熱可塑性ポリマー溶液の製造方法

申请号 JP2007505941 申请日 2006-02-28 公开(公告)号 JPWO2006093122A1 公开(公告)日 2008-08-07
申请人 旭化成ケミカルズ株式会社; 发明人 横山 宏; 宏 横山; 宗明 網中; 宗明 網中;
摘要 本発明は、ポリエステル樹脂等の熱可塑性ポリマー及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物を効率良く溶解して熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法を提供することを目的とする。熱可塑性ポリマーを溶融状態にて原料供給口から装置内部に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら溶剤の蒸気と 接触 させることを特徴とする、熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法。
权利要求
  • 熱可塑性ポリマーを溶融状態にて原料供給口から装置内部に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら溶剤の蒸気と接触させることを特徴とする、熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法。
  • 該装置が、該支持体に沿って流下する該熱可塑性ポリマーの表面積をS1、該支持体と該熱可塑性ポリマーが接触している面積をS2とすると、S1/S2>1の関係を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法。
  • 該熱可塑性ポリマーが該支持体に沿って流下しながら溶剤の蒸気と接触する際の、流下する距離が0.5m以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法。
  • 該熱可塑性ポリマーが、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、セルロース系樹脂及びキトサン系樹脂からなる群から選ばれる一種以上を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法。
  • 溶剤の蒸気に含まれる少なくとも1種の成分が、該熱可塑性ポリマーの分子量低下剤として作用し、該熱可塑性ポリマーが支持体に沿って流下しながら解重合反応することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性ポリマー解重合物の溶液を製造する方法。
  • 溶剤の蒸気にアルキレングリコールを含有することを特徴とする、請求項5に記載の熱可塑性ポリマー解重合物の溶液を製造する方法。
  • 請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法によって得られた化合物を、ポリマー原料として再利用することを特徴とする、熱可塑性ポリマーのリサイクル方法。
  • 重合中間体を溶融状態にて原料供給口から溶融重合装置内部に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら重縮合ポリマーを製造する重合装置の洗浄方法であって、該重合装置の内部に残存するポリマー、重合中間体及びこれらの変性物を該支持体の表面に沿わせて流下させながら、溶剤の蒸気と接触させることによって上記残存物を除去することを特徴とする、該重合装置の洗浄方法。
  • 該支持体に沿って流下する該重縮合ポリマーの表面積をS1、該支持体と該重縮合ポリマーが接触している面積をS2とすると、S1/S2>1の関係を満たすことを特徴とする、請求項8に記載の重合装置の洗浄方法。
  • 重縮合ポリマーの製造後、該重合装置の内部の温度を該重縮合ポリマーが結晶化する温度以上に保持した状態で内部に溶剤の蒸気を導入することを特徴とする、請求項8または9に記載の重合装置の洗浄方法。
  • 該重合装置の内部に残存するポリマー、重合中間体及びこれらの変性物が該支持体に沿って流下しながら溶剤の蒸気と接触する際の、流下する距離が0.5m以上であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の重合装置の洗浄方法。
  • 溶剤の蒸気に含まれる少なくとも1種の成分が、該重合装置の内部に残存するポリマー、重合中間体及びこれらの変性物の分子量低下剤として作用し、上記残留物が支持体に沿って流下しながら解重合反応することを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の重合装置の洗浄方法。
  • 溶剤の蒸気に、100℃〜300℃の範囲の温度で加熱されたアルキレングリコールを含むことを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載の重合装置の洗浄方法。
  • 说明书全文

    本発明は、塗料、ポリマーパウダーなどの原料となる熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法に関する。 また、重合中間体を溶融状態にて原料供給口から溶融重合装置内部に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら重縮合ポリマーを製造する重合装置に残留するポリマー、重合中間体及びこれらの変性物の洗浄方法に関する。

    本願は、2005年3月1日に出願された日本国特許出願第2005−055258号、2005年3月1日に出願された日本国特許出願第2005−055262号、2005年3月1日に出願された日本国特許出願第2005−055263号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。

    ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略す)等のポリエステル樹脂に代表される種々の熱可塑性ポリマーは、優れた耐熱性、機械的物性等の特徴を有する。 ポリエステル樹脂は、近年はリサイクル可能な環境適合性材料としても注目されており、繊維、磁気テープ、包装フィルム、シートや、様々な用途の射出成形体や、飲料容器製造用のプリフォーム等に広く用いられている。
    また、熱可塑性ポリマー及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物を溶剤に溶解して得られる熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液は、塗料、接着剤、コーティング剤、バインダ−などとして用いることができる。 またそれ以外にも、例えばポリエステルを例に取ると、ポリエステルを一旦有機溶剤に溶解し、その溶液を中に混合分散させた後、該有機溶剤を除去して水分散型の組成物をコーティング剤として用いたり、ポリエステル溶液を適当な貧溶媒中に分散させポリエステルを析出した後、得られた粉末を乾燥してポリエステル粉末を製造したりすることが行われている。

    ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を溶剤に溶解する方法としては、固体状態のポリマーを粗く寸断した状態又はペレット状に加工した状態のポリマーを溶剤に投入して溶解する方法及び溶融状態のポリマーを直接溶剤に投入し、攪拌して溶解する方法があるが、固体状態のポリマーを溶解する方法では、溶剤を加熱して溶解速度を高めても溶解速度は十分ではないため、溶解に要する時間が長くなるという問題がある。 また、溶融状態のポリマーを溶剤に投入して溶解する方法では、溶剤中に投入した溶融ポリマーが塊状となって溶解速度が遅くなったり、溶解攪拌中に流動性が悪い部分に固化堆積して溶解性が低下したりするなどの問題がある。

    特許文献1には、前記のような欠点を解消するために、溶解物の攪拌下において、溶解物の全体量に対する液循環量が0.3時間-1以上となるように溶解物を循環するか、又は溶解物の全体量に対する不活性ガスの投入量が0.1時間-1以上となるように不活性ガスを溶解物中に吹き込むことにより、飽和共重合ポリエステル樹脂を溶剤に溶解することを特徴とする飽和共重合ポリエステル樹脂溶液の製造方法が記載されている。
    しかしながら、上記の方法によっても依然として溶解速度はそれほど高くならず、効率的な方法ではない。

    また、熱可塑性ポリマー、特にPETに代表される重縮合ポリマーは、上記のように多用途に大量に用いられた結果、使用済みのポリマーが大量に発生している。 特に使用済みの飲料用ボトルの発生が著しく、その処理は大きな社会問題となっており、このため、使用済みのポリマーを再利用するための技術開発が種々なされている。

    PET樹脂の再利用の方法としては、いくつかの方法がある。
    一つは、分別収集された廃PETボトルから出来るだけ不純物を取り除いた後、多くの工程を経てペレットやフレーク状にして繊維原料としてリサイクルすることである。
    他の方法は、PET樹脂をケミカルリサイクルする方法である。

    現在まで開発されたPETボトルのケミカルリサイクルでは、殆どが加溶媒分解を利用するもので、溶媒として水を用いる加水分解では、テレフタル酸(以下、「TPA」と略す)とエチレングリコール(以下、「EG」と略す)に分解する方法、溶媒としてアルコール類を用いてアルコリシスによってEGを得る方法がある。

    また、ポリエステル廃棄物をモノマーに変換・回収し、このモノマーを原料にして再度重合反応によってポリエステルを製造し再利用する方法も提案されている。 この方法は、基本的にロスの無い、化合物の循環再使用が可能であり、資源の再利用が可能となる。
    この方法について、ポリエステル樹脂として例えばポリエチレンテレフタレート樹脂を例に挙げて説明すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂を解重合して得たモノマーをリサイクル使用する方法を開示した文献としては下記の特許文献2〜5を挙げることができる。

    特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートを加熱、溶融して解重合を行うに際し、押出機と、この押出機の出口に続いて設けられた反応器とを使用して、前記ポリエチレンテレフタレートの加熱・溶融・解重合反応を実施するとともに、前記押出機の出口以降においてグリコールを投入し、かつ前記押出機と反応器との間に設けられたミキサによって前記グリコールをポリエチレンテレフタレートと混合させることを特徴とするポリエチレンテレフタレートの解重合方法が記載されている。

    特許文献3には、ポリアルキレンテレフタレートをメタノール解重合して得られたリサイクルされたテレフタル酸ジメチルを加水分解して得られたテレフタル酸を、ポリエステルを構成する全酸成分を基準として70重量%以上使用し、特定の触媒を用いてグリコール中で加熱することにより得られた析出物を用いて重縮合反応させることを特徴とする、ポリエステルの製造方法が記載されている。

    特許文献4には、(a):ポリエステル廃棄物を、粉砕・前処理する工程、(b):工程(a)で処理したポリエステル廃棄物を、触媒の存在下、アルキレングリコールで解重合させる工程、(c):工程(b)で得られた解重合物を、触媒の存在下にメタノールで置換エステル化反応させて粗テレフタル酸ジメチルを得る工程、(d):工程(c)で得られた粗テレフタル酸ジメチルを再結晶化処理し、メタノール洗浄及び/又は蒸留により精製を行って高純度テレフタル酸ジメチルとして回収する工程及び(e):工程(d)で得られた精製テレフタル酸ジメチルを、その2モル倍以上の大過剰のアルキレングリコールと常圧下、無触媒で反応させて、ビス−β−ヒドロキシアルキレンテレフタレートを主成分とし、かつ末端にヒドロキ� �アルキレンエステル基を含む低重合体混合物として回収する工程を逐次的に行って、ビス−β−ヒドロキシアルキレンテレフタレートを主成分とし、かつ末端にヒドロキシアルキレンエステル基を含む低重合体混合物として回収することを特徴とする、ポリエステル廃棄物のリサイクル方法が記載されている。

    特許文献5には、使用済みのポリエチレンテレフタレート廃棄物に粉砕、洗浄、異物分別等の前処理を施して粗製ポリエチレンテレフタレートフレークを得る前処理工程と、得られた粗製ポリエチレンテレフタレートフレークに過剰の精製及び/又は粗製のエチレングリコールを加えて触媒の存在下で解重合を行い粗製ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を得る解重合工程と、得られた粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液中からポリエチレンテレフタレート樹脂以外の異物を除去して精製ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレートを得るBHET精製工程と、得られた精製BHETを原料として溶融重縮合し高純度ポリエチレンテレフタレートポリマーを得る方法が記載されている。

    上記の解重合反応においては、反応速度を大きくすると共に解重合触媒の使用量を低減させることが、コスト面及び反応効率面から重要であるが、上記の各特許文献に記載のものは解重合反応を低コストでかつ効率良く行うことができる方法および装置を提供するものではなかった。

    一方、上記したようにPETに代表される種々の重縮合ポリマーは、飲料容器製造用のプリフォーム等に広く用いられている。 このような容器には、上記のような特性と共に、内容物の味に影響を与えないことも要求されている。 このため、用いる重縮合ポリマーとしては重合度が高く、着色しておらず、アセトアルデヒド等の不純物含有量が少ない高品質のものが要求されている。

    さらに近年では高品質化以外にも、用途の多様化に伴い、より高度な要求を満たす為に異種モノマーを共重合したり、改質剤を配合したりしてポリマーの欠点を補い、特性を改良する試みもある。
    例えば、PET製容器では、結晶化速度を高め、ハイサイクル成形や、成形後のボトルの口栓部を効率よく結晶化させる目的で、ポリ(エチレンテレフタレート・エチレンテレフタルアミド)共重合体(特許文献6参照)や、ポリオレフィンを配合する方法(特許文献7参照)。 PETの透明性、成形性および耐熱圧性を改良する目的でポリエチレンナフタレートを溶融混練する方法(特許文献8参照)等が開示されている。

    しかしながら重縮合ポリマーに各種改質剤を溶融混練する際、通常ポリマーの熱分解がおこるため、分子量の低下や、着色や、分解生成物の蓄積などの品質低下が避けられない問題がある。 溶融混練工程を無くすために、重縮合ポリマーを製造する反応系中に改質剤を添加する方法も考えられるが、多くの場合、改質剤が重縮合ポリマーの重合温度で熱劣化するため、特性を改良する元のポリマーに比べて着色や、分解生成物の蓄積など品質を低下させてしまう。 異種モノマーを共重合する方法であっても、融点や熱分解温度がモノマー毎に異なるため、耐熱性の低い成分が重合条件で熱劣化して、特性を改良する元のポリマーに比べて分子量の低下や、着色や、分解生成物の蓄積など品質を低下させてしまう問題がある。
    このように異種モノマーを共重合したり、改質剤を配合したりしてポリマーの特性の改良を試みた場合、元のポリマーに比べて品質が大幅に悪化するため、製造技術の改良が求められていた。

    本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、重縮合ポリマーの製造方法において、重合中間体を溶融状態にて原料供給口から重合器に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら減圧下にて重合させる、新規な原理に基づく重合方法を開発し、従来公知の重合方法では到底なしえなかった低温度での溶融重合が可能になることを見出した(特願2004−345246号、特願2004−345241号)。 本重合方法に最も好ましく使用される重合器は、重合器の内部に径の小さいワイヤー状の支持体が多数配置された構造であること及び、攪拌装置を有さない構造であるという特徴を有しており、本重合器を使用して重合を行った後運転停止した際、重合器の内部に重合中間体、原料及びこれらの変性物が残存し易い問題がある。

    従来の攪拌槽型の重合装置の洗浄方法として、重合装置内にグリコール類を満たし、グリコール類の沸点近くの温度に加熱しながら攪拌することで残留ポリマー等を解重合し除去する方法(特許文献9参照)が開示されているが、このような方法を本重合器に適用しようとすると、重合器内部の支持体に多量の残留ポリマー等が保持されているうえ、攪拌の手段が無いために、残留ポリマーを解重合するには極めて長い時間を要するという問題があった。

    特開2001−261843号公報

    特開2004−196880号公報

    特開2003−160656号公報

    特開2002−60543号公報

    特開2000−169623号公報

    特開2003−327812号公報

    特開2004−263195号公報

    特開2000−17162号公報

    特開平5−295392号公報

    本発明は、ポリエステル樹脂等の熱可塑性ポリマー及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物を効率良く溶解して熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法を提供することを目的とする。

    また本発明は、熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法によって得られた化合物を、ポリマー原料として再利用することを特徴とするリサイクル方法を提供することを目的とする。

    さらに本発明は、種々の重縮合ポリマーについて、重合度が高く、着色しておらず、熱分解により発生する不純物の含有量が少ない高品質のポリマー及びその成形体を溶融重縮合によって低コストで製造することができる溶融重合器において重合運転を停止した際、次回の運転に備えて溶融重合器の内部に残存するポリマー、重合中間体、原料及びこれらの変性物を効率良く取り除くための溶融重合器の洗浄方法を提供することを目的とする。

    本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、熱可塑性ポリマーを溶融状態にて原料供給口から溶解器に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら溶剤の蒸気と接触させることによって熱可塑性ポリマー及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物を短時間で効率良く溶剤に溶解できることを見出した。

    また本発明者らは、熱可塑性ポリマーのうち特に重縮合ポリマーを解重合するに際して、重縮合ポリマーを解重合器としても機能する溶融器に、溶融状態にて原料供給口から供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら分子量低下剤の蒸気と接触させ解重合させるという構成を採用することにより、従来公知の方法ではなし得なかった効率的な解重合が可能になることを見出した。

    さらに本発明者らは、重合中間体を溶融状態にて原料供給口から溶融重合器に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて流下させながら減圧下にて重合するタイプの溶融重合器において、溶融重合器の内部に残存するポリマー、重合中間体、原料及びこれらの変性物を分子量低下剤の蒸気と反応させることによって、効率よく取り除くことができることを見出して本発明を為すに至った。

    すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
    (1)熱可塑性ポリマーを溶融状態にて原料供給口から装置内部に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら溶剤の蒸気と接触させることを特徴とする、熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法、
    (2)該装置が、該支持体に沿って流下する該熱可塑性ポリマーの表面積をS1、該支持体と該熱可塑性ポリマーが接触している面積をS2とすると、S1/S2>1の関係を満たすことを特徴とする、(1)に記載の熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法、
    (3)該熱可塑性ポリマーが該支持体に沿って流下しながら溶剤の蒸気と接触する際の、流下する距離が0.5m以上であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法、
    (4)該熱可塑性ポリマーが、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、セルロース系樹脂及びキトサン系樹脂からなる群から選ばれる一種以上を含むことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法、
    (5)溶剤の蒸気に含まれる少なくとも1種の成分が、該熱可塑性ポリマーの分子量低下剤として作用し、該熱可塑性ポリマーが支持体に沿って流下しながら解重合反応することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性ポリマー解重合物の溶液を製造する方法、
    (6)溶剤の蒸気にアルキレングリコールを含有することを特徴とする、(5)に記載の熱可塑性ポリマー解重合物の溶液を製造する方法、
    (7)(1)〜(6)のいずれかに記載の熱可塑性ポリマーの溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する方法によって得られた化合物を、ポリマー原料として再利用することを特徴とする、熱可塑性ポリマーのリサイクル方法、
    (8)重合中間体を溶融状態にて原料供給口から溶融重合装置内部に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら重縮合ポリマーを製造する重合装置の洗浄方法であって、該重合装置の内部に残存するポリマー、重合中間体及びこれらの変性物を該支持体の表面に沿わせて流下させながら、溶剤の蒸気と接触させることによって上記残存物を除去することを特徴とする、該重合装置の洗浄方法、
    (9)該支持体に沿って流下する該重縮合ポリマーの表面積をS1、該支持体と該重縮合ポリマーが接触している面積をS2とすると、S1/S2>1の関係を満たすことを特徴とする、(8)に記載の重合装置の洗浄方法、
    (10)重縮合ポリマーの製造後、該重合装置の内部の温度を該重縮合ポリマーが結晶化する温度以上に保持した状態で内部に溶剤の蒸気を導入することを特徴とする、(8)または(9)に記載の重合装置の洗浄方法、
    (11)該重合装置の内部に残存するポリマー、重合中間体及びこれらの変性物が該支持体に沿って流下しながら溶剤の蒸気と接触する際の、流下する距離が0.5m以上であることを特徴とする、(8)〜(10)のいずれかに記載の重合装置の洗浄方法、
    (12)溶剤の蒸気に含まれる少なくとも1種の成分が、該重合装置の内部に残存するポリマー、重合中間体及びこれらの変性物の分子量低下剤として作用し、上記残留物が支持体に沿って流下しながら解重合反応することを特徴とする、(8)〜(11)のいずれかに記載の重合装置の洗浄方法、
    (13)溶剤の蒸気に、100℃〜300℃の範囲の温度で加熱されたアルキレングリコールを含むことを特徴とする、(8)〜(12)のいずれかに記載の重合装置の洗浄方法。

    本発明の熱可塑性ポリマー溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物溶液の製造方法及び、重縮合ポリマーの解重合方法及び、重縮合ポリマーの重合装置の洗浄方法は次に記載する効果を奏する。
    (1)多孔板で熱可塑性ポリマーを分配することで多量のポリマーを効率良く、ムラなく処理することができる。 ポリマーは支持体上に保持されているので、表層部の面積を大きくすることができ、ポリマーが溶剤の蒸気と接触しやすく、効率よく溶解が進行する。 また、各支持体上に保持されたポリマー同士が合体して塊状になることがないので処理効率を低下させることがない。
    (2)熱可塑性ポリマーを支持体に沿って重落下させることで、溶解及び/または解重合したポリマーは低粘度になって速やかに落下するので、処理量を大きくすることができる。 また表層部から先に溶解されたポリマー等の溶液は、落下しながら内側のまだ溶解(膨潤)が不十分で比較的高粘度のポリマーの表面に沿って連続的に流下するので、内側のポリマーはせん断力が加わって伸張され、効率良く溶解及び/または解重合される。
    (3)溶剤の蒸気と接触させることによって、少量の溶剤でも多量のポリマーを容易に溶解でき、高粘度〜低粘度の任意の溶液を製造することができる。 該溶剤の蒸気に含まれる少なくとも1種の成分を、熱可塑性ポリマーの分子量低下剤として作用する成分とすることで、効率よく解重合させることが出来る。 (4)溶解速度及び/または解重合速度を大きくすることができるため、溶解時間及び/または解重合時間が短く物性低下や熱劣化物の生成や熱劣化物による装置の汚染も少ない。

    本発明で用いる溶解器の一例を示す模式図である。

    本発明で用いる多孔板への供給方法の一例を示す模式図である。

    本発明で用いる解重合器の一例を示す模式図である。

    本発明で用いる多孔板への供給方法の一例を示す模式図である。

    本発明で用いる多孔板への供給方法の一例を示す模式図である。

    本発明で用いる不活性ガス吸収装置及び解重合器の模式図である。

    本発明で用いる重合器の一例を示す模式図である。

    本発明で用いる多孔板への供給方法の一例を示す模式図である。

    本発明で用いる多孔板への供給方法の一例を示す模式図である。

    本発明で用いる不活性ガス吸収装置及び重合器の模式図である。

    本発明の洗浄方法で用いる重合器及び成形装置の一例を示す模式図である。

    符号の説明

    1 移送ポンプ 2 原料供給口 3 多孔板 4 のぞき窓 5 支持体及び落下ポリマー 6 不活性ガス供給口 7 減圧排気口 8 排出ポンプ 9 排出口10 溶解器あるいは解重合器あるいは重合器N1 移送ポンプN2 原料供給口N3 多孔板N5 支持体及び落下ポリマーN6 不活性ガス導入口N7 減圧排気口N8 排出・移送ポンプN10 不活性ガス吸収装置

    まず、本発明の熱可塑性ポリマー溶液及び/または熱可塑性ポリマーの解重合物溶液の製造方法における、(A)溶解方法及び解重合方法及び重合器の洗浄方法、(B)熱可塑性ポリマー、(C)溶剤及び分子量低下剤、(D)溶解器と溶解方法(E)解重合器と解重合方法(F)本発明の洗浄方法が好ましく使用できる重合器とその洗浄方法について具体的に説明する。

    (A)溶解方法及び解重合方法及び重合器の洗浄方法 本発明における溶解方法及び/または解重合方法は、熱可塑性ポリマーを溶融状態にて原料供給口から溶解器に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、装置内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら溶剤の蒸気及び/または分子量低下剤の蒸気と接触させて、該熱可塑性ポリマーを溶解及び/または解重合する方法である。
    これにより、支持体に沿って落下する熱可塑性ポリマーが各支持体に分配されて、各支持体上に保持されたまま、装置(溶解器または解重合器または重合器)の下方に向かって溶解及び/または解重合しながら流下することで、速やかに移動する挙動を示す。

    この結果、ポリマーと溶剤の蒸気及び/または分子量低下剤の蒸気との接触面積及び流下するポリマー溶液によって発生するせん断力による攪拌効果が飛躍的に増大し、溶解及び/または解重合の処理速度が飛躍的に増大する。
    処理される熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性ポリマーの溶液及び/又は熱可塑性ポリマーの解重合物の溶液を製造する場合には、重合反応終了後の溶融樹脂をそのまま用いるか、ペレット化あるいはシート化された固体状態のもの、あるいは使用済みの成形品を回収し、必要に応じて予備洗浄したリサイクル用原料を溶融したものを用いることができる。 また、重合器の洗浄方法の場合は該重合器で製造され、該重合器の運転停止時に重合器の内部に残存している重縮合ポリマーが処理の対象になる。

    我々はさらに検討をすすめ、該溶解器の多孔板の孔を、1つのブロックあるいは、少なくとも2つ以上のブロックに分けて、ブロック毎に任意の供給量及び種類のポリマー及び/または溶剤を同時に供給して溶解することもできるようにした。
    この結果、支持体の構造及び配置によって、多孔板の孔の各ブロックから供給したポリマーの流れを互いに合流させて落下させることにより攪拌羽根のような攪拌機構を有さないにも関らず、溶解及び/または解重合反応が促進され、短時間かつ低コストでポリマー溶液及び/又はポリマーの解重合物の溶液を製造することも可能になった。

    本発明で製造されるポリマー溶液には、溶剤に溶解するポリマー以外の改質剤を含有することもできるが、このような改質剤を他のブロックから供給して熱可塑性ポリマーと同様に多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら溶解させることによってポリマー溶液中に改質剤を配合することもできる。
    このような改質剤の例としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ケトン樹脂等があり、これらを単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。 また、必要に応じて、エポキシ化油、ジオクチルフタレートなどの可塑剤を適宜加えることができる。 さらに、分子量低下剤、着色顔料、垂れ防止剤、表面調整剤、架橋促進触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、抗酸化剤などの着色剤や安定剤等の添加剤を必要に応じて使用することができる。

    もちろん、各ブロックから供給するポリマーの種類を同一にすることも可能であって、ブロック毎に供給量を設定することによって、処理量の変動に対応することができる。
    熱可塑性ポリマーが支持体に沿って流下しながら溶剤の蒸気と接触する際の流下する距離は0.5m以上とすることが好ましい。 落下距離が短いと溶解及び/又は解重合が不十分であり、高粘度のポリマーのままで流下して支持体から落下した後で合体して塊状になってしまうため、処理効率が著しく低下する。 流下する距離は特に制限は無いが、処理効率を高めるうえで好ましくは0.5から50mの範囲であり、さらに好ましくは1〜20mの範囲であり、特に好ましくは2〜15mの範囲である。

    (B)熱可塑性ポリマー 本発明において、熱可塑性ポリマーの具体例としては、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミド及び脂肪族ポリカーボネート等の脂肪族炭化水素基が該官能基の結合を介して結合している構造を有するポリマー、脂肪族芳香族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリアミド及び脂肪族芳香族ポリカーボネート等の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が該官能基の結合を介して結合している構造を有するポリマー、および、芳香族ポリエステル、芳香族ポリアミド等の芳香族炭化水素基が該官能基の結合を介して結合している構造を有するポリマーが挙げられる。 また、それ以外にも種々のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、セルロース系樹脂、キトサン系樹脂等の熱可塑性ポリマーが挙げられる。

    上記の熱可塑性ポリマーはホモポリマーであっても良いし、コポリマーであっても良い。 またエステル結合、アミド結合、カーボネート結合等の異なる結合及びポリオレフィン骨格、ポリスチレン骨格、ポリアクリル酸系骨格等の異なる骨格がランダム又はブロック状に存在するコポリマーであっても良い。 このようなコポリマーの具体例としては、ポリエステルカーボネート及びポリエステルアミド等が挙げられる。

    (C)溶剤及び分子量低下剤 本発明で用いる溶剤及び/又は分子量低下剤は、熱可塑性ポリマーを溶解及び/または解重合することができる化合物であれば、如何なるものを用いても良い。 分子量低下剤が溶剤の働きを兼ねることも可能である。 例えば、脂肪族、脂環族、芳香族系炭化水素化合物、脂肪族エステル系化合物、アルコール系化合物、エーテル系化合物、ケトン系化合物、ハロゲン系炭化水素化合物などの有機溶剤の1種以上、或いは、水、水に有機物を混合した水溶液などであり、これによって限定されるものではない。 以上の溶剤の中でも、ヘキサン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、シクロへキサン、シクロヘキセンなどの脂環族系炭化水素、キシレン、トルエンなどの芳香族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどの脂肪族エステル系化合物、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール系化合物、ジエチルエーテルなどのエーテル系化合物、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系化合物等の各種有機溶剤及びその混合物が好ましい。

    分子量低下剤の中でも、重縮合ポリマーの解重合に用いる分子量低下剤としては、重縮合ポリマーの種類に応じて用いられている公知のものを用いることができる。 例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングルコールなどのアルキレングリコール類や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコールをはじめ、炭素数が1〜30の範囲のアルコール類や水から選ばれる1種または2種以上からなる混合物を用いることができる。

    また、分子量低下剤と共に炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、アルコラート、アルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物およびアルコラートからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属化合物等から選ばれる解重合用触媒や、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、テトラリン、イソホロン、N-メチル-2-ピロリドンなどの重縮合ポリマーを溶解、膨潤させるための溶剤を添加しても良い。
    これらの溶剤及び/又は分子量低下剤は、液体または蒸気の状態で装置(溶解器または解重合器または重合器)の内部に供給され、支持体に沿って落下するポリマー等と蒸気の状態で接触させる。

    (D)溶解器と溶解方法 本発明における溶解器とは、熱可塑性ポリマーを溶融状態にて原料供給口から溶解器内部に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、溶解器の内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら溶剤の蒸気と接触させて溶解させることを特徴とする装置である。

    (D−1)多孔板 多孔板とは、複数の貫通孔がある板状体である。 多孔板を用いることによってポリマーの偏流を抑制するとともに溶解器内での局所滞留を防止出来、高品質で均質のポリマー溶液及び/またはポリマーの解重合物の溶液を製造出来る。 また、多孔板の孔は1つのブロックあるいは少なくとも2つ以上のブロックに分かれており、ブロック毎に任意の供給量及び種類のポリマー及び/または溶剤を同時に供給することが可能である。

    多孔板の構造について、厚みは特に限定されるものではないが、通常0.1〜300mm、好ましくは1〜200mm、さらに好ましくは5〜150mmの範囲である。 多孔板は、溶解するポリマーの供給室の圧力に耐えると共に、溶解室の支持体が多孔板に固定されている場合には、支持体及び落下するポリマー及びポリマー溶液の重量を支えるための強度が必要であり、リブ等によって補強されていることも好ましい様態の一つである。

    多孔板の孔は、通常、円状、長円状、三形状、スリット状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。 孔の断面積は、通常、0.01〜100cm であり、好ましくは0.05〜10cm であり、特に好ましくは0.1〜5cm の範囲である。 また、孔に接続するノズル等を備えることも含む。 ブロック毎に、供給物の内容に応じて形状と断面積を変えることも可能である。
    孔と孔との間隔は、孔の中心と中心の距離で通常、1〜500mmであり、好ましくは10〜100mmである。 多孔板の孔は、多孔板を貫通させた孔であっても、多孔板に管を取り付けた場合でもよい。 また、テーパー状になっていてもよい。 ポリマーが多孔板を通過する際の圧力損失が、0.1〜50kg/cm である様に孔の大きさや形状を決めることが好ましい。 また、各ブロックに属する孔の配置は目的に応じて、ランダムに配置することも、同心円状に半径方向あるいは円周方向に交互または周期的に配置することも、格子状に交互または周期的に配置することも、ブロック毎に集合させて配置することも、ブロック毎に複数の集合にして配置することも可能である。

    多孔板の孔の数に特に制限はなく、溶解温度や圧力などの条件、溶剤の量、溶解させるポリマーの分子量の範囲等によっても異なるが、通常ポリマーを例えば100kg/hr溶解する際、10〜10 個、より好ましくは50〜10 個、さらに好ましくは10 〜10 3個の孔が必要である。 ブロックの数にも特に制限はないが、通常2〜100の範囲であり、設備コストの問題から、より好ましくは2〜50の範囲であり、さらに好ましくは2〜10の範囲である。 各ブロックに属する孔の数にも特に制限はないが、通常1〜10 個、加工コストの問題から、より好ましくは1〜10 個、さらに好ましくは1〜10 個の範囲である。 ブロック毎に属する孔の数が同じであっても異なってもよい。
    多孔板の材質は、通常、ステンレススチール製、カーボンスチール製、ハステロイ製、ニッケル製、チタン製、クロム製、及びその他の合金製等の金属材質が好ましい。

    このような多孔板を通じてポリマーを吐出させる方法としては、液ヘッドまたは自重で落下させる方法、またはポンプなどを使って加圧して押し出す方法等が挙げられるが、落下するポリマー量の変動を抑えるためにギアポンプなどの計量能のあるポンプを用いて押し出すことが好ましい。
    尚、多孔板より上流側の流路にはフィルターを設けることが好ましい。 フィルターにより、多孔板の孔を閉塞する異物を除去出来る。 フィルターの種類は、多孔板の孔径以上の異物を除去出来且つ、ポリマーの通過によって破損しないよう適宜選定する。

    (D−2)支持体 多孔板の孔から吐出されたポリマーは、支持体に沿って落下する。 支持体の具体的な構造としては、「ワイヤー状」、ワイヤー状の材料を組み合わせた「チェーン状」や「格子状(金網状)」、ワイヤー状の材料をいわゆるジャングルジムのように連結した「立体格子状」、平坦あるいは曲率を有した「薄板状」、「多孔板状」などが挙げられる。 その他にもポリマーと溶剤及び/又は分子量低下剤との接触面積を高めるとともに、ポリマー中に溶存していた不純物や、溶解中の熱分解により生じた不純物等を効率的に抜き出す目的で、ポリマーの落下方向に対して凹凸のある支持体に沿わせて落下させることによって攪拌と表面更新を積極的に起こさせることが好ましく、「ポリマーの落下方向に対して凹凸のあるワイヤー状」など、ポリマーの落下を邪魔する構造のある支持体も好ましい。 これらの支持体を組み合わせて用いたり、多孔板の各ブロックからの供給物の内容に応じて適宜配置したりすることも好ましく、また目的に応じて各ブロックからの供給物の流れを支持体上で互いに合流しないように配置することも、供給物の流れを支持体上で合流させるように配置することも出来る。

    「ワイヤー状」とは、断面の外周の平均長さに対する該断面と垂直方向の長さの比率が非常に大きい材料を表すものである。 断面の面積に特に制限はないが、通常10 −3 〜10 cm の範囲であり、好ましくは10 −3 〜10 cm の範囲であり、特に好ましくは10 −2 〜1cm の範囲である。 断面の形状に特に制限はなく、通常、円状、長円状、三角形状、四角形状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。 断面の形状は長さ方向に同一であるもの、異なっているもののいずれも含む。 また、ワイヤーは中空状のものも含む。 ワイヤーは、針金状等の単一なものも、捩り合わせる等の方法によって複数組み合わせたものも含む。 ワイヤーの表面は平滑なもの、凹凸があるもの、部分的に突起等を有するものなどが挙げられる。

    「チェーン状」とは前記したワイヤー状材料よりできた輪を連結させた材料を表すものである。 輪の形状は円形、楕円形、長方形、正方形等が挙げられる。 連結のさせ方は一次元、二次元、三次元いずれも含む。

    「格子状(金網状)」とは前記したワイヤー状の材料を格子状に組み合わせた材料を表すものである。 組み合わせるワイヤーは直線状の場合も曲率している場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。 格子状(金網状)の材料を面に対して垂直方向より投影した際の、材料と空間との面積比は特に制限はないが、通常1:0.5〜1:1000の範囲であり、好ましくは1:1〜1:500の範囲であり、特に好ましくは1:5〜1:100の範囲である。 面積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど空間の比率が大きくなることが好ましい。

    「立体格子状」とは、ワイヤー状の材料をいわゆるジャングルジムのように立体的な格子状に三次元に組み合わせた材料を表すものである。 組み合わせるワイヤーは直線状であっても、曲率している場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。

    「ポリマーの落下方向に凹凸が付いたワイヤー状」とは、ワイヤーに丸断面や多角形断面の棒状物を直角に取り付けたものや、ワイヤーに円盤状物あるいは円筒状物を取り付けたものなどである。 凹凸の段差は5mm以上のものが好ましい。 具体的な例としては、直径がワイヤー径より5mm以上大きく100mm以下で、厚みが1〜50mmの円盤の中心をワイヤーが貫通し、該円盤の間隔が1〜500mmである円盤付きワイヤー等が挙げられる。

    溶解器内に設置された支持体の体積と、溶解器の内容積との比には特に制限はないが、通常1:0.5〜1:10 の範囲であり、好ましくは1:10〜1:10 の範囲であり、特に好ましくは1:50〜1:10 の範囲である。 支持体の体積:溶解器の内容積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど溶解器の内容積の比率が大きくなることが好ましい。

    支持体は形状によって単数設ける場合と複数設ける場合とを適宜選択できる。 「ワイヤー状」や「チェーン状」の場合は通常1〜10 個であり、好ましくは3〜10 個である。 「格子状」、「2次元に連なったチェーン状」、「薄板状」、「多孔板状」の場合は通常1〜10 個であり、好ましくは2〜10 個である。 「3次元に連なったチェーン状」、「立体格子状」の場合は単数とするか、分割して複数とするかは、装置の大きさや、設置スペース等を考慮して適宜選択できる。
    支持体が複数の場合、適宜スペーサー等を用いて支持体同士が接触しないようにする事が好ましい。

    支持体の材質に特に制限はないが、通常、ステンレススチール、カーボンスチール、ハステロイ、チタン等の中から選ばれる。 また、ワイヤーは、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄等必要に応じて種々の表面処理がなされている場合も含む。

    本発明において、通常、一つの支持体に対して多孔板の孔1個以上からポリマーが供給されるが、孔の数は支持体の形状に応じて適宜選択することもできる。 また、一個の孔を通過したポリマーを複数の支持体に沿って落下させることも可能である。 また、目的に応じて、多孔板の、複数のブロックの孔から一つの支持体にポリマーを供給することも、一つのブロックの孔から一つ以上の支持体にポリマーを供給することも可能である。
    支持体の位置は熱可塑性ポリマーが支持体に沿って落下できる位置であれば特に制限はなく、支持体の多孔板への取り付け方は、多孔板の孔を貫通して設置される場合と貫通せず多孔板の孔の下部に設置される場合を適宜選択できる。
    支持体の長さは特に制限は無いが処理効率を高めるうえで好ましくは0.5から50mの範囲であり、さらに好ましくは1〜20mの範囲であり、特に好ましくは2〜15mの範囲である。

    本発明においては、熱可塑性ポリマーが支持体上を流下するという方式を採用しているので、熱可塑性ポリマーの表層部の面積を大きくすることができる。 すなわち、支持体に沿って落下する熱可塑性ポリマーの表面積をS とし、該支持体と熱可塑性ポリマーが接触している面積をS とするとき、S /S >1の関係を満たすことにより、熱可塑性ポリマーが溶剤と反応しやすくなり、効率良く溶解が進行する。 更に、支持体の数を多くすることにより処理量を増大することができる。

    ここで、S は落下する熱可塑性ポリマーの表面積であり、S は支持体と熱可塑性ポリマーが接触している面積である。
    逆にS /S =<1の関係であるような場合、その支持体は平板状又は濡れ壁塔の内壁面であることを意味するが、この場合、溶解器の容積当りの処理能力が著しく低下するうえ、流下するポリマーが互いに集合して塊状になるため溶解の効率は更に低下するので好ましくない。

    本発明においては、多孔板によって各支持体に分配された熱可塑性ポリマーが、支持体上に保持されながら流下するという方式を採用しているため、熱可塑性ポリマーと溶剤の蒸気との接触面積及び、流下するポリマーによる攪拌作用が飛躍的に増大し、各支持体のポリマー同士が集合して塊状になることも無いので溶解効率はきわめて高い。

    (D−3)溶剤供給装置 溶解器内に溶剤を供給する場合は、(1)上述のように多孔板の孔を少なくとも2つ以上のブロックに分け、ブロック毎に任意の供給量及び種類の熱可塑性ポリマー及び/または溶剤を同時に供給して溶解する方法、(2)あらかじめ熱可塑性ポリマーに溶剤を吸収及び/又は含有させることで供給して溶解する方法、(3)溶解器本体に溶剤を直接導入する方法、およびこれらを組み合わせた方法が可能である。
    溶解器本体に溶剤を直接導入する場合は、溶解器の任意の箇所に設置した導入口から供給出来る。 溶剤導入口の位置は溶解器底部の液相部であっても、溶解器底部の液相部より上の気相部であってもよい。 気相部に導入する場合、ベント口から離れていることが望ましい。

    (D−4)温度及び圧力 溶解温度は、支持体を覆っている溶解器壁面及び/または内部に配したヒーター又は熱媒ジャケットの温度を制御したり、支持体内部にヒーター又は熱媒を入れ、これらの温度を制御したりすることで適切に設定できる。
    溶解器内部の圧力は、溶解器を加圧装置あるいは減圧装置と接続することにより適切に設定できる。
    溶解及び/又は解重合処理時の温度及び圧力は、処理を行う熱可塑性ポリマー及び、溶剤及び/又は分子量低下剤の種類に応じて適宜選択できる。

    例えば温度は、溶解器の雰囲気温度が、溶剤に含まれる少なくとも1種の成分の、処理圧力における沸点以上の温度とすることが好ましい。 このようにすることにより、少量の溶剤でも溶解器の内部に充分な量の溶剤の蒸気を発生させ、効率よく溶解を進行させることができる。 溶剤の蒸気は、支持体上に保持されたポリマーに吸収され、ポリマーを膨潤させ、さらには低粘度のポリマー溶液として支持体に沿って流下させて、一部はポリマー溶液となって溶解器から抜き出されるが、一部は溶解器の内部で再び蒸気となりポリマーを溶解させる。 溶剤は蒸気としてのみ作用させるだけでなく、一部を溶解器の上部で凝縮させ、液体状態で支持体に沿って流下させることもできる。

    一方、高品質のポリマー溶液を効率良く製造するには、温度は処理を行う熱可塑性ポリマーのガラス転移温度またはポリマーが結晶化する温度以上であることが好ましく、ポリマーが熱劣化しない範囲で高温であることが好ましい。
    このように溶剤の蒸気を発生させるのに適した条件と、処理を行う熱可塑性ポリマーに適した条件(ガラス転移温度またはポリマーが結晶化する温度以上、ポリマーの熱劣化が著しくなる温度以下)の両方を満足させるために、圧力は使用する溶剤の性状に則して常圧、加圧、減圧と、適宜選択することが好ましい。
    また、加圧あるいは減圧下で、溶解及び/又は解重合の処理に悪影響を及ぼさない不活性なガスを溶解器内に導入して、熱可塑性ポリマーに溶存している酸素や、解重合時に生成した不純物等をこれらのガスに随伴させて除去するのも好ましい方法である。 特にポリマーの劣化を抑制して優れた品質の溶液を製造するとともに、溶解器(解重合器も兼ねる)の汚染を防ぐには、溶解器の気相部の酸素濃度は5体積%以下であることが好ましい。

    本発明者らの検討によると、驚くべきことに、不活性ガスを溶解器内に導入することにより、支持体に沿って溶融状態で落下する熱可塑性ポリマーの流動性が向上し、特に減圧下で処理する場合にはポリマーが発泡して表面積が飛躍的に増加するとともに、その表面更新状態が極めて良くなり極めて短時間で溶解及び/又は解重合が進行することが観察された。 原理は定かではないが、この熱可塑性ポリマーの内部及び表面状態の変化が処理速度を飛躍的に高める原因になっているものと推定される。

    導入する不活性ガスとしては樹脂に着色や変成、分解等の悪影響を及ぼさないガスが良く、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガス及び、これらの混合ガスを含む。 不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素がより好ましく、中でも入手の容易さから窒素が特に好ましい。
    本発明で導入する不活性ガスの量は、溶解器に供給するポリマー1g当たり0.05〜100mgとすることが好ましい。 不活性ガスの量は抜き出すポリマー1g当たり0.05mg以上とすることで樹脂の発泡が十分となって処理効果が高くなる。 一方100mg以下とすることで減圧度を高くすることが容易になる。 不活性ガスの量は抜き出すポリマー1g当たり0.1〜50mgとすることがより好ましく、0.2〜10mgとすることが特に好ましい。

    不活性ガスを導入する方法としては、溶解器内に直接導入する方法、あらかじめ不活性ガスを熱可塑性ポリマーに吸収及び/又は含有させ、該吸収及び/又は含有させたガスを減圧下にて熱可塑ポリマーより放出させて解重合器内に導入する方法、及びこれらを併用する方法が挙げられる。 ここで吸収とはポリマー中に不活性ガスが溶解し、気泡として存在しない場合を指し、含有とは気泡として存在していることを指す。 気泡として存在する場合は、気泡の大きさが細かいほど好ましく、平均気泡径が5mm以下とすることが好ましく、2mm以下とすることがより好ましい。

    (D−5)処理時間 熱可塑性ポリマーを支持体に沿わせて流下させるのに要する時間と、溶解器の底部に滞留する時間の合計が処理時間であり、10秒〜100時間の範囲が好ましく、1分〜10時間の範囲がより好ましく、5分〜5時間の範囲が更に好ましく、20分〜3時間の範囲が特に好ましい。

    (D−6)溶解能力 本発明の溶解器の溶解能力は、ワイヤー状の支持体の場合、溶解器内に設置した本数に比例して増大する特徴があり、スケールアップの設計が容易である特長を有する。
    ワイヤー状の支持体の場合、1本の支持体当たりの熱可塑性ポリマー流量は、好ましくは10 −2 〜10 リットル/hrであり、この範囲とすることによって充分な処理能力が確保できるとともに溶解速度も飛躍的に高めることが出来る。 より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。

    格子状(金網状)など、ワイヤーを組み合わせた支持体の場合には、支持体を構成する垂直方向のワイヤー構造1本当たり、好ましくは10 −2 〜10 リットル/hrであり、より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。
    薄板状等の、ワイヤーを組み合わせた構造ではない支持体の場合には、支持体にポリマーを供給する多孔板の孔1個当たり、好ましくは10 −2 〜10 リットル/hrであり、より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。

    次に本発明における溶解器を用いて熱可塑性ポリマーから熱可塑性ポリマーの溶液を製造する方法をPETの場合を例にとり、図に基づき説明する。
    図1においてPET樹脂は、移送ポンプ(A)1を介して原料供給口2より溶解器10に供給され、多孔板3のブロックAの孔を通って溶解器10内部に導入され支持体5に沿って落下する。 一方、移送ポンプ(B)1を介して溶剤を供給し、支持体5に沿って落下させる。

    なお、図示例では2つのブロックA、Bを設けたが、ブロックを一つとしてこれにPETと溶剤とを同時に供給することもできる。 或いは溶剤は移送ポンプ1及び多孔板3を介さずに、溶解器本体の任意の箇所に設置した導入口から供給することも出来、溶剤導入口の位置は溶解器底部の液相部であっても、溶解器底部の液相部より上の気相部であってもよい。
    溶剤中にPET樹脂が溶解することによって得られたポリマー溶液は、排出ポンプ8により排出口9から排出される。

    ポリマー溶液は、溶解器下部に落下した後、排出ポンプによって排出口より抜き出されるが、この際、溶解器下部に溜まる量をできるだけ一定とすることが好ましい。 溜まる量を制御する方法としては、のぞき窓より溜まっている量を監視したり、静電容量式等のレベル計を用いて溜まっている量を監視したりして、移送ポンプと排出ポンプの送液量を調整することにより行うことができる。
    移送ポンプ、溶解器本体、排出ポンプ、移送配管などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。

    図示例では減圧排気口7として溶解器本体に減圧配管を設けてあるが、融点が約255℃であって、280℃以上では熱分解反応が著しくなるPET樹脂の場合、使用する溶剤に応じて、その沸点がこの温度範囲内に入るように、溶解器内部の圧力を減圧状態に調節することも、あるいは逆にこれを加圧設備に接続して溶解器内部の圧力を加圧状態に調節することも可能である。
    溶解器は1基で行う事も可能であるが、2基以上で行ってもかまわない。

    原料よりポリマー溶液を製造するまでの工程は、バッチ式で行うことも、連続式に行うこともできる。 バッチ式に行う場合は、原料や反応物を全量溶解器に供給して所定時間反応させた後、反応物の全量を次の溶解器に全量移送することで実施できる。 一方、連続式に行う場合は、各溶解器へ原料や反応物を連続的に供給し、溶解物を連続的に排出することで行うことで実施できる。 均一な品位のポリマー溶液を大量に製造する場合は連続式に行うことが好ましい。

    図2は、多孔板3の各ブロックに種々のポリマーと溶剤又は改質剤とを供給する方法の具体例である。
    図2は単一または複数の種類のポリマーと溶剤又は改質剤とを多孔板の各ブロックから供給する例を示す。 図のように各供給物を、それぞれ独立した移送ポンプ(A〜D)によって多孔板の各ブロック(A〜D)毎に供給量を別個に設定することによって、任意の組成のポリマー溶液を製造することができる。
    多孔板の各ブロック(A〜D)毎の供給量を、溶解操作を行いながら任意に変更することが可能であり、種々のポリマー溶液を少量多品種で、高品質、低コストに製造することが可能である。

    (E)解重合器と解重合方法 本発明における解重合器とは、熱可塑性ポリマーを溶融状態にて原料供給口から解重合器内部に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、解重合器の内部に設置された支持体の表面に沿わせて流下させながら分子量低下剤の蒸気と接触させることによって解重合を行い、解重合物及び/又は解重合物の溶液を製造することを特徴とする装置である。
    本発明の解重合器の構造及び、解重合方法は、分子量低下剤の成分を使用することが必須である以外、上記(D)の溶解器と溶解方法の項で説明した方法をそのまま用いることが出来る。

    本発明の溶解方法及び/又は解重合方法によって得られた生成物は、引き続き精製を行い、ポリマー原料として再利用することが可能である。 例えばポリオレフィン系樹脂の場合、その溶液から分離回収した樹脂をマテリアルリサイクルすることが可能であるし、またPET樹脂の場合、該解重合生成物にMeOHを加えて置換エステル化反応を行い、テレフタル酸ジメチル(DMT)を生成させた後、精製DMTとして重縮合反応の原料にケミカルリサイクルすることも出来る。

    置換エステル化反応を行う際の反応温度としては、50〜150℃の範囲、反応圧力としては、0.0〜0.59MPaの範囲とすることが好ましく、この範囲にある場合には、置換エステル化反応が十分に行われる。 なお、置換エステル化反応時間は30分〜4時間とすることが好ましい。
    ここで置換エステル化触媒として従来既知の置換エステル化触媒を用いることができるが、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の、炭酸塩、炭酸水素塩、及びカルボン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を用いることが触媒能の高さの面から好ましい。 炭酸ナトリウムを用いることが特に好ましい。

    この置換エステル化反応で得られた混合物中には、DMT、MeOH、EG、共重合ポリエステル由来のモノマー及びEG解重合 反応と置換エステル化反応での副生成物である水、ジオキサン、ジメチルエーテルなどが含まれる。
    この混合物をそのまま用い再結晶操作、あるいはDMTの結晶が完全に溶解しない場合は、加熱して共重合組成物を混合溶液による溶解操作を行う。 この際、置換エステル化反応温度をそのまま、若しくは混合物の組成により温度を60〜150℃の範囲で一度加熱を行った後、不純物であるたとえば共重合ポリエステル由来のモノマー等を溶液側に溶解させ、その後、10〜50℃の範囲に冷却する。 必要であれば溶媒の潜熱を利用し、混合物を冷却することが好ましい。

    混合溶液中でのDMT濃度は、10〜40wt%の範囲とすることが好ましい。 DMTの濃度が10wt%未満であると、溶媒の使用量が増大し経済的に好ましくなく、40wt%を越えると不純物の除去が不十分となり好ましくない。
    再結晶処理された混合物は、遠心分離操作などで固液分離し、次いで得られたケークにMeOHを加え洗浄を行う。
    ここで加えるMeOH量は、DMTに対して1〜5倍量の範囲であることが好ましく、この範囲内にあるときには、不純物の除去が十分で、経済的にも好ましい。
    MeOH洗浄回数は1〜3回程度が好ましい。 ただし、共重合ポリエステル由来のモノマー量に依存し、不純物の除去が不十分であれば洗浄回数をさらに増やしてもよい。 MeOH洗浄したDMTは既知の条件で蒸留精製を行い、高純度DMTとして回収する。

    さらに得られた高純度DMTは、その2モル倍以上の大過剰のEGを用い、180〜250℃に加熱し、常圧下、無触媒でエステル交換反応を行い、PET樹脂の重合中間体であるテレフタル酸ビス(ヒドロキシエチル)(BHET)を製造することが出来る。 DMTとEGとは、加熱保持することで無触媒でも平衡状態を形成するが、大過剰のEGを用いると、更に平衡をBHET側へ大きく移行することができる。 反応に用いるEGの量は、DMTに対して2〜30モル倍程度が好ましく、4〜10モル倍とすることが特に好ましい。 また、エステル交換反応により副生するMeOHは、効果的に系外へ留去する必要があるが、MeOHの留出に伴いEG、DMTも同伴されるため、最低2つ以上の分留塔を設けることが望ましく、それぞれの分留塔の温度管理も重要である。

    これらを実施することで、精製DMTは、BHETを主成分とする、分子量254〜1300の線状低級オリゴマーとなり、高品質のポリエステル製品の中間原料として回収可能となる。 このエステル交換反応は常圧下、無触媒で行うため、完全に反応が終了するには4〜10時間程度を要するが、無触媒下でゆっくりと反応が進行するので、ジエチレングリコール等の副生物の生成も少ない。

    次に本発明の好ましい例としてPET樹脂の解重合を例にとり、図に基づき説明する。
    図3以下に本発明の方法を達成する好ましい組み合わせの態様を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
    図3においてPETは、移送ポンプ(A)1を介して原料供給口2より重合器に供給され、一方、分子量低下剤は移送ポンプ(B)1を介して原料供給口2より重合器に供給され、それぞれは多孔板3のブロックA及びブロックBの孔を通って解重合器内部に導入され支持体5に沿って落下する。 それぞれの供給物の流れは多孔板のブロック及び支持体との配置によって支持体上で互いに合流して解重合反応が行われる。

    なお、図示例ではブロックを設けたが、ブロックを一つとしてこれにPETと分子量低下剤とを同時に供給することもできる。 或いは分子量低下剤は移送ポンプ1及び多孔板3を介さずに、解重合器本体の任意の箇所に設置した導入口から供給することも出来、分子量低下剤導入口の位置は解重合器底部の液相部であっても、解重合器底部の液相部より上の気相部であってもよい。

    図示例では減圧排気口7として溶解器本体に減圧配管を設けてあるが、融点が約255℃であって、280℃以上では熱分解反応が著しくなるPET樹脂の場合、使用する分子量低下剤に応じて、その沸点がこの温度範囲内に入るように、溶解器内部の圧力を減圧状態に調節することも、あるいは逆にこれを加圧設備に接続して溶解器内部の圧力を加圧状態に調節することも可能である。

    解重合により得られた生成物は、解重合器下部に落下した後、排出ポンプによって排出口より抜き出されるが、この際、解重合器下部に溜まる量はできるだけ一定とすることが好ましい。 溜まる量を制御する方法としては、のぞき窓より溜まっている量を監視したり、静電容量式等のレベル計を用いて溜まっている量を監視したりして、移送ポンプと排出ポンプの送液量を調整することより行うことができる。
    移送ポンプ、解重合器本体、排出ポンプ、移送配管などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。

    本発明に用いる解重合器は、解重合器ボトムに撹拌器などを備えることも可能であるが特に必要ではない。 従って、解重合器本体での回転駆動部をなくす事が可能であり、高真空下でも良好にシールされた条件で重合できる。 排出ポンプの回転駆動部は排出する解重合生成物によって覆われているため、解重合器本体に回転駆動部がある場合に比べシール性ははるかに良好である。
    本発明の方法は、解重合器1基で行う事も可能であるが、2基以上で行ってもかまわない。

    PETを解重合する工程は、バッチ式で行うことも、連続式に行うこともできる。 バッチ式に行う場合は、原料や反応物を全量反応器に供給して所定時間反応させた後、反応物の全量を次の反応器に全量移送することでできる。 一方、連続式に行う場合は、各反応器へ原料や反応物を連続的に供給し、反応物を連続的に排出することで行うことでできる。

    図4及び図5は、多孔板3の各ブロックに種々のPET及び分子量低下剤を供給する方法の具体例である。
    図4は単一の重縮合ポリマーを多孔板の各ブロックから供給する例を示す。 重縮合ポリマーを、それぞれ独立した移送ポンプ(A〜D)によって多孔板の各ブロック(A〜D)毎に供給量を別個に設定することができるようにしておくと、任意のブロックだけから供給することで解重合器の反応条件を大きく変更することなく、処理量の変化に対応することができる。

    図5は単一または複数の種類の重縮合ポリマー及び/または分子量低下剤を多孔板の各ブロックから供給する例を示す。 図のように各供給物を、それぞれ独立した移送ポンプ(A〜D)によって多孔板の各ブロック(A〜D)毎に供給量を別個に設定することによって、任意の組成の共重合ポリマーを任意の組成の分子量低下剤を用いて解重合することができる。
    いずれの例についても多孔板の各ブロック(A〜D)毎の供給量を、解重合しながら任意に変更することが可能であり、種々のポリマーを少量多品種で解重合することが可能である。

    図6は不活性ガス吸収装置を使用した場合の、本発明の方法を達成する解重合器の具体例である。 PETは、移送ポンプN1を介して原料供給口N2より不活性ガス吸収装置N10に供給され、多孔板N3を通って不活性ガス吸収装置内部に導入され支持体N5に沿って落下する。 不活性ガス吸収装置内部は減圧排気口N7によって所定の圧力にコントロールされており、PETは落下しながら不活性ガス供給口N6から導入した窒素等の不活性ガスを吸収し、排出・移送ポンプN8を介して原料供給口2から解重合器10に供給され、多孔板3のブロックAを通って解重合器内部に導入され支持体5に沿って落下する。

    このときに移送ポンプ(B)1を介して分子量低下剤を多孔板3のブロックBから同時に供給することが出来る。 また、移送ポンプ(B)1は、解重合器10の多孔板3の代わりに、不活性ガス供給装置N10の多孔板N3にブロックAおよびブロックBを設けて、多孔板N3のブロックBの方に供給することも可能である。 或いは先に図1で説明したようにブロックを一つとしてこれにPETと分子量低下剤とを同時に供給することもできるし、或いは分子量低下剤は移送ポンプ(B)1及び多孔板3を介さずに、解重合器10本体の任意の箇所に設置した導入口から供給することも出来、分子量低下剤導入口の位置は解重合器底部の液相部であっても、解重合器底部の液相部より上の気相部であってもよい

    図示例では減圧排気口7として溶解器本体に減圧配管を設けてあるが、融点が約255℃であって、280℃以上では熱分解反応が著しくなるPET樹脂の場合、使用する分子量低下剤に応じて、その沸点がこの温度範囲内に入るように、溶解器内部の圧力を減圧状態に調節することも、あるいは逆にこれを加圧設備に接続して溶解器内部の圧力を加圧状態に調節することも可能である。
    解重合生成物は、排出ポンプ8により排出口9から排出される。 移送ポンプ、不活性ガス吸収装置本体、解重合器本体、排出ポンプ、移送配管、分岐切替弁、圧力調節弁などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。

    (F)本発明の洗浄方法が好ましく使用できる重合器とその洗浄方法(F−1)重合器の原理本発明の洗浄方法が好ましく使用できる重合器の重合方法は、加熱溶融重縮合反応によって重合可能なポリマーの重合中間体を溶融状態にて原料供給口から重合器に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて重力落下させながら減圧下にて重合する方法である。

    後述するように、重合中間体の特性、重合器の構造、重合方法が適切な条件を満たすことで、支持体に沿って落下する重合中間体が多量の泡を含んだ状態となり、重合の進行に伴ってポリマーが泡玉(塊)状の構造となって重合器の下方に向かって転がり落ちることで、速やかに移動する挙動を示す。
    この結果、ポリマーと気相との接触面積とポリマーの攪拌効果が飛躍的に増大し、重縮合反応の副生物(PETの場合、エチレングリコール)や、重合時の熱分解により発生する不純物(PETの場合、アセトアルデヒド)を重合中間体から効率的に除去出来、重合速度が飛躍的に増大するとともに、不純物残存量が極めて少ない、高品質のポリマーを製造できる利点を有する。

    この結果、従来の溶融重合技術に比べ重合速度が飛躍的に増大するとともに、不純物残存量が極めて少ない高品質のポリマーを、従来公知の重合装置では到底なしえなかった低い重合温度で製造できる利点を有する。
    我々はさらに検討をすすめ、該重合器の多孔板の孔を、1つのブロックあるいは少なくとも2つ以上のブロックに分けて、ブロック毎に任意の供給量及び種類の重合中間体及び/またはポリマー改質剤を同時に供給して重合することも可能であることを見出した。

    検討の結果、支持体の構造及び配置によって、少なくとも2つ以上のブロックからなる多孔板の孔の各ブロックから供給した重合中間体の流れを互いに合流させて落下させながら重合した場合、驚くべきことに攪拌羽根のような攪拌機構を有さないにも関らず、均一混合された均質なポリマーが得られることを見出した。 この結果、異種モノマーを共重合したり、改質剤を配合したりして特性を改良したポリマーを、特性を改良する元のポリマー並みに高品質で、低コストで製造することが可能になった。
    もちろん、各ブロックから供給する重合中間体の種類を同一にすることも可能であって、ブロック毎に供給量を設定することによって、重合レートやポリマー重合度を精密に調整したり、分子量分布を広げて溶融流動性の改善に応用したりすることも可能である。

    (F−2)重縮合ポリマーの説明 本発明において、重縮合ポリマーとは縮合可能な官能基を2つ以上有する少なくとも1種のモノマーが、該官能基の結合を介して結合してなる構造を有するポリマーを意味する。 上記モノマーは脂肪族炭化水素基に該官能基が直接結合してなるものでも良いし、芳香族炭化水素基に該官能基が直接結合してなるものでも良い。

    重縮合ポリマーの具体例としては、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミド及び脂肪族ポリカーボネート等の脂肪族炭化水素基が該官能基の結合を介して結合している構造を有するポリマー、脂肪族芳香族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリアミド及び脂肪族芳香族ポリカーボネート等の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が該官能基の結合を介して結合している構造を有するポリマー、および、芳香族ポリエステル、芳香族ポリアミド等の芳香族炭化水素基が該官能基の結合を介して結合している構造を有するポリマーが挙げられる。
    上記の重縮合ポリマーはホモポリマーであっても良いし、コポリマーであっても良い。 またエステル結合、アミド結合、カーボネート結合等の異なる結合がランダム又はブロック状に存在するコポリマーであっても良い。 このようなコポリマーの具体例としては、ポリエステルカーボネート及びポリエステルアミドが挙げられる。

    重合中間体とは、製品ポリマーに比べ重合度が低い、重合初期のポリマーであって、オリゴマーや、モノマーも含んでいてもよく、従来公知の縦型攪拌重合器、1軸又は2軸の攪拌翼を有した横型攪拌反応器、棚段を有する自然流下式の薄膜重合器、傾斜した平面を自然流下する薄膜重合器、濡壁塔等の装置を用いて所望の重合度まで予備重合されたものである。
    例えば、ポリエステルの重合中間体はヒドロキシル基を有する化合物とカルボキシル基を有する化合物またはカルボキシル基の低級アルコールエステルを有する化合物との重縮合によって製造され、ポリアミドの重合中間体はアミノ基を有する化合物とカルボキシル基を有する化合物との重縮合によって製造され、ポリカーボネートの重合中間体はカルボニル基の両側にアリーロキシ基やアルコキシ基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物との重縮合によって製造される。

    具体的には、例えば脂肪族ポリエステルの重合中間体はエチレングリコールのような炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基にヒドロキシル基が直接結合してなるモノマーと、アジピン酸のような炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基にカルボキシル基が直接結合してなるモノマーとの重縮合あるいはグリコール酸のような炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基にヒドロキシル基とカルボキシル基が直接結合してなるモノマーとの重縮合により製造される。

    脂肪族芳香族ポリエステルの重合中間体はエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のような炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基にヒドロキシル基が直接結合してなるモノマーと、テレフタル酸、イソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような炭素数6〜30の芳香族炭化水素基にカルボキシル基� ��直接結合してなるモノマーあるいはこれらのカルボキシル基が低級アルコールでエステル化されたモノマーとの重縮合により製造される。

    芳香族ポリエステルの重合中間体はビスフェノールAのような炭素数6〜30の芳香族炭化水素基にヒドロキシル基が直接結合してなるモノマーと、テレフタル酸のような炭素数6〜30の芳香族炭化水素基にカルボキシル基が直接結合してなるモノマーとの重縮合により製造される。
    脂肪族ポリアミドの重合中間体はヘキサメチレンジアミンのような炭素数2〜30の脂肪族炭化水素基にアミノ基が直接結合してなるモノマーと、アジピン酸のような炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基にカルボキシル基が直接結合してなるモノマーとの重縮合により製造される。

    脂肪族芳香族ポリアミドの重合中間体はヘキサメチレンジアミンのような炭素数2〜30の脂肪族炭化水素基にアミノ基が直接結合してなるモノマーと、テレフタル酸のような炭素数6〜30の芳香族炭化水素基にカルボキシル基が直接結合してなるモノマーとの重縮合により製造される。
    芳香族ポリアミドの重合中間体はパラフェニレンジアミンのような炭素数6〜30の脂肪族炭化水素基にアミノ基が直接結合してなるモノマーと、テレフタル酸のような炭素数6〜30の芳香族炭化水素基にカルボキシル基が直接結合してなるモノマーとの重縮合により製造される。

    脂肪族ポリカーボネートの重合中間体は1,6−ヘキサンジオールのような炭素数2〜30の脂肪族炭化水素基にヒドロキシル基が直接結合してなるモノマーと、ジフェニルカーボネートのようなカルボキシル基の両側にフェノキシ基が結合してなるモノマーとの重縮合により製造される。
    脂肪族芳香族ポリカーボネートの重合中間体は1,6−ヘキサンジオールのような炭素数2〜30の脂肪族炭化水素基にヒドロキシル基が直接結合してなるモノマー及びビスフェノールAのような炭素数6〜30の芳香族炭化水素基にヒドロキシル基が直接結合してなるモノマーと、ジフェニルカーボネートのようなカルボキシル基の両側にフェノキシ基が結合してなるモノマーとの重縮合により製造される。

    またこれら全ての重合中間体について、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールを予め共重合させたものも含まれる。
    上記の重合中間体の具体的な製造方法に関しては、例えば、“Polymer Synthesis,vol.1,second edition”、1992(米国 Academic Press,Inc.社発行)を参照することが出来る。

    本発明に適した重合中間体の重合度は、該重合器において重合を実施する温度にて、ずり速度が1000(sec −1 )の条件で評価したときの溶融粘度で規定出来、60〜100000(poise)の範囲であることが好ましい。 60(poise)以上とすることで、重合器の多孔板の孔から吐出させた重合中間体の激しい発泡及び飛散を抑制出来、一方、100000(poise)以下とすることで、反応副生物を効率よく系外に除去出来るため重合を速やかに進行させられる。 より好ましくは100〜50000(poise)の範囲であり、さらに好ましくは200〜10000(poise)の範囲であり、特に好ましくは300〜5000(poise)の範囲である。 このように比較的高重合度の重合中間体が本発明において好ましい理由は、前記のようにポリマーを多量の泡を含んだ状態で重合させることによって、重合速度を飛躍的に高めることが可能になるためである。

    (F−3)ポリマー改質剤の説明 ポリマー改質剤を用いる場合、その種類には特に制限は無く、ポリマーの重合温度以下で液状の物質であっても、ポリマーの重合温度以下で固体の微粒子を含む物質であっても良い。 また、ポリマーと反応して化学結合を形成する物質であっても、ポリマーとは反応しない物質であっても良い。 重縮合反応を促進する触媒作用を有する物質であっても、重合中間体に含まれている重合触媒の活性を抑制する作用を有する物質であっても良い。

    具体的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのような重縮合ポリマーと結合可能で、配合量によって易染色性や、柔軟性や、制音性や制電性等を与えるポリアルキレングリコール等、ポリエチレン、ポリプロピレンのような結晶化促進性や、摺動性や、高溶融流動性を付与するポリオレフィン類および、重縮合ポリマーと結合可能な末端基変性したポリオレフィン類等、微粒子のタルク、シリカ、金属酸化物、多層有機パウダーのような機械物性や、成形品の光沢改良や、ガスバリヤー性や、酸素吸収性や、抗菌性や、難燃性等を与える無機物や有機物の微粒子及びこれらに重縮合ポリマーと結合可能な官能基を導入した微粒子等、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、スズ、� ��ルミニウム、コバルトを含むような重合触媒作用や、色相改良作用を与える金属化合物類、リン、イオウ、ハロゲン類を含むような重合中間体に含まれている重合触媒の活性を抑制し、熱分解や、オリゴマー等の生成を抑制する化合物類、その他の公知の各種の添加剤、例えば艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、染料、顔料、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤、不純物や残モノマーの捕捉剤等が挙げられる。

    これらの改質剤は、そのままで、または重合中間体と混合して、または分散を容易にするオイルやポリエチレン等と混合して、多孔板の任意のブロックから供給する。 これらの改質剤は、個別に各ブロックから供給しても、複数組み合わせて同じブロックから供給することも出来る。

    (F−4)重合器の説明 該重合器は、上記の重合中間体を溶融状態にて重合器に供給して、多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら減圧下にて溶融重縮合を行うことを特徴とする装置である。

    (F−4−1)多孔板 多孔板とは、複数の貫通孔がある板状体である。 多孔板を用いることによって重合中間体の偏流を抑制するとともに反応器内での局所滞留を防止出来、高品質で均質のポリマーを製造出来る。 また、多孔板の孔は1つのブロックあるいは少なくとも2つ以上のブロックに分かれており、ブロック毎に任意の供給量及び種類の重合中間体及び/またはポリマー改質剤を同時に供給して重合することも可能である。

    多孔板の構造について、厚みは特に限定されるものではないが、通常0.1〜300mm、好ましくは1〜200mm、さらに好ましくは5〜150mmの範囲である。 多孔板は、溶融重合中間体の供給室の圧力に耐えると共に、重合室の支持体が多孔板に固定されている場合には、支持体及び落下する重合中間体の重量を支えるための強度が必要であり、リブ等によって補強されていることも好ましい様態の一つである。
    多孔板の孔は、通常、円状、長円状、三角形状、スリット状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。 孔の断面積は、通常、0.01〜100cm であり、好ましくは0.05〜10cm であり、特に好ましくは0.1〜5cm の範囲である。 また、孔に接続するノズル等を備えることも含む。 2つ以上のブロックに分かれている場合、ブロック毎に供給物の内容に応じて形状と断面積を変えることも可能である。

    孔と孔との間隔は、孔の中心と中心の距離で通常、1〜500mmであり、好ましくは10〜100mmである。 多孔板の孔は、多孔板を貫通させた孔であっても、多孔板に管を取り付けた場合でもよい。 また、テーパー状になっていてもよい。 重合中間体が多孔板を通過する際の圧力損失が、0.1〜50kg/cm である様に孔の大きさや形状を決めることが好ましい。 また2つ以上のブロックに分かれている場合、各ブロックに属する孔の配置は目的に応じて、ランダムに配置することも、同心円状に半径方向あるいは円周方向に交互または周期的に配置することも、格子状に交互または周期的に配置することも、ブロック毎に集合させて配置することも、ブロック毎に複数の集合にして配置することも可能である。

    多孔板の孔の数に特に制限はなく、反応温度や圧力などの条件、触媒の量、重合させる分子量の範囲等によっても異なるが、通常ポリマーを例えば100kg/hr製造する際、10〜10 個、より好ましくは50〜10 個、さらに好ましくは10 〜10 3個の孔が必要である。 また2つ以上のブロックに分かれている場合、ブロックの数にも特に制限はないが、通常2〜100の範囲であり、設備コストの問題から、より好ましくは2〜50の範囲であり、さらに好ましくは2〜10の範囲である。 各ブロックに属する孔の数にも特に制限はないが、通常1〜10 個、加工コストの問題から、より好ましくは1〜10 個、さらに好ましくは1〜10 個の範囲である。 ブロック毎に属する孔の数が同じであっても異なってもよい。
    多孔板の材質は、通常、ステンレススチール製、カーボンスチール製、ハステロイ製、ニッケル製、チタン製、クロム製、及びその他の合金製等の金属材質が好ましい。

    このような多孔板を通じて重合中間体を吐出させる方法としては、液ヘッドまたは自重で落下させる方法、またはポンプなどを使って加圧して押し出す方法等が挙げられるが、落下する重合中間体量の変動を抑えるためにギアポンプなどの計量能のあるポンプを用いて押し出すことが好ましい。
    尚、多孔板より上流側の流路にはフィルターを設けることが好ましい。 フィルターにより、多孔板の孔を閉塞する異物を除去出来る。 フィルターの種類は、多孔板の孔径以上の異物を除去出来且つ、重合中間体の通過によって破損しないよう適宜選定する。

    (F−4−2)支持体 多孔板の孔から吐出された重合中間体は、支持体に沿って落下する。 支持体の具体的な構造としては、「ワイヤー状」、ワイヤー状の材料を組み合わせた「チェーン状」や「格子状(金網状)」、ワイヤー状の材料をいわゆるジャングルジムのように連結した「立体格子状」、平坦あるいは曲率を有した「薄板状」、「多孔板状」などが挙げられる。 その他にも反応副生物や重合中の熱分解により生じた不純物等を効率的に抜き出すために、落下させる樹脂の表面積を大きくすると共に、重合中間体の落下方向に対して凹凸のある支持体に沿わせて落下させることによって攪拌と表面更新を積極的に起こさせることが好ましく、「樹脂の落下方向に対して凹凸のあるワイヤー状」など、樹脂の落下を邪魔する構造のある支持体も好ましい。 これらの支持体を組み合わせて用いたり、また2つ以上のブロックに分かれている場合には多孔板の各ブロックからの供給物の内容に応じて適宜配置したりすることも好ましく、目的に応じて各ブロックからの供給物の流れを支持体上で互いに合流しないように配置することも、供給物の流れを支持体上で合流させるように配置することも出来る。

    「ワイヤー状」とは、断面の外周の平均長さに対する該断面と垂直方向の長さの比率が非常に大きい材料を表すものである。 断面の面積に特に制限はないが、通常10 −3 〜10 cm の範囲であり、好ましくは10 −3 〜10 cm の範囲であり、特に好ましくは10 −2 〜1cm の範囲である。 断面の形状に特に制限はなく、通常、円状、長円状、三角形状、四角形状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。 断面の形状は長さ方向に同一であるもの、異なっているもののいずれも含む。 また、ワイヤーは中空状のものも含む。 ワイヤーは、針金状等の単一なものも、捩り合わせる等の方法によって複数組み合わせたものも含む。 ワイヤーの表面は平滑なもの、凹凸があるもの、部分的に突起等を有するものなどが挙げられる。

    「チェーン状」とは前記したワイヤー状材料よりできた輪を連結させた材料を表すものである。 輪の形状は円形、楕円形、長方形、正方形等が挙げられる。 連結のさせ方は一次元、二次元、三次元いずれも含む。
    「格子状(金網状)」とは前記したワイヤー状の材料を格子状に組み合わせた材料を表すものである。 組み合わせるワイヤーは直線状の場合も曲率している場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。 格子状(金網状)の材料を面に対して垂直方向より投影した際の、材料と空間との面積比は特に制限はないが、通常1:0.5〜1:1000の範囲であり、好ましくは1:1〜1:500の範囲であり、特に好ましくは1:5〜1:100の範囲である。 面積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど空間の比率が大きくなることが好ましい。

    「立体格子状」とは、ワイヤー状の材料をいわゆるジャングルジムのように立体的な格子状に三次元に組み合わせた材料を表すものである。 組み合わせるワイヤーは直線状であっても、曲率している場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。
    「ポリマーの落下方向に凹凸が付いたワイヤー状」とは、ワイヤーに丸断面や多角形断面の棒状物を直角に取り付けたものや、ワイヤーに円盤状物あるいは円筒状物を取り付けたものなどである。 凹凸の段差は5mm以上のものが好ましい。 具体的な例としては、直径がワイヤー径より5mm以上大きく100mm以下で、厚みが1〜50mmの円盤の中心をワイヤーが貫通し、該円盤の間隔が1〜500mmである円盤付きワイヤー等が挙げられる。

    反応器内に設置された支持体の体積と、反応器の内容積との比には特に制限はないが、通常1:0.5〜1:10 の範囲であり、好ましくは1:10〜1:10 の範囲であり、特に好ましくは1:50〜1:10 の範囲である。 支持体の体積:反応器の内容積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど反応器の内容積の比率が大きくなることが好ましい。
    支持体は形状によって単数設ける場合と複数設ける場合とを適宜選択できる。 「ワイヤー状」や「チェーン状」の場合は通常1〜10 個であり、好ましくは3〜10 個である。 「格子状」、「2次元に連なったチェーン状」、「薄板状」、「多孔板状」の場合は通常1〜10 個であり、好ましくは2〜10 個である。 「3次元に連なったチェーン状」、「立体格子状」の場合は単数とするか、分割して複数とするかは、装置の大きさや、設置スペース等を考慮して適宜選択できる。

    支持体が複数の場合、適宜スペーサー等を用いて指示体同士が接触しないようにする事も好ましい。
    支持体の材質に特に制限はないが、通常、ステンレススチール、カーボンスチール、ハステロイ、チタン等の中から選ばれる。 また、ワイヤーは、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄等必要に応じて種々の表面処理がなされている場合も含む。

    本方法において、通常、一つの支持体に対して多孔板の孔1個以上から重合中間体が供給されるが、孔の数は支持体の形状に応じて適宜選択することもできる。 また、一個の孔を通過した重合中間体を複数の支持体に沿って落下させることも可能である。 また、目的に応じて2つ以上のブロックに分かれている多孔板を使用する場合、多孔板の、複数のブロックの孔から一つの支持体に重合中間体を供給することも、一つのブロックの孔から一つ以上の支持体に重合中間体を供給することも可能である。

    支持体の位置は重合中間体が支持体に沿って落下できる位置であれば特に制限はなく、支持体の多孔板への取り付け方は、多孔板の孔を貫通して設置される場合と貫通せず多孔板の孔の下部に設置される場合を適宜選択できる。
    孔を通過した重合中間体を支持体に沿わせて落下させる高さは、好ましくは0.5〜50mの範囲であり、さらに好ましくは1〜20mの範囲であり、より好ましくは2〜10mの範囲である。

    (F−4−3)加熱装置 重合温度は、支持体を覆っている重合器壁面に配したヒーター又は熱媒ジャケットの温度を制御したり、支持体内部にヒーター又は熱媒を入れ、これらの温度を制御したりすることで適切に設定できる。

    (F−4−4)減圧装置:
    重合器の減圧度は、重合器の任意の箇所に設置したベント口を真空ラインに接続し、減圧度を制御することで適切に設定できる。 ベント口からは重合副生物や、重合時の熱分解により発生する不純物や、必要に応じて重合器内に少量導入した不活性ガスが排出される。

    (F−4−5)不活性ガス供給装置 重合器内に不活性ガスを直接導入する場合は、重合器の任意の箇所に設置した導入口から供給出来る。 不活性ガス導入口の位置は多孔板より遠く、ポリマーの抜出口の近くとすることが望ましい。 また、ベント口から離れていることも望ましい。
    或いは、あらかじめ重合中間体に不活性ガスを吸収及び/又は含有させる方法も可能であり、この場合不活性ガス供給装置を本発明の重合器の上流に増設する。

    不活性ガス供給装置は例えば、化学装置設計・操作シリーズNo. 2、改訂ガス吸収49〜54頁(昭和56年3月15日、化学工業社発行)に記載の充填塔型吸収装置、棚段型吸収装置、スプレー塔式吸収装置等の公知の吸収装置を用いる方法や重合中間体を移送する配管内に不活性ガスを圧入する方法などが挙げられる。 最も好ましいのは、不活性ガス雰囲気下で重合中間体を支持体に沿わせて落下させながら不活性ガスを吸収させる装置を用いる方法である。 この方法では、不活性ガスを吸収させる装置の内部に重合器内部より高い圧力の不活性ガスを導入する。 この時の圧力は0.01〜1MPaが好ましく、0.05〜0.5MPaがより好ましく、0.1〜0.2MPaが更に好ましい。

    (F−5)重合方法の説明 本発明者らは、前記した溶融粘度の範囲の重合中間体を、前期の重合器を用いて、後述する重合温度、減圧度の範囲で重合させることで、多孔板の直下での激しい発泡による重合中間体飛散を抑えて、口金面や重合器壁面の汚染によるポリマーの品質の悪化を抑制するとともに、驚くべきことに、支持体に沿って落下するポリマーが多量の泡を含んだ状態になって、「ポリマーの表面積が拡大する」とともに「支持体上をポリマーが泡玉状になって転がり落ちる」現象を見出した。 それと同時に、重合速度の飛躍的な増大とポリマー色相の改善を確認した。
    重合速度の飛躍的な増大は、多量の泡を含んだことによる表面積の拡大効果と、泡の可塑化作用による表面更新効果の複合的な作用であると考えられる。 また、泡の可塑化作用は、重合器内でのポリマーの滞留時間の短縮によるポリマー色相の改善と、高重合度化された高粘度のポリマーを容易に重合器から抜き出すことも可能にした。

    従来の濡壁塔などの重力落下式溶融薄膜重合装置の場合、高重合度で高品質のポリマーを得るために、着色の程度が小さい反応初期の、本方法に比べて極めて低重合度の重合中間体を、本発明の方法に比べて高温かつ短い滞留時間で重合させることを意図したものである。 従来の常識では、本方法のような高重合度の重合中間体を引き続き溶融重合すると、重合中間体時点での着色がますます進行してしまううえ、重合器を落下させる際の滞留時間が増大してしまうため、高品質のポリマーが製造出来るとは、到底発想し得なかった。

    これに対し、本方法では前記のように、重合中間体の溶融粘度の範囲を従来の常識に反して高めに設定したことや、さらには以下に説明するように、重合温度を従来の常識に反して低い温度に設定することによって、ポリマーの発泡状態を制御出来ることを見出し、低温にて却って重合速度を飛躍的に高めることが出来、且つ高重合度ポリマーを容易に抜き出せるという、驚くべき効果を見出したものである。

    (F−5−1)重合温度 重縮合反応温度は重縮合ポリマーの(結晶融点−10℃)以上、(結晶融点+60℃)以下とすることが好ましい。 (結晶融点−10℃)以上とすることで、反応物の固化や、反応時間が長くなることを防ぎ、(結晶融点+60℃)以下にすることで、熱分解を抑え優れた色相のポリマーを製造できる。 温度は(結晶融点−5℃)以上、(結晶融点+40℃)以下がより好ましく、結晶融点以上、(結晶融点+30℃)以下が更に好ましい。 このように比較的低い反応温度の方が本方法において好ましい理由は、ポリマーが多量の泡を含んだ状態になりやすく、重合速度を飛躍的に高めることが可能になるためである。

    ここで結晶融点とは、Perkin Elmer社製Pyris 1 DSC(入力補償型示差熱量計)を用いて、下記の条件にて測定した時の、結晶の融解に由来する吸熱ピークのピーク温度である。 ピーク温度は、付属の解析ソフトを用いて決定した。
    測定温度 : 0〜300℃
    昇温速度 : 10℃/分

    (F−5−2)重合圧力 本方法の溶融重縮合反応は、ポリマーが多量の泡を含んだ状態にするためにも、減圧下にて行う必要がある。 減圧度は、重合中間体や重縮合反応物の昇華状態や反応速度に応じて適宜調節する。 減圧度は50000Pa以下が好ましく、10000Pa以下がより好ましく、1000Pa以下が更に好ましく、500Pa以下が特に好ましい。 下限は特に制限させるものではないが、重合器内を減圧とするための設備の規模などから考え0.1Pa以上とすることが好ましい。
    また、減圧下で、重縮合反応に悪影響を及ぼさない不活性なガスを重合器内に少量導入して、重合副生物や重合時の熱分解により発生した不純物等をこれらのガスに随伴させて除去するのも好ましい方法である。

    不活性ガスの重合器内への導入は、従来、重合副生物の分圧を下げ、平衡をずらすことによって反応を有利に進めるためであると理解されている。 しかし、本方法において導入する不活性ガス量は極めて少なくて良く、分圧低下効果によって重合速度を高める効果はほとんど期待できないほどの微量であり、不活性ガスの役割は従来の理解では説明できない。
    本発明者らの検討によると、驚くべきことに、不活性ガスを重合器内に導入することにより、支持体に沿って溶融状態で落下する重合中間体の発泡現象が激しくなり、該重合中間体の表面積が飛躍的に増加するとともに、その表面更新状態が極めて良くなることが観察された。 原理は定かではないが、この重合中間体の内部及び表面状態の変化が重合速度を飛躍的に高める原因になっているものと推定される。

    導入する不活性ガスとしては樹脂に着色や変成、分解等の悪影響を及ぼさないガスが良く、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガス及び、これらの混合ガスを含む。 不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素がより好ましく、中でも入手の容易さから窒素が特に好ましい。
    本方法で導入する不活性ガスの量は、極めて少量でよく、重合反応器より抜き出すポリマー1g当たり0.05〜100mgとすることが好ましい。 不活性ガスの量は抜き出すポリマー1g当たり0.05mg以上とすることで樹脂の発泡が十分となって重合度を高める効果が高くなる。 一方100mg以下とすることで減圧度を高くすることが容易になる。 不活性ガスの量は抜き出すポリマー1g当たり0.1〜50mgとすることがより好ましく、0.2〜10mgとすることが特に好ましい。

    不活性ガスを導入する方法としては、重合器内に直接導入する方法、あらかじめ不活性ガスを重合中間体に吸収及び/又は含有させ、該吸収及び/又は含有させたガスを減圧下にて重合中間体より放出させて重合器内に導入する方法、及びこれらを併用する方法が挙げられる。 ここで吸収とはポリマー中に不活性ガスが溶解し、気泡として存在しない場合を指し、含有とは気泡として存在していることを指す。 気泡として存在する場合は、気泡の大きさが細かいほど好ましく、平均気泡径が5mm以下とすることが好ましく、2mm以下とすることがより好ましい。

    (F−5−3)重合時間 ポリマーを支持体に沿わせて落下させるのに要する時間と、重合器の底部に滞留する時間の合計が重合時間であり、10秒〜100時間の範囲が好ましく、1分〜10時間の範囲がより好ましく、5分〜5時間の範囲が更に好ましく、20分〜3時間の範囲が特に好ましい。
    本重合方法では、重合中間体から重合したポリマーをワンパスで重合器から全て抜き出す方法、重合したポリマーの一部を循環させて再び重合器に導入する方法等が挙げられるが、ワンパスで全て抜き出す方法がより好ましい。 循環させる場合には、重合器底部や循環ライン等での熱分解を抑えるために、これらの場所での滞留時間を短くし、温度を下げることが好ましい。

    (F−5−4)重合レート 該重合器の重合能力は、ワイヤー状の支持体の場合、重合器内に設置した本数に比例して増大する特徴があり、スケールアップの設計が容易である特長を有する。
    ワイヤー状の支持体の場合、1本の支持体当たりの重合中間体流量は、好ましくは10 −2 〜10 リットル/hrであり、この範囲とすることによって充分な生産能力が確保出来るとともに重合速度も飛躍的に高めることが出来る。 より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。

    格子状(金網状)など、ワイヤーを組み合わせた支持体の場合には、支持体を構成する垂直方向のワイヤー構造1本当たり、好ましくは10 −2 〜10 リットル/hrであり、より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。
    薄板状等の、ワイヤーを組み合わせた構造ではない支持体の場合には、支持体に重合中間体を供給する多孔板の孔1個当たり、好ましくは10 −2 〜10 リットル/hrであり、より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。

    (F−5−5)その他 本方法は、上記した重合器の多孔板から供給する方法以外にも、重合器と成形機の間に一軸または二軸の混錬機やスタティックミキサー等を設置して必要に応じて、安定剤や核剤、顔料等の添加剤を樹脂に添加する場合も含む。
    本方法では、必要に応じて各種の添加剤、例えば艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤、不純物の捕捉剤などを共重合または混合する場合も含む。 これらの添加剤は任意の段階で添加することができる。

    特に、本方法では重合するポリマーに応じて、適切な安定剤を添加することが好ましい。 ポリエステル樹脂の場合を例にとると、5価または/および3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。 リン化合物の添加量は、ポリマー中に含まれるリン元素の重量割合として2〜500ppmであることが好ましく、10〜200ppmがより好ましい。 具体的な化合物としてはトリメチルホスファイト、リン酸、亜リン酸が好ましい。 リン系化合物はポリマーの着色を抑えるとともに、結晶核剤の効果もあり好ましい。

    ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノール系水酸基の隣接位置に立体障害を有する置換基を持つフェノール系誘導体であり、分子内に1個以上のエステル結合を有する化合物である。 ヒンダードフェノール系化合物の添加量としては、得られるポリマーに対する重量割合として0.001〜1重量%であることが好ましく、0.01〜0.2重量%がより好ましい。
    具体的な化合物としては、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)が挙げられる。 これらの安定剤を併用することも好ましい方法の一つである。

    このような安定剤は成形までの任意の段階で添加することができるが、リン化合物は重縮合反応の初期、ヒンダードフェノール系化合物は重縮合反応の初期、あるいは、重合器から抜き出した後に添加することが好ましい。
    また、本方法では結晶核剤を添加することも好ましく、ポリエステル樹脂の場合を例にとると、リン系化合物や有機酸金属塩、ポリオレフィンやその他の樹脂の樹脂粉等が好ましい。 結晶核剤の添加量はポリマー中に2〜1000ppmであることが好ましく、10〜500ppmであることがより好ましい。

    具体的にはリン酸2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどのリン酸塩、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール類、ビス(4−t−ブチル安息香酸)ヒドロキシアルミニウムなどの金属元素含有化合物などがあげられる。 特に口部を加熱して熱結晶化させるPETボトル用プリフォームには結晶化を促進して熱結晶化温度を低下させる目的で好ましく用いられる。

    また、本方法では、低分子量の揮発性不純物の捕捉剤を添加するのも好ましい方法の一つである。 PETの場合を例にとると、不純物はアセトアルデヒドであり、この捕捉剤としては、ポリアミドやポリエステルアミドのポリマーやオリゴマー、アミド基やアミン基を有した2−アミノベンズアミド等の低分子量化合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6.6、ナイロン6、ナイロン4.6などのポリアミドやポリエチレンイミンなどのポリマー、更にはN−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、チバスペシャリティ−ケミカル株式会社製のIrganox1098、Irganox565(登録商標)などが挙げられる。 これらの捕捉剤は、重合器から排出してから成形機に供給するまでに添加することが好ましい。

    次に該重合器を用いて重縮合ポリマーを製造する方法を、PETの重合を例にとり図に基づき説明する。
    図7においてPETの重合中間体は、移送ポンプ(A)及び/又は移送ポンプ(B)1を介して原料供給口2より重合器に供給され、多孔板3のブロックAの孔及び/又はブロックBの孔を通って重合器内部に導入され支持体5に沿って落下する。 このときに移送ポンプ(A)又は移送ポンプ(B)1を介して異種ポリマーの重合中間体及び/又はポリマー改質剤をPETの重合中間体の代わりに供給することも出来る。 もちろん多孔板3を複数のブロックとせずに単一のブロックとし、PETの重合中間体を供給する移送ポンプを複数とせずに単一の移送ポンプから重合中間体を導入して重合することも可能である。

    重合器内部は所定の減圧度にコントロールされており、副生したエチレングリコール等や、必要に応じて不活性ガス供給口6より導入した窒素等の不活性ガスなどは減圧排気口7より排出される。 重合ポリマーは、排出ポンプ8により排出口9から排出される。
    支持体に沿って落下しつつ重合する際、多孔板が2つ以上のブロックに分かれている場合にはブロック及び支持体との配置によって各ブロックからの供給物の流れを支持体上で互いに合流しないようにすることも、供給物の流れを支持体上で合流させることも出来、目的に応じて選択される。

    重合したポリマーは、重合器下部に落下した後、排出ポンプによって排出口より抜き出されるが、この際、重合器下部に溜まる量をできるだけ少なく、且つ、できるだけ一定とすることが好ましい。 溜まる量を制御する方法としては、のぞき窓より溜まっている量を監視したり、静電容量式等のレベル計を用いて溜まっている量を監視したりして、移送ポンプと排出ポンプの送液量を調整することより行うことができる。
    移送ポンプ、重合器本体、排出ポンプ、移送配管などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。

    重合器は、重合器ボトムに撹拌器などを備えることも可能であるが特に必要ではない。 従って、重合器本体での回転駆動部をなくす事が可能であり、高真空下でも良好にシールされた条件で重合できる。 排出ポンプの回転駆動部は排出する樹脂によって覆われているため、重合器本体に回転駆動部がある場合に比べシール性ははるかに良好である。
    重合器は1基で行う事も可能であるが、2基以上で行ってもかまわない。

    PETの重合中間体から目的とする高重合度のPETまで分子量を高めていく工程を、全て多孔板の孔から支持体に沿わせて落下させながら重合させる方法で行う事も可能であるが、他の重合方法、例えば撹拌槽型重合器、横型攪拌重合器等と組み合わせて行う事が好ましい。
    横型攪拌重合器としては、スクリュータイプ、独立翼タイプ、一軸タイプ、二軸タイプ等、例えば「反応工学研究会研究レポート:リアクティブプロセッシングPart2」(高分子学会;1992)第4章記載の重合器などが挙げられる。

    また、撹拌槽型重合器としては、例えば化学装置便覧(化学工学協会編;1989年)11章等に記載された撹拌槽のいずれも使用する事ができる。
    槽の形状に特に制限はなく、通常、縦型や横型の円筒型が用いられる。 また、撹拌翼の形状にも特に制限はなく、パドル型、アンカー型、タービン型、スクリュー型、リボン型、ダブル翼型等が用いられる。

    原料よりプレポリマーを製造するまでの工程は、バッチ式で行うことも、連続式に行うこともできる。 バッチ式に行う場合は、原料や反応物を全量反応器に供給して所定時間反応させた後、反応物の全量を次の反応器に全量移送することでできる。 一方、連続式に行う場合は、各反応器へ原料や反応物の連続的に供給し、反応物を連続的に排出することで行うことでできる。 均一な品位のPET及びその成形体を大量に製造する場合は連続式に行うことが好ましい。

    (F−6)該重合器の洗浄方法 次に該重合器の洗浄方法について述べる。
    上記の方法にて重合運転を行った後運転停止する際、該重合器の内部に重合中間体、原料及びこれらの変性物が残存し易い問題がある。
    従来の攪拌槽型の重合装置の洗浄方法として、重合装置内にグリコール類を満たし、グリコール類の沸点近くの温度に加熱しながら攪拌することで残留ポリマー等を解重合し除去する方法が開示されているが、このような方法を本重合器に適用しようとすると、重合器内部の支持体に保持されている多量の残留ポリマー等が剥離して塊状に集合してしまううえ、該重合器は攪拌機構を有さないために、残留ポリマーを解重合するには極めて長い時間を要するという問題があった。

    本発明者らは鋭意検討した結果、支持体に保持された残留ポリマー、重合中間体及びこれらの変性物を該支持体の表面に沿わせて流下させながら、溶剤の蒸気と接触させることによって上記残存物を支持体から剥離させ塊状に集合させることなく、少量の溶剤にて洗浄でき、特に溶剤の蒸気の少なくとも1種の成分が分子量低下剤として作用する場合、解重合触媒等を使用しなくても、極めて短時間で低重合度物まで分解し除去できることを見出し、本発明を完成させた。

    該重合器の支持体の構造はワイヤー状等が好ましく用いられるが、いずれの構造の支持体についても、支持体に沿って落下するポリマーの表面積をS とし、該支持体とポリマーが接触している面積をS とするとき、S /S >1の関係を満たすことを特徴としている。 ここで、S は落下する熱可塑性ポリマーの表面積であり、S は支持体と熱可塑性ポリマーが接触している面積である。

    逆にS /S =<1の関係であるような場合、その支持体は平板状又は濡れ壁塔の内壁面等の構造であることを意味するが、この場合本発明の重合器と比較して支持体の表面積が小さいので保持される残留ポリマーの量自体は少ないものの、保持力は大きいので残留ポリマーの樹脂膜厚みが厚く、洗浄の効率は悪くなる。 そのうえ支持体上に多量の液状の溶剤を流下させた場合、支持体上で残留ポリマーが集合して塊状になり更に洗浄の効率が悪くなるので好ましくない。

    また該重合器の内部に設置した支持体の強度や、該重合器にて製造した重縮合ポリマーの結晶性によっては、残留ポリマーを結晶化させたときにポリマーの体積収縮によって支持体が不可逆的に変形し、該重合器の特性を変化させてしまう恐れがある。 また残留ポリマーが一旦結晶化すると、溶剤の蒸気の吸収が阻害されてしまう。 本発明においては重合運転後、運転停止してから該重合器の内部の温度を、該重合器内に残留している重縮合ポリマーが結晶化する温度以上に保持した状態で内部に溶剤の蒸気を導入する方法が好ましく、重縮合ポリマーの融点以上、重縮合ポリマーの分解温度以下の範囲で保持することがより好ましい。 従って溶剤を該重合器の内部に導入する際、予め残留している重縮合ポリマーが結晶化する温度以上に加熱した溶剤を導入する方法も好ましい。

    残留ポリマー等が支持体に沿って流下しながら溶剤の蒸気と接触する際の流下する距離は0.5m以上とすることが好ましい。 落下距離が短いと溶解及び/又は解重合が不十分であり、高粘度のポリマーのままで流下して支持体から剥離し落下した後で合体して塊状になってしまうため、洗浄効率が著しく低下する。 流下する距離は特に制限は無いが、洗浄効率を高めるうえで好ましくは0.5から50mの範囲であり、さらに好ましくは1〜20mの範囲であり、特に好ましくは2〜15mの範囲である。 流下する距離は該重合器の支持体の長さと、該重合器の底部の液面高さによって選択できる。
    残留ポリマー等の洗浄に用いる溶剤や分子量低下剤としては、上記(C)にて説明したものを適宜使用できる。 また、必要に応じて洗浄時間を更に短縮する目的で一級又は二級アミン類、無水酢酸、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類等の洗浄剤を併用することも出来る。

    これらの溶剤や分子量低下剤の供給方法は、(1)該重合器よりも上流から、該重合器以外の反応器、ポリマー配管等の設備を順次洗浄した溶剤や分子量低下剤の少なくとも一部を、ポリマー流れに従って該重合器の原料供給口から該重合器の内部に供給する方法、(2)予めポリマーにこれらの溶剤や分子量低下剤を吸収及び/又は含有させて調整したポリマー混合物の状態で該重合器の原料供給口から該重合器の内部に供給する方法、(3)該重合器の本体にこれらの溶剤や分子量低下剤を液体及び/又は蒸気の状態で直接供給する方法、及び(4)これらを組み合わせた方法が可能である。

    該重合器本体にこれらの溶剤や分子量低下剤を直接供給する場合は、該重合器の原料供給口、該重合器の底部のポリマー抜き出し口、及び該重合器の任意の箇所に設置した溶剤供給口等の任意の場所から供給出来る。 溶剤供給口の位置は該重合器底部の液相部であっても、該重合器底部の液相部より上の気相部であってもよい。 気相部に導入する場合、該重合器のベント口から離れていることが望ましい。
    洗浄温度は、支持体を覆っている該重合器の壁面及び/または内部に配したヒーター又は熱媒ジャケットの温度を制御したり、支持体内部にヒーター又は熱媒を入れ、これらの温度を制御したりすることで適切に設定できる。

    洗浄時の該重合器内部の圧力は、該重合器を加圧装置あるいは減圧装置と接続することにより適切に設定できる。
    洗浄時の温度及び圧力は、残存ポリマーの種類及び、溶剤及び/又は分子量低下剤の種類に応じて適宜選択できる。

    例えば温度は、溶解器の雰囲気温度が、溶剤に含まれる少なくとも1種の成分の、処理圧力における沸点以上の温度とすることが好ましい。 このようにすることにより、少量の溶剤でも溶解器の内部に充分な量の溶剤の蒸気を発生させ、効率よく洗浄できる。 溶剤の蒸気は、支持体上に保持された残存ポリマー等に吸収され、残存ポリマー等を膨潤させ、さらには低粘度の残存ポリマー等の溶液として支持体に沿って流下させて、該重合器の底部に溶液として滞留するが、一部は該重合器の内部で再び蒸気となり、まだ支持体に保持されている残存ポリマー等を溶解させる。 また、溶剤及び/又は分子量低下剤は蒸気としてのみ作用させるだけでなく、一部を該重合器の上部で凝縮させ、液体状態で支持体に沿って流下させることもできる。

    一方、効率良く洗浄を行うためには、温度は洗浄を行う残存ポリマー等のガラス転移温度または残存ポリマー等が結晶化する温度以上であることが好ましく、残存ポリマー等が熱劣化しない範囲で高温であることが好ましい。
    このように溶剤及び/又は分子量低下剤の蒸気を発生させるのに適した条件と、洗浄を行う残存ポリマーの種類に適した条件(ガラス転移温度またはポリマーが結晶化する温度以上、ポリマーの熱劣化が著しくなる温度以下)の両方を満足させるために、圧力は使用する溶剤の性状に則して常圧、加圧、減圧と、適宜選択することが好ましい。

    また、加圧あるいは減圧下で、該重合器の洗浄処理に悪影響を及ぼさない不活性なガスを該重合器内に導入して、残存ポリマー等に溶存している酸素や、洗浄時に生成した不純物等をこれらのガスに随伴させて除去するのも好ましい方法である。 特に残存ポリマー等の劣化を抑制して該重合器の汚染を防止するには、該重合器の気相部の酸素濃度は5体積%以下であることが好ましい。
    本発明者らの検討によると、驚くべきことに、不活性ガスを該重合器内に導入することにより、支持体に沿って溶融状態で落下する残存ポリマー等の流動性が向上し、特に減圧下で処理する場合には残存ポリマー等が発泡して表面積が飛躍的に増加するとともに、その表面更新状態が極めて良くなり極めて短時間で洗浄されることが観察された。 原理は定かではないが、この残存ポリマー等の内部及び表面状態の変化が洗浄速度を飛躍的に高める原因になっているものと推定される。

    導入する不活性ガスとしては樹脂に着色や変成、分解等の悪影響を及ぼさないガスが良く、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガス及び、これらの混合ガスを含む。 不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素がより好ましく、中でも入手の容易さから窒素が特に好ましい。
    本発明で導入する不活性ガスの量は、該重合器に残存しているポリマー1g当たり0.05〜100mgとすることが好ましい。 不活性ガスの量はポリマー1g当たり0.05mg以上とすることで樹脂の発泡が十分となっ・BR>ト処理効果が高くなる。 一方100mg以下とすることで減圧度を高くすることが容易になる。 不活性ガスの量はポリマー1g当たり0.1〜50mgとすることがより好ましく、0.2〜10mgとすることが特に好ましい。

    不活性ガスを導入する方法としては、該重合器内に直接導入する方法、あらかじめ不活性ガスをポリマーに吸収及び/又は含有させ、該吸収及び/又は含有させたガスを減圧下にてポリマーより放出させて該重合器内に導入する方法、及びこれらを併用する方法が挙げられる。 ここで吸収とはポリマー中に不活性ガスが溶解し、気泡として存在しない場合を指し、含有とは気泡として存在していることを指す。 気泡として存在する場合は、気泡の大きさが細かいほど好ましく、平均気泡径が5mm以下とすることが好ましく、2mm以下とすることがより好ましい。

    洗浄は、連続的に溶剤及び/又は分子量低下剤を供給しながら、支持体に沿って流下して該重合器の底部に滞留した残存ポリマー及び/又は残存ポリマーの解重合物を含む液を連続的に抜き出すことによって実施することも出来るが、該重合器の容積に対して少量の溶剤及び/又は分子量低下剤を該重合器に導入して一定時間保持して洗浄したあとで該重合器の底部に滞留した液を抜き出して洗浄することも出来る。 後者の場合、溶剤及び/又は分子量低下剤の供給と、該重合器の底部に滞留した液の抜き出しを数回に分けて繰り返して実施する方法も好ましい。 本発明の洗浄方法によれば、溶剤及び/又は分子量低下剤の使用量はごく少量で良く、低コストで洗浄出来る。 さらに本発明の方法によれば、解重合反応速度が大きいので、従来の洗浄方法のような解重合触媒も不要である。

    本発明の洗浄に要する時間は、溶剤及び/又は分子量低下剤を該重合器に供給を開始してから、残存ポリマー及び/又は残存ポリマーの解重合物を含む液を該重合器から抜き出し終わるまでの時間で表され、1分〜100時間の範囲が好ましく、5分〜20時間の範囲がより好ましく、10分〜10時間の範囲が更に好ましく、20分〜5時間の範囲が特に好ましい。

    本発明を実施例に基づいて説明する。
    [実施例1]
    図1に示した装置を用いてPET樹脂を溶解してPET樹脂溶液を得た。
    PET樹脂を温度265℃で溶融して、移送ポンプ(A)1によって原料供給口2から多孔板3のブロックAの孔より各孔当たり3.0g/分の量にて吐出させた。 同時に溶剤としてイソホロンを移送ポンプ(B)1によって原料供給口2から多孔板3のブロックBの孔より各孔当たり7.0g/分の量にて吐出させた。

    これらの供給物を、吐出温度と同じ雰囲気温度にて支持体に沿わせて落下させながらPET樹脂を溶剤中に溶解させ、排出ポンプ8によって溶解器10から抜き出した。
    溶解器の底部にはポリマー溶液が溜まるようになっており、PET樹脂及び溶剤の供給量に合わせて抜き出すことで、連続的に溶解させた。
    多孔板は厚み50mmであり、直径1mmの孔が14個あり、これらが10mm間隔で直線状に7個配列された列を70mm間隔で平行に2列配列したものを用いた。 ブロックAに属する孔と、ブロックBに属する孔は、交互に並ぶように設計した。 支持体は直径2mm、長さ8mのワイヤーを各孔の直近に1本ずつ取り付けて垂直に垂らし、該ワイヤーと直交するように直径2mm、長さ100mmのワイヤーを100mm間隔で取り付けた格子状のものを用いた。 支持体の材質はステンレススチールを用いた。
    得られたPET樹脂の溶液のポリマー濃度は30wt%であり、溶解器の底部には溶け残りのPET樹脂は認められなかった。

    [実施例2]
    図3に示す装置を用いて、回収された廃PETボトルのフレークを溶融して移送ポンプ(A)1により原料供給口2より解重合器10に供給し、255℃の溶融状態にて多孔板3のブロックAの孔より各孔当たり7.0g/分の量にて吐出させた。 同時に分子量低下剤としてエチレングリコールを移送ポンプ(B)1により原料供給口2より解重合器10に供給し、多孔板3のブロックBの孔より各孔当たり2.3g/分の量にて吐出させた。
    これらの供給物を、吐出温度と同じ雰囲気温度にて支持体に沿わせて落下させながら85000Paの減圧度にて解重合させ、反応生成物を解重合器の底部に溜め、解重合原料(溶融ポリマー及び分子量低下剤)の供給量に併せて排出ポンプ8によって解重合器から抜き出した。

    多孔板は厚み50mmであり、直径1mmの孔が14個あり、これらが10mm間隔で直線状に7個配列された列を70mm間隔で平行に2列配列したものを用いた。 ブロックAに属する孔と、ブロックBに属する孔は、交互に並ぶように設計した。 支持体は直径2mm、長さ8mのワイヤーを各孔の直近に1本ずつ取り付けて垂直に垂らし、該ワイヤーと直交するように直径2mm、長さ100mmのワイヤーを100mm間隔で取り付けた格子状のものを用いた。 支持体の材質はステンレススチールを用いた。
    解重合器での滞留時間は15分であった。 滞留時間は解重合器内部にある反応物量を供給量によって除した値を用いている。 重合の際に多孔板より吐出したPETの激しい発泡、及びこれによる口金面や壁面等の汚染は極めて少ない一方、落下する樹脂は多量の泡を含み、支持体を速やかに流下する挙動が観察された。 また、本実施例では炭酸ナトリウム等の解重合触媒を添加することなく解重合を行ったが、短時間で効率良く解重合することができた。

    排出口から回収された液にエステル交換反応触媒として炭酸ソーダ0.5部とMeOH100部を投入し、常圧で液温を75℃、撹拌速度100rpmの状態を1時間保持し、エステル交換反応を実施した。 得られたDMT、EGとMeOHの混合物を40℃まで冷却し、ガラス製3G−4のフィルターで濾過した。 フィルター上に回収できたDMTは白色であり、解重合原料であるPET樹脂中のテレフタル酸成分に対する収率は97mol%であった。 これを45部のMeOH中に投入し、40℃に加温・撹拌洗浄し、再度ガラス製のフィルターで濾過した。 この洗浄は2回繰り返した。

    フィルター上に捕捉できたDMTを蒸留装置に仕込み、圧力6.65kPaの減圧蒸留を実施し、留分としてDMTを得た。 蒸留により精製されたDMT40部とEG75部とをセパラブルフラスコに投入し、100rpm撹拌下で昇温していくと、200℃付近でMeOHが発生し、反応開始が確認された。 留出したMeOHは2基の分離塔で系外に留去し、同伴したEG、DMT留分はフラスコ内に戻す操作を実施した。 上記操作を繰り返しながら、フラスコ内温が220〜250℃となった時点を反応終点とし、所要時間は8時間程度を要した。 得られた混合物の組成をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、DMTは反応により完全に消費されており、副生物は検出されなかった。 該分析とGPCにより、BHETは44重量%が確認された。 その他成分はそれぞれシャープな分子量分布を示しており、全て線状の2〜5量体、低級オリゴマーであることが確認できた。

    [比較例1]
    従来の攪拌槽型のPET樹脂の解重合装置に、EG200部を投入し、さらにPET樹脂50部を投入し、撹拌速度100rpmで昇温し185℃とした。 この状態で解重合反応を完結させるのに4時間を要した。
    得られた解重合物にエステル交換反応触媒として炭酸ソーダ0.5部とMeOH100部を投入し、常圧で液温を75℃、撹拌速度100rpmの状態を1時間保持し、エステル交換反応を実施した。
    得られたDMT、EGとMeOHの混合物を40℃まで冷却し、ガラス製3G−4のフィルターで濾過した。 フィルター上に回収できたDMTの色相は、実施例2に比べ黒ずんでおり、解重合原料であるPET樹脂中のテレフタル酸成分に対する収率は83mol%と低かった。

    [比較例2]
    昇温を255℃とした以外、比較例1と同様にして解重合反応を行った。 液温が185℃を越えるとPET樹脂が融着して塊状となり、解重合反応を完結させるのに1.5時間を要した。
    得られた解重合物にエステル交換反応触媒として炭酸ソーダ0.5部とMeOH100部を投入し、常圧で液温を75℃、撹拌速度100rpmの状態を1時間保持し、エステル交換反応を実施した。
    得られたDMT、EGとMeOHの混合物を40℃まで冷却し、ガラス製3G−4のフィルターで濾過した。 フィルター上に回収できたDMTの色相は、実施例2に比べ黒ずんでおり、解重合原料であるPET樹脂中のテレフタル酸成分に対する収率は78mol%と低かった。

    [実施例3]
    図7に示す装置を用いて、極限粘度[η]が0.46dl/g、ポリマー末端のカルボキシル基量が32meq/kg、結晶融点が260℃のPETプレポリマーを移送ポンプ(A)1により原料供給口2より重合器10に供給し、265℃の溶融状態にて多孔板3のブロックAの孔より各孔当たり10g/分の量にて吐出させた。 同時に極限粘度[η]が0.28dl/g、ポリマー末端のカルボキシル基量が30meq/kg、結晶融点が240℃の、PETに対して4モル%のシクロヘキサンジメタノールを共重合させたプレポリマーを移送ポンプ(B)1により原料供給口2より重合器10に供給し、265℃の溶融状態にて多孔板3のブロックBの孔より各孔当たり10g/分の量にて吐出させた。
    これらの供給物を、吐出温度と同じ雰囲気温度にて支持体に沿わせて落下させながら65Paの減圧度にて重合させ、排出ポンプ8によって重合器から抜き出した。

    多孔板は厚み50mmであり、直径1mmの孔が14個あり、これらが10mm間隔で直線状に7個配列された列を70mm間隔で平行に2列配列したものを用いた。 ブロックAに属する孔と、ブロックBに属する孔は、交互に並ぶように設計した。 支持体は直径2mm、長さ8mのワイヤーを各孔の直近に1本ずつ取り付けて垂直に垂らし、該ワイヤーと直交するように直径2mm、長さ100mmのワイヤーを100mm間隔で取り付けた格子状のものを用いた。 支持体の材質はステンレススチールを用いた。
    各プレポリマーには0.04重量%の三酸化二アンチモンと、リン元素の重量割合として100ppmのトリメチルフォスフェートを添加して製造したものを用いた。 重合器の滞留時間は70分であった。 滞留時間は重合器内部にあるポリマー量を供給量によって除した値を用いている。 重合の際に多孔板より吐出したプレポリマーの激しい発泡、及びこれによる口金面や壁面等の汚染は極めて少ない一方、落下する樹脂は多量の泡を含んでおり、泡玉状になって支持体を転げ落ちる挙動が観察された。

    重合反応終了後に重合器内部には、重縮合ポリマー、重合中間体、原料及びこれらの変性物が付着していた。
    次いで重合器を洗浄する目的で、分子量低下剤としてトリエチレングリコールを移送ポンプ(B)1を用いて原料供給口2より重合器10に供給し、多孔板3のブロックBの孔より重合器10の容積に対して、常温常圧での液容積が1容積%に相当する量のトリエチレングリコールを導入した。
    重合器内部に付着した重縮合ポリマー、重合中間体、原料及びこれらの変性物を、雰囲気温度270℃、減圧度80000Paにて、トリメチレングリコールの蒸気と接触させることによって、支持体に沿わせて落下させながら、30分間洗浄した後、解重合物の溶液を重合器の底部から排出ポンプ8によって抜き出し、重合器内部を開放して観察したところ、重合器の内部は清浄化され、金属光沢を示していた。 また、解重合物の溶液は均一かつ低粘度に分解されており、容易に抜き出すことが出来た。

    [比較例3]
    多孔板3として、ブロックAの孔5個と、ブロックBの孔5個とが交互に円形に配置されたものを用い、支持体としては内径15cm、長さ8mのパイプを設置し、孔から出たプレポリマーがパイプ内壁に沿って落下するようにした以外、実施例3と同様にして重合を行った。 のぞき窓4から、パイプの下端から落下するポリマー流を観察したが、多量の泡を含んではいなかった。 得られたポリマーには色むらがあり、また重合度も低かった。
    重合反応終了後に重合器内部には、重縮合ポリマー、重合中間体、原料及びこれらの変性物が付着しており、パイプの下端からこれらの残存ポリマーが徐々に垂れてくる様子が観察された。

    次いで重合器を洗浄する目的で、分子量低下剤としてトリエチレングリコールを移送ポンプ(B)1を用いて原料供給口2より重合器10に供給し、多孔板3のブロックBの孔より重合器10の容積に対して、常温常圧での液容積が1容積%に相当する量のトリエチレングリコールを導入した。
    重合器内部に付着した重縮合ポリマー、重合中間体、原料及びこれらの変性物を、雰囲気温度270℃、減圧度80000Paにて、トリメチレングリコールの蒸気と接触させることによって、支持体に沿わせて落下させながら、30分間洗浄した後、解重合物の溶液を重合器の底部から排出ポンプ8によって抜き出し、重合器内部を開放して観察した。 支持体の内壁には片流れの跡(ポリマーが黄色く変色した筋状の跡)及び、洗浄が不十分なため残存した少量のポリマーの付着が観察された。 重合器の底部にもポリマーの付着が認められた。 また解重合物の溶液は不均一であり、低粘度の部分と高粘性の部分とが混合した状態であった。
    このような挙動の違いは、比較例3ではパイプの内壁面に沿って残留ポリマーが片流れしたとともに残留ポリマーが集合して塊状になり、解重合反応速度が著しく低下したためと推定される。

    本発明の熱可塑性ポリマー溶液の製造方法によれば、大量のポリマーを効率良く溶解することができるので、PET樹脂等の溶液を製造する方法として好適に使用できる。
    また本発明の重縮合ポリマーの解重合方法によれば、大量の重縮合ポリマーを高効率かつ低コストで処理することができるので、PET樹脂等を再利用する方法として好適に用いることができる。
    さらに本発明の洗浄方法によれば、高品質のポリマー及びその成形体を溶融重縮合によって低コストで製造することができる溶融重合器を効率良くかつ低コストで洗浄することができるので、該重合器の洗浄方法として好適に使用できる。

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