Polyvinyl acetal composition

申请号 JP2013515623 申请日 2013-03-22 公开(公告)号 JP5529345B1 公开(公告)日 2014-06-25
申请人 株式会社クラレ; 发明人 芳聡 浅沼; 陽子 中野;
摘要 【課題】
ポリビニルアセタールを含む層と炭化 水 素系重合体を含む層との積層体であって、これら層間の接着性に優れる積層体を提供する。
【解決手段】
ポリビニルアセタール100質量部に対して、極性基を有する可塑剤0.5〜100質量%、極性基を有さない可塑剤0〜99.5質量%からなり、極性基を有する可塑剤と極性基を有さない可塑剤の合計が100質量%である可塑剤30〜70質量部を含み、該ポリビニルアセタールを内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてHPLCで分析した際に、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れる組成物。
权利要求
  • ポリビニルアセタール100質量部に対して、水酸基を有する可塑剤0.5〜100質量%及び極性基を有さない可塑剤0〜99.5質量%からなり、水酸基を有する可塑剤と極性基を有さない可塑剤の合計が100質量%である可塑剤30〜70質量部を含み、水酸基を有する可塑剤がエステル化合物であり、 該極性基が、水酸基、重合度が10以上のポリエチレンオキシド基、重合度が10以上のポリプロピレンオキシド基、カルボキシル基及びアミノ基であり、
    該ポリビニルアセタールを内径4mm、長さ1cmのオクタデシルシリル基で表面修飾された球状シリカゲルを固定相として充填したカラム(ODSカラム)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した際に、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れる組成物。
  • エステル化合物がポリエステル化合物である、請求項1に記載の組成物。
  • ポリビニルアセタール100質量部に対して、水酸基を有する可塑剤0.5〜100質量%及び極性基を有さない可塑剤0〜99.5質量%からなり、水酸基を有する可塑剤と極性基を有さない可塑剤の合計が100質量%である可塑剤30〜70質量部を含み、水酸基を有する可塑剤がエーテル化合物であり、 該極性基が、水酸基、重合度が10以上のポリエチレンオキシド基、重合度が10以上のポリプロピレンオキシド基、カルボキシル基及びアミノ基であり、
    該ポリビニルアセタールを内径4mm、長さ1cmのオクタデシルシリル基で表面修飾された球状シリカゲルを固定相として充填したカラム(ODSカラム)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した際に、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れる組成物。
  • エーテル化合物がポリエーテル化合物である、請求項3に記載の組成物。
  • 第一のピークと第二のピークの溶出時間の差が2〜10分である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  • 溶出時間22分未満に第一のピークが現れ、かつ溶出時間22分以上に第二のピークが現れる請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  • 第一のピークを有する山の面積の平方根と、第二のピークを有する山の面積の平方根の比が20:80〜98:2である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  • ポリビニルアセタールに由来するピークを有する山のうち、面積が最も広い山及び面積が二番目に広い山について、山のピークの溶出時間が早い山を構成するピークをピーク(I)とし、他方の山を構成するピークをピーク(II)とした際に、ピーク(I)を有する山の面積の平方根と、ピーク(II)を有する山の面積の平方根の和が、ポリビニルアセタールに由来する各ピークを有する山の面積の平方根の和に対して50〜100%である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
  • ポリビニルアセタールが、該ポリビニルアセタール1gをエタノール100gに溶解させた溶液をヘキサンで滴定した場合に、溶液が白濁するまでのヘキサンの滴下量が140mL以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
  • ポリビニルアセタールが、該ポリビニルアセタール1gをエタノール100gに溶解させた溶液を脱イオン水で滴定した場合に、溶液が白濁するまでの脱イオン水の滴下量が10mL以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
  • 水酸基を有する可塑剤が分子量200〜2000の化合物である、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
  • 水酸基を有する可塑剤の水酸基価に基づく数平均分子量が200〜2000である、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
  • 可塑剤の0.5〜5質量%が水酸基を有する可塑剤であり、可塑剤の70〜99.5質量%がトリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールから選ばれる化合物と1価カルボン酸とのジエステルであって極性基を有さない化合物である、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
  • ポリビニルアセタールが、平均残存水酸基量の異なるポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したものである、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
  • ポリビニルアセタール(A)の平均残存水酸基量をXモル%、ポリビニルアセタール(B)の平均残存水酸基量をYモル%としたときに、|X−Y|≧1モル%である、請求項14に記載の組成物。
  • X=27.0〜33.0、Y=15.0〜27.0であり、ポリビニルアセタールが規定1を満たしている、請求項15に記載の組成物。
    規定1:ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分が2.5〜90質量%である。
  • X=27.0〜33.0、Y=33.0〜50.0であり、ポリビニルアセタールが規定2を満たしている、請求項15に記載の組成物。
    規定2:ポリビニルアセタール1gをクロロホルム100gに溶解させた場合の未溶解分が5〜70質量%である。
  • X=15.0〜27.0、Y=33.0〜50.0であり、ポリビニルアセタールが規定1及び規定2を満たしている、請求項15に記載の組成物。
    規定1:ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分が2.5〜90質量%である。
    規定2:ポリビニルアセタール1gをクロロホルム100gに溶解させた場合の未溶解分が5〜70質量%である。
  • ポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)との混合比率が、質量比で20:80〜98:2である、請求項14〜18のいずれかに記載の組成物。
  • ポリビニルアセタールの平均残存水酸基量が20〜33モル%である請求項1〜19のいずれかに記載の組成物。
  • 請求項1〜20のいずれかに記載の組成物からなるシート。
  • 請求項21に記載のシートを含む合わせガラス。
  • ヘイズが0.01〜2%である、請求項22に記載の合わせガラス。
  • 说明书全文

    本発明はポリビニルアセタール組成物、そのシート、およびその用途に関する。

    ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールは、さまざまな有機・無機基材に対する接着性や相溶性、有機溶剤への溶解性に優れており、種々の接着剤やセラミック用バインダー、各種インク、塗料等や、安全ガラス用中間膜として広範に利用されている。

    近年、合わせガラス用中間膜用途においては、さまざまな高機能化製品の開発が行われている。 例えば、合わせガラス用中間膜に高い遮音性能を付与する目的で、ポリビニルアセタールおよび可塑剤の含有量比が異なる等、組成の異なるポリビニルアセタール層を複数積層した、積層遮音合わせガラス用中間膜が開示されている(例えば、特許文献1および2参照)。 当該合わせガラス用中間膜においては、一般に、各層に含まれる可塑剤量を異なるものとするため、各層で使用するポリビニルアセタールとして平均残存酸基量が異なるものを使用する。

    ところで、合わせガラス用中間膜はその生産コストの観点から、一般に押出機を用いて製造される。 前記積層遮音合わせガラス用中間膜においては、共押出法により生産されるが、このような方法で合わせガラス用中間膜を生産する場合、一定量のトリム、また組成や厚さが不均一なため製品として使用することが難しいオフスペック品が得られる。

    単層合わせガラス用中間膜のトリム、オフスペック品は、一般に、再度、押出機に投入して溶融混練して押出成形することでリサイクルできる。 しかし、トリムやオフスペック品として組成の異なるポリビニルアセタール組成物を混合して使用する場合には、得られる合わせガラス用中間膜が不透明になることがあった。 特に前記積層遮音合わせガラス用中間膜では、各層を構成するポリビニルアセタール組成物において、平均残存水酸基量の異なるポリビニルアセタールを使用しているため、それらのポリビニルアセタールを相溶させることが困難であり、前記合わせガラス用中間膜の作製過程で発生するトリムやオフスペック品をリサイクル使用して得られた合わせガラス用中間膜は、透明性に劣る問題があった。

    ポリビニルアセタール樹脂の生産においては、従来からバッチ式の沈殿法が工業的に広く行われている。

    一般的なバッチ式の沈殿法では、ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコールを水に溶解させ、そこにブチルアルデヒドなどのアルデヒドと、塩酸、硝酸などの酸触媒を添加し、アセタール化反応を開始させる。 アセタール化度が一定の水準に達すると、水に溶解できなくなった部分アセタール化ポリビニルアルコールが析出して粒子となり、その後、アセタール化反応は前記粒子が水に分散した不均一系で進行する。 反応終了後、適宜、酸触媒の中和、洗浄、乾燥を経て、ポリビニルアセタールが得られる。

    バッチ式の沈殿法では、樹脂が粒子状で得られ、得られた樹脂の水洗による精製や、乾燥後の樹脂の取り扱い製に優れるため好適である。 一方、バッチ反応のため、製造条件を揃えた場合であっても、得られるポリビニルアセタールの平均アセタール化度がバッチ間でばらつく(すなわち、平均残存水酸基量(モル%)がバッチ毎に異なる)ことがある。 かかるバッチ間ばらつきに由来する、平均アセタール化度が一定以上異なるポリビニルアセタール2種類以上を、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)など、ポリビニルアセタールに一般的に用いられている可塑剤と混合して使用すると、得られる組成物の透明性が低下する場合があった。

    また前記のとおり、粒子析出後のアセタール化反応は不均一系で進行するため、反応処方によっては、同一バッチであっても比較的広いアセタール化度分布を有する(すなわち、残存水酸基量(モル%)のバッチ内ばらつきが大きい)ポリビニルアセタールが得られることがある。 特に、ポリビニルアセタールの粒子径が大きくなるような反応条件でアセタール化反応を行った場合には、反応中の粒子の内部と外部でアルデヒド濃度や酸触媒濃度が異なるため、同一バッチでも比較的広いアセタール化度分布を有するポリビニルアセタールが得られる傾向がある。 同一バッチでも比較的広いアセタール化度分布を有するポリビニルアセタールも、3GOと混合した際に、得られる組成物の透明性が低下する場合があった。 特に、前記同一バッチ内で比較的広いアセタール化度分布を有するポリビニルアセタールと3GOなどのポリビニルアセタールに一般的に用いられている可塑剤を混合した組成物からなるシートを中間膜とする合わせガラスは、光照射下で曇って見えることがあり、強い光を浴びる用途、例えば自動車のフロントガラス(夜間走行時、対向車からのヘッドライトを浴びる)への適用は困難であった。

    特開2011−225449号公報

    特開2011−084468号公報

    本発明は上記課題を解決するものであり、平均残存水酸基量の異なるポリビニルアセタールを含み、かつ透明性に優れるシートを成形することができる組成物を提供することを目的とする。

    本発明によれば、上記目的は、ポリビニルアセタール100質量部に対して、極性基を有する可塑剤0.5〜100質量%及び極性基を有さない可塑剤0〜99.5質量%からなり、極性基を有する可塑剤と極性基を有さない可塑剤の合計が100質量%である可塑剤30〜70質量部を含み、該ポリビニルアセタールを内径4mm、長さ1cmのオクタデシルシリル基で表面修飾された球状シリカゲルを固定相で充填したカラム(ODSカラム)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した際、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れる組成物を提供することで達成される。

    第一のピークと第二のピークの溶出時間の差が2〜10分であることが好ましい。

    溶出時間22分未満に第一のピークが現れ、かつ溶出時間22分以上に第二のピークが現れることが好ましい。

    第一のピークを有する山の面積の平方根と、第二のピークを有する山の面積の平方根の比が20:80〜98:2であることが好ましい。

    ポリビニルアセタールに由来するピークを有する山のうち、面積が最も広い山及び面積が二番目に広い山について、山のピークの溶出時間が早い山を構成するピークを第一のピークとし、他方の山を構成するピークを第二のピークとした際に、第一のピークを有する山の面積の平方根と、第二のピークを有する山の面積の平方根の和が、ポリビニルアセタールに由来する各ピークを有する山の面積の平方根の和に対して50〜100%であることが好ましい。

    ポリビニルアセタールが、該ポリビニルアセタール1gをエタノール100gに溶解させた溶液をヘキサンで滴定した場合に、溶液が白濁するまでのヘキサンの滴下量が140mL以上であることが好ましい。

    ポリビニルアセタールが、該ポリビニルアセタール1gをエタノール100gに溶解させた溶液を脱イオン水で滴定した場合に、溶液が白濁するまでの脱イオン水の滴下量が10mL以上であることが好ましい。

    極性基を有する可塑剤が水酸基を有する化合物であることが好ましい。

    極性基を有する可塑剤が分子量200〜2000の化合物であることが好ましい。

    水酸基を有する化合物の水酸基価に基づく数平均分子量が200〜2000であることが好ましい。

    水酸基を有する化合物がエステル化合物であることが好ましい。

    エステル化合物がポリエステル化合物であることが好ましい。

    水酸基を有する化合物がエーテル化合物であることが好ましい。

    エーテル化合物がポリエーテル化合物であることが好ましい。

    可塑剤の0.5〜5質量%が水酸基を有する化合物であり、可塑剤の70〜99.5質量%がトリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールから選ばれる化合物と1価カルボン酸とのジエステルであって極性基を有さない化合物であることが好ましい。

    ポリビニルアセタールが、平均残存水酸基量の異なるポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したものであることが好ましい。

    ポリビニルアセタール(A)の平均残存水酸基量をXモル%、ポリビニルアセタール(B)の平均残存水酸基量をYモル%としたときに、|X−Y|≧1であることが好ましい。

    X=27.0〜33.0、Y=15.0〜27.0であり、ポリビニルアセタールが規定1を満たしていることが好ましい。
    規定1:ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分が2.5〜90質量%である。

    X=27.0〜33.0、Y=33.0〜50.0であり、ポリビニルアセタールが規定2を満たしていることが好ましい。
    規定2:ポリビニルアセタール1gをクロロホルム100gに溶解させた場合の未溶解分が5〜70質量%である。

    X=15.0〜27.0、Y=33.0〜50.0であり、ポリビニルアセタールが規定1及び規定2を満たしていることが好ましい。
    規定1:ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分が2.5〜90質量%である。
    規定2:ポリビニルアセタール1gをクロロホルム100gに溶解させた場合の未溶解分が5〜70質量%である。

    ポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)との混合比率が、質量比で20:80〜98:2であることが好ましい。

    ポリビニルアセタールの平均残存水酸基量が20〜33モル%であることが好ましい。

    本発明は、前記組成物からなるシートに関する。

    本発明は、前記シートを含む合わせガラスに関する。

    本発明は、ヘイズが0.01〜2%である合わせガラスに関する。

    本発明の組成物は、内径4mm、長さ1cmのオクタデシルシリル基で表面修飾された球状シリカゲルを固定相で充填したカラム(ODSカラム)を用いてHPLC分析をした際に、ポリビニルアセタールに由来するピークが少なくとも2つ現れるポリビニルアセタールを必須成分として含むものである。 ODSカラムは表面をオクタデシル基で修飾した多孔性球状シリカゲルを充填剤とするカラムで、オクタデシル基が分析対象化合物の疎水基と疎水性相互作用するため、分析対象化合物の極性に依存した保持時間(溶出時間)で化合物を分離することができ、溶出時間が短いほど分析対象化合物の極性が高い。 すなわち、内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてHPLCで分析した際に、ポリビニルアセタールに由来するピークとして第一のピーク及び第二のピークが現れるポリビニルアセタールとは、各ピークに対応する、極性の異なるポリビニルアセタールを少なくとも2種含んでいることを表している。 極性が異なるポリビニルアセタール、例えば、残存水酸基量が異なるポリビニルアセタール分子を含むポリビニルアセタールは、例えばトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートなどのポリビニルアセタールの可塑剤として一般的に用いられる化合物と混合した場合に、透明性に劣る組成物が得られることがあった。 本発明の組成物では、必須成分として、極性基を有する可塑剤0.5〜100質量%を含有する可塑剤を含んでいる。 極性基を有する可塑剤は、残存水酸基量が異なるポリビニルアセタール分子を互いに相溶させるか、又は透明性に影響しない水準までミクロに分散させることができるため、結果として透明な組成物を得ることができると推定される。 したがって、本発明の組成物は、特に、積層中間膜を押出成形によって製造した場合に発生するトリム、あるいはアセタール化度のバッチ間ばらつきやバッチ内ばらつきを有するポリビニルアセタールなど、極性の異なるポリビニルアセタールを原料として使用した場合であっても、透明性に優れる可塑化ポリビニルアセタール組成物であり、該組成物からは透明性に優れたシートを成形することができる。

    HPLC分析チャート(クロマトグラム)の例である。

    HPLC分析チャート(クロマトグラム)の例である。

    まず、本発明で使用するポリビニルアセタールについて説明する。 本発明で使用するポリビニルアセタールは、内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてHPLCで分析した際に、検出器により得られた検出量をもとに作成されるHPLC分析チャートにおいて、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れるものであれば特に限定されない。 HPLC分析チャートの例を図1に示す。 なお、第一のピーク及び第二のピークとは、本発明においてHPLC分析チャートにおいて検出される、ポリビニルアセタールに由来するピークを有する山のうち、面積が最も広い山及び面積が二番目に広い山について、山のピークの溶出時間が早い山を構成するピークを第一のピークとし、他方の山を構成するピークを第二のピークとする。

    本発明のポリビニルアセタールを特定するために使用するHPLC装置としては、例えば、株式会社島津製作所社製高圧グラジエントHPLCシステム「Prominence」が挙げられ、またODSカラムとしては、例えば株式会社島津製作所社製「Shim−pack G−ODS(4)(内径4mm×長さ1cm)」が挙げられるが、これと同等のHPLC装置、ODSカラムであれば任意のものを用いることができる。 ODSカラムの充填剤の粒子径としては任意のものを使用できるが、例えば1〜10μmのものが用いられる。 また検出器としては、例えば、株式会社島津製作所社製の蒸発光散乱検出器「ELSD−LTII」、またはこれと同等の装置を用いることができる。

    (HPLC分析)
    本発明において、HPLC分析は、以下の方法で行う。 HPLCシステム内部をエタノール/水=4/1(v/v)混合溶剤(以下、移動相(A)と称する)で満たした状態で、サンプルには、ポリビニルアセタール0.5質量%エタノール溶液30μLを注入する。 カラム温度45℃、流速0.4mL/min、の条件下において、サンプル注入直後から20分かけて、移動相中のエタノールの割合を一定速度(5vol%/分)で増加させ、20分後(この時点で移動相(A)は完全にエタノールに置換される)からは、エタノール単独を移動相とする。

    次に、本発明で使用するポリビニルアセタールの、HPLC分析チャート(クロマトグラム)について図1を用いて説明する。 HPLC分析チャートでは縦軸に検出量、横軸に溶出時間をとり、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク12及び第二のピーク22が現れる。 ピーク12およびピーク22の溶出時間の差は2〜10分であることが好ましく、2〜8分であることがより好ましく、2〜6分であることがさらに好ましい。 前記溶出時間の差が10分より大きいと、得られる組成物の透明性が低下することがある。 なお、本明細書におけるピークとは、各山における検出量の極大点をいう。

    また、本発明で使用するポリビニルアセタールは、溶出時間22分未満、好ましくは21.8分未満、さらに好ましくは21.6分未満に第一のピーク12が現れ、かつ、溶出時間22分以上、好ましくは22.2分以上、より好ましくは22.4分以上に第二のピーク22が現れることが好ましい。 第一のピーク12の溶出時間t 12が22分未満であり、かつ第二のピーク22の溶出時間t 22が22分以上であると、学強度やガラスとの接着性に優れたシートが得られる傾向となる。 なお溶出時間が22分未満のピークを有する山は通常、残存水酸基量が概ね30モル%以上のポリビニルアセタールを示し、溶出時間22分以上のピークを有する山は通常、残存水酸基量が概ね20モル%以下のポリビニルアセタールを示す。

    本発明のポリビニルアセタールは、第一のピーク12を有する山の面積の平方根と、第二のピーク22を有する山の面積の平方根の比が20:80〜98:2であることが好ましく、30:70〜97:3であることがより好ましく、50:50〜95:5であることがさらに好ましく、50:50〜90:10であることが特に好ましい。 第一のピーク12と第二のピーク22を有する山の面積の平方根の比がこの範囲を満たすことが、透明性に優れる組成物を得る観点で好ましい。 なお、ピークを有する山の面積とは、前記HPLC分析チャートにおいて、各々のピークに対応する溶出時間の直前の山とベースラインとの交点における溶出時間から、該ピークに対応する溶出時間の直後の山とベースラインとの交点における溶出時間までの検出量を積分した値をいう。 例えば、第一のピーク12を有する山の面積は、第一のピーク12の直前のピークを有する山とベースラインとの交点11における溶出時間t 11から、第一のピーク12の直後のピーク12を有する山とベースラインとの交点13における溶出時間t 13までの検出量を積分した値を意味する。 つまり、図1において、斜線部分の面積を意味する。 同様に、例えば、第二のピーク22を有する山の面積は、第二のピーク22の直前のピーク22を有する山とベースラインとの交点21における溶出時間t 21から、第二のピーク22の直後のピークを有する山とベースラインとの交点23における溶出時間t 23までの検出量を積分した値をいう。 実際の各ポリビニルアセタール含有量の比率は、各ピークを有する山の面積の比ではなく、各ピークを有する山の面積の平方根(ピーク面積平方根)の比とおおむね一致することが実験において経験上確認されている。 なお、ピーク12を有する山とピーク22を有する山が重なる場合には、図2のように、山の交点における溶出時間をそれぞれt 13およびt 21として上記と同様の山の面積を算出する。

    本発明のポリビニルアセタールは、第一のピーク12を有する山の面積の平方根と、第二のピーク22を有する山の面積の平方根の和が、ポリビニルアセタールに由来する各ピークを有する山の全ての面積の平方根の和に対して50〜100%であることが好ましい。 第一のピーク12と第二のピーク22を有する山の面積の平方根の和が、各ピークを有する山の全ての面積の平方根の和に対して、この範囲を満たすことが、得られる組成物の透明性や力学強度の観点で好適である。

    本発明のポリビニルアセタールは、該ポリビニルアセタール1gをエタノール100gに溶解させた溶液を、23℃でヘキサンにより滴定した場合、溶液が白濁するヘキサンの滴下量が好ましくは140mL以上、さらに好ましくは150mL以上、特に好ましくは160mL以上であるポリビニルアセタールを使用することがより好ましい。 ヘキサンの滴下量が140mLより少ないポリビニルアセタールは、ヘキサン(低極性溶剤)との親和性が低い、残存水酸基量の多いポリビニルアセタール分子を含む。 そのようなポリビニルアセタール分子は、本発明で使用する可塑剤等との相溶性が低いため、得られる組成物から成形されるシートの透明性が劣ることがある。

    また本発明のポリビニルアセタールは、該ポリビニルアセタール1gをエタノール100gに溶解させた溶液を、23℃で脱イオン水により滴定した場合、溶液が白濁する滴下量が好ましくは10mL以上、より好ましくは20mL以上、さらに好ましくは23mL以上、特に好ましくは25mL以上であるポリビニルアセタールを使用することがより好ましい。 脱イオン水の滴下量が10mLより少ないポリビニルアセタールは、水(高極性溶剤)との親和性が低い、残存水酸基量の少ないポリビニルアセタール分子を含む。 そのようなポリビニルアセタール分子は、本発明で使用する可塑剤等との相溶性が低いため、得られる組成物から成形されるシートの透明性が劣ることがある。

    また、本発明で使用するポリビニルアセタールは、下記規定1および/または規定2を満たすことが好ましい。
    規定1:ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分が2.5〜90質量%である。
    規定2:ポリビニルアセタール1gをクロロホルム100gに溶解させた場合の未溶解分が5〜70質量%である。

    規定1において、ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分が2.5〜90質量%であるとは、メタノール100gを撹拌下、各粒子または各塊の長径が3mm以下であるポリビニルアセタール1gを塊状にならないように添加し、25℃で72時間処理した後、得られた溶液(未溶解分を含む)をJIS P3801において規定されたろ紙の種類で5種Aに分類されるろ紙を使用して差圧0.010±0.002MPaで減圧ろ過した場合に、ろ紙上に残存する成分の乾燥質量が0.025〜0.90g(すなわち2.5〜90質量%)であることを表す。 ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは70〜90質量%である。 該未溶解分が2.5質量%より小さいポリビニルアセタール、また90質量%より大きいポリビニルアセタールは、本発明の目的のひとつである、残存水酸基量の異なる多層中間膜のトリム、オフスペック品を原料として透明なシートを得るリサイクルにおいて、透明性に劣り合わせガラスに用いた際に曇って見えるようなシートとなる、という本発明により解決される課題がそもそも発生しにくい。 しかし、この範囲では使用できるポリビニルアセタールが限られ、リサイクル効率が低下する場合がある。 なお、本発明で使用するポリビニルアセタールの各粒子または各塊の長径が3mmより大きい場合には、それら粒子や塊をはさみで切断するなど、その組成が変化しない方法で処理して、長径を3mm以下としたものを使用すればよい。

    上記の、ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに25℃で溶解させた場合に得られた溶液(未溶解分を含む)のろ過は、次のような方法で行われる。 適当な大きさの吸引瓶にブフナー漏斗を取り付けて前記ろ紙をセットし、あらかじめメタノールでろ紙を濡らしておく。 溶液(未溶解分を含む)をろ紙上に注ぎ、アスピレーターなどを使用して減圧下(差圧0.010±0.002MPa)で吸引ろ過する。 注いだ溶液の95%以上がろ過されたら、さらにメタノールを100mLをろ紙上に注ぎ、ろ紙上に残存する未溶解分を洗浄する。 ろ液が出なくなったらろ紙上の固体を回収し、固体中に残存するメタノールを減圧下(−0.095〜−0.097MPa、室温、24時間)で乾燥した後、重量を測定して未溶解分の割合(百分率)を算出する。 未溶解分の割合は、(未溶解分の重量[g]/メタノールに添加したサンプルの重量[g])×100で計算される。 規定1を満たすポリビニルアセタールは、残存水酸基量が少ないためにメタノールに溶解し難いポリビニルアセタール分子、およびメタノールに溶解するポリビニルアセタール分子をそれぞれ特定量含む。

    また、規定2で特定されるポリビニルアセタール1gをクロロホルム100gに溶解させた場合の未溶解分が5〜70%であるとは、上で述べた規定1における、ポリビニルアセタール1gをメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分の測定方法において、メタノールの代わりにクロロホルムを使用した場合の未溶解分の割合が5〜70質量%であることを表す。 規定2の未溶解分は、好ましくは7〜70質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜70質量%である。 該未溶解分が5質量%より小さいポリビニルアセタール、また70質量%より大きいポリビニルアセタールは、本発明の目的のひとつである、残存水酸基量の異なる多層中間膜のトリム、オフスペック品を原料として透明なシートを得るリサイクルにおいて、透明性に劣り合わせガラスに用いた際に曇って見えるようなシートとなる、という本発明により解決される課題がそもそも発生しにくい。 しかし、この範囲では使用できるポリビニルアセタールが限られ、リサイクル効率が低下する場合がある。 規定2を満たすポリビニルアセタールは、残存水酸基量が多いためにクロロホルムに溶解し難いポリビニルアセタール分子、およびクロロホルムに溶解するポリビニルアセタール分子をそれぞれ特定量含む。

    本発明で使用するポリビニルアセタールは、前記HPLC分析において、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れるものであり、種々の方法で準備することができる。 例えば、それぞれ平均残存水酸基量の異なる、ポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したものであって、さらにポリビニルアセタール1gをエタノール100gに溶解させた溶液をヘキサン及び脱イオン水で滴定した場合に所定以上の滴下量で溶液が白濁するもの、又は、さらに前記規定1および/または規定2を満たすもの、また、バッチ間ばらつきの大きいポリビニルアセタールであって、ポリビニルアセタール1gをエタノール100gに溶解させた溶液をヘキサン及び脱イオン水で滴定した場合に所定以上の滴下量で溶液が白濁するもの、又は、さらに前記規定1および/または規定2を満たすものなどを使用することができる。

    本発明のポリビニルアセタールとして、それぞれ平均残存水酸基量の異なる、ポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したものを使用する場合、本発明の主旨に反しない限り、用いられるポリビニルアセタールは特に限定されない。 特に、ポリビニルアセタール(A)の残存水酸基量をXモル%、ポリビニルアセタール(B)の残存水酸基量をYモル%とするときに、|X−Y|≧1、好ましくは|X−Y|≧3、より好ましくは|X−Y|≧5であるものが、汎用の可塑剤との組み合わせでは透明な組成物を得ることができなかったポリビニルアセタールから、透明な組成物、および該組成物を用いた透明性に優れるシートを得るという本発明の目的を達成する観点から好ましい。

    前記X、Yは、本発明の主旨に反しない限り特に限定されないが、入手の容易さや得られる組成物の力学強度、成形加工性などの観点から、X=27.0〜33.0、好ましくは27.0〜32.5、さらに好ましくは27.0〜32.0でありY=15.0〜27.0、好ましくは16.0〜27.0、さらに好ましくは17.0〜27.0であり、かつ、それらポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したポリビニルアセタールが、内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてHPLCで分析した際、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れるものであることが好ましい。 また同様の観点から、X=27.0〜33.0、好ましくは27.5〜33.0、さらに好ましくは28.0〜33.0であり、Y=33.0〜50.0、好ましくは33.0〜45.0、さらに好ましくは33.0〜41.0であり、かつ、それらポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したポリビニルアセタールが内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてHPLCで分析した際、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れるものであることが好ましい。 さらに同様の観点から、X=15.0〜27.0、好ましくは16.0〜27.0、さらに好ましくは17.0〜27.0であり、Y=33.0〜50.0、好ましくは33.0〜45.0、さらに好ましくは33.0〜41.0であり、かつ、それらポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したポリビニルアセタールが内径4mm、長さ1cmのODSカラムを用いてHPLCで分析した際、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク及び第二のピークが現れるものであることが好ましい。

    ポリビニルアセタールとして、ポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したものを使用する場合、それらの混合比率は特に限定されないが、ポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)とを20:80〜98:2、好ましくは30:70〜97:3、より好ましくは50:50〜95:5、さらに好ましくは50:50〜90:10の質量比で混合するとよい。 ポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)をこのような比率で混合することで、透明性に優れる組成物が得られるとともに、これを用いて透明性に優れたシートを成形することができるため、前記積層中間膜のリサイクルにおける効率を高めることができる。

    本発明で使用するポリビニルアセタールは、その平均残存水酸基量が20〜33モル%であることが好ましく、より好ましくは23〜32.5モル%であり、さらに好ましくは27〜32.0モル%である。 ポリビニルアセタール(A)とポリビニルアセタール(B)を混合したものを使用する場合は、混合後のポリビニルアセタールの平均残存水酸基量が前記範囲であることが好ましい。 平均残存水酸基量がこの範囲であるポリビニルアセタールを使用することで、透明性に優れる組成物、およびこれを用いた透明性に優れたシートが得られる。

    本発明で使用するポリビニルアセタール、ポリビニルアセタール(A)、ポリビニルアセタール(B)は通常、ポリビニルアルコールを原料として製造される。 上記ポリビニルアルコールは従来公知の手法、すなわちビニルエステル化合物を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。 ビニルエステル化合物を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。 重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などを適宜選択できる。 けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などが適用でき、この中でもメタノールを溶剤とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。

    ビニルエステル化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなど、従来公知のカルボン酸ビニルエステルが挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。

    また、前記ポリビニルアルコールは本発明の主旨に反しない限り、前記ビニルエステル化合物と他の従来公知の単量体とを共重合させた、変性ポリビニルアルコールを使用することもできる。 この従来公知の単量体は通常、ビニルエステル系単量体に対して10モル%未満の割合で用いられる。

    本発明に用いられるポリビニルアセタールの原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度は特に限定されず、用途に応じて適宜選択されるが、150〜3,000のものが好ましく、200〜2,500のものがより好ましく、1,000〜2,000のものがさらに好ましい。 ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が150より小さいと、得られる組成物を成形品にした場合に強度が不足する傾向があり、3,000より大きいと、得られる組成物の取り扱い性が悪くなる傾向にある。

    本発明に用いられるポリビニルアセタールは、例えば次のような反応条件で合成できるが、これに限定されない。 まず濃度3〜40質量%のポリビニルアルコール水溶液を、80〜100℃の温度範囲で保持した後、その温度を10〜60分かけて徐々に冷却する。 温度が−10〜30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30〜300分間アセタール化反応を行う(この温度を析出時反応温度とする)。 その際、アセタール化度が一定水準に達したポリビニルアセタールが析出する。 その後反応液を30〜300分かけて30〜80℃の温度まで昇温し、その温度を10〜500分保持する(この温度を追い込み時反応温度とする)。 次に反応溶液に、必要に応じてアルカリなどの中和剤を添加して酸触媒を中和し、樹脂を水洗、乾燥することにより、本発明で用いるポリビニルアセタールが得られる。

    アセタール化反応に用いる酸触媒としては特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。 これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられる。

    本発明のアセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、アセタール化の容易さや反応後に残存するアルデヒドに除去が容易であるといった観点で、従来公知の炭素数1〜8のアルデヒドでアセタール化することが好ましく、中でも炭素数4〜6のアルデヒドが好ましく、とりわけn−ブチルアルデヒドが好ましく用いられる。 本発明においては、アルデヒドを2種類以上併用して得られるポリビニルアセタールを使用することもできる。

    本発明で使用するポリビニルアセタールの平均アセタール化度は特に限定されないが、透明性や力学強度に優れる観点から、66〜78モル%が好ましく、66.5〜75モル%がより好ましく、67〜72モル%がさらに好ましい。 また平均残存カルボン酸ビニル基量は、透明性や力学強度のバランスに優れ、かつ本発明の組成物を長期間使用した場合の耐久性に優れる観点から、0.1〜20モル%であることが好ましく、0.3〜13モル%であることがより好ましく、0.5〜10モル%であることがさらに好ましい。

    次に本発明で使用する可塑剤について説明する。 本発明で使用する可塑剤は、本発明で使用するポリビニルアセタール100質量部に対して30〜70質量部、好ましくは33〜68質量部、さらに好ましくは50〜66質量部混合することで、透明かつ可塑化された組成物が得られるものであり、具体的には、極性基を有する可塑剤を0.5〜100質量%、好ましくは2〜100質量%、より好ましくは5〜100質量%と、極性基を有さない可塑剤を0〜99.5質量%、好ましくは0〜98質量%、より好ましくは0〜95質量%含有し、極性基を有する可塑剤と極性基を有さない可塑剤の合計が100質量%である。 可塑剤中の極性基を有する可塑剤の含有量が0.5質量%より少なくなると、組成物から得られるシートの透明性が十分でなくなる傾向にある。 なお、本発明で使用する可塑剤が極性基を有する可塑剤を100質量%含み、極性基を有さない可塑剤を0質量%含有するとは、本発明で使用する可塑剤が極性基を有する可塑剤のみを含んでいるという意味である。 なお、本発明の組成物において、極性基を有する可塑剤は、本発明の組成物を高湿度下、例えば23℃、90%RHで処理した場合に、本発明の組成物が白濁したり、あるいは極性基を含まない可塑剤がブリードしたりすることを防ぐ効果もある。

    極性基を有する可塑剤として使用する化合物は特に限定されず、本発明で使用するポリビニルアセタールとの相溶性、またポリビニルアセタールへの可塑化効果を有し、さらに前記HPLCの分析値により規定されるポリビニルアセタールを互いに相溶化するものであれば特に限定されず、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 また、極性基としては、例えば、水酸基、重合度が10以上のポリエチレンオキシド基、重合度が10以上のポリプロピレンオキシド基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。 極性基を有する可塑剤は、とりわけ、水酸基を有する化合物であることが好ましい。 極性基を有する可塑剤が水酸基を有する化合物である場合、その分子量は特に限定されないが、分子量200〜2000、好ましくは分子量220〜1000、より好ましくは分子量250〜700の化合物が、本発明において透明性に優れるシートを得る観点から好ましい。 また水酸基を有する化合物の水酸基価に基づく数平均分子量は特に限定されないが、200〜2000であることが好ましく、220〜1700であることがより好ましく、240〜1500であることがさらに好ましい。 水酸基価に基づく数平均分子量が200より小さいと、当該化合物の沸点が十分に高くない場合があり、揮発性が高いことが問題になることがある。 水酸基価に基づく数平均分子量が2000より大きいと、当該化合物とポリビニルアセタールとの相溶性が不十分となることがある。 なお水酸基価に基づく数平均分子量は、(水酸基を有する化合物1分子あたりの水酸基の数)/(水酸基を有する化合物1gあたりの水酸基の物質量[mol/g])=1000×(水酸基を有する化合物1分子あたりの水酸基の数)/((水酸基を有する化合物の水酸基価)/56)で得られる値である。 ここで、水酸基を有する化合物を2種類以上混合して使用する場合の水酸基を有する化合物1分子あたりの水酸基の数は、その混合物に含まれる水酸基を有する化合物1分子あたりの平均値を指す。

    水酸基を有する化合物は、水酸基を1個以上、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個有していれば特に限定されず、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 また、ポリビニルアセタールとの相溶性や可塑化効果、さらに本発明で使用するポリビニルアセタールを相溶化して透明なシートを得る効果を十分に得るには、水酸基を有するエステル化合物、および/又は、水酸基を有するエーテル化合物であることが好ましい。 水酸基を有するエステル化合物とはエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ水酸基を有する化合物であり、また水酸基を有するエーテル化合物とはエーテル結合を少なくとも1つ含み、かつ水酸基を有する化合物である。

    水酸基を有するエステル化合物を具体的に例示すると、リシノール酸メチル、リシノール酸ブチル、リシノール酸2−エチルヘキシル、リシノール酸(2−ヒドロキシエチル)、グリセリンモノリシノール酸エステル、グリセリンジリシノール酸エステル、グリセリントリリシノール酸エステル、グリセリンジリシノール酸エステルモノオレイン酸エステル、オレイン酸(2−ヒドロキシエチル)、2−エチルヘキサン酸(2−ヒドロキシエチル)、リシノール酸{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル}2−エチルヘキサン酸{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル}、リシノール酸メチル、リシノール酸エチル、リシノール酸ブチル、リシノール酸オクチル、6−ヒドロキシヘキサン酸オクチル、12−ヒドロキシステアリン酸メチル、ひまし油などの他、水酸基を有するポリエステル化合物が挙げられる。 中でも、本発明で使用するポリビニルアセタールとの相溶性、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果に優れる点、さらにポリビニルアセタールを相溶化して透明なシートを得ることができる点から、水酸基を有するポリエステル化合物を用いることが好ましい。 なお、ひまし油とはひまの種子から得られるグリセリントリカルボン酸エステルであって、カルボン酸エステル部分の大部分、通常80〜95質量%がリシノール酸エステルであり、残りがパルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステルなどで構成される化合物である。

    水酸基を有するポリエステル化合物(以下、単にポリエステル(C)と称する)は特に限定されないが、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸の縮合共重合体であって水酸基を有するポリエステル(C−1)(以下、単にポリエステル(C−1)と称する)、ヒドロキシカルボン酸の重合体であって水酸基を有するポリエステル(C−2)(以下、単にポリエステル(C−2)と称する)、水酸基を有するポリカーボネートポリオール(C−3)(以下、単にポリエステル(C−3)と称する。)などが挙げられる。

    ポリエステル(C−1)は、多価アルコールと多価カルボン酸を多価アルコール過剰下で縮合重合させることにより得られる。 多価アルコールとしては、多価アルコールとしては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族2価アルコール;グリセリンなどの脂肪族3価アルコール;エリトリトール、ペンタエリトリトールなどの脂肪族4価アルコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。 中でも脂肪族2価アルコールが、ポリエステル(C−1)の耐侯性やポリビニルアセタールとの相溶性、およびポリビニルアセタールに対する可塑化効果に優れるため好適である。
    また、多価カルボン酸としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族2価カルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,3,5−ペンタトリカルボン酸などの脂肪族3価カルボン酸、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族2価カルボン酸、トリメリット酸などの芳香族3価カルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。 中でも脂肪族2価カルボン酸、特に炭素数6〜10の脂肪族2価カルボン酸が、また、得られるポリエステルのポリビニルアセタールに対する可塑化効果に優れ、ポリビニルアセタールを相溶化して透明なシートを得ることができる点で、好適である。 また本発明の趣旨に反しない限り、多価アルコール、多価カルボン酸に追加して、1価アルコールや1価カルボン酸を原料として使用して得られる、多価カルボン酸と多価アルコールの共重合体であって水酸基を有する化合物も使用することができる。

    ポリエステル(C−2)は、ヒドロキシカルボン酸を縮合重合させることにより得られる。 ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、リシノール酸などが挙げられる。 またこれらヒドロキシカルボン酸が分子内縮合したラクトン化合物も原料として使用できる。 ラクトン化合物としては、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチル−δ−バレロラクトンなどが挙げられるが、これらに限定されない。 ラクトン化合物を用いる場合は開環重合によりポリエステル(C−2)を得ることができる。 ポリエステル(C−2)の耐熱性、ポリビニルアセタールへの相溶化および可塑化効果の観点から、中でも6−ヒドロキシカルボン酸またはε−カプロラクトンが好ましい。

    水酸基を有するエーテル化合物としては、エチレングリコールモノオクチルエーテルや、水酸基を有するポリエーテル化合物などが挙げられる。 中でも、本発明で使用するポリビニルアセタールとの相溶性、ポリビニルアセタールに対する可塑化効果に優れる点、さらにポリビニルアセタールを相溶化させる観点から、水酸基を有するポリエーテル化合物を用いることが好ましく、水酸基を有するポリエーテル化合物は、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールなどの多価アルコールの重合体であって、かつ水酸基を有する化合物であり、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが好ましい。

    本発明で使用する、極性基を有する可塑剤の水に対する溶解性は、特に限定されないが、非水溶性であるものが、本発明の組成物から得られる成形品が水に接した場合に、該極性基を有する可塑剤が水に溶出しにくくなるので好ましい。 非水溶性とは、具体的には、20℃における水100gへの溶解量が100g以下、好ましくは50g以下、より好ましくは10g以下、さらに好ましくは2g以下であることを表す。 また本発明で使用する水酸基を有する化合物の水酸基価は特に限定されないが、50〜600mgKOH/gであることが好ましく、70〜500mgKOH/gであることがより好ましく、100〜400mgKOH/gであることがさらに好ましい。 水酸基価が50mgKOH/gより小さいと本発明のポリビニルアセタール組成物から得られるシートの透明性が低下することがあり、一方、水酸基価が600mgKOH/gを超えると、水酸基を有する化合物とポリビニルアセタールとの相溶性が低下して透明性が低下したり、また成形品からブリードが起こったりすることがある。 ここで、本発明における水酸基価は、JIS K1557−1(2007)に記載された方法で測定をして得られる値である。 なお、水酸基を有する化合物を2種類以上混合して使用する場合の水酸基価は、その混合物(本発明のポリビニルアセタール組成物中と同じ混合比率の水酸基を有する化合物の混合物)の水酸基価を指す。

    本発明の可塑剤に含まれる極性基を有さない可塑剤とは水酸基、重合度が10以上のポリエチレンオキシド基、重合度が10以上のポリプロピレンオキシド基、カルボキシル基、アミノ基といった極性基を有さない可塑剤であり、より具体的には、多価アルコールと1価カルボン酸のエステル化合物であって極性基を有さない化合物、多価カルボン酸と1価アルコールのエステル化合物であって極性基を有さない化合物などが挙げられる。 多価アルコールと1価カルボン酸のエステル化合物であって極性基を有さない化合物としては、例えばトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。 また多価カルボン酸と1価アルコールのエステル化合物であって極性基を有さないものとしては、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、シクロヘキサンジカルボン酸ジ(オクチル)、シクロヘキサンジカルボン酸ジ(イソノニル)等が挙げられる。 中でも、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートなど、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールから選ばれる化合物と1価カルボン酸とのジエステルであって極性基を有さない化合物が、ポリビニルアセタールへの可塑化効果、揮発性の低さなどの観点で好ましい。

    本発明で使用する可塑剤は、極性基を有する可塑剤の割合を0.5〜100質量%、極性基を有さない可塑剤を0〜99.5質量%含み、極性基を有する可塑剤と極性基を有さない可塑剤の合計の含有量が100質量%であれば特に限定されない。 得られる組成物について、耐湿性や力学強度などのバランスに優れる組成物を得る観点からは、極性基を有する可塑剤として水酸基を有する化合物を可塑剤全体の0.5〜5.0質量%、より好ましくは0.5〜4.0質量%、さらに好ましくは0.5〜2.0質量%、特に好ましくは1.0〜2.0質量%含む。 さらに、極性基を有さない可塑剤として、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールから選ばれる1種以上の化合物と1価カルボンとのジエステルであって極性基を有さない化合物を、可塑剤全体の70〜99.5質量%、好ましくは90〜99.5質量%、より好ましくは95〜99.5質量%含み、かつ極性基を有する可塑剤と極性基を有さない可塑剤の合計が100質量%であるものが良い。 なお、極性基を有さない可塑剤としてトリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールと1価カルボン酸とのジエステルであって極性基を有さない化合物を、可塑剤全体の70〜99.5質量%含む可塑剤を使用する場合、該極性基を有する可塑剤との相溶性を向上させる観点から、極性基を有する可塑剤は、水酸基を有する化合物であって、前記ジエステル化合物に含まれる2つのエステル結合のいずれか1つを加水分解して得られる構造を有する、水酸基とエステル結合をそれぞれ1つ有する化合物であることが好ましい。

    本発明の組成物には、本発明の主旨に反しない限り酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、接着性改良剤、その他添加剤をさらに含んでいても良い。

    本発明の組成物に酸化防止剤を添加する場合、その種類は特に限定されず、例えば、従来公知のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。 これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 酸化防止剤の添加量は特に限定されないが、組成物の質量に対して0.0001〜5質量%、好ましくは0.001〜1質量%の範囲である。 酸化防止剤の添加量が0.0001質量%より少ないと十分な効果が得られないことがあり、また5質量%より多くしても格段の効果は望めない。

    本発明の組成物に紫外線吸収剤を添加する場合、その種類は特に限定されないが、例えば従来公知のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤などを使用できる。 これらの紫外線吸収剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 紫外線吸収剤の添加量は特に限定されないが、組成物の質量に対して0.0001〜5質量%、好ましくは0.001〜1質量%の範囲である。 紫外線吸収剤の添加量が0.0001質量%より少ないと十分な効果が得られないことがあり、また5質量%より多くしても格段の効果は望めない。

    また、本発明の組成物により得られるシートを合わせガラス用中間膜など、ガラスとの接着性を適切に調節する必要がある用途に使用する場合、本発明の組成物には接着性調整剤が添加されていてもかまわない。 接着性調整剤としては、従来公知のものが使用可能であるが、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルヘキサン酸などの有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが用いられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用して添加してもかまわない。 その添加量は、組成物の質量に対して0.0001〜1質量%であることが好ましく、0.0005〜0.1質量%がより好ましく、0.001〜0.03質量%が更に好ましい。

    本発明の組成物は、本発明で規定される特定のポリビニルアセタール、特定の可塑剤、及びその他成分を従来公知の方法で混合することで得ることができる。 例えば、本発明の組成物を構成する成分を、それらを溶解可能な有機溶剤に溶解した後に有機溶剤を留去する方法;また押出機等を用いて溶融混練する方法などが挙げられる。

    本発明の組成物のガラス転移温度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択可能であるが、0〜50℃の範囲であることが好ましく、0〜45℃であることがより好ましく、0〜40℃であることがさらに好ましい。 本発明の組成物のガラス転移温度が上記範囲を満たすと、特に本発明の組成物をシート状に成形して合わせガラス用中間膜として使用する場合に好適である。

    本発明の組成物は、透明性、および柔軟性に優れるため、特にシート状に成形すると合わせガラス用中間膜として好適である。 その場合のシートの厚さは特に限定されないが、合わせガラス用中間膜として用いる観点からは、0.05〜5.0mmであることが好ましく、0.1〜2.0mmであることがより好ましく、0.1〜1.2mmであることがさらに好ましい。

    本発明のシートを合わせガラス用中間膜として使用する場合、その際に使用するガラスは特に限定されず、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラス等が使用でき、これらは無色または有色でも、さらには透明または非透明のいずれであってもよい。 これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 また、ガラスの厚みは特に限定されないが、通常、100mm以下であることが好ましい。

    本発明のシートを合わせガラス用中間膜として使用する場合、シートの最表面の形状は特に限定されないが、ガラスとラミネートする際の取り扱い性(泡抜け性)の観点からは、積層体の最表面にメルトフラクチャー、エンボスなどの従来公知の方法で凹凸構造を形成させることが好ましい。

    本発明の合わせガラスは従来公知の方法で製造できる。 例えば、真空ラミネーター装置、真空バッグ、真空リング、ニップロールなどの装置方法等が挙げられる。 また前記方法で仮圧着して、得られた仮圧着体をオートクレーブに投入する方法も、付加的に行なうことができる。

    真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば、1×10 −6 〜3×10 −2 MPaの減圧下、100〜200℃、特に130〜160℃の温度で合わせガラスを製造できる。 真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えば、欧州特許第1235683号明細書に記載されており、例えば約2×10 −2 MPaの圧力下、130〜145℃で合わせガラスを製造できる。

    ニップロールを用いる場合、例えば、本発明の組成物の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着をされ、次いで流動開始温度に近い条件で圧着する方法が挙げられる。 具体的には、例えば本発明の組成物からなるシートを赤外線ヒーターなどで30〜70℃に加熱後にロールで脱気し、次いで50〜120℃に加熱後にロールで圧着してガラスに接着または仮接着させる方法が挙げられる。

    仮圧着後に付加的に行なうことがあるオートクレーブ工程は、合わせガラスの厚さや構成によっても異なるが、例えば1.0〜1.5MPaの圧力下、130〜145℃の温度で0.5〜3時間行う。

    以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。

    (製造例1)
    還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−1:粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)660gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。 次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド384gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。 その後、60分かけて50℃まで昇温し、50℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。 析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰の水で再洗浄、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。 得られたPVB−1の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%、平均残存水酸基量は30モル%であった(表1参照)。

    (製造例2)
    還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10Lのガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−2:粘度平均重合度1700、けん化度92モル%)723gを仕込み(PVA濃度8.2%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。 次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド453gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。 その後、60分かけて65℃まで昇温し、65℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。 析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰の水で洗浄、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−2)を得た。 得られたPVB−2の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は74モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は6モル%、平均残存水酸基量は20モル%であった(表1参照)。

    (製造例3)
    還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10Lのガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−3:粘度平均重合度1700、けん化度89モル%)723gを仕込み(PVA濃度8.2%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。 次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド430gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。 その後、60分かけて58℃まで昇温し、58℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。 析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰の水で洗浄し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−3)を得た。 得られたPVB−3の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は9モル%、ビニルアルコール基の含有量(平均残存水酸基量)は22モル%であった(表1参照)。

    (製造例4)
    還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10Lのガラス製容器に、イオン交換水8100g、ポリビニルアルコール(PVA−4:粘度平均重合度1700、けん化度86モル%)723gを仕込み(PVA濃度8.2%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。 次に、120rpmで攪拌下、5℃まで約30分かけて徐々に冷却後、ブチルアルデヒド427gと20%の塩酸540mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。 その後、60分かけて66℃まで昇温し、66℃にて110分間保持した後、室温まで冷却した。 析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、さらに過剰の水で洗浄し、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−4)を得た。 得られたPVB−4の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は68モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は12モル%、ビニルアルコール基の含有量は20モル%であった(表1参照)。

    (製造例5)
    PVB−1の調製において、ブチルアルデヒドの使用量を395gに変更した以外は同様にしてPVB−5を得た。 得られたPVB−5の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は71モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%、ビニルアルコール基の含有量は28モル%であった(表1参照)。

    (製造例6)
    PVB−4の調製において、ブチルアルデヒドの使用量を440gに変更した以外は同様にしてPVB−6を得た。 得られたPVB−6の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は70モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は12モル%、ビニルアルコール基の含有量は18モル%であった(表1参照)。

    (製造例7)
    PVB−1の調製において、ブチルアルデヒドの使用量を350gに変更した以外は同様にして、PVB−7を得た。 PVB−7の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は63モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%、ビニルアルコール基の含有量は36モル%であった(表1参照)。

    (製造例8)
    PVB−2の調製において、ブチルアルデヒドの使用量を467gに変更した以外は同様にして、PVB−8を得た。 PVB−8の特性をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は74モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は9モル%、ビニルアルコール基の含有量は17モル%であった(表1参照)。

    (製造例9)
    PVB−1の調製において、ブチルアルデヒドの使用量を524gに変更した以外は同様にして、PVB−9を得た。 PVB−9をJIS K6728に従って測定したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は82モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%、ビニルアルコール基の含有量は17モル%であった(表1参照)。

    (実施例1)
    ポリビニルアセタール−1(PVB−1:PVB−2=80:20の質量比で混合したもの)100質量部、ひまし油(グリセリントリカルボン酸エステルであって、カルボン酸エステル部分の質量%がリシノール酸エステルであり、13質量%がパルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステルのいずれかであり、1質量%がその他のカルボン酸エステルで構成;1分子あたりの水酸基の数2.6個、水酸基価160mgKOH/g、水酸基価に基づく平均分子量910)50質量部をラボプラストミルで溶融混練(150℃、5分)して組成物−1を得た。 組成を表4に示す。 組成物−1を熱プレス(150℃、30分)して、10cm×10cm×0.8mmのシート−1を得た。 含水量を0.5%に調整(20℃、30%RHの環境下で24時間保持)したシート−1を、10cm×10cm×3.2mmのガラス2枚に挟んでバキュームバック内で仮圧着後、オートクレーブで140℃、1.2MPa、40分間処理して合わせガラス−1を得た。

    (ポリビニルアセタール−1のHPLCによる分析)
    (1)分析サンプルの調整 耐圧試験管にポリビニルアセタール100mg、エタノール(99.5%)20mLを量りとり、完全に密閉した後、振とう式恒温水槽に浸漬して、振とうしながら70℃、4時間処理して溶解させた(3.5時間の時点で、完全に溶解していた)。 室温で放冷後、孔径0.45μm、直径13mmの親水化PTFEメンブレンフィルターでろ過して、HPLC検液を得た。

    (2)HPLC測定 HPLCシステムとして(株)島津製作所製「Prominence」、HPLCカラムとして(株)島津製作所製「Shim−pack G−ODS(4)」(内径4mm、長さ1cmのODSカラム)を使用し、また検出器として(株)島津製作所製「ELSD−LT II」を使用した。 HPLC分析は、以下の方法で行った。 HPLCシステム内部をエタノール/水=4/1(v/v)混合溶剤(以下、移動相(A)と称する)で満たした状態で、サンプルには、ポリビニルアセタール0.5質量%エタノール溶液30μLを注入した。 カラム温度45℃、流速0.4mL/min、の条件下において、サンプル注入直後から20分かけて、移動相中のエタノールの割合を一定速度(5vol%/分)で増加させ、20分後(この時点で、移動相(A)は完全にエタノールに置換される)からは、エタノール単独を移動相とした。 検出器のネブライザーガスとして窒素ガスを使用した(ガス供給圧力=350kPa、噴霧温度35℃)。 得られたデータの解析を、(株)島津製作所製「LabSolutions LC(ver. 5.42 SP3)」を使用し、下記条件で解析した。
    Width:試料注入直後からは30秒、5分後から終了までは200秒 Slope:50μm
    Drift:0μV/分 T. DBL:0分 最小面積:10,000カウント なおベースラインの決定は、ポリビニルアセタールを溶解すること以外は前記分析サンプルの調整と同様の方法で準備した空試験液を分析して行った。 結果を表2に示す。 なお、本分析ではポリビニルアセタールに由来する第一のピーク、第二のピーク以外のピークは検出されなかった。


    (エタノール溶液のヘキサン滴定および脱イオン水滴定分析)
    1gのポリビニルアセタール−1をエタノール100gに溶解して透明な溶液を得て、23℃で該溶液を撹拌下でヘキサンにより滴定したところ、滴下量が181mLになった時点で溶液が白濁した。 一方、1gのポリビニルアセタール−1をエタノール100gに溶解して透明な溶液を得て、23℃で該溶液を撹拌下で脱イオン水により滴定したところ、滴下量が28mLになった時点で溶液が白濁した。 結果を表3に示す。

    (ポリビニルアセタール−1をメタノールに溶解させた場合の未溶解分の分析)
    また、1gのポリビニルアセタール−1をメタノール100gに溶解させた場合の未溶解分は、19%であった。 未溶解分は、メタノール100gを撹拌下、各粒子または各塊の長径が3mm以下である1gのポリビニルアセタール−1を塊状にならないように添加し、25℃で72時間処理した後、得られた溶液(未溶解分を含む)をJIS P3801の規定における5種Aのろ紙を使用して差圧0.010±0.002MPaで減圧ろ過し、ろ紙上に残存する成分の乾燥質量を測定することで求めた。 結果を表3に示す。

    (ポリビニルアセタール−1をクロロホルムに溶解させた場合の未溶解分の分析)
    一方、1gのポリビニルアセタール−1をクロロホルム100gに溶解させた場合の未溶解分は0%であった。 未溶解分は、クロロホルム100gを撹拌下、各粒子または各塊の長径が3mm以下である1gのポリビニルアセタール−1を塊状にならないように添加し、25℃で72時間処理した後、得られた溶液(未溶解分を含む)をJIS P3801の規定における5種Aのろ紙を使用して差圧0.010±0.002MPaで減圧ろ過した場合における、ろ紙上に残存する成分の乾燥質量を測定することで求めた。 結果を表3に示す。

    (組成物からなるシートの評価:tanδ)
    シート−1を3mm幅で切断し、ティーエイインスツルメント社製、RSA−G2を使用して動的粘弾性測定を行った(引っ張りモード、周波数0.3Hz、−20℃から測定を開始し、3℃/分で昇温した。100℃まで昇温したところで測定を終了した)。 測定範囲内でtanδが最大になる温度(tanδのピーク温度、すなわち本発明におけるガラス転移温度)26℃であった。 結果を表5に示す。

    (組成物からなるシートの評価:吸水時の白濁、ブリード)
    シート−1を、23℃、90%RHで2週間静置した後の白濁の有無およびブリードの有無を確認したところ、いずれも見られなかった。 結果を表5に示す。

    (合わせガラスの評価:ヘイズ)
    スガ試験機社製、ヘーズメーター(HZ−1)を使用し、合わせガラス−1のヘイズを測定したところ0.6%であった。 結果を表5に示す。

    (合わせガラスの評価:光照射時の曇り)
    合わせガラス−1の面に対して垂直な方向、20cmの距離から2700ルーメンのライトを照射し、光が照射されている部分の曇り発生有無を合わせガラス斜め上方から目視で確認したところ、曇りは発生していなかった。 結果を表5に示す。

    (実施例2〜20、比較例1〜4)
    実施例1と同様の方法で、表4に示す組成でポリビニルアセタールを混合して、ポリビニルアセタール−2〜20、比較ポリビニルアセタール−1〜4を得、HPLC測定を行った。 結果を表2に示す。 同様に、エタノールに溶解させた後のヘキサン、脱イオン水による滴定、メタノール、クロロホルムに溶解させた場合の未溶解分の測定を実施した。 結果を表3に示す。 さらに、実施例1と同様の方法で、表4に示す組成でポリビニルアセタール、水酸基を有する化合物、水酸基を有さない化合物を混合して、組成物−2〜20、比較組成物−1〜4を得た。 さらに、これらの組成物から、実施例1と同様にしてシート−2〜20及び比較シート−1〜4、並びに、合わせガラス−2〜20及び比較合わせガラス−1〜4を得た。 得られたシート、合わせガラスを実施例1と同様の方法で評価した。 結果を表5に示す。 なお、これら実施例、比較例で使用するポリビニルアセタールの分析では、ポリビニルアセタールに由来する第一のピーク、第二のピーク以外のピークは検出されなかった。


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