多孔質金属配位高分子化合物及び多孔質炭素材料の製造方法

申请号 JP2013099505 申请日 2013-05-09 公开(公告)号 JP2014218603A 公开(公告)日 2014-11-20
申请人 独立行政法人産業技術総合研究所; National Institute Of Advanced Industrial & Technology; 发明人 XU QIANG; HAROLDOS ARLIN JOSE AMARI;
摘要 【課題】従来の多孔質金属配位高分子と比較して、大きい孔径の空孔を有する新規な構造の多孔質金属配位高分子化合物を提供し、更に、従来の炭素材料と比較して優れた性能を有する新規な構造の多孔質炭素材料を提供する。【解決手段】 金属化 合物と架橋性配位子を含む溶液中において、超音波の照射下で、該金属化合物と該架橋性配位子とを反応させることを特徴とする、孔径が2nm以下の微小細孔と、孔径が5nm以上の小細孔を有する多孔質金属配位高分子化合物の製造方法、及び該多孔質金属配位高分子化合物を鋳型又は前駆体として用いて、加熱し炭化させることによる多孔質炭素材料の製造方法。【選択図】図3
权利要求
  • 金属化合物と、2個以上の配位サイトを有し、該金属化合物における金属原子又は金属イオンに配位して架橋構造を形成し得る架橋性配位子を含む溶液中において、超音波の照射下で、該金属化合物と該架橋性配位子とを反応させることを特徴とする、孔径が2nm以下の微小細孔と、孔径が5nm以上の小細孔を有する多孔質金属配位高分子化合物の製造方法。
  • 金属化合物が、亜鉛、ニッケル、タングステン、パラジウム、クロム、ロジウム、モリブデン、ジルコニウム、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、銀、カドミウム、レニウム、イリジウム、コバルト及び金からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物であり、架橋性配位子が、2-メチルイミダゾール、ベンゼンジカルボキシレート、ベンゼントリカルボキシレート、ナフタレンジカルボキシレート、ビフェニルジカルボキシレート、イミダゾールジカルボキシレート、及びトリエチレンジアミンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である、請求項1に記載の方法。
  • 金属化合物と架橋性配位子を含む溶液が、亜鉛化合物と2-メチルイミダゾールを低級アルコールに溶解した溶液である、請求項2に記載の方法。
  • 金属原子又は金属イオンが架橋性配位子によって連結された多孔質構造を有し、孔径が2nmm以下の微小細孔と孔径が5nm以上の小細孔を有することを特徴とする、多孔質金属配位高分子化合物。
  • 請求項4に記載の多孔質金属配位高分子化合物を加熱して炭化させることを特徴とする、多孔質炭素材料の製造方法。
  • 請求項4に記載の多孔質金属配位高分子化合物の表面および空孔内部に、加熱により重合する有機化合物を導入した後、加熱して該有機化合物を重合及び炭化させることを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
  • 加熱により重合する化合物が、フルフリルアルコール、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ブタジエン、イソプレン及びスクロースからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である、請求項6に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
  • 請求項5〜7のいずれかの方法によって得られる多孔質炭素材料。
  • 说明书全文

    本発明は、孔径の異なる二種類の細孔を有する新規な多孔質金属配位高分子化合物、その製造方法、及び多孔質炭素材料の製造方法に関する。

    多孔質金属配位高分子化合物は、金属イオンと有機配位子が無限に連結され、ジャングルジムに類似した構造を有する固体材料である。 この様な構造を有する多孔質金属配位化材料は、高い比表面積と小分子吸着能を有し、その内部に規則的に並ぶナノメートルサイズの細孔を有用な空間として利用して、ガス貯蔵・分離、触媒担体などとして幅広い用途を有する魅力的な材料である。

    多孔質配位高分子化合物の合成は、主に熱合成や溶媒熱合成法を用いて行われており、これまで報告されている多孔質金属配位高分子化合物は、細孔径が2ナノメーター(nm)以下の微小な細孔を有するものがほとんどである。

    この様な多孔質金属配位高分子化合物と比べ、細孔径の大きな多孔質金属配位高分子化合物は、その大きな細孔を利用して、金属粒子触媒の担持などの用途が広がる可能性が高いため、大きな空孔を有する多孔質金属配位高分子化合物の新しい合成法が期待されている。 最近、界面活性剤を利用して、孔径が20 nm前後の細孔を有する多孔質金属配位高分子化合物の合成も報告されているが、この方法は、合成方法が煩雑であり、用途が限られている(下記非特許文献1参照)。

    一方、炭素は、耐熱性、導電性、伝熱性などの各種特性が良好であって、耐薬品性にも優れており、多様な性質を持つ魅力的な材料である。 近年、炭素材料は、従来使われてきた用途以外に、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵するデバイスであるキャパシタやリチウムイオン電池の電極材料への適用や、水素やメタンなどに代表される付加価値の高いガスを貯蔵する材料への適用などが提案されている。

    炭素材料の製造方法としては、従来から、ピッチや汎用高分子類などの材料を炭素化して目的の構造や特性に近づける方法について各種の検討がなされている。 最近、多孔質配位高分子を鋳型及び前駆体として利用した炭素材料の製造方法も報告されている(下記特許文献1、非特許文献2−4参照)。 しかしながら、この方法では、鋳型・前駆体として用いる多孔質配位高分子が小さい孔径の微小細孔だけを有する場合、形成される多孔質炭素材料にも孔径の小さい細孔が多く形成されるだけである。 多孔質炭素材料をキャパシタの電極材料として用いる場合は、この様な微小な細孔は大容量のイオンの貯蔵に重要であるが、イオンの易動度を高め、高い電位掃引速度や電流密度でも高い充放電特性を発揮するためには、微小細孔だけでなく、孔径が10nm程度以上の比較的孔径が大きい小細孔も有する多孔質炭素材料が有利である。 また、粒子径の大きな金属ナノ粒子触媒の固定化にも、孔径が大きな空孔を有する多孔質炭素材料が必要となるために、このように、大きな空孔も有する多孔質炭素材料の開発が求められている。

    特開2009-143786号公報

    JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, 134, 126 (2012). JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, 130, 5390 (2008). CARBON,48, 456 (2010). JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, 133, 11854 (2011).

    本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、従来の多孔質金属配位高分子と比較して、大きい孔径の空孔を有する新規な構造の多孔質金属配位高分子化合物を提供することであり、更に、従来の炭素材料と比較して優れた性能を有する新規な構造の多孔質炭素材料を提供することである。

    本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。 その結果、金属化合物及び架橋性配位子を用いて、液相反応によって金属原子が架橋性配位子によって連結されてなる多孔質金属配位高分子化合物を合成する際に、超音波の照射下で合成反応を行うことによって、形成される多孔質金属配位高分子化合物は、孔径が2nm程度以下の微小な細孔と共に、孔径が5nm程度以上のより大きな細孔(小細孔)を有する新規な構造の多孔質金属配位高分子化合物となることを見出した。 そして、この方法で形成される多孔質金属配位高分子化合物をそのまま加熱して炭化させる方法によれば、非常に簡単な方法によって、微小細孔と、よい大きな孔径の細孔とを同時に有する高機能な多孔質炭素材料を製造できることを見出した。 更に、上記した多孔質金属配位高分子化合物の表面および空孔内部に、有機化合物を導入し、加熱して該有機化合物を重合・炭化させる方法によっても、微小細孔と共に、より大きな孔径の細孔を持った高比表面積の多孔質炭素材料を容易に製造できることを見出した。 本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねた結果完成されたものである。
    即ち、本発明は、下記の孔質金属配位高分子化合物、その製造方法、及び多孔質炭素材料の製造方法を提供するものである。
    項1. 金属化合物と、2個以上の配位サイトを有し、該金属化合物における金属原子又は金属イオンに配位して架橋構造を形成し得る架橋性配位子を含む溶液中において、超音波の照射下で、該金属化合物と該架橋性配位子とを反応させることを特徴とする、孔径が2nm以下の微小細孔と、孔径が5nm以上の小細孔を有する多孔質金属配位高分子化合物の製造方法。
    項2. 金属化合物が、亜鉛、ニッケル、タングステン、パラジウム、クロム、ロジウム、モリブデン、ジルコニウム、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、銀、カドミウム、レニウム、イリジウム、コバルト及び金からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物であり、架橋性配位子が、2-メチルイミダゾール、ベンゼンジカルボキシレート、ベンゼントリカルボキシレート、ナフタレンジカルボキシレート、ビフェニルジカルボキシレート、イミダゾールジカルボキシレート、及びトリエチレンジアミンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である、項1に記載の方法。
    項3. 金属化合物と架橋性配位子を含む溶液が、亜鉛化合物と2-メチルイミダゾールを低級アルコールに溶解した溶液である、項2に記載の方法。
    項4. 金属原子又は金属イオンが架橋性配位子によって連結された多孔質構造を有し、孔径が2nm以下の微小細孔と孔径が5nm以上の小細孔を有することを特徴とする、多孔質金属配位高分子化合物。
    項5. 項4に記載の多孔質金属配位高分子化合物を加熱して炭化させることを特徴とする、多孔質炭素材料の製造方法。
    項6. 項4に記載の多孔質金属配位高分子化合物の表面および空孔内部に、加熱により重合する有機化合物を導入した後、加熱して該有機化合物を重合及び炭化させることを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。
    項7. 加熱により重合する化合物が、フルフリルアルコール、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ブタジエン、イソプレン及びスクロースからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である、項6に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
    項8. 項5〜7のいずれかの方法によって得られる多孔質炭素材料。

    以下、まず、本発明の多孔質金属配位高分子化合物及びその製造方法について説明する。

    多孔質金属配位高分子化合物
    本発明の多孔質金属配位高分子化合物は、金属化合物と、該金属化合物に配位することができる配位サイトを2個以上有し、金属原子又は金属イオンに配位して架橋構造を形成し得る架橋性配位子とを、溶媒中において反応させることによって得ることができる。

    本発明では、この反応を超音波の照射下において行うことが必要である。 通常、上記した反応を溶媒中で行う場合には、金属原子又は金属イオンが架橋性配位子によって連結されて規則的に配列され、孔径が2nm程度以下の微小細孔が規則的に配列した多孔質金属配位高分子化合物が形成される。

    本発明によれば、上記した液相における多孔質金属配位高分子化合物の合成反応を超音波の照射下で行うことによって、形成される金属配位高分子化合物は、孔径が2nm程度以下の微小細孔と、孔径が5nm程度以上の小細孔という2種類の空孔を同時に有するものとなる。

    本発明の多孔質金属配位高分子化合物を形成するために用いる金属化合物としては、特に限定されないが、後述する架橋性配位子と配位結合を形成し得る金属元素を含む化合物であって、合成反応に使用する溶媒に可溶性の化合物であればよい。 この様な金属化合物における金属成分の具体例としては、亜鉛、ニッケル、タングステン、パラジウム、クロム、ロジウム、モリブデン、ジルコニウム、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、銀、カドミウム、レニウム、イリジウム、コバルト、金などを挙げることができる。

    また、架橋性配位子としては、2つ以上の配位サイトを持ち、上記した金属化合物の金属原子又は金属イオンに配位して架橋構造を形成し得る化合物であればよい。 その具体例としては、2-メチルイミダゾール、ベンゼンジカルボキシレート、ベンゼントリカルボキシレート、ナフタレンジカルボキシレート、ビフェニルジカルボキシレート、イミダゾールジカルボキシレート、トリエチレンジアミンなどを挙げることができる。

    上記した金属化合物と架橋性配位子の組み合わせについては、特に限定はなく、金属原子又は金属イオンが架橋性配位子によって連結されてなる細孔を有する高分子化合物が形成される組み合わせであればよい。

    この様な組み合わせによって形成される多孔質金属配位高分子化合物の具体例としては、一般式:Zn(MeIM) 2 , (MeIM = 2-メチルイミダゾール)で示され、立方晶の結晶構造を有する多孔質構造の金属配位高分子化合物、一般式:Zn 4 O(BDC)) 3 (BDC=1,4-ベンゼンジカルボキシレート)で示され、立方晶の結晶構造を有する多孔質構造の金属配位高分子、一般式:Co 3 (NDC) 3 (NDC=2,6-ナフタレンジカルボキシレート)で示され、単斜晶の結晶構造を有する金属配位高分子などを挙げることができる。

    本発明の多孔質金属配位高分子化合物の製造方法では、上記した金属化合物と架橋性配位子を溶解した溶液中において、液相反応で両者を反応させればよい。 溶媒としては、特に限定はなく、原料として用いる金属化合物と架橋性配位子を溶解できる溶媒を選択すればよく、例えば、水、アルコール類等を用いることができる。

    本発明では、上記した液相反応において多孔質金属配位高分子化合物を合成する際に、超音波の照射下において合成反応を行うことが必要である。 超音波の照射方法については特に限定はなく、例えば、超音波洗浄機のような超音波発生装置中に、金属化合物と架橋性配位子を溶解した反応溶液を入れた反応容器を浸漬して、該反応溶液に超音波を付与する方法や、投げ込み型の超音波ホモジナイザー等を反応溶液中に直接入れる方法などを採用できる。

    超音波の周波数は特に限定はなく、通常、15kHz程度以上であればよく、20kHz程度以上であることが好ましい。 周波数の上限についても特に限定はないが、例えば、10MHz程度以下、好ましくは 1MHz程度以下、より好ましくは 100kHz程度以下の周波数の超音波を用いることができる。 超音波出力についても特に限定はないが、例えば、10〜1000W程度とすればよい。

    超音波の照射時間についても特に限定はなく、多孔質金属配位高分子化合物が形成されると反応溶液中に生成物が析出して懸濁した状態となるので、十分な量の析出物が得られるまで超音波照射を行えばよい。

    本発明では、特に、超音波照射の際に、多孔質金属配位高分子化合物の合成反応を適度な速度で進行させることが好ましく、反応速度が遅すぎると、孔径が2nm程度以下の微小細孔のみを有する多孔質金属配位高分子化合物が形成される傾向がある。 このため、具体的な金属化合物と架橋性配位子との組み合わせにおいて、微小細孔のみが形成される場合には、反応温度を高くすることや、反応溶液中金属化合物と架橋性配位子の濃度を高くすることや、反応溶媒を変更するなどして、多孔質金属配位高分子化合物の合成反応の反応速度を上昇させればよい。 これによって、孔径が2nm程度以下の微小細孔と、孔径が5nm程度以上の小細孔の2種類の空孔を同時に有する多孔質金属配位高分子化合物を得ることができる。

    多孔質金属配位高分子化合物の合成反応の反応条件の具体例としては、例えば、金属化合物として亜鉛化合物を用い、架橋性配位子として2−メチルイミダゾールを用いる場合には、亜鉛化合物の濃度を0.005〜0.2モル/L程度、好ましくは、0.01〜0.05モル/L程度とし、2−メチルイミダゾールの使用量を、亜鉛化合物1モルに対して、0.1〜100モル程度、好ましくは0.5〜10モル程度、より好ましくは1〜2モル程度として反応溶液を調製すればよい。 この際、溶媒としてメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールを用い、反応溶液中にトリエチルアミンなどの塩基性化合物を好ましくは0.01〜0.2モル/L程度、より好ましくは0.05〜0.1モル/L程度添加して反応溶液を塩基性に調整することによって、反応速度を適度に向上させて、本発明の特有の細孔構造を有する多孔質金属配位高分子化合物を安定して形成することができる。

    反応温度については、特に限定的ではないが、10〜60℃程度とすればよく、通常は室温において反応を行えばよい。

    上記した条件で超音波の照射下で反応を行うことによって、多孔質金属配位高分子化合物の合成反応が比較的速い速度で進行して、反応溶液中で生成物が懸濁した状態となる。

    得られた生成物を、懸濁溶液から濾過や遠心分離などの方法で分離することによって、目的とする多孔質金属配位高分子化合物を得ることができる。

    この方法で得られる生成物は、原料として用いた金属化合物における金属原子又は金属イオンが、2個以上の配位サイトを有し、該金属原子又は金属イオンに配位して架橋構造を形成し得る架橋性配位子によって連結された多孔質構造を有し、孔径が2nmm程度以下の微小細孔と、孔径が5nm程度以上の小細孔の2種類の空孔を同時に有する多孔質金属配位高分子化合物となる。 該金属配位高分子化合物における微小細孔の孔径は、2nm程度以下であり、下限値については限定はないが、通常、1nm程度である。 また、小細孔の孔径は5nm程度以上であり、上限値については、通常、15nm程度である。

    尚、本願明細書では、細孔の孔径は、窒素吸着等温線によって測定した値である。

    本発明の多孔質金属配位高分子化合物は、上記した微小細孔と小細孔を同時に有するものである。 両者の比率については特に限定はないが、通常、微小細孔:小細孔(容積比)=1:1〜1:10程度、好ましくは1:1〜1:5程度となる。

    また、該多孔質金属配位高分子化合物は、通常、BET比表面積が500〜1000 m 2 /g程度という大きい比表面積を有する多孔質体である。

    上記した通り、本発明の多孔質金属配位高分子化合物は、孔径が2nm程度以下の微小細孔と、孔径が5nm程度以上の小細孔の二種類の空孔を同時に有する多孔質体であり、例えば、金属粒子触媒などの担体として用いる場合には、多量の触媒を担持することが可能となり、気相、液相反応等の反応場として有効に利用することができる。

    多孔質炭素材料
    本発明では、上記した多孔質金属配位高分子化合物を用いることによって、該多孔質金属配位高分子化合物の構造を反映した多孔質炭素材料を得ることができる。 以下、該多孔質炭素材料の製造方法について説明する。

    (1)炭化法 まず、第一の方法としては、上記した多孔質金属配位高分子化合物を直接加熱して炭化させることにより、多孔質金属配位高分子化合物の細孔構造を反映した多孔質炭素材料を得ることができる。 炭化反応を進行させるためには、例えば、200〜1200℃程度、好ましくは500〜1000℃程度の温度で1〜48時間程度加熱すればよい。 加熱時は、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気が望ましい。

    この方法によれば、多孔質金属配位高分子化合物を形成する架橋性配位子が炭化されて、該多孔質金属配位高分子化合物の構造を反映した多孔質炭素材料が得られる。 具体的な構造については、炭化された架橋性配位子を骨格とする多孔質構造の炭素材料となる。 この際、多孔質金属配位高分子化合物を構成する水素原子、酸素原子などの成分が除去されることにより、多孔質金属配位高分子化合物の構造を反映した、微小な細孔とより大きく孔径の小細孔を同時に有する多孔質炭素材料が形成される。 金属成分については、一部の沸点が低い金属は炭化過程において気化するので、炭素材料形成後に、残存物を除去する必要がない場合もある。 炭化過程において気化しない金属について、酸によって容易に溶解・除去することができる。 また、用途によっては、炭化後に残存する金属は、そのまま触媒などとして用いることができる。

    (2)有機化合物導入法 また、上記した多孔質金属配位高分子化合物を鋳型として用い、該金属配位高分子化合物の表面および空孔内部に、加熱により重合する有機化合物を導入した後、加熱して該有機化合物を重合及び炭化させる方法によっても、多孔質炭素材料を得ることができる。

    多孔質金属配位高分子化合物の空孔内に導入する有機化合物としては、加熱により重合することができる有機化合物を用いる。 この様な有機化合物を用いることによって、多孔質金属配位高分子化合物の空孔内において空孔の形状に従って重合物が形成され、引き続き炭化されることにより、空孔を持った高比表面積の多孔質炭素材料を得ることができる。

    該有機化合物は、多孔質金属配位高分子化合物の空孔内に容易に導入できるように、何らかの方法によって液化または気化できることが必要である。 液化の方法としては、例えば、融点以上に熱する方法や溶媒に溶解させる方法を採用でき、気化の方法としては、沸点以上に加熱する方法や蒸気雰囲気を利用する方法などを採用できる。

    以上の条件を満足する有機化合物の具体例としては、フルフリルアルコール、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ブタジエン、イソプレン、スクロースなどを挙げることができる。

    有機化合物を導入する方法については、特に限定はなく、例えば、液状の有機化合物を用いる場合には、有機化合物中に多孔質金属配位高分子化合物を浸漬して、該有機化合物を空孔内に十分に浸入させればよい。 また、気体状の有機化合物を用いる場合には、該有機化合物の蒸気雰囲気中に多孔質金属配位高分子化合物を置くことによって、該有機化合物を空孔内に浸入させることが可能である。

    尚、有機化合物を多孔質金属配位高分子化合物の空孔内部へ導入する際には、該金属配位高分子化合物を予め減圧にしておくことが好ましい。

    次いで、有機化合物を表面及び空孔内部に導入した状態で該金属配位高分子化合物を加熱して、該有機化合物を重合及び炭化させる。

    加熱方法としては、まず、導入した有機化合物の種類に応じて、重合反応が進行する温度で十分に加熱した後、炭化が進行する温度で加熱すればよい。

    例えば、有機化合物として、フルフリルアルコールを用いる場合には、重合反応を進行させるためには、60〜200℃程度の温度で1〜48時間程度加熱すればよい。 加熱時は、フルフリルアルコール雰囲気またはアルゴンや窒素などの不活性雰囲気が望ましい。 スクロースを用いる場合には、重合反応を進行させるためには、60〜200℃程度の温度で1〜48時間程度加熱すればよい。 加熱時は、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気が望ましい。

    炭化反応を進行させるためには、例えば、200〜1200℃程度、好ましくは500〜1000℃程度の温度で1〜48時間程度加熱すればよい。 加熱時は、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気が望ましい。

    以上の方法で加熱することによって、多孔質金属配位高分子化合物の空孔内に導入した有機化合物が炭化して、多孔質炭素材料が得られる。 また、鋳型として用いた多孔質金属配位高分子化合物については、加熱・炭化過程において金属配位高分子化合物の骨格が分解し、架橋性配位子の一部は加熱・炭化に参加する可能性もある。 金属配位高分子化合物の金属成分については、沸点が低い金属については炭化過程において気化するので、炭素材料形成後に、鋳型である多孔質金属配位高分子化合物及びその残存物を除去する必要がない。 また、金属成分が残存する場合には、酸によって容易に溶解・除去することができる。 また、用途によっては、炭化後に残存する金属は、そのまま触媒などとして用いることができる。

    上記した炭化法又は有機化合物導入法によって得られる多孔質炭素材料は、その前駆体又は鋳型として用いる多孔質金属配位高分子化合物の細孔構造を反映して、その内部に微小な細孔とより大きい孔径の小細孔の二種類の空孔を有する多孔質構造の炭素材料となる。 得られた材料は、この様な特有の構造を利用して各種の用途に有効に用いることができる。 例えば、キャパシタの電極材料として用いる場合には、微小な細孔は大容量のイオンの貯蔵に有効であり、また、より大きい細孔が存在することによって、イオンの易動度が高くなり、高い電位掃引速度や電流密度でも良好な充放電特性を発揮することができる。

    本発明によれば、液相での多孔質金属配位高分子化合物の合成の際に、超音波を照射するという簡単な方法によって、サイズの小さい微小細孔と、より大きい細孔を併せ持つ特有な構造を有する多孔質金属配位高分子化合物を得ることができる。

    さらに、本発明によって得られる多孔質金属配位材料を前駆体又は鋳型として用いることによって、サイズの小さい細孔と大きい細孔を併せ持つ多孔質炭素材料を得ることが可能である。

    本発明によって得られる多孔質金属配位高分子化合物及び多孔質炭素材料は、いずれも、その特有の細孔構造を利用して高機能を有する材料として各種の用途に有効に利用できる。

    比較例1及び実施例1で得られた試料の粉末X線回折図。

    比較例1で得られた試料の細孔径分布を示すグラフ。

    実施例1で得られた試料の細孔径分布を示すグラフ。

    比較例2で得られた試料の電子顕微鏡(TEM)写真。

    実施例2で得られた試料の細孔径分布を示すグラフ。

    実施例2で得られた試料の電子顕微鏡(TEM)写真。

    実施例4で得られた試料の細孔径分布を示すグラフ。

    実施例4で得られた試料の電子顕微鏡(TEM)写真。

    実施例4で得られた試料を電気二重層キャパシタの電極材料とした場合のサイクル特性を示すグラフ。

    以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。

    比較例1
    硝酸亜鉛(Zn(NO 3 ) 2・6H 2 O, 7.435 g, 25 mmol)をメタノール(500 ml)に溶解した溶液と、 2 -メチルイミダゾール(2.052 g, 25 mmol)及びトリエチルアミン(5 ml, 68 mmol)をメタノール(500 ml)に溶解した溶液をそれぞれ調製した。

    次いで、この二つの溶液をビーカーに注入し、室温(〜25℃)で2分間をかけて混合したのち、静置した。

    ビーカー中の溶液は直ちに懸濁した。 4時間後、この懸濁溶液を遠心分離し、メタノールで5回洗浄し、4時間、80℃で乾燥させ、無色の固体試料を得た。

    得られた固体試料の粉末X線回折図を図1(a)に示す。 この結果から、得られた試料は、一般式:Zn(MeIM) 2 , (MeIM = 2-メチルイミダゾール)で示され、立方晶の結晶構造を有する既知の多孔質金属配位高分子化合物と同一結晶構造であることが確認された。

    また、77 Kでの窒素吸着等温線測定の結果、該金属配位高分子化合物は、BET比表面積811 m 2 /gであり、細孔構造を有することが判った。 細孔径分布解析の結果を図2に示す。 この結果から、得られた金属配位高分子化合物は、孔径が1.1nmの微小細孔を持つが、孔径5nm以上の細孔を有しないことが確認できた。 尚、細孔径分布解析は、非局所密度汎関数理論(Nonlocal density functional theory (NL-DFT) method)を用いて行った。

    実施例1
    硝酸亜鉛(Zn(NO 3 ) 2・6H 2 O, 7.435 g, 25 mmol)をメタノール(500 ml)に溶解した溶液と、 2 -メチルイミダゾール(2.052 g, 25 mmol)及びトリエチルアミン(5 ml, 68 mmol)をメタノール(500 ml)に溶解した溶液をそれぞれ調製した。

    次いで、水を入れた超音波洗浄器の洗浄容器にビーカーを浸漬し、室温(〜25℃)で超音波(100 W, 40 kHz)を照射しながら、2分間をかけて上記した2種類の溶液をビーカーに注入して混合したのち、静置した。

    ビーカー中の溶液は直ちに懸濁した。 4時間後、この懸濁溶液を遠心分離し、メタノールで5回洗浄し、4時間、80℃で乾燥させ、無色の固体試料を得た。

    得られた固体試料の粉末X線回折図を図1(b)に示す。 この結果から、得られた試料は、一般式:Zn(MeIM) 2 , (MeIM = 2-メチルイミダゾール)で示され、立方晶の結晶構造を有する既知の多孔質金属配位高分子化合物と同一結晶構造であることが確認された。

    また、77 Kでの窒素吸着等温線測定の結果、該金属配位高分子化合物は、BET比表面積655 m 2 /gを示した。 細孔径分布解析の結果を図3に示す。 得られた金属配位高分子化合物は、細孔径1.1nmの微小細孔の他に、孔径が約8〜12nmの小細孔も有し、微小細孔と小細孔の容積比は1 : 2.6であることが分かった。

    比較例2
    比較例1で得られた多孔質金属配位高分子化合物を電気炉に入れ、アルゴン気流中で1時間かけて800 ℃に昇温した後、この温度で10時間保持し、室温に戻した。 得られた黒色の固体の試料をHCl 水溶液(5 Vol%)で5回洗浄した後、さらに大量の水で洗浄し、12時間、80℃で乾燥させた。

    このようにして得られた炭素材料について、表面積測定の結果、BET比表面積は1051 m 2 /gであり、多孔質構造であることが確認できた。 細孔径分布解析の結果、細孔径1.1 nmの微小細孔を持つが、サイズの大きな空孔はほとんど形成されていないことが分かった。 該試料の電子顕微鏡(TEM)写真を図4に示す。 孔径の大きな空孔はほとんど存在しないことが確認できる。

    また、該多孔質炭素材料を電気二重層キャパシタの電極材料として用い、1 Mの硫酸水溶液を電解質として用いて、キャパシタンスを測定した結果、掃引速度10, 20, 50 mV/sでは、キャパシタ材料としての重量比容量はそれぞれ104, 96, 63 F/gであった。 また、電流密度が250 mA/gでは、重量比容量は63 F/gであった。

    実施例2
    実施例1で合成された多孔質金属配位高分子化合物を電気炉に入れ、アルゴン気流中で1時間かけて800 ℃に昇温した後、この温度で10時間保持し、室温に戻した。 得られた黒色の固体の試料をHCl 水溶液(5 Vol%)で5回洗浄したのち、さらに大量の水で洗浄し、12時間、80℃で乾燥させた。

    得られた炭素材料について、表面積測定の結果、BET比表面積は1955 m 2 /gであり、多孔質構造であることが確認できた。 細孔径分布解析の結果を図5に示す。 細孔径約1 nmの微小細孔のほか、細孔径12-15 nmのより大きな孔径の小細孔を有し、微小細孔と小細孔の細孔容積比は1 : 25であることが分かった。

    該試料の電子顕微鏡(TEM)写真を図6に示す。 比較例2の炭素試料と比べ、細孔径が大きい空孔が大量に形成されていることが確認できる。

    また、該多孔質炭素材料を電気二重層キャパシタの電極材料として用い、1 Mの硫酸水溶液を電解質として用いて、キャパシタンスを測定した結果、掃引速度10, 20, 50, 100 mV/sでは、キャパシタ材料としての重量比容量はそれぞれ158, 148, 136、116 F/gであった。 また、電流密度が250 mA/gでは、重量比容量は107 F/gであった。

    実施例3
    実施例1で合成された多孔質金属配位高分子化合物を電気炉に入れ、アルゴン気流中で1時間かけて1000 ℃に昇温した後、この温度で10時間保持し、室温に戻した。 得られた黒色の固体の試料を大量の水で洗浄し、12時間、80℃で乾燥させた。

    得られた炭素材料について、表面積測定の結果、BET比表面積は2250 m 2 /gであり、多孔質構造であることが確認できた。 細孔径分布解析の結果、細孔径1.1 nmの微小細孔のほか、細孔径7 nmのより大きな孔径の小細孔を有することが分かった。

    また、該多孔質炭素材料を電気二重層キャパシタの電極材料として用い、1 Mの硫酸水溶液を電解質として用いて、キャパシタンスを測定した結果、掃引速度10, 20, 50, 100 mV/sでは、キャパシタ材料としての重量比容量はそれぞれ207, 191, 177、162 F/gであった。 また、電流密度が250 mA/gでは、重量比容量は72 F/gであった。

    実施例4
    実施例2で合成された多孔質炭素材料(0.5 g)と水酸化カリウム(KOH, 1.0 g)を混合し、10 mlの水を加え、4時間静置させた後、空気中、80 ℃で4時間乾燥させた。 得られた試料をアルゴン気流中で、電気炉で10°C/min の速度で800 ℃に昇温した後、この温度で1時間保持し、室温に戻し、大量の水で洗浄し、80℃で12時間乾燥させた。

    得られた炭素材料について、表面積測定の結果、BET比表面積は2972 m 2 /gであり、多孔質構造であることが確認できた。 細孔径分布解析の結果を図7に示す。 細孔径2-5 nmの微小細孔のほか、細孔径17-20 nmのより大きな小細孔を有し、微小細孔と小細孔の細孔容積比は1 : 3であることが分かった。 該試料の電子顕微鏡(TEM)写真を図8に示す。 比較例2の炭素試料と比べ、細孔径17-20 nmの小細孔が大量に形成されていることが確認できる。

    該多孔質炭素材料を電気二重層キャパシタの電極材料として用い、1 Mの硫酸水溶液を電解質として用いて、キャパシタンスを測定した結果、掃引速度5, 10, 20, 50, 100, 200, 300, 400 mV/sでは、キャパシタ材料としての重量比容量はそれぞれ214, 211, 210、208, 206, 200, 196, 187 F/gであった。 また、電流密度が250 mA/gでは、重量比容量は251 F/gであり、電流密度が5 A/gでは、 キャパシタンスは207 F/gであり、電流密度が50 A/gでは、 キャパシタンスは204 F/gであった。

    図9に、電流密度5 A/gで充放電を2000サイクル繰り返した場合のキャパシタンスの測定結果を示す。 この結果から、充放電を繰り返した場合にも重量比容量は殆ど減少せず、サイクル特性に優れたものであることが確認できた。

    また、比較例2と実施例2〜4で得られた多孔質炭素材料について、掃引速度を変えて測定したキャパシタンスの値を下記表1に纏めて示す。

    この結果から、実施例2〜4で得られた多孔質炭素材料は、電気二重層キャパシタの電極材料として用いた場合に、比較例2で得られた多孔質炭素材料と比較して、優れた性能を有することが判る。

    実施例5
    ポリビニルピロリドンK 30 (PVP、105 mg)、L-アスコルビン酸(60 mg)、臭化カリウム(KBr, 600 mg)及び塩化カリウム(KCl, 185 mg)を含む水溶液(8.0mL)を80 ℃で10分間撹拌し、その後、Na 2 PdCl 4 (57 mg)を含む水溶液(3.0 mL)をピペットで添加した。 80 ℃でこの反応を3時間継続させることによりは、Pdナノ粒子を形成させた。 電子顕微鏡観察により、Pdナノ粒子は粒子径13 nmの立方体であることが分かった。

    得られたPdナノ粒子を遠心分離によって収集し、水で3回洗浄して過剰なPVPを除去し、水(11.0 mL)に再分散させた。 得られたPdナノ粒子の水溶液(1.0 mL)に、PVP(33.3 mg)、KBr(300 mg)及びクエン酸(300 mg)を含む水溶液(7.0 mL)を加え、90 ℃で撹拌した。

    一方、K 2 PtCl 4 (28 mg)を水(3.0 mL)に溶解し、注射器を用いてこの水溶液を1mL /分の速度で、PVP、KBr及びPdナノ粒子を含む溶液中に注入し、反応混合物を90 ℃で12時間保持することにより、PdPtナノ粒子を得た。 電子顕微鏡観察により、PdPtナノ粒子は粒子径15-18 nmの立方体であることが分かった。

    この方法で得られたPdPt ナノ粒子(3.56 μmol; Pd/Pt=1:3.8(モル比))と実施例2で得られた炭素試料(25 mg)をアセトン(5.0 mL)に分散させ、超音波洗浄機を用いて30分間超音波照射した。 室温でアセトンを一晩蒸発させることによって、炭素担持PdPtナノ粒子触媒試料を得た。

    二つ口フラスコに上記炭素担持PdPtナノ粒子触媒試料(25 mg)と水(4 mL)を入れ、アンモニアボラン(55 mg)含む水溶液(1 mL)を加え、放出ガスをガスビューレットで測定した。 反応開始30秒後に20 ml 、1分後に30 ml、2分後に42 ml、3分後に54 ml、4分後に66 ml、5分後に74 ml、6分後に84 ml、7分後に92 ml、8分後に102 ml、10分後に114 ml、12.5分後に126 ml、15分後に126 ml、20分後に126 ml、25 分後に126 mlのガス放出が観測された。 ガスクロマトグラフィ(GC)及び質量分析(MS)を行った結果、放出ガスは水素であることが確認できた。

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