新規ペプチド及びその利用方法

申请号 JP2018200143 申请日 2018-10-24 公开(公告)号 JP2020065485A 公开(公告)日 2020-04-30
申请人 学校法人 芝浦工業大学; JX金属株式会社; 发明人 山下 光雄; 三浦 彰;
摘要 【課題】ヒ素を含む鉱物を選別する方法を提供すること。 【解決手段】以下のアミノ酸配列を有するペプチド。 (TSNQ)−(LIVFA)−(ED)−(RKNMDCPQSETGWHY)−(LIVFA)−(RKNMDCPQSETGWHY)−(LIVFA)−(LIVFA)−(LIVFA)−(RHK)−(TSNQ)−(TSNQ) {ただし、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される} 【選択図】なし
权利要求

以下のアミノ酸配列を有するペプチド。 (TSNQ)−(LIVFA)−(ED)−(RKNMDCPQSETGWHY)−(LIVFA)−(RKNMDCPQSETGWHY)−(LIVFA)−(LIVFA)−(LIVFA)−(RHK)−(TSNQ)−(TSNQ) {ただし、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される}以下のアミノ酸配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser以下のアミノ酸配列で表されるペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser以下のアミノ酸配列と少なくとも75%同一である配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser以下のアミノ酸配列と少なくとも83%同一である配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser以下のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser以下のアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が挿入、欠失、置換及び/又は付加された配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Serヒ素含有鉱物を選別及び/又は識別するための組成物であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを含む、該組成物。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸の配列と少なくとも90%以上同一の配列を有する核酸。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを表面に提示した生物。請求項9〜11のいずれか1項に記載の核酸を有する微生物。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを表面に有する微粒子。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを有する精製カラム。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを有する捕収剤。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを有する抑制剤。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを使用する、ヒ素含有鉱物を抽出するための方法。請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項8の組成物を使用する、ヒ素含有鉱物を選別及び/又は識別するための方法。請求項19に記載の方法であって、 前記ペプチドを表面に有する微生物を、ヒ素含有鉱物粒子が分散した液に添加するステップと、 前記ヒ素含有鉱物粒子を凝集させ、沈降させるステップと、 前記凝集及び沈降したヒ素含有鉱物粒子を回収するステップと を含む方法。請求項19に記載の方法であって、 前記ペプチドを担体に固定するステップと、 前記担体をカラムに導入するステップと、 ヒ素含有鉱物粒子が分散した液を前記カラムに通過させるステップと を含む方法。請求項19に記載の方法であって、 前記ペプチドを微粒子に固定するステップと、 ヒ素含有鉱物粒子が分散した液に、前記微粒子を添加するステップと を含む方法。請求項19に記載の方法であって、 前記ペプチドを用いた浮遊選鉱を行うステップ を含む方法。請求項23に記載の方法であって、 前記浮遊選鉱を行うステップは、 前記ヒ素含有鉱物と、黄鉄鉱及び/又は黄銅鉱との混合物を投入すること、及び 前記ペプチド又は前記ペプチドを含む微生物を抑制剤として投入すること を含み、 これにより前記ヒ素含有鉱物を尾鉱へ選別し、黄鉄鉱及び/又は黄銅鉱を浮鉱へと選別する、 該方法。請求項24に記載の方法であって、前記ヒ素含有鉱物が硫砒銅鉱であり、前記微生物がファージである、該方法。請求項24又は25に記載の方法であって、前記ペプチドを用いた浮遊選鉱を行うステップが、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む微生物を抑制剤として投入した後で、更に、捕収剤を投入することを含む、該方法。

说明书全文

本発明は新規ペプチド及びその利用方法に関する。

鉱物資源のなかには有用な金属を含む一方で、有害な物質を含む可能性がある。例えば、銅鉱山で産出される銅鉱石は、主に硫化鉱である。そして、この硫化鉱を大別すると、輝銅鉱(Cu2S)や銅藍(CuS)といった鉱物を主体とする、比較的高銅品位の二次硫化銅鉱と、黄銅鉱(CuFeS2)を主体とする、比較的低銅品位の初生硫化鉱がある。これらの鉱石に加えて、ヒ素を含む鉱物(例えば硫砒銅鉱)なども挙げられる。

ヒ素は環境に有害な元素であるため、ヒ素を含む鉱物が混入した状態で硫化銅鉱をそのまま製錬に使用した場合、様々な問題が生じる。そこで、従来は、製錬を行う前に、ヒ素を除去するための様々な処理を行ってきた。例えば、特開2012−087400号では、焙焼など行ってヒ素を揮発させ、鉱物から予めヒ素を除去するなどの処置を行っている。

また、特開2010−133004号では、銅鉱石や銅精鉱などのヒ素を含有する含銅物からヒ素鉱物を分離する方法として、チオ硫酸ナトリウムを抑制剤として使用する方法を提案している。 また、特開2011−156521号では、同様の含銅物からヒ素鉱物を分離する方法として、浮遊選鉱時にポリエチレンアミン類等のキレート剤を抑制剤として使用する方法を提案している。 更に、国際公開第2018/052134号では、パニングを繰り返してスクリーニングすることで、硫砒銅鉱に結合するファージを得ることを開示している。更に該特許文献では、ファージの表面に発現し、且つ硫砒銅鉱に結合するペプチドを開示している。

特開2012−087400号公報

特開2010−133004号公報

特開2011−156521号公報

国際公開第2018/052134号

従来の方法において、特許文献1のようにあらかじめ焙焼などによりヒ素を揮発させて除去するための処置を行う場合、大規模な設備などが必要となっていた。また、ヒ素を含む鉱物自体を直接分離しようとしても、物理的に分離することが難しい鉱物が幾つか存在する。特に黄銅鉱や斑銅鉱、および輝銅鉱などを主成分とする銅精鉱中のヒ素は、四面砒銅鉱((CuFe)12As4S13)や硫砒銅鉱(Cu3AsS4)などを含有するヒ素含有銅鉱物として存在する場合が多い。そして、これらのヒ素含有銅鉱物は、黄銅鉱や斑銅鉱などと似た浮遊特性を持つため、浮遊選鉱によって銅とヒ素とを分離することは困難である。特許文献2のチオ硫酸ナトリウムを用いる方法や特許文献3のキレート剤を用いても、銅鉱物とヒ素鉱物の分離性能が不十分であり、実用化された例はない。また、特許文献4では、バブルピックアップ試験等により、特定のペプチドが硫砒銅鉱に結合すること、及び、それにより硫砒銅鉱表面を親化させることが開示されている。しかし、実際に硫砒銅鉱を分離する環境においては、硫砒銅鉱との結合を妨げる様々な要因が考えられ、より厳しい条件であっても、硫砒銅鉱と結合できるペプチドが求められる。

本発明は、上記の問題点に鑑み、ヒ素を含む鉱物を効率的に分離するための手段を提供する事を目的とする。

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のペプチドおよびペプチドを提示したファージが、ヒ素を含む鉱物に結合することを見出した。

上記知見に基づき、本発明は一側面において以下の発明を包含する。

(発明1) 以下のアミノ酸配列を有するペプチド。 (TSNQ)−(LIVFA)−(ED)−(RKNMDCPQSETGWHY)−(LIVFA)−(RKNMDCPQSETGWHY)−(LIVFA)−(LIVFA)−(LIVFA)−(RHK)−(TSNQ)−(TSNQ) {ただし、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される} (発明2) 以下のアミノ酸配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser (発明3) 以下のアミノ酸配列で表されるペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser (発明4) 以下のアミノ酸配列と少なくとも75%同一である配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser (発明5) 以下のアミノ酸配列と少なくとも83%同一である配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser (発明6) 以下のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser (発明7) 以下のアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が挿入、欠失、置換及び/又は付加された配列を含むペプチド。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser (発明8) ヒ素含有鉱物を選別及び/又は識別するための組成物であって、発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドを含む、該組成物。 (発明9) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドをコードする核酸。 (発明10) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドをコードする核酸の配列と少なくとも90%以上同一の配列を有する核酸。 (発明11) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドをコードする核酸の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸。 (発明12) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドを表面に提示した生物。 (発明13) 発明9〜11のいずれか1つに記載の核酸を有する微生物。 (発明14) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドを表面に有する微粒子。 (発明15) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドを有する精製カラム。 (発明16) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドを有する捕収剤。 (発明17) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドを有する抑制剤。 (発明18) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチドを使用する、ヒ素含有鉱物を抽出するための方法。 (発明19) 発明1〜7のいずれか1つに記載のペプチド又は発明8の組成物を使用する、ヒ素含有鉱物を選別及び/又は識別するための方法。 (発明20) 発明19に記載の方法であって、 前記ペプチドを表面に有する微生物を、ヒ素含有鉱物粒子が分散した液に添加するステップと、 前記ヒ素含有鉱物粒子を凝集させ、沈降させるステップと、 前記凝集及び沈降したヒ素含有鉱物粒子を回収するステップと を含む方法。 (発明21) 発明19に記載の方法であって、 前記ペプチドを担体に固定するステップと、 前記担体をカラムに導入するステップと、 ヒ素含有鉱物粒子が分散した液を前記カラムに通過させるステップと を含む方法。 (発明22) 発明19に記載の方法であって、 前記ペプチドを微粒子に固定するステップと、 ヒ素含有鉱物粒子が分散した液に、前記微粒子を添加するステップと を含む方法。 (発明23) 発明19に記載の方法であって、 前記ペプチドを用いた浮遊選鉱を行うステップ を含む方法。 (発明24) 発明23に記載の方法であって、 前記浮遊選鉱を行うステップは、 前記ヒ素含有鉱物と、黄鉄鉱及び/又は黄銅鉱との混合物を投入すること、及び 前記ペプチド又は前記ペプチドを含む微生物を抑制剤として投入すること を含み、 これにより前記ヒ素含有鉱物を尾鉱へ選別し、黄鉄鉱及び/又は黄銅鉱を浮鉱へと選別する、 該方法。 (発明25) 発明24に記載の方法であって、前記ヒ素含有鉱物が硫砒銅鉱であり、前記微生物がファージである、該方法。 (発明26) 発明24又は25に記載の方法であって、前記ペプチドを用いた浮遊選鉱を行うステップが、前記ペプチド又は前記ペプチドを含む微生物を抑制剤として投入した後で、更に、捕収剤を投入することを含む、該方法。

一側面において、本発明では、ペプチドを活用する。これにより、従来の方法に比べて、大規模な設備を要することなく、対象の鉱物を分離できる。

また、本発明で用いるペプチドは、効率的に分離を行うことを可能にする。

本発明の一実施形態に係るペプチドによるBublePickUp試験の結果を表す図である。

本発明の一実施形態に係るペプチドの結合能を示す図である。

本発明の一実施形態に係るペプチドの結合能力を示す図である。

以下、本発明の理解を促進するために、具体的な実施形態を挙げて説明する。以下の実施形態の説明は本発明の範囲を限定することを意図したものではない。

1.適用対象の物質 本発明は、一実施形態において、特定の物質を分離する方法に適用することができる。特定の物質として、ヒ素を含む鉱物が挙げられる。更に具体的には、ヒ素を含む銅鉱物が挙げられる。ヒ素を含む銅鉱物としては、硫砒銅鉱や砒四面銅鉱等が挙げられる。

2.ペプチド 上述した物質を分離するため、本発明は、一実施形態において、ペプチドを用いることができる。より具体的には、少なくとも以下の配列を含むペプチドを用いることができる。典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20のうちから選択される2つの数で規定される範囲(例:1以上10以下、5以上20以下)のアミノ酸を下記のアミノ酸配列のN末端側及び/又はC末端側に付加することができる。

(1)(TSNQ)−(LIVFA)−(ED)−(RKNMDCPQSETGWHY)−(LIVFA)−(RKNMDCPQSETGWHY)−(LIVFA)−(LIVFA)−(LIVFA)−(RHK)−(TSNQ)−(TSNQ) {ただし、上記式の()中の少なくとも1種のアミノ酸のいずれか1つが選択される}

後述する実施例においては、以下のアミノ酸配列のペプチドを用いて、硫砒銅鉱を分離した例が示されている。 (2)Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser

上記(1)に記載のアミノ酸配列と、上記(2)に記載のアミノ酸配列とを対比させると以下の通りとなる。

表1にあるように、配列(2)1番目はセリンである。これは、極性非電荷のアミノ酸である。従って、同様の性質を有するトレオニン、アスパラギン、グルタミンに置換しても同様の効果が得られると考えられる。配列(2)12番目のセリンや11番目のトレオニンについても同様の置換が可能であると考えられる。

配列(2)2番目は、ロイシンである。ロイシンは疎水性アミノ酸である。従って、同様の性質を持つ、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、アラニン等に置換しても同様の効果を有すると考えられる。配列(2)9番目のロイシン、並びに配列(2)5番目、7番目及び8番目のアラニンについても同様の置換が可能であると考えられる。

配列(2)3番目はアスパラギン酸である。これは、酸性アミノ酸である。従って、同様の性質を有する、グルタミン酸に置換しても同様の効果が得られると考えられる。

配列(2)4番目はグリシンである。グリシンの側鎖は(−H)なので、これ自体で特定の機能に関与する可能性は低いと考えられる。従って、グリシン部分については任意の天然アミノ酸に置換しても同様の効果を有すると考えられる。配列(2)6番目のグリシンについても同様の置換が可能であると考えられる。

配列(2)10番目はアルギニンである。アルギニンは、塩基性の側鎖を有する。従って同様の性質を持つ、リシンやヒスチジンに置換しても同様の効果を有すると考えられる。

また、本発明は、一実施形態において、以下のアミノ酸配列を含むペプチドを包含する。 (2)Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser アミノ酸配列(2)のN末端側及び/又はC末端側には、任意の数のアミノ酸が付加されてもよい。典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20のうちから選択される2つの数で規定される範囲(例:1以上10以下、5以上20以下)のアミノ酸をN末端側及び/又はC末端側に付加することができる。

また、本発明は、一実施形態において、以下の12個のアミノ酸配列で表されるペプチドを包含する。 (2)Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser

上記したアミノ酸配列(2)については、軽微な改変(例:アミノ酸の挿入、置換、付加)を行ったとしても、アミノ酸配列(2)と同様の機能を発揮することができる。例えば、アミノ酸配列(2)と66%以上、75%以上、83%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上同一であるペプチド又は該同一性を有する配列を含むペプチドも同様の機能を発揮することができる。

配列の同一性の数値の算出方法については、当分野で公知の手法を用いることができる。例えば、BLAST(登録商標)が提供するアミノ酸(又はタンパク質)のホモロジー検索で用いるBlastpなどで判定される数値に基づいてもよい。

また、本発明は、一実施形態において、以下のいずれか1つのアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が挿入、欠失、置換及び/又は付加された配列を含むペプチドを包含する。典型的には、4個以下、3個以下、又は2個以下のアミノ酸が挿入、欠失、置換及び/又は付加された配列を含むペプチドを包含する。 (2)Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser

また、本発明は、一実施形態において、上述したペプチドを含有する組成物を包含する。即ち、上述したペプチドを単独で用いるのみならず、他の成分を含めた組成物でも、同様の機能を発揮することができる。当該組成物は、上述したペプチドの機能を損なわない範囲で任意の成分を含有することができる(緩衝剤、塩化ナトリウム、糖類など)。

3.ペプチドをコードする核酸 本発明は、一実施形態において、上述したペプチドをコードする核酸を包含する。核酸は、DNAでもRNAでもよい。また、本発明は、一実施形態において、上述したペプチドをコードする核酸のセンス鎖に対して相補的な配列を有する核酸であってもよい。

更に、本発明は、一実施形態において、上述したペプチドをコードする核酸をコードする核酸配列と、少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上同一の配列を有する核酸を包含する。配列の同一性の算出方法については、上述したアミノ酸配列と同様、公知技術を用いて算出できる。例えば、BLASTのBlastn等で検索したときに判定される数値に基づいてもよい。

更に、本発明は、一実施形態において、上述したペプチドをコードする核酸のセンス鎖に対して相補的な配列と、ハイブリダイズすることができる核酸を包含する。より具体的には、ストリンジェントな条件でハイブリダイズすることができる核酸を包含する。ストリンジェントな条件とは、当分野で公知の基準を用いることができる。例えば、特開2015−023831号に記載されているような基準を条件にしてもよい。具体的には、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0Mの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できる条件を意味する。

上述したいずれの核酸も、遺伝子工学的な手法を通して、目的とするペプチドを製造するのに有用である。例えば、上述したいずれの核酸も、発現ベクターに組み込んで目的のペプチドを大量に発現させることができる。あるいは後述するファージディスプレイ法を用いて、表面に目的のペプチドを有するファージを製造することができる。

4.ペプチド及び/又は核酸を利用した物 上述したペプチド及び/又は核酸は、様々な形で応用することができる。

4−1.微生物 例えば、遺伝子工学的な手法を用いて(例えば、微生物の遺伝子に上述した核酸を導入して)、微生物に目的のペプチドを大量に生成させることができる。あるいは、微生物の表面に目的のペプチドを発現させて、該微生物を利用して、目的の物質を分離することができる。本明細書で述べる「微生物」には、五界説で述べるところの菌界、モネラ界、又は原生生物界に属する生物が含まれる。また、厳密な意味では生物には該当しないものの、本明細書で述べる「微生物」には、ウイルスも含まれる。典型的には、真菌、細菌、ウイルスを用いる。特に好ましいのは、遺伝子工学的な手法が確立された物である(例:酵母、E.coli、乳酸菌、バクテリオファージなど)。本発明は、一実施形態において、このような微生物を包含する。

4−2.微粒子 本発明は、一実施形態において、ペプチドを表面に有する微粒子を包含する。ペプチドは、上述したペプチドを用いることができる。また、微粒子は、ビーズ(例:磁気ビーズ、ガラスビーズ、高分子ビーズなど)、担体等が挙げられる。微粒子の大きさについては、特に限定されず、用途に応じて適宜調整すればよい。また、微粒子の表面にペプチドを結合させる手法については、当分野で公知の手法を用いることができる。

本発明では、上述したペプチドを表面に有する微粒子を用いて、目的の物質を分離することができる。例えば、後述する方法を用いて、目的の物質を、ペプチドに結合させて沈降させることにより、分離することができる。

4−3.精製カラム 目的の物質を分離する方法としてカラムクロマトグラフィーが挙げられる。カラムクロマトグラフィーは、カラム(カラム表面の官能基)が特定の物質に選択的に結合することを利用する。本発明の一実施形態では、上述したペプチドを担体に担持させることができる。そして、この担体をカラムに導入することができる。こうしたカラムを使用することにより、目的の物質を分離することができる。

4−4.浮遊選鉱の捕収剤 浮遊選鉱(浮選)は、微粒子を気泡にトラップさせることにより分離する方法である。この際に、捕収剤を使用することができる。本発明の一実施形態では、ペプチドを公知の捕収剤や起泡剤に結合し、気泡にトラップしやすい形態として用いることができる。あるいは、当該ペプチドを、疎水性を付与する化学的部位(例、アルキル基、フェニル基、疎水性のアミノ酸等)と結合することで捕収剤として機能させ、気泡にトラップさせやすい形態として用いることができる。これにより、目的の物質を気泡にトラップすることができ、結果として分離することができる。

4−5.浮遊選鉱の抑制剤 別の一実施形態では、本発明のペプチドは、特定の鉱物の表面を親水化させる。これにより、浮遊選鉱の際に、特定の鉱物が浮遊するのを抑制することができる。従って、本発明のペプチドは、抑制剤として使用することができる。この際に、ペプチド単独で用いてもよいし、微生物に結合した態様で使用してもよいし、特定の化合物と結合した形で使用してもよい。

5.応用形態(分離方法) 上述した応用形態に関する方法を以下に具体的に説明する。

5−1.分離対象 上述した応用形態はいずれも所定の物質を分離することに関する。例えば、上述したヒ素含有鉱物(例えば、硫砒銅鉱)を分離することができる。一実施形態において、ペプチドとの結合を阻害する物質(例えば、不純物、界面活性剤など)の存在下でも、本発明のペプチドは、ヒ素含有鉱物とより特異的に結合することができる。

5−2.微生物を用いた分離方法 本発明は、一実施形態において、微生物を用いて、物質(具体的には、ヒ素含有鉱物、より具体的には硫砒銅鉱)を分離することができる。微生物としては、上述した微生物であれば、いずれも用いることができる。典型的にはバクテリオファージが挙げられる。

方法としては、まず、公知の遺伝子工学的な手法により、上述したペプチドをコードする核酸配列を微生物に導入し、微生物の表面に発現させることができる。その後、鉱物粒子が分散した液に、微生物を添加することができる。

微生物の添加量については、溶液中に分散している鉱物粒子の量などの諸条件を考慮しながら適宜決定することができる。ファージを用いた例としては、鉱物粒子の量100g/Lに対し、1010pfu/mL〜1018pfu/mLであってもよい。好ましくは、1011pfu/mL以上、更に好ましくは、1012pfu/mL以上である。上限値については、好ましくは1016pfu/mL以下、更に好ましくは、1015pfu/mL以下である。或いは、鉱物粒子の量3g/Lに対し、1017pfu/mL〜1021pfu/mLであってもよい。好ましくは、1018pfu/mL〜1020pfu/mLである。

微生物を添加した後、暫く放置すると、微生物表面にあるペプチドが鉱物粒子と結合し、凝集が起こる。そして、溶液の底に沈降する。その後、底に沈降した鉱物を回収することができる。

5−3.カラムクロマトグラフィーを用いた分離方法 本発明は、一実施形態において、カラムクロマトグラフィーを用いて、物質(具体的には、ヒ素含有鉱物、より具体的には硫砒銅鉱)を分離することができる。方法としては、まず、上述したペプチドを、公知の手法により、担体に固定させることができる。その後、その担体を精製用のカラムに導入することができる。前記カラムが準備できたら、分離対象の物質が分散した液を、前記カラムの中に通す。すると、前記物質は、カラムの中に結合するか、又は溶出が遅れる。これにより、特定の物質を分離することができる。

5−4.微粒子を用いた分離方法 本発明は、一実施形態において、微粒子を用いて、物質(具体的には、ヒ素含有鉱物、より具体的には硫砒銅鉱)を分離することができる。まず、上述したペプチドを、公知の手法により、微粒子表面に固定させることができる。その後、鉱物粒子が分散した液に、微粒子を添加することができる。微粒子を添加した後、暫く放置すると、微粒子表面にあるペプチドが鉱物粒子と結合し、凝集が起こる。そして、溶液の底に沈降する。その後、底に沈降した鉱物を回収することができる。あるいは、微粒子として磁気ビーズを用いることができ、沈降することを待つことなく、磁力を用いて、鉱物粒子を回収することができる。

5−5.浮選を用いた分離方法 本発明は、一実施形態において、捕収剤及び/又は起泡剤を用いて、物質(具体的には、ヒ素含有鉱物、より具体的には硫砒銅鉱)を分離することができる。具体的には、捕収剤及び/又は起泡剤を、公知の方法により、上述したペプチドと結合させる。そして、結合させた捕収剤を溶液に導入して撹拌させ(適宜他の薬剤も導入し)、気泡を発生させる。その後、鉱物粒子を導入し、該鉱物粒子を気泡にトラップさせる。これにより、鉱物粒子を回収することができる。あるいは、当該ペプチドを、疎水性を付与する化学的部位(例、アルキル基、フェニル基、疎水性のアミノ酸等)と結合することで捕収剤として機能させ、気泡にトラップさせやすい形態として用いることができる。

別の一実施形態において、本発明のペプチドは、抑制剤として使用することができる。抑制剤とは、浮遊選鉱工程において、特定の鉱物の浮遊性を抑制する試薬である。 また、本発明のペプチドは微生物と一体化させて使用してもよい。より具体的には、本発明のペプチドは、微生物の表面にペプチドを提示させるような形態で使用することができる。微生物については、「4−1.微生物」の項で述べた微生物を使用することができる。好ましい微生物はファージであり、より好ましい微生物はM13バクテリオファージである。

以下の説明は本発明の範囲を限定することを意図しないが、本発明のペプチドはヒ素含有鉱物(例:硫砒銅鉱)の表面を親水化する性質があり、これにより、ヒ素含有鉱物が泡にトラップされることを抑制すると考えられる。

従って、浮鉱に選別される可能性のある鉱物(例:黄銅鉱等)との選別において本発明は特に有用となる可能性がある。好ましい実施形態において、先ず、ヒ素含有鉱物(例:硫砒銅鉱)の懸濁液に、ペプチド及び/又はペプチドを含む微生物を投入し、その後で、捕収剤を投入することができる。当該順序で投入することで、より効果的に、ヒ素含有鉱物が泡にトラップされることを抑制することができる。

浮遊選鉱の条件は特に限定されないが、典型的には以下の条件で実施することができる。 パルプ濃度 50〜600(dry−g/L) 浮選時間 5〜30分 浮選pH 3以上10以下 捕収剤 5〜100g/t(対象鉱物重量) 起泡剤 0.001〜100g/t(浮遊選鉱溶液)

ペプチドの量は特に限定されず、上記浮遊選鉱の条件の下、抑制剤の効果を発揮できる量を適宜決定することができる。ペプチドそのものではなく、ペプチドを含む微生物を用いる場合には、上記ペプチド量に相当する量を用いることができる。例えば、ファージの場合には、1010pfu/L〜1018pfu/L(1014〜1022pfu/T)である。

捕収剤は、目的とする鉱物の表面に選択的に吸着することにより、その表面の疎水性を高める働きをする。具体的な物質としては、特に限定されないが、硫化銅鉱物を優先的に回収するため一般的に使用・市販されている捕収剤、具体的にはザンセート類やチオノカルバメート類やそれらの混合物、より具体的にはカリウムアミルザンセート等が挙げられる。捕収剤の量は、5〜100g/tである。5g/t未満だと、浮鉱が得られにくいため望ましくなく、100g/t超だと効果が頭打ちになるのでそれ以上添加しても意味が無い。一方、前段階である粗選工程後、精選工程にてペプチドおよびペプチドを含む微生物を用いたヒ素含有鉱物と他の鉱物との分離浮選を行う場合には、粗選工程からの捕収剤の持ち込みがあるため、当該選鉱工程では捕収剤を添加しないことも可能である。

起泡剤は、溶媒に溶けて溶液の泡を安定化する物質である。具体的な物質としては、特に限定されないが、Tween、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、パイン油、Aerofroth70(CYTEC)等が挙げられる。起泡剤の量は、0.001〜100g/tである。0.001g/t未満だと、浮鉱が得られにくいため望ましくなく、100g/t超だと効果が頭打ちにあるのでそれ以上添加しても意味が無い。一方、前段階である粗選工程後、精選工程にてペプチドおよびペプチドを含む微生物を用いたヒ素含有鉱物と他の鉱物との分離浮選を行う場合には、捕収剤と同様、粗選工程からの起泡剤の持ち込みがあるため、当該選鉱工程では起泡剤を添加しないことも可能である。

6.鉱物との結合における選択性 上述したペプチドは、特定の鉱物に特に強く結合し、他の鉱物には結合しないという選択性を有する。より具体的には、ヒ素を含む鉱物(例:硫砒銅鉱)には強く結合し、他の鉱物(例えば、黄銅鉱)には、結合しない(又は、ヒ素を含む鉱物の場合と比べて結合度合いが著しく低い)という性質を有する。従って、ヒ素を含む鉱物と他の鉱物との混合物であっても、上述した方法を用いることにより、ヒ素を含む鉱物を分離・除去することができる。あるいは、上述したペプチドは、ヒ素を含む鉱物を識別するために用いることができる。例えば、本発明のペプチドに識別マーカー(例:蛍光分子など)を結合させることにより、ヒ素を含む鉱物を検出することができる。

更に、上述したペプチドは、補収剤及び/又は起泡剤の存在下でも、抑制剤として機能することができる。即ち、上述したペプチドは、特定の鉱物の表面を親水化させることができる。或いは、上述したペプチドは、界面活性剤の存在下でも、特定の鉱物との結合性を維持する。更に好ましくは、上述したペプチドは、界面活性剤の存在下でも、特定の鉱物との選択的結合性を維持する。界面活性剤は浮遊選鉱においては頻用されるという理由から、こうした性質は、実際に浮遊選鉱を行う環境において特に有用である。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性等が挙げられる。典型的には、ノニオン性である。ノニオン性界面活性剤の例としては、Tween20等が挙げられる。

7.ペプチドの作成方法 上述したペプチドは、様々な方法で製造することができる。上述したペプチドをコードするDNAを、発現ベクターに組み込んで、微生物等に導入し、大量にペプチドを発現させて回収することができる。あるいは、遺伝子工学的な手法のほか、有機化学的な方法により合成してもよい。

あるいは、表面に上述したペプチドを提示したファージ(例えばM13ファージ)を製造する場合には、ファージディスプレイ法を用いることができる。目的のペプチドを表面に提示した微生物については、公知の遺伝子工学的手法により製造することが可能である。

以下、実施例により、上述した本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。

(実施例1)ファージディスプレイ法による硫砒銅鉱吸着ファージの選択 硫砒銅鉱に吸着するペプチド分子の選択としては、ファージディスプレイ法を用いた。具体的には、アミノ酸12個がランダムに結合したM13バクテリオファージライブラリーを用い、粒度75μm以下に粉砕した硫砒銅鉱と接触させ、硫砒銅鉱に吸着したバクテリオファージのみを回収し、回収したファージについて大腸菌に感染させ再度増殖後、再び硫砒銅鉱に接触させ、吸着したファージのみを回収した。この吸着・回収操作(パニング)を数回繰り返し、選択されたファージのDNA配列を解析し、ファージに結合したアミノ酸配列を特定した。

接触させる硫砒銅鉱のパルプ濃度を3000ppmとしてパニングを4回繰り返した。特許文献4(WO2018/052134号)に開示された方法との違いとして、今回は、パニングの際に、濃度を挙げながら界面活性剤(Tween(登録商標)−20)を配合した(濃度について、1回目0.1%、2回目0.5%、3回目0.7%、4回目1.0%)。これにより、より結合能力が高いサンプルを得ることができ、且つ硫砒銅鉱と非特異的に結合するサンプルを効果的に排除することができる。最終的に得られたファージのDNA配列を解析した結果、以下に示すアミノ酸配列を持つペプチドが結合したファージが選択されたことを確認した。 Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser 以後、上記に示すペプチドが結合したファージをA56−phageと呼ぶ。

(実施例2)硫砒銅鉱結合ファージのELISA分析 硫砒銅鉱と実施例1にて選択したA56−phageについて、ELISA法(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay、酵素結合免疫吸着法)により、硫砒銅鉱との結合量を測定した。具体的には硫砒銅鉱3000mg/Lを懸濁した液を96穴マイクロプレートの各ウェルに添加し、pH7の条件下でそれぞれのウェルに各ファージを添加後、未結合のファージを洗浄した。さらにこの懸濁液に酵素(ペルオキシダーゼ)標識した抗M13ファージ抗体を添加したのち、未結合の抗ファージ抗体を洗浄した。ここに酵素の基質となる2,2’−azino−bis(3−ethylbenzothiazoline−6−sulphonic acid)diammonium salt(ABTS)を添加し、青色の発色をマイクロプレートリーダーで波長405nmにて吸光度測定した。更に、これらの手順を、黄銅鉱に変更したうえで行った。

硫砒銅鉱への結合能力に対する黄銅鉱への結合能力の比率を算出した結果、硫砒銅鉱:黄銅鉱=4.5:2.5であった。 従って、A56−phageが、黄銅鉱よりも硫砒銅鉱に、より特異的に結合することが示された。このことにより、黄銅鉱と硫砒銅鉱との存在下で、A56−phageによる硫砒銅鉱の選別に有用であることが示された。

(実施例3)ペプチドを用いたBubble Pick Up試験(硫砒銅鉱) 実施例1〜2のA56−phageをBubble Pick Up試験に用いた。より具体的には、最初に、硫砒銅鉱の濃度が100g/Lになるように純水に懸濁し、pHの値を7に調整した。更には、起泡剤としてMIBCも添加した(最終濃度10μL/L)。次に、懸濁液にA56−phage(添加後の濃度1010〜1018pfu/L)を投入したサンプル、及びこれを投入しないサンプルを用意した。そして、これらを1分間ボルテックスミキサーで撹拌し、5分間静置した。次に、A56−phageの添加の後に、捕収剤Xanthateを添加した。別の実施例では、A56−phageの添加の前に、捕収剤Xanthateを添加した。

20μLの泡をマイクロチップの先端に形成した。その後、泡を、前記2つのサンプル懸濁液の表面に2秒間接触させた。接触を30回繰り返し、以下の式に基づいて付着確率を算出した。 付着確率(%)=(鉱物が付着した回数÷30)×100%

結果を図1に示す。A56−phageで硫砒銅鉱を処理することにより、泡への付着が著しく抑制された。また、捕収剤の添加するタイミングについては、A56−phageで硫砒銅鉱を処理した後の方が効果的であり、泡への付着が更に抑制された。

(実施例4)界面活性剤存在下での、ペプチドの結合能力の比較試験 以下の二種類のペプチドを準備した。これらのペプチドには、蛍光標識として、FluoresceinをN末端側に結合させた。 (1)Ser−Leu−Asp−Gly−Ala−Gly−Ala−Ala−Leu−Arg−Thr−Ser(A56−phageから得られたペプチド、以下A56ペプチドと称する) (2)Asn−Pro−Glu−His−Ala−Ala−Phe−Ser−Pro−Val−Thr−Val(A710−phageから得られたペプチド(WO2018/052134号参照)、以下A710ペプチドと称する)

硫砒銅鉱を96ウェルプレートの底に固着させた(鉱物濃度3g/L)。ペプチド含有緩衝液を各ウェルに導入し、ペプチドと硫砒銅鉱とを結合させた。その後、上清を吸い取り、ペプチドなしの緩衝液で3回洗浄した。洗浄後、蛍光測定を行った。なお、緩衝液は、pH3に調整したクエン酸緩衝液(濃度50mM)を使用した。緩衝液中のペプチドの濃度は、100ng/mLに調整した。

ペプチド含有緩衝液は、2種類用意した。具体的には、Tween20を含む緩衝液と、Tween20を含まない緩衝液とを用意した。

結果を図2、図3に示す。図2より、A56ペプチドは、Tween20が存在しない場合には硫砒銅鉱への選択性はないが、Tween20が存在下では、硫砒銅鉱へ選択的に結合する傾向を示した。また、図3より、A710ペプチド及びA56ペプチドのいずれにおいてもTween20が存在しない場合には、硫砒銅鉱への結合能力を有していた。しかし、Tween20が存在する場合には、両ペプチドとも硫砒銅鉱への結合能力が弱まったが、A56ペプチドはA710ペプチドよりも、硫砒銅鉱への結合能力を維持できる結果となった。A710ペプチドの場合と比べると、A56ペプチドは、Tween20の量が多く、更に過酷な条件となっていた。にもかかわらず、A710ペプチドが結合能力が大きく低下する一方で、A56ペプチドは結合能力を維持していた。こうしたデータは、A56ペプチドが、起泡剤等を使用する浮遊選鉱で有用となる可能性があることを示す。

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