歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キット

申请号 JP2012514798 申请日 2011-05-10 公开(公告)号 JPWO2011142335A1 公开(公告)日 2013-07-22
申请人 株式会社トクヤマデンタル; 发明人 浩司 松重; 浩司 松重; 小栗 真; 真 小栗;
摘要 本発明により、(U)(I) 溶解度 パラメーター(δ)が17.0〜23.0〔(MPa)1/2〕である有機溶剤100質量部、及び(II)平均粒子径が10μm以下の無機粒子0.1〜30質量部を含有してなる前処理剤と、(V1)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、及び(III)低級アルコール系溶剤を含有してなる接着剤と、を含んでなる、歯科用アルジネート 印象 材と印象用トレーとの接着用キット、及び(U)(I)溶解度パラメーター(δ)が17.0〜23.0〔(MPa)1/2〕である有機溶剤100質量部、及び(II)平均粒子径が10μm以下の無機粒子0.1〜30質量部を含有してなる前処理剤と、(V2)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、(II)有機過 酸化 物、及び(III)低級アルコール系溶剤を混合して得られる接着剤と、を含んでなる歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キットが開示される。
权利要求
  • (U)(I)溶解度パラメーター(δ)が17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕である有機溶剤100質量部、及び(II)平均粒子径が10μm以下の無機粒子0.1〜30質量部を含有してなる前処理剤と、
    (V1)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、及び(III)低級アルコール系溶剤を含有してなる接着剤と、
    を含んでなる、歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キット。
  • (U)(I)溶解度パラメーター(δ)が17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕である有機溶剤100質量部、及び(II)平均粒子径が10μm以下の無機粒子0.1〜30質量部を含有してなる前処理剤と、
    (V2)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、(II)有機過酸化物、及び(III)低級アルコール系溶剤を混合して得られる接着剤と、
    を含んでなる歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キット。
  • (V2)接着剤が、(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物を1〜50質量部、(II)有機過酸化物を0.1〜30質量部、及び(III)低級アルコール系溶剤を20〜98.9質量部、含有してなる請求項1又は2に記載の歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キット。
  • (U)前処理剤における(I)有機溶剤が、キシレン、トルエン、酢酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キット。
  • (V1)接着剤又は(V2)接着剤における(III)低級アルコール系溶剤が、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キット。
  • (V1)接着剤又は(V2)接着剤における(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物が、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリオルニチン、ポリリジン、及びキトサンから選ばれる少なくとも1種であるである、請求項1又は請求項2に記載の歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キット。
  • 说明书全文

    本発明は、歯牙等の治療の際に、アルジネート印象材と印象用トレーとを接着するために用いる接着用キットに関する。 更に詳述すれば、前処理剤、及び接着剤により構成されてなる上記接着用キットに関する。

    歯牙に欠損等がある場合は、これ等の欠損等を修復する必要がある。 欠損等を修復する際には、鋳造歯冠修復処理または欠損補綴処理等を必要とする場合がある。 これらの場合には、まず、基本処理を施した支台歯等の形状に倣う反転形状の型を採得する。 次に、その採得した型を用いて、支台歯等の模型を石膏等を用いて作製する。 その後、作成した模型を利用して補綴物を作製する。 最後に、作製した補綴物を支台歯等に装着して、歯牙を修復する。 この支台歯等の形状を印象と称し、印象を採得して具体的な形状を表す固体の型を作るために用いる硬化性材料を印象材と称する。

    一般的に、印象材としては、アルジネート印象材、寒天印象材、シリコーンゴム印象材、ポリサルファイドゴム印象材、あるいはポリエーテルゴム印象材等が用いられる。 これらの中でも、アルジネート印象材は、安価、かつ取扱いが容易であるので、最も広く用いられている。

    アルジネート印象材は、アルギン酸塩を主成分とする基材と、硫酸カルシウムを主成分とする硬化材とから成る。 当該基材と当該硬化材とをの存在下で練和すると、ゲル状硬化体が得られる。 アルジネート印象材は、前記硬化現象を利用する印象材である。

    アルジネート印象材(以下、単に「印象材」とも略する)を用いて印象を採得する作業は、以下の手順で行う。 まず、基材と硬化材とを混練して、硬化前の印象材を得る。 次に、この硬化前の印象材を歯列を模した印象用トレーに盛り付ける。 その後、口腔内の歯牙を印象材で包み込むようにして、印象材を盛り付けたトレーを歯牙に押し付ける。 最後に、印象材が硬化した後、トレーに接着して一体化した印象材を歯牙から外し、トレーと共に口腔外に撤去する。

    印象を採得する際に用いられるトレーは、既製トレーと個人トレーとの2種類に大別される。 既製トレーは、既製の大きさおよび形状を有するトレーである。 既製トレーの具体例としては、ステンレス、真鍮、あるいは真鍮にクロムめっきを施した金属製トレー等が挙げられる。 個人トレーは、各個人に合わせてその形状が個別に作製されるトレーである。 個人トレーの具体例としては、ポリメタクリル酸エステルからなるレジン製トレー、あるいは熱可塑性樹脂からなるモデリングコンパウンド製トレー等が挙げられる。 なお、レジン製トレーの素材となるポリメタクリル酸エステルとしては、通常、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルメタクリレート共重合体等が使用される。

    アルジネート印象材は、前述の各トレーに対する接着性が低いので、印象材を歯牙から外す際に、印象材がトレーから剥離することがある。 印象材がトレーから剥離する場合、採得した印象の形状が大きく変化し易い。 従って、印象材が剥離する場合は、精度の高い印象が採得できない問題がある。

    上述の問題を解決するために、網状、アンダーカット状あるいはパンチ穴を有するトレーを用いる方法も考えられる。 このような形状を有するトレーを用いることにより、トレーと印象材との接触面積が増加し、印象材とトレーとの保持が向上する。 その結果、印象材がトレーから剥離し難くなる。

    一方、上述のような形状を有するトレーでは無く、表面がなめらかなプレート状の既製トレーあるいは個人トレーを用いる際には、何らかの方法によって、印象材とトレーと間の保持力を高める必要がある。

    保持力を高める方法として、トレーと印象材との間に、微粉体、および有機溶剤を含有する接着剤を塗布して両者間の保持力を高める方法(特許文献1を参照)がある。 溶剤としては、レジン膨潤性の有機溶剤(例えば、キシレン、トルエン、酢酸エチル)を用いている。 これら溶媒の溶解度パラメーター(δ)は、17.0〜20.5〔(MPa) 1/2 〕の範囲内にある。

    他の方法としては、1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、溶剤、および好適には有機過酸化物を含有する接着剤を用いて、トレーと印象材とを接着する方法(特許文献2を参照)がある。

    特許文献1に示される接着剤においては、溶剤として、前記溶解度パラメーターの範囲内の溶解度パラメーターの値を有するレジン膨潤性の有機溶剤を用いている。 この有機溶剤の作用は、トレーの表面を膨潤および溶解させて、微粉体成分をトレー表面に付着させることにある。 トレーと印象材との間の接着力は、微粉体成分と印象材との間の物理的嵌合力によって高められるにすぎない。 したがって、斯様に物理的嵌合力に基づく接着力の増加に依存する場合は、接着力にばらつきが生じることは避けられない。 更に、この接着剤は、有機溶剤により膨潤可能な、レジン製トレーやモデリングコンパウンド製トレーに対しては有効である。 しかし、金属製トレーに用いる場合は、ほとんど接着力の増加効果が認められない。

    一方、特許文献2に示される接着剤においては、配合されているポリアミン化合物の有するアミノ基とアルジネート印象材の有するカルボキシル基との間に架橋が形成される。

    さらに、該ポリアミン化合物は各種トレー材質に対して親和性が高いため、レジン製トレーやモデリングコンパウンド製トレーのみならず、金属製トレーに対しても高い接着力が発揮される。 その結果、前記各種のトレーと印象材との接着力はかなり高いものになる。

    しかしながら、上記接着剤の有する、トレーと印象材との接着力は、実用化を考えると、依然として満足できるものではなく、さらに、改善の余地がある。
    特に、この接着剤を用いてレジン製トレーに印象材を接着し、口腔内において印象を採得する場合に、トレーに盛り付けた印象材を歯牙に押し付ける圧接力が不足すると、トレーと印象材との間の接着力が低下することが分った。 具体的には、歯牙にトレーが突き当る部位などの、比較的高い圧接力(100gf/cm 以上)が負荷される部分は良好に接着する。 しかし、トレー辺縁部などの、比較的弱い圧接力(20gf/cm 以下)が負荷される部分は、接着力が低下する。

    一方、トレーと印象材との接着力を高めるため、レジン製トレーは、その表面粗さを大きくする方法がある。 表面粗さを大きくする方法としては、トレー表面に、研磨処理(歯科用タービン等を用いて表面を研削する)やサンドブラスト処理を施す方法がある。 表面粗さが大きいトレー(通常、JISB 0601に基づいて接触型表面粗さ計で測定した値(Ra)で示して1.0μmを越えるトレー)の場合は、前記接着剤を用いて、アルジネート印象材を高い接着力でトレーに接着できる。 しかし、斯様な処理がされていない(表面が荒れていない)レジン製トレー(前記表面粗さ(Ra)が1.0μm以下)の場合は、前記接着剤を用いても、トレーと印象材とを十分な強度で接着できない。

    こうした状況にあって、本発明者らは、この特許文献2の接着剤において、溶剤として特に、前記溶解度パラメーターの範囲の値を有するレジン膨潤性の有機溶剤を用い、さらに、平均粒子径10μm以下の無機粒子を含有させることを検討した。 その結果、この接着剤は、レジン製トレーに対する接着力が著しく向上することを見出し、先に提案した(特許文献3を参照)。 すなわち、レジン製トレーを用いる場合において、上記改善された接着剤を用いることにより、歯牙等に対する圧接力が弱い場合や、研磨処理されておらず表面が平滑なトレーの場合であっても、トレーと印象材とは強く接着される。

    特許第3778731号公報

    国際公開第2008/105452号パンフレット

    特開2010−57905号公報

    特許文献3の接着剤について、本発明者らは、さらに検討を重ねた。 その結果、上記レジン膨潤性を有し、溶解度パラメーターが前記範囲内の値を有する有機溶剤として例示される有機溶媒の大部分は、以下の理由で使用できないことが判明した。 これらの有機溶媒は、ポリアミン化合物と1液状態で共存させると、数日間の保管でゲル化し、接着剤として使用できなくなるからである。 更に、このゲル化について考察すれば、この接着剤のゲル化が認められる以前の段階でも、接着剤中では、ゲル化に至る各成分の相互作用が進行していることが予測される。 即ち、1液の接着剤を調製した当初から、既にその接着性に悪影響を与える、各成分間の何らかの相互作用が進行していることが懸念される。

    こうした状況にあって、本発明は、印象材とトレーとを接着する接着剤であって、金属製、レジン製のいずれのトレーに対しても高い接着力を示し、且つ、長期間の保管が可能であり、つまり、その接着効果を長期間持続することができる接着剤を開発することを目的とする。

    上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究した。 その結果、本発明者らは、ポリアミン化合物、低級アルコール系溶剤、及び必要により有機過酸化物を含有して得られる接着剤に対して、前記レジン膨潤性の溶解度パラメーターの範囲内の溶解度パラメーターの値を有する有機溶剤、及び無機粒子を含有する接着剤を前処理剤として組合せることに想到した。 本発明者らは、上記考察によって、前記の課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。

    即ち、本発明は、
    (U)(I)溶解度パラメーター(δ)が17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕である有機溶剤100質量部、及び(II)平均粒子径が10μm以下の無機粒子0.1〜30質量部を含有してなる前処理剤と、
    (V)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、及び(III)低級アルコール系溶剤を含有してなる接着剤と、
    を含んでなる、歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キットである。
    更に、本発明は、
    (U)(I)溶解度パラメーター(δ)が17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕である有機溶剤100質量部、及び(II)平均粒子径が10μm以下の無機粒子0.1〜30質量部を含有してなる前処理剤と、
    (V)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、(II)有機過酸化物、及び(III)低級アルコール系溶剤を混合して得られる接着剤と、
    を含んでなる歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着用キットである。

    本発明の接着用キットは、前処理剤と、接着剤とからなる。 本接着剤キットの(V)接着剤は、(I)ポリアミン化合物を含有しているにもかかわらず、長期間保管してもゲル化することがなく、保存安定性に優れる。 この効果は、(V)接着剤に配合している(III)溶媒が低級アルコール系のものであり、溶解度パラメーターの値が前記レジン膨潤性を生じる溶解度パラメーターの値の範囲外であることに基因する。

    本接着剤キットは、アルジネート印象材と各種材質の印象用トレーとを、高い接着力で、安定的に接着させることができる。 しかも、驚くべきことに、その接着力の高さは、前記特許文献3に示される、ポリアミン化合物、溶剤、および有機過酸化物を含有する接着剤において、溶剤として、上記レジンを膨潤する溶解度パラメーターの値の範囲内の有機溶剤を用い、さらに、無機粒子も含有させた接着剤を上回るほどである。

    特に、レジン製トレーにおいて、印象材のトレーに係る圧接力が20gf/cm 以下のように弱い場合や、レジン製トレーの表面粗さが小さい場合(Ra=1.0μm以下、より好ましくは0.05〜0.2μm)において、その接着力は高く保たれる。

    高い接着力が得られる原因は必ずしも明らかではない。 しかし、前記レジン膨潤性の有機溶剤とポリアミン化合物とを1液状態で共存させると、ゲル化する以前の初期段階から、これら各成分の相互作用は進行しており、これがレジン製トレー等と印象材との接着力に何らかの悪影響を与えていると考えられる。 一方、本発明においては、(U)前処理剤と(V)接着剤とを分割したので、この悪影響を受けなくなったと推察される。

    以下、本発明に係る、歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着剤キットの好適な実施の形態を説明する。 ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。

    [前処理剤]
    まず、(U)(I)溶解度パラメーター(δ)の値が17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕である有機溶剤100質量部、及び(II)平均粒子径が10μm以下の無機粒子0.1〜30質量部を含有してなる前処理剤について説明する。 この前処理剤は、主に、レジン製トレーとアルジネート印象材とを強固に接着させる為の前処理用として有用である。

    有機溶剤は、レジン製トレーの材質として代表的なポリメチルメタクリレート等のレジンに対して十分な溶解力を有する必要性がある。 溶解度パラメーター(δ)の値が17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕の有機溶剤は、レジン製トレーの表面を膨潤・溶解させ、無機粒子をレジン製トレー表面に固定させる作用が著しい。 上記理由により、本前処理剤に配合する有機溶剤としては、溶解度パラメーター(δ)の値が上記した17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕の範囲の有機溶剤を用いる。

    好ましい有機溶剤を具体的に例示すると、酢酸ブチル(17.4)、ジメチルエーテル(18.0)、キシレン(18.1)、トルエン(18.2)、テトラヒドロフラン(18.6)、酢酸エチル(18.6)、ベンゼン(18.8)、ジブチルフタレート(19.0)、メチルエチルケトン(19.0)、クロロホルム(19.0)、塩化メチレン(19.8)、アセトン(20.3)、o−ジクロロベンゼン(20.5)などが挙げられる。 括弧内は溶解度パラメーターの値を示す。

    有機溶剤の溶解度パラメーター(δ)の値が17.0〔(MPa) 1/2 〕よりも小さい場合、または23.0を超える場合には、この有機溶剤はレジン製トレーを十分に膨潤、溶解することができない。 レジン製トレーを溶解させる溶解性の高さの観点から、溶解度パラメーター(δ)が18.0〜22.0〔(MPa) 1/2 〕の範囲内の値を有する有機溶剤が好ましい。 生体安全性の観点を加えると、キシレン、トルエン、酢酸エチルが最も好ましい。 これらの有機溶剤は混合して用いることができる。

    無機粒子の分散性および前処理剤の操作性を向上させるために、上記以外の、他の有機溶剤を添加することができる。 そのような溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、若しくはブタノール等のアルコール類が挙げられる。 これら他の有機溶剤を混合する場合においては、レジン製トレーに対する膨潤性や溶解性を保つために、混合溶剤の溶解度パラメーターの値は上記の範囲内に調節しなければならない。

    本発明の前処理剤に配合される平均粒子径が10μm以下の無機粒子は、レジン製トレーやモデリングコンパウンド製トレーに、特に、レジン製トレーに、印象材に対する接着力を高める作用を付与する。 すなわち、前述した有機溶剤の作用により、レジン製トレーの表面は十分に膨潤・溶解して粗面化している。 無機粒子の作用は、この粗面化しているトレー表面に無機粒子を固定し、十分粗面化されているレジン製トレーの表面を更に粗面化することにある。 印象の採得時には、この粗面化されたレジン製トレーに印象材が押しつけられる。 その結果、印象材がトレーの表面の凹凸に倣って食込み、その結果生じる両者間の物理的嵌合力によって、トレー表面と印象材表面との接着力を大きく高める。

    上記無機粒子は特に制限が無く、具体的には、シリカガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、アルミノシリケートガラス、及びフルオロアルミノシリケートガラス、重金属(例えばバリウム、ストロンチウム、ジルコニウム)を含むガラス;それらのガラスに結晶を析出させた結晶化ガラス、ディオプサイド、リューサイト等の結晶を析出させた結晶化ガラス等のガラスセラミックス;シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−アルミナ等の複合無機酸化物が使用できる。

    あるいはこれらの複合酸化物にI族金属酸化物を添加した酸化物;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属無機酸化物;等が使用できる。
    これらのなかでも、シリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、シリカ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニアなどの金属酸化物が好適である。 これらは単独、または2種以上を混合して用いることができる。

    有機溶剤に対する無機粒子の分散性等を向上させるため、シランカップリング剤などを用いて無機粒子の表面処理をすることが好ましい。 該シランカップリング剤は公知のものが使用でき、表面処理方法も特に制限が無く、公知の方法が採用できる。 具体例を示すと、適当な溶媒中で、無機粒子及びカップリング剤をボールミル等を用いて分散・混合した後、混合物をエバポレーターや噴霧乾燥機を用いて乾燥し、その後乾燥した混合物を50〜150℃に加熱する方法が挙げられる。 また、攪拌下に、無機粒子及びカップリング剤をアルコール等の溶剤中で加熱する方法等が挙げられる。

    前処理剤に用いられる無機粒子の粒子径は、レジン製トレーと印象材との間における物理的嵌合力を高め、高い接着力を発揮させる観点から、平均粒子径が10μm以下である必要がある。 さらに溶剤中で沈降し難い必要があることを考慮すると、無機粒子の平均粒子径は3μm以下が好ましく、1μm以下が特に好適である。 無機粒子の平均粒子径は、極端に小さい場合、接着剤の粘度が高くなりすぎる。 従って、0.001μm以上が好ましく、0.010μm以上がより好ましい。 本発明において、無機粒子の平均粒子径は、光回折法を用いる粒度分布計を用いて測定した値をいう。

    無機粒子の形状は特に限定されない。 ゾルーゲル法によって合成される球状や略球状粒子、粉砕によって得られる不定形状粒子などの、任意の形状の粒子が使用可能である。

    前処理剤中の無機粒子の配合量は、有機溶剤100質量部に対して、0.1〜30質量部である。 この配合量の場合、良好な接着性が得られる。 液の粘度およびトレーへの塗布性を考慮すると、有機溶剤100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。

    前処理剤には、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物からなる有機増粘材や、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料等の各種添加剤を、印象材とトレーの接着力を低下させない範囲で、適宜に配合しても良い。

    前処理剤は、前記溶解度パラメーターの値を有する有機溶剤に、前記平均粒子径の無機粒子を混合、分散させることにより製造できる。 その混合方法は特に限定されない。 混合方法としては、マグネチックスターラーや羽根撹拌等による通常の混合、超音波分散、ディスパーザー分散、湿式ボールミル分散等が例示さえる。

    [接着剤]
    以下、接着剤に付き、説明する。
    (第1の形態の接着剤)
    先ず、第1の形態の接着剤に付、説明する。 この接着剤は、(V1)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、及び(III)低級アルコール系溶剤を含有してなる。
    (V1)接着剤は、(I)1分子中にアミノ基(−NH )を2個以上有するポリアミン化合物を含んでいる。 従って、前処理剤で処理したトレーに印象材を盛りつける場合、該ポリアミン化合物のアミノ基とアルジネート印象材のカルボキシル基との間で架橋が形成される。 その結果、アルジネート印象材とトレーとの接着性が高まると考えられる。 さらに、ポリアミン化合物は、特に金属製のトレーに対して親和性が高いので、金属製のトレーと接した際にポリアミン化合物は強固に接着する。

    接着剤に用いられるポリアミン化合物としては、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、4−(アミノメチル)−1,8−オクタンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、或いは、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、トリプロピレンテトラアミンのような1分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族ポリアミン化合物が例示される。

    更に、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン若しくは1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)のような1分子中に2個以上のアミノ基を有する脂環式ポリアミン化合物が例示される。
    また、1,3−フェニレンジアミン、3,3'−メチレンジアニリン、1,2,4−トリアミノベンゼン、ジアミノアルカン類、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン若しくは3,3'−ジアミノベンジジンのような1分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物が例示される。

    また更に、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリオルニチン、ポリリジン若しくはキトサンのような1個以上のアミノ基を有しているモノマーが重合した重合体若しくは共重合体等が例示される。 これらは単独にまたは2種以上を混合して用いることができる。

    上記ポリアミン化合物のなかでも、安定した接着力が得られる観点から、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリオルニチン、ポリリジン、あるいはキトサン等の1分子中に5個以上、より好ましくは15個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物が好ましい。

    上記ポリアミン化合物の分子量は特に制限されない。 溶剤である低級アルコールに対する溶解性を考慮すると、ポリアミン化合物の分子量は500,000以下が好ましく、1,000〜20,000がより好ましい。 分子量が2,000以上のポリアミン化合物の場合には、十分に高い接着力を得るために、分子量300あたりアミノ基を1個以上含むポリアミン化合物が好ましく、分子量200あたりアミノ基を1個以上含むポリアミン化合物がより好ましい。

    ポリアミン化合物の配合量は、接着剤100質量部中に1〜50質量部が好ましく、2〜45質量部がより好ましく、15〜30質量部が最も好ましい。

    第1の形態の(V1)接着剤には、(III)低級アルコール系溶剤を含む。

    (III)低級アルコール系溶剤は、ポリアミン化合物の希釈溶剤として、接着剤に配合される。 低級アルコール系溶剤は、接着剤の操作性(トレーへの塗布性)を向上させる為に配合される。 前述のように、溶解度パラメーター(δ)の値が17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕の範囲内にある有機溶剤を接着剤に配合する場合、接着剤は、通常、数日でゲル化する。

    一方、低級アルコール系溶剤を接着剤に配合する場合、このようなポリアミン化合物と共存していても、長期に亘り接着剤のゲル化が抑制される。 なお、これら低級アルコール系溶剤の溶解度パラメーター(δ)の値は通常、23.3〜30.0〔(MPa) 1/2 〕の範囲内であり、前記レジン膨潤性の範囲の上限値23.0〔(MPa) 1/2 〕よりも大きい。 しかし、この接着剤には、前記前処理剤のようにレジン製トレーを膨潤・溶解させる作用を付与する必要性はないこと、更にこの低級アルコール系溶剤は、ポリアミン化合物を良好に溶解できることから、低級アルコール系溶剤の溶解度パラメーターの値が上記範囲を超えていても何ら問題は無い。 さらに、これら低級アルコール系溶剤は、揮発性が高いので乾燥させるのが容易であり、かつ一般に毒性も低いため、好ましい。

    ここで、低級アルコール系溶剤を用いる場合、接着剤がゲル化しない理由は、アルコール性水酸基によって、反応性の高いポリアミンのアミノ基が保護される為であると考えられる。

    なお、溶剤としては、一般に前記レジン膨潤性の範囲の下限よりも小さい溶解度パラメーターの値を有するヘプタン等の有機溶剤、或いは、前記レジン膨潤性の上限よりも大きい溶解度パラメーターの値を有するアルコール系溶剤以外の有機溶剤(例えばアセトニトリル)がある。 しかし、これらの溶剤をアルコール系溶剤の代りに用いる場合は、接着剤のゲル化を抑制する効果は、通常不十分である。

    本発明において低級アルコール系溶剤とは、炭素数1〜5の脂肪族アルコールを言う。 具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等が挙げられる。 生体安全性の観点から、エタノールが特に好ましい。

    接着剤中のアルコール系溶剤の配合量は、接着剤の操作性(トレーへの塗布性)の観点から、接着剤100質量部中に20〜98.9質量部が好ましく、50〜97質量部がより好ましく、65〜73質量部が最も好ましい。

    接着剤には、その他の成分として、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料等の各種添加剤を、印象材とトレーの接着力を低下させない範囲で、適宜配合しても良い。

    上記各成分からなる接着剤は、ポリアミン化合物、および低級アルコール系溶剤を混合し、溶解させることにより製造することができる。 混合方法としては特に限定されない。 マグネチックスターラーや羽根撹拌等による通常の混合方法のほかに、超音波分散方法等が例示される。

    (第2の形態の接着剤)
    第2の形態の接着剤(V2)には、前記第1の形態の接着剤(V1)の構成成分に加えて、更に有機過酸化物が配合される。 即ち、第2の形態の(V2)接着剤は、(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、(II)有機過酸化物、及び(III)低級アルコール系溶剤を混合して得られる接着剤である。

    有機過酸化物の配合は、特にレジン製トレーに対する印象材の接着力を向上させるために重要である。 第2の形態の接着剤は、第1の形態の接着剤と同様に、通常、前記前処理剤と共にキットとして市販され、使用に供される。

    有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、若しくはハイドロパーオキサイド類等が例示される。
    これらの中でも、ジアシルパーオキサイド類を用いると、レジン製トレーと印象材とがより強固に接着する。 ジアシルパーオキサイド類を具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等が挙げられる。

    有機過酸化物の配合量は、十分に強力な接着力を得るためには、接着剤100質量部中に0.1〜30質量部配合することが好ましく、1〜12質量部がより好ましい。

    接着剤には、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料等の各種添加剤を、印象材とトレーの接着力を低下させない範囲内で、適宜に配合しても良い。

    上記各成分からなる第2の形態の(V2)接着剤は、ポリアミン化合物および有機過酸化物を、低級アルコール系溶剤に混合し、溶解させることにより、製造できる。 混合方法は特に限定されないが、マグネチックスターラーや羽根撹拌等による通常の混合方法が採用できる。 更に、超音波分散方法によって混合しても良い。

    本実施の形態に係る接着用キットにおいて、(U)(I)溶解度パラメーター(δ)が17.0〜23.0〔(MPa) 1/2 〕である有機溶剤100質量部、及び(II)平均粒子径が10μm以下の無機粒子0.1〜30質量部を含有してなる前処理剤は、前処理剤として使用する必要がある。

    すなわち、(V1)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、及び(III)低級アルコール系溶剤を含有してなる接着剤、又は(V2)(I)1分子中にアミノ基を2個以上含むポリアミン化合物、(II)有機過酸化物、及び(III)低級アルコール系溶剤を混合して得られる接着剤を前処理剤としてトレーに塗布し、次いで、(U)前処理剤を塗布することはできない。

    上記順序で塗布を行う場合は、(V1)又は(V2)の接着剤の塗布面が、その後行う(U)前処理剤の塗布操作で乱される。 その結果、トレー上に印象材を盛り付ける際に、(V1)又は(V2)の接着剤が含有するポリアミン化合物と、印象材中のカルボキシル基との間の架橋反応が十分に進行せず、両者間の接着力は大きく低下する。

    前処理剤及び接着剤のトレーへの塗布方法は、特に制限されない。 一般には、いずれも、ハケ、ヘラ、筆、あるいはローラー等でトレーに塗布し、またはトレーに噴霧する方法を採用することができる。

    前処理剤或いは接着剤をトレーに塗布または噴霧した後は、好ましくは、乾燥させ、溶剤を留去させる。 乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥、あるいは、加熱乾燥と送風乾燥を組み合わせる熱風乾燥等がある。

    本発明の接着用キットを用いることにより、アルジネート印象材と、各種材質の印象用トレー、すなわち、レジン製トレー、モデリングコンパウンド製トレー、及び金属製トレーとを、高い接着力で安定に接着できる。 本接着用キットの前処理剤は、レジン製トレー及びモデリングコンパウンド製トレー、特に、レジン製トレーに対して高い接着力の向上効果を発揮する。 従って、接着剤の塗布に先だって、トレーに前処理剤を塗布することが求められる。

    もちろん、前処理剤の塗布による接着力の向上効果は金属製トレーの場合にも認められる。 しかし、金属トレーの場合は、接着剤のみで十分な接着力を得ることができるので、接着力の向上に関する限り、前処理剤はレジン製トレーの場合ほど大きく寄与しない。 従って、金属製トレーの場合は、前処理剤の使用を省略しても良い。

    本接着剤キットが適用できるアルジネート印象材としては、公知の印象材が何ら制限されることなく用いられる。 アルジネート印象材の具体的な種類としては、アルギン酸塩を主成分とする基材ペーストと、硫酸カルシウムを主成分とする硬化材ペーストとを混合して用いるタイプの印象材、あるいはアルギン酸塩および硫酸カルシウムを主成分とする粉体に水を混合して用いるタイプの印象材が挙げられる。

    さらに詳しく述べると、ペーストを混合して用いるタイプのアルジネート印象材の基材ペーストは、アルギン酸カリウム、シリカ粉末、水酸化カリウム、ポリアクリル酸および水等で構成される。 硬化材ペーストは、粒状シリカ、流動パラフィン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リン酸三ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、超微粒子シリカおよび硫酸カルシウム等で構成される。

    粉体に水を混合して用いるタイプのアルジネート印象材においては、前記粉体は、アルギン酸カリウム、シリカ粉末、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リン酸三ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、または硫酸カルシウム等から成る。

    以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。 なお、接着試験方法を(1)に、使用したトレーの種類を(2)に、評価方法を(3)に、実施例および比較例で用いた化合物を(4)に示す。

    (1)接着試験方法 予め調製した(U)前処理剤を、(2)に記す各材質からなるトレーの表面(被着面)に筆を用いて塗布し、エアーブローにて余剰の溶剤を揮発させた。 次いで、同被着面に、予め調製した(V1)又は(V2)接着剤を筆で塗布し、エアーブローにて残留する溶剤を揮発させた。 その後、該トレーの被着面に練和したアルジネート印象材を盛り付け、130gf/cm の荷重を負荷しながら、37℃下で3分間放置した。 その後、硬化した印象材をトレーから引き剥がした。

    次に、硬化した印象材を引き剥がしたトレーの引き剥がし面を肉眼で観察した。 印象材とトレーとの界面において、印象材が凝集破壊を引き起こしている面積の割合を肉眼で観察し、(3)に記す評価基準に従い、接着性能を評価した。 全ての接着試験において用いたアルジネート印象材は、APミキサーII(株式会社トクヤマデンタル製)を用いて練和した、ペーストタイプの「AP−1ペースト」(株式会社トクヤマデンタル製)であった。

    長期保存後の接着試験においては、調製した(U)前処理剤及び(V1)、(Q2)接着剤を密封容器に入れ、25℃下で1週間保管した後、これら保管した前処理剤、接着剤を使用して、前記と同様の接着試験を行なった。

    (2)トレーの種類 「オストロンII」(株式会社ジーシー製)を板状に硬化させたものを、模擬レジン製トレーとして用いた。 オストロンIIの粉、液を混和したものをポリプロピレン(PP)フィルム上に載せ、その上に別のPPポリプロピレンフィルムを圧接した状態で硬化させることにより板を製造した。 この板の表面粗さは、Ra=0.1μm(接触型表面粗さ計(サーフコム、東京精密社製)で測定した。)であった。

    金属製トレーとして、ニッケルめっきを施した真鍮製トレー「COE104」(株式会社ジーシー製)を用いた。

    モデリングコンパウンド製トレーとして、「モデリングコンパウンド中性」(株式会社ジーシー製)を用いた(表中ではMC製トレーと略す)。

    (3)評価基準
    VS: 印象材とトレーとを手で引き剥がすと、印象材の接着面積の90%以上において印象材の凝集破壊を引き起こす。
    S: 印象材とトレーとを手で引き剥がすと、印象材の接着面積の50〜90%未満において印象材の凝集破壊を引き起こすが、一部はトレーとの界面から剥がれる。
    W:印象材とトレーを手で引き剥がすと、印象材の接着面積の50%未満が凝集破壊を引き起こすが、大部分はトレーとの界面から剥がれる。
    VW:印象材とトレーを手で引き剥がすと、全面的に印象材がトレーとの界面で容易に剥がれる。

    (4)実施例および比較例で用いた化合物の略称(4−1)有機溶剤:(δ)〔(MPa) 1/2
    酢酸ブチル:17.4
    キシレン:18.1
    トルエン:18.2
    酢酸エチル:18.6
    アセトン:20.3
    エタノール:26.0
    IPA(イソプロピルアルコール):24.3
    n−BuOH(n−ブタノール):23.3
    ヘプタン:15.1
    アセトニトリル:24.1
    (4−2)無機粒子F1:レオロシールQS102(非晶質シリカ、株式会社トクヤマ製)平均粒子径0.012μm
    F2:レオロシールZD30ST(表面処理非晶質シリカ、株式会社トクヤマ製)平均粒子径0.015μm
    F3:ゾル−ゲル法で合成した球状のシリカ−ジルコニア粒子、平均粒子径0.9μm
    F4:ゾル−ゲル法で合成した不定形シリカージルコニア粒子 平均粒子径5μm
    F5:ゾル−ゲル法で合成した不定形シリカージルコニア粒子 平均粒子径30μm
    なお、上記無機粒子の平均粒子径の測定は、光回折法による粒度分布測定(コールター、ベックマンコールター社製)により実施した。

    (4−3)ポリアミン化合物PA1:1,7−ヘプタンジアミンPA2:ポリアリルアミン(1分子中にアミノ基の数16個、分子量1000)
    PA3:ポリアリルアミン(1分子中にアミノ基の数53個、分子量3000)
    PA4:ポリアリルアミン(1分子中にアミノ基の数263個、分子量15000)
    (4−4)有機過酸化物BPO:ベンゾイルパーオキサイドSPO:ステアロイルパーオキサイドBBTC:1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシロキサン 実施例1
    表1に示したように、有機溶剤として、キシレンを100g、無機粒子としてF1を5g、を蓋付き試験管中に秤取った。 試験管に超音波を照射して粒子を分散させることにより、前処理剤(a)を調製した。 また、表2に示したように、ポリアミン化合物としてPA3を20g、有機過酸化物としてBPOを5g、アルコール系溶剤としてエタノールを75g、を蓋付き試験管中に秤取り、BPOが溶解するまで攪拌して接着剤(C)を調製した。 得られた前処理剤及び接着剤を用いて、各種トレーに対する印象材の接着試験を行なった。 更に、調製した前処理剤及び接着剤を25℃下で1週間放置した。 その後、同様の接着試験を行なった。 結果を表3に示した。

    いずれの実施例においても、印象材とトレーとの間で高い接着力が得られた。 また、長期保管(25℃、1週間)した後の接着剤はゲル化すること無く、いずれのトレーに対する接着性能も低下していなかった。

    実施例2〜30
    表1、表2に示した組成の前処理剤及び接着剤を使用する以外は、実施例1と同様の方法で、接着試験を行なった。 結果を表3に示した。 いずれの条件においても印象材とトレーとは強固に接着した。 また、長期保管した後の接着剤はゲル化することなく、高い接着性能が維持されていた。

    比較例1
    表4に示したように、ポリアミン化合物としてPA4を15gと、無機粒子としてF2を0.5gと、有機溶剤としてキシレンを80gと、有機過酸化物としてBPOを4.5gと、を蓋付き試験管に秤取り、超音波を照射して無機粒子を分散させて1液性の接着剤(特許文献3の実施例32の組成物)を調製した。 この接着剤を用いて、各種トレーに対する接着試験を行なった。 更に、調製した接着剤を25℃下で1週間放置した後、同様の接着試験を行なった。 結果を表5に示した。 調製直後の接着剤は、すべてのトレーと印象材との接着において良い接着性を示した。 しかし、25℃下、1週間放置すると、接着剤のゲル化が観察された。

    比較例2〜4
    表4に示した組成の1液性の接着剤を使用する以外は、比較例1と同様の方法で、接着試験を行なった。 これら比較例で用いた1液性の接着剤は、実施例1〜3で各使用した前処理剤(a)、(b)、(c)に、同じ各実施例1〜3で使用した接着剤Cに配合したポリアミン化合物(PA3)と有機過酸化物(BPO)とを同量配合したものであった。 結果を表5に示した。

    いずれの比較例の場合も、調製直後の接着剤は、すべてのトレーと印象材との接着において、十分な接着性を示した。 しかし、接着剤を25℃下で、1週間放置すると、接着剤にゲル化が生じていることが観察された。
    組成が比較例2〜4に対応する、前処理剤と接着剤の接着用キットに関する実施例1〜3の結果と、比較例2〜4の結果とを比較すると、比較例2〜4は、初期接着性(製造直後の接着性)が少し劣っていた。

    比較例5
    表6に示したように、本発明の前処理剤を使用することなく、実施例で使用した接着剤(C)のみを用いて各種トレーと印象材との接着試験を行なった。 結果を表6に示した。 レジン製トレーの場合は、トレーと印象材との接着強度は大きく低下した。 トレーの表面を膨潤、溶解させ、微粉体をトレー表面に付着させることによって、印象材との間に物理的嵌合力を与える前処理剤を用いなかったので、接着力が低下したものである。

    比較例6
    表6に示す、本発明の前処理剤(a)と、本発明の接着剤(C)とを用いて、各種トレーに対する接着試験を行った。 但し、本発明の処理法とは処理順を逆にした。 即ち、先ず接着剤(C)をトレーに塗布し、その後前処理剤(a)をトレーに塗布した。 結果を表6に示した。 表6から明らかなように、接着剤の塗布面が、後から塗布される前処理剤により乱されたので、各種トレーに対する初期接着力が大きく低下した。

    比較例7〜11
    表7、表8に示した組成の前処理剤及び接着剤を使用する以外は、実施例1と同様の方法を用いて、接着試験を行なった。 結果を表9に示した。

    比較例7は、前処理剤に使用する無機粒子の粒子径が10μmを超えるものを使用した場合である。 この場合、トレー表面への無機粒子の付着が不十分であったので、レジン製トレーに対する印象材の接着性が低下した。

    比較例8、及び比較例9は、前処理剤に使用する無機粒子の配合量が本発明の条件を満たさない場合である。 いずれの場合においても、無機粒子の配合効果が十分に得られず、レジン製トレーに対する接着性が大きく低下する結果になった。

    比較例10〜11は、接着剤に使用する溶剤として、アルコール性OH基を有さない有機溶剤を配合した場合である。 いずれの場合においても、接着剤の調製直後は、すべてのトレーに対して印象材が高い接着力で接着した。 しかし、この接着剤を25℃下で、1週間放置すると、接着剤はゲル化が観察された。

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