【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は紙料、繊維、皮革の着色、表面染色、印字または捺染に有用なカチオン性染料に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より紙および皮革の染色には直接染料、塩基性染料等が多用されている。 しかしながら、これらの染料は一般に種々の助剤を添加しないと染着率が極めて低いという欠点を有し、染色コスト、染色物の品質、染色廃水の汚染、等の問題点が多い。 また、近年、 染色コストの低減を図る為染色時間を短縮した染色方法が染色工場で実施されている。 しかしながら、この方法では種々の助剤を併用しても充分な染着が得られず、また未染着染料が染色廃水中に多量に残存し、廃水汚染等公害上重大な問題となっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な従来技術の欠点を解消するためになされたものであり、染着性を高めることにより如何なる染色条件例えば染色助剤の添加の有無、染色時間の短縮などを用いても従来の直接染料や塩基性染料では得られない高濃度染色を可能にし、また被染物に染料が全量染着することにより染色廃水には全く染料が含まれない。 すなわち廃水汚染公害の無い新規なカチオン染料を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明の新規なカチオン染料は式(I) 【0005】 【化4】 (式中、Xは置換または非置換のベンゼン環、ナフタレン環、およびアゾベンゼンを示し、Qは−N=N−、− NHCONH−、
【化5】 で示される連結基を示し、Yは、 【0006】 【化6】 を示し、 【0007】R 1 、R 2およびR 3は、メチル、またはエチル基を示し、R 4は水素、ハロゲン、C 1 〜C 4アルキル、ヒドロキシ、C 1 〜C 4アルコキシ、アミノ、置換アミノ、およびスルホン基を示し、R 5は窒素原子の四級化剤残基を示し、R 6 、R 7 、R 8 、R 9はそれぞれ独立に水素、C 1 〜C 4アルキル、C 2 〜C 4アルカノール、C 1 〜C 4アルキルアミノ、C 2 〜C 4アルキル、およびアミノC 2 〜C 4アルキルを示し、Z 1 、Z 2 、Z 3はそれぞれ独立に、クロール、ヒドロキシ、アミノ、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、置換または非置換の芳香族アミノ、 窒素原子が複素環の一部であるアミノおよび置換または非置換のポリアミノC 2 〜C 8アルキルアミノ基等の、トリアジン環の活性ハロゲンと反応しうる水酸基、アミノ基を有する化合物残基を示し、AおよびBはそれぞれ独立して、ハロゲン、C 1 〜C 4アルキル、ヒドロキシ、C 1 〜C 4アルコキシ、アミノ、置換アミノ、およびスルホン基で置換されてもよいベンゼン環およびナフタレン環を示し、aは陽イオンを示し、lは1〜2の数を示し、 nは0〜2の数を示し、mは2〜4の数を示す。 )であり本発明は上記問題点を解決して、被染物特に紙料および皮革に対し高度の染着力を有する、カチオン性染料および、その金属錯体を完成した。 【0008】本発明の式(I)で表されるカチオン性化合物は例えば以下のようにして製造できる。 すなわち下記式 【化7】 (式中、R1 、R 2 、R 3 、およびR 4は上記で定義した通りである。ここでR 1 、R 2 、R 3はそれぞれ独立にメチルまたはエチル基が好ましく、R 4は水素、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、スルホンおよびクロール基が好ましい。)で表されるトリメチルまたはエチルアミノ基を有する置換または非置換のアミノベンゼンを公知の方法でジアゾ化し、得られたジアゾニウム塩を、アミノ基を有し、C 1 〜C 4アルキル、C 1 〜C 4アルコキシ、 アセチルアミノ、およびウレイド基等で置換されていてもよいベンゼン、またはアミノ基を有しヒドロキシおよびスルホン基等で置換されていてもよいナフタレンに公知の方法でカップリングさせて得られるモノアゾ化合物、および上記のアミノベンゼンにカップリングさせて得られたモノアゾ化合物を更に公知の方法でジアゾ化し、酸性媒体中でアミノ基を有し、C
1 〜C 2アルキル、 C
1 〜C 4アルコキシ、アセチルアミノ、およびウレイド基等で置換されていてもよいベンゼンに公知の方法でカップリングさせることにより得られるジスアゾ化合物を得る。 【0009】ここで一般式(I)の連結基、Qが−N= N−の場合は、上記方法で製造したモノアゾまたはジスアゾ化合物を、更に公知の方法でジアゾ化し、下記式で示されるアミノナフトール誘導体 【0010】 【化8】 【0011】(式中R 6 、R 7 、R 8 、R 9 、Z 2 、Z 3 、 n、m、およびAは上記で定義した通りである。 )に、 水媒体中でカップリングさせるか、または、スルホン基を有していてもよいアミノナフトールおよびアミノナフタレンに水媒体中でカップリングしたのちに、そのアミノ基を介して誘導体を製造することにより得られる。 ここで好適なアミノナフトール類として、H酸、J酸、γ 酸、S酸および1,7アミノナフトールを挙げることができ、アミノナフタレンとしては、α−ナフチルアミン、アミノナフタレンモノスルホン酸を挙げることができる。 【0012】さらに式(I)中の連結基Qが 【化9】 の場合は、上記で製造したモノアゾ、またはジスアゾ化合物と、下記式で示される 【0013】 【化10】 【0014】(式中、A、B、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 、R 8 、R 9 、nは上記で定義したとおりである。 )のハロゲン化トリアジンのハロゲンと反応しうるアミノ基を有する色素をpH3〜7で任意の順序でハロゲン化トリアジンと公知の方法で反応させた後ハロゲン化トリアジンのハロゲンと反応しうる水酸基、アミノ基を有する化合物、好ましくはアンモニア、C 1 〜C 12 のアルキルアミン、C 1 〜C 12アルカノールアミン、置換基を有する芳香族アミン、C 1 〜C 12アルキルで置換されていてもよいポリアミノC 1 〜C 8アルキルアミン、 等を高められた温度で反応させる。 但し式(I)中Z 1 がヒドロキシの場合は両色素を反応させたのちソダ−アルカリでトリアジンのハロゲンを加水分解することにより得られる。 【0015】ここで好適なR 6 、R 7 、R 8 、R 9としては水素、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、アミノエチル、アミノプロピル、置換アミノエチル、置換アミノプロピル基を挙げることができ、AおよびBはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、ハロゲン、ウレイド、アセチルアミノ、アミノ、置換アミノ基等で置換されていてもよいベンゼン環およびスルホ、ヒドロキシ、またはアミノ基等で置換されていてもよいナフタレン環を挙げることができる。 【0016】本発明の新規なカチオン染料は場合によっては一般公知の方法で容易に金属錯体化することができ、特に耐光堅牢度の面で大幅な向上を示す金属としては銅、クローム、そしてニッケル等が有り、いずれも容易に錯体化できるが銅錯体が色相、堅牢度の両面で特にすぐれた効果を示す。 例えばCu(II)の存在下、過酸化水素の様な酸化剤、アンモニア等のアミン類の添加剤を加えることによりpH3〜10の媒体中高められた温度で行なうことができる。 公知の方法を用いて分子内のスルホン基とカチオン基を結合させて分子内塩とすることができる。 また化学量論的量の無機酸例えば、塩酸、 硫酸、硝酸、もしくは燐酸、または有機酸例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、グリコール酸、スルファミン酸もしくはメタンスルホン酸を作用させて酸付加塩とすることができる。 【0017】本発明の染料はまた当業者に既知の方法を用いて粉末、顆粒、液状等の任意の形態で製造することができ、紙、パルプ繊維(天然または合成)例えば、木綿、レーヨン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、 酸改質ポリエステル、ポリアミド皮革に適用して基質の着色、表面染色印字または、捺染を行なうことができ、 また印刷インク、記録用インク等にも使用できる。 特に本染料は紙、皮革等に極めて高い染着性を有するとともに中性ないし弱酸性域で水に対して高い溶解性を有する為液体染料、インクに好適である。 【0018】以下に実施例を挙げて本発明に係る染料の製造例と適用例を具体的に説明するが本発明はこれに限定されない。 例中、特に断らない限り部はすべて重量を示す。 【0019】実施例1 a) モノアゾ化合物の製造 公知の方法で製造した3−トリメチルアミノアニリンクロライド18.7部(0.1モル)および35%塩酸3 1.3部を含む水溶液200部に0〜5℃の温度で20 部の水中における6.9部の(0.1モルの亜硝酸ナトリウム水溶液を30分を要して滴下し、ついで40分間同温度で撹拌し、過剰の亜硝酸をアミドスルホン酸を加えることにより消去しパラクレシジン13.7部(0.1モル)を加えカップリングが終了するまで同温度で5時間撹拌した。 【0020】b) カップリング成分の調整 γ酸23.9部(0.1モル)を水200部中の炭酸ナトリウム5.3部に加えることにより溶解させ、この溶液に18.9部のジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩を添加し20%炭酸ナトリウム水溶液を加えることによりpH5〜6に調整しながら2.5時間を要して95℃ まで昇温し、同温度で1時間反応させて反応を完結させた。 【0021】c) カップリング(染料の製造) 上記1b)で得られたカップリング成分の溶液に氷片を加えて0℃に冷却しついで苛性ソーダを加えてpH9〜 10に調整した。 上記1a)で製造したモノアゾ化合物に35%塩酸20部を加えたのち10〜20℃で常法によりジアゾ化した溶液を10%苛性ソーダ溶液を滴下することによりpH9〜10に保ちながら前記pH9〜1 0に調整した1b)の溶液に2時間を要して添加し、同温度で反応が終了するまで撹拌した。 70℃まで昇温し濾過し、そして乾燥した。 【0022】下記式 【化11】 を有する染料63.5部を得た。 これは希酸例えば酢酸、ギ酸、乳酸、グリコール酸の有機酸および塩酸、硫酸、リン酸の様な無機酸に溶解する。 この溶液はいかなる染色方法を採用しても紙料および皮革を黒色に染色しその染色廃水は実質上無色であり、そして染色物は極めて良好な湿潤堅牢度特性を有した。 【0023】実施例2 実施例1で得られた下記式 【化12】 の黒色染料34部を300部の水に懸濁させたのち、これに20部のCuSO4・5H 2 Oを28%アンモニア水30部およびジエタノールアミン10部とともに水10 0部中に溶解した溶液を加え、95℃で6時間反応を行ない脱メチル化して銅錯塩化を完了して、濾過し小量の水洗を行なうことにより、下記式
【0024】 【化13】 の化合物35部を含む湿ケーキ70部を得た。 この湿ケーキに酢酸8部、尿素25部、および水12部を加えて上記染料29%含有する染料の溶液組成物120部を得た。 この溶液組成物は硫酸アルミ等の固着剤を加えても加えなくとも、また染色時間の短縮等の有無に拘らず、 すなわち如何なる染色方法を採用しても紙を純黒色に染色し、その染色廃水は実質上無色であった。 また、染色紙は顕著な日光および湿潤堅牢度を有していた。
【0025】実施例3〜7 実施例1、2の操作と同様にして、表1に示す他の染料を製造した。 これらは下記式 【化14】 (未銅錯塩化物の形態)で表わされる。 【0026】 【表1】 【0027】実施例9 公知の方法で製造した3−トリメチルアミノアニリンクロライド18.7部(0.1モル)および35%塩酸3 1.3部を含む水溶液200部に0〜5℃の温度で20 部の水中における6.9部の(0.1モルの亜硝酸ナトリウム水溶液を30分を要して滴下し、ついで40分間同温度で撹拌した後過剰の亜硝酸をアミドスルホン酸を加えることにより消去し、パラクレシジン13.7部(0. 1モル)を加えカップリングが終了するまで同温度で、 5時間撹拌した。 そして炭酸ナトリウムを添加することによりpHを5とし、氷片を加え0℃とし、18.7部のシアヌルクロライドを添加し、20%の炭酸ナトリウムの水溶液を滴加することによりpH5〜5.5に保ちながら1時間を要して25℃まで昇温、更に既知の方法で製造した下記構造式で示される 【0028】 【化15】 化合物24.7部を加えた後pHを同様に調整しながら2.5時間を要して60℃まで加熱した。 pHの下降が止まったのを確認してモノエタノールアミン20.0部を添加し、95℃まで昇温し同温度で4時間反応させた。 70℃まで冷却させたところで35%塩酸35部を加え酸性にした後塩化ナトリウム150部を加えることにより染料を結晶化させ、濾過し、そして乾燥した。 得られた粉末状の染料は下記式 【0029】 【化16】 の化合物に相当し、実施例1と同様な染料特性を有し、 そして紙料を黄色に染色した。
【0030】実施例10 下記式 【化17】 で示されるJ酸をそのアミノ基を介してトリアジン環で連結された化合物32.8部を含む水溶液300部に氷片を加えることにより0℃に冷却し、更に炭酸ナトリウム30部を加え、実施例1と同様にしてジアゾ化された3−トリメチルアミノアニリンクロライド18.7部よりなるジアゾニウム水溶液を1時間で滴下し、そして5 ℃以下の温度で2時間撹拌することによりカップリングを終了させ、濾過および乾燥させることにより下記式
【0031】 【化18】 の染料50.3部を得た。 この染料は酸付加塩の形態で実施例1と同様な染料特性を有し、紙料を赤色に染色した。 【0032】実施例11〜14 実施例9または10の操作と同様にして、次の表2に示す染料を製造した。 【0033】 【表2】 【0034】実施例15 公知の方法で製造した4−トリメチルアミノアニリンクロライド18.7部(0.1モル)および35%塩酸3 1.3部を含む水溶液200部に0〜5℃の温度で20 部の水中における6.9部の(0.1モルの亜硝酸ナトリウム水溶液を30分要して滴下し、次いで40分同温度で撹拌した後過剰の亜硝酸をアミドスルホン酸を加えることにより消去し、メタトルイジン10.7部(0.1モル)を加えカップリングが終了するまで同温度で5時間撹拌した。 【0035】更に、11部の35%塩酸を加え10〜2 0℃で常法によりジアゾ化し、次に1−アミノ−6−スルホナフタレン21.2部(0.095モル)を加え、1 0〜20℃の温度で20%炭酸ナトリウム水溶液を6時間を要して滴下し、pHを6まで上昇させてカップリングを終了させたのち、既知の方法で製造した下記式 【0036】 【化19】 で示される3,5ジ(ジエチルアミノプロピルアミノ) クロールトリアジン37.2部(0.1モル)を加え、2
0%炭酸ナトリウムを滴下してpH5〜6に保ちながら10時間90℃で反応させ、10%苛性ソーダ水溶液を添加してpH10とし、50℃で濾過し、そして乾燥させて、下記式
【0037】 【化20】 の染料85.0部を得た。 この染料は酸付加塩の形態で実施例1と同様な染色特性を有し、紙料を黄色に染色した。 【0038】実施例16 実施例1と同様な方法で合成した下記式 【化21】 のジスアゾ化合物28.8部(0.05モル)、35%塩酸16.0部および水350部よりなる懸濁液に、30 ℃を保ちながら10部の水中における3.6部の亜硝酸ソーダの溶液を1時間を要して滴下し、同温度で1.5
時間撹拌してジアゾ化を完了した。 過剰の亜硝酸をアミドスルホン酸を加えることにより消去し、次いで公知の方法でメタフェニレンジアミンにジエチルアミノエチルクロライド2当量を脱塩酸反応させることにより得られた1,3ジ(ジエチルアミノエチルアミノ)ベンゼンジハイドロクロライド18.2部(0.05モル)を含む水溶液75部を加え、10%炭酸ナトリウムを滴下し、p
H2〜3に保持してカップリングを完了させ、Cr
2 O 3 8.0部、ギ酸10.0部および水30部よりなる水溶液を加え100〜120℃の温度で3時間クローミングした。 50℃に冷却したのち、炭酸ナトリウムを加えることによりpH9.5とし濾過し、そして乾燥させることにより、下記式
【0039】 【化22】 の化合物41.5部を得た。 この染料は酸付加塩の形態において、実施例2と同様な染料特性を有し、紙料および皮革を黒色に染色した。 【0040】使用例1 叩解度25度SRのLBKP 30g/リットルのパルプ溶液330部中へ実施例2で得られた液体染料0.7 部を入れ、5分間撹拌して染色した。 これを抄紙すると良好な日光堅牢度および耐ブリード性を有する濃純黒色の紙が得られた。 また、その染色廃水は無色であった。 【0041】使用例2 タンニン鞣甲皮を60分間水洗し、マングルローラで絞り率100%とした後その20部を水100部、実施例1の染料0.5部を加え、45〜50℃で染色した。 更に加脂剤0.6部を加えて40〜50℃で加脂処理を行なった後、染色ドラムの水を捨てて新たに水100部および90%ギ酸0.2部を加え、そして10分間40℃ で処理した。 その後、水洗および乾燥すると均染性の優れた、タンニン鞣甲皮の濃純黒色の染色物が得られた。 フロントページの続き (51)Int.Cl. 5識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09B 56/20 8619−4H D06P 1/18 7306−4H |