自己修復材料

申请号 JP2007550261 申请日 2006-12-12 公开(公告)号 JPWO2007069765A1 公开(公告)日 2009-05-28
申请人 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学; 发明人 山口 政之; 政之 山口; 稔 寺野; 稔 寺野;
摘要 高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した高分子架橋体であって、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、高分子架橋構造による材料形状の保持作用とダングリング鎖による自己修復作用とが両立する臨界近傍ゲルの特性を示す自己修復材料。この自己修復材料は簡便かつ低コストに製造でき、優れた自己修復性を持つ。この自己修復材料を利用した自己修復性構造体も提供することができる。
权利要求
  • 高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した高分子架橋体であって、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、材料形状の保持作用と自己修復作用とが両立する臨界近傍ゲルの特性を示す自己修復材料。
  • 前記自己修復材料が下記(a)〜(d)の内の1以上の条件を満たすものである請求の範囲1項に記載の自己修復材料。
    (a)動的粘弾性の測定で損失弾性率が極大を示す温度として定義されるガラス転移温度よりも20°C高い温度における損失正接が、0.6〜10.0の範囲内である。
    (b)動的粘弾性の測定で損失弾性率が極大を示す温度として定義されるガラス転移温度よりも20°C高い温度における貯蔵弾性率(E20)と80°C高い温度における貯蔵弾性率(E80)の比(E20/E80)が、3〜100の範囲内である。
    (c)引張破断伸びが300%を超える。
    (d)ゲル分率が30%を超える。
  • 前記高分子架橋体が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、飽和型ゴム、不飽和型ゴムの1種又は2種以上、又はそれの他種樹脂/ゴムとのブレンド材料からなる請求の範囲1項又は2項に記載の自己修復材料。
  • 必要な場合には触媒を利用して、下記(1)〜(3)に規定するように、一定の第1化合物及び第2化合物を、あるいは一定の第1化合物〜第3化合物を所定の反応比で混合して反応させることにより、請求の範囲1項〜3項のいずれかに記載の自己修復材料を製造する自己修復材料の製造方法。
    (1)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.3〜0.7として混合して反応させる。
    (2)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物と、官能基Aを1分子中に2個持つ第3化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.4〜0.8として混合して反応させる。 但し、第1化合物に由来する官能基Aのモル数が、官能基Aの全モル数の25%以上を占める。
    (3)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に3個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.1〜0.6として混合して反応させる。
  • 前記(1)において第1化合物が1分子中に官能基Aとしてイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物であり、前記第2化合物が1分子中に水酸基を2個以上有するポリマーポリオールであり、製造される自己修復材料がポリウレタン樹脂である場合において、イソシアネート基/水酸基の反応比で0.3〜0.7として第1化合物と第2化合物とを混合して反応させる請求の範囲4項に記載の自己修復材料の製造方法。
  • 請求の範囲1項〜3項のいずれかに記載の自己修復材料が基材上に固定化されている自己修復性構造体。
  • 前記自己修復性構造体における自己修復材料を構成する高分子架橋体の使用温度における弾性率が前記基材の弾性率の1/10以下であり、かつ、高分子架橋体の厚みが0.1mm〜10mmの範囲内である請求の範囲6項に記載の自己修復性構造体。
  • 前記自己修復材料が前記基材の表皮として用いられている請求の範囲6項又は7項に記載の自己修復性構造体。
  • 請求の範囲1項〜3項のいずれかに記載の自己修復材料又は請求の範囲6項〜8項のいずれかに記載の自己修復性構造体であって、生体医用材として用いられているものである生体医用材料。
  • 請求の範囲1項〜3項のいずれかに記載の自己修復材料又は請求の範囲6項〜8項のいずれかに記載の自己修復性構造体であって、光学材として用いられているものである光学材料。
  • 说明书全文

    本発明は、表面に傷が発生しても自然に治癒する自己修復材料に関する。
    更に詳しくは本発明は、本発明は、高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した高分子架橋体であって材料形状の保持作用と傷の自己修復作用とが両立する自己修復材料と、この自己修復材料の製造方法と、自己修復材料が基材上に固定化された自己修復性構造体と、上記の自己修復材料又は自己修復性構造体を用いてなる生体医用材料及び光学材料とに関する。

    生体材料を模倣したインテリジェントマテリアルの開発はあらゆる分野で強く望まれている。 特に、傷が発生しても自然に治癒し元の状態に戻る自己修復材料は、従来の人工構造物にはない特性であり、その開発が強く望まれている。 自己修復材料の応用としては、宇宙空間や体内など修復作業が困難な場所に用いられる材料などの各種材料の表皮材をはじめ、表面傷による商品価値の低下が著しい光学材料等が対象となる。
    従来、自己修復材料としては、特定のプラスチック材料に、化学反応剤を包含したマイクロカプセルや中空フィラーを混合し、傷の発生と同時にマイクロカプセルや中空フィラーが破壊して内部の化学反応剤がプラスチック中に広がることによって傷部分の修復を行うと言う方法による自己修復材料が、例えば下記の文献1〜文献4で提案されている。
    [文献1]R. P. Wool,“Polymer Interfaces,structure and strength”,p. 473,Hanser,1995.
    [文献2]S. R. White,N. R. Sottos,P. H. Geubelle,J. S. Moore,M. R. Kessler,S. R. Sriram,E. N. Brown,S. Viswanathan,Nature,vol. 409,pp. 794−797,(2001).
    [文献3]E. N. Brown,S. R. White,N. R. Sottos,S. White,J. Mater. Sci. ,vol. 39,pp. 1703−1710(2004).
    [文献4]J. W. C. Pang,I. P. Bond,Composites Sci. Technol. ,vol. 65,pp. 1791−1799(2005).
    又、ポリフェニレンエーテルやポリカーボネートに着目し、分解劣化後に再び反応を生じせしめる触媒などを混合することにより自己修復を行う手法が、例えば下記の非特許文献5で提案されている。 非特許文献5の手法は要するに、特定の種類の高分子化合物において、化学反応を利用して高分子の主鎖を再結合させる方法である。
    [文献5]K. Takeda,M. Tanahashi,H. Unno,Sci. Technol. Adv. Materials,vol. 4,pp. 435−444,(2003).
    更に、非晶性高分子に生じた傷の修復を、ガラス転移温度以上に昇温することにより行う方法が、例えば下記の非特許文献6で提案され、又、特定の溶媒に浸漬して傷を修復する方法が、例えば下記の非特許文献7で提案されている。
    [文献6]R. P. Wool. ,″Polymer Interface;Structure and Strength”,Chap. 12,Hanser Gardener,Cincinnati,1994.
    [文献7]C. B. Lin,S. Lee,K. S. Liu,Polym. Eng. Sci. ,vol. 30,pp. 1399−1406(1990).
    しかしながら、非特許文献1〜非特許文献4の方法では、マイクロカプセルや中空フィラーへ化学物質を包含させる必要があり、かつ、それをプラスチック中に分散させねばならないため、コストパフォーマンスに劣ると共に技術的にも困難である。 更に、材料の同一部分に生じた傷を繰り返し修復することは期待できないと考えられる。
    更に非特許文献1〜非特許文献5の方法はいずれも、適用対象が特定の高分子化合物に限定されてしまうと言う問題があった。
    次に、非特許文献6、7の方法では自己修復作用が自律的に発現する訳ではなく、傷が生じた材料をガラス転移温度以上に昇温し、あるいは特定の溶媒に浸漬する必要があるため、現実的には応用が困難であった。 加えて、非特許文献6の方法は、要するに直鎖高分子鎖の拡散を利用して自己修復を行うため、実用的な自己修復速度の実現と、材料の流動化(自己修復材料の変形あるいは形状崩壊)とがストレートに直結してしまうと言う実用面での致命的な問題がある。

    このような従来技術の種々の問題点から、1)製造プロセスがコストパフォーマンスに優れ技術的に簡便で、2)適用対象が本質的に高分子化合物の種類によって制約されず、3)自己修復作用が材料の同一部分においても繰り返し起こり、4)自己修復作用が自律的にかつ形状崩壊等を伴わずに発現する、等の利点を持つ自己修復材料の提供が望まれていた。 本発明の目的は、このような自己修復材料を提供することである。
    (第1発明)
    本願の第1発明は、高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した高分子架橋体であって、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、高分子架橋構造による材料形状の保持作用とダングリング鎖による自己修復作用とが両立する臨界近傍ゲルの特性を示す、自己修復材料である。
    第1発明の自己修復材料においては、材料形状の保持作用と自己修復作用とが両立する。 本願明細書では、このような特性を持つ高分子架橋体を「臨界近傍ゲル」と呼ぶ。 材料形状の保持作用は、上記の高分子架橋構造によるものである。 一方、傷に対する自己修復作用は、ダングリング鎖によるものである。 ダングリング鎖とは、周知のように、「片末端が架橋体と繋がっており、他の末端が架橋体と繋がっていない部分鎖」を言う。
    ダングリング鎖による自己修復作用のメカニズムは、自己修復材料が傷を受けた場合、高分子架橋体の分子内及び分子間でダングリング鎖が相互に侵入し、絡み合いにより凝集を形成すると言うトポロジー相互作用による。 従って、自己修復に要する時間は温度が高いと短くなる。 但し、昇温により自己修復作用が促進されても、ダングリング鎖の結合量と高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されている限り、材料形状の保持作用と自己修復作用とがバランス良く両立する。 この点が、前記した非特許文献6の場合とは決定的に異なる。
    従来の自己修復材料においては、高分子架橋体についての臨界近傍ゲルの概念が開示されたことはなく、ましてや、臨界近傍ゲルの成立を規定する「ダングリング鎖の結合量」や「架橋点間分子量」に関する特異的領域の存在が開示又は示唆されたこともない。
    第1発明の自己修復材料は、後述するように、簡便かつ低コストなプロセスにより製造することができる。 又、高分子架橋体である限りにおいて、その適用対象が高分子化合物の種類によって制約されない。 次に、自己修復作用は上記のトポロジー相互作用に基づくため、材料の同一部分においても繰り返し起こる。 更に、自己修復作用が自律的にかつ形状崩壊等を伴わずに発現する。 即ち、第1発明の自己修復材料は、前記した本発明の課題を解決することができる。
    第1図に第1発明の自己修復材料を模式的に示す。 第1図(a)においては、上記した高分子架橋体1の単分子が、官能基を備えた固定点2の化学反応によって基材3に固定化される様子を示すが、高分子架橋体1に関して、その高分子架橋構造と、多数のダングリング鎖4とを視覚的に示している。 第1図(b)は、高分子架橋体1の複数の分子が固定点2において基材3に対して密に固定化され、コーティング層5を形成している様子を示す。 但し第1図は自己修復材料の模式的な図示に過ぎず、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量や、高分子架橋構造の架橋点間分子量についての特異的領域を具体的に例示又は規定するものではない。
    第1発明の自己修復材料において、ダングリング鎖の結合量及び架橋点間分子量に関する「特異的領域」は、高分子の種類、その高分子を形成する単量体化合物の種類、高分子架橋構造の内容等に依存して多様であるため、これらの特異的領域を数値を以て一律に規定することは困難もしくは不可能である。 しかし、第2発明において後述するように、自己修復材料の物性等の面から、臨界近傍ゲルを規定する特異的領域を定義することは可能である。
    (第2発明)
    本願の第2発明においては、前記第1発明に係る自己修復材料が下記(a)〜(d)の内の1以上の条件を満たすものである。
    (a)動的粘弾性の測定で損失弾性率が極大を示す温度として定義されるガラス転移温度よりも20°C高い温度における損失正接が、0.6〜10.0の範囲内である。
    (b)動的粘弾性の測定で損失弾性率が極大を示す温度として定義されるガラス転移温度よりも20°C高い温度における貯蔵弾性率(E20)と80°C高い温度における貯蔵弾性率(E80)の比(E20/E80)が、3〜100の範囲内である。
    (c)引張破断伸びが300%を超える。
    (d)ゲル分率が30%を超える。
    第2発明は、第1発明に係る自己修復材料における臨界近傍ゲルとしての特異的領域を、材料物性等の面から規定したものである。
    詳しくは後述するが、(a)の条件において、ガラス転移温度よりも高い温度における損失正接が大きいことは、ダングリング鎖が多いことを表す。 (b)の条件において、「E20/E80」が大きいこと、即ち、ガラス転移温度よりも高い温度における貯蔵弾性率の低下が大きいことも、ダングリング鎖が多いことを表す。 (c)の条件において、引張破断伸びが300%以下であると、自己修復性を示さず、あるいは、殆ど示さない。 (d)の条件においてゲル分率とは、〔[乾燥後の重量]/[浸漬前の重量]×100(%)〕を意味するが、ゲル分率が30%未満であることは、両末端が架橋体に繋がっていないゾル分が多いことを意味し、この場合、自己修復材料の表面粘着性が激しくなり、取り扱いに不都合を生じることが多い。
    (第3発明)
    本願の第3発明においては、前記第1発明又は第2発明に係る高分子架橋体が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、飽和型ゴム、不飽和型ゴムの1種又は2種以上、又はそれの他種樹脂/ゴムとのブレンド材料からなる。
    前記したように、自己修復材料を構成する高分子架橋体の樹脂種は本質的に限定されないが、第3発明に列挙するものを好ましく例示することができる。 自己修復材料の弾性率は、樹脂種の選択や高分子架橋体の化学構造によって異なり、このため、自己修復材料の表面の弾性率をガラス状、皮革状、ゴム状等に制御することが可能である。
    (第4発明)
    本願の第4発明は、必要な場合には触媒を利用して、下記(1)〜(3)に規定するように、一定の第1化合物及び第2化合物を、あるいは一定の第1化合物〜第3化合物を所定の反応比で混合して反応させることにより、第1発明〜第3発明のいずれかに係る自己修復材料を製造する、自己修復材料の製造方法である。
    (1)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比(反応に関わる官能基のモル数の比を言う。以下同じ。)で0.3〜0.7として混合して反応させる。
    (2)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物と、官能基Aを1分子中に2個持つ第3化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.4〜0.8として混合して反応させる。 但し、第1化合物に由来する官能基Aのモル数が、官能基Aの全モル数の25%以上を占める。
    (3)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に3個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.1〜0.6として混合して反応させる。
    上記の第4発明によって、第1発明〜第3発明のいずれかに係る自己修復材料を簡便かつ低コストで製造する方法が提供される。
    換言すれば、「臨界近傍ゲル」である第1発明の自己修復材料は、前記したようにこれを規定する特異的領域を構造面から数値を以て一律に規定することは困難もしくは不可能であるが、第2発明のように材料物性等の面から規定することも可能である一方、第4発明のように製造条件を以て規定することもできる。
    (第5発明)
    本願の第5発明においては、前記第4発明に係る自己修復材料の製造方法の(1)において第1化合物が1分子中に官能基Aとしてイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物であり、前記第2化合物が1分子中に酸基を2個以上有するポリマーポリオールであり、製造される自己修復材料がポリウレタン樹脂である場合において、イソシアネート基/水酸基の反応比で0.3〜0.7として第1化合物と第2化合物とを混合して反応させる。
    第5発明によって、上記第4発明の自己修復材料の製造方法の内、ポリウレタン樹脂における特に好ましい実施形態の一例が提供される。 イソシアネート基/水酸基の反応比としては、0.55又はその近傍の値であることが、とりわけ好ましい。
    (第6発明)
    本願の第6発明は、第1発明〜第3発明のいずれかに係る自己修復材料が基材上に固定化されている、自己修復性構造体である。
    この第6発明において「固定化」の形態は限定されないが、その代表的な形態として、自己修復材料を構成する高分子架橋体の分子鎖が、1ケ所又は複数ケ所において基材と化学結合している形態を挙げることができる。
    第1発明〜第3発明に係る自己修復材料の利用形態は限定されないが、第6発明のように自己修復材料が基材上に固定化された自己修復性構造体としての利用形態が特に有用である。
    基材は、高分子架橋体を固定化できる手段を備えたものであれば、その種類を特段に限定されないが、例えば高分子系の材料からなる基材が好ましく用いられる。 基材表面の反応性官能基を増やす目的で、基材の表面にコロナ放電等の表面処理を行うことも好ましい。
    (第7発明)
    本願の第7発明においては、前記第6発明に係る自己修復性構造体における、自己修復材料を構成する高分子架橋体の使用温度における弾性率が基材の弾性率の1/10以下であり、かつ、高分子架橋体の厚みが0.1mm〜10mmの範囲内である。
    使用温度における高分子架橋体の弾性率が基材の弾性率の1/10を超えると基材の力学的性質を大きく損なう恐れがある。 高分子架橋体の厚みが0.1mm未満では、受けた傷が自己修復性のない基材にまで到達し易いと言う不具合がある。 高分子架橋体の厚みが10mmを超えると、基材の力学的性質が大きく損なわれると共に、自己修復材料の無駄使いとなり易い。
    (第8発明)
    本願の第8発明は、前記第6発明又は第7発明に係る自己修復材料が前記基材の表皮として用いられている自己修復性構造体である。
    この第8発明において「基材の表皮」の意味は限定されず、例えば、無機質又は有機質の材料たる基材の表皮層ないしはコーティング層、人体その他の生物体又はそれらから分離された体組織の表皮層等が挙げられる。 「表皮」には、外界に対して露出した「外表皮」も含まれるし、生物的又は無生物的な構造体の内部空間に存在する「内表皮」も含まれる。
    (第9発明)
    本願の第9発明は、第1発明〜第3発明のいずれかに係る自己修復材料又は第6発明〜第8発明のいずれかに係る自己修復性構造体であって、生体医用材として用いられているものである、生体医用材料である。
    上記の自己修復材料又は自己修復性構造体の特に有益な用途として、生体医用材料を挙げることができる。 生体医用材料の具体例として、人工血管表皮、人工臓器表皮等が挙げられる。
    (第10発明)
    本願の第10発明は、第1発明〜第3発明のいずれかに係る自己修復材料又は第6発明〜第8発明のいずれかに係る自己修復性構造体であって、光学材として用いられているものである、光学材料である。
    上記の自己修復材料又は自己修復性構造体の特に有益な他の用途として、光学材料を挙げることができる。 光学材料の具体例として、レンズ、樹脂ガラス等が挙げられる。

    第1図は本発明の自己修復材料の構造を模式的に示す図である。 第2図は本発明の実施例に係る自己修復材料の修復性評価の様子を示す写真である。 第3図は本発明の実施例に係る自己修復材料の修復性評価の様子を示す写真である。 第4図は本発明の実施例に係る自己修復材料の修復性評価の様子を示す写真である。 第5図は本発明の実施例に係る自己修復材料の修復性評価の方法を示す図である。 第6図は本発明の実施例に係る自己修復材料の修復性評価の様子を示す写真である。

    次に、本願の第1発明〜第9発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。 以下において、単に「本発明」と言う時は、第1発明〜第9発明の内の該当する発明群を一括して指している。
    〔自己修復材料〕
    本発明に係る自己修復材料は、高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した高分子架橋体である。 そして、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、臨界近傍ゲルの特性を示すものである。 ここに、臨界近傍ゲルの特性とは、材料形状の保持作用と自己修復作用とが両立することを言う。
    本発明に係る自己修復材料は、その物性面等から、下記(a)〜(d)の内の1以上の条件を満たすものである、として規定することもできる。
    (a)動的粘弾性の測定で損失弾性率が極大を示す温度として定義されるガラス転移温度よりも20°C高い温度における損失正接が、0.6〜10.0の範囲内である。
    (b)動的粘弾性の測定で損失弾性率が極大を示す温度として定義されるガラス転移温度よりも20°C高い温度における貯蔵弾性率(E20)と80°C高い温度における貯蔵弾性率(E80)の比(E20/E80)が、3〜100の範囲内である。
    (c)引張破断伸びが300%を超える(d)ゲル分率が30%を超える。
    上記の(a)〜(d)の各条件を更に詳しく説明すると、次の通りである。
    自己修復材料に用いられる高分子架橋体は、ガラス転移温度よりも20°C高い温度における損失正接が0.6〜10.0の範囲内、より好ましくは0.65〜5.0の範囲内、更に好ましくは0.7〜3.0の範囲内である。 この温度における損失正接が0.6未満では自己修復性を示さず、10.0を超えると形状を保つことが困難である。
    又、ガラス転移温度よりも50°C高い温度における損失正接が0.3〜10.0の範囲内、より好ましくは0.5〜3.0の範囲内であることが、更に優れた自己修復性を示すためには好ましい。 高分子架橋体においてガラス転移温度よりも高い温度における損失正接が大きいことは、片末端が架橋体と繋がっており他の末端が架橋体と繋がっていない部分鎖(ダングリング鎖と呼ばれる)が多いことを表す。 ダングリング鎖は隣接する他のダングリング鎖とからみ合い相互作用を示すために、一旦は切断を受けても、再びからみ合い相互作用による修復性を示す。
    なお、本発明におけるガラス転移温度とは、動的粘弾性の測定で引張損失弾性率が極大を示す温度として定義される温度を示し、市販の強制振動型動的粘弾性測定装置によって簡便に測定することが可能である。
    本発明の自己修復材料で用いられる高分子架橋体は、ガラス転移温度より20°C高い温度における貯蔵弾性率(E20)と、80°C高い温度における貯蔵弾性率(E80)との比「E20/E80」が3〜100の範囲内、より好ましくは8〜80の範囲内である。 E20/E80が3未満では自己修復性を示さず、100を超えると形状を保つことが困難である。
    ガラス転移温度よりも高い温度における貯蔵弾性率の低下が大きいことは、ダングリング鎖が多いことを意味する。 ダングリング鎖は前記した働きにより傷に対する修復性を示す。 但し、貯蔵弾性率の低下があまりに大きい場合には、弾性率の温度依存性が激しくなりすぎて、実用上の問題を生じる恐れがある。
    本発明の自己修復材料で用いられる高分子架橋体は、引張破断伸びが300%を超える。 引張破断伸びが300%以下であると、自己修復性を示さない。 高分子架橋体の伸びが大きいことは、一般的に、架橋点間分子量が大きいことを意味する。 架橋点間分子量が大きい架橋体は架橋密度が低いため、ダングリング鎖と架橋鎖(両末端が架橋体と繋がっている部分鎖)とのからみ合い相互作用も生じる。 そのため、自己修復性は一層優れたものになる。
    本発明の自己修復材料で用いられる高分子架橋体は、ゲル分率〔[乾燥後の重量]/[浸漬前の重量]×100(%)〕が30%、より好ましくは50%、更に好ましくは80%を超えることが望ましい。 ゲル分率が30%未満では、表面粘着性が激しくなり、取り扱いに不都合を生じることが多い。
    高分子架橋体のゲル分率が少ないことは、両末端が架橋体に繋がっていないゾル分が増加することを意味する。 ゾル分は表面粘着性を招くため、材料としての使用が困難になる。
    又、本発明の自己修復材料で用いられる高分子架橋体は、該架橋体中に含まれるゲル分のアセトン中における平衡膨潤度(([膨潤後の重量]−[乾燥後の重量])/[乾燥後の重量])が室温において2以上、好ましくは5以上であり、これによって自己修復性が顕著なものになる。
    高分子架橋体の平衡膨潤度が大きい場合、架橋点間分子量は大きくなる。 架橋点間分子量が大きいと、架橋体の架橋密度が低いために、ダングリング鎖と架橋鎖(両末端が架橋体と繋がっている部分鎖)とのからみ合い相互作用も生じるため、自己修復性は優れたものになる。
    さらに本発明の自己修復材料で用いられる高分子架橋体は、動的粘弾性の測定で周波数10Hzにおける引張損失弾性率が極大を示す温度として定義されるガラス転移温度が−20°C以下であることが望ましく、これによって修復速度が速くなる。
    本発明の自己修復材料における自己修復挙動はダングリング鎖が関与したからみ合い相互作用に起因するものである。 からみ合い相互作用を形成するまでの時間は分子の拡散速度に依存し、ガラス転移温度以下では拡散速度が極めて小さくなるため、実用上、自己修復性は示さなくなる。
    自己修復材料の樹脂種は、高分子架橋体を形成可能である限りにおいて限定されないが、反応の制御が容易であることから、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、飽和型ゴム、不飽和型ゴムの1種又は2種以上から構成されていることが好ましい。 又、これらの自己修復材料と、自己修復材料ではない他種材料(樹脂/ゴム)とのブレンド材料も使用可能な場合がある。
    〔自己修復材料の製造方法〕
    本発明の自己修復材料は前記第4発明の方法によって製造することができる。 即ち、必要な場合には触媒を利用して、下記(1)〜(3)に規定するように、一定の第1化合物及び第2化合物を、あるいは一定の第1化合物〜第3化合物を所定の反応比(反応に関わる官能基のモル数の比を言う。以下同じ。)で混合して反応させることにより、上記の自己修復材料を製造する方法である。
    (1)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.3〜0.7として混合して反応させる。
    (2)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物と、官能基Aを1分子中に2個持つ第3化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.4〜0.8として混合して反応させる。 但し、第1化合物に由来する官能基Aのモル数が、官能基Aの全モル数の25%以上を占める。
    (3)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に3個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.1〜0.6として混合して反応させる。
    この方法において、第1化合物〜第3化合物はいわゆるモノマーを意味する。 官能基A/官能基Bの組み合わせとしては、イソシアネート基/水酸基、イソシアネート基/アミノ基、カルボキシル基/アミノ基、カルボキシル基/水酸基、カルボキシル基/グリシジル基、カルボキシル基/オキサゾリン基、無水マレイン酸/オキサゾリン基、無水マレイン酸/アミノ基、グリシジル基/オキサゾリン基、イソシアネート基/オキサゾリン基等が例示される。 「必要な場合に使用する触媒」は、第1化合物〜第3化合物の重合反応系においてそれぞれ周知であるものを適宜に選択して使用すれば良い。 例えばポリウレタンの重合系においてはジブチル錫ジラウレート等が汎用され、ポリエステルの重合系においてはチタン化合物が汎用されている。
    自己修復材料の製造方法上の有利さの面からは、特に、ポリウレタン系樹脂は取り扱いが容易であることから好ましい。 とりわけ、第5発明において前記したように、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート化合物と、1分子中に水酸基を2つ以上有するポリマーポリオールから得られるポリウレタン系樹脂は、原材料の毒性も低く、取り扱いに優れるために好ましい。
    3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、例えば2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニレン4,4'−ジイソアネート、m−及びp−キシレンジイソアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4'−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量体、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチルジイソシアネ� �ト等のトリイソシアネート類もしくはポリフェニルメタンポリイソシアネート等の多官能イソシアネート類が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
    また、上記のジイソシアネート類を併用することも可能である。 ただしこの場合、全イソシアネートのNCO基モル数に対するトリイソシアネートのNCO基モル数は0.25以上とすることが望ましい。 0.25未満では、架橋密度の不足により形状保持をできないことがある。
    1分子中に水酸基を2つ以上有するポリマーポリオールとしては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ひまし油系ポリオール、ケン化EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリビニルアルコール、セルロースおよびセルロース誘導体などが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。
    また、用いるイソシアネート化合物のNCO基と水酸基のモル比は、ポリマーポリオールの水酸基が2つである場合、0.3〜0.7の範囲内、より好ましくは0.4〜0.6の範囲内である。 このモル比が0.3未満ではイソシアネートにトリイソシアネートのみを用いても架橋密度の不足により形状を保持できない恐れがあり、0.7を超えると自己修復性を示さない恐れがある。
    〔自己修復性構造体〕
    本発明の自己修復性構造体は、上記いずれかの自己修復材料が基材上に固定化されたものである。 この場合の自己修復材料は、例えば基材の表皮として好ましく用いることができる。
    自己修復性構造体の基材の種類は、自己修復材料を構成する高分子架橋体を、化学結合等により固定化できる手段を有するものであれば、特に限定されない。 高分子架橋体を化学結合により固定化する場合には、化学結合を生じる官能基を有することが必要であり、高分子系材料の基材が好ましく用いられる。 高分子系材料の基材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースおよびセルロース誘導体、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、各種ゴムなどが好んで用いられる。
    また、表面の反応性官能基を増やす目的で、上記のプラスチックおよびゴム基材の表面にコロナ放電処理を行ったもの、さらには、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂の表面にコロナ放電処理を行ったものを用いることも可能である。
    自己修復性構造体においては、使用温度における高分子架橋体の弾性率が基材の弾性率の1/10以下であり、かつ、高分子架橋体の厚みが0.1mm〜10mmの範囲内であることが好ましい。 高分子架橋体の弾性率が基材の弾性率の1/10を超えると、基材の力学的性質を大きく損なう恐れがある。 又、高分子架橋体の厚みが0.1mm未満では、表面に受けた傷が、自己修復性を示さない基材にまで到達してしまう恐れがある。 高分子架橋体の厚みが10mmを超えると、基材の力学的性質が大きく損なわれると共に、材料の無駄使いとなりコストパフォーマンスに劣る恐れが強い。
    基材と化学結合させる前の高分子架橋体、又は基材と高分子架橋体を化学結合させた自己修復性構造体を、一旦、過剰の有機溶媒に浸し、高分子架橋体中に含まれているゾル成分を溶媒中に溶け込ませることも可能である。 有機溶媒で処理することにより、表面粘着性を低減させることが可能になる。
    本発明の自己修復性材料は、例えば、表面傷を嫌う高級品の表皮材や光学材料として、更には生体医用材料等の材料交換が容易ではない部材に、好ましく用いることができる。
    以上の多様な実施形態に基づき、本発明の自己修復材料は、1)製造プロセスがコストパフォーマンスに優れ技術的に簡便で、2)適用対象が本質的に高分子化合物の種類によって制約されず、3)自己修復作用が材料の同一部分においても繰り返し起こり、4)自己修復作用が自律的にかつ形状崩壊等を伴わずに発現する、等の優れた利点を発揮することができる。

    以下に本発明の実施例及び比較例を説明する。 本発明の技術的範囲は、これらの実施例及び比較例によって制約されない。
    〔実施例及び比較例における測定〕
    1)貯蔵弾性率、損失正接の測定 高分子架橋体及び基材の貯蔵弾性率、損失正接は、強制振動型動的粘弾性測定装置(UBM社製、E4000)を用いて線形領域で行った。 測定周波数は10Hzとし、昇温速度2°C/分、正弦波を与えて引張モードで測定を実施した。 ガラス転移温度は、ガラス−ゴム転移領域において損失弾性率が極大を示す温度とした。 ガラス転移温度よりも20°C高い温度と50°C高い温度の損失正接(tanδ)、ガラス転移温度よりも20°C高い温度と80°C高い温度の貯蔵弾性率の比〔E(20)/E(80)〕、室温における基材と架橋体との弾性率比をそれぞれ求めた。
    2)引張破断伸びの測定 一軸引張試験にて高分子架橋体を延伸した。 引張速度は50mm/分とし、破断点の伸びを測定した。
    3)ゲル分率、膨潤度の測定 予め重量を測定した高分子架橋体を過剰のアセトンに浸漬し、24時間室温にて放置した。 膨潤した架橋体の重量を測定し、その後、真空乾燥機にて溶媒を除去して乾燥重量を測定した。 [乾燥後の重量]/[浸漬前の重量]×100(%)をゲル分率として、〔([膨潤後の重量]−[乾燥後の重量])/[乾燥後の重量]〕を膨潤度として求めた。
    4)自己修復性の評価 高分子架橋体が基材と結合している試料に対し、かみそりを用いて0.5mm深さの切れ目を与えた。 切り口の長さは5mmとした。 室温にて24時間放置した後、目視にて傷の修復の程度を確認した。
    5)形状保持性の評価 高分子架橋体が基材と結合されている試料を用いて、基材を上方、架橋体を下方に向け1週間放置し、表面の状態を目視にて観察した。
    6)表面粘着性の評価 高分子架橋体が基材と結合されている試料に指で触れることにより、表面粘着性を評価した。 試料から離した後も指に粘着成分が残る場合は、「表面粘着性あり」とした。
    〔実施例1〕
    ポリマーポリオール(日本ポリウレタン(株)製、商品名ニッポラン152、数平均分子量2000)とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(日本ポリウレタン(株)製、商品名コロネートHX)を[NCO]/[OH]の反応比で0.55として混合し、更に触媒としてジブチル錫ジラウレート100ppmを混合した。 室温にて真空乾燥機で脱泡した後、一部をコロナ表面処理したポリエチレンテレフタレート基材の上に流し、150°Cにて5分間加熱してウレタン反応を行い、目的の試料を得た。
    架橋体の厚みは1mmとした。 得られた試料を用いて自己修復性の評価を実施した。 又、物性測定用の架橋体を作製する目的で、脱泡した混合試料をポリテトラフルオロエチレンの上に流し、150°Cにて5分間加熱してウレタン反応を行った。 得られた架橋体をポリテトラフルオロエチレンから剥離し、各種物性測定を実施した。
    〔実施例2〕
    実施例1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート基材の上に架橋ウレタンを作製した後、多量のアセトンに浸漬して室温で8時間放置した。 その後、真空乾燥機にて溶媒を除去して試料とした。 得られた試料を用いて自己修復性の評価を実施した。 又、実施例1と同様の方法で得られた架橋体をポリテトラフルオロエチレンから剥離し、多量のアセトンに浸漬して室温で8時間放置した後、真空乾燥機にて溶媒を除去して物性測定用の架橋体とした。
    〔比較例1〕
    ポリマーポリオール(日本ポリウレタン(株)製、商品名ニッポラン152、数平均分子量2000)とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(日本ポリウレタン(株)製、商品名コロネートHX)を[NCO]/[OH]の反応比で1.0として混合した点以外は実施例1と全く同じ方法で試料を得、各種測定を実施した。
    〔比較例2〕
    ポリマーポリオール(日本ポリウレタン(株)製、商品名ニッポラン152、数平均分子量2000)とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(日本ポリウレタン(株)製、商品名コロネートHX)を[NCO]/[OH]の反応比で0.28として混合した点以外は実施例1と全く同じ方法で試料を得、各種測定を実施した。
    〔実施例1、2及び比較例1、2の評価結果〕
    上記した実施例1、2及び比較例1、2の各種測定の評価結果を、下記の表1に示す。

    〔実施例3〕


    [NCO]/[OH]の反応比で0.60とした以外は実施例2と全く同一の方法で物性測定用の架橋体を得た。


    〔実施例4〕


    ポリマーポリオール〔日本ポリウレタン(株)製、商品名ニッポラン152、数平均分子量2000〕33.8gとヘキサメチレンジイソシアネート(Aldrich製)1.46g、ジブチル錫ジラウレート100ppmを混合し、ウォーターバスで約90°Cに保ちながら混合し、20分間反応させることにより、新しいポリマーポリオールを得た。 新しく得たポリマーポリオールとポリインシアネートを[NCO]/[OH]の反応比で0.50とした以外は実施例2と全く同一の方法で物性測定用の架橋体を得た。


    実施例4に係る架橋体(本発明の自己修復材料)に対して与えた傷の自己修復の様子を、第2図〜第4図の写真によって示す。 第2図が切れ目(完全な切断状態)を与えた状態であり、第3図が切れ目部分を接合した直後の状態(切れ目は残っている)であり、第4図は室温にて24時間放置した後の切れ目が完全に自己修復された状態を示す。


    〔実施例3、4の評価結果〕


    上記した実施例3、4の各種測定の評価結果を、以下に示す。 評価結果の表記方法は、前記の表1の場合と同様である。


    (実施例3の評価結果)


    反応比 :0.60


    弾性率比 :9.6


    ガラス転移温度 :−43


    tanδ(Tg+20):0.70


    tanδ(Tg+50):0.51


    ゲル分率 :100


    膨潤度 :5.1


    基材との弾性率比:>100


    引張伸び :>300


    自己修復性 :○


    形状保持性 :○


    表面粘着性 :○


    (実施例4の評価結果)


    反応比 :0.50


    弾性率比 :49.8


    ガラス転移温度 :−48


    tanδ(Tg+20):0.86


    tanδ(Tg+50):0.78


    ゲル分率 :100


    膨潤度 :12.5


    基材との弾性率比:>100


    引張伸び :>300


    自己修復性 :○


    形状保持性 :○


    表面粘着性 :○


    〔実施例5〕


    前記した[NCO]/[OH]の反応比を1.0とした以外は実施例1と同じ条件及びプロセスにより、厚さが2mmで、幅が20mmの自己修復材料のフィルム状の試料(試料A)を得た。 また、[NCO]/[OH]の反応比を0.5とした以外は実施例1と同じ条件及びプロセスにより、厚さが2mmで、幅が20mmの自己修復材料のフィルム状の試料(試料B)を得た。


    第5図に示すように、これらのフィルム状試料1を直径12mmの円筒形カラム2の上に自重で曲がって垂れ下がるように載せ、図に示す鎖線沿いにレーザーブレードを用いて幅が20mmで深さがほぼ2mmの切れ目を入れた。 その後、直ちに円筒形カラムから外して、室温下に外力を受けない状態で10分間静置してから、もう一度、第5図に示す載置状態に戻した。 この状態におけるフィルム状試料1の切れ目の経時的な変化を、第5図に示す矢印「top view」方向からの拡大写真と、矢印「side view」方向からの拡大写真によって第6図に示す。


    第6図の「A」において「top view」、「side view」として示す写真は、上記の試料Aについての、左側が第5図に示す載置状態に戻した直後の写真であり、右側がその状態で10分間が経過した後の写真である。 同様に、第6図の「B」において、「top view」、「side view」として示す写真は、上記の試料Bについての、左側が第5図に示す載置状態に戻した直後の写真であり、右側がその状態で10分間が経過した後の写真である。


    第6図から分かるように、「A」の写真で示す試料Aでは、10分間が経過しても、切れ目が修復していない。 「B」の写真で示す試料Bでは、試料の自重に基づき切れ目を拡張させようとする負荷に抗して、10分間という極めて短い時間で切れ目が修復されている。

    本発明によって、従来技術に比較して種々の利点を持つ自己修復材料と、これを利用した自己修復性構造体を簡便かつ低コストに製造することができる。

    QQ群二维码
    意见反馈