【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂の架橋および硬化樹脂への難燃性の付与のための活性水素原子含有リン化合物に関するものであり、特に、活性水素原子およびエポキシ基間での付加反応を介して硬化剤と二つ以上の官能基を有するエポキシ樹脂とを反応させることによって調製される硬化難燃性エポキシ樹脂に関するものである。 【0002】 【従来の技術】エポキシ樹脂は一般的に、優れた湿度特性、溶媒および化学耐性、靭性、硬化時の低い収縮性、 優れた電気的および機械的耐性、ならびに、様々な基板に対する優れた接着性を持つ。 またエポキシ樹脂を多様に配合することによって工業的に広く応用することができ、例えば半導体用の表面コーティング、接着剤、塗装材料、注入材料、複合材料、ラミネート、封入材料等、 また電気装置用の絶縁材料等となる。 o−クレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシ(CNE)は超小形電子機器のカプセル封入で用いられる典型的な樹脂である。 エポキシ主鎖を改変してエポキシ樹脂の熱特性を増強するための数々のアプローチがこれまでに報告されている。 酸化アンチモンと結合させた芳香族臭素化合物は、難燃性エポキシ樹脂に広く用いられている。 テトラブロモビスフェノールAは典型的な芳香族臭素化合物の例であり、難燃性エポキシ樹脂に用いられる。 下記反応式に示すように、過量のエポキシ樹脂はテトラブロモビスフェノールAと反応させると、両末端にエポキシ基を持つエポキシ樹脂が生成する。 【0003】 【化15】 【0004】式中、Epはエポキシ樹脂主鎖中の二価の基であり、mは1〜10の整数である。 該エポキシ樹脂は難燃性印刷回路板の製造に用いられ、これは該エポキシ樹脂をガラスファイバーに含浸させて、生じた複合材料を加熱してエポキシ樹脂を硬化させることによって製造される。 さらに該エポキシ樹脂は、超小形電子機器をカプセル封入することに用いることができ、該エポキシ樹脂を硬化剤と共に高温で硬化して難燃性の封入材料を形成することができる。 その典型的な例としては、米国特許第3040495号、第3058946号、第32 94742号、第3929908号、第3956403
号、第3974235号、第3989531号、第40
58507号、第4104257号、第4170711
号および第4647648号が挙げられる。 【0005】しかしながら、テトラブロモビスフェノールA含有エポキシ樹脂は難燃性を示すが、この系統の化合物が持つ大きな問題は燃焼中に例えばダイオキシンやベンゾフラン等の有毒で腐食性の煙を発生することである。 【0006】低分子量の難燃剤はエポキシ樹脂の機械特性を減少させ、さらにエポキシ樹脂中から気化してエポキシ樹脂の難燃性を減少させる場合もある。 【0007】近年の電子機器は、小型化および薄型化の傾向にあり、そのため大規模集積回路(LSIC)の集積規模も上昇しつづけている。 そのために、より大きいチップ、より微細なパターンおよびより高度なピンカウントの設計が要求され、それによりLSICは高温欠陥に対してより敏感になる。 広く行われている表面搭載技術(SMT)もまた、装置が高温に晒される要因である。 それゆえに、印刷回路板における高温信頼性、難燃性で、かつ環境にやさしいエポキシ樹脂の開発は、半導体産業において重要である。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点に鑑みなされたものであり、樹脂の架橋および硬化樹脂への難燃性の付与のための活性水素原子含有リン難燃性硬化剤を提供することである。 【0009】本発明の他の目的は、優れた熱安定性、優れた熱耐性および環境適合性を持ち、印刷回路板の製造や半導体封入用途に適した硬化エポキシ樹脂
用組成物を提供することである。 【0010】 【課題を解決するための手段】従って本発明の前記目的は、 【0011】 【課題を解決するための手段】 【化16】 【0012】[式中、mは1または2であり、m'は0 または1であり、pは0〜3の整数よりそれぞれ独立して選択され、かつm+p≦4の関係を満たし、Rは炭素数1〜4のアルキル基よりそれぞれ独立して選択され、
Xは−O−、−S−および−NH−からなる群よりそれぞれ独立して選択され、Qは結合手、−CH
2 −、−C (CH
3 ) 2 −、−O−、−S−または−SO 2 −であり、Aは水素原子、 【0013】 【化17】 【0014】からなる群よりそれぞれ独立して選択され、A'は水素原子、 【0015】 【化18】 【0016】(ここでR 1およびR 2は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18の置換アリール基、炭素数6〜18 のアリールメチレン基および炭素数6〜18の置換アリールメチレン基からなる群よりそれぞれ独立して選択され、Arは【0017】 【化19】 【0018】であり、ここでnは0〜5であり、Rは上記で定義された通りである)からなる群よりそれぞれ独立して選択され、AまたはA'のいずれかはすべて水素原子であり、A'がすべて水素原子の場合、Aの少なくとも一つは水素原子ではなく、Aがすべて水素原子の場合、A'の少なくとも一つは水素原子ではなく、Q'は【0019】 【化20】 【0020】(ここで
n'は1〜11であり、Zは−N H
2 、−NHRまたは−Rであり、oは1〜3であり、 o'は3〜10であり、R、Q、Xおよびpは上記で定義された通りである)であり、ここでQが結合手の場合、Q'は【0021】 【化21】 【0022】(ここで、R、X、Z、p、o、およびo'は上記で定義された通りである)であり、Yは【0023】 【化22】 【0024】(ここでrは0〜6である)である]からなる群より選択される式で示される化合物からなる、難燃性硬化エポキシ樹脂調整用リン含有硬化剤によって達成される。 【0025】さらに本発明は、前記式(a)で示される化合物からなる、前記硬化剤である。 【0026】さらに本発明は、すべてのA'は水素原子であり、Q'は【0027】 【化23】 【0028】である、前記硬化剤である。 【0029】さらに本発明は、Qは−CH
2 −または− C(CH
3 ) 2 −である、前記硬化剤である。 【0030】さらに本発明は、pは0である、前記硬化剤である。 【0031】さらに本発明は、Xは−O−または−NH −である、前記硬化剤である。 【0032】さらに本発明は、Rはメチルである、前記硬化剤である。 【0033】 【0034】 【0035】さらに本発明は、前記式(c)で示される化合物からなり、すべてのA'は水素原子である、前記硬化剤である。 【0036】さらに本発明は、前記式(d)で示される化合物からなり、すべてのA'は水素原子である、前記硬化剤である。 【0037】さらに本発明は、Xは−O−である、前記硬化剤である。 【0038】さらに本発明は、A'がすべて水素原子であり、Aのうち一つだけが水素原子ではない、前記硬化剤である。 【0039】さらに本発明は、Aは【0040】 【化24】 【0041】である、前記硬化剤である。 【0042】さらに本発明は、Aは【0043】 【化25】 【0044】である、前記硬化剤である。 【0045】さらに本発明は、nは0である、前記硬化剤である。 【0046】さらに本発明は、すべてのAは水素原子であり、Q'は【0047】 【化26】 【0048】である、前記硬化剤である。 【0049】さらに本発明は、pは0である、前記硬化剤である。 【0050】さらに本発明は、Xは−O−である、前記硬化剤である。 【0051】さらに本発明は、Rはメチルである、前記硬化剤である。 【0052】さらに本発明は、Zは−NH
2である、前記硬化剤である。 【0053】さらに本発明は、A'において、 【0054】 【化27】 【0055】(X'は水素原子またはハロゲン原子である)である、前記硬化剤である。 【0056】さらに本発明は、X'は水素原子である、 前記硬化剤である。 【0057】さらに本発明は、R1およびR2は水素原子である、前記硬化剤である。 【0058】 【0059】 【0060】さらに本発明は、前記式(c)で示される化合物からなり、すべてのAは水素原子である、前記硬化剤である。 【0061】さらに本発明は、前記式(d)で示される化合物からなり、すべてのAは水素原子である、前記硬化剤である。 【0062】さらに本発明は、Xは−O−である、前記硬化剤である。 【0063】さらに本発明は、Yは結合手である、前記硬化剤である。 【0064】さらに本発明は、すべてのA'のなかで一つのA'だけが水素原子ではない、前記硬化剤である。 【0065】さらに本発明は、A'は【0066】 【化28】 【0067】である、前記硬化剤である。 【0068】さらに本発明は、A'は【0069】 【化29】 【0070】である、前記硬化剤である。 【0071】さらに本発明は、nは0である、前記硬化剤である。 【0072】さらに本発明は、
エポキシ樹脂、および前<br>記硬化剤 を含有する硬化エポキシ樹脂用組成物である。 【0073】 【0074】 【0075】さらに本発明は、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS およびビフェノールからなる群より選択される二価エポキシ樹脂、フェノールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂もしくはクレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシである多価エポキシ樹脂、または該二価エポキシ樹脂および該多価エポキシ樹脂との混合物である、
硬化エポキシ樹脂用組成物である。 【0076】 【発明の実施の形態】 【0077】 【化30】 【0078】からなる群より選択される式で示される化合物からなる。 【0079】式中、mは1または2であり、m'は0または1であり、pは0〜3である。 【0080】Rは炭素数1〜4のアルキル基よりそれぞれ独立して選択され、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルである。 Xは−O−、−S−および−NH− からなる群よりそれぞれ独立して選択され、好ましくは−O−または−NH−であり、さらに好ましくは−O−
である。 【0081】Qは結合手、−CH
2 −、−C(CH 3 ) 2 −、−O−、−S−または−SO
2 −であり、好ましくは−CH 2 −または−C(CH 3 ) 2 −である。 【0082】Aは水素原子、 【0083】 【化31】 【0084】であり、A'は水素原子、 【0085】 【化32】 【0086】である。 ここでR 1およびR 2は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18の置換アリール基、炭素数6 〜18のアリールメチレン基または炭素数6〜18の置換アリールメチレン基であり、これらは任意にハロゲン化されていてもよい。 例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、
sec−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、
イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、イソウンデシル、ドデシル、イソドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、イソテトラデシル、ペンタデシル、イソペンタデシル、ヘキサデシル、イソヘキサデシル、ヘプタデシル、イソヘプタデシル、オクタデシル等であり、置換または非置換のフェニル、トリル、ビフェニリル、ナフチル、フェニルメチレン、トリルメチレン、ビフェニルメチレン、ナフチルメチレン等である。 好ましくは、水素原子、メチル、エチル、イソプロピル、ハロゲン化フェニル、ハロゲン化ナフチル、ハロゲン化フェニルメチレンである。 【0087】Arは【0088】 【化33】 【0089】であり、ここでnは0〜5であり、好ましくは0であり、Rは上記で定義された通りであり、AまたはA'のいずれかはすべて水素原子であり、A'がすべて水素原子の場合、Aの少なくとも一つは水素原子ではなく、Aがすべて水素原子の場合、A'の少なくとも一つは水素原子ではない。 【0090】好ましくは、Rは水素原子またはメチルであり、さらに好ましくは水素原子である。 【0091】Q'は【0092】 【化34】 【0093】(
n'は1〜11であり、Zは−NH 2 、 −NHRまたは−Rであり、oは1〜3であり、o'は3〜10であり、R、Q、Xおよびpは上記で定義された通りである)である。 【0094】Yは、 【0095】 【化35】 【0096】であり、ここでrは0〜6である。 好ましくはrは0(すなわち、Yは結合手)である。 【0097】本発明のリン含有硬化剤は、上述の(a)
〜(d)のいずれか一つの構造をもつ。 いずれの構造において、好ましくはすべてのA'は水素原子であり、
Q'は【0098】 【化36】 【0099】である。 加えて、一つのAだけが水素原子ではないことがさらに好ましい。 【0100】一方で、すべてのAは水素原子であり、一つのA'だけが水素原子ではないことが好ましい。 【0101】また、すべてのAは水素原子であり、Q'
は【0102】 【化37】 【0103】であることが好ましい。 さらに、Zは−N
H
2であることが好ましい。 【0104】さらに、 【0105】 【化38】 【0106】のような構造であり、X'は水素原子またはハロゲン原子であり、好ましくは水素原子である。 ここでR 1およびR 2がいずれも水素原子である構造がさらに好ましい。 【0107】本発明の硬化剤は、リン含有の固定基(ph osphorous-containing rigid group)が多価の活性水素原子含有化合物または樹脂に結合することによって調製される。 本発明のリン含有硬化剤を製造するには、反応性リン含有固定基のタイプによって次の二つの方法がある。 【0108】一つは、前記式(a)〜(d)においてすべてのAが水素原子であるようなリン含有硬化剤を、以下の式(I)または(II); 【0109】 【化39】 【0110】で示されるハロゲン化物と、下記式(II
I)〜(VII); 【0111】 【化40】 【0112】 【化41】 【0113】(R
1等の定義は上述した通りである)からなる群より選択される構造を含む複数の活性水素原子を含有する化合物または樹脂とを反応させることによって調製する方法である。 【0114】もう一方は、前記式(a)〜(d)においてすべてのAが水素原子であるようなリン含有硬化剤を、以下の式(I')または(II'); 【0115】 【化42】 【0116】で示される反応物と、前記式(III)、 (V)、(VI)および(VII)からなる群より選択される構造を含む複数の活性水素原子を含有する化合物または樹脂とを反応させることによって調製する方法である。 【0117】前記式(I)の化合物(リン含有アルコール)は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(DOPO)
を、R
1 CR 2 Oで示される化合物と反応させることによって合成される。 その反応式を以下に示す。 【0118】 【化43】 【0119】前記式(II)の化合物(リン含有アルコール)は、以下のような反応によって合成される。 【0120】 【化44】 【0121】(R等の定義は上述した通りである) このようなリン含有アルコールの合成方法の一例を以下に示す。 【0122】温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、例えば9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等の原料化合物、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒を加えて混合し、その混合物を場合によっては加熱し、 原料化合物が完全に溶解するまで攪拌する。 この溶液にホルムアルデヒド、アセトン等を徐々に添加し、次にその混合物は室温に冷却され、ろ過され、THFで精製され、目的のリン含有アルコールを得る。 【0123】本発明のリン含有硬化剤の製造に用いられるリン含有ハロゲン化物は、好ましくは2−(6−オキシド−6H−ジベンズ<c,e><1,2>オキサ−ホスフォリン−6−イル)クロライド[ODOPC;
(I')]であり、以下の反応式(X)に従って製造される。 【0124】 【化45】 【0125】また、本発明に使用されるリン含有ハロゲン化物は、好ましくは上記式(II')で示される化合物であり、以下の反応式(XI)に従って製造される。 【0126】 【化46】 【0127】このようなリン含有ハロゲン化物の合成方法の一例を以下に示す。 【0128】温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、例えばo−フェニルフェノール(PP)等の原料化合物、およびp−クロロニトロベンゼン、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、トルエン等の溶媒を加えて混合し、その混合物を場合によっては加熱し、原料化合物が完全に溶解するまで攪拌する。 この溶液に、塩化ホスホリル(POCl
3 )等のハロゲン化合物を徐々に添加し、次にZnCl 2 3.0gを添加し、さらにその混合物の温度を上げて、数時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、ジクロロメタンで精製され、目的の塩化物を得る。 【0129】さらにエポキシ樹脂を、溶融状態で、本発明の硬化剤を単独でまたは任意のエポキシ樹脂用硬化剤と共に硬化することによってリン含有難燃性硬化エポキシ樹脂を製造することができる。 該エポキシ樹脂用硬化剤は当業界で用いられ得る任意のものが選択され、好ましくは、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック、ジシアンジアミド、メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルホン、無水フタル酸およびヘキサヒドロフタル酸無水物からなる群より選択される。 硬化反応は、15 0℃より高い温度で実行されることが好ましく、本発明のリン含有硬化剤およびエポキシ樹脂用硬化剤の正規組成量を用いて行われる。 正規組成量とは、すなわちエポキシ樹脂中のエポキシ基の官能基と、本発明の硬化剤および/またはエポキシ樹脂用硬化剤中の官能基との当量比が約1:1であることをいう。 より好ましくは、硬化反応は、例えばトリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール化合物のような硬化促進剤の存在下で実施され、さらに好ましくは、本発明の硬化剤および/またはエポキシ樹脂用硬化剤中の官能基との当量比が1:1であるように、エポキシ樹脂の100質量部に対して、0.01〜10.0質量部の量で用いられる。 本発明のリン含有難燃性硬化エポキシ樹脂は、マトリックス樹脂として難燃性印刷回路板を製造すること、
および、半導体のカプセル封入に好適に用いられ得る。 【0130】本発明の適切なエポキシ樹脂は、周知のエポキシ樹脂が用いられ、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂およびビフェノールエポキシ樹脂のような二個のエポキシ基を有するもの、および、例えば4〜18の官能基を有するフェノールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂およびクレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂(CNE)ならびにこれらの混合物のような二つ以上のエポキシ基を有するものが例示される。 例えば、 【0131】 【化47】 【0132】[式中、0<t<12であり、R
3およびR 4は各ベンゼン環について、同一であっても異なるものであってもよく、R 3は水素原子または炭素数1〜4 のアルキル基であり、R
4およびR 5はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、メチルおよび【0133】 【化48】 【0134】(R 3は上述の通りである)からなる群より選択され、Eは【0135】 【化49】 【0136】 【化50】 【0137】である](E,Q,Yの定義は上述の通りである)で示される化合物である。 【0138】本発明で用いられるエポキシ樹脂とは、先進エポキシ樹脂および従来のエポキシ樹脂の両方を含むものであり、該先進エポキシ受容体とは、溶融状態で、 過量のエポキシ樹脂を用いて、従来のエポキシ樹脂用硬化剤による硬化反応を行うことによって調製され得るものをいう。 【0139】リン含有難燃性硬化エポキシ樹脂を合成する際に、本発明の硬化剤の活性水素原子(すなわち、式(a)〜(d)における−XH)は、エポキシ樹脂または先進エポキシ樹脂のエポキシ基と反応する。 例えば前記式(b)の構造を有する硬化剤を用いた硬化反応は、
以下のように示される。 【0140】 【化51】 【0141】本発明のリン含有硬化剤の調製方法を簡単に説明する。 目的のリン含有硬化剤に適合する樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、メラミン−フェノールノボラック樹脂等)およびトルエン等の溶媒とを混合し、場合によっては加熱して、樹脂が完全に溶解するまで攪拌する。 この溶液に上述のようにして得られたリン含有アルコールまたはリン含有ハロゲン化物を徐々に添加し、場合によっては温度を変えて、数時間維持する。
この溶液を室温にし、ろ過し、乾燥して目的の硬化剤を得る。 【0142】このようにして得られたリン含有硬化剤は、単一の種類から調製されてもよいが、異なる二以上の種類を混合するか、または追加エポキシ樹脂用硬化剤と混合することによっても調製され得る。 【0143】本発明または、上述のような硬化剤を用いて調製される難燃性硬化エポキシ樹脂である。 【0144】このような難燃性硬化エポキシ樹脂は、硬化後の質量に対して、リン含有量が0.5〜30質量%
であることを特徴とする。 好ましくは0.5〜5質量%
である。 ここでリン含有量が0.5質量%未満の場合または30質量%を超過する場合、目的の難燃性が得られず好ましくない。 【0145】本発明の難燃性硬化エポキシ樹脂を調製する原料としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびビフェノールからなる群より選択される二価エポキシ樹脂、フェノールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂もしくはクレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシである多価エポキシ樹脂、または、二価エポキシ樹脂および多価エポキシ樹脂との混合物等が挙げられる。 【0146】以下に本発明の難燃性硬化エポキシ樹脂の製造方法を簡単に説明する。 まず、当量比1:1の本発明の硬化剤および/または他のエポキシ樹脂用硬化剤と、クレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂(CNE)等のエポキシ樹脂とを混合して、微細粉末に磨砕して、熱硬化可能なエポキシ樹脂粉末を得る。 このエポキシ樹脂粉末を金型中で硬化し、後硬化(ポストキュアー)を行い得ることができる。 硬化等の条件は、
用いる材料等に応じて適宜選択される。 【0147】このようにして製造された難燃性硬化エポキシ樹脂の難燃性は、UL−94試験によって評価される。 この試験は、FMVSS−302/ZSO 397
5による試験方法に従い行われるものであり、具体的には、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.27m
mの棒状に成形したエポキシ樹脂を高温燃焼させたときの特性を評価するためのものである。 UL−94の等級の定義は、FMVSS302/ZSO 3975に記載されている。 【0148】このようにして調製された難燃性硬化エポキシ樹脂は、高いガラス転移温度、高い分解温度および高い弾性係数を持ち、印刷回路板の製造および半導体封入用途に適している。 【0149】 【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明する。 I. リン含有アルコール(合成例1〜9)およびリン含有塩化物(合成例10〜11)の調製合成例1 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、9,10−
ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(DOPO;東京化成工業株式会社より購入) 1モル(216g)、およびキシレン 5
00mlを加えた。 その混合物を50℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し,DOPOが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ホルムアルデヒド 1.0モル(30g)を1時間以内に徐々に添加し、ホルムアルデヒドの添加が終了した後、その溶液の温度を110〜115℃に上げて、4時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却され、ろ過され、
テトラヒドロフラン(THF)で精製され、2−(6−
オキシド−6H−ジベンズ<c,e><1,2>オキサ−ホスフォリン−6−イル)メタノール[ODOPM;
(I)]を得た。 収率92%;融点 152〜154
℃。 C
13 H 11 PO 3の計算値:C,63.41;H, 4.47;O,19.51;P,12.61。 測定値:
C,63.32;H,4.51;O,18.93;P,
13.24。 EIMS、m/z:251(96.
M
+ )。 【0150】合成例2 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、DOPO 1モル(216g)、およびTHF 500mlを加えた。 その混合物を50℃に加熱し攪拌した。 その混合物は70℃に加熱され,DOPOが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、アセトン1.0モル(58
g)を1時間以内に徐々に添加し、アセトンの添加が終了した後、その溶液の温度を70℃に上げて、4時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて白色固体を得、次にろ過され、THFで精製され、2−
[2−(6−オキシド−6H−ジベンズ<c,e><
1,2>オキサ−ホスフォリン−6−イル)]プロパン−2−オール[ODOPP;(I)]を得た。 収率96
%;融点 128〜130℃。 C
15 H 15 PO 3の計算値:C,65.69;H,5.47;O,17.52; P,11.32。 測定値:C,65.61;H,5.5
2;O,17.36;P,11.51。 EIMS、m/
z:274(92.M
+ )。 【0151】合成例3 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、9,10− ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド 1モル(216g)(DOPO、
東京化成工業株式会社より購入)、およびp−クロロニトロベンゼン 500mlを加えた。 その混合物を50
℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し,D
OPOが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、2−ブタノン(2-butanone)1.0モル(72g)
を2時間以内に徐々に添加し、その溶液の温度を120
〜125℃に上げて、2−ブタノンの添加が終了した後6時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて白色個体を得、ろ過され、THFで精製され、
2−[2−(6−オキシド−6H−ジベンズ<c,e>
<1,2>オキサ−ホスフォリン−6−イル)]ブタン−2−オール[ODOPB;(I)]を得た。 収率92
%;融点 101〜103℃。 C
16 H 17 PO 3の計算値:C,66.67;H,5.90;O,16.66; P,10.77。 測定値:C,66.59;H,5.9
7;O,16.45;P,10.99。 EIMS、m/
z:288(96.M
+ )。 【0152】合成例4 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、ジフェニルホスフィット(DPP) 1モル(234g)、およびキシレン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し,DDP が完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ホルムアルデヒド 1.0モル(30g)を2時間以内に徐々に添加し、ホルムアルデヒドの添加が終了した後、
その溶液の温度を138℃に上げて、4時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却され、ろ過され、THFで精製されて個体を得、ジフェノキシホスホリルメタノール[DPOM;(II)]を得た。 収率96
%;融点 72〜69℃。 C
13 H 13 PO 4の計算値: C,59.10;H,4.92;O,24.24;P,
11.74。 測定値:C,59.01;H,4.98;
O,23.64;P,12.37。 EIMS、m/z:
264(92.M
+ )。 【0153】合成例5 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、ジフェニルホスフィット(DPP) 1モル(234g)、およびTHF 500mlを加えた。 その混合物を50℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し、DPPが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、アセトン 1.0モル(58g)を2時間以内に徐々に添加し、アセトンの添加が終了した後、その溶液の温度を7 0℃に上げて、4時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて個体を得、ろ過され、THFで精製され、2−(ジフェノキシホスホリル)プロパン−
2−オール[DPOP;(II)]を得た。 収率96%;
融点 70〜72℃。 C
15 H 17 PO 4の計算値:C,6 1.64;H,5.82;O,21.92;P,10.
62。 測定値:C,61.52;H,5.96;O,2
1.78;P,10.74。 EIMS、m/z:292
(92.M
+ )。 【0154】合成例6 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、ジフェニルホスフィット(DPP) 1モル(234g)、およびキシレン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し,DPP が完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、2
−ブタノン 1.0モル(72g)を2時間以内に徐々に添加し、2−ブタノンの添加が終了した後、その溶液の温度を120〜125.8℃に上げて、6時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却され、ろ過され、THFで精製され、2−(ジフェノキシホスホリル)ブタン−2−オールメタノール[DPOB;(I
I)]を得た。 収率96%;融点 52〜54℃。 C
16 H
19 PO 4の計算値:C,62.75;H,6.21; O,20.91;P,10.13。 測定値:C,62.
61;H,6.27;O,20.81;P,10.3
1。 EIMS、m/z:306(92.M
+ )。 【0155】合成例7 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、酸化ジフェニルホスフィン(DPPO) 1モル(202g)、およびキシレン 500mlを加えた。 その混合物を70 ℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し、D
PPOが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ホルムアルデヒド 1.0モル(30g)を2時間以内に徐々に添加し、ホルムアルデヒドの添加が終了した後、その溶液の温度を138℃に上げて、6時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて固体を得、ろ過され、THFで精製され、ジフェニルホスホリルメタノール[DPPM;(II)]を得た。 収率9
6%;融点 121〜123℃。 C
13 H 13 PO 2の計算値:C,67.24;H,5.60;O,13.79; P,13.36。 測定値:C,67.08;H,5.6
8;O,13.59;P,13.65。 EIMS、m/
z:232(94.M
+ )。 【0156】合成例8 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、酸化ジフェニルホスフィン(DPPO) 1モル(202g)、およびTHF 500mlを加えた。 その混合物を70℃ に加熱し攪拌した。 その混合物をDPPOが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、アセトン 1.
0モル(58g)を2時間以内に徐々に添加し、ホルムアルデヒドの添加が終了した後、その溶液の温度を70
℃で6時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて個体を得、ろ過され、THFで精製され、2−(ジフェニルホスホリル)プロパン−2−オール[DPPP]
を得た。 収率96%;融点96〜98℃。 C
15 H 17 PO
2の計算値:C,69.23;H,6.53;O,1 2.31;P,11.93。 測定値:C,69.11;
H,6.63;O,12.18;P,12.08。 EI
MS、m/z:260(96.M
+ )。 【0157】合成例9 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、酸化ジフェニルホスフィン(DPPO) 1モル(202g)、およびキシレン 500mlを加えた。 その混合物を70 ℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し、D
PPOが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、2−ブタノン 1.0モル(72g)を2時間以内に徐々に添加し、2−ブタノンの添加が終了した後、その溶液の温度を120〜125℃に上げて、8時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて個体を得、ろ過され、THFで精製され、2−(ジフェニルホスホリル)ブタン−2−オール[DPPB;(I
I)]を得た。 収率94%;融点 81〜83℃。 C
16 H
19 PO 2の計算値:C,70.07;H,6.93; O,11.68;P,11.32。 測定値:C,69.
68;H,6.98;O,11.46;P,11.8
8。 EIMS、m/z:274(94.M
+ )。 【0158】合成例10 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、o−フェニルフェノール(PP) 1モル(170g)、およびp −クロロニトロベンゼン 500mlを加えた。 その混合物を50℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し、PPが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、塩化ホスホリル(POCl
3 ) 1.5モル(230g)を2時間以内に徐々に添加した。 塩化水素原子ガスの発生が即座に観察された。 POCl 3の添加が終了した後、その温度を110〜115℃に上げて、 6時間維持した。 塩化水素原子ガスの発生が低下した。
次にZnCl
2 3.0gを添加し、さらにその混合物の温度を192〜196℃に上げて、8時間その温度で維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、ジクロロメタンで精製され、液状の2−(6−オキシド−6H−ジベンズ<c,e><1,2>オキサ−ホスフォリン−6−イル)塩化物[ODOPC; (I')]を得た。 収率93%であり、RIスペクトル(KBr)は、1186、1292cm
-1 (P=O); 1172、962cm
-1 (P−O−Ph);1462、 1424cm
-1 (P−Ph)での吸収を示した。 C 12 H
8 PO 2 Clの計算値:C,57.48;H,3.19; O,12.77;P,12.38;Cl,14.17。
測定値:C,57.52;H,3.15;O,12.6
5;P,12.30;Cl,14.38。 EIMS、m
/z:251(92.M
+ )。 【0159】合成例11 温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、フェノール 2モル(188g)、およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc) 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し、フェノールが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、塩化ホスホリル(POCl
3 ) 1.5モル(230g)を2時間以内に徐々に添加した。 塩化水素原子ガスの発生が即座に観察された。 POCl 3の添加が終了した後、その温度を135〜138℃に上げて、還流温度で12時間維持した。 塩化水素原子ガスの発生が低下した。 次にその混合物は室温に冷却されて、 ろ過され、ジクロロメタンで精製され、液状のジフェノキシホスホリル塩化物[DPOC;(II')]を得た。 収率96%。 C
12 H 10 PO 3 Clの計算値:C,5 3.53;H,3.72;O,17.84;P,11.
52;Cl,13.28。 測定値:C,53.49;
H,3.70;O,17.64;P,11.64;C
l,13.53。 EIMS、m/z:251(90.M
+ )。 【0160】II. リン含有硬化剤の調製実施例1(P−1、ODOPM−PN) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、フェノールノボラック樹脂(PN) 1モル(6 24g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃
に加熱し、PNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。
この溶液に、ODOPM 1.0モル(246g)を徐々に添加した。 ODOPMの添加が終了した後、その温度を140℃に上げて、12時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODO
PM−PN(P−1)を得た。 収率98%であり、軟化温度は67〜75℃、リン含有率は3.64質量%であった。 【0161】実施例2(P−2、ODOPM−MPN) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、メラミン−フェノールノボラック樹脂(MPN)
1モル(609g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を90℃に加熱し攪拌した。 その混合物を120℃に加熱し、MPNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ODOPM 1.0モル(246g)を徐々に添加した。 ODOPMの添加が終了した後、その温度を140℃に上げて、10時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、
乾燥されてODOPM−MPN(P−2)を得た。 収率98%であり、軟化温度は117〜125℃、リン含有率は3.63質量%、窒素含有率は9.82質量%であった。 【0162】実施例3(P−3、ODOPM−THP
E) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニルエタン)フェノール樹脂(THPE) 1モル(398g)、およびトルエン 500mlを加えた。
その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 THPEが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ODOP
M 1.0モル(246g)を徐々に添加した。 ODO
PMの添加が終了した後、その温度を120℃に上げて、8時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODOPM−THPE(P−
3)を得た。 収率94%であり、軟化温度は122〜1
27℃、リン含有率は5.09質量%であった。 【0163】実施例4(P−4、ODOPM−THP
M) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、トリヒドロキシフェニルメタン樹脂(THPM)
1モル(292g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を120℃に加熱し、THPMが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ODOPM 1.0モル(246g)を徐々に添加した。 ODOPMの添加が終了した後、その温度を120℃に上げて、8時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、
乾燥されてODOPM−THPM(P−4)を得た。 収率96%であり、軟化温度は103〜105℃、リン含有率は6.18質量%であった。 【0164】実施例5(P−5、ODOPM−PD) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、p−フェニレンジアミン樹脂(PD)1モル(1
08g)、およびDMAc 500mlを加えた。 PD
が完全に溶解した後、その混合物を−5℃に冷却した。
この溶液に、ODOPM 1.0モル(246g)を徐々に添加した。 ODOPMの添加が終了した後、生じた混合物は−5℃で6時間維持され、次に室温でさらに4
時間維持した。 次にその混合物は0℃に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODOPM−PD(P−5)を得た。 収率94%であり、軟化温度は137〜139℃、
リン含有率は9.75質量%であった。 【0165】実施例6(P−6、ODOPM−DDM) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、ジアミノジフェニルメタン樹脂(DDM) 1モル(198g)、およびDMAc 500mlを加えた。 その混合物を50℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し、DDMが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ODOPM 1.0モル(24
6g)を徐々に添加した。 ODOPMの添加が終了した後、その温度を130℃に上げて、6時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODOPM−DDM(P−6)を得た。 収率97%であり、軟化温度は121〜123℃、リン含有率は7.
58質量%であった。 【0166】実施例7(P−7、DPPM−PN) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、フェノールノボラック樹脂(PN) 1モル(6
24g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃
に加熱し、PNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。
この溶液に、DPPM 1.0モル(248g)を徐々に添加した。 DPPMの添加が終了した後、その温度を120℃に上げて、6時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてDPPM−P
N(P−7)を得た。 収率97%であり、軟化温度は4
8〜52℃、リン含有率は3.56質量%であった。 【0167】実施例8(P−8、DPPM−MPN) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、メラミン−フェノールノボラック樹脂(MPN)
1モル(609g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し、MPNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、DPPM 1.0モル(2
48g)を徐々に添加した。 DPPMの添加が終了した後、その温度を120℃に上げて、6時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてDPPM−MPN(P−8)を得た。 収率97%であり、軟化温度は59〜65℃、リン含有率は3.61質量%、窒素含有量は9.8質量%であった。 【0168】実施例9(P−9、DPOM−PN) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、フェノールノボラック樹脂(PN) 1モル(6
24g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃
に加熱し、PNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。
この溶液に、ジフェノキシホスホリルメタノール(DP
OM)1.0モル(264g)を徐々に添加した。 DP
OMの添加が終了した後、その温度を120℃に上げて、6時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてDPOM−PN(P−9)を得た。 収率98%であり、軟化温度は63〜68℃、リン含有率は3.49質量%であった。 【0169】実施例10(P−10、DPOM−MP
N) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、メラミン−フェノールノボラック樹脂(MPN)
1モル(609g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃に加熱し、MPNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ジフェノキシホスホリルメタノール(DPOM) 1.0モル(246g)を徐々に添加した。 DPOMの添加が終了した後、その温度を120℃に上げて、8時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてDPOM−M
PN(P−10)を得た。 収率98%であり、軟化温度は79〜83℃、リン含有率は3.63質量%、窒素含有量は9.8質量%であった。 【0170】実施例11(P'−1、ODOPC−P
N) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、フェノールノボラック樹脂(PN) 1モル(6
48g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 その混合物を90℃
に加熱し、PNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。
この溶液に、2−(6−オキシド−6H−ジベンズ<
c,e><1,2>オキサ−ホスフォリン−6−イル)
クロライド(ODOPC) 1.0モル(251g)を徐々に添加した。 ODOPCの添加が終了した後、その温度を140℃に上げて、6時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODO
PC−PN(P'−1)を得た。 収率98%であり、軟化温度は67〜75℃、リン含有率は3.64質量%であった。 【0171】実施例12(p'−3、ODOPC−TH
PE) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニルエタン)フェノール樹脂(THPE) 1モル(398g)、およびトルエン 500mlを加えた。
その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 THPEが完全に溶解するまで攪拌をしつづけた。 この溶液に、2−
(6−オキシド−6H−ジベンズ<c,e><1,2>
オキサ−ホスフォリン−6−イル)クロライド(ODO
PC) 1.0モル(251g)を徐々に添加した。 O
DOPCの添加が終了した後、その温度を100℃に上げて、8時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODOPC−THPE
(P'−3)を得た。 収率94%であり、軟化温度は1
22〜127℃、リン含有率は5.06質量%であった。 【0172】実施例13(p'−4、ODOPM−TH
PM) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、トリヒドロキシフェニルメタン(THPM) 1
モル(292g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 THPMが完全に溶解するまで攪拌をしつづけた。 この溶液に、2
−(6−オキシド−6H−ジベンズ<c,e><1,2
>オキサ−ホスフォリン−6−イル)クロライド(OD
OPC) 1.0モル(251g)を徐々に添加した。
ODOPCの添加が終了した後、その温度を120℃に上げて、8時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODOPC−THPM
(P'−4)を得た。 収率96%であり、軟化温度は1
18〜124℃、リン含有率は6.12質量%であった。 【0173】実施例14(P'−5、ODOPC−P
D) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、p−フェニレンジアミン樹脂(PD)1モル(1
08g)、およびDMAc 500mlを加えた。 PD
が完全に溶解した後、その混合物を−15℃に冷却した。 この溶液に、ODOPC 1.0モル(251g)
を徐々に添加した。 ODOPCの添加が終了した後、生じた溶液を−15℃で、6時間維持し、次に室温でさらに4時間維持した。 次にその混合物は0℃に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODOPC−PD(P'−
5)を得た。 収率94%であり、軟化温度は153〜1
55℃、リン含有率は9.61質量%であった。 【0174】実施例15(p'−6、ODOPC−DD
M) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、ジアミドジフェニルメタン樹脂(DDM) 1モル(198g)、およびDMAc 500mlを加えた。 その混合物を50℃に加熱し攪拌した。 この混合物を90℃まで加熱し、DDMが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、2−(6−オキシド−6H−
ジベンズ<c,e><1,2>オキサ−ホスフォリン−
6−イル)クロライド(ODOPC) 1.0モル(2
51g)を徐々に添加した。 ODOPCの添加が終了した後、その温度を130℃に上げて、2時間維持した。
次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてODOPC−DDM(P'−6)を得た。 収率96
%であり、軟化温度は136〜138℃、リン含有率は7.52質量%であった。 【0175】実施例16(p'−7、DPC−PN) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、フェノールノボラック樹脂(PN) 1モル(6
48g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 この混合物を90℃
まで加熱し、PNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ジフェニルホスホリルクロライド(D
PC) 1.0モル(253g)を徐々に添加した。 D
PCの添加が終了した後、その温度を120℃に上げて、6時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてDPC−PN(P'−7)を得た。 収率96%であり、軟化温度は113〜117
℃、リン含有率は4.32質量%であった。 【0176】実施例17(P'−9、DPOC−PN) 熱電対制御装置、温度制御装置、還流凝縮器、窒素供給装置および機械的攪拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、フェノールノボラック樹脂(PN) 1モル(6
48g)、およびトルエン 500mlを加えた。 その混合物を70℃に加熱し攪拌した。 この混合物を90℃
まで加熱し、PNが完全に溶解するまで攪拌しつづけた。 この溶液に、ジフェノキシホスホリルクロライド(DPOC)1.0モル(269g)を徐々に添加した。 DPOCの添加が終了した後、その温度を120℃
に上げて、6時間維持した。 次にその混合物は室温に冷却されて、ろ過され、乾燥されてDPOC−PN(P'
−9)を得た。 収率98%であり、軟化温度は93〜9
7℃、リン含有率は4.06質量%であった。 【0177】III. 本発明のリン含有硬化剤を用いたエポキシ樹脂の硬化実施例18〜27 当量比1:1の本発明の硬化剤P−1〜P−10およびクレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂(CNE)を用いて、硬化促進剤として0.2質量%のトリフェニルホスフィン存在下で、硬化エポキシ樹脂を調製した。 これら反応物の混合物を微細粉末に磨砕して、熱硬化可能なエポキシ樹脂粉末を得た。 このエポキシ樹脂粉末を金型中で150℃、50kg/cm
2で1 時間硬化し、次に170℃で2時間硬化し、さらに20
0℃で3時間、後硬化(ポストキュアー)を行い、硬化エポキシ樹脂を得た。 【0178】比較例1 実施例1のODOPM−PN(P−1)をフェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂(PN)で置き換えた以外は、実施例18の方法と同様の方法を用いて、クレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂(CN
E)を硬化した。 【0179】比較例2 実施例2のODOPM−MPN(P−2)をメラミン−
フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂(MPN)
で置き換えた以外は、実施例19の方法を用いて、CN
Eを硬化した。 【0180】比較例3 実施例1のODOPM−PN(P−1)をテトラブロモビスフェノールA(TBBA)で置き換えた以外は、実施例18の方法と同様の方法を用いて、CNEを硬化した。 【0181】このようにして製造された難燃性硬化エポキシ樹脂は、動的機械的分析(DMAの特性;表1)、
熱重量分析(TGAデータ;表2)および難燃性特性試験(UL−94試験;表3)によって評価された。 下記表において、動的機械的分析の“Td 5% ℃”とは、窒素(または空気)雰囲気下で室温から高温への加熱工程中に5質量%の質量減少が起こる温度であり、
“700℃での収率(%)”とは、窒素(または空気)
雰囲気下で室温から700℃へ加熱した後に残存するエポキシ樹脂の質量%である。 難燃性特性試験のUL−9
4試験とは、FMVSS−302/ZSO 3975の規定による試験方法に従い行われるものであり、具体的には、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.27
mmの棒状に成形したエポキシ樹脂を高温燃焼させたときの特性を評価するためのものである。 UL−94の等級の定義は、FMVSS 302/ZSO 3975に記載されている。 【0182】 【表1】 【0183】 【表2】 【0184】 【表3】 【0185】表1〜3は、本発明の硬化エポキシ樹脂は良好な機械的特性、熱的特性および優れた難燃性を持ち、さらに燃焼試験において有毒な煙の発生やドリッピングを生じないことを示す。 すなわちこれらは印刷回路板用途に非常に適している。 本発明の硬化エポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、従来のPN硬化剤を用いて硬化されたものよりも高い。 特に、本発明のメラミン−フェノールノボラック系硬化剤(例えば、P−2、O
DOPM−MPN;P−8、DPPM−MPN;P−1
0、DPOM−MPN)と共に硬化された窒素およびリンの両方を含む硬化エポキシ樹脂は、従来のTBBA硬化剤で硬化されたもの(比較例3)に比べて高いガラス転移温度(50〜60℃)を持つだけでなく、熱的特性および収率に関して優れている。 これらの結果は、本発明の硬化剤は、硬化エポキシ樹脂の難燃性における相乗効果を相していることを示している。 【0186】実施例28〜34 当量比1:1の本発明の硬化剤P'−1、P'−3〜
P'−7またはP'−9およびクレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂(CNE)を用いて、硬化促進剤として0.2質量%のトリフェニルホスフィン存在下で、硬化エポキシ樹脂を調製した。 この混合物を微細粉末に磨砕して、熱硬化可能なエポキシ樹脂粉末を得た。 このエポキシ樹脂粉末を金型中で150℃、50k
g/cm
2で1時間硬化し、次に170℃で2時間硬化し、さらに200℃で3時間、後硬化(ポストキュアー)を行い、硬化エポキシ樹脂を得た。 【0187】実施例28〜34で調製された硬化エポキシ樹脂の動的機械的性質は表4に、熱重量分析データは表5に、難燃性特性は表6に示される。 【0188】 【表4】 【0189】 【表5】 【0190】 【表6】 【0191】表4に示されたように、本発明の硬化エポキシ樹脂のガラス転移温度は、従来のPN硬化剤を用いて硬化されたもの(比較例1)よりも高いだけでなく、 従来のTBBA硬化剤を用いて硬化されたもの(比較例3)よりも50〜60℃も高い。 さらにその上、表4〜
6のデータは、本発明の硬化エポキシ樹脂は良好な機械的特性、熱的特性および優れた難燃性を持ち、さらに燃焼試験において有毒な煙の発生やドリッピングをほとんど生じないことを示す。 すなわちこれらは印刷回路板用途に非常に適している。 【0192】IV.本発明の硬化剤P−1およびP'−1
を含む混合硬化剤を用いたエポキシ樹脂の硬化様々な量の本発明の硬化剤P−1およびP'−1を、フェノールホルムアルデヒドノボラック(PN)と共にそれぞれ混合して、クレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂(CNE)のための混合硬化剤を調製し、リン含有の難燃性効果を調べた。 まず、様々な混合率(0/100、25/75、50/50、75/2
5、100/0)のP−1/PNまたはP'−1/PN
からなる混合硬化剤を調製した。 トリフェニルホスフィン(Ph
3 P)粉末を硬化促進剤として用いた。 CNE は、25℃で、ミル中で上述の混合硬化剤および0.2
質量%のPh
3 Pと混合され、エポキシ基の水酸基に対する当量比が1:1である熱硬化可能なエポキシ樹脂粉末を得た。 得られた樹脂粉末は、150℃、50kg/ cm
2で1時間硬化し、次に170℃で2時間硬化し、 さらに200℃で3時間、後硬化(ポストキュアー)を行い、硬化エポキシ樹脂を得た。 【0193】V. 本発明の硬化剤P−2を含む混合硬化剤を用いたエポキシ樹脂の硬化様々な量の本発明の硬化剤P−2を、ぞれぞれフェノールホルムアルデヒドノボラック(PN)と混合して、クレゾールホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂(C
NE)のための混合硬化剤を形成し、リンの難燃性効果を調べた。 まず、様々な混合率(0/100、25/7
5、50/50、75/25、100/0)のP−2/
PNまたはP'−1/PNの混合硬化剤を調製した。 トリフェニルホスフィン(Ph
3 P)粉末を硬化促進剤として用いた。 CNEは、25℃で、ミル中で上述の混合硬化剤および0.2質量%のPh 3 Pと混合され、エポキシ基の水酸基に対する当量比が1:1である熱硬化可能なエポキシ樹脂粉末を得た。 得られた樹脂粉末は、1 50℃、50kg/cm
2で1時間硬化し、次に170 ℃で2時間硬化し、さらに200℃で3時間、後硬化(ポストキュアー)を行い、硬化エポキシ樹脂を得た。 【0194】比較として、様々な質量比のTBBAおよびPN(25/75,50/50,75/25,100
/0)も硬化剤として使用され、上述のような硬化エポキシ樹脂を得た。 【0195】これらの硬化エポキシ樹脂の難燃性は、熱重量分析およびUL−94で試験された。 その結果を図7および8に示す。 表中に記載のラピッドレイトとは、
空気または窒素雰囲気下における迅速質量損失温度(ra
pid weight loss temperature)をそれぞれ示したものである。 【0196】 【表7】 【0197】 【表8】 【0198】表7が示すように、本発明のリン含有硬化エポキシ樹脂(P−1/PNおよびP'−1/PN)のガラス転移温度は、例えばTBBA/PN(100/
0)のような従来の臭素含有硬化エポキシ樹脂に比べて約40℃高く、さらに本発明の窒素−リン含有硬化エポキシ樹脂(P−2/PN)より約70℃高い。 さらにその上、本発明のリン含有および窒素−リン含有硬化エポキシ樹脂は従来の臭素含有硬化エポキシ樹脂に比べて、
高い熱劣化温度および高い収率を持つ。 【0199】表8のデータにおいて、本発明のリン含有硬化エポキシ樹脂における1%のリン含量が、従来の臭素含有硬化エポキシ樹脂における7〜10%の臭素含量と同等の難燃性効果を奏することが示されている。 特に、本発明の窒素−リン含有硬化エポキシ樹脂における低いリン含量は、窒素およびリンから生じる相乗効果による同じ難燃性効果を示すのに必要とされる。 加えて、
本発明のリン含有および窒素−リン含有硬化エポキシ樹脂は、燃焼試験において有害性の煙の発生をかなり減少させることができる。 【0200】表7および8の結果により、本発明のリン含有および窒素−リン含有硬化エポキシ樹脂が、半導体のカプセル封入や、印刷回路板の用途に非常に適していることがわかる。 【0201】VI. 本発明の硬化剤P−1、P'−1およびP−2を用いたエポキシ樹脂の硬化硬化エポキシ樹脂は、硬化剤P−1(ODOPM−P
N)、P'−1(ODOPC−PN)およびP−2(O
DOPM−MPN)と共に、エポキシ樹脂であるエピコート1001(EEW450〜500;シェル株式会社より購入)から調製された。 【0202】このエポキシ樹脂は150℃に熱され、溶融状態で攪拌しながら硬化剤と共に(当量比1:1)混合され、熱いアルミニウム金型に注ぎ、170℃で1時間オーブンで硬化し、次に200℃で2時間、後硬化した。 【0203】比較例として、フェノールホルムアルデヒドノボラック(PN)およびTBBAを硬化剤として用いて硬化エポキシ樹脂を上述のように得た。 【0204】この硬化エポキシ樹脂の難燃性は、熱重量分析およびUL−94試験で試験された。 その結果を表9および10に示す。 【0205】 【表9】 【0206】 【表10】 【0207】表9より、本発明のP−1(ODOPM−
PN)およびP'−1(ODOPC−PN)のリン含有硬化剤を用いて調製された硬化エポキシ樹脂のガラス転移温度値は、従来の臭素含有硬化剤、TBBAを用いて硬化されたものよりも約8〜12℃高く、本発明のP−
2(ODOPM−MPN)の窒素−リン含有硬化剤を用いて調製された硬化エポキシ樹脂に対して約20℃高いことがわかる。 さらにその上、本発明のリン含有および窒素−リン含有硬化エポキシ樹脂は、従来の臭素含有硬化エポキシ樹脂より高い熱劣化温度および収率を示す。 【0208】表10のデータより、本発明のリン含有硬化エポキシ樹脂の1%のリン含量は、従来の臭素含有硬化エポキシ樹脂の7〜10%程度の臭素含量と実質的に同様の難燃性効果を奏することがわかる。 加えて、本発明のリン含有および窒素−リン含有硬化エポキシ樹脂は、燃焼試験で有害性の煙をかなり減少させている。 表9および10に示された結果は、本発明のリン含有および窒素−リン含有硬化エポキシ樹脂の両方は、半導体カプセル封入および印刷回路板用途に非常に適していることを示している。 【0209】ここで示された実施例は、発明の説明のために提供されたものであり、発明の範囲を限定するものではない。 発明の範囲は上述の説明ではなく請求項によって限定されるものであり、本発明と等しい目的および範囲内から生じるすべての変更は本発明に包含される。 【0210】 【発明の効果】本発明のリン含有硬化剤を用いることによって、高いガラス転移温度、高い分解温度および高い弾性係数を持つ難燃性硬化エポキシ樹脂を得ることができる。 このようにして得られた難燃性硬化エポキシ樹脂は、印刷回路板の製造および半導体封入用途に適している。
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