ナノスケール金属粒子について勾配を有するPVD金属効果顔料、その製造方法、およびその使用

申请号 JP2015152636 申请日 2015-07-31 公开(公告)号 JP2016027158A 公开(公告)日 2016-02-18
申请人 エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング; Eckart GmbH; 发明人 バーナード ガイスラー; ヴォルフガング ヘルツィング; フランク ヘングライン; ラルフ シュナイダー; マーティン フィッシャー;
摘要 【課題】中性で、被覆性があり、メタリックで、目立たない色かまたは黒色で、鏡状で、ある時までは極めて高い明/暗フロップ性を有し、そして好ましくは製造が容易なメタリック顔料を提供する。 【解決手段】第一の外側面および第二の外側面を有する微小板形状のPVDメタリック効果顔料に関し、その微小板形状のPVDメタリック効果顔料は少なくとも1層のPVD層を有しており、その少なくとも1層のPVD層は、元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属 酸化 物を含み、そのPVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10 原子 %であるPVDメタリック効果顔料。前記微小板形状のPVDメタリック効果顔料を反応性物理的蒸着(PVD)の手段により、 真空 チェンバー中で製造する方法。 【選択図】なし
权利要求

第一の外側面および第二の外側面を有する微小板形状のPVDメタリック効果顔料であって、微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、少なくとも1層のPVD層を有し、少なくとも1層のPVD層が、元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%であることを特徴とする、微小板形状のPVDメタリック効果顔料。微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、重ね合わせるように配列させた2層のPVD層を有し、それぞれが、元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%であることを特徴とする、請求項1に記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、重ね合わせるように配列させた3層以上のPVD層を有していて、PVD層のすべてが、それぞれ元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、そして最も高い元素金属の量が、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中かまたは第二の外側面の中に存在し、そしてPVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。少なくとも1層のPVD層の中の元素金属の量が、PVD層の厚み方向において連続的に変化していることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。少なくとも1層のPVD層の中の元素金属の量が、少なくとも部分的に、PVD層の厚み1nmあたり0.1〜4原子%の勾配で変化していることを特徴とする、請求項4に記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。元素金属の量が、二つの連続したPVD層の間で非連続的に変化していることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。メタリック顔料の第一の外側面の中の元素金属の量が、0〜60原子%の範囲であり、メタリック顔料の第二の外側面の中の元素金属の量が、好ましくは30〜95原子%の範囲であるが、ただし、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面と第二の外側面との間の元素金属の量の差が、少なくとも10原子%であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。重ね合わせるように配列させた少なくとも2層のPVD層の金属が、同一であるかまたは異なっていて、アルミニウム、マグネシウム、クロム、銀、銅、金、亜鉛、スズ、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、チタン、タンタル、モリブデン、それらの混合物、およびそれらの合金からなる群より選択されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。1層または複数のPVD層の厚みが、10〜500nmの範囲にあることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。元素金属が、少なくとも部分的にクラスターの形態で存在し、クラスターが好ましくは、1nm〜10nmの範囲の平均粒子サイズを有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、場合によっては表面変性された腐食防止層を用いて包み込まれていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。コーティング、ペイント、自動車仕上げ塗料、粉体コーティング材料、印刷インキ、導電性コーティング配合物、デジタル印刷インキ、プラスチック、または化粧品配合物における、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料の使用。コーティング組成物であって、コーティング組成物が、請求項1〜11のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料を含むことを特徴とする、コーティング組成物。コーティング組成物が、コーティング、ペイント、自動車仕上げ塗料、粉体コーティング材料、印刷インキ、デジタル印刷インキ、プラスチック、および化粧品配合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項13に記載のコーティング組成物。コーティングされた物品であって、物品が、請求項1〜11のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料を用いるか、または請求項13もしくは14に記載のコーティング組成物を用いて得られることを特徴とする、コーティングされた物品。微小板形状のPVDメタリック効果顔料を製造するための方法であって、方法が、以下の工程: (a)直線的に移動している基材を、蒸着セクションを有する真空チャンバーの中で、反応性物理的蒸着(PVD)の手段によって、酸素の存在下に少なくとも1種の金属を用いてコーティングし、それによって、金属の一部が酸素と反応して金属酸化物を形成し、未反応の金属と形成された金属酸化物とを、蒸着セクションの上で、直線的に移動している基材の移動方向に関連して非対称的な分布で堆積させて、1層のPVD層または重ね合わせるように配列させた複数のPVD層を得る工程、 (b)適用された1層または複数のPVD層を剥離する工程、 (c)剥離された1層または複数のPVD層を微粉砕する工程、 (d)場合によっては、微粉砕された1層または複数のPVD層を分散体またはペーストに転換させる工程、 を含むことを特徴とする、方法。工程(a)において、真空チャンバー内で直線的に移動している基材の、物理的蒸着(PVD)の手段によるコーティングが、酸素の存在下に、少なくとも一つの金属蒸気源からの少なくとも1種の金属を用いて実施され、酸素が、基材の移動方向に関連して、そして一つまたは複数の金属蒸気源に関連して、量的および/または場所的な面で非対称的な分布で真空チャンバー内に導入されることを特徴とする、請求項16に記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料を製造するための方法。工程(a)において、酸素が、添加手段を介して、少なくとも一つの金属蒸気源から発生させた金属蒸気のほぼ中央に導入されるが、一方では直線的に移動している基材と、他方では金属蒸気源およびさらには酸素のための添加手段との間に、蒸着セクションを区切り、そしてシャッター開口部を形成する一つまたは複数のシャッターを存在させるが、シャッター開口部が、一つまたは複数の金属蒸気源、さらには一つまたは複数の酸素のための添加手段に関連して、非対称的に配置されていることを特徴とする、請求項16に記載の方法。工程(a)において使用される基材が、好ましくは物理的蒸着(PVD)の手段により適用された金属層を備えているか、または金属フォイルであることを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。

第一の外側面および第二の外側面を有する微小板形状のPVDメタリック効果顔料であって、微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、少なくとも1層のPVD層を有し、少なくとも1層のPVD層が、元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%であり、元素金属および金属酸化物の金属が、アルミニウム、クロム、チタン、およびそれらの合金から選ばれることを特徴とする、微小板形状のPVDメタリック効果顔料。微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、重ね合わせるように配列させた2層のPVD層を有し、それぞれが、元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%であることを特徴とする、請求項1に記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、重ね合わせるように配列させた3層以上のPVD層を有していて、PVD層のすべてが、それぞれ元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、そして最も高い元素金属の量が、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中かまたは第二の外側面の中に存在し、そしてPVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。少なくとも1層のPVD層の中の元素金属の量が、PVD層の厚み方向において連続的に変化していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。少なくとも1層のPVD層の中の元素金属の量が、少なくとも部分的に、PVD層の厚み1nmあたり0.1〜4原子%の勾配で変化していることを特徴とする、請求項4に記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。元素金属の量が、二つの連続したPVD層の間で非連続的に変化していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。メタリック顔料の第一の外側面の中の元素金属の量が、0〜60原子%の範囲であり、メタリック顔料の第二の外側面の中の元素金属の量が、30〜95原子%の範囲であるが、ただし、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面と第二の外側面との間の元素金属の量の差が、少なくとも10原子%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。1層または複数のPVD層の厚みが、10〜500nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。元素金属が、少なくとも部分的にクラスターの形態で存在することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。クラスターが、1nm〜10nmの範囲の平均粒子サイズを有することを特徴とする、請求項9に記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、場合によっては表面変性された腐食防止層を用いて包み込まれていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料。コーティング、ペイント、自動車仕上げ塗料、粉体コーティング材料、印刷インキ、導電性コーティング配合物、デジタル印刷インキ、プラスチック、または化粧品配合物における、請求項1〜11のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料の使用。コーティング組成物であって、コーティング組成物が、請求項1〜11のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料を含むことを特徴とする、コーティング組成物。コーティング組成物が、コーティング、ペイント、自動車仕上げ塗料、粉体コーティング材料、印刷インキ、デジタル印刷インキ、プラスチック、および化粧品配合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項13に記載のコーティング組成物。コーティングされた物品であって、物品が、請求項1〜11のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料を用いるか、または請求項13もしくは14に記載のコーティング組成物を用いて得られることを特徴とする、コーティングされた物品。

说明书全文

本発明は、第一の外側面および第二の外側面を有する微小板形状のPVDメタリック効果顔料に関し、その微小板形状のPVDメタリック効果顔料は、少なくとも1層のPVD層を有し、その少なくとも1層のPVD層は、金属酸化物と元素金属のクラスターとを含み、そのPVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属のクラスターの量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%である。本発明はさらに、このPVDメタリック効果顔料の使用、およびその製造にも関する。

メタリック効果顔料は、永年の間、メタリック効果を起こさせる目的でコーティングの中に使用されてきた。

従来からのメタリック効果顔料は、微小板形状のメタリック顔料からなっているが、その効果は、個々の適用媒体の中で平行に配向させられた平板な形状のメタリック顔料のところで、入射光が直接的に反射されることに由来している。

メタリック効果顔料の典型的な適用分野は、コーティング産業、特に自動車産業、印刷産業、およびプラスチック産業である。

メタリック効果は、ある種のパラメーターで表すことができる。これらのパラメーターとしては、きらめきおよびメタリック光沢を特徴とするブリリアンス、明度、およびフロップ性、すなわち入射および/または視角の関数としての明度における変化、ならびに被覆が挙げられる。着色メタリックコーティングの場合には、さらなるパラメーターとして、彩度とカラーフロップ性(「ツートーン性」)が挙げられる。光沢は、標準に関連して、反射光の散乱光に対する比率として求められる。

メタリック効果に影響を与える主要因としては、以下のものが挙げられる:顔料の粒子モルホロジーおよび形状因子、すなわち平均粒子直径の平均粒子厚みに対する比率、粒子の厚み、さらには、その表面粗さ、粒子サイズ、粒子サイズ分布、ならびにコーティング材料またはプラスチックの表面に平行な顔料の配向性。

直径が比較的に大きく均一なモルホロジーを有しているメタリック効果顔料粒子においては、反射が比較的に高く、このことは、メタリックなブリリアンスが高く、明度が改良され、フロップ性が強いということで証明されるが、それに対して粒径が比較的に小さい顔料では、散乱の割合が極めて高く、そのために良好な被覆力が得られる。

しかしながら、被覆力は、とりわけ、メタリック顔料の厚みで決まってくる。メタリック顔料が薄いほど、比被覆力、すなわち単位重量あたりの被覆力が良好となる。

印刷、コーティング、プラスチック、および化粧品などの産業の場合、メタリック的に暗色なメタリック効果顔料に大きな関心が寄せられている。

比較的に高付加価値な用途では、特に薄いアルミニウム効果顔料が開発されていて、それはPVD法で製造されている。

PVD法によって製造されたメタリック効果顔料は、かなり以前から公知である。それらは、極端に高い光沢、強い被覆力、およびユニークな光学的性質を特徴としている。それらは、約30〜70nmという低い厚みと極端に滑らかな表面を有しているために、適用した後で、基材の形状に極めて合致した形状をとる傾向がある。基材が極めて平滑であれば、その結果として、ほぼ鏡状の外観が得られる。

純粋なメタリック効果顔料の中では、今日までに商業的に開示されているのは、アルミニウム効果顔料だけである。その例としては、以下のものが挙げられる:Metalure(登録商標)(製造:Avery Dennison、販売:Eckart)、Decomet(登録商標)(Schlenk)、またはMetasheen(登録商標)(Ciba)。

そのような顔料は、その最高の具現化例では「銀色」の色相を呈する。

メタリック層をベースとしてPVD法によって製造された顔料は、US 2,839,378にさらに詳しく説明されている。そこに記載されているのは、「剥離層」を備えた基材に対して蒸着によって適用される極端に薄い層厚みを有する鏡状の顔料の製造である。金属層を適用し、その膜を剥離してから、顔料を機械的な作用の手段によって微粉砕して、所望の粒子サイズとする。

このようにして製造された顔料をコーティング配合物の中に適用することは、US 2,941,894に詳しく記載されている。その特許では以下のことが強調されている:高い反射率、低レベルの顔料添加性、すなわち適用媒体中における低レベルの顔料濃度、および顔料の高い比隠蔽力または比被覆力。

35〜45nmの厚みを有するメタリック顔料を蒸着法の手段によって製造するための方法が、US 4,321,087に詳細に記載されており、剥離層の適用、金属被覆操作、溶媒浴の中における剥離手順、剥離させた粒子の濃縮、および超音波の手段による所望の顔料サイズまでの粒子の微粉砕を伴っている。

WO99/35194には、3層構成を有する顔料の記載があるが、そこでは、中間に位置している金属層の固有の色が、外側の二つの誘電性支持層によって変化を受けない。この製造方法に伴う欠点は、多層構成を作り出すことを可能とするために、蒸着法によって適用された3層を含むので、その結果として、製造コストが大幅に高くなってしまうことである。

EP 1 522 606 A1には、黒色の酸化アルミニウムを伴うシートの製造が記載されている。この場合においては、効果顔料および多層構造のいずれも開示されていない。ここで開示されているシートは、光沢およびフロップ性を伴う顕著なメタリック効果は有していない。

US 4,430,366には、金属と金属酸化物との混合物を含むシートの製造についての記載がある。ここでもまた、効果顔料については触れられていない。

WO 2007093401 A2には、酸素および金属に関してはほぼ均質な組成を有する層を含む暗色のメタリック効果顔料が記載されている。その欠点は、この効果顔料を製造するための方法が、高コストで、手間がかかることである。

DE 69601432 T2は、200〜1100nmの間の波長での光透過率が少なくとも0.3となるような方法で、酸素含有の黒色アルミニウム層を適用する、基材の上に画像を熱的に生成させるための方法に関する。この文書は、効果顔料の調製には無関係である。

EP 1 144 711 B1には、反射性の着色顔料を製造するための方法が開示されているが、そこでは、反射層の上に、色の変化を作り出す少なくとも1層を適用するが、前記層には、1.8より高い屈折率を有する透明な材料、典型的には金属酸化物、および光吸収性金属が含まれていて、適用は同時蒸発で実施するが、その光吸収性金属は、その金属酸化物の金属とは異なっている。プロセス工学の観点からは、この方法は制御するのが極めて困難である。

DE 10 2007 007 908 A1には、PVD法によって製造した暗色のメタリック効果顔料が開示されている。それらはほぼ均質な組成と、25〜58原子%の比較的高い酸素含量を有している。その層は暗色であるが、その理由は、金属が、金属酸化物の中に分散された小さな金属クラスターの形態になっているからである。この種の効果顔料は、暗色を生成させるが、際立った明/暗フロップ性を有する高度に光沢のある効果顔料を与える。均質な組成を有するこれらのPVDメタリック効果顔料を製造するための方法もまた、プロセス工学の観点からは、コストと手間がかかり、低い生産速度しか得られない。

高い酸素含量と均質な化学組成を保証するためには、そのコーティング操作の際に、コーティングベルトの幅方向と長さ方向の両方で、金属の蒸発速度および酸素の供給速度についての広範囲なモニタリングを実施する必要がある。これは、特に製造プラントにおいては非常に高いレベルのコストと複雑さを必要とし、たとえばベルトの幅方向で、たとえば金属層の厚みを、その場で透過率の測定の手段によって測定し、調節することはできる。しかしながら、蒸着ゾーン全体にわたって、すなわちベルトの幅方向と長さ方向で操作をモニターすることは、極めて困難である。

本発明の一つの目的は、中性で、被覆性があり、メタリックで、目立たない色かまたは黒色で、鏡状で、ある時までは極めて高い明/暗フロップ性を有し、そして好ましくは製造が容易なメタリック効果顔料を提供することである。

さらなる目的は、そのようなメタリック効果顔料を製造するための、経済性に優れかつ単純な方法を見出すことである。その顔料は、容易にモニターすることが可能な方法によって製造できるものであるべきである。さらにその方法によって、高い生産速度が得られるのが好ましい。

本発明がその上に基礎をおく目的は、第一の外側面および第二の外側面を有する微小板形状のPVDメタリック効果顔料を提供することによって達成されるが、その微小板形状のPVDメタリック効果顔料は少なくとも1層のPVD層を有しており、その少なくとも1層のPVD層は、元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、そのPVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%である。

本発明のPVDメタリック効果顔料の好適な展開は、請求項2〜11に規定されている。

本発明のPVDメタリック効果顔料は、1層または複数のPVD層を含むか、それらからなっていてよい。

微小板形状のPVDメタリック効果顔料は、その直径が、そのPVDメタリック効果顔料の厚みの少なくとも10倍あるメタリック効果顔料であるのが好ましい。その直径が、その厚みの少なくとも20倍、好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも80倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍あるのが好ましい。さらに、直径が、厚みの200倍、400倍、500倍または1000倍の大きさであれば、極めて好適である。

PVDメタリック効果顔料の外側面とは、その微小板形状のPVDメタリック効果顔料の上面または底面を意味しており、そのPVDメタリック効果顔料は、1層、2層、3層、またはそれ以上のPVD層を含んでいてよい。PVDメタリック効果顔料の外側面には、たとえばPVDメタリック効果顔料に適用された腐食防止層は含まれない。

「原子%」という表示は、構成成分のすべて、すなわち、元素金属、酸化された金属、および酸素に関し、酸化された金属と酸素とは、金属酸化物の形態で、一つの(数が1)PVD層の中に存在している。

変形性摩砕によって得られるメタリック効果顔料と対比して、本発明のPVDメタリック効果顔料は、極度に平らな表面である、より具体的には凹凸がないことをさらなる特徴としている。変形性摩砕によって得られるメタリック効果顔料と対比して、その縁辺領域はちぎれていたり、ほつれていたりせず、そのかわりに、典型的には直線的な破断縁部を有している。

本発明のPVDメタリック効果顔料の著しい特徴は、それが、非対称的な構成を有していることである。その非対称性は、特に、PVD層の厚み方向で元素金属の量が変化している点にある。本発明によるPVD層は、物理的蒸着(PVD)の手段によって、一つの(数が1)PVD蒸着操作で適用された、一つの(数が1である)層である。したがって、PVD層の非対称性は、PVD層の不均質な組成に帰することができるが、これは、本発明のPVDメタリック効果顔料のPVD層の厚み方向において、元素金属および金属酸化物が不均一に分布していることの結果である。

微小板形状のPVDメタリック効果顔料の第一の外側面と第二の外側面との間の元素金属の量は、少なくとも10原子%、好ましくは少なくとも14原子%、より好ましくは少なくとも17原子%異なっている。本発明の一つの好ましい展開においては、その差を、21〜96原子%の範囲、より好ましくは24〜87原子%の範囲、さらにより好ましくは27〜76原子%の範囲に位置させる。31〜68原子%の範囲または37〜46原子%の範囲の差が極めて好適であることも見出された。

元素金属に加えて、本発明のPVDメタリック効果顔料には、金属酸化物も含まれる。ここで、一つの(数が1)PVD層の厚み方向のプロファイルにおいて、元素金属の量は、元素金属酸化物の量と、ほとんど逆対応関係、好ましくは完全な逆対応関係となっている(逆も同じ)。

本発明においては、PVD層において、金属酸化物を形成する金属は、そのPVD層中の元素金属と同じものである。別な表現法を使用すれば、PVD層中の元素金属と金属酸化物の金属とは、相互に異なっていないことが好ましい。したがって、元素金属が金属酸化物の中に分布した形で存在していてもよいし、あるいは金属酸化物が金属の中に分布した形で存在していてもよいが、これは、元素金属と金属酸化物のそれぞれの割合に依存する。

一つの(数が1)PVD層の中の元素金属と金属酸化物の金属とは同一であるが、その理由は、PVD層が、酸素の存在下における金属の反応性蒸発を用いて適用されているからである。したがって、本発明のPVDメタリック効果顔料の製造においては、金属酸化物と金属とを、相互に並行的に蒸発させるのではない。

本発明においては、その金属は、単一金属もしくは金属合金、または単一金属の酸化物もしくは金属合金の酸化物であってよい。

本発明のPVDメタリック効果顔料の中で金属クラスターの形態で存在している元素金属が、本発明のPVDメタリック効果顔料の着色を主として決める。金属酸化物として存在している画分は、本発明のPVDメタリック効果顔料の着色には、役に立たないか、役に立つにしても極めてわずかである。

驚くべきことには、本発明のPVDメタリック効果顔料が驚くべき光学的性質を有しているということが判明した。元素金属の量がより多い面を有する本発明のPVDメタリック効果顔料の部分が、実質的にメタリック反射材としてか、または実質的にメタリック吸収材としてかのいずれかの機能を果たす。金属クラスターの形態での元素金属の量がより多い面を有する本発明のPVDメタリック効果顔料の部分が、実質的に着色効果を有している。

驚くべきことには、さらに、本発明の非対称的なPVDメタリック効果顔料は、適用すると、均質で魅力的な視覚的印象を生み出すことも判明した。たとえばインキ、印刷インキ、ペイント、化粧品などのようなコーティング用途においては、約50%の、金属クラスターの形態での元素金属の含量が高い面を有している本発明のPVDメタリック効果顔料と、約50%の、金属クラスターの形態での元素金属の含量が低い面を有している本発明のPVDメタリック効果顔料が、観察者の目に向けられる。驚くべきことには、観察者は、色が不規則であるという印象は受けず、そのかわりに均一な色の印象を受ける。この効果は、片側から連続的な金属層を用いて得られたPVDメタリック効果顔料では、特に驚くべきことであった。

さらに驚くべきことは、本発明のPVDメタリック効果顔料は、一つの(数が1)PVD層の中で金属酸化物と金属クラスターの形態にある元素金属とがほぼ均質に分布しているPVDメタリック効果顔料に比較して、顔料の厚みがより薄く、さらに、暗色の色相を与える。

驚くべきことには、さらに、本発明のPVDメタリック効果顔料が、高い明/暗フロップ性を示す、灰色の、好ましくは暗色〜灰色のPVDメタリック効果顔料の提供を可能とするということが判明した。この光学効果は、本発明のPVDメタリック効果顔料の非対称性に帰することが可能であって、PVDメタリック効果顔料のどちらの面が観察者に向いているかに依存して、非対称的な着色結果が得られるのだと考えられる。観察者が受け取る色が平均化されるために、これまでは入手不可能であった、強い明/暗フロップ性を有する灰色の領域のメタリック効果顔料を得ることが可能となる。

本発明の一つの展開においては、その微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、重ね合わせるように配列させた2層のPVD層を有しており、それぞれが、元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、そのPVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中および第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%である。

本発明のこの変法においては、2層のPVD層は、互いの上に直接的に蒸着させることによって適用される。この場合、両方の層の中の元素金属の金属と金属酸化物の金属とは、相互に同じであっても、あるいは異なっていてもよい。

たとえば、第一のPVD層の金属がアルミニウムもしくは酸化アルミニウムであってよく、第二のPVD層の金属がクロムもしくは酸化クロム、またはチタンもしくは酸化チタンであってもよい。

しかしながら、本発明においては、第一のPVD層の金属をアルミニウムまたは酸化アルミニウムとし、第二のPVD層の金属も同様にアルミニウムまたは酸化アルミニウムとすることもまた可能ではあるが、第一のPVD層の中および第二のPVD層の中における酸化アルミニウムまたは元素アルミニウムのそれぞれの割合が、相互に異なっているのが好ましい。

本発明においては、第一のPVD層の金属をクロムまたは酸化クロムとし、第二のPVD層の金属も同様にクロムまたは酸化クロムとすることもまた可能ではあるが、第一のPVD層の中および第二のPVD層の中における酸化クロムまたは元素クロムのそれぞれの割合が、相互に異なっているのが好ましい。

本発明においては、第一のPVD層の金属をチタンまたは酸化チタンとし、第二のPVD層の金属も同様にチタンまたは酸化チタンとすることもまた可能ではあるが、第一のPVD層の中および第二のPVD層の中における酸化チタンまたは元素チタンのそれぞれの割合が、相互に異なっているのが好ましい。

2層のPVD層を有するPVDメタリック効果顔料において金属または金属酸化物を上述のように組み合せることは、本発明においては、特に好ましい。

PVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中の元素金属の量は、第二の外側面の中の元素金属の量とは、その第一のPVD層の中の金属と第二のPVD層の中の金属とが同一であるか、あるいは相互に異なっているかとは無関係に、少なくとも10原子%は異なっている。

本発明のさらなる変法においては、その微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、重ね合わせるように配列させた3層以上のPVD層を有していて、それらのPVD層のすべてがそれぞれ元素金属のクラスターを伴う元素金属および金属酸化物を含み、最も高い元素金属の量が、PVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中かまたは第二の外側面の中に存在し、そしてそのPVDメタリック効果顔料の第一の外側面の中と第二の外側面の中の元素金属の量が相互に異なっていて、その差が少なくとも10原子%である。

3層または多層構成においては、本発明のPVDメタリック効果顔料の外側面が、最も高い元素金属の量を有しているのが好ましい。

一つの外側面が、第二の外側面の元素金属の量よりも少なくとも10原子%高い元素金属含量を有しているということが肝要である。

外側面を含む2層の外側PVD層の間にある、第三、第四、第五などのPVD層が、その外側面における元素金属の量よりも低いかまたは高い元素金属含量を確かに有しているかもしれないが、その量は、最も高い元素金属の量を有する他の外側面の中の元素金属の量よりも少なくとも10原子%低い量である。

したがって、外側面を含むPVD層の間にあるPVD中間層における元素金属の量は、レベルの変動があってもよいが、その二つの外側面の一方の中に最も高い元素金属の量が存在しているのが好ましい。

本発明においては、少なくとも1層のPVD層の中の元素金属の量が、PVD層の厚み方向において、PVD層の厚み1nmあたり0.1〜4原子%の勾配でもって、連続的に、好ましくは少なくとも部分的に変化しているのが好ましい。

元素金属の量が連続的に増加するということは、元素金属の量が突然に変化するということはなく、そのかわりに、PVD層の厚み方向において、曲線状、より厳密には直線状に変化するということを意味している。一つの好ましい変法においては、元素金属の量における変化は、ほぼ直線状であって、その変化の勾配、すなわち元素金属の量における増加または減少は、厚み1nmあたり0.1〜4原子%の範囲、より好ましくは厚み1nmあたり0.2〜2原子%の範囲、さらにより好ましくは厚み1nmあたり0.4〜1.5原子%の範囲に位置させる。

元素金属、酸化された金属、および酸素の量は、ESCA(化学分析のための電子分光法)の手段によって求めることができる。ESCAの手段によって求められた元素金属、酸化された金属、および酸素の量は、通常、そのPVD層の約20nmの厚みの平均値である。測定値(単位:原子%)の精度は、±1原子%である。

PVDメタリック効果顔料の厚みは、SEM(走査型電子顕微鏡法)によって求めることができる。

本発明のさらなる変法においては、その元素金属の量が、二つの連続したPVD層の間で非連続的に変化する。

2層以上の連続したPVD層を配列させた場合に、元素金属の量において突然の変化があることが多い。したがって、重ね合わせるように配列させた2層のPVD層の間で、それらの元素金属が同一であるか相互に異なっているかには関係なく、元素金属の量の変化の勾配に大きな変化が生じて、その量が、1〜10nmの厚みの中で、原子%の数字で、たとえば5原子%を超えて、または10原子%を超えて、または15原子%を超えて変化してもよい。

本発明のさらなる変法においては、そのメタリック顔料の第一の外側面における元素金属の量が、0〜60原子%の範囲にあり、そしてそのメタリック顔料の第二の外側面における元素金属の量が、30〜95原子%の範囲にあるが、ただし、そのPVDメタリック効果顔料の第一の外側面と第二の外側面との間の元素金属の量の差は、少なくとも10原子%である。

一つの外側面における元素金属の量が、たとえば、50原子%であれば、第二の外側面における元素金属の量は、40原子%未満であるか、または少なくとも60原子%である。その一方で、たとえば、一つの外側面における元素金属の量が20原子%である場合には、たとえば、第二の外側面における元素金属の量は、少なくとも30原子%である。

より高い元素金属含量を有する外側面における元素金属の量は、少なくとも40原子%、好ましくは少なくとも45原子%、より好ましくは少なくとも50原子%、さらにより好ましくは少なくとも55原子%、または少なくとも60原子%であるのが好ましい。元素金属の量が、65〜95原子%、または70〜90原子%の範囲であれば、極めて好適であることも見出された。

本発明においては、重ね合わせるように配列させた少なくとも2層のPVD層の金属が同一であるかまたは異なっているのが好ましく、そしてアルミニウム、マグネシウム、クロム、銀、銅、金、亜鉛、スズ、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、チタン、タンタル、モリブデン、それらの混合物、ならびにそれらの合金からなる群より選択されるのが好ましい。

アルミニウム、クロム、チタン、およびそれらの合金が、極めて好ましい金属であることがわかった。

さらに、1層または複数のPVD層の厚みが、10〜500nmの範囲、好ましくは20nm〜280nmの範囲であれば好ましい。1層または複数のPVD層の厚みが、30〜170nmの範囲、より好ましくは50〜110nmの範囲、さらにより好ましくは60〜90nmの範囲であってもよい。

一つの好ましい変法においては、2層、3層、またはそれ以上のPVD層を有するPVDメタリック効果顔料の場合において、最も高い元素金属含量を有するPVD層は、10〜40nmの範囲、より好ましくは15〜35nmの範囲、さらにより好ましくは20〜30nmの範囲の層の厚みを有している。特に、その層の厚みが10〜40nmの範囲、好ましくは15〜30nmの範囲にある場合には、このPVD層は、入射光を吸収し、そのために、本発明のPVDメタリック効果顔料が強い暗色に見える。これらの層の厚みでは、そのPVD層が強い吸光特性を有している。

最も高い元素金属含量を有するPVD層の層の厚みが、40nmを超える、たとえば50〜500nmの範囲、80〜280nmの範囲、または100〜170nmの範囲である場合、このPVD層は、より強い反射効果を有している。

本発明においては、元素金属が、少なくとも部分的にクラスターの形態で存在しているのが好ましく、そのクラスターが、1nm〜10nmの範囲の平均粒子サイズを有しているのが好ましい。さらに、その元素金属のクラスターが、1.5〜8nmの範囲、好ましくは2〜6nmの範囲の粒子サイズを有しているのが好ましい。

ここで、その元素金属のクラスターは、金属酸化物の連続層の中に埋め込まれているが、元素金属の金属は、金属酸化物の金属と同じである。したがって、元素金属のクラスターが、元素金属含量がより低いPVD層の外側面の中に存在しているのが好ましい。

1層だけのPVD層を有する本発明のPVDメタリック効果顔料の場合には、その元素金属が、一つの外側面の上に好ましくはクラスターの形態で存在し、金属酸化物の中に埋め込まれている。より高い元素金属含量を有する第二の外側面の上に、元素金属が、クラスターの形態で存在していてもよい。

本発明においては、その微小板形状のPVDメタリック効果顔料が、場合によっては表面変性された、腐食防止層を用いて包み込まれていてもよい。

その腐食防止層は、必ずしも包み込むようにして適用されている必要はない。特に、その腐食防止層が同様にPVDによって適用されているならば、その縁部は被覆されていないために、包み込むような腐食防止層は存在しない。本発明のPVDメタリック効果顔料の縁部も同様に腐食作用から保護するためには、包み込むようにして腐食防止層を適用するのが好ましい。包み込むような腐食防止層は、たとえば、湿式化学コーティングによるか、または流動床におけるコーティングによって適用してよい。

さらに、PVDメタリック効果顔料の表面には、有機的に変性したリン酸および/またはホスホン酸および/またはそれらの誘導体が備えられていてもよい。さらに、顔料の表面には、バナジウム化合物および/またはモリブデン化合物、ならびにさらにそれらを組み合せたものが備えられていてもよい。さらに、本発明の顔料は、有機ポリマーおよび/または金属酸化物を用いてコーティングされていてもよい。金属酸化物としては、好ましくは、SiO2、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、モリブデン酸塩、およびバナジン酸塩が挙げられ、そしてそれらの酸化物および酸化物水和物、またはそれらの混合物も含まれる。

一つの特に好ましい実施態様においては、その好ましくは包み込んでいる腐食防止層が、SiO2を含むか、またはSiO2からなっている。そのSiO2層が、ゾル−ゲル法によって包み込むようにして効果顔料に適用されていれば、特に好ましい。この場合、テトラアルコキシシラン、たとえばテトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランを使用するのが好ましい。

他の好ましい実施態様においては、腐食防止層を備えた本発明のPVDメタリック効果顔料には、たとえばシラン、チタン酸塩、またはアルミン酸塩を使用した有機化学的な表面変性がさらに加えられていてもよい。有機化学的な表面変性の効果は、周囲の適用媒体、たとえばペイントまたはインキのバインダーシステムとの相溶性であってよい。そのような有機化学的な追加コーティングによって、たとえば、ペイントまたはインキのバインダーに対して化学的に結合することが可能となり、それによって本発明のPVDメタリック効果顔料を共有結合的に結合させることが可能となる。PVDメタリック効果顔料をバインダーシステムに対して共有結合的に結合させることによって、たとえば硬化させた後の、コーティング媒体、たとえばインキおよびペイントの結露抵抗性および機械的抵抗性が向上する。

この場合における有機化学的な表面変性は、DE 10 2006 009 130 A1に開示されているような、1種または複数の有機官能性のシラン、アルミン酸塩、ジルコン酸塩および/またはチタン酸塩の手段によるか、またはDE 10 2005 037 612 A1に開示されているような、少なくとも1種の有機リン含有化合物の手段によって達成してもよい。DE 10 2006 009 130 A1およびDE 10 2005 037 612 A1の内容を参照することにより本明細書に取り入れたものとする。

極めて有利には、実際のところ、好ましくは酸化ケイ素を含むかまたは酸化ケイ素からなる金属酸化物コーティングは、さらに、延性のあるPVDメタリック効果顔料を機械的な影響に対して安定化させる。したがって、PVDメタリック効果顔料の機械的安定性は、たとえば押出し法の手段によるようなかなり過酷な機械的応力が加わる場合でさえも、適用媒体、たとえば、ポリマーやバインダーなどの中に、本発明のPVDメタリック効果顔料を組み入れることが可能であるという程度にまで向上する。

したがって、粉体コーティング材料を調製する目的で、本発明のPVDメタリック効果顔料を押出し法の手段によってバインダーの中に組み入れてもよく、そのPVDメタリック効果顔料が壊れたり損傷を受けたりする程度は、コーティングしていないPVDメタリック効果顔料または純粋に有機の保護層を用いてコーティングしたPVDメタリック効果顔料の場合に比較して、はるかに小さい。

その金属酸化物層、より具体的には保護のための酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび/または無機/有機ハイブリッド層の層の厚みは、好ましくは5〜60nmの範囲、より好ましくは10〜50nmの範囲に位置させる。

一つの好ましい変法においては、特に粉体コーティング材料中に本発明のPVDメタリック効果顔料を使用する場合には、その金属酸化物の表面、好ましくは酸化ケイ素の表面を、有機化学的に変性させる。この場合、その金属酸化物の表面は、好ましくは少なくとも1種の有機シランを用いて変性させるが、それは、好ましくは、金属酸化物の表面に適用した後でも、依然として少なくとも一つの反応性有機基を有していて、適用媒体、より具体的にはバインダーに対して化学的な結合が可能である。

本発明のPVDメタリック効果顔料は、好ましくは、粉体コーティング材料全体の重量を基準にして、重量で、0.1%〜20%、好ましくは0.2%〜10%、より好ましくは0.5%〜6%のPVDメタリック効果顔料含量を有する粉体コーティング材料に用途を見出している。

本発明の微小板形状のPVDメタリック効果顔料は、好ましくは、粉塵が発生しないかまたは発生が少ない提供形態、たとえば、粒状物、ペレット、ブリケット、チップ、小型ソーセージ状物、またはタブレットの形態で提供される。

それぞれの提供形態において、その残存湿分含量は、それぞれの場合においてPVDメタリック効果顔料調製物の全重量を基準にして、重量で、好ましくは0%〜15%の範囲、より好ましくは0.05%〜10%の範囲、さらにより好ましくは1%〜5%の範囲の水および/または有機溶媒もしくは溶媒混合物の値を有する。

特に、コンパクトで一定の形状を有さない粒状物の場合においては、その残存湿分含量は、それぞれの場合において粒状物の全重量を基準にして、重量で、より高い範囲、たとえば、5%〜15%の範囲および好ましくは6%〜10%の範囲に位置させる。

ペレット、ブリケット、チップ、小型ソーセージ状物、またはタブレットのような一定の形状の市販の形態のものの場合には、それぞれの場合においてPVDメタリック効果顔料調製物の全重量を基準にして、重量で、0%〜10%の範囲、より好ましくは0.05%〜3%の範囲、極めて好ましくは0.1%〜1%の範囲の低い残存湿分含量が好ましい。

特に水性用途の場合においては、本発明のPVDメタリック効果顔料調製物における有機溶媒の量は、VOCおよび/または臭気の担持を最小化させるために、重量で、2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満であるのが好ましい。

一つのさらに好ましい提供形態においては、本発明のPVDメタリック効果顔料は、溶媒中の分散体として、またはペーストとして存在させる。

本発明がその上に基礎をおく目的は、さらに、以下の分野における請求項1〜11のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料の使用によって達成される:コーティング、ペイント、自動車仕上げ塗料、粉体コーティング材料、印刷インキ、導電性コーティング配合物、デジタル印刷インキ、プラスチック、または化粧品配合物。

本発明の目的は、さらに、請求項1〜11のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料を含むコーティング組成物を提供することによっても達成される。

そのコーティング組成物は、以下のものからなる群より選択するのが好ましい:コーティング、ペイント、自動車仕上げ塗料、粉体コーティング材料、印刷インキ、デジタル印刷インキ、プラスチック、および化粧品配合物。

本発明の目的は、さらに、請求項1〜11のいずれかに記載の微小板形状のPVDメタリック効果顔料、または請求項13もしくは14に記載のコーティング組成物を用いて得られる物品を提供することによっても達成される。

そのような物品としては、コーティングされたフィルム、より具体的には温室用フィルム、紙、厚紙、織物、家具、ファサード要素、プラスチック要素、自動車のボディなどが挙げられる。

本発明がその上に基礎をおく目的は、さらに、微小板形状のPVDメタリック効果顔料を製造するための方法を提供することによって達成されるが、その方法には以下の工程が含まれる: (a)直線的に移動している基材を、蒸着セクションを有する真空チャンバーの中で、反応性物理的蒸着(PVD)の手段によって、酸素の存在下に少なくとも1種の金属を用いてコーティングし、それによって、その金属の一部が酸素と反応して金属酸化物を形成し、未反応の金属と形成された金属酸化物とを、蒸着セクションの上で、直線的に移動している基材の移動方向に関連して非対称的な分布で堆積させて、1層のPVD層または重ね合わせるように配列させた複数のPVD層を得る工程、 (b)その適用された1層または複数のPVD層を剥離する工程、 (c)その剥離された1層または複数のPVD層を微粉砕する工程、 (d)場合によっては、その微粉砕した1層または複数のPVD層を分散体またはペーストに転換させる工程。

本発明の一つの好ましい実施態様においては、工程(a)において、真空チャンバー内で直線的に移動している基材を物理的蒸着(PVD)の手段によってコーティングすることを、少なくとも1種の金属を用いて酸素の存在下に実施するが、その酸素が、基材の移動方向に関連して、そして一つまたは複数の金属蒸気源に関連して、量的および/または場所的な面で非対称的な分布で真空チャンバー内に導入されて、1層のPVD層、または重ね合わせるように配列させた2層以上のPVD層を得る。

本発明のさらなる変法においては、工程(a)において、酸素が、添加手段を介して、少なくとも一つの金属蒸気源から発生させた金属蒸気のほぼ中央に導入されるが、一方では直線的に移動している基材と、他方では金属蒸気源およびさらには酸素のための添加手段との間に、蒸着セクションを区切り、そしてシャッター開口部を形成する一つまたは複数のシャッターを存在させるが、そのシャッター開口部は、一つまたは複数の金属蒸気源、さらには一つまたは複数の酸素のための添加手段に関連して、非対称的に配置される。

本発明のさらなる変法においては、その目的がさらに、第一の外側面および第二の外側面の中の元素金属の量を異ならせるという面では、PVD層の中に生じさせる非対称性を予めチェックするための方法によっても達成されるが、前記方法には次の工程が含まれる:一段プロセスにおいて、幅bBおよび長さlBを有する蒸気コーティングゾーン中の真空チャンバーにおいて、少なくとも一つの酸素供与源の存在下に、少なくとも一つの蒸発器源VQAからの少なくとも1種の金属MAを用いて、循環しているかまたは移動している、直線的に移動している基材またはベルトをコーティングして、基材またはベルトの第一のサブセクター(長さ:ΔlB1)中で、質量被覆率mMA1(金属Aの質量1)およびmO1(金属A1に対する酸素の質量)を得て透過率T1を得、次いでベルトの上で長さΔlB2を有する基材またはベルトの第二のサブセクター中で、質量被覆率mMA2(金属Aの質量2)およびmO2(金属A2に対する酸素の質量)を得て透過率T2を得るが、その第一のサブセクターと第二のサブセクターとは重なり合うことなく、T1とT2は相互に独立して、0%〜95%の間の値を有すると共に、差ΔTが5%〜90%であり、そして、循環しているかまたは移動している基材またはベルトの幅方向の金属Mおよび酸素の質量被覆率が、ほぼ一定である。

透過率は、慣用される方法で測定することができる。

この方法の結果として、PVD層が基材またはベルトの上に、それぞれ別々にかまたは互いに順に並んで生成するが、これらは、製造されるPVDメタリック効果顔料の第一の(たとえば下側の)、およびそれとは別の第二の(たとえば上側の)外側面に相当する。次いで、これらの場所的に分離している下側および上側の面について、透過率の測定を実施することができる。このようにして得られた結果から、透過率の差という点で、製造されるPVDメタリック効果顔料について、またはPVD層について、下側すなわち第一の外側面と上側すなわち第二の外側面との間にもたらされた非対称性を予めチェックすることが可能となる。

本発明のメタリック効果顔料についての上述の所見は、本発明の方法にも相応にあてはまる。

本発明の方法においては、蒸発した金属の一部と、金属酸化物を形成させるために送り込まれた酸素との間の反応が存在している。本発明の方法においては、未反応の元素金属と、酸素および金属から形成された金属酸化物とが、直線的に移動している基材の上に非対称的に堆積されて、非対称的な構成を有するPVD層が得られるということが肝要である。

第一の変法においては、元素金属および金属酸化物の非対称的な堆積を、PVD装置の中に、量的および/または場所的な面で非対称的に金属蒸気および酸素を導入することによって達成することができる。

PVD装置の中に金属蒸気および酸素を場所的および/または対称的に導入するという文脈において、直線的に移動している基材の上への非対称的な堆積は、第二の変法においては、直線的に移動している基材と、金属蒸気源およびさらには酸素のための添加手段との間にシャッターを配置することによって達成することができるが、このシャッターは、一つまたは複数の金属蒸気源、さらには一つまたは複数の酸素のための添加手段に関連して、非対称的に配置される。

その直線的に移動している基材は、好ましくはベルトであるが、それが循環ベルトの形態をとっていてもよい。ベルトは、金属ストリップであってもよいし、あるいはプラスチック製のフィルムであってもよい。金属ストリップの場合には、ステンレススチールストリップ、好ましくは研磨したステンレススチールストリップが適していることがわかった。プラスチックベルトの場合には、そのベルトは、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、その他のポリエステル、またはそうでなければポリアクリレートなどで作られていてもよい。一つの好ましい実施態様においては、直線的に移動している基材が、剥離コーティングを備えていて、蒸着させたPVD層の除去または剥離を容易にするか、あるいは実際のところ、可能とする。

剥離コーティングとしては、水溶性の塩、または、溶媒、たとえば、アセトンや酢酸エチルなどに可溶性である成膜性材料を使用することができる。

直線的に移動している基材に適用する金属、たとえば単一の金属または金属合金は、金属蒸発器源(金属源とも呼ばれる)からの蒸着によって適用する。金属源としては、蒸発させるべき金属を含む、加熱したるつぼまたは抵抗加熱蒸発器ボートが挙げられる。金属の蒸発は、電子ビーム蒸発器の手段によってもたらしてもよい。

直線的に移動している基材の直線的な移動の方向に関しては、本発明の方法の第一の変法においては、金属蒸発器の前および/または後に酸素を供給することができる。

本発明の一つの好ましい実施態様においては、本発明の方法の第一の変法の文脈においては、直線的な移動の方向を基準にして、金属蒸発器の後に酸素を配置する。したがって、その直線的に移動している基材は、まず金属蒸気コーンに導かれ、次いで酸素コーンに導かれる。金属蒸気コーンと酸素コーンとを重ねることの結果として、最初に金属、次いで同様に、量を増大しながら金属酸化物が、直線的に移動している基材の上に堆積される。基材の上に堆積されるより前に、金属蒸気と酸素との反応によって金属酸化物が形成される。したがって、本発明の方法においては、反応性蒸発が存在する。

本発明の方法のこの変法を用いると、金属蒸気コーンと酸素コーンとを重ねる結果として、直線的に移動している基材の直線的な移動の方向で、元素金属の割合が減少し、それに応じて、金属酸化物の中に元素金属のクラスターが含まれることが増える。したがって、究極的には、実質的には金属酸化物、そして少量の元素金属が金属クラスターとして堆積される。したがって、こうして得られた一つの(数が1)PVD層は、元素金属のクラスター量の面で、非対称的である。

直線的に移動している基材の直線的な移動に関しては、本発明の方法の第一の変法においては、言うまでもないことであるが、まず第一に酸素源を配置し、次いで、金属蒸気源または金属蒸発器を配置することも可能である。この実施態様では、直線的に移動している基材が、まず酸素コーンに導かれ、次いで金属蒸気コーンに導かれる。二つのコーンを重ねる結果として、最初に金属酸化物が堆積され、その中に金属クラスターの形態にある元素金属が、量を増大しながら含まれていく。すると、究極的には、実質的に金属と、少量の金属酸化物とが堆積される。こうして得られた一つの(数が1)PVD層も同様に、元素金属のクラスター量の面で、非対称的である。

本発明者らの見出したところでは、直線的に移動している基材の移動方向に関連して、金属蒸発器および酸素源を非対称的に配置することによって、先に説明したような性質を有する革新的なPVDメタリック効果顔料を、驚くほど簡単に得ることが可能である。

本発明の方法の第一の変法の場合におけるさらなる実施態様においては、直線的に移動している基材の直線的な移動に関連して、金属蒸発器の前と後の両方に酸素源を配置するが、ただしそれぞれの酸素源から供給する酸素の量は異ならせる。この場合、金属蒸気源の前または後で供給される酸素の量は、増やしても、減らしてもよい。

本発明の方法の第一の変法のこの実施態様を用いると、元素金属のクラスターを包含する金属酸化物が、PVD層の二つの面の上に存在し、その二つの外側面の中の元素金属のクラスターの量が異なっている。

直線的な移動の方向で金属蒸気源よりも前にある酸素源が、その金属蒸気源より後にある酸素源に比較して、少ない量の酸素を供給すると、まず第一に元素金属の割合が多く、金属酸化物の割合が少ないものが堆積され、次いで、徐々に元素金属が増える。その後で、金属酸化物の割合が増えていき、金属酸化物の中に含まれる元素金属の割合が低下する。このようにして、存在しているいくらかの金属酸化物に加えて、主として元素金属からなり、異なった量の金属酸化物および/または元素金属を有する外側面を有していて、その結果そのPVD層を非対称的としているコアを有する、一つの(数が1)PVD層を製造することが可能となる。言うまでもないことであるが、逆の配置にすることもまた可能であって、その場合には、直線的に移動している基材の直線的な移動を基準にして、第一の酸素源が、第二の酸素源よりも多くの酸素を供給する。

本発明の方法の第二の変法においては、直線的に移動している基材に対して金属蒸気と酸素を、対称的に、またはほぼ対称的に導入する。ほぼ対称的に導入された金属蒸気およびさらには酸素の一部を、直線的に移動している基材から仕切るシャッターを配置することによって、元素金属および金属酸化物を用いて、その基材が、直線的に移動している基材の移動の方向に非対称的に蒸気コーティングされる。それらのシャッターは、金属蒸気の蒸発コーンおよび酸素コーンの約半分が直線的に移動している基材に到達し、そこでそれが元素金属および金属酸化物の形態で堆積されるように、配置するのが好ましい。

本発明の方法の第二の変法を用いる場合、金属蒸気コーンおよび酸素コーンの開口角を、別々に設定するのが好ましい。本発明の方法のこの第二の変法の一つの好ましい実施態様においては、酸素コーンの開口角が、金属蒸気コーンの開口角よりも小さい。

酸素コーンの開口角は、たとえば酸素添加手段の開口部の形状設計を介して設定すればよい。金属蒸気コーンの開口角も同様に、金属蒸発器の開口部の形状を介して設定すればよい。

酸素添加手段と金属蒸発器の開口部の形状が同一であるとすると、本発明の方法の第二の変法を用いて、直線的に移動している基材から金属蒸発器までの距離と、酸素添加手段までの距離に差をつける手段によって、非対称性を達成することも可能である。酸素添加手段よりも金属蒸発器の方を、基材から遠くの距離に配置するのが好ましい。したがって、本発明の方法の第二の変法のこの実施態様では、すでに形成されている金属蒸気コーンの中に、酸素がほぼ中央に、好ましくは中央に導入される。

驚くべきことには、金属および酸素を用いた非対称的な蒸気コーティング手順の場合には、直線的に移動している基材が、1000m/分までもの線速度を有することができるということが見出された。一つの好ましい展開においては、その線速度が少なくとも10m/分、好ましくは少なくとも60m/分、より好ましくは少なくとも120m/分である。線速度が、200m/分〜950m/分の範囲、より好ましくは450m/分〜850m/分の範囲、さらにより好ましくは620m/分〜780m/分の範囲であれば、極めて好適であることが見出された。

本発明の方法は、プロセス工学的な面から言えば、単純であるが、その理由は、得られるPVDメタリック効果顔料の不均質性または非対称性が望ましいものであり、したがって、均質なPVD層を得るための高コストで手間がかかる対策を講じる必要が一切無いからである。

酸素源としては、酸素供与性化合物および/または水供与性化合物および/または水を使用することができる。本発明の目的においては、「酸素」は、酸素原子、たとえばOH基または水のような酸素原子を含む化合物、そして言うまでもないが分子状酸素も含む。

一つの好ましい実施態様においては、分子状酸素(O2)が使用される。また別な好ましい実施態様においては、水および/または空気が使用される。

本発明のPVDメタリック効果顔料に、一つ(数が1)よりも多いPVD層を持たせようとする場合、たとえば、二つ以上のPVDコーティング装置を順に配置して、それによって、直線的に移動している基材に2層以上のPVD層を与えることが可能であるが、ここでそれぞれのPVD層は、先にも説明したように、非対称的な形態とする。それに代わりうる方法としては、直線的に移動している基材を巻き戻して、同一のPVDコーティング装置の中でもう一度コーティングする方法があるが、ここでもそれぞれのPVD層は、先にも説明したように、非対称的な形態とする。

この場合において、第二、第三、第四、第五などのPVD層は、別々の金属および/または金属酸化物を使用して適用してもよい。言うまでもないことであるが、それぞれのPVD層は、同一の金属を使用し、酸素の割合だけをPVD層ごとに変化させて、それにより、PVD層ごとで元素金属と金属酸化物との割合が変化するようにして形成してもよく、ここでもそれぞれのPVD層は、先にも説明したように、非対称的な形態とする。

直線的に移動している基材の幅方向で、二つ以上の金属蒸気源および/または二つ以上の酸素源を配置させてもよく、それぞれの供給源の中点によって形成されるこれらの供給源の長手方向の軸線を、移動の方向に対して横切る方向に配置するのが好ましい。したがって、金属蒸気源およびさらには酸素源を、直線的に移動している基材の移動の方向に対して直角方向に、互いに同一平面となるように配置して、それにより、直線的に移動している基材の断面全体で、元素金属および/または金属酸化物それぞれの濃度を一定とする。

本発明の一つの好ましい展開においては、直線的に移動している基材の幅は、0.1〜5mの範囲、好ましくは0.5〜4mの範囲、より好ましくは1m〜3mの範囲である。

本発明においては、蒸発器源が抵抗加熱を有しているか、および/または電子ビーム蒸発の手段で操作される。

真空チャンバー内は、10−4bar〜10−1barの範囲の圧力とするのが好ましい。

酸素源として分子状酸素を使用する場合、ベルトのコーティング幅が0.5メートルの場合の流速は、好ましくは1〜15slmの範囲、より好ましくは2〜10slmの範囲に位置させる(slm:標準状態リットル/分)。金属蒸気コーンの上または中に酸素源をより密に配置することによって、金属と酸素の転換、すなわち金属酸化物の形成の向上が達成される。

本発明の方法の一つの好ましい展開においては、工程(a)において使用される直線的に移動している基材は、好ましくは物理的蒸着(PVD)の手段によって適用した金属層を備えているか、または金属フォイルである。

一つの好ましい実施態様においては、直線的に移動している基材として、プレコーティングされた基材を使用する。

本発明における一つの実施態様においては、基材表面と金属層との間に好ましくは剥離コーティングを有する基材として、金属化基材を使用する。当のシステムは、たとえば、剥離コーティングと、それに続けてアルミニウム層、クロム層またはチタン層とを有する、プラスチックベルトであってよい。この金属層は、PVDの手段によって適用するのもまた好ましい。この金属層は、自然に相当する金属酸化物を少量すでに含んでいる。

別な方法として、直線的に移動している基材として金属フォイルを使用してもよい。金属フォイルとしては、たとえばアルミニウムを用いて金属化されたフォイルを使用することが可能であるが、このようなものは既に市販されている。このアルミニウム金属化フォイルの場合、アルミニウム層の平均厚みは、好ましくは10〜50nmの範囲、より好ましくは20〜40nmに位置させる。

このプレコーティングで、金属化された、直線的に移動している基材の上、または金属フォイルの上に、次いで、1層の非対称的なPVD層、または2層、3層、4層、5層などの非対称的なPVD層を、先に説明したようにして適用して、非対称的なPVDメタリック効果顔料を得ることが可能である。

工程(b)における1層または複数のPVD層の剥離は、そのコーティングされた直線的に移動している基材を、溶媒または溶媒混合物の中を通過させることによって実施すればよい。さらに、基材に機械的な力を加えることによって剥離を起こさせてもよく、たとえば、屈曲ロールを通過させて、それにより、金属の膜の破壊を起こさせて、剥離させる。

工程(c)における、剥離された金属の膜の断片の微粉砕は、たとえば撹拌によっておよび/または超音波を照射することによって機械的な力を加えることで、所望のPVDメタリック効果顔料のサイズに達するように実施してよい。

場合によっては、次いで溶媒を、工程(d)で分離するかおよび/または置き換えて、本発明のPVDメタリック効果顔料を含む分散体またはペーストを得てもよい。

場合によっては、そうして得られたPVDメタリック効果顔料に、腐食防止層を設けてもよい。腐食防止層は、PVDメタリック効果顔料を、湿式化学的にまたは流動床において、包み込むように適用するのが好ましい。次いで、有機化学的な表面変性をその腐食防止保護層に適用してもよい。この文脈においては、PVDメタリック効果顔料に関する、先に挙げた所見を参考にする。

さらなる工程において、分散体またはペーストを、次いで、圧密化の手段によって、場合によっては腐食防止層を有するメタリック効果顔料を含む圧密した提供形態に変換させてもよい。例を挙げれば、粒状化、ペレット化、ブリケット化、タブレット化および/または押出し加工の手段によって、PVDメタリック効果顔料を、粒状物、ペレット、ブリケット、タブレット、または小型ソーセージ状物に変換させてもよい。

図1は、一つの(数が1)PVD層を有する本発明の多層PVDメタリック効果顔料の模式的な構成を示し、上面Aの中の元素金属の量が、底面Bの中の元素金属の量よりも多い。 図2は、ベルトコーティングユニットの形態のPVD装置の基本構成を示し、供給ロール1を有していて、それから直線的に移動する基材(12)を巻き出す。次いで基材は、屈曲ロール(2)および(3)を経て、巻き上げロール(4)に案内される。透過率測定(5)および(6)と、振動石英測定(7)とによって、堆積された金属酸化物および元素金属の量を測定することが可能となる。シャッター(9)および(10)が、蒸発器ボート(8)(金属蒸発器)を含む蒸気コーティングユニットを周囲環境から隔離している。シャッター(9)および(10)は、その中で直線的に移動している基材がPVDの手段によって蒸着される、蒸着セクション(16)を区切っている。真空チャンバー(11)の中にベルトコーティングユニットが位置している。 図3は、酸素入口(13)、金属蒸発器(8)、ならびにシャッター開口部(18)の長さがLのシャッター(14)および(15)の幾何学的配置を示す。シャッター(14)および(15)で区切られたシャッター開口部が、基材の蒸着セクションを画定している。シャッター(14)および(15)は、基材と、金属蒸発器(8)および酸素入口(13)との間に配置されている。この模式的な配置には、さらに、長さLのシャッター開口部(18)、および蒸発器の中点と酸素入口の中点との間の水平距離Δl(17)も示されている。 図4は、シーケンス的に配置された長手方向のシャッター開口部の平面図を示し、これは、図3に示された配置の文脈においてさらに配置されてもよく、それによって、PVD層を「底」層A1、「中間」層A2、および「上」層A3にさらに分割することができる。次いで、幅全体にわたって開いている下側のシャッターが、全体として本発明のPVDメタリック効果顔料のPVD層の「層全体のシーケンス」を与えている。 図5は、酸素入口、金属蒸発器(8)、酸素供給(13)、および非対称的に配置されたシャッター(14)および(15)の幾何学的配置を示す。この模式的な配置には、さらに、シャッター(14)および(15)で区切られたシャッター開口部の長さL(18)も示されている。そのシャッター開口部が、基材(12)の蒸着セクション18を画定している。水平距離「y」が、金属蒸発器(8)の中点とシャッター開口部(18)の開始点との間の蒸気コーティング長さ(18)の中点を決めている。この配置においては、酸素入口(13)が、金属蒸発器8の中点の真上に位置している。したがってこの場合、蒸発器の中点と酸素入口の中点との間のΔl(17)はゼロである。 図6は、シーケンス的に配置された長手方向のシャッター開口部の平面図を示し、これは、図5に示された配置の文脈においてさらに配置されてもよく、それによって、PVD層を「底」層C3、「中間」層C2、および「上」層C1にさらに分割することができる。次いで、幅全体にわたって開いている下側のシャッターが、全体として本発明のPVDメタリック効果顔料のPVD層の「層全体のシーケンス」を与えている。 図7は、直線的に移動している基材(12)の幅全体にわたって同一平面に配置した、二つ以上の蒸発器源の模式的な配置を示す。酸素入口(13)は、孔を開けた平行に配置したパイプで表されている。酸素は、小さい矢印で示したように、その孔から噴出させる。この模式的な配置には、さらに、シャッター(9)および(10)で区切られたシャッター開口部の長さL(18)も示されている。シャッター(9)と(10)とが、基材の蒸着セクションを画定している。金属蒸発器と酸素供給(13)との間の水平距離を、Δl(17)で示す。 図8は、二つの回転るつぼ蒸発器8を模式的に示す。電子ビームの手段によって、回転るつぼ蒸発器(8)の中で回転している蒸発材料の上にラインパターンを発生させ、それによって蒸発材料を蒸発させる。基材の直線的な移動に関連して、回転るつぼ蒸発器(8)の前後に配置された酸素供給ライン(13)の孔から、酸素が真空チャンバーの中に噴出されるが、矢印の長さを変えることで、ガス流量が変わることを象徴している。この模式的な配置には、さらに、シャッター(9)および(10)で区切られたシャッター開口部(18)の長さLも示されている。シャッター(9)と(10)とが、基材の蒸着セクションを画定している。シャッター開口部(18)の、回転るつぼ蒸発器(8)の中点と、酸素入口(13)の中点との間の水平距離を、いずれの場合においても、Δl(17)で示している。 図9は、実施例1aからのPVD層のTEM画像を示す。暗色の斑点が金属クラスターである。 図10は、実施例1aからのPVD層の図9に関連する電子線回折画像を示す。回折反射が、同心円の形になっている。ゼロ次反射が抜けている。この同心円は、図9からの黒色の斑点が金属クラスターであることを示している。 図11は、本発明実施例1a、1b、4a、および4cのPVD層における金属クラスターのサイズ分布をグラフの形で示す。クラスターのサイズに対して累積度数をプロットしている。 図12は、本発明実施例1a、1b、および1cからの酸化アルミニウム層の電子線回折反射の強度分布を表す。格子間隔の逆数に対して反射強度をプロットしている。 図13は、本発明実施例4a、4b、および4cからの酸化クロム層の電子線回折反射の強度分布を表す。格子間隔の逆数に対して反射強度をプロットしている。 図14a、図15a、図16a、図17a、図18a、図19a、および図20aは、本発明実施例1〜6および比較例8について、それぞれの場合においてXPS/ESCAスパッタープロファイルの手段によって求めた、元素の炭素(C)、酸素(O)についての濃度分布、Al(tot)およびCr(tot)の全濃度、ならびにそれに関連する元素金属のAl(0)およびCr(0)の濃度分布を表す。 図14b、図15b、図16b、図17b、図18b、図19b、および図20bは、それぞれの場合において層の厚み方向での元素金属の酸化金属に対する比率(単位:原子%)を表し、これらの図は、図14a、図15a、図16a、図17a、図18a、および図19aにそれぞれ対応している(酸素の割合は入っていない)。 図21は、各種の本発明実施例および比較例についてのa*,b*面における測色CIELABデータを表す。

実施例 以下のテキストにおいて、例を挙げながら、本発明のPVDメタリック効果顔料の製造について記述するが、それらは、本発明をなんら制限するものではない。

パートA: 本発明のPVDメタリック効果顔料の製造(本発明実施例1〜10を従来技術を示す比較例1〜8と関連させて参照)。

パートB: TEM測定(透過光、回折)に基づく、実施例1および1a、1b、および1c、ならびに実施例4および4a、4b、および4cの本発明のPVDメタリック効果顔料の構造組成の特性解析。

パートC: EDX測定に基づく、本発明の顔料の構造組成の特性解析。

パートD: 本発明実施例1、2および3(Alベース)ならびに本発明実施例4、5および6(Crベース)に基づく、上面Aから底面Bへの層の厚み方向における、酸素および/または金属のプロファイルの特性解析。DE 10 2007 007 908 A1の実施例1に相当する比較例8に基づいて、従来技術と比較。

パートE: 比較例1〜8からのPVDメタリック効果顔料(ほとんど均質な組成で勾配がないPVDメタリック効果顔料)に関連させた、本発明実施例からの本発明のPVDメタリック効果顔料の測色評価。

パートA:本発明実施例1〜10に従う本発明のPVDメタリック効果顔料の製造 工程1:キャリヤフィルムのコーティング 本発明実施例1〜10に従うPVDメタリック効果顔料の製造は、総括的に、それぞれのケースで、模式図2、7、および8に従った各種のPVDベルトユニットを用いて実施した。

基材としては、剥離コーティングでコーティングした、厚み23μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。その剥離コーティングは、アセトン可溶性のメタクリル酸メチル樹脂からなり、別な作業工程で従来法により予め適用しておいた。

使用した蒸発法は、電子ビーム蒸発法または抵抗加熱蒸発法のいずれかであった。

さらに、一段コーティングプロセスと二段コーティングプロセスの区別を行った。

一段プロセスでは、単一のコーティング工程を用いた本発明実施例によるPVDメタリック効果顔料の製造を記述する。

二段プロセスでは、二つの、連続ではあるが別々のコーティング工程を用いた本発明実施例によるPVDメタリック効果顔料の製造を記述する。

蒸着させたPVD金属層の層の厚みは、得られた質量被覆率を介してモニターした。得られた質量被覆率は、基材と金属蒸発器との間の距離、シャッター開口部の長さL、基材のベルト速度、およびそれぞれの蒸発速度から求められる。

実施例のために必要とされるガスの流れは、MKS社、Munich、Germanyのガス流量調節計(Mass Flow Controller)の手段により、供給した。それぞれの場合における酸素の供給位置は、図3、5、7、および8に模式的に示してある。

本発明実施例1〜3の場合には、質量被覆率は、振動石英を使用して従来法により求めた。本発明実施例4〜6および比較例の場合には、フィルムから剥離させた後に秤量することにより質量被覆率を求めた。

工程2:キャリヤフィルムからの剥離および微粉砕 物理的蒸着に続けて、キャリヤフィルムのそれぞれの実施例に従った個々のPVD層またはPVD層の積み重ねを、剥離コーティングされた基材から、溶媒を用いて剥離させた。得られた懸濁液の中で、剥離されたPVD層またはPVD層の積み重ねから剥離コーティングの残渣を溶媒を用いて分離し、洗浄し、次いで微粉砕装置を使用して、PVD層またはPVD層の積み重ねを微粉砕して、所望の粒子サイズとした。

パートEに記載の手順に従って、本発明実施例を比較例と共に測色評価するためのカラーバッチを調製した。

本発明実施例1〜10のためのそれぞれのプロセスパラメーターを表1aに示す。

比較例1〜8によるPVDメタリック効果顔料を製造するためのプロセスパラメーターを表1bに示す。

* 比較例1〜8においては、酸素の供給は添加しなかった。操作は、本発明実施例の場合よりは、顕著に低いチャンバー真空を用いて実施した。チャンバー中の残存酸素の割合は、反応性蒸発をもたらす、すなわち存在している酸素と蒸発した元素金属とから金属酸化物が形成されるのに十分なほど高かった。

比較例1〜8のPVDメタリック効果顔料は、0.5m/分の低いベルト速度の場合にのみ製造可能であった。

それとは対照的に、本発明実施例によるPVDメタリック効果顔料を製造する場合のベルト速度は、実質的にもっと高く、4〜60m/分の範囲に位置していた。

本発明実施例1、3、4および6に従うPVD層の製造(一段ベルト法を使用): 一段蒸発プロセスにおける本発明実施例によるPVDメタリック効果顔料のPVD層の非対称的な構造組成を説明するために採用した手順は次の通りであった。

本発明実施例1および4によるPVD層の構成を表すことができるようにするために、図3に模式的に示したような実施例1のための、および図5に模式的に示したような実施例4のための、金属蒸発器、酸素供給、およびシャッター配置を並べたPVD装置を用いてコーティングを実施した。

層の厚み方向で、PVD層を個々の層セクションまたは片に分割することは、図3に表した配置の関連で図4に示したように、そして図5に表した配置の関連で図6に示したように、基材の蒸着セクションで、長さ方向のシャッター開口部を配置させることによって実施した。模式図4および6に、実施例1における層セクションA2(本発明実施例1a)、A1(本発明実施例1b)、およびA3(本発明実施例1c)、ならびに、実施例4における層セクションC2(本発明実施例4a)、C3(本発明実施例4b)、およびC1(本発明実施例4c)を、それぞれのケースで、平面図で示している。

したがって、実施例1について模式的な図4に示した平面図では、層セクションが次のコーティング順、ベルトの方向にA1、次いでA2、次いでA3を有している。 実施例1a:実施例1からの層の第二の層セクションA2 実施例1b:実施例1からの層の第一の層セクションA1 実施例1c:実施例1からの層の第三の層セクションA3

表1aの中で片と呼んでいる層セクションの中の酸素含量は、A1から、A2次いでA3と増加している。このことは、図3に見られるように、酸素供給と金属蒸発器に関連して、蒸着セクションのシャッター開口部の非対称的な配置の結果である。それに続けてオフラインで透過率の測定を実施して、この結果を確認した。

層セクションA1の場合には、32%の透過率が測定され、層セクションA2の場合には、46%の透過率、そして層セクションA3の場合には、86%の透過率が測定された。透過率が高い程、透明な金属酸化物の割合が高い。

したがって、実施例4について模式的な図5に示した平面図では、層セクションが次のコーティング順、ベルトの方向にC3、次いでC2、次いでC1を有している。 実施例4a:実施例4からの層の第二の層セクションC2 実施例4b:実施例4からの層の第一の層セクションC3 実施例4c:実施例4からの層の第三の層セクションC1

表1aの中で片と呼んでいる層セクションの中の酸素含量は、C1から、C2次いでC3と増加している。このことは、図5に見られるように、酸素供給と金属蒸発器に関連して、シャッター開口部と蒸着セクションとの非対称的な配置の結果である。それに続けてオフラインで透過率の測定を実施して、この結果を確認した。

層セクションC1の場合には、54%の透過率が測定され、層セクションC2の場合には、77%の透過率、そして層セクションC3の場合には、92%の透過率が測定された。透過率が高い程、透明な金属酸化物の割合が高い。

本発明実施例3の場合においては、金属蒸発器および酸素供給のPVD配置は、模式的に図7に示したように使用した。本発明実施例6においては、金属蒸発器および酸素供給のPVD配置は、模式的に図8に示したように使用した。これらのPVD配置と共に、PETフィルム(コーティング幅は約50cm)の幅全体に、コーティング材料をほぼ均質に堆積させるために、それぞれの場合において、基材のベルト移動方向に対して横方向にさらなる蒸発器源を使用した。

二段ベルト法による本発明実施例2、5、7、8、9、および10におけるPVD層の製造: EDAX法およびXPS法の手段によって、一段ベルト法と二段ベルト法との間の二つのPVD層の転移を分析的に示すために、二段ベルト法により本発明実施例2および5に従って、この目的のためにPVD層を製造した。

本発明実施例2に従って本発明のPVDメタリック効果顔料を製造するために、まず第一に、層セクションA2およびA3を生成ささるためのシャッター開口部を、図4における平面図に従って覆い、そして層セクションA1(実施例2a)を、アルミニウムを蒸着させることにより生成させた。この場合、メタリック層を生成させるために、ガスは供給しなかった。この第一の基材のコーティングの後に、そのベルト基材を巻き戻して、層セクションA2およびA3を生成させるためにシャッター開口部を開いたが、層セクションA1のシャッター開口部は覆った。次いで、酸素を供給しながら第二の層2bを、表1aに示したプロセスパラメーターに従って蒸着させて、PVD金属層およびPVD金属−金属酸化物層を含むPVD層構成を生成させた。

本発明実施例5に従って本発明のPVDメタリック効果顔料を製造するために、まず第一に、図6の平面図に従って、層セクションC2およびC3のシャッター開口部を覆い、そして層セクションC1を含む実施例5aを形成させた。この場合、メタリック層を生成させるために、ガスの供給は使用しなかった。この第一の基材のコーティングの後に、そのベルト基材を巻き戻して、層セクションC2およびC3を含む実施例5bを形成させるためにシャッター開口部を開いたが、層セクションC1を生成させるためのシャッター開口部は覆った。次いで、第二の層5bを、表1aに示したプロセスパラメーターに従って、酸素を供給しながらより酸化的に堆積させた。

本発明実施例7を形成するために、PVDの配置を選択して、図7における模式的な配置に相当するようにした。本発明実施例3とは対照的に、個々の酸素源をそれぞれ個々の抵抗加熱蒸発ボート(金属蒸発器)の側に極めて近接させて配置した。

酸素供給をこのように配置した結果として、酸化物が極めて豊富なPVDアルミニウム層(実施例7b)が生成された。第二のコーティング工程において、図2に従って、酸素は供給せず、抵抗加熱PVD蒸発法を使用して、この酸化物が豊富なPVDアルミニウム層の片に、第二の極めてメタリックなアルミニウム層(実施例7b)をコーティングした。

着色性がメタリックアルミニウム層の層の厚みからは独立しているということを説明するために、本発明実施例8、9、および10を製造した。

この場合、図2に従って、3種類のアルミニウムベースコーティングを、電子ビーム蒸発法により生成させた。ベルト速度を変化させることによって、層の厚みが異なる3種類のアルミニウム層(8a、9a、および10a)が生成された。そのコーティングが終了してから、コーティングされたベルト基材を巻き戻し、次いで、それぞれの場合において、酸化Cr層を用いたコーティング(実施例8b、9b、および10b)を実施すると、それによって、実施例8、9、および10の場合において、層の厚みが異なる3種類のAl層の上にかなり青色の着色が得られた。

実施例8b、9b、および10bのCr層は、個別の層としては金色〜茶色がかった効果を有しているので、それぞれの場合において、各種のアルミニウム層の厚みの上に、同じ程度の青色の着色を与えた。このことは、この効果顔料の場合においては、その着色が、メタリックなクロム/酸化クロム層の層の厚みにのみ依存するという点で重要な利点である。したがって、2層の層の厚みが着色効果に影響する効果顔料に比較して、実質的に改良された色相を再現することが可能となる。

パートB:TEM(電子線回折、透過型)の手段による本発明の顔料の構造組成の解明 本発明のPVDメタリック効果顔料の構造組成を解明する目的で、PVDメタリック効果顔料の層セクションを、透過型電子顕微鏡法(TEM)の手段により検討した。使用した装置は、Zeiss 922 Omega(Zeiss製)であった。それには、Ultrascan 1000 CCD検出器(Gatan製)が取り付けられていた。使用した画像形成媒体は電子ビームであって、それを、PVDメタリック効果顔料およびそれらの層セクションに均一かつほぼ平行に照射した。加速電圧は200kVであった。サンプル中の異種物のところで電子が散乱され、格子構造で回折された。層を離れた後、電子光学システムに通すことで中間画像面の中に電子を集中させ、さらなる倍率ステージを通過させた後で、電子CCDカメラシステムの手段によって画像化させた。このようにすることで、照射された層の実際の像が得られた。たとえば、図9は、本発明実施例1aからの層のTEM画像を示している。

実際の像と同様に、サンプルの電子線回折画像も、層の性質に関する重要な情報を与える。回折画像は、中間画像面ではなく、そのかわりに、拡大した回折面を画像形成させることによって得られる。回折反射の強度と位置から、その顔料の内部構成についての明確な構造情報を得ることができる。たとえば、図10は、実施例1aからの層の電子線回折画像を示している。

本発明実施例1a、1b、1c、ならびに4a、4b、および4cの本発明のPVDメタリック効果顔料における、実際の画像および電子線回折画像を、TEMによって記録した。その構成物質は均質ではなく、そのかわりに、その中にごく小さい金属クラスターが埋め込まれた(図9中の黒色の斑点参照)酸化マトリックスから実質的になっていることが判明した。本発明実施例によるすべてのPVDメタリック効果顔料において、金属クラスターは、数ナノメートルのサイズで、検出可能であった。金属クラスターのサイズをより正確に決定するために、本発明実施例1a、1b、4a、および4cに従ったPVD層の場合において、それぞれの場合で約100個の金属クラスターについてそれらの直径を測定し、これらの測定値から統計的なサイズ解析を行った(図11)。サンプル1cおよび4bの小さいクラスターのサイズは、十分な精度では測定不可能な程度であった。その評価からわかったのは、金属クラスターのサイズ(その数ではない)が、酸化物含量が高くなるにつれて小さくなるということであった。金属クラスターのサイズは平均して5nm未満であり、アルミニウムクラスターの方が、全体としては、クロムクラスターよりも幾分大きいサイズを有していた。

実施例1a、1b、1c、4a、4b、および4cの顔料について、電子線回折画像を記録した。それらの画像は、CCDカメラシステムの結果としての電子的な形態で存在しているので、反射の位置のみならず、それらの強度分布についての評価も可能であった。それらの回折極大は、それらの位置と強度分布の面では、メタリックなアルミニウムおよびクロムそれぞれの文献値と正確に合致していることがわかった。したがって、これらの金属クラスターが存在していることが確かに証明された。それらのサンプルすべてにおいて、反射は顕著にブロードになっていた。このことは、それらの回折金属微結晶のサイズがわずか数ナノメートルであろうということを示していた。それと同時に、酸化物含量が高くなるにつれて、反射強度が低くなり、そしてほぼ化学量論的な酸化物含量になると、極めて小さくなってしまうということも確認できた。このことは、この場合においては、もはやいかなる活性な金属も存在しないという事実に符合している。金属クラスター反射の他には、さらなる干渉線は見出されなかった。特に、それら金属酸化物の各種の結晶変態に相当するはずの線は存在しなかった。しかしながら、ブロードな極大値を有する、連続的に低下する強度バックグラウンドは存在していた。これは、非晶質固体に典型的な強度分布であった。したがって、これらの層の中の酸化物は、非晶質の形態で存在しているということが推測できた。

したがって、本発明実施例1a、1b、1c、4a、4b、および4cの層は、実質的に非晶質な金属酸化物からなっていて、ナノメートルサイズの金属クラスターがその中に埋め込まれている。酸化物含量が高くなるにつれて、これらのクラスターの平均サイズが小さくなり、典型的には5nm未満である。

パートC:SEMおよびEDXの手段による特性解析 EDX測定の手段による分析的酸素定量: 本発明実施例1a、1b、1c、4a、4b、および4cに従った層の酸素および金属の組成を、上述のEDXの手段による測定法を使用して求めた(装置:EDAX Gemini;EDAX Incorp.製、USA)。

サンプルの調製: 層を溶媒の中に分散させ、微粉砕した。その分散体の数滴をサンプルプレートの上に適用し、室温で溶媒を徐々に蒸発させた。その層は、プレート表面にほぼ平行な配向をとった。

測定: 本発明実施例の層について、酸素対金属の平均原子比率を求めた。

この目的のために、まず第一に、走査型電子顕微鏡写真を使用して、少なくとも4〜5個の独立したPVD層が相互に重なりあっている領域を探索した。これらの場所で測定を実施した。アルミニウム/酸化アルミニウム層について測定するためには、5kVの加速電圧を選択し、クロム/酸化クロム層の場合には、8kVの電圧で操作した。効果的に平均値を得るために、同時に励起されている二つ以上の層が常に存在しており、かつ基材のバックグラウンドの測定はしないようにして、このことを確実にした。それぞれの場合について、酸素ではK線(励起エネルギー:約0.5keV)、クロムではK線(励起エネルギー:約5.4keV)、そしてアルミニウムではK線(励起エネルギー:約1.5keV)で、励起させた。励起X線スペクトルを測定にかけて、ソフトウェアプログラムを用いて、ピーク高さ比から酸素と金属それぞれの割合を求めた。

実施例7〜10および比較例1〜8の物理的データを、表2aおよび2bに示した。

パートD:光電子分光法(XPS/ESCA)およびスパッタープロファイル測定による特性解析 より正確に構造についての特性解析をするために、本発明実施例1〜6およびさらには比較例8のコーティングされたフィルムを、ESCAの手段によって分析した。内側の層の組成についての、より良好な分解能を得るために、それらを連続的にスパッタリング(Ar+イオン)にかけて、それぞれの場合で新規に測定した。ここでは、それぞれの場合で、元素の酸素、金属(AlまたはCr)、窒素、および炭素についての測定を行った。測定は、VG Scientific製のESALAB 250装置を使用して実施した。励起は、単色のAlのKαX線照射(励起電圧:15kV;出力:150W;スポットサイズ:500μm)を使用して行った。その装置の透過関数は、銅サンプルで測定した。6eV電子エネルギー/0.05mAビーム電流の、「フラッドガン」を使用して、電荷補償を行った。評価のためのエネルギースケールは、炭素のメインラインが285eVにあるように設定した。

まず第一に、80eVのパスエネルギーを用いて、全体スペクトルを記録した。これらのスペクトルから、Scofield Factorsと呼ばれているものを使用して、先に示した4種類の元素の表面組成(単位:原子%)を定量的に求めたが、その測定誤差は約10%であった。評価はすべて、解析した容積は本来的に均質であるという仮定に基づいた。光電子分光法は、表面に敏感な方法であって、その情報深さは典型的には5〜10nmである。 次いで、30eVのパスエネルギーを用いて、個々の元素の高分解能スペクトルを記録した。特に金属スペクトルの場合には、ここでは、金属の異なった酸化状態を区別することが可能であった。アルミニウムサンプルの場合には(実施例1〜3)、元素(メタリック)アルミニウムとAl(III)の割合は、それぞれの場合で定量的に測定された。その一方で、クロムサンプルの場合には(実施例4〜6、比較例8)、元素クロムと、さらには酸化状態のCr(III)、Cr(IV)、およびCr(VI)が区別された。部分的に重なり合ったエネルギースペクトルが得られたが、公知の標準化された方法の手段によって比較した。クロムサンプルのいずれにおいても、検出可能な割合のクロム(VI)は認められなかった。

メーカーの取扱説明書に従ったスパッタリングの手段によって、それぞれのPVDメタリック効果顔料の層の厚みを確認した。それぞれの場合において使用した標準は、アルミニウムまたはクロムまたはそれらの酸化物のような金属であった。検討したPVD層が、そのスパッター除去特性の面から、標準物質と同じ挙動を必ずしも示さないので、ある種の系統的な誤差が含まれている可能性がある。

本発明実施例1〜6および比較例8において基材フィルムに蒸着させたPVD層についての、スパッター速度から求めた層の厚み方向の酸素、金属、および炭素の含量の濃度プロファイルを、図14a、15a、16a、17a、18a、19a、および20aに示す。その炭素含量は、表面汚染かまたは基材フィルム(蒸着させたコーティングをスパッターが貫通した場合)のいずれかからのものである。窒素の濃度は示さなかったが、その理由は、それは常に2原子%よりもかなり低く、いかなる勾配を示すこともまったくないからであった。

その一方で、金属の濃度に関しては、全金属の割合(単位:原子%)を記録した。高分解能スペクトルの評価から元素金属の割合を求めたが、それを図の中に、さらなるパラメーターとして示している。ここで示した濃度は、それぞれの場合において、測定された元素の酸素、金属、炭素、および窒素の濃度を合計したものに関係している。

表3に、層の厚みのプロファイルを評価した結果を示す。これらの結果については、以下においてさらに詳しく説明する。

すべての数字に、炭素シグナルについての初期の(スパッタリング前の)ある種の値が含まれている。このシグナルは、顔料表面の有機物質による汚染からきたものであって、分析的には意味がないものであった。第一の最初の領域からは、同様にして、常に、比較的に高い酸素含量と、それに応じて比較的に低い金属の割合とになっているのが明らかであった。この発見は、自然に生成してくる金属酸化物層に帰することができた。以下の評価においては、特に濃度勾配を考えるにあたっては、これらの値についてはこれ以上配慮しなかった。

PVDメタリック効果顔料の内部においては、予想したとおりに、炭素シグナルは極めて小さいが(<1原子%)、それが突然に極めて強くなる。そこでは、蒸着させた金属/金属酸化物層がスパッタリングによって侵食され、そのために、その下にあるポリマーフィルムが計量的に検出されたのであった。炭素シグナルにおける上昇と、それに見合う、特に金属シグナルにおける低下とに基づいて、最適近似線の交点を基準にして、層全体の厚みを求めることが可能であった(たとえば図14a参照)。これらの値を表3にプロットする。REMの手段によって求めた顔料の層の厚みの値も、同様にして表の中に示してある。反射電子顕微鏡法(REM)を用いた測定は比較的高い精度を示すので、補正係数を明記した。表3の中の、分析したPVDコーティングされたフィルムの個々の層での層の厚みおよび/または濃度勾配に関するさらなる詳細は、すべて、常に、この係数によって補正した数値に関連させてある。したがって、スパッター速度の手段によって求めた層の厚みは、常に、REM測定の値に標準化させた。

さらに、PVD層中の酸素の平均量を確認した。これは、一方では、EDX法の手段によって実施した(既にDE 10 2007 007 908 A1にも記載がある)。他方では、ESCAデータの平均化を行った。両方の値が比較的良好な一致を示し、40〜46原子%の範囲に収まっている。

個々のPVD層またはPVD層の積み重ねについてもまた、それらの構造を分析した。採用したパラメーターは、第一には酸素濃度の濃度プロファイルであり、第二には元素金属の濃度プロファイルであった。図14および15に、例として、どのようにすれば異なった勾配を有する個々の領域を最適近似線によって区別することが可能であるかを示す。それを基準にして、最適近似線の交点と、さらには最適近似線のスロープ、すなわち濃度勾配から、異なった勾配を有する個々の領域のセクションを求めることが可能である。

いくつかのPVD層またはPVD層の積み重ねでは、複数の解釈が可能であった。たとえば、本発明実施例1の単一層のPVD層は、酸素濃度において、連続したほぼ直線状の勾配を有するか、または三つのわずかに異なる勾配を有するか、が可能であった。両方の解釈に対応する値を表3の中に採用した。勾配における差が小さいために、単一勾配の形態と解釈することが、最もあてはまっているように見えた。本発明実施例2および5に従った2層構成のPVDメタリック効果顔料は、それぞれ図15aおよび18aにおいて、層の厚み方向での、元素金属(それぞれAl(0)およびCr(0))の量におけるスロープの顕著な変化(増大)、および、酸素(O)の量におけるスロープの顕著な変化(減少)が容易に現れている。

本発明実施例4および6に従ったPVD層においては、それぞれの場合において、三つの勾配と解釈することができる。 酸素濃度の大きさの面で最高である勾配スロープのすべてを、表3の中ではそれぞれの場合で太字でマークしているが、元素金属についての勾配では、それぞれの場合での最高値のみを入れた。

二段法の手段によって調製した本発明実施例2および5のPVD層には、PVD金属層が含まれていた。図15および18においては、元素金属の濃度の急激な増加を見ることができる。しかしながら、それらの値が100%にまで上昇することはなく、明らかに、残存酸素画分が依然として常に存在している。

比較例8は、DE 10 2007 007 908 A1の実施例1に相当し(図20)、広い範囲で実質的に一定の酸素濃度および元素金属(Cr(0))の濃度を有する層の厚みを与えた。層の厚みが約110〜120nmのところのPVD層の末端のみで、数値がわずかに増えるが、平行してCシグナルにも増大があり、したがって、顔料の末端に到達してしまったのであって、これが、金属濃度におけるこの増加が人為的な結果を表している理由である。 完全を期するために、この狭い末端領域も同様に評価し、得られた酸素の人為的なわずかな濃度勾配を確認した。したがって、このPVD層は、DE 10 2007 007 908 A1に記載されている通り、ほぼ一定の酸素濃度を有している。

表3から、本発明実施例に従った、PVD層または複数のPVD層(PVDメタリック効果顔料)の場合における最大酸素濃度勾配が、比較例8の場合よりも常に高いということは明らかである。

TEMの手段による上述の測定は、元素金属が、金属酸化物マトリックスの中に埋め込まれた小さなナノ粒子の形態になっているということを示した。PVDメタリック効果顔料の光学的性質においては、特にPVDメタリック効果顔料の中でこれらのメタリックナノ粒子が非対称的な濃度分布をとっているということが極めて重要であった。

勾配スロープに加えて、特に、PVD層の中の最大濃度および最小濃度ならびにさらにはこれらの濃度の差ΔCM(0)(CM(0):元素金属の濃度)を確認した。特に、最大濃度CM(0)および濃度差については、比較例8に従ったPVD層に対して、本発明実施例に従ったPVD層は、顕著な差があることが明らかであった。

本発明実施例に従ったPVD層は、比較例8に従ったほぼ均質であるPVD層よりも実質的に高い最大濃度CM(0)と、実質的に高い濃度差ΔCM(0)とを与えた。比較例8に従ったPVD層では、その人為的濃度差ΔCM(0)は5原子%であった(表3参照)。

従来技術に従ったほぼ均質な構成を有するPVDメタリック効果顔料とは対照的に、本発明のPVDメタリック効果顔料は、層の厚み方向においてより大きな濃度差を与え、本発明のPVDメタリック効果顔料の外側面の間の差ΔCM(0)は、少なくとも10原子%、好ましくは少なくとも15原子%、より好ましくは少なくとも20原子%であった(表3参照)。

本発明においては、PVD層において、元素金属の濃度に関する勾配が一つであるか複数であるかはたいした問題でない。そのかわりに重要となるのは、PVD層の厚みの全体にわたって元素金属の濃度勾配が存在しているかどうかである。その間においては、濃度が一定であったり、さらにはわずかに濃度が低下したりしているセクションが存在していてもよい。

パートE:比較例に従ったPVD層(ほぼ均質な組成を有し元素金属の勾配がない例)に関連させた、本発明実施例に従ったPVD層の測色評価 本発明実施例および比較例に従ったPVDメタリック効果顔料の測色挙動を以下に示す。

この目的のために、それぞれのPVDメタリック効果顔料を、2gの慣用されるニトロセルロースワニス(Morton製のDr.Renger Erco Bronzemischlack 2615e)の中に、撹拌により組み入れた。PVDメタリック効果顔料を最初に導入してから、ブラシを用いてワニスの中に分散させた。

できあがったワニスを、ドクターブレードドローダウン装置を使用して、湿時膜厚み50μmで、Byk Gardner製の#2853テストチャート(黒/白コントラスト紙)に塗布した。

顔料添加性のレベル(PVDメタリック効果顔料の量)を選択して、隠蔽コーティングが得られるようにした。結果として、基材の影響は、測色データには現れない。

そのドクターブレードドローダウン物を、メーカーの取扱説明書(Optronic Multiflash Instrument、Berlin、Germany)に従って測色分析にかけた。45度の一定角度で照射を行い、反射角に対して15度、20度、25度、45度、55度、70度、75度、および110度の観察角で、CIELABのL*、a*、およびb*値を求めた(光源:D65)。

表4aおよび4bに、本発明実施例1〜10および比較例1〜8に従ったPVDメタリック効果顔料についての測色データをまとめる。

明度フロップ性の面では、本発明実施例と比較例のPVDメタリック効果顔料の測色に関する性質は、実質的に同等であった。しかしながら、本発明のPVDメタリック効果顔料のほとんどが、強い灰色のメタリック特性を示した。しかしながら、この特性は、興味深いことには、従来技術では今日まで得ることが不可能なものであって、極めて高い明度フロップ性を有していた。

比較例に従ったPVDメタリック効果顔料とは対照的に、本発明のPVDメタリック効果顔料はすべて、実質的により高いベルト速度でかなりより高い再現性をもって製造されている。メタリック効果顔料は、大量にかつ再現性よく製造することが可能でなければならない製品を代表するものなので、本発明は経済的に顕著な優位性を表している。さらに、灰色や灰色がかったPVDメタリック効果顔料を今や提供することが可能となったが、それらのいくつかは、これまで不可能であった。

図21は、CIELABのa*、b*表示による、本発明のPVDメタリック効果顔料および比較例からのPVDメタリック効果顔料の測色表示を示している。

図21から、本発明実施例8、9、および10に従った本発明のPVDメタリック効果顔料が、それらの個々の層全体の厚みとは無関係に、同じ色座標に存在していることが明らかである。それぞれがほぼ均質な組成である1層のみの、比較例に従ったPVDメタリック効果顔料の場合には、層の厚みにおける変化によって、色空間全体に拡がる結果となっている(図21参照)。

本発明実施例8に従ったPVDメタリック効果顔料と、比較例8のPVDメタリック効果顔料とを比較すると、色座標はほぼ同じであるが、本発明実施例8のPVDメタリック効果顔料の層全体の厚みが、比較例8に従ったPVDメタリック効果顔料のそれよりも45nm低いという差があることが判る。

本発明のPVDメタリック効果顔料の利点 本発明のPVDメタリック効果顔料は、概して驚くべき利点を有している。

金属層、たとえばアルミニウム層と、基材、典型的にはストリップの形態のポリマーフィルムとの間に好ましくは剥離コーティングを備えた、安価にコーティングされるかおよび/または入手可能な、片面または両面コーティングされた金属被覆シート、たとえばアルミニウムフォイルを使用することができる。

この金属層、たとえばアルミニウム層の上に、次いで、たとえば1層のPVDコーティング操作を用いて、本発明に従った元素金属の勾配を特徴とするさらなる金属/金属酸化物層を適用することが可能である。そのアルミニウム層の上に、たとえば、酸化クロム中に元素クロムを非対称的な構成で含むクロム層を適用するか、またはそれが適用されているということも可能である。

上述のアルミニウムフォイルの上にわずか60nmのクロム/酸化クロム層を使用することによって、生産性が倍になり、Crの材料コストが半減する。これらの利点によって、2層コーティング法の方が、130nmのほぼ均質な組成の酸化Cr層の厚みを必要とする単一コーティングベルト法よりも、より安価なものとなる可能性がある。

さらなるプロセス工学的な利点が、たとえばシートの上への、金属/金属酸化物、たとえばクロム/酸化クロムを用いたコーティング操作の際の熱負荷が低くなることからもたらされるが、その理由は、このコーティング操作は、ベルト速度が上昇することの結果として、熱負荷が低下するからである。たとえばベルト速度を倍増させた場合には、シート上または基材上での熱負荷は半減する。

言うまでもないことであるが、この利点は、アルミニウムフォイルとクロム/酸化クロムとの特定の組合せに限定されるものではない。したがって、一般的に言って、金属を用いて予めコーティングされた基材、好ましくはプラスチックストリップを使用することが可能であり、そしてこのプレコーティングした基材を、次いでPVDの手段によって、金属酸化物および元素金属の非対称的なPVD層を用いてコーティングすることができる。

よりメタリックな第一の外側面と、より酸化物が豊富な第二の外側面との非対称的な構成となっているために、特に所望の灰色の領域にある、より目立たない色相が、1回の適用で得られるが、ここで統計的に、50%のよりメタリックな外側面を有するPVDメタリック効果顔料と、50%のより酸化物が豊富な外側面を有するPVDメタリック効果顔料とが、観察者の眼に向かうが、これらの色相はそれにもかかわらず、強い明/暗フロップ性を有している。非対称的なPVDメタリック効果顔料がこの独特の分布を有していることから、金属酸化物の中に埋め込まれた元素金属のクラスターによって誘起される可能性があるいかなる色の変動も、PVDメタリック効果顔料が非対称的であるために、補償されるかまたは減衰されるが、それらのいくつかは、対称的なPVD顔料では不可能である。

本発明のPVDメタリック効果顔料が、よりメタリックな外側面を有していることから、それは、傑出した比被覆能力、すなわち、顔料の単位重量あたりの基材の高レベルな隠蔽力を有している。

本発明の方法は、ベルト移動手順において極めて有利に実現することが可能であり、また、適用された非対称的な1層または複数のPVD層のモニタリングを、反射率測定によって極めて効率的に実施することができる。これは、2層のPVDメタリック効果顔料を製造する際にでも可能であるが、その理由は、光学活性な非対称的なPVD層は、存在している第二のメタリックPVD層の層の厚みにはほとんど依存しないからである。

本発明のPVDメタリック効果顔料は、たとえば水性コーティングにおいて、従来からのPVDメタリック効果顔料と比較して、より厚い層の厚みを有するように製造することがまた可能であり、質量がより高いことから、より良好な適用挙動を示すことができる。

1 供給ロール 2、3 屈曲ロール 4 巻き上げロール 5、6 透過率測定 7 振動石英測定 8 蒸発器ボート 9、10 シャッター入口およびシャッター出口 11 真空チャンバー 12 基材 16 蒸着セクション

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