Polarizing plate, image display apparatus employing the same, and adhesive composition

申请号 JP2011188525 申请日 2011-08-31 公开(公告)号 JP2013050583A 公开(公告)日 2013-03-14
申请人 Fujifilm Corp; 富士フイルム株式会社; 发明人 TAKAHASHI KEITA;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To reduce blister defects of a polarizing plate having a cured layer composed of a curable composition, and to provide an image display apparatus employing the same.SOLUTION: A polarizing plate at least has a polarizer, and a cured layer composed of a curable composition, and at least one layer existing between the polarizer and the cured layer contains iodine scavenger. The iodine scavenger is at least one kind selected from the group comprising, for instance, starch, cyclodextrin, polyvinylpyridine, and polyvinyl pyrrolidone.
权利要求
  • 偏光子と、硬化性組成物からなる硬化層とを少なくとも有する偏光板であって、前記偏光子と前記硬化層との間に存在する少なくとも1つの層が、ヨウ素捕捉剤を含有することを特徴とする偏光板。
  • 前記ヨウ素捕捉剤が、デンプン類、シクロデキストリン類、ポリビニルピリジン及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の偏光板。
  • 前記ヨウ素捕捉剤を含有する層が、接着剤層である請求項1又は2に記載の偏光板。
  • 前記ヨウ素捕捉剤を含有する層が、前記硬化層と前記偏光子とを接着する接着剤層である請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板。
  • 前記硬化層の表面が活性処理されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板。
  • 前記硬化性組成物が、少なくとも1種の液晶化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光板。
  • 前記偏光子が、ポリビニルアルコールフィルムからなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光板。
  • 前記硬化層が、光学異方性層である請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏光板。
  • 前記光学異方性層が、パターン光学異方性層である請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏光板。
  • 請求項1〜9のいずれか1項に記載の偏光板を少なくとも有する画像表示装置。
  • 立体画像を表示可能である請求項10に記載の画像表示装置。
  • 接着剤とヨウ素捕捉剤とを少なくとも含有する接着剤組成物。
  • 前記ヨウ素捕捉剤が、デンプン類、シクロデキストリン類、ポリビニルピリジン及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の接着剤組成物。
  • 前記接着剤が、イソシアネート化合物を主成分として含有する請求項12又は13に記載の接着剤組成物。
  • 说明书全文

    本発明は、硬化性組成物からなる硬化層を有する偏光板、及び該偏光板の製造に有用な接着剤組成物、並びに前記偏光板を用いた画像表示装置に関する。

    偏光板として、ヨウ素又は二色性色素を吸着させた偏光子を有する偏光板が、液晶表示装置等に広く利用されている。 この偏光板は、ポリビニルアルコールフィルム等の親性ポリマーフィルムを延伸し、それにヨウ素又は二色性色素を吸着させて偏光子を作製し、該偏光子の両面に、接着剤を利用して保護フィルムを貼合して作製するのが一般的である。 偏光板の作製に用いられる接着剤についても種々提案されている(例えば、特許文献1〜3)。

    ところで、直線偏光を円偏光に変換する作用のある円偏光板として、上記偏光子とともに、硬化性液晶組成物からなるλ/4層を有するものが種々提案されている。 かかる構成の円偏光板は、例えば、円偏光を利用して立体画像を表示する3D画像表示装置に種々利用されている。 また、上記硬化性液晶組成物のみならず、硬化性組成物からなる硬化層(例えば、ハードコート層、反射防止層)等を有する偏光板が種々提案されている。

    特開2005−208456号公報

    特許第4306270号公報

    特開2008−63527号公報

    しかし、硬化性組成物からなる硬化層を有する偏光板には、ブリスター欠陥が生じる場合がある。 この欠陥について本発明者が種々検討した結果、偏光子中のヨウ素等が硬化層に移動すること、又は硬化層の成分が偏光子に移動することが一因であることがわかった。 特に、薄型化等のために、偏光子と硬化層とを直接貼合する際には、この欠陥が顕著になることが予測される。 また、硬化性組成物からなる硬化層は、疎水的なものが多く、一方で、偏光子やその保護フィルムは、親水性のものが多いので、これらを貼合することは困難である。 貼合の困難性は、硬化層を有する偏光板の耐水性を低下させ、環境湿度などにより水が浸入した場合に、剥離が生じる場合がある。

    本発明は、硬化性組成物からなる硬化層を有する偏光板のブリスター欠陥を軽減することを課題とする。
    また、本発明は、偏光板の作製に有用な接着剤組成物を提供することを課題とする。
    さらに、本発明は、偏光板のブリスター欠陥の問題のない、画像表示装置を提供することを課題とする。

    上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
    [1] 偏光子と、硬化性組成物からなる硬化層とを少なくとも有する偏光板であって、前記偏光子と前記硬化層との間に存在する少なくとも1つの層が、ヨウ素捕捉剤を含有することを特徴とする偏光板。
    [2] 前記ヨウ素捕捉剤が、デンプン類、シクロデキストリン類、ポリビニルピリジン及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]の偏光板。
    [3] 前記ヨウ素捕捉剤を含有する層が、接着剤層である[1]又は[2]の偏光板。
    [4] 前記ヨウ素捕捉剤を含有する層が、前記硬化層と前記偏光子とを接着する接着剤層である[1]〜[3]のいずれかの偏光板。
    [5] 前記硬化層の表面が活性処理されている[1]〜[4]のいずれかの偏光板。
    [6] 前記硬化性組成物が、少なくとも1種の液晶化合物を含有する[1]〜[5]のいずれかの偏光板。
    [7] 前記偏光子が、ポリビニルアルコールフィルムからなる[1]〜[6]のいずれかの偏光板。
    [8] 前記硬化層が、光学異方性層である[1]〜[7]のいずれかの偏光板。
    [9] 前記光学異方性層が、パターン光学異方性層である[1]〜[8]のいずれかの偏光板。
    [10] [1]〜[9]のいずれかの偏光板を少なくとも有する画像表示装置。
    [11] 立体画像を表示可能である[10]の画像表示装置。
    [12] 接着剤とヨウ素捕捉剤とを少なくとも含有する接着剤組成物。
    [13] 前記ヨウ素捕捉剤が、デンプン類、シクロデキストリン類、ポリビニルピリジン及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である[12]の接着剤組成物。
    [14] 前記接着剤が、イソシアネート化合物を主成分として含有する[12]又は[13]の接着剤組成物。

    本発明によれば、硬化性組成物からなる硬化層を有する偏光板のブリスター欠陥を軽減することができる。
    また、本発明は、偏光板の作製に有用な接着剤組成物を提供することができる。
    さらに、本発明は、偏光板のブリスター欠陥の問題のない、画像表示装置を提供することができる。

    本発明の偏光板の一例を示す模式断面図である。

    偏光子と光学異方性層との関係の一例の概略図である。

    偏光子と光学異方性層との関係の一例の概略図である。

    本発明に係わるパターン光学異方性層の一例の上面模式図である。

    本発明の画像表示装置の一例を示す模式断面図である。

    実施例で使用する露光マスクの例を示した模式図である。

    以下、本発明について詳細に説明する。 なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。 まず、本明細書で用いられる用語について説明する。

    本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。 Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。 測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
    測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
    Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
    上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
    なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
    式(1)

    上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
    式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。 dは膜厚である。

    式(2):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
    式(2)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。 dは膜厚である。

    測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
    Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
    上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。 平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。 主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。 これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。 この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。

    なお、液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。 そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。 本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、位相差板のもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
    本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
    1. 光学異方性層は液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。 さらに、それを構成する最小単位の層(液晶性化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
    2. 各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
    具体的な算出法は下記のとおりである。
    (1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。 測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。 このような測定は、KOBRA−21ADH及びKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメータAEP−100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
    (2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。 さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
    ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。 値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。 光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。

    本発明は、偏光子と、硬化性組成物からなる硬化層とを少なくとも有する偏光板であって、前記偏光子と前記硬化層との間に存在する少なくとも1つの層が、ヨウ素捕捉剤を含有することを特徴とする偏光板に関する。 本発明では、偏光子と硬化層との間に、ヨウ素捕捉剤を含有する層を存在させることにより、偏光子中のヨウ素等が硬化層に移動すること、及び/又は硬化層の成分が偏光子に移動することを抑制している。 それにより、ブリスター欠陥が発生するのを抑制することができ、偏光板としての良好な性能を維持することができる。

    本発明の好ましい態様は、偏光子と硬化層との間に存在する接着剤層が、前記ヨウ素捕捉剤を含有する態様である。 本態様では、接着剤層中のヨウ素捕捉剤の作用により、偏光子中のヨウ素が硬化層に移動すること、及び/又は硬化層の成分が偏光子に移動することが抑制されるとともに、硬化層が疎水性であっても、硬化層と親水性の偏光子、又は硬化層と偏光子の保護フィルムとの接着性が顕著に改善される。 接着剤層にヨウ素捕捉剤を添加することによって、硬化層を有する偏光板のブリスター欠陥の発生を抑制できるとともに、接着性を顕著に改善できるは予期せぬことである。

    以下、図面を用いて、本発明のいくつかの実施形態を説明するが、図中の各層の厚みの相対的関係は、実際の相対的関係を反映しているわけではない。 また、図中、同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する場合がある。

    本発明の偏光板の一例の断面模式図を図1に示す。 なお、図中、各層の厚みの相対的関係は、実際の各層の厚みの相対的関係と必ずしも一致しているものではない。

    図1に示す偏光板は、偏光子の双方の表面に偏光子を保護する保護フィルムを有し、一方の保護フィルム上に、ヨウ素捕捉剤を含有する接着剤層を介して、光学異方性層が配置されている。 光学異方性層は、硬化性液晶組成物からなる硬化層であり、支持体上で前記硬化性液晶組成物を塗布・硬化させて形成された硬化層である。

    偏光子の一例は、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子が挙げられ、本発明にはいずれを使用してもよい。 本発明では、ポリビニルアルコールフィルムを用いたヨウ素系偏光子が好ましい。

    偏光子と光学異方性層との間に配置される保護フィルムは、光学的に等方性であっても異方性であってもよい。 前者の態様が、光学異方性層の光学特性に影響を与えないので好ましい。 後者の態様では、例えば、光学異方性層と保護フィルムとが全体として所望の光学特性(例えばλ/4)を達成していてもよい。 保護フィルムとしては、透明なポリマーフィルムを用いることが好ましく、一例は、セルロースアシレートフィルム、及びポリオレフィンを含むポリオレフィンフィルムが好ましい。 セルロースアシレートフィルムの中でも、セルローストリアセテートフィルムが好ましい。 また、図1中、保護フィルムはなくてもよく、即ち、光学異方性層の表面と偏光子の表面とを直接、ヨウ素捕捉剤を含有する接着剤層を介して接着してもよい。

    偏光子の他方の表面に配置される保護フィルムについても、光学的に等方性であっても異方性であってもよく、また材料についても上記保護フィルムと同様である。 図1の偏光板を、例えば、液晶表示装置用偏光板として用いる場合は、該保護フィルムは、液晶セルと偏光子との間に配置されるので、液晶セルの複屈折等を補償するための光学補償フィルムとして機能していてもよい。

    図1の態様では、接着剤層は、保護フィルム及び硬化層を貼合して一体化するものであり、光学的に等方性であるのが好ましい。 接着剤層に使用する接着剤の主成分の一例は、イソシアネート系化合物、アクリレート系化合物などが挙げられる。 保護フィルム及び硬化層を貼合して一体化可能である限り、一般的には、粘着剤に分類される剤を利用してもよい。 接着剤層は、さらにヨウ素捕捉剤を含有する。 使用可能な接着剤及びヨウ素捕捉剤等の詳細については後述する。

    光学異方性層は、重合性基を有する液晶化合物を主成分とする硬化性液晶組成物から形成されているのが好ましい。 使用可能な液晶化合物等の材料の詳細については後述する。

    光学異方性層の一例は、第1及び第2位相差領域が、均等且つ対称に配置されたパターン光学異方性層である。 例えば、第1及び第2位相差領域の面内レターデーションがそれぞれλ/4程度であり、互いに直交する面内遅相軸をそれぞれ有するパターン光学異方性層である。 この例では、図2及び図3に示す通り、光学異方性層12を、第1及び第2位相差領域12a及び12bの面内遅相軸a及びbをそれぞれ、視認側偏光子16の透過軸Pと±45°にして配置する。 この構成により右眼用及び左眼用の円偏光画像を分離することができる。 また、λ/2板をさらに積層することで、視野角をより拡大してもよい。

    第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3λ/4である光学異方性層を利用しても同様に円偏光画像を分離することができる。 また、第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/4であり、且つ他方の面内レターデーションが3λ/4である光学異方性層を利用することで、右眼用及び左眼用の直線偏光画像を分離してもよい。

    さらに、第1及び第2位相差領域12a及び12bの一方の面内レターデーションがλ/2であり、且つ他方の面内レターデーションが0である光学異方性層を利用し、これを面内レターデーションがλ/4の透明支持体と各々の遅相軸を平行又は直交して積層しても同様に円偏光画像を分離することができる。
    また、第1及び第2位相差領域12a及び12bの形状及び配置パターンは、図2及び3に示すストライプ状のパターンを交互に配置した態様に限定されるものではない。 図4に示す様に、矩形状のパターンを格子状に配置してもよい。

    第1及び第2位相差領域12a及び12bの面内レターデーションがそれぞれλ/4程度である態様では、面内遅相軸a及びbは、偏光子の透過軸とそれぞれ±45°の角度をなすことが好ましい。 本明細書では、厳密に±45°であることを要求するものではなく、第1及び第2位相差領域12a及び12bのいずれか一方については、40〜50°であることが好ましく、他方は、−50〜−40°であることが好ましい。
    なお、光学異方性層12のReが単独でλ/4である必要はなく、偏光子16の一方の表面上に配置される光学異方性層12を含む全ての部材のReの総和が、110〜160nmであるのが好ましく、120〜150nmであるのがより好ましく、125〜145nmであることが特に好ましい。

    一方、偏光板を表示パネルに配置した場合に、偏光子より視認側外側に配置される部材のRthは、視野角特性に影響するので、その絶対値が小さいほうが好ましく、具体的には、Rthは−100nm〜100nmが好ましく、−60〜60nmであるのがより好ましく、−60〜20nmであるのが特に好ましい。

    図1の偏光板では、光学異方性層の表面が、活性処理されていると、接着性がより改善されるので好ましい。 活性処理の例には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射、電子線照射、アンカー剤塗布が含まれる。 表面活性処理の具体例については、特許第3427130号公報の記載を参照することができる。

    本発明の偏光板は、図1の構成に制限されるものはない。 例えば、光学異方性層等の硬化層を複数有していてもよいし、また、光学異方性層とともに、又は光学異方性層に代えて、他の機能層を有していてもよい。 他の機能層としては、例えば、拡散層、防眩層、及び反射防止層等が挙げられ、これらを有する表面フィルムを積層してもよい。 また、光学異方性層と支持体との間に配向膜を有していてもよい。

    図5に、本発明の偏光板のいくつかの例の断面模式図を、表示パネル部との組み合わせとして示す。 本発明の偏光板は、図5(a)に示すように、視認側から表面層、光学異方性層、支持体、接着剤層、保護フィルム、偏光子及び光学補償フィルムの順で積層してもよく、図5(b)のように、視認側から表面層、支持体、光学異方性層、接着剤層、保護フィルム、偏光子及び光学補償フィルムの順で積層してもよく、図5(c)のように、視認側から表面層、光学異方性層、透明支持体、接着剤層、偏光子及び光学補償フィルムの順で積層してもよい。 また、例えば、図5(d)のように、偏光子と硬化層とを接着剤層を介して直接貼合した態様、即ち視認側から表面層、透明支持体、光学異方性層、接着剤層、偏光子及び光学補償フィルムの順で積層してもよい。 薄型化の観点では、図5(b)及び(d)の態様が好ましい。

    本発明は、画像表示装置にも関する。 本発明の画像表示装置は、画像信号に基づいて駆動する画像表示パネル部と、本発明の偏光板とを少なくとも有する。 一態様は、本発明の偏光板を、画像表示パネル部の視認側表面に有する態様であって、立体画像を表示可能の画像表示装置である。 本態様では、本発明の偏光板は、画像表示パネル部が表示する画像を右眼用及び左眼用の円偏光画像又は直線偏光画像等の偏光画像に変換する機能を有する。 観察者は、これらの画像を円偏光又は直線偏光眼鏡等の偏光板を介して観察し、立体画像として認識する。

    本発明では、表示パネルについてなんら制限はない。 例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであっても、プラズマディスプレイパネルであってもよい。 いずれの態様についても、種々の可能な構成を採用することができる。 また、透過モードの液晶パネル等は、視認側表面に画像表示のための偏光子を有するのが一般的であるので、当該態様では、本発明の偏光板に含まれる偏光子が、当該偏光子として機能していてもよい。 また、前記表示パネルは、本発明の偏光板が有する偏光子とは別に、視認側表面に偏光子を有する場合は、本発明の偏光板が有する偏光子の透過軸と、表示パネルの偏光子の透過軸とを一致させて配置する。
    表示パネルが液晶セルの場合、液晶セルの後方には、バックライトが配置され、バックライトと液晶セルとの間に偏光子が配置された、透過モードとして構成されている。

    液晶セルの構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。 液晶セルは、例えば、図示しない対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。 液晶セルの駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。 TNモードでは、一般的に、偏光子の透過軸は、表示面左右方向0°に対して45°又は135°に配置されるので、TNモード液晶パネルとは、図2に示す態様の位相差板と組み合わせるのが好ましい。 また、VAモード及びIPSモードでは、一般的に、偏光子の透過軸は、表示面左右方向0°に対して0°又は90°に配置されるので、VAモード及びIPSモード液晶パネルとは、図3に示す態様の位相差板と組み合わせるのが好ましい。

    以下、本発明の偏光板の製造に用いられる種々の材料等について詳細に説明する。

    [ヨウ素捕捉剤]
    本発明の偏光板は、ヨウ素捕捉剤を含有する層を少なくとも一層有する。
    ヨウ素捕捉剤は、シクロデキストリン類、デンプン類、ポリビニルピリジン、及びポリビニルピロリドンから少なくとも一つが選択されるのが好ましい。

    シクロデキストリン類は、一般にヨウ素を抱接し、抱接化合物を形成されることが知られている(特開2002−193719)。 即ち、本発明では、ヨウ素捕捉剤がシクロデキストリンの場合は、シクロデキストリンが接着剤組成物中のヨウ素を抱接し、光学異方性層へヨウ素が移動することが抑制される。
    また、ヨウ素捕捉剤がデンプン類の場合は、接着剤組成物中のヨウ素がデンプン分子のラセン構造の内部に入り込むことで光学異方性層へヨウ素が移動することが抑制される(ヨウ素デンプン反応、抱接化合物形成)。
    さらに、ヨウ素捕捉剤がポリビニルピリジンの場合は、ヨウ素とポリビニルピリジンとで電解移動錯体(CT錯体)を形成することで光学異方性層へヨウ素が移動することが抑制され、ヨウ素捕捉剤がポリビニルピロリドンの場合は、ポリビニルピロリドンの重合物とヨウ素とが複合体を形成することで光学異方性層へヨウ素が移動することが抑制される。 なお、1-ビニル-2-ピロリドンの重合物(ポリビニルピロリドン)とヨウ素は複合体(ポビドンヨード)を形成することが古くから知られ、うがい薬として実用化されている。
    これらの原理(抱接化合物形成、電解移動錯体形成など)に基づくヨウ素捕捉剤は本明細書中に包含される。

    ヨウ素捕捉剤に占める固形分の割合としては、各成分が溶媒に均一に溶解している限り特に限定はないが、例えば0.5〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜25質量%がさらに好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。 ここで固形分とは接着剤組成物の全成分から溶媒を除いたものである。

    <シクロデキストリン類>
    シクロデキストリンは環状オリゴ糖とも呼ばれ、α−D−グルコピラノース基がα−1,4−グリコシド結合によって環状につながったもので、そのピラノース基の個数によりα型(6個のピラノース基を有する。シクロヘキサアミロース構造、空孔率=0.45〜0.60nm)、β型(7個のピラノース基を有する。シクロヘプタアミロース、空孔率=0.70〜0.80nm)、γ型(8個のピラノース基を有する。シクロオクタアミロース、空孔率=0.85〜1.0nm)、δ型(9個のピラノース基を有する。シクロノナアミロース)が存在する。

    グルコース単位の中で2位、3位、及び6位に水酸基が存在し、6位に存在する水酸基は1級水酸基であり、2位及び3位に存在する水酸基は2級である。

    本発明において使用されるシクロデキストリンは、α型、β型、γ型、及びδ型のシクロデキストリンを用いる場合(ケース1)と、それらの水酸基が式(1)で表される有機基となった化学修飾シクロデキストリンを用いる場合(ケース2)と、前者と後者の混合物を用いる場合(ケース3)がある。 本発明ではこれらのシクロデキストリン化合物を用いることができる。

    シクロデキストリンは、その分子中に含まれる水酸基が化学的に未修飾のシクロデキストリンを用いる場合がケース1である。
    また、その分子中に含まれる水酸基が化学修飾されたシクロデキストリンを用いる場合がケース2であり、その2位、3位及び6位の総水酸基の10〜90%が式(1)で表される有機基で化学修飾されたものである。

    ヨウ素捕捉剤としては、シクロデキストリンの水酸基が式(1)で表される有機基に置き換えた化学修飾シクロデキストリンを用いることができる。

    式(1)中、R 1はハロゲン基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選ばれる基で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基若しくは芳香族基、又は式(2)で表される基を表す。

    式(2)中、R 2はハロゲン基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選ばれる基で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基または芳香族基を表す。

    上記式(1)において、炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルペンチル基、シクロヘキシル基及びノルマルオクチル基等である。 炭素原子数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等である。 ハロゲン基としては、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基及びヨード基である。 芳香族基としては、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の炭素環式芳香族基及びピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、チアゾール環、及びイミダゾール環等の含窒素芳香族基等である。

    式(1)中のR 1が前記炭素原子数1〜10のアルキル基または前記芳香族基である場合とは、シクロデキストリンの水酸基がエーテル基となっている場合である。 R 1が前記式(2)で表される基である場合とは、シクロデキストリンの水酸基がエステル基となっている場合である。

    シクロデキストリンは多数の水酸基を有する化合物であり、溶媒に対する溶解性が低い。 そのため、水酸基をエーテル基またはエステル基とし、溶媒への溶解性を向上させたシクロデキストリン化合物を使用してもよい。 シクロデキストリン化合物は、シクロデキストリンに含まれる水酸基の総数の10%以上、例えば10%〜90%、または20%〜80%、または30%〜60%が式(1)で表される基、すなわちエーテル基またはエステル基となったシクロデキストリン化合物が好ましい。 そして、シクロデキストリン化合物において式(1)で表される基は、エーテル基のみの場合、エステル基のみの場合、及びエーテル基とエステル基が混在する場合があり得るが、そのいずれの場合であってもよい。

    式(1)中のR 1の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、ノルマルオクチル基、シアノメチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、クロロプロピル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオロフェニル基、ピリジル基、2−ピリミジニル基、トリアジニル基、4,6−ジメトキシトリアジン−2−イル基、2,4−ジニトロフェニル基及び2−クロロトリアジン−4−イル基等である。

    式(2)中のR 2の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、ノルマルオクチル基、フェニルエチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、シアノメチル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオロフェニル基、エトキシメチル基、ブロモフェニル基、クロロナフチル基、ニトロフェニル基、ピリジル基、2−ピリミジニル基、トリアジニル基、ベンジル基、2−チアゾリル基及び2−ベンゾオキサゾリル基等である。

    本発明に使用されるシクロデキストリンの水酸基の10〜90%が式(1)の有機基で置き換えた化学修飾シクロデキストリンは次の方法で得ることが出来る。
    例えば、適当な溶媒中、シクロデキストリンと脱離基を有するアルキル化合物または芳香族化合物とを塩基存在下で反応させることによって、式(1)中のR 1が前記炭素原子数1〜10のアルキル基または前記芳香族基であるシクロデキストリン化合物を得ることができる。 脱離基を有するアルキル化合物としては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、2−ヨードプロパン、1−ブロモペンタン、ベンジルブロミド、メトキシメチルクロリド、ブロモアセトニトリル及び1−ブロモオクタン等である。 脱離基を有する芳香族化合物としては、2−クロロトリアジン、2−クロロ−4,6−ジメトキシトリアジン及び2−クロロピリミジン、2,4−ジニトロクロロベンゼン等である。 また、塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、及びトリエチルアミン等である。

    また、例えば、適当な溶媒中、シクロデキストリンとフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とをトリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジエチルの存在下で反応(光延反応)させることによって、式(1)中のR 1が前記芳香族基であるシクロデキストリン化合物を得ることができる。 フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、例えば、フェノール、パラクレゾール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−ヒドロキシアントラセン、9−ヒドロキシアントラセン、4−ヒドロキシピリジン、及び3−ヒドロキシピリジン等である。

    また、式(1)中のR 1が前記式(2)で表される基であるシクロデキストリン化合物は、シクロデキストリンと酸クロリド、酸ブロミド、カルボニルイミダゾール化合物、カルボン酸活性エステル化合物及び酸無水物等との反応によって、水酸基をエステル基に変換することによって得ることができる。 例えば、シクロデキストリンの水酸基のアセチルオキシ基への変換は、ピリジンなどの塩基を用いた条件下、シクロデキストリンをアセチルクロリドや無水酢酸と反応させることによって行なうことができる。

    水酸基のエステル基への変換には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シクロヘキサンカルボン酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シアノ酢酸、エトキシ酢酸、イソ酪酸、安息香酸、ブロモ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ヨード安息香酸、ニトロ安息香酸、メチル安息香酸、エトキシ安息香酸、tert−ブトキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸、クロロナフタレンカルボン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、及びアントラセンカルボン酸等のカルボン酸化合物から誘導される酸クロリド、酸ブロミド、カルボニルイミダゾール化合物、カルボン酸活性エステル化合物を使用することができる。 また、これらのカルボン酸化合物の無水物を用いることもできる。 さらに、シクロデキストリンの水酸基のエステル基への変換は、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤存在下、シクロデキストリンに前記のカルボン酸化合物を反応させることによっても行なうことができる。

    シクロデキストリンの水酸基のエステル基への変換の割合は、使用する酸クロリド、酸ブロミド、カルボニルイミダゾール化合物、カルボン酸活性エステル化合物及び酸無水物等の当量を変えることによって調整することができる。

    シクロデキストリン化合物に残っている水酸基の量は、一般的な水酸基価測定法によって測定することができる。 例えば、ピリジン存在下でシクロデキストリン化合物を無水酢酸によってアセチル化し、水を加えて過剰の無水酢酸を酢酸に変え、この酢酸をアルカリで定量することによりシクロデキストリン化合物の水酸基残量を測定することができる。

    シクロデキストリン及びそれを化学修飾したシクロデキストリンは、王冠のようなシクロデキストリンの構造の内側は疎水性で外側は親水性という性質を有する。 従ってこれらの化合物を疎水性の高い有機溶媒に溶解させるためには、シクロデキストリンの外側に存在する親水性の構造(水酸基)の一部を化学修飾により有機溶媒に親和性を持たせた有機基に変換させる必要がある。 そのためシクロデキストリンの水酸基の10〜90%が式(1)の有機基に置き換わった構造の化学修飾シクロデキストリンを用いることができる。 親水性の高い有機溶媒を用いる場合は、水酸基が未修飾のシクロデキストリン自体を用いるか、又は水酸基が式(1)の有機基に置き換わった率が低い(例えば10〜30%程度)化学修飾シクロデキストリンを用いることができる。

    包接分子と上記シクロデキストリンとはモル比で1:1の錯体形成を基本とするが、包接分子が嵩高い場合には、包接分子と上記シクロデキストリンとはモル比で1:2の割合で錯体を形成することもできる。 これは上記シクロデキストリンがイス型配座の底部(2級水酸基側)を包接分子に向けて、包接分子をその両側から挟み込む形の樽型の錯体である。 また包接分子の形状によっては包接分子と上記シクロデキストリンとはモル比で1:3、及び1:4の錯体を形成することができる。 従ってシクロデキストリン中の包接分子の割合は、全シクロデキストリン中の包接分子の割合で表される。

    例えばβ−シクロデキストリンのヨウ素包接体(β−cyclodextrin iodine complex)は、有効ヨウ素量が5〜20質量%品が市販されている。 また、メチル化−β−シクロデキストリンのヨウ素包接体(Methyl−β−cyclodextrin iodine complex、ヒドロキシル基の一部がメトキシ基に変換されたもの)は、有効ヨウ素量が3〜15%品が市販されている。

    <デンプン類>
    本発明において使用されるデンプン分子の植物性起源は、穀類またはジャガ芋類であっても良い。 然るに、前記デンプンは、例えばコーンスターチ、米デンプン、キャッサバデンプン、大麦デンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、サトウモロコシデンプン、及びエンドウ豆デンプンから選択される。

    ヨウ素捕捉剤として使用されるデンプンは、変性されていることが好ましい。 該デンプンは化学的または物理的に、特に1つ以上の以下の反応:アルファ化、酸化、架橋、エステル化、エーテル化、アミド化、熱処理を経て変性されていることが好ましい。

    これらの変性は下記の方法:
    ・デンプン粒子の分断(例えば乾燥ドラム中での乾燥及び調理)によるアルファ化;
    ・デンプン分子へのカルボキシル基の導入、ひいてはデンプン分子の解重合をもたらす、強い酸化剤を用いる酸化(例えばデンプン水溶液を次亜塩素酸ナトリウムで処理することによる);
    ・デンプン分子のヒドロキシル基と反応可能な官能性作用剤との架橋、然るにひいては(例えばグリセリル及び/またはホスフェート基との)結合;
    ・官能性基、特にC1-C6アシル(アセチル)、C1-C6ヒドロキシアルキル(ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピル)、カルボキシメチル、またはオクテニルコハク酸基のグラフト化のためのアルカリ性媒質中でのエステル化;
    で行うことが好ましい。

    また、デンプン類としては、リン酸二デンプン(Am-O-PO-(OX)-O-Amタイプのもの)、さらにはリン酸三デンプン(Am-O-PO-(O-Am) 2タイプのもの)、またはこれらの混合物が、特にリン酸一デンプン(Am-O-PO-(OX) 2タイプのもの)とリン酸化合物との架橋により得られるものを用いてもよい。

    Xは、特にアルキル金属(例えばナトリウムまたはカリウム)、アルカリ土類金属(例えばカルシウムまたはマグネシウム)、アンモニウム塩、アミン塩、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-アミノ-1,2-プロパンジオールの前記塩類、あるいはリシン、アルギニン、サルコシン、オルニチン、またはシトルリン等の塩基性アミノ酸から誘導されるアンモニウム塩類を表す。

    リン化合物は、例えば、ナトリウムトリポリホスフェート、ナトリウムオルトホスフェート、リンオキシクロリド、ナトリウムトリメタホスフェートであってもよい。

    ヨウ素捕捉剤としては、リン酸二デンプン(二デンプンホスフェート)または二デンプンホスフェートが豊富な化合物、例えばAvebe社によりPregel VA-70-T AGGL(糊化ヒドロキシプロピルキャッサバ二デンプンホスフェート)、Pregel TK1(糊化キャッサバ二デンプンホスフェート)、及びPregel 200(糊化アセチルキャッサバ二デンプンホスフェート)、あるいはNational Starch社製Structure Zea(糊化トウモロコシ二デンプンホスフェート)が、好ましく使用される。

    好ましいデンプン類は、少なくとも1つの化学変性、例えば少なくとも1回のエステル化を得ているデンプン類である。

    ヨウ素捕捉剤としては、両性デンプン類も使用して良く、これらの両性デンプン類は1つ以上のアニオン性基及び1つ以上のカチオン性基を含んでいてもよい。 前記アニオン性基及びカチオン性基は、デンプン類分子の同一の反応性部位に結合しているか、又は異なる反応性部位に結合していてよく、好ましくは同一の反応性部位に結合している。 前記アニオン性基はカルボン酸由来、ホスフェートまたはスルフェートタイプのものであって良い。 前記カチオン性基は、第一級、第二級、第三級、または第四級のアミンタイプのものであって良い。

    前記両性デンプン類は、特に下式を有する化合物から選択されることが好ましい。

    式中、St−Oはデンプン分子を表し、Rは同一又は相違して良く、水素原子またはメチル基を表し、R'は同一又は相違して良く、水素原子、メチル基、又は−COOH基を表し、nは2又は3の整数であり、Mは同一又は相違して良く、水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属、例えばNa、K、Li、またはNH 4 、第四級アンモニウム、又は有機アミンを示し、R”は水素原子または1乃至18の炭素原子を含むアルキル基を表す。

    これらの化合物は、特許US5455340及びUS4017460に記載されており、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。

    デンプン分子は、デンプンのあらゆる植物源、例えば特にトウモロコシ、ジャガイモ、大麦、米、タピオカ、ソルガム、大麦、又は小麦から誘導されていても良い。
    また、デンプンの加水分解物を用いても良い。 該デンプンの加水分解物は、好ましくはジャガイモから誘導される。

    デンプン類としては、式(I)または(II)のデンプン類を使用することが好ましい。 中でも、2−クロロ−エチルアミノジプロピオン酸で変性されたデンプン類、すなわち式(I)又は(II)においてR、R'、R”、及びMが水素原子を表し、nが2であるデンプン類が特に好ましく使用される。好ましい両性デンプンは、デンプンクロロエチルアミドジプロピオネートである。

    <ポリビニルピリジン類>
    ヨウ素捕捉剤として用いるポリビニルピリジン類は、例えば、4−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン(いずれも種々の置換基を有していてもよい)が挙げられ、これらは、それぞれ単独もしくは併用して用いてもよい。 この際、形成される高分子の重量平均分子量(Mw)は5,000〜1000,000であり、好ましくは10,000〜100,000、さらに好ましくは15,000〜50,000である。

    <ポリビニルピロリドン類>
    ヨウ素捕捉剤として用いるポリビニルピロリドン類は、1-ビニル-2-ピロリドン(種々の置換基を有していてもよい)が挙げられる。 この際、形成される高分子の重量平均分子量(Mw)は5,000〜1000,000であり、好ましくは10,000〜100,000、さらに好ましくは15,000〜50,000である。

    [接着剤層]
    前記ヨウ素捕捉剤は、接着剤層に添加されているのが好ましい。 接着剤層が主成分として含む接着剤は、親水性の接着剤であっても、疎水性の接着剤であってもよい。
    親水性の接着剤の一例は、水分散型のイソシアネート系接着剤を含有する接着剤が挙げられる。 イソシアネート系接着剤は、末端にイソシアネート基を含有する化合物又は末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(ウレタンプレポリマー)や樹脂等を特に制限なく使用でき、一液または二液のいずれの形態でも使用できる。 具体的には、特許第3724792号公報、特許第3962253号公報に記載されており、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。

    また、親水性の接着剤として、PVA(ポリビニルアルコール)を含む水溶液にイソシアネート類を添加した接着剤が挙げられる。 この接着剤は、PVAを含む水溶液又はPVAを含有する水性エマルジョンに、分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート類を添加した接着剤であり、具体的には、特開2001−305345号公報に記載されており、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。

    疎水性の接着剤の一例は、ウレタン(メタ)アクリレート系マクロモノマーを含有する紫外線硬化型組成物が挙げられる。 ウレタン(メタ)アクリレート系マクロモノマーは、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させることにより得ることができる。 具体的には、特開2008−63527号公報、特願2011−077782号に記載されており、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。

    [硬化層]
    本発明の偏光板は、硬化性組成物からなる硬化層を有する。 硬化層の一例は、硬化性液晶組成物からなる光学異方性層である。
    光学異方性層:
    光学異方性層は、面内遅相軸方向及び面内レターデーションの少なくとも一方が互いに異なる第1位相差領域及び第2位相差領域を含み、且つ前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であるのが好ましい。 一例は、第1及び第2位相差領域がそれぞれλ/4程度のReを有し、且つ面内遅相軸が互いに直交している光学異方性層である。 このような光学異方性層の形成には種々の方法があるが、本発明では、重合性基を有する液晶分子を垂直配向もしくは水平配向させた状態で重合させ、固定化して形成することが好ましい。

    光学異方性層は単独でReがλ/4程度であってもよく、その場合はRe(550)が、110〜165nmであることが好ましく、120〜150nmであることがより好ましく、125〜145nmであることが特に好ましい。

    一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。 さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。 高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。 本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物を用いるのが好ましい。 2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、又は棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。 温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。 液晶化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。

    液晶化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。 この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む位相差層を作製することが可能となる。 用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。 前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。

    <重合性基を有する棒状液晶化合物>
    棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。 以上のような低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。 上記高分子液晶化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶化合物が重合した高分子化合物である。 特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶化合物である。
    一般式(I):Q 1 −L 1 −A 1 −L 3 −M−L 4 −A 2 −L 2 −Q 2
    式中、Q 1およびQ 2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L 1 、L 2 、L 3およびL 4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。 A 1およびA 2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。 Mはメソゲン基を表す。

    以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。 なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。

    通常、棒状液晶は波長が長くなるほどレターデーションが小さくなるので、波長G(550nm)におけるレターデーションがλ/4の137.5nmのものを使用する場合、波長R(600nm)に対してはそれより小さく、逆に波長B(450nm)に対してはそれよりも大きくなってしまう。 この問題を解決するためには、△nd(450nm)<△nd(550nm)<△nd(650nm)を満足する、即ち、可視光域において、位相差が波長に対して逆分散特性(波長が長いほど位相差が大きくなる性質)の棒状液晶を、第1の態様及び第2の態様に利用するそれぞれの位相差層として用いることも好ましい。 このような棒状液晶の例には、特開2007−279688号公報記載の一般式(I)、一般式(II)の化合物が含まれる。

    棒状液晶化合物を利用する場合は、棒状液晶を水平配向させるのが好ましい。 尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の子長軸と層面が平行であることをいう。 厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。 傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
    なお、前記組成物中には、液晶の水平配向を促進する添加剤を添加してもよく、該添加剤の例には、特開2009−223001号公報の[0055]〜[0063]に記載の化合物が含まれる。

    <重合性基を有するディスコティック液晶化合物>
    本発明の光学異方性層の主原料として使用可能なディスコティック液晶としては、前記のとおり重合性基を有する化合物が好ましい。
    前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
    一般式(I): D(−L−H−Q) n
    式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Hは二価の芳香族環又は複素環であり、Qは重合性基であり、nは3〜12の整数を表す。

    円盤状コア(D)は、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、アントラキノン環、トルキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が好ましく、ベンゼン環、トリフェニレン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が特に好ましい。

    Lは、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基が好ましく、*−CH=CH−又は*−C≡C−のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基であることが特に好ましい。 ここで、*は一般式(I)中のDに結合する位置を表す。

    Hは、芳香族環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。 複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましく、ピリジン環が特に好ましい。 Hは、芳香族環が特に好ましい。

    重合性基Qの重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。 言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。 中でも、(メタ)アクリレート基、エポキシ基が好ましい。

    前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶は、下記一般式(II)又は(III)で表されるディスコティック液晶であることが特に好ましい。

    式中、L、H、Qは、前記一般式(I)におけるL、H、Qとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。

    式中、Y 1 、Y 2 、及びY 3は、後述する一般式(IV)におけるY 11 、Y 12 、及びY 13と同義であり、その好ましい範囲も同一である。 また、L 1 、L 2 、L 3 、H 1 、H 2 、H 3 、R 1 、R 2 、及びR 3も、後述する一般式(IV)におけるL 1 、L 2 、L 3 、H 1 、H 2 、H 3 、R 1 、R 2 、R 3と同義であり、その好ましい範囲も同一である。

    後述するように、一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表されるように、分子内に複数個の芳香環を有しているディスコティック液晶は、配向制御剤として用いられるピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物等のオニウム塩との間に分子間π−π相互作用が起こるため、垂直配向を実現できる。 特に、例えば、一般式(II)において、Lが、*−CH=CH−又は*−C≡C−のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基である場合、及び、一般式(III)において、複数個の芳香環及び複素環が単結合で連結される場合は、該連結基により結合の自由回転が強く束縛されることにより分子の直線性が保持されるため、液晶性が向上すると共に、より強い分子間π−π相互作用が起こり安定な垂直配向が実現できる。

    前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。

    式中、Y 11 、Y 12及びY 13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;L 1 、L 2及びL 3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;H 1 、H 2及びH 3は、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表し;R 1 、R 2及びR 3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す;

    一般式(I−A)中、YA 1及びYA 2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(IV)におけるL 1 〜L 3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(IV)におけるR 1 〜R 3側と結合する位置を表す;

    一般式(I−B)中、YB 1及びYB 2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(IV)におけるL 1 〜L 3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(IV)におけるR 1 〜R 3側と結合する位置を表す;

    一般式(I−R)
    *−(−L 21 −Q 2n1 −L 22 −L 23 −Q 1
    一般式(I−R)中、*は、一般式(IV)におけるH 1 〜H 3側と結合する位置を表す;L 21は単結合又は二価の連結基を表す;Q 2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す;n1は、0〜4の整数を表す;L 22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO 2 −、**−CH 2 −、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表す;L 23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO 2 −、−NH−、−CH 2 −、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す;Q 1は重合性基又は水素原子を表す。

    前記式(IV)で表される3置換ベンゼン系ディスコティック液晶性化合物の各符号の好ましい範囲、及び前記式(IV)の化合物の具体例については、特開2010−244038号公報の段落[0013]〜[0077]記載を参照することができる。 但し、本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物は、前記式(IV)の3置換ベンゼン系ディスコティック液晶性化合物に限定されるものではない。

    トリフェニレン化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。

    前記一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、後述する、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる。 特に、一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、複数個の芳香環が単結合で連結されているため、分子の回転自由度が束縛された直線性の高い分子構造を有しているため、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間により強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させ垂直配向状態が実現できる。

    本発明では、ディスコティック液晶を垂直配向させるのが好ましい。 尚、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。 厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。 傾斜角は85〜90度が好ましく、87〜90度がより好ましく、88〜90度がさらに好ましく、89〜90度が最も好ましい。
    なお、前記組成物中には、液晶の垂直配向を促進する添加剤を添加していることが好ましく、該添加剤の例には、特開2009−223001号公報の[0055]〜[0063]に記載の化合物が含まれる。

    <オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)>
    本発明では、前述のように、重合性基を有するディスコティック液晶の垂直配向を実現するために、オニウム塩を添加することが好ましい。 オニウム塩は配向膜界面に偏在し、液晶分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用をする。

    オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
    一般式(1)
    Z−(Y−L−) n Cy +・X‐
    式中、Cyは5又は6員環のオニウム基であり、L、Y、Z、Xは、後述する一般式(2a)及び(2b)におけるL 23 、L 24 、Y 22 、Y 23 、Z 21 、Xに同義であり、その好ましい範囲も同一であり、nは2以上の整数を表す。

    5又は6員環のオニウム基(Cy)は、ピラゾリウム環、イミダゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、ピリジニウム環、ピラジニウム環、ピリミジニウム環、トリアジニウム環が好ましく、イミダゾリウム環、ピリジニウム環が特に好ましい。

    5又は6員環のオニウム基(Cy)は、配向膜材料と親和性のある基を有するのが好ましい。 さらに、オニウム塩化合物は、温度T 1 ℃では配向膜材料との親和性が高く、一方、温度T 2 ℃では、親和性が低下しているのが好ましい。 水素結合は、液晶を配向させる実際の温度範囲内(室温〜150℃程度)において、結合状態にも、その結合が消失した状態にもなり得るので、水素結合による親和性を利用するのが好ましい。 但し、この例に限定されるものではない。
    例えば、配向膜材料としてポリビニルアルコールを利用する態様では、ポリビニルアルコールの水酸基と水素結合を形成するために、水素結合性基を有しているのが好ましい。 水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H. Uneyama and K. Morokuma、Journal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。 具体的な水素結合の様式としては、例えば、J. N. イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。 具体的な水素結合の例としては、例えば、G. R. Desiraju、Angewante Chemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。

    水素結合性基を有する5又は6員環のオニウム基は、オニウム基の親水性の効果に加え、ポリビニルアルコールと水素結合することによって、配向膜界面の表面偏在性を高めるとともに、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交配向性を付与する機能を促進する。 好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。 更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、ピリジル基を挙げることができる。
    例えば、イミダゾリウム環の窒素原子ように、5又は6員環のオニウム環に、水素結合性基を有する原子を含有していることも好ましい。

    nは、2〜5の整数が好ましく、3又は4であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。 複数のL及びYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。 nが3以上である場合、一般式(1)で表されるオニウム塩は、3つ以上の5又は6員環を有しているため、前記ディスコティック液晶と強い分子間π−π相互作用が働くため、該ディスコティック液晶の垂直配向、特に、ポリビニルアルコール配向膜上では、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交垂直配向を実現することができる。

    前記一般式(1)で表されるオニウム塩は、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。
    一般式(2a)及び(2b)で表される化合物は、主に、前記一般式(I)〜(IV)で表されるディスコティック液晶の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。

    式中、L 23及びL 24はそれぞれ二価の連結基を表す。
    23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。 L 23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。

    24は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。 mが2以上のとき、複数のL 24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのがさらに好ましい。

    22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である。
    22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。 このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。 R 23は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。 R 23が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。

    Xはアニオンである。
    Xは、一価のアニオンであることが好ましい。 アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。

    22及びY 23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
    前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。 好ましくは、Y 22及びY 23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。 Y 22およびY 23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。 6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。 6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。 6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。 6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
    置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。 アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。 置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。 置換基は2以上であってもよく、例えば、Y 22及びY 23がフェニレン基である場合は、1〜4の炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。

    なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。 mが2のとき、複数のY 23及びL 24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。

    21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
    mが2の場合、Z 21は、シアノ、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
    mが1の場合、Z 21は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。

    アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。 Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。

    pは、1〜10の整数である。 pは、1または2であることが特に好ましい。 C p2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。 C p2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH 2p −)であることが好ましい。

    式(2b)中、R 30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。

    前記式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記式(2a')又は(2b')で表される化合物が好ましい。

    式(2a')及び(2b')中、式(2)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。 L 25はL 24と同義であり、好ましい範囲も同様である。 L 24及びL 25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L 24が−O−CO−で、且つL 25が−CO−O−であるのが好ましい。

    23 、R 24及びR 25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。 n 23は0〜4、n 24は1〜4、及びn 25は0〜4を表す。 n 23及びn 25が0で、n 24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
    30は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。

    一般式(2)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報の明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。

    以下に、一般式(2')で表される化合物の具体例を示す。 但し、下記式中、アニオン(X - )は省略した。

    式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。 例えば、式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
    オニウム塩は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1〜2質量%程度であるのが好ましい。

    前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。 特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a')において、R 22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。 前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。 特に、一般式(2a')で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。

    さらに、前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩を併用すると、ある温度を超えて加熱することで、液晶が、その遅相軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進することができる。 これは、加熱による熱エネルギーでポリビニルアルコールとの水素結合が切断され、オニウム塩が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。

    <フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)>
    フルオロ脂肪族基含有共重合体は、液晶、主に、前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶、の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。 さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
    本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004−333852号、同2004−333861号、同2005−134884号、同2005−179636号、及び同2005−181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。 特に好ましくは、特開2005−179636号、及び同2005−181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO 3 H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH) 2 }}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
    フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1〜1質量%程度であるのが好ましい。

    フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特にディスコティック液晶のチルト角を増加させることができる。 さらに、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO 3 H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH) 2 }}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。

    <溶媒>
    光学異方性層の形成に利用する、前記組成物は塗布液として調製するのが好ましい。 塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。 有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。 アルキルハライドおよびケトンが好ましい。 二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。

    <重合開始剤>
    前記の重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を紫外線照射により固定する。 固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。 紫外線照射による、光重合反応により固定化するのが好ましい。 光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。 ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。 カチオン光重合開始剤の例には、有機スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、ホスホニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルホニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルホニウム塩が特に好ましい。 これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロホスフェートなどが好ましく用いられる。
    光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。

    <増感剤>
    また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。 増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。 光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。 液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。

    <その他の添加剤>
    前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。 重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。 なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。 前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0〜20質量%程度であるのが好ましい。

    この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。

    [配向膜]
    光学異方性層の形成に配向膜を利用してもよい。 配向膜としては、ラビング配向膜を利用するのが好ましい。
    本発明に利用可能な「ラビング配向膜」とは、ラビングによって、液晶分子の配向規制能を有するように処理された膜を意味する。 ラビング配向膜には、液晶分子を配向規制する配向軸があり、当該配向軸に従って、液晶分子は配向する。 液晶分子は、配向膜への紫外線照射部分でラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行になるように配向し、未照射部分で液晶分子の遅相軸がラビング方向に対して直交配向するように、配向膜の材料、酸発生剤、液晶、及び配向制御剤を選択する。

    ラビング配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。 配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。 本発明において利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。 特に変性又は未変性のポリビニルアルコールが好ましい。 ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。 本発明では、鹸化度85〜99程度のものを用いるのが好ましい。 市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。 ラビング配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行、特許第3907735号公報の段落番号[0071]〜[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールを参照することができる。 ラビング配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。

    ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。 ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
    ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。 ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
    式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
    式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。

    ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
    ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
    長尺状の偏光子であって、吸収軸が長手方向の偏光子と貼り合わせるには、長尺のポリマーフィルムからなる支持体上に配向膜を形成し、長手方向に対して45°の方向に連続的にラビング処理して、ラビング配向膜を形成するのが好ましい。

    また、配向膜は、少なくとも一種の光酸発生剤を含有していてもよい。 光酸発生剤とは、紫外線等の光照射により分解し酸性化合物を発生する化合物である。 前記光酸発生剤が、光照射により分解して酸性化合物を発生すると、配向膜の配向制御能に変化が生じる。 ここでいう配向制御能の変化は、配向膜単独の配向制御能の変化として特定されるものであっても、配向膜とその上に配置される光学異方性層形成用組成物中に含まれる添加剤等とによって達成される配向制御能の変化として特定されるものであってもよいし、またこれらの組み合わせとして特定されるものであってもよい。
    ディスコティック液晶は、オニウム塩を添加することで、直交垂直配向状態になる場合がある。 分解により発生した酸と、該オニウム塩とが、アニオン交換すると、該オニウム塩の配向膜界面における偏在性が低下し、直交垂直配向効果を低下させ、平行垂直配向状態を形成させてもよい。 また、例えば、配向膜がポリビニルアルコール系配向膜である場合には、そのエステル部分が発生した酸により分解し、その結果、前記オニウム塩の配向膜界面偏在性を変化させてもよい。

    前記光学異方性層は、配向膜を利用した種々の方法で形成でき、その製法については特に制限はない。
    第1の態様は、ディスコティック液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。 例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、ディスコティック液晶を所定の配向状態とし、それを固定して一方の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他方の位相差領域を形成する。 例えば、前記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。 特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a')において、R 22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。 前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。 特に、一般式(2a')で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。 しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前記ピリジニウム化合物等の配向膜表面における密度が低下し、その作用を消失する。 その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。 この方法の詳細については、特願2010−141345号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。

    第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。 この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。 液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。 それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じて第1及び第2の位相差領域のパターンが形成される。 パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。 また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。 大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。 この方法の詳細については、特願2010−173077号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。

    また、棒状液晶の場合、水平配向膜(配向処理(例えばラビング処理)方向に液晶分子の長軸を配向規制する配向膜)と、直交配向膜(配向処理(例えばラビング処理)方向と直交する方向に液晶分子の長軸を配向規制する配向膜)とを、パターン形成し、その上で、前記重合性棒状液晶を配向させることによって、遅相軸が互いに直交するドメインからなる例えば1/4波長のパターン光学異方性層を形成することもできる。 水平配向膜と直交配向膜からなるパターン配向膜は、例えば、一方を一様に塗布等により形成した後、その表面上に印刷法等を利用して、他方をパターン状に形成し、同一の方向に一様にラビング処理することで形成できる。 例えば、ゴム状フレキソ版を利用した印刷法を利用することができる。

    なお、本発明に利用可能な光配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献等に記載がある。 本発明の配向膜では、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルが好ましい例として挙げられる。 特に好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルである。

    また、第1及び第2の態様を併用してもよい。 一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。 この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、発生していない領域とを形成する。 光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。 配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。 前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。 使用可能な光酸発生剤の例には、Prog. Polym. Sci. , 23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。 前記光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。 この方法の詳細については、特願2010−289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。

    さらに、第3の態様として、重合性が互いに異なる重合性基(例えば、オキセタニル基及び重合性エチレン性不飽和基)を有するディスコティック液晶を利用する方法がある。 この態様では、ディスコティック液晶を所定の配向状態にした後、一方の重合性基のみの重合反応が進行する条件で、光照射等を行い、プレ光学異方性層を形成する。 次に、他方の重合性基の重合を可能にする条件で(例えば他方の重合性基の重合を開始させる重合開始剤の存在下で、マスク露光を行う。露光部の配向状態は完全に固定され、所定のReを有する一方の位相差領域が形成される。未露光領域は、一方の反応性基の反応が進行しているものの、他方の反応性基は未反応のままとなっている。よって、等方相温度を超え、他方の反応性基の反応が進行可能な温度まで加熱すると、未露光領域は、等方相状態に固定され、即ち、Reが0nmになる。

    [透明支持体]
    本発明の偏光板は、前記硬化層を支持する透明支持体を有していてもよい。 透明支持体としては種々のポリマーフィルムを用いることができる。 低Re及び低Rthのポリマーフィルムを用いるのが好ましい。

    前記ポリマーフィルムの主成分ポリマーとしては、セルロース誘導体、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。 また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例として挙げられる。 また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。

    また、前記透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。 熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。

    前記透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることができる。

    前記透明支持体の厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmが更に好ましい。 また、透明支持体として用いるポリマーフィルムの好ましい一例は、Reが0〜10nmであり、且つRthの絶対値が20nm以上の位相差フィルムである。

    [偏光子]
    偏光子は、一般的な偏光子を用いることができる。 例えば、ヨウ素や二色性色素によって染色されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子を用いることができる。 本発明ではヨウ素を吸着させたヨウ素系偏光子を用いるのが好ましく、ポリビニルアルコールの延伸フィルムに、ヨウ素を吸着させて作製される偏光子を用いるのが好ましい。 偏光子の詳細については、特許第3724792号公報、特許第3962253号公報、特開2001−305345号公報、及び特開2008−63527号公報に記載の偏光子を参照することができる。

    [表面層]
    本発明の偏光板は、反射防止層などの機能性膜を有していてもよい。 特に、本発明では光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層、又は中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層を有しているのが好ましい。 これらの層を支持する、基材フィルムを有していてもよく、基材フィルムとして使用可能なポリマーフィルムの例は、上記光学異方性層の支持体として利用可能なポリマーフィルムと同様である。 これらの層は、最表面に配置されているのが好ましい。 特に3D画像を表示する場合に、外光反射によるフリッカが発生してしまうのを効果的に防ぐことができるからである。 上記反射防止層は、さらにハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を有していてもよい。 上記反射防止層を構成する各層の詳細については、特開2007−254699号公報の[0182]〜[0220]に記載があり、本発明に利用可能な反射防止層についても好ましい特性、好ましい材料等について、同様である。

    前記基材フィルムは、光学異方性層の透明支持体を兼ねていてもよい。 基材フィルムとして利用可能なポリマーフィルムの例については、前記光学異方性層の透明支持体の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。

    [液晶セル]
    本発明の画像表示装置に用いられる液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
    TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。 TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
    VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。 VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。 また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。 これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
    IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。 IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。 光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。

    以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。 以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。 したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。

    実施例1
    (硬化層(1)の作製)
    <透明支持体Aの作製>
    下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
    ────────────────────────────────────
    セルロースアシレート溶液Aの組成────────────────────────────────────
    置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部 トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部 ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部 メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部 メタノール(第2溶媒) 54質量部 1−ブタノール 11質量部────────────────────────────────────

    別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Bを調製した。
    ────────────────────────────────────
    添加剤溶液Bの組成────────────────────────────────────
    下記化合物B1(Re低下剤) 40質量部 下記化合物B2(波長分散制御剤) 4質量部 メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部 メタノール(第2溶媒) 20質量部────────────────────────────────────

    セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液Bの40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。 ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。 溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。 その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み60μmのセルロースアセテート保護フィルム(透明支持体A)を作製した。 透明支持体AのRe(550)は0nmであり、Rth(550)は12.3nmであった。

    <<アルカリ鹸化処理>>
    セルロースアセテート透明支持体Aを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m 2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。 続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m 2塗布した。 次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体Aを作製した。

    ────────────────────────────────────
    アルカリ溶液の組成(質量部)
    ────────────────────────────────────
    水酸化カリウム 4.7質量部 水 15.8質量部 イソプロパノール 63.7質量部 界面活性剤 SF−1:C 1429 O(CH 2 CH 2 O) 20 H 1.0質量部 プロピレングリコール 14.8質量部────────────────────────────────────

    <ラビング配向膜付透明支持体の作製>
    上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成のラビング配向膜塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。 60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。 次に、透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスクをラビング配向膜上に配置し、室温空気下にて、UV−C領域における照度2.5mW/cm 2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を4秒間照射して、光酸発生剤を分解し酸性化合物を発生させることにより第1位相差領域用配向層を形成した。 その後に、ストライプマスクのストライプに対して45°の角度を保持して500rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。 なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであった。
    ────────────────────────────────────
    配向膜形成用塗布液の組成────────────────────────────────────
    配向膜用ポリマー材料 3.9質量部(PVA103、クラレ(株)製ポリビニルアルコール)
    光酸発生剤(S−2) 0.1質量部メタノール 36質量部水 60質量部────────────────────────────────────

    <パターン化された光学異方性層Aの作製>
    下記の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m 2で塗布した。 次いで、膜面温度110℃で2分間加熱熟成した後、80℃まで冷却し空気下にて20mW/cm 2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を20秒間照射して、その配向状態を固定化することによりパターン光学異方性層Aを形成した。 マスク露光部分(第1位相差領域)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行にディスコティック液晶が垂直配向しており、未露光部分(第2位相差領域)は直交に垂直配向していた。 なお、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。

    ────────────────────────────────────
    光学異方性層用塗布液の組成────────────────────────────────────
    ディスコティック液晶E−1 100質量部配向膜界面配向剤(II−1) 3.0質量部空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部光重合開始剤 3.0質量部(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
    増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部メチルエチルケトン 400質量部────────────────────────────────────

    (偏光子の作製)
    厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを0.3%のヨウ素水溶液中で染色した後に、4%のホウ酸、2%のヨウ化カリウム水溶液で5%まで延伸して、ついで50℃で4分乾燥させて偏光子を得た。

    (偏光板の作製)
    イソシアヌル酸トリス(6−インシアネートヘキシル)18質量部に、片末端がメチルエーテル化されたポリエチレングリコール(重量平均分子量1000)2質量部およびジ−n−ブチルスズラウリレート0.2質量部を混合し、窒素雰囲気下、40℃で反応させ、分子内に水分散性成分を有するイソシアネート化合物を得た。 これを80質量部の水に分散させてイソシアネート系接着剤(1)を調製した。
    表面を鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルムの鹸化面に、イソシアネート系接着剤(1)として塗布した後、偏光子の両面にロールラミネーターを用いて貼り合わせ、60℃で10分間乾燥した。 次いで、40℃で72時間硬化させ偏光板を得た。

    (ヨウ素捕捉剤含有接着剤の調製)
    イソシアヌル酸トリス(6−イソシアネートヘキシル)18質量部に、方末端がメチルエーテル化されたポリエチレングリコール(重量平均分子量1000)2質量部およびジ−2−ブチルスズラウリレート0.2質量部を混合し、窒素雰囲気下、40℃で反応させ、分子内に水分散性成分を有するイソシアネート化合物を得た。 さらにこれに水溶性デンプン0.1質量部(特開2006−274100の実施例1)を加えて、80質量部の水に分散させてヨウ素捕捉剤含有接着剤(1)を得た。

    (パターン偏光板の作製)
    硬化層(1)のパターン光学異方性層の表面にコロナ放電処理を施した後、パターン光学異方性層の表面に前記ヨウ素捕捉剤含有イソシアネート系接着剤(1)を塗布し、偏光板の片面にロールラミネーターを用いて貼り合わせ、60℃で10分乾燥した。 ついで、40℃で72時間硬化させ、パターン光学異方性層と偏光板が一体となったパターン偏光板(1)を作製した。 接着剤層の厚みは0.1μmであった。

    実施例2
    ヨウ素捕捉剤含有接着剤(1)において、デンプンの替わりにα―シクロデキストリン0.1質量部を加えたヨウ素捕捉剤含有接着剤(2)を用いた以外は同一の工程を経てパターン偏光板(2)を作製した。

    実施例3
    ヨウ素捕捉剤含有接着剤(1)において、デンプンの替わりにβ―シクロデキストリン0.1質量部を加えたヨウ素捕捉剤含有接着剤(3)を用いた以外は同一の工程を経てパターン偏光板(3)を作製した。

    実施例4
    ヨウ素捕捉剤含有接着剤(1)において、デンプンの替わりにγ―シクロデキストリン0.1質量部を加えたヨウ素捕捉剤含有接着剤(4)を用いた以外は同一の工程を経てパターン偏光板(4)を作製した。

    実施例5
    ヨウ素捕捉剤含有接着剤(1)において、デンプンの替わりにポリビニルピリジン(Mw18,000)0.1質量部を加えたヨウ素捕捉剤含有接着剤(5)を用いた以外は同一の工程を経てパターン偏光板(5)を作製した。

    実施例6
    ヨウ素捕捉剤含有接着剤(1)において、デンプンの替わりにポリビニルピロリドン(Mw20,000)0.1質量部を加えたヨウ素捕捉剤含有接着剤(6)を用いた以外は同一の工程を経てパターン偏光板(6)を作製した。

    実施例7
    硬化層(1)を下記のように作製した硬化層(2)に変更した以外、その他は実施例1と同一の工程を経てパターン偏光板(7)を作製した。

    [硬化層(2)の作製]
    <光配向膜の作製>
    前記セルロースアセテート透明支持体Aの表面に、下記構造の光配向材料E−1 1%水溶液をスピンコート塗布し、100℃で1分間乾燥した。 得られた塗布膜に、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射する。 このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を図6(a)に示すように、方向1にセットして、さらにマスクA(画像パターンを有す石英露光マスク)を通して、露光を行う。 その後、図6(b)に示すように、ワイヤーグリッド偏光子を方向2にセットして、さらにマスクBを通して、露光を行う。 露光マスク面と光配向膜の間の距離を200μmに設定する。 この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm 2 、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm 2とする。

    (光学異方性層の作製)
    下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液として用いる。 該塗布液を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、厚さ1.3μmの、直線偏光層の偏光軸に対して、遅相軸が、各々、±45°にパターニングされた1/4波長層を作製する。 得られた試料のチルト角は、ほぼ1°であり、測定波長550nmにおけるReは138nmであり、透明支持体とのRthの合計は13nmである。

    <光学異方性層用組成>
    棒状液晶I−27 100質量部水平配向剤A 0.3質量部光重合開始剤 3.3質量部(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
    増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部メチルエチルケトン 300質量部

    比較例1
    ヨウ素捕捉剤含有接着剤(1)をイソシアネート系接着剤(1)に変更した以外は同一の工程を経てパターン偏光板(A)を作製した。

    実施例8
    パターン光学異方性層にコロナ放電処理をせず、その他は同一の工程を経てパターン偏光板(8)を作製した。

    (評価)
    <耐水性、ブリスターの数、及びパターン偏光板のダメージの測定>
    実施例および比較例で得られた偏光板を偏光子の延伸方向が長辺方向となるように長辺50cm、短辺25cmの長方形に切断し、60℃の温水に8時間浸漬した後の剥がれの様子を目視にて観察した。 またブリスターの数を計測した。 さらにクロスニコル下での消光を観察することによる偏光子耐久性から、パターン偏光板のダメージを目視で評価し、以下の規準で評価し、結果を下表にまとめた。
    ○: 光漏れの発生が認められない(長辺50cm、短辺25cmの長方形中にない)
    △: 光漏れの発生が認められるが実用上問題のないレベル(長辺50cm、短辺25cmの長方形中に1から10個)
    ×: 実用上問題のあるレベルで光漏れの発生が認められた場合(長辺50cm、短辺25cmの長方形中に10個以上)

    <接着力の測定>
    上記で作製した偏光板を25mm × 250mmにカットし、無アルカリガラス板(コーニング社製、1737、大きさ:50×200mm 、厚み:1.0mm)に貼り付け(2kgロール、一往復)、50℃ 、0.5MPaの圧力で30分間オートクレーブ処理を行った。 その後、23℃×60%RH で3時間放置し、評価用サンプル(a)を得た。
    上記評価用サンプル(a)を万能引張試験機にて剥離速度300mm/分、剥離角度90°で剥離したときの接着力を測定した。 測定は23℃、50%RHの環境下で行った。
    試験結果は、粘着剤層の厚さが25μmの偏光板における上記測定での接着力は、25mm当りで表記する。

    ヨウ素捕捉剤含有接着剤を用いて硬化層と偏光子とを貼合した実施例1〜8のパターン偏光板は、耐水性に優れ、ブリスターの数が少ないことがわかる。 また、パターン偏光板のダメージも抑制されており、接着力も優れていることがわかる。
    一方、ヨウ素捕捉剤を含有しない接着剤を用いて硬化層と偏光子とを貼合した比較例1は、実施例1〜8と比較して耐水性、ブリスターの数、パターン偏光板のダメージ、及び接着力のいずれもが劣ることがわかる。

    10 位相差板12 パターン光学異方性層12a 第1の位相差領域12b 第2の位相差領域16 偏光子a 面内遅相軸b 面内遅相軸

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