Shape-memorizing polymer composition, fiber-reinforced plastic and its manufacturing method

申请号 JP2003097770 申请日 2003-04-01 公开(公告)号 JP2004300368A 公开(公告)日 2004-10-28
申请人 Mitsubishi Heavy Ind Ltd; 三菱重工業株式会社; 发明人 HAYASHI NORIYA; HAYASHI SHUNICHI; MIWA NORIO; NOHARA TOSHIKATSU;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a shape-memorizing polymer composition having an extended pot life, a fiber-reinforced plastic exhibiting excellent inflatability, and its manufacturing method.
SOLUTION: The shape-memorizing polymer composition comprises a bifunctional, a trifunctional, or a bifunctional and trifunctional isocyanate and a polyol having an average molecular weight of 100-550 in a molar ratio of isocyanate:polyol of (0.9-1.1):1.0 in terms of the functional groups. The fiber-reinforced plastic comprises the shape-memorizing polymer composition and a fiber material. The fiber-reinforced plastic is manufactured by impregnating the shape-memorizing polymer composition as the matrix resin with the fiber material and curing the composition.
COPYRIGHT: (C)2005,JPO&NCIPI
权利要求
  • 2官能、3官能又は2官能と3官能からなるイソシアネートと、平均分子量が100〜550のポリオールとを、官能基のモル比でイソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0にて含むことを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
  • 前記ポリオールがポリプロピレングリコールを50重量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の形状記憶ポリマー組成物。
  • 前記ポリオールが2官能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の形状記憶ポリマー組成物。
  • 請求項1〜3のいずれかに記載の形状記憶ポリマー組成物と、繊維材料とを含むことを特徴とする繊維強化プラスチック。
  • 前記形状記憶ポリマー組成物を25〜95体積%と、前記繊維材料を5〜75体積%含むことを特徴とする請求項4に記載の繊維強化プラスチック。
  • 2官能、3官能又は2官能と3官能からなる液状イソシアネートと、平均分子量が100〜550のポリオールとを、官能基のモル比で液状イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0にて調製した形状記憶ポリマー組成物をマトリクス樹脂として、これに繊維材料を含浸させた後、硬化させることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
  • 前記ポリオールがポリプロピレングリコールを50重量%以上含むことを特徴とする請求項6に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  • 前記ポリオールが2官能であることを特徴とする請求項6又は7に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  • 前記含浸後に繊維材料を、少なくとも2以上積層させて相互に密着させて加圧し、多層構造の積層体として硬化させることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の属する技術分野】
    本発明は、形状記憶ポリマー組成物、繊維強化プラスチック及びその製造方法に関する。
    【0002】
    【従来の技術】
    宇宙空間などへ材料を持ち出して構造物を組み立てるには、運搬中における構造物の体積を出来るだけ小さくする必要がある。 例えば人工衛星や宇宙構造物では、太陽電池用のパネル等の大型の装置が取り付けられるが、地上からの運搬時には小型化しておくことが要求される。 そして、運搬時には折り畳んであったものを、衛星軌道などの宇宙空間では使用状態である所定形状に展開する。 このような運搬時にはコンパクトに圧縮可能であって、使用時には所定形状に展開可能な膨張性や展開性を有する材料特性を、いわゆるインフレータブル性という。
    このようなインフレータブル性を有することは、地上構造物に用いる材料特性としても当然に重要なものであり、インフレータブル性材料を用いれば、運搬車両等に積載される際にはコンパクトに収納可能(容積が小さくなる)であり、組立や建設を行う現場での使用時には所定形状に展開できる。
    【0003】
    インフレータブル性を有する構造物には、ジョイント部の折り畳み等による機械的作用によるものと、加熱して元の形状に復する材料特性的作用によるものがある。
    従来のインフレータブル性は、機械的な構造によるものが多く、ジョイント部分で折り畳むような態様であった。 よって、使用時には何らかのを加えて、所定形状に展開することが必要であった。 また構造上、展開時に故障や事故等のトラブルが起きかねないという問題があった。
    【0004】
    一方これまでも、材料特性的作用によるインフレータブル性を有する構造物について幾つかの研究がなされてきた。 インフレータブル性を有する材料を大型構造物に使用するには、ある程度の強度を有する硬質化した材料であることも必要である。 強度を有する硬質化した高分子材料としては、繊維強化プラスチック(FRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP:以下、FRPに含めることもある)等が好適に挙げられ、インフレータブル性を付与するには、形状記憶ポリマーを用いて、内部に繊維材料を含有するようなFRPが考えられる。
    【0005】
    形状記憶ポリマーとは、通常のポリマーの中にあって、成形形状と変形形状とを熱による温度操作で使い分けることのできる樹脂である。 この樹脂を用いた形状記憶ポリマー成形体は、ポリマーのガラス転移点(Tg)以上、溶融温度未満又は分解温度未満の温度で変形を加え、その形状を保持した状態でガラス転移点以下まで冷却することにより、変形形状を固定し、また、ガラス転移点以上、溶融温度未満又は分解温度未満の温度に加熱することにより、元の成形形状を回復するもので、温度操作により変形形状と成形形状を使い分けることのできるものである(例えば、特許文献1を参照)。
    【0006】
    一方、一般にFRPとは、連続繊維材料を含んでなる繊維強化型プラスチックであり、硬さはセラミック並で、金属並の強度があり、重さは鉄の約1/5程度で、弾性率は鉄の約3〜4倍程度と優れる。 このようなFRP、特にCFRPにおいては、その断面積中にどれだけ繊維と樹脂を密に詰めることができるかが、従来からの重要な研究課題であった。
    FRPでは繊維の割合が強度を決定するので、繊維割合を増加すれば強度には優れるが、板状等の成形体形状にするには、相互の繊維を接着させる意味からも樹脂が必要である。 そして、FRPに用いる繊維の織り方、撚り方によっても、いろいろな種類があり、例えばクロス(布)では幅10m位のものを用いることも可能であり、大型構造物用の板やパイプ等に利用できる。
    【0007】
    このようなFRPの製造において、繊維材料に樹脂を含浸させる必要があるが、熱可塑性樹脂よりも熱硬化性樹脂のほうが含浸性に優れる。 このため、熱硬化性樹脂であれば通常粘度が低いために繊維に含浸しやすいことから、良質のFRPが製造可能であり、高い強度を保持できるが、熱可塑性樹脂では、溶融により液状化させた際の粘度が高いことから繊維に含浸しにくく、ボイドや欠陥の多いFRPとなりやすい。
    しかしながら、従来、形状記憶性を有する熱硬化性樹脂を用いてFRPを製造しようとすると、例えば二液硬化型の樹脂の場合、混合とともに速やかに硬化してしまい、含浸などの操作の時間(可使時間)を確保できないという問題があった。
    【0008】
    【特許文献1】
    特開平5−320366号公報【0009】
    【発明が解決しようとする課題】
    本発明者らは、上記問題点に鑑み、可使時間を延長した形状記憶性を有する熱硬化樹脂を開発するとともに、優れたインフレータブル性を有する繊維強化プラスチックを開発すべく、鋭意検討した。
    その結果、本発明者らは、従来、形状記憶ポリマーの必須成分であった鎖延長剤を含まずに、イソシアネート成分と特定のポリオール成分を含む形状記憶ポリマー組成物、及びこれを繊維材料に含浸させて得られる繊維強化プラスチックによって、かかる問題点が解決されることを見い出した。 本発明は、かかる見地より完成されたものである。
    【0010】
    【課題を解決するための手段】
    すなわち、本発明に係る形状記憶ポリマー組成物は、2官能、3官能又は2官能と3官能からなるイソシアネートと、平均分子量が100〜550のポリオールとを、官能基のモル比でイソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0にて含むことを特徴とするものである。
    【0011】
    宇宙環境でインフレータブル機能を発現させるためには、形状固定及び形状回復といった形状記憶性を発現させる観点から、ポリマー組成物のガラス転移点(Tg)は通常40〜150℃、好ましくは70〜120℃程度であることが望ましい。 しかし、Tgを高くすると可使時間が短くなるため、高Tg化(例えば約95℃)と可使時間の確保(例えば約50分)との両立が技術的な課題となる。
    本発明では、上記のように、従来では必須であった鎖延長剤を含有させないことでFRPの成形に必要な可使時間を確保することができる。 一方、鎖延長剤の不使用により、得られるポリマーの(Tg)が低くなるが、驚くべきことに、低分子量のポリオールを用い、イソシアネートとポリオールの含有割合を上記の割合にすることで、必要な可使時間を確保しつつ、形状固定及び形状回復といった形状記憶性を発現することができるTgを有するポリマー組成物を得ることができる。
    【0012】
    前記ポリオールは、ポリプロピレングリコールを50重量%以上含むことが好ましい。 他に含まれるポリオール成分としては、加分解が懸念されないエーテル系であって、分子設計的に高Tg化が可能な芳香族系もしくは脂肪族側鎖系が好ましい。 また、前記ポリオールは2官能であることが好ましい。
    【0013】
    また、本発明は、別の態様として、繊維強化プラスチックであって、上記の形状記憶ポリマー組成物と、繊維材料とを含むことを特徴とするものである。 前記形状記憶ポリマー組成物を25〜95体積%と前記繊維材料を5〜75体積%含むことが好ましい。
    【0014】
    このように、本発明に係る繊維強化プラスチック(FRP)は、繊維材料を内在させたまま、形状記憶ポリマーである樹脂組成物によって圧縮固定してあるので、インフレータブル性を有して、熱を加えることによって第2の形状をとることができる。 このような2以上の形状及びその形状における物性を使い分けることにより、本発明のFRPを種々の用途に適用することができる。 特に、ポリマーのガラス転移点を室温付近に設定した場合については、簡易な加熱手段を用いて、随時簡単に変形固定、展開、膨張させることができる。
    【0015】
    さらに、本発明は、別の側面として、繊維強化プラスチックの製造方法であって、2官能、3官能又は2官能と3官能からなる液状イソシアネートと、平均分子量が100〜550のポリオールとを、官能基のモル比で液状イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0にて調製した形状記憶ポリマー組成物をマトリクス樹脂として、これに繊維材料を含浸させた後、硬化させることを特徴とするものである。
    【0016】
    前記ポリオールは、ポリプロピレングリコールを50重量%以上含むことが好ましい。 他に含まれるポリオール成分としては、加水分解が懸念されないエーテル系であって、分子設計的に高Tg化が可能な芳香族系もしくは脂肪族側鎖系が好ましい。 また、前記ポリオールは、2官能であることが好ましい。 さらに、前記含浸後に繊維材料を、少なくとも2以上積層させて相互に密着させて加圧し、多層構造の積層体として硬化させることが好ましい。
    以下、本発明に係る形状記憶ポリマー組成物と、この組成物を用いた繊維強化プラスチック、及びその製造方法について説明する。
    【0017】
    【発明の実施の形態】
    (形状記憶ポリマー組成物)
    先ず、本発明に係る形状記憶ポリマー組成物について説明する。 本発明に係る形状記憶ポリマー組成物は、2官能、3官能又は2官能と3官能からなるイソシアネートと、平均分子量100〜550のポリオールとを、官能基のモル比でイソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0にて含むことを特徴とするものである。
    【0018】
    FRPに使用するポリマー組成物の特性としては、繊維材料を十分に浸透させるために、初期の含浸性が必要であると同時に、一定以上の可使時間の長さが必要である。 ポリマー組成物は、強化繊維への含浸性を考慮すると、粘弾性測定によるポリマー組成物の粘度は1000cps以下であることが好ましい。 また、繊維材料へのポリマー組成物の十分な含浸時間を確保して密なFRP成型体を得るには、可使時間が30分以上、好ましくは60分以上であるのがよい。 ここでの可使時間は、ポリマー組成物の粘度の立ち上がり時間として例えば1000cpsになるまでの時間である。
    一方、成形したFRPのインフレータブル機能を発現させるためには、形状記憶性を保持する観点から、ポリマー組成物のTgは通常40〜150℃、好ましくは70〜120℃程度であることが望ましい。
    【0019】
    本発明に係る形状記憶ポリマー組成物は、上記の条件を十分に満たすものである。 すなわち、高Tg化(例えば約95℃)と可使時間の確保(例えば約50分)とを両立させることができる。 したがって、本発明に係る形状記憶ポリマー組成物は、FRPへの使用に適した特性を有するが、その他の用途にも使用することができる。
    本発明に係る形状記憶ポリマー組成物に使用可能な原料を次に例示するが、これらに限定されるものではない。
    【0020】
    2官能のイソシアネートの例としては、一般式でOCN−R−NCOと表記することができ、Rにはベンゼン環を1、2個有するものと全く有しないものがあるが、いずれも使用可能であり、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
    3官能のイソシアネートの例としては、以下の化学式で表わせるカルボジイミド変性の4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)を挙げることができる。 また、2官能のイソシアネートと3官能のイソシアネートとを混合させることもできる。 イソシアネートは、ポリマー組成物をFRPの形成に適した2液硬化型樹脂とするため、常温で液状のものが好ましい。
    【0021】
    【化1】

    【0022】


    ポリオールとしては、平均分子量が100〜550のものを用いる。 ポリオールの分子量が550を超えると、得られる形状記憶ポリマーの可使時間が長くなる利点があるものの、Tgが低下するため、宇宙環境において形状固定及び形状回復といった形状記憶性を発現させるために必要なポリマー組成物のTgを40℃以上に維持することができなくなる。 一方、平均分子量が100未満の場合、FRPの成形に必要な可使時間を確保できなくなる。 ポリオールの平均分子量は、好ましくは150〜250である。 なお、平均分子量とは、重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法で測定されるものである。


    【0023】


    ポリオールは、Tg前後での大きな物性変化(例えば弾性率)を得るため、2官能のものが好ましい。 2官能のポリオールの例としては、一般式でHO−R'−OHと表記することができ、R'にはベンゼン環を1、2個有するものと有しないもの、更には上記の2官能のポリオールに対して2官能のカルボン酸若しくは環状エーテルを反応させた生成物などが挙げられ、具体的には、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタングリコールアジペート、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール−A+プロピレンオキサイド等を挙げることができる。


    【0024】


    また、本発明においては上記ポリオールの中で、加水分解が懸念されないエーテル系であって、分子設計的に高Tg化が可能な芳香族系もしくは脂肪族側鎖系が好ましい。 特に上記化合物中では、ポリプロピレングリコールが好ましく、ポリオール成分中のモノマーとして通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むのがよい。


    【0025】


    イソシアネートとポリオールとの混合比は、官能基のモル比で、イソシアネート:ポリオール=0.9〜1.1:1.0(すなわち、NCO/OH=0.9〜1.1)である。 このような混合比とすることで、必要な可使時間を確保しつつ、形状固定及び形状回復といった形状記憶性を発現することができる高いTgを有するポリマー組成物を得ることができる。 なお、上記混合比は、官能基のモル比で、イソシアネート:ポリオール=0.95〜1.05:0.95〜1.05と表現することもできる。 また、好ましい混合比は、官能基のモル比で、イソシアネート:ポリオール=0.98〜1.05:1.0(NCO/OH=0.98〜1.05)である。


    【0026】


    なお、本発明に係る形状記憶ポリマー組成物は、従来では必須であった鎖延長剤を含有しないものである。 鎖延長剤は、ポリマー組成物の中でTg調整剤の役割を有するものであり、高いTgを維持するのに用いられているが、その一方で、可使時間を短くする傾向がある。 本発明では、このような鎖延長剤を用いずに、高いTgを有するポリマー組成物を提供することができる。


    【0027】


    本発明に係るポリマー組成物に硬化可能な範囲で添加することのできる添加剤としては、各種フィラー、有機成分、希釈剤等の慣用される添加剤を一種以上添加することができる。


    【0028】


    (繊維強化プラスチック及びその製造方法)


    次に、本発明に係る繊維強化プラスチックについて説明する。 本発明に係る繊維強化プラスチックは、上記の形状記憶ポリマー組成物と、繊維材料とを含むことを特徴とするものである。


    【0029】


    繊維材料としては、有機材料による繊維に限定されるものではなく、ガラス繊維等の無機繊維や炭素繊維を用いることができる。 具体的には、例えば炭素繊維、アラミド繊維などが好適である。 織組織も限定されないが、例えばタテ糸とヨコ糸からなる平織りの素材が挙げられ、厚さは例えば0.1〜1.0mmの範囲のものが用いられる。


    また、本発明に係る繊維強化プラスチックには、マトリクス樹脂である上記ポリマー組成物と繊維材料以外に、補強用繊維や色素等が含まれていても良く、それらの量比は特に限定されるものではない。


    【0030】


    本発明に係る繊維強化プラスチックのポリマー組成物と繊維材料の組成比は、特に限定されるものではないが、繊維材料の体積含有率が通常5〜75体積%、好ましくは10〜60体積%、さらに好ましくは20〜55体積%の割合で含まれることがよい。 ここでFRP中の繊維材料の理論体積は、単位面積当たりの繊維材料重量に積層枚数を考慮した値を、繊維材料の密度で割った値として計算できる。 繊維材料が5体積%未満では繊維材料による強度が十分に発揮されないので好ましくなく、繊維材料が75体積%を超えると難成形性で、樹脂の含浸が不十分となって良品を得ることが難しい。 また、繊維材料が60体積%を超えると、ポリマー組成物によるインフレータブル性が十分に発揮されにくくなる。 上記体積含有率の範囲内においては、繊維材料の組成比を多くした場合、得られる成形体は強度が高くなり、一方、樹脂を多く配合した場合、形状固定の特性が向上する。


    【0031】


    次に、本発明に係る繊維強化プラスチックの製造方法について説明する。


    繊維強化プラスチックの好ましい製造方法として、真空RTM法を採用することができる。 この方法では、型内に繊維材料を設置した後、真空吸引にて型内を真空にする。 ポリマー組成物の各成分は、予め容器などで混合調製しておき、この混合物を型内に注入することで、ポリマー組成物に繊維材料を含浸する。 含浸する時間は、ポリマー組成や繊維材料の種類等によって任意に定められるが、本発明のポリマー組成物では、可使時間が30分以上確保されることから、この可使時間の範囲内で十分な繊維内への樹脂の浸透が可能な時間、含浸が行われる。 含浸後真空状態を維持したままポリマー組成物を硬化させ、硬化後FRPを型から外す。 ポリマー組成物の硬化は、組成物の硬化温度を勘案した任意の硬化条件で硬化させる(例えば、80℃×1hr+120℃×2hr)。 また、必要に応じて脱型後にポストキュアを行う(例えば150℃×4hr)。


    【0032】


    また、繊維強化プラスチックの製造方法として、熱プレス成形法を採用することができる。 この方法では、例えばポリマー組成物を繊維に含浸させる方法としては、各材料を樹脂槽中に投入して混合・調製するか、あるいは、事前に他の容器等で調製した後樹脂槽中に投入し、その樹脂槽中に、上記繊維材料を入れて含浸する。 含浸後、FRPの硬化工程では、繊維と樹脂とに完全な形状を付与して、圧力を相当に加えた状態で、温度を徐々に上昇させることが好ましい。 急激に温度を上昇させてしまうと、繊維が密に詰まらずに、得られるFRP成形体が粗密な成型体になってしまう場合があるからである。 したがって、高密度のFRPを製造するには、徐々に温度上昇させていくような、慎重な温度制御が望ましい。


    繊維材料は、クロス、マットまたはテープ等の状態として引き取り、ポリマー組成物で満たされた樹脂槽中に通すことによって行うこともできる。 なお、樹脂槽に含浸させる方法の他、ポリマー組成物を上側もしくは下側から噴き付ける方法なども、適宜採用することができる。


    【0033】


    また、多層構造の積層体を成形する場合には、含浸後の繊維材料をプレスする手前で2以上積層させて、相互に密着させる。 重ね合わせて厚さを調整してから、この複数枚のクロス等の繊維材料を、加圧機構に通して、硬化させる。 この際、必要に応じて、連続的に硬化工程を経ることも可能である。


    【0034】


    硬化にあたり、熱プレスする際の温度は通常60〜180℃まで上昇させる。 圧力は通常0〜20kgf/cm

    程度である。


    また、後硬化処理工程として温度を調整し、熱による歪みを解放して取り除くためにポストキュアすることもできる。 この際、成形したとき以上の熱を加えることが好ましい。 最後に、切断工程を経て、得られた成形体を検査する。


    【0035】


    以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び変更を加え得るものである。 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものでない。


    【0036】


    【実施例】


    実施例1


    形状記憶ポリマー組成物である2液硬化型ポリウレタン樹脂を調製し、その特性について試験を行った。 NCO基を有する液状イソシアネートとしては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とカルボジイミド変性の4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)の混合物を用いた。 また、OH基を有するポリオール(長鎖)としては、分子量200のポリプロピレングリコール(PPG200)又は分子量400のポリプロピレングリコール(PPG400)を用いた。 このときの各成分の混合比を表1に示す(試料1及び試料2)。


    一方、比較例として、表1に示すように、試料2の組成に更に鎖延長剤として1,4−ブタンジオール(1,4BG)を添加したものを調製した(試料3)。


    【0037】


    【表1】


    【0038】


    次に、この3つのポリマー組成物について、25℃環境下、200gのスケールでの2液混合後の溶液粘度の経時変化を測定して、可使時間を求めた。 すなわち、この組成物は、イソシアネート成分(主剤)とポリオール成分(硬化剤)を混合することで反応硬化し、樹脂化するものである。 また、硬化物のTgを動的粘弾性にて測定した。 試料1〜3の可使時間及びTgの結果を表2に示す。


    【0039】


    【表2】


    【0040】


    表2に示すように、試料1及び2は反応性が低く、試料1では約50分、試料2では約150分にわたり粘度の低い状態を維持した。 一方、試料3では鎖延長剤を加えたため、高い反応性を示し、溶液粘度の上昇が速く約20分で硬化した。 また、動的粘弾性の測定においては、試料1〜3のいずれにおいても40〜100℃の範囲で弾性率(Pa)が大きく変化する結果が得られた。 特に、試料1では95.3℃と非常に高いTgを有することが確認された。


    【0041】


    実施例2


    本実施例においては、本発明のFRPを作製して評価した。 マトリクス樹脂としては、上記の試料1の組成物を用いた。 また、繊維材料としては、2枚の炭素繊維布(CFクロス)からなるサンプル(TP2)と、3枚のCFクロスからなるサンプル(TP3)を作製した。


    FRPは、真空RTM法によって成形した。 先ず、CFクロスを切り出し、約1mm厚の板を成形するための型内にこれを設置した後、真空吸引にて型内を真空にした。 ポリマー組成物の主剤と硬化剤は、60℃で2時間程度、真空脱気してから、室温まで冷却した。 その後、官能基のモル比でイソシアネート:ポリオール=1.05:1.0にて撹拌混合し、約2分程度で白濁から透明になった。 この透明になった樹脂成分を脱泡後、型内に注入し、真空状態を維持したまま、80℃×1hr+120℃×2hrの硬化条件にて硬化させた。 硬化後、FRPを型から外し、所定寸法に切り出した。 その後、150℃×4hrのアフターキュアを行ってサンプルとした。


    【0042】


    得られたFRPは、Tg(約95℃)前後での弾性率変化は約20〜40倍程度であり、変形固定が十分可能であることがわかった。


    次いで、このFRPについて、形状固定性および形状回復性を評価した。 ここでは、FRP試験片を約150℃(Tg+55℃)の加熱器中に約5分間置いた後、直ちに同様に約150℃に加熱した治具に完全にフィットさせた。


    加熱器中から治具および試験片を取り出し、約40℃(Tg−55℃)の湯中に5分間浸漬してから、取り出した。 その後、治具から試験片を外し30秒間静置後、試験片の形状をトレースした。


    再度、この試験片を約150℃の加熱器室内に約5分間置いてから取り出し、約40℃の湯中に5分間静置後、試験片の形状をトレースした。


    その結果、TP2およびTP3ともに、形状固定性では99%以上、形状回復性についても約100%と非常に良好であった。


    【0043】


    【発明の効果】


    上述してきたように、本発明によれば、可使時間を延長した形状記憶性を有する熱硬化性ポリマー組成物と、優れたインフレータブル性を有する繊維強化プラスチック及びその製造方法とを提供することができる。 すなわち、本発明に係るポリマー組成物は、初期の含浸性とともに一定以上の可使時間の長さを確保することができるものなので、FRP製造の際に繊維材料中に樹脂を十分に浸透させることができる。 これによって、十分な強度とともにインフレータブル性を有するFRP成型体を容易に製造できる。 そして、FRP成型体は所定の変形形状を採ることができ、簡単な加熱操作により、成形形状に復帰させることができる。

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