車両シート用難燃性コーティング剤および難燃性車両シート材料の製造方法

申请号 JP2015553628 申请日 2014-12-19 公开(公告)号 JPWO2015093606A1 公开(公告)日 2017-03-23
申请人 日華化学株式会社; 发明人 勝也 奥村; 勝也 奥村; 慎一 森永; 慎一 森永;
摘要 (A)窒素含有化合物と、(C) 水 性熱可塑性樹脂とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤。ハロゲン化合物やアンチモン化合物を使用することなく、十分な難燃性を発現し、且つ、熱水に対するキワツキの発生が抑制されている難燃性車両シート材料が提供される。
权利要求

(A)窒素含有化合物と、(C)性熱可塑性樹脂とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤。(A)窒素含有化合物と、(C)水性熱可塑性樹脂と、(B)リン系化合物および/又は(D)金属水酸化物とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤。化合物(A)が、メラミン化合物、トリアジン化合物およびそれらと(イソ)シアヌル酸との塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。化合物(B)が、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物、およびポリリン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、化合物(D)が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2または3のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。 一般式(1) (上式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいナフチル基又は炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいビフェニル基を表し、Eは直接結合、−O−又は−N(H)−を表し、aは1又は2を表し、bは0又は1を表す。) 一般式(2) (上式中、R3はベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基又は下記式(6)で表される基を表す。) 式(6) (上式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。) 一般式(3) (上式中、R5〜R8はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいフェニル基を表し、R9は置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、cは1〜5の整数を表す。) 一般式(4) (上式中、R10とR11はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R12はビフェニル基又はナフチル基を表す。) 一般式(5) (上式中、R13〜R16はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表す。化合物(C)がアニオン性基を有するポリウレタン樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。化合物(A)と、化合物(B)と化合物(D)との合計の配合比(A):{(B)+(D)}が、質量比で、1:0.1〜15であり、化合物(A)と化合物(B)と化合物(D)との合計と、化合物(C)との配合比{(A)+(B)+(D)}:(C)が、質量比で、1:9〜9.5:0.5である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。請求項1および3〜6のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤を、車両シート材料の一方の面に処理した後に乾燥して、車両シート材料の処理面および/又は車両シート材料中に、前記の化合物(A)と、化合物(C)と、を含む難燃性被膜を形成させることにより、難燃性車両シート材料を得ることを特徴とする難燃性車両シート材料の製造方法。請求項2〜6のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤を、車両シート材料の一方の面に処理した後に乾燥して、車両シート材料の処理面および/又は車両シート材料中に、前記の化合物(A)と、化合物(C)と、化合物(B)および/又は化合物(D)を含む難燃性被膜を形成させることにより、難燃性車両シート材料を得ることを特徴とする難燃性車両シート材料の製造方法。

说明书全文

本発明は、車両シート用難燃性コーティング剤、およびこのコーティング剤で処理された難燃性車両シート材料の製造方法に関する。

従来より、自動車用シート材料や鉄道車両用シート材料等の車両用シート材料の難燃コーティング加工分野には、デカブロモジフェニルエーテルに代表されるハロゲン系化合物や、三酸化アンチモンに代表されるアンチモン系化合物を配合した樹脂化合物が使用されている。

近年、環境の問題から、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物以外の難燃剤を使用することが求められており、ポリリン酸アンモニウム(APP)に代表される融点を有しないリン系難燃剤、酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、リン酸エステル等が使用されている。

車両用シート材料において、難燃性は搭乗者の生命を守るために欠くことのできない性能である。よって、難燃性が「より良好」な難燃剤の利用は必要不可欠であるが、上記の金属水酸化物やリン酸エステルは、APPに比べて難燃性が劣ることが指摘されている。加えて、有機リン系難燃剤の使用は、コストの増加という問題がある。

他方、APPは良好な難燃性を示しつつ、コストも安いことから広く利用されている。しかしながら、APPは水に対する溶解性を示すため、車両シート加工時のスチーム処理により、キワツキやヌメリが発生し、作業性が低下するといった問題が発生している。ここに、「キワツキ」とは、処理後のシート材料に水や蒸気が付着した後に乾燥した場合、水や蒸気が付着した部分が斑点状や輪染み状になったり、発粉したりする現象である。

このような問題を解決するために、特開2006−028488号公報(特許文献1)では、合成樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対して、リンおよび窒素を含有するノンハロゲン系難燃剤粒子表面を官能基含有有機ケイ素樹脂で被覆したノンハロゲン系難燃剤の一種又は二種以上を1〜300質量部添加してなる車両内装材用コーティング組成物が開示されている。また、特開2006−063125号公報(特許文献2)では、ポリリン酸化合物とシリコーン系樹脂によってポリリン酸系難燃剤の組成物とし、該組成物を、エラストマー樹脂に配合して、繊維製品の難燃化処理に適用する方法が開示されている。

しかしながら、APPを完全に被覆することは技術的に困難であり、特許文献1、特許文献2の方法では、APPの水に対する溶解性低減は可能であるものの、これらの方法では、高温の水、特に80℃以上の熱水に対するAPPの溶解性を低減することは困難であった。

また、ハロゲン系化合物を使用しない方法として、特開2006−233152号公報(特許文献3)では、布帛の一方の面にアクリルモノマー中にメチロール基を含まないアクリル系共重合体樹脂、ポリリン酸アンモニウム塩、リン酸エステルおよび増粘剤を特定の割合で含有するバックコーティング剤からなるバックコーティング層を有し、且つ、ホルムアルデヒドの発生量が0.1ppm以下である難燃布帛が開示されている。

しかしながら、特許文献3の方法では、依然としてAPPの水に対する溶解性の問題は解決されていない。

また、キワツキを目立たなくするために、生地(車両シート材料)の厚みを増したり、デザインや色調を工夫する等の方法も行われている。しかしながら、この場合、生地重量の増大は不可避であり、また、そのデザイン性、意匠性には一定の制限が課されることとなる。よって、このような対策を不要とし、生地重量の軽量化と幅広いデザイン性、意匠性を実現し、且つ、優れた難燃性とキワツキ発生の抑制を両立した非ハロゲン系の車両シート用難燃性コーティング剤が求められている。

特開2006−028488号公報

特開2006−063125号公報

特開2006−233152号公報

本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、ハロゲン化合物やアンチモン化合物を使用することなく、十分な難燃性を発現し、且つ、熱水に対するキワツキ発生が抑制された難燃性車両シート材料を提供することにある。

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の窒素含有化合物と、特定の熱可塑性樹脂とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤を使用することによって、難燃性に優れ、且つ熱水によるキワツキの発生が抑制された難燃性車両シート材料が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。

本発明の一側面aによれば、(A)窒素含有化合物と、(C)熱可塑性樹脂とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤が提供される。

本発明によれば、(A)窒素含有化合物と、(C)水性熱可塑性樹脂と、(B)リン系化合物および/又は(D)金属水酸化物とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤をも提供することができる。

本発明は、例えば、以下の態様を含むことができる。

[a1] (A)窒素含有化合物と、(C)水性熱可塑性樹脂とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤。

[a2] (A)窒素含有化合物と、(C)水性熱可塑性樹脂と、(B)リン系化合物および/又は(D)金属水酸化物とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤。

[a3] 化合物(A)が、メラミン化合物、トリアジン化合物およびそれらと(イソ)シアヌル酸との塩からなる群から選択される少なくとも1種である、[a1]または[a2]のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。

[a4] 化合物(B)が、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物、およびポリリン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、化合物(D)が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[a2]または[a3]のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。

一般式(1)

(上式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいナフチル基又は炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいビフェニル基を表し、Eは直接結合、−O−又は−N(H)−を表し、aは1又は2を表し、bは0又は1を表す。)

一般式(2)

(上式中、R3はベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基又は下記式(6)で表される基を表す。)

式(6)

(上式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。)

一般式(3)

(上式中、R5〜R8はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいフェニル基を表し、R9は置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、cは1〜5の整数を表す。)

一般式(4)

(上式中、R10とR11はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R12はビフェニル基又はナフチル基を表す。)

一般式(5)

(上式中、R13〜R16はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表す。

[a5] 化合物(C)がアニオン性基を有するポリウレタン樹脂である、[a1]〜[a4]のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。

[a6] 化合物(A)と、化合物(B)と化合物(D)との合計の配合比(A):{(B)+(D)}が、質量比で、1:0.1〜15であり、化合物(A)と化合物(B)と化合物(D)との合計と、化合物(C)との配合比{(A)+(B)+(D)}:(C)が、質量比で、1:9〜9.5:0.5である、[a2]〜[a5]のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。

[a7] [a1]および[a3]〜[a6]のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤を、車両シート材料の一方の面に処理した後に乾燥して、車両シート材料の処理面および/又は車両シート材料中に、前記の化合物(A)と、化合物(C)と、を含む難燃性被膜を形成させることにより、難燃性車両シート材料を得ることを特徴とする難燃性車両シート材料の製造方法。

[a8] [a2]〜[a6]のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤を、車両シート材料の一方の面に処理した後に乾燥して、車両シート材料の処理面および/又は車両シート材料中に、前記の化合物(A)と、化合物(C)と、化合物(B)および/又は化合物(D)を含む難燃性被膜を形成させることにより、難燃性車両シート材料を得ることを特徴とする難燃性車両シート材料の製造方法。

本発明の他の側面bによれば、(A)窒素含有化合物と、(B)リン系化合物と、(C)水性熱可塑性樹脂とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤が提供される。

このような本発明の「他の側面b」においては、本発明は、例えば以下の態様を含むことができる。

[b1] (A)窒素含有化合物と、(B)リン系化合物と、(C)水性熱可塑性樹脂とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤。

[b2] 化合物(A)が、メラミン化合物、トリアジン化合物およびそれらと(イソ)シアヌル酸との塩からなる群から選択される少なくとも1種である、[b]1に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。

[b3] 化合物(B)が、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物、およびポリリン酸化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、[b1]又は[b2]に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。

一般式(1)

(上式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいナフチル基又は炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいビフェニル基を表し、Eは直接結合、−O−又は−N(H)−を表し、aは1又は2を表し、bは0又は1を表す。)

一般式(2)

(上式中、R3はベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基又は下記式(6)で表される基を表す。)

式(6)

(上式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表す。)

一般式(3)

(上式中、R5〜R8はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいフェニル基を表し、R9は置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、cは1〜5の整数を表す。)

一般式(4)

(上式中、R10とR11はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R12はビフェニル基又はナフチル基を表す。)

一般式(5)

(上式中、R13〜R16はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表す。

[b4] 化合物(C)がアニオン性基を有するポリウレタン樹脂である、[b1]〜[b3]のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。

[b5] 化合物(A)と化合物(B)との配合比(A):(B)が、質量比で、1:0.1〜10であり、化合物(A)と化合物(B)との合計と、化合物(C)との配合比(A)+(B):(C)が、質量比で、3:7〜9:1である、[b1]〜[b4]のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤。 [b6] [b1]〜[b5]に記載のいずれか1項に記載の車両シート用難燃性コーティング剤を、車両シート材料の一方の面に処理した後に乾燥して、車両シート材料の処理面および/又は車両シート材料中に、前記の化合物(A)と、化合物(B)と、化合物(C)と、を含む難燃性被膜を形成させることにより、難燃性車両シート材料を得ることを特徴とする難燃性車両シート材料の製造方法。

上記した本発明の「他の側面」においては、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤は、化合物(A)と化合物(B)との配合比(A):(B)が、質量比で、1:0.1〜10であることが好ましく、1:0.1〜7であることがより好ましく、1:0.1〜5であることが更により好ましい。この範囲外である場合、難燃性が低下する傾向がある。

また、本発明のこのような「他の側面b」においては、化合物(A)と化合物(B)との合計と、化合物(C)との配合比(A)+(B):(C)が、質量比で、3:7〜9:1であることが好ましく、4:6〜9:1であることがより好ましく、5:5〜9:1であることが更により好ましい。化合物(A)と化合物(B)との合計が、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との合計の30質量%未満である場合難燃性が低下する傾向にあり、90質量%を超える場合、コーティング剤の製品化が困難になる傾向、風合いの硬化や発粉発生の傾向、難燃性被膜とシート材料との接着性が低下し、充分な生地強度が得られない傾向等がある。

このような本発明の側面bによれば、「難燃性の向上、風合いの調整が可能、発粉の防止、接着性の向上、塗布状態の均一化」において、より有利な効果を得ることができる。

本発明の他の側面cによれば、(A)窒素含有化合物と、(D)金属水酸化物と、(C)水性熱可塑性樹脂を含む、車両シート用難燃性コーティング剤が提供される。

このような本発明の側面cによれば、「コストダウン、コーティング層の厚みと浸透度合いの調整が容易で風合いのコントロールが容易、加工履歴のチェックが容易」という効果を得ることができる。

本発明の他の側面dによれば、(A)窒素含有化合物と、(B)リン系化合物と、(C)水性熱可塑性樹脂と(D)金属水酸化物とを含む、車両シート用難燃性コーティング剤が提供される。 このような本発明の側面dによれば、上記した側面bにおける効果と、側面cにおける効果とを合わせ、バランスさせた効果を得ることができる。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤によれば、ハロゲンおよびアンチモンを含まず、APPと同等あるいはそれ以上の十分な難燃性を発現し、且つ、熱水に対するキワツキの発生が抑制されている難燃性車両シート材料を提供することが可能となる。

以下に、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤、および難燃性車両シート材料の製造方法について詳細に説明する。

(A)窒素含有化合物 (A)窒素含有化合物(以下、化合物(A)と略す)は、後述する(B)リン系化合物(以下、化合物(B)と略す)と併用することで、それぞれの化合物を単独で使用する以上の、優れた難燃性と熱水に対するキワツキの発生の抑制を両立することができる。

化合物(A)としては、例えば、メラミン化合物;グアナミン化合物;トリアジン化合物;シアヌル酸化合物;メラミン化合物、グアナミン化合物およびトリアジン化合物からなる群から選択される少なくとも1種と酸との塩等が挙げられる。

メラミン化合物としては、メラミン;2−メチルメラミン等のアルキルメラミン、グアニルメラミン等の置換メラミン化合物;メラム、メレム、メロン、メトン等のメラミンの脱アンモニア縮合物等が挙げられる。

グアナミン化合物としては、グアナミン、メチルグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、3,9−ビス〔2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が挙げられる。

トリアジン化合物としては、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、ベンゾトリアジンおよびそれらの炭素原子に1〜3個のアミノ基が置換したアミノ基含有トリアジン等が挙げられる。

シアヌル酸化合物としては、(イソ)シアヌル酸(シアヌル酸とイソシアヌル酸の両方を表す)、アンメリン、アンメリド等が挙げられる。シアヌル酸化合物は水和物であっても無水物であってもよい。

メラミン化合物、グアナミン化合物およびトリアジン化合物からなる群から選択される少なくとも1種と塩を形成する酸としては、(イソ)シアヌル酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の有機酸;塩酸、硝酸硫酸、ピロ硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、スルファミン酸、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、フェニルホスホン酸、アルキルホスホン酸、亜リン酸、ホウ酸、タングステン酸等の無機酸が挙げられる。

このような化合物(A)は、1種を単独で、又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。

このような化合物(A)の中でも難燃性の観点から、メラミン化合物、トリアジン化合物およびそれらと(イソ)シアヌル酸との塩が好ましい。

上記メラミン化合物の中では、メラム、メレム、メロン等のメラミンの脱アンモニア縮合物が好ましい。

上記トリアジン化合物の中では、アミノ基含有トリアジン化合物、特にアミノ基含有1,3,5−トリアジンが好ましい。

上記メラミン化合物およびトリアジン化合物と(イソ)シアヌル酸との塩の中では、メラミン化合物と(イソ)シアヌル酸との付加物(メラミン化合物と(イソ)シアヌル酸との塩)が好ましい。前者と後者との割合(モル比)は、特に制限されないが、例えば、前者:後者=3:1〜1:2が好ましく、より好ましくは2:1〜1:2である。この中でも、メラミンシアヌレート(メラミンと(イソ)シアヌル酸の塩)や、メラミン塩に対応するメレム塩、メラム塩、メロン塩等が好ましい。メラミン化合物と(イソ)シアヌル酸との塩には未反応のメラミン化合物や(イソ)シアヌル酸が含まれていても良い。

また本発明においては、キワツキ抑制の観点から、化合物(A)は非水溶性であることが好ましい。非水溶性とは、化合物(A)が固形の場合は粉末とした後、化合物(A)10gを20℃のイオン交換水100gの中に入れ、20℃±0.5℃で1分間強く振り混ぜた場合の、イオン交換水100gに対する化合物(A)の溶解する度合い(g)が1.0g以下であることをさす。ここに「溶解する」とは、透明な溶液を与えるか、または任意の割合で透明に混和することを言う。

このような化合物(A)の中でもメラミンシアヌレートがもっとも好ましい。

(B)リン系化合物 本発明においては、リン系化合物(B)を必要に応じて使用することができる。

化合物(B)としては、例えば、一般式(1)〜(5)で表される化合物、ポリリン酸化合物およびリン酸アルミニウムを挙げることができる。

このような化合物(B)は、1種を単独で、又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。

(一般式(1)の化合物) 一般式(1)で表される化合物としては、トリフェニルホスフェート(融点50℃)、ナフチルジフェニルホスフェート(融点61℃)、ジナフチルフェニルホスフェート、トリナフチルホスフェート(融点111℃)、ビフェニルジフェニルホスフェート(20℃で液状)、トリクレジルホスフェート(20℃で液状)、トリキシレニルホスフェート(20℃で液状)、フェノキシエチルジフェニルホスフェート(融点80℃)、エチルヘキシルジフェニルホスフェート(20℃で液状)、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート(20℃で液状)、ジ(フェノキシエチル)フェニルホスフェート、フェノキシエチルジナフチルホスフェート、ジ(フェノキシエチル)ナフチルホスフェート、ナフトキシエチルジフェニルホスフェート、ジ(ナフトキシエチル)フェニルホスフェート、ナフトキシエチルジナフチルホスフェート、ジ(ナフトキシエチル)ナフチルホスフェート、アニリノジフェニルホスフェート(融点130℃)、ジアニリノフェニルホスフェート、トリアニリノホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド(融点157℃)等を挙げることができる。

これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、難燃性の観点から、フェノキシエチルジフェニルホスフェート(融点80℃)、アニリノジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリキシレニルホスフェート(20℃で液状)を用いることが好ましい。

(一般式(2)の化合物) 一般式(2)で表される化合物としては、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド(融点115℃)、10−(4−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、10−フェネチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(1−ナフチルメチル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(2−ナフチルメチル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、ブチル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド−10−イル)メチル]スクシンイミド、フェニル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド−10−イル)メチル]スクシンイミド、ベンジル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド−10−イル)メチル]スクシンイミド(融点143℃)等を挙げることができる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、難燃性の観点から、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイドを用いることが好ましい。

(一般式(3)の化合物) 一般式(3)において、R9で表されるアリーレン基は置換基を有していてもよく、かかる置換基の例としては、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基等を挙げることができ、またアリーレン基の例としてはフェニレン基、ビフェニレン基、メチレンビスフェニレン基、ジメチルメチレンビスフェニレン基、スルホンビスフェニレン基等を挙げることができる。

一般式(3)で表される化合物としては、レゾルシノールジ−2,6−キシレニルホスフェート(融点95℃)、レゾルシノールジフェニルホスフェート(20℃で液状)、ハイドロキノンジ−2,6−キシレニルホスフェート、4,4´−ビフェノールジ−2,6−キシレニルホスフェート、4,4´−ビフェノールジフェニルホスフェート、4,4´−ビフェノールジクレジルホスフェート、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(20℃で液状)、ビスフェノールAジクレジルホスフェート(20℃で液状)等を挙げることができる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、難燃性の観点から、レゾルシノールジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールジフェニルホスフェート(20℃で液状)を用いることが好ましい。

(一般式(4)の化合物) 一般式(4)で表される化合物としては、5,5−ジメチル−2−(2´−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド(融点129℃)、5,5−ジメチル−2−(4´−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、5−ブチル−5−エチル−2−(4´−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、5,5−ジメチル−2−(2´−ナフチロキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド等を挙げることができる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、難燃性の観点から、5,5−ジメチル−2−(2´−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシドを用いることが好ましい。

(一般式(5)の化合物) 一般式(5)で表される化合物としては、5−エチル−5−[[[メトキシ(メチル)ホスフィニル]オキシ]メチル]−2−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン2−オキシド(20℃で液状)を挙げることができる。

一般式(1)〜(5)で表される化合物の中でも、キワツキ抑制の観点から、融点が95℃以上又は融点が20℃以下であることが好ましい。

融点が95℃以上のものは難燃性シート材料にハードな風合いを、融点が20℃以下のものはソフトな風合いを与えることができるため、融点が95℃以上のものと融点が20℃以下のものとを組み合わせることで、風合いを任意に調整することが可能となる利点も有する。

(ポリリン酸化合物) ポリリン酸化合物としては、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、ポリリン酸カルバメート、トリポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸アンモニウム・カリウム、ポリリン酸グアニジン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニル尿素、表面が被覆されたポリリン酸アンモニウム、等を挙げることができる。

これらの中でも、難燃性とキワツキ抑制の観点から、表面が被覆されたポリリン酸アンモニウムが好ましい。表面が被覆されたポリリン酸アンモニウムの中では、シラン被覆やメラミン被覆されたポリリン酸アンモニウムであることがより好ましい。VOCの発生がないという観点から、シラン被覆されたポリリン酸アンモニウムを用いることがさらにより好ましい。

シラン被覆されたポリリン酸アンモニウムとしてはFRCROS486(ブーデンハイム社製)、 Exflam APP−204(Wellchem社製)、APP−102、APP−105(JLS社製)、APP−5(西安化工社製)等が挙げられる。

また本発明においては、キワツキ抑制の観点から、化合物(B)は非水溶性であることが好ましい。非水溶性とは、化合物(B)が固形の場合は粉末とした後、化合物(B)10gを20℃のイオン交換水100gの内に入れ、20℃±0.5℃で1分間強く振り混ぜた場合の、イオン交換水100gに対する化合物(B)の溶解する度合い(g)が1.0g以下であることをさす。ここに「溶解する」とは、透明な溶液を与えるか、または任意の割合で透明に混和することを言う。

このような化合物(B)の中でも、難燃性とキワツキ抑制とコストの観点から、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリ2,6−キシレニルホスフェート、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、レゾルシノールジ−2,6−キシレニルホスフェートがより好ましい。

(C)水性熱可塑性樹脂 (C)水性熱可塑性樹脂(以下、化合物(C)と略す)は、前記化合物(A)(必要に応じて、更に化合物(B)および/又は化合物(D))を車両シート材料に固着させるために用いるバインダー樹脂であり、化合物(A)(必要に応じて、更に化合物(B)および/又は化合物(D))と併用して使用することにより、車両シート材料に良好な難燃性と熱水に対するキワツキの発生を抑制する効果とを与えることができる。

化合物(A)および化合物(C)を含む本発明の態様においては、化合物(A):化合物(C)の配合比(A):(C)は、難燃性、風合い、発粉、難燃性被膜とシート材料との接着性などの点からは、質量比で、1:9〜9.5:0.5であることが好ましく、3:7〜9:1であることがより好ましく、4:6〜9:1であることが更により好ましく、5:5〜9:1であることが更により一層好ましい。

本発明において、水性の熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂の水中濃度が40質量%である水乳化分散液の200mLを、200mLのガラス容器(蓋つき)に入れ蓋を閉め、通常の実験台上で20℃で12時間静置しても、分離や沈降が観察されない熱可塑性樹脂を指す。

このような化合物(C)としては、例えば、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性酢酸ビニル樹脂、水性エチレン酢酸ビニル樹脂等を挙げることができる。

これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

このような化合物(C)の中でも、ソフトな風合いとコストの観点からは水性アクリル樹脂であることが好ましく、難燃性とハードな風合いの観点からは水性ポリウレタン樹脂であることが好ましく、キワツキ抑制の観点からは水性ポリウレタン樹脂であることが好ましく、そのなかでもアニオン性基を有するポリウレタン樹脂であることがより好ましい。

水性アクリル樹脂と水性ポリウレタン樹脂とを組み合わせることで、難燃性シート材料の風合いを任意に調整することが可能となる利点を有する。

水性アクリル樹脂としては市販品を使用することができる。例えば、ニカゾールシリーズ(日本カーバイド社製)、ポリゾールシリーズ(昭和高分子社製)、サイビノールシリーズ(サイデン化学社製)、ニューコートFHシリーズ(新中村化学工業(株)製)を挙げることができる。

(アニオン性基を有するポリウレタン樹脂) アニオン性基を有するポリウレタン樹脂としては、(a)有機ポリイソシアネート、(b)ポリオールおよび(c)アニオン性基と2個以上の活性水素とを有する化合物を反応させて得られるアニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物を、自己乳化によって水に乳化分散させ、(d)アミノ基および/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物を用いて鎖伸長反応させることにより得られたアニオン性基を有する水性ポリウレタン樹脂を好適に用いることができる。

アニオン性基としては、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート基(−COO)、スルホ基(−SO3H)、スルホネート基(−SO3)等が挙げられる。中でも、アニオン性基を有する自己乳化性ポリウレタン樹脂の乳化分散安定性が優れる傾向にあり、難燃性車両シート材料の難燃性の低下が少なく、キワツキの抑制効果が良好という傾向にあるという観点から、アニオン性基はカルボキシル基および/又はカルボキシレート基であることが好ましい。

アニオン性基の含有量としては、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜4.0質量%であることがより好ましく、0.5〜2.5質量%であることがさらにより好ましい。ここに、「質量%」を計算するベースは、アニオン性基を含有する樹脂の質量である。すなわち、「質量%」は、樹脂の化学構造式および配合量から理論的に計算するものである。

前記アニオン性基の含有量が前記下限未満である場合は、水性ポリウレタン樹脂の乳化分散が困難になり、水性ポリウレタン樹脂水乳化分散液の安定性が悪くなる傾向にあり、難燃性の低下、キワツキが悪化する傾向にある。前記上限を超える場合には、水性ポリウレタン樹脂がシャープに感熱凝固し難くなり、裏抜けが起こる傾向にある。

このような水性ポリウレタン樹脂は、1種を単独で、又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。

<(a)有機ポリイソシアネート> 本発明に係る水性ポリウレタン樹脂を製造する際に使用可能な(a)有機ポリイソシアネートとしては、特に制限されず、例えば、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物の二量体もしくは三量体等の変性ポリイソシアネート化合物を使用することができる。

ジイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジクロロ−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。

トリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)−チオフォスファート等が挙げられる。

ジイソシアネート化合物から誘導される変性ポリイソシアネート化合物としては、2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビウレット構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、三量体構造等を有するポリイソシアネート、トリメチロールプロパンの脂肪族イソシアネートのアダクト体、ポリメリックMDI(MDI=ジフェニルメタンジイソシアネート)等が挙げられる。

これらのポリイソシアネート化合物は1種を単独で用いても、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。

これらのポリイソシアネート化合物の中でも、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートは、難燃性シート材料が無黄変性となる傾向があるため好適に用いることができる。

<(b)ポリオール> 本発明に係る水性ポリウレタン樹脂を製造する際に使用可能な(b)ポリオールとしては、2個以上のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限されず、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ダイマージオール等を使用することができる。

(ポリエステルポリオール) 前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ−ω−カポロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)アジペートジオール、1,6−ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物、ノナンジオールとダイマー酸の重縮合物、エチレングリコールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物等が挙げられる。

(ポリカーボネートポリオール) 前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のグリコールと、ジフェニルカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオールを挙げることができる。このようなポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールカーボネートジオール、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール等が挙げられる。

(ポリエーテルポリオール) 前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ショ糖、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の活性水素を少なくとも2個有する化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種又は2種以上を常法により付加重合した重合体等が挙げられる。この場合、付加重合の方法としては、単独重合、ブロック共重合、ランダム共重合のいずれであっても構わない。

(ダイマージオール) 前記ダイマージオールとしては、重合脂肪酸を還元して得られるジオールを主成分とするものが挙げられる。このような重合脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸、乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸、これらの脂肪酸の低級モノアルコールエステル等を、ディールスアルダー型の二分子重合反応させたものを挙げることができる。

これらのポリオールは1種を単独で用いても、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このようなポリオールの重量平均分子量としては、500〜5,000であることが好ましく、1,000〜3,000であることがより好ましい。この「重量平均分子量」は、原料メーカーの分析値=OHV(オーハーバリュー)から、計算により求めたものである。

これらのポリオールの中でも、加水分解による難燃性シート材料の経日での強度低下が少ないという観点から、ポリカーボネートポリオールおよびポリエーテルポリオールからなる群の中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。

<(c)アニオン性基と2個以上の活性水素とを有する化合物> 本発明に係る水性ポリウレタン樹脂を製造する際に使用可能な(c)アニオン性基と2個以上の活性水素とを有する化合物としては、特に制限されず、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有低分子ジオール、2−スルホ−1,3−プロパンジオール、2−スルホ−1,4−ブタンジオール等のスルホン基含有低分子ジオール、およびこれらカルボキシル基含有低分子ジオール又はスルホン基含有低分子ジオールのアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等の有機アミン塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。

<(d)アミノ基および/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物> 本発明に係る水性ポリウレタン樹脂を製造する際に使用可能な(d)アミノ基および/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物としては、特に制限されず、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、ヒドラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン;ジ第一級アミンおよびモノカルボン酸から誘導されるアミドアミン;ジ第一級アミンのモノケチミン等の水溶性アミン誘導体;蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、琥珀酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、1,1´−エチレンジヒドラジン、1,1´−トリメチレンジヒドラジン、1,1´−(1,4−ブチレン)ジヒドラジン等のヒドラジン誘導体を挙げることができる。これらのアミノ基および/ 又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物は、1種を単独で用いることができ、又は、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることもできる。

(アニオン性基を有するポリウレタン樹脂) 前記アニオン性基を有するポリウレタン樹脂は、アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマーの中和物の自己乳化による水への乳化分散および鎖伸長反応により該ポリウレタン樹脂の乳化分散液として得ることができる。

前記アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマーの中和物は、前記(c)アニオン性基と2個以上の活性水素とを有する化合物に由来するアニオン性基が中和された基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物であり、前記(a)有機ポリイソシアネート、前記(b)ポリオールおよび前記(c)アニオン性基と2個以上の活性水素とを有する化合物を反応させて得られる。

このようなアニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物を得るための具体的な方法としては特に制限されず、例えば、従来公知の一段式のいわゆるワンショット法、多段式のイソシアネート重付加反応法等により製造することができる。この時の反応温度は、40〜150℃であることが好ましい。

(低分子量鎖延長剤) また、このような反応の際には、必要に応じて2個以上の活性水素原子を有する低分子量鎖延長剤を使用することができる。このような低分子量鎖延長剤としては、分子量が400以下のものが好ましく、特に300以下のものが好ましい。また、前記低分子量鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の低分子量ポリアミンを挙げることができる。このような低分子量鎖延長剤としては、1種を単独で用いても、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。

(アニオン性基の中和) 前記(c)アニオン性基と2個以上の活性水素とを有する化合物に由来するアニオン性基の中和は、イソシアネート基末端プレポリマーの調整と同時であってもよく、調整前であっても調整後であってもよい。このような中和は、適宜公知の方法を用いて行うことができ、このような中和に用いる化合物としては、特に制限されず、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミン、N,N−ジエチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸ナトリウム;アンモニア等が挙げられる。これらの中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン等の第3級アミン類が特に好ましい。

前記アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物の水への乳化分散方法に特に制限はなく、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー等の乳化分散機器を用いた方法を挙げることができる。また、前記アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物を水に乳化分散させる際には、該プレポリマー中和物を、特に乳化剤を用いずに5〜40℃の温度範囲で自己乳化により水に乳化分散させて、イソシアネート基と水との反応を極抑えることが好ましい。乳化剤を用いる場合は、難燃性ときわつきが低下する傾向がある。

さらに、このように乳化分散させる際には、必要に応じて、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイル等の反応制御剤を添加することができる。

前記アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物の鎖伸長反応は、前記アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物に、前記(d)アミノ基および/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物を添加するか、あるいは、前記(d)アミノ基および/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物に、前記アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物を添加することにより行うことができる。このような鎖伸長反応は、反応温度20〜40℃で行うことが好ましく。通常は30〜120分間で完結する。

前記アニオン性基を有するポリウレタン樹脂の製造方法においては、前記乳化分散および前記鎖伸長反応は同時であってもよく、前記アニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめた後に鎖伸長せしめても、鎖伸長せしめた後に乳化分散せしめてもよい。

このような水性ポリウレタン樹脂は、通常、樹脂の乳化分散物として得られ、市場に流通している。本発明に係る水性ポリウレタン樹脂は、このように水に乳化分散させた状態で用いることが好ましく、その濃度としては、特に制限されないが、本発明に係るコーティング剤を均一な状態で容易に得ることができる傾向にあり、また、難燃性シート材料の性能を考慮すると、15〜60質量%であることが好ましい。

化合物(D) 本発明の車両シート用難燃性コーティング剤には、難燃性シート材料が燃焼した際の冷却による難燃性の向上とコストの観点から、(D)金属水酸化物(以下、化合物(D)と略す)を併用することが好ましい。この化合物(D)は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物(D)は、必要に応じて2種類以上組み合わされていてもよい。これらのなかでも、難燃性と供給の面から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、水酸化アルミニウムがより好ましい。化合物(D)は、難燃性とコーティング面の白化や発粉の観点から、平均粒径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがよりましい。また難燃性の観点から、水酸化アルミニウム中のSiO2は0.02%以下であることが好ましい。

化合物(A)および化合物(C)に加えて、化合物(D)を含む本発明の態様においては、化合物(A)と化合物(D)との比(A):(D)は、難燃性、風合い、発粉、難燃性被膜とシート材料との接着性などの点からは、質量比で、1:0.1〜10であることが好ましく、1:0.1〜7であることがより好ましく、1:0.1〜5であることが更により好ましい。また、{化合物(A)+化合物(D)}:化合物(C)の配合比{(A)+(D)}:(C)は、難燃性、風合い、発粉、難燃性被膜とシート材料との接着性などの点からは、質量比で、3:7〜9:1であることが好ましく、4:6〜9:1であることがより好ましく、5:5〜9:1であることが更により好ましい。

化合物(D)の配合量は、特に制限はないが、化合物(A)と化合物(B)と、化合物(D)との合計に対して80質量%未満であることが好ましく、70質量%未満であることがより好ましい。

他方、化合物(D)の配合量が化合物(A)と、化合物(B)と、化合物(D)との合計に対して80質量%以上である場合、難燃性の低下、発粉、難燃性被膜とシート材料との接着性の低下等の傾向がある。

(化合物(A)〜化合物(D)相互間の好ましい量比) 化合物(B)および/又は化合物(D)を含む本発明の車両シート用難燃性コーティング剤の態様においては、「(A):{(B)+(D)}が、質量比で、1:0.1〜15であることが好ましく、1:0.1〜10であることがより好ましく、1:0.1〜7であることが更により好ましく、1:0.1〜5であることが更により一層好ましい。この範囲外である場合、良好に性能のバランスをとることが困難になる傾向がある。

また、この態様においては、化合物(A)と、化合物(B)と、化合物(D)との合計と、化合物(C)との配合比{(A)+(B)+(D)}:(C)が、質量比で、1:9〜9.5:0.5であることが好ましく、3:7〜9:1であることがより好ましく、4:6〜9:1であることが更により好ましく、5:5〜9:1であることが更により一層好ましい。化合物(A)と化合物(B)と化合物(D)との合計が、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)と化合物(D)との合計に対する比で30質量%未満(すなわち{(A)+(B)+(D)}/{(A)+(B)+(C)+(D)}<0.30)である場合、難燃性が低下する傾向にある。他方、この比{(A)+(B)+(D)}/{(A)+(B)+(C)+(D)}>0.9である場合、コーティング剤の製品化が困難になる傾向、風合いの硬化や発粉発生の傾向、難燃性被膜とシート材料との接着性が低下し、充分な生地強度が得られない傾向等がある。

(溶媒) 本発明の車両シート用難燃性コーティング剤においては、前記化合物(A)と化合物(C)(必要に応じて、更に化合物(B)および/又は化合物(D))とを混合する際に、溶媒として水を使用することが好ましい。水としては、イオン交換水又は蒸留水を好適に用いることができる。

また、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤には、溶媒として有機溶剤を併用することができる。このような有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール等のグリコール類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等が挙げられる。キワツキ、コスト、危険物、堅牢度、粘度、裏抜けの観点から、このような有機溶剤は、水に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。

(pH調整剤) 本発明の車両シート用難燃性コーティング剤においては、pH調整剤として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ、アンモニア、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸等を使用することができる。

(増粘剤) 本発明においては、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤の粘度と粘性を調整し、車両シート材料に対する塗工性を調整する観点から、増粘剤を使用することが好ましい。

このような増粘剤としては、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、プルラン等の天然の水溶性有機高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成の水溶性有機高分子;ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂、アルカリ増粘型アクリル樹脂等の合成の水溶性有機高分子等が挙げられる。

これらの増粘剤は1種を単独で又は、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。

これらの増粘剤中でも、塗工性の観点から、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂、アルカリ増粘型アクリル樹脂を好適に用いることができる。

ウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーを挙げることができる。このようなポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーとしては、市販品を使用することができ、例えば、アデカノールUH−420、アデカノールUH−450、アデカノールUH−540、アデカノールUH−752(以上(株)ADEKA製)、SNシックナー601、SNシックナー612、SNシックナー621N、SNシックナー623N(以上サンノプコ(株)製)、レオレート244、レオレート278、レオレート300(以上エレメンティス・ジャパン(株)製)、DKシックナーSCT−275(第一工業製薬(株)製)等を挙げることができる。

(アルカリ増粘型アクリル樹脂) アルカリ増粘型アクリル樹脂としては、カルボキシル基含有モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むモノマー組成物の重合物であることが好ましい。

このようなアルカリ増粘型アクリル樹脂のなかでも、カルボキシル基含有モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むモノマー組成物を、必要により重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、架橋剤等の存在下に、乳化重合して得られたものであることが好ましい。

アルカリ増粘型アクリル樹脂の構成成分であるカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、アトロパ酸等のモノカルボン酸系モノマー;イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メサコン酸等のジカルボン酸系モノマーおよびこれらの酸無水物;さらにジカルボン酸モノアルキルエステル系モノマー等が挙げられる。これらの中でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にメタクリル酸が好ましい。

(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、フェニル基を有していてもよい炭素数が1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、好ましくは炭素数が1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーである。

本発明にかかる、前記アルカリ増粘型アクリル樹脂には、その構成成分として、カルボキシル基含有モノマーおよび(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー以外に、これらと共重合可能なモノマーを使用することができる。このような共重合可能なモノマーとしては、例えば、カルボン酸ビニル系モノマー、スチレン系モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、シアノ基含有モノマーを挙げることができる。

カルボン酸ビニル系モノマーとしては、例えば、炭素数が1〜21のアルキル基やフェニル基を有するカルボン酸ビニルが挙げられ、好ましくは酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルである。

スチレン系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレンが挙げられ、好ましくはスチレンである。

ヒドロキシル基含有モノマーとしては、炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数が2〜8のポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。

アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜4のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜3のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1〜4のN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。シアノ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル等が挙げられる。なお前記において(メタ)アクリルとはアクリルとメタクリルの両方を意味する。

(重合開始剤) アルカリ増粘型アクリル樹脂の製造時に使用可能な重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、レドックス系開始剤(過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸アンモニウム−酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット等)、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシー2−メチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、水溶性アゾ系開始剤等のラジカル供与剤が例示される。また、紫外線、電子線、放射線等による光重合によって、ラジカルを発生させてもよく、この場合、光増感剤等を使用してもよい。

(界面活性剤) アルカリ増粘型アクリル樹脂の製造時に使用可能な界面活性剤としては、後述する公知の非イオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤の少なくとも一種を使用することができる。

(連鎖移動剤) アルカリ増粘型アクリル樹脂の製造時に使用可能な連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルルメルカプタン、t−ドデシルルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のメルカプタン類、テトラエチルチウラニウムスルフィド、ペンタフェニルエタン、ターピノーレン、α-メチルスチレンダイマー等の通常の乳化重合で使用可能なものを、単独もしくは、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。アルカリ増粘型アクリル樹脂の製造時に使用可能な架橋剤としては、ラジカル重合性の二重結合を2つ以上持つ化合物であれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられ、必要に応じて使用できる。

その他、pH緩衝剤、キレート剤等を、重合時に使用してもよく、pH緩衝剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が例示でき、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロトリ酢酸ナトリウム等が例示できる。

本発明に係るアルカリ増粘型アクリル樹脂は、市販品を使用することができ、例えば以下のものが挙げられる。

ニカゾールVT−253A(日本カーバイド工業(株)製)、アロンA−20P、アロンA−7150、アロンA−7070、アロンB−300、アロンB−300K、アロンB−500、アロンA−20L(以上東亞合成(株)製)、ジュリマーAC−10LHP、ジュリマーAC−10SHP、レオジック250H、レオジック835H、ジュンロンPW−110、ジュンロンPW−150(以上日本純薬(株)製)、プライマルASE−60、プライマルTT−615、プライマルRM−5(以上ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製)、SNシックナーA−818、SNシックナーA−850、SNシックナー902(以上サンノプコ(株)製)、レオレート430(エレメンティス・ジャパン(株)製)、オステッカーV−500(日華化学(株)製)、バナゾールK(新中村化学工業(株)製)、ボンコートHV−E(DIC社製)等を挙げることができる。

増粘剤の使用量は、車両シート用難燃性コーティング剤に対して0.1〜2.0質量%であることが好ましく、0.3〜1.5質量%であることがより好ましい。

0.1質量%未満である場合、車両シート用難燃性コーティング剤の保存安定性の低下の傾向、塗布量過多や裏抜けのため均一な加工が困難になる傾向がある。2.0質量%を超える場合、コーティング時の展開性が不良となり、均一な加工が困難になる傾向や燃焼性、キワツキの抑制効果が低下する傾向がある。

また、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明に使用する以外の窒素含有化合物、リン系化合物、増粘剤、熱可塑性樹脂や消臭剤、発泡剤等を配合することができる。

また本発明の効果を損なわない範囲で、ワックス成分を併用する事も可能である。ワックス成分を併用する事により、縫い針の生地もしくは織網糸に対する平滑性が付与でき、可縫製あるいは地糸切れ性が向上する。また、撥水性の効果が得られ、キワツキ防止効果が向上する傾向もある。その配合量としては車両シート用難燃性コーティング剤に対して、0.1〜3.0質量%であることが好ましい。

また、本発明において、前記化合物(C)としてカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するポリウレタン樹脂を用いた場合には、本発明の効果を損なわない範囲で、得られる難燃性車両シート材料に加工適性を付与することを目的として、前記カルボキシ基又はカルボキシレート基と反応する架橋剤をさらに添加することができる。このような架橋剤としては、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ブロックイソシアネート系架橋剤、水分散イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤等が挙げられる。

前記架橋剤としては、1種を単独で用いても、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの架橋剤の中でも難燃性車両シート材料のキワツキ、強度および堅牢度の観点から、カルボジイミド系架橋剤が好ましく、その配合量としては、前記水性ポリウレタン樹脂に対して、0.5〜10質量%であることが好ましい。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を得る方法としては、特に制限されず、適宜公知の方法を用いることができ、(A)および(C)(必要に応じて、更に化合物(B)および/又は化合物(D))の各成分を配合する順番や方法は適宜変更することができるが、通常は、化合物(A)と化合物(C)(必要に応じて、更に化合物(B)および/又は化合物(D))を含む水乳化分散液とを配合、撹拌混合し、アルカリ増粘型アクリル樹脂を含む水乳化分散液、pH調整剤、溶媒にて粘度、pH、固形分等を調整して難燃性コーティング剤を得る方法が挙げられる。

(化合物(A)および(C)の混合方法) 前記化合物(A)および(C)(必要に応じて、更に化合物(B)および/又は化合物(D))の混合物を撹拌混合する方法としては、従来公知の撹拌装置や乳化分散装置を使用することができる。従来公知の撹拌装置や乳化分散装置としては、特に制限はなく、プロペラ、ニーダー、ローラー、コロイドミル、ビーズミル、マイルダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、ホモディスパー、ナノマイザー、アルチマイザー、スターバースト等の撹拌装置や乳化分散機を挙げることができる。これらの装置は1種類を使用しても良く、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。

化合物(A)と化合物(B)と化合物(D)とはそれらの水乳化分散液を使用する事もできる。

化合物(A)、化合物(B)、化合物(D)を乳化分散する方法としては、前記と同様の従来公知の撹拌装置や乳化分散装置を使用することができる。

化合物(A)、化合物(B)、化合物(D)を乳化分散させる際には、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤を使用することにより、化合物(A)、化合物(B)、化合物(D)とを安定に微粒子化乳化分散することができ、コーティング面での発粉を防止でき、また化合物(C)を含む水乳化分散液と混合しやすくなり、難燃性コーティング剤を製造しやすくなる。

このような界面活性剤としては特に限定されず、公知の非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤および両性界面活性剤の少なくとも一種を使用することができる。

非イオン界面活性剤としては、例えば、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24のアルコール類又はアルケノール類のアルキレンオキサイド付加物、多環フェノール類のアルキレンオキサイド付加物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜44の脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜44の脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24の脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物等のノニオン界面活性剤、多価アルコールと直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24の脂肪酸とアルキレンオキサイドとの反応物、油脂類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのノニオン界面活性剤は、1種を単独で用いても良いし、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いても良い。

アニオン界面活性剤としては、例えば、前記非イオン界面活性剤の硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、カルボン酸塩およびスルホコハク酸型アニオン界面活性剤、高級アルコールの硫酸エステル塩およびリン酸エステル塩、油脂類のスルホン化物、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物等が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤は、1種を単独で用いても良いし、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いても良い。 両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤、グリシン型界面活性剤などが挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種を単独で用いても良いし、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、加熱分解することでコーティング面に残留しにくくキワツキを低下させないという観点から、アミンオキシド型界面活性剤であることが好ましい。

この中でも、乳化分散性と安定性の観点から、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24のアルコール類のアルキレンオキサイド付加物、多環フェノール類のアルキレンオキサイド付加物およびそれらのアニオン化物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。

多環フェノール類としてはフェノール、4−クミルフェノール、4−フェニルフェノール、または2−ナフトールの、(3〜8モル)スチレン付加物、(3〜8モル)α−メチルスチレン付加物、または(3〜8モル)ベンジルクロライド反応物が好ましい。

アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドであることが好ましい。付加モル数としては、10〜50モルが好ましく、15〜40モルがより好ましく、18〜35モルがさらにより好ましい。

(界面活性剤の量) 本発明の車両シート用難燃性コーティング剤中の界面活性剤量は、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)と化合物(D)との合計100質量部に対して0.1〜3質量部であることが好ましい。0.1質量部未満である場合車両シート用難燃性コーティング剤の製品安定性が低下する傾向や難燃性シート材料の難燃性が低下する傾向があり、3質量部を超える場合難燃性シート材料のキワツキの抑制効果、堅牢度、難燃性が低下する傾向がある。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤は、平均粒子径d(50)が0.5〜30μmであり、最大粒子径d(max)が200μm以下であることが好ましく、平均粒子径d(50)が0.5〜20μmであり、最大粒子径d(max)が100μm以下であることがより好ましい。

平均粒子径d(50)が30μmを超える場合、あるいは最大粒子径d(max)が200μmを超える場合、車両シート用難燃性コーティング剤の製品安定性が低下する傾向や、難燃性車両シート材料の難燃性が低下する傾向や、難燃性車両シート材料の表面に(A)成分(場合によっては、更に(B)成分および/又は(D)成分)が発粉し外観が損なわれる傾向がある。

平均粒子径d(50)が0.5μm未満の場合は、粒径を小さくするために多大の時間とコストが必要となるため、工業的に好ましくない傾向がある。

(粒子径の測定方法) 粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算体積粒度分布を測定し、積算体積が50%となる粒径(メジアン粒径)を平均粒子径d(50)とし、積算体積が100%となる粒径(最大粒径)を最大粒子径d(max)とすることで求めることができる。ここに、粒度分布計は「HORIBA レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−920」を使用する。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤は、pHを6.0〜10.0に調整することが好ましく、7.0〜9.0に調整することがより好ましい。pHが6.0未満の場合、車両シート用難燃性コーティング剤の粘度低下や製品安定性の低下、車両シート材料に対する車両シート用難燃性コーティング剤の塗布量過多、裏抜けの傾向がある。10.0を超える場合、均一塗工性の低下の傾向がある。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤は、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)と化合物(D)との合計が20〜60質量%であることが好ましい。合計が20質量%未満である場合、車両シート材料に対する塗布量が不足し難燃性が低下する傾向や乾燥に長時間を要する傾向がある。60%を超える場合には、塗布量過多となり、それ以上の難燃性向上が少なくなることに加え、各種堅牢度が低下する傾向にある。

(車両シート用難燃性コーティング剤の粘度) 本発明の車両シート用難燃性コーティング剤の粘度は、3,000〜30,000mPa・sであることが好ましく、8,000〜20,000mPa・sであることがより好ましい。粘度が3,000mPa・s未満である場合、裏抜けを起こす傾向があり、粘度が30,000mPa・sを超える場合はかすれが発生する傾向がある。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を車両シートシート材料に発泡コートする場合は、車両シート用難燃性コーティング剤の粘度は500〜10,000mPa・sであることがより好ましい。500mPa・s未満では車両シート用難燃性コーティング剤の製品安定性が不良となる傾向があり、10,000mPa・sを超える場合は発泡が不良となり良好な発泡コーティングが実施できない傾向がある。

発泡コーティングを行う場合は、N,N−ジメチルドデシルアミンオキシドやドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等の発泡剤を適宜併用することができる。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤の粘度(単位:mPa・s)は、内径50mmのガラス瓶に車両シート用難燃性コーティング剤を200ml入れ、B型粘度計(高粘度タイプ;(株)トキメック、BH型粘度計、ローターNO.5、20rpm、測定温度20℃)を用いて測定した値である。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤は、粘度だけでなく粘性を特定の範囲とすることで、良好な塗工性を得ることができる。粘性はPVI値を測定することで求めることができる。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤は、PVI値が0.1〜0.35であることが好ましく、0.15〜0.30であることが更に好ましく、0.15〜0.25であることがより好ましい。PVI値が0.10未満の場合、かすれや充分な塗布量を与えることができにくいといった傾向があり、0.35を超える場合、塗布量過多や裏抜けの傾向がある。

PVI値とは、捺染粘性指数のことであり、車両シート用難燃性コーティング剤を前記の粘度測定条件で、回転数20rpmと2rpmで測定し、下記式により計算される値である。

PVI値=回転数20rpmでの測定値÷回転数2rpmでの測定値

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤は、キワツキ抑制の観点から、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を、105℃×3時間加熱することによって得られる本発明の車両シート用難燃性コーティング剤の不揮発物は非水溶性であることが好ましい。非水溶性とは、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤の不揮発物が固形の場合は粉末とした後、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤の不揮発物10gを20℃のイオン交換水100gの内に入れ、20℃±0.5℃で1分間強く振り混ぜた場合の、イオン交換水100gに対する本発明の車両シート用難燃性コーティング剤の不揮発物の溶解する度合い(g)が1.0g以下であることをさす。ここに「溶解する」とは、透明な溶液を与えるか、または任意の割合で透明に混和することを言う。

(難燃性車両シート材料の製造方法) 本発明の難燃性車両シート材料の製造方法は、特に制限されない。好適な製造方法としては、例えば、前記本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を、車両シート材料の一方の面に処理した後に乾燥して、車両シート材料の処理面および/又は車両シート材料中に、前記の化合物(A)と化合物(C)(必要に応じて、化合物(B)および/又は化合物(D))とを含む難燃性被膜を形成させる方法を使用することができる。

(車両シート材料への処理) 本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を車両シート材料に処理する場合、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤をそのまま使用してもよいし、適宜希釈してもよい。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を車両シート材料に処理する方法としては、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、ロールコーター、スリットコーター、コンマコーター、エアナイフコーター、フローコーター、刷毛、発泡等のコーティング法を挙げることができる。

本発明に係る車両シート用難燃性シート材料においては、車両シート用難燃性コーティング剤を車両シート材料に処理した後にラミネート加工やボンディング加工を行うこともできる。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を車両シート材料の一方の面に処理した後に乾燥させる方法としては、特に制限されず、例えば、熱風を利用した乾式乾燥;ハイテンパルチャースチーマー(H.T.S.)、ハイプレッシャースチーマー(H.P.S.)を用いた湿式乾燥;マイクロ波照射式乾燥機等を用いることができる。これらの乾燥方法は、1種を単独で用いることができ、又は、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、乾燥温度は80℃〜180℃とし、乾燥時間は1分〜30分が好ましい。特に乾燥温度100℃〜160℃、乾燥時間1分〜10分とする事が好ましい。このような乾燥をすることにより、車両シート材料の処理面および/又は車両シート材料中に、難燃性被膜を形成させることができる。

車両シート材料に対する車両シート用難燃性コーティング剤の付与量(DRY)としては、前記の化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)と化合物(D)との合計が、20〜100g/m2であることが好ましく、40〜80g/m2であることがより好ましい。

付与量(DRY)が20g/m2未満である場合難燃性が低下する傾向があり、100g/m2を越える場合さらなる難燃性の向上は少ない傾向にある。

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を処理することができる車両シート材料としては、特に制限されず、例えば、綿、麻、麻、絹、羊毛等の天然繊維、あるいはレーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、これらの複合繊維、混紡繊維等からなる織布、編布、不織布を挙げることができる。中でも、難燃性とキワツキの抑制効果の観点から、目付が50g/m2以上の織物又は不織布であることが好ましく、織物の場合100〜400g/m2、不織布の場合50〜200g/m2であることがより好ましい。

このような車両シート材料としては、染色処理やソーピング処理が施されたものであってもよい。

(量比) 本発明においては、以下の量比の範囲が好ましい。 化合物(A)(B)(C)(D)において、(A):(C)は1:9〜9.5:0.5が好ましく、3:7〜9:1がより好ましい。 {(A)+(B)+(D)}:(C)は、1:9〜9.5:0.5が好ましく、3:7〜9:1がより好ましい。 (A):{(B)+(D)}は、1:0.1〜15が好ましく、1:0.1〜10がより好ましい。 (A):(B)は、1:0.1〜10が好ましく、1:0.1〜7がより好ましい。 (A):(D)は、1:0.1〜10が好ましく、1:0.1〜7がより好ましい。 {(A)+(B)}:(C)は、3:7〜9:1が好ましく、4:6〜9:1がより好ましい。 {(A)+(D)}:(C)は、3:7〜9:1が好ましく、4:6〜9:1がより好ましい。

[実施例] 以下に実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

製造例1 レゾルシノール ジ−2,6−キシレニルホスフェート45質量部、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物(以下TSP20Eと略す)5質量部および水50質量部をビーズミル処理して、化合物(B)の乳化分散液(平均粒径0.5μm)を得た。ここに、ビーズミル処理は、ウィリー・エ・バッコーフェン社 DYNO−MILL MULTI LAB型(メカニカルシール方式)を使用した。

製造例2 10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド45質量部、TSP20Eのクロルスルホン酸反応物の水酸化ナトリウム中和物(以下TSP20ESと略す)3質量部および水52質量部をビーズミル処理して、化合物(B)の乳化分散液(平均粒径0.5μm)を得た。

製造例3 レゾルシノールジ−2,6−キシレニルホスフェートに代えてビフェニルジフェニルホスフェートを使用し、ビーズミル処理に代えてディスパー処理を行った以外は、製造例1と同様に操作を行って、化合物(B)の乳化分散液(平均粒径0.3μm)を得た。

製造例4 ビフェニルジフェニルホスフェートに代えてトリキシレニルホスフェートを使用した以外は、製造例3と同様に操作を行って、化合物(B)の乳化分散液(平均粒径0.3μm)を得た。

合成例1 (ポリカーボネート系ウレタン樹脂;アニオン性基を有するポリウレタン樹脂) 攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた四つ口フラスコに、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量2000)97.5g、ジメチロールブタン酸7.2g、1,4−ブタンジオール1.5g、ジブチルチンジラウレート0.005gおよびメチルエチルケトン61.0gを採り、均一混合後、イソホロンジイソシアネート36.1gを加え、80℃で180分間反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が2.9%のウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液をトリエチルアミン4.8gで中和してから別容器に移し、30℃以下で水362gを徐々に加えながら、ディスパー羽根を用いて乳化分散させた。これにエチレンジアミンの20質量%水溶液14.5gを添加後、90分間反応せしめた。次いで、得られたポリウレタン樹脂分散液を減圧下に50℃で脱溶剤を行うことにより、ポリウレタン樹脂の不揮発分30質量%、のポリウレタン樹脂水乳化分散液を得た。

合成例2 (ポリカーボネート系ウレタン樹脂;非イオン強制乳化型) 合成例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量2000)195g、1,4−ブタンジオール1.5g、ジブチルチンジラウレート0.005gおよびメチルエチルケトン61.0gを採り、均一混合後、イソホロンジイソシアネート36.1gを加え、80℃で60分間反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が1.8%のウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を別容器に移し、30℃以下で、TSP20E19.6gを仕込み、均一後水501gを徐々に加えながら、ディスパー羽根を用いて乳化分散させた。これにエチレンジアミンの20質量%水溶液14.5gを添加後、90分間反応せしめた。次いで、得られたポリウレタン樹脂分散液を減圧下に50℃で脱溶剤を行うことにより、不揮発分32.5質量%(ポリウレタン樹脂の不揮発分30質量%)のポリウレタン樹脂水乳化分散液を得た。

実施例1 (A)成分としてメラミンシアヌレート(商品名MC−6000、平均粒径2μm、日産化学工業社製)120質量部、(B)成分として製造例1の乳化分散物266.7質量部(レゾルシノールジ−2,6−キシレニルホスフェートとして120質量部)、(C)成分として合成例1で得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂水乳化分散液200質量部(ポリウレタン樹脂として60質量部)、増粘剤としてネオステッカーV−500(日華化学(株)製)17.5質量部(アルカリ増粘型アクリル樹脂として7質量部)を混合釜に入れ混合撹拌して均一とし、水と25%アンモニア水を加えて、車両シート用難燃性コーティング剤中に化合物(A)〜(D)の合計が30質量%、pHが8.5であるように調整して車両シート用難燃性コーティング剤を得た。この車両シート用難燃性コーティング剤の平均粒子径は2μm、粘度は10000mPa・s、PVI値は0.2であった。

ついで、上記コーティング剤を目付250g/m2のポリエステル平織物(染色、ソーピング済み)の一方の面に、付与量(DRY)が50±5g/m2となるようにナイフコーターを用いて処理し、150℃で3分間乾燥して、難燃性車両シート材料を作製した。なお付与量は(難燃性車両シート材料の質量−車両シート材料の質量)÷生地面積より計算して求めた。

得られた難燃性車両シート材料について、遅燃性(難燃性)、耐熱水キワツキ性、縫目疲労防止性の評価を行なった結果を表1に示す。

実施例2〜22および24、比較例1、および3〜4 (A)成分、(B)成分、(C)成分、化合物(D)を表1に示す組成に変えた以外は、実施例1と同様に操作を行って、車両シート用難燃性コーティング剤中に化合物(A)〜(D)の合計が30質量%、pHが8.5であるように調整して車両シート用難燃性コーティング剤を得た。なお、いずれの車両シート用難燃性コーティング剤も、粘度10000mPa・s、PVI値0.2であった。平均粒径は表1〜2に示す。

ついで、得られたコーティング剤を使用して実施例1と同様に操作を行って、実施例2〜22および24、比較例1、および3〜4の難燃性車両シート材料を得た。

実施例23 増粘剤を使用しなかった以外は、実施例19と同様に操作を行って、実施例23の難燃性車両シート材料を得た。 なお、ここで得られた車両シート用難燃性コーティング剤の粘度は300mPa・s、PVI値は測定不能であった。 これらの難燃性車両シート材料について、遅燃性(難燃性)、耐熱水キワツキ性、縫目疲労防止性の評価を行なった結果を表2に示す。実施例23は、裏抜けがあり意匠性が低下していた。

これらの難燃性車両シート材料について、遅燃性、耐熱水キワツキ性、縫目疲労防止性の評価を行なった結果を表1〜2に示す。

[評価方法] 1.遅燃性(難燃性)の測定方法 FMVSS−302(米国自動車安全基準)に従い燃焼速度を10枚測定した。10枚の燃焼速度の平均値(算術平均値)を、以下の基準に従い判定した。

A:燃焼速度の平均値が50mm/分より遅い、もしくは燃焼距離が50mm以下かつ燃焼時間が60秒以内 標線前自消の場合は燃焼速度が測定できないので、A記号の右に、その回数を示した。 B:燃焼速度の平均値が50mm/分より速い C;燃焼速度の平均値が100mm/分より速い

2.耐熱水キワツキの評価方法 難燃性車両シート材料のコーティング処理を行った面を下にして厚さ10mmの発泡ウレタンの上に置く。その上(難燃性車両シート材料のコーティング処理を行った面と反対の面)に沸騰した蒸留水5ccを滴下する。16時間室温にて放置後、以下の基準に従って判定した。

S:際がわからず、濡れた部分の色調変化がない。 A:際および濡れた部分の色調変化が僅かに確認できる。 B:際が明確に確認でき、濡れた部分の色調が濡れなかった部分と異なっている。 C:際に発粉が発生している。

3.風合いの評価方法 JIS L 1096 A法(45°カンチレバー法)に従った。以下の基準に従い判定した。

H ; 70mm以上である場合、硬いと判断する。 S ; 70mm未満、40mm以上である場合、柔らかいと判断する。 SS;40mm未満である場合、非常に柔らかいと判断する。

4.ヌメリ感 難燃性車両シート材料のコーティング処理を行った面に直径5mmになるように熱水(90℃)を落とし、以下の基準に従い触感にてヌメリ感を調べる。

S:ヌメリ感無く、コーティング面に水滴浸透せず A:ヌメリ感無し B:ヌメリ感が少し有る C:ヌメリ感が強い

5.縫目疲労防止性 難燃性車両シート材料から、タテ方向10cm×ヨコ方向10cmの試験布を2枚採取する。2枚の試験布のコーティングされていない面を合わせて重ね、タテ方向の1辺の端から1cmの位置を5mmピッチでミシン掛けし、ヨコ方向に試験する試験片を作製する。試験片を開き、縫目疲労試験機(山口科学産業社製)に、試験片の一方を取り付けて、他の一方に荷重3kgfをかけ、2500回縫い目疲労試験を繰り返す。その後荷重をかけた状態で、縫い目(針穴)の大きさを、穴10個について0.1mm単位で測定する。

同様にタテ方向についても試験を行い、タテ方向とヨコ方向の値20個の平均をとる。以下の基準に従い判定した。

A:縫い目(針穴)の大きさの平均が1.9mm以下 B:縫い目(針穴)の大きさの平均が1.9mmを超えて、2.2mm以下 C:縫い目(針穴)の大きさの平均が2.2mmを超える

6.湿潤縫目疲労防止性 上記の「5.縫目疲労防止性」で調製した試験片を、45±5℃のイオン交換水200mlに浸して湿潤したのち、ピックアップ100%に絞った以外は、縫目疲労防止性と同様に試験を行い、同様の基準で判定した。

7.粘度 内径50mmのガラス瓶に車両用難燃性コーティング剤を200ml入れ、B型粘度計(高粘度タイプ;(株)トキメック、BH型粘度計、ローターNO.5、20rpm、測定温度20℃)を用いて測定した。

*1:商品名FRCROS486、シランカップリング剤で表面処理したポリリン酸アンモニウム、平均粒径18μm、ブーデンハイム社製 *2:商品名アロンA−104、東亞合成株式会社製、固形分40%のため表中には固形分の値を記載 *3:商品名B103、平均粒径7μm、日本軽金属株式会社製 *4:ネオステッカーV−500(日華化学(株)製) *5:A+B+Dの合計に対するDの量(質量%) *6:A〜Dの合計100質量部に対する活性剤量(質量部)

実施例25 (A)成分としてメラミンシアヌレート(商品名MC−6000、平均粒径2μm、日産化学工業社製)340質量部、(C)成分として合成例1で得られたポリカーボネート系ウレタン樹脂水乳化分散液200質量部(ポリウレタン樹脂として60質量部)、増粘剤としてネオステッカーV−500(日華化学(株)製)17質量部(アルカリ増粘型アクリル樹脂として6質量部)を混合釜に入れ撹拌して均一とし、25%アンモニア水と水を加えて、車両シート用難燃性コーティング剤中に化合物(A)〜(D)の合計が40質量%、pHが8.5であるように調整して、車両シート用難燃性コーティング剤を得た。この車両シート用難燃性コーティング剤の平均粒径は2μm、粘度は10000mPa・s、PVI値は0.2であった。 ついで、上記コーティング剤を目付200g/m2のポリエステル平織物(染色、ソーピング済み)の一方の面に、付与量(DRY)が65±5g/m2となるようにナイフコーターを用いて処理し、150℃で3分間乾燥して、難燃性車両シート材料を作製した。なお付与量は(難燃性車両シート材料の質量−車両シート材料の質量)÷生地面積より計算して求めた。 得られた難燃性車両シート材料について、遅燃性(難燃性)、耐熱水キワツキ性、縫目疲労防止性の評価を行なった結果を表3に示す。

実施例26〜35、比較例5〜8 (A)成分、(B)成分、(C)成分、化合物(D)を表1に示す組成に変えた以外は、実施例1と同様に操作を行って、車両シート用難燃性コーティング剤中に化合物(A)〜(D)の合計が40質量%、pHが8.5であるように調整して車両シート用難燃性コーティング剤を得た。なお、いずれの車両シート用難燃性コーティング剤も、粘度10000mPa・s、PVI値0.2であった。平均粒径は表3〜4に示す。 ついで、得られたコーティング剤を使用して実施例1と同様に操作を行って、実施例26〜35、比較例5〜8の難燃性車両シート材料を得た。 これらの難燃性車両シート材料について、遅燃性(難燃性)、耐熱水キワツキ性、縫目疲労防止性の評価を行なった結果を表3〜4に示す。

上述した実施例と比較例に記載したように、特定の窒素含有化合物と特定のリン系化合物とを併用することにより、(従来技術では不可能であったところの)APPと同等以上の十分な難燃性を発現し、且つ、熱水に対するキワツキの発生が抑制されるという、良好な結果が得られた。また、縫い目疲労に対しても何ら悪影響のないことが確認された。

また、本発明の車両シート用難燃性コーティング剤においては、一般的に高価であるリン系化合物の使用量を低減することができ、性能を低下することなく、コストを低減することができるため、使用量を増やして難燃性を向上することもできる。また、リン系化合物の使用量を低減できるため、リンによる排水問題も低減することができる。

加えて、本発明においては、リン系化合物を使い分けることにより、任意の風合いを得ることができる。

上記した各実施例・比較例におけるA〜Dの各の成分の量比を、下記表5および表6にまとめて示す。 A:(B+D) (A+B+D):C A:C A:D (A+D):C

本発明の車両シート用難燃性コーティング剤を使用することによって、米国自動車安全基準で定める「FMVSS−302」法あるいは、日本工業規格で定める「JIS D1201」に適合する十分な遅燃性を有し、熱水に対するキワツキの発生が抑制されている、高品位な難燃性車両シート材料を得ることができるため有用である。

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