ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材およびその用途

申请号 JP2016523608 申请日 2015-05-27 公开(公告)号 JP6420830B2 公开(公告)日 2018-11-07
申请人 積水化成品工業株式会社; 发明人 道畑 直起; 石田 真司; 寺田 武徳; ▲高▼原 淳志; 有路 昌彦;
摘要
权利要求

高分子化合物を含む基材、及び 前記基材の表面の少なくとも一部を被覆し、且つ、最表層に配置された、抗酸化剤の層 を含み、 前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、前記抗酸化剤が0.01g/m2以上、20g/m2以下含まれる、 前記基材の、少なくとも前記抗酸化剤の層により被覆される部分が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及び、ポリビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の層により構成されており、 前記抗酸化剤が、ポリフェノール化合物又はアスコルビン酸を含む、 ミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制するための、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。高分子化合物を含む基材、及び 前記基材の表面の少なくとも一部を被覆し、且つ、最表層に配置された、抗酸化剤の層 を含み、 前記抗酸化剤が、ポリフェノール化合物又はアスコルビン酸を含む、 以下の条件 (I)前記抗酸化剤が、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、0.92mg/m2以上、1840mg/m2以下のロスマリン酸を含む; (II)前記抗酸化剤が、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、1.2mg/m2以上、2400mg/m2以下のカルノソールを含む; (III)前記抗酸化剤が、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、0.74mg/m2以上、1480mg/m2以下のカルノシン酸を含む; (IV)前記抗酸化剤が、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、0.01g/m2以上、20g/m2以下のアスコルビン酸を含む; のうち少なくとも1つを満足する 前記基材の、少なくとも前記抗酸化剤の層により被覆される部分が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及び、ポリビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂の層により構成されており、 ミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制するための、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。前記抗酸化剤が、ポリフェノール化合物を含むローズマリー抽出物及び/又は茶抽出物を含む、請求項1又は2に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。前記抗酸化剤が、ポリフェノール化合物を含む溶性ローズマリー抽出物を含む、請求項3に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積1m2当たりの前記抗酸化剤の質量をTとし、 前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材の一辺が5cmの正方形の板状又はフィルム状の試料片を1つ、温度4℃、容量1000mLの蒸留水の中に浸漬したとき、以下の特性: 浸漬開始から10秒後に前記面積1m2当たり0.05T以上の質量の前記抗酸化剤が前記基材から前記蒸留水中に溶出し、 浸漬開始から30分後に前記面積1m2当たり0.15T以上の質量の前記抗酸化剤が前記基材から前記蒸留水中に溶出する を示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。請求項1〜5のいずれか1項に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材と、 包装材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材及び前記ミオグロビン含有食品が、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤の層に被覆された表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする、食品包装体。請求項1〜5のいずれか1項に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記ミオグロビン含有食品が、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤の層に被覆された表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする、食品包装体。請求項1〜5のいずれか1項に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、 更なる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材及び前記ミオグロビン含有食品が、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤の層に被覆された表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されており、且つ 前記包装材により、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材及び前記ミオグロビン含有食品が、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤の層に被覆された表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする、食品包装体。前記ミオグロビン含有食品が、ミオグロビンを含有する魚肉である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の食品包装体。前記魚肉がアジ科に属する魚の肉である、請求項9に記載の食品包装体。前記魚肉が、表面の一部が表皮で覆われたフィレ、表面の一部が表皮で覆われたロイン、表皮を剥いだロイン、又は切身であり、 前記包装材内で、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材及び/又は前記包装材とは別の前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の、前記抗酸化剤の層に被覆された表面と、前記フィレにおける表皮で覆われた表面、前記表面の一部が表皮で覆われたロインの表皮で覆われた表面、前記表皮を剥いだロインにおける表皮を剥いだ表面、又は切身の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されている、請求項9又は10に記載の食品包装体。請求項6〜11のいずれか1項に記載の食品包装体を保存及び/又は輸送する方法であって、 前記食品包装体を−30℃〜+10℃の温度条件において保存及び/又は輸送する工程を含む方法。

说明书全文

本発明は、ミオグロビン含有食品の変色、悪臭、食感の劣化、そしてドリップ量等の鮮度劣化を抑制するための、ミオグロビン含有食品の鮮度劣化抑制材、それを含む食品包装体、及び食品包装体の保存又は輸送方法に関する。 本発明はまた、ミオグロビン含有食品の変色を抑制するための、ミオグロビン含有食品変色抑制材、それを含む食品包装体、及び食品包装体の保存又は輸送方法に関する。

近年、人口減少と食文化の変化から産物の日本国内マーケットは減少傾向にある。しかし世界的には寿司、刺身などの日本食が広まり、アジア諸国等の購買アップによる高級食材需要の高まりが見込まれている。日本の水産物を海外に輸送するためには、輸送技術、鮮度保持技術が必要である。 日本国外では、サーモンに代表される脂身の多い魚が多く消費されている。また、日本国外では淡白で脂質の多い魚は比較的少なく、そのような身を有する淡水魚が消費されることはあるが、海水魚は少ない。 一方、日本近海では、淡白で脂質の多い魚が多く存在し、例えばアジ科に属する魚が多く生息している。その代表例がブリである。現在このブリは日本国内(愛媛県、鹿児島県等)で養殖が盛んである。このためブリは国外に輸出するのに適した魚種である。 魚肉の品質は一般的に、外観(色、形等)、味、食感等に基づき評価される。特に一般の小売店などでは、判断が容易な外観に着目して魚肉の品質が評価される。この様に、色、形等の外観により魚肉の品質が判断されることは通常である。これは、店先で販売する魚肉の鮮度を確認するために、全ての魚肉の味や食感を確認することは、作業時間を要し容易でないためである。また、魚の購入者も同様で、店先で商品を選ぶ際に、切身の場合は断面の色を基準とする事が多い。 ところが、ブリのような魚肉に血合肉を含む魚肉では、ミオグロビンというタンパク質が筋肉中に存在する。ミオグロビンは魚肉の血合肉を構成する主たる成分である。ミオグロビンは、血中のヘモグロビンよりも酸素分子との親和性が高いため、生体内では、ミオグロビンが血中の酸素を受け取り、代謝時これを放出する。この様に、生体内でミオグロビンの酸化還元機構が構築されており、これにより生態活動が維持できている。 通常のミオグロビンはヘム中に2価の鉄イオン(Fe2+)を含む。これに酸素分子が配位するとオキシ−ミオグロビンとなり、更に酸化されると3価の鉄イオン(Fe3+)を有するメト−ミオグロビンとなる。魚の生体内ではメトミオグロビンは酵素の作用により還元されてFe2+を含む通常のミオグロビンとなるため、メトミオグロビンが蓄積することはない。しかし魚の死後は、酸素の授受(酸化還元反応)のメカニズムが失われ還元作用がなくなる。すなわち、酸化反応(酸素の受け取り)の進行が急激に増加する。一般的にこの酸化の進行を「メト化(metmyoglobin formation)」(ミオグロビンの自動酸化)という。 このメト化が進行すると、魚肉中の血合肉は鮮赤色から褐色又は灰色へと変化し、魚肉の外観が著しく悪化する。 また、メト化は−30℃以下の温度条件ではほぼ進行しないことから、日本国内ではブリなどの血合肉を含む魚肉は長時間の輸送や保存を強いられる場合は、−30℃以下の温度を保持できる低温物流体系(コールドチェーン)により流通される。冷蔵(4℃)で輸送する際は、短時間で流通可能な生鮮食品のみとなっている。 しかし、日本国外でのコールドチェーンは、−20℃の温度での流通形態が一般的である。なぜならば、日本国外では畜肉の流通が大半を占め、この流通形態では−20℃でも十分であるからである。−20℃の温度を保持するコールドチェーンにより魚肉のメト化を抑制することは困難である。 また、−30℃以下で魚肉を流通させるコールドチェーンが構築されていない国々で早期にそれを確立することは容易なことではない。 メト化しやすい魚肉を−20℃以上のコールドチェーンにより輸送する場合に魚肉の外観の劣化を抑制する手段の一つとしては、魚肉を包装する際に包装容器内の雰囲気をCO(一酸化炭素)ガスに置換し輸送する方法が挙げられる。COは酸素よりも強くミオグロビンに配位することができる。これにより酸化を抑制し、COが配位したミオグロビン(カルボキシミオグロビン)は鮮やかな赤色を呈する。 しかしながら、ミオグロビンを有する魚肉をCOにより処理した場合、処理後長時間が経過しても赤色が保持され外観の劣化が生じないため、消費者が新鮮な魚肉であると誤認する原因となり、食中毒の原因にもなりかねないことから、COによる魚肉の処理は日本では1994年に食品衛生法により禁止された。現在、欧州でも禁止されており、今後アメリカでも禁止される予定である。また、細胞の破壊もまねくことから、見た目(色目)は鮮やかであるが、鮮度劣化を伴っていた。 上記の通り魚肉等のミオグロビン含有食品の鮮度の判別指標として色が重要である。しかしながら、ミオグロビン含有食品の鮮度は、色だけでなく、形体、食感、におい、ドリップ量、後述するK値等の観点から、総合的に評価されるべきものである。 魚肉などのミオグロビン含有食品の鮮度劣化を客観的な数値で評価する指標としてはK値が知られている。魚肉中にはエネルギー源としてアデノシン三リン酸(ATP)が存在しており、魚の死後、この物質は筋肉中の酵素作用により急速に減少し、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)を経て、旨味成分であるイノシン酸(IMP)、さらに分解が進みイノシン(HxR)やヒポキサンチン(Hx)を蓄積していく。活きの良い魚ではATP、ADP、AMP、IMPが多く、一方、活きが悪くなるにつれて、HxR,Hxが増加していく。K値とは、1959年北海道大学名誉教授の斉藤恒行の提唱による、(A式)で示すようなATP関連化合物の総量に占めるイノシンとヒポキサンチンの総量を百分率で表した値である(非特許文献2)。このK値は、即殺魚10%以下、刺身の目安として20%前後、初期腐敗として60%程度の数値を示す。この値により評価できる鮮度低下速度は、魚種により異なり、一般的にタラ類は速く、タイやヒラメの白身魚では遅い。 K値(%)=[HxR+Hx]/[ATP+ADP+AMP+IMP+HxR+Hx]×100・・・・・・・(A) ミオグロビンを含む魚肉の変色や鮮度劣化を防ぐには魚肉の酸化を防止する必要がある。CO処理を用いずに、魚肉の酸化を防ぐための従来公知の方法は、(1)酸素と魚肉との接触を避ける方法、(2)魚肉の酸化を防止する方法、の2つに大別できる。 上記(1)として代表的なものは魚肉を真空パックする方法である。しかし魚肉内部に含まれる酸素を完全に脱気することは困難であり、過剰に脱気すると大気圧により魚肉が圧縮され潰れてしまう。また、真空パックのみでは流通中の衝撃や長期流通によりシール部よりパック内に酸素が入り込む可能性が高い。 上記(2)としては、 (2−1)抗酸化剤の溶液に魚肉を浸漬させる、 (2−2)魚肉と抗酸化剤とを混合する、 (2−3)魚肉を特定の条件で冷凍する、 (2−4)ミオグロビンにとってリガンドとして作用する成分を供給する薬剤を含むフィルムにより魚肉を包装する、 (2−5)生魚に抗酸化作用を有する餌を与える、等の方法が挙げられる。 上記(2−1)の方法としては以下の例が公知である。特許文献1は、魚肉をヒノキチオール溶液に浸漬する方法を開示する。特許文献2は、魚肉を、ヒノキチオールと、麹酸、アスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウムのうちの一種とを含む溶液に浸漬する方法を開示する。特許文献3は、魚肉をトレハロースと、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムとを含む溶液に浸漬する方法を開示する。特許文献5は、アスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウム、フェルラ酸及びpH調整剤を含む魚肉の退色及び/又は変色防止剤を開示し、退色及び/又は変色防止剤の水溶液に魚肉を浸漬する方法と、退色及び/又は変色防止剤を魚肉に直接添加する方法を開示する。恃許文献11は、鶏肉をローズマリーの温水による抽出溶液を含む海水に浸漬する方法を開示する。特許文献13は、肉片をローズマリー水溶液(ロスマリン酸、カルノジック酸、カルノソール)に浸漬する方法を開示する。 上記(2−2)の方法としては以下の例が公知である。特許文献1及び2は、ヒノキチオール等の抗酸化剤を魚肉のミンチに配合することを開示する。特許文献4は、マグロ肉を粉砕して得られるミンチにアスコルビン酸、エリソルビン酸等の抗酸化剤(還元剤)を配合することを開示する。特許文献5は、アスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウム、フェルラ酸及びpH調整剤を含む魚肉の退色及び/又は変色防止剤を魚肉のミンチに直接添加することを開示する。特許文献9及び10は、参考例として、サイコロ状にカットした魚肉をローズマリー抽出物の水溶液に浸漬することを開示する。特許文献12は、マグロ肉のミンチにアスコルビン酸類を添加することを開示する。 上記(2−3)の方法として以下の例が公知である。特許文献6は、魚肉を−30℃以下の温度(実施例では−50℃)に急速凍結することにより、魚肉の変色を抑制する方法を開示する。 上記(2−4)の方法としては以下の例が公知である。特許文献7は、ミオグロビン含有食品の変色を抑制するための食品包装製品を開示する。当該食品包装製品はミオグロビンブルーミング剤を含有する食品接触層と酸素バリア層とを備えることを特徴としている。特許文献7においてミオグロビンブルーミング剤とは、新鮮肉製品中に存在し、赤色新鮮肉を表示する赤色等の求められる色を生成し保存する、いずれの非変性ミオグロビン含有構造(デオキシミオグロビン、オキシミオグロビン、メトミオグロビン、カルボキシミオグロビン、及び一酸化窒素ミオグロビンを含むがこれらに限定されない)へ結合し、又は相互作用するいずれの薬剤(又はその前駆体)を言う、と定義されている。ミオグロビンブルーミング剤としては、一酸化窒素供与化合物、窒素複素環化合物、一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素(N2O)供与化合物、アンモニア(NH3)供与化合物、硫化水素供与化合物が挙げられている。特許文献7においては、これらのミオグロビンブルーミング剤により供与される一酸化窒素、窒素複素環化合物、一酸化炭素、亜酸化窒素(N2O)、アンモニア又は硫化水素が、ミオグロビンにとってリガンドとして作用し、新鮮肉中のミオグロビンの色を保持できると考えられる。更にまた、特許文献8は特許文献7と同じ出願人による国際特許出願であり、一酸化窒素含有化合物を含有する食品接触層と酸素バリア層とを備える食品包装用フィルムを開示する。特許文献8は特許文献7と同様に、ミオグロビンにとってリガンドとして相互作用する、亜硝酸塩等の、窒素酸化物を含有する化合物を含有するパッケージフィルムをミオグロビン含有食品に接触させることで、ミオグロビン含有食品に望ましい色を付与する技術を開示する。特許文献8には窒素酸化物を含有する化合物の作用がローズマリーエキスにより強化されることを示唆している。 上記(2−5)の方法として、非特許文献1には、ハマチに約1ヶ月間かけて茶粉末を0.02%又は0.2%含有させた餌を与えた場合に、該ハマチから採取された魚肉はメト化しにくいことが報告されている。特許文献9、10においても、特定の飼料を魚類に与えることにより、刺身に加工したときの魚肉の色調変化を抑制することが開示されている。 特許文献14は、食品等の劣化防止剤としてローズマリー抽出物に含まれるロスマリン酸等が有効であること、並びに、前記劣化防止剤を含有するプラスチック製品を開示する。前記プラスチック製品として食品包装材が例示されている。ただし前記プラスチック製品中の劣化防止剤の使用割合は最も具体的な値でも0.0005〜5重量%という非常に幅広い範囲が記載されているに過ぎず、具体的な実施形態は記載されていない。

特開平7−135895号公報

特許平7−135896号公報

特許第4391029号公報

特開2006−212004号公報

特開2011−206042号公報

特開2012−196181号公報

特開2008−7203号公報

国際公開WO2005/097486

特開平11−266792号公報

特開2009−232864号公報

特開2003−93016号公報

特開2006−345797号公報

特開2011−30490号公報

特開2005−298816号公報

日本食品科学工学会誌第47巻第10号2000年10月,p.767〜772

ビジュアルでわかる魚の鮮度 −おいしさと安全へのこだわり−、渡邊悦生 他 著、(株)成山堂書店発行、平成19年12月18日 初版、p.46〜55

上記の(2−1)〜(2−5)の方法は以下の問題があり、魚肉のメト化を防止、それに伴う鮮度劣化を抑制する手段として必ずしも満足できるものではなかった。 上記(2−1)の方法は、各種抗酸化剤の溶液を調製するには、多量の抗酸化剤や水などの溶媒が必要であり、それらの大部分は魚肉中に吸収されず、浸漬後は溶液を廃液として捨てなければならないため経済的ではない。そして、魚肉を浸漬する時間も少なからず必要となる為、この浸漬工程中にもメト化や、鮮度劣化は進行する(溶媒の大半が水であり、0℃以下での浸漬は不可能である。)。特に、フィレ形状の様な肉厚な魚には、相応の浸漬時間が必要である。そして、連続的に魚肉を抗酸化剤の液体に浸すと、抗酸化剤の劣化を招き、求めている抗酸化剤効果を発現できなくなる。また、溶液中での浸漬処理により魚肉の物性、形状、そして味が変化してしまうという問題もある。更に、血合肉と普通肉を併せ持つ魚肉を抗酸化剤の溶液中で浸漬すると、普通肉が変色する恐れがあり、選択的、且つ操作的に効果を発現させることは困難である。 しかも、魚のフィレに存在する表皮(うろこ面、またはスキン面)には、ボツリヌス菌、腸炎ビブリオ菌、大腸菌などの多くの菌が存在する。抗酸化剤を溶かした水溶液に魚のフィレを浸すと、菌が身全体に移動する可能性がある。また、連続的に多くのフィレを浸すと、菌量も増える。このため上記(2−1)の方法を魚肉に適用すると、鮮度劣化を抑制できないだけでなく、更なる鮮度劣化を促進する可能性もある。 また、連続的に多くの魚のフィレを浸すと、魚個体ごとに吸収する抗酸化剤量が異なり、溶液中の抗酸化剤の濃度が変動する可能性が高く、定量的に抗酸化剤を浸す事が出来ない。 浸漬後の魚肉の状態を一定に保持するためには、魚の個体に応じて、浸す時間を検討する必要がある。具体的には、個体ごとの身の締り、死後硬直度などによって、魚体に浸透させるための時間の検討が必要である。このような個別の調整は困難であるため上記(2−1)の方法は産業的な応用には向かない。 上記(2−2)の方法では、(2−1)の方法とは違って、外的要因がなく、魚肉のメト化や鮮度劣化を抑制できるが、魚の形状を変えなければならないため、切身などの形状を残して流通する食品には使用できないという問題がある。また魚肉を粉砕する工程が別途必要である。更に、魚肉を粉砕する事により、魚肉の水分が流出して魚肉の品質が低下する可能性がある。 上記(2−3)の方法を実施するには専用の設備が必要である。また、急速凍結を行うための工程に新たな時間を要する。 上記(2−4)の方法として特許文献7及び8が開示するのは、ミオグロビンにリガンドとして結合する物質を用いてミオグロビンの変色を抑制する方法である。特許文献7及び8に開示された技術は、一酸化炭素ガスでの魚肉の処理によるミオグロビンの変色防止技術と本質的に同じ技術である。したがって、処理後長時間が経過しても赤色が保持され外観の劣化が生じないと考えられ、従来の一酸化炭素ガスでの魚肉の処理と同様の問題を有している可能性がある。すなわち、上記(2−4)の方法では、ミオグロビンを変性させ、強制的に鮮赤色にさせることにより、鮮度劣化による変色を分かり難くするだけであり、鮮度劣化を抑制することはできない。 上記(2−5)の方法では魚肉を出荷する前の生魚の段階から餌を長期的に与え続けなければならないという問題がある。また、給餌量により、魚間でも鮮度保持効果に差が生じる可能性がある。そして、餌に配合される茶抽出物等の抗酸化剤の大部分は魚に吸収されず経済的でないという問題も考えられる。 そこで本発明は、ミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制することができる簡便な手段を提供することを解決課題とする。本発明はまた、−30℃を超える温度においても、任意の形状のミオグロビン含有食品の酸化による変色を防止することができる簡便な手段を提供することを解決課題とする。 上記課題を解決するための手段として本明細書では以下の発明を開示する。 (1) 高分子化合物を含む基材、及び 前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する抗酸化剤、及び/又は、前記基材の表面の少なくとも一部を形成する層に担持された抗酸化剤 を含み、 前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、前記抗酸化剤が0.01g/m2以上、20g/m2以下含まれる、 ミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制するための、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (2) 高分子化合物を含む基材、及び 前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する抗酸化剤、及び/又は、前記基材の表面の少なくとも一部を形成する層に担持された抗酸化剤 を含み、 前記抗酸化剤以外に、ミオグロビンと結合又は相互作用してミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化する成分を、ミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化することが可能な量で含まない、より好ましくは、前記抗酸化剤以外にミオグロビンと結合又は相互作用する成分を含まない、 ミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制するための、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (3) 前記抗酸化剤が、一酸化窒素供与化合物、無機シアン化化合物、無機フッ化物、イソチオシアネート、窒素を固定化して窒素酸化物源を供給する生物培養物、ベタニン、エリトロシン、コチニール抽出物、窒素複素環化合物、一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素供与化合物、アンモニア供与化合物、硫化水素供与化合物及び窒素酸化物を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種である場合を除く、(2)に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (4) 高分子化合物を含む基材、及び 前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する抗酸化剤、及び/又は、前記基材の表面の少なくとも一部を形成する層に担持された抗酸化剤 を含み、 以下の条件 (I)前記抗酸化剤が、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、0.92mg/m2以上、1840mg/m2以下のロスマリン酸を含む; (II)前記抗酸化剤が、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、1.2mg/m2以上、2400mg/m2以下のカルノソールを含む; (III)前記抗酸化剤が、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、0.74mg/m2以上、1480mg/m2以下のカルノシン酸を含む; (IV)前記抗酸化剤が、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、0.01g/m2以上、20g/m2以下のアスコルビン酸を含む;のうち少なくとも1つを満足する ミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制するための、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (5) 前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、前記抗酸化剤が0.01g/m2以上、20g/m2以下含まれる、(2)〜(4)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (6) 前記抗酸化剤がポリフェノール化合物又はアスコルビン酸を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (7) 前記抗酸化剤が、ポリフェノール化合物を含むローズマリー抽出物及び/又は茶抽出物を含む、(6)に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (8) 前記抗酸化剤が、ポリフェノール化合物を含む水溶性ローズマリー抽出物を含む、(7)に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (9) 前記高分子化合物が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (10) 前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積1m2当たりの前記抗酸化剤の質量をTとし、 前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材の一辺が5cmの正方形の板状又はフィルム状の試料片を1つ、温度4℃、容量1000mLの蒸留水の中に浸漬したとき、以下の特性: 浸漬開始から10秒後に前記面積1m2当たり0.05T以上の質量の前記抗酸化剤が前記基材から前記蒸留水中に溶出し、 浸漬開始から30分後に前記面積1m2当たり0.15T以上の質量の前記抗酸化剤が前記基材から前記蒸留水中に溶出する を示す、(1)〜(9)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材。 (11) (1)〜(10)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材と、 包装材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材及び前記ミオグロビン含有食品が、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする、食品包装体。 (12) (1)〜(10)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記ミオグロビン含有食品が、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする、食品包装体。 (13) (1)〜(10)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、 更なる、(1)〜(10)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材及び前記ミオグロビン含有食品が、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されており、且つ 前記包装材により、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材及び前記ミオグロビン含有食品が、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする、食品包装体。 (14) 前記包装材内は脱気されている、(11)〜(13)のいずれかに記載の食品包装体。 (15) 前記ミオグロビン含有食品が、ミオグロビンを含有する魚肉である、(11)〜(14)のいずれかに記載の食品包装体。 (16) 前記魚肉がアジ科に属する魚の肉である、(15)に記載の食品包装体。 (17) 前記魚肉が、表面の一部が表皮で覆われたフィレ、表面の一部が表皮で覆われたロイン、表皮を剥いだロイン、又は切身であり、 前記包装材内で、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材及び/又は前記包装材とは別の前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の、前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記フィレにおける表皮で覆われた表面、前記表面の一部が表皮で覆われたロインの表皮で覆われた表面、前記表皮を剥いだロインにおける表皮を剥いだ表面、又は切身の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されている、(15)又は(16)に記載の食品包装体。 (18) (11)〜(17)のいずれか1項に記載の食品包装体を保存及び/又は輸送する方法であって、 前記食品包装体を−30℃〜+10℃の温度条件において保存及び/又は輸送する工程を含む方法。 (19) ミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制する方法であって、(1)〜(10)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を前記ミオグロビン含有食品に、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように接触させる工程を含む方法。 (20) 前記工程が、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材と、包装材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、あるいは、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、あるいは、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、更なる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、(11)〜(17)のいずれか1項に記載の食品包装体を形成する工程である、(19)に記載の方法。 (21) 前記食品包装体を−30℃〜+10℃の温度条件において保存及び/又は輸送する工程を更に含む、(20)に記載の方法。 (22) ミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制するための、(1)〜(10)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材の使用。 (23)前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材と、包装材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、あるいは、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、あるいは、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、更なる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、(11)〜(17)のいずれか1項に記載の食品包装体を形成することによりミオグロビン含有食品の鮮度劣化を抑制するための、(22)に記載の使用。 (24) 合成樹脂を含む基材、及び 前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する抗酸化剤、及び/又は、前記基材の表面の少なくとも一部を形成する層に担持された抗酸化剤 を含み、 前記抗酸化剤以外に、ミオグロビンと結合又は相互作用する成分を含まない、ミオグロビン含有食品の変色を抑制するための、ミオグロビン含有食品変色抑制材。 (25) 前記抗酸化剤が、一酸化窒素供与化合物、無機シアン化化合物、無機フッ化物、イソチオシアネート、窒素を固定化して窒素酸化物源を供給する微生物培養物、ベタニン、エリトロシン、コチニール抽出物、窒素複素環化合物、一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素供与化合物、アンモニア供与化合物及び硫化水素供与化合物からなる群から選択される少なくとも一種である場合を除く、(24)に記載のミオグロビン含有食品変色抑制材。 (26) 前記抗酸化剤がポリフェノール化合物を含む、(24)又は(25)に記載のミオグロビン含有食品変色抑制材。 (27) 前記抗酸化剤が前記ポリフェノール化合物をローズマリー抽出物及び/又は茶抽出物の形態で含む、(26)に記載のミオグロビン含有食品変色抑制材。 (28) 前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、前記抗酸化剤が0.001g/m2以上、20g/m2以下含まれる、(24)〜(27)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品変色抑制材。 (29) 合成樹脂を含む基材、及び 前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する抗酸化剤、及び/又は、前記基材の表面の少なくとも一部を形成する層に担持された抗酸化剤 を含み、 前記抗酸化剤がポリフェノール化合物を含み、 前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、前記抗酸化剤が0.001g/m2以上、20g/m2以下含まれる、 ミオグロビン含有食品の変色を抑制するための、ミオグロビン含有食品変色抑制材。 (30) 前記抗酸化剤が前記ポリフェノール化合物をローズマリー抽出物及び/又は茶抽出物の形態で含む、(29)に記載のミオグロビン含有食品変色抑制材。 (31) 前記合成樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、(24)〜(30)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品変色抑制材。 (32) (24)〜(30)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品変色抑制材と、 包装材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記ミオグロビン含有食品変色抑制材及び前記ミオグロビン含有食品が、前記ミオグロビン含有食品変色抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする、食品包装体。 (33) 前記包装材内は脱気されている、(32)に記載の食品包装体。 (34) (24)〜(30)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品変色抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記ミオグロビン含有食品が、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品変色抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする、食品包装体。 (35) 前記包装材内は脱気されている、(34)に記載の食品包装体。 (36) 前記ミオグロビン含有食品が、ミオグロビンを含有する魚肉の切り身である、(32)〜(35)のいずれか1項に記載の食品包装体。 (37) 前記切り身がブリの切り身である、(36)に記載の食品包装体。 (38) (32)〜(37)のいずれかに記載の食品包装体を保存及び/又は輸送する方法であって、 前記食品包装体を−30℃〜+10℃の温度条件において保存及び/又は輸送する工程を含む方法。 (39) ミオグロビン含有食品の変色を抑制する方法であって(24)〜(31)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品変色抑制材を前記ミオグロビン含有食品に、前記ミオグロビン含有食品変色抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように接触させる工程を含む方法。 (40) 前記工程が、前記ミオグロビン含有食品変色抑制材と、包装材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、あるいは、前記ミオグロビン含有食品変色抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、(32)〜(37)のいずれか1項に記載の食品包装体を形成する工程である、(39)に記載の方法。 (41) 前記食品包装体を−30℃〜+10℃の温度条件において保存及び/又は輸送する工程を更に含む、(40)に記載の方法。 (42) ミオグロビン含有食品の変色を抑制するための、(24)〜(31)のいずれかに記載のミオグロビン含有食品変色抑制材の使用。 (43)前記ミオグロビン含有食品変色抑制材と、包装材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、あるいは、前記ミオグロビン含有食品変色抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、前記ミオグロビン含有食品とを用いて、(32)〜(37)のいずれか1項に記載の食品包装体を形成することによりミオグロビン含有食品の変色を抑制するための、(42)に記載の使用。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2014−113518号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。

図1Aは、本発明の食品包装体の構造の一例を説明するための模式図である。 図1Bは、本発明の食品包装体の一例を示す模式図である。 図2は、本発明のミオグロビン含有食品変色抑制材の積層構造の一例を示す断面模式図である。 図3は、本発明のミオグロビン含有食品変色抑制材の積層構造の一例を示す断面模式図である。 図4は、試験1における実施例、比較例に用いたブリの第1魚肉片を示す図である。 図5は、試験1における保存試験前後のブリ検体(実施例1)を示す写真である。 図6は、試験1における保存試験前後のブリ検体(実施例2)を示す写真である。 図7は、試験1における保存試験前後のブリ検体(比較例1)を示す写真である。 図8は、試験1における保存試験前後のブリ検体(比較例2)を示す写真である。 図9は、試験1における保存試験前後のブリ検体(比較例3)を示す写真である。 図10は、本発明の食品包装体の構造の他の一例を説明するための模式図である。 図11Aは、本発明の食品包装体の構造の一例を説明するための模式図である。 図11Bは、本発明の食品包装体の一例を示す模式図である。 図12Aは、本発明の食品包装体の構造の一例を説明するための模式図である。 図12Bは、本発明の食品包装体の一例を示す模式図である。 図13Aは、本発明の食品包装体の構造の一例を説明するための模式図である。 図13Bは、本発明の食品包装体の一例を示す模式図である。 図14は、試験2における比較例203、204、205の抗酸化剤水溶液2時間浸漬処理後のフィレの写真を示す。図14中、Aは比較例203の前記処理後のフィレの写真を示し、Bは比較例204の前記処理後のフィレの写真を示し、Cは比較例205の前記処理後のフィレの写真を示す。 図15は、本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材の積層構造の一例を示す断面模式図である。 図16は、試験3の溶出試験の結果を示すグラフである。図16Aは、ブリのフィレの表面に接触したときの本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材からの抗酸化剤の溶出割合の経時変化を示す。図16Bは、水中での本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材からの抗酸化剤の溶出割合の経時変化を示す。 図17は、本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材の積層構造の一例を示す断面模式図である。 図18は、魚肉の説明をするための図である。図18Aは魚の全体である、「ラウンド」と呼ばれる形態の魚肉を示す。図18Bは頭部、エラ、内臓、ヒレを除去した「ドレス」と言われる形態の魚肉を示す。図18Cは、ドレスから、背骨の左右を切り出した「フィレ」と呼ばれる形態の魚肉を示す。図18Dは、フィレを、上下二つに分けた「ロイン」と呼ばれる形態の魚肉を示す。図中では、背側のロイン182として、表皮を剥いだロインを示し、腹側のロイン183として、表皮を有するロインを示す。

1.ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材 1.1.基材 基材を構成する高分子化合物は特に限定されない。高分子化合物の例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。高分子化合物は好ましくは合成樹脂である。 ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。 ポリアミド系樹脂としてはナイロン(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6とナイロン66との共重合体、ナイロン6とナイロン12との共重合体等)、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン等が挙げられる。 ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、エチレンとアクリル酸との共重合体、エチレンとメタクリル酸との共重合体、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリプロピレン等が挙げられる。 ポリビニル系樹脂としてはポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。 上記樹脂は延伸でも無延伸でもよく、バリア性を上げる為に加工したものでも良い。 セルロースを含む基材としてはセロファン等が挙げられる。 基材はどのような形状を有していてもよく、フィルム状、板状等の任意の形状であることができる。ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の形状は、基材の形状に応じて、フィルム状、板状等の任意の形状であることができる。フィルム状の基材は、袋等の任意の形態に加工されていてもよく、袋としては、ガゼット袋、チャック袋、または真空包装用の袋であることができる。特に好ましくは、本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材は、基材の形状に応じて、袋、特に真空包装用袋の形態である。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材が真空包装用袋等の袋の形態である場合、前記基材は、少なくとも袋の内側に向く面に、ポリオレフィン系樹脂、好ましくはポリエチレン、より好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンの層を含むことが好ましい。これらの樹脂は熱融着し易くヒートシールが容易であるためである。 また、本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材がヒートシールを必要としない用途に用いられる場合、前記基材は好ましくは、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びポリビニル系樹脂から選択される少なくとも1種を含む基材であり、より好ましくはポリエステル系樹脂、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートを含む基材である。当該樹脂を含む基材は比較的安価であり、且つ、当該樹脂からなる表面を被覆する抗酸化剤又は当該樹脂に担持された抗酸化剤を放出し易いため有利である。 基材は、少なくとも、下記の態様で抗酸化剤により被覆される部分又は抗酸化剤を担持する部分が前記樹脂の層により構成されていることが好ましい。抗酸化剤により被覆される部分又は抗酸化剤を担持する部分の表面は、コロナ処理しても、しなくても良い。好ましくは、コロナ処理が施されていない。コロナ処理が施されていない基材表面のほうが、コロナ処理が施された基材表面と比較して、当該表面を被覆する又は当該表面に担持された抗酸化剤を放出し易いためである。 基材は多層構造を有していてもよいし、単層構造を有していてもよい。多層構造を有する場合、各層を構成する材料は同一であってもよいし異なっていてもよい。複数の層を積層して多層構造を形成する場合、必要に応じて、層間を適当な接着剤を用いて接着することができる。また、多層構造を有する基材としてはアルミ蒸着基材等も使用できる。2種類以上の材料を積層した基材は共押出法やラミネート法(押出ラミネート、熱ラミネート、溶剤型ドライラミネート、無溶剤型ドライラミネート等)によって製造することができる。 基材の一例としては、図2に示す、第1高分子化合物層(第1樹脂層)102と、第2高分子化合物層(第2樹脂層)104と、これらの層を接着する接着剤層103とを備えたフィルム状又は板状の基材105や、図3に示す、第1高分子化合物層(第1樹脂層)401と、第2高分子化合物層(第2樹脂層)403と、これらの層を接着する接着剤層402とを備えたフィルム状又は板状の基材405や、図15に示す、単一の高分子化合物層からなるフィルム状又は板状の基材105等が挙げられる。 基材がフィルム状である揚合の厚さは特に限定されないが5μm以上又は10μm以上とすることが好ましく、200μm以下とすることが好ましい。基材が多層構造を有するフィルムの場合、基材の厚さは30〜200μmであることが好ましく、40〜175μmであることがより好ましい。基材が単層構造を有するフィルムの場合、基材の厚さは5〜200μmであることが好ましく、5〜175μmであることがより好ましい。 図17に示す、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100に含まれる基材105は、図2に示す基材105の具体的態様であって、直鎖状低密度ポリエチレン層172、接着剤層173、ナイロン層174、ナイロン層175を備える。図17に示す基材105では、図2に示す基材105中の第2高分子化合物層104がナイロン層174、ナイロン層175の2層に分割されている。ナイロン層174と、ナイロン層175とは溶剤と接着剤を用いた溶剤型ドライラミネートにより接着することができる。 図2に示す基材105の場合、第1高分子化合物層102は厚さ30〜90μmの層であることが好ましく、特に直鎖状低密度ポリエチレンの層であることが好ましい。接着剤層103は厚さ3〜35μmの層であることが好ましく、特にポリエチレンの層であることが好ましい。第2高分子化合物層104は厚さ5〜80μmの層であることが好ましく、特にナイロンの層であることが好ましい。第2高分子化合物層104は上記のように複数の層に分割されていてもよく、その場合は各層の厚さの合計が第2高分子化合物層104の厚さとして上記の範囲であることが好ましい。 基材105が図15に示すような単層構造の場合、厚さ5〜200μmの層であることが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリスチレンから選択される少なくとも1種の層であることが好ましい。 1.2.抗酸化剤 本発明で用いられる抗酸化剤は特に限定されないが、本発明では抗酸化剤として、ポリフェノール化合物、アスコルビン酸(アスコルビン酸塩の形態である場合も含む)、ビタミンE(例えばトコフェロール)、ヒノキチオール、フェルラ酸(フェルラ酸塩の形態である場合も含む)及びエルゴチオネイン、並びにこれらの化合物のうち少なくとも1種の誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む抗酸化剤や、前記群から選択される少なくとも1種を含む植物抽出物が使用できる。アスコルビン酸は、L−アスコルビン酸(ビタミンC)であってもよいし、D−アスコルビン酸(エリソルビン酸)であってもよいし、これらの混合物であってもよいが、好ましくは、L−アスコルビン酸(ビタミンC)である。複数の抗酸化剤を組み合わせて使用してもよい。本発明において抗酸化剤又はその構成成分が、構造の特定された化合物又はその組み合わせである場合、該化合物の量は該化合物のフリー体としての量で表す。 前記ポリフェノール化合物とはフェノール性水酸基を複数有する有機化合物の総称であり、具体的には、ロスマリン酸等のフェノールカルボン酸構造を有するポリフェノール化合物;ルテオリン等のフラボノイドに属するポリフェノール化合物;カルノソール、カルノシン酸、ロスマノール、エピロスマノール等のジテルペンポリフェノール構造を有するポリフェノール化合物;マタイレシノール;エピカテキン、エピロガロカテキン、及びそれらの没食子酸エステルであるエピカテキンガラート、エピロガロカテキンガラート等のカテキン類等が挙げられる。本発明において、ロスマリン酸、カルノシン酸、アスコルビン酸等の、酸又は塩基である化合物は、特に限定しない限り塩の形態であってもよい。 ポリフェノール化合物は、ポリフェノール化合物を含む植物抽出物の形態で本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の製造に用いることができる。そのような植物抽出物としてはローズマリー抽出物、茶抽出物等が挙げられる。抽出方法は特に限定されないが、通常は、植物体から、メタノール、エタノール、アセトン等の水溶性有機溶媒、水、及びヘキサン、並びにそれらのうち2種以上の混合溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を用いて該溶媒に可溶性の成分を抽出し、該溶媒を適宜除去して抽出物を得ることができる。本発明では、抽出は多段階で行ってもよく、各段階で異なる抽出溶媒を用いてもよい。本発明では、植物体原料又は植物体原料から得られた抽出物から不要な成分を抽出により除去し、必要な成分を残存成分として得ることも「抽出」の一形態であり、この方法で得られた必要な成分も「抽出物」と呼ぶ。例えば、水溶性成分と油溶性成分との両方を溶出できる溶媒(例えば含水アルコール)を抽出溶媒として植物体原料から一次抽出物を得て、続いて該一次抽出物から水等の水溶性抽出溶媒を用いて水溶性抽出物を得て、残存成分として油溶性抽出物を得ることや、前記一次抽出物からヘキサン、エタノール、ヘキサン/エタノール混合溶媒等の油溶性抽出溶媒を用いて油溶性抽出物を得て、残存成分として水溶性抽出物を得ることが可能である。含水アルコールとしては、アルコールの含有量が1〜99質量%、好ましくは3〜97質量%のアルコール水溶液が挙げられ、アルコールとしてはエタノールが好ましい。 水溶性の植物抽出物(例えば水溶性ローズマリー抽出物)を得るための方法としては、植物体原料から含水エタノールを抽出溶媒として用いて抽出を行い得られた1次抽出物から、水を抽出溶媒として用いて抽出を行い水溶性植物抽出物を得る方法が好ましい。 油溶性の植物抽出物(例えば油溶性ローズマリー抽出物)を得るための抽出溶媒としては、ヘキサン、エタノール及びこれらの混合溶媒(例えば、エタノール1容量に対してヘキサンが0.5〜4容量、好ましくは1〜3容量混合された混合溶媒)からなる群から選択される少なくとも1種が有用である。また、油溶性ローズマリー抽出物等の油溶性の植物抽出物は、植物体原料から含水エタノールを抽出溶媒として用いて抽出を行い得られた1次抽出物から、水を抽出溶媒として用いて抽出を行い水溶性成分を除去し、油溶性植物抽出物を析出させることにより得ることもできる。 抗酸化剤が植物抽出物である場合、該植物抽出物は水溶性の植物抽出物であることが好ましく、とくに水溶性ローズマリー抽出物が好ましい。水溶性ローズマリー抽出物はフェノールカルボン酸であるロスマリン酸を主成分とし、他にフラボノイド類(ルテオリン類、ルテオリン配糖体等のルテオリン誘導体等)を含む。水溶性ローズマリー抽出物等の水溶性植物抽出物は、典型的には、常温常圧(25℃、1気圧)において水に溶解しやすく油脂類(ヘキサン等)に溶解しにくい。水溶性ローズマリー抽出物中のロスマリン酸濃度は特に限定されないが、例えば2質量%以上、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。精製されたロスマリン酸を抗酸化剤として用いてもよい。 抗酸化剤は油溶性植物抽出物であってもよく、特に油溶性ローズマリー抽出物を用いることができる。油溶性ローズマリー抽出物は、主な有効成分としてカルノソール、カルノシン酸等を含む。このローズマリー抽出物は油脂類(ヘキサン等)に溶解しやすく、水に溶解し難いである。油溶性ローズマリー抽出物等の油溶性植物抽出物は、典型的には、常温常圧(25℃、1気圧)において油脂類(ヘキサン等)に溶解しやすく水に溶解しにくい。油溶性ローズマリー抽出物中のカルノソール濃度は特に限定されないが、例えば2質量%以上、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、より好ましくは8質量%以上、より好ましくは10%以上である。また、油溶性ローズマリー抽出物中のカルノシン酸濃度は特に限定されないが、例えば2質量%以上、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上である。精製されたカルノソール又はカルノシン酸を抗酸化剤として用いてもよい。 植物抽出物は、植物抽出物を少なくとも一部に含有する組成物として市販されているものを購入し使用することができる。例えば、市販のローズマリー抽出物含有組成物として、三菱化学フーズ社製の商品名「RM−21Aベース」、「RM−21A」、「RM−21Bベース」等を使用することができ、茶抽出物含有組成物として、三菱化学フーズ社製の商品名「サンフード100」等を使用することができる。 前記ポリフェノール化合物としては、植物抽出物から更にポリフェノール化合物を単離または高濃度化したものを使用してもよいし、人為的に合成したものを使用してもよい。 1.3.抗酸化剤の基材への配合 抗酸化剤は前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する、或いは、前記フィルム基材の表面の少なくとも一部を形成する層に担持されることにより前記基材と一体化される。 フィルム状または板状の基材の表面が抗酸化剤により被覆されている本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の断面構造の一例を図2に示す。本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材100は、第1高分子化合物層102と、第2高分子化合物層104と、これらの層を接着する接着剤層103とを備えたフィルム状又は板状の基材105の表面を、抗酸化剤の層101が被覆した構造を有する。基材105の構造はこのような構造には限定されず、他の構造、例えば図15の様に単層構造を有していてもよい。基材105の表面を抗酸化剤の層101により被覆する方法は特に限定されないが、例えばグラビア印刷等の印刷法を用いることができる。印刷法では、抗酸化剤を、それを溶解又は分散することのできる溶媒(例えばエタノール)中に溶解又は分散させてワニスを形成し、得られたワニスを基材105の表面に塗布し乾燥させることにより抗酸化剤の層101を形成することができる。ワニスを塗布する前に、基材表面のワニスとの親和性を向上させるために、基材105の表面を予めコロナ処理してもよい。 また、ワニスには基材への抗酸化剤の印刷性を向上させる為、結合剤や増粘剤等を添加しても良い。例えば、結合剤又は増粘剤としては、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース等が使用できる。基材の表面にはブロッキング防止のためにでん粉等を振りかけても良い。 フィルム状又は板状の基材の表面の少なくとも一部を形成する層に抗酸化剤が担持されている本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の断面構造の一例を図3に示す。本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材400は、第1高分子化合物層401と、第2高分子化合物層403と、これらの層を接着する接着剤層402とを備えたフィルム状又は板状の基材405において、第1高分子化合物層401に抗酸化剤を担持させることにより形成することができる。基材405の構造はこの例には限定されず、例えば単層構造を有しており、厚さ方向の全体にわたり抗酸化剤が担持されていてもよいし、単層構造のうち厚さ方向の、一方の表面の近傍部のみに抗酸化剤が担持されていてもよい。 基材中に抗酸化剤を担持させる方法は特に限定されないが、例えば、押出等により高分子化合物と抗酸化剤とを溶融混練し基材を形成する方法や、高分子化合物により基材を形成した後に、表面に抗酸化剤の溶液を塗布して、該基材の表面を構成する層に抗酸化剤を担持させる方法が適宜使用できる。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材における抗酸化剤の量は特に限定されないが、通常は、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、抗酸化剤が0.001g/m2以上、20g/m2以下となるように含まれる。この範囲内であれば、メト化を抑制することが可能であり、かつ、抗酸化剤を良好に基材に保持した状態のままで保存できる。ここで「前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積」とは、基材の表面の少なくとも一部が抗酸化剤により被覆されている場合には、抗酸化剤により被覆されている基材の表面の面積を指し、前記基材の表面の少なくとも一部を形成する層に抗酸化剤が担持されている場合には、該層の食品と接触する側の表面の面積を指す。 更に、本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材における抗酸化剤の量は、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、好ましくは0.01g/m2以上、より好ましくは0.1g/m2以上、より好ましくは0.25g/m2以上、より好ましくは0.3g/m2以上、特に好ましくは0.5g/m2以上であり、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下、より好ましくは10g/m2以下、より好ましくは7.5g/m2以下、より好ましくは5g/m2以下、より好ましくは3g/m2以下、より好ましくは2.5g/m2以下、特に好ましくは2.2g/m2以下である。抗酸化剤の量がこの範囲であるとき、ミオグロビン含有食品の鮮度の劣化及びメト化を抑制する効果が特に高く、且つ、抗酸化剤を良好に基材に保持することができる。この範囲の抗酸化剤量は、抗酸化剤が、水溶性ローズマリー抽出物、油溶性ローズマリー抽出物、茶抽出物(特に水溶性茶抽出物)、又はアスコルビン酸である場合に特に好適である。抗酸化剤が水溶性ローズマリー抽出物、油溶性ローズマリー抽出物、茶抽出物等の植物抽出物である場合は、該植物抽出物中に含まれる化合物(例えばロスマリン酸、カルノソール、カルノシン酸)の量に基づいて換算された植物抽出物の量がこの範囲となるようにしてもよい。特に限定のない限り、本発明においてアスコルビン酸の量はフリー体としての量で表す。 基材質量(抗酸化剤を含まない質量)に対する基材上の抗酸化剤の割合は基材の比重や基材の厚さによっても異なるため特に限定されないが、典型的には0.001質量%以上、25質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.4質量%以下である。この実施形態は、抗酸化剤が、水溶性ローズマリー抽出物、油溶性ローズマリー抽出物、茶抽出物(特に水溶性茶抽出物)、又はアスコルビン酸である場合に特に好適である。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の他の好ましい形態では、高分子化合物を含む基材、及び前記基材の表面の少なくとも一部を被覆する抗酸化剤、及び/又は、前記基材の表面の少なくとも一部を形成する層に担持された抗酸化剤を含み、以下の条件: (I)前記抗酸化剤がロスマリン酸を含み、且つ、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、ロスマリン酸の量が、好ましくは0.92mg/m2以上、より好ましくは9.2mg/m2以上、より好ましくは23mg/m2以上、より好ましくは27.6mg/m2以上、より好ましくは46mg/m2以上であり、好ましくは1840mg/m2以下、より好ましくは1380mg/m2以下、より好ましくは920mg/m2以下、より好ましくは690mg/m2以下、より好ましくは460mg/m2以下、より好ましくは276mg/m2以下、より好ましくは230mg/m2以下、より好ましくは202mg/m2以下である; (II)前記抗酸化剤がカルノソールを含み、且つ、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、カルノソールの量が、好ましくは1.2mg/m2以上、より好ましくは12mg/m2以上、より好ましくは30mg/m2以上、より好ましくは36mg/m2以上、より好ましくは60mg/m2以上であり、好ましくは2400mg/m2以下、より好ましくは1800mg/m2以下、より好ましくは1200mg/m2以下、より好ましくは900mg/m2以下、より好ましくは600mg/m2以下、より好ましくは360mg/m2以下、より好ましくは300mg/m2以下、より好ましくは264mg/m2以下である; (III)前記抗酸化剤がカルノシン酸を含み、且つ、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、カルノシン酸の量が、好ましくは0.74mg/m2以上、より好ましくは7.4mg/m2以上、より好ましくは18.5mg/m2以上、より好ましくは22.2mg/m2以上、より好ましくは37mg/m2以上であり、好ましくは1480mg/m2以下、より好ましくは1110mg/m2以下、より好ましくは740mg/m2以下、より好ましくは555mg/m2以下、より好ましくは370mg/m2以下、より好ましくは222mg/m2以下、より好ましくは185mg/m2以下、より好ましくは163mg/m2以下である; (IV)前記抗酸化剤がアスコルビン酸を含み、且つ、前記基材の表面のうち前記抗酸化剤が存在する部分の面積に対し、アスコルビン酸の量が、好ましくは0.01g/m2以上、より好ましくは0.1g/m2以上、より好ましくは0.25g/m2以上、より好ましくは0.3g/m2以上、特に好ましくは0.5g/m2以上であり、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下、より好ましくは10g/m2以下、より好ましくは7.5g/m2以下、より好ましくは5g/m2以下、より好ましくは3g/m2以下、より好ましくは2.5g/m2以下、より好ましくは2.2g/m2以下である; のうち少なくとも1つの条件を満たす。前記(I)〜(IV)の条件のうち1つのみが満たされてもよいが、前記(II)の条件が満たされるとき前記(III)の条件も満たされることがより好ましい。このとき本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材は、ミオグロビン含有食品の鮮度の劣化及びメト化を抑制する効果が特に高く、且つ、抗酸化剤を良好に基材に保持することができる。特に、抗酸化剤は、前記(I)の条件を満たす量のロスマリン酸を含むローズマリー抽出物(好ましくは水溶性ローズマリー抽出物);前記(II)の条件を満たす量のカルノソールを含むローズマリー抽出物(好ましくは油溶性ローズマリー抽出物);前記(III)の条件を満たす量のカルノシン酸を含むローズマリー抽出物(好ましくは油溶性ローズマリー抽出物);前記(II)の条件及び前記(III)の条件を満たす量のカルノソール及びカルノシン酸を含むローズマリー抽出物(好ましくは油溶性ローズマリー抽出物);及び、前記(IV)の条件を満たす量のアスコルビン酸からなる群から選択される1つ以上を含むことが好ましく、前記群から選択される1つを含むことがより好ましい。特に限定のない限り、本発明においてロスマリン酸、カルノソール、カルノシン酸及びアスコルビン酸の量はフリー体としての量で示す。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材が水又は水を含むミオグロビン含有食品と接したとき、基材からの抗酸化剤の溶出速度等は特に限定されないが、好ましくは以下の特性を有する。 (A)本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材における基材の表面のうち抗酸化剤が存在する部分の面積1m2当たりの前記抗酸化剤の質量をTとし、 前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の一辺が5cmの正方形の板状又はフィルム状の試料片を1つ、温度4℃、容量1000mLの蒸留水の中に浸漬したとき、以下の特性: 浸漬開始から10秒後に前記面積1m2当たり0.05T以上の、好ましくは0.10T以上の、より好ましくは0.20T以上の、特に好ましくは0.30T以上の、好ましくは0.75T以下の、より好ましくは0.65T以下の、特に好ましくは0.55T以下の質量の抗酸化剤が前記基材から前記蒸留水中に溶出し、 浸漬開始から30分後に前記面積1m2当たり0.15T以上の、好ましくは0.20T以上の、より好ましくは0.30T以上の、特に好ましくは0.40T以上の、好ましくは0.80T以下の、より好ましくは0.70T以下の、特に好ましくは0.60T以下の質量の抗酸化剤が前記基材から前記蒸留水中に溶出する を示す。 (B)本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材における基材の表面のうち抗酸化剤が存在する部分の面積1m2当たりの前記抗酸化剤の質量をTとし、 前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の一辺が5cmの正方形の板状又はフィルム状の試料片を、水を含む魚肉(特にブリのフィレ)の表皮(うろこ面)又は肉の表面上に付着させ、魚肉を試料片とともに真空包装用袋に入れ真空包装機チャンバー内の圧力を−100kPa(−1.0bar)(ゲージ圧)で真空包装して4℃で保存したとき、以下の特性: 表皮(うろこ面)の表面付着の場合、保存開始から180分後に前記面積1m2当たり0.01T以上の、好ましくは0.20T以上の、より好ましくは0.40T以上の、特に好ましくは0.50T以上の、好ましくは0.99T以下の、より好ましくは0.95T以下の質量の抗酸化剤が前記基材から前記魚肉及び/又は真空包装用袋内に溶出し、 肉の表面の付着場合、保存開始から180分後に前記面積1m2当たり0.01T以上の、好ましくは0.30T以上の、より好ましくは0.50T以上の、特に好ましくは0.60T以上の、好ましくは0.99T以下の、より好ましくは0.98T以下の質量の抗酸化剤が前記基材から前記魚肉及び/又は真空包装用袋内に溶出する を示す。 前記(B)では更に好ましくは、 表皮(うろこ面)の表面付着の場合、保存開始から10分後に前記面積1m2当たり0.01T以上の、好ましくは0.20T以上の、より好ましくは0.40T以上の、特に好ましくは0.50T以上の、好ましくは0.99T以下の、より好ましくは0.95T以下の質量の抗酸化剤が前記基材から前記魚肉及び/又は真空包装用袋内に溶出し、 肉の表面の付着場合、保存開始から10分後に前記面積1m2当たり0.01T以上の、好ましくは0.30T以上の、より好ましくは0.50T以上の、特に好ましくは0.60T以上の、好ましくは0.99T以下の、より好ましくは0.98T以下の質量の抗酸化剤が前記基材から前記魚肉及び/又は真空包装用袋内に溶出する。 前記(A)及び/又は(B)の特性を有する本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材における基材は、好ましくはポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む基材であり、ポリオレフィン系樹脂は好ましくはポリエチレンであり、より好ましくはLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)であり、ポリエステル系樹脂は好ましくはポリエチレンテレフタレートである。前記(A)及び/又は(B)の特性を有する本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材における抗酸化剤は特に限定されないが、好ましくはローズマリー抽出物またはロスマリン酸であり、ここでローズマリー抽出物は好ましくは水溶性ローズマリー抽出物である。ローズマリー抽出物の量Tは、該抽出物に含まれる化合物(例えばロスマリン酸、カルノソール、カルノシン酸)の量に基づいて換算された量であってよい。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材が前記(A)及び/又は(B)の特性を示すとき、効率良く抗酸化剤をミオグロビン含有食品に浸透させることができ、食品の表層のみばかりでなく内部まで鮮度劣化を抑制させることができる。また、基材からミオグロビン含有食品(特定の部位)への抗酸化剤の移行速度を制御することができる。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材には、基材と抗酸化剤とのほかに、pH調整剤(無機塩であっても、有機塩であってもよい。例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、リンゴ酸塩等が使用できる)、着色料、保存料、着香料、香辛料、甘味料、酸味料、調味料、抗菌剤(例えば亜硝酸塩等)、他の添加材(例えばトコフェロール、クエン酸、デキストリン、シクロデキストリン、オリゴ糖、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、アスコルビン酸、エリソルビン酸、くん液、果汁、食品素材)等の他の成分を適宜配合することができる。 本発明の一実施形態では、更に好ましくは、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材は、前記抗酸化剤以外に、ミオグロビンと結合又は相互作用する成分を含有しない。ミオグロビンと結合又は相互作用する成分としては、具体的には、ミオグロビンと結合又は相互作用してミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化する成分が挙げられる。すなわち、本発明の一実施形態では、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材は、前記抗酸化剤以外に、ミオグロビンと結合又は相互作用してミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化することを目的とする成分を、ミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化することが可能な量で含有せず、より好ましくは前記抗酸化剤以外に前記成分を含有しない。ここで「ミオグロビン」とは、新鮮な肉中に存在する、変成していないミオグロビンを含む構造を指し、例えばデオキシミオグロビン、オキシミオグロビン、メトミオグロビン、カルボキシミオグロビン及び一酸化窒素ミオグロビンを包含する。「ミオグロビンと結合又は相互作用する成分」及び「ミオグロビンと結合又は相互作用してミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化する成分」には、それらの成分を共有する前駆体も含まれる。「ミオグロビンと結合又は相互作用する成分」及び「ミオグロビンと結合又は相互作用してミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化する成分」としては、特許文献7において定義されている「ミオグロビンブルーミング剤」や、特許文献8に記載されている「窒素酸化物を含有する化合物」が挙げられる。特許文献7に開示の「ミオグロビンブルーミング剤」は、具体的には、一酸化窒素供与化合物、無機シアン化化合物、無機フッ化物、イソチオシアネート、窒素を固定化して窒素酸化物源を供給する微生物培養物、ベタニン、エリトロシン、コチニール抽出物、窒素複素環化合物、一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素供与化合物、アンモニア供与化合物及び硫化水素供与化合物からなる群から選択される少なくとも一種である。特許文献8に記載されている「窒素酸化物を含有する化合物」としては、具体的には、酸化窒素、亜硝酸塩化合物、硝酸塩化合物が挙げられる。本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材は、更に好ましくは、抗酸化剤であるか否かにかかわらず、ミオグロビンと結合又は相互作用してミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化する成分を、ミオグロビンに由来する色を形成、維持又は強化することが可能な量で含有しない。 本発明の一実施形態では、更に好ましくは、前記抗酸化剤が、一酸化窒素供与化合物、無機シアン化化合物、無機フッ化物、イソチオシアネート、窒素を固定化して窒素酸化物源を供給する微生物培養物、ベタニン、エリトロシン、コチニール抽出物、窒素複素環化合物、一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素供与化合物、アンモニア供与化合物、硫化水素供与化合物及び窒素酸化物を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種以外の成分である。 本発明において、一酸化窒素供与化合物、無機シアン化化合物、無機フッ化物、イソチオシアネート、窒素を固定化して窒素酸化物源を供給する微生物培養物、ベタニン、エリトロシン、コチニール抽出物、窒素複素環化合物、一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素供与化合物、アンモニア供与化合物、硫化水素供与化合物としては、それぞれ、特許文献7に記載されているものが挙げられる。窒素酸化物を含有する化合物としては特許文献8に記載されているものが挙げられる。 (一酸化窒素供与化合物) 一酸化窒素供与化合物とは、一酸化窒素(NO)分子を提供するNOドナーである。一酸化窒素供与化合物は一酸化窒素を放出するか、前駆体であり、例えば硝酸塩、ニトロソジスルホン酸塩、例えばフレミーの塩[NO(SO3Na)2又はNO(SO3K)2];適切な対イオン(M+)としてアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えばカルシウム)、遷移金属、プロトン化された一級、二級又は三級アミン、又は四級アミン又はアンモニウムを含む無機硝酸塩(MNO3)、例えば硝石;並びに、適切な対イオン(M+)としてアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)、遷移金属、プロトン化された一級、二級又は三級アミン、又は四級アミン、又はアンモニウムを含む無機亜硝酸塩(MNO2)である。 他の一酸化窒素供与化合物としては、米国特許6706274、5994444、及び6939569、並びに公開された米国特許出願2005/0106380に開示されている一酸化窒素供与化合物が挙げられる。 一酸化窒素供与化合物の他の例として、下記が挙げられる:有機ニトロソ化合物(炭素へ結合したNO官能基を含有する)、例えば3−エチル−3−ニトロソ−2、4−ペンタンジオン;有機ニトロ化合物(炭素へ結合したNO2官能基を含有する)、例えばニトログリセリン及び6−ニトロベンゾ[α]ピレン;有機硝酸塩(−O−NO2)、例えばエチル硝酸塩、グリセリルモノ、ジ又はトリ硝酸塩、ペンタエリトリトールテトラ硝酸塩、エリトリチルテトラ硝酸塩、イソソルビドモノ又はジ硝酸塩、及びトリ硝酸塩。 一酸化窒素供与化合物の他の例として、下記が挙げられる:O−ニトロシル化化合物(−O−NO)、例えばブチル亜硝酸塩、アミル亜硝酸塩、ドデシル亜硝酸塩等のアルキル亜硝酸塩及びジシクロヘキシルアミン亜硝酸塩;ニトロソチオールとしても知られるS−ニトロシル化化合物(−S−NO)、例えばS−ニトロソチオグリセロール、S−ニトロソ−ペニシラミン、S−ニトロソグルタチオン、グルタチオン、カプトプリルのS−ニトロイル化誘導体、S−ニトロシル化−蛋白質、S−ニトロシル化−ペプチド、S−ニトロシル化−オリゴサッカリド及びS−ニトロシル化−ポリサッカリド;並びに、N−ニトロソアミン等のN−ニトロシル化化合物(−N−NO);N−ヒドロキシ−N−ニトロソアミン;並びにN−ニトロソイミン。 一酸化窒素供与化合物の更なる例として、官能基N(O)−NOを含有するノノエート化合物(同様に当分野でN−オキソ−N−ニトロソ化合物、N−ヒドロキシ−N’−ジアゼニウムオキシド、ジアゼニウムジオラート(diolates)及びノノエートとも言われる)、例えば3、3、4、4−テトラメチル−1、2−ジアゼチン1、2−ジオキシドが挙げられる。 更に一酸化窒素供与化合物の例として、下記が挙げられる:遷移金属/ニトロソ錯体、例えばナトリウムニトロプルシド(prusside)、ジニトロシル鉄チオール錯体、鉄−イオウクラスターニトロシル、ルテニウムニトロシル、ニトロソ/ヘム/遷移金属錯体、及びニトロソ第一鉄プロトポルフィリン錯体;フロキサン、例えば1、2、5−オキサジアゾールN−オキシド;ベンゾフロキサン、オキサトリアゾール−5−イミン、例えば3−アリール−1、2、3、4−オキサトリアゾール−5−イミン;シドノンイミン、例えばモルシドミン;オキシム、例えばシクロヘキサノンオキシム;ヒドロキシルアミン、N−ヒドロキシグアニジン、及びヒドロキシウレア。 一酸化窒素供与化合物は、1分子の一酸化窒素又は多数の一酸化窒素分子を供与する。一酸化窒素供与化合物はまた、1又は複数の一酸化窒素供与サイトを含有し、1又は複数の一酸化窒素分子を放出できるポリマー性材料であることもできる。このようなポリマー性材料としては、米国特許5525357に開示されているもの、米国特許5770645に開示されているもの、米国特許6087479に開示されているもの等が挙げられる。一酸化窒素分子を放出できるポリマー性材料には、一酸化窒素供与化合物を含むポリマー性材料や、ポリマー鎖と化学結合した一酸化窒素供与官能基を有するポリマー性材料も含まれる。 (無機シアン化化合物) 無機シアン化化合物としては、対イオン(M+)として、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)、遷移金属、プロトン化された一級、二級又は三級アミン、又は四級アミン、又はアンモニウムを含む無機シアン化化合物(MCN)が挙げられる。 (無機フッ化物) 無機フッ化物としては、対イオン(M+)として、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)、遷移金属、プロトン化された一級、二級又は三級アミン、又は四級アミン、又はアンモニウムを含む無機的フッ化物(MF)が挙げられる。 (イソチオシアネート) イソチオシアネートとしては、例えばマスタードオイルが挙げられる。 (固定化して窒素酸化物源を供給する微生物培養物) 固定化して窒素酸化物源を供給する微生物培養物としては、例えばキサンチンオキシダーゼ、硝酸塩還元酵素、亜硝酸塩還元酵素が挙げられる。 (窒素複素環化合物) 窒素複素環化合物としては以下のものが挙げられる:ピリジン、ピリミジン(例えばジピリダモール)、ピラジン、トリアジン、プリン、ニコチンアミド、ニコチネート、ニコチンアミド、ナイアシン(ニコチン酸として知られる)、イソキノリン、イミダゾール、及び誘導体及びその塩。これら窒素複素環化合物は置換されている場合もある。ピリジン及びイソキノリンには、3−カルボニル置換された化合物も含まれる。例えば、窒素複素環化合物はピリジン、ピリミジン又はイミダゾールである。更にまた、窒素複素環化合物は、ニコチン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩又はエステルであり、上記エステルとしてはメチルニコチネート、エチルニコチネート、プロピルニコチネート、ブチルニコチネート、ペンチルニコチネート、ヘキシルニコチネート、メチルイソニコチネート、イソプロピルイソニコチネート、及びイソペンチルイソニコチネート等のエステルが包含される。更にまた、窒素複素環化合物はニコチンアミドのアルカリ又はアルカリ土類金属塩又はエステル、又はイミダゾールである。また、窒素複素環化合物としては、ピリジン、ピリミジン、ヒスチジン、N−アセチルヒスチジン、3−ブチロイルピリジン、3−バレロイルピリジン、3−カプロイルピリジン、3−ヘプトイルピリジン、3−カプリロイルピリジン、3−ホルミルピリジン、ニコチンアミド、N−エチルニコチンアミド、N、N−ジエチルニコチンアミド、イソニコチン酸ヒドラジド、3−ヒドロキシピリジン、3−エチルピリジン、4−ビニルピリジン、4−ブロモイソキノリン、5−ヒドロキシイソキノリン、又は3−シアノピリジンが挙げられる。 (一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素供与化合物、アンモニア供与化合物、硫化水素供与化合物) 一酸化炭素(CO)、一酸化硫黄(SO)、亜酸化窒素(N2O)、アンモニア(NH3)、硫化水素(HS)は、それぞれミオグロビンのリガンドとして作用する。一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素供与化合物、アンモニア供与化合物、硫化水素供与化合物はそれぞれ、これらのリガンド(すなわち、一酸化炭素、一酸化硫黄、亜酸化窒素、アンモニア、硫化水素)を供与する化合物、又は基質として作用してこれらのリガンドを形成する化合物を指し、例えばリガンド/ヘム/遷移金属錯体及びリガンド第一鉄プロトポルフィリン錯体が挙げられ、例えばリガンドが一酸化炭素であれば、一酸化炭素/ヘム/遷移金属錯体及び一酸化炭素第一鉄プロトポルフィリン錯体である。一酸化炭素供与化合物、一酸化硫黄供与化合物、亜酸化窒素供与化合物及び硫化水素供与化合物には、そのポリマー鎖へ化学結合している、一酸化炭素、一酸化硫黄、亜酸化窒素、アンモニア、硫化水素を供与する官能基を有するポリマー性材料も包含される。 1.4.本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の用途 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材は、ミオグロビン含有食品の表面に接触したときに該食品に抗酸化剤を供給することができ、該食品での鮮度劣化、及び、ミオグロビンの酸化による変色を抑制することができる。 本発明において「ミオグロビン含有食品」としては、ミオグロビンを含有する魚肉、鯨肉、馬肉、牛肉、豚肉等が挙げられる。ミオグロビンを含有する魚肉の起源となる魚としては特に限定されないが、アジ科、サバ科、ニシン科、サンマ科又はタイ科に属する魚が挙げられる。アジ科のなかでも特にブリモドキ亜科ブリ属(以下「ブリ属」という)又はアジ亜科マアジ属に属する魚が好ましい。ブリ属に属する魚の中でも特にブリ(Seriola quinqueradiata)、カンパチ(Seriola dumerili)が好ましい。アジ亜科マアジ属に属する魚の中でもマアジ(Trachurus japonicus)が好ましい。サバ科のなかでも特に、マグロ族カツオ属又はマグロ族マグロ属に属する魚が好ましい。マグロ族カツオ属に属する魚の中でもカツオ(Katsuwonus pelamis)が好ましい。ニシン科のなかでも特にニシン亜科マイワシ属に属する魚が好ましい。ニシン亜科マイワシ属に属する魚の中でもマイワシ(Sardinops melanostictus)が好ましい。サンマ科のなかでも特にサンマ属に属する魚が好ましい。サンマ属に属する魚の中でも特にサンマ(Cololabis saira)が好ましい。タイ科のなかでも特にマダイ亜科マダイ属に属する魚が好ましい。マダイ亜科マダイ属に属する魚の中でもとくにマダイ(Pagrus major)が好ましい。なお、ブリは日本国内では成長段階に応じて慣習的に呼称が異なる場合があるが、本願明細書において「ブリ」という用語は、慣習的な呼称に関係なくSeriola quinqueradiataに分類される生物種を指す。すなわち本発明にミオグロビン含有食品として用いることのできる魚肉としては、ブリ、カツオ・マグロ類、マアジ、マイワシ、サンマ、マダイ等の魚の魚肉が挙げられる。 前記魚肉としては、典型的には魚のフィレや、表面の一部が表皮で覆われたロイン、表皮を剥いだロイン、魚から切り出した適当な形状の切身が挙げられ、特にアジ科に属する魚、特にブリ、カンパチ等のブリ属に属する魚の前記形態の魚肉が好ましい。 図18を参照して、本発明の対象となり得る魚肉の典型例について説明する。図18Aは魚の全体である、ラウンド180を示す。図18Bはラウンド180から頭部、エラ、内臓、ヒレを除去した魚肉であるドレス181を示す。図18Cは、魚の背骨を挟んだ両側を切り出した魚肉であるフィレ111を示す。表皮を剥がさない場合、フィレ111の一方の面は表皮で覆われ、他方の面は肉が露出している。図18Dは、フィレ11の1つを、背骨が形成されていた方向に沿って切断し背側と腹側とに切り分けた魚肉であるロイン182、183を示す。ロイン182、183は一部が表皮により覆われていてもよいし、表皮が剥がされていてもよい。図中では、背側のロイン182として、表皮を剥いだロインを示し、腹側のロイン183として、表皮を有するロインを示す。本発明において魚肉は、表面の一部が表皮で覆われたフィレ111、表面の一部が表皮で覆われたロイン183、表皮を剥いだロイン182、又は切身(例えば図1Aに示す10)であることが好ましい。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の具体的な使用方法としては、下記のように、ミオグロビン含有食品を包装材内に包装した食品包装体において、本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材をミオグロビン含有食品の表面に接触させることが挙げられる。 2.食品包装体とその保存及び輸送 本発明の食品包装体の第1実施形態は、 上記の特徴を有する本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材と、 包装材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又は前記ミオグロビン含有食品変色抑制材と前記ミオグロビン含有食品とが、前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又は前記ミオグロビン含有食品変色抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする。好ましくは、前記包装材内は脱気されている。 包装材の形状は特に限定されず、図示するような袋の形状であってもよいし、トレー、ラッピング用フィルム等任意の形状であることができる。トレーとしてはミオグロビン含有食品と接触する事のできる容器、ラッピング用フィルムとしてはミオグロビン含有食品と接触する事のできる包装フィルム形態が好ましい。 具体的には、図1A、Bに示すように、食品包装体300は包装材200により、本発明のフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材100と、ミオグロビン含有食品(ブリの切り身)10とが包装され、包装材200内が脱気されたものである。各フィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材100の抗酸化剤の層101(図2参照)は、食品10の表面と接触するように配置される。フィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材100及び食品10を包装材200により包装する際に、包装材200内を脱気して真空包装するなど、密着包装を行うことができる。密着包装により酸化の原因となる酸素が排出され、ミオグロビンの酸化による変色をより効果的に抑制することが可能である。真空包装の方法としては、空気を実質的に透過しない袋状の包装容器中にミオグロビン含有食品を入れ、該包装容器内をノズル式脱気法(包装容器内の空気をノズルにより脱気する方法)、チャンバー式脱気法(チャンバー内を真空包装機によって減圧し、包装容器内部を脱気してから口部をシールする方法)等により脱気する方法が挙げられる。真空包装の大半はチャンバー式脱気法によって行われている。真空包装機としては手動型や自動型のロータリー式真空包装機を用いることができる。包装体内には、本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材及びミオグロビン含有食品だけでなく、吸水シート、ドリップ吸着シート等を必要に応じて加えることができる。 本発明の食品包装体の第2実施形態では、 上記の特徴を有する本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記ミオグロビン含有食品が、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又は前記ミオグロビン含有食品変色抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする。好ましくは、前記包装材内は脱気されている。 ここで、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材を少なくとも一部に含む包装材としては、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材を少なくとも一部に含む限り、袋、トレー、ラッピング用フィルム等の任意の形状であることができる。トレーとしてはミオグロビン含有食品と接触する事のできる容器、ラッピング用フィルムとしてはミオグロビン含有食品と接触する事のできる包装フィルム形態が好ましい。 例えば当該第2実施形態では、図10に示すように、2枚のフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材100を、袋の内方に抗酸化剤を含む面が向くように配置し、三方をシールした袋状の包装材210を用い、その内部にミオグロビン含有食品を包装することができる。この第2実施形態では、包装材210以外に、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材100を追加で設ける必要はないが、追加で設けることもできる(たとえば図12A,Bに示す具体例参照)。包装材210内を適宜脱気し食品10を密閉して、図1Bに示す第1実施形態の食品包装体300と同様の外観を有する食品包装体300を得ることができる。真空包装の方法や、吸水シート、ドリップ吸着シート等の他の要素を加えることができる点は、第1実施形態について上述したのと同様である。 上記の第1実施形態及び第2実施形態の食品包装体において、ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部が、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材に覆われていればよい。ミオグロビン含有食品が、一部に表皮を有する魚のフィレ又はロインである場合、後述する理由から、該フィレ又はロインの表皮で覆われた表面が少なくともミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材に覆われていることが好ましく、該フィレ又はロインの表面の全体がミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材に覆われていることがより好ましい。 食品包装体の第1実施形態と第2実施形態は組み合わせて実施することが可能である。食品包装体の第1実施形態と第2実施形態は組み合わせた場合、 上記の特徴を有する本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材を少なくとも一部に含む包装材と、 前記包装材に含まれるものとは別の、更なる、上記の特徴を有する本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材と、 ミオグロビン含有食品と、 を少なくとも備え、 前記包装材により、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材及び前記ミオグロビン含有食品が、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又は前記ミオグロビン含有食品変色抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されており、且つ 前記包装材により、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材と前記ミオグロビン含有食品とが、前記更なるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又は当該ミオグロビン含有食品変色抑制材における前記基材の前記抗酸化剤に被覆された表面、及び/又は、前記抗酸化剤を担持する前記層の表面と、前記ミオグロビン含有食品の表面の少なくとも一部とが接触するように包装されていることを特徴とする。 この第1実施形態と第2実施形態との組み合わせにおいても、好ましくは、前記包装材内は脱気されている。 以下、図11A〜図13Bを参照して、上記の第1実施形態又は第2実施形態或いはこれらの組み合わせに係る本発明の食品包装体300の更なる具体例を説明する。以下、「ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材」を、簡便に「ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材」と表示する。 図11A及び図11Bには第2実施形態に係る食品包装体300の一具体例を示す。この具体例は、2つのフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を、抗酸化剤層101が互いに向かい合うように配置し、それらの間にミオグロビン含有食品111を挟み、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100の周縁をヒートシール等の手段により閉じて食品包装体300を得る例である。図示する例では、2つに分かれたミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を組み合わせて包装材を構成するが、これには限定されず、分離されていない一体の連続したミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100により包装材を構成してもよいし、3つ以上に分かれたミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を組み合わせて包装材を構成してもよい。また、包装材を構成する1又は複数のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100により、先に一部が開口した袋又はチューブを用意してから、その内部にミオグロビン含有食品111を配置し、前記袋又はチューブの開口部を閉じて食品包装体300を形成してもよい。 図11A及び図11Bに示す食品包装体300の具体例において、ミオグロビン含有食品111としては、図11A,Bに示す肉厚の魚のフィレや、ロインを用いることができる。魚のフィレ又はロインは表面の一部に表皮(うろこを含んでもよい)を含でもよい。アジ科(特にブリ属)に属する魚等の魚のフィレ又はロインでは、一般に、図4のフィレの断面に示すように、血合肉Aが表皮近傍に多く含まれる。そこで、ミオグロビン含有食品111が表皮を有する魚のフィレ又はロインである場合には、少なくとも、該フィレ又はロインの表皮を含む面に、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100の抗酸化剤層101が接するように配置することが好ましい。すなわち、前記フィレ又はロインの表皮を含まない面と接触する包装材の部分は、必ずしも抗酸化剤を含んでいる必要はなく、抗酸化剤層を含まない他の包装材、例えば基材フィルム105であってもよい。ただし、フィレ又はロインの表皮側の面は比較的酸化され易く、該面と接触した抗酸化剤は失活し易いため、フィレ又はロインの表面の全体が抗酸化剤層101と接するようにミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を配置することが好ましい。 図12A及び図12Bには、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた形態の食品包装体300の一具体例を示す。この具体例は、フィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100と、抗酸化剤層を含まないフィルム120とにより形成された包装材により、ミオグロビン含有食品111を、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100の抗酸化剤層101がミオグロビン含有食品111と接するように包装し周縁をシールした食品包装体300において、更に、前記包装材には含まれるものとは別の、更なる本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を、その抗酸化剤層101が、ミオグロビン含有食品111の、前記包装材に含まれる前記ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100とは接しない表面の少なくとも一部と接するように配置して、ミオグロビン含有食品111とともに前記包装材により包装する例である。該包装材はヒートシール等の手段により周縁を閉じる。フィルム120としては、食品の包装材として用いることができるのであれば特に限定されないが、例えば、抗酸化剤層101を含まない以外はミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100に用いられているのと同様の基材105を用いることができる。図示する例では、1枚のフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100と1枚のフィルム120とを組み合わせて包装材を構成するが、これには限定されず、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100とフィルム120とは一体に形成されていてもよいし、少なくとも一方が複数のフィルムにより形成されていてもよい。また、包装材を構成するミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100とフィルム120とにより、先に一部が開口した袋又はチューブを用意してから、その内部にミオグロビン含有食品111及び前記別のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を配置し、前記袋又はチューブの開口部を閉じて食品包装体300を形成してもよい。 図12A及び図12Bに示す食品包装体300の具体例では、包装材に含まれるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100と、包装材に含まれるものとは別のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100とで、異なる基材を用いて構成することが容易である。例えば、包装材に含まれるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100の基材105として、ヒートシールするのに適した、内側面にポリオレフィン系樹脂、好ましくはポリエチレンの層を含む基材105を用い、包装材に含まれるものとは別のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100の基材105として、比較的安価で高強度なポリエステル系樹脂、好ましくはポリエチレンテレフタレートを含む基材105を用いることができる。 図12A及び図12Bに示す食品包装体300の具体例の変形例としては、包装材に含まれるものとは別のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を省略した例が挙げられる。該変形例は第1実施形態の一例である。この変形例は、ミオグロビン含有食品111の一部の表面(例えば、表皮を有する魚のフィレ又はロインの、表皮を含む表面)に選択的に抗酸化剤層101を接触させる場合に好適である。 図13A及び図13Bには、第1実施形態の食品包装体300の一具体例を示す。この具体例は、ミオグロビン含有食品111と、2枚のフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100(1)、100(2)とを、前記2枚のフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100(1)、100(2)の抗酸化剤層101が、それぞれ、ミオグロビン含有食品111の表面と接するように配置し、それらを、2枚のフィルム120(1)、(2)により形成された包装材により包装する例である。図13Aでは2枚のフィルムを区別するために便宜上100(1)、100(2)、120(1)、120(2)という符号を用いるが、2枚のフィルムを区別する必要がないときは100(1)及び100(2)をともに100で表し、120(1)及び120(2)をともに120で表す。フィルム120としては、食品の包装材として用いることができるのであれば特に限定されないが、例えば、抗酸化剤層101を含まない以外はミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100に用いられているのと同様の基材105を用いることができる。図示する例では、2つに分かれたフィルム120を組み合わせて包装材を構成するが、これには限定されず、分離されていない一体の連続したフィルム120により包装材を構成してもよいし、3つ以上に分かれたフィルム120を組み合わせて包装材を構成してもよい。また、包装材を構成する1又は複数のフィルム120により、先に一部が開口した袋又はチューブを用意してから、その内部にミオグロビン含有食品111及びミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を配置し、前記袋又はチューブの開口部を閉じて食品包装体300を形成してもよい。更に、図示する例では、2つに分かれたフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を用いるが、これには限定されず、分離されていない一体の連続したフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100や、3つ以上に分かれたフィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100をミオグロビン含有食品111に接触させてもよい。フィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100は、その内部にミオグロビン含有食品111を内包する、袋又はチューブの形状であってもよい。 図13A及び図13Bに示す食品包装体300の具体例の変形例としては、2枚のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100(1)、100(2)のうち、一方を省略した例が挙げられる。この変形例は、ミオグロビン含有食品111の一部の表面(例えば、表皮を有する魚のフィレ又はロインの、表皮を含む表面)に選択的に抗酸化剤層101を接触させる場合に好適である。 図11A〜図13Bに示す上記の各具体例及びその変形例において、真空包装の方法や、吸水シート、ドリップ吸着シート等の他の要素を加えることができる点は、第1実施形態について上述したのと同様である。 上記の本発明の第1実施形態、第2実施形態またはそれらの組み合わせに係る食品包装体300では、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100の一部または全部を、図3に示す抗酸化剤が担持された第1樹脂層401を備えるミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材400と置き換えることができる。この場合、第1実施形態、第2実施形態またはそれらの組み合わせに係る食品包装体300及びその具体例に関する上記の説明において、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100の抗酸化剤層101は、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材400の抗酸化剤が担持された第1樹脂層401と置き換えて理解することができる。 本発明はまた、本発明の食品包装体を保存及び/又は輸送する方法であって、 前記食品包装体を−30℃〜+10℃の温度条件において保存及び/又は輸送する工程を含む方法に関する。 前記方法が、前記食品包装体を−30〜−10℃の温度条件において保存及び/又は輸送する工程を含む方法である場合には、該工程は、前記食品包装体を−5〜+8℃の温度条件において0.1〜10時間、好ましくは0.5〜7時間、さらに好ましくは1〜5時間保存する第1工程と、第1工程の後に−30〜−10℃の温度条件において保存及び/又は輸送する第2工程とを含むことが好ましい。冷凍条件で行われる第2工程の前に第1工程を経ることにより、直接第2工程を行う場合と比較して、ミオグロビン含有食品の色の劣化を更に抑制することができる。その理由としては、第1工程を行うことにより、抗酸化剤を効率よくミオグロビン含有食品に浸透させることができ、その後に第2工程を行うことで抗酸化剤の効果が増すためだと考えられる。また、第1工程において十分にミオグロビン含有食品を冷却してから第2工程において凍結するため、凍結の効率がよく、ミオグロビン含有食品の内部での鮮度のムラが生じにくい。 凍結した本発明の食品包装体は適当な解凍方法により解凍して喫食等の用途に用いる。解凍方法としては(1)水解凍法、(2)空気解凍法、又は(3)電気解凍法を用いることができる。(1)水解凍法としては、例えば、水浸漬解凍(流水解凍、発泡解凍)、スプレー解凍(散水式)、水蒸気解凍等が利用できる。(2)空気解凍法としては、例えば、静止空気解凍、流動空気解凍(エアブラスト解凍)等が利用できる。(3)電気解凍法としては、超短波解凍(例えば周波数13, 27, 40MHz)や、マイクロ波解凍(電子レンジ解凍、例えば周波数2,450MHz(日本の場合))等が利用できる。好ましくは、冷蔵庫(4℃)で放置することによる解凍(静止空気解凍)、冷凍した包装体に水を触れさせる流水や水中での解凍(水浸漬解凍)、包装体から取り出した冷凍した魚を食塩水(1〜2%,4〜40℃)に浸す解凍(水浸漬解凍)を用いる。 3.本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材に含まれる抗酸化剤の定量 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材に含まれる抗酸化剤の量は、抗酸化剤を適当な溶媒を用いて抽出し、抽出液中の抗酸化剤の構成成分の量を分析することにより求めることができる。抗酸化剤の抽出方法や構成成分の測定方法は特に限定されない。 抗酸化剤として植物抽出物等の複数の成分を含む組成物を用いる場合であって、且つ、該組成物中の所定の成分の存在比が既知である場合は、本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材から溶出された前記所定の成分の量の測定値に基づいて、前記組成物(抗酸化剤)の量を換算して算出することができる。 水溶性ローズマリー抽出物にはロスマリン酸が多く含まれ、油溶性ローズマリー抽出物にはカルノソール及びカルノシン酸が多く含まれる。ロスマリン酸、カルノソール、及びカルノシン酸は、ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材をメタノールに十分浸漬することで抽出することができ、UHPLC(超高速液体クロマトグラフ)等の通常の方法で定量することができる。以下に、フィルム状又は板状の基材の一方の表面に水溶性ローズマリー抽出物又は油溶性ローズマリー抽出物が塗布されたミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材の、ロスマリン酸、カルノソール、及びカルノシン酸の定量と、水溶性ローズマリー抽出物又は油溶性ローズマリー抽出物の換算の一例を説明するが、これは一例であってこの例に限定されるものではない。 3.1.ロスマリン酸、カルノソール、及びカルノシン酸、並びにそれを含む植物抽出物の定量 (1)抽出方法(溶出試験方法) 12cm×17cm厚手チャック袋に5cm×5cmにカットしたフィルム状又は板状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材を入れる。さらにメタノール10mLを注加して、できるだけ空気を抜くようにしてチャックを閉める。袋を手で数回振とうさせ、上澄み液を非水系0.2μmクロマトディスクで濾過する。濾過液を適宜希釈してUHPLC測定する。 (2)測定方法 上記溶出試験液をUHPLC測定する。測定条件は下記に示す通りであり、クロマトグラムより得られた標準ピーク面積値を用いて、検量線より試験液中ロスマリン酸濃度を求め、単位面積あたり含有量として算出する。 ロスマリン酸量(g/m2)=測定値(mg/L)×抽出液量0.01(L)/試料面積0.0025(m2)×希釈倍率/1000 尚、検量線用標準は和光純薬工業社製ロスマリン酸を使用する。 カルノソール及びカルノシン酸も、下記条件によるUHPLCにより検出することが可能であり、検量線により試験液中のカルノソール及びカルノシン酸濃度を求め、ロスマリン酸と同様の算式により単位面積当たりの含有量を算出することができる。 ローズマリー抽出物中のロスマリン酸、カルノソール又はカルノシン酸の含有率が既知である場合、測定された単位面積当たりのロスマリン酸、カルノソール又はカルノシン酸の含有量に基づき、ローズマリー抽出物としての含有量に換算することができる。本発明者らは、試験2及び3で使用した水溶性ローズマリー抽出物(RM−21Aベース)が、ロスマリン酸を9.2質量%の濃度で含有し、試験2で使用した油溶性ローズマリー抽出物(RM−21Bベース)が、カルノソールを12質量%、カルノシン酸を7.4質量%含有することを別途確認している。 そこで本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材が前記水溶性ローズマリー抽出物又は前記油溶性ローズマリー抽出物を含有することが既知である場合、上記手順で測定された単位面積当たりのロスマリン酸、カルノソール又はカルノシン酸の含有量(g/m2)に基づいて、単位面積当たりの前記水溶性ローズマリー抽出物又は前記油溶性ローズマリー抽出物の含有量を次式により換算することができる。抽出物中のロスマリン酸、カルノソール又はカルノシン酸の含有率が異なる場合は、抽出物としての換算量を、含有率に応じて同様に算出することができる。 ロスマリン酸から換算する水溶性ローズマリー抽出物量(g/m2)=ロスマリン酸量(g/m2)/0.092 カルノソールから換算する油溶性ローズマリー抽出物量(g/m2)=カルノソール量(g/m2)/0.12 カルノシン酸から換算する油溶性ローズマリー抽出物量(g/m2)=カルノシン酸量(g/m2)/0.074 (3)UHPLC測定条件 装置: 超高速液体クロマトグラフ装置 Nexera X2(島津製作所社製) カラム: TOSOH社製 Kinetex 1.7μm C18 100A(2.1mmI.D.×50mmL.) カラム温度: 40℃ 移動相: 0.05%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル=A/B 移動相条件: 0から2分=溶媒B(アセトニトリル)濃度20%から45%へ 2分から10分=溶媒B濃度45% 10分から10.1分=溶媒B濃度45%から20%へ 10.1分から13分=溶媒B濃度20% 移動相流量: 0.6mL/min ポンプ温度: 室温 測定時間: 13分 注入量: 1μL 検出器 : PDA検出器(210nm)

1.試験1 <検体のサンプリング> ブリの原魚は3.5kgのものを使用した。このブリを活魚で搬入し、即殺後、3枚にフィレ状態にカットした。このフィレ(約1kg)を、長手方向に対して略垂直な方向にカットして、厚さ約2cmの第1魚肉片(図4中20)を得た。第1魚肉片20から血合部分を含む部分(図4でのA部分)を残し、残部(図4でのB部分)を切除して第2魚肉片とした。続いて、第2魚肉片(厚さ約2cm)を厚さ約1cmの2枚のブリ検体(検体A及び検体B)となるように切り分け以下の試験に用いた。なお、ブリ検体Aは対照試験に使用し、ブリ検体Bは4℃条件下での各種変色抑制剤の効果を確認する試験に使用した。 <変色抑制用フィルム> LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)とPA(ナイロン6)とをPE(ポリエチレン)接着層を介して積層した積層フィルムのLLDPE面に抗酸化剤をグラビア印刷した。その後、このフィルムを一辺10cmの正方形にカットし、これを変色抑制用フィルムとした。 LLDPEとPAとの積層フィルム:厚さ60μmのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)層と、厚さ20μmのPE(ポリエチレン)接着層と、厚さ15μmのPA(ナイロン6)層とがこの順に積層した構造を有するものを用いた。積層フィルムのLLDPE面はコロナ処理をしていない。 得られた変色抑制用フィルムの断面の模式図を図2に示す。変色抑制用フィルム100は、抗酸化剤層101と、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)層102と、PE(ポリエチレン)接着層103と、PA(ナイロン6)層104とを備える。抗酸化剤層101は以下の手順のグラビア印刷により形成した。 グラビア印刷の手順:抗酸化剤を、エタノール水溶液(90%もしくは95%水溶液)に添加し、スラリー溶液を作製した(後の抗酸化剤をフィルム転写させる工程時に、表1記載の濃度となるようにスラリー溶液の濃度を調製した)。このスラリー溶液を、版面に添着させ、フィルムに転写(ロール印刷)した。その後、抗酸化剤が転写されたフィルムを90℃〜130℃の熱風で2〜3秒かけて乾燥した。 抗酸化剤としてはローズマリー抽出物と茶抽出物とを用いた。 ローズマリー抽出物は、市販のローズマリー抽出物含有組成物である、三菱化学フーズ「RM−21A」(ローズマリー抽出物/デキストリン=10質量%/90質量%)の形態のものを用いた。 この組成物に含まれるローズマリー抽出物は、シソ科マンネンロウ(Rosmarinus officinalis L.)の葉、又は花より抽出精製して得られたものである。有効成分は、フェノールカルボン酸(ロスマリン酸等)、及びフラボノイド類(ルテオリン類)である。このローズマリー抽出物含有組成物は粉末で水、エタノール(純度50%以下のエタノール水溶液)、プロピレングリコール(純度80%以下のプロピレングリコール水溶液)に溶解しやすく油脂類に不溶である。 茶抽出物は、市販の茶抽出物含有組成物である、三菱化学フーズ「サンフード100」(茶抽出物100%)の形態のものを用いた。 この組成物中での茶抽出物は、緑茶(ツバキ科チャ)の葉より抽出精製した緑茶ポリフェノールである。 ローズマリー抽出物及び茶抽出物の、変色抑制用フィルムへの塗布量及び水溶液における濃度は、前記組成物の形態の全重量を抽出物の重量とみなして算出した。すなわち前記組成物にデキストリン等の非活性成分が含まれる場合には、非活性成分も抽出物の一部として扱い塗布量及び濃度を算出した。 <真空パック> 真空パック用袋状容器としては、厚さ60μmのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)層と、厚さ20μmのPE(ポリエチレン)接着層と、厚さ15μmのPA(ナイロン6)とがこの順で積層された積層フィルムを裁断し15cm×15cmの正方形としたフィルム片を2枚用意し、各フィルム片のLLDPE面が内側となるように対向させ三辺を熱シールして15cm×15cmの三方シール袋(図1Aに示す三方シール袋200)を作製し、これを使用した。 真空封止は、REMACOM社製のチャンバー式真空包装機(RVM−C35)を使用して0.1気圧(101hPa)以下にて行った。

*値の測定方法> 所定の貯蔵期間が経過した後、スキャナにブリの切身検体を載せ、隙間から光が差し込まないようにして、画像をスキャンした。取り込んだ画像をAdobe photoshop CS5を利用し、感覚色度(a

*値)を測定した。a

*値の測定箇所は、切身のうちの血合肉のみで、切身1つあたり5か所の測定を行い、平均値をその血合肉の色の数値とした。 (実施例1) 図1Aに概略を示すように、ブリ検体10のカット面の両面に、前記ローズマリー抽出物含有組成物が5.25g/m

2の塗布量で印刷された変色抑制用フィルム100を、抗酸化剤層101(ローズマリー抽出物を含む層)がブリ検体10と接するように添着し、それを三方シール袋200に封入して真空パックした。真空パック後の包装体300を図1Bに示す。 1つの第2魚肉片から得られたブリ検体A及びブリ検体Bのうち、ブリ検体Bを上記ブリ検体10として用いた包装体300を、包装体300形成後直ちに4℃の雰囲気下(冷蔵庫)で5日間(120時間)保存した。保存を開始してから120時間後、真空パックからブリ検体Bを取出し、a

*値の測定と形状の観察を行った。 また対照試験として、前記ブリ検体Bと同一の第2魚肉片から得られたブリ検体Aを図1Aに示す三方シール袋200に入れて真空封止後直ちに、メト化の進行しない温度(−60℃)で保存したのち、上記ブリ検体Bを分析する際に合わせて、5〜10分間で水道水にて流水解凍し、ブリ検体Aを真空パックから取り出し、上記ブリ検体Bと同時にa

*値の測定と形状の観察を行った。結果を表1及び図5に示す。 (実施例2) 図1Aに概略を示すように、ブリ検体10のカット面の両面に、前記茶抽出物含有組成物が2.60g/m

2の塗布量で印刷された変色抑制用フィルム100を、抗酸化剤層101(茶抽出物を含む層)がブリ検体10と接するように添着し、それを三方シール袋200に封入して真空パックした。真空パック後の包装体300を図1Bに示す。 1つの第2魚肉片から得られたブリ検体A及びブリ検体Bのうち、ブリ検体Bを上記ブリ検体10として用いた包装体300を、包装体300形成後直ちに4℃の雰囲気下(冷蔵庫)で5日間(120時間)保存した。保存を開始してから120時間後、真空パックからブリ検体Bを取出し、a

*値の測定と形状の観察を行った。 また対照試験として、上記ブリ検体Bと同一の第2魚肉片から得られたブリ検体Aを図1Aに示す三方シール袋200に入れて真空封止後直ちに、メト化の進行しない温度(−60℃)で保存したのち、上記ブリ検体Bを分析する際に合わせて、5〜10分間で水道水にて流水解凍し、ブリ検体Aを真空パックから取り出し、上記ブリ検体Bと同時にa

*値の測定と形状の観察を行った。結杲を表1及び図6に示す。 (比較例1) 1つの第2魚肉片から得られたブリ検体Aとブリ検体Bのうちブリ検体Bを、乾燥を防ぐために十分に水で湿らしたキッチンペーパーとともにステンレス製容器に静置し、食品用ラップフィルムで密閉した後、4℃雰囲気下(冷蔵庫)で5日間(120時間)保存した。保存を開始してから120時間後のブリ検体Bについてa

*値の測定と形状の観察を行った。 また対照試験として、前記ブリ検体Bと同一の第2魚肉片から得られたブリ検体Aを、図1Aに示す三方シール袋200に入れて真空封止後直ちに、メト化の進行しない温度(−60℃)で保存した。保存したブリ検体Aを、上記ブリ検体Bを分析する際に、5〜10分間で水道水にて流水解凍し、前記ブリ検体Bと同時にa

*値の測定と形状の観察を行った。結果を表1及び図7に示す。 (比較例2) 1つの第2魚肉片から得られたブリ検体Aとブリ検体Bのうちブリ検体Bを、4℃の前記ローズマリー抽出物含有組成物の水溶液(水溶液全量に対して0.1質量%の前記ローズマリー抽出物含有組成物を含む)に20時間浸漬した。浸漬後、ブリ検体Bを取り出して軽く水切りし、真空パック後、4℃の雰囲気下(冷蔵庫)で100時間保存した。保存を開始してから100時間後、真空パックからブリ検体Bを取出し、a

*値の測定と形状の観察を行った。真空パックは、2枚の変色抑制用フィルム100を用いない点を除いて実施例1と同様の方法で行った。 また対照試験として、前記ブリ検体Bと同一の第2魚肉片から得られたブリ検体Aを図1Aに示す三方シール袋200に入れて真空封止後直ちに、メト化の進行しない温度(−60℃)で保存した。保存したブリ検体Aを、上記ブリ検体Bを分析する際に合わせて、5〜10分間で水道水にて流水解凍し、真空パックから取り出し、上記ブリ検体Bと同時にa

*値の測定と形状の観察を行った。結果を表1及び図8に示す。 (比較例3) 1つの第2魚肉片から得られたブリ検体Aとブリ検体Bのうちブリ検体Bを、4℃の前記ローズマリー抽出物含有組成物の水溶液(水溶液全量に対して1質量%の前記ローズマリー抽出物含有組成物を含む)に20時間浸漬した。浸漬後、ブリ検体Bを取り出して軽く水切りし、真空パック後、4℃の雰囲気下(冷蔵庫)で100時間保存した。保存を開始してから100時間後、真空パックからブリ検体Bを取出し、a

*値の測定と形状の観察を行った。真空パックは、2枚の変色抑制用フィルム100を用いない点を除いて実施例1と同様の方法で行った。 また対照試験として、前記ブリ検体Bと同一の第2魚肉片から得られたブリ検体Aを図1Aに示す三方シール袋200に入れて真空封止後直ちに、メト化の進行しない温度(−60℃)で保存した。保存したブリ検体Aを、上記ブリ検体Bを分析する際に合わせて、5〜10分間で水道水にて流水解凍し、真空パックから取り出し、上記ブリ検体Bと同時にa

*値の測定と形状の観察を行った。 結果を表1及び図9に示す。 (結果)

*値に基づく変色抑制能の評価方法> 各実施例比較例の試験において、ブリ検体Aとブリ検体Bのa

*値を求め、ブリ検体Bでのa

*値を、ブリ検体A(対照試験)でのa

*値を100とした相対値で表した。ブリ検体Bについてa

*値の相対値に応じて変色抑制能を3段階で評価した。 ○: 80 ≦ a

*(相対値) △: 50 ≦ a

*(相対値) < 80 ×: a

*(相対値) < 50 <比較例での形状変化についての説明>

1)比較例1では、保存120時間後の検体Bは対照試験で保存後の検体Aと比較して収縮していた。ただし収縮の程度は比較例2及び3よりも小さかった。

2)比較例2では、保存100時間後の検体Bは対照試験で保存後の検体Aと比較して収縮していた。収縮の程度は比較例1よりも大きかった。また、ローズマリー抽出物水溶液中への浸漬のために、浸漬終了時の検体Bにはふやけ(膨張)が認められた。

3)比較例3では、保存100時間後の検体Bは対照試験で保存後の検体Aと比較して収縮していた。収縮の程度は比較例1よりも大きいものであった。また、ローズマリー抽出物水溶液中への浸漬のために、浸漬終了時の検体Bにはふやけ(膨張)が認められた。 2.試験2 2−1.ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材 (1)基材 図2に示す積層構造を有する、厚さ60μmのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)層102と、厚さ20μmのPE(ポリエチレン)接着層103、厚さ15μmのON(延伸ナイロン)層104とがこの順に積層した構造を有する積層フィルム105を基材として用いた。該積層フィルム105のLLDPE面はコロナ処理をしていない。以下、抗酸化剤層101が形成されていない前記積層フィルム105を「基材フィルム」と呼ぶことがある。この基材フィルムの比重は、各層を構成する樹脂の規格値から、約92g/m

2と推定される。 (2)抗酸化剤 抗酸化剤としてはローズマリー抽出物、茶抽出物、アスコルビン酸を用いた。 ローズマリー抽出物としては以下の三種類を用意した。 ローズマリー抽出物A:三菱化学フーズ「RM−21Aベース」(水溶性ローズマリー抽出物100質量%)。 ローズマリー抽出物B:三菱化学フーズ「RM−21A」(水溶性ローズマリー抽出物/デキストリン=10質量%/90質量%)。 ローズマリー抽出物C:三菱化学フーズ「RM−21Bベース」(油溶性ローズマリー抽出物100質量%)。 ここでローズマリー抽出物AおよびBに含まれる水溶性ローズマリー抽出物は、どちらも、シソ科マンネンロウ(Rosmarinus officinalis L.)の葉、又は花より抽出精製して得られたものである。有効成分は、フェノールカルボン酸(ロスマリン酸等)、及びフラボノイド類(ルテオリン、ルテオリン配糖体等のルテオリン誘導体等)である。このローズマリー抽出物は粉末で水、エタノール(純度50%以下のエタノール水溶液)、プロピレングリコール(純度80%以下のプロピレングリコール水溶液)に溶解しやすく油脂類に不溶である。 ローズマリー抽出物Cに含まれる油溶性ローズマリー抽出物は、シソ科マンネンロウ(Rosmarinus officinalis L.)の葉、又は花より抽出精製して得られたものである。有効成分は、フェノール性ジテルペノイド(ロスマノール、カルノソール、カルノシン酸等)である。このローズマリー抽出物は粉末で油脂類に溶解しやすく、水に不溶である。 茶抽出物は、市販の茶抽出物である、三菱化学フーズ「サンフード100」(茶抽出物100%)の形態のものを用いた。 この茶抽出物は、緑茶(ツバキ科チャ)の葉より抽出精製した緑茶ポリフェノールである。この茶抽出物は水溶性である。 アスコルビン酸は、扶桑化学工業社「ビタミンC」の形態のものを用いた。 (3)ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材の調製 前記積層フィルム105のLLDPE面に抗酸化剤層101をグラビア印刷により積層して、図2に示す、フィルム状のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100を調製した。ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材100は、抗酸化剤層101、LLDPE層102、PE接着層103、ON層104がこの順に積層されたフィルムである。以下、このフィルム100を「本発明のフィルム」と呼ぶことがある。 グラビア印刷の手順:抗酸化剤を、エタノール水溶液(90%もしくは95%水溶液)に添加し、スラリー溶液を作製した(後の抗酸化剤をフィルム転写させる工程時に、表7記載の濃度となるようにスラリー溶液の濃度を調製した)。このスラリー溶液を、版面に添着させ、フィルムに転写(ロール印刷)した。その後、抗酸化剤が転写されたフィルムを90℃〜130℃の熱風で2〜3秒かけて乾燥した。 抗酸化剤のフィルムへの塗布量(印刷量)は、グラビア印刷前後での重量差より算出した。 塗布量(印刷量)[g/m

2] = グラビア印刷後のフィルム重量[g/m

2] − グラビア印刷前のフィルム重量[g/m

2] 表7において、ローズマリー抽出物Bを塗布した実施例210〜215での有効成分の塗布量は、ローズマリー抽出物Bの塗布量ではなく、上記式で求めたローズマリー抽出物Bの塗布量から換算した、ローズマリー抽出物B中に10質量%の濃度で含まれる水溶性ローズマリー抽出物の塗布量である。 一方、ローズマリー抽出物A、ローズマリー抽出物C、茶抽出物、アスコルビン酸はいずれも全体が有効成分であるため、上記式で求めた塗布量を有効成分の塗布量として表7に示す。 2−2.検体の調製 ブリの原魚は約5kgのものを使用した。このブリを活魚で搬入し、即殺後カットし、左右のフィレ(それぞれ約1.7kg)を得た。個々のフィレは図13A、18に示すフィレ111のように、一方の主面が表皮に覆われ、他方の主面には魚肉が露出している。以下、フィレ111の表皮に覆われている側を「スキン側」、魚肉が露出している側を「肉側」と表現する場合がある。各試験区(実施例及び比較例)では、同一個体から得られた2つのフィレのうち一方を各試験区の条件による処理試料とした。他方は、各試験区の条件を施さない対照試料として、後述するK0値を求めるために用いた。 以下、単に「フィレ」というときは、ブリから得られた上記のフィレを指す。 2−3.真空包装 真空包装のための真空封止は、REMACOM(レマコム)製の真空包装機(RVM−300B)を使用してチャンバー内の圧力を−100kPa(−1.0bar)(ゲージ圧)にて行った。 真空包装の際は、図13Aに示すようにフィレ111のスキン側と肉側にそれぞれ、2枚の抗酸化剤層を含まないフィルム120の間にフィレ(ミオグロビン含有食品)111を配置し、周縁をヒートシールして閉じ、上記条件での真空封止を行った。本試験2では、抗酸化剤層を含まないフィルム120として、2枚の、抗酸化剤層101を積層していない前記基材フィルム105を用い、それらを、LLDPE層102が互いに対向するように配置した。真空封止する際は、包装するフィレ111の表面の水分をキッチンペーパーでふき取った。以下、フィルム120の具体例として基材フィルム105を用いた例を説明し、フィレ111のスキン側に配置する基材フィルム105を基材フィルム105(1)とし肉側に配置する基材フィルム105を基材フィルム105(2)とする。フィレ111のスキン側に本発明のフィルム100を接触させる場合には、更に本発明のフィルム100を、フィレ111のスキン側と基材フィルム105(1)との間に、その抗酸化剤層101がフィレ111のスキン側面と接触するように配置して真空封止を行った。フィレ111の肉側に本発明のフィルム100を接触させる場合には、更に本発明のフィルム100を、フィレ111の肉側面と基材フィルム105(2)との間に、その抗酸化剤層101がフィレ111の肉側面と接触するように配置して真空封止を行った。図13Aでは、フィレ111のスキン側に配置する本発明のフィルム100を、本発明のフィルム100(1)とし、肉側に配置する本発明のフィルム100を、本発明のフィルム100(2)とする。このとき、本発明のフィルム100(1)、100(2)は、外側に配置される基材フィルム105(1)、105(2)よりも小さく形成して、外側に配置される2枚の基材フィルム105(1)、105(2)のLLDP面の周縁は互いに直接接触できるようにした。図13Bでは、フィレ111のスキン側と肉側の両方に本発明のフィルム100(1)、100(2)の抗酸化剤層101を接触させる場合の例を示す。 2−4.評価 (1)膨潤率の測定(比較例203〜205) ローズマリー抽出物の水溶液中でフィレを浸漬した試験区である比較例203〜204については、フィレの重量変化から「膨潤率」を求めた。 膨潤率(%)=(浸漬後の重量(g)/浸漬前の重量(g))×100 (2)K値の測定 K値は、ミオグロビンを含有する魚肉の鮮度の指標であり、値が大きいほど鮮度が低いことを示す。 鮮度劣化抑制のための所定の処理を施した試料について測定したK値をK1値とし、該所定の処理に対するブランク処理を施した試料について測定したK値をK0値とする。K1値、K0値の測定に用いた試料の詳細は下記(2−4)に記載の通りである。 K0−K1の値は、前記所定の処理による鮮度劣化の抑制の程度を示す指標として有効である。 K0−K1の値を、以下の3段階に分類して評価した。 なお、K0値やK1値のみしかない場合は、3段階評価はないものとした。

K値(%)は以下の方法で測定した。 (2−1)抽出方法 試料としたフィレ111を長手方向に対して略垂直な方向にカットして、厚さ約2cmの図4に示す第1魚肉片20を得た。第1魚肉片20から、血合部分を含まないB部分(普通肉)を5g切り出した。該B部分5gを、日本精機製作所社製ステンレス製100mLカップに入れ、0.4N過塩素酸水溶液20mLを加えた。このカップを日本精機製作所社製エースホモジナイザーAM−3にセットした後、10,000rpmで10秒間ホモジナイズ(粉砕)した。この粉砕肉溶液を50mL遠心管に移し、クボタ社製ハイスピード冷却遠心機7930にて25,000G(14,400rpm)、2℃で15分間遠心分離した。遠心分離後の上澄み液を5mL別の50mL遠心管に移し、そこに2N炭酸カリウム水溶液を1mL入れて10回手で振とうさせた。再度、クボタ社製ハイスピード冷却遠心機7930にて25,000G(14,400rpm)、2℃で15分間遠心分離した後の上澄み液を水系0.45μmクロマトディスクで濾過し、得られた溶出試験液をHPLC測定した。 (2−2)測定方法 上記溶出試験液をHPLC測定した。測定条件は下記に示す通りであり、クロマトグラムより得られた標準ピーク面積値を用いて、検量線より試験液中のヒポキサンチン濃度(Hyp)、イノシン濃度(Ino)、イノシン酸濃度(IMP)、アデノシン一リン酸濃度(AMP)、アデノシン二リン酸濃度(ADP)、アデノシン三リン酸濃度(ATP)をそれぞれ求め、以下の式を用いてK値を算出した。 K値(%)=(Hyp+Ino)/(Hyp+Ino+IMP+AMP+ADP+ATP)×100 (2−3)HPLC測定条件 上記(2−2)でのHPLC測定は以下の条件で行った。 装置:島津製作所社製 LC−10Avp カラム:信和化工社製 STR ODS−II(150mmL.×4.6mmI.D.) カラム温度:40℃ 移動相:100mmoL/Lりん酸(トリエチルアミン)緩衝液(pH6.8)/アセトニトリル = 100/1(v/v) 移動相流量:1.0mL/min ポンプ温度:室温 測定時間:35分 注入量:20μL 検出器:UV検出器 260nm (2−4)K1値、K0値の測定に用いる試料 実施例201〜222の各試験区では、同一のブリ個体から得られた2つのフィレのうち一方を用いて下記「2−5.試験区の説明」(1)〜(6)で詳述する各処理を行った。各処理を施した前記一方のフィレについて測定したK値をK1値とした。そして、他方のフィレを、本発明のフィルム100(1)、100(2)を用いず、比較例202と同様に、基材フィルム105(1)及び基材フィルム105(2)のLLDPE層102がそれぞれフィレ111のスキン側及び肉側と接するようにして真空包装を施した以外は各試験区と同じ処理を行い処理後のフィレ試料を用いて測定したK値をK0値とした。 比較例201については下記「2−5.試験区の説明」(7)で詳述する処理を行ったフィレについてK値を測定し、該K値をK1値とした。比較例201についてはK0値に相当するK値は測定していない。 比較例202については下記「2−5.試験区の説明」(8)で詳述する処理を行ったフィレについてK値を測定し、該K値をK0値とした。比較例202についてはK1値に相当するK値は測定していない。 比較例203〜205では、同一のブリ個体から得られた2つのフィレのうち一方を用いて下記「2−5.試験区の説明」(9)で詳述する各処理を行い、K値を測定し、該K値をK1値とした。また、他方のフィレについては前記ローズマリー抽出物水溶液に浸漬する操作を行わない以外は各比較例と同様の処理を行い処理後のフィレ試料を用いてK値を測定し、該K値をK0値とした。 比較例206については下記「2−5.試験区の説明」(10)で詳述する処理を行ったフィレについてK値を測定し、該K値をK0値とした。比較例206の処理を行ったフィレは、実施例222に用いたフィレと同一個体から得られたフィレであった。このため比較例206のK0値は、実施例222のK0値に相当する。 参考例201については下記「2−5.試験区の説明」(11)で詳述する処理を行ったフィレについてK値を測定し、該K値をK1値とした。参考例201についてはK0値に相当するK値は測定していない。 参考例202については活締め直後のフィレのK値を測定し、該K値をK1とした。参考例202についてはK0値に相当するK値は測定していない。 (3)官能評価 以下の基準に従い検体形状、食感、臭い、色目、ドリップ量を評価した。 (3−1)検体形状 検体形状は、フィレ検体の保存前状態から保存後状態の変化を評価した。 (3−2)食感 食感は以下の5段階で評価した。ブリを活締めした直後に得られるフィレから切り出した肉片の食感(参考例202)を「5」とし、各試験区のフィレから切り出した肉片の食感のうち最も悪いCO処理したフィレから切り出した肉片の食感(参考例201)を「1」として、各試験区でのフィレから切り出した肉片の食感を5段階評価した。

(3−3)臭い 臭いは以下の5段階で評価した。各試験区のフィレのうち、魚肉特有の生臭ささが最も弱いフィレの臭い(実施例201〜204、207、217、222)を「5」とし、生臭さが最も強いCO処理したフィレの臭い(参考例201)を「1」として、各試験区でのフィレの臭いを5段階評価した。なお「3」はブリを活締めした直後に得られるフィレの臭い(参考例202)に相当する。

(3−4)色目 色目はフィレの血合肉を以下の7段階で評価した。CO処理したフィレから切り出した肉片の色目(参考例201)、また、ブリを活締めした直後に得られるフィレから切り出した肉片の色目(参考例202)を「7」とし、各試験区のフィレから切り出した肉片の色目のうち最も悪いフィレから切り出した肉片の色目(比較例206)を「1」として、各試験区でのフィレから切り出した肉片の色目を7段階評価した。

(3−5)ドリップ量 ドリップ量とは、実施例201〜221、比較例202〜205、については、4℃24時間又は22時間保存後のフィレを真空包装袋からトレイに出したときの、該トレイ上に肉から染み出した液の量と、真空包装袋中に染み出した液の量とを足し合わせた量である。また、実施例222、比較例206、参考例201については、−25℃1ヶ月間保存したのち、4℃15時間の解凍を行った後のフィレを真空包装袋からトレイに出したときの、該トレイ上に肉から染み出した液の量と、真空包装袋中に染み出した液の量とを足し合わせた量をドリップ量とした。また、比較例201については、トレイ上で4℃、24時間保存後のフィレを、別の新たなトレイに出したときの、新たなトレイ上に肉から染み出した液の量と、元のトレイに染み出した液の量とを足し合わせた量をドリップ量とした。そしてまた、参考例202については、活締め直後の魚であるのでドリップ量は無いものとした。 ドリップ量は以下の5段階で評価した。フィレから全く液体が出ていない場合を活き締め直後(参考例202)の数値を「5」とし、各試験区のドリップ量のうち最も多い(比較例206、参考例201)を「1」として、各試験区でのフィレのドリップ量を5段階評価した。

2−5.試験区の説明 (1)実施例201〜209 ローズマリー抽出物Aを、水溶性ローズマリー抽出物として5g/m

2、2.5g/m

2、1g/m

2、0.5g/m

2の量で含む抗酸化剤層101を備える本発明のフィルム100を作製した。水溶性ローズマリー抽出物(RM−21Aベース)はロスマリン酸を9.2質量%の濃度で含有することを本発明者は確認しており、該抽出物5g/m

2、2.5g/m

2、1g/m

2、0.5g/m

2はロスマリン酸量としてそれぞれ460mg/m

2、230mg/m

2、92mg/m

2、46mg/m

2に相当する。 実施例201、203、205、208では、フィレ111のスキン側及び肉側に、基材フィルム105(1)と基材フィルム105(2)とを各々のLLDPE層102が内側となるように配置し、基材フィルム105(1)とフィレ111との間に、本発明のフィルム100(1)を抗酸化剤層101がフィレ111のスキン側に接するように配置し、本発明のフィルム100(2)は使用せず基材フィルム105(2)のLLDPE層102がフィレ111の肉側と接するようにして、フィレ111に真空包装を施して、本発明の食品包装体300を得た。 実施例202、204、207、209では、フィレ111のスキン側及び肉側に、基材フィルム105(1)と基材フィルム105(2)とを各々のLLDPE層102が内側となるように配置し、基材フィルム105(1)とフィレ111との間に、本発明のフィルム100(1)を抗酸化剤層101がフィレ111のスキン側に接するように配置し、基材フィルム105(2)とフィレ111との間に、本発明のフィルム100(2)を抗酸化剤層101がフィレ111の肉側に接するように配置して、フィレ111に真空包装を施して、本発明の食品包装体300を得た。 実施例206では、フィレ111のスキン側及び肉側に、基材フィルム105(1)と基材フィルム105(2)とを各々のLLDPE層102が内側となるように配置し、本発明のフィルム100(1)は使用せず、基材フィルム105(1)のLLDPE層102がフィレ111のスキン側に接するように配置し、基材フィルム105(2)とフィレ111との間に、本発明のフィルム100(2)を抗酸化剤層101がフィレ111の肉側に接するように配置して、フィレ111に真空包装を施して、本発明の食品包装体300を得た。 それぞれ真空包装した状態のフィレ111を4℃で24時間保存した。保存後、開封し、表7に示す各項目を評価した。 (2)実施例210〜215 ローズマリー抽出物B(RM−21A)を、水溶性ローズマリー抽出物(RM−21Aベース)換算量として0.5g/m

2、0.25g/m

2、0.1g/m

2の量(ロスマリン酸量としてそれぞれ46mg/m

2、23mg/m

2、9.2mg/m

2に相当する)で含む抗酸化剤層101を備える本発明のフィルム100を作製し、以下の真空包装に用いた。 実施例210、212,214では、実施例201と同様に、基材フィルム105(1)と、本発明のフィルム100(1)と、フィレ111と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置して、フィレ111のスキン側が本発明のフィルム100(1)の抗酸化剤層101と接し、肉側が基材フィルム105(2)のLLDPE層102と接するように真空包装した。 実施例211、213、215では、実施例202と同様に、基材フィルム105(1)と、本発明のフィルム100(1)と、フィレ111と、本発明のフィルム100(2)と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置して、フィレ111のスキン側及び肉側が本発明のフィルム100(1)、100(2)の抗酸化剤層101と接するように真空包装した。 各試験区の試料を実施例201〜209と同様に保存し評価した。 (3)実施例216〜217 ローズマリー抽出物Cを、油溶性ローズマリー抽出物として1g/m

2の量で含む抗酸化剤層101を備える本発明のフィルム100を作製し、以下の真空包装に用いた。油溶性ローズマリー抽出物(RM−21Bベース)はカルノソールを12質量%、カルノシン酸を7.4質量%の濃度で含有することを本発明者は確認しており、該抽出物1g/m

2はカルノソール量として120mg/m

2、カルノシン酸量として74mg/m

2に相当する。 実施例216では、実施例201と同様に、基材フィルム105(1)と、本発明のフィルム100(1)と、フィレ111と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置して、フィレ111のスキン側が本発明のフィルム100(1)の抗酸化剤層101と接し、肉側が基材フィルム105(2)のLLDPE層102と接するように真空包装した。 実施例217では、実施例202と同様に、基材フィルム105(1)と、本発明のフィルム100(1)と、フィレ111と、本発明のフィルム100(2)と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置して、フィレ111のスキン側及び肉側が本発明のフィルム100(1)、100(2)の抗酸化剤層101と接するように真空包装した。 各試験区の試料を実施例201〜209と同様に保存し評価した。 (4)実施例218〜219 茶抽出物を2.5g/m

2の量で含む抗酸化剤層101を備える本発明のフィルム100を作製し、以下の真空包装に用いた。 実施例218では、実施例201と同様に、基材フィルム105(1)と、本発明のフィルム100(1)と、フィレ111と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置して、フィレ111のスキン側が本発明のフィルム100(1)の抗酸化剤層101と接し、肉側が基材フィルム105(2)のLLDPE層102と接するように真空包装した。 実施例219では、実施例202と同様に、基材フィルム105(1)と、本発明のフィルム100(1)と、フィレ111と、本発明のフィルム100(2)と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置して、フィレ111のスキン側及び肉側が本発明のフィルム100(1)、100(2)の抗酸化剤層101と接するように真空包装した。 各試験区の試料を実施例201〜209と同様に保存し評価した。 (5)実施例220〜221 アスコルビン酸を2g/m

2の量で含む抗酸化剤層101を備える本発明のフィルム100を作製し、以下の真空包装に用いた。 実施例220では、実施例201と同様に、基材フィルム105(1)と、本発明のフィルム100(1)と、フィレ111と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置して、フィレ111のスキン側が本発明のフィルム100(1)の抗酸化剤層101と接し、肉側が基材フィルム105(2)のLLDPE層102と接するように真空包装した。 実施例221では、実施例202と同様に、基材フィルム105(1)と、本発明のフィルム100(1)と、フィレ111と、本発明のフィルム100(2)と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置して、フィレ111のスキン側及び肉側が本発明のフィルム100(1)、100(2)の抗酸化剤層101と接するように真空包装した。 各試験区の試料を実施例201〜209と同様に保存し評価した。 (6)実施例222 実施例222では、実施例207と同じ手順で真空包装した状態のフィレを、4℃で1時間保存した。その後、−25℃で1カ月保存し、4℃で15時間かけて解凍を行った。解凍後、開封し、表7に示す各項目を評価した。 (7)比較例201 フィレをトレイ上に静置し、当該トレイを食品用ラップフィルムにより密封し、4℃で24時間保存したのち、表7に示す各項目を評価した。 (8)比較例202 比較例202では、基材フィルム105(1)と、フィレ111と、基材フィルム105(2)とをこの順で配置し、基材フィルム105(1)及び基材フィルム105(2)のLLDPE層102がフィレ111のスキン側及び肉側と接するように真空包装を施した。 真空包装した状態のフィレを実施例201〜209と同様に保存し評価した。 (9)比較例203〜205 ローズマリー抽出物Aを、水溶性ローズマリー抽出物として水中に0.01質量%、0.1質量%及び1質量%含有する水溶液をそれぞれ調製した。 比較例203、204及び205ではフィレを、それぞれ0.01質量%、0.1質量%及び1質量%の前記ローズマリー抽出物A水溶液に、4℃で2時間浸漬した。浸漬後、フィレを前記水溶液から取り出し、比較例202と同様に、基材フィルム105(1)及び基材フィルム105(2)のLLDPE層102がそれぞれフィレ111のスキン側及び肉側と接するように真空包装を施した。 真空包装した状態のフィレ111を4℃で22時間保存した。保存後、開封し、表7に示す各項目を評価した。 (10)比較例206 比較例206では、比較例202と同じ手順で真空包装した状態のフィレを、−25℃で1カ月保存し、4℃で15時間かけて解凍を行った。解凍後、開封し、表7に示す各項目を評価した。 (11)参考例201 CO処理フィレは以下の方法により調製することができる。ブリの原魚は5.0kgのものを使用する。このブリを活魚で搬入し、即殺後、3枚にフィレ状態にカットする。このフィレ(約1.5kg)を、20%食塩水に15分浸漬し、真水に10分浸漬し、風乾する。その後、針を用いて燻煙を注入し、燻煙の入った袋に入れ4℃で2時間保存し、袋からフィレを取り出す。 参考例201では上記の手順で調製されるCO処理フィレに対し、比較例202と同様に、基材フィルム105(1)及び基材フィルム105(2)のLLDPE層102がそれぞれフィレ111のスキン側及び肉側と接するように真空包装を施した。 参考例201の真空包装したフィレを−25℃で1カ月保存し、4℃で15時間かけて解凍を行った。解凍後、開封し、表7に示す各項目を評価した。 (12)参考例202 活締め直後のブリを表7に示す各項目を評価した。 2−6.結果 各試験区の評価結果を表7に示す。また、官能評価(食感、臭い、色目、ドリップ量)に関しては、総合評価として、以下の様に区別した。 ◎: 16点以上 O: 13〜15点 ×: 12点以下 総合評価(点数)= 食感(1〜5)+臭い(1〜5)+色目(1〜7) +ドリップ量(1〜5) 実施例202ではK0値が10.7%、K1値が7.3%、K0−K1値は3.4であった。実施例204ではK0値が13.8%、K1値が9.7%、K0−K1値は4.1であった。実施例207ではK0値が10.0%、K1値が8.0%、K0−K1値は2.0であった。実施例219ではK0値が11.0%、K1値が10.0%、K0−K1値は1.0であった。実施例221ではK0値が10.5%、K1値が8.4%、K0−K1値は2.1であった。実施例222ではK0値が6.2%、K1値が5.1%、K0−K1値は1.1であった。比較例205ではK0値が9.0%、K1値が15.5%、K0−K1値は−6.5であった。参考例201ではK1値が31.1%であった。参考例202ではK1値が1.6%であった。 実施例201〜222の各試験区では、本発明のフィルム100を用いることによりフィレの鮮度の劣化が抑制されたことが確認できた。特に実施例202、204、207、217、219、221、222のようにフィレの両面に抗酸化剤層101が接するように真空包装した場合、鮮度の指標であるK値、又は/且つ官能評価の総合評価値として比較的高い結果を得る事ができ、鮮度の劣化が顕著に抑制できた。一方、トレイ上に静置した比較例201や、本発明のフィルム100を用いずに真空包装した比較例202、比較例206では官能評価の総合評価からも分かるように、鮮度劣化を抑制することはできなかった。また、CO処理をした参考例201では冷凍保存後も色は保持されるが鮮度劣化を抑制することはできなかった。また、ローズマリー抽出物の水溶液でフィレを浸漬した後に真空包装した比較例203、204、205では、フィレが水溶液により膨潤していることが確認された。参考のため保存後の比較例203、204、205のフィレの写真を、図14A、14B、14Cにそれぞれ示す。これらの写真からもフィレがふやけていることが確認できる。 実施例201、202では、抗酸化剤であるローズマリー抽出物Aの含有量が多いため、フィレに黄色の着色が認められた。実施例203、204では、実施例201、202ほどではないものの、フィレに少し黄色の黄色が認められた。

3.試験3 3−1.フィルム 本試験で用いたフィルムA、フィルムBはそれぞれ以下の通りである。 (1)フィルムA フィルムAは上述した実施例205〜207で用いたフィルムと同様のもので、図2に示す本発明のフィルム100の構成を有する。具体的には、厚さ60μmのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)層102と、厚さ20μmのPE(ポリエチレン)接着層103と、厚さ15μmのON(延伸ナイロン)層104とがこの順に積層した構造を有する積層フィルム105を基材とし、該積層フィルム105のLLDPE層102の表面に、ローズマリー抽出物からなる抗酸化剤層101を備える。LLDPE層102の表面はコロナ処理されていない。 ローズマリー抽出物として三菱化学フーズ「RM−21Aベース」を用いた。 該ローズマリー抽出物からなる抗酸化剤層101は、試験2の「2−1.ミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材」(3)に記載した印刷法により形成した。ローズマリー抽出物の塗布量(印刷量)は「発明を実施するための形態」の「3.1.ロスマリン酸、カルノソール、及びカルノシン酸、並びにそれを含む植物抽出物の定量」の欄に記載した水溶性ローズマリー抽出物(RM−21Aベース)の換算方法により算出した。 フィルムAとして、下記フィレ片のスキン側面への溶出試験に用いるフィルムA(1)(塗布量0.71g/m

2)と、下記フィレ片の肉側面への溶出試験に用いるフィルムA(2)(塗布量0.67g/m

2)と、水中への溶出試験に用いるフィルムA(3)(塗布量0.70g/m

2)を作製した。 (2)フィルムB フィルムBは図15に示す本発明のフィルム100の構成を有する。具体的には、厚さ30μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる単層フィルムを基材105とし、基材105の一方の表面に、ローズマリー抽出物からなる抗酸化剤層101を備える。抗酸化剤層101が形成される基材105の表面のコロナ処理はされていない。 使用したローズマリー抽出物、抗酸化剤層の形成方法、ローズマリー抽出物の塗布量の測定方法はフィルムAと同じである。 フィルムBとして、下記フィレ片のスキン側面への溶出試験に用いるフィルムB(1)(塗布量1.04g/m

2)と、下記フィレ片の肉側面への溶出試験に用いるフィルムB(2)(塗布量1.09g/m

2)と、水中への溶出試験に用いるフィルムB(3)(塗布量1.00g/m

2)を作製した。 3−2.ブリのフィレ 試験2と同様にして、ブリから約1.5kgの、一方の側が表皮で被覆され他方の側に肉が露出したフィレを作製した。このフィレの長手方向に対して略垂直な方向に10cm幅でカットして、フィレ片として検体を作製した。 3−3.抗酸化剤溶出試験 (1)ブリフィレのスキン側面又は肉側面への抗酸化剤溶出量評価 5cm×5cmの寸法に切り出したフィルムA又はフィルムBを、上記フィレ片に対して、抗酸化剤層101がフィレ片のスキン側又は肉側に接するように添着した。次いで、フィルムA又はBが添着されたフィレ片を、厚さ60μmのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)層と、厚さ20μmのPE(ポリエチレン)接着層と、厚さ15μmのON(延伸ナイロン)とがこの順で積層されたフィルムからなり、LLDPE層が内側となるように配置された真空包装袋に入れ、真空封止を行った。 真空封止は、REMACOM社製のチャンバー式真空包装機(RVM−300B)を使用してチャンバー内の圧力を−100kPa(−1.0bar)(ゲージ圧)にて行った。この真空包装袋を4℃雰囲気下で保存し、10分間、1時間、3時間、6時間、24時間後に真空包装を開封し、フィルムA又はフィルムBをフィレ片から取り外した。各時間で取り外されたフィルムA又はフィルムBに残存するローズマリー抽出物の量を後述する手順で測定した。そして、フィルムA又はフィルムBに予め塗布されていたローズマリー抽出物の量から、測定された残存するローズマリー抽出物の量を引いた差を、フィルムA又はフィルムBをフィレに所定時間接触させた際にフィレ片に溶出したローズマリー抽出物の溶出量とみなした。ローズマリー抽出物の溶出量はフィルムA又はフィルムBの単位面積当たりの量として表した。 (2)水への抗酸化剤溶出試験 温度4℃において、蒸留水1000mLの入った、ポリプロピレン製バット(寸法:長さ×幅×高さ=320mm×230mm×52mm)に5cm×5cmのフィルムA又はフィルムBを浸漬し、10秒、10分、30分、1時間、3時間、6時間、24時間後に取り出し、乾燥させた。取り出したフィルムA又はフィルムBに残存するローズマリー抽出物の量を後述する手順で測定した。そして、フィルムA又はフィルムBに予め塗布されていたローズマリー抽出物の量から、測定された残存するローズマリー抽出物の量を引いた差を、フィルムA又はフィルムBを水に所定時間浸漬した際に水に溶出したローズマリー抽出物の溶出量とみなした。ローズマリー抽出物の溶出量はフィルムA又はフィルムBの単位面積当たりの量として表した。 3−4.溶出量測定方法 前記の各溶出試験後のフィルムA又はフィルムBにおけるローズマリー抽出物の残存量は以下の手順で求めた。 (1)溶出方法 12cm×17cm厚手チャック袋に、前記の各溶出試験後の5cm×5cmのフィルムA又はフィルムBを入れた。その後、メタノール10mLを注加して、できるだけ空気を抜くようにしてチャックを閉じ、手で数回振とうさせ、上澄み液を非水系0.2μmクロマトディスクで濾過した。濾過液を希釈せずそのまま下記条件によりUHPLC測定した。 (2)測定方法 (2−1):検量線作成方法 100ppm標準液を自動希釈機能によりメタノールで希釈、50ppm、10ppm、5ppm、2ppmの4点検量線を作成した。 (2−2):算出方法 UHPLCによるロスマリン酸濃度の測定値から、フィルムA又はフィルムBに残存する単位面積当たりのロスマリン酸量を次式により求めた。 ロスマリン酸量(mg/m

2)=測定値(mg/L)×抽出液量10(mL)/試料面積0.0025(m

2)×希釈倍率/1000 既述の通り、本発明者らは、使用したローズマリー抽出物A(RM−21Aベース)、すなわち水溶性ローズマリー抽出物、が、ロスマリン酸を9.2質量%の濃度で含有していることを別途確認している。そこで上記で算出された単位面積当たりのロスマリン酸量(mg/m

2)に基づいて、単位面積当たりの水溶性ローズマリー抽出物の量を次式により算出した。 ロスマリン酸から換算した水溶性ローズマリー抽出物量(g/m

2)=ロスマリン酸量(mg/m

2)/0.092/1000 (3)UHPLC測定条件 装置:島津製作所 超高速液体クロマトグラフ Nexera X2 カラム:Kinetex 1.7μm C18 100A (50mmL.×2.1mmI.D.) カラム温度:40℃ 移動相:0.05%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル=A/B 移動相条件: 0から1分=溶媒B(=アセトニトリル)濃度20% 1分から2分=溶媒B濃度20%から45%へ 2分から10分=溶媒B濃度45% 10分から10.1分=溶媒B濃度45%から20%へ 10.1分から13分=溶媒B濃度20% 移動相流量:0.6mL/min ポンプ温度:室温 測定時間:13分 注入量:1μL 検出器:ロスマリン酸(PDA=210nm) 3−5.結果 (1)ブリフィレへの溶出性 表8に、前記「3−3.抗酸化剤溶出試験」(1)の方法で評価したブリフィレのスキン側面又は肉側面への抗酸化剤の溶出量(上段)及び溶出率(下段)を示す。表8中、溶出時間0.17時間は10分間を指す。表8に示す溶出率は、図16Aにグラフとして示す。 フィルムA及びフィルムBともに、フィレのスキン側面及び肉側面に接触することにより、10分間という比較的短時間で、塗布された抗酸化剤の半分以上をフィレに供給することができ、6時間後までは溶出率が増加し、その後は増加が少ない傾向が確認された。PETからなる表面に抗酸化剤層100が形成されたフィルムBでは、24時間経過時点で、予め塗布された抗酸化剤の大部分が溶出されたのに対して、LLDPからなる表面に抗酸化剤層100が形成されたフィルムAでは24時間経過後も70%程度の溶出率であった。フィルムA、フィルムBともに、フィレの肉側面に接触した場合に抗酸化剤の溶出量が多い傾向が確認された。

(2)水への溶出性 表9に、前記3−3(2)の方法で評価した水への抗酸化剤の溶出量(上段)及び溶出割合(下段)を示す。表9中、溶出時間0.003時間は10秒間を指し、0.17時間は10分間を指し、0.50時間は30分間を指す。表9に示す溶出率は、図16Bにグラフとして示す。 フィルムA及びフィルムBともに、水に接触すると、10秒間という短時間で、塗布された抗酸化剤の半分以上を溶出することができ、6時間後までは溶出率が増加し、その後は増加が少ない傾向が確認された。

発明の効果 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材は、ミオグロビン含有食品においての変色、悪臭、食感の劣化、そしてドリップ量等の抑制が望まれる箇所に選択的に接触させることが出来るため効率的に鮮度劣化を抑制する事ができる。 本発明のミオグロビン含有食品変色抑制材は、ミオグロビン含有食品において変色の抑制が望まれる表面に選択的に接触させることができるため効率的に変色を抑制することができる。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材を用いれば、ミオグロビン含有食品に対してその形状を変えることなく抗酸化剤を接触させることができる。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材を用いてミオグロビン含有食品の鮮度劣化又は変色を抑制する方法は、抗酸化剤の溶液に食品を浸漬させる方法と比較して簡便であるだけでなく、衛生的であり、食品の味を変化させる可能性も小さい。また水等の溶媒が必要でないため、廃液の発生も抑制することができる。 本発明のミオグロビン含有食品鮮度劣化抑制材又はミオグロビン含有食品変色抑制材を用いれば、専用の設備を必要とせず、ミオグロビン含有食品の鮮度劣化又は変色を抑制することが可能である。 本発明の食品包装体は、−30℃を超える温度域においても、包装されたミオグロビン含有食品が酸化による鮮度劣化又は変色することなく保存又は輸送することができる。

本発明は、ミオグロビン含有食品の変色、悪臭、食感の劣化、そしてドリップ量等の鮮度劣化を抑制するための、ミオグロビン含有食品の鮮度劣化抑制材、それを含む食品包装体、及び食品包装体の保存又は輸送方法に関する。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

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