モリブデン精鉱の分離方法

申请号 JP2017061789 申请日 2017-03-27 公开(公告)号 JP2018162509A 公开(公告)日 2018-10-18
申请人 JX金属株式会社; 发明人 箕浦 洋史;
摘要 【課題】二次硫化銅鉱の銅鉱物を主体とし、鉄を含む銅・モリブデン鉱物から浮遊選鉱でモリブデン精鉱を分離するに当り、モリブデンと銅及び鉄との分離効率を有意に向上させることのできるモリブデン精鉱の分離方法を提供する。 【解決手段】この発明のモリブデン精鉱の分離方法は、鉄を含む銅・モリブデン鉱物を浮遊選鉱し、鉄を含む銅精鉱とモリブデン精鉱とに分離する浮選工程を有するモリブデン精鉱の分離方法であって、前記銅・モリブデン鉱物として、二次硫化銅鉱の銅鉱物が主体である銅・モリブデン鉱物を対象とし、浮選工程で、銅・モリブデン鉱物を含むスラリーに、銅及び/又は鉄の浮遊性を抑制するための抑制剤として過 酸化 水 素を8.5kg/t以上添加し、前記スラリーのpHを5.5以上として、浮遊選鉱を行う。 【選択図】図1
权利要求

鉄を含む銅・モリブデン鉱物を浮遊選鉱し、鉄を含む銅精鉱とモリブデン精鉱とに分離する浮選工程を有するモリブデン精鉱の分離方法であって、 前記銅・モリブデン鉱物として、二次硫化銅鉱の銅鉱物が主体である銅・モリブデン鉱物を対象とし、 浮選工程で、銅・モリブデン鉱物を含むスラリーに、銅及び/又は鉄の浮遊性を抑制するための抑制剤として過酸化素を8.5kg/t以上添加し、前記スラリーのpHを5.5以上として、浮遊選鉱を行う、モリブデン精鉱の分離方法。前記過酸化水素の添加量を8.5kg/t〜17.0kg/tとする、請求項1に記載のモリブデン精鉱の分離方法。前記スラリーのpHを6.0〜8.0とする、請求項1又は2に記載のモリブデン精鉱の分離方法。前記銅・モリブデン鉱物が、二次硫化銅鉱の銅鉱物を20質量%以上で含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモリブデン精鉱の分離方法。前記二次硫化銅鉱の銅鉱物が輝銅鉱を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモリブデン精鉱の分離方法。

说明书全文

この発明は、銅・モリブデン鉱物を浮遊選鉱する浮選工程により、銅・モリブデン鉱物からモリブデン精鉱を分離する方法に関するものであり、特には、モリブデン精鉱の分離効率の向上に資する技術を提案するものである。

モリブデンは輝鉛鉱(molybdenite,MoS2)(硫化モリブデン)、モリブデン鉛鉱(wulfenite,PbMoO4)(モリブデン酸鉛)、パウエライト(Ca(Mo,W)O4)、鉄水鉛鉱(Fe2(MoO4)3・nH2O)等の鉱石中に存在しており、これらの中でも輝水鉛鉱が経済的に最も有利である。 輝水鉛鉱は銅の硫化物の副産物として回収されることが多く、このような輝水鉛鉱は、銅とモリブデンとを分離して銅精鉱およびモリブデン精鉱とした後、それぞれが所定の用途に用いられる。

上述した輝水鉛鉱などの種々の銅・モリブデン鉱物から、モリブデンと銅を分離するには一般に、浮遊選鉱法が用いられている。 より詳細には、必要に応じて、採掘鉱石を破砕し、所定の大きさになるように磨鉱した後、銅・モリブデンのバルク浮選を行い、採掘鉱石に含まれ得る銅およびモリブデン以外の鉱物等を除去して、銅・モリブデンのバルク精鉱を得る。その後、かかるバルク精鉱に対し、銅/モリブデン分離浮選を実施して、銅精鉱とモリブデン精鉱に分離する。この種の技術としては、たとえば、特許文献1、2に記載されたもの等がある。

ここで、銅/モリブデン分離浮選では通常、浮遊選鉱中の銅の浮遊を抑制するため、従来は、NaHS抑制剤又はNokes系抑制剤を鉱液中に添加していた。これらのうち、Nokes系抑制剤は、P2O5+10NaOH⇔Na3PO2S2+Na3PO3S+2Na2S+5H2Oにより生成したP2O5とNaOHの反応生成物であり、その一例としては、Tiofos(商品名、チリ・Fosfoquim社製)を挙げることができる。なおこの他に、抑制剤としてNa2S又はフェロシアン化カリウムを添加することもある。

しかるに、NaHSやTiofosは、上記の抑制剤として使用した際に、人体に対して悪影響を及ぼす有毒なガスであるH2Sガスを発生させるリスクがあるという問題があった。なおその他に、これらの抑制剤を用いる場合、浮遊選鉱で大気を給気すると、抑制剤の添加量が増加することから、窒素を給気する必要がある。また、Tiofosは添加すると尾鉱の脱水性を悪化させ得る。

なお、このような浮遊選鉱での添加剤に関し、特許文献3には、輝水鉛鉱を含む浮選精鉱から輝水鉛鉱を回収する方法で、過酸化水素や次亜塩素酸、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を用いることで分離に効果があることが開示されている。

特許文献4には、フロス浮選で得られた銅精鉱から輝水鉛鉱を分離させるに当り、可溶性の金属硫酸塩を添加した後に過酸化水素等の酸化剤を添加し、さらにノークス試薬等の抑制剤を用いて銅、鉄の浮遊を抑制することが記載されており、ここでは特に、pHを5.5〜7.5とすることで高い抑制効果が得られるとされている。

非特許文献1には、所定の銅・モリブデン鉱物から、浮遊選鉱によりモリブデン精鉱を分離させる際に、pHを9に調整し、銅の浮遊を抑制する抑制剤として過酸化水素を用いることが記載されている。

特開昭46−000301号公報

特公昭46−019684号公報

米国特許第2559104号明細書

米国特許第3811569号明細書

Y. Imaizumi et al.、“INVESTIGATION OF CU-MO SEPARATION METHOD IN FLOTATION PROCESS”、Copper 2016、平成28年11月13日配布、p.194-202

ところで、銅・モリブデン鉱物を浮遊選鉱する際に、抑制剤として、NaHSやTiofosに代えて過酸化水素を用いた場合も、銅鉱物の浮遊性を有効に抑制できることが解かり、それにより、上述したようなNaHSやTiofosが抱える問題なしに、浮遊選鉱を行うことが可能になる。

しかしながら、過酸化水素を抑制剤として用いる場合に、銅の採収率を低く抑えつつ、モリブデンの採収率を向上させることのできる詳細な浮選条件については未だ十分に解明されていない。特許文献3では、抑制剤の一例として過酸化水素が挙げられているにすぎず、過酸化水素を用いた場合の具体的な条件については記載されていない。

特許文献4でも、抑制剤として過酸化水素を単独で用いた場合の条件については何ら検討されていない。特許文献4では、酸化剤の他、金属硫酸塩や所定の抑制剤を用いることとしているから、コストが高くなり、管理が複雑になる可能性があり、また当該抑制剤としてNokes系抑制剤を用いることも示唆されているので、先述したような人体への悪影響の問題や、尾鉱の脱水性悪化の問題がある。

非特許文献1では、浮遊選鉱の対象とされた銅・モリブデン精鉱は、一次硫化銅鉱である黄銅鉱を多く含み、主として一次硫化銅鉱の銅鉱物からなるものであり、二次硫化銅鉱の銅鉱物を主体とする銅・モリブデン鉱物に対する浮遊選鉱については何ら着目されていない。このような二次硫化銅鉱の銅鉱物を主体とする銅・モリブデン精鉱では、水に溶けやすい酸化鉱が含まれていることが多く、溶け込んだ金属が鉱物表面を疎水化または親水化することより、一次硫化銅鉱の銅鉱物を主体とする銅・モリブデン鉱物と同様に浮遊選鉱を行っても、モリブデン精鉱を有効に分離できない可能性がある。 また、二次硫化銅鉱を主体とする銅・モリブデン鉱物には一般に鉄が含まれ、このような鉱物中の鉄成分は主として黄鉄鉱であり、浮遊選鉱では銅のみらならず鉄もモリブデンから分離させる必要があるが、非特許文献1では、このような鉄とモリブデンとの分離性については何ら検討されていない。

この発明は、従来技術が有するこのような問題を解決することを課題とするものであり、その目的とするところは、二次硫化銅鉱の銅鉱物を主体とし、鉄を含む銅・モリブデン鉱物から浮遊選鉱でモリブデン精鉱を分離するに当り、モリブデンと銅及び鉄との分離効率を有意に向上させることのできるモリブデン精鉱の分離方法を提供することにある。

発明者は、二次硫化銅鉱の銅鉱物が多く含まれ、鉄を含む銅・モリブデン鉱物に対し、過酸化水素を銅の浮遊の抑制剤として用いた浮遊選鉱の実験を多数行って鋭意検討した結果、所定の過酸化水素の添加量および所定のpHとすることにより、モリブデンと銅及び鉄との分離効率を有効に高めることができるとの知見を得た。

この知見の下、この発明のモリブデン精鉱の分離方法は、鉄を含む銅・モリブデン鉱物を浮遊選鉱し、鉄を含む銅精鉱とモリブデン精鉱とに分離する浮選工程を有するモリブデン精鉱の分離方法であって、前記銅・モリブデン鉱物として、二次硫化銅鉱の銅鉱物が主体である銅・モリブデン鉱物を対象とし、浮選工程で、銅・モリブデン鉱物を含むスラリーに、銅及び/又は鉄の浮遊性を抑制するための抑制剤として過酸化水素を8.5kg/t以上添加し、前記スラリーのpHを5.5以上として、浮遊選鉱を行うことにある。

この方法では、前記過酸化水素の添加量を8.5kg/t〜17.0kg/tとすることが好ましい。また、この方法では、前記スラリーのpHを6.0〜8.0とすることが好適である。

なおこの方法では、前記銅・モリブデン鉱物が、二次硫化銅鉱の銅鉱物を20質量%以上で含有することが好ましい。 またこの方法では、前記二次硫化銅鉱の銅鉱物は輝銅鉱を含むことが好ましい。

この発明のモリブデン精鉱の分離方法によれば、浮選工程で所定のパルプ濃度、所定の過マンガン酸カリウムの添加量および所定のpHとすることにより、二次硫化銅鉱の銅鉱物を主体とし鉄を含む銅・モリブデン鉱物であっても、銅及び鉄の採収率を低く抑えながら、モリブデンの採収率を有効に向上させることができる。

この発明の一の実施形態に係るモリブデン精鉱の分離方法を示すフロー図である。

発明例1〜8のpHに対するCu採収率の変化を示すグラフである。

発明例1〜8のpHに対するFe採収率の変化を示すグラフである。

以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。 この発明の一の実施形態のモリブデン精鉱の分離方法は、二次硫化銅鉱の銅鉱物が主体であり鉄を含む銅・モリブデン鉱物(以下、「銅・鉄・モリブデン鉱物」ともいう。)を浮遊選鉱し、鉄を含む銅精鉱(たとえば鉄精鉱及び銅精鉱)とモリブデン精鉱とに分離する浮選工程を有するものであり、この浮選工程では、銅・鉄・モリブデン鉱物を含むスラリーに、銅鉱物及び/又は鉄鉱物の浮遊性を抑制するための抑制剤として過酸化水素を、浮遊選鉱する銅・モリブデン鉱物の質量に対する割合で表して、8.5kg/t以上添加し、前記スラリーのpHを5.5以上として、浮遊選鉱を行う。

(銅・モリブデン鉱物) 所定の鉱山から採掘された採掘鉱石は、図1に例示するように、必要に応じてリーチングを行い、破砕して所定の大きさになるように磨鉱し、その後、バルク浮選により銅およびモリブデン以外の鉱物を尾鉱として除去して、銅・モリブデンのバルク精鉱を得るプロセスに供されることがある。一般的に銅・モリブデンのバルク精鉱中には鉄鉱物が含まれないのが望ましいが、ある程度は含まれることが多い。なお、バルク精鉱とは、一般には、硫化鉱石の浮遊選鉱において含まれる硫化鉱物全部あるいは複数を一つの精鉱産物として浮揚回収したものをいい、ここでいう銅・モリブデンのバルク精鉱は、銅鉱物とモリブデン鉱物を選択的に同時に回収したものである。

この発明が対象とする銅・モリブデン鉱物は、たとえば、上記のプロセスの各段階における採掘鉱石もしくは磨鉱後の鉱物、または、銅・モリブデンのバルク精鉱等とすることができる。特にここでは、銅・モリブデンのバルク精鉱を対象とした場合を例として説明する。

このような銅・モリブデン鉱物としてのバルク精鉱は、品位として、たとえば、銅を25.0〜40.0質量%、モリブデンを0.1〜1.5質量%で含むことがある。その他、さらに、鉄を25.0〜35.0質量%、硫黄を30.0〜40.0質量%含む場合がある。

鉱物で見れば、上記のバルク精鉱は、輝水鉛鉱、輝銅鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱等が含まれ得る。ここで示した銅鉱物は、一次硫化銅鉱(黄銅鉱等)、二次硫化銅鉱(輝銅鉱等)に区別される。具体的には、二次硫化銅鉱の銅鉱物としては、輝銅鉱、銅藍等を挙げることができる。また、一次硫化銅鉱の銅鉱物としては、黄銅鉱、班銅鉱、硫砒銅鉱等を挙げることができる。

この発明では、上述した二次硫化銅鉱の銅鉱物が主体である銅・モリブデン鉱物を対象とする。ここで、「二次硫化銅鉱の銅鉱物が主体である」とは、銅・モリブデン鉱物中、二次硫化銅鉱が一次硫化銅鉱や酸化銅鉱のいずれの含有比率よりも高い比率であることを意味する。特に、二次硫化銅鉱の銅鉱物を20質量%以上で含有する銅・モリブデン鉱物に対して、この発明を適用することが有効である。このような二次硫化銅鉱の銅鉱物を多く含む銅・モリブデン精鉱は、水に溶けやすい酸化鉱を含むことが多く、溶け込んだ金属が鉱物を疎水化または親水化する可能性があるからである。 この観点より、銅・モリブデン鉱物中の二次硫化銅鉱の銅鉱物の含有比率は、より好ましくは20質量%〜40質量%、さらに好ましくは25質量%〜35質量%である。なおこの含有比率は、二次硫化銅鉱が複数の銅鉱物を含む場合はその合計の含有比率である。

銅・モリブデン鉱物中の二次硫化銅鉱や一次硫化銅鉱、酸化銅鉱の含有比率は、MLA(Mineral Liberated Analysis)又は、Qemscan等により測定する。 なお、銅・モリブデン鉱物には、上述した二次硫化銅鉱、一次硫化銅鉱及び酸化銅鉱の他、酸化鉄鉱、硫化鉄鉱等が含まれることがある。

(洗浄工程) 上述した銅・モリブデン鉱物に対しては、所要に応じて、後述の浮選工程に先立ち、洗浄工程を行うことができる。但し、この洗浄工程は省略することも可能である。 洗浄工程を行う場合、銅・モリブデン鉱物を、たとえば水または、硫酸その他の酸性溶液等にて洗浄する。噴霧や浸漬等の洗浄方法は特に問わず、浸漬した場合は撹拌することも可能である。 洗浄後は、銅・モリブデン鉱物を、吸引濾過その他の公知の方法により、洗浄後液から取り出し、これに対して下記の浮選工程を実施する。

(浮選工程) 浮選工程では、たとえば、浮選セルに、水とともに銅・鉄・モリブデン鉱物を投入して、銅・鉄・モリブデン鉱物を含むスラリーを作製するとともに、このスラリーに抑制剤を添加し、所定の浮遊パルプ電位以下になったところで、導入ガスを給気し、スキンマーの回転下で浮遊選鉱を行い、フロスを回収する。なお、スキンマーに代えて、作業者がへらを用いて一定の間隔でフロスを回収することも可能である。また、浮選タンクから自然にオーバーフローさせることもある。

ここで、この発明では、スラリーに添加する抑制剤を過酸化水素とする。これにより、従来の方法のように抑制剤としてNaHSやTiofosを使用した場合の有害なH2Sガスの発生という問題は生じない。また、NaHSやTiofosでは、その添加量を抑えるために、大気ではなく窒素を導入ガスとして吸気する必要があるが、この発明では、抑制剤を過酸化水素とすることにより、大気を導入ガスとすることができて、コストの増大を抑制することができる。さらに、Tiofosを添加した場合、尾鉱の脱水性が悪化するが、この発明ではそのような問題も生じない。この発明の実施形態では、抑制剤として過酸化水素のみを用いている。

過酸化水素を添加することにより、スラリー中において、銅や鉄の鉱物は、銅や鉄の酸化物の沈殿生成物により被覆されて親水化される一方で、モリブデン鉱物は表面に形成したMoO2が溶解し、鉱物の持つ疎水性の表面が現れることで浮遊性が高くなり、これらの分離性が向上すると推測される。

またこの発明では、銅・モリブデン鉱物を含むスラリーのパルプ濃度を10〜30%とする。パルプ濃度が低すぎる場合、フロス層が十分に形成されない結果として、モリブデンの採収率が低下する。一方、パルプ濃度が高すぎると、分離性が悪化し浮鉱中のモリブデン品位が低下することが懸念される。 ここで、パルプ濃度は、スラリーの重量(g)に対する銅・モリブデン鉱(乾燥重量(g))の比を意味する。

またこの発明では、スラリーのpHを5.5以上として浮遊選鉱を行う。スラリーのpHが5.5より低い酸性領域では、上述したモリブデン鉱物表面に形成したMoO2が溶解されず、銅や鉄鉱物を覆うような酸化物を形成することが困難であるため有効に親水化することができない。但し、スラリーのpHを高くしすぎると、pH調整のための薬剤コストの上昇を招くことに加え、特に銅鉱物が二次硫化銅鉱主体の場合にはpHの違いによる鉱物の浮遊特性の理由で親水化されにくくなることから、スラリーのpHは、6.0〜10.0の範囲内とすることが好ましく、特に6.0〜8.0とすることがより好ましい。

さらにこの発明では、抑制剤としての過酸化水素の添加量を、浮選に供するCu−Moバルク精鉱1tあたりの添加量で表して、8.5kg/t以上とする。これにより形成した酸化銅や酸化鉄が銅や鉄を有効に被覆するので、分離効率を大きく向上させることができる。 また、過酸化水素の添加量が多すぎると、薬剤コストの上昇を招くことから、添加量は8.5〜17.0kg/tとすることが好ましい。過酸化水素の添加量が17.0kg/tを超えると、分離効率に大きな変化はなくなる。

なお、上記の抑制剤の添加後、浮遊選鉱時のスラリーの酸化還元電位(銀/塩化銀電位基準)が、pHが6以上かつ10未満の場合は250mV〜400mVの範囲内となってから浮遊選鉱を開始することが好適である。より好ましくは、pHが6.0〜8.0の場合で300mV〜400mVとする。酸化還元電位が低すぎると、抑制効果の表れる酸化物が形成されず、銅鉱物の持つ浮遊性により分離が困難である。また、酸化還元電位を高くする場合は、薬剤コストの上昇を招くため、好ましくない。

以上の条件で浮選工程を行うことにより、二次硫化銅鉱の銅鉱物が主体である銅・モリブデン鉱物であっても、銅鉱物の浮遊性が効果的に抑制されるので、銅濃度の高い尾鉱とモリブデン濃度の高い浮鉱とを有効に分離させて回収することができる。それにより、銅精鉱およびモリブデン精鉱をそれぞれ得ることができる。 なお、浮選工程では、粗選により銅精鉱を回収した後に、数段の精選を行うことができ、それにより、高いモリブデン品位のモリブデン精鉱を得ることができる。

次に、この発明を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は、単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。

試料は、チリ銅鉱山の採掘鉱石を、図1に示すような手順に従って処理して得た銅・モリブデン精鉱とした。試料の代表粒径はP80=47.5μm、P50=23.7μmであり、Mo品位0.58質量%、Cu品位26質量%、Fe品位25.2質量%、S品位35.3質量%、Si品位2.4質量%であった。また、銅鉱物種としては一次硫化銅鉱が5〜10質量%、二次硫化銅鉱が25〜35質量%、酸化鉱が1〜5質量%であった。モリブデン鉱物は、輝水鉛鉱:Molybdenite(MoS2)として存在し、試料に含まれる輝水鉛鉱はほぼ単体であった。銅鉱物はほとんどが片刃であったが、ほとんどが銅鉱物同士の片刃であり、銅鉱物として見れば単体分離度は高かった。鉄鉱物もまたほとんどが片刃であったが、ほとんどが鉄鉱物同士の片刃であり単体分離度は高かった。 この試料に対して以下の条件の浮遊選鉱試験を行った。

浮遊選鉱試験では、抑制剤として過酸化水素(H2O2)を用い、pHの調整には、消石灰を用いた。表1、2に示すように、パルプ濃度を20%とし、抑制剤の添加量を0.17kg/t、1.7kg/t、8.5kg/tもしくは17.0kg/tとし、pHを6、8、10もしくは12として異なる条件の発明例および比較例の試験を行った。いずれの発明例でも、導入ガスとして大気を使用し、浮選時間は5分とした。 浮遊選鉱後、回収産物の浮鉱と尾鉱を吸引濾過し、これを乾燥した後に粉砕して、アルカリ溶融・湿式分析(ICP—OES)を実施し、Cu、Mo、Feの各採収率および品位を求めた。Cu採収率とMo採収率との差、Fe採収率とMo採収率との差をそれぞれMo−Cu分離効率、Mo−Fe分離効率とした。その結果も表1、2に示す。

表1、2に示すところから解かるように、発明例1〜8はいずれも、浮選工程での過酸化水素の添加量を8.5kg/t以上としたことから、Mo−Cu分離効率15以上及び/又は、Mo−Fe分離効率20以上と良好な結果となった。一方、比較例1〜8は過酸化水素の添加量が8.5kg/t未満で少なかったことにより、高いMo−Cu及びMo−Feの分離効率は得られなかった。 発明例1〜8のうち、特にpHを6.0〜10.0とした発明例1〜4は、Mo−Cu分離効率及びMo−Fe分離効率の両方において良好であった。

また発明例1〜8について、表1に示すpHとCu及びFeのそれぞれの採収率との関係を、図2及び3にグラフでそれぞれ示す。図2及び3に示すところから、pHが8を超えるとCu、Feの採収率がやや大きくなることが解かる。これを言い換えれば、pHを8以下とした場合、Cu、Feの採収率が十分に低くなって、分離効率を大きく向上させることができる。

以上より、この発明によれば、モリブデンと銅及び鉄との分離効率を有意に向上できることが解かった。

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