技術分野本発明は、メタセシス重合反応を用いた均質なブロック共重合体の製造法、その製造法により得られるブロック共重合体、並びにこのブロック共重合体の用途に関する。 本発明で得られるブロック共重合体は、半導体パッケージ等の電気・電子部品に使用される回路接続用接着材、その他の用途に有用に使用される。 背景技術2成分系メタセシス重合触媒(タングステンやモリブデンの塩化物とその活性化剤)を用いて、炭素−炭素2重結合を有する2種類のメタセシス重合性モノマを交互に添加し、ブロック共重合体を合成することは知られている(例えば、特開昭52−51500号公報)。 また、メタセシス重合触媒の金属カルベン錯体を用いて、構造が類似したメタセシス重合性モノマ同士のブロック共重合体を合成した例は知られている(Macrololecules 第28巻,第4709頁,1995年、Macrololecules 第30巻,第3137頁,1997年、Journal of the American Chemical Society 第118巻,第784頁,1996年)。 エレクトロニクスの分野では、その部品に使用される材料(半導体パッケージ材料、光学材料等)の特性は、近年の情報通信、マルチメディア、パーソナルコンピュータ等の技術進歩とともに、日々に更に高いものが要求されている。 要求特性の項目は、電子材料用接着材を例にとれば、低温接着性、短時間接着性、耐湿性、埋め込み性、フィルム形成能等であり、これらの特性は同時に高いレベルを満足しなければならない。 また、ブロック共重合体の各ブロック(そのブロック源のモノマ)同士が混ざり合わない(性質の異なる)二つの分子鎖をもつブロック共重合体はミクロ相分離構造を形成して、特異な性質を示すことが知られている。 一例として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS樹脂)は、ポリスチレン由来の剛直な分子鎖(ハードセグメント)とポリブタジエン由来の柔軟な分子鎖(ソフトセグメント)とからなるミクロ相分離構造を形成するブロック共重合体である。 このSBS樹脂は、常温ではハードセグメントが架橋点として作用し、ソフトセグメントがゴム成分として働く熱可塑性樹脂のひとつである(高分子学会編、高分子データハンドブック応用編、培風館、1986、p.299−307参照)。 また、ポリエチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体の例は、非極性の分子鎖と極性の分子鎖とを有する非イオン系高分子界面活性剤であり、これは乳化剤や消泡剤として利用されている(シグマ−アルドリッチ社ホームページやCASレジストリー番号:97953−22−5参照)。 上記特開昭52−51500号公報に示された方法は、2成分混合後の触媒の空気・湿気に対する不安定性や乾燥した窒素雰囲気を要する等の取扱い性の問題があり、使用できる原料モノマの官能基や溶媒の選択幅にも制約がある。 また、プロトン放出能の高い官能基や、ホルミル基、ケトン基又はエステル基をもつ原料モノマ(又は溶媒)は、停止反応を誘発し触媒毒となるのでこの反応系では使えない(高分子学会編「高分子の合成と反応(1)」第393頁(共立出版、1990年発行))。 また、金属カルベン錯体を用いたブロック共重合体の合成では、構造が類似した2種類のモノマでの合成例は知られているが、構造が大きく異なる2種類のモノマを用いたブロック共重合体の製造法は未だ知られていない。 互いに構造及び/又は極性が大きく異なる2種類のメタセシス重合性モノマからブロック共重合体が得られるならば、そのブロック共重合体はミクロ相分離構造形成能をもつであろうし、また、極性基をもつ分子鎖からなるポリマ領域は金属との接着力を促進することが期待できる。 また、ポリアルキレン鎖等の非極性分子鎖からなるポリマ領域は、エラストマとして作用し、ポリマ自体を低弾性化し、接着力強化に寄与することも期待できる。 更に、二つの原料モノマの種類をいろいろ変えることで、ブロック共重合体の低吸水率、低誘電率、低弾性、透明性等の諸物性を更に向上させることも期待できる。 また更に、原料モノマの仕込量を変化させることでその物性を微妙にコントロールすることも期待できる。 発明の開示本発明の目的は、構造及び/又は極性が大きく異なる2種類のメタセシス重合性モノマを原料として用いた場合でも、均質なブロック共重合体を容易に合成できる製造法を提供することであり、更には、それにより得られたブロック共重合体を、半導体パッケージ等の電気・電子部品の回路接続用接着材等に利用することを目的とする。 本発明者らは、安定でかつ高活性なルテニウムカルベン錯体触媒を用いて、合成原料のノルボルネン誘導体とシクロアルケンとを共重合反応させる際に、初めに、シクロアルケン及び必要なルテニウムカルベン錯体触媒の全量を反応させ、その後に、ノルボルネン誘導体を加え反応させると、所望の均質なブロック共重合体が安定して得られることを見出し、これを端緒として、以下の発明を完成するに至った。 本発明は、メタセシス重合可能な不飽和単環化合物(A)と、メタセシス重合可能な不飽和多環化合物(B)とを、金属カルベン錯体触媒(C)を用いてメタセシス重合反応させる際、初めに、不飽和単環化合物(A)及び必要な金属カルベン錯体触媒(C)の全量を混ぜ反応させ、その後に、不飽和多環化合物(B)を加え反応させるブロック共重合体の製造法である。 このとき、上記反応のあとに更に、反応停止剤を加えて重合反応を停止させると共に、重合体の一端に結合した触媒(C)由来の触媒活性部位を外し、触媒(C)の中心金属に配位したハロゲン原子等を除くことが好ましい。 また、本発明は、上記製造法で製造されるブロック共重合体にも関する。 製造されるブロック共重合体の一つのタイプは、その共重合体のブロックの一つが、無置換又は置換されたメチレン基を主鎖に有する分子種(A)がm個鎖状に連なる分子鎖(mA;−AAA…AAA−;ブロックA)から成り、他のブロックは、シクロ環構造を主鎖に有する分子種(B)がn個鎖状に連なる分子鎖(nB;−BBB…BBB−;ブロックB)から成っていて、更にその共重合体分子の一端には、金属カルベン錯体触媒(C)由来の触媒活性部位以外の残基が結合しているブロック共重合体である。 製造される別のタイプのブロック共重合体は、上記共重合体分子の他端に、更に、金属カルベン錯体触媒(C)由来の触媒活性部位が結合している共重合体である。 本発明の製造法において、重合反応を停止させることができ、かつ、触媒(C)の触媒活性部位を外すことができる重合反応停止剤を用いた場合は、前者のタイプのブロック共重合体を与える。 上記製造法において、反応停止剤を加える前又は反応停止剤を加えない場合、あるいは、重合反応を停止させるが重合体の一端に結合した触媒(C)由来の触媒活性部位を外せない反応停止剤を用いた場合、後者のタイプの共重合体を与える。 上記ブロック共重合体の分子量分布の分散度は、通常、1.0以上2.5以下、好ましくは、1.0以上2.0以下を示す。 ここで、分子量分布の分散度は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で計算される値である。 また、上記いずれのブロック共重合体についても、好ましいものは、ブロック共重合体の一つのブロックが、無置換又は非極性基で置換されたメチレン基を主鎖に有する分子種(A)がm個鎖状に連なる非極性かつ柔軟な分子鎖(mA)から成り、他のブロックは、シクロ環構造を主鎖に含み、そのシクロ環上に極性置換基を有する分子種(B)がn個鎖状に連なる極性かつ剛直な分子鎖(nB)から成っているブロック共重合体である。 また、本発明は、無置換又は非極性基で置換されたメチレン基を主鎖に有する分子種(A)がm個鎖状に連なる非極性かつ柔軟な分子鎖(mA)と、シクロアルカン誘導体、シクロアルケン誘導体、オキサシクロアルカン誘導体、オキサシクロアルケン誘導体、チアシクロアルカン誘導体又はチアシクロアルケン誘導体のいずれかのシクロ環構造を主鎖に含み、そのシクロ環上に極性置換基を有する分子種(B)がn個鎖状に連なる極性かつ剛直な分子鎖(nB)とを含んで成るブロック共重合体でもある。 更に、本発明は、上記ブロック共重合体を含有する回路接続用接着材にも関する。 発明を実施するための最良の形態先ず、ブロック共重合体の製造法について説明する。 製造法は、通常、次の工程(i)及び工程(ii)から成る。 工程(i):メタセシス重合可能な不飽和単環化合物(A;モノマA;分子種Aともいう)と、金属カルベン錯体触媒(C;Catalystともいう)の必要量の全量とを加え混合し、開環メタセシス重合させる。 末端に金属カルベン錯体触媒由来の触媒活性部位(Cata)をもつ分子鎖(すなわち、Cata−AAA…AAA−lyst)を生成する。 なお、Cataは、金属カルベン錯体触媒由来の触媒活性部位で金属を含む部位を意味し、lystはその残基を意味する。 工程(ii):続いて、上記反応系に、メタセシス重合可能な不飽和多環化合物(B;モノマB;分子種Bともいう)を加え、混合する。 前記分子鎖(Cata−AAA…AAA)の触媒活性部位(Cata)末端から、順次、モノマBを取り込むようにして、BBB…BBB鎖が伸長し、末端に触媒活性部位(Cata)をもつジブロック共重合体(Cata−BBB…BBB−AAA…AAA−lyst)が生成する。 なお、モノマBと触媒(C)の全量とを加えて混合・反応させ、続いて、モノマAを加え反応させても、均質なジブロック共重合体は生成しない。 また、仮にCata−AAA…AAA−BBB…BBB−lystで表されるジブロック共重合体が部分的に生成したとしてもその収量又は収率は低い。 本発明の製造法で、このようなジブロック共重合体(Cata−BBB…BBB−AAA…AAA−lyst)を収率よく合成できる理由は、触媒(C)が促進するモノマAの重合開始反応速度は重合伸長反応速度よりも大きく、そのため、工程(i)の生成物の大部分はCata−AAA…AAA−lystであり、単独の触媒(C)としては残っていないからと推定している。 一方、触媒(C)が促進するモノマBの重合伸長反応速度は重合開始反応速度よりも大きいので、逆の順序、すなわち初めにモノマBと触媒(C)の全量とを加えた場合、工程(i)では未反応の触媒(C)を残しつつCata−BBB…BBB−lystが生成することとなる。 この残った触媒(C)が次の工程(ii)で反応触媒となってCata−AAA…AAA−lystを生成させ、ジブロック共重合体(Cata−AAA…AAA−BBB…BBB−lyst)の収率を下げ、生成物は不均質な重合体となると考えられる。 なお、工程(ii)に続いて、更にモノマAを反応系に添加すれば、上記ジブロック共重合体(Cata−BBB…BBB−AAA…AAA−lyst)の触媒活性部位から、順次、モノマAを取り込み、トリブロック共重合体(Cata−AAA…AAA−BBB…BBB−AAA…AAA−lyst)を生成させることもできる。 また、上記工程(ii)に続いて、好ましくは、反応停止剤を加えてメタセシス重合反応を停止させる工程(工程(iii))を加える。 反応停止剤としては、メタセシス重合反応を停止するとともに重合体の一端に結合した触媒(C)由来の触媒活性部位も外すもの、例えば、分子末端に二重結合を有しその隣接位置に電子吸引性基を有する酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、フェニルビニルスルフィド、N−ビニルピロリドン等のビニルオレフィン化合物、4−ビニルピリジン等の電子供与能の大きな配位性化合物、あるいはエキソメチレン化合物などがある。 これらの中でも酢酸ビニルやエチルビニルエーテルが好ましく使用される。 また、メタセシス重合反応を停止させるが重合体の一端に結合した触媒(C)由来の触媒活性部位を外さないものとして、イミダゾール、2,2'−ビピリジン、4−メチルピリジン等がある。 以下に、本発明に用いるモノマA、モノマB及び触媒(C)を順に説明する。 本発明に用いる不飽和単環化合物(モノマA)としては、開環メタセシス重合可能で、開環重合ののちには環構造をもたない重合体を与える化合物が挙げられる。 好ましくは、分子中に炭素−炭素二重結合を有する置換又は無置換のシクロアルケン誘導体が挙げられる。 シクロアルケン誘導体のシクロ環を構成する元素は、通常、3〜14個の炭素原子、好ましくは、4〜9個の炭素原子であり、炭素原子の一部はケイ素原子又はホウ素原子で置き換わっていてもよい。 また、シクロ環を構成する一部の炭素原子に代えて、酸素原子、硫黄原子、窒素原子又はリン原子としてもよいが、この場合は、分子鎖mA(ブロックA)は極性を示す。 シクロ環上に置換基がある場合の置換基Y 2としては、炭素原子数1〜20のアルキル基やハロゲン原子などが挙げられるが、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基である。 上記置換基の他に、カルボニル基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、シロキシ基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基、アミノ基、アミド基、ホルミル基、水酸基、炭素原子数1〜20のヒドロキシアルキル基、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素原子数3〜20のアシロキシアルキル基、炭素原子数2〜20のシアノアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、炭素原子数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素原子数1〜20のアルキルセレノ基、炭素原子数6〜20のアルキルセレネニニル基又は炭素原子数1〜20のアルキルセレノニル基などもある。 この場合は、分子鎖mA(ブロックA)は極性を示す。 本発明に使用されるシクロアルケン誘導体の具体的化合物としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、5−メトキシ−1−シクロオクテン、5−ブロモ−1−シクロオクテン、5−イソプロポキシ−1−シクロオクテン、5−ホルミル−1−シクロオクテン、エチルシクロオクト−1−エン−5−カルボキシレート、トリメチルシリル=シクロオクト−1−エン−5−カルボキシレート等のシクロオレフィン類などが挙げられ、好ましくは、シクロペンテン及び/又はシクロオクテンが使用される。 その他、二重結合を2以上有する不飽和単環化合物も使用することができる。 このような不飽和単環化合物としては、例えば、1,5−シクロオクタジエン、1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、1,5,7−シクロドデカトリエン等が挙げられる。 本発明で使用される不飽和多環化合物(B)としては、メタセシス重合可能で、開環重合ののちも主鎖に環構造をもつ重合体を与える化合物が挙げられる。 そのような化合物として、好ましいものの一つは、置換又は無置換のノルボルネン誘導体であり、例えば、下記式(III)で示されるものが挙げられる。
式(III)中、mは0〜3の整数を示し、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。 R
5 〜R 8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子、カルボニル基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、シロキシ基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基、アミノ基、アミド基、ホルミル基、水酸基、炭素原子数1〜20のヒドロキシアルキル基、炭素原子数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素原子数3〜20のアシロキシアルキル基、炭素原子数2〜20のシアノアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、炭素原子数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素原子数1〜20のアルキルセレノ基、炭素原子数1〜20のアルキルセレネニニル基及び炭素原子数1〜20のアルキルセレノニル基から選ばれ、少なくとも1つは水素原子である。 なかでも、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、シロキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、アミド基、ホルミル基、水酸基から選ばれることが好ましく、水素原子、カルボニル基、シロキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、アミド基から選ばれることがより好ましい。 また、R
5 〜R 8のいずれか2つが1組又は2組結合して−CO−O−CO−基(酸無水物)、−CO−O−基(ラクトン)、−CO−NR 9 −CO−基(イミド)及び−CO−NR 9 −基(ラクタム)から選ばれる基となっていてもよい。 ここで、R 9は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基及び炭素原子数6〜20のアリール基から選ばれる。 なかでも、−CO−O−CO−基(酸無水物)又は−CO−NR 9 −CO−基(イミド)が好ましく、イミドの場合、R 9は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましい。 X
5及びX 6は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子及びC(R 10 ) 2から独立に選ばれる。 2個のR 10は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基及び炭素原子数6〜20のアリール基から選ばれる。 2個のR 10が結合して3〜8員環の環構造を形成していてもよく、スピロ環を形成していてもよい。 R 10は水素原子又はハロゲン原子以外の場合、炭素原子数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基のいずれかで置換されていてもよい。 なかでも、酸素原子又はC(R 10 ) 2が好ましく、R 10としては、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数3〜6のシクロアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。 また、X 5及びX 6は同一であることが好ましい。 式(III)で示される具体的化合物としては、例えば、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン、5−アセチル−2−ノルボルネン、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、5−ノルボルネン−2−カルボアルデヒド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸モノメチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジメチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジエチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジ−n−ブチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジシクロヘキシルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジベンジルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール、2,3−ビス(メトキシメチル)−5−ノルボルネン、N−メチル−5−ノルボルネン−2,3−カルボキシイミド、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−オール等の二環ノルボルネン、ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等の三環ノルボルネン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン等の四環ノルボルネン、トリシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの三量体)、テトラシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの四量体)等の五環以上のノルボルネン、テトラシクロドデカジエン、対称型トリシクロペンタジエン等の2個以上のノルボルネン基を有する化合物などが挙げられる。
なかでも、極性基を有し、反応性の高くない5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸モノメチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジメチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジエチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジシクロヘキシルエステル及び5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジベンジルエステルが好ましく、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジメチルエステル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジエチルエステル及び5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジシクロヘキシルエステルがより好ましい。
この他に、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸、2−カルボキシ−3−メトキシカルボニル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,3−ジメトキシカルボニル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,3−ジエトキシカルボニル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,3−ジヘキシルオキシカルボニル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,3−ジベンジルオキシカルボニル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,3−ビス(メトキシメチル)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、N−メチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−カルボキシイミド、7−チアビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−カルボキシ−3−メトキシカルボニル−7−チアビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,3−ジメトキシカルボニル−7−チアサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−7−チアビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、等も式(III)の具体的化合物として例示することができる。
また、2,3−ビス(メトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、2,3−ビス(メトキシカルボニル)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、2,3−ビス(メトキシカルボニル)−7−チアビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン等の二重結合を2個(それ以上)含む化合物も用いられる。
なお、式(III)で示される化合物をモノマに用いた場合、メタセシス重合反応により開環した分子鎖中には、次の式(IIIa)で示される炭素−炭素二重結合が存在する。
式中、m、R
5 〜R 8 、X 5 、X 6は式(III)中におけると同義である。 不飽和単環化合物(A)及び不飽和多環化合物(B)の各々の使用量は、目的とするブロック共重合体に応じて決定すればよい。 このとき、用いた不飽和単環化合物(A)及び不飽和多環化合物(B)のモル比にほぼ等しい構成比(A/B)のブロック共重合体が得られることを考慮する。
本発明で使用される金属カルベン錯体触媒(C)としては、不飽和単環化合物(A)と不飽和多環化合物(B)とをそれぞれ原料としてメタセシス重合反応を触媒するものであればよい。 好ましいものとしては、次の式(I)又は式(II)で示される化合物が挙げられる。 これらの化合物は、酸素や水分に対して安定であるとともに、性質の異なる2種のモノマ同士の共重合に優れている。 そのため、重合反応は、不活性ガス雰囲気中はもとより、大気中でも可能である。 金属カルベン錯体触媒(C)は、単独で用いても複数のものを組み合わせて用いてもよい。
式(I)及び(II)中、Mはルテニウム、オスミウム又は鉄であり、好ましくは、ルテニウムである。
X
1 〜X 4は、中心金属Mへ配位可能でその配位原子上に陰電荷をもつアニオン性配位子(原子又は原子団)であり、例えば、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、CF 3 CO 2 −、CH 3 CO 2 −、CF 2 HCO 2 −、CFH 2 CO 2 −、(CH 3 ) 3 CO−、(CF 3 ) 2 (CH 3 )CO−、(CF 3 )(CH 3 ) 2 CO−、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐アルコキシ基、置換又は無置換のフェノキシ基、トリフルオロメタンスルホナート基等が挙げられ、なかでもハロゲン原子が好ましく、塩素原子が更に好ましい。 X 1とX 2 、及びX 3とX 4とがいずれも(塩素原子等の)ハロゲン原子であることが更に好ましい。 L
1 〜L 4は中心金属Mへ配位可能な中性の電子供与基を示し、例えば、PR 11 R 12 R 13 (ここで、R 11 〜R 13は、それぞれ独立して、置換又は無置換の炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基及び炭素原子数3〜10のシクロアルキル基から選ばれる)で示されるホスフィン、置換又は無置換のピリジン、1,3−ジ置換イミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。 なかでもトリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン等のホスフィン、1,3−ジメシチルイミダゾール−2−イリデン、4,5−ジヒドロ−1,3−ジメシチルイミダゾール−2−イリデン等のイミダゾール化合物が好ましく、トリシクロヘキシルホスフィンが更に好ましい。 R
1 〜R 4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のカルボキシレート基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素原子数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素原子数1〜20のアルキルセレノ基、炭素原子数1〜20のアルキルセレニニル基、又は炭素原子数1〜20のアルキルセレノニル基から選ばれ、それぞれは炭素原子数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数6〜20のアリール基で置換されていても良く、前記アリール基はハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基で置換されていてもよい。 上記の式(I)又は式(II)で示される具体的化合物としては、例えば、下記式(V)〜(XIV)で示される化合物等があり、中でも式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)で示される化合物が好ましく用いられる。
金属カルベン錯体触媒(C)の使用量は、希望するブロック共重合体の分子量を考慮して決定される。 使用量が多いほどブロック共重合体の分子量は小さくなる。 不飽和単環化合物(A)及び不飽和多環化合物(B)の総量100重量部に対して、通常、0.001〜20重量部、好ましくは0.001〜10重量部、更に好ましくは0.05〜10重量部である。
本発明における重合反応では、初めに、不飽和単環化合物(A)及び必要な金属カルベン錯体触媒(C)の全量を混合・反応させ、その後に、反応系に不飽和多環化合物(B)を加え反応させること以外は、一般的な重合反応の条件を用いることができる。
重合反応の反応時間は、ブロック共重合体が得られる限り、特に制限されない。 反応時間は、工程(i)においては、10分〜6時間、好ましくは、0.5〜2時間であり、工程(ii)においては、(i)の反応後に更に1〜6時間、好ましくは、2〜6時間反応させる。
重合反応の反応温度は、ブロック共重合体が得られる限り、特に制限はなく、反応性の観点からは、好ましくは−20〜200℃、更に好ましくは0〜100℃である。
重合反応においては、溶媒を用いることが好ましい。 本発明で使用される溶媒としては、不飽和単環化合物(A)、不飽和多環化合物(B)及び触媒(C)を溶解可能なものであれば特に制限されない。 このような溶媒としては、例えば、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、4−メチル−3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤が挙げられる。
溶媒を用いる場合、その使用量は、重合反応の容易性の観点から、反応系全体(モノマAとB、触媒及び溶媒の合計量)に対して、好ましくは60〜95重量%、更に好ましくは70〜90重量%、特に好ましくは80〜90重量%である。 なお、触媒(C)を溶媒に溶解した状態で長時間放置すると分解反応が少しずつ進行するので、不飽和単環化合物(A)を溶媒に溶解した後に(粉末状の)触媒(C)を添加するか、単環化合物(A)の溶解に用いた溶媒と同じ溶媒(少量)に溶解した触媒溶液を用いることが好ましい。
工程(i)及び工程(ii)、更に工程(iii)を経て合成された共重合体中には、なお炭素−炭素二重結合が存在する。 この二重結合に起因する経日変化(酸化による劣化や他の分子との架橋反応等)を避けるため、得られた共重合体に更に水素添加し、重合体分子中に残存する不飽和結合を飽和させることが好ましい。
水素添加反応は公知の金属触媒を用いた接触還元法やヒドラジン還元法等の公知の方法を用いて行うことができる。
上記製造法で得られるブロック共重合体は、原料モノマを選ぶことにより、無置換又は非極性基で置換されたメチレン基を主鎖に有する分子種(A)がm個鎖状に連なる非極性かつ柔軟な分子鎖(mA、すなわち、−AAA…AAA−)と、シクロアルカン誘導体、シクロアルケン誘導体、オキサシクロアルカン誘導体、オキサシクロアルケン誘導体、チアシクロアルカン誘導体又はチアシクロアルケン誘導体のいずれかのシクロ環構造を主鎖に含み、そのシクロ環上に極性置換基を有する分子種(B)がn個鎖状に連なる極性かつ剛直な分子鎖(nB、すなわち、−BBB…BBB−)とを含んで成るブロック共重合体となり、そのブロック共重合体の分子量分布の分散度が1.0〜2.5の均質性を示すブロック共重合体が得られる。 これらには変形のブロック共重合体、すなわち、分子鎖mA−分子鎖nB−分子鎖mA等のブロック共重合体(トリブロック共重合体)等も含まれる。
このようなブロック共重合体(ジブロック共重合体)の分子種(A)の繰返し数m、及び分子種(B)の繰返し数nは、基本的には、原料(モノマA、モノマB及び触媒C)の使用量により決まる。 繰返し数m及びnは、通常は、それぞれ、5〜5000、好ましくは、10〜1000である。 5未満では、分子鎖mA及び分子鎖nBの特性、すなわち、分子鎖mAの柔軟性(ソフトセグメント)及び分子鎖nBの剛直性(ハードセグメント)をそれぞれ発揮させることが難しくなる。 また、分子鎖mAの極性及び分子鎖nBの非極性をそれぞれ発揮させることも難しくなる。 一方、5000を越えるものでは、合成反応に時間がかかる。 また、繰返し数のmとnの比(m/n)は、互いにバランスをとった数とし、通常、95/5〜5/95であり、好ましくは90/10〜10/90である。
分子鎖mAと分子鎖nBの各々の極性については、有機概念図を指針としてその原料モノマを選ぶことができる。 有機概念図は、有機化合物の化学構造から種々の物理化学的性状を予測する有効な手法である(甲田善生著、有機概念図−基礎と応用−、三共出版(1984)参照)。 即ち、有機概念図とは、化合物の性質を「共有結合性を表わす有機性値」と「イオン結合性を表わす無機性値」に分け、すべての有機化合物を有機軸と無機軸と名づけた直交座標上の1点づつに位置づけて示すものである。 これに基づく有機性値とは、有機性の数値の大小は分子内のメチレン基を単位とし、そのメチレン基を代表する炭素原子の数で測ることができるとし、基本になる炭素数1個の数値は、直鎖化合物の炭素数5〜10付近での炭素が1個加わることによる沸点上昇の平均値20℃を取り、これを基準に20と定めた値である。 一方、無機性値とは、種々の置換基の沸点への影響力の大小を、水酸基を基準に定め、直鎖アルコールの沸点曲線と直鎖パラフィンの沸点曲線との沸点差を炭素数5の付近でとると約100℃となるので、水酸基1個の影響力を数値で100と定めた値である。 これを基準として、他の官能基の影響力もこれに比例した値として定める。 この無機性値と有機性値は、グラフ上で1対1に対応するように定めてある。 有機化合物の無機性値及び有機性値はこれらの値から算出するものである。 無機性値の大きい有機化合物は極性が高く、有機性値の大きい有機化合物は極性が低い。
有機概念図を指針とした場合、本発明における分子種(A)の無機性対有機性の比(無機性/有機性)は、通常、0〜0.3であり、好ましくは0〜0.25である。 分子種(A)がメチレンであるときの無機性対有機性の比は0であり、分子鎖mAのポリメチレン鎖は非極性かつ柔軟な特性をもつことを意味する。
また、分子鎖(nB)において、シクロ環上にある極性置換基は、Hammettの置換基定数σから分離された「極性基効果に基づく置換基定数」σIを指針として選択することができる(M.Charton,Prog.Phys.Org.Chem.,13,119−251(1981)参照)。 σIは水素原子を0として、置換基の極性が高いほど大きな値となる。 分子鎖(nB)におけるシクロ環上の極性置換基のσIは、通常+0.05〜+0.80であり、好ましくは+0.10〜+0.80である。
なお、分子種(B)の有機概念図上の無機性対有機性の比は、通常、0.4〜10.0であり、好ましくは0.45〜7.5である。
得られたブロック共重合体の用途としては、これに、硬化性化合物及び硬化剤を加え、更に必要に応じて、ベース樹脂、その他の添加剤を適量加え、回路接続用接着材とすることができる。 接着材は用途に応じて種々の形態、例えば、フィルム状、シート状、テープ状、液状、ペースト状などにすることができる。
なお、回路接続用接着材を調製する場合、各々の配合比は、硬化性化合物100重量部に対して、硬化剤は、約1〜約100重量部(マイクロカプセル化したものを用いた場合は、100重量部を超えて配合することもある)であり、ブロック共重合体は、約5〜約500重量部程度である。
i)硬化性化合物硬化性化合物は硬化剤(次に説明)により重合可能な官能基を有する物質であり、モノマでもオリゴマーでもよい。 具体的には、イオン重合性のエポキシ化合物、ラジカル重合性のアクリレート化合物やメタクリレート化合物等が挙げられる。
ii)硬化剤硬化剤は前述の硬化性化合物の重合を開始する化合物である。 通常、加熱又はエネルギー線の照射により、重合活性種を発生させる硬化剤が使用される。 そのような硬化剤としては、潜在性を有するイミダゾール誘導体(マイクロカプセル化したものがある)やスルホニウム塩類等のイオン重合性モノマ、有機過酸化物、アゾ化合物などの加熱によりラジカルを発生するラジカル重合性モノマ等がある。
iii)ベース樹脂ベース樹脂としては、フィルム形成能が高く、硬化時の応力緩和に優れ、高接着性のものが使用できる。 そのような樹脂としては、例えば、分子内に水酸基を有する分子量10,000以上のフェノキシ樹脂等が挙げられる。
iv)その他の添加剤回路電極の高さやばらつきを吸収するため、また、異方導電性を積極的に付与する目的で導電粒子を添加・分散することができる。 また、接続信頼性等の向上を目的として、カップリング剤、充填剤、老化防止剤等を添加することもできる。
実施例実施例1(仕込モノマのA/B=50/50(モル比)、使用溶媒:シクロヘキサノン)
100mlのガラス製三ツ口フラスコ中、モノマAとしてのシクロオクテン0.791g(7.13mmol)をシクロヘキサノン8mlに溶解して60℃に加熱後、式(V)のルテニウムカルベン錯体(STREM CHEMICAL社製)39.2mg(0.048mmol)を添加し、60℃でメカニカルスターラーで攪拌しながら1時間反応させた(工程(i))。 反応中、反応系中から少量の反応溶液を抜き取り、それに酢酸ビニルを加えて反応を停止したものをGPC測定用試料とした。
その後、モノマBとしてのendo−5−ノルボルネン−2,3−ジメチルエステル(endo−DME、Lancaster社製)1.50g(7.13mmol)を添加し、さらに2時間反応させた(工程(ii))。 反応中、反応系中から少量の反応溶液を抜き取り、酢酸ビニルを加えて反応を停止したものをGPC測定用試料とした。
その後、酢酸ビニル0.55ml(6.0mmol)及びシクロヘキサノン6mlを添加して5分間反応させ(工程(iii))、放冷した反応液をメタノール200ml中に注いで白色の沈殿物(重合体)を得た。 収率は63%であった。
得られた重合体をテトラヒドロフラン(和光純薬製、HPLC用)に溶解して、テトラヒドロフランを溶離液として用いたGPCより分子量を測定したところ、標準ポリスチレン換算で数平均分子量Mnは74,000、重量平均分子量Mwは143,000、分子量分布の分散度は1.93であった。 GPCの測定は、GL−A150カラム(日立化成製ゲルパック、排除限界5×10
5 )を使用し、流速1cm 3 /分、カラム温度40℃で行った。 GPCクロマトグラムを第1図に示した。 また、得られた重合体を重クロロホルム溶液とし、
1 H−NMRスペクトルを測定した。 結果を第2図に示した。 シクロオクテンが開環して生じたメチレン水素H
aの積分値とendo−DMEが開環した部分のメトキシ基のメチル水素の積分値との比から、重合体中の各原料成分モル比を算出した結果、シクロオクテン/endo−DMEのモル比は52/48であった。 なお、得られた重合体のポリ(シクロオクテン)−block−ポリ(endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸ジメチル)におけるシクロオクテン開環重合鎖の有機概念図上の無機性/有機性値は0.01と計算され、シクロヘキサン環上のメトキシカルボニル基の極性基効果に基づく置換基定数σIは+0.32である。
実施例2(仕込モノマのA/B=20/80(モル比))
シクロオクテンの使用量を0.319g(2.85mmol)、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジメチルエステルの使用量を2.41g(11.4mmol)とした以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。 収率は82%、Mnは52,000、Mwは105,560、分子量分布の分散度は2.03であった。 また、実施例1と同様に各原料成分モル比を算出した結果、重合体中のシクロオクテン/endo−DMEのモル比は18/82であった。
実施例3(仕込モノマのA/B=80/20(モル比))
シクロオクテンの使用量を1.257g(11.4mmol)、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジメチルエステルの使用量を0.60g(2.85mmol)とした以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。 収率は86%、標準ポリスチレン換算のMnは60,700、Mwは105,618、分子量分布の分散度は1.74であった。 また、実施例1と同様に各原料成分モル比を算出した結果、シクロオクテン/endo−DMEのモル比は81/19であった。
比較例1
100mlのガラス製三ツ口フラスコ中、モノマBとしてのendo−5−ノルボルネン−2,3−ジメチルエステル(endo−DME、Lancaster社製)1.50g(7.13mmol)をシクロヘキサノン8mlに溶解して60℃に加熱後、式(V)のルテニウムカルベン錯体(STREM CHEMICAL社製)39.2mg(0.048mmol)を添加し、60℃でメカニカルスターラーで攪拌しながら1時間反応させた。 その後、モノマAとしてのシクロオクテン0.791g(7.13mmol)を添加し、さらに2時間反応させた後、反応停止剤として酢酸ビニル0.55ml(6.0mmol)及びシクロヘキサノン6mlを添加して5分間反応させ、その後放冷した反応液をメタノール200ml中に注いで白色の沈殿物(重合体)を得た。
実施例と同様に測定した比較例1の重合体のGPCクロマトグラムを第1図に示した。 また、実施例1と同様に測定した重合体中のシクロオクテン/endo−DMEのモル比は46/54であった。
比較例2
100mlのガラス製三ツ口フラスコ中で、モノマAとしてのシクロオクテン0.791g(7.13mmol)をシクロヘキサノン8mlに溶解して60℃に加熱後、式(V)のルテニウムカルベン錯体(STREM CHEMICAL社製)39.2mg(0.048mmol)を添加し、60℃でメカニカルスターラーで攪拌しながら1時間反応させた後、反応停止剤として酢酸ビニル0.55ml(6.0mmol)及びシクロヘキサノン6mlを添加して5分間反応させ、その後放冷した反応液をメタノール200ml中に注いで白色の沈殿物(モノマAからの重合体)を得た。
実施例と同様に測定した比較例2の重合体のGPCクロマトグラムを第1図に示す。
比較例1では、2つのピークが見られることから、これらは2種類のポリマ(ホモポリマ又はコポリマ)の混合物であり、少なくとも均質なブロック共重合体は得られていないことが分かる。 これに対して、実施例1では、比較例2(モノマAのみの重合)より高分子量側へシフトした1つのピークとなっていることから、モノマA及びモノマBの混合物ではなく共重合体が得られたことが確認できた。 また、実施例1の重合体をフィルム化して、動的粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いてガラス転移温度(Tg)を測定したところ、−55℃と108℃付近の2点にあったことから、実施例1の重合体は、ランダム共重合体ではなく、ブロック共重合体であることが確認できた。
実施例2及び3の重合体も、実施例1と同様にGPCとTgの測定結果からブロック共重合体であることが確認できた。
また、実施例1〜3では、いずれも原料モノマの仕込モル比にほぼ等しい原料成分モル比(共重合比)を有するブロック共重合体が得られた。
実施例4(仕込モノマのA/B=50/50(モル比)、使用溶媒:テトラヒドロフラン)
使用溶媒としてテトラヒドロフランを用い、シクロオクテンの使用量を11g(100mmol)とし、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジメチルエステルの使用量を21g(100mol)とし、式(V)のルテニウムカルベン錯体の使用量を0.27g(0.33mmol)とし、実施例1と同様にして、重合体を得た。 収率は収率90%、標準ポリスチレン換算のMnは103,000、分子量分布の分散度は1.91であった。 また、実施例1と同様に各原料成分モル比を算出した結果、重合体中のシクロオクテン/endo−DMEのモル比は50:50であった。 これは両モノマの仕込み比に一致していた。
実施例5(仕込モノマのA/B=80/20(モル比))
シクロオクテンの使用量を70g(640mmol)とし、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジメチルエステルの使用量を34g(160mmol)とした以外は実施例4と同様にし(式(V)のルテニウムカルベン錯体の使用量は0.33mmol)、重合体を得た。 収率は85%、標準ポリスチレン換算のMnは75,000、分子量分布の分散度は1.6であった。 また、実施例1と同様に各原料成分モル比を算出した結果、重合体中のシクロオクテン/endo−DMEのモル比は78:22であった。
実施例6(仕込モノマのA/B=50/50(モル比)、触媒を多量使用)
式(V)のルテニウムカルベン錯体の使用量を実施例4の10倍量の3.3mmolとした以外は実施例4と同様にして、重合体を得た。 収率は90%、標準ポリスチレン換算のMnは33,000、分子量分布の分散度は1.9であった。 また、実施例1と同様に各原料成分モル比を算出した結果、重合体中のシクロオクテン/endo−DMEのモル比は53:47であった。
実施例7(仕込モノマのA/B=80/20(モル比)、触媒を多量使用)
ルテニウムカルベン錯体の使用量を10g(13mmol)とした以外は実施例5と同様にして、重合体を得た。 収率は88%、標準ポリスチレン換算のMnは24,000、分子量分布の分散度は1.9であった。 また、実施例4と同様に各原料成分モル比を算出した結果、重合体中のシクロオクテン/endo−DMEのモル比は79:21であった。
実施例8 回路接続用フィルム状接着材の調製PKHC(フェノキシ樹脂、ユニオンカーバイト社製)20gと、エピコートYL−983U(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ社製)30g及び実施例4で調製したブロック共重合体(数平均分子量103,000、分子量分布1.91)20gを秤量し、トルエン/酢酸エチル=50/50(重量比)の混合溶剤に溶解して、固形分40%の溶液とした。 これに、ノバキュアHX−3941HP(潜在性硬化剤、旭チバ社製)30gを加え混合し、シランカップリング剤のエポキシシラン化合物(A−187、日本ユニカー社製)1.5gを加え混合した。 その後、これに平均粒径10μm、比重2.0の導電性粒子(ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設けたもの)を、3体積%(固形分に対して)配合分散し、この混合液を厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって、前記フッ素樹脂フィルム上に厚みが25μmの回路用接続用のフィルム状接着材を得た。
実施例9 回路接続体の作製上で得た片面がフッ素樹脂フィルム上に覆われた回路接続用のフィルム状接着材(厚み25μm)を用いて、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω)とを、180℃、4MPaで20秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続した。
このとき、あらかじめITOガラス上に、フィルム状接着材の接着面を70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続した後、フッ素樹脂フィルムを剥離し、もう一方の被着体であるFPCと接続して接続体とした。
得られた接続体の隣接回路間の抵抗値を測定したところ、隣接回路間の抵抗150点の平均は2.7Ωであり、良好な接続特性を示した。
また、この接続体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定しところ、接着強度は800N/mで、十分な接着強度を示した。 なお、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/分、25℃)を使用した。
産業上の利用可能性本発明のブロック共重合体の製造法によれば、二つの異なる原料モノマ(A,B)を用いて分子種A及び分子種Bがそれぞれ鎖状に塊となって連なるブロック共重合体が容易に得られる。 また、二つの異なる原料モノマ(A,B)の構造は極端に異なるものであってもよい。 また、共重合体に取り込まれる二つの分子種A及び分子種Bは、モノマの仕込量(モル)を反映するので、生成物(ブロック共重合体)を管理しやすい。 さらに、ポリマ(ブロック共重合体)の構造設計も容易で、所望のブロック共重合体を有効に製造することができる。
本発明で得られるブロック共重合体は、新規なブロック共重合体である。 また、低弾性で高強度、低応力、高接着性、耐湿性、耐熱性、フィルム形成能、更には他の成分との相溶性に優れる。 そのため、半導体パッケージ等の電子材料向け接着材料や、相溶化剤、可とう化剤、あるいは非イオン系高分子界面活性剤等の分野で広く利用でき、その工業的価値は大きい。
本発明の回路接続用接着材は、半導体パッケージ等の電気・電子部品の回路接続に用いられ、良好な接続特性及び接着強度を示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1で得られた重合体及び比較例で得られた重合体のGPCクロマトグラムである。
第2図は、実施例1で得られた重合体の
1 H−NMRスペクトルである。 |