樹脂成形体の製造方法

申请号 JP2014046203 申请日 2014-03-10 公开(公告)号 JP2014208455A 公开(公告)日 2014-11-06
申请人 三菱化学株式会社; Mitsubishi Chemicals Corp; 发明人 TAKAHASHI YUTAKA;
摘要 【課題】特定のポリカーボネート樹脂についてウエルドの無い優れた外観の成形体を得る。【解決手段】特定のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂を用い、射出成形用金型のキャビティ内の 温度 を所定温度に昇温し、ポリカーボネート樹脂を下記(a)又は(b)に示す条件下で射出することにより、キャビティ内に充填し、所定時間経過後、射出成形用金型を冷却し、降温完了後、樹脂成形体を取り出す。(a)後述するキャビティ内の温度(Tc)が、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))以上であり、かつ、射出速度が40cm3/秒以上であること。(b)前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))と前記キャビティ内の温度(Tc)との差である(Tg(PC)−Tc)が0℃を超えて30℃以下であり、かつ、射出速度が80cm3/秒以上であること。【選択図】なし
权利要求
  • 下記一般式(1):
    で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂を用い、
    射出成形用金型のキャビティ内の温度を所定温度に昇温し、
    前記ポリカーボネート樹脂を下記(a)又は(b)に示す条件下で射出することにより、キャビティ内に充填し、
    所定時間経過後、上記射出成形用金型を冷却し、
    降温完了後、樹脂成形体を取り出す樹脂成形体の製造方法。
    (a)後述するキャビティ内の温度(Tc)が、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))以上であり、かつ、射出速度が40cm /秒以上であること。
    (b)前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))と前記キャビティ内の温度(Tc)との差である(Tg(PC)−Tc)が0℃を超えて30℃以下であり、かつ、射出速度が80cm /秒以上であること。
  • 前記射出成形用金型のキャビティ内温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ内の温度より30℃以上低い状態で樹脂成形体の取り出しを行う請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
  • 前記ポリカーボネート樹脂の射出から樹脂成形体を取り出すまでの成形時間が2時間以内である請求項2に記載の樹脂成形体の製造方法。
  • 前記ポリカーボネート樹脂が、更に脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。
  • 前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である請求項4に記載の樹脂成形体の製造方法。
  • 前記射出成形金型が樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。
  • 下記一般式(1):
    で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂を用い、樹脂成形体を製造する方法であって、
    キャビティ内の温度(Tc)を90℃以上に昇温した射出成形用金型に、該ポリカーボネート樹脂を射出し、射出成形用金型のキャビティ内温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ内の温度より30℃以上低い状態で樹脂成形体の排出を行い、
    該ポリカーボネート樹脂の射出から排出までの時間が2時間以内である樹脂成形体の製造方法。
  • 前記ポリカーボネート樹脂が、更に脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである請求項7に記載の樹脂成形体の製造方法。
  • 前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である請求項8に記載の樹脂成形体の製造方法。
  • 前記射出成形金型が樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置である請求項7〜9のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、特定のポリカーボネート樹脂の成形方法に関する。 更に詳しくは、バイオマス資源であるイソソルビドのような特定の構造を含むヒドロキシ化合物に由来する、ガラス転移温度が高いポリカーボネート樹脂をウエルドの無い優れた外観の成形体を得ることに関する。

    射出成形方法は、金型に溶融した原料樹脂を投入した後、熱の授受を行って、樹脂を賦型し、固化させる樹脂成形方法である。 この射出成形法の例として、特許文献1には、金型のキャビティ表面の温度を原料樹脂の結晶化ピーク温度±50℃として、結晶化が遅い原料樹脂を射出によってキャビティ内に供給し、キャビティ表面の温度を下げて原料樹脂を固化する合成樹脂成形方法が開示されている。

    また、特許文献2には、溶融された熱可塑性樹脂を金型内部に射出する際に、当該金型の金型温度が、射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0〜100℃高くなるように設定する成形方法において、5〜100℃/分の温度勾配で急加熱および/または急冷する射出成形方法が開示されている。

    さらに、特許文献3には、熱可塑性樹脂の溶融組成物を射出成形するに際し、射出時の金型温度が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型に射出する無塗装自動車外板用成形品の成形方法が開示されている。

    さらにまた、特許文献4には、芳香族化合物を繰り返し単位として有する特定のポリカーボネート共重合体樹脂組成物を、金型温度が100〜140℃に設定された金型内に充填後100℃未満に冷却して成形品を取り出す成形方法が開示されている。

    特開2001−191378号公報

    特開2001−150506号公報

    特開2004−291274号公報

    特開2005−324416号公報

    ところで、射出成形方法を用いて成形品を製造する場合、金型内で溶融樹脂の流れが合流して融着した部分に細い線、すなわちウエルドが発生する場合がある。 このウエルドが発生すると、得られる製品の外観に悪影響を及ぼす。
    しかし、上述のいずれの文献においても、本発明の特定のポリカーボネート樹脂についてウエルドの無い優れた外観の成形体を得ることについて何ら開示していない。

    そこで、本発明の課題は、特定のポリカーボネート樹脂についてウエルドの無い優れた外観の成形体を得るための成形方法を提供することにある。

    本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。 すなわち、本発明の要旨は下記[1]〜[10]に存する。
    [1]下記一般式(1):

    で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂を用い、射出成形用金型のキャビティ内の温度を所定温度に昇温し、前記ポリカーボネート樹脂を下記(a)又は(b)に示す条件下で射出することにより、キャビティ内に充填し、所定時間経過後、上記射出成形用金型を冷却し、降温完了後、樹脂成形体を取り出す樹脂成形体の製造方法。


    (a)後述するキャビティ内の温度(Tc)が、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))以上であり、かつ、射出速度が40cm

    /秒以上であること。


    (b)前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))と前記キャビティ内の温度(Tc)との差である(Tg(PC)−Tc)が0℃を超えて30℃以下であり、かつ、射出速度が80cm

    /秒以上であること。


    [2]前記射出成形用金型のキャビティ内温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ内の温度より30℃以上低い状態で樹脂成形体の取り出しを行う[1]に記載の樹脂成形体の製造方法。


    [3]前記ポリカーボネート樹脂の射出から樹脂成形体を取り出すまでの成形時間が2時間以内である[2]に記載の樹脂成形体の製造方法。


    [4]前記ポリカーボネート樹脂が、更に脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである[1]〜[3]のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。


    [5]前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である[4]に記載の樹脂成形体の製造方法。


    [6]前記射出成形金型が樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置である[1]〜[5]のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。


    [7]下記一般式(1):


    で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂を用い、樹脂成形体を製造する方法であって、


    キャビティ内の温度(Tc)を90℃以上に昇温した射出成形用金型に、該ポリカーボネート樹脂を射出し、射出成形用金型のキャビティ内温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ内の温度より30℃以上低い状態で樹脂成形体の排出を行い、


    該ポリカーボネート樹脂の射出から排出までの時間が2時間以内である樹脂成形体の製造方法。


    [8]前記ポリカーボネート樹脂が、更に脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むものである[7]に記載の樹脂成形体の製造方法。


    [9]前記ポリカーボネート樹脂中の前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲である[8]に記載の樹脂成形体の製造方法。


    [10]前記射出成形金型が樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置である[7]〜[9]のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。 ]

    本発明の成形方法は、従来の射出成形方法と比較して、ウエルドの発生を抑制することができ、優れた外観の成形体を得ることができる。 このことから、複雑な形状をもつ成形品、例えば自動車用内装材、オーディオ、カーナビゲーション機器、携帯電話の筐体等に、有用に使用することができる。

    この発明の樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置の例であり、固定型をキャビティ面12aから見た正面

    この発明の樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置の例であり、可動型をキャビティ面12bから見た正面図

    この発明の樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置の例を示す縦断断面図

    ウエルドの状態を示す模式図

    実施例において使用する樹脂射出成形用電磁誘導加熱式金型装置の固定型をキャビティ面12aから見た正面図

    この発明にかかる樹脂成形体の製造方法は、特定のポリカーボネート樹脂を用いた製造方法である。

    [ポリカーボネート樹脂の製造]
    <原料>
    本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位と、ホスゲン又は炭酸ジエステル由来の構造単位を含む樹脂である。

    (ジヒドロキシ化合物)
    本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位として、下記の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(以下、「ジヒドロキシ化合物(1)」と称する場合がある、)由来の構造単位を少なくとも含む。

    本発明に用いるポリカーボネート樹脂を構成する全てのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合は、好ましくは20〜90mol%、更に好ましくは30〜85mol%、特に好ましくは40〜80mol%である。

    ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合が多過ぎると、本発明に用いるポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品にサンシャインカーボンアークを用いた照射処理を施した際、割れが生じる場合があり、また透明性が悪化しヘイズが大きくなる場合がある。 ただし、後述する耐光安定剤を含有させることによりこの割れを防止することも可能である。 一方、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構造単位の割合が少な過ぎると、得られる成形品の耐熱性が低下する場合がある。

    上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

    これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネート樹脂の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。

    本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
    その他のジヒドロキシ化合物の具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール;9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン等のフェニル置換フルオレン等;側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物;下記一般式(2)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物(環状エーテル)等が挙げられる。

    これらの中でも、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、下記一般式(2)で表される環状エーテル構造を有する化合物が好ましい。 これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

    その他のジヒドロキシ化合物の更に別の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジヒドロキシ化合物;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール等の脂環式ジヒドロキシ化合物等が耐光性の観点から好ましい。 これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

    その他のジヒドロキシ化合物として、脂環式ジヒドロキシ化合物を用いる場合には、ポリカーボネート樹脂中の前記ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率(モル%)が、99:1〜30:70の範囲であることが好ましく、90:10〜40:60であることが機械的物性や耐熱性の観点からさらに好ましい。

    なお、ポリカーボネート樹脂の合成に供されるジヒドロキシ化合物(1)は、公知で通常用いられる還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよく、特に酸性下でジヒドロキシ化合物(1)は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。

    前記の塩基性安定剤としては、ナトリウム又はカリウムの水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、酸塩、脂肪酸塩や、既知の塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などが好ましい。 塩基性安定剤のジヒドロキシ化合物(1)中の含有量に特に制限はないが、通常ジヒドロキシ化合物(1)に対して、0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。

    本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、上述したジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸ジエステルとを原料として重縮合させて得ることができる。

    (炭酸ジエステル)
    炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(3)で表されるものが挙げられ、1種又は2種以上の混合で用いてもよい。

    一般式(3)において、A 及びA は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜炭素数18の脂肪族基又は置換もしくは無置換の芳香族基であり、A とA とは同一であっても異なっていてもよい。

    上記一般式(3)で表される炭酸ジエステル(以下「炭酸ジエステル(3)」と称す場合がある。)としては、例えば、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられ、好ましくはジフェニルカーボネートである。

    <重縮合反応触媒>
    本発明のポリカーボネート樹脂は、上述のジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(3)とをエステル交換反応により重縮合させて製造することができる。 このエステル交換反応で使用されるエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、「重合触媒」と言うことがある)は、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム又はマグネシウム等の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩等、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物の1種又は2種以上が挙げられる。

    上記重合触媒の使用量は、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolである。
    上記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg(PC))は、145℃未満がよく、130℃未満が好ましく、下限は、80℃以上がよく、100℃以上が好ましい。 ガラス転移温度(Tg(PC))は、用いるジヒロドキシ化合物や、炭酸ジエステルを適宜選択することによって調整可能である。

    <製造方法>
    原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの混合の温度は通常80〜250℃、好ましくは90〜200℃、更に好ましくは100〜120℃である。
    炭酸ジエステル(3)は、ジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のモル比率、好ましくは、0.95〜1.10のモル比率である。

    ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(3)とを重縮合させる方法は、上述の触媒の存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。 反応形式は、バッチ式、連続式、またはそれらの組み合わせのいずれの方法でもよい。

    重合反応の温度は、具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、140℃〜270℃、好ましくは200℃〜230℃で、110kPa〜1kPa、好ましくは30kPa〜10kPa(絶対圧)の圧力下、0.1時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。 第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を200Pa以下にして、内温の最高温度210℃〜270℃、通常0.1時間〜10時間行う。

    上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂は、重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
    このようにして得られたポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、通常1.20dL/g以下であり、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。 なお、当該還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート溶液の濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。

    本発明で用いるポリカーボーネート樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、中和剤、耐光安定剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、衝撃改良剤、加水分解抑制剤、発泡剤等のその他の成分が含まれるポリカーボネート樹脂組成物であってもよい。 これら、その他の成分は1種又は2種以上を使用してもよい。

    本発明で用いるポリカーボネート樹脂に、その他の成分を添加する場合、その他の成分の添加量は、ポリカーボネート樹脂(100重量%)に対して、通常0.01重量%以上100重量%以下であり、好ましくは0.05重量%以上50重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上30重量%以下である。
    ポリカーボネート樹脂に対するその他の成分の添加量が多すぎると、本発明の効果が得られない可能性がある。

    ポリカーボネート樹脂にその他の成分を加え、ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法は公知の方法であれば限定されないが、その他の成分を任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機に加え、混合して製造することができる。

    本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、耐光安定剤を含有することが好ましい。 耐光安定剤とは、主に紫外線等の光による樹脂の劣化を防止し、光に対する安定性を向上させる作用を有するものであり、市販品を始め、公知のものを用いてよい。

    本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、成形時の金型装置からの離型性を向上させるために、離型剤を含有していることが好ましい。 離型剤としては、炭素数12以上の脂肪酸、一価又は多価アルコールの炭素数12以上の脂肪酸エステル、蜜蝋等の天然動物系ワックス、カルナバワックス等の天然植物系ワックス、パラフィンワックス等の天然石油系ワックス、モンタンワックス等の天然石炭系ワックス、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等の公知のものが用いられる。

    本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、通常用いられるホスファイト系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。

    本発明でポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、射出成形機内の滞留時間が長くなった場合における着色を抑制するために、通常用いられる公知の酸性化合物又はその誘導体を含有していてもよい。

    [ポリカーボネート樹脂の成形]
    次に、前記の方法で製造されたポリカーボネート樹脂を射出成形する方法について説明する。 本発明を実施するにあたっては、既存の射出成形技術と組み合わせて使用することもできる。 例えば、化学発泡成形法、物理発泡成形法、コアバック発泡成形法、ショートショット法、射出圧縮成形法、インサート成形法、ガスインジェクション法等が挙げられる。

    <射出成形方法>
    本発明にかかる樹脂成形体の製造方法は、射出成形用金型(以下、単に「金型」と称する。)を用いた製造方法である。

    まず、射出成形用金型を昇温する。 この温度については、後述する。
    次いで、キャビティ12内に樹脂を充填すると共に、圧力を保持する。 所定時間経過した後、金型を冷却し、得られた樹脂成形体を取り出す。 前記圧力を保持する時間としては、30秒以内がよく、15秒以内が好ましい。 圧力を保持する時間が長すぎると、過充填状態となり金型が開かなくなる、バリが発生しやすいという問題点を生じる場合がある。 一方、保持時間の下限は、2秒がよく、5秒が好ましい。 保持時間が短すぎると、充填不足になり、転写ムラやヒケが目立つという問題点が生じる場合がある。

    また、前記の冷却開始から冷却終了までの時間を冷却時間とし、樹脂射出量が1kg未満の成形体を製造する場合の冷却時間は、通常180秒以内、好ましくは50秒以内、より好ましくは30秒以内である。 一方、冷却時間の下限は、10秒がよく、15秒が好ましい。 また、樹脂射出量が1kg以上の成形体を製造する場合、冷却時間は、通常10分以内、好ましくは5分以内、より好ましくは2分以内であり、下限は通常10秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。
    冷却時間が長すぎると、成形サイクルが長くなり、十分な生産性が得られないという問題が生じる場合があり、冷却時間が短すぎると、成形体内部の冷却が不十分となり、製品取出し時に変形を引き起こしたり、製品取出し後の収縮が大きくなるという問題点を生じる場合がある。

    さらに、前記の射出用金型からの樹脂成形体の取り出しは、その射出成形用金型のキャビティ内温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ内の温度より28℃以上低い状態で行うことがよく、30℃以上が好ましい。 上記範囲にあることで、ウエルドの少ない成形体を製造することができる傾向にある。 なお、(該樹脂射出時の金型キャビティ内の温度)−(射出成形用金型のキャビティ内温度)の上限は、特に限定されないが、105℃以下である。

    さらにまた、前記のポリカーボネート樹脂の射出から樹脂成形体を取り出すまでの成形時間は、通常2時間以内、好ましくは1時間以内、より好ましくは10分以内、更に好ましくは5分以内、最も好ましくは3分以内である。 成形時間が長すぎると目的の寸法が得られにくいという問題点を生じる場合がある。 下限は特に限定されないが、保圧時間と冷却時間の合計以上である。
    なお、本発明における成形時間とは、樹脂を金型に射出してから金型を開くまでの時間を意味する。

    特に、後述する前記金型11の温度、樹脂充填後の保持時間、及び冷却時間の全ての条件をみたすことにより、得られる成形体の表面の外観を良好にし、ウエルドの発生を抑制することができる。

    降温完了後、金型を開いて、樹脂成形体を取り出すことによって、樹脂成形体を得ることができる。

    <射出成形条件>
    この発明の一つは、樹脂を充填する際の前記した金型の温度、特に、キャビティ内の温度は、下記の(a)又は(b)の条件を充足することが必要となる。
    (a)後述するキャビティ内の温度(Tc)が、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))以上であり、かつ、射出速度が40cm /秒以上であること。
    (b)前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))と前記キャビティ内の温度(Tc)との差である(Tg(PC)−Tc)が0℃を超えて30℃以下であり、かつ、射出速度が80cm /秒以上であること。

    また、この発明の他の一つは、下記の(c)の条件を充足する必要がある。
    (c)キャビティ内の温度(Tc)を90℃以上に昇温した射出成形用金型に、前記ポリカーボネート樹脂を射出し、射出成形用金型のキャビティ内温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ内の温度より30度以上低い状態で樹脂成形体の排出を行い、該ポリカーボネート樹脂の射出から排出までの時間が2時間以内であること。

    前記(a)の条件を満たす場合は、前記ポリカーボネート樹脂が金型のキャビティ面で冷却されることがないので、所定以上の射出速度とすることにより、前記ポリカーボネート樹脂の流れがスムーズにキャビティの隅々まで行くので、ウエルドの発生を抑制することができる。 温度条件を満たすが、射出速度の条件を満たさない場合は、前記ポリカーボネート樹脂の流れがスムーズにキャビティの隅々まで行きにくくなる場合がある。

    一方、前記(a)の温度条件を満たさない場合は、前記ポリカーボネート樹脂がキャビティ面で冷却されることとなり、前記ポリカーボネート樹脂の流れがスムーズにキャビティ12の隅々までいかなくなる場合が生じ、ウエルドが発生し易くなる。 この場合においては、前記(b)の条件を満たす必要が生じる。

    まず、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))とキャビティ内の温度(Tc)との差である(Tg(PC)−Tc)が30℃以下であることがよく、10℃以下であることが好ましい。 差が30℃より大きいと、前記ポリカーボネート樹脂の流れがスムーズにキャビティの隅々まで行きにくくなったり、ウエルドが発生したりするおそれがある。 一方、この差は0℃を超えることが必要である。 この差が0℃以下の場合は、前記(a)の条件を検討することとなる。

    また、前記(b)の条件においては、上記の(Tg(PC)−Tc)の条件に加えて、射出速度の条件を満たすことも必要である。 この射出速度とは、射出器に充填された溶融樹脂が金型のキャビティ内に排出される単位時間あたりの量(体積)をいう。

    この射出速度は、80cm /秒以上がよい。 80cm /秒より小さいと、ウエルドの発生が生じやすい傾向がある。

    ところで、前記の(a)の条件、(b)の条件のいずれの場合においても、射出速度の上限は特に限定されないが、150cm /秒もあれば十分である。

    前記(c)の条件においては、射出時のキャビティ内の温度(Tc)は90℃以上である必要があり、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上であり、上限は通常300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。

    前記(c)の条件においては樹脂排出時の金型キャビティ内の温度は、樹脂射出時のキャビティ内の温度より30℃以上低い必要があり、好ましくは32℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上である。 射出時のキャビティ内の温度及び排出時のキャビティ内の温度が上記範囲にある場合、ウエルドの発生を抑制することができる。

    また、前記(c)の条件を満たせば射出速度は特に限定されないが、通常30cm /秒以上であり、好ましくは40cm /秒以上、より好ましくは60cm /秒以上である。

    ところで、前記ウエルドは、キャビティに通じるランナー・ゲート、すなわち、樹脂の流路が複数ある場合、それぞれのランナー・ゲート出口からでた溶融樹脂が衝突する位置で生じる。 すなわち、図2(a)(b)に示すように、1つのランナー・ゲート出口からの溶融樹脂流pと、他の1つのランナー・ゲート出口からの溶融樹脂流p'とが衝突したとき、その衝突部における会合θや、その衝突部における凹み部の深さdによって、ウエルドが発生の有無が影響される。 図2(a)に示すように、θが小さかったり、dが大きかったりすると、ウエルドが視認され、ウエルド発生と認識される。 一方、図2(b)に示すように、θが大きかったり、dが小さかったりすると、ウエルドが視認できず、ウエルドは発生せずと認識される。 具体的には、θが130°以下の場合や、dが1μm以上の場合であると、ウエルドが視認される。

    <樹脂射出成形用金型装置>
    本発明に用いる樹脂射出成形用金型装置としては、蒸気式、加圧熱水式、オイル式、電磁誘導加熱式等の公知の加熱方法を用いる金型装置を用いることができるが、キャビティ面を急加熱、急冷却可能な電磁誘導加熱式金型装置を用いることが好ましい。
    電磁誘導加熱式金型装置としては、図1(a)〜(c)に示すような金型装置を例として挙げることができる。

    以下に電磁誘導加熱式金型装置について、さらに詳細に説明するが、本発明の金型装置は以下の記載に限定されるものではない。
    電磁誘導加熱式金型装置の金型11は、図1(c)に示すように、固定型11a及び可動型11bの2つの型に分離されており、この2つの型11a、11bの互いに向かい合った面同士を突き合わせて使用される。

    上記2つの型11a、11bの互いに向き合う面には、それぞれ、キャビティ面12a、12bが形成され、2つの型11a、11bが突き合うことにより、2つの型11a、11bの間にキャビティ12が形成される。 そして、一方の型11aには、その外表面からキャビティ面12aに向かってのノズル穴13aが形成される。 このノズル穴13は、射出成形の場合は、ランナー・ゲート13bを通じて成形用樹脂をキャビティ12に供給することができる。 このランナー・ゲート13bがキャビティ12に通じるランナー・ゲート出口は、対象の成形物の形状によって、1つであってもよく、複数であってもよい。

    これらの2つの型11a、11bのうち、上記キャビティ面12a、12bを有する部位は、それぞれ磁性金属が配された磁性金属部14aによって形成される。 そして、その磁性金属部14aの外面、すなわち、磁性金属部14aの面のうち、上記キャビティ面12a、12bが形成される面と反対の面に、誘導コイル15aを保持する絶縁樹脂製の誘導コイル保持部15、及び非磁性金属が配された非磁性金属部14bがこの順に配される。

    上記誘導コイル15aを絶縁樹脂で覆い、かつ、その絶縁樹脂からなる誘導コイル保持部15の両側に、磁性金属部14aと非磁性金属部14bとを別々に配置することにより、上記誘導コイル15aに通電したとき、磁性金属部14aが非磁性金属部14bより、優先的に加熱されることとなり、キャビティ面12a、12bの加熱をより効率よく行うことができる。

    上記磁性金属としては、比透磁率が200以下の金属があげられ、150以下の金属が好ましい。 比透磁率が200より高くてもよいが、そのような金属は少なく、経済的でないため、150以下の金属で十分である。 このような条件を満たす金属の具体例としては、鉄材、SUS430、SUS410等の一般の鋼材があげられる。 なお、比透磁率は、1より大きければよい。

    上記非磁性金属としては、比透磁率が1の金属があげられる。 このような金属の具体例としては、オーステナイト系材(SUS304)、アルミ、銅等があげられる。

    上記の磁性金属部14aと非磁性金属部14bとの間には、樹脂製の断熱絶縁材からなる誘導コイル保持部15が形成される。 この誘導コイル保持部15には、誘導コイル15aが複数配置される。

    上記誘導コイル保持部15は、樹脂製の断熱絶縁材で形成されるので、磁性金属部14aからこの誘導コイル保持部15を介して非磁性金属部14bに熱が逃げるのを防止でき、磁性金属部14aの温度上昇をより速く行うことができる。

    また、上記誘導コイル保持部15は、樹脂で形成されるので、誘導コイル15aの配置を任意に行うことが可能となる。 このため、誘導コイル15aを、上記キャビティ面12a、12bとの距離がほぼ等しくなるように配することが可能となる。

    この誘導コイル保持部15を形成する断熱絶縁樹脂としては、フェノール、エポキシ樹脂等があげられる。

    上記誘導コイル15aは、金属線又は金属製の管をコイル状に巻いたものであり、ここに電流を流すことで、磁界を生じさせる。 このような誘導コイル15aを構成する金属としては、電気抵抗率の低い金属がよく、例えば、銀、銅等があげられる。

    上記誘導コイル保持部15に設けられる誘導コイル15aの数は、2つの型11a、11bやキャビティの大きさ、使用する樹脂の種類等にあわせて、適宜設けることができる。

    この誘導コイル15aとキャビティ面12a、12bとの距離の最大と最小の差は、5mm以内が必須で、2mm以内が好ましい。 5mmより大きくなると、誘導加熱時に、キャビティ面12a、12bの温度にバラツキが生じやすく、樹脂成形体に影響が生じやすい。

    この誘導コイルの外周面から、径方向外方に向かって上記磁性金属部までの距離(図1(c)のrで示された距離)、特に最短距離は、10mm以上がよく、20mm以上が好ましい。 10mmより短いと、この誘導コイルに近接する、加熱不要な磁性金属部の部分まで加熱されてしまい、非効率からである。 一方、この距離の上限は特に限定されないが、50mmが好ましい。 50mmより長いと、金型が撓みやすくなり、強度や耐久性に問題点がある。

    この誘導コイルは、その外側面及び外周面から選ばれる一方の面又は両方の面の一部又は全部にフェライトを配してもよい。 このフェライトを配することにより、誘導コイルから生じる磁束の流れから外れる磁界を吸収することができ、磁性金属部14aの加熱を促進することができると共に、周辺機器へのノイズ漏れを軽減することができる。

    上記誘導コイル保持部15は、樹脂で形成されるので、キャビティの対角中心を基準としたとき、最も外側に配される誘導コイルを、図1(a)(b)の点描で示された最外誘導コイル設置範囲Aに配置することが容易となり、成形品のバリ発生を抑制し、溶融樹脂からの揮発性ガスを容易にキャビティ外に排出することができる。 この最外誘導コイル設置範囲Aは、より具体的には、キャビティ12の外周縁から30mm内側までの範囲内がよく、5mmの範囲内が好ましい。

    上記誘導コイル保持部15において、上記管製の誘導コイル15aの外側は、上記誘導コイル保持部15を形成する樹脂で覆われるが、一方、この誘導コイル15aの内側は、樹脂は満たされておらず、空洞状態である。

    上記複数の誘導コイル15aは、通電装置(図示せず)によって通電されるが、この通電装置は、1つであってもよく、2つ以上の通電装置を用いてもよい。 1つの通電装置を用いた場合は、各誘導コイル15aに同時に同量の電流を流すことができ、加熱を均一にすることができる。 一方、2つ以上の通電装置を用いる場合は、通電装置毎に、通電タイミング、電流の量を調整することができ、加熱を部分毎に意図的に変えることができる。 加熱を金型の部分毎に変化させたい場合は、少なくとも2つの通電装置を用いることが好ましい。
    なお、2つ以上の通電装置を用いる場合の、通電装置の数の最大値は、誘導コイル15aを設けた数となる。

    上記の磁性金属部14a、非磁性金属部14b、及び誘導コイル保持部15からなる金型中核部の外周は、断熱材16a、16bで覆われ、熱がそれより外部に逃げるのを防止する。 そして、その断熱材16a、16bの外周は、母型17で覆われる。

    上記断熱材16a、16bとしては、フェノール、フッ素樹脂等があげられる。

    上記磁性金属部14aは、図1(c)に示すように、折れ曲がり部を有する場合がある。 この折れ曲がり部は、その折れ曲がった箇所で所定の角度を有するが、上記誘導コイル保持部15と接する側の上記折れ曲がり部の内角が、上記誘導コイル保持部15に対して、鋭角、直角又は鈍角を形成している場合、すなわち、この折れ曲がり部の角度が180°未満の場合がある。 このとき、この折れ曲がり部は、上記誘導コイル保持部15に対して、凸状を形成することとなる。 このため、誘導コイル15aに電流を流して磁界を生じさせたとき、磁束がこの凸状部に集中してしまい、過熱が生じてしまう。

    これに対し、この凸状部に丸みの面取り部(図1(c)のRで示された部分)を設けることにより、磁束の集中を緩和することができ、過熱を抑制することができる。 この折れ曲がり部の面取り部の曲率半径は、50mm以上がよく、80mm以上が好ましい。 50mmより小さいと、折れ曲がり部の肉厚が薄肉化し、強度や耐久性に問題点を生じる場合がある。 曲率半径の上限は、特には限定されないが、200mmが好ましい。 200mmより大きいと、磁束の集中の緩和が不十分であるため折れ曲がり部の過熱が発生し、温度ムラが生じやすいという問題点がある。

    上記磁性金属からなる部位、すなわち磁性金属部14aには、水冷用の貫通孔18が形成される。 この貫通孔18の数は、磁性金属部14aの冷却の程度に合わせ、任意の数を設けることができる。

    成形後、上記金型は、冷却されるが、冷却手段としては、上記の貫通孔18を用いる第1冷却機構による方法や、上記の誘導コイル15aを用いる第2冷却機構及び第3冷却機構による方法があげられる。

    まず、第1冷却機構は、上記の貫通孔18に冷却水を通す機構であり、これにより、磁性金属部14aの冷却をすることができる。 このとき、上記貫通孔18に空気を通じ、この貫通孔18を乾燥させるためのエアパージ機構を設けることが好ましい。 このエアパージ機構を設けると、冷却水を通した後に、このエアパージ機構で、貫通孔18内の水を外部に出すことができ、金型を再加熱する際に、貫通孔18内の水が突沸したり、磁性金属部14aの加熱ムラが生じたりするのを防止できる。

    次に、第2冷却機構は、上記誘導コイル15aとして銅管をコイル状に巻いたものを用い、この銅管内に冷却水や空気を通す機構であり、誘導コイル15aを冷却し、これを基点に周囲の冷却を間接的に行っていく方法である。 また、第3冷却機構は、上記誘導コイル15aとして銅線または銅管をコイル状に巻いたものを用い、誘導コイル保持部15aと誘導コイル15の間に部分的に隙間を設け、その隙間に空気を通す機構であり、誘導コイル15aを冷却し、これを基点に周囲の冷却を間接的に行っていく方法である。

    これらの第2冷却機構及び第3冷却機構は、誘導コイル15aは、誘導加熱の際に同時に加熱が生じているので、これを冷却するものである。 そして、上記金型の冷却の好ましい態様としては、第1冷却機構を用いるともに、第2冷却機構及び第3冷却機構の何れか一方又は両方を用いることが考えられる。 これにより、磁性金属部14aと誘導コイル15aとを一緒に冷却することができる。

    ところで、図1(b)のピン19は、エジェクターピンである。

    次に、図1(a)〜(c)に示す樹脂成形用電磁誘導加熱式金型装置を用いた樹脂の射出成形方法について説明する。 本発明に用いる射出成形用金型11は、所定の肉厚、幅、長さ、外周の高さを有する箱型形状であり、固定型11aに角状の凸部a及び丸状の凹部b1'及びb2'を設け、可動型11bに角状の凹部a'及び丸状の凸部b1及びb2を設けた形状を有する。

    まず、射出成形用金型11の固定型11a及び可動型11bを開けた状態(製品を取り出した直後)で、上記誘導コイル15aに通電し、固定型11a及び可動型11bの磁性金属部14aの加熱を開始し、2つの型11a及び11bを突き合わせて、金型11を閉じ、所定温度に昇温させる。 このときの温度は、前記した温度とする。

    次いで、ノズル穴13a、ランナー・ゲート13bを通じて、キャビティ12内に樹脂を充填すると共に、圧力を保持する。 所定時間経過した後、上記の第1冷却機構と、第2冷却機構及び/又は第3冷却機構とによって、金型を冷却する。 前記の保持する時間や、冷却時間は、前記した通りである。

    降温完了後、金型を開いて、樹脂成形体を取り出すことによって、樹脂成形体を得ることができる。

    ところで、上記の誘導コイル15aに通電することにより、固定型11a及び可動型11bの磁性金属部14aを加熱して、所定温度に昇温する際、上記においては、金型11を閉じると記載したが、所定範囲内に開けた状態とし、キャビティ12内の圧力を保持するときに、金型11を閉じる操作をすると、得られる樹脂成形体の寸法精度を向上させることができ、ひけが発生するのを抑制することができ、得られる樹脂成形体表面の粗さを減らすことができ、さらに、得られる樹脂成形体の角にまで樹脂を確実に充填させることができる。

    上記の金型11を開ける量は、キャビティの最大厚みの5%以上がよく、10%以上が好ましい。 5%より少ないとひけやそり変形を低減する効果が少なくなる傾向がある。 一方、上限は、30%がよく、20%が好ましい。 30%より多いと、キャビティを圧縮するときに大きい力が必要となる。

    <用途>
    この発明の製造方法で製造される樹脂成形体は、フロントパネル等の自動車用内装材や、オーディオ、カーナビゲーション機器、携帯電話、テレビ等の筐体に使用することができる。

    次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。 本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。

    <原料>
    (樹脂1)
    イソソルビド(ロケットフルーレ社製、蟻酸含有量5ppm)27.7重量部(0.516モル)に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノール(イーストマン社製)13.0重量部(0.221モル)、ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)59.2重量部(0.752モル)、及び触媒として、炭酸セシウム(和光純薬(株)製)2.21×10 −4重量部(1.84×10 −6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。 次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。

    反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。 攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。 所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、マトリックス樹脂のペレットを得た。

    <ガラス転移温度(Tg)の測定方法>
    動的粘弾性測定装置(商品名:EXSTAR DMS6100、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)を使用して、窒素雰囲気下、周波数1Hz、温度範囲−50〜150℃、昇温速度2℃/分の測定条件で重合物の動的粘弾性を測定し、得られた温度−tanδ曲線の極大値を示す温度を重合物のガラス転移温度(TgDMS)とする。

    <ウエルドの発生の有無の判断方法>
    図3の(ア)及び(イ)のそれぞれの場所において、下記の方法でウエルドの深さを測定し、有無の判断をした。
    (ウェルド深さ測定)
    JIS B0601:2001(ISO:4287:1997)に基づき、マイクロスコープとして、LASER MICRO SCOPE、型番:VK−X200、メーカー:KEYENCE(レンズ倍率150倍)を用い、ウエルドの深さを測定した。
    (ウエルドの有無の評価)
    下記の基準にしたがい、目視で評価した。
    ○:ウェルドが目視で見えない。
    ×:ウェルドが目視で見える。

    [実施例1〜4、比較例1〜4]
    樹脂成形用電磁誘導加熱式金型装置として、固定型を図3に示すものを用いた以外は、図1(b)〜(c)に示す射出成形用金型を用いた。 この金型は、肉厚2.5mm、幅250mm×長さ310mmx外周の高さ10mmの箱型形状に、170mm×115mmの角段部、φ20の丸段部2個、φ40の丸段部を有する形状である。
    13aを経て射出された樹脂は、13bに示す複数の経路を通り金型に充填される。 そのため、複数の経路を経た樹脂がぶつかる箇所(ア)(イ)でウエルドが発生しやすい。
    名機製作所(株)製200t射出成形機で、上記した樹脂1をシリンダー温度250℃で溶融させた。 この成形機に図1(b)〜(c)、図3に示す電磁誘導加熱式金型を取り付けた。
    誘導コイル15aとしては、肉厚1mm、外径14mmの銅管を用いた。 この誘導コイル15aは、誘導コイル15aとキャビティ面12a、12bとの距離の最大と最小の差が、3mm以内となるように配置した。 また、キャビティの対角中心を基準としたとき、最も外側に配される誘導コイルが、キャビティ外周縁から5mm内側までの最外誘導コイル設置範囲Aの範囲内となるように、誘導コイル15aを配置した。
    この金型を図示していない電磁誘導加熱装置から銅管に通電し、キャビティ面12a、12bを表1又は表2に示す温度に昇温し、次いで、ノズル13a、ランナー・ゲート13bを通じて、キャビティ12内に樹脂を表1又は表2に示す射出速度で充填し、充填完了後、50MPaの保持圧力で10秒間圧力を保持し、図示していない冷却装置から貫通孔18、銅管製誘導コイルに通水して、40秒間で金型を冷却し、金型温度が80℃に達した時点で金型を開いて樹脂成形体を取り出した。

    実施例2〜4、比較例4より、射出時のキャビティ内の温度(Tc)が、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))以上であり、かつ、射出速度が40cm /秒以上である場合には、成形体にウエルドが視認できず、ウエルド深さも少ない結果となった。
    実施例1、比較例1〜3より、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移点(Tg(PC))と前記キャビティ内の温度(Tc)との差である(Tg(PC)−Tc)が0℃を超えて30℃以下であり、かつ、射出速度が80cm /秒以上である場合には、成形体にウエルドが視認できず、ウエルド深さも少ない結果となった。
    実施例2〜4、比較例4より、キャビティ内の温度(Tc)を90℃以上に昇温した射出成形用金型に、前記ポリカーボネート樹脂を射出し、射出成形用金型のキャビティ内温度が、該樹脂射出時の金型キャビティ内の温度より30℃以上低い状態で樹脂成形体の排出を行った場合には、成形体にウエルドが視認できず、ウエルド深さも少ない結果となった。

    11 射出成形用金型11a 固定型11b 可動型12 キャビティ12a、12b キャビティ面13a ノズル穴13b ランナー・ゲート14a 磁性金属部14b 非磁性金属部15 誘導コイル保持部15a 誘導コイル16a、16b 断熱材17 母型18 貫通孔19 エジェクターピンa、b1、b2 凸部a'、b1'、b2' 凹部p、p' 溶融樹脂流A 最外誘導コイル設置範囲

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