【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、異方性溶融相成形(me lt-phase forming)液晶ポリマー中の黒色斑点を減少させる方法に関する。 【0002】 【従来の技術】「黒色斑点(black specks)」と称される黒っぽい外観の粒状不純物が、異方性溶融相成形液晶ポリマー中に見られる。 これらの不都合な外観以外にも、非常に多くの黒色斑点の存在によって、ポリマーの特定の最終用途(例えば、繊維またはフィルム)に問題が生じ得、黒色斑点が存在することにより、不連続性部位が導入され、その結果、潜在的に応力及び弱い部分ができてしまう。 【0003】黒色斑点は、ポリマー生成又は使用の間、 例えば、重合、コンパウンディング、加工等の際に、多くの部位で発生し得る。 不純物及び分解生成物は、黒色斑点の主な原因であるが、非常に多くの原因によって黒色斑点が生成するので、往々にしてその原因物質を取り出したり及び/または排除するのは非常に困難である。 これらの黒色斑点は製品段階で重大な影響を与えるため、重合時に形成した黒色斑点を除去することは非常に重要である。 【0004】洗浄操作時に不純物及び分解生成物を効果的に除去することによって、黒色斑点の形成を減少させ得る手段が提供される。 溶媒の選択は反応器の洗浄で重要な因子であり、黒色斑点が次の重合時に生成する度合いに影響を及ぼすことが見出された。 多くの反応器の洗浄操作で通常使用される溶媒は、エチレングリコールである。 サーモトロピック液晶ポリマー、特に高い溶融温度のポリマーを製造するのに使用した反応器を洗浄する際、エチレングリコールは、繊維またはフィルム用途に使用するのに好適なポリマーとするレベルまで、次なる重合時に形成する黒色斑点の量を減少させるのに十分な洗浄作用を提供し得ない。 【0005】従って、本発明の目的の一つは、異方性溶融成形液晶ポリマーの製造時に、黒色斑点の発生を減少させる方法を提供することである。 本発明のもう一つの目的は、同様の物質の重合の実施時に黒色斑点の発生を最小とするように、異方性溶融成形液晶ポリマーを製造する反応器の洗浄するための方法を提供することである。 【0006】 【発明の概要】特定の反応器洗浄方法を用いることによって、黒色斑点の形成を減少し得ることが見出された。 本発明によって、異方性溶融成形ポリマーが形成された反応器に、トリエチレングリコール洗浄、エチレングリコール洗浄及び少なくとも1回の水洗浄の連続洗浄を適用することを含む、改良反応器洗浄方法を提供する。 この洗浄方法は、トリエチレングリコールまたはエチレングリコール洗浄のいずれかの後に水洗浄を含む方法と比較して、黒色斑点の形成を減少させることが見出された。 【0007】 【詳細な説明】本発明の実施に於いて、最初にトリエチレングリコール(“TEG”)を、ポリマーが予め取り出された反応器に導入する。 系を非反応性気体、例えば、窒素でフラッシュし、次いでTEGを系に導入する間、非反応性雰囲気を保持することによって、反応器の冷却を最小にし、洗浄操作に関するサイクル時間を減少させ、コストを削減する手段が提供される。 TEGを、 ポリマーを洗い出すのに十分な量で反応器に添加し、残存するポリマーがグリコール化し得る温度に加熱する。 TEGを反応器を通して循環させるが、これは反応器に付設した補助(auxiliray)系、即ち、ユニット全体の洗浄を開始するためのカラム、コンデンサなどを含むものと解される。 【0008】次いで、反応器を排水し、ポリマーを完全に一掃するのに十分な量のエチレングリコール(“E G”)を充填する。TEGの場合と同様に、非反応性雰囲気下でEGを充填すると、反応器を冷却する必要性を最小にできる。続く洗浄操作で充填されたEGは、高温、高圧下で反応器を通して循環し、残存するTEGを全て取り除き、さらなる洗浄作用を提供する。 【0009】次に反応器を排水し、残存するEGを除去するのに十分な水で洗浄する。 水洗浄後、ユニットを排水し、乾燥する。 乾燥は、通常、非反応性気体、例えば、窒素をパージし、次いで脱気することにより実施する。 【0010】黒色斑点の含有量が減少すること以外に、 本発明の洗浄工程の後に製造されたポリマーは、TEG 洗浄後に水洗浄にかけたユニット中で製造したポリマーよりも、融点のばらつきが少ないという傾向を有することが見出された。 特に理論に縛られる意図は無いが、融点のばらつきは残存TEGによって引き起こされると考えられる。 本発明の方法に含まれる連続洗浄段階は、特にTEG除去に十分に適合していると考えられる。 【0011】コスト及びユニット停止時間を最小とするために、通常、有効な洗浄を実施し得る溶媒洗浄を最小回数で実施するのが望ましい。 可能ではあるが、追加の洗浄は通常は本発明により達成された効果に顕著な優位点を加えない。 【0012】最初のTEG洗浄で反応容器に充填される溶媒量は、通常、容器の約5〜約15容量%である。 T EGが少量であると、良好な洗浄を行うのに不十分であり、可能ではあるが15容量%を超える量のTEGを使用すると、コスト的に不利である。 良好な洗浄作用を維持するためには、反応器内の圧力と容積状態を調節して溶媒を激しく発泡させることが好ましい。 通常、TEG は、反応容器内で、加圧下、温度約300〜約360℃ に加熱する。 温度は、洗浄前に反応器内で製造した特定のポリマーに依存して変動し得る。 融点が270〜37 0℃のサーモトロピック液晶ポリマーの反応器を洗浄する際は、約330〜約355℃の温度を用いることが特に重要である。 【0013】系の圧力は、反応器の大きさ及び形状に依存して変動し得るが、通常の洗浄では、通常圧力は約3 5〜60psiであり、約40〜約50psiが特に好ましい。 洗浄時間は、使用した溶媒量、反応器形状及び条件に依存して変動し得るが、最初の溶媒洗浄の循環は、通常約1〜約4時間維持する。 【0014】最初の溶媒洗浄時、TEGは劣化してEG とジエチレングリコールになる傾向がある。 TEGと他のグリコール類の混合物で最初の洗浄を開始することも可能であるが、混合溶媒で開始すると、上記に特定した圧力で所望の洗浄温度を達成するのが困難となる。 洗浄操作でTEGを360℃以上の温度に加熱することは、 次の重合に悪影響を与え得ることも見出された。 特に理論に縛られる意図は無いが、最初の溶媒洗浄時に反応器を過熱すると、生成物を生じ、これが系から除去されないと、後の重合を汚染するタールが形成する可能性があると考えられる。 【0015】最初の溶媒洗浄条件下、蒸発した溶媒は反応器から補助系の種々の部分をくまなくフラッシュする。 フラッシュした溶媒は、反応容器に戻してリサイクルするのが望ましい。 補助系は、蒸留受器で終結する1 つ以上のコンデンサをつけた充填塔を備え、溶媒のリサイクルは蒸留受器にポンプドライブをつけることにより容易に実施できるように配置される。 ガスカラムに戻す溶媒を散布するためにリサイクルポンプを使用することにより、反応容器内に溶媒のレベルを保持し易くなる。 激しく溶媒を発泡させつつ溶媒レベルを維持することにより、良好な洗浄作用が達成し易くなる。 【0016】次なるEG洗浄に於いては、溶媒は、通常反応容器に約3〜約15容量%の量で導入される。 EG 量が少ないと、残存する溶媒の除去に不十分であるが、 溶媒量が多いと、費用面から望ましくない。 EG洗浄時、反応容器の温度は、通常約200〜約260℃に保持される。 通常の洗浄では、約240〜約255℃の温度が特に重要である。 EG洗浄の通常圧力は約30〜約60psiであるが、通常の洗浄では約40〜約50psiの圧力が特に重要である。 EGレベル並びに反応器のサイズ及び配置に依存して、EGの循環は通常、約1/2〜 約3時間保持される。 溶媒レベル及び費用節約の観点から、リサイクル機構を用いることが望ましい。 【0017】異方性溶融成形ポリマーを形成する反応器を洗浄する特に重要な方法は、(a)ポリマーを取り出した反応器に、残存ポリマーを洗い出すのに十分な量のトリエチレングリコール溶媒充填物を導入し、(b)溶媒を、温度約330〜約355℃に加熱して、反応器内部から残存ポリマーの除去を開始し、(c)反応器を通して溶媒を循環させ、(d)反応器から溶媒を排水し、 (e)ポリマーの洗い出し及び残存TEGの除去を完了するのに十分な量のエチレングリコールを反応器に導入し、(f)EGを温度約240〜約255℃に加熱し、 (g)反応器を通してEGを循環させ、(h)反応器からEGを排水し、(i)残存するEGを除去するのに十分な量の水を反応器に導入し、(j)水を沸騰させて、 反応器を通して沸騰水を循環させ、(k)反応器から水を排水し、(l)段階(i)から(k)を繰り返して、 第2の水洗浄を実施し、次いで(m)反応器を乾燥する段階を含む。 【0018】本発明の方法は、液晶が形成される異方性溶融相を形成し得るサーモトロピックな、溶融加工可能なポリマーを製造した重合容器を洗浄するのに特に適合することが見出された。 そのようなポリマーの中には、 全芳香族ポリエステル類、芳香族-脂肪族ポリエステル類、全芳香族ポリ(エステル−アミド)類及び芳香族- 脂肪族ポリ(エステル-アミド)類等が含まれる。 【0019】 【実施例】以下の実施例は、本発明を詳細に示すためのものである。 しかしながら、実施例は、本発明を限定するものではない。 実施例中で報告される平均の黒色斑点の値は、以下のようにして決定される。 【0020】Carverラボラトリープレス(モデル2518) のプレートを288℃に予熱し、離型剤としてDexter C orporation製のFrekote44を軽く噴霧した。 ポリマーサンプル5グラムを底プレートに置き、プレスをかけ、 加熱されたプレート間にサンプルを5000psiで2分間保持した。 得られたプラックをプレスから除去し、冷却した。 この方法を3回実施して、3つの別個のプラックを製造した。 3つのプラックのうちの1つを、明るいテーブル上に置き、2分間かけて検出されたすべての斑点を数え、その数を記録した。 斑点の計測方法は、残りの2つのプラックの各々に関して繰り返した。 3つのプラックに関する斑点の平均数が、黒色斑点の値である。 【0021】 【実施例1】窒素源、充填塔、コンデンサ、蒸留受器及び、受器から充填塔に留出物の霧が戻るように配置されたリサイクルポンプを備えた油加熱のステンレススチール反応器を使用して、融点275〜285℃を有し、ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸から誘導された繰り返し単位からなる液晶ポリマーを製造した。 溶融ポリマーを反応器から取り出し、反応器を約3 25℃に冷却した。 【0022】反応器を窒素でフラッシュし、窒素充填下、TEGの溶媒充填物10容量%で満たした。 TEG を40psi圧力下で345℃に加熱すると、溶媒は激しく沸騰した。 溶媒の沸騰を2時間維持し、この間に受器に集った留出物を充填塔の上部に噴霧し、充填されたT EGの70%を反応器内に保持した。 窒素圧力下、底バルブを開口し、溶媒をドレインタンクに排水することによりTEGを反応器から除去した。 【0023】6容量%の量のEGを反応器に導入した。 EGを40psi圧力下で245℃に加熱した。 これらの条件を45分間維持し、この間に受器に集められたEG を充填塔に噴霧して、反応器中に充填EGの70%を保持した。 その後EGを反応器から排水した。 【0024】反応容器に水を6容量%の量で導入し、加熱して沸騰させた。 これらの条件を45分維持し、その後、水を系から排水した。 この工程後、第2の水洗浄を実施した。 第2の水洗浄の水を除去後、系を窒素パージし、水銀圧力15mmに減圧し、反応器を乾燥させた。 【0025】次いで、反応器を使用して、上記の如くポリマーを製造した。 これらの重合及び洗浄工程を20回繰り返した。 これらの20回の実施の平均から、黒色斑点の平均値6個の粒子を有するポリマーが得られた。 【0026】 【比較例1】実施例1の記載と同様のものを付設した油加熱のステンレススチール反応器を使用して、融点27 5〜285℃を有し、ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸から誘導した繰り返し単位からなる実施例1に記載したのと同様の液晶ポリマーを製造した。 溶融ポリマーを反応器から取り出し、反応器を温度約3 25℃に冷却した。 【0027】窒素充填下、反応器に窒素をフラッシュし、TEG溶媒充填物10容量%を充填した。 TEGを圧力40psi下で345℃に加熱すると、溶媒は激しく沸騰した。 溶媒の沸騰を2時間維持し、この間に受器に集まった蒸留物を充填塔の上部に噴霧し、充填されたT EGの70%を反応器中に保持した。 窒素圧力下、底バルブを開口し、溶媒をドレインタンクに排水することによりTEGを反応器から除去した。 【0028】水を反応容器に8容量%導入し、加熱して沸騰させた。 これらの条件を45分維持し、この後、水を系からドレインした。 第2の水洗浄をこの工程後に実施した。 第2の水洗浄の水を除去し、系を窒素パージし、水銀圧力15mmで脱気して反応器を乾燥させた。 【0029】次いで反応器を使用して、上述のポリマーを製造した。 これらの重合及び洗浄段階を20回繰り返した。 これらの20回の繰り返し実施の平均により、黒色斑点の平均値47個の粒子を有するポリマーが得られた。 【0030】 【比較例3】実施例1の記載と同様のものを付設した油加熱したステンレススチール反応器を使用して、融点2 75〜285℃を有し、ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸から誘導した繰り返し単位からなる実施例1に記載したものと同様の液晶ポリマーを製造した。 溶融ポリマーを反応器から取り出し、反応器を温度約325℃に冷却した。 【0031】窒素下、反応器を窒素でフラッシュし、E G溶媒充填物10容量%を充填した。 EGを圧力60ps i下で250℃に加熱すると、溶媒は激しく沸騰した。 溶媒の沸騰を2.5時間維持し、この間に受器に集まった蒸留物を充填塔の上部に噴霧し、充填されたEGの7 0%を反応器中に保持した。 窒素圧力下、底バルブを開口し、溶媒をドレインタンクに排水することによりEG を反応器から除去した。 溶媒除去後、さらにこの工程を実施するのには不十分なポリマーがタンクから除去されたことが見出された。 フロントページの続き (72)発明者 ジョン・ディー・ワズマンド アメリカ合衆国サウス・カロライナ州 29340,ガフニー,ウッドサイド・ドライ ブ 203 |