(付加重合触媒中の金属原子:シクロオレフィン系モノマー全体)で、通常、1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。

〔その他の成分〕 本発明の重合性組成物は、前記シクロオレフィン系モノマー、重合触媒の他に、所望により、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、熱可塑性樹脂、充填剤、難燃剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、その他の配合剤等が挙げられる。

熱可塑性樹脂を含有する重合性組成物を用いることで、所望の物性が向上したシクロオレフィン系樹脂成形体が得られ易くなる。熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。 熱可塑性樹脂は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、シクロオレフィン系モノマー100重量部に対して、通常、1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部である。

充填剤を含有する重合性組成物を用いることで、機械強度や耐熱性に優れるシクロオレフィン系樹脂成形体が得られ易くなる。充填剤としては、公知の無機系充填剤や有機系充填剤を用いることができる。 無機系充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ等が挙げられる。 有機系充填剤としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、木粉、コルク粉末等が挙げられる 充填剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 充填剤を用いる場合、その含有量は、シクロオレフィン系モノマー100重量部に対して、通常、1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部である。

難燃剤を含有する重合性組成物を用いることで、難燃性に優れるシクロオレフィン系樹脂成形体が得られ易くなる。難燃剤としては、公知のハロゲン系難燃剤や非ハロゲン系難燃剤を用いることができる。 ハロゲン系難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、高塩素化ポリプロピレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールS、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン)、ペンタブロモトルエン等が挙げられる。 非ハロゲン系難燃剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルフホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。 難燃剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 難燃剤を用いる場合、その含有量は、シクロオレフィン系モノマー100重量部に対して、通常、10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部である。

重合調整剤は、重合活性を制御し得る化合物である。重合調整剤としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウム等が挙げられる。 重合調整剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 重合調整剤を用いる場合、その含有量は、モル比(重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。

重合反応遅延剤は、重合活性を制御し得る化合物である。重合反応遅延剤を用いることで、重合性組成物の粘度増加を抑制し得る。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;アニリン、ピリジン等のルイス塩基;等が挙げられる。 重合反応遅延剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合反応遅延剤の含有量は、所望により適宜調整すればよい。

連鎖移動剤は、重合反応中に連鎖移動反応を生じさせ、重合体の分子量を調節し得る化合物である。 連鎖移動剤としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル等が挙げられる。 これらの連鎖移動剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤を用いる場合、その含有量は、シクロオレフィン系モノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。

酸化防止剤は、シクロオレフィン系樹脂成形体の、酸化反応による劣化を防止し得る化合物である。 酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。なかでも、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤がより好ましい。 フェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド等が挙げられる。 酸化防止剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 酸化防止剤を用いる場合、その含有量は、シクロオレフィン系モノマー100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部である。

その他の配合剤としては、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤等が挙げられる。これらの配合剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その含有量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。

本発明の重合性組成物は、上記成分を混合することにより得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、重合触媒や、必要に応じて重合反応遅延剤を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にシクロオレフィン系モノマー(α)や、その他の成分を配合した液(モノマー液)を調製し、該モノマー液に触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。

触媒液やモノマー液の調製に用いる溶媒は特に限定されない。例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、及びミネラルスピリット等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、及びシクロオクタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素;インデンやテトラヒドロナフタレン等の脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、及びアセトニトリル等の含窒素炭化水素;ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等の含酸素炭化水素;等が挙げられる。

2)シクロオレフィン系重合体及びシクロオレフィン系樹脂成形体 〔シクロオレフィン系重合体〕 本発明のシクロオレフィン系重合体は、本発明の重合性組成物を重合させることにより得られるものである。本発明の重合性組成物がメタセシス重合触媒を含有する場合には、メタセシス開環重合反応によりメタセシス開環重合体が得られ、付加重合触媒を含有する場合には、付加重合反応により付加重合体が得られる。

開環重合反応は、メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いることで行うことができる。開環重合反応の反応形態は特に制限されず、溶液重合や塊状重合が挙げられる。なかでも、樹脂成形体を効率よく製造し得ることから、塊状重合反応が好ましい。塊状重合反応の詳細は、「シクロオレフィン系樹脂成形体」の項で説明する。

開環重合反応を溶液重合で行う場合、用いる溶媒は特に限定されないが、炭化水素系溶媒が好ましい。炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;等が挙げられる。なかでも、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素が好ましく、トルエン、シクロヘキサン、シクロオクタン等がより好ましく、トルエン、シクロヘキサンが特に好ましい。 これらの炭化水素系溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、効率よくシクロオレフィン系樹脂成形体を製造し得ることから、塊状重合反応が好ましい。 溶液重合において、重合温度は特に制限はないが、通常、−30〜150℃、好ましくは−10〜120℃である。重合時間は特に制限はないが、通常、1分間〜100時間である。

付加重合反応は、付加重合触媒を含有する重合性組成物を用いることで行うことができる。付加重合反応の反応形態は特に制限されず、溶液重合や塊状重合が挙げられる。なかでも、反応の制御が容易であることから、溶液重合が好ましい。 溶液重合において、用いる溶媒は特に限定されないが、開環重合反応を溶液重合で行う場合に用いる溶媒として列記したものと同様のものが使用できる。

付加重合反応において、重合温度は特に制限はないが、通常、−30〜150℃、好ましくは−10〜120℃である。重合時間は特に制限はないが、通常、1分間〜100時間である。

本発明のシクロオレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、その用途にもよるが、通常、5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000である。なお、この値は、テトラヒドロフランを溶媒として用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算値である。 本発明のシクロオレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常、120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。

本発明のシクロオレフィン系重合体は、シクロオレフィン系モノマー(α)に由来するエポキシ基を有するものであり、金属との親和性に優れる。したがって、本発明のシクロオレフィン系重合体は、金属−樹脂複合体の形成材料として好ましく用いられる。

〔シクロオレフィン系樹脂成形体〕 本発明の樹脂成形体は、本発明の重合性組成物を塊状重合させることにより得られるものである。この塊状重合反応においては、メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いることが好ましい。メタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いて、開環重合により塊状重合反応を行うことで、目的のシクロオレフィン系樹脂成形体を効率よく製造することができる。

重合性組成物を塊状重合させることによりシクロオレフィン系樹脂成形体を得る方法としては、例えば、(a)重合性組成物を支持体上に塗布し、次いで塊状重合させる方法、(b)重合性組成物を成形型内に注入し、次いで塊状重合させる方法、(c)重合性組成物を繊維状強化材に含浸させ、次いで塊状重合させる方法等が挙げられる。

上記(a)の方法に用いる支持体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、及びナイロン等の樹脂からなるフィルムや板;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、及び銀等の金属材料からなる箔や板;等が挙げられる。なかでも、金属箔又は樹脂フィルムの使用が好ましい。 金属箔又は樹脂フィルムの厚みは、作業性等の観点から、通常、1〜200μm、好ましくは1〜150μm、より好ましくは6〜125μm、さらに好ましくは12〜100μmである。 金属箔としては、その表面が平滑であるものが好ましく、表面粗度(Rz)としては、AFM(原子間顕微鏡)により測定される値で、通常、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。 また、金属箔の表面は、シランカップリング剤、チオールカップリング剤、及びチタネートカップリング剤等の公知のカップリング剤や接着剤等で処理されているのが好ましい。

支持体上に本発明の重合性組成物を塗布する方法としては、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、及びスリットコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。

支持体上に塗布された重合性組成物を所望により乾燥させ、次いで塊状重合させる。塊状重合は重合性組成物を所定の温度に加熱して行われる。重合性組成物の加熱方法としては特に制限されず、支持体に塗布された重合性組成物を、加熱プレート上に載せて加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉内で加熱する方法等が挙げられる。

(a)の方法によれば、支持体付シクロオレフィン系樹脂成形体として、フィルム状や板状等のシクロオレフィン系樹脂成形体が得られる。該樹脂成形体の厚みは、通常、15mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは0.5mm以下、最も好ましくは0.1mm以下である。

上記(b)の方法に用いる型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造、すなわち、コア型とキャビティー型を有する成形型が挙げられる。コア型とキャビティー型は、目的とする成形品の形状にあった空隙部を形成するように作製される。成形型の形状、材質、大きさ等は特に制限されない。また、シート状又はフィルム状の樹脂成形体を得る場合、2枚のガラス板や金属板等と所定の厚みのスペーサーとを組み合わせた成形型を用いることができる。

(b)の方法においては、成形型内の空隙部(キャビティー)に重合性組成物をして塊状重合させる。 重合性組成物を成形型のキャビティー内に注入する際の圧力は、通常、0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。注入圧が低すぎると、キャビティー内周面に形成された転写面の転写が良好に行われない傾向があり、注入圧が高すぎると、成形型の剛性を高くする必要があり、経済的ではない。型締圧力は、通常、0.01〜10MPaの範囲内である。重合性組成物の加熱方法としては、成形型に配設された電熱器やスチーム等の加熱手段を利用する方法や、成形型を電気炉内で加熱する方法等が挙げられる。

(b)の方法によれば、任意の形状のシクロオレフィン系樹脂成形体が得られる。その形状としては、シート状、フィルム状、柱状、円柱状、及び多柱状等が挙げられる。

上記(c)の方法に用いる繊維状強化材としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、及び液晶ポリエステル繊維等の有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、及びシリカ繊維等の無機繊維;等が挙げられる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、及びガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、及びHガラス等の繊維を好適に用いることができる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。繊維状強化材の形態としては、特に限定されず、例えば、マット、クロス、及び不織布等が挙げられる。

重合性組成物を繊維状強化材に含浸させる方法としては、例えば、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、及びスリットコート法等の公知の方法により繊維状強化材に塗布し、所望によりその上に保護フィルムを重ね、上側からローラー等で押圧することにより行う方法が挙げられる。 重合性組成物を繊維状強化材に含浸させた後、含浸物を所定温度に加熱することで重合性組成物を塊状重合させ、所望の樹脂成形体を得ることができる。 樹脂成形体中における繊維状強化材の含有量としては、通常、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲である。この範囲にあれば、得られる積層体の誘電特性と機械的強度がバランスされ、好適である。

繊維状強化材に重合性組成物を含浸させてなる含浸物の加熱方法としては、例えば、含浸物を支持体上に設置して上記(a)の方法のようにして加熱する方法や、予め型内に繊維状強化材を設置しておき、該型内で重合性組成物を含浸させて含浸物を得、前記(b)の方法のようにして加熱する方法等が挙げられる。

(c)の方法によれば、繊維状強化材を有するシート状又はフィルム状のシクロオレフィン系樹脂成形体が得られる。得られるシクロオレフィン系樹脂成形体の厚みは、通常、0.001〜10mm、好ましくは0.005〜1mm、より好ましくは0.01〜0.5mmの範囲である。

上記(a)、(b)及び(c)のいずれの方法においても、重合性組成物を重合させるための加熱温度は、通常、30〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは90〜150℃の範囲である。また、重合時間は適宜選択すればよいが、通常、1秒間〜20分間、好ましくは10秒間〜5分間である。重合性組成物をかかる条件で加熱することにより未反応モノマーの少ないシクロオレフィン系樹脂成形体を得ることができる。

本発明のシクロオレフィン系樹脂成形体を構成する重合体の重量平均分子量は、通常、5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000である。なお、この値は、テトラヒドロフランを溶媒として用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算値である。

本発明のシクロオレフィン系樹脂成形体は、本発明の重合性組成物を塊状重合させることにより得られるものであるため、金属材料と圧着させたときに、密着性に優れる。したがって、本発明のシクロオレフィン系樹脂成形体は、金属−樹脂複合体の形成材料として好ましく用いられる。

3)積層体 本発明の積層体は、金属箔と、前記金属箔に隣接して、本発明の重合性組成物を塊状重合させることにより形成されたシクロオレフィン系樹脂層を有するものである。

積層体を構成する金属箔としては、上記「(a)の方法」の支持体として例示した金属箔と同様のものが挙げられる。

本発明の積層体は、例えば、上記(a)の方法において、支持体として金属箔を使用することにより得ることができる。 また、上記(a)〜(c)の方法で得られたシート状シクロオレフィン系樹脂成形体と金属箔とを、該樹脂成形体の樹脂部が金属箔と対向するように重ねて、熱プレスすることにより得ることもできる。 熱プレスするときの圧力は、通常、0.5〜20MPa、好ましくは1〜10MPaである。熱プレスは、真空又は減圧雰囲気下で行ってもよい。熱プレスは、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)等のプレス成形機を用いて行なうことができる。

本発明の積層体は、金属箔からなる層を1層有するものであってもよく、2層以上有するものであってもよい。また、シート状シクロオレフィン系樹脂成形体からなる層を1層有するものであってもよく、2層以上有するものであってもよい。 本発明の積層体の厚みは、特に限定されないが、通常、1μm〜10mmである。

本発明の積層体は、金属箔と、前記金属箔に隣接して、本発明の重合性組成物を塊状重合させることにより形成されたシクロオレフィン系樹脂層を有するものであるため、金属箔からなる層とシクロオレフィン系樹脂層との密着性に優れる。 本発明の積層体は、上記特性を有するため、樹脂付き銅箔〔Resin Coated Copper (RCC)〕や銅張積層板〔Copper Clad Laminates (CCL)〕等のプリント基板材料として好適に用いられる。

以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。

〔製造例1〕4,5−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンの合成 温度計、滴下漏斗及び撹拌機を備えた3口反応器内を窒素ガスで置換し、この反応器内で、ジシクロペンタジエン50.0g(378.2mmol)とヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物3.39g(9.46mmol)をクロロホルム250mlに溶解させた。次いで、反応器内容物を攪拌しながら、これに、12−タングスト(VI)リン酸n水和物5.45gを30%過酸化水素水42.88g(378.2mmol)に溶解させて得た溶液を30分かけて滴下し、その後、そのまま室温で3時間攪拌を続けた。次いで、反応器内容物に蒸留水150mlと飽和食塩水100mlを加え、分液操作を行うことにより有機層を分取した。得られた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた後、硫酸ナトリウムをろ別した。ろ液を濃縮して得た濃縮液を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1.5:18.5(体積比))で精製することにより、4,5−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン26.3gを白色固体として得た(収率47%)。 得られた生成物の構造は1H−NMRで同定した。

〔製造例2〕触媒液の調製 攪拌子を入れたガラス製フラスコに、メタセシス重合触媒〔ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド〕0.127部、重合反応遅延剤(トリフェニルホスフィン)0.191部、及びトルエン2.5部を加え、内容物を40℃で30分間攪拌し、触媒液を調製した。

〔実施例1〕 製造例1で得た4,5−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン(DCP−ME)20部、ジシクロペンタジエン(DCP)48部、テトラシクロドデセン(TCD)32部、連鎖移動剤1(1−ヘキセン)0.5部、酸化防止剤1〔ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010、BASF社製)〕0.5部を混合してモノマー液を調製した。このモノマー液と製造例2で得た触媒液を0℃に冷却し、モノマー液100gあたり、0.8mLの触媒液を添加、混合して重合性組成物1を得た。

離型フィルムで被覆した2枚のガラス板で厚み3mmのスペーサーを挟み、成形型を作製した。 この成形型内(ガラス板の間)に重合性組成物1を注入し、これを、炉内を窒素ガス置換したオーブンを用いて120℃で5分間加熱し、重合性組成物1を塊状重合させた。冷却後、成形型から重合反応生成物を取り出すことにより、厚み3mmのシート状樹脂成形体1を得た。次いで、シート状樹脂成形体1の両側に、厚み18μmのカップリング処理付電解銅箔(AMFN1/2Oz、Rz≒2.1μm、JX日鉱日石金属社製)を、カップリング処理面をシート状樹脂成形体1に向けて配置し、温度180℃、圧力2MPaで10分間プレスすることにより、積層体1を得た。

〔実施例2〕 実施例1において、DCP−ME、DCP、TCDの配合量を、それぞれ、10部、54部、36部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法により重合性組成物2を得、これを用いて、シート状樹脂成形体2及び積層体2を得た。

〔実施例3〕 実施例1において、DCP−ME、DCP、TCDの配合量を、それぞれ、5部、57部、38部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法により重合性組成物3を得、これを用いて、シート状樹脂成形体3及び積層体3を得た。

〔比較例1〕 実施例1において、DCP−MEを使用しなかったことと、DCPとTCDの配合量を、それぞれ、60部、40部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法により重合性組成物4を得、これを用いて、シート状樹脂成形体4及び積層体4を得た。

〔比較例2〕 DCP60部、TCD40部、連鎖移動剤2(メタクリル酸アリル)1.8部、酸化防止剤1 0.5部、架橋剤1〔ジ−t−ブチルパーオキシド(商品名:カヤブチルD、化薬アグゾ社製)〕1.1部を混合してモノマー液を調製した。このモノマー液と製造例2で得た触媒液を0℃に冷却し、モノマー液100gあたり、0.8mLの触媒液を添加して重合性組成物5を得た。

次いで、実施例1と同様の方法により、シート状樹脂成形体5を得た。さらに、実施例1において、シート状樹脂成形体1の代わりにシート状樹脂成形体5を使用したことと、プレス条件を、温度180℃、圧力2MPaで30分間に変更したことを除き、実施例1と同様の方法により、積層体5を得た。

実施例及び比較例で得た、シート状樹脂成形体及び積層体について、以下の測定、評価を行った。結果を第1表に示す。

<重量平均分子量(Mw)> シート状樹脂成形体1〜5をそれぞれ破砕し、破砕物20mgをテトラヒドロフラン5mlに漬けることで可溶成分を抽出し、試料溶液を得た。得られた試料溶液について、テトラヒドロフランを展開溶媒として用いてゲル・パミエーション・クロマトグラフィーを行ない、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。

<重合転化率> シート状樹脂成形体1〜5をそれぞれ破砕し、破砕物0.3gをトルエン3.5mlに漬けることで可溶成分を抽出し、試料溶液を得た。得られた試料溶液についてガスクロマトグラフィーを行い、残存モノマー量を求めた。この値を用いて、モノマーの重合転化率を算出した。

<ガラス転移温度(Tg)> シート状樹脂成形体1〜4を、切断装置(ラボカッターMC−120、マルトー社製)にて5mm角に切断し、熱機械分析(TMA)測定装置(EXSTAR TMA/SS7100、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いて、膨張・圧縮法によりTMA測定を行った。得られたデータから、ガラス転移温度(Tg)を算出した。 また、シート状樹脂成形体5については、180℃で30分間加熱して熱硬化させたものを用いて、上記と同様の方法により測定を行った。

<ピール強度> 積層体1〜5の表面の銅箔のピール強度をJIS C−6481に準拠して測定した。 また、150℃で168時間加熱した後の積層体1〜5について、同様にピール強度を測定した。但し、積層体5については、150℃で168時間加熱後に銅箔に膨れが生じたために、ピール強度の測定を行わなかった。

第1表から以下のことがわかる。 実施例1〜3で得られた樹脂成形体1〜3は、未反応モノマーや低分子揮発成分が少ない。このため、ガラス転移温度が高い値になっている。また、このような樹脂成形体1〜3で構成された積層体1〜3は、金属と樹脂層との間の密着性がよく、ピール強度に優れている。 一方、DCP−MEを含有しない重合性組成物4を用いた比較例1の積層体4では、ピール強度が低い。 また、連鎖移動剤2を用いて架橋構造を形成させた比較例2の積層体5では、未反応成分が残存するため、ガラス転移温度が実施例のものよりも低くなり、さらに、加熱後に銅箔に膨れが生じた。この膨れは、加熱により銅箔のピール強度が大幅に低下したために、シート状樹脂成形体中の揮発成分の揮発に伴って引き起こされたものと推測される。

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