コンクリート用フライアッシュの製造方法、及びセメント組成物の製造方法

申请号 JP2018015338 申请日 2018-01-31 公开(公告)号 JP6973128B2 公开(公告)日 2021-11-24
申请人 三菱マテリアル株式会社; 发明人 山下 牧生; 長谷川 篤;
摘要
权利要求

未燃炭素分を含有する石炭灰ととを含むスラリーを調製して、前記未燃炭素分と前記石炭灰とを浮遊選別することにより含水石炭灰を得る浮遊選別工程と、 前記含水石炭灰を脱水乾燥して乾燥石炭灰を得る脱水乾燥工程と、 前記乾燥石炭灰を乾式分級する分級工程と、を含み、 前記未燃炭素分を含有する石炭灰は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%以上45質量%以下の範囲内にあって、ハンターLab表色系におけるL値が40以上であり、 前記スラリーは未燃炭素分の捕集剤を含み、前記未燃炭素分を含有する石炭灰に対する前記捕集剤の含有率が0.2質量%以上15質量%以下の範囲内にあり、前記未燃炭素分を含有する石炭灰に対する前記水の含有率が300質量%以上1500質量%以下の範囲内にあり、 前記分級工程において、強制渦式遠心方式の分級装置を用い、 前記乾燥石炭灰を粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%未満となるように分級することを特徴とするコンクリート用フライアッシュの製造方法。さらに、前記脱水乾燥工程と前記分級工程との間に、前記乾燥石炭灰のハンターLab表色系におけるL値を測定し、測定された前記L値が45以上である前記乾燥石炭灰を、前記分級工程に送る検査工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート用フライアッシュの製造方法。得られるコンクリート用フライアッシュは、活性度指数が81%以上であって、MB吸着量が0.35mg/g以下である請求項1または2に記載のコンクリート用フライアッシュの製造方法。請求項1から3のいずれか1項に記載のコンクリート用フライアッシュの製造方法によって得られたコンクリート用フライアッシュとセメントとを混合する工程を含むことを特徴とするセメント組成物の製造方法。

说明书全文

本発明は、コンクリート用フライアッシュの製造方法、及びセメント組成物の製造方法に関するものである。

微粉炭焚きボイラ等から発生する石炭灰(フライアッシュともいう)は、コンクリートの耐久性を向上させる効果があることが知られている。このため、石炭灰を、コンクリート用の混和材として利用することが検討されている。しかしながら、石炭灰の中には未燃炭素(未燃カーボンともいう)が含まれており、この未燃炭素分が、コンクリート用の混和材の一つである空気連行剤(AE剤)を吸着することがある。このため、未燃炭素分の多い石炭灰を使用する際には、空気連行剤を多量に添加することが必要となる。

このような理由から、未燃炭素分の含有量が少ない石炭灰はコンクリート用の混和材として利用されているが、未燃炭素分の含有量が多い石炭灰は、一部はセメント原料として利用されているものの、産業廃棄物として埋め立て処分される場合が多い。そこで、未燃炭素分の含有量が多い未燃炭素分含有石炭灰から未燃炭素分を除去して、コンクリート用として有用なフライアッシュを製造する方法が検討されている。

未燃炭素分を多く含有する石炭灰中の未燃炭素分を除去する方法として、浮遊選別法が知られている。浮遊選別法とは、未燃炭素分を含有する石炭灰ととを含むスラリーを調製し、疎水性の未燃炭素分をスラリー中に浮上させて浮上物として回収し、親水性の石炭灰をスラリー中に沈降させて沈降物として回収する方法である。 例えば、特許文献1には、石炭灰に水を加えてスラリーとし、そのスラリーに捕集剤を添加した後、スラリー及び捕集剤に剪断を付与し、スラリーに気泡を発生させ、その気泡に石炭灰の未燃炭素分を付着させて浮上させる方法が開示されている。

また、特許文献2には、浮遊選別工程を行う前に、あらかじめ石炭灰の粗大粒子を除去する分級工程を行うことが開示されている。 また、特許文献3には、微粉炭ボイラ灰の処理方法として、微粉炭ボイラ灰に対して浮上分離処理及び湿式分級処理し、浮上分離処理による浮上物を燃料として用い、湿式分級処理により分級された粗粒分をセメント原料として用い、湿式分級処理により分級された細粒分をセメント混和材として用いることが開示されている。

特開2007−7485号公報

特開平8−57351号公報

特開平7−213949号公報

特許文献1に開示されているような浮遊選別法では、未燃炭素分と共に、微細で活性が高い石炭灰の微粒子が浮上物として回収されることによって、沈降物の石炭灰は活性度が低下することがあるという問題があった。 また、特許文献2に開示されているように、浮遊選別工程の前に、分級工程により粗大粒子が除去されると、分級後の石炭灰は未燃炭素分の含有量が相対的に増加して、浮遊選別工程で未燃炭素分を十分に除去することが困難となることがあった。さらに、分級工程により粗大粒子が除去されると、石炭灰の粗大粒子に付着していた石炭灰の微粒子が、浮遊選別工程で未燃炭素分と共に回収され易くなるため、浮遊選別後の石炭灰は活性度が低下することがあった。 また、特許文献3に記載されているように、浮遊選別工程で生成した沈降物を湿式分級する方法は、湿式分級によって分級された粗粒分と細粒分とをそれぞれ乾燥することが必要となるため、作業が複雑化し、乾燥のためのコストが高くなるという問題があった。

本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、比較的に簡単な作業により、未燃炭素分含有石炭灰からコンクリート用の混和材として利用可能なJIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)に品質基準に適合するフライアッシュを得ることができるコンクリート用フライアッシュの製造方法、及びこれを利用したセメント組成物の製造方法を提供することにある。

上記の課題を解決するために、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法は、未燃炭素分を含有する石炭灰と水とを含むスラリーを調製して、前記未燃炭素分と前記石炭灰とを浮遊選別することにより含水石炭灰を得る浮遊選別工程と、前記含水石炭灰を脱水乾燥して乾燥石炭灰を得る脱水乾燥工程と、前記乾燥石炭灰を乾式分級する分級工程とを含み、前記未燃炭素分を含有する石炭灰は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%以上45質量%以下の範囲内にあって、ハンターLab表色系におけるL値が40以上であり、前記スラリーは未燃炭素分の捕集剤を含み、前記未燃炭素分を含有する石炭灰に対する前記捕集剤の含有率が0.2質量%以上15質量%以下の範囲内にあり、前記未燃炭素分を含有する石炭灰に対する前記水の含有率が300質量%以上1500質量%以下の範囲内にあり、前記分級工程において、強制渦式遠心方式の分級装置を用い、 前記乾燥石炭灰を粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%未満となるように分級することを特徴とする。

このような構成とされた本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法によれば、未燃炭素分含有石炭灰に対して、分級工程を行う前に浮遊選別工程を実施するので、浮遊選別工程において、石炭灰の粗大粒子に付着している石炭灰の微粒子が未燃炭素分として回収されにくい。このため、未燃炭素分含有石炭灰中の未燃炭素分を選択的に除去することができる。また、浮遊選別工程で得られた含水石炭灰を、脱水乾燥工程において脱水乾燥して乾燥石炭灰とした後、分級工程で乾式分級するので、乾燥石炭灰中の粗大粒子が除去され、微細で活性が高い石炭灰の微粒子を効率よく回収することができる。

ここで、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法において、前記未燃炭素分を含有する石炭灰は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%以上45質量%以下の範囲内にあって、ハンターLab表色系におけるL値が40以上である。 この場合、未燃炭素分含有石炭灰は、粒子径が45μm以上の粗大な粒子の含有率が上記の範囲とされているので、その粗大粒子に石炭灰の微粒子を付着させた状態で、浮遊選別工程を実施することができ、浮遊選別工程で得られる含水石炭灰は、石炭灰の微粒子の含有量が多くなる。このため、その後の脱水乾燥工程及び分級工程により、活性が高い石炭灰を得ることができる。また、未燃炭素分含有石炭灰の未燃炭素分含有量を指標するハンターLab表色系におけるL値が40以上とされているので、浮遊選別工程において、沈降物の石炭灰に含まれる未燃炭素分の含有量を、コンクリート用フライアッシュとして利用するのに実用上問題がない程度に低減させることができる。

また、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法において、前記スラリーは未燃炭素分の捕集剤を含み、前記未燃炭素分を含有する石炭灰に対する前記捕集剤の含有率が0.2質量%以上15質量%以下の範囲内にあり、前記未燃炭素分を含有する石炭灰に対する前記水の含有率が300質量%以上1500質量%以下の範囲内にある。 この場合、スラリーが、未燃炭素分の捕集剤と水と未燃炭素分含有石炭灰を上記の範囲で含むので、浮遊選別工程において、未燃炭素分含有石炭灰に含まれる未燃炭素分を効率よく浮上物として回収することができる。また、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、前記分級工程において、前記乾燥石炭灰を、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%未満となるように分級するので、分級工程によって得られる石炭灰は、粒子径が45μm未満で活性が高い石炭灰の微粒子を90質量%以上含むので、コンクリート用フライアッシュとして有利に使用することができる。

また、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、さらに、前記脱水乾燥工程と前記分級工程との間に、前記乾燥石炭灰のハンターLab表色系におけるL値を測定し、測定された前記L値が45以上である前記乾燥石炭灰を、前記分級工程に送る検査工程を含むことが好ましい。 この場合、検査工程でL値が45以上と高いことが確認された乾燥石炭灰に対して分級工程を行うことができるので、未燃炭素分の含有量が少なく、コンクリート用の混和材として利用可能なフライアッシュをより確実に得ることが可能となる。

本発明のセメント組成物の製造方法は、上述の製造方法によって得られたコンクリート用フライアッシュとセメントとを混合する工程を含むことを特徴とする。 このような構成とされた本発明のセメント組成物の製造方法によれば、上述の製造方法によって得られたコンクリート用フライアッシュを用いるので、この製造方法によって得られたセメント組成物は、未燃炭素分の含有量が少なくなり、空気連行剤(AE剤)の使用量を少なくすることができ、強度発現性も良好である。

本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、比較的に簡単な作業により、未燃炭素分含有石炭灰からコンクリート用の混和材として利用可能なJIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)に品質基準に適合するフライアッシュを得ることができるコンクリート用フライアッシュの製造方法、及びこれを利用したセメント組成物の製造方法を提供することが可能となる。

本発明の一実施形態に係るコンクリート用フライアッシュの製造方法を示すフロー図である。

以下、本発明の本実施形態であるコンクリート用フライアッシュの製造方法、及びセメント組成物の製造方法について説明する。

<コンクリート用フライアッシュの製造方法> 図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート用フライアッシュの製造方法を示すフロー図である。 図1に示すように、本実施形態であるコンクリート用フライアッシュの製造方法は、浮遊選別工程S01と、脱水乾燥工程S02と、検査工程S03と、分級工程S04とを含む。

(浮遊選別工程) 浮遊選別工程S01では、先ず、未燃炭素分を含有する未燃炭素分含有石炭灰と水とを含むスラリーを調製する。 未燃炭素分含有石炭灰としては、例えば、微粉炭焚きボイラ等から発生する石炭灰を用いることができる。未燃炭素分含有石炭灰は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%以上45質量%以下の範囲内にあって、ハンターLab表色系におけるL値が40以上であることが好ましい。

未燃炭素分含有石炭灰に含まれる粒子径が45μm以上の粗大粒子の含有率が10質量%未満であると、相対的に粒子径45μm以下の微粒子の含有率が多くなり、浮遊選別工程S01で未燃炭素分と共に浮上物として回収される石炭灰の微粒子の量が多くなるおそれがある。一方、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が45質量%を超えると、未燃炭素分と石炭灰粒子との密着力が強くなり、浮遊選別工程S01での未燃炭素分の除去率が低下するおそれがある。未燃炭素分と共に浮上物として回収される石炭灰の微粒子の量をより低減し、かつ未燃炭素分の除去率を向上させるために、粒子径が45μm以上の粒子の含有率は15質量%以上40質量%以下の範囲内にあることが好ましい。なお、粒子径が45μm以上の粒子の含有率は、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定した粒度分布の累積粒度分布曲線から読み取る方法によって得ることができる。なお、この方法によって得られる45μm以上の粒子の含有率は、JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)の附属書B(45μmふるい残分試験方法(網ふるい方法))に記載されている方法によって測定される45μmふるい残分とほぼ同じ値となる。

ハンターLab表色系においてL値は、一般に明度を表す。未燃炭素分含有石炭灰においてL値は、石炭灰表面の未燃炭素分の付着量と相関すると考えられる。すなわち、L値が低い(明度が低い=黒色に近い)ことは、未燃炭素分含有石炭灰の未燃炭素分の含有量が多いことを示す。L値が40未満であると、浮遊選別工程S01では未燃炭素分を十分に浮遊選別できず、石炭灰に多量の未燃炭素分が残留するおそれがある。なお、未燃炭素分含有石炭灰のL値は、40以上60以下の範囲内にあることが好ましい。

上記の未燃炭素分含有石炭灰と水とのスラリーは、未燃炭素分の捕集剤を含むことが好ましい。捕集剤は、比重が水よりも軽く、疎水性で、かつ未燃炭素分に対して親和性を有するものであることが好ましい。捕集剤としては、液体炭化水素を用いることができる。液体炭化水素の例としては、灯油、ガソリン、軽油、重油などの石油類を挙げることができる。

スラリーは、未燃炭素分含有石炭灰と水と捕集剤とを混合することによって調製することができる。混合の順序には特に制限はない。例えば、水と未燃炭素分含有石炭灰とを混合し、得られた混合物と捕集剤とを混合してもよいし、水と捕集剤とを混合し、得られた混合物と未燃炭素分含有石炭灰とを混合してもよいし、未燃炭素分含有石炭灰と捕集剤とを混合し、得られた混合物と水とを混合してもよいし、未燃炭素分含有石炭灰と水と捕集剤を同時に混合してもよい。

未燃炭素分含有石炭灰に対する捕集剤の含有率は、0.2質量%以上15質量%以下の範囲内にあることが好ましい。捕集剤の含有率が0.2質量%未満であると、未燃炭素分と石炭灰との浮遊選別の効率が低下するおそれがある。一方、捕集剤の含有率が15質量%を超えても、捕集剤の添加効果が飽和すると共に、捕集剤が石炭灰に付着しやすくなり、却って未燃炭素分と石炭灰とを分離しにくくなるおそれがある。未燃炭素分含有石炭灰に対する捕集剤の含有率は、0.4質量%以上12.5質量%以下の範囲内にあることが好ましい。

未燃炭素分含有石炭灰に対する水の含有率は、300質量%以上1500質量%以下の範囲内にあることが好ましい。水の含有率が300質量%未満であると、相対的にスラリー中の固形分量が多くなるため、スラリーの粘度が高くなり、石炭灰と未燃炭素分とを効率的に分離することが難しくなるおそれがある。一方、水の含有率が1500質量%を超えると、浮遊選別装置の設備規模を大きくする必要が生じる。また、浮遊選別工程で得られた含水石炭灰は、脱水乾燥工程での脱水効率が低下するおそれがある。未燃炭素分含有石炭灰に対する水の含有率は、370質量%以上1000質量%以下の範囲内にあることが好ましい。

次いで、上記のスラリー中の未燃炭素分と石炭灰とを浮遊選別によって回収する。未燃炭素分はスラリー中に浮上させて浮上物(フロス)として回収する。石炭灰は、スラリー中に沈降させて沈降物(テール)として回収する。未燃炭素分を浮上させる方法としては、スラリー中に空気を導入し、未燃炭素分に気泡を付着させることによって、未燃炭素分を浮上させる方法、スラリーに剪断力を付与して、スラリーに気泡を巻き込ませ、未燃炭素分に気泡を付着させることによって、未燃炭素分を浮上させる方法を用いることができる。スラリー中に空気を導入する場合には、空気の導入量は、スラリーの1Lに対して0.5L/分以上5L/分以下の範囲内にあることが好ましい。空気の導入量が少なくなりすぎると、未燃炭素分に付着する気泡が少なくなり、未燃炭素分の回収率が低下するおそれがある。一方、空気の導入量が多くなりすぎると、気泡が石炭灰にまで付着して、未燃炭素分と共に石炭灰が浮上物として回収されることがあるので好ましくない。

浮遊選別工程S01で浮上物として回収された未燃炭素分は、炭素を比較的多量に含むため、例えば、セメント製造用の燃料として利用することができる。

(脱水乾燥工程) 脱水乾燥工程S02では、浮遊選別工程S01で沈降物として回収された石炭灰(含水石炭灰)を脱水し、ケーキ状にした後、乾燥して乾燥石炭灰を得る。 含水石炭灰を脱水するための脱水機としては、例えば、フィルタープレスや遠心脱水装置を用いることができる。また、ケーキ状の含水石炭灰を乾燥するための乾燥器としては、例えば、熱風循環式乾燥器、電気炉、ロータリーキルンを用いることができる。乾燥器の熱源としては、セメント製造設備の排熱を活用することができる。

(検査工程) 検査工程S03では、脱水乾燥工程S02で得られた乾燥石炭灰のハンターLab表色系におけるL値を測定し、測定されたL値が45以上である乾燥石炭灰を、分級工程S04に送る。すなわち、検査工程S03では、乾燥石炭灰に混入している未燃炭素分の量を、L値で判断して、L値が45以上の場合(OK)は、乾燥石炭灰に混入している未燃炭素分が少ないとして、分級工程S04に送る。

一方、L値が45未満の場合(NG)は、乾燥石炭灰に混入している未燃炭素分が多いとして、分級工程S04には送られない。本実施形態では、この場合(NG)は、乾燥石炭灰を浮遊選別工程S01に送り、浮遊選別工程S01で、再度、未燃炭素分と石炭灰とを浮遊選別するようにされている。但し、L値が45未満の乾燥石炭灰の処理方法はこれに限定されるものではない。例えば、L値が45未満の乾燥石炭灰と、L値が55以上の乾燥石炭灰とを、L値が45未満とならないように混合して、得られた混合物を分級工程に送ってもよい。

(分級工程) 分級工程S04では、検査工程S03から送られた乾燥石炭灰を乾式分級して、粒子径が大きい粗大粒子を除去することによって、粒子径が小さく相対的に活性が高い微粒子をコンクリート用フライアッシュとして回収する。分級工程S04で除去された粗大粒子は、例えば、セメント原料として利用することができる。

分級工程S04では、乾燥石炭灰を粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%未満となるように分級することが好ましい。分級後の乾燥石炭灰(フライアッシュ)の粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%以上となると、フライアッシュの活性が低下するおそれがある。活性が高いフライアッシュを得るためには、分級条件は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が8質量%以下となる条件であることが好ましく、5質量%以下となる条件であることが特に好ましい。一方、粒子径が45μm以上の粒子の含有率を過度に低い値に設定すると、石炭灰が多く除去されて、フライアッシュの回収率が過度に低下すると共に、相対的に石炭灰中の未燃炭素分の含有量が多くなるおそれがある。このため、分級条件は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が0.5質量%以上となる条件であることが好ましく、1.0質量%以上となる条件とすることが特に好ましい。

乾式分級装置としては、粒子の遠心力を利用して分級する遠心方式の分級装置と、粒子の慣性力を利用して分級する慣性方式の分級装置とを用いることができる。また、遠心方式の分級装置としては、強制渦式と、半自由渦式と、自由渦式とを使用できる。強制渦式の分級装置は、装置内部に回転体が備えられていて、その回転体を高速で回転させることで強制的に渦を形成する分級装置である。半自由渦式の分級装置は、回転体の代わりに、装置内部に渦を生成させる案内板が備えられている分級装置である。自由渦式の分級装置は、サイクロンに代表されるように、装置内部の接線方向に気体を吹き込んで渦を生成させる分級装置である。これらの分級装置の中では、強制渦式遠心方式の分級装置が好ましい。強制渦式遠心方式の分級装置では、回転体(ローター)の回転数を調整することによって、分級後の粉末の粒子径を精度よく調節することができる。

以上のような構成とされた本実施形態のコンクリート用フライアッシュの製造方法によれば、未燃炭素分含有石炭灰に対して、分級工程S04を行う前に浮遊選別工程S01を実施するので、石炭灰の粗大粒子に付着している石炭灰の微粒子が未燃炭素分として回収されにくい。このため、未燃炭素分含有石炭灰中の未燃炭素分を選択的に除去することができる。また、浮遊選別工程S01で得られた含水石炭灰を、脱水乾燥工程S02において脱水乾燥して乾燥石炭灰とした後、分級工程S04で乾式分級するので、乾燥石炭灰中の粗大粒子が除去され、微細で活性が高い石炭灰の微粒子を効率よく回収することができる。

また、本実施形態のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、さらに、脱水乾燥工程S02と分級工程S04との間に、検査工程S03を含むので、検査工程S03でL値が45以上と高いことが確認された乾燥石炭灰に対して分級工程S04を行うことができる。これにより、未燃炭素分の含有量が少なく、コンクリート用の混和材として利用可能なフライアッシュをより確実に得ることが可能となる。なお、検査工程S03は、必ずしも常時実施する必要はない。例えば、粒子径が45μm以上の粒子の含有率やL値が同じ未燃炭素分含有石炭灰に対して連続的に浮遊選別工程S01と脱水乾燥工程S02を実施する場合は、通常、得られる乾燥石炭灰のL値は安定しているため、検査工程S03を行わなくてもよい。

また、本実施形態のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、未燃炭素分含有石炭灰に含まれる粒子径が45μm以上の粗大な粒子の含有率を10質量%以上45質量%以下の範囲内とすることによって、未燃炭素分含有石炭灰の微粒子を石炭灰の粗大粒子に付着させた状態で浮遊選別工程S01を実施することができ、浮遊選別工程S01で得られる含水石炭灰は、石炭灰の微粒子の含有量が多くなる。このため、その後の脱水乾燥工程S02及び分級工程S04により、活性が高い石炭灰を得ることができる。また、未燃炭素分含有石炭灰の未燃炭素分含有量を指標するハンターLab表色系におけるL値が40以上とされているので浮遊選別工程S01において、沈降物の石炭灰に含まれる未燃炭素分の含有量を、コンクリート用フライアッシュとして利用するのに実用上問題がない程度に低減させることができる。

また、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、スラリーは未燃炭素分の捕集剤を含み、スラリーが、未燃炭素分の捕集剤と水と未燃炭素分含有石炭灰を上述の範囲で含むことによって、浮遊選別工程S01において、未燃炭素分含有石炭灰に含まれる未燃炭素分を効率よく浮上物として回収することができる。

また、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、分級工程S04において、乾燥石炭灰を、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%未満となるように分級することによって、得られる石炭灰は、粒子径が45μm未満で活性が高い石炭灰の微粒子を90質量%以上含むので、コンクリート用の混和材として有利に使用することができる。

<セメント組成物の製造方法> 本実施形態のセメント組成物の製造方法は、以上のようにして得られた分級後の乾燥石炭灰(コンクリート用フライアッシュ)とセメントとを混合する工程を含む。 フライアッシュの置換率(フライアッシュとセメントの合計量に対するフライアッシュの含有率)は、1質量%以上10質量%以下の範囲内にあることが好ましい。置換率が1質量%未満の場合は、フライアッシュを用いる効果が得られにくくなる。また、置換率が10質量%を超える場合は、セメント組成物を硬化させたときの圧縮強さが低減するおそれがある。

フライアッシュと混合するセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどを挙げることができる。また、セメント組成物は、石膏、速硬性混和材、凝結調整剤、空気連行剤(AE剤)、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、骨材などのコンクリート用の混和材として利用されている各種の混和材を含んでいてもよい。

フライアッシュとセメントとを混合するための混合装置としては、例えば、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、タンクの循環による混合装置などのセメント組成物の製造に用いられている公知の混合装置を用いることができる。

以上のような構成とされた本実施形態のセメント組成物の製造方法によれば、上述の製造方法によって得られたコンクリート用フライアッシュを用いるので、この製造方法によって得られたセメント組成物は、未燃炭素分の含有量が少なくなり、空気連行剤(AE剤)の使用量を少なくすることができ、強度発現性も良好である。

以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。

以下、本発明の作用効果を実施例により説明する。

本実施例では、原料の石炭灰として、下記の表1に示すR45、L値、MB(メチレンブルー)吸着量、活性度指数が異なる5種類の未燃炭素分含有石炭灰A〜Eを用意した。 なお、R45は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率(質量%)を意味する。R45は、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定した粒度分布により得られた累積粒度分布曲線から求めた。 L値は、ハンターLab表色系のL値を意味する。L値は、色彩色差計(ミノルタ社製、型式:CR210)を用いて測定した。 MB吸着量は、セメント協会標準試験方法JCAS I−61:2008(フライアッシュのメチレンブルー吸着量 試験方法)に準拠して測定した。 活性度指数は、JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)とその附属書C(フライアッシュのモルタルによるフロー値比及び活性度指数の試験方法)に準拠して測定した。なお、モルタル供試体の材齢は28日とした。

本実施例において、浮遊選別工程、脱水乾燥工程、分級工程の各工程は、特に断りがない限り、下記の表2に示す条件で以下のようにして行った。 具体的には、浮遊選別工程では、撹拌機を備えた浮選装置に、未燃炭素分含有石炭灰800と水5000gとを投入し、次いで捕集剤として灯油60gを投入した後、撹拌機を用いて回転数850rpmの条件で10分間撹拌して、スラリーを得た。撹拌機を停止した後、浮選装置に空気を供給量10L/分の条件で5分間に供給して、浮上物(未燃炭素分)と沈降物(含水石炭灰)とをそれぞれ回収した。 脱水乾燥工程では、含水石炭灰を、フィルタープレスを用いて脱水してケーキ状とした後、通風式乾燥器を用いて105℃で120分間加熱して、乾燥石炭灰とした。 分級工程では、強制渦式遠心方式の分級装置(日清エンジニアリング社製、ターボクラシファイア、型式TC400)を用いて、45μmふるい残分が8質量%以上10質量%未満の範囲内となるように、ローター回転数を1000〜3000rpmの範囲内で調整して分級した。

[本発明例1〜5、比較例1〜5] 本発明例1〜5は、下記の表3に示すように未燃炭素分含有石炭灰A〜Eに対して、浮遊選別工程、脱水乾燥工程、分級工程の各工程をこの順で行った。脱水乾燥工程後と分級工程後の石炭灰のR45、L値、MB吸着量、活性度を、それぞれ表3に示す。ただし、本発明例4、5は、本発明の発明例ではない。

比較例1〜5では、下記の表3に示すように未燃炭素分含有石炭灰A〜Eに対して、浮遊選別工程と脱水乾燥工程を行い、分級工程を実施しなかった。脱水乾燥工程後の石炭灰のR45、L値、MB吸着量、活性度を表3に示す。

表3に示すように、脱水乾燥工程の後に分級工程を実施した本発明例1〜5で得られたフライアッシュは、分級工程を実施しなかった比較例1〜5で得られたフライアッシュと比較して活性度が向上した。これは、分級工程によって、活性が相対的に低い石炭灰の粗大粒子が除去されたためであると考えられる。また、MB吸着量は、本発明例1〜5で得られたフライアッシュの方が、比較例1〜5で得られたフライアッシュよりも高くなった。これは、分級工程によって、石炭灰の粗大粒子が除去されることによって相対的に微細な未燃炭素分の含有量が増加したためであると考えられる。

また、表3の結果から、R45が10質量%以上45質量%以下の範囲内にあって、ハンターLab表色系におけるL値が40以上である未燃炭素分含有石炭灰A〜Cを用いた本発明例1〜3で得られたフライアッシュは、活性度指数が80以上と高く、MB吸着量が0.3mg/gと低いことから、セメント用フライアッシュとして特に有用であることが確認された。

[フライアッシュの評価] 本発明例1〜2および比較例1で得られたフライアッシュと普通ポルトランドセメントとを、下記の表4に示す置換率(フライアッシュと普通ポルトランドセメントの合計量に対するフライアッシュの含有率)で混合して、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の凝結時間と圧縮強さと黒班の有無とを測定した。その結果を、表4に示す。

凝結時間および圧縮強さは、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に準拠して測定した。 黒班の有無は、次のようにして測定した。 JIS R 5201に準拠して、セメント組成物と標準砂と水とを練混ぜてモルタルを調製した。調製したモルタルを、圧縮強さ測定用の型枠(4cm×16cm)に充填して硬化させた。得られたモルタル硬化体の表面64cm2(=4cm×16cm)を目視で観察し、黒斑の有無を確認した。モルタル硬化体の表面に、1個以上の黒斑が確認された場合を「有」とした。

また、参考例1として、上記の普通ポルトランドセメント単体(フライアッシュ無置換)について凝結時間と圧縮強さと黒班の有無とを同様に測定した。その結果を、表4に示す。

表4に示すように、活性度指数が相対的に低い比較例1のフライアッシュを含むセメント組成物は、フライアッシュの置換率が5質量%となると、圧縮強さが圧縮強さは49.6N/mm2と急激に低下した。これに対して、本発明例1〜2のフライアッシュを含むセメント組成物は、フライアッシュの置換率が1〜7質量%の範囲で安定した圧縮強さを示し、フライアッシュの置換率が7質量%の材齢28日の圧縮強さはそれぞれ、53.2N/mm2(本発明例1)、53.1N/mm2(本発明例2)であり、高い強度発現性を示した。

[比較例6〜7] 比較例6〜7では、下記の表5に示すように未燃炭素分含有石炭灰A〜Bについて、分級工程、浮遊選別工程、脱水乾燥工程の各工程をこの順で行った。分級工程後と脱水乾燥工程後の石炭灰のR45、L値、MB吸着量、活性度を、それぞれ表5に示す。

表5に示すように、分級工程、浮遊選別工程、脱水乾燥工程の各工程をこの順で行った比較例6、7で得られたフライアッシュは、浮遊選別工程→脱水乾燥工程後の活性度指数が、分級工程後よりも低くなった。これは、活性度が高い石灰石の微粒子が、浮遊選別工程で未燃炭素分と共に除去されたためであると考えられる。

下記の表6に、本発明例1〜2および比較例6〜7で用いた未燃炭素分含有石炭灰A〜Bと得られたフライアッシュのR45、L値、MB吸着量、活性度を、それぞれ示す。

表6に示すように、本発明例1〜2で得られたフライアッシュは、比較例6〜7で得られたフライアッシュと比較して、MB吸着量が低く、かつ活性度指数は高くなり、セメント用フライアッシュとして特に有用であることが確認された。 比較例6〜7で得られたフライアッシュのMB吸着量が高くなった理由としては、分級工程により、石炭灰の粗大粒子が除去されることによって、相対的に未燃炭素分の含有量が増加して、浮遊選別工程で未燃炭素分を十分に除去できなかったためであると考えられる。また、比較例6〜7で得られたフライアッシュの活性度指数が低下した理由としては、分級工程により、石炭灰の粗大粒子が除去されることによって、石炭灰の粗大粒子に付着していた石炭灰の微粒子が、浮遊選別工程で未燃炭素分と共に回収されたためであると考えられる。

[本発明例6〜9] 本発明例6〜9では、分級工程において、強制渦式遠心方式分級装置のローター回転数を変えて、分級後のフライアッシュのR45が、下記の表7に記載の値となるように調整したこと以外は、本発明例2と同様にして、フライアッシュを製造した。 脱水乾燥工程後と分級工程後の石炭灰のR45、L値、MB吸着量、活性度を、それぞれ測定した。その結果を、本発明例2の結果と共に表7に示す。ただし、本発明例6は、本発明の発明例ではない。

表7の結果から、R45が10質量%未満となるように分級して得た本発明例2および本発明例7〜9で得られたフライアッシュは、活性度指数が80以上と高い値を示すことが確認された。特に、R45が1.0質量%以上となるように分級して得た本発明例2および本発明例7〜8で得られたフライアッシュは、MB吸着量が3mg/gと低い値を示すことが確認された。本発明例9のMB吸着量が高くなったのは、石炭灰が多く除去されることによって、相対的に石炭灰中の未燃炭素分の含有量が多くなったためであると考えられる。

[本発明例10〜15] 本発明例10〜12では、浮遊選別工程で用いた灯油の量を下記の表8に示す量に変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてフライアッシュを製造した。得られたフライアッシュのMB吸着量を測定した。その結果を、本発明例1の結果と共に表8に示す。ただし、本発明例12は、本発明の発明例ではない。

本発明例13〜15では、浮遊選別工程で用いた灯油の量を下記の表8に示す量に変えたこと以外は、本発明例2と同様にしてフライアッシュを製造した。得られたフライアッシュのMB吸着量を測定した。その結果を、本発明例2の結果と共に表8に示す。ただし、本発明例15は、本発明の発明例ではない。

表8の結果から、フライアッシュのMB吸着量は、浮遊選別工程で用いた灯油の量によって変動することが分かる。そして、未燃炭素分含有石炭灰に対する灯油の含有率(灯油/未燃炭素分含有石炭灰)が0.2質量%以上、特に0.4質量%以上であると、フライアッシュのMB吸着量が大きく減少することが確認された。

[本発明例16〜19] 本発明例16〜19では、浮遊選別工程で用いた水の量を下記の表9に示す量に変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてフライアッシュを製造した。得られたフライアッシュのMB吸着量を測定した。その結果を、本発明例1の結果と共に表9に示す。ただし、本発明例19は、本発明の発明例ではない。

表9の結果から、フライアッシュのMB吸着量は、浮遊選別工程で用いた水の量によって変動することが確認された。そして、未燃炭素分含有石炭灰に対する水の含有率が3005質量%以上、特に375質量%であると、フライアッシュのMB吸着量が大きく減少することが確認された。

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